(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第4の反応ガスを供給するガス供給部よりも前記回転テーブルの外周側における前記第4の反応ガスを供給しないガス供給部から供給される不活性ガスの流量は、前記第4の反応ガスを供給するガス供給部よりも前記回転テーブルの中心側における前記第4の反応ガスを供給しないガス供給部から供給される不活性ガスの流量よりも大きい、
請求項2に記載の成膜方法。
前記改質工程は、前記基板に前記第3の反応ガスを活性化させて供給することにより、前記第3の反応ガスと前記反応生成物の表面の水酸基とを反応させ、前記反応生成物の表面の水酸基の一部を脱離させる工程を含む、
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の成膜方法。
前記改質工程は、前記基板に前記第3の反応ガスを活性化させて供給することにより、前記第3の反応ガスと前記凹部の上部に形成された水酸基とを反応させることにより、前記凹部の上部よりも底部付近に水酸基が多く残存するように、前記反応生成物の表面の水酸基の一部を脱離させる工程を含む、
請求項6に記載の成膜方法。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照して説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の構成については、同一の符号を付することにより重複した説明を省く。
【0011】
〔成膜装置〕
本発明の実施形態に係る成膜装置について説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る成膜装置の概略縦断面図である。
図2は、
図1の成膜装置の真空容器内の構成を示す概略斜視図である。
図3は、
図1の成膜装置の真空容器内の構成を示す概略平面図である。
【0012】
図1から
図3までを参照すると、成膜装置は、ほぼ円形の平面形状を有する扁平な真空容器1と、真空容器1内に設けられ、真空容器1の中心に回転中心を有する回転テーブル2と、を備えている。真空容器1は、内部に収容したウエハの表面に成膜処理を行うための処理室である。真空容器1は、有底の円筒形状を有する容器本体12と、容器本体12の上面に対して、例えばOリング等のシール部材13(
図1)を介して気密に着脱可能に配置される天板11とを有している。
【0013】
回転テーブル2は、中心部にて円筒形状のコア部21に固定され、コア部21は、鉛直方向に伸びる回転軸22の上端に固定されている。回転軸22は真空容器1の底部14を貫通し、下端が回転軸22(
図1)を鉛直軸回りに回転させる駆動部23に取り付けられている。回転軸22及び駆動部23は、上面が開口した筒状のケース体20内に収納されている。ケース体20はその上面に設けられたフランジ部分が真空容器1の底部14の下面に気密に取り付けられており、ケース体20の内部雰囲気と外部雰囲気との気密状態が維持されている。
【0014】
回転テーブル2の上面には、
図2及び
図3に示されるように、回転方向(周方向)に沿って複数(図示の例では5枚)の基板である半導体ウエハ(以下「ウエハW」という。)を載置可能な円形状の凹部24が設けられている。なお、
図3には、便宜上、1個の凹部24だけにウエハWを示す。凹部24は、ウエハWの直径よりも僅かに例えば4mm大きい内径と、ウエハWの厚さにほぼ等しい深さとを有している。したがって、ウエハWが凹部24に収容されると、ウエハWの表面と回転テーブル2の上面(ウエハWが載置されない領域)とが同じ高さになる。凹部24の底面には、ウエハWの裏面を支えてウエハWを昇降させるための例えば3本の昇降ピンが貫通する貫通孔(いずれも図示せず)が形成されている。
【0015】
図2及び
図3は、真空容器1内の構造を説明するための図であり、説明の便宜上、天板11の図示を省略している。
図2及び
図3に示されるように、回転テーブル2の上方には、反応ガスノズル31、反応ガスノズル32、反応ガスノズル33及び分離ガス供給部41、42が真空容器1の周方向(
図3の矢印Aで示す方向)に互いに間隔をおいて配置されている。図示の例では、後述の搬送口15から時計回り(回転テーブル2の回転方向)に、反応ガスノズル33、分離ガス供給部41、反応ガスノズル31、分離ガス供給部42及び反応ガスノズル32がこの順番で配列されている。反応ガスノズル31、反応ガスノズル32、反応ガスノズル33は、各々、例えば石英により形成されている。分離ガス供給部41、42は、後述の凸状部4に形成されている。
【0016】
反応ガスノズル31、32、33は、基端部であるガス導入ポート31a、32a、33a(
図3)を容器本体12の外周壁に固定することにより、真空容器1の外周壁から真空容器1内に導入され、容器本体12の半径方向に沿って回転テーブル2に対して水平に伸びるように取り付けられている。
【0017】
本実施形態においては、
図3に示されるように、反応ガスノズル31は、配管110及び流量制御器120等を介して、第1の反応ガス供給源130に接続されている。反応ガスノズル32は、配管111及び流量制御器121等を介して、第2の反応ガス供給源131に接続されている。更に、反応ガスノズル33は、配管112及び流量制御器122等を介して、第3の反応ガス供給源132に接続されている。分離ガス供給部41、42は、それぞれ回転テーブル2の半径方向に沿って5つ設けられている。分離ガス供給部41、42の詳細については後述する。なお、分離ガス供給部41、42は、それぞれ4つ以下であってもよく、6つ以上であってもよいが、ウエハWに成膜される膜の膜厚の面内均一性を容易に制御することができるという観点から、3つ以上であることが好ましく、5つ以上であることがより好ましい。また、
図3においては、複数の分離ガス供給部41、42の各々が回転テーブル2の回転方向において同じ位置に設けられている場合を示しているが、複数の分離ガス供給部41、42の各々が回転テーブル2の回転方向において異なる位置に設けられていてもよい。
【0018】
反応ガスノズル31、32、33には、回転テーブル2に向かって開口する複数のガス吐出孔35(後述)が、反応ガスノズル31、32、33の長さ方向に沿って、例えば10mmの間隔で配列されている。これにより、反応ガスノズル31、32、33から第1の反応ガス、第2の反応ガス、第3の反応ガスを回転テーブル2の上面に供給可能となっている。
【0019】
反応ガスノズル31の下方領域は、第1の反応ガスをウエハWに吸着させるための第1の処理領域P1となる。反応ガスノズル32の下方領域は、第1の処理領域P1においてウエハWに吸着した第1の反応ガスと反応する第2の反応ガスを供給し、反応生成物の分子層を生成する第2の処理領域P2となる。なお、反応生成物の分子層が、成膜される膜を構成する。反応ガスノズル33の下方領域は、第2の処理領域P2において生成した反応生成物(膜)に第3の反応ガスを供給し、反応生成物を改質する第3の処理領域P3となる。
【0020】
なお、第3の処理領域P3の上方には、必要に応じてプラズマ発生器80が設けられてもよい。
図3において、プラズマ発生器80は、破線で簡略化して示されている。プラズマ発生器80の詳細については後述する。
【0021】
なお、第1の反応ガスは、種々のガスであってよいが、成膜される膜の原料となる原料ガスが選択される。例えば、シリコン酸化膜(SiO
2膜)を成膜する場合には、例えば有機アミノシラン等のシリコン含有ガスが選択される。例えば、金属酸化膜を成膜する場合には、金属酸化膜の金属元素を含む反応ガスが選択される。例えば、金属酸化膜の一種である酸化チタン膜(TiO
2膜)を成膜する場合には、チタン(Ti)を含むTiCl
4等のガスが選択される。
【0022】
また、第2の反応ガスには、第1の反応ガスと反応して反応生成物を生成し得る反応ガスであれば、種々の反応ガスを用いることができる。例えば、SiO
2膜、金属酸化膜等の酸化膜を成膜する場合には酸化ガスが選択される。例えば、シリコン窒化膜(SiN膜)、金属窒化膜等の窒化膜を成膜する場合には窒化ガスが選択される。例えば、SiO
2膜を成膜する場合にはO
3等のガスが選択され、TiO
2膜を成膜する場合にはH
2O、H
2O
2等のガスが選択され、SiN膜、TiN膜を成膜する場合にはNH
3等のガスが選択される。
【0023】
また、第3の反応ガスには、第1の反応ガスと第2の反応ガスとが反応して生成される反応生成物の表面の水酸基(OH基)の少なくとも一部を脱離させて改質する種々の反応ガスを用いることができる。例えば、SiO
2膜を成膜する場合には、Arガスや、ArガスとO
2ガスとの混合ガスが選択される。
【0024】
図2及び
図3を参照すると、真空容器1内には2つの凸状部4が設けられている。凸状部4は、分離ガス供給部41、42と共に分離領域D1、D2(
図3)を構成するため、後述のとおり、回転テーブル2に向かって突出するように天板11の裏面に取り付けられている。また、凸状部4は、頂部が円弧状に切断された扇型の平面形状を有し、本実施形態においては、内円弧が突出部5(後述)に連結し、外円弧が、真空容器1の容器本体12の内周面に沿うように配置されている。
【0025】
図4は、
図1の成膜装置の分離領域を示す概略断面図であり、回転テーブル2の半径方向に沿った分離領域D1の概略断面を示している。
【0026】
図4に示されるように、凸状部4には、複数の分離ガス供給部41が回転テーブル2の半径方向に沿って所定の間隔で配置されている。複数の分離ガス供給部41の各々は複数のガス吐出孔41hと、複数のガス吐出孔41hに連通するガス導入ポート41aとを有する。複数のガス吐出孔41hは、分離ガス供給部41の長さ方向(回転テーブル2の半径方向)に沿って配列されている。ガス導入ポート41aは、配管114及び流量制御器124等を介して、分離ガス供給源134に接続されると共に、配管115及び流量制御器125等を介して、添加ガス供給源135に接続されている。
【0027】
分離ガス供給源134及び添加ガス供給源135は、配管114、115を介して流量制御器124、125により流量が制御された分離ガス及び/又は添加ガスを、ガス導入ポート41aを介して複数のガス吐出孔41hから真空容器1内に供給する。このとき、複数の流量制御器124、125の各々を独立して制御することにより、回転テーブル2の半径方向における分離ガスの供給流量及び添加ガスの供給流量を調整できる。
【0028】
添加ガスには、第1の反応ガスの吸着性を制御し得る反応ガスであれば、種々の反応ガスを用いることができる。例えば、SiO
2膜を成膜する場合には、例えばH
2ガス等の水素含有ガスが選択される。水素含有ガスは、Si含有ガスと酸化ガスとの反応により生成される反応生成物であるSiO
2の表面にOH基を形成し、Si含有ガスの吸着性を高める役割を有する。
【0029】
分離ガスとしては、Ar、He等の不活性ガスが選択される。
【0030】
本実施形態では、複数の分離ガス供給部41のうちの少なくとも1つの分離ガス供給部41から添加ガスと分離ガスとを含む第4の反応ガスを供給し、残りの分離ガス供給部41から添加ガスを供給することなく分離ガスのみを供給する。これにより、第1の反応ガスの吸着性を制御することができる。
【0031】
なお、
図4では、回転テーブル2の半径方向に沿って設けられる複数の分離ガス供給部41が同一の分離ガス供給源134及び同一の添加ガス供給源135に接続されているが、これに限定されない。複数の分離ガス供給部41の各々が異なる分離ガス供給源134及び異なる添加ガス供給源135に接続されていてもよい。この場合、複数の分離ガス供給部41のそれぞれに対応して複数の分離ガス供給源134及び複数の添加ガス供給源135が設けられていてもよい。
【0032】
また、もう一つの凸状部4に形成される複数の分離ガス供給部42についても、複数の分離ガス供給部41と同様に形成されていてもよい。即ち、複数の分離ガス供給部42の各々は複数のガス吐出孔42hと、複数のガス吐出孔42hに連通するガス導入ポート42aとを有する。ガス導入ポート42aは、配管114及び流量制御器124等を介して、分離ガス供給源134に接続されると共に、配管115及び流量制御器125等を介して、添加ガス供給源135に接続されている。
【0033】
図5は、
図1の成膜装置の回転テーブルの同心円に沿った真空容器の概略断面図であり、反応ガスノズル31から反応ガスノズル32まで回転テーブル2の同心円に沿った真空容器1の断面を示している。図示のとおり、天板11の裏面に凸状部4が取り付けられている。このため、真空容器1内には、凸状部4の下面である平坦な低い天井面(第1の天井面44)と、第1の天井面44の周方向の両側に位置する、第1の天井面44よりも高い天井面(第2の天井面45)とが存在する。第1の天井面44は、頂部が円弧状に切断された扇型の平面形状を有している。また、図示のとおり、凸状部4には周方向中央において、ガス吐出孔42hが形成され、ガス吐出孔42hはガス導入ポート42aと連通している。また、第2の天井面45の下方の空間に反応ガスノズル31、32がそれぞれ設けられている。反応ガスノズル31、32は、第2の天井面45から離間してウエハWの近傍に設けられている。なお、
図5に示されるように、第2の天井面45の下方の右側の空間481に反応ガスノズル31が設けられ、第2の天井面45の下方の左側の空間482に反応ガスノズル32が設けられる。
【0034】
第1の天井面44は、狭隘な空間である分離空間Hを回転テーブル2に対して形成している。分離ガス供給部42のガス吐出孔42hから分離ガス及び/又は添加ガスが供給されると、分離ガス及び/又は添加ガスは、分離空間Hを通して空間481及び空間482へ向かって流れる。言い換えれば、分離ガス及び/又は添加ガスは、回転テーブル2の回転方向に沿って流れる。このとき、分離空間Hの容積は空間481及び482の容積よりも小さいため、分離ガス及び/又は添加ガスにより分離空間Hの圧力を空間481及び482の圧力に比べて高くすることができる。すなわち、空間481及び482の間に圧力の高い分離空間Hが形成される。また、分離空間Hから空間481及び482へ流れ出る分離ガス及び/又は添加ガスが、第1の処理領域P1からの第1の反応ガスと、第2の処理領域P2からの第2の反応ガスとに対するカウンターフローとして働く。したがって、第1の処理領域P1からの第1の反応ガスと、第2の処理領域P2からの第2の反応ガスとが分離空間Hにより分離される。よって、真空容器1内において第1の反応ガスと第2の反応ガスとが混合し、反応することが抑制される。
【0035】
なお、回転テーブル2の上面に対する第1の天井面44の高さh1は、分離空間Hの圧力を空間481及び482の圧力に比べて高くするのに適した高さに設定することが好ましい。具体的には、成膜時の真空容器1内の圧力、回転テーブル2の回転速度、分離ガス及び添加ガスの供給流量等を考慮して設定することができる。
【0036】
一方、天板11の下面には、回転テーブル2を固定するコア部21の外周を囲む突出部5(
図2及び
図3)が設けられている。突出部5は、本実施形態においては、凸状部4における回転中心側の部位と連続しており、その下面が第1の天井面44と同じ高さに形成されている。
【0037】
先に参照した
図1は、
図3のI−I'線に沿った断面図であり、第2の天井面45が設けられている領域を示している。一方、
図6は、第1の天井面44が設けられている領域を示す断面図である。
【0038】
図6に示されるように、扇型の凸状部4の周縁部(真空容器1の外縁側の部位)には、回転テーブル2の外端面に対向するようにL字型に屈曲する屈曲部46が形成されている。屈曲部46は、凸状部4と同様に、分離領域D1、D2の両側から反応ガスが侵入することを抑制して、これらの反応ガスの混合を抑制する。扇型の凸状部4は天板11に設けられ、天板11が容器本体12から取り外せるようになっていることから、屈曲部46の外周面と容器本体12との間には僅かに隙間がある。屈曲部46の内周面と回転テーブル2の外端面との隙間、及び屈曲部46の外周面と容器本体12との隙間は、例えば回転テーブル2の上面に対する第1の天井面44の高さと同様の寸法に設定されている。
【0039】
容器本体12の内周壁は、分離領域D1、D2においては、
図6に示されるように屈曲部46の外周面と接近して垂直面に形成されている。一方、分離領域D1、D2以外の部位においては、
図1に示されるように例えば回転テーブル2の外端面と対向する部位から底部14に亘って外方側に窪んでいる。以下、説明の便宜上、概ね矩形の断面形状を有する窪んだ部分を排気領域と記す。具体的には、第1の処理領域P1に連通する排気領域を第1の排気領域E1と記し、第2の処理領域P2及び第3の処理領域P3に連通する領域を第2の排気領域E2と記す。これらの第1の排気領域E1及び第2の排気領域E2の底部には、
図1から
図3に示されるように、それぞれ、第1の排気口610及び第2の排気口620が形成されている。第1の排気口610及び第2の排気口620は、
図1に示されるように、各々、排気管630を介して真空排気手段である例えば真空ポンプ640に接続されている。また、真空ポンプ640と排気管630との間に、圧力制御器650が設けられている。
【0040】
なお、
図2及び
図3に示されるように、第2の処理領域P2と第3の処理領域P3との間に分離領域は設けられていないが、
図3においては、プラズマ発生器80として示された領域に、回転テーブル2上の空間を仕切る筐体が設けられる。筐体は、プラズマ発生器80の搭載領域ともなるが、プラズマ発生器80が搭載されない場合であっても、第2の処理領域P2と第3の処理領域P3とを仕切る筐体は設けられることが好ましい。なお、この点の詳細については後述する。
【0041】
回転テーブル2と真空容器1の底部14との間の空間には、
図1及び
図6に示されるように、加熱手段であるヒータユニット7が設けられ、回転テーブル2を介して回転テーブル2上のウエハWが、プロセスレシピで決められた温度に加熱される。回転テーブル2の周縁付近の下方側には、リング状のカバー部材71が設けられている(
図6)。カバー部材71により、回転テーブル2の上方空間から排気領域E1、E2に至るまでの雰囲気とヒータユニット7が置かれている雰囲気とを区画して回転テーブル2の下方領域へのガスの侵入が抑えられる。カバー部材71は、回転テーブル2の外縁部及び外縁部よりも外周側を下方側から臨むように設けられた内側部材71aと、内側部材71aと真空容器1の内壁面との間に設けられた外側部材71bと、を備えている。外側部材71bは、分離領域D1、D2において凸状部4の外縁部に形成された屈曲部46の下方にて、屈曲部46と近接して設けられている。内側部材71aは、回転テーブル2の外縁部下方(及び外縁部よりも僅かに外側の部分の下方)において、ヒータユニット7を全周に亘って取り囲んでいる。
【0042】
ヒータユニット7が配置されている空間よりも回転中心側の部位における底部14は、回転テーブル2の下面の中心部付近におけるコア部21に接近するように上方側に突出して突出部12aをなしている。突出部12aとコア部21との間は狭い空間になっており、また底部14を貫通する回転軸22の貫通穴の内周面と回転軸22との隙間が狭くなっていて、これら狭い空間はケース体20に連通している。
【0043】
ケース体20には、パージガスであるArガスを狭い空間内に供給してパージするためのパージガス供給管72が設けられている。また、真空容器1の底部14には、ヒータユニット7の下方において周方向に所定の角度間隔で、ヒータユニット7の配置空間をパージするための複数のパージガス供給管73が設けられている(
図6には一つのパージガス供給管73を示す)。
【0044】
また、ヒータユニット7と回転テーブル2との間には、ヒータユニット7が設けられた領域へのガスの侵入を抑えるために、外側部材71bの内周壁(内側部材71aの上面)から突出部12aの上端部との間を周方向に亘って覆う蓋部材7aが設けられている。蓋部材7aは例えば石英により形成される。
【0045】
また、真空容器1の天板11の中心部には分離ガス供給管51が接続されていて、天板11とコア部21との間の空間52に分離ガスであるArガスを供給するように構成されている。空間52に供給された分離ガスは、突出部5と回転テーブル2との狭い空間50を介して回転テーブル2のウエハが載置される領域側の表面に沿って周縁に向けて吐出される。空間50は分離ガスにより空間481及び空間482よりも高い圧力に維持され得る。したがって、空間50により、第1の処理領域P1に供給される第1の反応ガスと第2の処理領域P2に供給される第2の反応ガスとが、中心領域Cを通って混合することが抑制される。すなわち、空間50(又は中心領域C)は分離空間H(又は分離領域D1、D2)と同様に機能することができる。
【0046】
さらに、真空容器1の側壁には、
図2及び
図3に示されるように、外部の搬送アーム10と回転テーブル2との間で基板であるウエハWの受け渡しを行うための搬送口15が形成されている。搬送口15は図示しないゲートバルブにより開閉される。
【0047】
回転テーブル2におけるウエハ載置領域である凹部24には、回転テーブル2の下方側において受け渡し位置に対応する部位に凹部24を貫通してウエハWを裏面から持ち上げるための受け渡し用の昇降ピン及び昇降機構(いずれも図示せず)が設けられている。そして、搬送口15に対向する位置にて搬送アーム10との間でウエハWの受け渡しが行われる。
【0048】
次に、
図7から
図9までを参照しながら、プラズマ発生器80について説明する。
図7は、
図1の成膜装置のプラズマ発生器を示す概略断面図であり、回転テーブルの半径方向に沿ったプラズマ発生器の概略断面を示している。
図8は、
図1の成膜装置のプラズマ発生器を示す他の概略断面図であり、回転テーブルの半径方向と直交する方向に沿ったプラズマ発生器の概略断面を示している。
図9は、
図1の成膜装置のプラズマ発生器を示す概略上面図であり、プラズマ発生器の概略上面を示している。なお、図示の便宜上、これらの図において一部の部材を簡略化している。
【0049】
図7を参照すると、プラズマ発生器80は、高周波透過性の材料により形成され、上面から窪んだ凹部を有し、フレーム部材81と、ファラデー遮蔽板82と、絶縁板83と、アンテナ85とを備える。フレーム部材81は、天板11に形成された開口部11aに嵌め込まれている。ファラデー遮蔽板82は、フレーム部材81の凹部内に収容され、上部が開口した略箱状の形状を有する。絶縁板83は、ファラデー遮蔽板82の底面上に配置されている。アンテナ85は、絶縁板83の上方に支持され、略八角形の上面形状を有するコイル状に形成されている。
【0050】
天板11の開口部11aは複数の段部を有しており、そのうちの一つの段部には全周に亘って溝部が形成され、溝部に例えばO−リング等のシール部材81aが嵌め込まれている。一方、フレーム部材81は、開口部11aの段部に対応する複数の段部を有しており、フレーム部材81を開口部11aに嵌め込むと、複数の段部のうちの一つの段部の裏面が、開口部11aの溝部に嵌め込まれたシール部材81aと接する。これにより、天板11とフレーム部材81との間の気密性が維持される。また、
図7に示されるように、天板11の開口部11aに嵌め込まれるフレーム部材81の外周に沿った押圧部材81cが設けられ、これにより、フレーム部材81が天板11に対して下方に押し付けられる。このため、天板11とフレーム部材81との間の気密性がより確実に維持される。
【0051】
フレーム部材81の下面は、真空容器1内の回転テーブル2に対向しており、下面の外周には全周に亘って下方に(回転テーブル2に向かって)突起する突起部81bが設けられている。突起部81bの下面は回転テーブル2の上面に近接しており、突起部81bと、回転テーブル2の上面と、フレーム部材81の下面とにより回転テーブル2の上方に空間(以下、第3の処理領域P3)が画成されている。なお、突起部81bの下面と回転テーブル2の上面との間隔は、分離空間H(
図5)における第1の天井面44の回転テーブル2の上面に対する高さh1とほぼ同じであってよい。
【0052】
また、第3の処理領域P3には、突起部81bを貫通した反応ガスノズル33が延びている。反応ガスノズル33には、本実施形態においては、
図7に示されるように、第3の反応ガスが充填される第3の反応ガス供給源132が、流量制御器122を介して配管112により接続されている。流量制御器122により流量の制御された第3の反応ガスが、第3の処理領域P3に供給される。
【0053】
また、反応ガスノズル33には、その長手方向に沿って所定の間隔(例えば10mm)で複数のガス吐出孔35が形成されており、ガス吐出孔35から上述の第3の反応ガスが吐出される。ガス吐出孔35は、
図8に示されるように、回転テーブル2に対して垂直な方向から回転テーブル2の回転方向の上流側に向かって傾いている。このため、反応ガスノズル33から供給されるガスは、回転テーブル2の回転方向と逆の方向に、具体的には、突起部81bの下面と回転テーブル2の上面との間の隙間に向かって吐出される。これにより、回転テーブル2の回転方向に沿ってプラズマ発生器80よりも上流側に位置する第2の天井面45の下方の空間から反応ガスや分離ガスが、第3の処理領域P3内へ流れ込むのが抑止される。また、上述のとおり、フレーム部材81の下面の外周に沿って形成される突起部81bが回転テーブル2の上面に近接しているため、反応ガスノズル33からのガスにより第3の処理領域P3内の圧力を容易に高く維持することができる。これによっても、反応ガスや分離ガスが第3の処理領域P3内へ流れ込むのが抑止される。
【0054】
このように、フレーム部材81は、第3の処理領域P3を第2の処理領域P2から分離するための役割を担っている。よって、本発明の実施形態に係る成膜装置は、プラズマ発生器80の全体を必ずしも備えていなくてよいが、第3の処理領域P3を第2の処理領域P2から区画し、第2の反応ガスの混入を防ぐため、フレーム部材81を備えているものとする。
【0055】
ファラデー遮蔽板82は、金属等の導電性材料により形成され、図示は省略するが接地されている。
図9に示されるように、ファラデー遮蔽板82の底部には、複数のスリット82sが形成されている。各スリット82sは、略八角形の平面形状を有するアンテナ85の対応する辺とほぼ直交するように延びている。
【0056】
また、ファラデー遮蔽板82は、
図8及び
図9に示されるように、上端の2箇所において外側に折れ曲がる支持部82aを有している。支持部82aがフレーム部材81の上面に支持されることにより、フレーム部材81内の所定の位置にファラデー遮蔽板82が支持される。
【0057】
絶縁板83は、例えば石英ガラスにより作製され、ファラデー遮蔽板82の底面よりも僅かに小さい大きさを有し、ファラデー遮蔽板82の底面に載置される。絶縁板83は、ファラデー遮蔽板82とアンテナ85とを絶縁する一方、アンテナ85から放射される高周波を下方へ透過させる。
【0058】
アンテナ85は、平面形状が略八角形となるように銅製の中空管(パイプ)を例えば3重に巻き回すことにより形成される。パイプ内に冷却水を循環させることができ、これにより、アンテナ85へ供給される高周波によりアンテナ85が高温に加熱されるのが防止される。また、アンテナ85には立設部85aが設けられており、立設部85aに支持部85bが取り付けられている。支持部85bにより、アンテナ85がファラデー遮蔽板82内の所定の位置に維持される。また、支持部85bには、マッチングボックス86を介して高周波電源87が接続されている。高周波電源87は、例えば13.56MHzの周波数を有する高周波を発生することができる。
【0059】
このような構成を有するプラズマ発生器80によれば、マッチングボックス86を介して高周波電源87からアンテナ85に高周波電力を供給すると、アンテナ85により電磁界が発生する。電磁界のうちの電界成分は、ファラデー遮蔽板82により遮蔽されるため、下方へ伝播することはできない。一方、磁界成分はファラデー遮蔽板82の複数のスリット82sを通して第3の処理領域P3内へ伝播する。磁界成分により、反応ガスノズル33から所定の流量比で第3の処理領域P3に供給される第3の反応ガスが活性化される。
【0060】
また、本実施形態による成膜装置には、
図1に示されるように、装置全体の動作のコントロールを行うためのコンピュータからなる制御部100が設けられている。制御部100のメモリ内には、制御部100の制御の下に、後述する成膜方法を成膜装置に実施させるプログラムが格納されている。プログラムは後述の成膜方法を実行するようにステップ群が組まれており、ハードディスク、コンパクトディスク、光磁気ディスク、メモリカード、フレキシブルディスク等の媒体102に記憶されている。媒体102に記憶されたプログラムは、所定の読み取り装置により記憶部101へ読み込まれ、制御部100内にインストールされる。
【0061】
なお、制御部100は、分離ガス供給部41、42に供給する添加ガス及び分離ガスの流量を調整する流量制御器124、125を制御してよい。これにより、回転テーブル2の半径方向において、分離ガス及び添加ガスを供給する流量を調整することができるため、回転テーブル2の半径方向における第1の反応ガスの吸着性を制御することができる。その結果、ウエハWに成膜される膜の膜厚の面内均一性を制御することができる。
【0062】
〔成膜方法〕
次に、本発明の実施形態に係る成膜方法について、上述の成膜装置により、トレンチが形成されているシリコンウエハを使用し、トレンチの内面にSiO
2膜を成膜する場合を例に挙げて説明する。
【0063】
なお、反応ガスノズル31から有機アミノシランガスを含む原料ガスが供給され、反応ガスノズル32からO
2ガスを含む酸化ガスが供給され、反応ガスノズル33からO
2ガス、Arガスを含む改質ガスが供給される場合を例に挙げて説明する。また、反応ガスノズル33から供給される改質ガスは、プラズマ発生器80により活性化されて供給される場合を例に挙げて説明する。また、分離ガス供給部41が回転テーブル2の半径方向に沿って5つ設けられている場合を例に挙げて説明する。そして、回転テーブル2の中心に最も近い位置の分離ガス供給部41からArガスを含む分離ガス及びH
2ガスを含む添加ガスが供給され、他の分離ガス供給部41からArガスを含む分離ガスのみが供給される。
【0064】
まず、図示しないゲートバルブを開き、外部から搬送アーム10(
図3)により搬送口15(
図2及び
図3)を介してウエハWを回転テーブル2の凹部24内に受け渡す。この受け渡しは、凹部24が搬送口15に対向する位置に停止したときに凹部24の底面の貫通孔を介して真空容器1の底部側から不図示の昇降ピンが昇降することにより行われる。このようなウエハWの受け渡しを、回転テーブル2を間欠的に回転させて行い、回転テーブル2の5つの凹部24内にそれぞれウエハWを載置する。
【0065】
続いて、ゲートバルブを閉じ、真空ポンプ640により到達可能真空度にまで真空容器1内を排気する。その後、分離ガス供給部41、42から分離ガスであるArガスを所定の流量で吐出し、分離ガス供給管51及びパージガス供給管72、73からArガスを所定の流量で吐出する。これに伴い、圧力制御器650(
図1)により真空容器1内を予め設定した処理圧力に制御する。次いで、回転テーブル2を時計回りに回転させながらヒータユニット7によりウエハWを加熱する。回転テーブル2の回転速度は、用途に応じて種々の回転速度に設定することができる。ヒータユニット7によりウエハWを加熱する温度は、用途に応じて種々の温度に設定することができる。
【0066】
この後、反応ガスノズル31(
図2及び
図3)から有機アミノシランガスを含む原料ガスを供給し(吸着工程)、反応ガスノズル32からO
2ガスを含む酸化ガスを供給する(反応工程)。また、反応ガスノズル33からO
2ガス、Arガスを含む改質ガスを供給する(改質工程)。さらに、複数の分離ガス供給部41のうち、回転テーブル2の半径方向の中心部側の分離ガス供給部41からH
2ガスが添加されたArガスを供給する(水酸基形成工程)。
【0067】
回転テーブル2の回転により、ウエハWは、第1の処理領域P1、分離領域D2、第2の処理領域P2、第3の処理領域P3、分離領域D1をこの順番に繰り返して通過する(
図3参照)。なお、回転テーブル2の回転により、各領域P1〜P3、D1〜D2から処理が開始されるウエハWが各々存在するが、説明の便宜上、第1の処理領域P1からウエハWが通過したと考えて説明する。
【0068】
まず、ウエハWが第1の処理領域P1を通過することにより、有機アミノシランガスを含む原料ガスが供給され、ウエハWの表面及びトレンチの内面に有機アミノシランが吸着する。
【0069】
続いて、ウエハWが分離領域D2を通過してArガスを含む分離ガスが供給されてパージされた後、第2の処理領域P2を通過することにより、有機アミノシランと反応して反応生成物SiO
2を生成するO
2ガスを含む酸化ガスが供給される。O
2ガスを含む酸化ガスの供給により、ウエハWの表面及びトレンチの内面に吸着した有機アミノシランとO
2ガスとが反応し、SiO
2膜の分子層が反応生成物として形成される。このとき、SiO
2膜の分子層の表面には、有機アミノシランが吸着しやすいOH基が形成される。
【0070】
続いて、ウエハWが第3の処理領域P3を通過することにより、活性化されたO
2ガス、Arガスを含む改質ガスが供給される。活性化されたO
2ガス、Arガスを含む改質ガスは、ウエハWの表面及びトレンチの上部(開口部の側)に到達しやすく、トレンチの底部付近には到達しにくい。また、活性化されたO
2ガス、Arガスを含む改質ガスは、SiO
2膜の表面のOH基を脱離させる。よって、ウエハWの表面及びトレンチの上部では、SiO
2膜の分子層の表面に形成されたOH基の一部が脱離するが、ウエハWのトレンチの底部付近では、SiO
2膜の分子層の表面に形成されたOH基がほとんど脱離しない。このとき、上流側(回転テーブル2の中心部側)で脱離したOH基は、第2の排気口620に向かう処理ガスの流れに沿って下流側(回転テーブル2の半径方向の外周側)に拡散する。これにより、処理ガスの流れの下流側においてウエハWの表面及びトレンチの内面に形成されたSiO
2膜の分子層の表面にOH基が再び付着する場合がある。この場合、上流側よりも下流側におけるOH基の量が多くなるようなOH基のウエハWの面内における不均衡が生じる。また、第2の排気口620に向かう処理ガスの流れに沿って下流側に拡散するOH基は、OH基が脱離したウエハWと隣接するウエハWの表面及びトレンチの内面に付着する場合もある。この場合、ウエハWの面間におけるOH基の不均衡が生じる。
【0071】
続いて、ウエハWが分離領域D1を通過することにより、Arガスを含む分離ガス及びH
2ガスを含む添加ガスが供給される。このとき、回転テーブル2の半径方向の中心から最も近い位置の分離ガス供給部41からArガスを含む分離ガス及びH
2ガスを含む添加ガスが供給され、他の4つの分離ガス供給部41からArガスを含む分離ガスのみが供給される。これにより、上流側(回転テーブル2の中心部側)においてウエハWの表面及びトレンチの内面にOH基が選択的(局所的)に形成される。なお、Arガスの供給流量に対するH
2ガスの供給流量の割合は、トレンチの底部付近に形成されるOH基の量がトレンチの表面に形成されるOH基の量よりも多い状態が維持される割合に設定される。
【0072】
続いて、ウエハWが第1の処理領域P1を通過することにより、有機アミノシランガスが供給され、ウエハWの表面及びトレンチの内面のSiO
2膜の分子層の上に有機アミノシランが吸着する。有機アミノシランガスは、OH基が存在しない領域にはあまり吸着せず、OH基が存在する領域に多く吸着する。よって、OH基が存在するトレンチの底部付近に有機アミノシランが多く吸着する。また、ウエハWの面内及び面間においてOH基が略均一に形成されているので、ウエハWの面内及び面間において有機アミノシランが略均一に吸着する。
【0073】
続いて、ウエハWが分離領域D2を通過してArガスを含む分離ガスが供給されてパージされた後、第2の処理領域P2を通過することにより、有機アミノシランと反応して反応生成物SiO
2を生成するO
2ガスを含む酸化ガスが供給される。O
2ガスを含む酸化ガスの供給により、ウエハWの表面及びトレンチの内面に吸着した有機アミノシランとO
2ガスとが反応し、SiO
2膜の分子層が反応生成物として形成される。このとき、有機アミノシランは、トレンチの底部付近に多く吸着しているので、トレンチの内面の底部付近に多くのSiO
2膜が形成される。よって、ボトムアップ性の高い埋め込み成膜が可能となる。また、ウエハWの面内及び面間において有機アミノシランが略均一に吸着している。よって、ウエハWの面内及び面間において略均一な膜厚を有するSiO
2膜の成膜が可能となる。
【0074】
以下、各反応ガスを供給しながら回転テーブル2を繰り返し回転させることにより、トレンチの開口部が塞がれない状態で、かつ、ウエハWの面内で略均一に、底部側からSiO
2膜が堆積する。その結果、シームレスな膜でトレンチを埋め込むことができ、ボイド等を発生させることなく、かつ、面内均一性及び面間均一性よく、高品質な埋め込み成膜を行うことができる。
【0075】
以上に説明したように、本実施形態の成膜方法によれば、原料ガスを吸着させる前に、原料ガスの吸着性を制御可能な添加ガスを供給してOH基の量を調整しながらALD(Atomic Layer Deposition)法による成膜を行う。これにより、ウエハWに成膜される膜の膜厚の面内均一性及び面間均一性を制御することができる。
【0076】
〔シミュレーション結果〕
次に、本発明の実効性を示すシミュレーション結果について、
図10から
図13に基づき説明する。
図10から
図13は、分離領域D1におけるH
2ガスの流速分布及び濃度分布を示す図である。なお、
図10から
図13において、(a)はH
2ガスの流速分布を示し、(b)はH
2ガスの濃度分布を示している。
【0077】
本シミュレーションでは、回転テーブル2の半径方向に沿って設けられた5つの分離ガス供給部41−1〜5のうちの1つから微量のH
2ガスが添加されたArガスを供給し、他の4つからArガスのみを供給したときのH
2ガスの流速分布及び濃度分布を確認した。
【0078】
図10は、回転テーブルの中心から最も近い位置に設けられた分離ガス供給部41−1からH
2ガスが添加されたArガスを供給し、他の4つからArガスのみを供給したときのH
2ガスの流速分布及び濃度分布を示している。なお、分離ガス供給部41−1から供給されるH
2ガス/Arガスの流量は0.2sccm/1slm、分離ガス供給部41−2〜5から供給されるArガスの流量は1slmである。
【0079】
図10(a)に示されるように、分離ガス供給部41−1から供給されたH
2ガスは、狭隘な空間である分離領域D1(分離空間H)を回転テーブルの回転方向に沿って流れることが分かる。また、
図10(b)に示されるように、分離ガス供給部41−1から供給されたH
2ガスの濃度は、回転テーブルの半径方向において分離ガス供給部41−1が設けられている領域で高くなっていることが分かる。このように、分離ガス供給部41−1からH
2ガスが添加されたArガスを供給することにより、回転テーブルの半径方向における分離ガス供給部41−1が設けられている領域に選択的(局所的)にH
2ガスを供給できる。
【0080】
図11は、回転テーブルの中心から2番目に近い位置に設けられた分離ガス供給部41−2からH
2ガスが添加されたArガスを供給し、他の4つからArガスのみを供給したときのH
2ガスの流速分布及び濃度分布を示している。なお、分離ガス供給部41−2から供給されるH
2ガス/Arガスの流量は0.2sccm/1slm、分離ガス供給部41−1、41−3〜5から供給されるArガスの流量は1slmである。
【0081】
図11(a)に示されるように、分離ガス供給部41−2から供給されたH
2ガスは、狭隘な空間である分離領域D1(分離空間H)を回転テーブルの回転方向に沿って流れることが分かる。また、
図11(b)に示されるように、分離ガス供給部41−2から供給されたH
2ガスの濃度は、回転テーブルの半径方向において分離ガス供給部41−2が設けられている領域で高くなっていることが分かる。このように、分離ガス供給部41−2からH
2ガスが添加されたArガスを供給することにより、回転テーブルの半径方向における分離ガス供給部41−2が設けられている領域に選択的(局所的)にH
2ガスを供給できる。
【0082】
図12は、回転テーブルの中心から3番に近い位置に設けられた分離ガス供給部41−3からH
2ガスが添加されたArガスを供給し、分離ガス供給部41−1〜2、41−4〜5からArガスのみを供給したときのH
2ガスの流速分布及び濃度分布を示している。なお、分離ガス供給部41−3から供給されるH
2ガス/Arガスの流量は0.2sccm/1slm、分離ガス供給部41−1〜2から供給されるArガスの流量は2slm、分離ガス供給部41−4〜5から供給されるArガスの流量は4slmである。
【0083】
図12(a)に示されるように、分離ガス供給部41−3から供給されたH
2ガスは、狭隘な空間である分離領域D1(分離空間H)を回転テーブルの回転方向に流れることが分かる。また、
図12(b)に示されるように、分離ガス供給部41−3から供給されたH
2ガスの濃度は、回転テーブルの半径方向において分離ガス供給部41−3が設けられている領域で高くなっていることが分かる。このように、分離ガス供給部41−3からH
2ガスが添加されたArガスを供給することにより、回転テーブルの半径方向における分離ガス供給部41−3が設けられている領域に選択的(局所的)にH
2ガスを供給できる。なお、
図12の例では、分離ガス供給部41−4〜5から供給するArガスの流量が分離ガス供給部41−1〜2から供給するArガスの流量よりも大きくなるように設定した。これにより、分離ガス供給部41−3から供給され、回転テーブルの半径方向の外周側へ向かうH
2ガスの流れは、分離ガス供給部41−4〜5から供給される流量が大きいArガスによって遮られる。このため、分離ガス供給部41−3から供給されたH
2ガスの大部分は、回転テーブルの回転方向に流れる。このようにArガスのみを供給する分離ガス供給部41−1〜2、41−4〜5から供給する流量を調整することにより、H
2ガスを更に選択的(局所的)に供給できる。
【0084】
図13は、回転テーブルの中心から4番目に近い位置に設けられた分離ガス供給部41−4からH
2ガスが添加されたArガスを供給し、他の4つからArガスのみを供給したときのH
2ガスの流速分布及び濃度分布を示している。なお、分離ガス供給部41−4から供給されるH
2ガス/Arガスの流量は0.2sccm/1slm、分離ガス供給部41−1〜3、41−5から供給されるArガスの流量は1slmである。
【0085】
図13(a)に示されるように、分離ガス供給部41−4から供給されたH
2ガスは、狭隘な空間である分離領域D1(分離空間H)を回転テーブルの回転方向に沿って流れることが分かる。また、
図13(b)に示されるように、分離ガス供給部41−4から供給されたH
2ガスの濃度は、回転テーブルの半径方向において分離ガス供給部41−4が設けられている領域で高くなっていることが分かる。このように、分離ガス供給部41−4からH
2ガスが添加されたArガスを供給することにより、回転テーブルの半径方向における分離ガス供給部41−4が設けられている領域に選択的(局所的)にH
2ガスを供給できる。
【0086】
〔実験結果〕
次に、本発明の実効性を示す実験結果について説明する。
図14は、H
2ガスの供給流量とウエハに成膜されたSiO
2膜の膜厚との関係を示す図である。
【0087】
本実験では、H
2ガスを活性化することなくウエハに供給したときに、有機アミノシランガスの吸着性が向上する(吸着阻害性が低減する)役割を果たせるか否かを確認した。なお、本実験では、H
2ガスの供給流量を0sccm、6sccm、100sccm、200sccmに変化させたときのSiO
2膜の膜厚を測定し、H
2ガスの供給流量とウエハに成膜されたSiO
2膜の膜厚との関係を確認した。
【0088】
具体的には、ウエハWの表面に、有機アミノシランガス、活性化されたArガスとO
2ガスとの混合ガス、活性化されていないH
2ガスをこの順番に供給し、SiO
2膜の成膜を行った。なお、有機アミノシランガスは第1の反応ガスの一例であり、ArガスとO
2ガスとの混合ガスは第2の反応ガスの一例であり、H
2ガスは添加ガスの一例である。
【0089】
図14に示されるように、活性化されたArガスとO
2ガスとの混合ガスを供給した後であって、有機アミノシランガスを供給する前に、活性化されていないH
2ガスを供給することにより、ウエハWに成膜されるSiO
2膜の膜厚が増加していることが分かる。また、H
2ガスの供給流量を増加させるほどSiO
2膜の膜厚の増加していることが分かる。このように、活性化されたArガスとO
2ガスとの混合ガスを供給した後であって、有機アミノシランガスを供給する前に、活性化されていないH
2ガスを供給することにより、有機アミノシランガスの吸着性を向上させることができる。
【0090】
この性質を利用し、本発明の実施形態に示したように、回転テーブルの半径方向(ウエハWの径方向)に沿ってArガスに対するH
2ガスの添加量を調整することにより、ウエハWに成膜される膜の径方向における膜厚を制御することができる。即ち、面内均一性を制御することができる。
【0091】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳説したが、本発明は、上述した実施形態に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、上述した実施形態に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0092】
上記の実施形態では、ウエハWの表面に形成されたトレンチに埋め込むようにSiO
2膜を成膜しているが、これに限定されない。例えば、ウエハWの表面に形成されたビアに埋め込むようにSiO
2膜を成膜してもよい。また、トレンチやビア等の凹部が形成されていないウエハWの表面にSiO
2膜を成膜してもよい。