特許第6602488号(P6602488)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6602488
(24)【登録日】2019年10月18日
(45)【発行日】2019年11月6日
(54)【発明の名称】放射冷却装置
(51)【国際特許分類】
   F25D 31/00 20060101AFI20191028BHJP
   F25B 23/00 20060101ALI20191028BHJP
【FI】
   F25D31/00
   F25B23/00 Z
【請求項の数】11
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2018-542504(P2018-542504)
(86)(22)【出願日】2017年9月22日
(86)【国際出願番号】JP2017034213
(87)【国際公開番号】WO2018062012
(87)【国際公開日】20180405
【審査請求日】2018年10月11日
(31)【優先権主張番号】特願2016-194976(P2016-194976)
(32)【優先日】2016年9月30日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉澤 宏俊
(72)【発明者】
【氏名】安田 英紀
(72)【発明者】
【氏名】吉弘 達矢
【審査官】 飯星 潤耶
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭54−139150(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0155043(US,A1)
【文献】 特開昭61−29664(JP,A)
【文献】 特開2015−169372(JP,A)
【文献】 特開2016−121328(JP,A)
【文献】 特開昭60−243435(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0167612(US,A1)
【文献】 中国特許出願公開第105972856(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25D 1/00− 9/00,31/00
F25B 23/00,27/00
F28D 15/00−21/00
F24F 5/00
B64G 1/50
B65D 81/18
DWPI(Derwent Innovation)
Japio−GPG/FX
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部及び容器壁が設けられ、内部の前記容器壁から離間した位置に被冷却体収容部を備え、内部を100Pa以下に減圧するのに耐える強度を有する、内部に被冷却体を収容して前記被冷却体を外部から真空断熱するための真空断熱容器と、
前記真空断熱容器内における前記被冷却体と前記開口部との間に配置され、前記真空断熱容器の外部から真空断熱され、前記被冷却体に対して熱的に接触し、8μm〜13μmの波長範囲の遠赤外線を放射する遠赤外線放射体と、
前記真空断熱容器の前記開口部を閉塞し、前記遠赤外線放射体から放射された前記遠赤外線を透過する遠赤外線透過窓部材と、
を備え、
る放射冷却装置。
【請求項2】
前記真空断熱容器は、10Pa以下の真空度にて、前記被冷却体及び前記遠赤外線放射体を前記真空断熱容器の外部から真空断熱する請求項1に記載の放射冷却装置。
【請求項3】
前記遠赤外線放射体は、前記遠赤外線を放射する方向の前記波長範囲における平均放射率E8−13が0.80以上であり、
前記遠赤外線透過窓部材は、前記遠赤外線を透過する方向の前記波長範囲における平均透過率T8−13が0.40以上である請求項1又は請求項2に記載の放射冷却装置。
【請求項4】
前記遠赤外線放射体が、黒体放射体である請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の放射冷却装置。
【請求項5】
前記遠赤外線放射体は、前記遠赤外線を放射する方向の5μm〜25μmの波長範囲における平均放射率E5−25に対する前記遠赤外線を放射する方向の8μm〜13μmの波長範囲における平均放射率E8−13の比であるE8−13/E5−25比が、1.20以上である請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の放射冷却装置。
【請求項6】
前記遠赤外線透過窓部材は、前記遠赤外線放射体側の面とは反対側の面の日射反射率が80%以上である請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の放射冷却装置。
【請求項7】
前記遠赤外線透過窓部材は、前記遠赤外線を透過する方向の5μm〜25μmの波長範囲における平均透過率T5−25に対する前記遠赤外線を透過する方向の前記波長範囲における平均透過率T8−13の比であるT8−13/T5−25比が、1.20以上である請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の放射冷却装置。
【請求項8】
更に、少なくとも前記真空断熱容器の内壁面と前記被冷却体との間に配置され、前記内壁面から5μm〜25μmの波長範囲の遠赤外線が放射された場合において前記内壁面から放射された5μm〜25μmの波長範囲の遠赤外線を反射する内部遠赤外線反射膜を備える請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の放射冷却装置。
【請求項9】
更に、前記遠赤外線透過窓部材から見て前記遠赤外線放射体側とは反対側に、前記遠赤外線透過窓部材を透過した前記遠赤外線が通過する金属筒部材を備える請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載の放射冷却装置。
【請求項10】
更に、真空断熱容器の内壁面に、前記被冷却体を支持する支持部材を備える請求項1〜請求項9のいずれか1項に記載の放射冷却装置。
【請求項11】
請求項1〜請求項10のいずれか1項に記載の放射冷却装置の、被冷却体の冷却における使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、放射冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
放射冷却は、一般的に知られている自然現象である。
近年、省エネルギー性等の観点から、放射冷却を利用した放射冷却装置が検討されている。
【0003】
例えば、被冷却体を冷却するための放射冷却装置であって、被冷却体に対する深さ方向に配置された複数の異なる材料を含み、上記複数の異なる材料が、太陽光スペクトル反射部と熱放射部とを含む放射冷却装置が知られている(例えば、米国特許出願公開第2015/0338175A1号明細書参照)。
【0004】
また、一面を開口した断熱容器と、この断熱容器の開口を覆う透光板と、この透光板の内部に開口を覆うように設けた熱放射体と、この熱放射体の内部に被冷却体を出入りさせる出入部とからなり、上記透光板は高い赤外線透過性を有するTlBr・Tl1の結晶体、AsSe系ガラス又はGe33Ad12Se55系ガラス等からなる板体で形成され、上記熱放射体は被冷却体と接触し、かつ反射率及び熱伝導率の高い金属板と、この金属板を被覆する太陽光線に対して高い反射率を有し赤外線に対して高い放射率を有するTiOからなる被膜とから形成されている放射冷却器が知られている(例えば、特開昭61−223468号公報参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、米国特許出願公開第2015/0338175A1号明細書に記載の技術では、太陽光スペクトル反射部から熱放射部への熱伝導に起因して放射冷却性能が低下する場合がある。
また、特開昭61−223468号公報に記載の技術では、開口を覆う透光板から熱放射体への熱伝導に起因して、放射冷却性能が低下する場合がある。
【0006】
本発明の一態様の課題は、放射冷却性能が向上した放射冷却装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための手段には、以下の態様が含まれる。
<1> 開口部が設けられ、内部に被冷却体を収容して被冷却体を外部から真空断熱するための真空断熱容器と、
真空断熱容器内における被冷却体と開口部との間に配置され、真空断熱容器の外部から真空断熱され、被冷却体に対して熱的に接触し、8μm〜13μmの波長範囲の遠赤外線を放射する遠赤外線放射体と、
真空断熱容器の開口部を閉塞し、遠赤外線放射体から放射された上記遠赤外線を透過する遠赤外線透過窓部材と、
を備える放射冷却装置。
<2> 真空断熱容器は、10Pa以下の真空度にて、被冷却体及び遠赤外線放射体を真空断熱容器の外部から真空断熱する<1>に記載の放射冷却装置。
<3> 遠赤外線放射体は、上記遠赤外線を放射する方向の上記波長範囲における平均放射率E8−13が0.80以上であり、
遠赤外線透過窓部材は、上記遠赤外線を透過する方向の上記波長範囲における平均透過率T8−13が0.40以上である<1>又は<2>に記載の放射冷却装置。
<4> 遠赤外線放射体が、黒体放射体である<1>〜<3>のいずれか1つに記載の放射冷却装置。
<5> 遠赤外線放射体は、上記遠赤外線を放射する方向の5μm〜25μmの波長範囲における平均放射率E5−25に対する上記遠赤外線を放射する方向の8μm〜13μmの波長範囲における平均放射率E8−13の比であるE8−13/E5−25比が、1.20以上である<1>〜<4>のいずれか1つに記載の放射冷却装置。
<6> 遠赤外線透過窓部材は、遠赤外線放射体側の面とは反対側の面の日射反射率が80%以上である<1>〜<5>のいずれか1つに記載の放射冷却装置。
<7> 遠赤外線透過窓部材は、上記遠赤外線を透過する方向の5μm〜25μmの波長範囲における平均透過率T5−25に対する上記遠赤外線を透過する方向の8μm〜13μmの波長範囲における平均透過率T8−13の比であるT8−13/T5−25比が、1.20以上である<1>〜<6>のいずれか1つに記載の放射冷却装置。
<8> 更に、少なくとも真空断熱容器の内壁面と被冷却体との間に配置され、内壁面から5μm〜25μmの波長範囲の遠赤外線が放射された場合において内壁面から放射された5μm〜25μmの波長範囲の遠赤外線を反射する内部遠赤外線反射膜を備える<1>〜<7>のいずれか1つに記載の放射冷却装置。
<9> 更に、遠赤外線透過窓部材から見て遠赤外線放射体側とは反対側に、遠赤外線透過窓部材を透過した上記遠赤外線が通過する金属筒部材を備える<1>〜<8>のいずれか1つに記載の放射冷却装置。
<10> 更に、真空断熱容器の内壁面に、被冷却体を支持する支持部材を備える<1>〜<9>のいずれか1つに記載の放射冷却装置。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様によれば、放射冷却性能が向上した放射冷却装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本開示の放射冷却装置の一例である放射冷却装置を概念的に示す概略断面図である。
図2】本開示の放射冷却装置の一例において、λ(G)/λ(G,0)比とK(=Lmean/L比)との関係を示すグラフである。
図3】本開示の放射冷却装置の別の一例である放射冷却装置を概念的に示す概略断面図である。
図4】実施例1における、評価開始からの経過時間と被冷却体の温度及び外気温との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書において、「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
本明細書において、組成物中の各成分の量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する上記複数の物質の合計量を意味する。
本明細書において、波長範囲の限定が無い「遠赤外線」とは、5μm〜25μmの波長範囲の電磁波を意味し、「8μm〜13μmの波長範囲の遠赤外線」とは、上記の遠赤外線のうち8μm〜13μmの波長範囲内の遠赤外線を意味する。
【0011】
本開示の放射冷却装置は、
開口部が設けられ、内部に被冷却体を収容して被冷却体を外部から真空断熱するための真空断熱容器と、
真空断熱容器内における被冷却体と開口部との間に配置され、真空断熱容器の外部から真空断熱され、被冷却体に対して熱的に接触し、8μm〜13μmの波長範囲の遠赤外線(以下、「特定遠赤外線」ともいう)を放射する遠赤外線放射体と、
真空断熱容器の開口部を閉塞し、遠赤外線放射体から放射された特定遠赤外線を透過する遠赤外線透過窓部材と、
を備える。
【0012】
本開示の放射冷却装置によれば、遠赤外線放射体及び被冷却体が容器内に収容されていない場合、及び、遠赤外線放射体及び被冷却体が容器内に収容されているが、容器の外部から真空断熱されていない場合と比較して、放射冷却性能が向上する。かかる効果は、日中、夜間を問わず奏される効果である。
かかる効果が奏される理由は、以下のように推測される。
【0013】
本開示の放射冷却装置の真空断熱容器内に被冷却体が収容された場合、被冷却体に熱的に接触する遠赤外線放射体から、特定遠赤外線(即ち、8μm〜13μmの波長範囲の遠赤外線)が放射される。特定遠赤外線の波長範囲(8μm〜13μm)は、「大気の窓」と称される波長範囲であり、大気を通過する電磁波の透過率が高い波長範囲である。このため、被冷却体に熱的に接触する遠赤外線放射体から放射された特定遠赤外線は、遠赤外線透過窓部材を透過し、その後、大気に吸収されずに大気を透過して天空(即ち、宇宙空間)に到達する。その結果、放射冷却現象によって被冷却体が冷却される。
本開示の放射冷却装置では、遠赤外線放射体及び被冷却体が、真空断熱容器内に収容され、真空断熱容器の外部から真空断熱される。これにより、真空断熱容器の外部からの熱流入、並びに、真空断熱容器内での熱対流及び熱伝導に起因する、放射冷却性能の低下が抑制される。その結果、本開示の放射冷却装置では、遠赤外線放射体及び被冷却体が容器内に収容されていない場合、及び、遠赤外線放射体及び被冷却体が容器内に収容されているが、容器の外部から真空断熱されていない場合と比較して、放射冷却性能が向上すると考えられる。
【0014】
以下、本開示の放射冷却装置の一例について、図面を参照しながら説明する。ただし、本開示の放射冷却装置は、以下の一例には限定されない。
なお、図面において、実質的に同一の機能を有する部材には同一の符合を付与し、明細書中では、重複した説明を省略する場合がある。
【0015】
図1は、本開示の放射冷却装置の一例である放射冷却装置が、真空断熱容器内に被冷却体を収容し、かつ、真空断熱容器の開口部が上(図1中、矢印UPの方向;天空の方向)を向く配置で屋外に配置された様子を概念的に示す概略断面図である。
【0016】
図1に示されるように、放射冷却装置100は、真空断熱容器10を備える。
真空断熱容器10は、内部に被冷却体101を収容して被冷却体101を外部から断熱するための容器である。
真空断熱容器10の上面には、開口部10Aが設けられている。
【0017】
真空断熱容器10には、バルブ44を備えた配管43の一端が接続されている。配管43の他端には真空ポンプ(不図示)が接続されている。この一例では、真空ポンプを作動し、かつ、バルブ44を開くことにより、真空断熱容器10の内部を真空引き(即ち、排気)することができる。
【0018】
本開示において、「真空(状態)」とは、大気圧よりも圧力が低い状態を意味する。この限りにおいて、真空断熱容器10の内部の具体的な真空度には特に制限はない。
本開示において、外部から被冷却体及び遠赤外線放射体への熱伝導(即ち、熱流入)をより効果的に抑制し、装置の放射冷却性能をより向上させる観点から、真空断熱容器10の内部の真空度は、後述の不等式(1)を満たすこと、及び、100Pa以下(好ましくは10Pa以下)であることの少なくとも一方に該当することが好ましい。
【0019】
放射冷却装置100は、真空断熱容器10の開口部10Aを閉塞する遠赤外線透過窓部材20を備える。遠赤外線透過窓部材20は、後述の遠赤外線放射体30から放射される特定遠赤外線50を透過する機能を有する。
この遠赤外線透過窓部材20は、真空断熱容器10の開口部10Aを覆う部材となっているが、遠赤外線透過窓部材は、この遠赤外線透過窓部材20の態様には限定されない。例えば、遠赤外線透過窓部材は、真空断熱容器の開口部に嵌め込まれる部材であってもよい。
【0020】
放射冷却装置100は、真空断熱容器10内に遠赤外線放射体30を備える。遠赤外線放射体30は、特定遠赤外線50を放射する機能を有する。
真空断熱容器10内に被冷却体101が収容された状態(図1の状態)において、遠赤外線放射体30は、被冷却体101に対して熱的に接触する。
ここで、遠赤外線放射体30が被冷却体101に対して熱的に接触するとは、遠赤外線放射体30が被冷却体101に対し、直接接触するか、又は、熱伝導性部材(例えば金属部材)を介して接触することを意味する。
遠赤外線放射体30は、必ずしも真空断熱容器10内に固定配置されている必要はない。例えば、真空断熱容器10内に被冷却体101を収容した後、被冷却体101上に直接又は熱伝導性部材を介して載せるだけでもよい。
【0021】
また、真空断熱容器10内の底面には、被冷却体101を支持するための支持部材として、複数の支持ピン41が設けられている。被冷却体101は、複数の支持ピン41によって支持されている。この一例では、上述の構造により、真空断熱容器10の底部から被冷却体101への熱伝導がより抑制され、より効果的な真空断熱が実現される。
複数の支持ピン41の材料としては、金属(例えば鋼)、セラミックス、樹脂等が挙げられる。
複数の支持ピン41の各々の形状には特に制限はない。複数の支持ピン41の各々の形状としては、例えば、円柱形状、円錐形状、角柱形状、角錐形状、ねじ形状等が挙げられる。
被冷却体101を支持するための支持部材は、真空断熱容器10内の底面に代えて、又は、真空断熱容器10内の底面に加えて、真空断熱容器10内の側面に設けられていてもよい。要するに、支持部材は、真空断熱容器10の内壁面と被冷却体101及び遠赤外線放射体30との接触面積を小さくする部材であればよい。
また、詳細は後述するが、被冷却体101を支持するための支持部材は必須の部材ではなく、省略することもできる。
【0022】
本明細書において、「断熱」とは熱伝導が抑制されることを意味し、具体的な熱伝導率については特に制限はない。本開示における「断熱」の熱伝導率として、好ましくは0.1W/(m・K)未満であり、より好ましくは0.08W/(m・K)以下である。
【0023】
放射冷却装置100は、真空断熱容器10の内壁面と、遠赤外線放射体30及び被冷却体101と、の間に配置され、上記内壁面から5μm〜25μmの波長範囲の遠赤外線が放射された場合において上記内壁面から放射された5μm〜25μmの波長範囲の遠赤外線を反射する内部遠赤外線反射膜14を備える。この一例では、内部遠赤外線反射膜14は、真空断熱容器10の内壁面に沿って配置されている。内部遠赤外線反射膜14は、真空断熱容器10の内壁面の少なくとも一部に接触していてもよいし、接触していなくてもよい。
内部遠赤外線反射膜14は、必須の部材ではなく、省略されていてもよい。
【0024】
以下、放射冷却装置100による被冷却体の冷却について説明する。
放射冷却装置100による被冷却体の冷却時には、まず、真空断熱容器10内に被冷却体101を収容し、次いで真空断熱容器10内において、遠赤外線放射体30を被冷却体101に熱的に接触させる。次に、真空断熱容器10の開口部10Aを遠赤外線透過窓部材20で覆って固定することにより、開口部10Aを閉塞する。次に、バルブ44を開放した状態で、配管43を通じて真空断熱容器10内を、所望とする真空度(例えば100Pa以下)となるまで真空引きする(図1中、真空引き方向46参照)。
真空断熱容器10内が所望とする真空度に維持された状態で、被冷却体101に熱的に接触している遠赤外線放射体30から放射された特定遠赤外線50が、遠赤外線透過窓部材20を透過して放射冷却装置100外に放出される。放射冷却装置100外に放出された特定遠赤外線50は、大気に吸収されずに大気を透過して天空(即ち、宇宙空間)に到達する。その結果、放射冷却現象によって被冷却体101が冷却される。
放射冷却装置100では、遠赤外線放射体30及び被冷却体101が真空断熱容器10内に収容され、真空断熱容器10の外部から真空断熱されている。これにより、真空断熱容器10の外部からの熱伝導(即ち、熱流入)に起因する、放射冷却性能の低下が抑制される。その結果、放射冷却装置100では、遠赤外線放射体及び被冷却体が容器内に収容されていない場合、及び、遠赤外線放射体及び被冷却体が容器内に収容されているが、容器の外部から真空断熱されていない場合と比較して、放射冷却性能が向上する。
【0025】
また、放射冷却装置100は、真空断熱容器10の内部に、内部遠赤外線反射膜14を備えるので、真空断熱容器10の内壁面から5μm〜25μmの波長範囲の遠赤外線が放射された場合においても、この遠赤外線の遠赤外線放射体30及び被冷却体101への放射(即ち、熱放射)を抑制できる。このため、放射冷却性能がより向上する。
【0026】
図1において、放射冷却装置100全体の配置角度は、真空断熱容器10の開口部10Aが真上(即ち、重力方向に対して反対方向)を向く配置となっているが、放射冷却装置100全体の配置角度は、この角度には限定されない。放射冷却装置100全体の配置角度は、真空断熱容器の開口部が斜め上を向く配置であってもよい。要するに、放射冷却装置100全体の配置角度は、遠赤外線放射体30から放射された特定遠赤外線50が遠赤外線透過窓部材20を経由して天空に向けて放射される角度であればよい。太陽光による熱流入を抑制する観点から、放射冷却装置100全体の配置角度は、真空断熱容器の開口部が太陽の方向とは異なる方向を向く配置角度であることが好ましい。
【0027】
次に、本開示における被冷却体及び放射冷却装置の好ましい態様について説明する。
【0028】
<被冷却体>
本開示における被冷却体(例えば被冷却体101)としては、被冷却体としては、任意の対象物を適宜選択して用いることができ、特に限定されない。
被冷却体としては、真空断熱を利用する本開示の放射冷却装置の原理からみて、樹脂体、金属体等の固体が好ましい。但し、水などの液体又は水蒸気などの気体についても、これらを容器に閉じ込めた状態で真空断熱容器に収容することにより、被冷却体となり得る。もちろん、固体である被冷却体(氷、樹脂体、金属体等)を容器に閉じ込めて真空断熱容器に収容してもよい。
被冷却体を閉じ込める容器としては、任意の材料を適宜選択して用いることができ、特に限定されない。
被冷却体を閉じ込める容器の材料の具体例は、後述する真空断熱容器の材料の具体例と同様であり、好ましい態様も同様である。
【0029】
<真空断熱容器>
本開示の放射冷却装置は、真空断熱容器(例えば、前述の真空断熱容器10)を備える。
真空断熱容器は、この真空断熱容器の内部に被冷却体を収容し、収容された被冷却体を真空断熱容器の外部から真空断熱するための容器である。
真空断熱容器は、上述の機能を発揮できるものであればよく、具体的な構成には特に制限はない。また、真空断熱容器は、常時真空を維持している必要はなく、保管や輸送時においては真空断熱容器の内部は常圧であってもよい。この場合、被冷却体を冷却のするための使用時に、真空断熱容器を例えば真空ポンプなどに連結することによって上記の真空断熱を達成できれば十分である。ただし、真空断熱容器は、少なくとも被冷却体を冷却する際における、必要な真空の生成に耐えられる強度を有する。
【0030】
真空断熱容器の容器本体の材料には特に制限されない。
容器本体の材料としては、金属材料又は金属材料以外の無機材料が好ましい。
金属材料としては、銅、銀、アルミニウム等の金属;ステンレス、アルミニウム合金等の合金;等が挙げられる。
金属材料以外の無機材料としては、ソーダガラス、カリガラス、鉛ガラス等のガラス;PLZT(チタン酸ジルコン酸ランタン鉛)等のセラミックス;石英;蛍石;サファイア;等が挙げられる。
【0031】
容器本体の材料としては、外部からの熱流入を抑制する観点から、主な熱流入源である太陽光又は放射熱を反射する性能が高い、金属材料が好ましく、アルミニウム、銀、アルミニウム合金、又はステンレスがより好ましい。
また、容器本体の材料としては、金属材料以外の無機材料に対し、金属材料がコーティングされた材料であってもよい。
【0032】
真空断熱容器の肉厚は、真空断熱容器の強度、断熱の程度などを考慮して、適宜設定できる。
【0033】
また、真空断熱容器には、開口部(例えば、前述の開口部10A)が設けられている。
真空断熱容器における開口部は、遠赤外線放射体から放射された特定遠赤外線の出口として機能する。
開口部を通じて真空断熱容器外に放出された特定遠赤外線は、この開口部を閉塞する後述の遠赤外線透過窓部材を透過し、更に大気を透過して天空に到達する。
【0034】
開口部の平面視形状は、楕円形状(円形状を含む)、長方形状(正方形状を含む)、長方形以外の多角形状、などが挙げられる。開口部の平面視形状は、これらの形状以外の不定形状であってもよい。
開口部の平面視形状は、加工容易性の観点から、楕円形状が好ましく、円形状がより好ましい。
【0035】
また、真空断熱容器における開口部は、被冷却体の出入口としての機能を有していてもよい。
また、真空断熱容器には、開口部とは別に、被冷却体の出入口が設けられていてもよい。
このように、被冷却体を、真空断熱容器に入れたり、真空断熱容器から取り出したりすることができるように真空断熱容器を構成してもよい。この構成においては、被冷却体を冷却するとき以外は、真空断熱容器内に被冷却体が収容されていなくてもよい。
真空断熱容器は、被冷却体収容部を有するともいえる。被冷却体は被冷却体収容部から収納及び取り出し可能であってもよく、被冷却体収容部に固定されていてもよい。このような被冷却体収容部は、何らかの支持構造を周囲に備えた空間であってもよく、例えば何らかの入れ物の内部空間等であってもよい。
この観点からは、一実施形態では、
開口部が設けられ、内部に被冷却体収容部を備え、内部が減圧されたときに被冷却体収容部が外部から真空断熱されるように構成された真空断熱容器と、
真空断熱容器内における被冷却体収容部と開口部との間に配置され、真空断熱容器の内部が減圧されたときに真空断熱容器の外部から真空断熱されるように構成され、被冷却体収納部に対して熱的に接触し、8μm〜13μmの波長範囲の遠赤外線を放射する遠赤外線放射体と、
真空断熱容器の開口部を閉塞し、遠赤外線放射体から放射された上記遠赤外線を透過する遠赤外線透過窓部材と、
を備える放射冷却装置、
が提供される。前記減圧は、例えば、1.0×10−9Pa〜100Paの真空度への減圧であってもよく、あるいは1.0×10−5Pa〜10Paの真空度への減圧であってもよい。このような放射冷却装置は、被冷却体を被冷却体収容部に配置し、真空ポンプ等を用いて真空断熱容器の内部を減圧することで、被冷却部材を冷却するのに使用可能である。このため、放射冷却装置の、被冷却体の冷却における使用も提供される。
また、
容器壁及び開口を有し、内部に容器壁から離間した位置に被冷却体収容部を備え、内部を100Pa以下に減圧するのに耐える強度を有する容器と、
8μm〜13μmの波長範囲の遠赤外線を放射する遠赤外線放射体と、
容器の開口を閉塞するように配置されたときに上記遠赤外線を透過するように構成された遠赤外線透過窓部材と、
被冷却体を被冷却体収容部に配置し、遠赤外線放射体を、真空断熱容器内における被冷却体と開口との間に、被冷却体に対して熱的に接触し且つ容器壁から離間するように配置し、遠赤外線透過窓部材により容器の開口を閉塞し、容器内部を100Pa以下に減圧することで、被冷却体を冷却するプロセスを記載した指示と、
を備える冷却用キット、が提供される。
さらに、このような冷却用キットの、被冷却体の冷却における使用も提供される。
【0036】
真空断熱容器及び開口部の大きさには特に制限はなく、目的に応じて適宜設定され得る。
真空断熱容器の高さ(即ち、真空断熱容器の、遠赤外線放射体から特定遠赤外線が放射される方向の長さ)は、例えば10mm〜2m、好ましくは10mm〜500mm、より好ましくは100mm〜300mmである。
真空断熱容器の最大長さ(即ち、上記高さ方向と直交する方向の最大長さ;例えば、真空断熱容器が円柱形状である場合には直径)は、例えば10mm〜30m、好ましくは10mm〜1000mm、より好ましくは100mm〜500mmである。
真空断熱容器の開口部の最大長さ(例えば、開口部が円形状である場合には直径)は、例えば10mm〜30m、好ましくは10mm〜1000mm、より好ましくは50mm〜210mmである。
【0037】
(好ましい真空度)
真空断熱容器は、被冷却体及び遠赤外線放射体を収容し、これらを外部から真空断熱する。
真空断熱における具体的な真空度には特に制限はないが、被冷却体及び遠赤外線放射体への熱流入をより抑制することにより放射冷却性能をより向上させる観点から、100Pa以下が好ましく、10Pa以下がより好ましい。真空度の下限は特に限定されないが、技術的な制約の面からは、例えば1.0×10−9Pa以上、あるいは1.0×10−5Pa以上、あるいは1.0×10−1Pa以上となりうる。
【0038】
また、真空断熱における真空度としては、被冷却体及び遠赤外線放射体への熱流入をより抑制することにより放射冷却性能をより向上させる観点から、下記不等式(1)を満たす真空度も好ましい。
【0039】
【数1】

【0040】
上記不等式(1)において、Pは、真空断熱における真空度(Pa)を表し、βは、1.5〜2.0の値を表し、kは、ボルツマンの定数を表し、Tは、真空断熱容器内の温度(K)を表し、dは、真空断熱容器内の気体分子の直径(m)を表し、Lは、真空断熱容器と被冷却体との最短距離(m)を表す。
【0041】
以下、不等式(1)について、より詳細に説明する。
不等式(1)は、真空断熱容器内に封入されている気体Gの大気圧下での熱伝導率をλ(G,0)とし、真空断熱容器内に封入されている気体Gの真空度P(Pa)での熱伝導率をλ(G)とした場合に、λ(G)/λ(G,0)比が0.90以下となることを意味する。
【0042】
より詳細には、真空断熱容器と被冷却体との最短距離(m)をLとし、真空断熱における真空度P(Pa)での気体Gの平均自由行程をLmeanとし、Lmean/L比をKとし、βを1.5〜2.0の値とした場合、λ(G)/λ(G,0)比とK(=Lmea/L比)との間には、以下の関係式(F1)が成り立つ。
【0043】
λ(G)/λ(G,0)比 = 1/(1+2βK) … 関係式(F1)
【0044】
上記関係式(F1)は、Energy and Buildings, Volume 42, Issue 2, pp.147-272 (February 2010)中のpp.149の式(4)によって導き出された式である。
【0045】
図2は、λ(G)/λ(G,0)比とK(=Lmean/L比)との関係を示すグラフである。
図2中、点線は、βが1.5である場合の曲線であり、実線は、βが2.0である場合の曲線である。
【0046】
本発明者等は、実験的に、λ(G)/λ(G,0)比が0.90以下である領域(即ち、図2のグラフの縦軸であるλ(G)/λ(G,0)比が0.90以下である領域)において、被冷却体及び遠赤外線放射体への熱流入がより抑制され、放射冷却性能がより向上することを知見した。
この知見は、以下の関係式(F2)によって示される。
【0047】
λ(G)/λ(G,0)比 = 1/(1+2βK) = 1/(1+2β×(Lmean/L))≦0.90 … 関係式(F2)
【0048】
一方、平均自由行程Lmeanは、理論的に、以下の関係式(F3)を満たす。
【0049】
【数2】

【0050】
上記関係式(F3)において、Pは、真空断熱における真空度(Pa)を表し、kは、ボルツマンの定数を表し、Tは、真空断熱容器内の温度(K)を表し、dは、真空断熱容器内の気体分子の直径(m)を表す。
【0051】
関係式(F2)に関係式(F3)のLmeanを代入し、式変形することにより、上述した不等式(1)が導かれる。
即ち、上述した不等式(1)は、λ(G)/λ(G,0)比が0.90以下となることを意味する。
【0052】
不等式(1)の一例として、βが2.0であり、dが0.36×10−9mである例が挙げられる。ここで、0.36×10−9mは、大気中の分子(即ち、窒素分子及び酸素分子)の平均直径である。
【0053】
<支持部材>
本開示の放射冷却装置は、真空断熱容器の内壁面(即ち、底面及び/又は側面)に、被冷却体を支持するための支持部材(例えば、前述の支持ピン41)を少なくとも1つ備えてもよい。これにより、真空断熱容器の内壁面と被冷却体との接触面積を小さくする(又は、真空断熱容器の内壁面と被冷却体とが接触しないようにする)ことができるので、真空断熱容器の内壁面から被冷却体への熱伝導がより抑制される。
支持部材の材料としては、金属(鋼など)、セラミックス、樹脂等が挙げられる。
樹脂としては、アクリル樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ABS樹脂(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体樹脂)などが挙げられる。中でも、熱伝導率の低さの観点から、フェノール樹脂が好ましい。
支持部材の形状には特に制限はないが、支持部材の形状としては、円柱形状、円錐形状、角柱形状、角錐形状、球形状、板形状、等が挙げられる。
【0054】
本開示の放射冷却装置は、被冷却体を支持するための支持部材を備えることには制限されない。
例えば、磁力等の反発力を利用して真空断熱容器の底面から被冷却体を浮かせ、真空断熱容器の内壁面と被冷却体とを非接触とすることによっても、支持部材を備える場合と同様の効果を得ることができる。
磁力によって被冷却体を浮かせる態様は、真空断熱容器の底面に、磁石などの磁性材料を備えることによって実現できる。
また、後述の内部断熱層を備えることにより、支持部材を備える場合と同様の効果を得ることができる。
【0055】
<内部断熱層>
本開示の放射冷却装置は、真空断熱容器の内壁面の少なくとも一部に沿って配置され、真空断熱容器の内壁面と被冷却体とを断熱するための内部断熱層を備えていてもよい。
内部断熱層における「内部」とは、真空断熱容器の内部を意味する。
内部断熱層は、上述の、被冷却体を支持するための支持部材として機能してもよい。
即ち、内部断熱層を、真空断熱容器の内壁面と被冷却体との間に設けることにより、真空断熱容器の内壁面と被冷却体との接触面積を小さくする(又は、真空断熱容器の内壁面と被冷却体とが接触しないようにする)ことができるので、真空断熱容器の内壁面から被冷却体への熱伝導がより抑制される。
内部断熱層を形成する断熱材料としては、任意の材料を適宜選択して用いることができ、特に限定されない。内部断熱層を形成する断熱材料としては、例えば、シリカエアロゲル、ポリスチレンフォーム、グラスウール、気泡緩衝材など、気泡を有する樹脂材料が挙げられる。
気泡緩衝材の市販品としては、エアーキャップ(登録商標)(酒井化学工業株式会社)、プチプチ(登録商標)(川上産業株式会社)、ミナパック(登録商標)(酒井化学工業株式会社)、等が挙げられる。
【0056】
<内部遠赤外線反射膜>
本開示の放射冷却装置は、更に、少なくとも真空断熱容器の内壁面(即ち、側面及び/又は底面)と被冷却体との間に配置され、内壁面から5μm〜25μmの波長範囲の遠赤外線が放射された場合において内壁面から放射された5μm〜25μmの波長範囲の遠赤外線を反射する内部遠赤外線反射膜(例えば、前述の内部遠赤外線反射膜14)を備えていてもよい。
内部遠赤外線反射膜は、例えば、真空断熱容器の内壁面の少なくとも一部に沿って配置され得る。内部遠赤外線反射膜は、真空断熱容器の内壁面の少なくとも一部に接触していてもよいし、接触していなくてもよい。
内部遠赤外線反射膜は、好ましくは、真空断熱容器の内壁面と、被冷却体及び遠赤外線放射体と、の間に配置される。
本開示の放射冷却装置が内部遠赤外線反射膜を備える場合には、真空断熱容器の内壁面から5μm〜25μmの波長範囲の遠赤外線が放射された場合においても、真空断熱容器から被冷却体への遠赤外線の放射(即ち、熱放射)を抑制できるので、放射冷却性能がより高まる。
【0057】
内部遠赤外線反射膜は、5μm〜25μmの波長領域における平均反射率R5−25が、0.40以上であることが好ましく、0.60以上であることがより好ましく、0.80以上であることが特に好ましい。
【0058】
本明細書において、平均反射率R5−25は、JIS R 3106:1998の付表3中、5μm〜25μmの波長範囲に含まれる波長における分光反射率の算術平均値を意味する。
平均反射率R5−25の測定方法は、JIS R 3106:1998の付表3中、5μm〜25μmの波長範囲に含まれる波長における分光反射率を測定し、測定結果の算術平均を求めること以外は、後述する平均放射率E5−25の測定方法と同様である。
【0059】
内部遠赤外線反射膜の材料としては、アルミニウム、アルミニウム合金、銀、銀合金、銅、銅合金、などが挙げられる。
【0060】
<外部太陽光反射膜>
本開示の放射冷却装置は、真空断熱容器の外壁面の少なくとも一部の更に外側に、太陽光を反射する外部太陽光反射膜を備えていてもよい。これにより、太陽光の吸収による真空断熱容器の発熱を抑制できるので、本開示の放射冷却装置による放射冷却効果をより高めることができる。
外部太陽光反射膜における「外部」とは、真空断熱容器の外部を意味する。
外部太陽光反射膜としては、後述する遠赤外線透過窓材に含まれ得る太陽光反射層と同様の層(好ましくは、気泡を含む樹脂層である太陽光反射層)を用いることができる。
【0061】
<遠赤外線放射体>
本開示の放射冷却装置は、真空断熱容器内に、特定遠赤外線を放射する遠赤外線放射体(例えば、前述の遠赤外線放射体30)を備える。
真空断熱容器内への被冷却体の収容時において、遠赤外線放射体は、被冷却体と真空断熱容器の開口部との間に配置され、被冷却体に熱的に接触する。
本明細書において、「特定遠赤外線を放射する」とは、特定遠赤外線を放射する方向の8μm〜13μmの波長範囲における平均放射率E8−13が0.40以上であることを意味する。特定遠赤外線を放射する方向とは、遠赤外線放射体から放出された特定遠赤外線が遠赤外線透過窓部材を通して真空断熱容器から外部へと放出される方向であり、例えば図1及び図3においては特定遠赤外線50の進行方向として示されている方向である。
【0062】
真空断熱容器内における遠赤外線放射体の位置は、真空断熱容器の外部から真空断熱容器の開口部を平面視した場合に、開口部の少なくとも一部と遠赤外線放射体の少なくとも一部とが重なる位置であることが好ましく、開口部の全体と遠赤外線放射体の少なくとも一部とが重なる位置であることがより好ましい。
【0063】
遠赤外線放射体の構造は、放射体本体からなる単層構造であってもよいし、放射体本体と他の層(例えば、後述の放射体反射層)とを含む積層構造であってもよい。
【0064】
(8μm〜13μmの波長範囲における平均放射率E8−13
遠赤外線放射体は、特定遠赤外線を放射する方向の8μm〜13μmの波長範囲における平均放射率E8−13が、0.80以上であることが好ましく、0.85以上であることがより好ましく、0.90以上であることが特に好ましい。遠赤外線放射体の平均放射率E8−13が0.80以上であると、遠赤外線放射体の特定遠赤外線の放射性能がより向上するので、冷却時の到達温度をより低くすることができる。
遠赤外線透過窓部材の平均放射率E8−13の上限には特に制限はない。遠赤外線透過窓部材の製造適性の観点から、平均放射率E8−13は、0.98以下が好ましい。
【0065】
言うまでもないが、本明細書において、遠赤外線放射体の好ましい分光特性(平均放射率)は、遠赤外線放射体が積層構造を有する場合には、遠赤外線放射体全体(即ち積層構造全体)の分光特性を意味する。
【0066】
本明細書において、平均放射率E8−13は、JIS R 3106:1998の付表3中、8μm〜13μmの波長範囲に含まれる波長(前述の10個の波長)のそれぞれにおいて、キルヒホッフの法則によって分光透過率及び分光反射率から分光放射率を求め、得られた分光放射率を算術平均した値を意味する。
8μm〜13μmの波長範囲における平均放射率は、具体的には、以下のようにして求める。
まず、フーリエ変換赤外線分光(FTIR)により、1.7μm〜25μmの波長範囲における分光透過率及び分光反射率を測定する。
1.7μm〜25μmの波長範囲における分光透過率及び分光反射率の測定結果のうち、JIS R 3106:1998の付表3における、8μm〜13μmの波長範囲に含まれる波長(具体的には、8.1μm、8.6μm、9.2μm、9.7μm、10.2μm、10.7μm、11.3μm、11.8μm、12.4μm、及び12.9μmの10点の波長。)ごとに、以下に示すキルヒホッフの法則より分光放射率を算出する。
キルヒホッフの法則 : 分光放射率=1−分光透過率−分光反射率
各波長の分光放射率(10個の値)を算術平均することにより、「8μm〜13μmの波長範囲における平均放射率」を求める。
【0067】
なお、後述の実施例では、FTIR装置として、Varian社製FTIR(型番:FTS−7000)を用いた。
【0068】
(E8−13/E5−25比)
遠赤外線放射体は、特定遠赤外線を放射する方向について、特定遠赤外線を優先的に(理想的には選択的に)放射することが好ましい。
具体的には、遠赤外線放射体は、特定遠赤外線を放射する方向の5μm〜25μmの波長範囲における平均放射率E5−25に対する上記平均放射率E8−13の比であるE−13/E5−25比が、1.20以上であることが好ましく、1.30以上であることがより好ましく、1.50以上であることが特に好ましい。
遠赤外線放射体のE8−13/E5−25比が1.20以上であると、大気の熱放射(即ち、波長8μm未満の電磁波及び波長13μm超の電磁波による熱放射)による遠赤外線放射体への熱流入を抑制しつつ、遠赤外線放射体から特定遠赤外線を放射させることができる。従って、冷却時の到達温度をより低くすることができる。
【0069】
8−13/E5−25比の上限には特に制限はない。遠赤外線放射体の製造適性の観点から、E8−13/E5−25比は2.40以下であることが好ましい。
【0070】
本明細書において、平均放射率E5−25は、JIS R 3106:1998の付表3中、5μm〜25μmの波長範囲に含まれる波長における分光放射率の算術平均値を意味する。
平均放射率E5−25は、具体的には、以下のようにして求める。
まず、フーリエ変換赤外線分光(FTIR)により、1.7μm〜25μmの波長範囲の分光透過率及び分光反射率を測定する。
1.7μm〜25μmの波長範囲の分光透過率及び分光反射率の測定結果のうち、JIS R 3106:1998の付表3における、5μm〜25μmの波長範囲に含まれる波長(具体的には、5.5μm、6.7μm、7.4μm、8.1μm、8.6μm、9.2μm、9.7μm、10.2μm、10.7μm、11.3μm、11.8μm、12.4μm、12.9μm、13.5μm、14.2μm、14.8μm、15.6μm、16.3μm、17.2μm、18.1μm、19.2μm、20.3μm、21.7μm、及び23.3μmの24点の波長。)ごとに、前述のキルヒホッフの法則より分光放射率を算出する。
各波長の分光放射率(24個の値)を算術平均することにより、平均放射率E5−25を求める。
【0071】
(3μm〜7μmの波長範囲における平均反射率R3−7
遠赤外線放射体は、遠赤外線放射窓部材側の面の、3μm〜7μmの波長範囲における平均反射率R3−7が、0.05以上であることが好ましく、0.10以上であることがより好ましい。遠赤外線透過窓部材の平均反射率R3−7が0.10以上であると、遠赤外線放射体及び被冷却体に対する上方(遠赤外線放射体から見て遠赤外線透過窓部材の方向)からの3μm〜7μmの波長範囲の電磁波の入射を抑制できるので、かかる電磁波の入射による到達温度の上昇をより抑制できる。
平均反射率R3−7が0.05以上であることは、遠赤外線放射体が後述の放射体反射層を含む場合により達成し易い。
遠赤外線透過窓部材の平均反射率R3−7の上限には特に制限はない。遠赤外線透過窓部材の製造適性の観点から、遠赤外線透過窓部材の平均反射率R3−7は、0.90以下(より好ましくは0.80以下)であることが好ましい。
【0072】
本明細書において、平均反射率R3−7は、JIS R 3106:1998の付表3中、3μm〜7μmの波長範囲に含まれる波長における分光反射率の算術平均値を意味する。
平均反射率R3−7の測定方法は、JIS R 3106:1998の付表3中、3μm〜7μmの波長範囲に含まれる波長における分光反射率を測定し、測定結果の算術平均を求めること以外は、前述の平均放射率E8−13の測定方法と同様である。
【0073】
(材料、形状など)
遠赤外線放射体(放射体本体)としては、公知の熱放射体から、特定遠赤外線を放射する物質を適宜選択して用いることができ、特に限定されない。
遠赤外線放射体(放射体本体)としては、8μm〜13μmの波長範囲における平均放射率が高い点で、黒体放射体、又は、チタニア膜とシリカ膜との積層膜を備える放射体が好ましい。
また、遠赤外線放射体(放射体本体)としては、製造容易性の観点からみると、黒体放射体が好ましい。
黒体放射体としては、黒体自体である黒体放射体、金属材料の表面に市販の黒体スプレーを塗布した黒体放射体、金属材料の表面に市販の黒体テープを貼付した黒体放射体、等が挙げられる。
また、遠赤外線放射体(放射体本体)としては、E8−13/E5−25比を向上させ易い観点(例えば、E8−13/E5−25比が1.20以上であることを達成し易い観点)からみると、チタニア膜とシリカ膜との積層膜を備える放射体が好ましい。
【0074】
遠赤外線放射体全体の三次元形状にも特に制限はないが、装置をコンパクトにする観点から、板形状であることが好ましい。
【0075】
遠赤外線放射体全体の平面視形状にも特に制限はない。遠赤外線放射体全体の平面視形状としては、楕円形状(円形状を含む)、長方形状(正方形状を含む)、長方形以外の多角形状、などが挙げられる。遠赤外線放射体の平面視形状は、これらの形状以外の不定形状であってもよい。
遠赤外線放射体全体の平面視形状としては、入手性の観点から、楕円形状であることが好ましく、円形状であることが特に好ましい。
【0076】
遠赤外線放射体全体の厚さにも特に制限はない。
遠赤外線放射体全体の厚さは、好ましくは1mm〜30mm、より好ましくは1mm〜20mm、特に好ましくは2mm〜10mmである。
遠赤外線放射体全体の厚さが1mm以上であると、遠赤外線放射体の強度の点で有利である。
遠赤外線放射体全体の厚さが30mm以下であると、断熱容器内の省スペース化の点で有利である。
【0077】
(放射体反射層)
遠赤外線放射体は、放射体本体と、放射体本体から見て遠赤外線放射窓部材側に配置され、3μm〜7μmの波長領域の電磁波を反射する放射体反射層と、を含むことができる。
遠赤外線放射体が放射体反射層を含む態様によれば、放射体本体及び被冷却体に対する上方(遠赤外線放射体から見て遠赤外線放射窓部材の方向)からの3μm〜7μmの波長領域の電磁波の入射を抑制できるので、かかる電磁波の入射による到達温度の上昇をより抑制できる。
放射体反射層の好ましい態様は、後述の太陽光反射層の好ましい態様と同様である。
遠赤外線放射体が放射体反射層を含む態様によれば、遠赤外線放射体の平均反射率R−7が0.05以上であることをより達成し易い。
【0078】
<遠赤外線透過窓部材>
本開示の放射冷却装置は、真空断熱容器の開口部を閉塞し、特定遠赤外線(即ち、8μm〜13μmの波長範囲の遠赤外線)を透過する遠赤外線透過窓部材(例えば、前述の遠赤外線透過窓部材20)を備える。
【0079】
遠赤外線透過窓部材の構造は、窓部材本体からなる単層構造であってもよいし、窓部材本体と他の層(例えば、後述の太陽光反射層)とを含む積層構造であってもよい。
【0080】
(8μm〜13μmの波長範囲における平均透過率T8−13
遠赤外線透過窓部材は、特定遠赤外線を透過する方向の8μm〜13μmの波長範囲における平均透過率T8−13が、0.40以上であることが好ましく、0.50以上であることがより好ましく、0.60以上であることが特に好ましい。特定遠赤外線を透過する方向とは、遠赤外線放射体から放出された特定遠赤外線が遠赤外線透過窓部材を通して真空断熱容器から外部へと放出される方向であり、例えば図1及び図3においては特定遠赤外線50の進行方向として示されている方向である。
遠赤外線透過窓部材の平均透過率T8−13が0.40以上であると、遠赤外線放射体から放射された特定遠赤外線が遠赤外線透過窓部材をより透過しやすくなるので、冷却時の到達温度をより低くすることができる。
遠赤外線透過窓部材の平均透過率T8−13の上限には特に制限はない。遠赤外線透過窓部材の製造適性の観点から、遠赤外線透過窓部材の平均透過率T8−13は、0.98以下が好ましい。
【0081】
言うまでもないが、本明細書において、遠赤外線透過窓部材の好ましい分光特性(平均透過率及び日照反射率)は、遠赤外線透過窓部材が積層構造を有する場合には、遠赤外線透過窓部材全体(即ち積層構造全体)の分光特性を意味する。
【0082】
本明細書において、平均透過率T8−13は、JIS R 3106:1998の付表3中、8μm〜13μmの波長範囲に含まれる波長における分光透過率の算術平均値を意味する。
平均透過率T8−13は、具体的には、以下のようにして求める。
まず、フーリエ変換赤外線分光(FTIR)により、1.7μm〜25μmの波長範囲の分光透過率を測定する。
1.7μm〜25μmの波長範囲の分光透過率の測定結果のうち、JIS R 3106:1998の付表3における、8μm〜13μmの波長範囲に含まれる波長(前述の10点の波長。)での分光透過率の値(即ち、10個の値)を算術平均することにより、平均透過率T8−13を求める。
【0083】
(T8−13/T5−25比)
遠赤外線透過窓部材は、特定遠赤外線を透過する方向について、特定遠赤外線を優先的に(理想的には選択的に)透過させることが好ましい。
具体的には、遠赤外線透過窓部材は、特定遠赤外線を透過する方向の5μm〜25μmの波長範囲における平均透過率T5−25に対する上記平均透過率T8−13の比であるT8−13/T5−25比が、1.20以上であることが好ましく、1.30以上であることがより好ましく、1.50以上であることが特に好ましい。
遠赤外線透過窓部材のT8−13/T5−25比が1.20以上であると、大気の熱放射(即ち、波長8μm未満の電磁波及び波長13μm超の電磁波による熱放射)による放射冷却装置内への熱流入を抑制しつつ、遠赤外線放射体からの特定遠赤外線を透過させることができる。従って、冷却時の到達温度をより低くすることができる。
【0084】
8−13/T5−25比の上限には特に制限はない。遠赤外線透過窓部材の製造適性の観点から、T8−13/T5−25比は2.40以下であることが好ましい。
【0085】
本明細書において、平均透過率T5−25は、JIS R 3106:1998の付表3中、5μm〜25μmの波長範囲に含まれる波長における分光透過率の算術平均値を意味する。
平均透過率T5−25は、具体的には、以下のようにして求める。
まず、フーリエ変換赤外線分光(FTIR)により、1.7μm〜25μmの波長範囲の分光透過率を測定する。
1.7μm〜25μmの波長範囲の分光透過率の測定結果のうち、JIS R 3106:1998の付表3における、5μm〜25μmの波長範囲に含まれる波長(即ち、前述の24点の波長。)での分光透過率の値(即ち、24個の値)を算術平均することにより、平均透過率T5−25を求める。
【0086】
(日射反射率)
遠赤外線透過窓部材は、遠赤外線放射体側の面とは反対側の面の日射反射率が60%以上であることが好ましい。
遠赤外線透過窓部材の日射反射率が60%以上である場合には、断熱容器内への太陽光(即ち、300nm〜2500nmの波長範囲の電磁波)の入射を抑制できるので、断熱容器内への熱流入を抑制できる。従って、冷却時の到達温度をより低くすることができる。
遠赤外線透過窓部材の日射反射率は、70%以上であることがより好ましく、80%以上であることが特に好ましい。
遠赤外線透過窓部材の日射反射率の上限には特に制限はない。遠赤外線透過窓部材の製造適性の観点から、遠赤外線透過窓部材の日射反射率は、98%以下であることが好ましい。
遠赤外線透過窓部材の日射反射率が60%以上であることは、遠赤外線透過窓部材が後述の太陽光反射層を含む場合により達成し易い。
【0087】
本明細書において、日射反射率は、JIS A 5759:2008に準拠し、分光光度計によって拡散反射率を測定し、得られた拡散反射率に基づいて算出された値を意味する。
ここで、分光光度計としては、積分球分光光度計を用いる。
【0088】
なお、後述の実施例では、日射反射率の測定に用いる分光光度計として、日本分光製分光光度計V−670(積分球分光光度計)を用いた。
【0089】
(材料、形状など)
遠赤外線透過窓部材(窓部材本体)の材料は、特定遠赤外線を透過できる材料であれば特に制限されない。
遠赤外線透過窓部材(窓部材本体)の材料としては、金属材料、金属材料以外の無機材料、等が挙げられ、より具体的には、ゲルマニウム(Ge;透過波長1.8μm〜23μm)、カルコゲナイド(透過波長0.75μm〜14μm)、シリコン(Si;透過波長1.2μm〜15μm)、ダイヤモンド(透過波長220nm以上)、フッ化カルシウム(CaF;透過波長0.12μm〜12μm)、ジンクセレン(ZnSe;透過波長0.5μm〜22μm)、フッ化バリウム(BaF;透過波長0.15μm〜15μm)、硫化亜鉛(ZnS;透過波長0.37μm〜14μm)、等が挙げられる。
中でも、ゲルマニウム、カルコゲナイド、又はシリコンが好ましい。
遠赤外線透過窓部材には、反射防止コーティングが施されていてもよい。
【0090】
遠赤外線透過窓部材全体の三次元形状にも特に制限はない。
作製容易性の観点から、遠赤外線透過窓部材の三次元形状は、板形状であることが好ましい。
【0091】
遠赤外線透過窓部材全体の平面視形状にも特に制限はない。遠赤外線透過窓部材全体の平面視形状としては、楕円形状(円形状を含む)、長方形状(正方形状を含む)、長方形以外の多角形状、などが挙げられる。遠赤外線透過窓部材の平面視形状は、これらの形状以外の不定形状であってもよい。
【0092】
遠赤外線透過窓部材全体の厚さにも特に制限はない。
遠赤外線透過窓部材全体の厚さは、好ましくは1mm〜30mm、より好ましくは1mm〜20mm、特に好ましくは2mm〜10mmである。
厚さが1mm以上であると、断熱容器内への特定遠赤外線以外の電磁波の侵入をより抑制でき、また、遠赤外線透過窓部材の強度の点でも有利である。
厚さが30mm以下であると、特定遠赤外線の透過率がより向上する。
【0093】
(太陽光反射層)
遠赤外線透過窓部材は、窓部材本体と、窓部材本体から見て遠赤外線放射体側とは反対側に配置され、太陽光を反射する太陽光反射層と、を含むことができる。
遠赤外線透過窓部材が太陽光反射層を含む態様によれば、断熱容器内への太陽光(即ち、0.3μm〜2.5μmの波長範囲の電磁波)の入射を抑制できるので、断熱容器内への熱流入を抑制できる。従って、冷却時の到達温度をより低くすることができる。
遠赤外線透過窓部材が太陽光反射層を含む態様によれば、遠赤外線透過窓部材の日射反射率が60%以上であること(好ましくは70%以上であること、更に好ましくは80%以上であること)をより達成し易い。
【0094】
太陽光反射層は、太陽光を反射する機能を有するが、太陽光以外の電磁波(例えば波長2.5μm超8μm未満の電磁波)を反射する機能を有していてもよい。
【0095】
太陽光反射層の構造、大きさ、材料などについては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
太陽光反射層の構造は、単層構造であってもよいし、積層構造であってもよい。
太陽光反射層の構造が積層構造である場合、積層構造としては、金属層、無機物層、及び有機物層からなる群から選択される少なくとも1層を有する積層構造であることが好ましい。
【0096】
また、太陽光反射層の構造は、微小構造(粒子、気泡など)を含む構造であってもよいし、表面に凹凸構造を備える構造であってもよい。
太陽光反射層の構造が、微小構造を含む構造である場合における「微小構造」としては、粒子、気泡などが挙げられる。
また、太陽光反射層は、連続層であることには限定されず、窓部材本体に分散された粒子からなる粒子層であってもよい。
【0097】
太陽光反射層は、粒子を含有することが好ましい。
粒子の数平均粒子径は、0.1μm〜20μmが好ましい。
粒子の数平均粒子径が0.1μm以上であると、太陽光反射層の太陽光に対する散乱断面積が大きくなる。これにより、遠赤外線透過窓部材全体の日射反射率をより大きくすることができる。
粒子の数平均粒子径が20μm以下であると、太陽光反射層の特定遠赤外線に対する散乱断面積が小さくなる。これにより、遠赤外線透過窓部材全体の特定遠赤外線に対する透過率を高く維持できる。
【0098】
粒子の数平均粒子径は、以下のようにして測定された値を意味する。
即ち、ミクロトームを用いて太陽光反射層を厚さ方向に沿って切断し、切断面から電子顕微鏡S4100(株式会社日立ハイテクノロジー製)を用いて倍率1000倍の断面像を取得する。取得した断面像において、それぞれの粒子において、粒子内部の2点を結ぶ線分の中で最大の長さを粒子長さとする。
以上の粒子長さの測定を、断面像中の100箇所について行い、100個の測定値の平均値を粒子の数平均粒子径とする。
【0099】
粒子を構成する物質としては、チタン酸化物、チタン酸バリウム化合物、硫化亜鉛、バリウム酸化物、マグネシウム酸化物、カルシウム酸化物、等が挙げられる。中でも、光学特性に優れる点で、硫化亜鉛が好ましい。
【0100】
太陽光反射層が粒子を含有する場合、太陽光反射層は、樹脂を含有してもよい。
樹脂の具体例は、後述する、気泡を含む樹脂層における樹脂の具体例と同様である。
【0101】
太陽光反射層は、遠赤外線透過窓部材全体としての特定遠赤外線の透過性を維持する観点から、太陽光反射層は、窓部材本体に分散された粒子(例えば、上述の硫化亜鉛粒子、酸化チタン粒子など)からなる粒子層であることが好ましい。
【0102】
また、太陽光反射層が微小構造として気泡を含む場合、気泡以外の部分の材料としては、樹脂が挙げられる。
即ち、太陽光反射層としては、気泡を含む樹脂層である太陽光反射層を用いることもできる。
気泡を含む樹脂層における樹脂としては、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ4−メチルペンテン−1、ポリブテン−1等)、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等)、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルサルフォン、ポリエチレンサルファイド、ポリフェニレンエーテル、ポリスチレン、アクリル樹脂、ポリアミド、ポリイミド、セルロース(例えば、セルロースアセテート)などが挙げられる。
樹脂としては、加工性及び光学特性に優れる観点から、ポリエステルが好ましく、ポリエチレンテレフタレート(polyethylene terephthalate;以下、「PET」ともいう)が好ましい。
【0103】
気泡を含む樹脂層は、目的に応じて、2種以上の樹脂の混合物を含んでもよい。
また、気泡を含む樹脂層は、太陽光の反射率に影響を与えない範囲であれば、不可避的な不純物を含有していてもよい。
【0104】
気泡を含む樹脂層における気泡とは、樹脂中に存在する気泡長さが10nm以上の気体よりなる空間を指す。気泡長さとは、それぞれの気泡において、気泡内部の2点を結ぶ線分の中で最大の長さを指す。気泡長さは、後記の方法で測定される値である。
気体の種類は、空気であってもよく、酸素、窒素、二酸化炭素などの空気以外の他の種類の気体であってもよい。
気泡の形状は、特に制限はなく、球形状、円柱形状、楕円形状、直方体形状(立方体形状)、角柱形状などの種々の形状が挙げられる。
また、気体の圧力は、大気圧であってもよく、大気圧よりも加圧又は減圧されていてもよい。気泡は、それぞれ、孤立して存在してもよく、部分的に繋がって存在していてもよい。
【0105】
気泡の数平均長さは、0.1μm〜20μmが好ましい。
気泡の数平均長さが0.1μm以上であると、太陽光反射層の太陽光に対する散乱断面積が大きくなる。これにより、遠赤外線透過窓部材の日射反射率をより大きくすることができる。
気泡の数平均長さが20μm以下であると、太陽光反射層の特定遠赤外線に対する散乱断面積が小さくなる。これにより、遠赤外線透過窓部材の特定遠赤外線に対する透過率を高く維持できる。
【0106】
気泡の数平均長さは、以下のようにして測定された値を意味する。
粒子の数平均粒子径の測定の場合と同様にして取得した断面像において、それぞれの気泡について、気泡内部の2点を結ぶ線分の中で最大の長さを、気泡長さとする。
以上の気泡長さの測定を、断面像中の100個の気泡について行い、100個の測定値の平均値を気泡の数平均長さとする。
【0107】
気泡を含む樹脂層である太陽光反射層としては、市販の樹脂フィルムを用いることもできる。
樹脂フィルムの市販品としては、古川電気工業(株)製の超微細発泡光反射板「MCPET/MCPOLYCA」、東レ社製の白色PETフィルムである、ルミラー(登録商標)E20、同E22、同E28G、同E60などを挙げることができる。
【0108】
また、太陽光反射層の構造が、表面に凹凸構造を備える構造である場合における、凹凸構造としては、平均ピッチが100μm以下である凹凸構造が好ましい。
このような凹凸構造を形成するための手段としては、例えば、ナノインプリント、プラズマエッチングなどが挙げられる。
【0109】
<金属筒部材>
本開示の放射冷却装置は、遠赤外線透過窓部材から見て遠赤外線放射体側とは反対側に、遠赤外線透過窓部材を透過した特定遠赤外線が通過する金属筒部材を備えていてもよい。
本開示の放射冷却装置が金属筒部材を備える場合には、周辺環境部材(例えば、建物、電柱などの建造物)からの熱放射による真空断熱容器内への熱流入を抑制できる。従って、この熱流入による放射冷却性能の低下がより抑制される。
【0110】
ここで、「筒」とは、テーパー筒を包含する概念である。
テーパー筒とは、軸方向一端側から他端側に向かうに従って径(外径及び内径)が増大する形状の筒を指す。
【0111】
図3は、本開示の放射冷却装置の別の一例である、金属筒部材を備えた放射冷却装置の概略断面図である。
図3に示す放射冷却装置150の構造は、金属筒部材60を備えること以外は図1に示す放射冷却装置100の構造と同様である。
図3に示されるように、放射冷却装置150は、遠赤外線透過窓部材20から見て遠赤外線放射体30側とは反対側に、金属筒部材60を備えている。
金属筒部材60は、テーパー筒の形状を有している。テーパー筒の形状としては、線形テーパー形状、放物線テーパー形状、及び指数関数テーパー形状が挙げられる。
金属筒部材60は、軸方向の一端が遠赤外線透過窓部材20に接するように、かつ、軸方向の一端から他端に向かうに従って径が増大する向きに配置されている。
更に、金属筒部材60は、開口部10Aの開口方向から見た平面視(不図示)において、金属筒部材60の一端側の内周面で囲まれた範囲内に、開口部10Aが含まれるように配置されている。
【0112】
放射冷却装置150によれば、遠赤外線透過窓部材20を透過した特定遠赤外線50を金属筒部材60の内部を通過させつつ、周辺環境部材(例えば、建物、電柱などの建造物)からの熱放射(具体的には、周辺環境部材から放射された遠赤外線)を金属筒部材60の外周面によって遮ることができる。
更に、金属筒部材60は、軸方向の一端から他端に向かうに従って径が増大する向きに配置されているので、特定遠赤外線50が放射される実効的な面積が開口部10Aの面積よりも大きくなる。
これらの理由により、放射冷却装置150では、より優れた放射冷却性能が得られる。
【0113】
金属筒部材60の軸方向の他端側(即ち、遠赤外線透過窓部材20からみて遠い側の端部)の開口面積は、特定遠赤外線50が放射される実効的な面積を増大させる観点から、開口部10Aの面積に対し、1.1倍以上であることが好ましく、1.3倍以上であることが好ましい。
金属筒部材60の軸方向の他端側の開口面積は、周辺環境部材からの熱放射をより効果的に遮断する観点から、開口部10Aの面積に対し、6.0倍以下が好ましく、5.0倍以下がより好ましい。
【0114】
金属筒部材の表面の材料(金属)としては、遠赤外線の反射率が高い金属が好ましく、具体的には、アルミニウム、アルミニウム合金、銀、又は銀合金が好ましい。
【0115】
金属筒部材としては、市販のパラボリックミラー(例えば、国際商事(株)製の放物面ミラー)を用いてもよい。
ここで、パラボリックミラー(放物面ミラー)とは、放物線テーパー形状を有する金属筒部材を指す。
【0116】
金属筒部材の大きさには特に制限はなく、放射冷却装置の用途等を考慮して適宜設定され得る。
金属筒部材の軸方向両端の開口部の形状は、円形状であることが好ましい。
【0117】
<金属筒部材の角度変更装置>
本開示の放射冷却装置が前述の金属筒部材を備える場合、本開示の放射冷却装置は、金属筒部材の外側開口部(遠赤外線透過窓部材から見て遠い側の端部)が向く角度を変更させる角度変更装置を備えていてもよい。
金属筒部材の外側開口部とは、遠赤外線透過窓部材から見て遠い側の端部の開口部を指す。
この角度変更装置は、金属筒部材の外側開口部を、太陽の位置とは異なる方向に向かせる機能を有することが好ましい。かかる機能を実現するために、任意のシステムを適宜選択して適用することができる。
この機能により、金属筒部材の外側開口部を、太陽の位置とは異なる方向に向かせることにより、太陽の直接光の入射を抑制できるので、この入射による熱流入を抑制することができる。これにより、特に日中における到達温度の上昇をより抑制できる。
【実施例】
【0118】
以下、本開示の実施例を示すが、本開示は以下の実施例に限定されるものではない。
【0119】
〔実施例1〕
<放射冷却装置の作製>
実施例1では、図1に示す放射冷却装置100を作製した。
まず、内径φ200mm、外径φ220mm、高さ168mmの内部中空の円柱形状の上面にφ140mmの開口部10Aが設けられた形状を有するSUS304製の真空断熱容器10を準備した。この真空断熱容器10には、バルブ44を備えた配管43の一端が接続されている。配管43の他端に、真空断熱容器10内の真空度を確認するための真空ゲージ(ULVAC社製G−TRAN SW1;不図示)及び真空断熱容器10内部を真空引きするための真空ポンプ(ULVAC社製GVD−136;不図示)を、上記他端側からこの順序で直列に接続した。
後述する放射冷却性能の評価時において、真空断熱容器10内の真空度は、高性能レコーダ(KEYENCE社製GR−3500)にて真空ゲージの電圧を測定し、真空度へ数値を変換することにより求めた。
【0120】
真空断熱容器10内の底面に、被冷却体を支持するための、支持ピン41を3つ配置した。3つの支持ピン41としては、六角穴付止めねじMSST6−25(ミスミ株式会社製、長さ25mm、φ6mm)を用いた。
【0121】
真空断熱容器10内には、真空断熱容器10の内壁面に沿って、内部遠赤外線反射膜14としての市販のアルミホイル(三菱アルミニウム社製、ホイル)を配置した。
【0122】
被冷却体101として、熱容量1500J/K、φ140mm、厚さ21mmのステンレス(SUS304)製の板材を準備した。
この被冷却体101の表面に、温度測定用のT型熱電対(八光電機社製)を取り付けた。
また、φ140mm、厚さ5mm、熱容量350J/Kのアルミニウム円板の表面に、黒体塗料(ジャパンセンサー社、黒体塗料JSC−3号)を塗布し、乾燥させることにより遠赤外線放射体30を準備した。
また、遠赤外線透過窓部材20として、両面にDLC(ダイヤモンドライクカーボン)コーティングが施された、φ160mm、厚さ5mmのゲルマニウム板(アイ・アール・システム社製)を準備した。
【0123】
遠赤外線透過窓部材20及び遠赤外線放射体30の分光特性は、表1に示すとおりであった。
【0124】
以上で準備した各部材を用い、放射冷却装置100を作製した。
まず、内部遠赤外線反射膜14及び3つの支持ピン41を配置した真空断熱容器10内に被冷却体101を入れ、3つの支持ピン41上に載せた。ここで、真空断熱容器10と被冷却体101との最短距離(不等式(1)におけるL)が、0.015mとなるようにした。
次に、真空断熱容器10内に遠赤外線放射体30を入れ、被冷却体101上に載せた。
次に、真空断熱容器10の開口部10A全体を遠赤外線透過窓部材20で覆い、固定することにより、遠赤外線透過窓部材20によって開口部10Aを閉塞した。
以上により、放射冷却装置100を得た。
【0125】
<放射冷却性能の評価>
上記で作製された放射冷却装置100を、屋外に、真空断熱容器10の開口部10Aが真上を向く配置角度にて設置した。
屋外における放射冷却装置100の配置場所としては、遠赤外線放射体30から天空に向けて放射される特定遠赤外線50を遮る物体が無い場所を選んだ。
評価環境としては、快晴時の夜間(外気温24℃)を選んだ。
日没を評価開始時間として、バルブ44を開放した状態で真空ポンプを作動させることにより、放射冷却装置100の真空断熱容器10内を、表1に示す真空度Pとなるまで真空引きすることにより、放射冷却性能の評価を開始した。
評価開始後、真空断熱容器10内の真空度がこの真空度Pを維持するように調整したまま、放射冷却装置100を10時間静置した。評価中、被冷却体101の温度と外気温とを観測した。被冷却体101の温度は、その表面に取り付けたT型熱電対(八光電機社製)を用いて観測し、外気温は、K型熱電対(RKC社製、ST−50)を用いて観測した。
【0126】
図4は、実施例1における、評価開始からの経過時間(横軸:時間(h))と被冷却体の温度及び外気温(縦軸:温度(℃))との関係を示すグラフである。
図4に示されるように、評価開始からの経過時間が進むに従い、被冷却体の温度が低下する(即ち、被冷却体が冷却される)ことが確認された。
【0127】
評価開始から10時間経過後、下記式に示す温度差(即ち、外気温に対する被冷却体101の温度)を求めることにより、放射冷却性能を評価した。この放射冷却性能の評価では、温度差(℃)が負の値でありかつ絶対値が大きい程、放射冷却性能に優れることを意味する。
結果(温度差)を表1に示す。
【0128】
温度差(℃) = 被冷却体101の温度(℃)−外気温(℃)
【0129】
〔実施例2〕
放射冷却装置100の作製において、内部遠赤外線反射膜14を用いなかったこと以外は実施例1と同様の操作を行った。
結果を表1に示す。
【0130】
〔実施例3〕
評価時における真空断熱容器10内の真空度Pを表1に示す値に変更したこと以外は実施例2と同様の操作を行った。
結果を表1に示す。
【0131】
〔実施例4〕
遠赤外線放射体30を、表1に示す分光測定を有する遠赤外線放射体に変更したこと以外は実施例2と同様の操作を行った。
実施例4における遠赤外線放射体として、具体的には、φ140mm、厚さ5mm、熱容量350J/Kのアルミニウム円板の表面に、スパッタリングにより、SiO膜とTiO膜との多層膜(詳細には、TiO膜/SiO膜/TiO膜の積層構造を有する多層膜)を形成した遠赤外線放射体を用いた。
実施例4における遠赤外線放射体の積層構造及び各膜の膜厚は、TiO膜(膜厚1463nm)/SiO膜(膜厚643nm)/TiO膜(膜厚1428nm)/Al基板である。
【0132】
〔実施例5〕
遠赤外線透過窓部材20を、表1に示す分光測定を有する遠赤外線透過窓部材に変更したこと以外は実施例2と同様の操作を行った。
実施例5における遠赤外線透過窓部材として、具体的には、実施例2で用いた遠赤外線透過窓部材の表面に、数平均粒径0.2μmの硫化亜鉛粒子を分散させることにより、硫化亜鉛粒子からなる太陽光反射層を形成した遠赤外線透過窓部材を用いた。
【0133】
〔実施例6〕
遠赤外線透過窓部材20を、表1に示す分光測定を有する遠赤外線透過窓部材に変更したこと以外は実施例2と同様の操作を行った。
実施例6における遠赤外線透過窓部材として、具体的には、Ge基板の表面に、スパッタリングにより多層膜(詳細には、ZnS膜/Ge膜/TiO膜/Ge膜/ZnS膜の積層構造を有する多層膜)を形成した赤外線透過窓部材を用いた。Ge基板としては、実施例2の遠赤外線透過窓部材と同形状である、φ160mm、厚さ5mmのゲルマニウム板(アイ・アール・システム社製)を用いた。
この遠赤外線透過窓部材の積層構造及び各膜の膜厚は、ZnS膜(膜厚109nm)/Ge膜(膜厚322nm)/TiO膜(膜厚600nm)/Ge膜(膜厚43nm)/ZnS膜(膜厚624nm)/Ge基板である。
【0134】
〔実施例7〕
実施例7では、図3に示す放射冷却装置150を作製した。
具体的には、実施例2における放射冷却装置の遠赤外線透過窓部材20に対し、遠赤外線透過窓部材20から見て遠赤外線放射体30側とは反対側に、金属筒部材60として、国際商事(株)のパラボリックミラー(詳細には、テーパー筒形状の金属筒部材。表面の材質はアルミニウム(アルミニウムコーティング))を取り付けた。
パラボリックミラーは、軸方向の一端が遠赤外線透過窓部材20に接するように、かつ、軸方向の一端から他端に向かうに従って径が増大する向きに取り付けた。
また、パラボリックミラーは、開口部10Aの開口方向から見た平面視(不図示)において、金属筒部材60の一端側の内周面で囲まれた範囲内に、開口部10Aが含まれるように取り付けた。
パラボリックミラーの軸方向の他端側(即ち、遠赤外線透過窓部材20からみて遠い側の端部)の開口面積は、開口部10Aの面積に対して1.5倍であった。
【0135】
以上の放射冷却装置150を用い、実施例2と同様の評価を行った。
結果を表1に示す。
【0136】
〔比較例1〕
放射冷却性能の評価において、真空ポンプを作動させず、真空断熱容器10内を大気圧としたこと以外は実施例2と同様の評価を行った。
結果を表1に示す。
【0137】
〔比較例2〕
放射冷却装置の作製において、遠赤外線放射体30を、黒体塗料が塗布される前のアルミニウム円板に変更した以外は実施例2と同様の操作を行った。
結果を表1に示す。
上記アルミニウム円板の平均放射率E8−13は0.05であった。前述のとおり、本明細書にいう遠赤外線放射体は、平均放射率E8−13が0.40以上である放射体を意味するので、上記アルミニウム円板は、本明細書にいう遠赤外線放射体には該当しない。
【0138】
【表1】

【0139】
表1に示すように、真空断熱を行った実施例1〜7では、真空断熱を行わなかった比較例1、及び、遠赤外線放射体に代えてアルミニウム円板を用いた比較例2と比較して、外気温に対する被冷却体の温度の差が大きく、放射冷却性能に優れていた。
2016年9月30日に出願された日本国特許出願2016−194976号の開示は、その全体が参照により本明細書に取り込まれる。
本明細書に記載された全ての文献、特許出願、および技術規格は、個々の文献、特許出願、および技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。
【符号の説明】
【0140】
10 真空断熱容器
10A 開口部
14 内部遠赤外線反射膜
20 遠赤外線透過窓部材
30 遠赤外線放射体
41 支持ピン(支持部材)
43 配管
44 バルブ
46 真空引き方向
50 特定遠赤外線
60 金属筒部材
100、150 放射冷却装置
101 被冷却体
図1
図2
図3
図4