(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6602703
(24)【登録日】2019年10月18日
(45)【発行日】2019年11月6日
(54)【発明の名称】保護部材形成装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/683 20060101AFI20191028BHJP
B05C 11/02 20060101ALI20191028BHJP
B05C 11/10 20060101ALI20191028BHJP
B05C 5/02 20060101ALI20191028BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20191028BHJP
【FI】
H01L21/68 N
B05C11/02
B05C11/10
B05C5/02
H01L21/304 622J
【請求項の数】1
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-52160(P2016-52160)
(22)【出願日】2016年3月16日
(65)【公開番号】特開2017-168616(P2017-168616A)
(43)【公開日】2017年9月21日
【審査請求日】2019年1月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110001014
【氏名又は名称】特許業務法人東京アルパ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】久保 徹雄
(72)【発明者】
【氏名】桑名 一孝
【審査官】
山口 大志
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−175647(JP,A)
【文献】
特開2014−114348(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/683
B05C 5/02
B05C 11/02
B05C 11/10
H01L 21/304
B05C 9/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウエーハの一方の面の全面に液状樹脂を押し拡げて硬化させ保護部材を形成する保護部材形成装置であって、
フィルムを保持するフィルム保持面を有するステージと、
該ステージで保持した該フィルムの上に所定量の該液状樹脂を滴下させる樹脂供給手段と、
該ステージの該フィルム保持面に対向してウエーハの他方の面を吸引保持するウエーハ保持面を有する保持手段と、
該保持手段が保持するウエーハの一方の面の中心にウエーハに付着する程度の該液状樹脂を付着させる樹脂付着手段と、
該保持手段を該ステージに向けて下降させ該保持手段が保持するウエーハで該フィルムの上に滴下された該液状樹脂を押し拡げる拡張手段と、
該拡張手段で押し拡げられた該液状樹脂を硬化させる硬化手段と、を備え、
該樹脂付着手段は、該液状樹脂を貯める凹部を有し該凹部に貯められた該液状樹脂をウエーハの一方の面に付着させる付着部と、
該付着部に該液状樹脂を供給する供給ボックスと、
該供給ボックスと該付着部とを連通させる第1の連通路と、
該第1の連通路に配設され該供給ボックスから該付着部に向かう方向に該液状樹脂の流れを可能にし逆方向の該液状樹脂の流れを遮断する第1の逆止弁と、
該供給ボックスと液状樹脂供給源とを連通させる第2の連通路と、
該第2の連通路に配設され該液状樹脂供給源から該供給ボックスに向かう方向に該液状樹脂の流れを可能にし逆方向の該液状樹脂の流れを遮断する第2の逆止弁と、を備え、
該供給ボックスの側壁には、エアを貯めるエアタンクと、
該エアタンクとエア供給源とを連通させる第3の連通路と、
該第3の連通路に配設され該エアタンクにエアの供給を行うとともに該エアタンクからエアの排出を行うバルブとを備え、
該エアタンクにエアを供給し該エアタンクを膨張させ該供給ボックスの該側壁の内側を該供給ボックスの内部に向けて反らせ該内部の容積を小さくすることによりウエーハに付着する程度の該液状樹脂を該付着部に供給して該保持手段が保持するウエーハの一方の面の中心に該液状樹脂を付着させた後、該拡張手段で該フィルムの上に滴下された液状樹脂を押し拡げて保護部材を形成することを特徴とする保護部材形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウエーハの一方の面の全面に保護部材を形成する保護部材形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ウエーハなどの製造工程においては、円柱状のインゴットをワイヤーソーによってスライスして円形板状のウエーハを形成するときに、ウエーハに反りやうねりが形成されることがある。反りやうねりを除去するために、例えば、ウエーハの一方の面に樹脂層からなる保護部材を形成して、ウエーハの他方の面を研削してウエーハの反りやうねりを除去している。
【0003】
ウエーハの一方の面に保護部材を形成するためには、例えば、ステージ上に載置されたフィルムの上に液状樹脂を滴下し、ステージの上方で保持手段に保持されたウエーハを、その一方の面側から透明フィルムに対して上方から押し付けてウエーハの中心から外周側に向けて液状樹脂を拡張させ該一方の面の全域に液状樹脂をいきわたらせた後、この液状樹脂に紫外線を照射することにより液状樹脂を硬化させる方法がある(例えば、下記の特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−146872号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記したようなフィルムの上において液溜まりとなった液状樹脂には、水のような液体とは異なり表面張力が弱く働くため、該液溜まりの中心部分にわずかな凹みが形成される。液状樹脂の中心部分に凹みがある状態でウエーハの一方の面で液状樹脂の上から押し付けると、液溜まりの凹み部分に空気が入り込んで、液状樹脂を硬化させても液状樹脂内に気泡ができてしまう。このような液状樹脂で一方の面が保護されたウエーハの他方の面を研削しても、研削後のウエーハに凸状部分ができてしまい、ウエーハを高精度に平面状に研削加工することができない。かかる問題を解決するために、微量の液状樹脂をウエーハの中心に塗布してから、ウエーハの一方の面で液状樹脂を拡張させることが考えられているが、微量の液状樹脂を毎回同量となるように調整してウエーハに供給することが困難となっている。
【0006】
本発明は、上記の事情にかんがみてなされたもので、ウエーハの中心に付着させる液状樹脂を毎回同量となるように調整できるようにすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、ウエーハの一方の面の全面に液状樹脂を押し拡げて硬化させ保護部材を形成する保護部材形成装置であって、フィルムを保持するフィルム保持面を有するステージと、該ステージで保持した該フィルムの上に所定量の該液状樹脂を滴下させる樹脂供給手段と、
該ステージの該フィルム保持面に対向してウエーハの他方の面を吸引保持するウエーハ保持面を有する保持手段と、該保持手段が保持するウエーハの一方の面の中心に該ウエーハに付着する程度の該液状樹脂を付着させる樹脂付着手段と、該保持手段を該ステージに向けて下降させ該保持手段が保持するウエーハで該フィルムの上に滴下された該液状樹脂を押し拡げる拡張手段と、該拡張手段で押し拡げられた該液状樹脂を硬化させる硬化手段と、を備え、該樹脂付着手段は、該液状樹脂を貯める凹部を有し該凹部に貯められた該液状樹脂をウエーハの一方の面に付着させる付着部と、該付着部に該液状樹脂を供給する供給ボックスと、該供給ボックスと該付着部とを連通させる第1の連通路と、該第1の連通路に配設され該供給ボックスから該付着部に向かう方向に該液状樹脂の流れを可能にし逆方向の該液状樹脂の流れを遮断する第1の逆止弁と、該供給ボックスと液状樹脂供給源とを連通させる第2の連通路と、該第2の連通路に配設され該液状樹脂供給源から該供給ボックスに向かう方向に該液状樹脂の流れを可能にし逆方向の該液状樹脂の流れを遮断する第2の逆止弁と、を備え、該供給ボックスの側壁には、エアを貯めるエアタンクと、該エアタンクとエア供給源とを連通させる第3の連通路と、該第3の連通路に配設され該エアタンクにエアの供給を行うとともに該エアタンクからエアの排出を行うバルブとを備え、該エアタンクにエアを供給し該エアタンクを膨張させ該供給ボックスの該側壁の内側を該供給ボックスの内部に向けて反らせ該内部の容積を小さくすることによりウエーハに付着する程度の該液状樹脂を該付着部に供給して該保持手段が保持するウエーハの一方の面の中心に該液状樹脂を付着させた後、該拡張手段で該フィルムの上に滴下された液状樹脂を押し拡げて保護部材を形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明にかかる保護部材形成装置は、ステージで保持したフィルムの上に所定量の液状樹脂を滴下させる樹脂供給手段と、ステージのフィルム保持面に対向してウエーハの他方の面を吸引保持するウエーハ保持面を有する保持手段と、保持手段が保持するウエーハの一方の面の中心にウエーハに付着する程度の液状樹脂を付着させる樹脂付着手段と、保持手段をステージに向けて下降させ保持手段が保持するウエーハでフィルムの上に滴下された液状樹脂を押し拡げる拡張手段と、拡張手段で押し拡げられた液状樹脂を硬化させる硬化手段とを備え、樹脂付着手段は、液状樹脂を貯める凹部を有し凹部に貯められた液状樹脂をウエーハの一方の面に付着させる付着部と、付着部に液状樹脂を供給する供給ボックスと、供給ボックスと付着部とを連通させる第1の連通路と、第1の連通路に配設され供給ボックスから付着部に向かう方向に液状樹脂の流れを可能にし逆方向の液状樹脂の流れを遮断する第1の逆止弁と、供給ボックスと液状樹脂供給源とを連通させる第2の連通路と、第2の連通路に配設され液状樹脂供給源から供給ボックスに向かう方向に液状樹脂の流れを可能にし逆方向の液状樹脂の流れを遮断する第2の逆止弁と、を備え、供給ボックスの側壁には、エアを貯めるエアタンクと、エアタンクとエア供給源とを連通させる第3の連通路と、エアタンクにエアの供給を行うとともにエアタンクからエアの排出を行うバルブとを備えたため、エアタンクにエアを供給しエアタンクを膨張させ供給ボックスの側壁の内側を供給ボックスの内部に向けて反らせ該内部の容積を小さくすることで、ウエーハに付着する程度の液状樹脂を付着部に供給し、ウエーハの中心に液状樹脂を付着させてから、拡張手段によって、フィルムの上に滴下された液状樹脂を押し拡げて保護部材をウエーハの一方の面に形成することができ、保護部材に気泡が混入するのを防ぐことができる。
このように、エアタンクの膨張にともない供給ボックスを変形させて、供給ボックスの内部の容積を変化させることができるため、毎回少量かつ同量の液状樹脂を付着部に供給することができる。したがって、液状樹脂を付着部に供給しすぎることはなく、ウエーハの一方の面において、所望の厚みで、かつ、気泡のない保護部材を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】保護部材形成装置の構成を示す斜視図である。
【
図3】供給ボックスから付着部に向けて所望量の液状樹脂を供給する状態を示す断面図である。
【
図4】保護部材形成装置の動作例を示す側面側からみた断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1に示す保護部材形成装置1は、ウエーハWの一方の面に液状樹脂を押し拡げて硬化させ保護部材を形成する装置の一例であり、筐体100と、筐体100内に配設された装置ベース101と、装置ベース101において立設されたコラム102と、装置ベース101に隣接して配設された支持ベース103と、筐体100の後端側に連結され上下方向に2段の収容スペース2a,2bを有するカセット収容本体104とを備える。上段の収容スペース2aには、保護部材が形成される前のウエーハWが複数収容されたカセット3aが配設され、下段の収容スペース2bには、保護部材が形成されたウエーハWが複数収容されるカセット3bが配設されている。
【0011】
コラム102のY軸方向後方には、第1支持台6aと、第1支持台6aの下方側に位置する第2支持台6bとが連結されている。第1支持台6aには、保護部材が形成される前のウエーハWの中心位置及び向きを検出するウエーハ検出部7が配設されている。第2支持台6bには、図示していないが、ウエーハWに形成された保護部材をウエーハWの外形に沿って切断するフィルムカッターが配設されている。
【0012】
カセット収容本体104とウエーハ検出部7及びフィルムカッターとの間には、カセット3a,3bに対してウエーハWの搬出及び搬入を行う第1ウエーハ搬送手段4が配設されている。第1ウエーハ搬送手段4は、保護部材が形成される前のウエーハWをカセット3aから搬出して第1支持台6aに搬入するとともに、保護部材形成済みのウエーハWを第2支持台6bから搬出してカセット3bに搬入することができる。
【0013】
装置ベース101には、上面に樹脂が滴下されるフィルム12がロール状に巻かれたロール部11を有するフィルム供給手段10と、フィルム12を保持する円形のフィルム保持面21を有するステージ20とを備える。フィルム保持面21の外周にはリング状の凸部22が形成されている。この凸部22の内側の領域に液状樹脂を溜めて、凸部22の外側に液状樹脂が飛散するのを防止する構成となっている。フィルム保持面21は、例えば石英ガラスによって形成されている。図示していないが、フィルム保持面21には、吸引源に接続された複数の吸引孔が形成され、フィルム保持面21に載置されたフィルム12を下方から吸引保持する構成となっている。
【0014】
支持ベース103には、フィルム載置手段30が配設されている。フィルム載置手段30は、Y軸方向と交差する方向(X軸方向)に延在するアーム部31と、アーム部31に取り付けられたクランプ部32とを備える。そして、クランプ部32は、ロール部11に巻かれたフィルム12をクランプしてY軸方向に引っ張り、ステージ20に載置することができる。
【0015】
保護部材形成装置1は、ステージ20が吸引保持するフィルム12の上に所定量の液状樹脂を滴下させる樹脂供給手段40と、ステージ20のフィルム保持面21に対向してウエーハWの他方の面を吸引保持する保持手段60と、保持手段60が保持するウエーハWの一方の面の中心にウエーハWに付着する程度の液状樹脂を付着させる樹脂付着手段50と、保持手段60をステージ20に向けて下降させ保持手段60が保持するウエーハWでフィルム12の上に滴下された液状樹脂を押し拡げる拡張手段70と、拡張手段70で押し拡げられた液状樹脂を硬化させる硬化手段80とを備える。硬化手段80は、例えば紫外線を照射するUVランプを有している。
【0016】
樹脂供給手段40は、樹脂供給ノズル41と、樹脂供給ノズル41に液状樹脂を送出するディスペンサ42と、樹脂供給ノズル41とディスペンサ42とを接続する接続管43とを備える。樹脂供給ノズル41は、ステージ20のフィルム保持面21に向けて液状樹脂を供給する供給口41aを有している。ディスペンサ42は、図示しない樹脂供給源に接続されている。樹脂供給ノズル41は、旋回可能となっており、供給口41aをステージ20の上方側に位置づけることができる。
【0017】
拡張手段70は、Z軸方向に延在するボールネジ71と、ボールネジ71の一端に接続されたモータ72と、ボールネジ71と平行に延在する一対のガイドレール73と、一方の面に保持手段60が連結された昇降板74とを備える。一対のガイドレール73には、昇降板74の他方の面が摺接し、昇降板74の他方の面側に形成されたナットにはボールネジ71が螺合している。拡張手段70は、モータ72によって駆動されてボールネジ71が回動すると、一対のガイドレール73に沿って昇降板74をZ軸方向に移動させることにより、ステージ20のフィルム保持面21に対して垂直方向(Z軸方向)に保持手段60を昇降させることができる。
【0018】
図2に示すように、樹脂付着手段50は、液状樹脂8を貯める凹部52を有し凹部52に貯められた液状樹脂8をウエーハWの一方の面に付着させる付着部51と、付着部51に液状樹脂8を供給する供給ボックス53と、供給ボックス53と付着部51とを連通させる第1の連通路54aと、第1の連通路54aに配設され供給ボックス53から付着部51に向かう方向に液状樹脂8の流れを可能にし逆方向の液状樹脂8の流れを遮断する第1の逆止弁55aと、供給ボックス53と液状樹脂供給源である液状樹脂タンク500とを連通させる第2の連通路54bと、第2の連通路54bに配設され液状樹脂タンク500から供給ボックス53に向かう方向に液状樹脂の流れを可能にし逆方向の液状樹脂8の流れを遮断する第2の逆止弁55bとを備える。
【0019】
付着部51は、
図1に示した樹脂供給ノズル41の上方側に配設されている。付着部51の先端に凹部52が形成されており、第1の連通路54aが凹部52に連通している。この凹部52には、ウエーハWに付着する程度の少ない量の液状樹脂を貯めることができる。付着部51は、旋回可能となっており、液状樹脂を付着させる所望の位置に凹部52を移動させることができる。なお、本実施形態では、付着部51の先端に凹部52を形成したが、この構成に限られず、付着部51の全面を平面状に形成し、先端側に液状樹脂8を載せる構成でもよい。
【0020】
供給ボックス53は、液体を貯める内部空間を有する貯留部530を備える。貯留部530には、第1の連通路54aに連通する第1の連通口532と、第2の連通路54bに連通する第2の連通口533とが形成されている。
図2の例では、貯留部530の内部空間に液状樹脂タンク500から第2の連通路54bを通じて送出された液状樹脂8が充填されている。液状樹脂タンク500から供給ボックス53へ液状樹脂8を送出するときは、第2の逆止弁55bによって、供給ボックス53側から液状樹脂タンク500側へ液状樹脂8が逆流することが防止される。液状樹脂8としては、例えば、紫外線硬化樹脂を使用する。なお、供給ボックス53は、例えば変形可能な弾性部材で構成される。
【0021】
供給ボックス53の側壁531には、エアを貯めるエアタンク56と、エアタンク56とエア供給源58とを連通させる第3の連通路54cと、第3の連通路54cに連通する第3の連通口534と、第3の連通路54cに配設されエアタンク56にエアの供給を行うとともにエアタンク56からエアの排出を行うバルブ57とを備える。
【0022】
エアタンク56は、供給ボックス53の側壁531の内部に埋設され、エアタンク56の内部に所定量のエアが貯留されることで膨張する構成となっている。エアタンク56が膨張すると、
図3に示すように、エアタンク56の膨張にともない側壁531の内壁面531aが貯留部530の内部空間に向けて反るため、貯留部530の内部空間の容積が小さくなり、容積の減少分に相当する所望の量の液状樹脂8を第1の連通口532から第1の連通路54aに送出して付着部51の凹部52に供給することができる。供給ボックス53から付着部51へ液状樹脂8を供給するときは、第1の逆止弁55aによって、付着部51側から供給ボックス53側へ液状樹脂8が逆流することが防止される。
【0023】
また、側壁531の内壁面531bには、鉛直方向と直交する方向に延在する支持部材59が固定されている。この支持部材59の先端部59aは、エアタンク56の側面560に向いている。これにより、
図3に示すように、エアタンク56の膨張にともない変形する側壁531の内壁面531aが、支持部材59の先端部59aに接触することで、側壁531が反りすぎないように抑えることができる。
【0024】
図4に示すように、保持手段60は、円板状のホイール61と、ウエーハWを吸引保持するウエーハ保持面62aを有する保持部62とを備える。保持部62は、例えば、ポーラス部材により形成されている。保持部62には、図示しない吸引源が接続されており、ウエーハ保持面62aでウエーハWを吸引保持することができる。
【0025】
次に、保護部材形成装置1の動作例について説明する。本実施形態に示すウエーハWは、円形板状の被加工物の一例であって、例えば、シリコンウエーハである。まず、
図1に示した第1ウエーハ搬送手段4により、カセット3aから保護部材が形成される前のウエーハWを1枚取り出して、第1支持台6aに搬送する。ウエーハ検出部7がウエーハWの中心位置及び向きを検出したら、第2ウエーハ搬送手段5が第1支持台6aからウエーハWを搬出して保持手段60に受け渡す。保持手段60は、
図4に示す保持部62のウエーハ保持面62aでウエーハWの他方の面Wbを吸引保持する。
【0026】
ウエーハWの保持手段60への搬送と並行して、フィルム載置手段30のクランプ部32がフィルム12をクランプしてY軸方向に移動してフィルム12をロール部11から引き出し、ステージ20のフィルム保持面21に載置する。そして、フィルム12は、図示しない吸引源の作用を受けてフィルム保持面21で吸引保持される。
【0027】
樹脂供給手段40は、樹脂供給ノズル41を旋回させることにより、
図4に示す供給口41aをステージ20の上方側に位置づける。続いて、
図1に示したディスペンサ42により樹脂供給ノズル41に液状樹脂9を送出して、供給口41aからステージ20に吸引保持されているフィルム12に向けて液状樹脂9を滴下する。液状樹脂9としては、上記の液状樹脂8と同様のものを使用する。適量の液状樹脂9がフィルム12の上に堆積して液溜まりの状態となった時点で、樹脂供給手段40はフィルム12への液状樹脂9の供給を停止する。フィルム12の上に溜まった液状樹脂9には、その中心部分に凹み9aが形成されている。なお、滴下する液状樹脂9の量は、後に液状樹脂9が硬化して保護部材となる部分の厚さとウエーハWの面積とにより求められる。
【0028】
樹脂付着手段50によってウエーハWの一方の面Waの中心にウエーハWに付着する程度の液状樹脂8を付着させる。まず、
図3に示したバルブ57を開いて、エア供給源58から第3の連通路54cを通じてエアタンク56の内部にエアを供給し、エアタンク56を膨張させて、側壁531の内壁面531aを貯留部530の内部空間の内側に向けて反らせる。これにより、貯留部530の内部空間の容積を小さくして、該内部空間に貯留されている液状樹脂8を第1の連通口532から第1の連通路54aへ送出する。
【0029】
このとき、エアタンク56の膨張にともない変形する側壁531の内壁面531aが支持部材59の先端部59aに接触すると、側壁531の反りが抑えられるため、最も好適な量の液状樹脂8を付着部51に供給できる状態となる。すなわち、本実施形態に示す樹脂付着手段50では、側壁531の内壁面531aが支持部材59に接触することで、貯留部530の内部空間の容積の変化量を一定に制御することができ、毎回少量かつ同量の液状樹脂8を付着部51に供給することができる。こうして、第1の連通路54aを通じて付着部51に供給された液状樹脂8は、凹部52において例えばドーム状の液溜まりとなって貯められる。液状樹脂8の量は、ウエーハWの一方の面Waに付着する程度の少ない量であればよく、例えば、30μLに設定される。
【0030】
本実施形態では、側壁531の内壁面531aを支持部材59の先端部59aに接触させることで、凹部52に貯める液状樹脂8の量を制御する場合を説明したが、この場合に限定されない。例えば、エアタンク56とエア供給源58との間にエアの圧力を可変するレギュレータを設けて、エアタンク56に供給するエアの圧力を調節して凹部52に貯める液状樹脂8の量を制御してもよい。この場合、支持部材59は側壁531の破損を防止している。例えば、エアタンク56に供給するエアの圧力が高すぎて側壁531の内壁面531aが変形しすぎて破損するのを防止するために、支持部材59の先端部59aに内壁面531aを接触させるとよい。
【0031】
さらに、凹部52に貯められドーム状に形成された液状樹脂8の盛り上がり具合によってウエーハWの一方の面Waに付着する液状樹脂8の量を制御してもよい。つまり、ドーム状に形成された液状樹脂8の盛り上がり具合を毎回一定にすることで、付着部51に供給する液状樹脂8の量を毎回少量かつ同量にすることができる。また、凹部52に貯められた液状樹脂8が乾燥等することにより、第1の逆止弁55aから凹部52までの間の第1の連通路54aに残っている液状樹脂8の量が変化するため、第1の連通路54aの内部を流れる液状樹脂8の量が不安定となる。そのため、付着部51に向けて液状樹脂8を所定量供給して、凹部52から液状樹脂8を僅かに溢れさせることで、液状樹脂8のドーム状を一定にすることが好ましい。この場合、例えばレギュレータでエアタンク56に供給するエアの圧力を調節しつつ、側壁531の内壁面531aの変形させて凹部52から溢れさせる液状樹脂8の量が最小となるように制御してもよい。
【0032】
図4に示す樹脂付着手段50が付着部51を旋回させることにより、保持部62に吸引保持されたウエーハWの一方の面Waの中心位置の直下に移動させる。続いて、拡張手段70によって、ウエーハWを吸引保持する保持手段60を下降させ、ウエーハWの一方の面Waの中心に液状樹脂8を付着させる。液状樹脂8は、ウエーハWの一方の面Waから落下せずに、一方の面Waに付着された状態が維持される。液状樹脂8をウエーハWの一方の面Waの中心に付着させる際は、拡張手段70によって保持手段60が下降するのではなく、付着部51を上昇させる構成にしてもよい。なお、樹脂供給手段40によるフィルム12への液状樹脂9の滴下動作と、樹脂付着手段50によるウエーハWへの液状樹脂8の付着動作とを同時に並行して実施してもよいし、液状樹脂9の滴下動作または液状樹脂8の付着動作のいずれか一方を実施してから他方を実施してもよい。
【0033】
次いで、保持手段60のウエーハ保持面62aでウエーハWの他方の面Wbを吸引保持した状態で、拡張手段70は、モータ72の駆動によりボールネジ71を回動させ、保持手段60を下降させる。保持手段60が下降していくと、ウエーハWの一方の面Waに付着した液状樹脂8が、ウエーハWの一方の面Waよりも先に液状樹脂9の凹み9aに接触する。さらに、保持手段60が下降していくと、凹み9aに接触した液状樹脂8が液状樹脂9内に押し込まれていき、凹み9aが存在しない状態になる。そして、さらに保持手段60を下降させて、ウエーハWの一方の面Waで液状樹脂9を下方に押圧することで、液状樹脂9がウエーハWの径方向に拡張される。
【0034】
その後、硬化手段80が、拡張された液状樹脂9に向けて紫外光を照射する。その結果、液状樹脂9は、硬化するとともに所定の厚みの保護部材としてウエーハWの一方の面Waに形成される。このようにして、保護部材が形成されたウエーハWは、
図1に示した第2ウエーハ搬送手段5によって、第2支持台6bに搬送され、フィルムカッターでウエーハWの外形に沿って余分なフィルム12が切断され、第1ウエーハ搬送手段4によりカセット3bに収容される。
【0035】
以上のとおり、本発明にかかる保護部材形成装置1は、保持手段60が保持するウエーハWの一方の面Waの中心にウエーハWに付着する程度の液状樹脂8を付着させる樹脂付着手段50を備え、樹脂付着手段50は、液状樹脂8を貯める凹部52を有し凹部52に貯められた液状樹脂8をウエーハWの一方の面Waに付着させる付着部51と、付着部51に液状樹脂8を供給する供給ボックス53と、供給ボックス53と付着部51とを連通させる第1の連通路54aと、第1の連通路54aに配設され供給ボックス53から付着部51に向かう方向に液状樹脂8の流れを可能にし逆方向の液状樹脂8の流れを遮断する第1の逆止弁55aと、供給ボックス53と液状樹脂タンク500とを連通させる第2の連通路54bと、第2の連通路54bに配設され液状樹脂タンク500から供給ボックス53に向かう方向に液状樹脂8の流れを可能にし逆方向の液状樹脂8の流れを遮断する第2の逆止弁55bとを備え、供給ボックス53の側壁531には、エアを貯めるエアタンク56と、エアタンク56とエア供給源58とを連通させる第3の連通路54cと、第3の連通路54cに配設されエアタンク56にエアの供給を行うとともにエアタンク56からエアの排出を行うバルブ57とを備えたため、エアタンク56にエアを供給しエアタンク56を膨張させることにより、供給ボックス53の側壁531の内壁面531aを貯留部530の内部空間に向けて反らせ該内部空間の容積を小さくすることで、ウエーハWに付着する程度の液状樹脂8を付着部51に供給し、ウエーハWの中心に液状樹脂8を付着させてから、拡張手段70によって、フィルム12の上に滴下された液状樹脂9を押し拡げて保護部材をウエーハWの一方の面Waに形成することができ、保護部材に気泡が混入することはない。
このように、エアタンク56の膨張にともない供給ボックス53を変形させて、供給ボックス53の貯留部530の内部空間の容積を変化させることができるため、毎回少量かつ同量の液状樹脂8を付着部51に供給することができる。そのため、液状樹脂8を付着部51に供給しすぎることはなく、ウエーハWの一方の面Waにおいて、所望の厚みで、かつ、気泡のない保護部材を形成することができる。
【符号の説明】
【0036】
1:保護部材形成装置 100:筐体 101:装置ベース 102:コラム
103:支持ベース 104:カセット収容本体
2a,2b:収容スペース 3a,3b:カセット 4:第1ウエーハ搬送手段
5:第2ウエーハ搬送手段 6a:第1支持台 6b:第2支持台
7:ウエーハ検出部 8:液状樹脂 9:液状樹脂 9a:凹み
10:フィルム供給手段 11:ロール部 12:フィルム
20:ステージ 21:フィルム保持面 22:凸部
30:フィルム載置手段 31:アーム部 32:クランプ部
40:樹脂供給手段 41:樹脂供給ノズル 41a:供給口
42:ディスペンサ 43:接続管
50:樹脂付着手段 500:液状樹脂タンク
51:付着部 52:凹部 53:供給ボックス 530:貯留部
531:側壁 531a,531b:内壁面 532:第1の連通口
533:第2の連通口 534:第3の連通口 54a:第1の連通路
54b:第2の連通路 54c:第3の連通路 55a:第1の逆止弁
55b:第2の逆止弁 56:エアタンク 560:側面 57:バルブ
58:エア供給源 59:支持部材 59a:先端部
60:保持手段 61:ホイール 62:保持部 62a:ウエーハ保持面
70:拡張手段 71:ボールネジ 72:モータ 73:ガイドレール
74:昇降板
80:硬化手段