特許第6601565号(P6601565)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6601565オルガノポリシロキサン乳化組成物及び樹脂組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6601565
(24)【登録日】2019年10月18日
(45)【発行日】2019年11月6日
(54)【発明の名称】オルガノポリシロキサン乳化組成物及び樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 83/04 20060101AFI20191028BHJP
   C08L 83/12 20060101ALI20191028BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20191028BHJP
【FI】
   C08L83/04
   C08L83/12
   C08L101/00
【請求項の数】6
【全頁数】38
(21)【出願番号】特願2018-533442(P2018-533442)
(86)(22)【出願日】2017年6月8日
(86)【国際出願番号】JP2017021344
(87)【国際公開番号】WO2018029966
(87)【国際公開日】20180215
【審査請求日】2018年9月5日
(31)【優先権主張番号】特願2016-157496(P2016-157496)
(32)【優先日】2016年8月10日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002240
【氏名又は名称】特許業務法人英明国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高田 有子
(72)【発明者】
【氏名】多和田 華子
(72)【発明者】
【氏名】生方 早央里
【審査官】 安田 周史
(56)【参考文献】
【文献】 特開平01−210028(JP,A)
【文献】 特開昭64−063031(JP,A)
【文献】 特開平10−324616(JP,A)
【文献】 特開平07−330630(JP,A)
【文献】 特開2000−234058(JP,A)
【文献】 国際公開第2016/111225(WO,A1)
【文献】 特開2002−068941(JP,A)
【文献】 特開2003−024707(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 83/04
C08L 83/12
C08L 101/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記一般式(1)で表されるポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン化合物:1〜50質量部、
【化1】
[式中、Lは下記一般式(2)
【化2】
(式中、EOはオキシエチレン基を表し、AOは炭素数3〜10の直鎖又は分岐鎖のオキシアルキレン基を表す。R1は炭素数1〜10の直鎖もしくは分岐鎖の非置換又は置換のアルキル基、水素原子、カルボキシ基、炭素数2〜10のアシル基、又はフェニル基である。r1は0〜10の整数、s1は1〜100の整数、t1は0〜150の整数で、s1+t1は15以上である。)
で表される一価の有機基であり、Rは同一もしくは異なってもよく、ヒドロキシ基、炭素数1〜20の直鎖もしくは分岐鎖の非置換又は置換のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基、又は炭素数1〜20のアルコキシ基である。aは2〜4の整数、bは0〜2の整数、cは100〜1,000の整数、dは0又は1、eは0又は1である。]
(B)下記一般式(3)で表されるポリオキシアルキレン変性オルガノシロキサン化合物:1〜50質量部、
【化3】
[式中、L1は下記一般式(4)
【化4】
(式中、EOはオキシエチレン基を表し、AOは炭素数3〜10の直鎖又は分岐鎖のオキシアルキレン基を表す。R3は炭素数1〜10の直鎖もしくは分岐鎖の非置換又は置換のアルキル基、水素原子、カルボキシ基、炭素数2〜10のアシル基、又はフェニル基である。r2は0〜10の整数、s2は1〜15の整数、t2は0〜15の整数で、s2+t2は3〜20である。)
で表される一価の有機基であり、R2は同一もしくは異なってもよく、ヒドロキシ基、炭素数1〜20の直鎖もしくは分岐鎖の非置換又は置換のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基、又は炭素数1〜20のアルコキシ基である。]
(C)界面活性剤:0〜50質量部、
(D)下記平均組成式(12)で表される25℃における粘度が1,000,000mPa・s以上であるオルガノポリシロキサン:100質量部、
4fSiO(4-f)/2 (12)
(式中、R4は同一もしくは異なってもよく、水素原子、ヒドロキシ基、炭素数1〜20の直鎖もしくは分岐鎖の非置換又はハロゲン原子、ヒドロキシ基、アミノ基もしくはアミノアルキルアミノ基置換のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、炭素数6〜20のアリール基、又は炭素数7〜20のアラルキル基である。fは1.8〜2.2の正数である。)
(E)水:0〜10,000質量部
を含有することを特徴とするオルガノポリシロキサン乳化組成物。
【請求項2】
(A)ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン化合物が、下記一般式(5)で表される一価の有機基Lを両末端に有するポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン化合物である請求項1に記載のオルガノポリシロキサン乳化組成物。
【化5】
(式中、L、Rは上記と同じである。n1は100〜1,000の整数である。)
【請求項3】
(D)オルガノポリシロキサンの25℃における粘度が5,000,000mPa・s以上である請求項1又は2に記載のオルガノポリシロキサン乳化組成物。
【請求項4】
乳化組成物中の乳化物の平均粒径が20μm以下である請求項1〜3のいずれか1項に記載のオルガノポリシロキサン乳化組成物。
【請求項5】
(D)オルガノポリシロキサンにおいて、式(12)のR4がメチル基、フェニル基又はヒドロキシ基である請求項1〜4のいずれか1項に記載のオルガノポリシロキサン乳化組成物。
【請求項6】
ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、アルキド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリテトラフルオロエチレン、アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂、アクリロニトリルスチレン樹脂、アクリル樹脂から選択される樹脂の有機溶剤もしくは水分散物に、請求項1〜5のいずれか1項に記載のオルガノポリシロキサン乳化組成物を配合してなる樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン化合物を乳化剤もしくは乳化助剤として配合したオルガノポリシロキサン乳化組成物、及びその乳化組成物を含む樹脂組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ウレタン樹脂やアクリル樹脂等の樹脂組成物は、造膜性を良好にするために有機溶剤を用いた溶剤型のものと、環境汚染等を懸念し有機溶剤を含まない水性型のものに分けられる。溶剤型の樹脂組成物は、乾燥工程で有機溶剤が揮発し、作業者の健康に悪影響を与えることが懸念されるため、多くの場合N,N’−ジメチルホルムアミド(DMF)等の沸点の高い有機溶剤を使用している。
【0003】
溶剤型及び水性型の樹脂組成物により内添処理もしくは表面処理をした人工皮革や合成皮革は、自動車のシートや家具、衣料品等の用途に使用されており、光沢、すべり性、レベリング性等が要求されている。すべり性や耐摩耗性の要求を満たすために高重合度のポリジメチルシロキサンが配合されるが、溶剤型や水性型のいずれの樹脂組成物にもポリジメチルシロキサンを配合できるようにするためには、ポリジメチルシロキサンがDMFや水のいずれにも分散できるように乳化等をする必要がある。しかし、ノニオン界面活性剤、アニオン界面活性剤又はカチオン界面活性剤で乳化したポリジメチルシロキサンの乳化組成物をDMF等の溶剤型の樹脂組成物に配合すると、均一には分散せず、乳化の状態を維持できなくなり、ポリジメチルシロキサンが析出する。また、高重合度のポリジメチルシロキサン乳化組成物をウレタン樹脂やアクリル樹脂等の樹脂組成物に配合すると、樹脂組成物にハジキや白化が生じ、樹脂組成物による人工皮革や合成皮革等の外観に問題が生じる場合がある。そこで、水にもDMF等の極性溶剤にも分散でき、ウレタン樹脂やアクリル樹脂に配合すると皮膜にハジキや白化を生じることなく、優れたすべり性や光沢を付与する高重合度のポリジメチルシロキサンの乳化組成物が求められている。
【0004】
これまでにも溶剤に対して安定な乳化組成物の開発が行われてきた。以下にアルコール等の極性溶剤を含む乳化組成物に関連する特許を示す。
【0005】
特許文献1:特許第3023250号公報には、環状シリコーンと界面活性剤と高重合度の側鎖ポリオキシアルキレン変性シリコーンとエタノールと酸化チタンを含む油中水型乳化化粧料が提案されている。短鎖型のポリオキシアルキレン基をシリコーンの側鎖に変性したポリオキシアルキレン変性シリコーンを使用しており、本発明の乳化組成物に含まれるポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン化合物とは構造が異なる。また、環状シリコーンの乳化組成物についての記載であり、高重合度のオルガノポリシロキサンの乳化を目的としたものではない。
【0006】
特許文献2:特許第3417567号公報には、側鎖ポリオキシアルキレン変性シリコーンによる油と低級アルコールのエマルジョンが提案されている。側鎖ポリオキシアルキレン変性シリコーンを乳化剤とすることで、高濃度のアルコールを含んでもエマルジョンが安定である。これは短鎖型のポリオキシアルキレン基をシリコーンの側鎖に変性したポリオキシアルキレン変性シリコーンを使用しており、本発明の乳化組成物に含まれるポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン化合物とは構造が異なる。また、ベースオイルが流動パラフィンや高級アルコール、シリコーン油等である乳化組成物が例示されており、高重合度のオルガノポリシロキサンの乳化を目的としたものではない。
【0007】
特許文献3:特許第3633820号公報には、化粧料を目的とした両末端変性ポリオキシアルキレン変性シリコーンによるポリシロキサンと撥水処理粉体とエタノールを含むエマルジョンが提案されている。本発明の乳化組成物には処理粉体を含まないため、配合成分が異なる。また、ベースオイルは環状シロキサンや6csの低粘度ポリシロキサンの乳化組成物が例示されており、高重合度のオルガノポリシロキサンの乳化を目的としたものではない。
【0008】
特許文献4:特許第5646355号公報には、化粧料を目的としたポリジメチルシロキサン、ポリエーテル変性シリコーン及び低級アルコールを含むエマルションが提案されている。ポリジメチルシロキサンの粘度が20〜10,000mm2/sであり、本発明のオルガノポリシロキサンの粘度とは異なる。
【0009】
また、人工皮革や合成皮革用のウレタン樹脂組成物にポリジメチルシロキサンを配合した樹脂組成物に関する特許を示す。
【0010】
特許文献5:特開2014−80713号公報には、ウレタン樹脂に固形のジメチルシリコーンを配合して、合成皮革の表面処理剤として使用することが提案されている。乳化していないジメチルシリコーンを使用しており、水性型の樹脂組成物には配合できないと考えられる。従って、溶剤型及び水性型の樹脂組成物に分散するものではなく、本発明の乳化組成物とは異なる。
【0011】
特許文献6:特開2007−314919号公報には、ウレタン樹脂にポリイソシアネート系架橋剤、シリコーン系化合物、及びフィラーを含有する水性樹脂組成物が提案されている。シリコーン化合物とはポリエーテル変性シリコーンであり、本発明の高重合度のオルガノポリシロキサンを乳化した乳化組成物とは異なる。
【0012】
さらに、ポリジメチルシロキサン及びポリアルキレン変性オルガノポリシロキサンを配合した塗料に関する特許を示す。
【0013】
特許文献7:特許第5186079号公報には、片末端ポリエーテル変性シリコーンとノニオン界面活性剤の混合物であり、塗工膜表面に持続的に微親水性を付与することができ、水中生物に対する防汚性能を長期間にわたって発揮することを目的とした塗料添加剤が提案されている。本発明は自動車やバッグに使用する合成皮革や人工皮革等にすべり性や耐摩耗性を与えることを目的に開発したものであり、本発明とは組成及び用途が異なる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特許第3023250号公報
【特許文献2】特許第3417567号公報
【特許文献3】特許第3633820号公報
【特許文献4】特許第5646355号公報
【特許文献5】特開2014−80713号公報
【特許文献6】特開2007−314919号公報
【特許文献7】特許第5186079号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、DMF等の有機溶剤にも水にも分散可能な高重合度のオルガノポリシロキサンを乳化したオルガノポリシロキサン乳化組成物、及び該組成物を配合してなる、自動車やバッグに使用する合成皮革や人工皮革等にハジキや白化を生じることなく、すべり性や耐摩耗性を与える表面処理剤もしくは内添処理剤として有用な樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、特定の構造のポリオキシアルキレン変性オルガノ(ポリ)シロキサン化合物を乳化剤もしくは乳化助剤として配合することで、容易に高重合度のオルガノポリシロキサンを乳化することができ、得られたオルガノポリシロキサン乳化組成物は、DMF等の極性溶媒に対し、耐溶剤性に優れ、また水にも分散することから、有機溶剤を用いた溶剤型や水性型のいずれの樹脂組成物に配合した場合でもハジキや白化を生じることなく、すべり性や耐摩耗性、光沢性を与えることができることを見出し、本発明をなすに至った。
【0017】
従って、本発明は、下記のオルガノポリシロキサン乳化組成物及び樹脂組成物を提供する。
〔1〕
(A)下記一般式(1)で表されるポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン化合物:1〜50質量部、
【化1】
[式中、Lは下記一般式(2)
【化2】
(式中、EOはオキシエチレン基を表し、AOは炭素数3〜10の直鎖又は分岐鎖のオキシアルキレン基を表す。R1は炭素数1〜10の直鎖もしくは分岐鎖の非置換又は置換のアルキル基、水素原子、カルボキシ基、炭素数2〜10のアシル基、又はフェニル基である。r1は0〜10の整数、s1は1〜100の整数、t1は0〜150の整数で、s1+t1は15以上である。)
で表される一価の有機基であり、Rは同一もしくは異なってもよく、ヒドロキシ基、炭素数1〜20の直鎖もしくは分岐鎖の非置換又は置換のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基、又は炭素数1〜20のアルコキシ基である。aは2〜4の整数、bは0〜2の整数、cは100〜1,000の整数、dは0又は1、eは0又は1である。]
(B)下記一般式(3)で表されるポリオキシアルキレン変性オルガノシロキサン化合物:1〜50質量部、
【化3】
[式中、L1は下記一般式(4)
【化4】
(式中、EOはオキシエチレン基を表し、AOは炭素数3〜10の直鎖又は分岐鎖のオキシアルキレン基を表す。R3は炭素数1〜10の直鎖もしくは分岐鎖の非置換又は置換のアルキル基、水素原子、カルボキシ基、炭素数2〜10のアシル基、又はフェニル基である。r2は0〜10の整数、s2は1〜15の整数、t2は0〜15の整数で、s2+t2は3〜20である。)
で表される一価の有機基であり、R2は同一もしくは異なってもよく、ヒドロキシ基、炭素数1〜20の直鎖もしくは分岐鎖の非置換又は置換のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基、又は炭素数1〜20のアルコキシ基である。]
(C)界面活性剤:0〜50質量部、
(D)下記平均組成式(12)で表される25℃における粘度が1,000,000mPa・s以上であるオルガノポリシロキサン:100質量部、
4fSiO(4-f)/2 (12)
(式中、R4は同一もしくは異なってもよく、水素原子、ヒドロキシ基、炭素数1〜20の直鎖もしくは分岐鎖の非置換又はハロゲン原子、ヒドロキシ基、アミノ基もしくはアミノアルキルアミノ基置換のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、炭素数6〜20のアリール基、又は炭素数7〜20のアラルキル基である。fは1.8〜2.2の正数である。)
(E)水:0〜10,000質量部
を含有することを特徴とするオルガノポリシロキサン乳化組成物。
〔2〕
(A)ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン化合物が、下記一般式(5)で表される一価の有機基Lを両末端に有するポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン化合物である〔1〕に記載のオルガノポリシロキサン乳化組成物。
【化5】
(式中、L、Rは上記と同じである。n1は100〜1,000の整数である。)
〔3〕
(D)オルガノポリシロキサンの25℃における粘度が5,000,000mPa・s以上である〔1〕又は〔2〕に記載のオルガノポリシロキサン乳化組成物。
〔4〕
乳化組成物中の乳化物の平均粒径が20μm以下である〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載のオルガノポリシロキサン乳化組成物。
〔5〕
(D)オルガノポリシロキサンにおいて、式(12)のR4がメチル基、フェニル基又はヒドロキシ基である〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載のオルガノポリシロキサン乳化組成物。
〔6〕
ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、アルキド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリテトラフルオロエチレン、アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂、アクリロニトリルスチレン樹脂、アクリル樹脂から選択される樹脂の有機溶剤もしくは水分散物に、〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載のオルガノポリシロキサン乳化組成物を配合してなる樹脂組成物。
【発明の効果】
【0018】
本発明のオルガノポリシロキサン乳化組成物は、水にもDMF等の極性溶媒にも分散することが可能である。オルガノポリシロキサン乳化組成物を、有機溶剤を用いた溶剤型もしくは水性型の樹脂組成物に配合し、合成皮革もしくは人工皮革の表面処理剤もしくは内添処理剤として使用すると、ハジキや白化を生じることなく、すべり性や光沢を付与することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を詳しく説明する。
[オルガノポリシロキサン乳化組成物]
本発明のオルガノポリシロキサン乳化組成物は、
(A)後述する一般式(1)で表されるポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン化合物:1〜50質量部、
(B)後述する一般式(3)で表されるポリオキシアルキレン変性オルガノシロキサン化合物:1〜50質量部、
(C)界面活性剤:0〜50質量部、
(D)後述する平均組成式(12)で表される25℃における粘度が1,000,000mPa・s以上であるオルガノポリシロキサン:100質量部、
(E)水:0〜10,000質量部
を含有することを特徴とする。
【0020】
[(A)ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン化合物]
(A)成分であるポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン化合物は、下記一般式(1)で表されるものである。
【化6】
[式中、Lは下記一般式(2)
【化7】
(式中、EOはオキシエチレン基を表し、AOは炭素数3〜10の直鎖又は分岐鎖のオキシアルキレン基を表す。R1は炭素数1〜10の直鎖もしくは分岐鎖の非置換又は置換のアルキル基、水素原子、カルボキシ基、炭素数2〜10のアシル基、又はフェニル基である。r1は0〜10の整数、s1は1〜100の整数、t1は0〜150の整数で、s1+t1は15以上である。)
で表される一価の有機基であり、Rは同一もしくは異なってもよく、ヒドロキシ基、炭素数1〜20の直鎖もしくは分岐鎖の非置換又は置換のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基、又は炭素数1〜20のアルコキシ基である。aは2〜4の整数、bは0〜2の整数、cは100〜1,000の整数、dは0又は1、eは0又は1である。]
【0021】
(A)成分のポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン化合物を、後述する(D)オルガノポリシロキサンの乳化助剤もしくは乳化剤とすることで、容易に高重合度のオルガノポリシロキサンの乳化ができ、乳化物の粒径を細かくすることができる。特に(D)オルガノポリシロキサンにおいて、2,000万mPa・s以上であるものは、(C)界面活性剤のみでは乳化しにくく、(A)ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン化合物を含むことで容易に乳化することができる。本発明のオルガノポリシロキサン乳化組成物は、(A)ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン化合物を含むことで、耐溶剤性や耐塩性の効果を発現する。
【0022】
上記式(1)において、Rは同一もしくは異なってもよく、ヒドロキシ基、炭素数1〜20の直鎖もしくは分岐鎖の非置換又は置換のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基、又は炭素数1〜20のアルコキシ基である。炭素数1〜20の直鎖もしくは分岐鎖の非置換又は置換のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、オクチル基等のアルキル基、クロロメチル基、クロロプロピル基、ブロモエチル基、トリフルオロプロピル基等のハロゲン置換アルキル基等が挙げられ、炭素数6〜20のアリール基としては、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等が挙げられ、炭素数7〜20のアラルキル基としては、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等が挙げられ、炭素数1〜20のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等が挙げられる。Rとして、好ましくは炭素数1〜20の直鎖もしくは分岐鎖の非置換又は置換のアルキル基、又は炭素数6〜20のアリール基であり、汎用性の観点からより好ましくはメチル基もしくはフェニル基である。
【0023】
aは2〜4の整数であり、bは0〜2の整数であり、cは100〜1,000の整数、好ましくは150〜800の整数、より好ましくは200〜600の整数であり、dは0又は1であり、eは0又は1である。
【0024】
Lは上記式(2)で表される一価の有機基である。
上記式(2)において、R1は炭素数1〜10の直鎖もしくは分岐鎖の非置換又は置換のアルキル基、水素原子、カルボキシ基、炭素数2〜10のアシル基、又はフェニル基であり、炭素数1〜10の直鎖もしくは分岐鎖の非置換又は置換のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、オクチル基等のアルキル基、クロロメチル基、クロロプロピル基、ブロモエチル基、トリフルオロプロピル基等のハロゲン置換アルキル基が挙げられ、炭素数2〜10のアシル基としては、例えば、アセチル基、オクタノイル基等が挙げられる。R1として、好ましくは炭素数1〜10の直鎖もしくは分岐鎖の非置換又は置換のアルキル基、又は水素原子であり、合成の容易性からより好ましくは水素原子である。
【0025】
EOはオキシエチレン基であり、AOは炭素数3〜10の直鎖又は分岐鎖のオキシアルキレン基である。AOとしては、オキシプロピレン基、オキシブチレン基、オキシテトラメチレン基等が例示できる。
【0026】
r1、s1、t1は、r1=0〜10の整数、s1=1〜100の整数、t1=0〜150の整数で、s1+t1≧15である。好ましくはs1=1〜80の整数、t1=0〜100の整数であり、より好ましくはs1=3〜50の整数、t1=3〜50の整数である。s1が100もしくはt1が150より大きいと(A)ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン化合物の粘度が高くなりすぎて扱いにくくなる。また、一分子中の平均構造式におけるs1+t1の合計は15以上であり、15以上250以下が好ましく、25以上180以下がより好ましい。15未満だと(A)ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン化合物を配合したオルガノポリシロキサン乳化組成物の耐溶剤性が低下し、アルコールやケトン等の極性溶媒にオルガノポリシロキサン乳化組成物を分散させた場合、オルガノポリシロキサン乳化組成物が破壊しシリコーン成分が析出する。また、25より大きいと本発明のオルガノポリシロキサン乳化組成物をウレタン樹脂やアクリル樹脂に配合した際に、皮膜の光沢が向上する。
EO、AOはブロックでもランダムでもよい。r1は上記の値を満たせばよいが、汎用性の観点からr1=1が最も好ましい。
【0027】
式(2)の一価の有機基としては、下記一般式で表されるものが挙げられるが、これらに限定されない。
【化8】
(式中、EOはエチレンオキサイド、POはプロピレンオキサイド、BOはブチレンオキサイドを表す。EO、PO、BOはランダムでもブロックでもよい。)
【0028】
(A)成分としては、上記式(1)で表されるポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン化合物の中でも、下記一般式(5)で表される一価の有機基Lを両末端に有する直鎖状のポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン化合物であることが好ましい。
【化9】
(式中、L、Rは上記と同じである。n1は100〜1,000の整数である。)
【0029】
上記式(5)中、n1は100〜1,000の整数であり、好ましくは150〜800の整数であり、より好ましくは200〜600の整数である。n1が100より小さいと(A)ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン化合物を含むオルガノポリシロキサン乳化組成物の耐溶剤性が低下し、また本発明のオルガノポリシロキサン乳化組成物を含む樹脂組成物の皮膜の光沢やすべり性が低下する。1,000より大きいと(A)ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン化合物の粘度が高くなり、取り扱いにくくなり、また、(A)ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン化合物の乳化力が低下し、本発明のオルガノポリシロキサン乳化組成物中の乳化物の平均粒径が細かくならない。
なお、2種類以上の(A)ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン化合物を混合した場合でも、平均構造式が上記に規定した範囲を満たせばよい。
【0030】
(A)成分のポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン化合物としては、下記式で表されるものが挙げられるが、これらに限定されない。
【化10】
【化11】
【化12】
【化13】
【化14】
【化15】
【化16】
(式中、Phはフェニル基である。EOはエチレンオキサイド、POはプロピレンオキサイドを表す。EO、POはランダムでもブロックでもよい。また、括弧で括られたシロキサン単位はランダムに結合されていてもよい。)
【0031】
(A)ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン化合物の分子量は、好ましくは8,500〜100,000であり、より好ましくは10,000〜90,000であり、さらに好ましくは25,000〜90,000である。分子量が8,500未満の場合、(A)ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン化合物を含むオルガノポリシロキサン乳化組成物の耐溶剤性が低下するおそれがあり、100,000より大きいと粘度が高く取り扱いが困難となる場合がある。ここで、分子量はGPC(TOSOH製 HLC8220、テトラヒドロフラン(THF)溶媒)のポリスチレン換算による重量平均分子量の値である(以下、同じ)。
【0032】
(A)ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン化合物の粘度は、好ましくは5,000mPa・s以上であり、より好ましくは10,000mPa・s以上であり、さらに好ましくは50,000mPa・s以上である。(A)ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン化合物は、上記式(5)におけるn1、式(2)におけるs1あるいはt1の値が大きい場合、グリース状もしくは固体状である。粘度が5,000mPa・s未満だと(A)ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン化合物を含むオルガノポリシロキサン乳化組成物の耐溶剤性が低下し、また本発明のオルガノポリシロキサン乳化組成物を含む樹脂組成物の皮膜の光沢が低下するおそれがある。なお、粘度はBM型もしくはBH型回転粘度計により測定した25℃における値である(以下、同じ)。
【0033】
また、(A)ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン化合物の分子内には、式(1)で示されるように、[LR2SiO1/2]単位、[R3SiO1/2]単位、[R2SiO2/2]単位だけでなく、[RSiO3/2]単位や[SiO4/2]単位を含むこともでき、[RSiO3/2]単位や[SiO4/2]単位を(A)ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン化合物の分子内に含むことで、本発明のオルガノポリシロキサン乳化組成物を含む樹脂組成物の皮膜の耐摩耗性が向上する可能性がある。
【0034】
(A)ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン化合物の製造方法は、公知の方法で行えばよい。
例えば、下記一般式(6)で表される末端ケイ素原子結合水素原子含有オルガノポリシロキサン化合物に、下記一般式(7)で表される不飽和炭化水素基含有ポリオキシアルキレン化合物をヒドロシリル化反応触媒存在下、溶媒中もしくは非溶媒中、ヒドロシリル化反応によりポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン化合物を合成する。
【0035】
<末端ケイ素原子結合水素原子含有オルガノポリシロキサン化合物>
【化17】
(式中、R、a、b、c、d、eは上記と同じである。)
【0036】
<不飽和炭化水素基含有ポリオキシアルキレン化合物>
【化18】
(式中、EO、AO、R1、r1、s1、t1は上記と同じである。)
【0037】
末端ケイ素原子結合水素原子含有オルガノポリシロキサン化合物において、2種類以上の末端ケイ素原子結合水素原子含有オルガノポリシロキサン化合物を混合した場合でも平均構造式が上記式(6)に規定した範囲を満たせばよい。
なお、式(6)の末端ケイ素原子結合水素原子含有オルガノポリシロキサン化合物の分子内には、[HR2SiO1/2]単位、[R3SiO1/2]単位、[R2SiO2/2]単位だけでなく、[RSiO3/2]単位や[SiO4/2]単位を含むことも可能であり、[RSiO3/2]単位や[SiO4/2]単位を含むことで、得られる(A)ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン化合物を含有する本発明のオルガノポリシロキサン乳化組成物を含む樹脂組成物の皮膜の耐摩耗性が向上する可能性がある。
【0038】
上記式(6)で表される末端ケイ素原子結合水素原子含有オルガノポリシロキサン化合物は、中でも、下記一般式(8)で表される両末端にケイ素原子結合水素原子を含有する直鎖状のオルガノポリシロキサン化合物であることが好ましい。
【化19】
(式中、R、n1は上記と同じである。)
【0039】
式(8)の両末端にケイ素原子結合水素原子を含有する直鎖状のオルガノポリシロキサン化合物としては、下記式で表されるものが挙げられるが、これらに限定されない。
【化20】
(式中、Phはフェニル基であり、Rfはトリフルオロプロピル基である。p、qはそれぞれ0以上の整数であり、p+qは100〜1,000であり、括弧で括られたシロキサン単位はランダムに結合されていてもよい。)
【0040】
また、不飽和炭化水素基含有ポリオキシアルキレン化合物において、2種類以上の不飽和炭化水素基含有ポリオキシアルキレン化合物を混合して使用することも可能である。2種類以上の不飽和炭化水素基含有ポリオキシアルキレン化合物を混合する際は、混合した化合物の平均構造式が上述した一般式(7)の範囲を満たしていればよい。
【0041】
式(7)の不飽和炭化水素基含有ポリオキシアルキレン化合物としては、下記式で表されるものが挙げられるが、これらに限定されない。
【化21】
(式中、EOはエチレンオキサイド、POはプロピレンオキサイド、BOはブチレンオキサイドを表す。EO、PO、BOはランダムでもブロックでもよい。)
【0042】
式(7)の不飽和炭化水素基含有ポリオキシアルキレン化合物の不飽和炭化水素基のモル数は、式(6)の末端ケイ素原子結合水素原子含有オルガノポリシロキサン化合物のケイ素原子結合水素原子のモル数の0.7当量以上2.0当量以下であることが好ましく、より好ましくは1.0当量以上2.0当量以下である。0.7当量未満であると(A)ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン化合物の親水性が低下し、乳化剤もしくは乳化助剤として機能しなくなる可能性がある。また、2.0当量より多いと(A)ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン化合物を製造した際に未反応の式(7)の不飽和炭化水素基含有ポリオキシアルキレン化合物が多く存在し、(A)ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン化合物の乳化特性等に影響を与える可能性がある。式(6)中のケイ素原子結合水素原子のモル数が、式(7)中の不飽和炭化水素基のモル数より多く、ヒドロシリル化反応後に水素原子が残存する場合は、ヘキセン、ヘプテン等のオレフィンを添加し、さらにヒドロシリル化反応させることにより、残存ケイ素原子結合水素原子を少なくすることができる。
【0043】
ヒドロシリル化反応に用いるヒドロシリル化反応触媒は、ヒドロシリル化反応を促進するための触媒であり、白金系触媒、ロジウム系触媒、パラジウム系触媒が例示され、好ましくは白金系触媒である。この白金系触媒としては、塩化白金酸、アルコール変性塩化白金酸、白金のオレフィン錯体、白金のケトン錯体、白金のビニルシロキサン錯体、四塩化白金、白金微粉末、アルミナ又はシリカの担体に固体状白金を担持させたもの、白金黒、白金のオレフィン錯体、白金のアルケニルシロキサン錯体、白金のカルボニル錯体が例示されるが、安定性や汎用性から、塩化白金酸もしくは白金のビニルシロキサン錯体が好ましい。
触媒の含有量は、有効量であれば特に限定されないが、末端ケイ素原子結合水素原子含有オルガノポリシロキサン化合物と不飽和炭化水素基含有ポリオキシアルキレン化合物との合計質量に対して触媒金属が質量で0.1〜1,000ppmの範囲内となるような量であることが好ましく、特に0.5〜100ppmの範囲内となる量であることが好ましい。
【0044】
ヒドロシリル化反応に用いる溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶剤、ヘキサン、オクタン等の炭化水素系溶剤、ジブチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)等のエーテル系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤、メチルエチルケトン(MEK)等のケトン系溶剤、エタノール、イソプロパノール、1−ブタノール等のアルコール系溶剤、塩素化炭化水素系溶剤等の有機溶剤を挙げることができる。
溶媒の含有量は、末端ケイ素原子結合水素原子含有オルガノポリシロキサン化合物と不飽和炭化水素基含有ポリオキシアルキレン化合物との合計を100質量部としたとき、0〜1,000質量部である。用いる場合は30質量部以上であることが好ましい。溶媒の含有量が少ないとヒドロシリル化反応の進行が遅くなる場合があり、一方で溶媒の含有量が多いと溶媒の廃棄物が増え環境汚染の原因となる問題がある。
【0045】
なお、アルコール系溶剤を使用する場合には、脱水素反応を防止ないし抑制するために、酢酸カリウム等のpH調整剤(特公昭62−34039号公報参照)を用いるのが好ましい。
【0046】
ヒドロシリル化反応の反応温度は、50〜150℃の範囲であることが望ましい。反応温度が50℃より低いと反応速度が低下するおそれがあり、反応温度が150℃より高い場合は不飽和炭化水素が内部転移し、ヒドロシリル化反応が進行しなくなるおそれがある。反応時間としては、2〜15時間が好ましい。
【0047】
(A)ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン化合物の製造におけるヒドロシリル化反応について詳述する。窒素雰囲気下、末端ケイ素原子結合水素原子含有オルガノポリシロキサン化合物と、不飽和炭化水素基含有ポリオキシアルキレン化合物と、イソプロピルアルコール溶媒を加熱し、内部温度を75℃とする。次いで、白金のビニルシロキサン錯体のトルエン溶液を加え、8時間攪拌することで、(A)ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン化合物を合成する。
さらに、加熱及び減圧をすることにより、イソプロピルアルコール溶媒を留去することができる。その際、120℃より温度が高いとアルキルエーテル部位が酸化するおそれがあるため、120℃以下で行うことが望ましい。
さらに、上記の方法では、ヒドロシリル化反応後に酸性物質によるアリルエーテル基の除去あるいは水素添加反応によるアルキル化によって無臭化を行ってもよい。また、得られた(A)ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン化合物に酸化防止剤としてトコフェロールやBHT(ジブチルヒドロキシトルエン)を添加してもよい。
【0048】
(A)ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン化合物は、構造によってペースト状、ゲル状、固体状となり流動性を有さない場合がある。流動性を有していない(A)ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン化合物を製造する際は、効率的にヒドロシリル化反応が進行するため、有機溶剤中で製造する。
【0049】
また、(A)ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン化合物が、流動性を有しないペースト状、ゲル状もしくは固形状だと、乳化する際に効果的に分散されず、(D)オルガノポリシロキサンの乳化ができなくなる場合がある。(A)ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン化合物が流動性を有しない場合は、(A)ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン化合物の有機溶剤溶液、もしくは(A)ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン化合物の(B)ポリオキシアルキレン変性オルガノシロキサン化合物及び/又は後述する(C−1)ノニオン界面活性剤の溶解液として使用する。
【0050】
(A)ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン化合物の有機溶剤溶液は、(A)成分を溶解する有機溶剤を用いればよく、(A)成分を製造した際の有機溶剤をそのまま用いることができる。
また、(A)ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン化合物の(B)ポリオキシアルキレン変性オルガノシロキサン化合物溶解液、(A)ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン化合物の(C−1)ノニオン界面活性剤溶解液、もしくは(A)ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン化合物の(B)ポリオキシアルキレン変性オルガノシロキサン化合物及び(C−1)ノニオン界面活性剤の溶解液は、前記(A)ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン化合物の有機溶剤溶液に、後述する(B)ポリオキシアルキレン変性オルガノシロキサン化合物及び/又は(C−1)ノニオン界面活性剤を配合し、加熱及び減圧をして、有機溶剤を取り除くことにより製造できる。
【0051】
ここで、(A)ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン化合物の(B)ポリオキシアルキレン変性オルガノシロキサン化合物及び(C−1)ノニオン界面活性剤の溶解液とする場合において、(A)ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン化合物の有機溶剤溶液に、(B)ポリオキシアルキレン変性オルガノシロキサン化合物を配合して有機溶剤を取り除いてから(C−1)ノニオン界面活性剤を配合する場合と、(A)ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン化合物の有機溶剤溶液に、(C−1)ノニオン界面活性剤を配合して有機溶剤を取り除いてから(B)ポリオキシアルキレン変性オルガノシロキサン化合物を配合する場合と、(A)ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン化合物の有機溶剤溶液に、(B)ポリオキシアルキレン変性オルガノシロキサン化合物及び(C−1)ノニオン界面活性剤を配合して有機溶剤を取り除いた場合では、(A)ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン化合物の(B)ポリオキシアルキレン変性オルガノシロキサン化合物及び(C−1)ノニオン界面活性剤の溶解液の粘度等が変わるおそれがある。
上記(A)、(B)、(C−1)成分の溶解液の粘度等が変わると、(D)成分を乳化した際の乳化物の粒径の大きさに影響を与え、また、上記(A)、(B)、(C−1)成分の溶解液を製造した際、取り扱いやすさが変わる可能性がある。この対策としては、製造する処方を決めて、常に同じ方法でつくることが挙げられ、例えば、(A)成分と(B)成分を混合して、有機溶剤を取り除き、その後(C−1)成分を配合するという製造方法を決めたなら、必ずその方法で製造すれば、同等の粘度のものを得ることができる。
【0052】
なお、(A)ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン化合物の溶液を(B)ポリオキシアルキレン変性オルガノシロキサン化合物及び/又は(C−1)ノニオン界面活性剤の溶解液とする際は、(B)ポリオキシアルキレン変性オルガノシロキサン化合物及び(C−1)ノニオン界面活性剤は留去されず有機溶剤のみが留去されるように、有機溶剤の蒸気圧より低い蒸気圧の(B)ポリオキシアルキレン変性オルガノシロキサン化合物及び(C−1)ノニオン界面活性剤を選択する必要がある。
【0053】
(A)ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン化合物の(B)ポリオキシアルキレン変性オルガノシロキサン化合物及び/又は(C−1)ノニオン界面活性剤の溶解液の製造方法は以下の通りである。(A)ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン化合物の有機溶剤溶液に、後述する(B)ポリオキシアルキレン変性オルガノシロキサン化合物及び/又は(C−1)ノニオン界面活性剤を加え、3〜50mmHgに減圧し、室温(20℃)〜120℃に加熱することにより有機溶剤を留去し、有機溶剤を(B)ポリオキシアルキレン変性オルガノシロキサン化合物及び/又は(C−1)ノニオン界面活性剤に置換する。その際の加熱温度は120℃未満が好ましい。120℃より温度が高いとアルキルエーテル部位が酸化するおそれがある。有機溶剤を留去する際に泡立ちが発生するような場合は消泡剤を添加することも可能である。
【0054】
[(B)ポリオキシアルキレン変性オルガノシロキサン化合物]
(B)成分は、下記一般式(3)で表されるポリオキシアルキレン変性オルガノシロキサン化合物である。
【化22】
[式中、L1は下記一般式(4)
【化23】
(式中、EOはオキシエチレン基を表し、AOは炭素数3〜10の直鎖又は分岐鎖のオキシアルキレン基を表す。R3は炭素数1〜10の直鎖もしくは分岐鎖の非置換又は置換のアルキル基、水素原子、カルボキシ基、炭素数2〜10のアシル基、又はフェニル基である。r2は0〜10の整数、s2は1〜15の整数、t2は0〜15の整数で、s2+t2は3〜20である。)
で表される一価の有機基であり、R2は同一もしくは異なってもよく、ヒドロキシ基、炭素数1〜20の直鎖もしくは分岐鎖の非置換又は置換のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基、又は炭素数1〜20のアルコキシ基である。]
【0055】
(B)成分のポリオキシアルキレン変性オルガノシロキサン化合物をオルガノポリシロキサン乳化組成物に配合することで、本発明のオルガノポリシロキサン乳化組成物を配合した樹脂組成物の皮膜の光沢やレベリング性が向上する。また、オルガノポリシロキサン乳化組成物を水に分散した際、希釈安定性が向上し、オルガノポリシロキサンの析出や水の表面の干渉膜等が発生しにくくなる。
【0056】
上記式(3)において、R2は同一もしくは異なってもよく、ヒドロキシ基、炭素数1〜20の直鎖もしくは分岐鎖の非置換又は置換のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基、又は炭素数1〜20のアルコキシ基である。炭素数1〜20の直鎖もしくは分岐鎖の非置換又は置換のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、オクチル基等のアルキル基、クロロメチル基、クロロプロピル基、ブロモエチル基、トリフルオロプロピル基等のハロゲン置換アルキル基等が挙げられ、炭素数6〜20のアリール基としては、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等が挙げられ、炭素数7〜20のアラルキル基としては、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等が挙げられ、炭素数1〜20のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等が挙げられる。R2として、好ましくは炭素数1〜20の直鎖もしくは分岐鎖の非置換又は置換のアルキル基、又は炭素数6〜20のアリール基であり、汎用性の観点からより好ましくはメチル基もしくはフェニル基である。
【0057】
1は上記式(4)で表される一価の有機基である。
上記式(4)において、R3は炭素数1〜10の直鎖もしくは分岐鎖の非置換又は置換のアルキル基、水素原子、カルボキシ基、炭素数2〜10のアシル基、又はフェニル基であり、炭素数1〜10の直鎖もしくは分岐鎖の非置換又は置換のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、オクチル基等のアルキル基、クロロメチル基、クロロプロピル基、ブロモエチル基、トリフルオロプロピル基等のハロゲン置換アルキル基が挙げられ、炭素数2〜10のアシル基としては、例えば、アセチル基、オクタノイル基等が挙げられる。R3として、好ましくは炭素数1〜10の直鎖もしくは分岐鎖の非置換又は置換のアルキル基、又は水素原子であり、合成の容易性からより好ましくは水素原子である。
【0058】
EOはオキシエチレン基であり、AOは炭素数3〜10の直鎖又は分岐鎖のオキシアルキレン基である。AOとしては、オキシプロピレン基、オキシブチレン基、オキシテトラメチレン基等が例示できる。
【0059】
r2、s2、t2は、r2=0〜10の整数、s2=1〜15の整数、t2=0〜15の整数で、s2+t2は3〜20である。好ましくはs2=1〜10の整数、t2=0〜10の整数であり、より好ましくはs2=3〜10の整数、t2=3〜10の整数である。s2が15より大きいもしくはt2が15より大きいと本発明のオルガノポリシロキサン乳化組成物を含む樹脂組成物のレベリング性が低下する。また、一分子中の平均構造式におけるs2+t2の合計は3〜20であり、好ましくは5〜15である。3未満だと本発明のオルガノポリシロキサン乳化組成物を配合した樹脂組成物の皮膜の光沢やレベリング性が低下する。また20より大きいと樹脂組成物の皮膜のレベリング性が低下する。
EO、AOはブロックでもランダムでもよい。r2は上記の値を満たせばよいが、汎用性の観点からr2=1が最も好ましい。
【0060】
また、上記式(3)のHLBは8以上が好ましく、より好ましくは10以上17以下である。HLBが8未満だと本発明のオルガノポリシロキサン乳化組成物を配合した樹脂組成物を水に希釈した際の安定性が低下するおそれがある。HLBの値はグリフィンの式によって算出したものである。
【0061】
(B)ポリオキシアルキレン変性オルガノシロキサン化合物の分子量は、好ましくは500〜5,000であり、より好ましくは600〜3,000であり、さらに好ましくは600〜1,000である。分子量が500未満の場合、(B)ポリオキシアルキレン変性オルガノシロキサン化合物を含むオルガノポリシロキサン乳化組成物を配合した樹脂組成物の皮膜の光沢の低下が生じるおそれがある。一方で、分子量が5,000より大きいと(B)ポリオキシアルキレン変性オルガノシロキサン化合物を含むオルガノポリシロキサン乳化組成物を配合した樹脂組成物を塗工した際にレベリング性が低下するおそれがある。
【0062】
(B)ポリオキシアルキレン変性オルガノシロキサン化合物の粘度は、好ましくは1,000mPa・s未満であり、より好ましくは200mPa・s以下であり、さらに好ましくは100mPa・s以下であり、下限は好ましくは10mPa・s以上である。粘度が1,000mPa・s以上だと一般式(3)で表されるポリオキシアルキレン変性オルガノシロキサン化合物を含むオルガノポリシロキサン乳化組成物を配合した樹脂組成物のレベリング性が低下し、ハジキが生じるおそれがある。
【0063】
(B)成分は、2種類以上のポリオキシアルキレン変性オルガノシロキサン化合物を混合してもよく、混合したものが上記一般式(3)で規定した範囲を満たせばよい。
【0064】
(B)成分のポリオキシアルキレン変性オルガノシロキサン化合物としては、以下で表されるものが挙げられるが、これらに限定されない。
【化24】
【化25】
【化26】
【化27】
【化28】
【化29】
【化30】
(式中、Phはフェニル基である。EOはエチレンオキサイド、POはプロピレンオキサイドを表す。EO、POはランダムでもブロックでもよい。)
【0065】
一般式(3)で表される(B)ポリオキシアルキレン変性オルガノシロキサン化合物は、公知の方法で製造すればよい。具体的には、以下の方法で製造することができる。
下記一般式(9)で示されるケイ素原子結合水素原子含有オルガノシロキサン化合物と、下記一般式(10)で示される不飽和炭化水素基含有ポリオキシアルキレン化合物とを、ヒドロシリル化反応触媒存在下、溶媒中もしくは非溶媒中、ヒドロシリル化反応によりポリオキシアルキレン変性オルガノシロキサン化合物を合成する。
【0066】
<ケイ素原子結合水素原子含有オルガノシロキサン化合物>
【化31】
(式中、R2は上記と同じである。)
<不飽和炭化水素基含有ポリオキシアルキレン化合物>
【化32】
(式中、EO、AO、R3、r2、s2、t2、s2+t2は上記と同じである。)
【0067】
上記ヒドロシリル化反応において、式(10)の不飽和炭化水素基含有ポリオキシアルキレン化合物の不飽和炭化水素基のモル数は、式(9)のケイ素原子結合水素原子含有オルガノシロキサン化合物のケイ素原子結合水素原子のモル数の0.7当量以上2.0当量以下であることが好ましく、より好ましくは1.0当量以上1.5当量以下である。
【0068】
また、ヒドロシリル化反応に用いるヒドロシリル化反応触媒及び溶媒は、上述した(A)ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン化合物の製造方法で例示したものと同様のものを例示することができ、それらの含有量も同様とすることができる。
【0069】
ヒドロシリル化反応の反応温度は、50〜150℃の範囲であることが望ましい。反応温度が50℃より低いと反応速度が低下するおそれがあり、反応温度が150℃より高い場合は不飽和炭化水素が内部転移し、ヒドロシリル化反応が進行しなくなるおそれがある。反応時間としては、2〜15時間が好ましい。
さらに、加熱及び減圧をすることにより、溶媒等を留去することができる。
【0070】
[(C)界面活性剤]
(C)成分である界面活性剤としては、ノニオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤が挙げられる。
【0071】
ノニオン界面活性剤は、ポリオキシエチレンアルキルエーテル等のポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステルのようなノニオン界面活性剤等を挙げることができる。これらの具体例としては、ポリオキシエチレンオクチルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンオクチルエーテル、ポリオキシエチレンノニルエーテル、ポリオキシエチレンデシルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンデシルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレントリデシルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレントリデシルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル等が挙げられる。また、官能基を有する反応性の界面活性剤を使用することも可能である。
【0072】
アニオン界面活性剤は、ラウリルスルフェート等のアルキルスルフェート、アルキルベンゼンスルホン酸及びその塩、モノアルキルポリオキシエチレンエーテル類の硫酸エステル塩、モノアルキルポリオキシエチレンエーテル類の酢酸エステル塩、アルキルナフチルスルホン酸及びその塩、アルカリ金属スルホレシネート、アルカリ金属スルホサクシネート、アルキルリン酸及びその塩、モノアルキルポリオキシエチレンエーテル類のリン酸エステル塩、脂肪酸のスルホン化グリセリルエステル、アルキル硫酸アルカリ金属塩及び硫酸エステル類等が挙げられる。これらの具体例としては、ラウリル硫酸、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸トリエタノールアミン、ラウリル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンスルホコハク酸ラウリル2ナトリウム、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸エステルナトリウム、アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム等が挙げられる。また、官能基を有する反応性の界面活性剤を使用することも可能である。
【0073】
カチオン界面活性剤は、アルキルアミン塩、第4級アンモニウム塩、スルホニウム塩、ホスホニウム塩及び酢酸塩等が挙げられる。これらの具体例としては、ステアリルアミンアセテート、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、セチルトリメチルアンモニウムクロライド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド、アルキルベンジルジメチルアンモニウムクロライド等が挙げられる。
【0074】
両性界面活性剤は、アルキルベタイン、アルキルイミダゾリン等を挙げることができる。これらの具体例としては、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ラウリルジメチルアミンオキサイド、2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン等が挙げられる。
【0075】
アニオン界面活性剤やカチオン界面活性剤、両性界面活性剤は、分子内に電荷をもっているため用途が制限される場合や、界面活性剤に含まれる硫黄や窒素といった原子が触媒毒となり反応を阻害する場合がある。界面活性剤の電荷や触媒毒が懸念される用途に本発明のオルガノポリシロキサン乳化組成物を配合する場合は、ノニオン界面活性剤のみを使用すればよい。ノニオン界面活性剤は、乳化性の観点から、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルもしくはポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルであることが好ましい。
【0076】
[(C−1)ノニオン界面活性剤]
ノニオン界面活性剤について詳述する。本発明に好適に用いられるノニオン界面活性剤は、25℃で液状のノニオン界面活性剤であり、(A)ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン化合物を溶解できるものである。ポリオキシエチレンアルキルエーテル等のポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステルのようなノニオン界面活性剤等を挙げることができる。これらの具体例としては、ポリオキシエチレンオクチルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンオクチルエーテル、ポリオキシエチレンノニルエーテル、ポリオキシエチレンデシルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンデシルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレントリデシルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレントリデシルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル等が挙げられる。上記のノニオン界面活性剤のうち、乳化性の観点から好ましくはポリオキシアルキレンアルキルエーテルもしくはポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルであり、その中でも好ましくはエチレンオキサイドの付加モル数が2〜15であり、より好ましくはHLBが7.5〜15のものである。HLBはグリフィンの式による。2種類以上のノニオン界面活性剤を混合して使用してもよく、混合した界面活性剤のHLBが上記の値を満たしていればよい。
【0077】
[(D)オルガノポリシロキサン]
(D)成分は、下記平均組成式(12)で表される25℃における粘度が1,000,000mPa・s以上であるオルガノポリシロキサンである。なお、(D)成分は、ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサンは含まない。
【0078】
4fSiO(4-f)/2 (12)
(式中、R4は同一もしくは異なってもよく、水素原子、ヒドロキシ基、炭素数1〜20の直鎖もしくは分岐鎖の非置換又はハロゲン原子、ヒドロキシ基、アミノ基もしくはアミノアルキルアミノ基置換のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、炭素数6〜20のアリール基、又は炭素数7〜20のアラルキル基である。fは1.8〜2.2の正数である。)
【0079】
上記式(12)中、R4は同一もしくは異なってもよく、水素原子、ヒドロキシ基、炭素数1〜20の直鎖もしくは分岐鎖の非置換又はハロゲン原子、ヒドロキシ基、アミノ基もしくはアミノアルキルアミノ基置換のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、炭素数6〜20のアリール基、又は炭素数7〜20のアラルキル基であり、具体的には、水素原子、ヒドロキシ基、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基などの炭素数1〜20の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基からなる飽和脂肪族炭化水素基、ビニル基、プロペニル基、ヘキセニル基などの炭素数2〜20のアルケニル基からなる不飽和脂肪族炭化水素基、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基などの炭素数6〜20のアリール基、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基などの炭素数7〜20のアラルキル基からなる芳香族炭化水素基、及び上記アルキル基中の水素原子の一部又は全部が、フッ素、臭素、塩素等のハロゲン原子により置換されたクロロメチル基、クロロプロピル基、トリフルオロプロピル基、ヒドロキシ基により置換されたヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、アミノ基により置換されたアミノプロピル基、アミノアルキルアミノ基により置換されたアミノエチルアミノプロピル基等が例示される。かかるR4は、全てのR4のうち70モル%以上がメチル基であることが好ましく、R4のうち90モル%以上がメチル基であることがより好ましい。また、汎用性の観点から好ましくはメチル基、フェニル基、ヒドロキシ基である。
【0080】
オルガノポリシロキサンの25℃における粘度は、1,000,000mPa・s以上であり、好ましくは2,000,000〜100,000,000mPa・sであり、より好ましくは5,000,000〜100,000,000mPa・sである。粘度が1,000,000mPa・sより低いと、すべり性等が低下し、また本発明のオルガノポリシロキサン乳化組成物を含む樹脂組成物の皮膜の光沢が低下する。100,000,000mPa・sより粘度が高いと乳化する際に装置に対して負荷が大きくかかり、また乳化するのに多くの時間が必要になる。
【0081】
(D)成分は、2種類以上のオルガノポリシロキサンを混合してもよく、混合したオルガノポリシロキサンの粘度が上記範囲を満たせばよい。なお、(D)オルガノポリシロキサンの粘度はレオメーターであるHAAKE MARS40(ThermoFisher Scientific社)の定常流粘度測定モードにより測定した値である。
【0082】
本発明のオルガノポリシロキサン乳化組成物において、(A)ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン化合物の含有量は、(D)オルガノポリシロキサンの含有量を100質量部としたとき、1〜50質量部であり、好ましくは5〜40質量部であり、より好ましくは10〜35質量部である。(A)ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン化合物の含有量が1質量部未満だと、乳化性の低下により(D)オルガノポリシロキサンが乳化しない場合がある。また、オルガノポリシロキサン乳化組成物の耐溶剤性、耐塩性の低下となるおそれがある。一方で(A)ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン化合物が50質量部より多いとオルガノポリシロキサン乳化組成物を含む樹脂組成物の皮膜の透明性が低下するおそれがある。
【0083】
本発明のオルガノポリシロキサン乳化組成物において、(B)ポリオキシアルキレン変性オルガノシロキサン化合物の含有量は、(D)オルガノポリシロキサンの含有量を100質量部としたとき、1〜50質量部であり、好ましくは5〜40質量部であり、より好ましくは10〜25質量部である。(B)ポリオキシアルキレン変性オルガノシロキサン化合物の含有量が1質量部未満だと、本発明のオルガノポリシロキサン乳化組成物のレベリング性の低下や樹脂と配合した際の光沢の低下となるおそれがある。一方で(B)ポリオキシアルキレン変性オルガノシロキサン化合物が50質量部より多いとオルガノポリシロキサン乳化組成物の粒径が細かくなりにくくなる懸念がある。
【0084】
本発明のオルガノポリシロキサン乳化組成物において、(C)界面活性剤の含有量は(D)オルガノポリシロキサンの含有量を100質量部としたとき、0〜50質量部であり、好ましくは3〜40質量部であり、より好ましくは5〜35質量部である。(A)ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン化合物及び(B)ポリオキシアルキレン変性オルガノシロキサン化合物のみで(D)オルガノポリシロキサンを乳化できる場合は(C)界面活性剤を配合しなくてもよい。(C)界面活性剤が50質量部より多いと本発明の樹脂組成物の皮膜の耐摩耗性を阻害する可能性がある。
【0085】
(C)界面活性剤を用いる場合、(A)ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン化合物と(C)界面活性剤の質量比率に指定はないが、質量比率((A)ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン化合物/(C)界面活性剤)は0.1以上、特に0.2〜10、とりわけ0.5〜5であることが望ましい。
また、(A)ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン化合物と(B)ポリオキシアルキレン変性オルガノシロキサン化合物の質量比率にも特に指定はないが、質量比率((A)ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン化合物/(B)ポリオキシアルキレン変性オルガノシロキサン化合物)は0.1以上、特に0.2〜10、とりわけ0.5〜5であることが望ましい。
【0086】
さらに、(A)ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン化合物と(B)ポリオキシアルキレン変性オルガノシロキサン化合物と(C)界面活性剤の合計量に特に指定はないが、(D)オルガノポリシロキサンの含有量を100質量部としたとき、5〜100質量部であり、好ましくは10〜75質量部であり、より好ましくは35〜75質量部である。(A)ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン化合物と(B)ポリオキシアルキレン変性オルガノシロキサン化合物と(C)界面活性剤の合計量が(D)オルガノポリシロキサンの含有量を100質量部としたとき、5質量部未満だと(D)オルガノポリシロキサンの乳化ができないもしくはオルガノポリシロキサン乳化組成物が安定でない可能性があり、一方で100質量部を超えるとオルガノポリシロキサン乳化組成物を配合した樹脂組成物の皮膜の耐摩耗性が低下するおそれがある。
【0087】
[(E)水]
本発明のオルガノポリシロキサン乳化組成物において、(E)水は自己乳化型やエマルジョン型等の要求される製品の形態もしくは乳化性等の観点から必要に応じて配合すればよい。従って、(E)水の含有量は(D)オルガノポリシロキサンの含有量を100質量部としたとき、0〜10,000質量部であり、好ましくは0〜5,000質量部であり、より好ましくは0〜1,000質量部である。(E)水を配合する場合は、(D)オルガノポリシロキサンの含有量を100質量部としたとき、10質量部以上であることが好ましい。10,000質量部より多いと安定性が低下し、大きく分離するおそれがある。(E)水の含有量が上記の範囲内であれば、粒径は経時で変化しない。
【0088】
(A)ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン化合物、(B)ポリオキシアルキレン変性オルガノシロキサン化合物及び(C)界面活性剤により(D)オルガノポリシロキサンの乳化が可能な時は(E)水を配合する必要はない。
即ち、本発明のオルガノポリシロキサン乳化組成物において、(E)成分である水を含まない場合、(D)成分は(A)成分、(B)成分及び(C)成分に分散して乳化するものである。また、(E)成分である水を含む場合、(D)成分は(E)成分、(A)成分、(B)成分及び(C)成分に分散して乳化するものである。
【0089】
[組成物の調製]
本発明のオルガノポリシロキサン乳化組成物の具体的な乳化方法は、主に以下に示す通りである。
第一は、(A)ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン化合物、(B)ポリオキシアルキレン変性オルガノシロキサン化合物、(C)界面活性剤及び(D)オルガノポリシロキサンの混合物を乳化した後に、(E)水を配合する方法である。
第二は、(A)ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン化合物、(B)ポリオキシアルキレン変性オルガノシロキサン化合物、(C)界面活性剤、(D)オルガノポリシロキサン及び(E)水の混合物を乳化する方法である。
第三は、(B)ポリオキシアルキレン変性オルガノシロキサン化合物、(C)界面活性剤、(D)オルガノポリシロキサン及び(E)水の混合物を乳化した後に、(A)ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン化合物を配合する方法である。
第四は、(A)ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン化合物、(B)ポリオキシアルキレン変性オルガノシロキサン化合物、(D)オルガノポリシロキサン及び(E)水の混合物を乳化した後に、(C)界面活性剤を配合する方法である。
第五は、(A)ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン化合物、(B)ポリオキシアルキレン変性オルガノシロキサン化合物及び(D)オルガノポリシロキサンの混合物を乳化した後に、(C)界面活性剤及び(E)水を配合する方法である。
第六は、(A)ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン化合物、(C)界面活性剤、(D)オルガノポリシロキサン及び(E)水の混合物を乳化した後に、(B)ポリオキシアルキレン変性オルガノシロキサン化合物を配合する方法である。
本発明の乳化方法について以下に詳述する。
【0090】
第一の乳化方法は以下の通りである。(A)ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン化合物、(B)ポリオキシアルキレン変性オルガノシロキサン化合物、(C)界面活性剤、(D)オルガノポリシロキサンの混合物を2枚又は3枚のブレードの公転運動と自転運動による攪拌機であるプラネタリーミキサーにより乳化する。所定の粒径になるまで2〜180分攪拌した後、(E)水を加えてプラネタリーミキサー、歯形の羽根の回転による攪拌機であるディスパーもしくはステーター内のローターの回転による攪拌機であるホモミキサーにより希釈し、オルガノポリシロキサン乳化組成物を調製する。
【0091】
第二の乳化方法は以下の通りである。(A)ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン化合物、(B)ポリオキシアルキレン変性オルガノシロキサン化合物、(C)界面活性剤、(D)オルガノポリシロキサン、(E)水の混合物をプラネタリーミキサーにより乳化する。所定の粒径になるまで2〜180分攪拌し、オルガノポリシロキサン乳化組成物を調製する。
【0092】
第三の乳化方法は以下の通りである。(B)ポリオキシアルキレン変性オルガノシロキサン化合物、(C)界面活性剤、(D)オルガノポリシロキサン、(E)水の混合物をプラネタリーミキサーもしくはディスパーにより乳化する。所定の粒径になるまで2〜180分攪拌した後、(A)ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン化合物を配合し、プラネタリーミキサー、ディスパーもしくはホモミキサーにより攪拌して、オルガノポリシロキサン乳化組成物を調製する。
【0093】
第四の乳化方法は以下の通りである。(A)ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン化合物、(B)ポリオキシアルキレン変性オルガノシロキサン化合物、(D)オルガノポリシロキサン、(E)水の混合物をプラネタリーミキサーもしくはディスパーにより乳化する。所定の粒径になるまで2〜180分攪拌した後、(C)界面活性剤を加えて、プラネタリーミキサー、ディスパーもしくはホモミキサーにより希釈して、オルガノポリシロキサン乳化組成物を調製する。
【0094】
第五の乳化方法は以下の通りである。(A)ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン化合物、(B)ポリオキシアルキレン変性オルガノシロキサン化合物、(D)オルガノポリシロキサンの混合物をプラネタリーミキサーもしくはディスパーにより乳化する。所定の粒径になるまで2〜180分攪拌した後、(C)界面活性剤及び(E)水を加えて、プラネタリーミキサー、ディスパーもしくはホモミキサーにより希釈して、オルガノポリシロキサン乳化組成物を調製する。
【0095】
第六の乳化方法は以下の通りである。(A)ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン化合物、(C)界面活性剤、(D)オルガノポリシロキサン及び(E)水の混合物をプラネタリーミキサーもしくはディスパーにより乳化する。所定の粒径になるまで2〜180分攪拌した後、(B)ポリオキシアルキレン変性オルガノシロキサン化合物を加えて、プラネタリーミキサー、ディスパーもしくはホモミキサーにより希釈して、オルガノポリシロキサン乳化組成物を調製する。
【0096】
また、上記乳化方法において、(A)成分と(B)成分及び/又は(C)成分を、上述した(A)ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン化合物の(B)ポリオキシアルキレン変性オルガノシロキサン化合物及び/又は(C)界面活性剤の溶解液として用いることもできる。
【0097】
(C)界面活性剤及び(E)水を使用しないでも本発明のオルガノポリシロキサン乳化組成物を製造することが可能である。また、非極性溶剤系に分散した樹脂にオルガノポリシロキサン乳化組成物を配合する場合は、(E)水が均一にならず分離する可能性があるので、本発明のオルガノポリシロキサン乳化組成物には(E)水を含まない方が好ましい。
【0098】
本発明のオルガノポリシロキサン乳化組成物中の(D)オルガノポリシロキサンの濃度は1〜90質量%の範囲であることが好ましい。1質量%未満では乳化組成物の安定性に問題があり、90質量%より大きい場合では乳化物の粘度が高く取り扱いにくくなる。また、オルガノポリシロキサン乳化組成物の組成によっては経時で分離する場合がある。その場合はオルガノポリシロキサン乳化組成物に含まれる(E)水の配合量を減らすことで、分離を抑制できる場合がある。
【0099】
乳化する際の温度について、好ましくは0〜80℃、より好ましくは0〜60℃である。0℃未満の温度もしくは80℃より高い温度では乳化しなくなる場合や製造した乳化物が不安定になる可能性がある。乳化する際、圧力は常圧だけでなく減圧もしくは加圧でもよい。減圧もしくは加圧下で乳化する場合、泡が混入しにくくなり効果的に乳化できることがある。減圧にする場合の圧力は原料の蒸気圧より高くし、原料が揮発しないように注意する。また、乳化時間は、特に指定はなく目的の粒径になった時点で2〜600分間、特に2〜360分間とすることが好ましい。
【0100】
乳化する際の乳化機は、原料や乳化組成物を攪拌することができるものを選択する必要がある。2枚又は3枚のブレードの公転運動と自転運動による攪拌機であるプラネタリーミキサーとしてゲートミキサー(井上製作所社)やハイビスミックス(プライミクス社)、2枚のブレードの公転運動と自転運動と歯形の羽根の高速回転による攪拌機であるハイビスディスパーミックス3D−5型(プライミクス社)等を使用すると効果的に乳化をすることができる。また、ローターとステーターからなる攪拌部を有するコロイドミル(IKA社、PUC社、日本精機製作所、イワキ社)やハイシェアミキサー(silverson社、プライミクス社)等を使用することも可能である。また、ホモディスパー(プライミクス社)、アジホモミキサー(プライミクス社)やホモミキサーとホモディスパーとアンカーミキサーを組み合わせた3軸型分散混練機であるコンビミックス(プライミクス社)、同方向スクリューもしくは異方向スクリューを有する2軸混合機であるHAAKE Mini LabII(Thermo scientific社)やMC15、MC5(レオ・ラボ社)等を使用することも可能である。3軸型分散混練機コンビミックス(プライミクス社)やハイビスディスパーミックス(プライミクス社)を使用する場合はアンカーミキサーのみで乳化することも可能である。
【0101】
本発明のオルガノポリシロキサン乳化組成物には、本発明の目的を損なわない範囲において、界面活性剤の他に保護コロイド剤ないし増粘剤としてポリビニルアルコール、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、アルギン酸塩、キサンタン・ガム、アクリル酸重合体などの水溶性高分子を配合してもよい。さらにオキサゾリン系化合物や芳香族カルボン酸塩などの抗菌剤ないし防腐剤、香料、酸化防止剤、防錆剤、染料、充填剤、硬化触媒、有機粉体、無機粉体などを配合してもよい。
【0102】
本発明のオルガノポリシロキサン乳化組成物のエマルジョン(乳化物)の平均粒径に指定はないが、好ましくは20μm以下、より好ましくは15μm以下である。20μmより平均粒径が大きいと、オルガノポリシロキサン乳化組成物を水やジメチルホルムアミド等の溶剤に分散させた場合、すぐに分離が生じる場合がある。本発明のオルガノポリシロキサン乳化組成物において、乳化物の平均粒径が1.5μm以上のときはベックマンコールター社製Multisizer3により測定することができ、乳化物の平均粒径が1.5μm未満のときは(株)堀場製作所製LA920もしくはLA960、又はベックマンコールター社製N4 PLUSにより測定することができる。なお、上記平均粒径は、測定時にオルガノポリシロキサン乳化組成物を水で希釈して測定するものである。また、平均粒径の下限は特に限定されないが、通常0.1μm以上、特に0.5μm以上である。
【0103】
[樹脂組成物]
本発明のオルガノポリシロキサン乳化組成物は、合成皮革や人工皮革の表面処理剤もしくは内添処理剤として使用することが可能である。アクリル樹脂やウレタン樹脂といった樹脂と該樹脂を分散する溶剤とを含む樹脂組成物にオルガノポリシロキサン乳化組成物を配合することで、良好なすべり性を付与することができる。
【0104】
該樹脂組成物に使用する樹脂は、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、アルキド樹脂、ポリイミド樹脂等の熱硬化性樹脂や、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリテトラフルオロエチレン、アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂、アクリロニトリルスチレン樹脂、アクリル樹脂等の熱可塑性樹脂などが挙げられる。汎用性の観点から好ましくはウレタン樹脂もしくはアクリル樹脂が挙げられる。
また、樹脂を分散する溶剤としては、水、もしくはDMFやトルエン、キシレン、エチルベンゼン、ミネラルスピリット、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、イソプロパノール、ブタノール、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等の有機溶剤が例示できる。
樹脂は溶剤等へ分散させて使用する。溶剤への分散方法は特に指定はしないが、例えば、アクリル樹脂等の樹脂を上述した溶剤中で合成することにより樹脂を溶剤に分散させる方法などが挙げられる。
【0105】
樹脂と該樹脂を分散する溶剤とを含む樹脂組成物に、オルガノポリシロキサン乳化組成物を配合する際は、そのままオルガノポリシロキサン乳化組成物を樹脂組成物に配合し、均一分散させてもよく、またオルガノポリシロキサン乳化組成物を水やDMF、MEK等の有機溶剤などの溶剤に一旦分散させてから樹脂組成物に配合してもよい。オルガノポリシロキサン乳化組成物を樹脂組成物に均一混合するには、公知の攪拌機、例えば、ホモミキサー、佐竹攪拌機、スタティックミキサー、ロスミキサー、ホバートミキサー、ヘンシェルミキサー、パドルミキサー、リボンミキサー等を使用すればよい。
【0106】
樹脂組成物に対するオルガノポリシロキサン乳化組成物の配合量は、樹脂の固形分に対して乳化組成物の有効成分(固形分)が0.01〜30質量%である。好ましくは0.1〜20質量%、より好ましくは0.2〜10質量%である。0.01質量%より配合量が少ないとすべり性を得ることができない場合があり、また30質量%より多いと光沢性やレベリング性が低下する場合がある。
【0107】
本発明の樹脂組成物を表面処理剤として人工皮革や合成皮革の表面上に塗布して成膜する方法として、以下の方法が挙げられる。直接スプレーするスプレー法やグラビアコーター、ナイフコーター、コンマコーター、エアナイフコーター等のダイレクトコート法などが挙げられるが、汎用性や樹脂組成物の安定性の観点からグラビアコーターによるダイレクトコート法が最も好ましい。また、塗工量は、乾燥後の塗膜量が3〜100g/m2となる範囲が好ましく、5〜30g/m2となる範囲がより好ましい。塗膜量は3g/m2未満もしくは100g/m2を超える場合、均一の樹脂層が形成しにくくなり、光沢性やレベリング性にムラができる可能性がある。
【0108】
本発明の樹脂組成物の塗工後の乾燥条件は、樹脂組成物中の水もしくは有機溶剤が蒸発し、必要に応じて樹脂の架橋反応が起きれば特に制限はないが、通常は20〜150℃で10秒〜5分間程度の加熱、より好ましくは80〜130℃で30秒〜3分間程度の加熱である。
【0109】
本発明の樹脂組成物を内添処理剤として配合し、人工皮革を製造する方法として、以下の方法が挙げられる。人工皮革の原料である極細繊維を主体とする不織シート状物に本発明の樹脂組成物及び各種高分子化合物を付与し、加熱乾燥等により人工皮革を製造する。不織シート状物への付与方法は、含浸法、スプレー法、コーティング法等任意の方法によって行うことが可能である。加熱乾燥の方法は、熱風乾燥、赤外線加熱、高周波加熱等が挙げられるが、設備投資額、維持管理の容易さなどから考えると、熱風乾燥機が一般的である。乾燥温度は20〜150℃である。150℃よりも高温で加熱すると、樹脂の耐熱性の低下や繊維の劣化が生じるおそれがある。
【0110】
本発明によれば、上記(A)、(B)成分である特定構造のポリオキシアルキレン変性オルガノ(ポリ)シロキサン化合物を乳化剤もしくは乳化助剤として配合することで、高重合度のオルガノポリシロキサンを乳化することができ、このオルガノポリシロキサン乳化組成物は、有機溶剤を用いた溶剤型、水性型のいずれの樹脂組成物にも安定に配合することが可能である。また樹脂組成物による皮膜はハジキや白化を生じることなく、良好なすべり性を与えるものである。従って、本発明の樹脂組成物は、自動車のシートやバッグ等の合成皮革、人工皮革の表面処理剤もしくは内添処理剤として有用である。
【実施例】
【0111】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、下記の例において、粘度はBM型もしくはBH型回転粘度計又はオストワルド粘度計により測定した25℃における値である。さらに、重量平均分子量は、GPC(TOSOH製 HLC8220)により測定したTHF溶媒のポリスチレン換算による重量平均分子量の値である。
【0112】
[実施例1]
窒素雰囲気下、下記一般式(8a)
【化33】
で示されるケイ素原子結合水素原子含有オルガノポリシロキサン(粘度2,800mm2/s、ケイ素原子に結合した水素原子の量0.00625mol/100g)79質量部(79g)と、下記一般式(7a)
【化34】
で示される不飽和基含有ポリオキシアルキレン化合物21質量部(21g)と、イソプロピルアルコール250質量部(250g)を加えた後、加熱し、内部温度を75℃とした。次いで、白金のビニルシロキサン錯体のトルエン溶液を白金金属としてシロキサンに対して5質量ppm加え、8時間攪拌することで、下記一般式(5a)で示されるポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン化合物A(GPCによる重量平均分子量50,000)を90%以上の反応率で合成した(ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン化合物Aは29質量%イソプロパノール溶液である。)。式(7a)の化合物のアルケニル基と式(8a)の化合物のSiH基のモル比は式(7a)/(8a)=1.1である。
【化35】
【0113】
ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン化合物A(29質量%イソプロパノール溶液)350質量部(350g)にノニオン界面活性剤TERGITOL−TMN6(ダウケミカル社製、ポリオキシエチレンアルキルエーテル90質量%水溶液、HLB13.1)60質量部(60g)を添加し、10〜15mmHg、50℃の条件でイソプロピルアルコール及びノニオン界面活性剤TERGITOL−TMN6に含まれる水を減圧留去し、ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン化合物の界面活性剤溶解化合物A−1を得た。
【0114】
下記一般式(9a)
【化36】
で表されるケイ素原子結合水素原子含有オルガノシロキサン(粘度1mm2/s、ケイ素原子に結合した水素原子の量0.48mol/100g)29質量部(29g)と、下記一般式(10a)
【化37】
で示される不飽和基含有ポリオキシアルキレン化合物71質量部(71g)と、イソプロピルアルコール50質量部(50g)を加えた後、加熱し、内部温度を75℃とした。次いで、白金のビニルシロキサン錯体のトルエン溶液を白金金属としてシロキサンに対して5質量ppm加え、8時間攪拌することで、ポリオキシアルキレン変性オルガノシロキサン化合物を90%以上の反応率で合成した。10〜15mmHg、50℃の条件でイソプロピルアルコールを減圧留去し、下記一般式(3a)で示されるポリオキシアルキレン変性オルガノシロキサン化合物a(GPCによる重量平均分子量800)を得た。式(9a)の化合物のSiH基と式(10a)の化合物のアルケニル基のモル比は式(10a)/(9a)=1.1である。
【化38】
【0115】
続いて、下記一般式(11a)
【化39】
(kは下記粘度とする数を示す。)
で示される両末端ヒドロキシジメチルポリシロキサン(粘度700万mPa・s)30質量部(30g)と、上記で得られたポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン化合物の界面活性剤溶解化合物A−1 15質量部(15g)と、上記一般式(3a)で示されるポリオキシアルキレン変性オルガノシロキサン化合物a 5質量部(5g)をハイビスミックス(プライミクス社製)により35rpmで20〜60℃、180分攪拌して乳化組成物Aを得た。平均粒径をベックマンコールター社製Multisizer3で測定したところ、8.5μmであった。
【0116】
[実施例2]
下記一般式(11b)
【化40】
(kは下記粘度とする数を示す。)
で示される両末端ヒドロキシジメチルポリシロキサン(粘度3,000万mPa・s)30質量部(30g)と、上記実施例1で得られたポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン化合物の界面活性剤溶解化合物A−1 15質量部(15g)と、実施例1で得られた上記一般式(3a)で示されるポリオキシアルキレン変性オルガノシロキサン化合物a 5質量部(5g)をハイビスミックス(プライミクス社製)により35rpmで20〜60℃、180分攪拌して乳化組成物Bを得た。平均粒径をベックマンコールター社製Multisizer3で測定したところ、10.5μmであった。
【0117】
[実施例3]
実施例1で得られた上記一般式(5a)で示されるポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン化合物A(29質量%イソプロパノール溶液)(GPCによる重量平均分子量50,000)350質量部(350g)に、ノニオン界面活性剤サンノニックSS120(三洋化成工業社製、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、HLB14.5)50質量部(50g)を添加し、10〜15mmHg、50℃の条件でイソプロピルアルコールを減圧留去し、ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン化合物の界面活性剤溶解化合物A−2を得た。
【0118】
続いて、上記一般式(11b)で示される両末端ヒドロキシジメチルポリシロキサン(粘度3,000万mPa・s)30質量部(30g)と、上記で得られたポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン化合物の界面活性剤溶解化合物A−2 15質量部(15g)と、実施例1で得られた上記一般式(3a)で示されるポリオキシアルキレン変性オルガノシロキサン化合物a 5質量部(5g)をハイビスミックス(プライミクス社製)により35rpmで20〜60℃、180分攪拌して乳化組成物Cを得た。平均粒径をベックマンコールター社製Multisizer3で測定したところ、12.5μmであった。
【0119】
[実施例4]
窒素雰囲気下、上記一般式(8a)で示されるケイ素原子結合水素原子含有オルガノポリシロキサン(粘度2,800mm2/s、ケイ素原子に結合した水素原子の量0.00625mol/100g)79質量部(79g)と、下記一般式(7b)
【化41】
で示される不飽和基含有ポリオキシアルキレン化合物21質量部(21g)と、イソプロピルアルコール250質量部(250g)を加えた後、加熱し、内部温度を75℃とした。次いで、白金のビニルシロキサン錯体のトルエン溶液を白金金属としてシロキサンに対して5質量ppm加え、8時間攪拌することで、下記一般式(5b)で示されるポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン化合物B(GPCによる重量平均分子量50,000)を90%以上の反応率で合成した(ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン化合物Bは29質量%イソプロパノール溶液である。)。式(7b)の化合物のアルケニル基と式(8a)の化合物のSiH基のモル比は式(7b)/(8a)=1.1である。
【化42】
【0120】
ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン化合物B(29質量%イソプロパノール溶液)350質量部(350g)に、ノニオン界面活性剤TERGITOL−TMN6(ダウケミカル社製、ポリオキシエチレンアルキルエーテル90質量%水溶液、HLB13.1)60質量部(60g)及び実施例1で得られた上記一般式(3a)で示されるポリオキシアルキレン変性オルガノシロキサン化合物a 50質量部(50g)を添加し、10〜15mmHg、50℃の条件でイソプロピルアルコール及びノニオン界面活性剤TERGITOL−TMN6に含まれる水を減圧留去し、ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン化合物の界面活性剤溶解化合物Bを得た。
【0121】
続いて、上記一般式(11b)で示される両末端ヒドロキシジメチルポリシロキサン(粘度3,000万mPa・s)30質量部(30g)及び上記で得られたポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン化合物の界面活性剤溶解化合物B 20質量部(20g)をハイビスミックス(プライミクス社製)により35rpmで20〜60℃、180分攪拌して乳化組成物Dを得た。平均粒径をベックマンコールター社製Multisizer3で測定したところ、6.5μmであった。
【0122】
[実施例5]
実施例4で得られた乳化組成物D 45質量部(45g)に水5質量部(5g)を加えてハイビスミックス(プライミクス社製)により20〜30rpmで20〜60℃、30分攪拌して乳化組成物Eを得た。平均粒径をベックマンコールター社製Multisizer3で測定したところ、6.3μmであった。
【0123】
[実施例6]
窒素雰囲気下、下記一般式(8b)
【化43】
で示されるケイ素原子結合水素原子含有オルガノポリシロキサン(粘度450mm2/s、ケイ素原子に結合した水素原子の量0.014mol/100g)57質量部(57g)と、下記一般式(7b)
【化44】
で示される不飽和基含有ポリオキシアルキレン化合物43質量部(43g)と、イソプロピルアルコール200質量部(200g)を加えた後、加熱し、内部温度を75℃とした。次いで、白金のビニルシロキサン錯体のトルエン溶液を白金金属としてシロキサンに対して5質量ppm加え、8時間攪拌することで、下記一般式(5c)で示されるポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン化合物C(GPCによる重量平均分子量30,000)を90%以上の反応率で合成した(ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン化合物Cは33質量%イソプロパノール溶液である。)。式(7b)の化合物のアルケニル基と式(8b)の化合物のSiH基のモル比は式(7b)/(8b)=1.1である。
【化45】
【0124】
ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン化合物C(33質量%イソプロパノール溶液)300質量部(300g)に、ノニオン界面活性剤TERGITOL−TMN6(ダウケミカル社製、ポリオキシエチレンアルキルエーテル90質量%水溶液、HLB13.1)60質量部(60g)及び実施例1で得られた上記一般式(3a)で示されるポリオキシアルキレン変性オルガノシロキサン化合物a 50質量部(50g)を添加し、10〜15mmHg、50℃の条件でイソプロピルアルコール及びノニオン界面活性剤TERGITOL−TMN6に含まれる水を減圧留去し、ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン化合物の界面活性剤溶解化合物Cを得た。
【0125】
続いて、上記一般式(11b)で示される両末端ヒドロキシジメチルポリシロキサン(粘度3,000万mPa・s)30質量部(30g)及び上記で得られたポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン化合物の界面活性剤溶解化合物C 20質量部(20g)をハイビスミックス(プライミクス社製)により35rpmで20〜60℃、180分攪拌して乳化組成物Fを得た。平均粒径をベックマンコールター社製Multisizer3で測定したところ、5.8μmであった。
【0126】
[比較例1]
上記一般式(11b)で示される両末端ヒドロキシジメチルポリシロキサン(粘度3000万mPa・s)35質量部(35g)及び上記実施例1で得られたポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン化合物の界面活性剤溶解化合物A−1 15質量部(15g)をハイビスミックス(プライミクス社製)により35rpmで20〜60℃、180分攪拌して乳化組成物Gを得た。平均粒径をベックマンコールター社製Multisizer3で測定したところ、5.5μmであった。
【0127】
[比較例2]
窒素雰囲気下、下記一般式(8c)
【化46】
で示されるケイ素原子結合水素原子含有オルガノポリシロキサン(粘度75mm2/s、ケイ素原子に結合した水素原子の量0.05mol/100g)33質量部(33g)と、上記一般式(7a)で示される不飽和基含有ポリオキシアルキレン化合物67質量部(67g)と、イソプロピルアルコール250質量部(250g)を加えた後、加熱し、内部温度を75℃とした。次いで、白金のビニルシロキサン錯体のトルエン溶液を白金金属としてシロキサンに対して5質量ppm加え、8時間攪拌することで、下記一般式(5d)で示されるポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン化合物D(GPCによる重量平均分子量16,000)を90%以上の反応率で合成した(ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン化合物Dは29質量%イソプロパノール溶液である。)。式(7a)の化合物のアルケニル基と式(8c)の化合物のSiH基のモル比は式(7a)/(8c)=1.1である。
【化47】
【0128】
ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン化合物D(29質量%イソプロパノール溶液)350質量部(350g)に、ノニオン界面活性剤TERGITOL−TMN6(ダウケミカル社製、ポリオキシエチレンアルキルエーテル90質量%水溶液、HLB13.1)60質量部(60g)を添加し、10〜15mmHg、35〜40℃の条件でイソプロピルアルコール及びノニオン界面活性剤TERGITOL−TMN6に含まれる水を減圧留去し、ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン化合物の界面活性剤溶解化合物Dを得た。
【0129】
続いて、上記一般式(11b)で示される両末端ヒドロキシジメチルポリシロキサン(粘度3,000万mPa・s)30質量部(30g)と、上記で得られたポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン化合物の界面活性剤溶解化合物D 15質量部(15g)と、実施例1で得られた上記一般式(3a)で示されるポリオキシアルキレン変性オルガノシロキサン化合物a 5質量部(5g)をハイビスミックス(プライミクス社製)により20〜35rpmで20〜60℃、180分攪拌して乳化組成物Hを得た。平均粒径をベックマンコールター社製Multisizer3で測定したところ、3.5μmであった。
【0130】
[比較例3]
窒素雰囲気下、上記一般式(9a)で表されるケイ素原子結合水素原子含有オルガノポリシロキサン(粘度1mm2/s、ケイ素原子に結合した水素原子の量0.48mol/100g)5.0質量部(5.0g)及び上記一般式(7a)で示される不飽和基含有ポリオキシアルキレン化合物95.0質量部(95.0g)を加えた後、加熱し、内部温度を75℃とした。次いで、白金のビニルシロキサン錯体のトルエン溶液を白金金属としてシロキサンに対して5質量ppm加え、8時間攪拌することで、下記一般式(3b)で示されるポリオキシアルキレン変性オルガノシロキサン化合物b(GPCによる重量平均分子量7,000)を90%以上の反応率で合成した。式(7a)の化合物のアルケニル基と式(9a)の化合物のSiH基のモル比は式(7a)/(9a)=1.1である。
【化48】
【0131】
続いて、上記一般式(11b)で示される両末端ヒドロキシジメチルポリシロキサン(粘度3,000万mPa・s)30質量部(30g)と、上記実施例1で得られたポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン化合物の界面活性剤溶解化合物A−1 15質量部(15g)と、上記一般式(3b)で示されるポリオキシアルキレン変性オルガノシロキサン化合物b 5質量部(5g)をハイビスミックス(プライミクス社製)により35rpmで20〜60℃、180分攪拌して乳化組成物Iを得た。平均粒径をベックマンコールター社製Multisizer3で測定したところ、4.5μmであった。
【0132】
[比較例4]
下記一般式(11c)
【化49】
(kは下記粘度とする数を示す。)
で示される両末端ヒドロキシジメチルポリシロキサン(粘度10万mPa・s)30質量部(30g)と、上記実施例1で得られたポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン化合物の界面活性剤溶解化合物A−1 15質量部(15g)と、実施例1で得られた上記一般式(3a)で示されるポリオキシアルキレン変性オルガノシロキサン化合物a 5質量部(5g)をハイビスミックス(プライミクス社製)により20〜35rpmで20〜60℃、180分攪拌して乳化組成物Jを得た。平均粒径をベックマンコールター社製Multisizer3で測定したところ、4.5μmであった。
【0133】
上記実施例、比較例について、水希釈安定性、溶剤希釈安定性、白化及びレベリング性の評価を行った。これらの結果を表1、2に示す。
【0134】
水希釈安定性:
乳化組成物A〜Jに対して希釈安定性試験を行った。
乳化組成物A〜J0.5gとイオン交換水9.5gをガラス瓶に入れて振とうした後、1日静置して、外観を観察し、下記基準で評価した。
○:オルガノポリシロキサンの析出がほとんどなく、乳化組成物が水に分散
×:オルガノポリシロキサンの一部が析出もしくは水の表面に干渉膜が生じ
、一部の乳化組成物が水に分散
【0135】
溶剤希釈安定性:
乳化組成物A〜Jに対して耐溶剤性試験を行った。
乳化組成物A〜J0.5gとDMF(ジメチルホルムアミド)9.5gをガラス瓶に入れて振とうし、溶液の状態を観察し、下記基準で評価した。
○:オルガノポリシロキサンの析出がほとんどなく、乳化組成物がDMFに
分散
×:オルガノポリシロキサンの一部が析出し、乳化組成物の一部がDMFに
分散
【0136】
白化1及びレベリング性1:
乳化組成物A〜Jに対して白化1及びレベリング性1の試験を行った。
乳化組成物A〜Jを20質量%水溶液になるように水で希釈した。次に水性アクリル樹脂(40−418EF(DIC社製))10g及び乳化組成物A〜Jの20質量%水溶液0.25gをガラス瓶に入れて振とうし、均一混合させた。直径6cmのアルミシャーレーに乳化組成物を配合した水性アクリル樹脂を1.5g入れ全体に広げた。105℃、3分加熱した後に、目視で外観を確認し、白化及びレベリング性を以下の基準で評価した。
白化1
○:皮膜に白濁がほとんどなく透明な状態
△:皮膜が少し白濁している状態
×:皮膜が白濁している状態
レベリング性1
○:皮膜に凹凸がなく均一な状態
×:皮膜に凹凸がある状態
【0137】
白化2及びレベリング性2:
乳化組成物A〜Jに対して白化2及びレベリング性2の試験を行った。
乳化組成物A〜Jを20質量%DMF溶液になるようにDMFで希釈した。DMF溶剤系ポリウレタン樹脂(サンプレンLQ−258(三洋化成工業社製))10g及び乳化組成物A〜Jの20質量%DMF溶液0.25gをガラス瓶に入れて振とうし、均一混合させた。直径6cmのアルミシャーレーに乳化組成物を配合したDMF溶剤系ポリウレタン樹脂を1.5g入れ全体に広げた。50℃、30分加熱した後に、目視で外観を確認し、白化及びレベリング性を以下の基準で評価した。
白化2
○:皮膜に白濁がほとんどなく透明な状態
△:皮膜が少し白濁している状態
×:皮膜が白濁している状態
レベリング性2
○:皮膜に凹凸がなく均一な状態
×:皮膜に凹凸がある状態
【0138】
【表1】
【0139】
【表2】