【文献】
SEIBERT, R.L. et al.,Evaluation of a semiquantitative SNAP test for measurement of bile acids in dogs,PeerJ,2014年 8月26日,e539
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第二の結合物質が、コール酸及び/又はコール酸・アルブミン結合体、デオキシコール酸及び/又はデオキシコール酸・アルブミン結合体、並びにケノデオキシコール酸及び/又はケノデオキシコール酸・アルブミン結合体を含む、請求項1、3及び4の何れか一項に記載のキット。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明についてさらに詳細に説明する。
[生体試料中の測定対象物質を定量するためのキット]
本発明による生体試料中の測定対象物質を定量するためのキットは、測定対象物質と結合性を有する第一の結合物質を有する蛍光粒子、及び上記測定対象物質又は上記第一の結合物質の何れかと結合性を有する第二の結合物質を有する検出領域を備えた基板を含み、上記測定対象物質が、少なくとも3種類の異なる構造の物質を含み、
上記第一の結合物質が、上記少なくとも3種類の異なる構造の物質の各々に対して結合性を有する、少なくとも3種類の結合物質を含むキットである。
【0013】
本発明においては、測定対象物質が、少なくとも3種類の異なる構造の物質を含む場合であっても、第一の結合物質として、上記少なくとも3種類の異なる構造の物質の各々に対して結合性を有する、少なくとも3種類の結合物質を使用することにより、生体試料中の測定対象物質を高い精度で定量することが可能になった。本発明においては、胆汁酸などのように、3種類以上の異なる構造の物質を定量する際における測定精度を改善するという課題を新たに見出し、上記課題を、第一の結合物質として少なくとも3種類の結合物質を使用することによって解決している。
【0014】
(生体試料)
生体試料としては、測定対象物質を含む可能性のある試料である限り、特に限定されるものではなく、例えば、生物学的試料、特には動物(例えば、ヒト、イヌ、ネコなど)の体液(例えば、血液、血清、血漿、髄液、涙液、汗、尿、膿、鼻水、又は喀痰)若しくは排泄物(例えば、糞便)、臓器、組織、粘膜や皮膚などを挙げることができる。
【0015】
(測定対象物質)
測定対象物質としては、少なくとも3種類の異なる構造の物質を含む限り、特に限定されないが、例えば、胆汁酸、コレステロール、タンパク質などが挙げられる。
【0016】
胆汁酸の主な役割は、消化管内でミセルの形成を促進し、食物脂肪をより吸収しやすくするものである。肝臓で生合成されたものを一次胆汁酸という。また一部は腸管で微生物による変換を受け、その代謝物は二次胆汁酸と呼ばれる。胆汁酸は、通常グリシンやタウリンと結び付いており、これらは抱合胆汁酸(胆汁酸塩)と呼ばれる。
【0017】
イヌ及びネコにおける血清胆汁酸濃度を測定する迅速で簡便な方法は、肝細胞機能及び腸肝門脈循環を反映する高感度で特異的な検査として認識されるようになった。血清胆汁酸に関する研究では、特に、臨床兆候が不明瞭で解釈できない高い肝酵素活性を示しているが黄疸を伴わないイヌとネコにおいて、臨床的に確定診断が必要な肝胆道系疾患を検出するために血清胆汁酸の有用性が示されている。また、先天性門脈体循環シャントの診断において診断率を高めるために空腹時及び食後の胆汁酸定量が勧められている。胆汁酸濃度が、高値の場合は、急性肝炎、慢性肝疾患、胆汁うっ帯、腸内細菌過剰増殖、門脈シャント(portosystemic shunt、PSS) 等が疑われる。一方、胆汁酸濃度が、低値の場合は、腸管吸収不良が疑われる。
【0018】
このような胆汁酸は、わずかに構造が異なる化合物の集合体として存在し、具体的には10種類の化合物が存在する。イヌ及びネコの場合には、胆汁酸としては、 コール酸、デオキシコール酸及びケノデオキシコール酸の3種類のタウリン抱合体でほぼ100%が占められている。例えば、イヌの血液中の3種類の構造違いの胆汁酸の比率は、平均値で表すと、コール酸タウリン抱合体:デオキシコール酸タウリン抱合体:ケノデオキシコール酸==74%:20%:6%の割合となる(日本獣医学雑誌、52(2)1990)。コール酸、デオキシコール酸及びケノデオキシコール酸の構造を以下に示す。
【0020】
(第一の結合物質)
本発明で用いる第一の結合物質は、測定対象物質と結合性を有する物質である。第一の結合物質としては、抗原、抗体、又はこれらの複合体を使用できるが、これらに限定されるものではない。好ましくは、第一の結合物質は抗体である。第一の結合物質が抗体である場合は、測定対象物質と結合性を有する抗体として、例えば、その測定対象物質によって免疫された動物の血清から調製する抗血清や、抗血清から精製された免疫グロブリン画分、その測定対象物質によって免疫された動物の脾臓細胞を用いる細胞融合によって得られるモノクローナル抗体、あるいは、それらの断片[例えば、F(ab’)
2、Fab、Fab’、又はFv]などを用いることができる。これらの抗体の調製は、常法により行なうことができる。さらに、その抗体がキメラ抗体などの場合のように、修飾を加えられたものでもよいし、また市販の抗体でも、動物血清又は培養上清から公知の方法により調製した抗体でも使用可能である。
【0021】
本発明においては、測定対象物質が、少なくとも3種類の異なる構造の物質を含み、第一の結合物質は、上記の少なくとも3種類の異なる構造の物質の各々に対して結合性を有する、少なくとも3種類の結合物質を含む。
【0022】
例えば、測定対象物質が胆汁酸である場合、第一の結合物質としては、非抱合体及び抱合体の胆汁酸に結合性を有する(好ましくは、胆汁酸を特異的に認識する)抗胆汁酸抗体を使用する。胆汁酸には、コール酸、デオキシコール酸、ケノデオキシコール酸及び/又はこれらの抱合体が含まれることから、本発明においては、第一の結合物質として、抗コール酸抗体、抗デオキシコール酸抗体及び抗ケノデオキシコール酸抗体を作製し、上記3種類の抗体を使用することができる。
【0023】
非抱合体及び抱合体の両方に反応する抗コール酸抗体、抗デオキシコール酸抗体及び抗ケノデオキシコール酸抗体の具体的な作製方法として、例えば抗コール酸抗体の作製方法を例に挙げて以下に説明する。
コール酸と、牛血清アルブミン(Bovine Serum Albumin、以下BSAと略す)と、縮合剤を混合し、コール酸のカルボン酸の部分とBSAが結合した、コール酸−BSA結合体を作製することができる。結合体をマウス免疫感作抗原として用いて、数回、マウス背部皮下に免疫する。この場合、完全アジュバント(Freund‘s Complete Adjuvant:FCA)、及び/又は不完全アジュバント(Freund‘s Incomplete Adjuvant:FIA)を適宜選択して免疫感作抗原と混合して使用することができる。完全アジュバントとは、免疫を刺激する物質であって、パラフィンとアラセルの混合物である。不完全アジュバントとは、完全アジュバントに死滅したミコバクテリア又は結核菌の死菌を加え、抗原性をさらに増強させたものである。数週間で数回、適宜免疫感作を行った後にマウスから採血し抗体価の測定を実施する。抗体価の十分な上昇が認められた場合に腹腔内に抗原を投与し、数日後に脾臓を摘出する。こうして免疫マウスより摘出した脾臓細胞を、変異株骨髄腫細胞(ミエローマ)と融合させることで、抗体産生能力を備えた融合細胞を作製することができる。この融合細胞の中から目的とする抗原に対する抗体産生細胞のみを選択し、さらにその細胞株だけを増殖するために限界希釈を行う。希釈後の細胞の培養(クローニング)を行うことができる。このようにして得られる融合細胞株を、マウスの腹腔内に注射して、腹水型の抗体産生細胞を増殖させることによってモノクローナル抗体を腹水中に産生することが可能となり、これらの抗体を回収することで、目的の抗体を入手することができる。
【0024】
(蛍光粒子)
本発明で用いる蛍光粒子としては、免疫反応に通常用いられ得る蛍光で着色された粒子を使用することができ、例えば、蛍光ポリスチレンビーズなどの蛍光高分子粒子、蛍光ガラスビーズ等の蛍光ガラス粒子を用いることができる。蛍光粒子の材質の具体例としては、スチレン、メタクリル酸、グリシジル(メタ)アクリレート、ブタジエン、塩化ビニル、酢酸ビニルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、フェニルメタクリレート、又はブチルメタクリレートなどのモノマーを用いた高分子、又は2種以上のモノマーを用いた共重合体などの合成高分子粉末があり、これらを均一に懸濁させたラテックスが好ましい。また、その他の有機高分子粉末、無機物質粉末、微生物、血球、細胞膜片、又はリポソームなどが挙げられる。
【0025】
ラテックス粒子を使用する場合、ラテックスの材質の具体例としては、ポリスチレン、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−グリシジル(メタ)アクリレート共重合体、スチレン−スチレンスルホン酸塩共重合体、メタクリル酸重合体、アクリル酸重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、塩化ビニル−アクリル酸エステル共重合体、及びポリ酢酸ビニルアクリレートなどが挙げられる。ラテックスとしては、単量体としてスチレンを少なくとも含む共重合体が好ましく、スチレンと、アクリル酸又はメタクリル酸との共重合体が特に好ましい。ラテックスの作製方法は特に限定されず、任意の重合方法により作製することができる。但し、抗体標識の際に界面活性剤が存在すると抗体固定化が困難となるため、ラテックスの作製は、無乳化剤乳化重合、即ち界面活性剤などの乳化剤を用いない乳化重合により行うことが好ましい。
【0026】
重合により得られたラテックス自体が蛍光性である場合には、そのまま蛍光ラテックス粒子として使用することができる。重合により得られたラテックスが非蛍光性の場合には、ラテックスに蛍光物質(蛍光色素など)を添加することによって、蛍光ラテックス粒子を作製することができる。即ち、蛍光ラテックス粒子は、水及び水溶性有機溶剤を含むラテックス粒子の溶液に蛍光色素を添加して攪拌することなどにより製造できる。
【0027】
蛍光色素を含有したリポゾ−ムやマイクロカプセル等も蛍光粒子として使用することができる。蛍光発色は、紫外光等を吸収して励起し、基底状態に戻る際に放出されるものであれば特に制限されるものではなく、例えば、黄緑(励起波長505nm/放出波長515nm、以下同じ)、青(350〜356nm/415〜440nm)、赤(535〜580nm/575〜605nm)、オレンジ(540nm/560nm)、レッド・オレンジ(565nm/580nm)、クリムゾン(625nm/645nm)、ダークレッド(660nm/680nm)などの蛍光発色が用いられ得る。これらの蛍光を発する蛍光粒子は、例えば、Thermo Fisher社から入手可能であり、同社においてFluoSpheres(登録商標)の商品名で市販されている。
蛍光粒子の平均粒径は、粒子の材質や測定対象物質を定量する濃度範囲、測定機器などによって異なるが、0.001〜10μm(より好ましくは0.001〜1μm)の範囲が好ましい。
【0028】
(平均粒径の測定方法)
蛍光粒子の平均粒径は、市販の粒度分布計等で計測することが可能である。粒度分布の測定法としては、光学顕微鏡法、共焦点レーザー顕微鏡法、電子顕微鏡法、原子間力顕微鏡法、静的光散乱法、レーザー回折法、動的光散乱法、遠心沈降法、電気パルス計測法、クロマトグラフィー法、超音波減衰法等が知られており、それぞれの原理に対応した装置が市販されている。
【0029】
粒径範囲及び測定の容易さから、本発明においては動的光散乱法を用いることが好ましい。動的光散乱を用いた市販の測定装置としては、ナノトラックUPA(日機装(株))、動的光散乱式粒径分布測定装置LB−550((株)堀場製作所)、濃厚系粒径アナライザーFPAR−1000(大塚電子(株))、ZETA SIZER Nano series(マルバーン社)等が挙げられ、本発明においては、25℃の測定温度で測定したメジアン径(d=50)の値として求める。
【0030】
(蛍光粒子表面の第一の結合物質)
第一の結合物質として使用される3種類以上の結合物質は、個々の蛍光ラテックス粒子の表面に吸着させて使用することが好ましい。この態様では、使用する蛍光粒子の一つの蛍光粒子が、上記3種類の結合物質を有することになる。あるいは、上記3種類以上の結合物質のうちの1種(例えば、抗コール酸抗体)を吸着させた蛍光ラテックス粒子と、上記3種類以上の結合物質のうちの別の1種(例えば、抗デオキシコール酸抗体)を吸着させた蛍光ラテックス粒子と、上記3種類以上の結合物質のうちのさらに別の1種(例えば、抗ケノデオキシコール酸抗体)を吸着させた蛍光ラテックス粒子とをそれぞれ作製し、上記3種の蛍光ラテックス粒子の混合物を使用する態様も好ましい。
【0031】
本発明では、第一の結合物質として使用される3種類以上の結合物質を、一つの蛍光粒子(個々の蛍光粒子)の表面に吸着させて使用する態様がより好ましい。測定対象物質が、複数の異なる物質の集合体である場合には、それぞれの異なる物質が結合する結合物質をすべて有する蛍光粒子を使用することが好ましい。本発明の一態様として、測定対象物質が胆汁酸である場合には、抗コール酸抗体、抗デオキシコール酸抗体、及び抗ケノデオキシコール酸抗体の全てを有する蛍光粒子を使用することができる。上記の構成とすることによって、全ての蛍光粒子が、生体試料中に存在する異なる物質から構成される測定対象物質すべてと相互作用することが可能となる。従って、各々の蛍光粒子には、少なくとも3種の結合物質を結合させることが好ましい。
【0032】
(第一の結合物質による蛍光粒子の修飾)
第一の結合物質を蛍光粒子に固定化する方法は、例えば、特開2000−206115号公報やThermo Fisher社FluoSpheres(登録商標)ポリスチレンマイクロスフィアF8813に添付のプロトコールなどに記載されており、免疫凝集反応用試薬を調製する公知の方法がいずれも使用可能である。また、結合物質として抗体を粒子に固定化する原理として、物理吸着及び共有結合による化学結合のいずれの原理も採用可能である。抗体を粒子に固定させた後に抗体が被覆されていない粒子表面を覆うブロッキング剤としては、公知の物質、例えば、BSA、スキムミルク、カゼイン、大豆由来成分、魚由来成分、又はポリエチレングリコールなど、並びに上記物質又は上記物質と性質が同じである物質を含む市販の免疫反応用ブロッキング剤などが使用可能である。これらのブロッキング剤は、必要に応じて熱や酸・アルカリ等により部分変性などの前処理を施すことも可能である。
【0033】
抗体を粒子に固定化する具体的な方法を、以下に例示する。粒子の固形分濃度が0.1〜10質量%になるよう分散させた液に、0.01〜20mg/mLの濃度に調整した抗体溶液を添加して、混合する。温度4〜50℃の条件下で5分間〜48時間撹拌を継続する。次いで遠心分離その他の方法により粒子と溶液を分離して、溶液に含まれている、粒子に結合しなかった抗体を十分に除去する。その後、粒子を緩衝液にて洗浄する操作を0〜10回繰り返す。粒子と抗体とを混合して、粒子に抗体を結合させる操作を実施した後に、抗原抗体反応に関与しない成分、好ましくはタンパク質、より好ましくはBSA、ブロックエース(登録商標)、スキムミルク及びカゼインなどのブロッキング剤を使用して粒子表面の抗体が結合していない部分を保護することが望ましい。
【0034】
抗原や抗体等を粒子に固定化する際に、安定化剤を必要に応じて添加可能である。安定化剤とは、ショ糖や多糖類などの合成高分子あるいは天然高分子など、抗原や抗体を安定化するものであれば特に制限されず、Immunoassay Stabilizer(Advanced Biotechnologies Inc (ABI社))などの市販の安定化剤も使用可能である。
【0035】
第一の結合物質を有する蛍光粒子は本発明のキットに含まれており、キットの一部である容器、たとえばカップに含まれている態様が好ましい。この場合、生体試料を、蛍光粒子を含む容器に注入して混合、攪拌することにより、生体試料中の測定対象物質と第一の結合物質とを結合させることができる。
【0036】
(基板)
本発明では、高感度な測定を達成するために、後述する表面プラズモン蛍光(SPF)検出を行う測定法を採用することが好ましい。この場合における基板としては、表面に金属膜を有する基板を使用することが好ましい。金属膜を構成する金属としては、表面プラズモン共鳴が生じ得るようなものであれば特に限定されない。好ましくは金、銀、銅、アルミニウム、又は白金等の自由電子金属が挙げられ、特に金が好ましい。金を使用する場合、後記する検出領域は、金膜表面となる。上記の金属は単独又は組み合わせて使用することができる。また、上記基板への付着性を考慮して、基板と金属からなる層との間にクロム等からなる介在層を設けてもよい。金属膜の膜厚は任意であるが、例えば、1nm以上500nm以下であるのが好ましく、特に10nm以上200nm以下であるのが好ましい。500nmを超えると、媒質の表面プラズモン現象を十分検出することができない。また、クロム等からなる介在層を設ける場合、その介在層の厚さは、0.1nm以上、10nm以下であることが好ましい。
【0037】
金属膜の形成は常法によって行えばよく、例えば、スパッタ法、蒸着法、イオンプレーティング法、電気めっき法、又は無電解めっき法等によって行うことができるが、基板材質と金属膜との混合層を設けて、金属膜の密着性を良くするためには、スパッタ法により金属膜を作製することが好ましい。この場合、基板材質と金属膜との混合層の厚さは十分な密着性が確保できれば特に制限はないが、10nm以下が好ましい。
【0038】
金属膜は好ましくは基板上に配置されている。ここで、「基板上に配置される」とは、金属膜が基板上に直接接触するように配置されている場合のほか、金属膜が基板に直接接触することなく、他の層を介して配置されている場合をも含む。本発明で使用することができる基板の材質としては例えば、一般的な光学ガラスの一種であるBK7(ホウ珪酸ガラス)等の光学ガラス、あるいは合成樹脂、具体的にはポリメチルメタクリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、又はシクロオレフィンポリマーなどのレーザー光に対して透明な材料からなるものが使用できる。このような基板は、好ましくは、偏光に対して異方性を示さずかつ加工性の優れた材料が望ましい。
【0039】
SPF検出のための基板の好ましい態様としては、ポリメチルメタクリレート(PMMA)に金膜を蒸着した基板などを挙げることができる。
【0040】
基板は、測定対象物質又は第一の結合物質の何れかと結合性を有する第二の結合物質を有する検出領域を備えている。
【0041】
(第二の結合物質)
第二の結合物質は、測定対象物質と結合性を有する物質であるか、又は第一の結合物質と結合性を有する物質である。定量をサンドイッチアッセイ法で行う場合には、第二の結合物質として、測定対象物質と結合性を有する物質を使用することができる。定量を競合法で行う場合には、第二の結合物質として、第一の結合物質と結合性を有する物質を使用することができる。本発明においては、定量を競合法で行うことが好ましく、第二の結合物質として、第一の結合物質と結合性を有する物質を使用することが好ましい。
【0042】
第二の結合物質としては、特に限定されないが、好ましい例としては、抗原、抗体、又はこれらの複合体が挙げられるが、好ましくは、抗原であり、第二の結合物質として、測定対象物質(これは、第一の結合物質と結合性を有する物質である)を使用することが特に好ましい。
【0043】
第二の結合物質として測定対象物質を使用する場合には、第二の結合物質が、測定対象物質である少なくとも3種類の異なる構造の物質、又は上記3種類の異なる構造の物質とキャリアとの結合体であることが好ましい。キャリアとは、上記少なくとも3種類の測定対象物質の複数の分子が結合可能な物質を意味する。ここで、好ましい第二の結合物質としては、同種の測定対象物質の複数の分子が、一分子のキャリアに結合した少なくとも3種類の結合体を含む態様である。好ましいキャリアの一例としては、タンパク質などが挙げられ、その中でも具体的には、ウシ血清アルブミンを挙げることができる。
【0044】
測定対象物質が胆汁酸である場合、第二の結合物質は、コール酸及び/又はコール酸・アルブミン結合体、デオキシコール酸及び/又はデオキシコール酸・アルブミン結合体、並びにケノデオキシコール酸及び/又はケノデオキシコール酸・アルブミン結合体を含むことが好ましい。あるいは、上記の態様において、コール酸にコール酸抱合体を含む態様、コール酸をコール酸抱合体で置換した態様、デオキシコール酸にデオキシコール酸抱合体を含む態様、デオキシコール酸をデオキシコール酸抱合体で置換した態様、ケノデオキシコール酸にケノデオキシコール酸抱合体を含む態様、あるいはケノデオキシコール酸をケノデオキシコール酸抱合体で置換した態様、とすることも好ましい。特に、コール酸及び/又はコール酸・アルブミン結合体、デオキシコール酸及び/又はデオキシコール酸・アルブミン結合体、並びにケノデオキシコール酸及び/又はケノデオキシコール酸・アルブミン結合体を含むことが好ましい。
【0045】
(第二の結合物質を基板に固定化する方法)
第二の結合物質を基板に固定化する方法は、例えば、Nunc社の提供するTech Notes Vol.2−12などに記載されており、一般的なELISA(Enzyme-Linked ImmunoSorbent Assay:酵素結合免疫吸着法)試薬を調製する公知の方法がいずれも使用可能である。また、基板上に自己組織化単分子膜(SAM:Self-Assembled Monolayer)などを配することによる表面修飾を施しても良く、第二の結合物質を基板に固定化する方法としては、物理吸着を用いた方法、及び共有結合による化学結合を用いた方法のいずれの方法も採用可能である。第二の結合物質を基板に固定させた後に、第二の結合物質が被覆されていない基板表面を覆うブロッキング剤として、公知の物質、例えば、BSA、スキムミルク、カゼイン、大豆由来成分、魚由来成分又はポリエチレングリコールなど、並びに上記物質又は上記物質と性質が同じである物質を含む市販の免疫反応用ブロッキング剤などが使用可能である。これらのブロッキング剤は、必要に応じて熱や酸・アルカリ等により部分変性などの前処理を施すことも可能である。
【0046】
(検出領域<テストエリア>)
本発明は、基板上に生体試料中の測定対象物質の有無を検出するテストエリアを設けることができる。このテストエリアでは、例えば測定対象物質である抗原を捕まえて、抗原に結合した標識の量を検出し定量することで、抗原を定量することが可能となる。あるいは、抗原に結合した標識のみを結合できないようにし、抗原に結合していない標識のみを捕獲して、抗原の結合した標識の量を算出する方法により、抗原を定量することが可能となる。この検出方法は競合法と呼ばれているが、ここでは、競合法に関する基板について説明する。
【0047】
基板のテストエリアには、蛍光粒子上に存在する3種類以上の結合物質(例えば抗体)すべてと反応するサイトを有することが好ましい。本発明の好ましい一態様としては、生体試料中に存在する3種類以上の抗原を、基板のテストエリア上に有する態様が好ましい。この場合、抗原とBSAを縮合剤の存在下で反応させて、抗原・BSA結合体を作製し、この結合体をテストエリア上に吸着させることでテストエリアを作製することが可能となる。従って、テストエリア上には、3種類以上の抗原と結合したBSA結合体が、一つのエリアに共存する態様となる。この場合、テストエリア上には、3種類の抗原・BSA結合体をランダムに混合した状態で配置されていることが好ましい。抗原・BSA結合体は、緩衝液に溶解させて、基板上に点着して、一定時間放置した後、上清を吸引し、乾燥させるなどの方法で基板上のテストエリアに結合させることが可能である。
【0048】
(参照領域<コントロールエリア>)
本発明では、測定環境、特に測定温度の影響を極力抑えるために、基板上にコントロールエリアを有し、テストエリアの情報を、コントロールエリアの情報で規格化することによって、環境依存性を非常に低く抑えることが可能となる。コントロールエリアとしては、使用する生体試料の中に存在する測定対象物質の量に依存せず、すべての標識と結合することが可能なように設計されていることが好ましい。標識である蛍光粒子上に存在する3種類以上の抗体すべてに相互作用する抗体を有することが好ましい。このように設計することによって、テストエリアの情報をコントロールエリアの情報で規格化することにより、例えば、低温環境で、生体試料の流れや、反応速度が影響を受けた場合でも、規格化によってその影響をキャンセルして、常に精度よく、測定環境に影響されない結果を得ることが可能になる。
【0049】
コントロールエリアに存在させる好ましい抗体としては、蛍光粒子上に存在する3種類以上の結合物質(例えば、抗体)を認識する機能をもち、その抗体がマウス由来であれば、抗マウス抗体であることが好ましく、蛍光粒子上の抗体が、ヤギ由来であれば、抗ヤギ抗体であることが好ましい。これらコントロールエリア上の抗体は、緩衝液に溶解させて、基板上に点着して、一定時間放置した後、上清を吸引し、乾燥させるなどの方法で基板に結合させることが可能である。
【0050】
(非特異吸着防止物質)
本発明の試薬キットは、好ましくは、さらに、測定対象物質と特異的な結合性を有しない物質、あるいは結合物質により蛍光粒子を修飾することが好ましい。例えば、競合法において、測定対象物質を含まない陰性となる生体試料だけでなく、測定対象物質を含む陽性となる生体試料に対しても反応して陰性となる生体試料が存在しており、高値乖離の問題の解決が課題として認識されている。このような擬陰性を示す原因は明確にはなっていないが、抗体に覆われていない蛍光粒子表面と、検出領域(テストエリア)との非特異的な相互作用により、本来結合してほしくない蛍光粒子が存在することが原因の一つではないかと考えられている。また、テストエリア上に存在する物質と同じ物質が蛍光粒子表面上に存在する場合にも、遊離した抗体などが生体試料中に存在する場合には、その抗体が、テストエリア上に存在する物質と、蛍光粒子表面上の物質のどちらにも結合することで、測定対象物質を含む陽性となる生体試料を測定した場合においても陰性として検出される場合がある。一般的に、固相表面(例えば蛍光粒子表面、基板の金膜表面)、への非特異吸着抑制のためにBSAでのブロッキングが用いられているが、ある特定の生体試料中にBSAに反応する抗BSA抗体が存在する場合には、蛍光粒子上のBSAと基板上のBSAとの間で架橋するように反応し、高値乖離を起こす場合がある。従って、好ましい結合物質としては、測定対象物質(例えば胆汁酸)と特異的な結合性を有さない物質であって、上記のような擬陰性を示す原因物質に結合しない物質を使用することが好ましい。結合物質としては、胆汁酸と結合性を有しない抗体、あるいはテストエリアに使用しないタンパク質(Protein A、Protein G)などを使用することができるが、その中で胆汁酸と結合性を有しない抗体が好ましい。具体的には、胆汁酸とは異なる抗原によって免疫された動物の血清から調製する抗血清、抗血清から精製された免疫グロブリン画分、その測定対象物質によって免疫された動物の脾臓細胞を用いる細胞融合によって得られるモノクローナル抗体、あるいは、それらの断片[例えば、F(ab’)
2、Fab、Fab’、又はFv]などを用いることが可能である。これらの抗体の調製は、常法により行なうことができる。さらに、その抗体がキメラ抗体などの場合のように、修飾を加えられたものでもよいし、また市販の抗体でも、動物血清や培養上清から公知の方法により調製した抗体も使用可能である。本発明では、結合物質として、特に抗CRP(C反応性蛋白)抗体を使用する態様が好ましい。
【0051】
(抗体)
本発明において、抗体は、その動物種やサブクラス等によらず使用できる。例えば、本発明に用いることが可能な抗体は、マウス、ラット、ハムスター、ヤギ、ウサギ、ヒツジ、ウシ、ニワトリなど免疫反応が起こり得る生物に由来する抗体、具体的には、マウスIgG、マウスIgM、ラットIgG、ラットIgM、ハムスターIgG、ハムスターIgM、ウサギIgG、ウサギIgM、ヤギIgG、ヤギIgM、ヒツジIgG、ヒツジIgM、ウシIgG、ウシIgM、トリIgY等であり、ポリクローナル又はモノクローナルのどちらも使用可能である。断片化抗体は、少なくとも1つの抗原結合部位を持つ、完全型抗体から導かれた分子であり、具体的にはFab、F(ab’)
2等である。これらの断片化抗体は、酵素あるいは化学的処理によって、もしくは遺伝子工学的手法を用いて得られる分子である。
【0052】
(測定方法)
本発明によれば、生体試料、及び測定対象物質と結合性を有する第一の結合物質を有する蛍光粒子を、測定対象物質又は第一の結合物質の何れかと結合性を有する第二の結合物質を有する検出領域を備えた基板に接触させ、次いで検出領域上の第二の結合物質に結合した蛍光粒子に起因する蛍光を測定することによって、生体試料中の測定対象物質を定量することができる。
【0053】
本発明における定量は、測定対象物質(例えば、胆汁酸)の量の測定である限り、最も広い概念として解釈される。測定方法の具体的な実施態様としては、競合法及びサンドイッチ法が挙げられるが、競合法が好ましい。
【0054】
競合法の一例として、胆汁酸を定量する場合を以下に説明する。胆汁酸以外の物質を定量する場合も、同様に実施することができる。
競合法では、先ず、胆汁酸/アルブミン比が7以上14以下である胆汁酸・アルブミン結合体が固定化されている胆汁酸免疫測定用基板に、胆汁酸を含む生体試料及び抗胆汁酸抗体標識蛍光粒子を接触させる。その生体試料中に胆汁酸が存在しない場合には、抗胆汁酸抗体標識蛍光粒子と、基板上の胆汁酸(即ち、胆汁酸・アルブミン結合体中の胆汁酸)とにより、基板上で抗原抗体反応が起こる。一方、生体試料中に胆汁酸が存在する場合には、生体試料中の胆汁酸と抗胆汁酸抗体標識蛍光粒子との間で抗原抗体反応が起こり、抗胆汁酸抗体標識蛍光粒子と、基板上の胆汁酸(即ち、胆汁酸・アルブミン結合体中の胆汁酸)との間の抗原抗体反応が阻害される。上記の反応が終了した後、上記の基板上のアルブミンに結合しなかった抗胆汁酸抗体標識蛍光粒子を除去する。次いで基板上の免疫複合体(即ち、抗胆汁酸抗体標識蛍光粒子と、基板上の胆汁酸・アルブミン結合体中の胆汁酸との複合体)の形成の度合いを蛍光強度として検出することにより、生体試料中の胆汁酸の濃度などを測定することができる。
【0055】
競合法における蛍光の測定形態は、プレートリーダー測定、あるいはフロー測定のいずれかの測定を採用することが可能であり、例えば、以下の方法により測定することができる。予め、胆汁酸濃度が異なる胆汁酸量既知の試料を複数用意し、この試料及び抗胆汁酸抗体標識蛍光粒子を予め混合する。この混合液を、胆汁酸・アルブミン結合体が固定化されている領域に接触させる。胆汁酸・アルブミン結合体が固定化されている領域からの蛍光信号を、特定の時間間隔で混合液が結合体に接触している間、複数の蛍光信号として測定する。この複数の蛍光信号から、各胆汁酸濃度において、蛍光量の時間変化(傾き)を求める。この時間変化をY軸、胆汁酸濃度をX軸としてプロットし、最小二乗法等の適宜ふさわしいフィッティング方法を用いて、蛍光量の時間変化に対する胆汁酸濃度の関係式を取得する。このように取得した関係式に基づき、検査目的とする生体試料を用いた蛍光量の時間変化の結果を用いて、生体試料に含まれる胆汁酸量を定量することができる。
【0056】
この胆汁酸量の定量は、短時間で行うことが好ましい。具体的には、10分以内に行われることが好ましく、8分以内がより好ましく、更には6分以内で行われることが好ましい。この定量時間には、最小二乗法等の適宜ふさわしいフィッティング方法を用いて予め取得した蛍光量の時間変化量と胆汁酸濃度との関係式を利用して、試料及び抗胆汁酸抗体標識蛍光粒子を、胆汁酸・アルブミン結合体が固定化されている検出領域に接触させてから、検査目的とする生体試料を用いた蛍光量の時間変化の結果を基に生体試料に含まれる胆汁酸量を換算する時間が含まれることが好ましい。
【0057】
サンドイッチ法では、特に限定されるものではないが、例えば、以下の手順により測定対象物質を測定することができる。測定対象物質を含む可能性のある生体試料と、測定対象物質と結合性を有する第一の結合物質を有する蛍光粒子とを、基板上で接触させる。生体試料に測定対象物質が存在する場合には、測定対象物質と蛍光粒子と基板との間で結合反応(抗原抗体反応など)が生じる。その結果、生体試料中に測定対象物質が存在する場合には、基板に結合した第二の結合物質と、測定対象物質と、第一の結合物質を有する蛍光粒子とからなる免疫複合体が形成される。サンドイッチ法では、第二の結合物質と、測定対象物質と、第一の結合物質を有する蛍光粒子との反応が終了した後、上記免疫複合体を形成しなかった、第一の結合物質を有する蛍光粒子を除去し、洗浄する。次いで免疫複合体の形成の度合いを蛍光強度として検出することにより、測定対象物質の濃度などを測定することができる。なお、蛍光強度と測定対象物質の濃度は、正の相関関係がある。
【0058】
(流路)
本発明の好ましい態様においては、測定対象物質を含む可能性のある生体試料と、第一の結合物質を有する蛍光粒子とを混合した混合液を、基板上に適用し、流路に展開することができる。流路とは、生体試料と、第一の結合物質を有する蛍光粒子とを、検出領域まで流下する通路であれば、特に制限はない。好ましい流路の態様としては、第一の結合物質を有する蛍光粒子を含む生体試料液を点着する点着口、検出領域としての金属膜、及び金属膜を超えて流路が存在し、生体試料が、金属膜上を通過できる構造を有するものである。好ましくは、金属膜に対して、点着口とは反対側に、吸引口を設けることができる。
【0059】
(表面プラズモン蛍光測定)
本発明における蛍光の検出方法としては、特に限定されないが、例えば、蛍光強度を検出することができる機器、具体的には、マイクロプレートリーダー、又は表面プラズモン励起による蛍光検出(SPF)を行うためのバイオセンサーなどを用いて蛍光強度を検出することが好ましい。なお、蛍光の測定の形態は、プレートリーダー測定でもよいし、フロー測定でもよい。表面プラズモン励起による蛍光検出法(SPF法)は、落射励起による蛍光検出法(落射蛍光法)よりも高感度に測定することができる。
【0060】
表面プラズモン蛍光(SPF)バイオセンサーとしては、例えば、特開2008−249361号公報に記載されているような、所定波長の励起光を透過させる材料から形成された光導波路と、この光導波路の一表面に形成された金属膜と、光ビームを発生させる光源と、上記光ビームを光導波路に通し、上記光導波路と金属膜との界面に対して表面プラズモンを発生させる入射角で入射させる光学系と、上記表面プラズモンによって増強されたエバネッセント波によって励起されたことによって発生する蛍光を検出する蛍光検出手段とを備えたセンサーを用いることができる。
【0061】
本発明の蛍光粒子を用いた表面プラズモン励起による蛍光検出(SPF)系は、好ましくは、基板上の金属膜上に固定化された測定対象物質の量に依存した蛍光物質からの蛍光を検出するアッセイ方法であり、溶液中での反応の進行により、光学的な透明度の変化を、例えば濁度として検出する、いわゆるラテックス凝集法とは異なる方法である。ラテックス凝集法では、ラテックス試薬中の抗体感作ラテックスと生体試料中の抗原が、抗体反応により結合し、凝集する。この凝集塊は時間と共に増大し、この凝集塊に近赤外光を照射して得られた単位時間当たりの吸光度変化から、抗原濃度を定量化する方式が、ラテックス凝集法である。本発明では、ラテックス凝集法に比べて、非常に簡便な測定対象物質の検出方法を提供できる。
【0062】
(キットの他の要素)
本発明のキットは、測定対象物質(例えば、胆汁酸など)を測定する方法に用いられるものであり、測定対象物質が胆汁酸である場合には、胆汁酸測定診断用のキットである。本発明において、胆汁酸などの測定対象物質の測定を実施するに当たり、胆汁酸・アルブミン結合体などの第二の結合物質を固定した基板と蛍光粒子を保持した部材を含むセンサチップを含むものであるが、表面プラズモン励起装置、及び蛍光測定デバイスなどの、測定対象物質の測定に使用される各種の器材又は装置を含めてもよい。さらに、キットの要素として、既知量の測定対象物質を含む試料、取扱説明書などを含めてもよい。
【0063】
以下の実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は実施例によって限定されるものではない。
【実施例】
【0064】
(1)胆汁酸・ウシ血清アルブミン結合体の調製
(1−1)コール酸・ウシ血清アルブミン結合体の調製
超脱水ジメチルホルムアミド(以下、DMFと記す。和光純薬工業(株)社製)1.2mLにコール酸(和光純薬工業(株)社製)50mg、N−ヒドロキシスクシンイミド(以下、NHSと記す。和光純薬工業(株)社製)67mg、及び1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(以下、EDCと記す。和光純薬(株)社製)110mgを加えて混合し、コール酸を活性エステル化した。この活性エステル化したコール酸を、アルブミンの1種であるウシ血清アルブミン(以下、BSAと記す。和光純薬工業(株)社製)322mgを溶解したリン酸緩衝液(以下、PBSと記す。和光純薬工業(株)社製)65mLの水溶液に滴下し反応させた。反応終了後、反応溶液をアセトニトリル(以下、ACNと記す。和光純薬工業(株)社製)/水の比率が1/3の溶液1Lを用いて透析により精製した。最後に、凍結乾燥し、白色の固体を得た。
【0065】
【化2】
【0066】
(1−2)デオキシコール酸-BSA結合体の調製
超脱水DMF1.2mLにデオキシコール酸(和光純薬工業(株)社製)50mg、NHS 67mg、及びEDC 110mgを加えて混合し、デオキシコール酸を活性エステル化した。この活性エステル化したデオキシコール酸を、BSA 322 mgを溶解したPBS 65mLの水溶液に滴下し反応させた。反応終了後、反応溶液をACN/水の比率が1/3の溶液 1Lを用いて透析により精製した。最後に、凍結乾燥し、白色の固体を得た。
【0067】
(1−3)ケノデオキシコール酸-BSA結合体の調製
超脱水DMF1.2mLにケノデオキシコール酸(和光純薬工業(株)社製)50mg、NHS 67mg、及びEDC 110mgを加えて混合し、ケノデオキシコール酸を活性エステル化した。この活性エステル化したケノデオキシコール酸を、BSA 322 mgを溶解したPBS 65mLの水溶液に滴下し反応させた。反応終了後、反応溶液をACN/水の比率が1/3の溶液 1Lを用いて透析により精製した。最後に、凍結乾燥し、白色の固体を得た。
【0068】
(2)MALDI−TOF−MS(マトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析計)による胆汁酸/BSA標識モル比(結合体の胆汁酸/アルブミン比)の測定
(測定手順)
(1−1)から(1−3)で調製した結合体を0.1質量%トリフルオロ酢酸(TFA):ACNの比率が2/1の溶液に溶解し、1mg/mLの濃度に調整した。この溶液1μLと、マトリックス(SA;シナピン酸(和光純薬工業(株)社製))4μLとを混合し、金プレート上に1μLとして4点を点着した。自然乾燥した後に、MALDI−TOF−MS装置(Applied Bio Systems社品 Voyager)に金プレートを挿入し、1スポットごとに積算900ショットを行い質量情報となるデータを取得(N=4)した。このデータを用いて、胆汁酸・BSA結合体に対応するピークの、ピーク強度の最大の値の50%強度での分子量中心値をBSA結合体のピークとして採用し、このピーク値から垂直に降ろした位置を胆汁酸・BSA結合体の分子量と見なして、N=4の平均値を取り、(胆汁酸・BSA結合体の分子量−native BSAの分子量)/胆汁酸の分子量(例えば、コール酸の場合408−18=390)でBSAに対する胆汁酸の結合数を計算した。得られた結合体の胆汁酸/BSA比を表1に示した。
【0069】
【表1】
【0070】
(3)コール酸に対する抗体、デオキシコール酸に対する抗体、又はケノデオキシコール酸に対する抗体を産生するハイブリドーマの作製、並びに抗体産生
(3−1)免疫原
上記で作製したコール酸−BSA結合体、デオキシコール酸−BSA結合体及びケノデオキシコール酸−BSA結合体の各々2mgずつを、マウス免疫感作の免疫原として使用した。
【0071】
(3−2)ハイブリドーマの調製
マウス免疫感作の免疫原として、コール酸−BSA結合体を使用した。
初回の免疫を100μg/匹の量とし、2回目以降の免疫を50μg/匹の量とし、コール酸−BSA結合体を、マウス背部皮下に投与して免疫を行った。免疫においては、完全アジュバント(FCA)と混合したエマルジョンを初回投与し、2〜4回目の免疫には不完全アジュバント(FIA)と混合したエマルジョンを投与した。2週間隔で4回免疫を行った。別途、3回目、4回目の免疫の翌週に採血を行い、採血清100μLを用いてELISA測定にて抗体価の測定を行った。抗体価が目的の値であることを確認し、4回目の免疫から2週間後の免疫を最終免疫として、抗原である結合体をリン酸緩衝液(PBS、和光純薬工業(株)社製、pH7.1〜7.3)1mLで希釈溶解し、マウスの腹腔内に投与する形で行った。投与の3日後にマウスの脾臓を摘出した。
【0072】
マウスより摘出した脾臓細胞と変異株骨髄腫細胞(ミエローマ:P3−X63−Ag8−U1)を、7:1の細胞数の割合で混合した後に、ポリエチレングリコール(PEG)を添加し、遠心分離後に培地(RPMI−1640(ロズウェルパーク記念研究所培地:Roswell Park Memorial Institute Medium)+10質量%ウシ胎児血清(Fetal Bovine Serum:FBS))に浮遊させた。この浮遊した脾臓細胞を、細胞数として1.0×10exp5(cell/well)となるように、96wellプレートに播種した。翌日、HAT培地(ヒポキサンチン・アミノプテリン・チミジン培地)を添加し、増殖したハイブリドーマの培養上清を抗体測定系のELISAでスクリーニングを行った。測定用抗原であるコール酸−BSA結合体を500ng/mLとなるようPBSで希釈し、ELISAのカップに添加して静置して、カップの底に測定用抗原を固定化し、上澄み液を除去する。測定対象となる脾臓細胞が産生した抗体に対する二次抗体として抗マウスIgG HRP標識抗体を用いた。IgGはイムノグロブリンGを示し、HRPは西洋ワサビペルオキシダーゼを示す。ELISAの結果から陽性であったウェルを24ウェルプレートを用いて培養し、培養上清を各1mL採取した。再度、同じ抗体測定系のELISAで二次スクリーニングを行った。細胞融合時の同一ウェル中で、ELISAシグナルの高い上位の6ウェルを選択してバイアル瓶に入れた。
【0073】
それぞれのバイアル中の細胞を、10質量%のFBSを含む基礎培地RPMI1640を用いて限界希釈して希釈物を調製した。6個の96ウェルプレートのそれぞれのウェルに希釈物1滴ずつピペットで添加した。それぞれのウェルを顕微鏡で観察し、それぞれのウェル中の細胞がシングルセルであることを確認した。3週間培養した後、上記と同様にして、増殖したハイブリドーマの培養上清を抗体測定系のELISAでスクリーニングを行った。ELISAシグナルの高い上位の10ウェルを選択し、ハイブリドーマの調製を終了した。得られた抗体のサブクラスの決定は、Isotyping kit(ロッシュ社製)を用いた。
【0074】
(3−3)マウス腹水法による抗体の産生
選択した10ウェルの細胞を、さらに同様にELISAスクリーニングを行って、シグナルの高かった上位1ウェルの細胞についてマウス腹水法(マウス2匹を使用)により抗体を作製した。得られた抗体を、抗コール酸抗体-1と称する。
【0075】
(3−4)デオキシコール酸に対する抗体、及びケノデオキシコール酸に対する抗体の調製
デオキシコール酸に対する抗体、及びケノデオキシコール酸に対する抗体の調製も、上記と同様に行った。得られた抗体をそれぞれ、抗デオキシコール酸抗体-1及び抗ケノデオキシコール酸抗体-1と称する。
【0076】
(3−5)抗体のサブクラスと抗体産生量
上記で調製した抗体のサブクラスと抗体産生量を表2に示した。
【0077】
【表2】
【0078】
(4)抗マウス抗体の作製
マウス由来のグロブリン(LAMPIRE Biological Laboratories社製,カタログ番号7404302,Mouse Gamma Globulin Salt Fractionation, 500mg)を準備し、完全アジュバント(FCA)と混合したエマルジョンを初回投与し、2〜4回目の免疫には不完全アジュバント(FIA)と混合したエマルジョンを投与する方法で、ヤギへ免疫感作(皮下免疫)を2週間隔で4回免疫を行った。その後、ELISA測定を行って抗体価の上昇を確認した後に全採血を行い、遠心分離により抗血清を得た。その後、Protein Aカラム(Thermo scientific社製 Pierce ProteinA Columns, カタログ番号20356)により精製し、目的の抗マウス抗体を取得した。
【0079】
(5)抗CRP抗体の作製
市販のヒトCRP(北山ラベス(株)社製)を準備し、完全アジュバント(CFA)と混合したエマルジョンを初回投与し、2〜4回目の免疫には不完全アジュバント(IFA)と混合したエマルジョンを投与する方法で、マウスへ免疫感作(皮下免疫)を2週間隔で4回免疫を行った。その後、ELISA測定を行って抗体価の上昇を確認した後に全採血を行い、遠心分離により抗血清を得た。その後、ProteinAカラム(Thermo scientific社製 Pierce ProteinA Columns, カタログ番号20356)により精製し、目的の抗CRP抗体-1を取得した。
【0080】
(6)抗胆汁酸抗体で標識した蛍光粒子の調製
(6−1)3種の抗胆汁酸抗体を吸着させた蛍光粒子1の調製
3種の抗胆汁酸抗体で標識した蛍光粒子を、以下の通り調製した。
2質量%(固形分濃度)蛍光ラテックス粒子水溶液(Invitrogen社製、平均粒径200nm)357μLに、50mmol/LのMES(2−Morpholinoethanesulfonic acid)緩衝液(pH6.0)282μLを加え、5mg/mLの抗コール酸抗体-1 (上記で作製したもの)5.3μL、5mg/mLの抗デオキシコール酸抗体-1(上記で作製したもの)5.3μLと、5mg/mLの抗ケノデオキシコール酸抗体−1(上記で作製したもの)6.9μL、及び、5mg/mLの抗CRP抗体-1(ダミー)(上記で作製したもの)75.5μLを添加し、室温で15分間攪拌した。その後、10mg/mLのEDC水溶液7.5μLを加え、室温で1.5時間撹拌した。2mol/LのGlycine(和光純薬社製)水溶液37.5μLを添加して15分間撹拌した後、遠心分離(15,000rpm、4℃、15分)を行い、蛍光ラテックス粒子を沈降させた。rpmは回毎分(revolution per minute)を示し、1rpm=1min
-1 である。その後、上清を取り除き、PBS(pH7.4)750μLを加え、超音波洗浄機により蛍光ラテックス粒子を再分散させた。再度、遠心分離(15,000rpm、4℃、15分)を行って上清を除いた後、1質量%BSAを含むPBS(pH7.4)750μLを加えて、蛍光ラテックス粒子を再分散させることで、3種の抗胆汁酸抗体と抗CRP抗体が結合した蛍光ラテックス粒子の1質量%溶液を調製した。
【0081】
(6−2)抗コール酸抗体のみを吸着させた蛍光粒子2の調製
2質量%(固形分濃度)蛍光ラテックス粒子水溶液(Invitrogen社製、平均粒径200nm)357μLに、50mmol/LのMES緩衝液(pH6.0)282μLを加え、5mg/mLの抗コール酸モノクローナル抗体-1(上記で作製したもの)201μLを添加し、室温で15分間攪拌した。その後、10mg/mLのEDC水溶液7.5μLを加え、室温で1.5時間撹拌した。2mol/LのGlycine(和光純薬社製)水溶液37.5μLを添加して15分間撹拌した後、遠心分離(15,000rpm、4℃、15分)を行い、蛍光ラテックス粒子を沈降させた。その後、上清を取り除き、PBS(pH7.4)750μLを加え、超音波洗浄機により蛍光ラテックス粒子を再分散させた。再度、遠心分離(15,000rpm、4℃、15分)を行って上清を除いた後、1質量%BSAを含むPBS(pH7.4)750μLを加えて、蛍光ラテックス粒子を再分散させることで、抗コール酸抗体1種を結合させた蛍光ラテックス粒子の1質量%溶液を調製した。
【0082】
(6−3)抗デオキシコール酸抗体のみを吸着させた蛍光粒子3の調製
2質量%(固形分濃度)蛍光ラテックス粒子水溶液(Invitrogen社製、平均粒径200nm)357μLに、50mmol/LのMES緩衝液(pH6.0)282μLを加え、5mg/mLの抗デオキシコール酸モノクローナル抗体-1(上記で作製したもの)201μLを添加し、室温で15分間攪拌した。その後、10mg/mLのEDC水溶液7.5μLを加え、室温で1.5時間撹拌した。2mol/LのGlycine(和光純薬社製)水溶液37.5μLを添加して15分間撹拌した後、遠心分離(15,000rpm、4℃、15分)を行い、蛍光ラテックス粒子を沈降させた。その後上清を取り除き、PBS(pH7.4)750μLを加え、超音波洗浄機により蛍光ラテックス粒子を再分散させた。再度、遠心分離(15,000rpm、4℃、15分)を行って上清を除いた後、1質量%BSAを含むPBS(pH7.4)750μLを加えて、蛍光ラテックス粒子を再分散させることで、抗デオキシコール酸抗体1種を結合させた蛍光ラテックス粒子の1質量%溶液を調製した。
【0083】
(6−4)抗ケノデオキシコール酸抗体のみを吸着させた蛍光粒子4の調製
2質量%(固形分濃度)蛍光ラテックス粒子水溶液(Invitrogen社製、平均粒径200nm)357μLに、50mmol/LのMES緩衝液(pH6.0)282μLを加え、5mg/mLの抗ケノデオキシコール酸モノクローナル抗体(上記で作製したもの)201μLを添加し、室温で15分間攪拌した。その後、10mg/mLのEDC水溶液7.5μLを加え、室温で1.5時間撹拌した。2mol/LのGlycine(和光純薬社製)水溶液37.5μLを添加して15分間撹拌した後、遠心分離(15,000rpm、4℃、15分)を行い、蛍光ラテックス粒子を沈降させた。その後、上清を取り除き、PBS(pH7.4)750μLを加え、超音波洗浄機により蛍光ラテックス粒子を再分散させた。再度、遠心分離(15,000rpm、4℃、15分)を行って上清を除いた後、1質量%BSAを含むPBS(pH7.4)750μLを加えて、蛍光ラテックス粒子を再分散させることで、抗ケノデオキシコール酸抗体1種を結合させた蛍光ラテックス粒子の1質量%溶液を調製した。
【0084】
(7)基板の作製
ポリメチルメタクリレート(PMMA)の基体(三菱レイヨン(株)社製、アクリペット(登録商標)VH)を用意した。マグネトロンスパッタ法により、検出領域と参照領域の2箇所に、それぞれ厚さ45nmの金膜を片面に幅4mm、長さ3mmとなるように作製し、これを、基板を構成するためのチップとして使用した。このチップの検出領域の金膜面上に、結合体1、結合体2及び結合体3を含有比率(質量比で1:1:1)で含む液(濃度:50μg/mL in 50mmol/L MES緩衝液 pH6,150mmol/L NaCl)を点着し、乾燥させ、3種の結合体を固定化した基板1を複数作製した。また、それぞれの基板の参照領域には、(4)で作製した抗マウス抗体を含む液(濃度:50μg/mL in 50mmol/L MES緩衝液 pH6,150mmol/L NaCl)を点着して、乾燥させた。
【0085】
このように調製した3種類の複数の基板をセンサチップの流路として使用する前に、予め調製した洗浄用溶液(0.05質量%Tween20(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウラート、和光純薬社製)を含むPBS(pH7.4))300μLを用いて3回繰り返し洗浄した。
【0086】
(8)流路型センサチップの作製
特開2010−190880号公報の第2の実施形態の構成となるように、流路型センサチップを作製した。その概略図を
図1、
図2に示した。
図1は、センサチップ1の概略図であり、
図2は、センサチップ1の分解図である。センサチップ1は、上部部材2、中間部材3及び基板4から構成されている。上部部材2には、第一の容器5及び第二の容器6が設けられている。なお、第一の容器5及び第二の容器6を併せて、容器群7と称する。基板4には、流路10が形成されており、流路10の上には、検出領域8及び参照領域9が形成されている。
【0087】
(9)大型機(既存の胆汁酸測定試薬)での測定
免疫測定で、当業者により広く使用されている大型機である日立自動分析装置7170により、取り扱い説明書に従い、胆汁酸の量が既知である試料の測定を行い、胆汁酸の測定値を得た。
【0088】
(10)蛍光粒子を用いた胆汁酸の免疫測定
(9)で測定した胆汁酸の量が既知である試料を、(6−1)で調製した3種の胆汁酸抗体を吸着させた蛍光粒子1を含むカップにおいて予め10分間攪拌しながら混合した。次に、(7)で作製した基板1を封入した流路型センサチップにそれぞれ点着した。点着後、ポンプ吸引を行いながら混合液を10μL/分の速度で流下させ、胆汁酸・BSA結合体を固定した金膜面上に接触させてから1.5分間継続して蛍光強度を測定した。各基板において得られた検出領域と参照領域のそれぞれの蛍光強度の単位時間における増加速度を蛍光シグナル値として求め、検出領域のシグナル値を参照領域のシグナル値で除することで規格化を行った。また、胆汁酸濃度0の試料を用意して同様にして蛍光シグナル値の規格化を行い、胆汁酸を含まない試料からのシグナル値の規格化を行った。
【0089】
(11)検量線の作成
(10)で求めた、胆汁酸の量が既知である試料の規格化した蛍光シグナル値と、(9)で求めた大型機での測定値を対応つけることで、(1−1)から(1−3)で調製した、胆汁酸・BSA結合体−1〜3を用いた基板に対して、それぞれ検量線を作成した。
【0090】
(12)胆汁酸の量が未知である試料の測定結果
北山ラベス(株)からイヌの血清1〜4を入手し、表3に示すような蛍光粒子と基板の組み合わせでそれぞれ実験を行い、(11)で作成した検量線を使用して胆汁酸の測定値を得た。また、上記血清1〜4について、大型機を用いて胆汁酸の測定値を求めた。
大型機の測定値を基準にして、その値からどれだけ測定値が乖離したかを以下の計算式で計算し、結果を表3にまとめた。
【0091】
大型機との乖離幅%の計算式
【数1】
【0092】
【表3】
【0093】
表3の結果から、蛍光粒子が、3種の異なる抗体が混合して存在する蛍光粒子である場合、測定対象物質である胆汁酸を正確に測定可能なことがわかり、本発明の効果が確認された。