特許第6602396号(P6602396)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6602396近赤外線吸収組成物、近赤外線カットフィルタの製造方法、近赤外線カットフィルタ、固体撮像素子、カメラモジュール、赤外線センサおよび赤外線吸収剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6602396
(24)【登録日】2019年10月18日
(45)【発行日】2019年11月6日
(54)【発明の名称】近赤外線吸収組成物、近赤外線カットフィルタの製造方法、近赤外線カットフィルタ、固体撮像素子、カメラモジュール、赤外線センサおよび赤外線吸収剤
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/22 20060101AFI20191028BHJP
   C09K 3/00 20060101ALI20191028BHJP
   C08F 2/44 20060101ALI20191028BHJP
   G02B 5/28 20060101ALI20191028BHJP
   C08L 101/12 20060101ALI20191028BHJP
   C08K 3/10 20180101ALI20191028BHJP
【FI】
   G02B5/22
   C09K3/00 105
   C08F2/44 B
   G02B5/28
   C08L101/12
   C08K3/10
【請求項の数】9
【全頁数】67
(21)【出願番号】特願2017-562834(P2017-562834)
(86)(22)【出願日】2017年1月18日
(86)【国際出願番号】JP2017001481
(87)【国際公開番号】WO2017126528
(87)【国際公開日】20170727
【審査請求日】2018年6月5日
(31)【優先権主張番号】特願2016-8716(P2016-8716)
(32)【優先日】2016年1月20日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2016-178670(P2016-178670)
(32)【優先日】2016年9月13日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】特許業務法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】川島 敬史
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 晃逸
(72)【発明者】
【氏名】人見 誠一
(72)【発明者】
【氏名】大河原 昂広
【審査官】 小川 亮
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−197170(JP,A)
【文献】 特開2015−028621(JP,A)
【文献】 特開2015−043061(JP,A)
【文献】 特開2015−210478(JP,A)
【文献】 特開2015−158662(JP,A)
【文献】 特開平10−338521(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/22
C08F 2/44
C08K 3/10
C08L 101/12
C09K 3/00
G02B 5/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶剤および硬化性化合物から選ばれる少なくとも1種と
赤外線吸収化合物である金属化合物と
前記金属化合物に含まれる金属原子とは異なる金属原子であって、Al、Zn、Li、Na、K、Mg、Ca、Ba、Ti、V、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、PtおよびAgから選ばれる少なくとも一種の金属原子を含む金属成分と、を含み、
前記金属化合物が銅化合物であり、
前記金属成分は、Li、Na、K、Ca、FeおよびAgを少なくとも含み、
前記銅化合物に含まれる金属原子100質量部に対し、前記金属成分に含まれるAl、Zn、Li、Na、K、Mg、Ca、Ba、Ti、V、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、PtおよびAgの合計量が0.005〜1質量部である、近赤外線吸収組成物。
【請求項2】
前記硬化性化合物が、架橋性基を有する化合物を含む、請求項に記載の近赤外線吸収組成物。
【請求項3】
請求項1または2に記載の近赤外線吸収組成物を用いて、近赤外線吸収組成物層を形成する工程を含む、近赤外線カットフィルタの製造方法。
【請求項4】
請求項1または2に記載の近赤外線吸収組成物を硬化して得られた近赤外線カットフィルタ。
【請求項5】
誘電体多層膜および紫外線吸収膜から選ばれる少なくとも1種を有する、請求項に記載の近赤外線カットフィルタ。
【請求項6】
請求項4または5に記載の近赤外線カットフィルタを有する固体撮像素子。
【請求項7】
請求項4または5に記載の近赤外線カットフィルタを有するカメラモジュール。
【請求項8】
請求項4または5に記載の近赤外線カットフィルタを有する赤外線センサ。
【請求項9】
赤外線吸収化合物である金属化合物と
前記金属化合物に含まれる金属原子とは異なる金属原子を含む金属成分とを含み、
前記金属化合物が銅化合物であり、
前記金属成分が、前記金属化合物に含まれる金属原子とは異なる金属原子であって、Al、Zn、Li、Na、K、Mg、Ca、Ba、Ti、V、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、PtおよびAgから選ばれる少なくとも一種の金属原子を含み、かつ、前記金属成分は、Li、Na、K、Ca、FeおよびAgを少なくとも含み、
前記銅化合物に含まれる金属原子100質量部に対し、前記金属成分に含まれるAl、Zn、Li、Na、K、Mg、Ca、Ba、Ti、V、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、PtおよびAgの合計量が0.005〜1質量部である、赤外線吸収剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、近赤外線吸収組成物、近赤外線カットフィルタの製造方法、近赤外線カットフィルタ、固体撮像素子、カメラモジュール、赤外線センサおよび赤外線吸収剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ビデオカメラ、デジタルスチルカメラ、カメラ機能付き携帯電話などにはカラー画像の固体撮像素子である、電荷結合素子(CCD)や、相補型金属酸化膜半導体(CMOS)素子などが用いられている。これら固体撮像素子は、その受光部において近赤外線に感度を有するシリコンフォトダイオードを使用しているために、視感度補正を行うことが必要であり、近赤外線カットフィルタを用いることが多い。
【0003】
近赤外線カットフィルタは、赤外線吸収剤を含む組成物(近赤外線吸収組成物)を用いて製造することがある。赤外線吸収剤としては、銅化合物(特許文献1)や、酸化亜鉛系粒子(特許文献2)などの金属化合物が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015−158662号公報
【特許文献2】特開平10−338521号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年において、近赤外線カットフィルタの要求特性として、可視透明性および近赤外遮蔽性のさらなる向上が求められている。
【0006】
よって、本発明の目的は、可視透明性および近赤外遮蔽性に優れた膜を製造できる近赤外線吸収組成物を提供することにある。また、近赤外線カットフィルタの製造方法、近赤外線カットフィルタ、固体撮像素子、カメラモジュール、赤外線センサおよび赤外線吸収剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意検討した結果、赤外線吸収化合物として金属化合物を用いた近赤外線吸収組成物において、金属化合物に含まれる金属原子とは異なる金属原子を含む金属成分を、金属原子100質量部に対し、金属成分に含まれる金属原子を0.005〜1質量部含有させることで、上記の目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。本発明は以下を提供する。
<1> 溶剤および硬化性化合物から選ばれる少なくとも1種と、赤外線吸収化合物である金属化合物とを含む近赤外線吸収組成物であって、
近赤外線吸収組成物は、金属化合物に含まれる金属原子とは異なる金属原子を含む金属成分を含み、金属化合物に含まれる金属原子100質量部に対し、金属成分に含まれる金属原子を0.005〜1質量部含む、近赤外線吸収組成物。
<2> 金属成分が、Al、Zn、Li、Na、K、Mg、Ca、Ba、Ti、V、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、PtおよびAgから選ばれる少なくとも1種の金属原子を含む、<1>に記載の近赤外線吸収組成物。
<3> 金属化合物が、Al、Ti、V、Mo、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、PdおよびPtから選ばれる少なくとも1種の金属原子を含み、金属成分が、Al、Zn、Li、Na、K、Mg、Ca、Ba、Ti、V、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、PtおよびAgから選ばれる少なくとも1種の金属原子を含む、<1>または<2>に記載の近赤外線吸収組成物。
<4> 溶剤および硬化性化合物から選ばれる少なくとも1種と、赤外線吸収化合物である金属化合物とを含む近赤外線吸収組成物であって、
近赤外線吸収組成物は、金属化合物に含まれる金属原子とは異なる金属原子であって、Al、Zn、Li、Na、K、Mg、Ca、Ba、Ti、V、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、PtおよびAgから選ばれる少なくとも一種の金属原子を含む金属成分を含み、
金属化合物に含まれる金属原子100質量部に対し、金属成分に含まれるAl、Zn、Li、Na、K、Mg、Ca、Ba、Ti、V、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、PtおよびAgの合計量が0.005〜1質量部である、近赤外線吸収組成物。
<5> 溶剤および硬化性化合物から選ばれる少なくとも1種と、赤外線吸収化合物である金属化合物とを含む近赤外線吸収組成物であって、
金属化合物が、Al、Ti、V、Mo、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、PdおよびPtから選ばれる少なくとも1種の金属原子を含み、
近赤外線吸収組成物は、金属化合物に含まれる金属原子とは異なる金属原子であって、Al、Zn、Li、Na、K、Mg、Ca、Ba、Ti、V、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、PtおよびAgから選ばれる少なくとも一種の金属原子を含む金属成分を含み、
金属化合物に含まれるAl、Ti、V、Mo、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、PdおよびPtの合計100質量部に対し、金属成分に含まれるAl、Zn、Li、Na、K、Mg、Ca、Ba、Ti、V、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、PtおよびAgの合計量が0.005〜1質量部である、近赤外線吸収組成物。
<6> 金属化合物が、銅化合物であり、金属成分が、Al、Zn、Li、Na、K、Mg、Ca、Ba、Ti、V、Mn、Fe、Co、Ni、PtおよびAgから選ばれる少なくとも1種の金属原子を含む、<1>〜<5>のいずれかに記載の近赤外線吸収組成物。
<7> 硬化性化合物が、架橋性基を有する化合物を含む、<1>〜<6>のいずれかに記載の近赤外線吸収組成物。
<8> <1>〜<7>のいずれかに記載の近赤外線吸収組成物を用いて、近赤外線吸収組成物層を形成する工程を含む、近赤外線カットフィルタの製造方法。
<9> <1>〜<7>のいずれかに記載の近赤外線吸収組成物を用いた、近赤外線カットフィルタ。
<10> 誘電体多層膜および紫外線吸収膜から選ばれる少なくとも1種を有する、<9>に記載の近赤外線カットフィルタ。
<11> <9>または<10>に記載の近赤外線カットフィルタを有する固体撮像素子。
<12> <9>または<10>に記載の近赤外線カットフィルタを有するカメラモジュール。
<13> <9>または<10>に記載の近赤外線カットフィルタを有する赤外線センサ。
<14> 赤外線吸収化合物である金属化合物と、金属化合物に含まれる金属原子とは異なる金属原子を含む金属成分とを含み、
金属化合物に含まれる金属原子100質量部に対し、金属成分に含まれる金属原子を0.005〜1質量部含む、赤外線吸収剤。
<15> 赤外線吸収化合物である金属化合物と、金属化合物に含まれる金属原子とは異なる金属原子を含む金属成分とを含み、
金属成分が、金属化合物に含まれる金属原子とは異なる金属原子であって、Al、Zn、Li、Na、K、Mg、Ca、Ba、Ti、V、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、PtおよびAgから選ばれる少なくとも一種の金属を含み、
金属化合物に含まれる金属原子100質量部に対し、金属成分に含まれるAl、Zn、Li、Na、K、Mg、Ca、Ba、Ti、V、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、PtおよびAgの合計量が0.005〜1質量部である、赤外線吸収剤。
<16> 赤外線吸収化合物である金属化合物と、金属化合物に含まれる金属原子とは異なる金属原子を含む金属成分とを含み、
金属化合物が、Al、Ti、V、Mo、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、PdおよびPtから選ばれる少なくとも1種の金属原子を含む金属化合物であり、
金属成分が、金属化合物に含まれる金属原子とは異なる金属原子であって、Al、Zn、Li、Na、K、Mg、Ca、Ba、Ti、V、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、PtおよびAgから選ばれる少なくとも一種の金属を含み、
金属化合物に含まれるAl、Ti、V、Mo、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、PdおよびPtの合計100質量部に対し、金属成分に含まれるAl、Zn、Li、Na、K、Mg、Ca、Ba、Ti、V、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、PtおよびAgの合計量が0.005〜1質量部である、赤外線吸収剤。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、可視透明性および近赤外遮蔽性に優れた膜を製造できる近赤外線吸収組成物を提供することが可能になった。また、近赤外線カットフィルタの製造方法、近赤外線カットフィルタ、固体撮像素子、カメラモジュール、赤外線センサおよび赤外線吸収剤を提供することが可能になった。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態に係る、近赤外線カットフィルタを有するカメラモジュールの構成を示す概略断面図である
図2】カメラモジュールにおける近赤外線カットフィルタ周辺部分の一例を示す概略断面図である。
図3】カメラモジュールにおける近赤外線カットフィルタ周辺部分の一例を示す概略断面図である。
図4】カメラモジュールにおける近赤外線カットフィルタ周辺部分の一例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。尚、本明細書において「〜」とはその前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。
本明細書において、「(メタ)アクリレート」は、アクリレートおよびメタクリレートを表し、「(メタ)アリル」は、アリルおよびメタリルを表し、「(メタ)アクリル」は、アクリルおよびメタクリルを表し、「(メタ)アクリロイル」は、アクリロイルおよびメタクリロイルを表す。
本明細書における基(原子団)の表記において、置換および無置換を記していない表記は置換基を有さない基(原子団)と共に置換基を有する基(原子団)をも包含するものである。
本明細書において、化学式中のMeはメチル基を、Etはエチル基を、Prはプロピル基を、Buはブチル基を、Phはフェニル基をそれぞれ示す。
本明細書において、近赤外線とは、波長領域が700〜2500nmの光(電磁波)をいう。
本明細書において、全固形分とは、組成物の全成分から溶剤を除いた成分の総質量をいう。
本明細書において、重量平均分子量および数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)測定によるポリスチレン換算値として定義される。
【0011】
<赤外線吸収剤>
本発明の赤外線吸収剤の第一は、赤外線吸収化合物である金属化合物と、金属化合物に含まれる金属原子とは異なる金属原子を含む金属成分とを含み、
金属化合物に含まれる金属原子100質量部に対し、金属成分に含まれる金属原子を0.005〜1質量部含む。
また、本発明の赤外線吸収剤の第二は、赤外線吸収化合物である金属化合物と、金属化合物に含まれる金属原子とは異なる金属原子を含む金属成分とを含み、
金属成分が、金属化合物に含まれる金属原子とは異なる金属原子であって、Al、Zn、Li、Na、K、Mg、Ca、Ba、Ti、V、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、PtおよびAgから選ばれる少なくとも一種の金属を含み、
金属化合物に含まれる金属原子100質量部に対し、金属成分に含まれるAl、Zn、Li、Na、K、Mg、Ca、Ba、Ti、V、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、PtおよびAgの合計量が0.005〜1質量部である。
また、本発明の赤外線吸収剤の第三は、赤外線吸収化合物である金属化合物と、金属化合物に含まれる金属原子とは異なる金属原子を含む金属成分とを含み、
金属化合物が、Al、Ti、V、Mo、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、PdおよびPtから選ばれる少なくとも1種の金属原子を含む金属化合物であり、
金属成分が、金属化合物に含まれる金属原子とは異なる金属原子であって、Al、Zn、Li、Na、K、Mg、Ca、Ba、Ti、V、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、PtおよびAgから選ばれる少なくとも一種の金属を含み、
金属化合物に含まれるAl、Ti、V、Mo、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、PdおよびPtの合計100質量部に対し、金属成分に含まれるAl、Zn、Li、Na、K、Mg、Ca、Ba、Ti、V、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、PtおよびAgの合計量が0.005〜1質量部である。
【0012】
本発明の赤外線吸収剤を用いることで、可視透明性および近赤外遮蔽性に優れた膜を製造できる近赤外線吸収組成物を提供することできる。このような効果が得られるメカニズムは次によるものであると推測する。すなわち、本発明の赤外線吸収剤は、赤外線吸収化合物である金属化合物の他に、上述した金属成分を上述した割合で0.005質量部以上含むことにより、近赤外線吸収組成物の赤外線吸収剤以外の他の成分(例えば、溶剤や硬化性化合物など)との相溶性や分散性が向上し、膜の可視透明性および近赤外遮蔽性が向上したと推測する。また、赤外線吸収化合物である金属化合物の他に、上述した金属成分の含有量を上述した割合で1質量部以下とすることにより、金属成分による分光性能への影響(例えば、金属成分による着色や、金属成分と金属化合物との相互作用による金属化合物の分光性能変動など)を抑制でき、可視透明性および近赤外遮蔽性に優れた膜を製造可能になったと推測する。更には、金属成分の含有量が上述した割合で1質量部以下であることにより、得られる膜の耐熱性も優れる。この理由は、金属成分に起因した耐熱性の低下や、金属成分によって金属化合物が分解されることを抑制できるためであると推測する。以下、本発明の赤外線吸収剤について詳細に説明する。
【0013】
<赤外線吸収剤>
本発明の赤外線吸収剤の第一は、赤外線吸収化合物である金属化合物と、金属化合物に含まれる金属原子とは異なる金属原子を含む金属成分とを含み、金属化合物に含まれる金属原子100質量部に対し、金属成分に含まれる金属原子を0.005〜1質量部含む。金属化合物に含まれる金属原子100質量部に対し、金属成分に含まれる金属原子を、0.005〜0.8質量部含むことがさらに好ましく、0.1〜0.5質量部が特に好ましい。
【0014】
本発明の赤外線吸収剤の第二は、金属成分として金属化合物に含まれる金属原子とは異なる金属原子であって、Al、Zn、Li、Na、K、Mg、Ca、Ba、Ti、V、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、PtおよびAgから選ばれる少なくとも一種の金属を含み、
金属化合物に含まれる金属原子100質量部に対し、金属成分に含まれるAl、Zn、Li、Na、K、Mg、Ca、Ba、Ti、V、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、PtおよびAgの合計量が0.005〜1質量部であり、0.05〜0.8質量部がさらに好ましく、0.1〜0.5質量部が特に好ましい。
【0015】
本発明の赤外線吸収剤の第三は、金属化合物が、Al、Ti、V、Mo、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、PdおよびPtから選ばれる少なくとも1種の金属原子を含む金属化合物であり、
金属成分が、金属化合物に含まれる金属原子とは異なる金属原子であって、Al、Zn、Li、Na、K、Mg、Ca、Ba、Ti、V、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、PtおよびAgから選ばれる少なくとも一種の金属を含み、
金属化合物に含まれるAl、Ti、V、Mo、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、PdおよびPtの合計100質量部に対し、金属成分に含まれるAl、Zn、Li、Na、K、Mg、Ca、Ba、Ti、V、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、PtおよびAgの合計量が0.005〜1質量部であり、0.05〜0.8質量部がさらに好ましく、0.1〜0.5質量部が特に好ましい。
【0016】
本発明において、金属化合物および金属成分における金属原子の含有量は、誘導結合プラズマ発光分光分析法(ICP−OES)で測定した値である。また、金属原子とは、典型金属、遷移金属が挙げられる。具体的には、Li、Be、Na、Mg、Al、K、Ca、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Rb、Sr、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、In、Sn、Sb、Cs、Ba、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、Hg、Tl、Pb、Biが挙げられる。
【0017】
本発明の赤外線吸収剤において、上述の金属化合物は、赤外線吸収剤中において有効量以上の割合で含有する赤外線吸収性を有する金属含有化合物である。金属成分は、赤外線吸収性を有していてもよく、赤外線吸収性を有していなくてもよい。ここで、有効量以上の割合で含有するとは、赤外線吸収剤を含む組成物などを用いて膜などを製造した際に、赤外線吸収性を発現するために要する含有量であり、例えば、赤外線吸収化合物の全量中に、10質量%以上の割合で含有することが好ましく、30質量%以上とすることもでき、45質量%以上とすることもでき、60質量%以上とすることもできる。
【0018】
金属化合物は、Ni、Pd、Pt、Au、Ir、Fe、Zn、W、Cu、Mo、In、Mn、Co、Mg、V、Cr、TiおよびAlから選ばれる少なくとも1種の金属原子を含む化合物が好ましく、Al、Ti、V、Mo、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、PdおよびPtから選ばれる少なくとも1種の金属原子を含む化合物がより好ましく、Cu、NiおよびVから選ばれる少なくとも1種の金属原子を含む化合物がさらに好ましく、Cuを含む化合物が特に好ましい。すなわち、金属化合物は銅化合物が好ましい。銅化合物は、Cu以外の金属原子を含んでいてもよいが、Cu以外の金属を含まないことが好ましい。
金属成分は、Al、Zn、Li、Na、K、Mg、Ca、Ba、Ti、V、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、PtおよびAgから選ばれる少なくとも1種の金属原子を含むことが好ましく、Li、Na、K、Mg、Ca、Fe、Cu、AgおよびAlから選ばれる少なくとも1種の金属原子を含むことがより好ましく、Li、Na、K、Mg、CaおよびFeから選ばれる少なくとも1種の金属原子を含むことが更に好ましい。金属成分は、金属単体であってもよく、遊離金属イオンであってもよく、金属酸化物、金属窒化物、金属炭酸化物、金属塩(無機酸塩、有機酸塩、アンモニウム塩など)、金属間化合物、金属錯体、有機金属化合物、(ヘテロ)ポリ酸およびその塩などの化合物であってもよい。
【0019】
本発明の赤外線吸収剤は、金属化合物が、Al、Ti、V、Mo、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、PdおよびPtから選ばれる少なくとも1種の金属原子を含み、金属成分が、Al、Zn、Li、Na、K、Mg、Ca、Ba、Ti、V、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、PtおよびAgから選ばれる少なくとも1種の金属原子を含むことが好ましい。具体的な組み合わせとしては以下に示す組み合わせが挙げられ、(1)がより好ましい。
(1) 金属化合物(赤外線吸収化合物)が、Cuを含む化合物(銅化合物)の場合、金属成分は、Al、Zn、Li、Na、K、Mg、Ca、Ba、Ti、V、Mn、Fe、Co、Ni、PtおよびAgから選ばれる少なくとも1種の金属原子を含むことが好ましく、Li、Na、K、Mg、Ca、Fe、AgおよびAlから選ばれる少なくとも1種の金属原子を含むことがより好ましい。また、銅化合物に含まれる金属原子(好ましくはCu原子)100質量部に対し、金属成分に含まれるLi、Na、K、Mg、Ca、Fe、AgおよびAlの合計量が0.005〜1質量部であることが好ましく、0.05〜0.8質量部がさらに好ましく、0.1〜0.5質量部が特に好ましい。
(2) 金属化合物(赤外線吸収化合物)が、Znを含む化合物(亜鉛化合物)の場合、金属成分は、Al、Li、Na、K、Mg、Ca、Ba、Ti、V、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、PtおよびAgから選ばれる少なくとも1種の金属原子を含むことが好ましく、Li、Na、K、Mg、Ca、Fe、CuおよびAlから選ばれる少なくとも1種の金属原子を含むことがより好ましい。また、亜鉛化合物に含まれる金属原子(好ましくはZn原子)100質量部に対し、金属成分に含まれるLi、Na、K、Mg、Ca、Fe、CuおよびAlの合計量が0.005〜1質量部であることが好ましく、0.05〜0.8質量部がさらに好ましく、0.1〜0.5質量部が特に好ましい。
(3) 金属化合物(赤外線吸収化合物)が、Tiを含む化合物(チタン化合物)の場合、金属成分は、Al、Zn、Li、Na、K、Mg、Ca、Ba、V、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、PtおよびAgから選ばれる少なくとも1種の金属原子を含むことが好ましく、Li、Na、K、Mg、Ca、FeおよびAlから選ばれる少なくとも1種の金属原子を含むことがより好ましい。また、チタン化合物に含まれる金属原子(好ましくはTi原子)100質量部に対し、金属成分に含まれるLi、Na、K、Mg、Ca、FeおよびAlの合計量が0.005〜1質量部であることが好ましく、0.05〜0.8質量部がさらに好ましく、0.1〜0.5質量部が特に好ましい。
(4) 金属化合物(赤外線吸収化合物)が、Vを含む化合物(バナジウム化合物)の場合、金属成分は、Al、Zn、Li、Na、K、Mg、Ca、Ba、Ti、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、PtおよびAgから選ばれる少なくとも1種の金属原子を含むことが好ましく、Li、Na、K、Mg、Ca、FeおよびAlから選ばれる少なくとも1種の金属原子を含むことがより好ましい。また、バナジウム化合物に含まれる金属原子(好ましくはV原子)100質量部に対し、金属成分に含まれるLi、Na、K、Mg、Ca、FeおよびAlの合計量が0.005〜1質量部であることが好ましく、0.05〜0.8質量部がさらに好ましく、0.1〜0.5質量部が特に好ましい。
(5) 金属化合物(赤外線吸収化合物)が、Niを含む化合物(ニッケル化合物)の場合、金属成分は、Al、Zn、Li、Na、K、Mg、Ca、Ba、Ti、V、Mn、Fe、Co、Cu、PtおよびAgから選ばれる少なくとも1種の金属原子を含むことが好ましく、Li、Na、K、Mg、Ca、Fe、CuおよびAlから選ばれる少なくとも1種の金属原子を含むことがより好ましい。また、ニッケル化合物に含まれる金属原子(好ましくはNi原子)100質量部に対し、金属成分に含まれるLi、Na、K、Mg、Ca、Fe、CuおよびAlの合計量が0.005〜1質量部であることが好ましく、0.05〜0.8質量部がさらに好ましく、0.1〜0.5質量部が特に好ましい。
(6) 金属化合物(赤外線吸収化合物)が、Pdを含む化合物(パラジウム化合物)の場合、金属成分は、Al、Zn、Li、Na、K、Mg、Ca、Ba、Ti、V、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、PtおよびAgから選ばれる少なくとも1種の金属原子を含むことが好ましく、Li、Na、K、Mg、Ca、Fe、AlおよびPtから選ばれる少なくとも1種の金属原子を含むことがより好ましい。また、パラジウム化合物に含まれる金属原子(好ましくはPd原子)100質量部に対し、金属成分に含まれるLi、Na、K、Mg、Ca、Fe、AlおよびPtの合計量が0.005〜1質量部であることが好ましく、0.05〜0.8質量部がさらに好ましく、0.1〜0.5質量部が特に好ましい。
(7) 金属化合物(赤外線吸収化合物)が、Alを含む化合物(アルミニウム化合物)の場合、金属成分は、Zn、Li、Na、K、Mg、Ca、Ba、Ti、V、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、PtおよびAgから選ばれる少なくとも1種の金属原子を含むことが好ましく、Li、Na、K、Mg、Ca、FeおよびCuから選ばれる少なくとも1種の金属原子を含むことがより好ましい。また、アルミニウム化合物に含まれる金属原子(好ましくはAl原子)100質量部に対し、金属成分に含まれるLi、Na、K、Mg、Ca、FeおよびCuの合計量が0.005〜1質量部であることが好ましく、0.05〜0.8質量部がさらに好ましく、0.1〜0.5質量部が特に好ましい。
【0020】
本発明において、赤外線吸収化合物としての金属化合物は、極大吸収波長が700〜1200nmの範囲にある化合物が好ましく、極大吸収波長が700〜1000nmの範囲にある化合物がより好ましい。金属化合物は、赤外領域の波長領域(好ましくは、波長700〜1200mnの範囲)に吸収を有し、可視領域(好ましくは、波長400〜650mnの範囲)の波長の光を透過する化合物が好ましい。金属化合物の具体例としては、例えば、銅化合物、ピロロピロール化合物、スクアリリウム化合物、シアニン化合物、フタロシアニン化合物、ナフタロシアニン化合物、ジイモニウム化合物、ジチオール化合物、遷移金属酸化物、クアテリレン化合物、クロコニウム化合物等が挙げられる。また、酸化インジウムスズ(tin−doped indium oxide、ITO)を用いることも好ましい。また、酸化アンチモンスズ(ATO)、酸化亜鉛(ZnO)、Alドープ酸化亜鉛(AlドープZnO)、フッ素ドープ二酸化スズ(FドープSnO2)、ニオブドープ二酸化チタン(NbドープTiO2)、セシウム酸化タングステンなどの無機金属化合物を用いることも好ましい。セシウム酸化タングステンは、国際公開2014/142259号公報の段落0025〜0029の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
なかでも、近赤外遮蔽性と可視透明性の両立に優れた膜を形成しやすいという理由から、銅化合物、フタロシアニン化合物、ナフタロシアニン化合物、ジチオール化合物が好ましい。また、本発明の効果が顕著に得られ易いという理由から、金属化合物は銅化合物であることが好ましい。また、銅化合物は、銅錯体であることが好ましい。
【0021】
赤外線吸収化合物としての金属化合物は、市販品としても入手可能であり、フタロシアニン化合物およびナフタロシアニン化合物としては日本触媒社製のイーエクスカラーIR−14、同10A、同28、同12、同915、同910、同906、TX−EX−820、同906や、山田化学工業社製のFDN−001〜008、Avecia社製のPROJET 800NP、同830NP、同900NP、同925NPなどが挙げられる。ジチオール化合物としてはAmerican Dye Source社製のADS845MC、同870MC、同890MC、同920MCや、住友精化製のEST−3、同5、同5Niや、エポリン社製のEpolight3063、同4019、同4121、同4129や、みどり化学社製のMIR−101、同111、同121、同102、同105などが挙げられる。ジイモニウム化合物としてはAmerican Dye Source社製のADS1065Aなどが挙げられる。また、セシウム酸化タングステンを含有する分散液の市販品として、住友金属鉱山社製のYMF−02A、YMS−01A−2、YMF−10A−1などが挙げられる。
以下金属化合物について詳細に説明する。
【0022】
<<金属化合物>>
(銅化合物)
本発明において、赤外線吸収化合物として用いる銅化合物は、銅錯体が好ましい。銅錯体としては、銅と、銅に対する配位部位を有する化合物(配位子)との錯体が好ましい。銅に対する配位部位としては、アニオンで配位する配位部位、非共有電子対で配位する配位原子が挙げられる。銅錯体は、配位子を2つ以上有していてもよい。配位子を2つ以上有する場合は、それぞれの配位子は同一であってもよく、異なっていてもよい。銅錯体は、4配位、5配位および6配位が例示され、4配位および5配位がより好ましく、5配位がさらに好ましい。また、銅錯体は、銅と配位子によって、5員環および/または6員環が形成されていることが好ましい。このような銅錯体は、形状が安定であり、錯体安定性に優れる。
【0023】
銅錯体は、フタロシアニン銅錯体以外の銅錯体であることも好ましい。ここで、フタロシアニン銅錯体とは、フタロシアニン骨格を有する化合物を配位子とする銅錯体である。フタロシアニン骨格を有する化合物は、分子全体にπ電子共役系が広がり、平面構造を取る。フタロシアニン銅錯体は、π−π*遷移で光を吸収する。π−π*遷移で赤外領域の光を吸収するには、配位子をなす化合物が長い共役構造をとる必要がある。しかしながら、配位子の共役構造を長くすると、可視透明性が低下する傾向にある。このため、フタロシアニン銅錯体は、可視透明性が不十分な場合がある。
また、銅錯体は、400〜600nmの波長領域に極大吸収波長を有さない化合物を配位子とする銅錯体であることも好ましい。400〜600nmの波長領域に極大吸収波長を有する化合物を配位子とする銅錯体は、可視領域(例えば、400〜600nmの波長領域)に吸収を有するため、可視透明性が不十分な場合がある。400〜600nmの波長領域に極大吸収波長を有する化合物としては、長い共役構造を有し、π−π*遷移の光の吸収の大きい化合物が挙げられる。具体的には、フタロシアニン骨格を有する化合物が挙げられる。
【0024】
銅錯体は、例えば銅成分(銅または銅を含む化合物)に対して、銅に対する配位部位を有する化合物(配位子)を混合および/または反応等させて得ることができる。銅に対する配位部位を有する化合物(配位子)は、低分子化合物であってもよく、ポリマーであってもよい。両者を併用することもできる。
【0025】
銅成分は、2価の銅を含む化合物が好ましい。銅成分は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。銅成分としては、例えば、酸化銅や銅塩を用いることができる。銅塩は、例えば、カルボン酸銅(例えば、酢酸銅、エチルアセト酢酸銅、ギ酸銅、安息香酸銅、ステアリン酸銅、ナフテン酸銅、クエン酸銅、2−エチルヘキサン酸銅など)、スルホン酸銅(例えば、メタンスルホン酸銅など)、リン酸銅、リン酸エステル銅、ホスホン酸銅、ホスホン酸エステル銅、ホスフィン酸銅、アミド銅、スルホンアミド銅、イミド銅、アシルスルホンイミド銅、ビススルホンイミド銅、メチド銅、アルコキシ銅、フェノキシ銅、水酸化銅、炭酸銅、硫酸銅、硝酸銅、過塩素酸銅、フッ化銅、塩化銅、臭化銅が好ましく、カルボン酸銅、スルホン酸銅、スルホンアミド銅、イミド銅、アシルスルホンイミド銅、ビススルホンイミド銅、アルコキシ銅、フェノキシ銅、水酸化銅、炭酸銅、フッ化銅、塩化銅、硫酸銅、硝酸銅がより好ましく、カルボン酸銅、アシルスルホンイミド銅、フェノキシ銅、塩化銅、硫酸銅、硝酸銅が更に好ましく、カルボン酸銅、アシルスルホンイミド銅、塩化銅、硫酸銅が特に好ましい。
【0026】
本発明において、銅錯体は、700〜1200nmの波長領域に極大吸収波長を有する化合物が好ましい。銅錯体の極大吸収波長は、720〜1200nmの波長領域に有することがより好ましく、800〜1100nmの波長領域に有することがさらに好ましい。極大吸収波長は、例えば、Cary 5000 UV−Vis−NIR(分光光度計、アジレント・テクノロジー社製)を用いて測定することができる。
銅錯体の上述した波長領域における極大吸収波長でのモル吸光係数は、120(L/mol・cm)以上が好ましく、150(L/mol・cm)以上がより好ましく、200(L/mol・cm)以上がさらに好ましく、300(L/mol・cm)以上がよりさらに好ましく、400(L/mol・cm)以上が特に好ましい。上限は、特に限定はないが、例えば、30000(L/mol・cm)以下とすることができる。銅錯体の上記モル吸光係数が、100(L/mol・cm)以上であれば、薄膜であっても、赤外線遮蔽性に優れた膜を形成することができる。
銅錯体の800nmでのグラム吸光係数は、0.11(L/g・cm)以上が好ましく、0.15(L/g・cm)以上がより好ましく、0.24(L/g・cm)以上がさらに好ましい。
なお、本発明において、銅錯体のモル吸光係数およびグラム吸光係数は、銅錯体を溶媒に溶解させて1g/Lの濃度の溶液を調製し、銅錯体を溶解させた溶液の吸収スペクトルを測定して求めることができる。測定装置としては、島津製作所社製UV−1800(波長領域200〜1100nm)、Agilent製Cary 5000(波長領域200〜1300nm)などを用いることができる。測定溶媒としては、水、N,N−ジメチルホルムアミド、プロピレングリコールモノメチルエーテル、1,2,4−トリクロロベンゼン、アセトンが挙げられる。本発明では、上述した測定溶媒のうち、測定対象の銅錯体を溶解できるものを選択して用いる。なかでも、プロピレングリコールモノメチルエーテルで溶解する銅錯体の場合は、測定溶媒としては、プロピレングリコールモノメチルエーテルを用いることが好ましい。なお、溶解するとは、25℃の溶媒100gに対する、銅錯体の溶解度が0.01gを超える状態を意味する。
本発明において、銅錯体のモル吸光係数およびグラム吸光係数は、上述した測定溶媒のいずれか1つを用いて測定した値であることが好ましく、プロピレングリコールモノメチルエーテルでの値であることがより好ましい。
【0027】
[低分子タイプの銅化合物]
銅化合物としては、例えば、式(Cu−1)で表される銅錯体を用いることができる。この銅錯体は、中心金属の銅に配位子Lが配位した銅化合物であり、銅は、通常2価の銅である。例えば銅成分に対して、配位子Lとなる化合物またはその塩を混合および/または反応等させて得ることができる。
Cu(L)n1・(X)n2 式(Cu−1)
上記式中、Lは、銅に配位する配位子を表し、Xは、対イオンを表す。n1は、1〜4の整数を表す。n2は、0〜4の整数を表す。
【0028】
Xは、対イオンを表す。銅化合物は、電荷を持たない中性錯体のほか、カチオン錯体、アニオン錯体になることもある。この場合、銅化合物の電荷を中和するよう、必要に応じて対イオンが存在する。
対イオンが負の対イオン(対アニオン)の場合、例えば、無機陰イオンでも有機陰イオンでもよい。具体例としては、水酸化物イオン、ハロゲン化物陰イオン(例えば、フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン等)、置換または無置換のアルキルカルボン酸イオン(酢酸イオン、トリフルオロ酢酸イオン等)、置換または無置換のアリールカルボン酸イオン(安息香酸イオン等)、置換または無置換のアルキルスルホン酸イオン(メタンスルホン酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン等)、置換または無置換のアリールスルホン酸イオン(例えばp−トルエンスルホン酸イオン、p−クロロベンゼンスルホン酸イオン等)、アリールジスルホン酸イオン(例えば1,3−ベンゼンジスルホン酸イオン、1,5−ナフタレンジスルホン酸イオン、2,6−ナフタレンジスルホン酸イオン等)、アルキル硫酸イオン(例えばメチル硫酸イオン等)、硫酸イオン、チオシアン酸イオン、硝酸イオン、過塩素酸イオン、テトラフルオロホウ酸イオン、テトラアリールホウ酸イオン、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸イオン(B-(C654)、ヘキサフルオロホスフェートイオン、ピクリン酸イオン、アミドイオン(アシル基やスルホニル基で置換されたアミドイオンを含む)、メチドイオン(アシル基やスルホニル基で置換されたメチドイオンを含む)が挙げられ、ハロゲン陰イオン、置換もしくは無置換のアルキルカルボン酸イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、テトラフルオロホウ酸イオン、テトラアリールホウ酸イオン(ハロゲン原子やフルオロアルキル基で置換されたアリールを含む)、ヘキサフルオロホスフェートイオン、アミドイオン(アシル基やスルホニル基で置換されたアミドイオンを含む)、イミドイオン(アシル基やスルホニル基で置換されたアミドを含む)、メチドイオン(アシル基やスルホニル基で置換されたメチドイオンを含む)が好ましい。
対アニオンは、低求核アニオンが好ましい。この態様によれば、銅化合物の耐熱性が向上する傾向にある。対アニオンとして低求核アニオンを用いることで、アニオンの求核攻撃による分解が抑制されるため、耐熱性が向上すると推測する。低求核アニオンとは、一般的に超酸(super acid)と呼ばれるpKaの低い酸がプロトンを解離してなるアニオンである。超酸の定義は、文献によっても異なるがメタンスルホン酸よりpKaが低い酸の総称であり、J.Org.Chem.2011,76,391−395 Equilibrium Acidities of Super acidsに記載される構造が知られている。低求核アニオンのpKaは、例えば、−11以下が好ましく、−11〜−18がより好ましい。pKaは、例えば、J.Org.Chem.2011,76,391−395に記載の方法により測定することができる。本明細書におけるpKa値は、特に断りがない場合、1,2−ジクロロエタン中でのpKaである。
低求核アニオンは、テトラフルオロホウ酸イオン、テトラアリールホウ酸イオン(テトラアリールホウ酸イオンが有するアリール基は、ハロゲン原子やフルオロアルキル基で置換されたアリール基を含む)、ヘキサフルオロホスフェートイオン、イミドイオン(アシル基やスルホニル基で置換されたアミドイオンを含む)、メチドイオン(アシル基やスルホニル基で置換されたメチドイオンを含む)が好ましく、テトラアリールホウ酸イオン、イミドイオン、メチドイオンがより好ましい。
対イオンが正の対イオン(対カチオン)の場合、例えば、無機もしくは有機のアンモニウムイオン(例えば、テトラブチルアンモニウムイオンなどのテトラアルキルアンモニウムイオン、トリエチルベンジルアンモニウムイオン、ピリジニウムイオン等)、ホスホニウムイオン(例えば、テトラブチルホスホニウムイオンなどのテトラアルキルホスホニウムイオン、アルキルトリフェニルホスホニウムイオン、トリエチルフェニルホスホニウムイオン等)、アルカリ金属イオンまたはプロトンが挙げられる。
また、対イオンは金属錯体イオンであってもよい。例えば、特に対イオンが銅錯体イオンであってもよい。すなわち、銅錯体としては、カチオン性銅錯体とアニオン性銅錯体の塩であっても良い。
【0029】
配位子Lは、銅に対する配位部位を有する化合物であり、銅に対しアニオンで配位する配位部位、および、銅に対し非共有電子対で配位する配位原子から選ばれる1種以上を有する化合物が挙げられる。アニオンで配位する配位部位は、解離していてもよく、非解離でも良い。配位子Lは、銅に対する配位部位を2個以上有する化合物(多座配位子)が好ましい。また、配位子Lは、可視透明性を向上させるために、芳香族などのπ共役系が連続して複数結合していないことが好ましい。配位子Lは、銅に対する配位部位を1個有する化合物(単座配位子)と、銅に対する配位部位を2個以上有する化合物(多座配位子)とを併用することもできる。単座配位子としては、アニオンまたは非共有電子対で配位する単座配位子が挙げられる。アニオンで配位する配位子としては、ハライドアニオン、ヒドロキシドアニオン、アルコキシドアニオン、フェノキシドアニオン、アミドアニオン(アシル基やスルホニル基で置換されたアミドアニオンを含む)、イミドアニオン(アシル基やスルホニル基で置換されたイミドアニオンを含む)、アニリドアニオン(アシル基やスルホニル基で置換されたアニリドアニオンを含む)、チオラートアニオン、炭酸水素アニオン、カルボン酸アニオン、チオカルボン酸アニオン、ジチオカルボン酸アニオン、硫酸水素アニオン、スルホン酸アニオン、リン酸二水素アニオン、リン酸ジエステルアニオン、ホスホン酸モノエステルアニオン、ホスホン酸水素アニオン、ホスフィン酸アニオン、含窒素へテロ環アニオン、硝酸アニオン、次亜塩素酸アニオン、シアニドアニオン、シアナートアニオン、イソシアナートアニオン、チオシアナートアニオン、イソチオシアナートアニオン、アジドアニオンなどが挙げられる。非共有電子対で配位する単座配位子としては、水、アルコール、フェノール、エーテル、アミン、アニリン、アミド、イミド、イミン、ニトリル、イソニトリル、チオール、チオエーテル、カルボニル化合物、チオカルボニル化合物、スルホキシド、へテロ環、あるいは、炭酸、カルボン酸、硫酸、スルホン酸、リン酸、ホスホン酸、ホスフィン酸、硝酸、または、そのエステルが挙げられる。
【0030】
上記配位子が有するアニオンは、銅成分中の銅原子に配位可能なものであればよく、酸素アニオン、窒素アニオンまたは硫黄アニオンが好ましい。アニオンで配位する配位部位は、以下の1価の官能基群(AN−1)、または、2価の官能基群(AN−2)から選択される少なくとも1種であることが好ましい。なお、以下の構造式における波線は、配位子を構成する原子団との結合位置である。
【0031】
群(AN−1)
【化1】
【0032】
群(AN−2)
【化2】
【0033】
上記式中、Xは、NまたはCRを表し、Rは、それぞれ独立して水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基またはヘテロアリール基を表す。
Rが表すアルキル基は、直鎖状、分岐状または環状であってもよいが、直鎖状が好ましい。アルキル基の炭素数は、1〜10が好ましく、1〜6がより好ましく、1〜4がさらに好ましい。アルキル基の例としては、メチル基が挙げられる。アルキル基は置換基を有していてもよく、置換基としてはハロゲン原子、カルボキシ基、ヘテロ環基が挙げられる。置換基としてのヘテロ環基は、単環であっても多環であってもよく、また、芳香族であっても非芳香族であってもよい。ヘテロ環を構成するヘテロ原子の数は1〜3が好ましく、1または2がより好ましい。ヘテロ環を構成するヘテロ原子は、窒素原子が好ましい。アルキル基が置換基を有している場合、さらに置換基を有していてもよい。
Rが表すアルケニル基は、直鎖状、分岐状または環状であってもよいが、直鎖状が好ましい。アルケニル基の炭素数は、2〜10が好ましく、2〜6がより好ましい。アルケニル基は、無置換であってもよく、置換基を有していてもよい。置換基としては、上述したものが挙げられる。
Rが表すアルキニル基は、直鎖状、分岐状または環状であってもよいが、直鎖状が好ましい。アルキニル基の炭素数は、2〜10が好ましく、2〜6がより好ましい。アルキニル基は、無置換であってもよく、置換基を有していてもよい。置換基としては、上述したものが挙げられる。
Rが表すアリール基は、単環であっても多環であってもよいが単環が好ましい。アリール基の炭素数は6〜18が好ましく、6〜12がより好ましく、6がさらに好ましい。アリール基は、無置換であってもよく、置換基を有していてもよい。置換基としては、上述したものが挙げられる。
Rが表す。
ヘテロアリール基は、単環であっても多環であってもよい。ヘテロアリール基を構成するヘテロ原子の数は1〜3が好ましい。ヘテロアリール基を構成するヘテロ原子は、窒素原子、硫黄原子、酸素原子が好ましい。ヘテロアリール基の炭素数は2〜18が好ましく、6〜18がより好ましく、6〜12が更に好ましい。ヘテロアリール基は、無置換であってもよく、置換基を有していてもよい。置換基としては、上述したものが挙げられる。
【0034】
アニオンで配位する配位部位の例として、モノアニオン性配位部位も挙げられる。モノアニオン性配位部位は、1つの負電荷を有する官能基を介して銅原子と配位する部位を表す。例えば、酸解離定数(pKa)が12以下の酸基が挙げられる。具体的には、リン原子を含有する酸基(リン酸ジエステル基、ホスホン酸モノエステル基、ホスフィン酸基等)、スルホ基、カルボキシ基、イミド酸基等が挙げられ、スルホ基、カルボキシ基が好ましい。
【0035】
非共有電子対で配位する配位原子は、酸素原子、窒素原子、硫黄原子またはリン原子が好ましく、酸素原子、窒素原子または硫黄原子がより好ましく、酸素原子、窒素原子がさらに好ましく、窒素原子が特に好ましい。非共有電子対で配位する配位原子が窒素原子である場合、窒素原子に隣接する原子が炭素原子、または、窒素原子であることが好ましく、炭素原子がより好ましい。
【0036】
非共有電子対で配位する配位原子は、環に含まれる、または、以下の1価の官能基群(UE−1)、2価の官能基群(UE−2)、3価の官能基群(UE−3)から選択される少なくとも1種の部分構造に含まれることが好ましい。なお、以下の構造式における波線は、配位子を構成する原子団との結合位置である。
群(UE−1)
【化3】
【0037】
群(UE−2)
【化4】
【0038】
群(UE−3)
【化5】
【0039】
群(UE−1)〜(UE−3)中、R1は、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基またはヘテロアリール基を表し、R2は、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロアリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロアリールチオ基、アミノ基またはアシル基を表す。
【0040】
非共有電子対で配位する配位原子は、環に含まれていてもよい。非共有電子対で配位する配位原子が環に含まれる場合、非共有電子対で配位する配位原子を含む環は、単環であっても多環であってもよく、また、芳香族であっても非芳香族であってもよい。非共有電子対で配位する配位原子を含む環は、5〜12員環が好ましく、5〜7員環がより好ましい。
非共有電子対で配位する配位原子を含む環は、置換基を有していてもよく、置換基としては炭素数1〜10の直鎖状、分岐状または環状のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基、ハロゲン原子、ケイ素原子、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数2〜12のアシル基、炭素数1〜12のアルキルチオ基、カルボキシ基等が挙げられる。
非共有電子対で配位する配位原子を含む環が置換基を有している場合、さらに置換基を有していてもよく、非共有電子対で配位する配位原子を含む環からなる基、上述した群(UE−1)〜(UE−3)から選択される少なくとも1種の部分構造を含む基、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数2〜12のアシル基、ヒドロキシ基が挙げられる。
【0041】
非共有電子対で配位する配位原子が群(UE−1)〜(UE−3)で表される部分構造に含まれる場合、R1は、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基またはヘテロアリール基を表し、R2は、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロアリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロアリールチオ基、アミノ基またはアシル基を表す。
アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、およびヘテロアリール基は、上記アニオンで配位する配位部位で説明したアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、およびヘテロアリール基と同義であり、好ましい範囲も同様である。
アルコキシ基の炭素数は、1〜12が好ましく、3〜9がより好ましい。
アリールオキシ基の炭素数は、6〜18が好ましく、6〜12がより好ましい。
ヘテロアリールオキシ基は、単環であっても多環であってもよい。ヘテロアリールオキシ基を構成するヘテロアリール基は、上記アニオンで配位する配位部位で説明したヘテロアリール基と同義であり、好ましい範囲も同様である。
アルキルチオ基の炭素数は、1〜12が好ましく、1〜9がより好ましい。
アリールチオ基の炭素数は、6〜18が好ましく、6〜12がより好ましい。
ヘテロアリールチオ基は、単環であっても多環であってもよい。ヘテロアリールチオ基を構成するヘテロアリール基は、上記アニオンで配位する配位部位で説明したヘテロアリール基と同義であり、好ましい範囲も同様である。
アシル基の炭素数は、2〜12が好ましく、2〜9がより好ましい。R1は、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基が好ましく、水素原子、アルキル基がより好ましく、アルキル基が特に好ましい。アルキル基の炭素数は1〜3であることも好ましい。N原子上の置換基、すなわちR1をアルキル基とすることで、可視透明性がより向上する。理由は不明だが、配位子軌道のエネルギーレベルが変わることで、配位子−銅間の電荷移動遷移が長波長シフトするためと推定する。
【0042】
配位子が、1分子内に、アニオンで配位する配位部位と非共有電子対で配位する配位原子とを有する場合、アニオンで配位する配位部位と非共有電子対で配位する配位原子とを連結する原子数は、1〜6であることが好ましく、1〜3であることがより好ましい。このような構成とすることにより、銅錯体の構造がより歪みやすくなるため、色価をより向上させることができ、可視透明性を高めつつ、モル吸光係数を大きくし易い。アニオンで配位する配位部位と非共有電子対で配位する配位原子とを連結する原子の種類は、1種または2種以上であってもよい。炭素原子、または、窒素原子が好ましい。
【0043】
配位子が、1分子内に、非共有電子対で配位する配位原子を2以上有する場合、非共有電子対で配位する配位原子は3つ以上有していてもよく、2〜5個有していることが好ましく、4個有していることがより好ましい。非共有電子対で配位する配位原子同士を連結する原子数は、1〜6であることが好ましく、1〜3であることがより好ましく、2〜3が更に好ましく、3が特に好ましい。このような構成とすることにより、銅錯体の構造がより歪みやすくなるため、色価をより向上させることができる。非共有電子対で配位する配位原子同士を連結する原子は、1種または2種以上であってもよい。非共有電子対で配位する配位原子同士を連結する原子は、炭素原子が好ましい。
【0044】
配位子は、少なくとも2個の配位部位を有する化合物(多座配位子ともいう)が好ましい。配位子は、配位部位を少なくとも3個有することがより好ましく、3〜5個有することが更に好ましく、4〜5個有することが特に好ましい。多座配位子は、銅成分に対し、キレート配位子として働く。すなわち、多座配位子が有する少なくとも2個の配位部位が、銅とキレート配位することにより、銅錯体の構造が歪んで、可視領域の高い透過性が得られ、赤外線の吸光能力を向上でき、色価も向上すると考えられる。
【0045】
多座配位子は、アニオンで配位する配位部位を1つ以上と非共有電子対で配位する配位原子を1つ以上とを含む化合物、非共有電子対で配位する配位原子を2つ以上有する化合物、アニオンで配位する配位部位を2つ以上含む化合物等が挙げられる。これらの化合物は、それぞれ独立に、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。また、配位子となる化合物は、多座配位子と、配位部位を1つのみ有する化合物(単座配位子)とを併用することもできる。
【0046】
多座配位子は、下記一般式(IV−1)〜(IV−14)で表される化合物であることが好ましい。例えば、配位子が4個の配位部位を有する化合物である場合は、下記式(IV−3)、(IV−6)、(IV−7)、(IV−12)で表される化合物が好ましく、金属中心により強固に配位し、耐熱性の高い安定な5配位錯体を形成しやすいという理由から、(IV−12)で表される化合物がより好ましい。また、例えば、配位子が5個の配位部位を有する化合物である場合は、下記式(IV−4)、(IV−8)〜(IV−11)、(IV−13)、(IV−14)で表される化合物が好ましく、金属中心により強固に配位し、耐熱性の高い安定な5配位錯体を形成しやすいという理由から、(IV−9)〜(IV−10)、(IV−13)、(IV−14)で表される化合物がより好ましく、(IV−13)で表される化合物が特に好ましい。
【化6】
【0047】
一般式(IV−1)〜(IV−14)中、X1〜X59はそれぞれ独立して、配位部位を表し、L1〜L25はそれぞれ独立して単結合または2価の連結基を表し、L26〜L32はそれぞれ独立して3価の連結基を表し、L33〜L34はそれぞれ独立して4価の連結基を表す。
1〜X42はそれぞれ独立して、非共有電子対で配位する配位原子を含む環からなる基、上述した群(AN−1)、または、群(UE−1)から選択される少なくとも1種を表すことが好ましい。
43〜X56はそれぞれ独立して、非共有電子対で配位する配位原子を含む環からなる基、上述した群(AN−2)、または、群(UE−2)から選択される少なくとも1種を表すことが好ましい。
57〜X59はそれぞれ独立して、上述した群(UE−3)から選択される少なくとも1種を表すことが好ましい。
1〜L25はそれぞれ独立して単結合または2価の連結基を表す。2価の連結基としては、炭素数1〜12のアルキレン基、炭素数6〜12のアリーレン基、−SO−、−O−、−SO2−または、これらの組み合わせからなる基が好ましく、炭素数1〜3のアルキレン基、フェニレン基、−SO2−またはこれらの組み合わせからなる基がより好ましい。
26〜L32はそれぞれ独立して3価の連結基を表す。3価の連結基としては、上述した2価の連結基から水素原子を1つ除いた基が挙げられる。
33〜L34はそれぞれ独立して4価の連結基を表す。4価の連結基としては、上述した2価の連結基から水素原子を2つ除いた基が挙げられる。
ここで、群(AN−1)〜(AN−2)中のR、および、群(UE−1)〜(UE−3)中のR1は、R同士、R1同士、あるいは、RとR1間で連結して環を形成しても良い。
【0048】
配位子をなす化合物の具体例としては、以下に示す化合物、後述する多座配位子の好ましい具体例として示す化合物、および、これらの化合物の塩が挙げられる。塩を構成する原子としては、金属原子、テトラブチルアンモニウムなどが挙げられる。金属原子としては、アルカリ金属原子またはアルカリ土類金属原子がより好ましい。アルカリ金属原子としては、ナトリウム、カリウム等が挙げられる。アルカリ土類金属原子としては、カルシウム、マグネシウム等が挙げられる。また、特開2014−41318号公報の段落0022〜0042の記載、特開2015−43063号公報の段落0021〜0039の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0049】
【化7】

【化8】

【化9】
【化10】
【0050】
銅錯体は、例えば、以下の(1)〜(5)の態様が好ましい一例として挙げられ、(2)〜(5)がより好ましく、(3)〜(5)が更に好ましく、(4)または(5)が一層好ましい。
(1)2個の配位部位を有する化合物の1つまたは2つを配位子として有する銅錯体
(2)3個の配位部位を有する化合物を配位子として有する銅錯体
(3)3個の配位部位を有する化合物と2個の配位部位を有する化合物とを配位子として有する銅錯体
(4)4個の配位部位を有する化合物を配位子として有する銅錯体
(5)5個の配位部位を有する化合物を配位子として有する銅錯体
【0051】
上記(1)の態様において、2個の配位部位を有する化合物は、非共有電子対で配位する配位原子を2個有する化合物、または、アニオンで配位する配位部位と非共有電子対で配位する配位原子とを有する化合物が好ましい。また、2個の配位部位を有する化合物の2つを配位子として有する場合、配位子の化合物は、同一であってもよく、異なっていてもよい。
また、(1)の態様において、銅錯体は、単座配位子を更に有することもできる。単座配位子の数は、0個とすることもでき、1〜3個とすることもできる。単座配位子の種類としては、アニオンで配位する単座配位子、非共有電子対で配位する単座配位子のいずれも好ましく、2個の配位部位を有する化合物が非共有電子対で配位する配位原子を2個有する化合物の場合は配位力が強いという理由からアニオンで配位する単座配位子がより好ましく、2個の配位部位を有する化合物がアニオンで配位する配位部位と非共有電子対で配位する配位原子とを有する化合物の場合には錯体全体が電荷を持たないという理由から非共有電子対で配位する単座配位子がより好ましい。
【0052】
上記(2)の態様において、3個の配位部位を有する化合物は、非共有電子対で配位する配位原子を有する化合物が好ましく、非共有電子対で配位する配位原子を3個有する化合物が更に好ましい。
また、(2)の態様において、銅錯体は、単座配位子を更に有することもできる。単座配位子の数は、0個とすることもできる。また、1個以上とすることもでき、1〜3個以上がより好ましく、1〜2個がさらに好ましく、2個が一層好ましい。単座配位子の種類としては、アニオンで配位する単座配位子、非共有電子対で配位する単座配位子のいずれも好ましく、上述した理由によりアニオンで配位する単座配位子がより好ましい。
【0053】
上記(3)の態様において、3個の配位部位を有する化合物は、アニオンで配位する配位部位と、非共有電子対で配位する配位原子とを有する化合物が好ましく、アニオンで配位する配位部位を2つ、および、非共有電子対で配位する配位原子を1個有する化合物が更に好ましい。さらに、この2個のアニオンで配位する配位部位が異なっていることが特に好ましい。また、2個の配位部位を有する化合物は、非共有電子対で配位する配位原子を有する化合物が好ましく、非共有電子対で配位する配位原子を2個有する化合物が更に好ましい。なかでも、3個の配位部位を有する化合物が、アニオンで配位する配位部位を2個、および、非共有電子対で配位する配位原子を1個有する化合物であり、2個の配位部位を有する化合物が、非共有電子対で配位する配位原子を2個有する化合物である組み合わせが、特に好ましい。
また、(3)の態様において、銅錯体は、単座配位子を更に有することもできる。単座配位子の数は、0個とすることもでき、1個以上とすることもできる。0個がより好ましい。
【0054】
上記(4)の態様において、4個の配位部位を有する化合物は、非共有電子対で配位する配位原子を有する化合物が好ましく、非共有電子対で配位する配位原子を2以上有する化合物がより好ましく、非共有電子対で配位する配位原子を4個有する化合物が更に好ましい。
また、(4)の態様において、銅錯体は、単座配位子を更に有することもできる。単座配位子の数は、0個とすることもでき、1個以上とすることもでき、2個以上とすることもできる。1個が好ましい。単座配位子の種類としては、アニオンで配位する単座配位子、非共有電子対で配位する単座配位子のいずれも好ましい。
【0055】
上記(5)の態様において、5個の配位部位を有する化合物は、非共有電子対で配位する配位原子を有する化合物が好ましく、非共有電子対で配位する配位原子を2以上有する化合物がより好ましく、非共有電子対で配位する配位原子を5個有する化合物が更に好ましい。
また、(5)の態様において、銅錯体は、単座配位子を更に有することもできる。単座配位子の数は、0個とすることもでき、1個以上とすることもできる。単座配位子の数は0個が好ましい。
【0056】
多座配位子は、上述した配位子の具体例で説明した化合物のうち、配位部位を2以上有する化合物や、以下に示す化合物が挙げられる。
【化11】

【化12】
【0057】
[リン酸エステル銅錯体]
本発明において、銅化合物として、リン酸エステル銅錯体を用いることもできる。リン酸エステル銅錯体は、銅を中心金属としリン酸エステル化合物を配位子とするものである。リン酸エステル銅錯体の配位子をなすリン酸エステル化合物は、下記式(L−100)で表される化合物またはその塩が好ましい。
(HO)n−P(=O)−(OR13-n 式(L−100)
式中、R1は炭素数1〜18のアルキル基、炭素数6〜18のアリール基、炭素数7〜18のアラルキル基、または炭素数2〜18のアルケニル基を表すか、−OR1が、炭素数4〜100のポリオキシアルキル基、炭素数4〜100の(メタ)アクリロイルオキシアルキル基、または、炭素数4〜100の(メタ)アクリロイルポリオキシアルキル基を表し、nは1または2を表す。nが1のとき、R2はそれぞれ同一でもよいし、異なっていてもよい。
【0058】
リン酸エステル化合物の具体例としては、上述した配位子が挙げられる。また、特開2014−41318号公報の段落0022〜0042の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0059】
[スルホン酸銅錯体]
本発明において、銅化合物として、スルホン酸銅錯体を用いることもできる。スルホン酸銅錯体は、銅を中心金属としスルホン酸化合物を配位子とするものである。スルホン酸銅錯体の配位子をなすスルホン酸化合物は、下記式(L−200)で表される化合物またはその塩が好ましい。
2−SO2−OH 式(L−200)
【0060】
式中、R2は1価の有機基を表す。1価の有機基としては、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基などを挙げることができる。アルキル基、アリール基およびヘテロアリール基は、二価の連結基を有していてもよい。二価の連結基としては、−(CH2m−(mは1〜10の整数、好ましくは1〜6の整数、より好ましくは1〜4の整数)、炭素数5〜10の環状のアルキレン基、または、これらの基と、−O−、−COO−、−S−、−NH−および−CO−の少なくとも1つの組み合わせからなる基が好ましい。式(L−200)中、R2は、式量が300以下の有機基であることが好ましく、式量が50〜200の有機基がより好ましく、式量60〜100の有機基がさらに好ましい。式(L−200)で表されるスルホン酸化合物の分子量は、80〜750が好ましく、80〜600がより好ましく、80〜450がさらに好ましい。
【0061】
スルホン酸化合物の具体例としては、上述した配位子が挙げられる。また、特開2015−43063号公報の段落0021〜0039の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0062】
[ポリマータイプの銅化合物]
本発明において、銅化合物として、ポリマー側鎖に銅錯体部位を有する銅含有ポリマーを用いることができる。銅含有ポリマーは、ポリマー側鎖に銅錯体部位を有するので、銅を起点として、ポリマーの側鎖間に架橋構造が形成されると考えられ、耐熱性に優れた膜が得られると考えられる。
【0063】
銅錯体部位としては、銅と、銅に対して配位する部位(配位部位)とを有するものが挙げられる。銅に対して配位する部位としては、アニオンまたは非共有電子対で配位する部位が挙げられる。また、銅錯体部位は、銅に対して4座配位または5座配位する部位を有することが好ましい。配位部位の詳細については、上述した低分子タイプの銅化合物で説明したものが挙げられ、好ましい範囲も同様である。
【0064】
銅含有ポリマーは、配位部位を含むポリマー(ポリマー(B1)ともいう)と、銅成分との反応で得られるポリマーや、ポリマー側鎖に反応性部位を有するポリマー(以下ポリマー(B2)ともいう)と、ポリマー(B2)が有する反応性部位と反応可能な官能基を有する銅錯体とを反応させて得られるポリマーが挙げられる。銅含有ポリマーの重量平均分子量は、2000以上が好ましく、2000〜200万がより好ましく、6000〜200,000がさらに好ましい。
【0065】
(フタロシアニン化合物)
本発明において、赤外線吸収化合物として用いるフタロシアニン化合物は、下記式(PC)で表される化合物が好ましい。
【化13】
【0066】
一般式(PC)において、X1〜X16は、各々独立に、水素原子又は置換基を表し、M1は、金属原子、金属酸化物又は金属ハロゲン化物を表す。
【0067】
1が表す金属原子、及び、金属酸化物又は金属ハロゲン化物を構成する金属原子としては特に限定されず、例えば、Al、Zn、Mg、V、Cu、Co、Fe、Ni、CuおよびAgが挙げられ、Ti、Vが好ましい。M1は、Ti=O、V=Oが好ましい。
【0068】
1〜X16が表す置換基は、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、−ORc1、−CORc2、−COORc3、−OCORc4、−NRc5c6、−NHCORc7、−CONRc8c9、−NHCONRc10c11、−NHCOORc12、−SRc13、−SO2c14、−SO2ORc15、−NHSO2c16または−SO2NRc17c18が挙げられる。Rc1〜Rc18は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基またはヘテロアリール基を表す。なお、−COORc3のRc3が水素原子の場合(すなわち、カルボキシ基)は、水素原子が解離してもよく(すなわち、カルボネート基)、塩の状態であってもよい。また、−SO2ORc15のRc15が水素原子の場合(すなわち、スルホ基)は、水素原子が解離してもよく(すなわち、スルホネート基)、塩の状態であってもよい。
【0069】
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
アルキル基の炭素数は、1〜20が好ましく、1〜12がさらに好ましく、1〜8が特に好ましい。アルキル基は、直鎖、分岐、環状のいずれでもよい。アルキル基は無置換であってもよく、置換基を有していてもよい。
アリール基の炭素数は、6〜25が好ましく、6〜15がさらに好ましく、6〜10が最も好ましい。
ヘテロアリール基は、単環または縮合環が好ましく、単環または縮合数が2〜8の縮合環がより好ましく、単環または縮合数が2〜4の縮合環が更に好ましい。ヘテロアリール基の環を構成するヘテロ原子の数は1〜3が好ましい。ヘテロアリール基の環を構成するヘテロ原子は、窒素原子、酸素原子または硫黄原子が好ましい。ヘテロアリール基は、5員環または6員環が好ましい。ヘテロアリール基は、5員環または6員環が好ましい。ヘテロアリール基の環を構成する炭素原子の数は3〜30が好ましく、3〜18がより好ましく、3〜12が更に好ましい。
アルキル基、アリール基およびヘテロアリール基は、置換基を有していてもよく、無置換であってもよい。置換基としては、上述した置換基が挙げられ、例えば、ハロゲン原子等が挙げられる。
【0070】
一般式(PC)の詳細については、特開2014−067019号公報の段落0024〜0052、特開2013−1785号公報の段落0019〜0067の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0071】
フタロシアニン化合物の具体例としては、例えば、下記化合物や、特開2014−067019号公報の段落0191、0216に記載の化合物や、特開2006−343631号公報に記載のオキシチタニウムフタロシアニンや、特開2013−001785号公報に記載の化合物(オクタフルオロ−オクタ(ベンジルアミノ)オキシバナジウムフタロシアニン、オクタフルオロ−オクタキス(2−フェニルエチルアミノ)オキシバナジウムフタロシアニン、オクタフルオロ−オクタ(シクロヘキシルアミノ)オキシバナジウムフタロシアニンなど)などが挙げられる。
【化14】
【0072】
(ナフタロシアニン化合物)
本発明において、赤外線吸収化合物として用いるナフタロシアニン化合物は、下記式(NPC)で表される化合物が好ましい。
【化15】
一般式(NPC)において、X1〜X24は、各々独立に、水素原子又は置換基を表し、M2は、金属原子、金属酸化物又は金属ハロゲン化物を表す。
【0073】
1〜X24が表す置換基は、上述した一般式(PC)で説明した基が挙げられ、アルキル基、ハロゲン原子、アルコキシ基、フェノキシ基、アルキルチオ基、フェニルチオ基、アルキルアミノ基、アニリノ基が好ましい。M2が表す金属原子、及び、金属酸化物又は金属ハロゲン化物を構成する金属原子としては特に限定されず、例えば、Al、Zn、Mg、V、Cu、Co、Fe、Ni、CuおよびAgが挙げられ、Ti、Vが好ましい。M2は、Ti=O、V=Oが好ましい。
一般式(NPC)の詳細については、特開2013−218312号公報の段落0058〜0060の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0074】
(ジチオール化合物)
本発明において、赤外線吸収化合物として用いるジチオール化合物は、下記式(DT−1)〜(DT−3)で表される化合物が好ましい。
【化16】
【0075】
一般式(DT−1)〜(DT−3)において、R101〜R112は、各々独立に、水素原子又は置換基を表し、Y1〜Y3は、各々独立に、硫黄原子又は酸素原子を表し、M3は、金属原子、金属酸化物又は金属ハロゲン化物を表す。
【0076】
101〜R112が表す置換基は、上述した一般式(PC)で説明した基が挙げられ、アルキル基が好ましい。M3が表す金属原子、及び、金属酸化物又は金属ハロゲン化物を構成する金属原子としては特に限定されず、例えば、Ni、Pd、Pt、Au、Ir、Fe、Zn、W、Cu、Mo、In、Mn、Co、Mg、V、Cr、Tiが挙げられ、Ni、Pd、Ptが好ましく、Niがより好ましい。M3としては、Ni、Pd、Ptが好ましく、Niがより好ましい。一般式(DT−1)〜(DT−3)の詳細については、特開2008−163197号公報の段落0109、特表2014−516092号公報の段落0015〜0088、特開2015−057492号公報の段落0033〜0079の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0077】
ジチオール化合物の具体例としては、例えば、下記化合物や、特表2014−516092号公報の段落0188〜00251、特開2015−057492号公報の段落0079に記載された化合物が挙げられ、この内容は本明細書に組み込まれる。
【化17】
【0078】
赤外線吸収剤中の金属化合物(赤外線吸収化合物)の含有量は、赤外線吸収剤の全固形分に対して、1〜99.995質量%が好ましい。下限は、10質量%以上が好ましく、30質量%以上がより好ましい。上限は、99.9質量%以下とすることもでき、99質量%以下とすることもできる。
金属化合物(赤外線吸収化合物)として銅化合物を用いる場合、銅化合物の含有量は、金属化合物の質量に対して、50〜100質量%が好ましい。下限は、60質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましい。また、金属化合物(赤外線吸収化合物)は、実質的に銅化合物のみであってもよい。金属化合物(赤外線吸収化合物)が、実質的に銅化合物のみである場合とは、金属化合物中における銅化合物の含有量が例えば99質量%以上が好ましく、99.9質量%以上がより好ましく、銅化合物のみで構成されていることが一層好ましい。
【0079】
<<金属化合物以外の赤外線吸収化合物>>
本発明の赤外線吸収剤は、金属化合物以外の赤外線吸収化合物(以下、他の赤外線吸収化合物ともいう)を含んでいてもよい。他の赤外線吸収化合物としては、ピロロピロール化合物、スクアリリウム化合物、シアニン化合物、ジイモニウム化合物、クアテリレン化合物、クロコニウム化合物等が挙げられる。スクアリリウム化合物としては、以下に示す化合物が挙げられる。また、特開2011−208101号公報の段落0044〜0049に記載の化合物が挙げられ、この内容は本明細書に組み込まれる。ピロロピロール化合物としては、以下に示す化合物が挙げられる。また、特開2010−222557号公報の段落0049〜0062に記載の化合物D−1〜D−162が挙げられ、この内容は本明細書に組み込まれる。シアニン化合物としては、以下に示す化合物が挙げられる。また、特開2009−108267公報の段落0044〜0045に記載の化合物が挙げられ、この内容は本明細書に組み込まれる。
【化18】
【0080】
他の赤外線吸収化合物を含む場合、他の赤外線吸収化合物の含有量は、赤外線吸収剤の全固形分に対して、50質量%以下が好ましい。上限は、30質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましい。下限は、1質量%以上とすることもできる。
また、他の赤外線吸収化合物の含有量は、金属化合物(赤外線吸収化合物)の100質量部に対して、1〜100質量部が好ましく、1〜50質量部がより好ましく、1〜30質量部がさらに好ましい。
また、本発明の赤外線吸収剤は、他の赤外線吸収化合物を実質的に含まないことも好ましい。なお、他の赤外線吸収化合物を実質的に含まないとは、他の赤外線吸収化合物の含有量が0.1質量%以下であることが好ましく、0.01質量%以下がより好ましく、0.001質量%以下がさらに好ましく、含有しないことが一層好ましい。
【0081】
<<他の成分>>
本発明の赤外線吸収剤は、溶剤を含んでいてもよい。溶剤としては、後述する近赤外線吸収組成物で説明した溶剤が挙げられる。
【0082】
<<用途>>
本発明の赤外線吸収剤は、赤外線カットフィルタなどに好ましく用いることができる。また、熱線遮蔽フィルタや光学フィルタ、ディスプレイフィルタ、追記型光ディスク(CD−R)やフラッシュ溶融定着材料における光熱変換材料としても用いることができる。また、セキュリティインクや、不可視バーコードインクにおける情報表示材料として用いることもできる。
【0083】
<近赤外線吸収組成物>
次に本発明の近赤外線吸収組成物について説明する。
本発明の近赤外線吸収組成物の第一は、溶剤および硬化性化合物から選ばれる少なくとも1種と、赤外線吸収化合物である金属化合物とを含む近赤外線吸収組成物であって、
近赤外線吸収組成物は、金属化合物に含まれる金属原子とは異なる金属原子を含む金属成分を含み、金属化合物に含まれる金属原子100質量部に対し、金属成分に含まれる金属原子を0.005〜1質量部含む。金属化合物に含まれる金属原子100質量部に対し、金属成分に含まれる金属原子を、0.05〜0.8質量部含むことがより好ましく、0.1〜0.5質量部が特に好ましい。
【0084】
また、本発明の近赤外線吸収組成物の第二は、溶剤および硬化性化合物から選ばれる少なくとも1種と、赤外線吸収化合物である金属化合物とを含む近赤外線吸収組成物であって、
近赤外線吸収組成物は、金属化合物に含まれる金属原子とは異なる金属原子であって、Al、Zn、Li、Na、K、Mg、Ca、Ba、Ti、V、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、PtおよびAgから選ばれる少なくとも一種の金属原子を含む金属成分を含み、
金属化合物に含まれる金属原子100質量部に対し、金属成分に含まれるAl、Zn、Li、Na、K、Mg、Ca、Ba、Ti、V、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、PtおよびAgの合計量が0.005〜1質量部であり、0.05〜0.8質量部がより好ましく、0.1〜0.5質量部が特に好ましい。
【0085】
また、本発明の近赤外線吸収組成物の第三は、溶剤および硬化性化合物から選ばれる少なくとも1種と、赤外線吸収化合物である金属化合物とを含む近赤外線吸収組成物であって、
金属化合物が、Al、Ti、V、Mo、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、PdおよびPtから選ばれる少なくとも1種の金属原子を含み、
近赤外線吸収組成物は、金属化合物に含まれる金属原子とは異なる金属原子であって、Al、Zn、Li、Na、K、Mg、Ca、Ba、Ti、V、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、PtおよびAgから選ばれる少なくとも一種の金属原子を含む金属成分を含み、
金属化合物に含まれるAl、Ti、V、Mo、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、PdおよびPtの合計100質量部に対し、金属成分に含まれるAl、Zn、Li、Na、K、Mg、Ca、Ba、Ti、V、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、PtおよびAgの合計量が0.005〜1質量部であり、0.05〜0.8質量部がより好ましく、0.1〜0.5質量部が特に好ましい。
【0086】
本発明の近赤外線吸収組成物は、可視透明性および近赤外遮蔽性に優れた膜を製造できる。更には、得られる膜の耐熱性も向上する。このような効果が得られるメカニズムは上述した理由によるものであると推測する。以下、本発明の近赤外線吸収組成物について詳細に説明する。
【0087】
<<金属化合物(赤外線吸収化合物)>>
本発明の近赤外線吸収組成物は、赤外線吸収化合物である金属化合物を含有する。金属化合物は、Ni、Pd、Pt、Au、Ir、Fe、Zn、W、Cu、Mo、In、Mn、Co、Mg、V、Cr、TiおよびAlから選ばれる少なくとも1種の金属原子を含む化合物が好ましく、Al、Ti、V、Mo、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、PdおよびPtから選ばれる少なくとも1種の金属原子を含む化合物がより好ましく、Cu、NiおよびVから選ばれる少なくとも1種の金属原子を含む化合物がさらに好ましく、Cuを含む化合物が特に好ましい。すなわち、金属化合物は銅化合物が好ましい。銅化合物は、Cu以外の金属原子を含んでいてもよいが、Cu以外の金属を含まないことが好ましい。
【0088】
赤外線吸収化合物としての金属化合物は、極大吸収波長が700〜1200nmの範囲にある化合物が好ましく、極大吸収波長が700〜1000nmの範囲にある化合物がより好ましい。金属化合物は、赤外領域の波長領域(好ましくは、波長700〜1200nmの範囲)に吸収を有し、可視領域(好ましくは、波長400〜650nmの範囲)の波長の光を透過する化合物が好ましい。金属化合物の具体例としては、例えば、銅化合物、ピロロピロール化合物、スクアリリウム化合物、シアニン化合物、フタロシアニン化合物、ナフタロシアニン化合物、ジイモニウム化合物、ジチオール化合物、遷移金属酸化物化合物、クアテリレン化合物、クロコニウム化合物等が挙げられる。また、酸化インジウムスズ(tin−doped indium oxide、ITO)を用いることも好ましい。また、酸化アンチモンスズ(ATO)、酸化亜鉛(ZnO)、Alドープ酸化亜鉛(AlドープZnO)、フッ素ドープ二酸化スズ(FドープSnO2)、ニオブドープ二酸化チタン(NbドープTiO2)、セシウム酸化タングステンなどの無機金属化合物を用いることも好ましい。セシウム酸化タングステンは、国際公開2014/142259号公報の段落0025〜0029の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
なかでも、近赤外遮蔽性と可視透明性の両立に優れた膜を形成しやすいという理由から、銅化合物、フタロシアニン化合物、ナフタロシアニン化合物、ジチオール化合物が好ましい。また、本発明の効果が顕著に得られ易いという理由から、金属化合物は銅化合物であることが特に好ましい。また、銅化合物は、銅錯体がより好ましい。
【0089】
金属化合物(赤外線吸収化合物)の詳細については、上述した赤外線吸収剤で説明した化合物が挙げられ、好ましい範囲も同様である。
【0090】
金属化合物(赤外線吸収化合物)の含有量は、近赤外線吸収組成物の全固形分に対して、1〜80質量%が好ましい。下限は、5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましい。上限は、70質量%以下が好ましい。
金属化合物として銅化合物を用いる場合、銅化合物の含有量は、近赤外線吸収組成物の全固形分に対して、3〜70質量%が好ましい。上限は、60質量%以下が好ましく、50質量%以下がより好ましい。下限は、10質量%以上が好ましく、20質量%以上がより好ましい。
また、金属化合物中における銅化合物の含有量は、1〜100質量%が好ましく、10〜100質量%がより好ましく、30〜100質量%が更に好ましい。また金属化合物は、実質的に銅化合物のみであってもよい。金属化合物が、実質的に銅化合物のみである場合とは、金属化合物中における銅化合物の含有量が例えば99質量%以上が好ましく、99.9質量%以上がより好ましく、銅化合物のみで構成されていることが一層好ましい。
【0091】
<<他の赤外線吸収化合物>>
本発明の近赤外線吸収組成物は、上述した金属化合物以外の赤外線吸収化合物(他の赤外線吸収化合物ともいう)を含んでいてもよい。他の赤外線吸収化合物としては、ピロロピロール化合物、スクアリリウム化合物、シアニン化合物、ジイモニウム化合物、クアテリレン化合物、クロコニウム化合物等が挙げられる。
他の赤外線吸収化合物を含む場合、他の赤外線吸収化合物の含有量は、近赤外線吸収組成物の全固形分に対して、15質量%以下が好ましい。上限は、10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましい。下限は、1質量%以上とすることもできる。
また、他の赤外線吸収化合物の含有量は、金属化合物(赤外線吸収化合物)の100質量部に対して、1〜100質量部が好ましく、1〜50質量部がより好ましく、1〜30質量部がさらに好ましい。
また、本発明の近赤外線吸収組成物は、他の赤外線吸収化合物を実質的に含まないことも好ましい。なお、他の赤外線吸収化合物を実質的に含まないとは、他の赤外線吸収化合物の含有量が0.1質量%以下であることが好ましく、0.01質量%以下がより好ましく、0.001質量%以下がさらに好ましく、含有しないことが一層好ましい。
【0092】
<<金属成分>>
本発明の近赤外線吸収組成物は、上述した金属化合物に含まれる金属原子とは異なる金属原子を含む金属成分を含む。本発明において、金属成分は、上述した金属化合物以外の成分である。また、本発明の近赤外線吸収組成物が、硬化性化合物、重合開始剤、硬化促進剤、熱安定性付与剤、重合禁止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、溶剤、界面活性剤、増粘剤、可塑剤、充填剤などを含む場合は、これらの成分とは異なる成分でもある。
【0093】
本発明の近赤外線吸収組成物は、金属化合物に含まれる金属原子100質量部に対し、金属成分に含まれる金属原子を0.005〜1質量部含み、0.05〜0.8質量部がさらに好ましく、0.1〜0.5質量部が特に好ましい。金属成分の含有量が上記範囲であれば、可視透明性および近赤外遮蔽性に優れた膜を製造できる。
本発明の近赤外線吸収組成物は、金属化合物に含まれる金属原子100質量部に対し、金属成分に含まれるAl、Zn、Li、Na、K、Mg、Ca、Ba、Ti、V、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、PtおよびAgの合計量が0.005〜1質量部であることが好ましく、0.05〜0.8質量部がさらに好ましく、0.1〜0.5質量部が特に好ましい。
本発明の近赤外線吸収組成物は、金属化合物に含まれるAl、Ti、V、Mo、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、PdおよびPtの合計100質量部に対し、金属成分に含まれるAl、Zn、Li、Na、K、Mg、Ca、Ba、Ti、V、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、PtおよびAgの合計量が0.005〜1質量部であることが好ましく、0.05〜0.8質量部がさらに好ましく、0.1〜0.5質量部が特に好ましい。
【0094】
本発明において、金属成分は、Al、Zn、Li、Na、K、Mg、Ca、Ba、Ti、V、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、PtおよびAgから選ばれる少なくとも1種の金属原子を含むことが好ましく、Li、Na、K、Mg、Ca、Fe、Cu、AgおよびAlから選ばれる少なくとも1種の金属原子を含むことが好ましく、Li、Na、K、Mg、CaおよびFeから選ばれる少なくとも1種の金属原子を含むことがより好ましい。金属成分は、金属単体であってもよく、遊離金属イオンであってもよく、金属酸化物、金属窒化物、金属炭酸化物、金属塩(無機酸塩、有機酸塩、アンモニウム塩など)、金属間化合物、金属錯体、有機金属化合物、(ヘテロ)ポリ酸およびその塩などの化合物であってもよい。
【0095】
本発明の近赤外線吸収組成物は、金属化合物が、Al、Ti、V、Mo、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、PdおよびPtから選ばれる少なくとも1種の金属原子を含み、金属成分が、Al、Zn、Li、Na、K、Mg、Ca、Ba、Ti、V、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、PtおよびAgから選ばれる少なくとも1種の金属原子を含むことが好ましい。金属化合物と金属成分の具体的な組み合わせとしては、上述した赤外線吸収剤で説明した(1)〜(7)の組み合わせが挙げられる。なかでも、(1)の組み合わせ(金属化合物(赤外線吸収化合物)が、Cuを含む化合物(銅化合物)の場合)が好ましい。この態様によれば、上述した本発明の効果がより顕著に得られる傾向にある。
【0096】
<<硬化性化合物>>
本発明の近赤外線吸収組成物は、硬化性化合物を含んでいてもよい。硬化性化合物は、架橋性基を有する化合物(架橋性化合物)であってもよいし、架橋性基を有さないポリマー(非架橋性ポリマー)であってもよい。架橋性基は、熱、光、またはラジカルの作用により反応して架橋結合を形成しうる部位を有する基を意味する。また、硬化性化合物は、熱硬化性化合物であってもよいし、光硬化性化合物であってもよいが、膜強度の観点から熱硬化性化合物が好ましい。
【0097】
また、硬化性化合物は、実質的に架橋性化合物のみであってもよく、実質的に非架橋性ポリマーのみであってもよく、架橋性化合物と非架橋性ポリマーとを併用してもよい。硬化性化合物が、実質的に架橋性化合物のみである場合とは、例えば、硬化性化合物中における架橋性化合物の含有量が、99質量%以上であることが好ましく、99.9質量%以上がさらに好ましく、架橋性化合物のみであることが一層好ましい。また、硬化性化合物が、実質的に非架橋性ポリマーのみである場合とは、例えば、硬化性化合物中における非架橋性ポリマーの含有量が、99質量%以上であることが好ましく、99.9質量%以上がさらに好ましく、架橋性化合物のみであることが一層好ましい。
【0098】
<<<架橋性化合物>>>
架橋性化合物としては、ラジカル、酸、熱により架橋可能な公知の化合物を用いることができる。例えば、エチレン性不飽和結合を有する基を有する化合物、環状エーテル基を有する化合物、メチロール基を有する化合物、アルコキシシリル基を有する化合物等が挙げられる。架橋性化合物は、モノマー、ポリマーのいずれの形態であってもよい。
【0099】
ポリマータイプの架橋性化合物は、例えば、後述するエポキシ樹脂や、架橋性基を有する構成単位を含む樹脂などが挙げられる。架橋性基を有する構成単位としては、下記(A2−1)〜(A2−4)などが挙げられる。
【化19】
【0100】
1は、水素原子またはアルキル基を表す。アルキル基の炭素数は、1〜5が好ましく、1〜3がさらに好ましく、1が特に好ましい。R1は、水素原子またはメチル基が好ましい。
【0101】
51は、単結合または2価の連結基を表す。2価の連結基としては、アルキレン基、アリーレン基、−O−、−S−、−CO−、−COO−、−OCO−、−SO2−、−NR10−(R10は水素原子あるいはアルキル基を表し、水素原子が好ましい)、または、これらの組み合わせからなる基が挙げられ、アルキレン基、アリーレン基およびアルキレン基の少なくとも1つと−O−との組み合わせからなる基が好ましい。アルキレン基の炭素数は、1〜30が好ましく、1〜15がより好ましく、1〜10がさらに好ましい。アルキレン基は、置換基を有していてもよいが、無置換が好ましい。アルキレン基は、直鎖、分岐、環状のいずれであってもよい。また、環状のアルキレン基は、単環、多環のいずれであってもよい。アリーレン基の炭素数は、6〜18が好ましく、6〜14がより好ましく、6〜10がさらに好ましい。
【0102】
1は、架橋性基を表す。架橋性基としては、エチレン性不飽和結合を有する基、環状エーテル基、メチロール基、−M−(X2nで表される基などが挙げられる。−M−(X2nで表される基において、Mは、Si、Ti、ZrおよびAlから選択される原子を表し、X2は置換基または配位子を表し、n個のX2のうち、少なくとも1つが、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アシルオキシ基、ホスホリルオキシ基、スルホニルオキシ基、アミノ基、オキシム基およびO=C(Ra)(Rb)から選択される1種であり、X2同士は、それぞれ結合して環を形成していてもよく、nは、MのX2との結合手の数を表す。
【0103】
ポリマータイプの架橋性化合物は、更に、下記式(A3−1)〜(A3−7)で表される構成単位を有することも好ましい。
【化20】
式中、R5は水素原子またはアルキル基を表し、L4〜L7はそれぞれ独立に、単結合または2価の連結基を表し、R10〜R13はそれぞれ独立にアルキル基またはアリール基を表す。R14およびR15は、それぞれ独立に、水素原子または置換基を表す。
【0104】
5は、式(A2−1)〜(A2−4)のR1と同義であり、好ましい範囲も同様である。
4〜L7は、式(A2−1)〜(A2−4)のL1と同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0105】
10が表すアルキル基は、直鎖状、分岐状または環状のいずれでもよく、環状が好ましい。アルキル基は上述した置換基を有していてもよく、無置換であってもよい。アルキル基の炭素数は、1〜30が好ましく、1〜20がより好ましく、1〜10がさらに好ましい。R10が表すアリール基の炭素数は6〜18が好ましく、6〜12がより好ましく、6がさらに好ましい。R10は、環状のアルキル基またはアリール基が好ましい。
【0106】
11、R12が表すアルキル基は、直鎖状、分岐状または環状のいずれでも良く、直鎖状または分岐状が好ましい。アルキル基は上述した置換基を有していてもよく、無置換であってもよい。アルキル基の炭素数は1〜12が好ましく、1〜6がより好ましく、1〜4が更に好ましい。R11,R12が表すアリール基の炭素数は6〜18が好ましく、6〜12がより好ましく、6が更に好ましい。R11、R12は、直鎖状または分岐状のアルキル基が好ましい。
【0107】
13が表すアルキル基は、直鎖状、分岐状または環状のいずれでも良く、直鎖状または分岐状が好ましい。アルキル基は上述した置換基を有していてもよく、無置換であってもよい。アルキル基の炭素数は1〜12が好ましく、1〜6がより好ましく、1〜4が更に好ましい。R13が表すアリール基の炭素数は6〜18が好ましく、6〜12がより好ましく、6が更に好ましい。R13は、直鎖状または分岐状のアルキル基、または、アリール基が好ましい。
【0108】
14およびR15が表す置換基は、上述した一般式(PC)で説明した基が挙げられる。なかでも、R14およびR15の少なくとも一方は、シアノ基または、−COORaを表すことが好ましい。Raは、水素原子、アルキル基、アリール基またはヘテロアリール基を表し、水素原子、アルキル基またはアリール基が好ましい。
【0109】
モノマータイプの架橋性化合物の分子量は、2000未満が好ましく、100以上2000未満がより好ましく、200以上2000未満がさらに好ましい。上限は、例えば1500以下が好ましい。ポリマータイプの架橋性化合物の重量平均分子量(Mw)は、2,000〜2,000,000が好ましい。上限は、1,000,000以下が好ましく、500,000以下がより好ましい。下限は、3,000以上が好ましく、5,000以上がより好ましい。また、環状エーテル基を有する化合物の場合、重量平均分子量(Mw)は、100以上が好ましく、200〜2,000,000がより好ましい。上限は、1,000,000以下が好ましく、500,000以下がより好ましい。
【0110】
(エチレン性不飽和結合を有する基を有する化合物)
エチレン性不飽和結合を有する基を有する化合物は、3〜15官能の(メタ)アクリレート化合物であることが好ましく、3〜6官能の(メタ)アクリレート化合物であることがより好ましい。エチレン性不飽和結合を有する基を含む化合物の例としては、特開2013−253224号公報の段落0033〜0034の記載を参酌することができ、この内容は本明細書に組み込まれる。具体例としては、エチレンオキシ変性ペンタエリスリトールテトラアクリレート(市販品としてはNKエステルATM−35E;新中村化学工業社製)、ジペンタエリスリトールトリアクリレート(市販品としては KAYARAD D−330;日本化薬社製)、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート(市販品としては KAYARAD D−320;日本化薬社製)、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート(市販品としては KAYARAD D−310;日本化薬社製)、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート(市販品としては KAYARAD DPHA ;日本化薬社製、A−DPH−12E;新中村化学工業社製)、およびこれらの(メタ)アクリロイル基がエチレングリコール、プロピレングリコール残基を介して結合している構造が好ましい。またこれらのオリゴマータイプも使用できる。また、特開2013−253224号公報の段落0034〜0038の重合性化合物の記載を参酌することができ、この内容は本明細書に組み込まれる。また、特開2012−208494号公報の段落0477(対応する米国特許出願公開第2012/0235099号明細書の段落0585)に記載の重合性モノマー等が挙げられ、これらの内容は本明細書に組み込まれる。また、ジグリセリンEO(エチレンオキシド)変性(メタ)アクリレート(市販品としては M−460;東亞合成社製)が好ましい。ペンタエリスリトールテトラアクリレート(新中村化学工業社製、A−TMMT)、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート(日本化薬社製、KAYARAD HDDA)も好ましい。これらのオリゴマータイプも使用できる。例えば、RP−1040(日本化薬社製)などが挙げられる。
【0111】
エチレン性不飽和結合を有する基を含む化合物は、さらに、カルボキシ基、スルホン酸基、リン酸基等の酸基を有していてもよい。酸基を有する化合物としては、脂肪族ポリヒドロキシ化合物と不飽和カルボン酸とのエステルが挙げられる。脂肪族ポリヒドロキシ化合物の未反応のヒドロキシ基に、非芳香族カルボン酸無水物を反応させて酸基を持たせた多官能モノマーが好ましく、特に好ましくは、脂肪族ポリヒドロキシ化合物がペンタエリスリトールおよび/またはジペンタエリスリトールであるものである。市販品としては、例えば、東亞合成社製の多塩基酸変性アクリルオリゴマーとして、アロニックスシリーズのM−305、M−510、M−520などが挙げられる。酸基を有する化合物の酸価は、0.1〜40mgKOH/gが好ましい。下限は、5mgKOH/g以上が好ましい。上限は、30mgKOH/g以下が好ましい。
【0112】
エチレン性不飽和結合を有する基を含む化合物は、カプロラクトン構造を有する化合物も好ましい態様である。カプロラクトン構造を有する化合物としては、特開2013−253224号公報の段落0042〜0045の記載を参酌することができ、この内容は本明細書に組み込まれる。市販品としては、例えばサートマー社製のエチレンオキシ鎖を4個有する4官能アクリレートであるSR−494、日本化薬社製のペンチレンオキシ鎖を6個有する6官能アクリレートであるDPCA−60、イソブチレンオキシ鎖を3個有する3官能アクリレートであるTPA−330などが挙げられる。
【0113】
本発明において、エチレン性不飽和結合を有する基を有する化合物として、エチレン性不飽和結合を有する基を側鎖に有する構成単位を有するポリマーを用いることもできる。エチレン性不飽和結合を有する基を側鎖に有する構成単位としては、上述した(A2−1)〜(A2−4)で表される構成単位が挙げられる。側鎖にエチレン性不飽和結合を有する基を有する構成単位の含有量は、上記ポリマーを構成する全構成単位の5〜100質量%であることが好ましい。下限は、10質量%以上がより好ましく、15質量%以上が更に好ましい。上限は、90質量%以下がより好ましく、80質量%以下が更に好ましく、70質量%以下が特に好ましい。
【0114】
上記ポリマーは、側鎖にエチレン性不飽和結合を有する基を有する構成単位の他に、他の構成単位を含んでいてもよい。他の構成単位は、酸基等の官能基を含んでいてもよく、官能基を含んでいなくてもよい。酸基としては、カルボキシ基、スルホン酸基、リン酸基が例示される。酸基は1種類のみ含まれていても良いし、2種類以上含まれていても良い。酸基を有する構成単位の割合は、上記ポリマーを構成する全構成単位の0〜50質量%であることが好ましい。下限は、1質量%以上がより好ましく、3質量%以上が更に好ましい。上限は、35質量%以下がより好ましく、30質量%以下が更に好ましい。上記ポリマーは、上述した(A3−1)〜(A3−7)で表される構成単位をさらに含むことも好ましい。
【0115】
上記ポリマーの具体例としては、例えば、(メタ)アリル(メタ)アクリレート/(メタ)アクリル酸共重合体などが挙げられる。上記ポリマーの市販品としては、ダイヤナールNRシリーズ(三菱レイヨン社製)、Photomer6173(COOH含有 polyurethane acrylic oligomer.Diamond Shamrock Co.,Ltd.製)、ビスコートR−264、KSレジスト106(いずれも大阪有機化学工業社製)、サイクロマーPシリーズ(例えば、ACA230AA)、プラクセル CF200シリーズ(いずれもダイセル社製)、Ebecryl3800(ダイセルユーシービー社製)、アクリキュアーRD−F8(日本触媒社製)などが挙げられる。また、下記ポリマーも挙げられる。
【化21】
【0116】
(環状エーテル基を有する化合物)
本発明では、架橋性化合物として、環状エーテル基を有する化合物を用いることもできる。環状エーテル基としては、エポキシ基、オキセタニル基が挙げられ、エポキシ基が好ましい。環状エーテル基を有する化合物は、側鎖に環状エーテル基を有するポリマー、分子内に2個以上の環状エーテル基を有するモノマーまたはオリゴマーなどが挙げられる。例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂等を挙げることができる。また単官能または多官能グリシジルエーテル化合物も挙げられ、多官能脂肪族グリシジルエーテル化合物が好ましい。環状エーテル基を有する化合物は、グリシジル(メタ)アクリレートやアリルグリシジルエーテル等のグリシジル基を有する化合物や、脂環式エポキシ基を有する化合物を用いることもできる。例えば特開2009−265518号公報の段落0045等の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0117】
環状エーテル基を有する化合物は、市販品を用いることもできる。環状エーテル基を有する化合物の市販品としては、例えば、特開2012−155288号公報の段落0191等の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
ビスフェノールA型エポキシ樹脂としては、JER827、JER828、JER834、JER1001、JER1002、JER1003、JER1055、JER1007、JER1009、JER1010(以上、三菱化学社製)、EPICLON860、EPICLON1050、EPICLON1051、EPICLON1055(以上、DIC社製)等が挙げられる。
ビスフェノールF型エポキシ樹脂としては、JER806、JER807、JER4004、JER4005、JER4007、JER4010(以上、三菱化学社製)、EPICLON830、EPICLON835(以上、DIC社製)、LCE−21、RE−602S(以上、日本化薬社製)等が挙げられる。
フェノールノボラック型エポキシ樹脂としては、JER152、JER154、JER157S70、JER157S65(以上、三菱化学社製)、EPICLON N−740、EPICLON N−740、EPICLON N−770、EPICLON N−775(以上、DIC社製)等が挙げられる。
クレゾールノボラック型エポキシ樹脂としては、EPICLON N−660、EPICLON N−665、EPICLON N−670、EPICLON N−673、EPICLON N−680、EPICLON N−690、EPICLON N−695(以上、DIC社製)、EOCN−1020(日本化薬社製)等が挙げられる。
脂肪族エポキシ樹脂としては、ADEKA RESIN EP−4080S、同EP−4085S、同EP−4088S(以上、ADEKA社製)、セロキサイド2021P、セロキサイド2081、セロキサイド2083、セロキサイド2085、EHPE3150、EPOLEAD PB 3600、同PB 4700(以上、ダイセル社製)、デナコール EX−212L、EX−214L、EX−216L、EX−321L、EX−850L(以上、ナガセケムテックス社製)等が挙げられる。
その他にも、ADEKA RESIN EP−4000S、同EP−4003S、同EP−4010S、同EP−4011S(以上、ADEKA社製)、NC−2000、NC−3000、NC−7300、XD−1000、EPPN−501、EPPN−502(以上、ADEKA社製)、JER1031S(三菱化学社製)、リポキシSPCF−9X(昭和電工社製)等が挙げられる。
【0118】
(アルコキシシリル基を有する化合物)
本発明では、架橋性化合物として、アルコキシシリル基を有する化合物を用いることもできる。特に、赤外線吸収剤として銅化合物を用いる場合、架橋性化合物としてアルコキシシリル基を有する化合物を用いることが好ましい。アルコキシシリル基は、モノアルコキシシリル基、ジアルコキシシリル基、トリアルコキシシリル基が挙げられ、ジアルコキシシリル基、トリアルコキシシリル基が好ましい。この態様によれば、耐熱性に優れた近赤外線カットフィルタを製造しやすい。
【0119】
アルコキシシリル基を有する化合物は、低分子化合物、ポリマーのいずれの形態であってもよいが、より耐熱性に優れた膜を形成しやすいという理由からポリマーが好ましい。アルコキシシリル基を有する化合物のうち、低分子化合物の分子量は、100〜1000であることが好ましい。上限は、800以下が好ましく、700以下がより好ましい。なお、分子量は、構造式から求めた理論値である。アルコキシシリル基を有する化合物のうち、ポリマータイプの化合物の重量平均分子量は、500〜300000であることが好ましい。下限は、1000以上が好ましく、2000以上がより好ましい。上限は、250000以下が好ましく、200000以下がより好ましい。
【0120】
アルコキシシリル基におけるアルコキシ基の炭素数は、1〜5が好ましく、1〜3がより好ましく、1または2が特に好ましい。アルコキシシリル基は、一分子中に2個以上有することが好ましく、2〜3個有することがさらに好ましい。
【0121】
アルコキシシリル基を有する化合物の具体例としては、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、1,6−ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(ビニルベンジル)−2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリメトキシシランの塩酸塩、トリス−(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシランなどが挙げられる。また、上記以外にアルコキシオリゴマーを用いることができる。また、下記化合物を用いることもできる。
【化22】
【0122】
市販品としては、信越シリコーン社製のKBM−13、KBM−22、KBM−103、KBE−13、KBE−22、KBE−103、KBM−3033、KBE−3033、KBM−3063、KBM−3066、KBM−3086、KBE−3063、KBE−3083、KBM−3103、KBM−3066、KBM−7103、SZ−31、KPN−3504、KBM−1003、KBE−1003、KBM−303、KBM−402、KBM−403、KBE−402、KBE−403、KBM−1403、KBM−502、KBM−503、KBE−502、KBE−503、KBM−5103、KBM−602、KBM−603、KBM−903、KBE−903、KBE−9103、KBM−573、KBM−575、KBM−9659、KBE−585、KBM−802、KBM−803、KBE−846、KBE−9007、X−40−1053、X−41−1059A、X−41−1056、X−41−1805、X−41−1818、X−41−1810、X−40−2651、X−40−2655A、KR−513、KC−89S、KR−500、X−40−9225、X−40−9246、X−40−9250、KR−401N、X−40−9227、X−40−9247、KR−510、KR−9218、KR−213、X−40−2308、X−40−9238などが挙げられる。
また、アルコキシシリル基を有する化合物は、アルコキシシリル基を側鎖に有するポリマーを用いることもできる。
【0123】
アルコキシシリル基を有する化合物のうち、ポリマータイプの化合物としては、例えば、(メタ)アクリル樹脂(好ましくは、(メタ)アクリル酸エステル樹脂、(メタ)アクリルアミド樹脂)、スチレン樹脂、ポリシロキサンなどが挙げられる。なかでも、皮膜性の向上や、塗布液粘度調整の容易性という理由から(メタ)アクリル樹脂またはスチレン樹脂が好ましい。
ポリマータイプの化合物の具体例としては、例えば、上述した式(A2−1)〜(A2−4)で表される構成単位の少なくとも1種を有するポリマーなどが挙げられる。
【0124】
上記ポリマータイプの化合物は、上述した式(A2−1)〜(A2−4)で表される構成単位の他に、他の構成単位を含有していてもよい。他の構成単位を構成する成分としては、特開2010−106268号公報の段落0068〜0075(対応する米国特許出願公開第2011/0124824号明細書の段落0112〜0118)に開示の共重合成分の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。また、上述した(A3−1)〜(A3−7)で表される構成単位を有することもできる。ポリマータイプの化合物としては、例えば、以下に示すポリマーが挙げられる。
【化23】
【0125】
<<<架橋性基を有さないポリマー>>>
本発明の近赤外線吸収組成物は、硬化性化合物として、架橋性基を有さないポリマーを含むことができる。架橋性基を有さないポリマーの重量平均分子量(Mw)は、2,000〜2,000,000が好ましい。上限は、1,000,000以下が好ましく、500,000以下がより好ましい。下限は、3,000以上が好ましく、5,000以上がより好ましい。
【0126】
架橋性基を有さないポリマーとしては、(メタ)アクリル樹脂、エン・チオール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリフェニレン樹脂、ポリアリーレンエーテルフォスフィンオキシド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、環状オレフィン樹脂、ポリエステル樹脂が挙げられる。これらの樹脂から1種を単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。また、上述した(A3−1)〜(A3−7)で表される構成単位を有するポリマーも挙げられる。
【0127】
(メタ)アクリル樹脂としては、(メタ)アクリル酸および/またはそのエステルに由来する構成単位を含む重合体が挙げられる。具体的には、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル類、(メタ)アクリルアミドおよび(メタ)アクリロニトリルから選ばれる少なくとも1種を重合して得られる重合体が挙げられる。
【0128】
ポリエステル樹脂としては、ポリオール(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン)と、多塩基酸(例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸及びこれらの芳香環の水素原子がメチル基、エチル基、フェニル基等で置換された芳香族ジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸等の炭素数2〜20の脂肪族ジカルボン酸、及びシクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式ジカルボン酸など)との反応により得られるポリマーや、カプロラクトンモノマー等の環状エステル化合物の開環重合により得られるポリマー(例えばポリカプロラクトン)が挙げられる。
【0129】
架橋性基を有さないポリマーは、上述した(A3−1)〜(A3−7)で表される構成単位を有するポリマーを用いることも好ましい。架橋性基を有さないポリマーは、酸基を有していてもよい。酸基としては、例えば、カルボキシ基、リン酸基、スルホン酸基、フェノール性ヒドロキシ基などが挙げられる。これら酸基は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。酸基を有する樹脂としては、特開2015−043063号公報の段落0180〜0202に記載のアルカリ可溶性樹脂が挙げられ、この内容は本明細書に組み込まれる。酸基を有する樹脂の酸価は、30〜200mgKOH/gが好ましい。下限は、50mgKOH/g以上が好ましく、70mgKOH/g以上がより好ましい。上限は、150mgKOH/g以下が好ましく、120mgKOH/g以下がより好ましい。酸基を有する樹脂の酸価は、30〜200mgKOH/gが好ましい。下限は、50mgKOH/g以上が好ましく、70mgKOH/g以上がより好ましい。上限は、150mgKOH/g以下が好ましく、120mgKOH/g以下がより好ましい。
【0130】
硬化性化合物の含有量は、組成物の全固形分に対して、1質量%以上が好ましく、5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、15質量%以上がさらに好ましい。上限は、90質量%以下が好ましく、80質量%以下がより好ましく、75質量%以下がさらに好ましい。
また、架橋性化合物と非架橋性ポリマーとを併用する場合、非架橋性ポリマーの含有量は、架橋性化合物の100質量部に対して、20〜400質量部が好ましく、100〜300質量部がより好ましい。
硬化性化合物は、1種類のみでもよく、2種類以上でもよい。2種類以上の場合は、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0131】
<<溶剤>>
本発明の近赤外線吸収組成物は、溶剤を含有することができる。溶剤は、特に制限はなく、近赤外線吸収組成物の各成分を均一に溶解或いは分散しうるものであれば、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、水、有機溶剤を用いることができ、有機溶剤が好ましい。
【0132】
有機溶剤としては、例えば、アルコール類(例えばメタノール)、ケトン類、エステル類、芳香族炭化水素類、ハロゲン化炭化水素類、およびジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホオキサイド、スルホラン等が好適に挙げられる。アルコール類、芳香族炭化水素類、ハロゲン化炭化水素類の具体例としては、特開2012−194534号公報の段落0136等に記載のものが挙げられ、この内容は本明細書に組み込まれる。また、エステル類、ケトン類、エーテル類の具体例としては、特開2012−208494号公報の段落0497(対応する米国特許出願公開第2012/0235099号明細書の段落0609)に記載のものが挙げられる。
また、エステル類として、例えば、酢酸エチル、酢酸−n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸シクロヘキシル、ギ酸アミル、酢酸イソアミル、プロピオン酸ブチル、酪酸イソプロピル、酪酸エチル、酪酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、アルキルオキシ酢酸アルキル(例えば、アルキルオキシ酢酸メチル、アルキルオキシ酢酸エチル、アルキルオキシ酢酸ブチル(例えば、メトキシ酢酸メチル、メトキシ酢酸エチル、メトキシ酢酸ブチル、エトキシ酢酸メチル、エトキシ酢酸エチル等))、3−アルキルオキシプロピオン酸アルキルエステル類(例えば、3−アルキルオキシプロピオン酸メチル、3−アルキルオキシプロピオン酸エチル等(例えば、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル等))、2−アルキルオキシプロピオン酸アルキルエステル類(例えば、2−アルキルオキシプロピオン酸メチル、2−アルキルオキシプロピオン酸エチル、2−アルキルオキシプロピオン酸プロピル等(例えば、2−メトキシプロピオン酸メチル、2−メトキシプロピオン酸エチル、2−メトキシプロピオン酸プロピル、2−エトキシプロピオン酸メチル、2−エトキシプロピオン酸エチル))、2−アルキルオキシ−2−メチルプロピオン酸メチル及び2−アルキルオキシ−2−メチルプロピオン酸エチル(例えば、2−メトキシ−2−メチルプロピオン酸メチル、2−エトキシ−2−メチルプロピオン酸エチル等)、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸プロピル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、2−オキソブタン酸メチル、2−オキソブタン酸エチル等が挙げられる。
エーテル類として、例えば、ジエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート等が挙げられる。
ケトン類として、例えば、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン等が挙げられる。
芳香族炭化水素類として、例えば、トルエン、キシレン等が挙げられる。
溶剤は、1−メトキシ−2−プロパノール、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、N−メチル−2−ピロリドン、酢酸ブチル、乳酸エチルおよびプロピレングリコールモノメチルエーテルから選択される少なくとも1種以上が好ましい。
溶剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0133】
本発明において、金属含有量の少ない有機溶剤を用いることもできる。有機溶剤の金属含有量は、例えば10ppb以下であることが好ましい。必要に応じてpptレベルの溶剤を用いてもよく、そのような高純度溶剤は例えば東洋合成社が提供している。
【0134】
有機溶剤から金属等の不純物を除去する方法としては、例えば、蒸留(分子蒸留や薄膜蒸留等)やフィルタを用いた濾過を挙げることができる。フィルタを用いたろ過におけるフィルタ孔径としては、ポアサイズ10nm以下が好ましく、5nm以下がより好ましく、3nm以下が更に好ましい。フィルタの材質としては、ポリテトラフロロエチレン製、ポリエチレン製、ナイロン製のフィルタが好ましい。
【0135】
有機溶剤は、異性体(同じ原子数で異なる構造の化合物)が含まれていてもよい。また、異性体は、1種のみが含まれていてもよいし、複数種含まれていてもよい。
【0136】
近赤外線吸収組成物中における溶剤の量は、固形分が10〜90質量%となる量が好ましい。下限は、15質量%以上が好ましく、20質量%以上がより好ましい。上限は、80質量%以下が好ましく、70質量%以下がより好ましい。溶剤は1種類のみでも、2種類以上でもよく、2種類以上の場合は、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0137】
<<重合開始剤>>
本発明の近赤外線吸収組成物は、更に、重合開始剤を含んでもよい。重合開始剤としては、光、熱のいずれか或いはその双方により架橋性化合物の重合を開始する能力を有する限り、特に制限はないが、光重合開始剤が好ましい。光で重合を開始させる場合、紫外線領域から可視領域の光線に対して感光性を有するものが好ましい。また、熱で重合を開始させる場合には、150〜250℃で分解する重合開始剤が好ましい。
【0138】
重合開始剤としては、芳香族基を有する化合物が好ましい。例えば、アシルホスフィン化合物、アセトフェノン化合物、α−アミノケトン化合物、ベンゾフェノン化合物、ベンゾインエーテル化合物、ケタール化合物、チオキサントン化合物、オキシム化合物、ヘキサアリールビイミダゾール化合物、トリハロメチル化合物、アゾ化合物、有機過酸化物、ジアゾニウム化合物、ヨードニウム化合物、スルホニウム化合物、アジニウム化合物、メタロセン化合物等のオニウム塩化合物、有機硼素塩化合物、ジスルホン化合物、チオール化合物などが挙げられる。
重合開始剤は、特開2013−253224号公報の段落0217〜0228の記載を参酌することができ、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0139】
重合開始剤は、オキシム化合物、アセトフェノン化合物またはアシルホスフィン化合物が好ましい。アセトフェノン化合物の市販品としては、IRGACURE−907、IRGACURE−369、IRGACURE−379(商品名:いずれもBASF社製)等を用いることができる。アシルホスフィン化合物の市販品としては、IRGACURE−819、DAROCUR−TPO(商品名:いずれもBASF社製)等を用いることができる。
重合開始剤の含有量は、近赤外線吸収組成物の全固形分に対して、0.01〜30質量%が好ましい。下限は、0.1質量%以上が好ましい。上限は、20質量%以下が好ましく、15質量%以下がより好ましい。重合開始剤は1種類のみでも、2種類以上でもよく、2種類以上の場合は、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0140】
<<硬化促進剤>>
本発明の近赤外線吸収組成物は、硬化促進剤を含んでもよい。硬化促進剤としては、有機金属系触媒、酸系触媒、アミン系触媒などが挙げられ、有機金属系触媒が好ましい。
酸系触媒としては、塩酸、硝酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、硫酸、リン酸、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、シュウ酸、酢酸などが挙げられる。
有機金属系触媒は、Na、K、Ca、Mg、Ti、Zr、Al、Zn、Sn、及びBiからなる群より選択される少なくとも1つの金属原子を含む、酸化物、硫化物、ハロゲン化物、炭酸塩、カルボン酸塩、スルホン酸塩、リン酸塩、硝酸塩、硫酸塩、アルコキシド、水酸化物、及び置換基を有していてもよいアセチルアセトナート錯体からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。なかでも、上記金属の、ハロゲン化物、カルボン酸塩、硝酸塩、硫酸塩、水酸化物、及び置換基を有していてもよいアセチルアセトナート錯体からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、アセチルアセトナート錯体が更に好ましい。特に、Alのアセチルアセトナート錯体が好ましい。有機金属系触媒の具体例としては、例えば、トリス(2,4−ペンタンジオナト)アルミニウム(III)などが挙げられる。
【0141】
本発明の近赤外線吸収組成物が、硬化促進剤を含有する場合、硬化促進剤の含有量は、近赤外線吸収組成物の全固形分に対して0.01〜5質量%が好ましい。上限は、3質量%以下が好ましく、1質量%以下が更に好ましい。下限は、0.05質量%以上が好ましい。
【0142】
<<熱安定性付与剤>>
本発明の近赤外線吸収組成物は、熱安定性付与剤を含有することもできる。熱安定性付与剤としてはオキシム化合物が挙げられる。
オキシム化合物の市販品としては、IRGACURE−OXE01、IRGACURE−OXE02、IRGACURE−OXE03、IRGACURE−OXE04(以上、BASF社製)、TR−PBG−304(常州強力電子新材料有限公司製)、アデカアークルズNCI−831(ADEKA社製)、アデカアークルズNCI−930(ADEKA社製)等を用いることができる。
本発明においては、オキシム化合物として、フッ素原子を有するオキシム化合物を用いることもできる。フッ素原子を有するオキシム化合物の具体例としては、特開2010−262028号公報に記載の化合物、特表2014−500852号公報に記載の化合物24、36〜40、特開2013−164471号公報に記載の化合物(C−3)などが挙げられる。これらの内容は本明細書に組み込まれる。
本発明においては、オキシム化合物として、ニトロ基を有するオキシム化合物を用いることができる。ニトロ基を有するオキシム化合物は、二量体とすることも好ましい。ニトロ基を有するオキシム化合物の具体例としては、特開2013−114249号公報の段落0031〜0047、特開2014−137466号公報の段落0008〜0012、0070〜0079に記載されている化合物、特許4223071号公報の段落0007〜0025に記載されている化合物、アデカアークルズNCI−831(ADEKA社製)が挙げられる。
本発明においては、オキシム化合物として、ベンゾフラン骨格を有するオキシム化合物を用いることもできる。具体例としては、国際公開WO2015/036910号公報に記載されている化合物OE−01〜OE−75が挙げられる。
熱安定性付与剤の含有量は、近赤外線吸収組成物の全固形分に対して、0.01〜30質量%が好ましい。下限は、0.1質量%以上が好ましい。上限は、20質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましい。
【0143】
<<界面活性剤>>
本発明の近赤外線吸収組成物は、界面活性剤を含んでもよい。界面活性剤は、1種のみを用いてもよいし、2種類以上を組み合わせてもよい。界面活性剤の含有量は、近赤外線吸収組成物の全固形分に対して、0.0001〜5質量%が好ましい。下限は、0.005質量%以上が好ましく、0.01質量%以上がより好ましい。上限は、2質量%以下が好ましく、1質量%以下がより好ましい。
【0144】
界面活性剤としては、フッ素系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤などの各種界面活性剤を使用できる。近赤外線吸収組成物は、フッ素系界面活性剤およびシリコーン系界面活性剤の少なくとも一方を含有することが好ましい。被塗布面と塗布液との界面張力が低下して、被塗布面への濡れ性が改善される。このため、組成物の液特性(特に、流動性)が向上し、塗布厚の均一性や省液性がより改善する。その結果、少量の液量で数μm程度の薄膜を形成した場合であっても、厚みムラの小さい均一厚の膜形成を行える。
【0145】
フッ素系界面活性剤のフッ素含有率は、3〜40質量%が好ましい。下限は、5質量%以上が好ましく、7質量%以上が更に好ましい。上限は、30質量%以下が好ましく、25質量%以下が更に好ましい。フッ素含有率が上述した範囲内である場合は、塗布膜の厚さの均一性や省液性の点で効果的であり、溶解性も良好である。
フッ素系界面活性剤として具体的には、特開2014−41318号公報の段落0060〜0064(対応する国際公開WO2014/17669号公報の段落0060〜0064)等に記載の界面活性剤、特開2011−132503号公報の段落0117〜0132に記載の界面活性剤が挙げられ、これらの内容は本明細書に組み込まれる。フッ素系界面活性剤の市販品としては、例えば、メガファックF−171、同F−172、同F−173、同F−176、同F−177、同F−141、同F−142、同F−143、同F−144、同R30、同F−437、同F−475、同F−479、同F−482、同F−554、同F−780(以上、DIC社製)、フロラードFC430、同FC431、同FC171(以上、住友スリーエム社製)、サーフロンS−382、同SC−101、同SC−103、同SC−104、同SC−105、同SC1068、同SC−381、同SC−383、同S393、同KH−40(以上、旭硝子社製)、PolyFox PF−7002(オムノバ社製)等が挙げられる。フッ素系界面活性剤は、特開2015−117327号公報の段落0015〜0158に記載の化合物を用いることもできる。フッ素系界面活性剤としてブロックポリマーを用いることもでき、具体例としては、例えば特開2011−89090号公報に記載された化合物が挙げられる。
フッ素系界面活性剤は、フッ素原子を有する(メタ)アクリレート化合物に由来する繰り返し単位と、アルキレンオキシ基(好ましくはエチレンオキシ基、プロピレンオキシ基)を2以上(好ましくは5以上)有する(メタ)アクリレート化合物に由来する繰り返し単位と、を含む含フッ素高分子化合物も好ましく用いることができ、下記化合物も本発明で用いられるフッ素系界面活性剤として例示される。
【化24】
上記の化合物の重量平均分子量は、好ましくは3,000〜50,000であり、例えば、14,000である。
また、エチレン性不飽和基を側鎖に有する含フッ素重合体をフッ素系界面活性剤として用いることもできる。具体例としては、特開2010−164965号公報の段落0050〜0090および段落0289〜0295に記載された化合物、例えばDIC社製のメガファックRS−101、RS−102、RS−718K、RS−72K等が挙げられる。
また、フッ素系界面活性剤としては、フッ素原子を含有する官能基を持つ分子構造を有し、熱を加えるとフッ素原子を含有する官能基の部分が切断されてフッ素原子が揮発するアクリル系化合物も好適に使用できる。このようなフッ素系界面活性剤としては、DIC社製のメガファックDSシリーズ(化学工業日報、2016年2月22日および日経産業新聞、2016年2月23日)、例えばメガファックDS−21が挙げられ、これらを用いることができる。
【0146】
ノニオン系界面活性剤として具体的には、特開2012−208494号公報の段落0553(対応する米国特許出願公開第2012/0235099号明細書の段落0679)等に記載のノニオン系界面活性剤が挙げられ、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
カチオン系界面活性剤として具体的には、特開2012−208494号公報の段落0554(対応する米国特許出願公開第2012/0235099号明細書の段落0680)に記載のカチオン系界面活性剤が挙げられ、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
アニオン系界面活性剤として具体的には、W004、W005、W017(裕商社製)等が挙げられる。
シリコーン系界面活性剤としては、例えば、特開2012−208494号公報の段落0556(対応する米国特許出願公開第2012/0235099号明細書の段落0682)等に記載のシリコーン系界面活性剤が挙げられ、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0147】
<<重合禁止剤>>
本発明の近赤外線吸収組成物は、重合禁止剤を含有してもよい。重合禁止剤としては、ハイドロキノン、p−メトキシフェノール、ジ−tert−ブチル−p−クレゾール、ピロガロール、tert−ブチルカテコール、ベンゾキノン、4,4’−チオビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、N−ニトロソフェニルヒドロキシアミン第一セリウム塩等が挙げられ、p−メトキシフェノールが好ましい。重合禁止剤の含有量は、近赤外線吸収組成物の全固形分に対して、0.01〜5質量%が好ましい。
【0148】
<<紫外線吸収剤>>
本発明の近赤外線吸収組成物は、紫外線吸収剤を含有してもよい。紫外線吸収剤は、公知の化合物を用いることができる。市販品としては、例えば、UV503(大東化学社製)などが挙げられる。紫外線吸収剤の含有量は、近赤外線吸収組成物の全固形分に対して、0.01〜10質量%であることが好ましく、0.01〜5質量%であることがより好ましい。
【0149】
<<酸化防止剤>>
本発明の近赤外線吸収組成物は、酸化防止剤を含有してもよい。酸化防止剤としては、フェノール化合物、亜リン酸エステル化合物、チオエーテル化合物などが挙げられる。分子量500以上のフェノール化合物、分子量500以上の亜リン酸エステル化合物又は分子量500以上のチオエーテル化合物がより好ましい。これらは2種以上を混合して使用してもよい。フェノール化合物としては、フェノール系酸化防止剤として知られる任意のフェノール化合物を使用することができる。好ましいフェノール化合物としては、ヒンダードフェノール化合物が挙げられる。特に、フェノール性水酸基に隣接する部位(オルト位)に置換基を有する化合物が好ましい。前述の置換基としては炭素数1〜22の置換又は無置換のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、プロピオニル基、イソプロピオニル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、t−ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、イソオクチル基、2−エチルへキシル基がより好ましい。また、同一分子内にフェノール基と亜リン酸エステル基を有する化合物(酸化防止剤)も好ましい。
【0150】
また、酸化防止剤は、リン系酸化防止剤も好適に使用することができる。リン系酸化防止剤としてはトリス[2−[[2,4,8,10−テトラキス(1,1−ジメチルエチル)ジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン−6−イル]オキシ]エチル]アミン、トリス[2−[(4,6,9,11−テトラ−tert−ブチルジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン−2−イル)オキシ]エチル]アミン、および亜リン酸エチルビス(2,4−ジ−tert−ブチル−6−メチルフェニル)からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物が挙げられる。
【0151】
これらは、市販品として容易に入手可能であり、アデカスタブAO−20、アデカスタブAO−30、アデカスタブ AO−40、アデカスタブAO−50、アデカスタブAO−50F、アデカスタブ AO−60、アデカスタブAO−60G、アデカスタブAO−80、アデカスタブAO−330(ADEKA社製)などが挙げられる。
【0152】
酸化防止剤の含有量は、近赤外線吸収組成物の全固形分に対して、0.01〜20質量%であることが好ましく、0.3〜15質量%であることがより好ましい。酸化防止剤は、1種類のみでもよく、2種類以上でもよい。2種類以上の場合は、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0153】
<<その他の成分>>
本発明の近赤外線吸収組成物で併用可能なその他の成分としては、例えば、分散剤、増感剤、フィラー、熱重合禁止剤、可塑剤などが挙げられ、更に基材表面への密着促進剤及びその他の助剤類(例えば、導電性粒子、充填剤、消泡剤、難燃剤、レベリング剤、剥離促進剤、酸化防止剤、香料、表面張力調整剤、連鎖移動剤など)を併用してもよい。これらの成分を適宜含有させることにより、目的とする近赤外線カットフィルタの安定性、膜物性などの性質を調整することができる。これらの成分は、例えば、特開2012−003225号公報の段落0183(対応する米国特許出願公開第2013/0034812号明細書の段落0237)の記載、特開2008−250074号公報の段落0101〜0104、0107〜0109等の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0154】
<近赤外線吸収組成物の調製、用途>
本発明の近赤外線吸収組成物は、上記各成分を混合して調製できる。
組成物の調製に際しては、組成物を構成する各成分を一括配合してもよいし、各成分を溶剤に溶解および/または分散した後に逐次配合してもよい。また、配合する際の投入順序や作業条件は特に制約を受けない。
本発明においては、異物の除去や欠陥の低減などの目的で、フィルタでろ過することが好ましい。フィルタとしては、従来からろ過用途等に用いられているものであれば特に限定されることなく用いることができる。例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素樹脂、ナイロン(例えばナイロン−6、ナイロン−6,6)等のポリアミド系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン樹脂(高密度、超高分子量のポリオレフィン樹脂を含む)等の素材を用いたフィルタが挙げられる。これら素材の中でもポリプロピレン(高密度ポリプロピレンを含む)およびナイロンが好ましい。
フィルタの孔径は、0.01〜7.0μm程度が適しており、好ましくは0.01〜3.0μm程度、さらに好ましくは0.05〜0.5μm程度である。この範囲とすることにより、微細な異物を確実に除去することが可能となる。また、ファイバ状のろ材を用いることも好ましく、ろ材としては例えばポリプロピレンファイバ、ナイロンファイバ、グラスファイバ等が挙げられ、具体的にはロキテクノ社製のSBPタイプシリーズ(SBP008など)、TPRタイプシリーズ(TPR002、TPR005など)、SHPXタイプシリーズ(SHPX003など)のフィルタカートリッジを用いることができる。
【0155】
フィルタを使用する際、異なるフィルタを組み合わせてもよい。その際、第1のフィルタでのフィルタリングは、1回のみでもよいし、2回以上行ってもよい。
また、上述した範囲内で異なる孔径の第1のフィルタを組み合わせてもよい。ここでの孔径は、フィルタメーカーの公称値を参照することができる。市販のフィルタとしては、例えば、日本ポール株式会社、アドバンテック東洋株式会社、日本インテグリス株式会社(旧日本マイクロリス株式会社)又は株式会社キッツマイクロフィルタ等が提供する各種フィルタの中から選択することができる。
第2のフィルタは、上述した第1のフィルタと同様の材料等で形成されたものを使用することができる。第2のフィルタの孔径は、0.2〜10.0μmが好ましく、0.2〜7.0μmがより好ましく、0.3〜6.0μmが更に好ましい。この範囲とすることにより、組成物に含有されている成分粒子を残存させたまま、異物を除去することができる。
【0156】
本発明の近赤外線吸収組成物は、液状とすることができるため、例えば、本発明の近赤外線吸収組成物を基材などに適用し、乾燥させることにより近赤外線カットフィルタを容易に製造できる。
本発明の近赤外線吸収組成物の粘度は、塗布により近赤外線カットフィルタを形成する場合は、1〜3000mPa・sであることが好ましい。下限は、10mPa・s以上が好ましく、100mPa・s以上が更に好ましい。上限は、2000mPa・s以下が好ましく、1500mPa・s以下が更に好ましい。
本発明の近赤外線吸収組成物の全固形分は、塗布方法により変更されるが、例えば、1〜70質量%であることが好ましい。下限は10質量%以上がより好ましい。上限は60質量%以下がより好ましい。
【0157】
本発明の近赤外線吸収組成物の用途は、特に限定されないが、近赤外線カットフィルタ等の形成に好ましく用いることができる。例えば、固体撮像素子の受光側における近赤外線カットフィルタ(例えば、ウエハーレベルレンズに対する近赤外線カットフィルタ用など)、固体撮像素子の裏面側(受光側とは反対側)における近赤外線カットフィルタなどに好ましく用いることができる。特に、固体撮像素子の受光側における近赤外線カットフィルタとして好ましく用いることができる。
また、本発明の近赤外線吸収組成物によれば、耐熱性が高く、可視領域では高い透過率を維持しつつ、高い近赤外遮蔽性を実現できる近赤外線カットフィルタが得られる。さらには、近赤外線カットフィルタの膜厚を薄くでき、カメラモジュール、画像表示装置、赤外線センサなどの低背化に寄与できる。
【0158】
<近赤外線カットフィルタ>
次に、本発明の近赤外線カットフィルタについて説明する。
本発明の近赤外線カットフィルタは、上述した本発明の近赤外線吸収組成物を用いてなるものである。
本発明の近赤外線カットフィルタは、光透過率が以下の(1)〜(9)のうちの少なくとも1つの条件を満たすことが好ましく、以下の(1)〜(8)のすべての条件を満たすことがより好ましく、(1)〜(9)のすべての条件を満たすことがさらに好ましい。
(1)波長400nmでの光透過率は80%以上が好ましく、90%以上がより好ましく、92%以上がさらに好ましく、95%以上が特に好ましい。
(2)波長450nmでの光透過率は80%以上が好ましく、90%以上がより好ましく、92%以上がさらに好ましく、95%以上が特に好ましい。
(3)波長500nmでの光透過率は80%以上が好ましく、90%以上がより好ましく、92%以上がさらに好ましく、95%以上が特に好ましい。
(4)波長550nmでの光透過率は80%以上が好ましく、90%以上がより好ましく、92%以上がさらに好ましく、95%以上が特に好ましい。
(5)波長700nmでの光透過率は20%以下が好ましく、15%以下がより好ましく、10%以下がさらに好ましく、5%以下が特に好ましい。
(6)波長750nmでの光透過率は20%以下が好ましく、15%以下がより好ましく、10%以下がさらに好ましく、5%以下が特に好ましい。
(7)波長800nmでの光透過率は20%以下が好ましく、15%以下がより好ましく、10%以下がさらに好ましく、5%以下が特に好ましい。
(8)波長850nmでの光透過率は20%以下が好ましく、15%以下がより好ましく、10%以下がさらに好ましく、5%以下が特に好ましい。
(9)波長900nmでの光透過率は20%以下が好ましく、15%以下がより好ましく、10%以下がさらに好ましく、5%以下が特に好ましい。
【0159】
近赤外線カットフィルタは、波長400〜550nmの全ての範囲での光透過率が85%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましく、95%以上であることが更に好ましい。可視領域での透過率は高いほど好ましく、波長400〜550nmで高透過率となることが好ましい。また、波長700〜800nmの範囲の少なくとも1点での光透過率が20%以下であることが好ましく、波長700〜800nmの全ての範囲での光透過率が20%以下であることがさらに好ましい。
近赤外線カットフィルタの膜厚は、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、500μm以下が好ましく、300μm以下がより好ましく、250μm以下がさらに好ましく、200μm以下が特に好ましい。膜厚の下限は、例えば、0.1μm以上が好ましく、0.2μm以上がより好ましく、0.5μm以上がより好ましい。
【0160】
本発明の近赤外線カットフィルタは、本発明の近赤外線吸収組成物を用いて得られた膜の他に、更に、誘電体多層膜や、紫外線吸収層を有していてもよい。本発明の近赤外線カットフィルタが、更に誘電体多層膜を有することで、視野角が広く、近赤外遮蔽性に優れた近赤外線カットフィルタが得られ易い。また、本発明の近赤外線カットフィルタが、更に、紫外線吸収層を有することで、紫外線遮蔽性に優れた近赤外線カットフィルタとすることができる。紫外線吸収層としては、例えば、国際公開WO2015/099060号公報の段落0040〜0070、0119〜0145に記載の吸収層を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0161】
誘電体多層膜の材料としては、例えばセラミックを用いることができる。光の干渉の効果を利用した赤外線カットフィルタを形成するためには、屈折率の異なるセラミックを2種以上用いることが好ましい。誘電体多層膜としては具体的には、高屈折率材料層と低屈折率材料層とを交互に積層した構成を好適に用いることができる。
【0162】
高屈折率材料層を構成する材料としては、屈折率が1.7以上の材料を用いることができ、屈折率の範囲が通常は1.7〜2.5の材料が選択される。この材料としては、例えば、酸化チタン、酸化ジルコニウム、五酸化タンタル、五酸化ニオブ、酸化ランタン、酸化イットリウム、酸化亜鉛、硫化亜鉛または酸化インジウムを主成分とし酸化チタン、酸化錫および/または酸化セリウムなどを少量含有させたものが挙げられる。
【0163】
低屈折率材料層を構成する材料としては、屈折率が1.6以下の材料を用いることができ、屈折率の範囲が通常は1.2〜1.6の材料が選択される。この材料としては、例えば、シリカ、アルミナ、フッ化ランタン、フッ化マグネシウムおよび六フッ化アルミニウムナトリウムが挙げられる。
【0164】
誘電体多層膜を形成する方法としては、特に制限はないが、例えば、CVD(chemical vapor deposition)法、スパッタ法、真空蒸着法などにより、高屈折率材料層と低屈折率材料層とを交互に積層した誘電体多層膜を形成し、これを、銅を含有する透明層および/または赤外線吸収層と接着剤で貼り合わせる方法、
銅を含有する透明層および/または赤外線吸収層の表面に、CVD法、スパッタ法、真空蒸着法などにより、高屈折率材料層と低屈折率材料層とを交互に積層して誘電体多層膜を形成する方法を挙げることができる。
【0165】
高屈折率材料層および低屈折率材料層の各層の厚みは、遮蔽しようとする赤外線波長λ(nm)の0.1λ〜0.5λの厚みであることが好ましい。厚みを上記範囲とすることにより、特定波長の遮蔽や透過をコントロールしやすい。
【0166】
また、誘電体多層膜における積層数は、2〜100層が好ましく、2〜60層がより好ましく、2〜40層が更に好ましい。誘電体多層膜を蒸着した際に基板に反りが生じてしまう場合には、これを解消するために、基板両面へ誘電体多層膜を蒸着する、基板の誘電体多層膜を蒸着した面に紫外線等の放射線を照射する等の方法をとる事ができる。なお、放射線を照射する場合、誘電体多層膜の蒸着を行いながら照射してもよいし、蒸着後別途照射してもよい。
【0167】
誘電体多層膜としては、特開2014−41318号公報の段落0255〜0259、特開2011−100084号公報の段落0097〜0108の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0168】
本発明の近赤外線カットフィルタは、CCD(電荷結合素子)やCMOS(相補型金属酸化膜半導体)素子などの固体撮像素子や、赤外線センサ、画像表示装置などの各種装置に用いることができる。また、本発明の近赤外線カットフィルタは、近赤外線を吸収・カットする機能を有するレンズ(デジタルカメラや携帯電話や車載カメラ等のカメラ用レンズ、f−θレンズ、ピックアップレンズ等の光学レンズ)および半導体受光素子用の光学フィルタ、省エネルギー用に熱線を遮蔽する近赤外線吸収フィルムや近赤外線吸収板、太陽光の選択的な利用を目的とする農業用コーティング剤、近赤外線の吸収熱を利用する記録媒体、電子機器用や写真用近赤外線フィルタ、保護めがね、サングラス、熱線遮蔽フィルタ、光学文字読み取り記録、機密文書複写防止用、電子写真感光体、レーザー溶着などに用いられる。またCCDカメラ用ノイズカットフィルター、CMOSイメージセンサ用フィルタとしても有用である。
【0169】
<近赤外線カットフィルタの製造方法>
本発明の近赤外線カットフィルタは、本発明の近赤外線吸収組成物を用いて製造できる。
また、本発明の近赤外線カットフィルタの製造方法は、本発明の近赤外線吸収組成物を用いて、近赤外線吸収組成物層を形成する工程を含む。更に、近赤外線吸収組成物層を硬化する工程を含むことが好ましい。本発明の近赤外線カットフィルタの製造方法は、更にパターンを形成する工程を行ってもよい。
また、支持体上に、本発明の近赤外線吸収組成物からなる膜を形成した材料を、近赤外線カットフィルタとして用いてもよく、支持体から前述の膜を剥離して、支持体から剥離した前述の膜(単独膜)を近赤外線カットフィルタとして用いてもよい。
【0170】
近赤外線吸収組成物層を形成する工程において、近赤外線吸収組成物の適用方法としては、公知の方法を用いることができる。例えば、滴下法(ドロップキャスト);スリットコート法;スプレー法;ロールコート法;回転塗布法(スピンコーティング);流延塗布法;スリットアンドスピン法;プリウェット法(たとえば、特開2009−145395号公報に記載されている方法);インクジェット(例えばオンデマンド方式、ピエゾ方式、サーマル方式)、ノズルジェット等の吐出系印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷、グラビア印刷、反転オフセット印刷、メタルマスク印刷法などの各種印刷法;金型等を用いた転写法;ナノインプリント法などが挙げられる。インクジェットによる適用方法としては、近赤外線吸収組成物を吐出可能であれば特に限定されず、例えば「広がる・使えるインクジェット−特許に見る無限の可能性−、2005年2月発行、住べテクノリサーチ」に示された特許公報に記載の方法(特に115ページ〜133ページ)や、特開2003−262716公報、特開2003−185831、特開2003−261827公報、特開2012−126830公報、特開2006−169325公報などにおいて、吐出する組成物を本発明の近赤外線吸収組成物に置き換える方法が挙げられる。
【0171】
滴下法(ドロップキャスト)の場合、所定の膜厚で、均一な膜が得られるように、支持体上にフォトレジストを隔壁とする近赤外線吸収組成物の滴下領域を形成することが好ましい。近赤外線吸収組成物の滴下量および固形分濃度、滴下領域の面積を調整することで、所望の膜厚が得られる。乾燥後の膜の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0172】
支持体は、ガラスなどの透明基板であってもよい。また、固体撮像素子であってもよい。また、固体撮像素子の受光側に設けられた別の基板であってもよい。また、固体撮像素子の受光側に設けられた平坦化層等の層であっても良い。
【0173】
近赤外線吸収組成物層を硬化する工程において、近赤外線吸収組成物層の硬化方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、露光処理、加熱処理などが好適に挙げられる。ここで、本発明において「露光」とは、各種波長の光のみならず、電子線、X線などの放射線照射をも包含する意味で用いられる。
露光処理は、放射線の照射により行うことが好ましい。放射線としては、電子線、KrF、ArF、g線、h線、i線等の紫外線や可視光が好ましい。露光方式としては、ステッパー露光や、高圧水銀灯による露光などが挙げられる。露光量は5〜3000mJ/cm2が好ましく、10〜2000mJ/cm2がより好ましく、50〜1000mJ/cm2が特に好ましい。露光装置としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、超高圧水銀灯などの紫外線露光機が好適に挙げられる。
加熱処理は、加熱温度が、120〜250℃であることが好ましく、160℃〜220℃がより好ましい。加熱温度が120℃以上であれば、加熱処理によって膜強度が向上し、250℃以下であれば、膜成分の分解を抑制できる。加熱時間は、3分〜180分が好ましく、5分〜120分がより好ましい。加熱装置としては、特に制限はなく、公知の装置の中から、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ドライオーブン、ホットプレート、赤外線(IR)ヒーターなどが挙げられる。
【0174】
近赤外線吸収組成物層を硬化する工程において、硬化処理を行う前に、プリベーク(前加熱)を行ってもよい。加熱温度は、80℃〜200℃が好ましく、90℃〜150℃がより好ましい。加熱時間は、30〜240秒が好ましく、60〜180秒がより好ましい。
【0175】
近赤外線吸収組成物層を硬化する工程において、硬化処理を行った後に、さらに、ポストベーク(後加熱)を行ってもよい。後加熱は、硬化処理後の膜の硬化を完全なものとするための加熱処理である。加熱温度は、100〜240℃が好ましい。膜硬化の観点から、200〜230℃がより好ましい。加熱時間は、30〜1000秒が好ましく、60〜500秒がより好ましい。
【0176】
パターンを形成する工程において、パターンの形成方法としては、フォトリソグラフィ法によるパターン形成方法や、ドライエッチング法によるパターン形成方法が挙げられる。
【0177】
<固体撮像素子、カメラモジュール>
本発明の固体撮像素子は、本発明の近赤外線カットフィルタを含む。また、本発明のカメラモジュールは、本発明の近赤外線カットフィルタを含む。
【0178】
図1は、本発明の実施形態に係る近赤外線カットフィルタを有するカメラモジュールの構成を示す概略断面図である。
図1に示すカメラモジュール10は、固体撮像素子11と、固体撮像素子の主面側(受光側)に設けられた平坦化層12と、近赤外線カットフィルタ13と、近赤外線カットフィルタの上方に配置され内部空間に撮像レンズ14を有するレンズホルダー15と、を備える。カメラモジュール10は、外部からの入射光hνが、撮像レンズ14、近赤外線カットフィルタ13、平坦化層12を順次透過した後、固体撮像素子11の撮像素子部に到達するようになっている。
【0179】
固体撮像素子11は、例えば、基板16の主面に、フォトダイオード、層間絶縁膜(図示せず)、ベース層(図示せず)、カラーフィルタ17、オーバーコート(図示せず)、マイクロレンズ18をこの順に備えている。カラーフィルタ17(赤色のカラーフィルタ、緑色のカラーフィルタ、青色のカラーフィルタ)やマイクロレンズ18は、固体撮像素子11に対応するように、それぞれ配置されている。なお、平坦化層12の表面に近赤外線カットフィルタ13が設けられる代わりに、マイクロレンズ18の表面、ベース層とカラーフィルタ17との間、または、カラーフィルタ17とオーバーコートとの間に、近赤外線カットフィルタ13が設けられる形態であってもよい。例えば、近赤外線カットフィルタ13は、マイクロレンズ表面から2mm以内(より好ましくは1mm以内)の位置に設けられていてもよい。この位置に設けると、近赤外線カットフィルタを形成する工程が簡略化でき、マイクロレンズへの不要な近赤外線を十分にカットすることができるので、近赤外遮蔽性をより高めることができる。
【0180】
本発明の近赤外線カットフィルタは、耐熱性に優れるため、半田リフロー工程に供することができる。半田リフロー工程によりカメラモジュールを製造することによって、半田付けを行うことが必要な電子部品実装基板等の自動実装化が可能となり、半田リフロー工程を用いない場合と比較して、生産性を格段に向上することができる。更に、自動で行うことができるため、低コスト化を図ることもできる。半田リフロー工程に供される場合、250〜270℃程度の温度にさらされることとなるため、近赤外線カットフィルタは、半田リフロー工程に耐え得る耐熱性(以下、「耐半田リフロー性」ともいう。)を有することが好ましい。
本発明のカメラモジュールは、更に、紫外線吸収層を有することもできる。この態様によれば、紫外線遮蔽性を高めることができる。紫外線吸収層は、例えば、国際公開WO2015/099060号公報の段落0040〜0070、0119〜0145の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれることする。また、後述する紫外・赤外光反射膜を更に有することもできる。紫外線吸収層と紫外・赤外光反射膜は、両者を併用してもよく、いずれか一方のみであってもよい。
【0181】
図2〜4は、カメラモジュールにおける近赤外線カットフィルタ周辺部分の一例を示す概略断面図である。
【0182】
図2に示すように、カメラモジュールは、固体撮像素子11と、平坦化層12と、紫外・赤外光反射膜19と、透明基材20と、近赤外線吸収層(近赤外線カットフィルタ)21と、反射防止層22とをこの順に有していてもよい。紫外・赤外光反射膜19は、近赤外線カットフィルタの機能を付与または高める効果を有し、例えば、特開2013−68688号公報の段落0033〜0039、国際公開WO2015/099060号公報の段落0110〜0114を参酌することができ、この内容は本明細書に組み込まれる。透明基材20は、可視領域の波長の光を透過するものであり、例えば、特開2013−68688号公報の段落0026〜0032を参酌することができ、この内容は本明細書に組み込まれる。近赤外線吸収層21は、上述した本発明の近赤外線吸収組成物を塗布することにより形成することができる。反射防止層22は、近赤外線カットフィルタに入射する光の反射を防止することにより透過率を向上させ、効率よく入射光を利用する機能を有するものであり、例えば、特開2013−68688号公報の段落0040を参酌することができ、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0183】
図3に示すように、カメラモジュールは、固体撮像素子11と、近赤外線吸収層(近赤外線カットフィルタ)21と、反射防止層22と、平坦化層12と、反射防止層22と、透明基材20と、紫外・赤外光反射膜19とをこの順に有していてもよい。
【0184】
図4に示すように、カメラモジュールは、固体撮像素子11と、近赤外線吸収層(近赤外線カットフィルタ)21と、紫外・赤外光反射膜19と、平坦化層12と、反射防止層22と、透明基材20と、反射防止層22とをこの順に有していてもよい。
【0185】
<画像表示装置>
本発明の画像表示装置は、本発明の近赤外線カットフィルタを有する。本発明の近赤外線カットフィルタは、液晶表示装置や有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)表示装置などの画像表示装置に用いることもできる。例えば、各着色画素(例えば赤色、緑色、青色)とともに用いることにより、表示装置のバックライト(例えば白色発光ダイオード(白色LED))に含まれる赤外光を遮蔽し、周辺機器の誤作動を防止する目的や、各着色表示画素に加えて赤外の画素を形成する目的で用いることが可能である。
【0186】
表示装置の定義や各表示装置の詳細については、例えば「電子ディスプレイデバイス(佐々木昭夫著、(株)工業調査会、1990年発行)」、「ディスプレイデバイス(伊吹順章著、産業図書(株)、平成元年発行)」などに記載されている。また、液晶表示装置については、例えば「次世代液晶ディスプレイ技術(内田龍男編集、(株)工業調査会、1994年発行)」に記載されている。本発明が適用できる液晶表示装置に特に制限はなく、例えば、上記の「次世代液晶ディスプレイ技術」に記載されている色々な方式の液晶表示装置に適用できる。
【0187】
画像表示装置は、白色有機EL素子を有するものであってもよい。白色有機EL素子としては、タンデム構造であることが好ましい。有機EL素子のタンデム構造については、特開2003−45676号公報、三上明義監修、「有機EL技術開発の最前線−高輝度・高精度・長寿命化・ノウハウ集−」、技術情報協会、326−328ページ、2008年などに記載されている。有機EL素子が発光する白色光のスペクトルは、青色領域(430nm−485nm)、緑色領域(530nm−580nm)及び黄色領域(580nm−620nm)に強い発光極大ピークを有するものが好ましい。これらの発光ピークに加え更に赤色領域(650nm−700nm)に発光極大ピークを有するものがより好ましい。
【0188】
<赤外線センサ>
本発明の赤外線センサは、本発明の近赤外線カットフィルタを含む。本発明の赤外線センサの構成としては、本発明の近赤外線カットフィルタを備えた構成であり、赤外線センサとして機能する構成であれば特に限定はないが、例えば、以下のような構成が挙げられる。
【0189】
基板上に、固体撮像素子(CCDセンサ、CMOSセンサ、有機CMOSセンサ等)の受光エリアを構成する複数のフォトダイオード及びポリシリコン等からなる転送電極を有し、フォトダイオード及び転送電極上にフォトダイオードの受光部のみ開口したタングステン等からなる遮光膜を有し、遮光膜上に遮光膜全面及びフォトダイオード受光部を覆うように形成された窒化シリコン等からなるデバイス保護膜を有し、デバイス保護膜上に、本発明の硬化膜を有する構成である。更に、デバイス保護膜上であって本発明の近赤外線カットフィルタの下(基板に近い側)に集光手段(例えば、マイクロレンズ等。以下同じ)を有する構成や、本発明の近赤外線カットフィルタ上に集光手段を有する構成等であってもよい。
【実施例】
【0190】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」、「%」は、質量基準である。
【0191】
<重量平均分子量(Mw)>
重量平均分子量(Mw)は、以下の方法で、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)にて測定した。
カラムの種類:TSKgel Super AWM―H(東ソー社製、6.0mm(内径)×15.0cm)
展開溶媒:10mmol/L リチウムブロミドNMP(N−メチルピロリジノン)溶液
カラム温度:40℃
流量(サンプル注入量):10μL
装置名:HLC−8220(東ソー社製)
検量線ベース樹脂:ポリスチレン樹脂
【0192】
<金属原子の含有量の測定方法>
誘導結合プラズマ発光分光分析法(ICP−OES)により、測定サンプル中の金属原子の含有量を測定した。
前処理:1%メチルエチルケトン/N−メチルピロリジノン(=99/1(質量比))溶液を調整
装置名:Optima7300DV(パーキンエルマー社製)
【0193】
<組成物の調製方法>
(実施例1)組成物1の調製
赤外線吸収化合物として以下に示す銅錯体1と、銅以外の金属原子を含む金属成分とを混合し、銅錯体1に含まれる金属原子(銅原子)100質量部に対し、金属成分に含まれる金属原子(銅以外の金属原子)を0.1質量部含む赤外線吸収剤1を調製した。なお、金属成分は、金属原子として、Li、Na、K、Ca、Fe、Agを含んでいた。
次に、赤外線吸収剤1を銅錯体1の配合量が45質量部となる配合量と、以下に示す樹脂1を49.95質量部と、IRGACURE−OXE02(BASF社製)を5質量部と、トリス(2,4−ペンタンジオナト)アルミニウム(III)(東京化成工業社製)を0.05質量部と、シクロヘキサノンを100質量部とを混合し、撹拌した後、孔径0.45μmのナイロン製フィルタ(日本ポール社製)でろ過して組成物1を調製した。この組成物は、銅錯体1に含まれる金属原子(銅原子)100質量部に対し、金属成分に含まれる金属原子(銅以外の金属原子)を0.1質量部含んでいた。
銅錯体1:下記構造
【化25】
樹脂1:下記構造(Mw=1.5万、主鎖に付記した数値は、各構成単位のモル比である)
【化26】
【0194】
(実施例2)組成物2の調製
実施例1と同様にして、銅錯体1に含まれる金属原子(銅原子)100質量部に対し、金属成分に含まれる金属原子(銅以外の金属原子)を0.8質量部含む赤外線吸収剤2を調製した。金属成分は、銅以外の金属原子として、Li、Na、K、Ca、Fe、Agを含んでいた。
赤外線吸収剤1の代わりに、赤外線吸収剤2を用いた以外は、実施例1と同様にして組成物2を調製した。この組成物は、銅錯体1に含まれる金属原子(銅原子)100質量部に対し、金属成分に含まれる金属原子(銅以外の金属原子)を0.8質量部含んでいた。
【0195】
(実施例3)組成物3の調製
実施例1と同様にして、銅錯体1に含まれる金属原子(銅原子)100質量部に対し、金属成分に含まれる金属原子(銅以外の金属原子)を0.01質量部含む赤外線吸収剤3を調製した。金属成分は、金属原子として、Li、Na、K、Ca、Fe、Agを含んでいた。
赤外線吸収剤1の代わりに、赤外線吸収剤3を用いた以外は、実施例1と同様にして組成物3を調製した。この組成物は、銅錯体1に含まれる金属原子(銅原子)100質量部に対し、金属成分に含まれる金属原子(銅以外の金属原子)を0.01質量部含んでいた。
【0196】
(実施例4)組成物4の調製
銅錯体1の代わりに、同量の銅錯体2を用いた以外は実施例1と同様にして、銅錯体2に含まれる金属原子(銅原子)100質量部に対し、金属成分に含まれる金属原子(銅以外の金属原子)を0.1質量部含有する赤外線吸収剤4を調製した。金属成分は、金属原子として、Li、Na、K、Ca、Fe、Agを含んでいた。
赤外線吸収剤1の代わりに、赤外線吸収剤4を用いた以外は、実施例1と同様にして組成物4を調製した。この組成物は、銅錯体2に含まれる金属原子(銅原子)100質量部に対し、金属成分に含まれる金属原子(銅以外の金属原子)を0.1質量部含んでいた。また、
銅錯体2:下記構造
【化27】
【0197】
(実施例5)組成物5の調製
銅錯体1の代わりに、同量の銅錯体3を用いた以外は実施例1と同様にして、銅錯体3に含まれる金属原子(銅原子)100質量部に対し、金属成分に含まれる金属原子(銅以外の金属原子)を0.1質量部含有する赤外線吸収剤5を調製した。金属成分は、金属原子として、Li、Na、K、Ca、Fe、Agを含んでいた。
赤外線吸収剤1の代わりに、赤外線吸収剤5を用いた以外は、実施例1と同様にして組成物5を調製した。この組成物は、銅錯体3に含まれる金属原子(銅原子)100質量部に対し、金属成分に含まれる金属原子(銅以外の金属原子)を0.1質量部含んでいた。
銅錯体3:下記構造
【化28】
【0198】
(実施例6)組成物6の調製
銅錯体1の代わりに、同量の銅錯体4を用いた以外は実施例1と同様にして、銅錯体4に含まれる金属原子(銅原子)100質量部に対し、金属成分に含まれる金属原子(銅以外の金属原子)を0.1質量部含有する赤外線吸収剤6を調製した。金属成分は、金属原子として、Li、Na、K、Ca、Fe、Agを含んでいた。
赤外線吸収剤1の代わりに、赤外線吸収剤6を用いた以外は、実施例1と同様にして組成物6を調製した。この組成物は、銅錯体4に含まれる金属原子(銅原子)100質量部に対し、金属成分に含まれる金属原子(銅以外の金属原子)を0.1質量部含んでいた。
銅錯体4:下記化合物を配位子として有する銅錯体。
【化29】
【0199】
(実施例7)組成物7の調製
銅錯体1の代わりに、同量の銅錯体5を用いた以外は実施例1と同様にして、銅錯体5に含まれる金属原子(銅原子)100質量部に対し、金属成分に含まれる金属原子(銅以外の金属原子)を0.1質量部含有する赤外線吸収剤7を調製した。金属成分は、金属原子として、Li、Na、K、Ca、Fe、Agを含んでいた。
赤外線吸収剤1の代わりに、赤外線吸収剤7を用いた以外は、実施例1と同様にして組成物7を調製した。この組成物は、銅錯体5に含まれる金属原子(銅原子)100質量部に対し、金属成分に含まれる金属原子(銅以外の金属原子)を0.1質量部含んでいた。
銅錯体5:下記化合物を配位子として有する銅錯体。
【化30】
【0200】
(実施例8)組成物8の調製
ナスフラスコに、酢酸銅一水和物7.00g(35.06mmol)、メタノール140gを加え、20℃で1時間撹拌し、溶液(A液)を得た。別の容器に、プライサーフA219B(第一工業製薬社製)1.75g、n−ブチルホスホン酸4.82gをメタノール100gに溶解し、溶液(B液)を得た。B液を、A液に対して3時間かけて滴下した。この反応液を20℃で10時間撹拌した。その後、エバポレーター(水浴60℃)で反応液から溶媒を留去した。溶媒が留去されたのちに残る固形分にトルエン100gを加え、恒量になり、酢酸臭がしなくなるまでエバポレーターで留去し、銅錯体6を得た(収量8.75g(収率100%)の青緑色固体)。これにトルエン211gを加え、超音波照射を6時間行い、n−ブチルホスホン酸銅塩トルエン分散液(1)を得た。
次に、フラスコに、トリエチレングリコールビス(2−エチルヘキサノエート)1.90g、トルエン250ml、ポリビニルブチラール(PVB)5.00gを加えた。これに、meso‐エリスリトール4.8mgをメタノール1mlに溶かした溶液を加えた。これに上記n−ブチルホスホン酸銅塩トルエン分散液(1)3.65g(銅塩を0.583mmol含む)と、銅以外の金属原子を含む金属成分とを添加し、20℃で10時間撹拌後、1.5時間超音波照射し、PVBを均一に溶解させて組成物8を得た。組成物8は、n−ブチルホスホン酸銅塩に含まれる金属原子(銅原子)100質量部に対し、金属成分に含まれる金属原子(銅以外の金属原子)を0.1質量部含有していた。金属成分は、銅以外の金属原子として、Li、Na、K、Ca、Fe、Agを含んでいた。
【0201】
(実施例9)組成物9の調製
銅錯体1の代わりに、銅錯体1と銅錯体7を1:3の質量比の混合物を用いた以外は実施例1と同様にして、銅錯体1と銅錯体7に含まれる金属原子(銅原子)100質量部に対し、金属成分に含まれる金属原子(銅以外の金属原子)を0.1質量部含有する赤外線吸収剤9を調製した。金属成分は、金属原子として、Li、Na、K、Ca、Fe、Agを含んでいた。
赤外線吸収剤1の代わりに、赤外線吸収剤9を用い、樹脂1の量を44.95質量部に変更し,KBM−3066(信越化学工業製)を5質量部用いた以外は、実施例1と同様にして組成物9を調製した。この組成物は、銅錯体1と銅錯体7に含まれる金属原子(銅原子)100質量部に対し、金属成分に含まれる金属原子(銅以外の金属原子)を0.1質量部含んでいた。
銅錯体7:下記化合物を配位子として有する銅錯体。
【化31】
【0202】
(実施例10)組成物10の調製
赤外線吸収化合物として以下に示すフタロシアニン化合物Pc−1と、バナジウム以外の金属原子を含む金属成分とを混合し、フタロシアニン化合物Pc−1に含まれる金属原子(バナジウム原子)100質量部に対し、金属成分に含まれる金属原子(バナジウム以外の金属原子)を0.1質量部含む赤外線吸収剤10を調製した。金属成分は、金属原子として、Li、Na、K、Ca、Fe、Alを含んでいた。
次に、赤外線吸収剤10をフタロシアニン化合物Pc−1の配合量が0.1質量部となる配合量と、以下に示す樹脂2を8.04質量部と、KAYARAD DPHA(日本化薬社製)を0.07質量部と、メガファックRS−72K(DIC社製)を0.265質量部と、光重合開始剤として下記化合物を0.38質量部と、溶剤としてプロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート(PGMEA)を82.51質量部とを混合し、撹拌した後、孔径0.45μmのナイロン製フィルタ(日本ポール社製)でろ過して組成物10を調製した。この組成物は、フタロシアニン化合物Pc−1に含まれる金属原子(バナジウム原子)100質量部に対し、金属成分に含まれる金属原子(バナジウム以外の金属原子)を0.1質量部含んでいた。
樹脂2:下記化合物(Mw:41000、主鎖に付記した数値は、各構成単位のモル比である)
【化32】
光重合開始剤:下記構造
【化33】
【0203】
(実施例11)組成物11の調製
赤外線吸収化合物として以下に示すジチオール化合物Dt−1と、ニッケル以外の金属原子を含む金属成分とを混合し、ジチオール化合物Dt−1に含まれる金属原子(ニッケル原子)100質量部に対し、金属成分に含まれる金属原子(ニッケル以外の金属原子)を0.1質量部含む赤外線吸収剤11を調製した。金属成分は、金属原子として、Li、Na、K、Ca、Fe、Cuを含んでいた。
赤外線吸収剤11を用い、組成物9と同様にして、ジチオール化合物Dt−1に含まれる金属原子(ニッケル原子)100質量部に対し、金属成分に含まれる金属原子(ニッケル以外の金属原子)を0.1質量部含有する組成物11を調製した。
【0204】
(実施例12)組成物12の調製
赤外線吸収化合物として以下に示すフタロシアニン化合物Pc−1を50質量部と、以下に示すジチオール化合物Dt−1を50質量部と、バナジウムおよびニッケル以外の金属原子を含む金属成分とを混合し、フタロシアニン化合物Pc−1に含まれ得る金属原子(バナジウム)とジチオール化合物Dt−1に含まれる金属原子(ニッケル原子)との合計100質量部に対し、金属成分に含まれる金属原子(バナジウムおよびニッケル以外の金属原子)を0.1質量部含有する赤外線吸収剤12を調製した。金属成分は、金属原子として、Li、Na、K、Ca、Fe、Cu、Alを含んでいた。
赤外線吸収剤12を用い、フタロシアニン化合物Pc−1とジチオール化合物Dt−1との合計が0.1質量部となる配合量とした以外は、組成物10と同様にして、フタロシアニン化合物Pc−1に含まれ得る金属原子(バナジウム)とジチオール化合物Dt−1に含まれる金属原子(ニッケル原子)との合計100質量部に対し、金属成分に含まれる金属原子(バナジウムおよびニッケル以外の金属原子)を0.1質量部含有する組成物12を調製した。
【0205】
(実施例13)組成物13の調製
赤外線吸収化合物として以下に示すジチオール化合物Dt−1を50質量部と、以下に示すスクアリリウム化合物SQ−1を50質量部と、ニッケル以外の金属原子を含む金属成分とを混合し、ジチオール化合物Dt−1に含まれる金属原子(ニッケル原子)との合計100質量部に対し、金属成分に含まれる金属原子(ニッケル以外の金属原子)を0.1質量部含有する赤外線吸収剤13を調製した。金属成分は、金属原子として、Li、Na、K、Ca、Fe、Cuを含んでいた。
赤外線吸収剤13を用い、ジチオール化合物Dt−1と、スクアリリウム化合物SQ−1との合計が0.1質量部となる配合量とした以外は、組成物10と同様にして、ジチオール化合物Dt−1に含まれる金属原子(ニッケル原子)100質量部に対し、金属成分に含まれる金属原子(ニッケル以外の金属原子)を0.1質量部含有する組成物13を調製した。
【0206】
(実施例14)組成物14の調製
赤外線吸収化合物として以下に示すジチオール化合物Dt−1を50質量部と、以下に示すシアニン化合物Cy−1を50質量部と、ニッケル以外の金属原子を含む金属成分とを混合し、ジチオール化合物Dt−1に含まれる金属原子(ニッケル原子)との合計100質量部に対し、金属成分に含まれる金属原子(ニッケル以外の金属原子)を0.1質量部含有する赤外線吸収剤14を調製した。金属成分は、金属原子として、Li、Na、K、Ca、Fe、Cuを含んでいた。
赤外線吸収剤14を用い、ジチオール化合物Dt−1と、シアニン化合物Cy−1との合計が0.1質量部となる配合量とした以外は、組成物10と同様にして、ジチオール化合物Dt−1に含まれる金属原子(ニッケル原子)100質量部に対し、金属成分に含まれる金属原子(ニッケル以外の金属原子)を0.1質量部含有する組成物14を調製した。
【0207】
(実施例15)組成物15の調製
赤外線吸収化合物として以下に示すジチオール化合物Dt−1を50質量部と、以下に示すピロロピロール化合物Pp−1を50質量部と、ニッケル以外の金属原子を含む金属成分とを混合し、ジチオール化合物Dt−1に含まれる金属原子(ニッケル原子)との合計100質量部に対し、金属成分に含まれる金属原子(ニッケル以外の金属原子)を0.1質量部含有する赤外線吸収剤15を調製した。金属成分は、金属原子として、Li、Na、K、Ca、Ti、Fe、Co、Cu、Znを含んでいた。
赤外線吸収剤15を用い、ジチオール化合物Dt−1と、ピロロピロール化合物Pp−1との合計が0.1質量部となる配合量とした以外は、組成物10と同様にして、ジチオール化合物Dt−1に含まれる金属原子(ニッケル原子)100質量部に対し、金属成分に含まれる金属原子(ニッケル以外の金属原子)を0.1質量部含有する組成物15を調製した。
【0208】
(実施例16)組成物16の調製
フェニルトリエトキシシラン28.9質量部、ジメチルジメトキシシラン28.9質量部、5質量%酢酸30.6質量部を室温にて4時間混合しゾルを得た。シクロペンタノン85.5質量部に、赤外線吸収剤7の26.0質量部を室温にて20分溶解させた溶液を、前述のゾルに添加し、孔径0.45μmのナイロン製フィルタ(日本ポール社製)でろ過して組成物16を調製した。この組成物は、銅錯体5に含まれる金属原子(銅原子)100質量部に対し、金属成分に含まれる金属原子(銅以外の金属原子)を0.1質量部含んでいた。
【0209】
(実施例17)組成物17の調製
銅錯体1のかわりに、銅錯体5とシアニン化合物Cy−1を97.5:2.5の質量比の混合物を用いた以外は実施例1と同様にして、銅錯体1と銅錯体7に含まれる金属原子(銅原子)100質量部に対し、金属成分に含まれる金属原子(銅以外の金属原子)を0.1質量部含有する赤外線吸収剤17を調製した。金属成分は、金属原子として、Li、Na、K、Ca、Fe、Agを含んでいた。
赤外線吸収剤1の代わりに、赤外線吸収剤17を用いた以外は、実施例1と同様にして組成物17を調製した。この組成物は、銅錯体5に含まれる金属原子(銅原子)100質量部に対し、金属成分に含まれる金属原子(銅以外の金属原子)を0.1質量部含んでいた。
【0210】
フタロシアニン化合物Pc−1、ジチオール化合物Dt−1、スクアリリウム化合物SQ−1、シアニン化合物Cy−1、ピロロピロール化合物PP−1:下記構造
【化34】
【0211】
(実施例18)組成物18の調整
テトラエトキシシラン10質量部と、メチルトリエトキシシラン10質量部と、ジメチルジエトキシシラン45質量部と、10質量%酢酸水溶液20質量部と、シクロペンタノン20質量部とを室温にて4時間混合しゾルを得た。シクロペンタノン100質量部に赤外線吸収剤1の45質量部およびIRGACURE−OXE02(BASF社製)の5質量部を室温にて20分溶解させた溶液を前述のゾルに添加し、孔径0.45μmのナイロン製フィルタ(日本ポール社製)でろ過して組成物18を得た。この組成物は、銅錯体1に含まれる金属原子(銅原子)100質量部に対し、金属成分に含まれる金属原子(銅以外の金属原子)を0.1質量部含んでいた。
【0212】
(実施例19)組成物19の調製
赤外線吸収剤1の代わりに、赤外線吸収剤9を用いた以外は、実施例18と同様にして組成物19を調製した。この組成物は、銅錯体1と銅錯体7に含まれる金属原子(銅原子)100質量部に対し、金属成分に含まれる金属原子(銅以外の金属原子)を0.1質量部含んでいた。
【0213】
(実施例20)組成物20の調製
赤外線吸収剤1の代わりに赤外線吸収剤14を1.13質量部用い、メチルトリエトキシシランの量を20質量部に変更し、ジメチルジエトキシシランの量を75質量部に変更し、赤外線吸収剤を溶解させる溶剤として、シクロペンタノン100質量部の代わりにPGMEA900質量部に変更した以外は、実施例18と同様にして組成物20を調製した。この組成物は、ジチオール化合物Dt−1に含まれる金属原子(ニッケル原子)100質量部に対し、金属成分に含まれる金属原子(ニッケル以外の金属原子)を0.1質量部含んでいた。
【0214】
(実施例21)組成物21の調製
テトラエトキシシランの代わりに、KBM−3066(信越シリコーン社製)を用いた以外は実施例19と同様にして組成物21を調製した。この組成物は、銅錯体1と銅錯体7に含まれる金属原子(銅原子)100質量部に対し、金属成分に含まれる金属原子(銅以外の金属原子)を0.1質量部含んでいた。
【0215】
(実施例22)組成物22の調製
テトラエトキシシランの代わりに、KBE−9659(信越シリコーン社製)を用いた以外は実施例19と同様にして組成物22を調製した。この組成物は、銅錯体1と銅錯体7に含まれる金属原子(銅原子)100質量部に対し、金属成分に含まれる金属原子(銅以外の金属原子)を0.1質量部含んでいた。
【0216】
(実施例23)組成物23の調製
メチルエトキシシランの代わりに、KBM−7103(信越シリコーン社製)を用いた以外は実施例19と同様にして組成物23を調製した。この組成物は、銅錯体1と銅錯体7に含まれる金属原子(銅原子)100質量部に対し、金属成分に含まれる金属原子(銅以外の金属原子)を0.1質量部含んでいた。
【0217】
(実施例24)組成物24の調製
テトラエトキシシランを使用せず、メチルトリエトキシシランの量を25質量部に変更し、ジメチルジエトキシシランの量を40質量部に変更した以外は、実施例19と同様にして組成物24を調製した。この組成物は、銅錯体1と銅錯体7に含まれる金属原子(銅原子)100質量部に対し、金属成分に含まれる金属原子(銅以外の金属原子)を0.1質量部含んでいた。
【0218】
(比較例1)比較組成物1の調製
実施例7において、金属成分の配合量を調整して、銅錯体5に含まれる金属原子(銅原子)100質量部に対し、金属成分に含まれる金属原子(銅以外の金属原子)を1.2質量部とした以外は、実施例7と同様にして比較組成物1を調製した。
【0219】
(比較例2)比較組成物2の調製
実施例8において、金属成分の配合量を調整して、n−ブチルホスホン酸銅塩に含まれる金属原子(銅原子)100質量部に対し、金属成分に含まれる金属原子(銅以外の金属原子)を1.2質量部含とした以外は、実施例8と同様にして比較組成物2を調製した。
【0220】
(比較例3)比較組成物3の調製
実施例7において、金属成分の配合量を調整して、銅錯体5に含まれる金属原子(銅原子)100質量部に対し、金属成分に含まれる金属原子(銅以外の金属原子)を0.003質量部含とした以外は、実施例7と同様にして比較組成物3を調製した。
【0221】
<近赤外線カットフィルタの製造方法>
(製造例1)実施例1〜9、16〜19、21〜24、比較例1〜3の組成物を使用した近赤外線カットフィルタの製造方法
各組成物を、ガラスウェハ上に乾燥後の膜厚が100μmになるようにスピンコーターを用いて塗布し、160℃のホットプレートを用いて1.5時間加熱処理を行って、近赤外線カットフィルタを製造した。
【0222】
(製造例2)実施例10〜15、20の組成物を使用した近赤外線カットフィルタの製造方法
各組成物を、スピンコーターを用いて塗布して塗膜を形成し、100℃、120秒間の前加熱(プリベーク)を行った後、i線ステッパーを用い、1000mJ/cm2で全面露光を行った。次いで、220℃、300秒間の後加熱(ポストベーク)を行い、膜厚0.8μmの近赤外線カットフィルタを製造した。
【0223】
<可視透明性の評価>
上記のようにして得た近赤外線カットフィルタについての波長450nmの光の透過率を分光光度計U−4100(日立ハイテクノロジーズ社製)を用いて測定した。可視透明性を以下の基準で評価した。
A:85%≦波長450nmの光の透過率
B:65%≦波長450nmの光の透過率<85%
C:45%≦波長450nmの光の透過率<65%
D:波長450nmの光の透過率<45%
【0224】
<近赤外遮蔽性の評価>
上記のようにして得た近赤外線カットフィルタについての波長800nmの光の透過率を分光光度計U−4100(日立ハイテクノロジーズ社製)を用いて測定した。近赤外遮蔽性を以下の基準で評価した。
A:波長800nmの光の透過率≦5%
B:5%<波長800nmの光の透過率≦15%
C:15%<波長800nmの光の透過率≦25%
D:25%<波長800nmの光の透過率
【0225】
<耐熱性評価>
上記のようにして得た近赤外線カットフィルタを200℃で30分間加熱して耐熱性試験を行った。耐熱性試験前と耐熱性試験後のそれぞれにおいて、近赤外線カットフィルタの波長700〜1400nmにおける最大吸光度(Absλmax)と、波長400〜700nmにおける最小吸光度(Absλmin)とを、分光光度計U−4100(日立ハイテクノロジーズ社製)を用いて測定し、「Absλmax/Absλmin」で表される吸光度比を求めた。下記式で表される吸光度比変化率を用いて、以下の基準で耐熱性を評価した。
吸光度比変化率(%)=
[((耐熱性試験前における吸光度比−耐熱性試験後における吸光度比)/耐熱性試験前における吸光度比)×100](%)
A:吸光度比変化率≦2%
B:2%<吸光度比変化率≦4%
C:4%<吸光度比変化率≦7%
D:7%<吸光度比変化率
【0226】
【表1】
【0227】
上記結果より、実施例は、可視透明性および近赤外遮蔽性が良好であった。更には耐熱性にも優れていた。
一方、比較例は、可視透明性および近赤外遮蔽性のいずれかが劣るものであった。
【0228】
紫外線吸収層上に、実施例1〜24の組成物を、塗布し上記と同様の方法で近赤外線カットフィルタを製造した場合であっても、同様の効果が得られる。
【0229】
誘電体多層膜を形成した基板の上に、実施例1〜24の組成物を、塗布し上記と同様の方法で近赤外線カットフィルタを製造した場合であっても、同様の効果が得られる。
【0230】
(誘電体多層膜の製造)
基板の一面に、蒸着温度150℃で、近赤外線を反射する多層蒸着膜(シリカ(SiO2:膜厚120〜190nm)層とチタニア(TiO2:膜厚70〜120nm)層とを交互に積層(積層数40))して誘電体多層膜を得た。
【0231】
実施例1〜24の組成物を、支持体から剥離して単独膜として用いた場合であっても、同様の効果が得られる。
【符号の説明】
【0232】
10 カメラモジュール、11 固体撮像素子、12 平坦化層、13 近赤外線カットフィルタ、14 撮像レンズ、15 レンズホルダー、16 シリコン基板、17 カラーフィルタ、18 マイクロレンズ、19 紫外・赤外光反射膜、20 透明基材、21 近赤外線吸収層、22 反射防止層
図1
図2
図3
図4