(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6601475
(24)【登録日】2019年10月18日
(45)【発行日】2019年11月6日
(54)【発明の名称】沈殿槽
(51)【国際特許分類】
B01D 21/02 20060101AFI20191028BHJP
B01D 21/06 20060101ALI20191028BHJP
B01D 21/08 20060101ALI20191028BHJP
B01D 21/24 20060101ALI20191028BHJP
【FI】
B01D21/02 S
B01D21/06 A
B01D21/08 C
B01D21/24 G
【請求項の数】6
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-217427(P2017-217427)
(22)【出願日】2017年11月10日
(65)【公開番号】特開2019-89000(P2019-89000A)
(43)【公開日】2019年6月13日
【審査請求日】2018年9月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001063
【氏名又は名称】栗田工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086911
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100144967
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 隆之
(72)【発明者】
【氏名】清水 哲
(72)【発明者】
【氏名】岩▲崎▼ 守
【審査官】
田中 雅之
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭50−059668(JP,U)
【文献】
実開昭53−000672(JP,U)
【文献】
米国特許出願公開第2002/0121484(US,A1)
【文献】
特開2005−066533(JP,A)
【文献】
特開2017−013016(JP,A)
【文献】
実開昭53−010481(JP,U)
【文献】
特開平11−028312(JP,A)
【文献】
特開昭53−101772(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 21/00−21/34
CO2F 1/52− 1/56
CO2F 11/00−11/20
CO2F 1/40
B01D 36/00−37/08
JSTPlus/JST7580/JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
槽体の中央部の、上端が開放したセンターウェルから該槽体内の下部に供給された被処理水が、該槽体内を上昇し、該槽体上部の溢流部から清澄水となって流出する沈殿槽において、
該センターウェルの上部外周を囲む環状水路を形成するセンターウェル上部部材が設けられており、
該センターウェル上部部材は、該センターウェルから拡開方向に延在する底面と、該底面の外周縁から起立する周壁とを有しており、
被処理水が導入管によって前記環状水路内に、該周壁に沿う周回方向に導入され、該環状水路内で旋回流を形成して該センターウェルの上端をオーバーフローして該センターウェル内に流入する沈殿槽であって、
該導入管は、被処理水が上方から下向流で直接に該環状水路に供給されるように配置されており、
該環状水路の直径はセンターウェルの上端の外径の1.2〜2.0倍であり、
該環状水路の底面とセンターウェルの上端との高低差は5〜50cmであり、
センターウェル上端縁と前記溢流部のレベルとの高低差が0〜20cmであることを特徴とする沈殿槽。
【請求項2】
請求項1において、前記センターウェルの上端は全周にわたって均一高さであることを特徴とする沈殿槽。
【請求項3】
請求項1又は2において、前記環状水路の前記底面は水平であり、前記センターウェルの上端よりも下位に位置することを特徴とする沈殿槽。
【請求項4】
槽体の中央部のセンターウェルから該槽体内の下部に供給された被処理水が、該槽体内を上昇し、該槽体上部の溢流部から清澄水となって流出する沈殿槽において、
該センターウェルの上部外周を囲む環状水路を形成するセンターウェル上部部材が設けられており、
該センターウェル上部部材は、該センターウェルから拡開方向に延在する底面と、該底面の外周縁から起立する周壁とを有しており、
被処理水が導入部材によって前記環状水路内に、該周壁に沿う周回方向に導入され、該センターウェルの上端をオーバーフローして該センターウェル内に流入する沈殿槽であって、
前記環状水路の前記底面は、少なくとも前記センターウェル側が、外周に向かって低位となる傾斜面となっていることを特徴とする沈殿槽。
【請求項5】
請求項4において、前記傾斜面の水平面に対する角度が5〜60°であることを特徴とする沈殿槽。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項において、前記センターウェルの下端に対峙して水の流れ方向を変更するためのプレートが設けられていることを特徴とする沈殿槽。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汚泥を沈降分離するための沈殿槽に係り、特に被処理水がセンターウェルを介して沈殿槽下部に供給される沈殿槽に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、活性汚泥処理設備や凝集沈殿処理設備等では、汚泥混合液(凝集処理液)を処理水と汚泥とに分離する手段として固液分離槽(沈殿槽)を用いた沈降分離が一般的に採用されている。この沈降分離では、汚泥混合液中の濁質や微細なSSを効率的に除去して良好な処理水を得るために、沈殿槽内に汚泥ゾーン(スラッジブランケット層)を形成し、センターウェル(フィードウェル)を経て、汚泥混合液をこの汚泥ゾーンの下部から流入させて汚泥ゾーンを通過させることにより、汚泥混合液中の濁質や微細なSSを濾過分離するスラッジブランケット濾過方式が採用されている。
【0003】
センターウェル型の沈殿槽として、槽体の中央部のセンターウェルの下端に対峙して水平にプレートを設け、センターウェルからの流出水の流れ方向を放射方向に変更するよう構成することが公知である(特許文献1)。
【0004】
凝集沈殿装置において、沈殿槽での固液分離を効果的に行って高清澄な処理水を得るためには、生成させた凝集フロックを破壊させることなく沈殿槽に導入することが重要である。即ち、凝集フロックが破壊されて微細化すると、その沈降性が悪くなり、処理水側に流出して処理水の水質が悪化する。
【0005】
特許文献2には、円筒状のセンターウェル上部にセンターウェルより径の大きい円筒状の流入部を形成しておき、流入配管から流入部の周壁の接線方向に被処理水を供給することにより、流入部では周壁に沿った旋回流が形成され、そのままセンターウェルに導入されることによりセンターウェル内を旋回しながら下降する流れを形成することで、被処理水の導入時の偏流の発生を防ぎ、凝集フロックの破壊を抑制することが開示されている。
【0006】
しかし流入部のうち被処理水の導入部の近傍と、遠い場所とではセンターウェルに導入する流速が不均一になりやすいことが懸念される。局所的に流速が大きいときは局所的に凝集フロックの破壊が起こりやすくなってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−66533号公報
【特許文献2】特開2017−87090号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、被処理水をセンターウェル内に均一に導入することができる沈殿槽を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の沈殿槽は、槽体の中央部のセンターウェルから該槽体内の下部に供給された被処理水が、該槽体内を上昇し、該槽体上部の溢流部から清澄水となって流出する沈殿槽において、該センターウェルの上部外周を囲む環状水路を形成するセンターウェル上部部材が設けられており、該センターウェル上部部材は、該センターウェルから拡開方向に延在する底面と、該底面の外周縁から起立する周壁とを有しており、被処理水が導入部材によって前記環状水路内に、該周壁に沿う周回方向に導入され、該センターウェルの上端をオーバーフローして該センターウェル内に流入することを特徴とする。
【0010】
本発明の一態様では、前記センターウェルの上端は全周にわたって均一高さである。
【0011】
本発明の一態様では、前記溢流部のレベルと前記センターウェルの上端のレベルとの差が0〜20cmである。
【0012】
本発明の一態様では、前記環状水路の前記底面は水平であり、前記センターウェルの上端よりも下位に位置する。
【0013】
本発明の一態様では、前記環状水路の前記底面は、少なくとも前記センターウェル側が、外周に向かって低位となる傾斜面となっている。
【0014】
本発明の一態様では、前記傾斜面の水平面に対する角度が5〜60°である。
【0015】
本発明の一態様では、前記センターウェルの下端に対峙して水の流れ方向を変更するためのプレートが設けられている。
【発明の効果】
【0016】
本発明の沈殿槽では、環状水路に周回方向に流入した被処理水が、該環状水路内で旋回流を形成しつつ、センターウェルの上端をオーバーフローして均一にセンターウェルに流入する。そのため、環状水路やセンターウェル内で局所的に流速が大きくなって凝集フロックが破壊されることを防ぐことができる。また、センターウェルの上端の高さとセンターウェル内の水位との高低差をなるべく低くすることによって、オーバーフローした被処理水のセンターウェル内の水面への落下の衝撃による凝集フロックの破壊を防止することができるので、汚泥が効率よく分離される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図2】
図1の沈殿槽のセンターウェル付近の平面図である。
【
図3】別の実施の形態に係る沈殿槽のセンターウェル付近の縦断面図である。
【
図4】別の実施の形態に係る沈殿槽のセンターウェル付近の縦断面図である。
【
図5】別の実施の形態に係る沈殿槽のセンターウェル付近の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して実施の形態について説明する。
図1,2は第1の実施の形態に係る沈殿槽を有する凝集沈殿装置を示すものである。
【0019】
この実施の形態に係る沈殿槽にあっては、槽体1は円形であり、該槽体1の中央部にセンターウェル2が設置されている。このセンターウェル2は上下両端が開放した円筒状であり、その上端2tは槽体1内の水面位WLよりも上方に突出している。この水面位WLは、後述の溢流堰13のオーバーフローレベルである。上端2tは、全周にわたって均一高さである。
【0020】
センターウェル2の上部には、センターウェル上部部材としてセンターウェル2よりも大径のセンターウェルアッパー3が設けられている。センターウェルアッパー3は、センターウェル2の上部外周面に接続され、水平方向に拡開する平板状の底面3aと、該底面3aの外周縁から起立する周壁3bとを有する。センターウェル2の上部と、底面3aと、周壁3bとで囲まれた部分が、センターウェル2の上部外周を囲む環状水路Cとなっている。水面位WLのレベルとセンターウェル2の上端2tのレベルとの差(高低差)は好ましくは0〜20cm、より好ましくは0〜10cm特に好ましくは0〜5cmである。
【0021】
該環状水路C内に被処理水を周回方向に流入させるように、被処理水の導入部材として導入管8が設けられている。この導入管8の末端部は、
図2のように、周壁3bに沿って延在しており、被処理水は周壁3bに沿って環状水路C内に流入し、環状水路C内を旋回し、センターウェル2の上端2tをオーバーフローしてセンターウェル2内に流入する。
【0022】
環状水路Cの直径(周壁3bの内周面の直径)は、センターウェル2の上端2tの外径の1.2〜2.0倍特に1.4〜1.8倍程度が好ましい。
【0023】
この実施の形態では、底面3aは水平である。上端2tと底面3aとの高低差は好ましくは5〜50cm特に好ましくは10〜40cmである。
【0024】
このセンターウェル2の下端に対峙して、センターウェル2からの原水の流れ方向を放射方向とするためのフラットバッフルと通称されるプレート4が設けられている。この実施の形態では、プレート4は水平円板状である。プレート4はセンターウェル2の下端よりも所定距離下方に位置している。プレート4とセンターウェル2とは同軸状に配置されている。
【0025】
このプレート4の中央部には、後述のレーキシャフト10が貫通しており、プレート4は該レーキシャフト10に支持されている。ただし、プレート4は支持部材(図示略)を介してセンターウェル2に支持されてもよい。
【0026】
なお、プレート4の半径はセンターウェル2の半径以上かつ1.5倍以下であり、好ましくはセンターウェル2の半径の1〜1.3倍程度である。
【0027】
槽体1の底面は中央に向って下り勾配となっており、その中央部には、沈降した汚泥を集めて排出するためのピット6が設けられている。ピット6内の汚泥は、排泥管7を介して槽体1外に排出される。ただし、槽体1の底面は水平であってもよい。
【0028】
槽体1の底面に沿ってレーキ板11を回転させるようにレーキ装置が設けられている。このレーキ装置は、前記センターウェル2の軸心部分を通って上下方向に延設されたレーキシャフト10と、該レーキシャフト10の下部から放射方向に延設された支持アーム12と、該アーム12に取り付けられたレーキ板11と、レーキシャフト10の上端が連なった駆動装置(図示略)とを有する。
【0029】
レーキ板11は、レーキが回転したときに、槽体底面上の堆積物を槽体底面の中央側へ移動させるように各アーム12の長手方向と斜交方向に配設されている。
【0030】
槽体1の内周壁面の上部に沿って溢流部としての溢流堰13が設けられている。この溢流堰13の上端のレベルが槽体1内の水面位WLである。
【0031】
この槽体1の水深即ち槽体底面から水面位WLまでの高さは、好ましくは100〜400cmであり、より好ましくは100〜250cmである。
【0032】
プレート4の上面の槽体底面(ピット6周縁部)からの高さは20〜150cmであり、好ましくは25〜120cm特に30〜80cmである。
【0033】
センターウェル2内の下降流速(LV)は10cm/sec以下、例えば1〜6cm/sec、特に2〜4cm/sec程度が好ましい。
【0034】
センターウェル2の下端とプレート4の上面との間の原水出口の上下間隔は、この原水出口から流出する原水の水平方向の線速度が1〜10cm/sec特に2〜6cm/sec程度となるように設定するのが好適である。
【0035】
槽体1内の上昇流速(LV)は1m/hr以上、例えば1〜15m/hr、特に2〜8m/hr程度が好ましい。
【0036】
このように構成された沈殿槽において、被処理水はセンターウェルアッパー3内の環状水路Cに供給され、環状水路C内を旋回し、センターウェル2の上端をオーバーフローしてセンターウェル2内に流入し、センターウェル2内を下降し、センターウェル2の下端とプレート4との間から放射方向に流出する。その後、水は槽体1内を上昇し、溢流堰13を溢流し、清澄水流出口14より排出される。
【0037】
この実施の形態では被処理水は、センターウェル2の下端とプレート4との間の原水出口からスラッジブランケット内に緩やかに流入するようになり、効率的に汚泥が沈降分離されるようになる。
【0038】
槽体1の底面上に沈降した汚泥は、レーキによってピット6に掻き集められ、排泥管7から排出される。
【0039】
この実施の形態では、環状水路Cやセンターウェル2内で局所的に流速が大きくなって凝集フロックが破壊されることを防ぐことができる。また、センターウェル2の上端2tの高さとセンターウェル内の水位(水面位WLと実質的に等しい。)との高低差をなるべく低くすることによって、被処理水の落下の衝撃による凝集フロックの破壊を防止することができるので、汚泥が効率よく分離される。
【0040】
上記実施の形態では、センターウェルアッパー3の底面3aは水平となっているが、
図3に示す第2の実施の形態では、底面3aは外周に向って下り勾配の傾斜面となっている。また、
図4に示す第3の実施の形態では、底面3aの内周側すなわちセンターウェル2側が、外周に向って下り勾配の傾斜面となっている。この傾斜面の水平面に対する傾斜角度θは5〜60°程度が好ましい。
【0041】
図3,4では、底面3aはセンターウェル2の上端2tに連なっている。ただし、センターウェル2の上端よりも若干下位に連なってもよい。
【0042】
第2及び第3の実施の形態のその他の構成は第1の実施の形態と同一であり、同一符号は同一部分を示している。これらの実施の形態によっても、第1の実施の形態と同様の効果が得られる。
【0043】
上記実施の形態では、プレート4は水平とされているが、少なくとも中心付近が放射方向に向って15°未満の傾斜面となってもよい。ただし、少なくとも外周部は水平であることが好ましい。
【0044】
上記実施の形態では、槽体1は円筒形とされているが、角形(四角形又はそれ以上の多角形)であってもよい。また、槽体1の底面は水平であってもよい。
【0045】
上記実施の形態では、導入部材として導入管8が設けられているが、導入部材として樋状水路を設けてもよい。
図1,2では、導入管8を、その末端部がセンターウェルアッパー3の周壁3bに沿うように途中で屈曲させ、また末端部が環状水路Cの水面下に位置するように設置しているが、導入管8内の通水阻害や環状水路C内の旋回流の通水阻害を防止するために、
図5に示すようにセンターウェルアッパー3の周壁に周壁に沿って流入する通水口8’を設けることが好ましい。
【0046】
上記実施の形態では、センターウェル2は上端から下端まで等径とされているが、下部を大径としてもよい。この場合、下端ほど大径となるテーパ形としてもよい。
【符号の説明】
【0047】
1 槽体
2 センターウェル
2t 上端
3 センターウェルアッパー
3a 底面
3b 周壁
4 プレート
6 ピット
8 導入管
10 レーキシャフト
13 溢流堰