特許第6602581号(P6602581)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特許6602581プラズマ処理装置およびプラズマ処理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6602581
(24)【登録日】2019年10月18日
(45)【発行日】2019年11月6日
(54)【発明の名称】プラズマ処理装置およびプラズマ処理方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/3065 20060101AFI20191028BHJP
   H05H 1/46 20060101ALI20191028BHJP
【FI】
   H01L21/302 101B
   H05H1/46 C
【請求項の数】6
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-142566(P2015-142566)
(22)【出願日】2015年7月17日
(65)【公開番号】特開2017-28000(P2017-28000A)
(43)【公開日】2017年2月2日
【審査請求日】2018年6月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100091720
【弁理士】
【氏名又は名称】岩崎 重美
(72)【発明者】
【氏名】寺内 宏満
(72)【発明者】
【氏名】飯田 勉
(72)【発明者】
【氏名】大平原 勇造
【審査官】 正山 旭
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−239091(JP,A)
【文献】 特開2000−150478(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0363977(US,A1)
【文献】 特開2010−171320(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0190350(US,A1)
【文献】 特開2014−229751(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/143215(WO,A1)
【文献】 特表2016−521430(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/3065
H05H 1/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空容器内部に配置され内側が減圧される処理室と、この処理室内に配置され処理対象のウエハが載せられる試料台と、前記処理室内の前記試料台の上方にプラズマを形成するための第1の高周波電力を供給する第1の高周波電源と、前記試料台内に配置された電極に前記ウエハ上にバイアス電位を形成するための第2の高周波電力を供給する第2の高周波電源とを有し、
前記第1及び第2の高周波電力の少なくとも何れかが高低の異なる値を各々所定の期間だけ出力することを特定の周期で繰り返す場合に、前記第1及び第2の高周波電力の両方が高い出力で出力されている時点で検出された一方の前記高周波電力についての情報を用いて当該一方の高周波電力についての整合を行う整合器であって内部を流れる他方の前記高周波電力を検出した結果に基づいて当該一方の高周波電力についての整合を行う整合器を備え、前記第1及び第2の高周波電力の少なくとも何れかが高い出力で出力されていない間において前記時点で検出された前記情報が保持されるプラズマ処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載のプラズマ処理装置であって、
前記一方の高周波電力について整合を行う前記整合器が、内部を流れる当該一方の高周波電力の反射波に含まれる前記他方の高周波電力を検出した結果に基づいて前記一方の高周波電力についての整合を行うプラズマ処理装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載のプラズマ処理装置であって、
前記整合器は、前記第1及び第2の高周波電力の少なくとも何れかが高い出力で出力されていない期間において保持された前記情報を用いてこの期間での整合を行うプラズマ処理装置。
【請求項4】
真空容器内部の減圧された処理室内に配置された試料台上に処理対象のウエハを載せ、前記処理室内に第1の高周波電力を供給して前記試料台上方の処理室内にプラズマを形成し、前記試料台内に配置された電極に第2の高周波電力を供給して前記ウエハ上にバイアス電位を形成して前記ウエハを処理するプラズマ処理方法であって、
前記第1及び第2の高周波電力の少なくとも何れかが高低の異なる値を各々所定の期間だけ出力することを特定の周期で繰り返すものであって、
前記第1及び第2の高周波電力の両方が高い出力で出力されている時点で検出された一方の前記高周波電力についての情報を用いて当該一方の高周波電力についての整合を行う工程であって整合を行う回路の内部を流れる他方の前記高周波電力を検出した結果に基づいて当該一方の高周波電力についての整合を行う工程と、前記第1及び第2の高周波電力の少なくとも何れかが高い出力で出力されていない間において前記時点で検出された前記情報を保持する工程とを備えたプラズマ処理方法。
【請求項5】
請求項4に記載のプラズマ処理方法であって、
前記何れか一方の高周波電力の反射波に含まれる前記他方の高周波電力を検出した結果に基づいて当該一方の高周波電力についての整合を行うプラズマ処理方法。
【請求項6】
請求項4または5に記載のプラズマ処理方法であって、
前記第1及び第2の高周波電力の少なくとも何れかが高い出力で出力されていない期間において保持された前記情報を用いてこの期間での整合を行う工程を備えたプラズマ処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空容器内に配置された処理室内に形成したプラズマを用いて当該処理室内に配置された試料台上に保持された処理対象の半導体ウエハ等の基板状の試料を処理するプラズマ処理装置またはプラズマ処理方法であって、プラズマ生成用の高周波電力またはバイアス電位形成用の高周波電源を周期的に断続または高低値で増減させてエッチング処理を行うプラズマ処理装置またはプラズマ処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造工程では、一般にプラズマを用いたドライエッチングが行われている。近年の半導体デバイスの高集積化、さらには三次元構造化に伴い、ドライエッチングを行うプラズマ処理装置には、加工精度の向上が要求されるとともに、エッチング選択比の向上あるいはエッチング形状の高精度制御等の向上が要求されている。
【0003】
このような要求に応えるため、プラズマ生成用高周波電源をパルス出力し、プラズマ生成をパルス化することでイオン密度およびラジカル密度の制御性を向上する方法が提案されている。さらに多層膜構造や三次元構造の高アスペクト比のエッチングを行うために、バイアス印加用高周波電源をパルス出力し、バイアス印加をパルス化することでデポジションを効果的に用いた選択比の向上や電子シェーディング効果の低減によるダメージの抑制も提案されている。
【0004】
特許文献1では、高選択比および高エッチングレートでエッチングするためにバイアス印加用高周波電源を繰り返し周波数0.25〜100Hzの範囲でパワー変調(低出力と高出力を交互に出力)し、バイアスを印加する方法が提案されている。前記特許文献1では、高出力となるタイミングのみ、バイアス印加用高周波電源側整合器の整合動作を行うよう制御することで、バイアス印加用の高周波電力を安定に供給している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014−96594号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の従来技術では、次の点について考慮が不十分であったため、問題が生じていた。
【0007】
すなわち、特許文献1に記載されるように、バイアス印加用高周波電源がプラズマ生成に寄与する場合には、プラズマ生成用高周波電源側から見たプラズマ負荷インピーダンスが、バイアス印加用高周波電源のパワー変調に同期して変動するようになる。バイアス印加用高周波電源が低出力の場合と高出力の場合の2つのプラズマ負荷インピーダンス条件に対して、プラズマ生成用高周波電源側の整合器は整合動作を行うため、整合動作が不安定となり、反射波が増大し且つ一定とならない。
【0008】
特許文献1では、プラズマ生成用高周波電力を印加する電極に直流電圧を加え、プラズマシースの厚さを安定させることで、反射波の増大を軽減させているものの、完全に抑制することは出来ていない。
【0009】
本発明の目的は、プラズマを生成するための高周波電源とバイアス電位を形成するための高周波電源のいずれかもしくは両方がオンオフあるいは高低の出力を繰り返し出力するものにおいて、安定して整合の動作を行い処理の歩留まりを向上させるプラズマ処理装置またはプラズマ処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的は、真空容器内部に配置され内側が減圧される処理室と、この処理室内に配置され処理対象のウエハが載せられる試料台と、前記処理室内の前記試料台の上方にプラズマを形成するための第1の高周波電力を供給する第1の高周波電源と、前記試料台内に配置された電極に前記ウエハ上にバイアス電位を形成するための第2の高周波電力を供給する第2の高周波電源とを有し、前記第1及び第2の高周波電力の少なくとも何れかが高低の異なる値を各々所定の期間だけ出力することを特定の周期で繰り返す場合に、前記第1及び第2の高周波電力の両方が高い出力で出力されている時点で検出された一方の前記高周波電力についての情報を用いて当該一方の高周波電力についての整合を行う整合器であって内部を流れる他方の前記高周波電力を検出した結果に基づいて当該一方の高周波電力についての整合を行う整合器を備え、前記第1及び第2の高周波電力の少なくとも何れかが高い出力で出力されていない間において前記時点で検出された前記情報が保持されることにより達成される。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、ソース電源およびバイアス電源のうちいずれかもしくは両方をパルス出力させエッチング処理を行う際に、ソース整合器およびバイアス整合器が整合させるべき負荷インピーダンス条件を1つとすることができ、安定な整合動作が行える。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明に係るVHF波ECRプラズマエッチング装置の縦断面図である。
図2図1に示す実施例に係るプラズマ処理装置の動作の流れを示すタイミングチャートである。
図3】本発明の第1の実施例に係るソース電源およびバイアス電源の出力波形のタイミングチャートである。
図4】本発明の第1の実施例に係るソース電源およびバイアス電源の出力波形のタイミングチャートである。
図5】本発明の第1の実施例に係るソース電源およびバイアス電源の出力波形のタイミングチャートである。
図6】本発明の第1の変形例に係るソース整合器およびバイアス整合器の回路構成図である。
図7】本発明の第2の実施例に係るソース整合器の回路構成図である。
図8】本発明の第2の実施例に係るソース整合器にて観測される反射波電力の周波数スペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を用いて本発明の実施の形態を説明する。
【実施例1】
【0014】
図1乃至図5を用いて本発明の第1の実施例を説明する。図1は、本発明の第1の実施例に係るプラズマ処理装置の構成の概略を模式的に示す縦断面図である。
【0015】
図1に示すプラズマ処理装置は100、真空容器内に配置されて内部が減圧されプラズマが内側で形成される円筒形を有した処理室101と、真空容器下部に連結され処理室101下部の排気口から処理室101内のガスや粒子を排気して減圧して所定の真空度にする為のターボ分子ポンプ102や粗引き用のロータリーポンプ(図示せず)を含む真空ポンプとを備えている。また、処理室101の上部にはプラズマを形成するための所定の周波数の高周波電力を供給するソース電源103とソース整合器104を介して同軸ケーブルにより接続された円形を有する平面アンテナ109とその下方に配置されて処理室101内に処理用のガスが導入される複数のガス導入孔を中央部に備えた円形のシャワープレート110が配置されている。
【0016】
処理室101内の下部には、プラズマを用いて例えばエッチングされる処理対象の基板状の試料であるウエハ110がその誘電体膜で被覆された円形の上面に載せられて静電気力で吸着、保持される試料台111が配置されている。試料台111内には円板または円筒形状を有した金属製の電極が配置され、当該電極にはウエハ114の処理中にウエハ114上面上方にバイアス電位を形成するための所定の高周波電力を供給するバイアス電源105が同軸ケーブルによりバイアス整合器106を介して接続されている。
【0017】
アルミニウムなどの導電性材料から構成され接地されている真空容器の円筒形状の処理室101の内部には、平面アンテナ109、エッチングガスを処理室内に均等に導入する為のシャワープレート110と、これらの下方に配置されてウエハ114が載せられる上面がシャワープレート110と対向して配置された試料台111とが備えられおり、シャワープレート110と平面アンテナ109との間の隙間にはエッチングガスを流入できるようガス導入口112からの処理用ガスが導入され、当該隙間内で拡散して充満したガスはシャワープレート110の下面中央部に配置された複数のガス導入孔から処理室101に導入される。処理室101を囲む真空容器の側壁と上面との周囲には形成した磁界を処理室101に供給するソレノイドコイル113が処理室101の上下方向の円筒の軸にその軸を合致させるように真空容器または処理室101をリング状に囲んで配置されている。
【0018】
本実施例のソース電源103およびバイアス電源105の各々からは、所定の周波数で正弦波状の電圧または電流を連続的に出力する連続波(CW)の高周波電力が出力可能であると共に、当該所定周波数の高周波電力を所定の周期と期間でオンオフあるいはその強度を複数の値でその高低を増減させることを繰り返すパルス状の高周波電力の出力が可能に構成されている。そして、本例において、当該高周波電力の所定の周波数の電力の強度、あるいは出力モード、またはパルス状の出力の際の周期(周波数)、オンとオフあるいは高低の出力の期間およびこれらの比率(デューティ比)は、これらと通信可能に接続された制御器107により設定され、設定した値となるように動作が調節される。制御器107は、その内部に、パルス出力時のパルス周波数およびデューティ比に応じたトリガー信号を生成するパルス発生器108を備えている。
【0019】
ソース電源103およびバイアス電源105は、各々が制御部121,131と発振部122,132、分配部123,133、増幅部124,134、合成部125,135、高周波検出部116,136を備えて構成されている。ソース電源103およびバイアス電源105は、制御器107から入力される設定に応じて制御部121,131においてそれぞれが出力する高周波電力を調節する。
【0020】
すなわち、ソース電源103およびバイアス電源105各々において、水晶発振回路等の発振部122,132から出力される高周波電力は、分配部123,133で分岐され増幅部124,134で増幅された後、合成部125,135にて合成され、ソース電源103およびバイアス電源105から出力される。制御部121,131には、高周波検出部126,136において検出された出力値がフィードバックされ、当該出力値と設定とを比較して設定値となるよう出力が調節される。本実施例では、このように出力をフィードバック制御するため、高周波電力の出力は制御器107からの指令信号を受信して発振部122,132が出力した高周波電力がそれぞれの電源から出力されるまでに数msから数十msの時間を要する。
【0021】
また、ソース電源103及びバイアス電源105は、パルス発生器108から出力されるパルス周波数100Hz〜10kHz、デューティ比10〜90%の外部トリガーパルス信号に同期して、パルス出力する機能を有するものである。さらに本実施例では、ソース電源103およびバイアス電源105の何れかもしくは両方が高周波電力をパルス出力する場合には、ソース電源103およびバイアス電源105の両者がパルス状に出力する(出力がオンにされる)タイミングに同期した外部トリガーパルス信号がソース整合器104およびバイアス整合器106へ入力される。
【0022】
本実施例のソース整合器104およびバイアス整合器106は、ウエハ114の処理中に予め定められた周期毎の時刻またはタイミングで検出された高周波電力の大きさや位相差等のパラメータに基づいて動作する。そして、これら整合器の各々は、パルス発生器108から入力される外部トリガーパルス信号に応じサンプルホールド動作を行う。
【0023】
すなわち、ソース整合器104およびバイアス整合器106は、ソース電源103およびバイアス電源105の各々が所定の周期及び期間または出力のオンとオフとの期間の比(デューティ比)でパルス状に高周波電力の出力のオンとオフとを繰り返している場合に、両方の電源からのパルス状の出力がオン(出力されている)期間中の任意のタイミングでのみ、進行波の電力の大きさPf、反射波電力の大きさPr、進行波電力の電圧と電流の位相差θをサンプリングして是等を検出する。また、これらの整合器は、ソース電源103およびバイアス電源105の何れかが出力をしていないタイミングでは、図示しない記憶装置内に記憶されたその直前のタイミングであって両方の電源からのパルス状の出力がオン(出力されている)期間中のタイミングにサンプリングされたパラメータの値を保持する(ホールド)する。このようなサンプルホールド動作を行うことで、ソース整合器104およびバイアス整合器106は、ソース電源103およびバイアス電源105の両方が出力しているタイミングのプラズマ負荷インピーダンス状態に対して、断続的に整合動作を続けることができる。
【0024】
また、ソース電源103およびバイアス電源105の何れかが出力をしていないタイミングで、図示しない記憶装置内に記憶され保持されたパラメータの値を読み出して用いても良い。例えば、このような何れかが出力をしていないタイミングで、何れかの電源の整合の動作をする場合に、対応する整合器がこのホールドされたデータを用いて当該整合に必要な負荷インピーダンスを算出あるいは算出してこれに基づいて整合の動作を行っても良い。
【0025】
エッチング処理対象のウエハ114は、次の過程を経て処理される。まず、真空容器側壁に接続された別の真空容器であって内部の搬送室内に配置されたロボットのアームに載せられたウエハ114が当該アームの伸縮、回転により当該搬送室から処理室101内に搬送されて試料台111に受け渡されてその上面に載せられる。試料台111上面を構成する誘電体膜内に配置された図示しない静電吸着用の電極に印加された直流電力によって形成された静電気力を用いてウエハ114が試料台111上面に吸着され保持された状態で、ウエハ114の裏面にHe等熱伝達用のガスが導入された状態で、シャワープレート110のガス導入孔から処理室101内にウエハ114に向けてエッチング用のガスが導入される。
【0026】
真空ポンプの動作による排気の流量、速度とシャワープレート110からの処理用のガスの流量、速度とのバランスにより、処理室101内の圧力が処理に適した所定の圧力または真空度にされると、ソレノイドコイル113に直流電流が供給されて処理室101内に磁界が形成されるとともに平面アンテナ109にソース電源103から所定の周波数の高周波電力が供給されて当該平面アンテナ109から処理室101内に電界が供給される。これら電界、磁界の相互作用にほって、電子サイクロトロン共鳴(Electron cyclotron resonance:ECR)が生起され処理用のガスの原子または分子が励起され高密度のプラズマ115が処理室101内のシャワープレート110または平面アンテナ109と試料台110との間の空間内に生成される。
【0027】
プラズマ115が形成された状態で、試料台111内の電極にバイアス電源105より高周波電力が供給されることで、ウエハ114上面上方にバイアス電位が形成される。当該バイアス電位とプラズマ115の電位との電位差に応じてプラズマ115中のイオン等の荷電粒子がエネルギーを制御されながら、ウエハ114上面に誘引されて予め形成されたレジスト製のマスクを含む複数の膜層から構成された膜構造の処理対象の膜層に衝突し、当該膜層表面のラジカル等活性を有する粒子による当該表面の材料との化学的または物理的反応を促進してエッチング処理が進行する。
【0028】
本実施例の処理では、上記のように、プラズマ115を形成するソース電源103またはバイアス電位形成用のバイアス電源105の各々から平面アンテナ109、試料台111(内の電極)に供給される各々異なる周波数、波長の高周波電力の少なくとも何れか一方は、所定の周期、期間、またはデューティ比でパルス状に出力がオン、オフが繰り返される。当該オンオフの繰り返しが制御されることに応じてウエハ114表面の処理対象の膜層の処理の進行が所望の処理の速度や方向となるように制御される。このことにより、処理後に得られる膜層の形状、所謂加工形状を所期のものに近付け、加工の精度を向上させることができる。
【0029】
このようなエッチング処理を所定の時間実施し、図示しない処理室内からの光の検出器等を用いた判定器により処理の終点が判定されると、バイアス形成用の高周波電力が停止されるとともに電界または磁界の供給が停止されてプラズマ115が消火されて処理が終了する。この後、ロボットが駆動されて搬送室からアームを伸長して処理室101内に進入した当該アームに処理済みのウエハ114が試料台111から受け渡されて処理室101外に搬出され、未処理のウエハ114が在る場合にはこが試料台111上に載せられる。未処理のウエハ114が存在しない場合には、当該処理室101での処理の運転が一時的に停止する。
【0030】
図2〜5は、図1の実施例に係るプラズマ処理装置の動作の流れを示すタイミングチャートである。特に、ソース電源103およびバイアス電源105のパルス出力パターンを示したタイミングチャートである。これらの図において、ソース電源103およびバイアス電源105の進行波電力ならびに反射波電力に併せて、パルス発生器108よりソース整合器104およびバイアス整合器106へ入力される外部トリガーパルス信号とそれぞれの整合器のサンプルホールド動作を記載する。
【0031】
図2は、ソース電源103からの高周波電力はパルス状にオンオフされるものではなく正弦波状の波形を連続的に出力(CW出力)させると共に、バイアス電源105からの出力はパルス状にオンオフを所定の周期、期間またはデューティ比で出力(パルス出力)させた場合のタイミングチャートを示している。本図において、ソース電源103の進行波電力201、反射波電力202、ソース整合器104のサンプルホールド動作203、バイアス電源105の進行波電力204、反射波電力205、バイアス整合器106のサンプルホールド動作206の時間変化がそれぞれ示されている。
【0032】
本例のソース整合器104及びバイアス整合器106は、サンプルホールド動作203およびサンプルホールド動作206の各々において図中の任意のSamplingの状態となる期間中のタイミングにおいて、進行波の電力の大きさPf、反射波電力の大きさPr、進行波電力の電圧と電流の位相差θ等の整合の動作に用いるパラメータを検出してこれらの値に基づいて整合を行い、Holdとなる期間中のタイミングではSamplingの状態でのタイミングで検出した値を維持しておく。本実施例では、バイアス電源105のみがパルス状に出力することから、サンプルホールド動作203およびサンプルホールド動作206の各々においてSampling,Holdにされる開始と終了とのタイミング及び期間とは同じにされ同期している。
【0033】
このようなサンプルホールド動作は、バイアス電源105からのパルス状の電力の進行波204のオンの始終のタイミングと期間とが同期して実施されることになり、当該パルス進行波のオンの期間において大きさPf、反射波電力の大きさPr、進行波電力の電圧と電流の位相差θを取得することで、ソース整合器104およびバイアス整合器106は、ソース電源103およびバイアス電源105の両方が出力している際のプラズマ負荷インピーダンス条件に対して安定に整合動作を行うことができる。尚、このサンプルホールド動作は、パルス発生器108よりソース整合器104およびバイアス整合器106へ入力される外部トリガーパルス信号に基づき行われる。
【0034】
一方で、バイアス電源105が出力していないオフの期間では、ソース電源103の反射波電力202が生じる。しかし、ソース整合器104はバイアス電源105が出力しているタイミングのプラズマを含む負荷インピーダンスに対して適切な整合状態を保持するため、ソース電源103の反射波電力202も変動が抑制され、再現性の高いエッチング処理を行うことができる。
【0035】
図3は、図1に示す実施例において、ソース電源103およびバイアス電源105からの高周波電力を同一のタイミングとパルス幅および周期とでパルス状に出力させた場合のタイミングチャートである。本図において、ソース電源103の進行波電力301、反射波電力302、ソース整合器104のサンプルホールド動作303、バイアス電源105の進行波電力304、反射波電力305、バイアス整合器106のサンプルホールド動作306の時間変化をそれぞれ示している。
【0036】
本図においては、図2と異なり、バイアス電源105が出力していないオフの期間では、ソース電源103の反射波電力302は0Wで一定にされて生じない。一方で、ソース電源の進行波電力301、ソース整合器104のサンプルホールド動作303、バイアス電源105の進行波電力304、反射波電力305、バイアス整合器106のサンプルホールド動作306の時間変化は、図2のものと同様にされている。本図において、ソース整合器104のサンプルホールド動作303はバイアス整合器106のサンプルホールド動作306と同様に、サンプルホールド動作303およびサンプルホールド動作306の各々において図中の任意のSamplingの状態となる期間中のタイミングにおいて、各進行波の電力の大きさPf、反射波電力の大きさPr、進行波電力の電圧と電流の位相差θ等の整合の動作に用いるパラメータを検出してこれらの値に基づいて整合を行い、Holdとなる期間中のタイミングではSamplingの状態でのタイミングで検出した値を維持しておき、当該値に基づいた整合が実施される。
【0037】
図4は、図1に示す実施例において、ソース電源103およびバイアス電源105からの高周波電力を異なるタイミングとパルス幅および周期とでパルス状に出力させた場合のタイミングチャートである。本例では、ソース電源103とよりもバイアス電源105のパルス幅を前後に長くして同一の繰り返し周期でパルス出力させた場合のタイミングチャートであり、ソース電源103の進行波電力401、反射波電力402、ソース整合器104のサンプルホールド動作403、バイアス電源105の進行波電力404、反射波電力405、バイアス整合器106のサンプルホールド動作406の時間変化をそれぞれ示している。
【0038】
図5は、図1に示す実施例において、ソース電源103およびバイアス電源105からの高周波電力を異なるタイミングとパルス幅および周期とでパルス状に出力させた場合のタイミングチャートである。本例では、ソース電源103よりもバイアス電源105のパルス幅を前後に長くし、ソース電源103に対してバイアス電源105の繰り返し周波数を1/2倍としてパルス出力させた場合のタイミングチャートであり、ソース電源103の進行波電力501、反射波電力502、ソース整合器104のサンプルホールド動作503、バイアス電源105の進行波電力504、反射波電力505、バイアス整合器106のサンプルホールド動作506の時間変化をそれぞれ示している。
【0039】
図3に示した例と同様に、図4,5においても、ソース電源103およびバイアス電源105のパルス状の出力の両方がオンにされている期間においてソース整合器104のサンプルホールド動作503、バイアス整合器106のサンプルホールド動作506の両者は、Samplingの動作にされており、その期間が合致している。そして、これらの期間のタイミングにおいて、各進行波の電力の大きさPf、反射波電力の大きさPr、進行波電力の電圧と電流の位相差θ等の整合の動作に用いるパラメータを検出してこれらの値に基づいて負荷インピーダンスを検出して各電源の整合を行い、Holdとなる期間中のタイミングではSamplingの状態でのタイミングで検出した値を維持しておき、当該値に基づいた整合が実施される。
【0040】
上記の例ではSampling期間の前または後の期間において、ソース電源103の反射波電力502、バイアス電源105の反射波電力405,505には値がパルス状に生起している。本実施例では、このような反射波の電力が生じる条件であっても、プラズマを含む負荷インピーダンスに対してソース整合器104およびバイアス整合器106は安定に整合動作を行うことができる。また、図4および図5においては、一方の高周波電源のみが出力するタイミングにおいて反射波が生じるものの、Holding期間での動作により、図2と同様に反射波の値が抑えられ、再現性の高いエッチング処理を行うことができる。
【0041】
以上のように、上記の実施例では、ソース電源103およびバイアス電源105のうちいずれかもしくは両方をパルス出力させエッチング処理を行う場合に、ソース電源103およびバイアス電源105が出力しているタイミングが、サンプルホールド動作の信号として外部からソース整合器104およびバイアス整合器106に送信され伝達される。このタイミングに基づいて、両方の電源が出力している期間中のタイミングで必要なパラメータを検出して整合すべき1つの負荷インピーダンス条件を検出することで、安定な整合の動作が実施され、処理の結果としての加工形状のバラつきが低減され処理の歩留まりが向上する。
【0042】
また、ソース電源103およびバイアス電源105のパルス出力が高い電力と低い電力の2つ電力レベルを交互に繰り返すパワー変調であっても、同様の整合動作の制御方法を適用できる。
【0043】
[変形例1]
本発明の第1の実施例では、ソース電源103およびバイアス電源105のうちいずれかもしくは両方をパルス出力させエッチング処理を行う際に、両方の高周波電源が出力しているタイミングを、外部から整合器へ入力していた。これに対し、次に示す変形例では、外部からトリガー信号を入力することなく、ソース整合器104およびバイアス整合器106自体が、両方の高周波電源が出力しているタイミングを認識し、サンプルホールド動作を行う構成の例を説明する。
【0044】
図1および図6を用いて上記実施例の変形例を説明する。本例に係るプラズマ処理装置の構成の概略は、図1に示す実施例と同様であり、これに示される本例と同等の構成については説明を省略する。図6は、本例に係るプラズマ処理装置が備える整合器の構成の概略を模式的に示すブロック図である。本図は、特に、図1の装置のソース整合器104或いはバイアス整合器106として用いられる整合器であって、これらソース整合器104或いはバイアス整合器106の構成にRFセンサを追加することで、各々が各々の整合の対象となる電源から出力される高周波電力だけでなく、他方の電源の高周波電力の出力の有無を監視できる構成を有している。
【0045】
図6において、ソース整合器104について説明しているがバイアス整合器106についても同等の構成を備えることができる。本図において、ソース整合器104は、入力端子601、RFセンサ602、第1の可変コンデンサ603、コイル604、第2の可変コンデンサ605、カットフィルタ606、出力端子607、制御部608、第1の可変コンデンサ制御用ステッピングモータ609、第2の可変コンデンサ制御用ステッピングモータ610、RFセンサ611を備えて構成されている。
【0046】
ソース整合器104は、ウエハ114の処理中にRFセンサ602における進行波電力Pfと反射波電力Pr、進行波電力の電圧と電流の位相差θを検出し、制御部608での演算結果に応じて第1の可変コンデンサ制御用ステッピングモータ609および第2の可変コンデンサ制御用ステッピングモータ610を駆動する。この動作により、ソース整合器104の入力端子601から見た負荷インピーダンスが、ソース電源103(バイアス電源105)の特性インピーダンスと合致するようにソース電源103からの高周波電力についての整合が実施される。
【0047】
また、ソース整合器104の出力端側には、バイアス電源105(ソース電源103)より出力された高周波電力を遮断するため、カットフィルタ606が配置されている。即ち、バイアス電源105(ソース電源103)より出力された高周波電力は、ソース整合器104内のカットフィルタ606により、アースへ流入している。このカットフィルタ606とアース間に、RFセンサ611を設け、制御部608へ信号を入力することで、制御部608では、両方の高周波電源が出力しているタイミングを認識することができる。
【0048】
このようにして、両方の高周波電源が出力しているタイミングをソース整合器104およびバイアス整合器106自体が認識できるようにすることで、外部からトリガー信号を入力せずとも、第1の実施例と同様のサンプルホールド動作により整合動作を行うことができる。第1の実施例と異なり、実際に出力されている高周波電力によりタイミングを規定できるため、高周波電力の立ち上がり時間や立下り時間によるタイミングのズレが無く、精度よくサンプルホールド動作を行うことができる。
【0049】
尚、図6に示すソース整合器104およびバイアス整合器106の回路構成と異なる整合回路であっても同様の制御方式を適用可能である。
【実施例2】
【0050】
上記変形例では、ソース整合器104およびバイアス整合器106にRFセンサ611を追加することで、整合対象となる高周波電力だけでなく、他方の高周波電力の出力の有無を認識させ、外部からトリガー信号を入力することなくサンプルホールド動作を行う制御方法を述べた。これに対し、以下に説明する実施例では、RFセンサ611を追加することなくソース電源103およびバイアス電源105が出力されているタイミングを認識し、制御する方法を説明する。尚、第2の実施例は、バイアス電源105が出力する高周波電力よりも周波数の高いソース電源103を対象とする整合器であるソース整合器104に限る。
【0051】
図1および図7,8を用いて本発明の第2の実施例を説明する。本発明の第2の実施例に係るプラズマ処理装置は、第1の実施例と同様であり、図1に示す通りである。また、図7は、本発明の第2の実施例に係るソース整合器104の回路構成図であり、図6の第1の変形例に係る整合器の回路構成からRFセンサ611を除いたものである。
【0052】
例えば、周波数200MHzのソース電源103と周波数4MHzのバイアス電源105を用いた場合、図7に示すソース整合器104のRFセンサ702において観測される反射波電力Prには、200MHzの周波数成分に加え、200MHz±4MHz×n(nは自然数)のサイドバンドが観測される。図8は、ソース整合器104のRFセンサ602において観測される反射波電力Prの周波数スペクトルの実測結果である。
【0053】
図8に示す通り、200MHzを中心として、その両側にサイドバンドが観測されている。このサイドバンドは、ソース電源104およびバイアス電源105の両方が出力しているタイミングしか観測されないため、196MHzもしくは204MHzの信号レベルをソース整合器104の制御部708にて監視することで、ソース整合器104がサンプルホールド動作するタイミングを規定することができ、第1の実施例と同様の整合動作を行うことができる。
【0054】
尚、図7に示すソース整合器104の回路構成と異なる整合回路であっても同様の制御方式を適用可能である。また、例で述べたソース電源103ならびにバイアス電源105の周波数と異なる場合でも、ソース整合器104のRFセンサ702が、観測されるソース電源103の周波数とサイドバンドとを分けて認識できる周波数分解能であれば同様の制御方式を適用可能である。

【符号の説明】
【0055】
101…処理室
102…ターボ分子ポンプ
103…ソース電源
104…ソース整合器
105…バイアス電源
106…バイアス整合器
107…制御器
108…パルス発生器
109…平面アンテナ
110…シャワープレート
111…試料台
112…ガス導入口
113…ソレノイドコイル
114…ウエハ
115…プラズマ
121…ソース電源の制御部
122…ソース電源の発振部
123…ソース電源の分配部
124…ソース電源の増幅部
125…ソース電源の合成部
126…ソース電源の高周波検出部
131…バイアス電源の制御部
132…バイアス電源の発振部
133…バイアス電源の分配部
134…バイアス電源の増幅部
135…バイアス電源の合成部
136…バイアス電源の高周波検出部
601…整合器の入力端子
602…整合器内の整合対象である高周波電力用RFセンサ
603…整合器の第1の可変コンデンサ
604…整合器のコイル
605…整合器の第2の可変コンデンサ
606…整合器のカットフィルタ
607…整合器の出力端子
608…整合器の制御部
609…整合器の第1の可変コンデンサ制御用ステッピングモータ
610…整合器の第2の可変コンデンサ制御用ステッピングモータ
611…整合器内の整合対象でない高周波電力用RFセンサ
701…整合器の入力端子
702…整合器内の整合対象である高周波電力用RFセンサ
703…整合器の第1の可変コンデンサ
704…整合器のコイル
705…整合器の第2の可変コンデンサ
706…整合器のカットフィルタ
707…整合器の出力端子
708…整合器の制御部
709…整合器の第1の可変コンデンサ制御用ステッピングモータ
710…整合器の第2の可変コンデンサ制御用ステッピングモータ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8