(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体単位0.1〜15重量%、α,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステル単量体単位1〜10重量%、α,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸エステル単量体単位40〜75重量%、ならびに、ジエン単量体単位および/またはα−オレフィン単量体単位20〜58.9重量%を含有するニトリルゴム(a)と、
ポリアミン系架橋剤(b)とを含有し、
前記ニトリルゴム(a)100重量部に対する、前記ポリアミン系架橋剤(b)の含有割合が、0.1〜20重量部である架橋性ニトリルゴム組成物。
前記α,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸エステル単量体単位が、アクリル酸ブチル単位および/またはアクリル酸メトキシエチル単位である請求項1〜3のいずれかに記載の架橋性ニトリルゴム組成物。
前記可塑剤が、トリメリット酸系可塑剤、エーテルエステル系可塑剤、およびアジピン酸エステル系可塑剤から選択される少なくとも一種である請求項6に記載の架橋性ニトリルゴム組成物。
【発明を実施するための形態】
【0010】
架橋性ニトリルゴム組成物
本発明の架橋性ニトリルゴム組成物は、後述するニトリルゴム(a)と、後述するポリアミン系架橋剤(b)とを含有し、前記ニトリルゴム(a)100重量部に対する、前記ポリアミン系架橋剤(b)の含有割合が、0.1〜20重量部であるゴム組成物である。
【0011】
ニトリルゴム(a)
本発明で用いるニトリルゴム(a)は、α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体単位0.1〜15重量%、α,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステル単量体単位1〜10重量%、α,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸エステル単量体単位40〜75重量%、ならびに、ジエン単量体単位および/またはα−オレフィン単量体単位20〜58.9重量%を含有するゴムである。
【0012】
α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体単位を形成する、α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体としては、ニトリル基を有するα,β−エチレン性不飽和化合物であれば限定されず、アクリロニトリル;α−クロロアクリロニトリル、α−ブロモアクリロニトリルなどのα−ハロゲノアクリロニトリル;メタクリロニトリルなどのα−アルキルアクリロニトリルなどが挙げられ、アクリロニトリルおよびメタクリロニトリルが好ましい。α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体は、一種単独でも、複数種を併用してもよい。
【0013】
ニトリルゴム(a)中における、α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体単位の含有量は、0.1〜15重量%であり、好ましくは3〜14重量%、より好ましくは6〜12重量%である。α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体単位の含有量が少なすぎると、得られるゴム架橋物の耐油性が低下するおそれがあり、逆に、多すぎると耐熱老化性が低下する可能性がある。
【0014】
α,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステル単量体単位は、フリーのカルボキシル基を1個有するものであり、通常、架橋性の単量体単位として作用する。α,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステル単量体単位を含有していることにより、得られるゴム架橋物を、引張り応力および耐油性が良好で、耐熱老化性、耐寒性、および耐圧縮永久歪み性に優れたものとすることができる。
【0015】
α,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステル単量体単位を形成する、α,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステル単量体としては、エステル部の、酸素原子を介してカルボニル基と結合する有機基が、アルキル基、シクロアルキル基およびアルキルシクロアルキル基であるものが好ましく、アルキル基であるものが特に好ましい。アルキル基の炭素数は好ましくは1〜10、より好ましくは2〜6、特に好ましくは4〜5であり、シクロアルキル基の炭素数は好ましくは5〜12、より好ましくは6〜10であり、アルキルシクロアルキル基の炭素数は好ましくは6〜12、より好ましくは7〜10である。カルボニル基と結合する有機基の炭素数が小さすぎると、架橋性ニトリルゴム組成物の加工安定性が低下するおそれがあり、一方、炭素数が大きすぎると架橋速度が遅くなったり、得られるゴム架橋物の機械的特性が低下したりする可能性がある。
【0016】
α,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステル単量体の具体例としては、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノプロピル、マレイン酸モノn−ブチルなどのマレイン酸モノアルキルエステル;マレイン酸モノシクロペンチル、マレイン酸モノシクロヘキシル、マレイン酸モノシクロヘプチルなどのマレイン酸モノシクロアルキルエステル;マレイン酸モノメチルシクロペンチル、マレイン酸モノエチルシクロヘキシルなどのマレイン酸モノアルキルシクロアルキルエステル;フマル酸モノメチル、フマル酸モノエチル、フマル酸モノプロピル、フマル酸モノn−ブチルなどのフマル酸モノアルキルエステル;フマル酸モノシクロペンチル、フマル酸モノシクロヘキシル、フマル酸モノシクロヘプチルなどのフマル酸モノシクロアルキルエステル;フマル酸モノメチルシクロペンチル、フマル酸モノエチルシクロヘキシルなどのフマル酸モノアルキルシクロアルキルエステル;シトラコン酸モノメチル、シトラコン酸モノエチル、シトラコン酸モノプロピル、シトラコン酸モノn−ブチルなどのシトラコン酸モノアルキルエステル;シトラコン酸モノシクロペンチル、シトラコン酸モノシクロヘキシル、シトラコン酸モノシクロヘプチルなどのシトラコン酸モノシクロアルキルエステル;シトラコン酸モノメチルシクロペンチル、シトラコン酸モノエチルシクロヘキシルなどのシトラコン酸モノアルキルシクロアルキルエステル;イタコン酸モノメチル、イタコン酸モノエチル、イタコン酸モノプロピル、イタコン酸モノn−ブチルなどのイタコン酸モノアルキルエステル;イタコン酸モノシクロペンチル、イタコン酸モノシクロヘキシル、イタコン酸モノシクロヘプチルなどのイタコン酸モノシクロアルキルエステル;イタコン酸モノメチルシクロペンチル、イタコン酸モノエチルシクロヘキシルなどのイタコン酸モノアルキルシクロアルキルエステル;などが挙げられる。
これらのなかでも、本発明の効果をより一層顕著なものとすることができるという点より、マレイン酸モノアルキルエステルが好ましく、アルキル基の炭素数が2〜6のマレイン酸モノアルキルエステルがより好ましく、マレイン酸モノn−ブチルが特に好ましい。α,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステル単量体は、一種単独でも、複数種を併用してもよい。
【0017】
ニトリルゴム(a)中における、α,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステル単量体単位の含有量は、1〜10重量%であり、好ましくは2〜8重量%、より好ましくは3〜6重量%である。α,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステル単量体単位の含有量が少なすぎると、得られるゴム架橋物の耐圧縮永久歪み性が悪化してしまう。一方、多すぎると、耐熱老化性および耐寒性が悪化してしまう。
【0018】
また、ニトリルゴム(a)は、α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体単位、および、α,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステル単量体単位に加えて、α,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸エステル単量体単位を含有する。α,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸エステル単量体単位を含有することで、得られるゴム架橋物を、引張強度および伸びなどの機械的特性を良好なものとしながら、耐熱老化性および耐寒性が向上されたものとすることができる。
【0019】
α,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸エステル単量体単位を形成する、α,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸エステル単量体としては、特に限定されないが、たとえば、α,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸アルキルエステル単量体、α,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸アルコキシアルキルエステル単量体、α,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸アミノアルキルエステル単量体、α,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸ヒドロキシアルキルエステル単量体、α,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸フルオロアルキルエステル単量体などが挙げられる。
これらのなかでも、α,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸アルキルエステル単量体、またはα,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸アルコキシアルキルエステル単量体が好ましい。
【0020】
α,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸のアルキルエステル単量体としては、アルキル基として、炭素数が3〜10でアルキル基を有するものが好ましく、炭素数が3〜8であるアルキル基を有するものがより好ましく、炭素数が4〜6であるアルキル基を有するものがさらに好ましい。
【0021】
α,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸アルキルエステル単量体の具体例としては、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸n−ペンチル、アクリル酸2−エチルヘキシルなどのアクリル酸アルキルエステル単量体;アクリル酸シクロペンチル、アクリル酸シクロヘキシルなどのアクリル酸シクロアルキルエステル単量体;アクリル酸メチルシクロペンチル、アクリル酸エチルシクロペンチル、アクリル酸メチルシクロヘキシルなどのアクリル酸アルキルシクロアルキルエステル単量体;メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸n−ペンチル、メタクリル酸n−オクチルなどのメタクリル酸アルキルエステル単量体;メタクリル酸シクロペンチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸シクロペンチルなどのメタクリル酸シクロアルキルエステル単量体;メタクリル酸メチルシクロペンチル、メタクリル酸エチルシクロペンチル、メタクリル酸メチルシクロヘキシルなどのメタクリル酸アルキルシクロアルキルエステル単量体;クロトン酸プロピル、クロトン酸n−ブチル、クロトン酸2−エチルヘキシルなどのクロトン酸アルキルエステル単量体;クロトン酸シクロペンチル、クロトン酸シクロヘキシル、クロトン酸シクロオクチルなどのクロトン酸シクロアルキルエステル単量体;クロトン酸メチルシクロペンチル、クロトン酸メチルシクロヘキシルなどのクロトン酸アルキルシクロアルキルエステル単量体;などが挙げられる。
【0022】
また、α,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸アルコキシアルキルエステル単量体としては、アルコキシアルキル基として、炭素数が2〜8でアルコキシアルキル基を有するものが好ましく、炭素数が2〜6であるアルコキシアルキル基を有するものがより好ましく、炭素数が2〜4であるアルコキシアルキル基を有するものがさらに好ましい。
【0023】
α,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸アルコキシアルキルエステル単量体の具体例としては、アクリル酸メトキシメチル、アクリル酸メトキシエチル、アクリル酸エトキシメチル、アクリル酸エトキシエチル、アクリル酸n−プロポキシエチル、アクリル酸i−プロポキシエチル、アクリル酸n−ブトキシエチル、アクリル酸i−ブトキシエチル、アクリル酸t−ブトキシエチル、アクリル酸メトキシプロピル、アクリル酸メトキシブチルなどのアクリル酸アルコキシアルキルエステル単量体;メタクリル酸メトキシメチル、メタクリル酸メトキシエチル、メタクリル酸エトキシメチル、メタクリル酸エトキシエチル、メタクリル酸n−プロポキシエチル、メタクリル酸i−プロポキシエチル、メタクリル酸n−ブトキシエチル、メタクリル酸i−ブトキシエチル、メタクリル酸t−ブトキシエチル、メタクリル酸メトキシプロピル、メタクリル酸メトキシブチルなどのメタクリル酸アルコキシアルキルエステル単量体;などが挙げられる。
【0024】
これらα,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸エステル単量体のなかでも、本発明の効果をより一層顕著なものとすることができるという点より、アクリル酸アルキルエステル単量体、アクリル酸アルコキシアルキルエステル単量体が好ましく、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸メトキシエチルがより好ましく、アクリル酸n−ブチルが特に好ましい。
【0025】
ニトリルゴム(a)中における、α,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸エステル単量体単位の含有量は、40〜75重量%であり、好ましくは40〜65重量%、より好ましくは43〜55重量%である。α,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸エステル単量体単位の含有量が少なすぎても、また、多すぎても、得られるゴム架橋物の耐熱老化性および耐寒性が悪化してしまう。
【0026】
また、ニトリルゴム(a)は、上述したα,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体単位、α,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステル単量体単位、および、α,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸エステル単量体単位の他に、得られるゴム架橋物がゴム弾性を保有するために、ジエン単量体単位および/またはα−オレフィン単量体単位をも含有する。
【0027】
ジエン単量体単位を形成するジエン単量体の具体例としては、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエンなどの炭素数が4以上の共役ジエン単量体;1,4−ペンタジエン、1,4−ヘキサジエンなどの好ましくは炭素数が5〜12の非共役ジエン単量体が挙げられる。これらの中では共役ジエン単量体が好ましく、1,3−ブタジエンがより好ましい。
【0028】
α−オレフィン単量体単位を形成するα−オレフィン単量体の具体例としては、好ましくは炭素数が2〜12のものであり、エチレン、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテンなどが挙げられる。
【0029】
ニトリルゴム(a)中における、ジエン単量体単位および/またはα−オレフィン単量体単位の含有量は、20〜58.9重量%であり、好ましくは30〜50重量%、より好ましくは35〜45重量%である。これらの含有量が少なすぎるとゴム架橋物のゴム弾性が低下するおそれがあり、逆に、多すぎると耐熱性や耐化学的安定性が損なわれる可能性がある。
【0030】
また、本発明で用いるニトリルゴム(a)は、α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体、α,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステル単量体、α,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸エステル単量体、ならびに、ジエン単量体および/またはα−オレフィン単量体、と共重合可能なその他の単量体の単位を含有することができる。このようなその他の単量体としては、α,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸ジエステル単量体、α,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸単量体、α,β−エチレン性不飽和多価カルボン酸単量体、α,β−エチレン性不飽和多価カルボン酸無水物、芳香族ビニル単量体、フッ素含有ビニル単量体、共重合性老化防止剤などが例示される。
【0031】
α,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸ジエステル単量体としては、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジn−ブチルなどのマレイン酸ジアルキルエステルであってアルキル基の炭素数が1〜18のもの;フマル酸ジメチル、フマル酸ジn−ブチルなどのフマル酸ジアルキルエステルであってアルキル基の炭素数が1〜18のもの;マレイン酸ジシクロペンチル、マレイン酸ジシクロヘキシルなどのマレイン酸ジシクロアルキルエステルであってシクロアルキル基の炭素数が4〜16のもの;フマル酸ジシクロペンチル、フマル酸ジシクロヘキシルなどのフマル酸ジシクロアルキルエステルであってシクロアルキル基の炭素数が4〜16のもの;イタコン酸ジメチル、イタコン酸ジn−ブチルなどのイタコン酸ジアルキルエステルであってアルキル基の炭素数が1〜18のもの:イタコン酸ジシクロヘキシルなどのイタコン酸ジシクロアルキルエステルであってシクロアルキル基の炭素数が4〜16のもの;などが挙げられる。
【0032】
α,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸などが挙げられる。
α,β−エチレン性不飽和多価カルボン酸単量体としては、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸などが挙げられる。
α,β−エチレン性不飽和多価カルボン酸無水物としては、無水マレイン酸などが挙げられる。
芳香族ビニル単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルピリジンなどが挙げられる。
フッ素含有ビニル単量体としては、フルオロエチルビニルエーテル、フルオロプロピルビニルエーテル、o−トリフルオロメチルスチレン、ペンタフルオロ安息香酸ビニル、ジフルオロエチレン、テトラフルオロエチレンなどが挙げられる。
共重合性老化防止剤としては、N−(4−アニリノフェニル)アクリルアミド、N−(4−アニリノフェニル)メタクリルアミド、N−(4−アニリノフェニル)シンナムアミド、N−(4−アニリノフェニル)クロトンアミド、 N−フェニル−4−(3−ビニルベンジルオキシ)アニリン、N−フェニル−4−(4−ビニルベンジルオキシ)アニリンなどが挙げられる。
【0033】
これらの共重合可能なその他の単量体は、複数種類を併用してもよい。その他の単量体単位を含有する場合における、その他の単量体単位の含有量は、ニトリルゴム(a)中、好ましくは50重量%以下、より好ましくは40重量%以下、さらに好ましくは10重量%以下、特に好ましくは3重量%以下である。
【0034】
本発明で用いるニトリルゴム(a)のカルボキシル基の含有量、すなわち、ニトリルゴム(a)100g当たりのカルボキシル基のモル数は、好ましくは5×10
−4〜5×10
−1ephr、より好ましくは1×10
−3〜1×10
−1ephr、特に好ましくは5×10
−3〜6×10
−2ephrである。ニトリルゴム(a)のカルボキシル基含有量を上記範囲とすることより、架橋性ニトリルゴム組成物の架橋を十分進行させることができ、これにより、ゴム架橋物とした場合における機械的強度をより良好なものとすることができる。
【0035】
本発明で用いるニトリルゴム(a)のヨウ素価は、特に限定されないが、耐熱老化性をより高めることができるという点より、好ましくは120以下であり、より好ましくは85以下、さらに好ましくは80以下である。なお、本発明で用いるニトリルゴム(a)のヨウ素価は、上記範囲とすることが好ましいが、得られるゴム架橋物を、より耐熱性および耐オゾン性に優れたものとするという観点からは、ヨウ素価は、25以下であることが好ましく、15以下であることがさらに好ましい。あるいは、得られるゴム架橋物を、より耐寒性に優れたものとするという観点からは、ヨウ素価は、好ましくは35〜85、より好ましくは40〜70、さらに好ましくは40〜60である。
【0036】
また、ニトリルゴム(a)のポリマー・ムーニー粘度(ML
1+4、100℃)は、好ましくは15〜200、より好ましくは15〜150、特に好ましくは15〜100である。ニトリルゴム(a)のムーニー粘度が低すぎると、得られるゴム架橋物の強度特性が低下するおそれがあり、逆に、高すぎると架橋性ニトリルゴム組成物の加工性が低下する可能性がある。
【0037】
本発明で用いるニトリルゴム(a)の製造方法は、特に限定されないが、乳化剤を用いた乳化重合により上述の単量体を共重合して共重合体ゴムのラテックスを調製し、必要に応じて水素化することにより製造することが好ましい。乳化重合に際しては、乳化剤、重合開始剤、分子量調整剤等の通常用いられる重合副資材を使用することができる。
【0038】
乳化剤としては、特に限定されないが、たとえば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンソルビタンアルキルエステル等の非イオン性乳化剤;ミリスチン酸、パルミチン酸、オレイン酸およびリノレン酸等の脂肪酸の塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩、高級アルコール硫酸エステル塩、アルキルスルホコハク酸塩等のアニオン性乳化剤;α,β−不飽和カルボン酸のスルホエステル、α,β−不飽和カルボン酸のサルフェートエステル、スルホアルキルアリールエーテル等の共重合性乳化剤;などが挙げられる。乳化剤の使用量は、全単量体100重量部に対して、好ましくは0.1〜10重量部である。
【0039】
重合開始剤としては、ラジカル開始剤であれば特に限定されないが、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム、過リン酸カリウム、過酸化水素等の無機過酸化物;t−ブチルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、p−メンタンハイドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、イソブチリルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ジベンゾイルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシイソブチレート等の有機過酸化物;アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル、アゾビスイソ酪酸メチル等のアゾ化合物;等を挙げることができる。これらの重合開始剤は、単独でまたは2種類以上を組み合わせて使用することができる。重合開始剤としては、無機または有機の過酸化物が好ましい。重合開始剤として過酸化物を用いる場合には、重亜硫酸ナトリウム、硫酸第一鉄等の還元剤と組み合わせて、レドックス系重合開始剤として使用することもできる。重合開始剤の使用量は、全単量体100重量部に対して、好ましくは0.01〜2重量部である。
【0040】
分子量調整剤としては、特に限定されないが、t−ドデシルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、オクチルメルカプタン等のメルカプタン類;四塩化炭素、塩化メチレン、臭化メチレン等のハロゲン化炭化水素;α−メチルスチレンダイマー;テトラエチルチウラムダイサルファイド、ジペンタメチレンチウラムダイサルファイド、ジイソプロピルキサントゲンダイサルファイド等の含硫黄化合物等が挙げられる。これらは単独で、または2種類以上を組み合わせて使用することができる。なかでも、メルカプタン類が好ましく、t−ドデシルメルカプタンがより好ましい。分子量調整剤の使用量は、全単量体100重量部に対して、好ましくは0.1〜0.8重量部である。
【0041】
乳化重合の媒体には、通常、水が使用される。水の量は、全単量体100重量部に対して、好ましくは80〜500重量部である。
【0042】
乳化重合に際しては、さらに、必要に応じて安定剤、分散剤、pH調整剤、脱酸素剤、粒子径調整剤等の重合副資材を用いることができる。これらを用いる場合においては、その種類、使用量とも特に限定されない。
【0043】
なお、共重合して得られた共重合体について、ヨウ素価を所望の水準とするために、必要に応じて、共重合体の水素化(水素添加反応)を行ってもよい。この場合における、水素化の方法は特に限定されず、公知の方法を採用すればよい。
【0044】
ポリアミン系架橋剤(b)
本発明の架橋性ニトリルゴム組成物は、上述したニトリルゴム(a)に加えて、ポリアミン系架橋剤(b)を含有する。上述したニトリルゴム(a)に、ポリアミン系架橋剤(b)を組み合わせて用いることで、得られるゴム架橋物を、引張強度および伸びなどの機械的特性を良好なものとしながら、耐熱老化性、耐寒性および耐圧縮永久歪み性に優れたものとすることができる。
【0045】
ポリアミン系架橋剤(b)としては、2つ以上のアミノ基を有する化合物、または、架橋時に2つ以上のアミノ基を有する化合物の形態になるもの、であれば特に限定されないが、脂肪族炭化水素や芳香族炭化水素の複数の水素原子が、アミノ基またはヒドラジド構造(−CONHNH
2で表される構造、COはカルボニル基を表す。)で置換された化合物および架橋時にその化合物の形態になるものが好ましい。
【0046】
ポリアミン系架橋剤(b)の具体例としては、ヘキサメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンカルバメート、N,N−ジシンナミリデン−1,6−ヘキサンジアミン、テトラメチレンペンタミン、ヘキサメチレンジアミンシンナムアルデヒド付加物などの脂肪族多価アミン類;4,4−メチレンジアニリン、m−フェニレンジアミン、4,4−ジアミノジフェニルエーテル、3,4−ジアミノジフェニルエーテル、4,4−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ジアニリン、4,4−(p−フェニレンジイソプロピリデン)ジアニリン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、4,4−ジアミノベンズアニリド、4,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、m−キシリレンジアミン、p−キシリレンジアミン、1,3,5−ベンゼントリアミンなどの芳香族多価アミン類;イソフタル酸ジヒドラジド、テレフタル酸ジヒドラジド、フタル酸ジヒドラジド、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジヒドラジド、ナフタレン酸ジヒドラジド、シュウ酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、グルタミン酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、ピメリン酸ジヒドラジド、スベリン酸ジヒドラジド、アゼライン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、ブラッシル酸ジヒドラジド、ドデカン二酸ジヒドラジド、アセトンジカルボン酸ジヒドラジド、フマル酸ジヒドラジド、マレイン酸ジヒドラジド、イタコン酸ジヒドラジド、トリメリット酸ジヒドラジド、1,3,5−ベンゼントリカルボン酸ジヒドラジド、アコニット酸ジヒドラジド、ピロメリット酸ジヒドラジドなどの多価ヒドラジド類;が挙げられる。これらの中でも、本発明の効果をより一層顕著なものとすることができるという点より、脂肪族多価アミン類および芳香族多価アミン類が好ましく、ヘキサメチレンジアミンカルバメートおよび2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパンがより好ましく、ヘキサメチレンジアミンカルバメートが特に好ましい。
【0047】
本発明の架橋性ニトリルゴム組成物中における、ポリアミン系架橋剤(b)の含有量は特に限定されないが、ニトリルゴム(a)100重量部に対して、好ましくは0.1〜20重量部であり、好ましくは0.2〜15重量部、より好ましくは0.5〜10重量部である。ポリアミン系架橋剤(b)の含有量が少なすぎると、架橋が不十分となり、得られるゴム架橋物の機械的特性が悪化してしまう。一方、多すぎても、得られるゴム架橋物の機械的特性が悪化してしまう。
【0048】
その他の配合剤
また、本発明の架橋性ニトリルゴム組成物は、上述したニトリルゴム(a)、およびポリアミン系架橋剤(b)に加えて、本発明の作用効果をより顕著なものとすることができるという点より、塩基性架橋促進剤をさらに含有していることが好ましい。
【0049】
塩基性架橋促進剤の具体例としては、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン−7(以下「DBU」と略す場合がある)、1,5−ジアザビシクロ[4,3,0]ノネン−5(以下「DBN」と略す場合がある)、1−メチルイミダゾール、1−エチルイミダゾール、1−フェニルイミダゾール、1−ベンジルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、1−エチル−2−メチルイミダゾール、1−メトキシエチルイミダゾール、1−フェニル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−メチル−2−フェニルイミダゾール、1−メチル−2−ベンジルイミダゾール、1,4−ジメチルイミダゾール、1,5−ジメチルイミダゾール、1,2,4−トリメチルイミダゾール、1,4−ジメチル−2−エチルイミダゾール、1−メチル−2−メトキシイミダゾール、1−メチル−2−エトキシイミダゾール、1−メチル−4−メトキシイミダゾール、1−メチル−2−メトキシイミダゾール、1−エトキシメチル−2−メチルイミダゾール、1−メチル−4−ニトロイミダゾール、1,2−ジメチル−5−ニトロイミダゾール、1,2−ジメチル−5−アミノイミダゾール、1−メチル−4−(2−アミノエチル)イミダゾール、1−メチルベンゾイミダゾール、1−メチル−2−ベンジルベンゾイミダゾール、1−メチル−5−ニトロベンゾイミダゾール、1−メチルイミダゾリン、1,2−ジメチルイミダゾリン、1,2,4−トリメチルイミダゾリン、1,4−ジメチル−2−エチルイミダゾリン、1−メチル−フェニルイミダゾリン、1−メチル−2−ベンジルイミダゾリン、1−メチル−2−エトキシイミダゾリン、1−メチル−2−ヘプチルイミダゾリン、1−メチル−2−ウンデシルイミダゾリン、1−メチル−2−ヘプタデシルイミダゾリン、1−メチル−2−エトキシメチルイミダゾリン、1−エトキシメチル−2−メチルイミダゾリンなどの環状アミジン構造を有する塩基性架橋促進剤;テトラメチルグアニジン、テトラエチルグアニジン、ジフェニルグアニジン、1,3−ジ−オルト−トリルグアニジン、オルトトリルビグアニドなどのグアニジン系塩基性架橋促進剤;n−ブチルアルデヒドアニリン、アセトアルデヒドアンモニアなどのアルデヒドアミン系塩基性架橋促進剤;ジシクロペンチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、ジシクロヘプチルアミンなどのジシクロアルキルアミン;N−メチルシクロペンチルアミン、N−ブチルシクロペンチルアミン、N−ヘプチルシクロペンチルアミン、N−オクチルシクロペンチルアミン、N−エチルシクロヘキシルアミン、N−ブチルシクロヘキシルアミン、N−ヘプチルシクロヘキシルアミン、N−オクチルシクロオクチルアミン、N−ヒドロキシメチルシクロペンチルアミン、N−ヒドロキシブチルシクロヘキシルアミン、N−メトキシエチルシクロペンチルアミン、N−エトキシブチルシクロヘキシルアミン、N−メトキシカルボニルブチルシクロペンチルアミン、N−メトキシカルボニルヘプチルシクロヘキシルアミン、N−アミノプロピルシクロペンチルアミン、N−アミノヘプチルシクロヘキシルアミン、ジ(2−クロロシクロペンチル)アミン、ジ(3−クロロシクロペンチル)アミンなどの二級アミン系塩基性架橋促進剤;などが挙げられる。これらのなかでも、グアニジン系塩基性架橋促進剤、二級アミン系塩基性架橋促進剤および環状アミジン構造を有する塩基性架橋促進剤が好ましく、環状アミジン構造を有する塩基性架橋促進剤がより好ましく、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン−7および1,5−ジアザビシクロ[4,3,0]ノネン−5がさらに好ましく、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン−7が特に好ましい。なお、上記環状アミジン構造を有する塩基性架橋促進剤は、有機カルボン酸やアルキルリン酸などと塩を形成していてもよい。また、上記二級アミン系塩基性架橋促進剤は、アルキレングリコールや炭素数5〜20のアルキルアルコールなどのアルコール類が混合されたものであってもよく、さらに無機酸および/または有機酸を含んでいてもよい。そして、当該二級アミン系塩基性架橋促進剤と前記無機酸および/または有機酸とが塩を形成しさらに前記アルキレングリコールと複合体を形成していてもよい。
【0050】
塩基性架橋促進剤を配合する場合における、本発明の架橋性ニトリルゴム組成物中の配合量は、ニトリルゴム(a)100重量部に対して、好ましくは0.1〜20重量部であり、より好ましくは0.2〜15重量部、さらに好ましくは0.5〜10重量部である。
【0051】
また、本発明の架橋性ニトリルゴム組成物には、上記以外に、ゴム分野において通常使用される配合剤、たとえば、カーボンブラックやシリカなどの補強剤、炭酸カルシウム、タルクやクレイなどの充填材、酸化亜鉛や酸化マグネシウムなどの金属酸化物、メタクリル酸亜鉛やアクリル酸亜鉛などのα,β−エチレン性不飽和カルボン酸金属塩、共架橋剤、架橋助剤、架橋遅延剤、老化防止剤、酸化防止剤、光安定剤、一級アミンなどのスコーチ防止剤、ジエチレングリコールなどの活性剤、シランカップリング剤、可塑剤、加工助剤、滑剤、粘着剤、潤滑剤、難燃剤、防黴剤、受酸剤、帯電防止剤、顔料、発泡剤などを配合することができる。これらの配合剤の配合量は、本発明の目的や効果を阻害しない範囲であれば特に限定されず、配合目的に応じた量を配合することができる。
【0052】
カーボンブラックとしては、たとえば、ファーネスブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、チャンネルブラック、オースチンブラック、グラファイトなどが挙げられる。これらは1種または複数種併せて用いることができる。
【0053】
シリカとしては、石英粉末、珪石粉末等の天然シリカ;無水珪酸(シリカゲル、アエロジル等)、含水珪酸等の合成シリカ;等が挙げられ、これらの中でも、合成シリカが好ましい。またこれらシリカはシランカップリング剤等で表面処理されたものであってもよい。
【0054】
シランカップリング剤としては特に限定されないが、その具体例としては、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトメチルトリメトキシラン、γ−メルカプトメチルトリエトキシラン、γ−メルカプトヘキサメチルジシラザン、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルファン、ビス(3−トリエトキシシリルプロピルジスルファンなどの硫黄を含有するシランカップリング剤;γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン等のエポキシ基含有シランカップリング剤;N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、N−フェニル−3−アミノプリピルトリメトキシシラン等のアミノ基含有シランカップリング剤;γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等の(メタ)アクリロキシ基含有シランカップリング剤;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリアセトキシシラン等のビニル基含有シランカップリング剤;3−クロロプロピルトリメトキシシラン等のクロロプロピル基含有シランカプリング剤;3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等のイソシアネート基含有シランカプリング剤;p−スチリルトリメトキシシラン等のスチリル基含有シランカップリング剤;3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン等のウレイド基含有シランカップリング剤;ジアリルジメチルシラン等のアリル基含有シランカップリング剤;テトラエトキシシラン等のアルコキシ基含有シランカップリング剤;ジフェニルジメトキシシラン等のフェニル基含有シランカップリング剤;トリフルオロプロピルトリメトキシシラン等のフロロ基含有シランカップリング剤;イソブチルトリメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン等のアルキル基含有シランカップリング剤;アセトアルコキシアルミニウムジイソポロピレートなどのアルミニウム系カップリング剤;イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、イソプロピルトリ(N−アミノエチル−アミノエチル)チタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、テトラ(2,2−ジアリルオキシメチル−1−ブチル)ビス(ジトリデジル)ホスファイトチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート、イソプロピルトリイソステアロイルチタネートなどのチタネート系カップリング剤;などが挙げられる。これらは1種または複数種併せて用いることができる。
【0055】
共架橋剤としては、特に限定されないが、ラジカル反応性の不飽和基を分子中に複数個有する低分子または高分子の化合物が好ましく、たとえば、ジビニルベンゼンやジビニルナフタレンなどの多官能ビニル化合物;トリアリルイソシアヌレート、トリメタリルイソシアヌレートなどのイソシアヌレート類;トリアリルシアヌレートなどのシアヌレート類;N,N'−m−フェニレンジマレイミドなどのマレイミド類;ジアリルフタレート、ジアリルイソフタレート、ジアリルマレエート、ジアリルフマレート、ジアリルセバケート、トリアリルホスフェートなどの多価酸のアリルエステル;ジエチレングリコールビスアリルカーボネート;エチレングリコールジアリルエーテル、トリメチロールプロパンのトリアリルエーテル、ペンタエリトリットの部分的アリルエーテルなどのアリルエーテル類;アリル化ノボラック、アリル化レゾール樹脂等のアリル変性樹脂;トリメチロールプロパントリメタクリレートやトリメチロールプロパントリアクリレートなどの、3〜5官能のメタクリレート化合物やアクリレート化合物;などが挙げられる。これらは1種または複数種併せて用いることができる。
【0056】
可塑剤としては、特に限定されないが、トリメリット酸系可塑剤、ピロメリット酸系可塑剤、エーテルエステル系可塑剤、ポリエステル系可塑剤、フタル酸系可塑剤、アジピン酸エステル系可塑剤、リン酸エステル系可塑剤、セバシン酸エステル系可塑剤、アルキルスルホン酸エステル化合物類可塑剤、エポキシ化植物油系可塑剤などを用いることができる。具体例としては、トリメリット酸トリ−2−エチルヘキシル、トリメリット酸イソノニルエステル、トリメリット酸混合直鎖アルキルエステル、ジペンタエリスリトールエステル、ピロメリット酸2−エチルヘキシルエステル、ポリエーテルエステル(分子量300〜5000程度)、アジピン酸ビス[2−(2−ブトキシエトキシ)エチル]、アジピン酸ジオクチル、アジピン酸系のポリエステル(分子量300〜5000程度)、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジイソノニル、フタル酸ジブチル、リン酸トリクレシル、セバシン酸ジブチル、アルキルスルホン酸フェニルエステル、エポキシ化大豆油、ジヘプタノエート、ジ‐2−エチルヘキサノエート、ジデカノエートなどが挙げられる。これらは1種または複数種併せて用いることができる。可塑剤を配合することで、加工性および耐寒性を高めることができる。これらのなかでも、その添加効果が大きいという観点より、トリメリット酸系可塑剤、エーテルエステル系可塑剤、アジピン酸エステル系可塑剤が好ましい。本発明の架橋性ニトリルゴム組成物中における、可塑剤の配合量は、ニトリルゴム(a)100重量部に対して、好ましくは3〜30重量部であり、より好ましくは4〜25重量部、さらに好ましくは5〜20重量部である。
【0057】
さらに、本発明の架橋性ニトリルゴム組成物には、本発明の効果が阻害されない範囲で上記ニトリルゴム(a)以外のゴムを配合してもよい。ニトリルゴム(a)以外のゴムとしては、アクリルゴム、エチレン−アクリル酸共重合体ゴム、フッ素ゴム、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム、ポリブタジエンゴム、エチレン−プロピレン共重合体ゴム、エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体ゴム、エピクロロヒドリンゴム、ウレタンゴム、クロロプレンゴム、シリコーンゴム、フルオロシリコーンゴム、クロロスルフォン化ポリエチレンゴム、天然ゴムおよびポリイソプレンゴムなどを挙げることができる。ニトリルゴム(a)以外のゴムを配合する場合における配合量は、ニトリルゴム(a)100重量部に対して、30重量部以下が好ましく、20重量部以下がより好ましく、10重量部以下が特に好ましい。
【0058】
本発明の架橋性ニトリルゴム組成物は、上記各成分を好ましくは非水系で混合することにより調製することができる。本発明の架橋性ゴム組成物を調製する方法に限定はないが、通常、ポリアミン系架橋剤(b)および熱に不安定な架橋助剤などを除いた成分を、バンバリーミキサ、インターミキサ、ニーダなどの混合機で一次混練した後、オープンロールなどに移してポリアミン系架橋剤(b)や熱に不安定な架橋助剤などを加えて二次混練することにより調製できる。なお、一次混練は、通常、10〜200℃、好ましくは30〜180℃の温度で、1分間〜1時間、好ましくは1分間〜30分間行い、二次混練は、通常、10〜90℃、好ましくは20〜60℃の温度で、1分間〜1時間、好ましくは1分間〜30分間行う。
【0059】
このようにして得られる本発明の架橋性ニトリルゴム組成物は、コンパウンドムーニー粘度(ML
1+4、100℃)が、好ましくは10〜200、より好ましくは40〜140、さらに好ましくは50〜100であり、加工性に優れるものである。
【0060】
ゴム架橋物
本発明のゴム架橋物は、上述した本発明の架橋性ニトリルゴム組成物を架橋してなるものである。
本発明のゴム架橋物は、本発明の架橋性ニトリルゴム組成物を用い、所望の形状に対応した成形機、たとえば、押出機、射出成形機、圧縮機、ロールなどにより成形を行い、加熱することにより架橋反応を行い、架橋物として形状を固定化することにより製造することができる。この場合においては、予め成形した後に架橋しても、成形と同時に架橋を行ってもよい。成形温度は、通常、10〜200℃、好ましくは25〜120℃である。架橋温度は、通常、100〜200℃、好ましくは130〜190℃であり、架橋時間は、通常、1分〜24時間、好ましくは2分〜1時間である。
【0061】
また、架橋物の形状、大きさなどによっては、表面が架橋していても内部まで十分に架橋していない場合があるので、さらに加熱して二次架橋を行ってもよい。
加熱方法としては、プレス加熱、スチーム加熱、オーブン加熱、熱風加熱などのゴムの架橋に用いられる一般的な方法を適宜選択すればよい。
【0062】
このようにして得られる本発明のゴム架橋物は、上述した本発明の架橋性ニトリルゴム組成物を架橋して得られるものであり、引張強度および伸びなどの機械的特性が良好であり、かつ、耐熱老化性、耐寒性および耐圧縮永久歪み性に優れるものである。
このため、本発明のゴム架橋物は、このような特性を活かし、O−リング、パッキン、ダイアフラム、オイルシール、シャフトシール、ベアリングシール、ウェルヘッドシール、ショックアブソーバシール、空気圧機器用シール、エアコンディショナの冷却装置や空調装置の冷凍機用コンプレッサに使用されるフロン若しくはフルオロ炭化水素または二酸化炭素の密封用シール、精密洗浄の洗浄媒体に使用される超臨界二酸化炭素または亜臨界二酸化炭素の密封用シール、転動装置(転がり軸受、自動車用ハブユニット、自動車用ウォーターポンプ、リニアガイド装置およびボールねじ等)用のシール、バルブおよびバルブシート、BOP(Blow Out Preventar)、プラターなどの各種シール材;インテークマニホールドとシリンダヘッドとの連接部に装着されるインテークマニホールドガスケット、シリンダブロックとシリンダヘッドとの連接部に装着されるシリンダヘッドガスケット、ロッカーカバーとシリンダヘッドとの連接部に装着されるロッカーカバーガスケット、オイルパンとシリンダブロックあるいはトランスミッションケースとの連接部に装着されるオイルパンガスケット、正極、電解質板および負極を備えた単位セルを挟み込む一対のハウジング間に装着される燃料電池セパレーター用ガスケット、ハードディスクドライブのトップカバー用ガスケットなどの各種ガスケット;印刷用ロール、製鉄用ロール、製紙用ロール、工業用ロール、事務機用ロールなどの各種ロール;平ベルト(フィルムコア平ベルト、コード平ベルト、積層式平ベルト、単体式平ベルト等)、Vベルト(ラップドVベルト、ローエッジVベルト等)、Vリブドベルト(シングルVリブドベルト、ダブルVリブドベルト、ラップドVリブドベルト、背面ゴムVリブドベルト、上コグVリブドベルト等)、CVT用ベルト、タイミングベルト、歯付ベルト、コンベアーベルト、などの各種ベルト;燃料ホース、ターボエアーホース、オイルホース、ラジェターホース、ヒーターホース、ウォーターホース、バキュームブレーキホース、コントロールホース、エアコンホース、ブレーキホース、パワーステアリングホース、エアーホース、マリンホース、ライザー、フローラインなどの各種ホース;CVJブーツ、プロペラシャフトブーツ、等速ジョイントブーツ、ラックアンドピニオンブーツなどの各種ブーツ;クッション材、ダイナミックダンパ、ゴムカップリング、空気バネ、防振材、クラッチフェーシング材などの減衰材ゴム部品;ダストカバー、自動車内装部材、摩擦材、タイヤ、被覆ケーブル、靴底、電磁波シールド、フレキシブルプリント基板用接着剤等の接着剤、燃料電池セパレーターの他、エレクトロニクス分野など幅広い用途に使用することができる。
【0063】
特に、本発明のゴム架橋物は、良好な機械的強度、および優れた耐圧縮永久歪み性に加えて、TR10(ゴム架橋物を凍結させた後、昇温により試験片の長さが10%収縮(回復)する時の温度)が−38℃未満、好ましくは−40℃以下と耐寒性に優れ、しかも、熱老化させた後においても優れた耐寒性を実現でき、そのため、耐熱老化性にも優れるものであり、そのため、広範な温度範囲において使用される(たとえば、150℃以上の高温環境から、−38℃以下の低温環境において使用される)材料に好適に用いることができる。具体的には、本発明のゴム架橋物は、シール材、ベルト、ホースまたはガスケットとして好適に用いることができ、ショックアブソーバシール用途として特に好適に用いることができる。
【実施例】
【0064】
以下に、実施例および比較例を挙げて、本発明についてより具体的に説明するが、本発明はこの実施例に限られるものではない。以下において、特記しない限り、「部」は重量基準である。物性および特性の試験または評価方法は以下のとおりである。
【0065】
ゴム組成
高飽和ニトリルゴムを構成する各単量体単位の含有割合は、以下の方法により測定した。
すなわち、マレイン酸モノn−ブチル単位の含有割合は、2mm角の高飽和ニトリルゴム0.2gに、2−ブタノン100mLを加えて16時間攪拌した後、エタノール20mLおよび水10mLを加え、攪拌しながら水酸化カリウムの0.02N含水エタノール溶液を用いて、室温でチモールフタレインを指示薬とする滴定により、高飽和ニトリルゴム100gに対するカルボキシル基のモル数を求め、求めたモル数をマレイン酸モノn−ブチル単位の量に換算することにより算出した。
1,3−ブタジエン単位および飽和化ブタジエン単位の含有割合は、高飽和ニトリルゴムを用いて、水素添加反応前と水素添加反応後のヨウ素価(JIS K 6235による)を測定することにより算出した。
アクリロニトリル単位の含有割合は、JIS K6383に従い、ケルダール法により、高飽和ニトリルゴム中の窒素含量を測定することにより算出した。
アクリル酸n−ブチル単位およびアクリル酸2−メトキシエチル単位の含有割合は、上記で求めたマレイン酸モノn−ブチル単位、1,3−ブタジエン単位、飽和化ブタジエン単位、および、アクリロニトリル単位の含有割合から、計算により求めた。
【0066】
ヨウ素価
高飽和ニトリルゴムのヨウ素価は、JIS K 6235に準じて測定した。
【0067】
ムーニー粘度(ポリマー・ムーニー)
高飽和ニトリルゴムのムーニー粘度(ポリマー・ムーニー)は、JIS K6300に従って測定した(単位は〔ML
1+4、100℃〕)。
【0068】
常態物性(引張強度、伸び)
架橋性ニトリルゴム組成物を縦15cm、横15cm、深さ0.2cmの金型に入れ、加圧しながら170℃で20分間プレス成形してシート状架橋物を得た。これをギヤー式オーブンに移して170℃で4時間二次架橋して得られたシート状架橋物を3号形ダンベルで打ち抜いて試験片を作製した。この試験片を用いて、JIS K6251に従い、ゴム架橋物の引張強度および伸びを測定した。
【0069】
耐寒性試験
上記常態物性の評価と同様にして得たシート状架橋物を用いて、JIS K6261に従い、TR試験(低温弾性回復試験)によりゴム架橋物の耐寒性を測定した。具体的には、伸長させた試験片を凍結させ、温度を連続的に上昇させることによって伸長されていた試験片の回復性を測定し、昇温により試験片の長さが10%収縮(回復)した時の温度TR10を測定した。TR10が低いほど、耐寒性に優れると判断できる。
【0070】
耐熱老化試験(熱老化後の耐寒性)
上記常態物性の評価と同様にして得たシート状架橋物を用いて、JIS K6257「加硫ゴムの老化試験方法」の4項「空気加熱老化試験(ノーマルオーブン法)」の規定に準拠して、150℃、168時間の条件で空気加熱老化処理を行った。そして、熱老化後のシート状架橋物について、上記と同様にして、JIS K6261に従い、TR試験(低温弾性回復試験)により、熱老化後のTR10を測定した。熱老化後のTR10が低いほど、また、熱老化前のTR10との差が小さいほど、耐熱老化性に優れると判断できる。
【0071】
O−リング圧縮永久歪み
内径30mm、リング径3mmの金型を用いて、架橋性ニトリルゴム組成物を170℃で20分間、プレス圧10MPaで架橋した後、170℃で4時間二次架橋を行って、O−リング試験片を得た。O−リング試圧縮永久歪みは、この試験片を用いて25%圧縮状態で150℃にて168時間保持する条件で、JIS K6262に従って測定した。
【0072】
実施例1
金属製ボトルに、イオン交換水180部、濃度10重量%のドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液25部、アクリロニトリル8部、マレイン酸モノn−ブチル6部、アクリル酸n−ブチル47部、t−ドデシルメルカプタン(分子量調整剤)0.5部の順に仕込み、内部の気体を窒素で3回置換した後、1,3−ブタジエン39部を仕込んだ。金属製ボトルを5℃に保ち、クメンハイドロパーオキサイド(重合開始剤)0.1部を仕込み、金属製ボトルを回転させながら16時間重合反応を行った。濃度10重量%のハイドロキノン水溶液(重合停止剤)0.1部を加えて重合反応を停止した後、水温60℃のロータリーエバポレータを用いて残留単量体を除去し、ニトリルゴムのラテックスを(固形分濃度約30重量%)を得た。
【0073】
そして、上記にて得られたニトリルゴムのラテックスに含有されるゴムの乾燥重量に対するパラジウム含有量が1,000重量ppmになるように、オートクレーブ中に、ニトリルゴムのラテックスおよびパラジウム触媒(1重量%酢酸パラジウムアセトン溶液と等重量のイオン交換水を混合した溶液)を添加して、水素圧3.0MPa、温度50℃で6時間水素添加反応を行い、高飽和ニトリルゴム(a−1)のラテックスを得た。
【0074】
次いで、得られたラテックスに2倍容量のメタノールを加えて凝固した後、60℃で12時間真空乾燥することにより、高飽和ニトリルゴム(a−1)を得た。得られた高飽和ニトリルゴム(a−1)の各単量体単位の組成は、アクリロニトリル単位8重量%、マレイン酸モノn−ブチル単位5重量%、アクリル酸n−ブチル単位49重量%、1,3−ブタジエン単位(水素化された部分も含む)38重量%であり、またヨウ素価は10、カルボキシル基含有量は2.8×10
−2ephr、ポリマー・ムーニー粘度〔ML
1+4、100℃〕は48であった。
【0075】
次いで、上記にて得られた高飽和ニトリルゴム(a−1)100部に、FEFカーボンブラック(商品名「旭60」、旭カーボン社製)40部、トリメリット酸エステル(商品名「アデカサイザーC−8」、アデカ社製、可塑剤)5部、ステアリン酸(架橋促進助剤)1部、4,4’−ジ−(α,α’−ジメチルベンジル)ジフェニルアミン(商品名「ナウガード445」、Crompton社製、老化防止剤)1.5部、2−メルカプトベンズイミダゾール(商品名「ノクラックMB」、大内新興社製、老化防止剤)1.5部を添加して混合し、次いで、混合物をロールに移して1,3−ジ−o−トリルグアニジン(商品名「ノクセラーDT」、大内新興社製、架橋促進剤)2部、および、ヘキサメチレンジアミンカルバメート(商品名「Diak#1」、デュポン・ダウ・エラストマー社製、ポリアミン系架橋剤(b))2.3部を添加して混練することで、架橋性ニトリルゴム組成物を得た。
【0076】
そして、得られた架橋性ニトリルゴム組成物を用いて、常態物性(引張強度、伸び)、耐寒性試験、耐熱老化試験(熱老化後の耐寒性)、O−リング圧縮永久歪みの各試験・評価を行った。結果を表1に示す。
【0077】
実施例2
アクリロニトリルの配合量を8部、マレイン酸モノn−ブチルの配合量を6部、アクリル酸n−ブチルの配合量を38部、1,3−ブタジエンの配合量を48部に変更した以外は、実施例1と同様にして、高飽和ニトリルゴム(a−2)を得た。得られた高飽和ニトリルゴム(a−2)の各単量体単位の組成は、アクリロニトリル単位8重量%、マレイン酸モノn−ブチル単位5重量%、アクリル酸n−ブチル単位40重量%、1,3−ブタジエン単位(水素化された部分も含む)47重量%であり、またヨウ素価は10、カルボキシル基含有量は2.8×10
−2ephr、ポリマー・ムーニー粘度〔ML
1+4、100℃〕は47であった。
【0078】
そして、高飽和ニトリルゴム(a−1)に代えて、上記にて得られた高飽和ニトリルゴム(a−2)を使用した以外は、実施例1と同様にして、架橋性ニトリルゴム組成物を得て、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0079】
実施例3
アクリロニトリルの配合量を8部、マレイン酸モノn−ブチルの配合量を6部、アクリル酸n−ブチルの配合量を62部、1,3−ブタジエンの配合量を24部に変更した以外は、実施例1と同様にして、高飽和ニトリルゴム(a−3)を得た。得られた高飽和ニトリルゴム(a−3)の各単量体単位の組成は、アクリロニトリル単位8重量%、マレイン酸モノn−ブチル単位5重量%、アクリル酸n−ブチル単位65重量%、1,3−ブタジエン単位(水素化された部分も含む)22重量%であり、またヨウ素価は10、カルボキシル基含有量は2.8×10
−2ephr、ポリマー・ムーニー粘度〔ML
1+4、100℃〕は42であった。
【0080】
そして、高飽和ニトリルゴム(a−1)に代えて、上記にて得られた高飽和ニトリルゴム(a−3)を使用した以外は、実施例1と同様にして、架橋性ニトリルゴム組成物を得て、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0081】
実施例4
アクリロニトリルの配合量を8部、マレイン酸モノn−ブチルの配合量を4部、アクリル酸n−ブチルの配合量を53部、1,3−ブタジエンの配合量を35部に変更した以外は、実施例1と同様にして、高飽和ニトリルゴム(a−4)を得た。得られた高飽和ニトリルゴム(a−4)の各単量体単位の組成は、アクリロニトリル単位8重量%、マレイン酸モノn−ブチル単位3重量%、アクリル酸n−ブチル単位55重量%、1,3−ブタジエン単位(水素化された部分も含む)34重量%であり、またヨウ素価は10、カルボキシル基含有量は1.7×10
−2ephr、ポリマー・ムーニー粘度〔ML
1+4、100℃〕は61であった。
【0082】
そして、高飽和ニトリルゴム(a−1)に代えて、上記にて得られた高飽和ニトリルゴム(a−4)を使用した以外は、実施例1と同様にして、架橋性ニトリルゴム組成物を得て、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0083】
実施例5
アクリロニトリルの配合量を11部、マレイン酸モノn−ブチルの配合量を6部、アクリル酸n−ブチルの配合量を42部、1,3−ブタジエンの配合量を41部に変更した以外は、実施例1と同様にして、高飽和ニトリルゴム(a−5)を得た。得られた高飽和ニトリルゴム(a−5)の各単量体単位の組成は、アクリロニトリル単位11重量%、マレイン酸モノn−ブチル単位5重量%、アクリル酸n−ブチル単位44重量%、1,3−ブタジエン単位(水素化された部分も含む)40重量%であり、またヨウ素価は10、カルボキシル基含有量は2.8×10
−2ephr、ポリマー・ムーニー粘度〔ML
1+4、100℃〕は60であった。
【0084】
そして、高飽和ニトリルゴム(a−1)に代えて、上記にて得られた高飽和ニトリルゴム(a−5)を使用した以外は、実施例1と同様にして、架橋性ニトリルゴム組成物を得て、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0085】
実施例6
可塑剤として、トリメリット酸エステル5部に代えて、ポリエーテルエステル系可塑剤(商品名「アデカサイザーRS−735」、アデカ社製)5部を使用した以外は、実施例1と同様にして、架橋性ニトリルゴム組成物を得て、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0086】
実施例7
水素添加反応を行う際における、パラジウム・シリカ触媒の使用量を800重量ppmとし、水素圧3.0MPaとした以外には、実施例1と同様にして、高飽和ニトリルゴム(a−6)を得た。得られた高飽和ニトリルゴム(a−6)の各単量体単位の組成は、アクリロニトリル単位8重量%、マレイン酸モノn−ブチル単位5重量%、アクリル酸n−ブチル単位49重量%、1,3−ブタジエン単位(水素化された部分も含む)38重量%であり、またヨウ素価は50、カルボキシル基含有量は2.8×10
−2ephr、ポリマー・ムーニー粘度〔ML
1+4、100℃〕は43であった。
【0087】
そして、高飽和ニトリルゴム(a−1)に代えて、上記にて得られた高飽和ニトリルゴム(a−6)を使用するとともに、可塑剤として、トリメリット酸エステル5部に代えて、ポリエーテルエステル系可塑剤(商品名「アデカサイザーRS−735」、アデカ社製)5部を使用した以外は、実施例1と同様にして、架橋性ニトリルゴム組成物を得て、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0088】
実施例8
可塑剤として、ポリエーテルエステル系可塑剤5部に代えて、アジピン酸エステル系可塑剤(商品名「アデカサイザーRS−107」、アデカ社製、アジピン酸ビス[2−(2−ブトキシエトキシ)エチル])5部を使用した以外は、実施例7と同様にして、架橋性ニトリルゴム組成物を得て、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0089】
実施例9
FEFカーボンブラックの配合量を40部から70部に変更した以外は、実施例8と同様にして、架橋性ニトリルゴム組成物を得て、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0090】
実施例10
アクリル酸n−ブチル47部の代わりにアクリル酸2−メトキシエチル51部を使用するとともに、アクリロニトリルの配合量を8部、マレイン酸モノn−ブチルの配合量を6部、1,3−ブタジエンの配合量を35部に変更した以外は、実施例1と同様にして、高飽和ニトリルゴム(a−7)を得た。得られた高飽和ニトリルゴム(a−7)の各単量体単位の組成は、アクリロニトリル単位8重量%、マレイン酸モノn−ブチル単位5重量%、アクリル酸2−メトキシエチル単位53重量%、1,3−ブタジエン単位(水素化された部分も含む)34重量%であり、またヨウ素価は10、カルボキシル基含有量は2.8×10
−2ephr、ポリマー・ムーニー粘度〔ML
1+4、100℃〕は55であった。
【0091】
そして、高飽和ニトリルゴム(a−1)に代えて、上記にて得られた高飽和ニトリルゴム(a−7)を使用した以外は、実施例1と同様にして、架橋性ニトリルゴム組成物を得て、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0092】
実施例11
水素添加反応を行う際における、パラジウム・シリカ触媒の使用量を700重量ppmとし、水素圧3.0MPaとした以外には、実施例10と同様にして、高飽和ニトリルゴム(a−8)を得た。得られた高飽和ニトリルゴム(a−8)の各単量体単位の組成は、アクリロニトリル単位8重量%、マレイン酸モノn−ブチル単位5重量%、アクリル酸2−メトキシエチル単位53重量%、1,3−ブタジエン単位(水素化された部分も含む)34重量%であり、またヨウ素価は60、カルボキシル基含有量は2.8×10
−2ephr、ポリマー・ムーニー粘度〔ML
1+4、100℃〕は48であった。
【0093】
そして、高飽和ニトリルゴム(a−7)に代えて、上記にて得られた高飽和ニトリルゴム(a−8)を使用した以外は、実施例10と同様にして、架橋性ニトリルゴム組成物を得て、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0094】
実施例12
アクリル酸n−ブチル47部の代わりにアクリル酸2−メトキシエチル38部を使用するとともに、アクリロニトリルの配合量を11部、マレイン酸モノn−ブチルの配合量を6部、1,3−ブタジエンの配合量を45部に変更した以外は、実施例1と同様にして、高飽和ニトリルゴム(a−9)を得た。得られた高飽和ニトリルゴム(a−9)の各単量体単位の組成は、アクリロニトリル単位11重量%、マレイン酸モノn−ブチル単位5重量%、アクリル酸2−メトキシエチル単位40重量%、1,3−ブタジエン単位(水素化された部分も含む)44重量%であり、またヨウ素価は10、カルボキシル基含有量は2.8×10
−2ephr、ポリマー・ムーニー粘度〔ML
1+4、100℃〕は53であった。
【0095】
そして、高飽和ニトリルゴム(a−1)に代えて、上記にて得られた高飽和ニトリルゴム(a−9)を使用した以外は、実施例1と同様にして、架橋性ニトリルゴム組成物を得て、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0096】
実施例13
水素添加反応を行う際における、パラジウム・シリカ触媒の使用量を700重量ppmとし、水素圧3.0MPaとした以外には、実施例12と同様にして、高飽和ニトリルゴム(a−10)を得た。得られた高飽和ニトリルゴム(a−10)の各単量体単位の組成は、アクリロニトリル単位11重量%、マレイン酸モノn−ブチル単位5重量%、アクリル酸2−メトキシエチル単位40重量%、1,3−ブタジエン単位(水素化された部分も含む)44重量%であり、またヨウ素価は60、カルボキシル基含有量は2.8×10
−2ephr、ポリマー・ムーニー粘度〔ML
1+4、100℃〕は46であった。
【0097】
そして、高飽和ニトリルゴム(a−9)に代えて、上記にて得られた高飽和ニトリルゴム(a−10)を使用した以外は、実施例12と同様にして、架橋性ニトリルゴム組成物を得て、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0098】
比較例1
アクリロニトリルの配合量を15部、マレイン酸モノn−ブチルの配合量を6部、アクリル酸n−ブチルの配合量を39部、1,3−ブタジエンの配合量を40部に変更した以外は、実施例1と同様にして、高飽和ニトリルゴム(a’−11)を得た。得られた高飽和ニトリルゴム(a’−11)の各単量体単位の組成は、アクリロニトリル単位15重量%、マレイン酸モノn−ブチル単位5重量%、アクリル酸n−ブチル単位35重量%、1,3−ブタジエン単位(水素化された部分も含む)45重量%であり、またヨウ素価は10、カルボキシル基含有量は2.8×10
−2ephr、ポリマー・ムーニー粘度〔ML
1+4、100℃〕は20であった。
【0099】
そして、高飽和ニトリルゴム(a−1)に代えて、上記にて得られた高飽和ニトリルゴム(a’−11)を使用した以外は、実施例1と同様にして、架橋性ニトリルゴム組成物を得て、同様に評価を行った。結果を表2に示す。
【0100】
比較例2
アクリロニトリルの配合量を8部、マレイン酸モノn−ブチルの配合量を6部、アクリル酸n−ブチルの配合量を39部、1,3−ブタジエンの配合量を47部に変更した以外は、実施例1と同様にして、高飽和ニトリルゴム(a’−12)を得た。得られた高飽和ニトリルゴム(a’−12)の各単量体単位の組成は、アクリロニトリル単位8重量%、マレイン酸モノn−ブチル単位5重量%、アクリル酸n−ブチル単位35重量%、1,3−ブタジエン単位(水素化された部分も含む)52重量%であり、またヨウ素価は10、カルボキシル基含有量は2.8×10
−2ephr、ポリマー・ムーニー粘度〔ML
1+4、100℃〕は49であった。
【0101】
そして、高飽和ニトリルゴム(a−1)に代えて、上記にて得られた高飽和ニトリルゴム(a’−12)を使用した以外は、実施例1と同様にして、架橋性ニトリルゴム組成物を得て、同様に評価を行った。結果を表2に示す。
【0102】
比較例3
アクリロニトリルの配合量を8部、マレイン酸モノn−ブチルの配合量を6部、アクリル酸n−ブチルの配合量を75部、1,3−ブタジエンの配合量を11部に変更した以外は、実施例1と同様にして、高飽和ニトリルゴム(a’−13)を得た。得られた高飽和ニトリルゴム(a’−13)の各単量体単位の組成は、アクリロニトリル単位8重量%、マレイン酸モノn−ブチル単位5重量%、アクリル酸n−ブチル単位77重量%、1,3−ブタジエン単位(水素化された部分も含む)10重量%であり、またヨウ素価は10、カルボキシル基含有量は2.8×10
−2ephr、ポリマー・ムーニー粘度〔ML
1+4、100℃〕は56であった。
【0103】
そして、高飽和ニトリルゴム(a−1)に代えて、上記にて得られた高飽和ニトリルゴム(a’−13)を使用した以外は、実施例1と同様にして、架橋性ニトリルゴム組成物を得て、同様に評価を行った。結果を表2に示す。
【0104】
比較例4
アクリロニトリルの配合量を8部、マレイン酸モノn−ブチルの配合量を1部、アクリル酸n−ブチルの配合量を54部、1,3−ブタジエンの配合量を37部に変更した以外は、実施例1と同様にして、高飽和ニトリルゴム(a’−14)を得た。得られた高飽和ニトリルゴム(a’−14)の各単量体単位の組成は、アクリロニトリル単位8重量%、マレイン酸モノn−ブチル単位0.5重量%、アクリル酸n−ブチル単位56重量%、1,3−ブタジエン単位(水素化された部分も含む)35.5重量%であり、またヨウ素価は10、カルボキシル基含有量は3.0×10
−3ephr、ポリマー・ムーニー粘度〔ML
1+4、100℃〕は45であった。
【0105】
そして、高飽和ニトリルゴム(a−1)に代えて、上記にて得られた高飽和ニトリルゴム(a’−14)を使用した以外は、実施例1と同様にして、架橋性ニトリルゴム組成物を得て、同様に評価を行った。結果を表2に示す。
【0106】
比較例5
アクリロニトリルの配合量を8部、マレイン酸モノn−ブチルの配合量を17部、アクリル酸n−ブチルの配合量を47部、1,3−ブタジエンの配合量を28部に変更した以外は、実施例1と同様にして、高飽和ニトリルゴム(a’−15)を得た。得られた高飽和ニトリルゴム(a’−15)の各単量体単位の組成は、アクリロニトリル単位8重量%、マレイン酸モノn−ブチル単位15重量%、アクリル酸n−ブチル単位50重量%、1,3−ブタジエン単位(水素化された部分も含む)27重量%であり、またヨウ素価は10、カルボキシル基含有量は7.9×10
−2ephr、ポリマー・ムーニー粘度〔ML
1+4、100℃〕は52であった。
【0107】
そして、高飽和ニトリルゴム(a−1)に代えて、上記にて得られた高飽和ニトリルゴム(a’−15)を使用した以外は、実施例1と同様にして、架橋性ニトリルゴム組成物を得て、同様に評価を行った。結果を表2に示す。
【0108】
比較例6
アクリロニトリルの配合量を11部、マレイン酸モノn−ブチルの配合量を6部、アクリル酸n−ブチルの配合量を39部、1,3−ブタジエンの配合量を44部に変更した以外は、実施例1と同様にして、高飽和ニトリルゴム(a’−16)を得た。得られた高飽和ニトリルゴム(a’−16)の各単量体単位の組成は、アクリロニトリル単位11重量%、マレイン酸モノn−ブチル単位5重量%、アクリル酸n−ブチル単位35重量%、1,3−ブタジエン単位(水素化された部分も含む)49重量%であり、またヨウ素価は10、カルボキシル基含有量は2.8×10
−2ephr、ポリマー・ムーニー粘度〔ML
1+4、100℃〕は55であった。
【0109】
そして、高飽和ニトリルゴム(a−1)に代えて、上記にて得られた高飽和ニトリルゴム(a’−16)を使用した以外は、実施例1と同様にして、架橋性ニトリルゴム組成物を得て、同様に評価を行った。結果を表2に示す。
【0110】
比較例7
アクリロニトリルの配合量を8部、マレイン酸モノn−ブチルの配合量を6部、アクリル酸n−ブチルの配合量を20部、1,3−ブタジエンの配合量を66部に変更した以外は、実施例1と同様にして、高飽和ニトリルゴム(a’−17)を得た。得られた高飽和ニトリルゴム(a’−17)の各単量体単位の組成は、アクリロニトリル単位8重量%、マレイン酸モノn−ブチル単位5重量%、アクリル酸n−ブチル単位22重量%、1,3−ブタジエン単位(水素化された部分も含む)65重量%であり、またヨウ素価は10、カルボキシル基含有量は2.8×10
−2ephr、ポリマー・ムーニー粘度〔ML
1+4、100℃〕は53であった。
【0111】
そして、高飽和ニトリルゴム(a−1)に代えて、上記にて得られた高飽和ニトリルゴム(a’−17)を使用した以外は、実施例1と同様にして、架橋性ニトリルゴム組成物を得て、同様に評価を行った。結果を表2に示す。
【0112】
比較例8
アクリロニトリルの配合量を8部、マレイン酸モノn−ブチルの配合量を6部、1,3−ブタジエンの配合量を86部に変更するとともに、アクリル酸n−ブチルを配合しなかった以外は、実施例1と同様にして、高飽和ニトリルゴム(a’−18)を得た。得られた高飽和ニトリルゴム(a’−18)の各単量体単位の組成は、アクリロニトリル単位8重量%、マレイン酸モノn−ブチル単位5重量%、1,3−ブタジエン単位(水素化された部分も含む)87重量%であり、またヨウ素価は10、カルボキシル基含有量は2.8×10
−2ephr、ポリマー・ムーニー粘度〔ML
1+4、100℃〕は51であった。
【0113】
そして、高飽和ニトリルゴム(a−1)に代えて、上記にて得られた高飽和ニトリルゴム(a’−18)を使用した以外は、実施例1と同様にして、架橋性ニトリルゴム組成物を得て、同様に評価を行った。結果を表2に示す。
【0114】
比較例9
可塑剤として、トリメリット酸エステル5部に代えて、ポリエーテルエステル系可塑剤(商品名「アデカサイザーRS−735」、アデカ社製)5部を使用した以外は、比較例1と同様にして、架橋性ニトリルゴム組成物を得て、同様に評価を行った。結果を表2に示す。
【0115】
比較例10
アクリロニトリルの配合量を16部、マレイン酸モノn−ブチルの配合量を6部、アクリル酸n−ブチルの配合量を36部、1,3−ブタジエンの配合量を42部に変更した以外は、実施例1と同様にして、高飽和ニトリルゴム(a’−19)を得た。得られた高飽和ニトリルゴム(a’−19)の各単量体単位の組成は、アクリロニトリル単位16重量%、マレイン酸モノn−ブチル単位5重量%、アクリル酸n−ブチル単位39重量%、1,3−ブタジエン単位(水素化された部分も含む)40重量%であり、またヨウ素価は10、カルボキシル基含有量は2.8×10
−2ephr、ポリマー・ムーニー粘度〔ML
1+4、100℃〕は37であった。
【0116】
そして、高飽和ニトリルゴム(a−1)に代えて、上記にて得られた高飽和ニトリルゴム(a’−19)を使用した以外は、実施例1と同様にして、架橋性ニトリルゴム組成物を得て、同様に評価を行った。結果を表2に示す。
【0117】
比較例11
水素添加反応を行う際における、パラジウム・シリカ触媒の使用量を700重量ppmとし、水素圧3.0MPaとした以外には、比較例10と同様にして、高飽和ニトリルゴム(a’−20)を得た。得られた高飽和ニトリルゴム(a’−20)の各単量体単位の組成は、アクリロニトリル単位16重量%、マレイン酸モノn−ブチル単位5重量%、アクリル酸n−ブチル単位39重量%、1,3−ブタジエン単位(水素化された部分も含む)40重量%であり、またヨウ素価は60、カルボキシル基含有量は2.8×10
−2ephr、ポリマー・ムーニー粘度〔ML
1+4、100℃〕は43であった。
【0118】
そして、高飽和ニトリルゴム(a’−19)に代えて、上記にて得られた高飽和ニトリルゴム(a’−20)を使用した以外は、比較例10と同様にして、架橋性ニトリルゴム組成物を得て、同様に評価を行った。結果を表2に示す。
【0119】
比較例12
可塑剤として、トリメリット酸エステル5部に代えて、アジピン酸エステル系可塑剤(商品名「アデカサイザーRS−107」、アデカ社製、アジピン酸ビス[2−(2−ブトキシエトキシ)エチル])5部、FEFカーボンブラックを40部から70部に変更した以外は、比較例11と同様にして、架橋性ニトリルゴム組成物を得て、同様に評価を行った。結果を表2に示す。
【0120】
比較例13
FEFカーボンブラック40部に代えて、シリカ(商品名「Nipsil ER」、東ソーシリカ社製)40部を使用するとともに、3−アミノプロピルトリエトキシシラン(商品名「Z−6011」、DOW CORNING TORAY社製)0.5部をさらに配合した以外は、比較例11と同様にして、架橋性ニトリルゴム組成物を得て、同様に評価を行った。結果を表2に示す。
【0121】
比較例14
シリカ(商品名「Nipsil ER」、東ソーシリカ社製)の配合量を40部から70部に変更した以外は、比較例13と同様にして、架橋性ニトリルゴム組成物を得て、同様に評価を行った。結果を表2に示す。
【0122】
【表1】
【0123】
【表2】
【0124】
表1に示すように、ニトリルゴムとして、α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体単位0.1〜15重量%、α,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステル単量体単位1〜10重量%、α,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸エステル単量体単位40〜75重量%、ならびに、ジエン単量体単位および/またはα−オレフィン単量体単位20〜58.9重量%を含有してなるものを用い、かつ、これに、ポリアミン系架橋剤を配合してなる架橋性ニトリルゴム組成物を用いて得られたゴム架橋物は、引張強度および伸びが良好であり、TR10、および熱老化後のTR10がいずれも−38℃以下であり、耐寒性および耐熱老化性に優れるものであり、また、O−リング圧縮永久歪みも低く抑えられたものであった(実施例1〜13)。このことから、本発明の架橋性ニトリルゴム組成物を用いて得られるゴム架橋物は、広範な温度範囲において良好に用いることができ、このような広範な温度範囲における使用が求められるゴム部品に特に適したものであるといえる。
【0125】
一方、ニトリルゴムとして、各単量体単位のいずれかが、本発明所定の範囲から外れたものを用いた場合には、耐寒性に劣る結果となったり(比較例3,5,6,8,10〜14)、耐熱老化性に劣る結果となったり(比較例1〜3,比較例5〜14)、あるいは、耐寒性および耐熱老化性が良好であっても、O−リング圧縮永久歪み性に劣る結果となった(比較例4)。