(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の近赤外線カットフィルタガラス(以下、本発明のガラスということがある)は、少なくともP、F、O、Cu、及びCeの各成分を含有するガラスであって、カチオン%でCu
2+を0.1〜15%含有し、Cu
2+とCe
4+の比(Cu
2+/Ce
4+)が3.5〜15であることを特徴とする。
【0014】
Cu
2+は、近赤外線カットための必須成分であるが、0.1%未満であるとガラスの肉厚を薄くした際にその効果が十分に得られず、15%を超えると可視域透過率が低下するため好ましくない。好ましくは0.1〜12%であり、より好ましくは0.2〜10%であり、さらに好ましくは0.4〜9%である。
【0015】
Cu
2+の含有量とCe
4+の含有量の比(Cu
2+/Ce
4+)を調整することで、好ましい可視域透過率を有する近赤外線カットフィルタガラスとなる。(Cu
2+/Ce
4+)が3.5未満では、Ce
4+が過剰となり、Ce
4+の吸収が出て波長400nm付近の透過率が低下する。また、(Cu
2+/Ce
4+)が15を超えると、Ce
4+の量が少ないため透過率向上の効果が小さくなる。好ましくは5〜14であり、より好ましくは6〜14である。
【0016】
Ce
4+は、透過率を向上するための必須成分である。Ce
4+は、Cu
2+よりも酸化還元電位が高く、イオン化傾向が低い。両元素が共存する場合、イオン化傾向が高いCu
2+が酸化されやすく、波長400nm付近の透過率を下げるCu
+の生成を抑制する効果がある。カチオン%でCe
4+を、0.01〜4%含有するのが好ましい。0.01%未満では、Ce量が少なすぎて所望の効果を得ることができない。また、4%を超えるとCe成分による紫外域の吸収が可視域にかかり、波長400nm付近の透過率が低下する。より好ましくは0.01〜3%であり、さらに好ましくは0.05〜3%であり、特に好ましくは0.08〜2.5%であり、最も好ましくは0.1〜2%である。
【0017】
本発明のガラスは、波長400nmにおける吸光係数を波長800nmにおける吸光係数で割った数字が0.00001〜0.03の範囲内が好ましい。
吸光係数とは光がある媒質に入射したとき、その媒質がどれくらいの光を吸収するのかを示す定数であり、長さの逆数の次元を持つ。ランベルト・ベールの法則に従えば、媒質をある距離通過した光の強度と入射した光の強度の比の対数(吸光度)は、通過距離と比例関係にあり、その比例係数を吸光係数と呼ぶ。つまり、吸光係数が高いとガラスを透過する光の量が少なく、吸光係数が低いとガラスを透過する光の量が多い。
【0018】
波長400nmの光は、ガラス中のCu
+の含有量と相関があり、含有量が多いほど吸光係数が高くなる。また、波長800nmの光は、ガラス中のCu
2+の含有量と相関があり、含有量が多いほど吸光係数が高くなる。そのため、近赤外線カットフィルタガラスとしては、波長400nmにおける吸光係数が低く、かつ波長800nmにおける吸光係数が高いことが好ましい。しかしながら、ガラス中のCu成分の含有量によって、吸光係数の絶対値が変化する。そのため、波長400nmにおける吸光係数を波長800nmにおける吸光係数で割った数字が0.00001〜0.03の範囲内とすることで、ガラス中のCu成分の含有量によらず、可視域と近赤外域の光の透過特性のバランスが良好な近赤外線カットフィルタガラスを得ることができる。
【0019】
波長400nmにおける吸光係数を波長800nmにおける吸光係数で割った数字が0.03を超えると、波長400nm付近の透過率が低下するため好ましくない。0.00001未満であると、Cu
+の含有量を少なくするために溶融ガラスの雰囲気を厳密に制御する必要があり、製造コストが高くなるおそれがある。波長400nmにおける吸光係数を波長800nmにおける吸光係数で割った数字は、0.00002〜0.025が好ましく、0.00003〜0.02がより好ましい。
【0020】
本発明における吸光係数の算出方法は、以下のとおりである。ガラス板の両面を鏡面研磨し、厚さtを測定する。このガラス板の分光透過率Tを測定する(例えば、日本分光株式会社製、紫外可視近赤外分光光度計V−570を用いる)。そして、吸光係数βを、T=10
−βtの関係式を用いて算出する。なお、吸光係数は、反射ロスを除くため、測定した透過率にガラスの屈折率から計算した理論透過率を掛けた数値をT
i1として計算した。
【0021】
透過率の値は、肉厚0.3mmの値となるように換算を行った。板厚の換算は、以下の式1を用いて行った。なお、T
i1は反射ロスを除いた測定サンプルの透過率、t
1は測定サンプルの肉厚、T
i2は換算値の透過率、t
2は換算する肉厚(本発明の場合0.3)を指す。
【0023】
本発明のガラスは、肉厚0.3mmに換算した分光透過率において、波長400nmの透過率が77〜92%が好ましい。このようにすることで、可視域の光の透過率の高いガラスが得られる。
肉厚0.3mmに換算した分光透過率において、波長400nmの透過率が77%未満であると、波長400nm付近の透過率が低すぎて撮像装置に用いる際、色調に影響が出るため好ましくない。また、92%を超えると、Cu
+の含有量を少なくするために溶融ガラスの雰囲気を厳密に制御する必要があり、製造コストが高くなるおそれがある。肉厚0.3mmに換算した分光透過率において、波長400nmの透過率は、78〜91.5%がより好ましく、80〜91%がさらに好ましい。
【0024】
本発明のガラスを構成する各成分の含有量(カチオン%、アニオン%表示)を上記のように限定した理由を以下に説明する。
【0025】
本明細書において、特記しない限り、カチオン成分の各含有量、合計含有量はカチオン%表示とし、アニオン成分の各含有量、合計含有量はアニオン%表示とする。
【0026】
P
5+は、ガラスを形成する主成分(ガラス形成酸化物)であり、近赤外領域のカット性を高めるための必須成分である。P
5+の含有量が30%未満ではその効果が十分得られず、50%を超えるとガラスが不安定になる、耐候性が低下するなどのため好ましくない。好ましくは30〜48%であり、より好ましくは32〜48%である。さらに好ましくは34〜48%である。
【0027】
Al
3+は、ガラスを形成する主成分(ガラス形成酸化物)であり、耐候性を高めるなどのための必須成分である。Al
3+の含有量が5%未満ではその効果が十分得られず、20%を超えるとガラスが不安定になる、近赤外領域のカット性が低下するなどのため好ましくない。好ましくは6〜18%であり、より好ましくは7〜15%である。なお、Al
3+の原料として、Al
2O
3やAl(PO
3)
3を用いることは、溶解温度の上昇や未融物の発生、及びF
−の仕込み量が減少してガラスが不安定になるため好ましくなく、AlF
3を用いることが好ましい。
【0028】
R
+(ただし、R
+は、含有されるLi
+、Na
+及びK
+のアルカリ金属イオンの合量を表す)は、ガラスの溶融温度を低くする、ガラスの液相温度を低くする、ガラスを安定化させるなどのための必須成分である。R
+が20%未満ではその効果が十分得られず、40%を超えるとガラスが不安定になるため好ましくない。好ましくは20〜38%であり、より好ましくは22〜38%である。さらに好ましくは24〜38%である。なお、R
+は、含有されるLi
+、Na
+、及びK
+の合量、つまり、Li
++Na
++K
+であることをいう。また、Li
+、Na
+、K
+の少なくともいずれか1種以上が含有される。
【0029】
Li
+は、ガラスの溶融温度を低くする、ガラスの液相温度を低くする、ガラスを安定化させるなどのための成分であり、5〜40%含有するのが好ましい。Li
+の含有量が5%未満ではその効果が十分得られず、40%を超えるとガラスが不安定になるため好ましくない。より好ましくは、8〜38%であり、さらに好ましくは、10〜35%である。
【0030】
Na
+は、ガラスの溶融温度を低くする、ガラスの液相温度を低くする、ガラスを安定化させるなどのための成分であり、5〜40%含有するのが好ましい。Na
+の含有量が5%未満ではその効果が十分得られず、40%を超えるとガラスが不安定になるため好ましくない。より好ましくは5〜35%であり、さらに好ましくは5〜30%である。
【0031】
K
+は、ガラスの溶融温度を低くする、ガラスの液相温度を低くするなどのための成分であり、0.1〜30%含有するのが好ましい。K
+の含有量が0.1%未満ではその効果が十分得られず、30%を超えるとガラスが不安定になるため好ましくない。より好ましくは0.5〜25%であり、さらに好ましくは0.5〜20%である。
【0032】
R’
2+(ただし、R’
2+は、含有されるMg
2+、Ca
2+、Sr
2+、Ba
2+、及びZn
2+のアルカリ土類金属イオンの合量を表す)は、ガラスの溶融温度を低くする、ガラスの液相温度を低くする、ガラスを安定化させる、ガラスの強度を高めるなどのための必須成分である。R’
2+が5%未満ではその効果が十分得られず、30%を超えるとガラスが不安定になる、近赤外領域のカット性が低下する、ガラスの強度が低下するなどのため好ましくない。好ましくは5〜28%であり、より好ましくは5〜25%であり、さらに好ましくは5〜20%であり、もっとも好ましくは5〜12%未満である。また、Mg
2+、Ca
2+、Sr
2+、Ba
2+、及びZn
2+は、少なくともいずれか1種以上が含有される。
【0033】
Mg
2+は、必須成分ではないものの、ガラスの溶融温度を低くする、ガラスの液相温度を低くする、ガラスを安定化させる、ガラスの強度を高めるなどのための成分であり、1〜30%の範囲で含有してもよい。Mg
2+を含有する場合、その含有量が1%未満ではその効果が十分得られず、30%を超えるとガラスが不安定になる、ガラスの溶解温度が上がるなどのため好ましくない。好ましくは1〜25%であり、より好ましくは1〜20%である。
【0034】
Ca
2+は、必須成分ではないものの、ガラスの溶融温度を低くする、ガラスの液相温度を低くする、ガラスを安定化させる、ガラスの強度を高めるなどのための成分であり、1〜30%の範囲で含有してもよい。Ca
2+を含有する場合、その含有量が1%未満ではその効果が十分得られず、30%を超えるとガラスが不安定となり失透性が悪化するため好ましくない。好ましくは1〜25%であり、より好ましくは1〜20%である。
【0035】
Sr
2+は、必須成分ではないものの、ガラスの溶融温度を低くする、ガラスの液相温度を低くする、ガラスを安定化させるなどのための成分であり、1〜30%の範囲で含有してもよい。Sr
2+を含有する場合、その含有量が1%未満ではその効果が十分得られず、30%を超えるとガラスが不安定となり失透性が悪化する、ガラスの強度が低下するなどのため好ましくない。好ましくは1〜25%であり、より好ましくは1〜20%である。
【0036】
Ba
2+は、必須成分ではないものの、ガラスの溶融温度を低くする、ガラスの液相温度を低くする、ガラスを安定化させるなどのための成分であり、1〜30%の範囲で含有してもよい。Ba
2+を含有する場合、その含有量が1%未満ではその効果が十分得られず、30%を超えるとガラスが不安定となり失透性が悪化する、ガラスの強度が低下するなどのため好ましくない。好ましくは1〜25%であり、より好ましくは1〜20%である。
【0037】
Zn
2+は、必須成分ではないものの、ガラスの溶融温度を低くする、ガラスの液相温度を低くする、ガラスの化学的耐久性を高めるなどのための成分であり、1〜30%の範囲で含有してもよい。Zn
2+を含有する場合、その含有量が1%未満ではその効果が十分得られず、30%を超えるとガラスが不安定となり失透性が悪化する、ガラスの溶解性が悪化するなどのため好ましくない。好ましくは1〜25%であり、より好ましくは1〜20%である。
【0038】
Sb
3+は、必須成分ではないものの、Cu
2+よりも酸化還元電位が高く、Ce
4+と同様の効果がある。ガラスの酸化性を高め、Cu
+イオンの濃度増加を抑制することで、可視域透過率を高める効果があるが、Sb
3+の含有量が1%を超えるとガラスの安定性が低下するため好ましくない。好ましくは0〜1%であり、より好ましくは0.01〜0.8%である。さらに好ましくは0.05〜0.5であり、もっとも好ましくは、0.1〜0.3%である。
【0039】
一般的にガラス中に不純物として混入するFe
3+は、Cu
2+よりも酸化還元電位が低いため、Cu
2+が還元されやすくなる。Fe
3+のように、Cu
2+より酸化還元電位が低い成分が共存すると、Cu
+が生成しやすくなり、透過率の低下につながるため、好ましくない。このような成分としては、Fe
3+以外に、Cr
3+、Ni
2+、Co
2+、Mo
3+、Mn
2+などがあり、ガラス中へのコンタミネイションを極力避けることが好ましい。これらの成分が含まれる場合、その含有量は、具体的には0.05%未満、好ましくは0.03%未満、より好ましくは0.02%未満とする。
【0040】
O
2−は、ガラスを安定化させる、可視域透過率を高める、強度や硬度や弾性率といった機械的特性を高める、紫外線透過率を低下させるなどのための必須成分である。O
2−の含有量が30%未満であるとその効果が十分得られず、90%を超えるとガラスが不安定となる、耐候性が低下するなどのため好ましくない。好ましくは30〜80%であり、より好ましくは30〜75%である。
【0041】
F
−は、ガラスを安定化させる、耐候性を向上させるなどのための必須成分である。F
−の含有量が10%未満であるとその効果が十分得られず、70%を超えると可視域透過率が低下する、強度や硬度や弾性率といった機械的特性が低下する、揮発性が高くなり脈理が増加するなどのおそれがあるため好ましくない。好ましくは10〜50%であり、より好ましくは15〜40%である。
【0042】
本発明のガラスは、PbO、As
2O
3、V
2O
5、LaF
3、YF
3、YbF
3、GdF
3を実質的に含有しないことが好ましい。PbOは、ガラスの粘度を下げ、製造作業性を向上させる成分である。また、As
2O
3は、幅広い温度域で清澄ガスを発生できる優れた清澄剤として作用する成分である。しかし、PbO及びAs
2O
3は、環境負荷物質であるため、できるだけ含有しないことが望ましい。V
2O
5は、可視領域に吸収をもつため、可視域透過率が高いことが要求される固体撮像素子用近赤外線カットフィルタガラスにおいては、できるだけ含有しないことが望ましい。LaF
3、YF
3、YbF
3、GdF
3は、ガラスを安定化させる成分であるものの、原料が比較的高価であり、コストアップにつながるので、できるだけ含有しないことが望ましい。ここで、実質的に含有しないとは、原料として意図して用いないことを意味しており、原料成分や製造工程から混入する不可避不純物については含有していないとみなす。
【0043】
本発明のガラスは、ガラスを形成する陽イオンをもった硝酸塩化合物や硫酸塩化合物を、酸化剤あるいは清澄剤として添加することができる。酸化剤は、ガラス中のCu
+イオンの生成を抑制することで透過率の低下を抑制する効果がある。硝酸塩化合物や硫酸塩化合物の添加量は、原料混合物に対し外割添加で0.5〜10質量%が好ましい。添加量が0.5質量%未満では透過率改善の効果がなく、10質量%を超えるとガラスの形成が困難になる。より好ましくは1〜8質量%であり、一層好ましくは3〜6質量%である。硝酸塩化合物としては、Al(NO
3)
3、LiNO
3、NaNO
3、KNO
3、Mg(NO
3)
2、Ca(NO
3)
2、Sr(NO
3)
2、Ba(NO
3)
2、Zn(NO
3)
2、Cu(NO
3)
2等がある。硫酸塩化合物としては、Al
2(SO
4)
3・16H
2O、Li
2SO
4、Na
2SO
4、K
2SO
4、MgSO
4、CaSO
4、SrSO
4、BaSO
4、ZnSO
4、CuSO
4等がある。
【0044】
なお、本発明の近赤外線カットフィルタガラスは、撮像デバイスやその搭載機器の小型化及び薄型化に対応するため、ガラスの肉厚が薄い状態であっても良好な分光特性が得られる。ガラスの肉厚としては、1mm未満が好ましく、0.8mm未満がより好ましく、0.6mm未満がさらに好ましく、0.4mm未満が最も好ましい。またガラスの肉厚の下限値は、特に限定はされないが、ガラス製造時や撮像装置に組み込む際の搬送において破損しがたい強度を考慮すると、0.05mm以上が好ましく、0.07mm以上がより好ましく、0.1mm以上であることがさらに好ましい。
【0045】
本発明のガラスは、ガラス表面に反射防止膜や赤外線カット膜、紫外線及び赤外線カット膜などの光学薄膜を設けてもよい。これらの光学薄膜は、単層膜や多層膜よりなるものであって、蒸着法やスパッタリング法などの公知の方法により形成することができる。
【0046】
本発明の近赤外線カットフィルタガラスは、次のようにして作製することができる。
まず得られるガラスが上記組成範囲になるように原料を秤量、混合する。この原料混合物を白金ルツボに収容し、電気炉内において700〜1000℃の温度で加熱溶解する。十分に撹拌・清澄した後、金型内に鋳込み、徐冷した後、切断・研磨して所定の内厚の平板状に成形する。上記製造方法において、溶解中のガラスは、950℃以下にすることが好ましい。溶解中のガラス温度が950℃を超えると、Ce
4+の共存効果以上にCuイオンの酸化還元の平衡状態がCu
+側に偏って透過率特性が悪化すること及びフッ素の揮散が促進されガラスが不安定になるためである。上記温度は、900℃以下がより好ましく、850℃以下がもっとも好ましい。また、上記温度は、低くなりすぎると、溶解中に結晶化が発生したり、溶け落ちに時間がかかるため、700℃以上が好ましく、750℃以上がより好ましい。
【実施例】
【0047】
本発明の実施例と比較例とを表1〜表2に示す。例1〜11は本発明の実施例であり、例12〜16は本発明の比較例である。
【0048】
これらガラスは、表1および表2に示す組成(カチオン%、アニオン%)となるよう原料を秤量、混合し、内容積約400ccの白金ルツボ内に入れて、800〜920℃の温度で2時間溶融、清澄、撹拌後、およそ300〜500℃に予熱した縦50mm×横50mm×高さ20mmの長方形のモールドに鋳込み後、約1℃/分で徐冷してサンプルとした。
【0049】
なお、ガラスの各成分の原料としては、下記のものを使用した。
・Al
3+としては、AlF
3、Al(PO
3)
3及び/またはAl
2O
3。
・P
5+としては、H
3PO
4及び/またはAl(PO
3)
3。
・Al
3+としては、AlF
3、Al(PO
3)
3及び/またはAl
2O
3。
・Li
+としては、LiF、LiNO
3及び/またはLiPO
3。
・Mg
2+としては、MgF
2及び/またはMgO。
・Sr
2+としては、SrF
2及び/またはSrCO
3。
・Ba
2+としては、BaF
2及び/またはBaCO
3。
・Na
+、K
+、Ca
2+、Zn
2+としては、フッ化物。
・Ce
4+としては、CeO
2。
・Cu
2+としては、CuO。
表1および表2において、R
+は、含有されるLi
+、Na
+、及びK
+のアルカリ金属イオンの合計の含有量を示し、またR
2+は、含有されるMg
2+、Ca
2+、Sr
2+、Ba
2+、及びZn
2+のアルカリ土類金属イオンの合計の含有量を示す。
【0050】
【表1】
【0051】
【表2】
【0052】
以上のようにして作製したガラスについて、Cu
2+/Ce
4+を求めるとともに、波長400nmにおける透過率、吸光係数(波長400nm、波長800nm)、耐候性について以下の方法により評価を行った。
【0053】
透過率は、紫外可視近赤外分光光度計(日本分光社製、商品名:V−570)を用いて評価した。具体的には、縦40mm×横30mmで表に記載のサンプル肉厚に両面を光学研磨したガラスサンプルを準備し、測定を行った。表1および2において、各ガラスサンプルのその肉厚における波長400nmの透過率は、「%T400」として表記されており、また肉厚0.3mmに換算した波長400nmの透過率は、「%T400 t0.3mm換算」としてされている。
【0054】
吸光係数は、前述した紫外可視近赤外分光光度計を用い、波長400nm及び波長800nmの透過率を測定し、表裏面の反射ロスを除いて算出した。この算出された値より、波長400nmにおける吸光係数を波長800nmにおける吸光係数で割った数値が求められている。
【0055】
耐候性は、恒温恒湿槽(エスペック社製、商品名:SH−221)を用いて、光学研磨したガラスサンプルを65℃、相対湿度93%の恒温恒湿槽中に500時間保持した後のガラス表面のヤケ状態を目視観察し、ヤケが認められないものを○(耐候性問題なし)とした。なお、表2の例15及び16の耐候性の欄に「−」は、試験未実施を示す。
【0056】
表1〜2より、本発明の実施例において、肉厚(t)0.3mmにおける波長400nmの透過率が高いガラスが得られた。実施例である例6と、Cu
2+含有量が類似する比較例の例15、例16を比較すると、肉厚(t)0.3mmにおける波長400nmの透過率が実施例6の方が高い。また、比較例である例12〜14は、実施例である例9〜11からCe
4+を除いたもので、Cu
2+量はほぼ同じであるにも関わらず、肉厚(t)0.3mmにおける波長400nmの透過率が例9〜11の方が高い。これは、比較例のCu
2+/Ce
4+が本発明の範囲から外れているためである。