特許第6603234号(P6603234)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6603234タングステン材料のCMP用組成物及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6603234
(24)【登録日】2019年10月18日
(45)【発行日】2019年11月6日
(54)【発明の名称】タングステン材料のCMP用組成物及び方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20191028BHJP
   B24B 37/00 20120101ALI20191028BHJP
   C09K 3/14 20060101ALI20191028BHJP
   C09G 1/02 20060101ALI20191028BHJP
【FI】
   H01L21/304 622X
   H01L21/304 621D
   H01L21/304 622D
   B24B37/00 H
   C09K3/14 550D
   C09K3/14 550Z
   C09G1/02
【請求項の数】16
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-556882(P2016-556882)
(86)(22)【出願日】2015年3月5日
(65)【公表番号】特表2017-515298(P2017-515298A)
(43)【公表日】2017年6月8日
(86)【国際出願番号】US2015018917
(87)【国際公開番号】WO2015138209
(87)【国際公開日】20150917
【審査請求日】2018年2月6日
(31)【優先権主張番号】61/951,670
(32)【優先日】2014年3月12日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500397411
【氏名又は名称】キャボット マイクロエレクトロニクス コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100093665
【弁理士】
【氏名又は名称】蛯谷 厚志
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【弁理士】
【氏名又は名称】胡田 尚則
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【弁理士】
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100195213
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 健治
(72)【発明者】
【氏名】リン チー−アン
(72)【発明者】
【氏名】ジャン チェン
【審査官】 杢 哲次
(56)【参考文献】
【文献】 特表2009−513028(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0175298(US,A1)
【文献】 特開平11−116948(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0028466(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
B24B 37/00
C09G 1/02
C09K 3/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タングステンを含有する基材を研磨するための化学機械研磨(CMP)方法であって、
CMP組成物であって、
(a)使用場所において、前記組成物中に25〜1000百万分率(ppm)の範囲の濃度で存在するポリアミノ化合物であって、少なくとも1種のポリ(エチレンイミン)化合物を含む、ポリアミノ化合物と、
(b)遷移金属イオン及びIIIA/IVA族金属イオンから選択される、少なくとも1種の金属イオンと、
(c)マロン酸、メチルマロン酸、エチルマロン酸、フェニルマロン酸、及びヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸からなる群より選択される少なくとも1種の化合物を含むキレート剤であって、前記少なくとも1種の金属イオン及び前記キレート剤が、0.5:1〜2:1のモル比で存在する、キレート剤と、
(d)粒子状のアルミニウムドープシリカ研磨剤であって、使用場所において、0.05〜3質量%(wt%)の範囲の濃度で前記組成物に存在する、粒子状のアルミニウムドープシリカ研磨剤と、
(e)酸化剤と、
(f)任意選択で、アミノ酸と
を含有する水性キャリアを含むCMP組成物を用いて前記基材の表面をすり減らす工程を含む方法。
【請求項2】
前記ポリアミノ化合物が、式H2N−(CH2CH2NH)n−CH2CH2−NH2(式中、nは2、3、4、又は5)の化合物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記アルミニウムドープシリカ研磨剤がアルミニウムドープコロイダルシリカを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記組成物が、グリシン及びリシンからなる群より選択される少なくとも1種のアミノ酸を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記金属イオンが第2鉄イオンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記酸化剤が過酸化水素を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記金属イオンが、使用場所において、前記組成物中に5〜1000ppmの範囲の濃度で存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記キレート剤が、使用場所において、前記組成物中に10〜4000ppmの範囲の濃度で存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記組成物が、500〜3000ppmのアミノ酸を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記酸化剤が、0.1〜10wt%の範囲の濃度で存在する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
タングステンを含有する基材を研磨するための化学機械研磨(CMP)方法であって、使用場所において、
(a)少なくとも1種のポリ(エチレンイミン)化合物を含む、25〜2000ppmのポリアミノ化合物と、
(b)5〜1000ppmの第2鉄イオンと、
(c)10〜4000ppmのキレート剤と、
(d)0.05〜3wt%の粒子状のアルミニウムドープシリカ研磨剤と、
(e)0.1〜10wt%の過酸化水素と、
(f)任意選択で、500〜3000ppmのアミノ酸と
を含有する水性キャリアを含むCMP組成物を用いて前記基材の表面をすり減らす工程を含む方法。
【請求項12】
前記ポリアミノ化合物が、式H2N−(CH2CH2NH)n−CH2CH2−NH2(式中、nは2、3、4、又は5)の化合物を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記第2鉄イオン及び前記キレート剤が、それぞれ0.5:1〜2:1のモル比で存在する、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記キレート剤が、マロン酸、メチルマロン酸、エチルマロン酸、フェニルマロン酸、及びヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸からなる群より選択される少なくとも1種の化合物を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記アルミニウムドープシリカ研磨剤がアルミニウムドープコロイダルシリカを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
前記組成物が、500〜3000ppmのグリシンを含む、請求項11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、研磨組成物及び方法に関連する。より具体的には、本発明はタングステン表面を研磨するのに適した化学機械研磨組成物に関連する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウエハは、典型的に、様々な金属層が堆積しているケイ素又はヒ化ガリウムのような基材を含む。タングステン(W)は、多層配線間で接続するための薄膜層として又はタングステンプラグとしての用途を含む、様々な半導体用途において使用される。
【0003】
タングステンの1つの一般的な使用において、金属ビア又はコンタクトは、ブランケットタングステンを堆積した後に、化学機械研磨(CMP)プロセスを行うことによって形成される。典型的なプロセスにおいては、「ビアホール」は層間誘電体を通じてエッチングされて、薄いTiN接着層は一般的に層間誘電体上かつビアホール中に形成される。次に、タングステン膜は接着層上かつビア中にブランケットとして堆積される。その堆積は、ビアホールがタングステンで完全に満たされるまで続く。次いで、層間誘電体の上表面に形成された金属膜は化学機械研磨によって除去されて、したがって、金属ビア又はプラグを形成する。
【0004】
基材の表面のCMP用組成物及び方法は、当技術分野でよく知られる。半導体基材(例えば、集積回路)の金属含有表面のCMP用研磨組成物(研磨スラリー、CMPスラリー、及びCMP組成物としても知られる)は、典型的に、研磨剤、様々な添加剤化合物などを含有する。
【0005】
従来のCMP技術では、CMP装置において、基材キャリア又は研磨ヘッドをキャリア組立体に設置して、研磨パッドと接触して配置する。キャリア組立体は基材に対して制御可能な圧力を与えて、基材を研磨パッドに対して押し付ける。パッドとキャリアは、その取り付けられた基材と共に互いに対して動かされる。パッドと基材の相対運動は基材の表面をすり減らす役目を果たし、基材表面から材料の一部を除去して、したがって、基材を研磨する。基材表面の研磨は、典型的に、研磨組成物の化学作用によって(例えば、CMP組成物中に存在する酸化剤若しくは他の添加剤によって)及び/又は研磨組成物中に懸濁された研磨剤の機械作用によってさらに助けられる。典型的な研磨剤材料としては、二酸化ケイ素、酸化セリウム、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、及び酸化チタンが挙げられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
タングステン層を除去するために使用されるCMPプロセスは、タングステン層又はタングステンプラグに凹部を不所望にもたらす場合がある。タングステンの凹部は、ウエハの表面にわたるタングステン膜を完全に除去するのを確実にするために過剰研磨が使用された場合に増加する。タングステンの凹部は表面非平坦性をもたらし、回路の完全性を損なう場合がある。凹部はまた、デバイスの後のレベルに層を堆積することに対して様々な複雑な問題を引き起こす。
【0007】
タングステンの凹部形成を減少させて、同時にタングステン除去の有用な速度を維持する、タングステンを含有する基材のCMPのための組成物及び方法についての継続的なニーズが存在する。本発明ではこれらの継続的なニーズに取り組む。
【課題を解決するための手段】
【0008】
タングステンを含有する基材を研磨するのに適したCMP方法を説明する。その方法は、粒子状のシリカ研磨剤と、ポリアミノ化合物と、遷移金属イオン(例えば、第2鉄イオン)及びIIIA/IVA族金属イオン(例えば、スズイオン)から選択される少なくとも1種の金属イオンと、キレート剤と、酸化剤と、任意選択でアミノ酸とを含有する水性キャリア流体を含み、それらから本質的になり、又はそれらからなるCMP研磨組成物を用いて基材の表面をすり減らす工程を含む。これらの添加剤は、本明細書で説明するような組成物中で使用された場合は、タングステンを一般的なCMPプロセスに従って研磨した際に起こるタングステンの凹部を減少する結果となる。
【0009】
好ましくは、粒子状のシリカ研磨剤材料は、使用場所において、組成物中に0.05質量%(wt%)〜3wt%(例えば、0.1〜1.5wt%)の範囲の濃度で存在する。粒子状のシリカ研磨剤材料は、半導体材料を研磨するためのCMP組成物中で使用するのに適した任意のシリカ研磨剤材料、好ましくは、コロイダルシリカであることができる。
【0010】
幾つかの用途において、ポリアミノ化合物は、少なくとも1種のポリ(エチレンイミン)化合物、例えば、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、及びペンタエチレンヘキサミンを含み、それらから本質的になり、又はそれらからなる。好ましくは、ポリアミノ化合物は、使用場所において、組成物中に1〜2000百万分率(ppm)(例えば、5〜1000ppm)の範囲の濃度で存在する。
【0011】
金属イオンは、複数の酸化状態の間で循環することができ、好ましくは、使用場所において、組成物中に5〜1000ppm(例えば、10〜500ppm)の範囲の濃度で存在する。
【0012】
キレート剤は、CMP組成物の金属イオン成分をキレート化することができる任意の化合物であることができ、好ましくは、マロン酸、メチルマロン酸、エチルマロン酸、フェニルマロン酸、及びヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸(例えば、DEQUEST2010)からなる群より選択される少なくとも1種の化合物を含み、それらから本質的になり、又はそれらからなる。好ましくは、キレート剤は、使用場所において、組成物中に10〜4000ppm(例えば、50〜2000ppm)の範囲の濃度で存在する。
【0013】
幾つかの実施形態において、本明細書で説明する方法は、0.5:1〜2:1の範囲の金属イオン対キレート剤のモル比を有する研磨組成物を利用する。
【0014】
酸化剤は、好ましくは、使用場所において、組成物中に0.1〜10質量%(例えば、0.5〜5wt%)の範囲の濃度で存在する。幾つかの好ましい実施形態においては、酸化剤は過酸化水素を含み、それらから本質的になり、又はそれらからなる。
【0015】
研磨組成物は、任意選択で、例えば、500ppm(0.05wt%)〜3000ppm(0.3wt%)の範囲の濃度でアミノ酸を含むことができる。アミノ酸は、CMP組成物中で腐食防止剤として使用するのに適した任意のアミノ酸であることができる。幾つかの実施形態においては、アミノ酸はグリシン又はリシンを含み、それらから本質的になり、又はそれらからなる。
【0016】
本明細書で説明するCMP方法は、好ましくは、研磨パッド及び本発明のCMP組成物を用いて基材の表面をすり減らす工程と、表面からタングステンの少なくとも一部を除去するのに十分な時間の間、パッドと基材間でCMP組成物の一部を基材表面と接触して維持しながら、研磨パッドと基材間で相対運動を引き起こす工程とを含む。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】表1で組成物6として記載されるCMP組成物を使用してタングステンパターンウエハを研磨することから得られたタングステンの凹部深さのグラフを提供する。
図2】表1で組成物7として記載されるCMP組成物を使用してタングステンパターンウエハを研磨することから得られたタングステンの凹部深さのグラフを提供する。
【発明を実施するための形態】
【0018】
タングステンを含有する基材を研磨するための方法を説明し、それはCMP組成物を用いて基材の表面をすり減らす工程を含む。好ましい実施形態において、すり減らす工程は、パッドと基材間でCMP組成物が存在する下で、基材の表面を研磨パッドと接触させることによって達成される。本明細書で説明する方法は、発生するタングステンの凹部の量を減少させながら、タングステン層を除去するか又は研磨することを可能とする。本明細書で説明する方法で使用されるCMP組成物は、粒子状のシリカ研磨剤と、ポリアミノ化合物と、遷移金属イオン及びIIIA/IVA族金属イオンから選択される少なくとも1種の金属イオンと、キレート剤と、酸化剤と、任意選択でアミノ酸とを含有する水性キャリア流体を含む。
【0019】
適切な研磨パッドは、ソリッド、発泡体、織布又は不織布の材料を含む任意の材料で構築するか又は構成することができる。必要な場合は、パッドは溝を含むことができる。パッドを形成するための適切な高分子材料としては、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニル、ナイロン、フッ化炭素、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリアクリレート、ポリエーテル、ポリエチレン、ポリアミド、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリプロピレン、それらの共形成製品、及びそれらの混合物が挙げられる。
【0020】
本明細書で説明するCMP方法で有用なシリカ研磨剤材料は、半導体材料のCMPで使用するのに適した任意の粒子状のシリカ研磨剤材料を含む。コロイダルシリカが好ましい研磨材である。好ましくは、シリカ研磨剤は、組成物中に0.05〜3質量%、例えば、0.1〜1.5wt%の範囲の濃度で存在する。研磨剤粒子は、好ましくは、10nm〜100nmの範囲で平均粒子サイズを有する。そのようなシリカ材料の例としては、略球形状の粒子を有するシリカ、偏球又は「繭形状」粒子を有するシリカなどを含む。シリカは実質的に純粋な二酸化ケイ素を含むことができるか又はアルミニウム若しくはカリウムのような他の金属でドープされたシリカを含むことができて、それらは当技術分野でよく知られる。
【0021】
研磨剤は、望ましくは、CMP組成物中に、より具体的にはCMP組成物の水性成分中に懸濁される。研磨剤がCMP組成物中に懸濁された場合、研磨剤は好ましくはコロイド状で安定である。用語「コロイド」は、液体キャリア中に研磨剤粒子を懸濁することを言い表す。「コロイド状で安定」は、長時間その懸濁を維持することを言い表す。本発明の範囲内で、研磨材を100mlのメスシリンダーの中に入れて2時間撹拌しないまま放置したときに、メスシリンダーの下部50mlの粒子濃度([B]、単位はg/ml)と、メスシリンダーの上部50mlの粒子濃度([T]、単位はg/ml)との差を、研磨材組成物中の粒子の初期濃度([C]、単位はg/ml)で除した値が0.5以下(すなわち、{[B]−[T]}/[C]≦0.5)である場合、研磨剤はコロイド状で安定であるとみなされる。[B]−[T]/[C]の値は、望ましくは0.3以下であり、好ましくは0.1以下である。
【0022】
本明細書及び添付の特許請求の範囲内で使用されるように、用語「ポリアミノ化合物」は、第1級アミノ基、第2級アミノ基、第3級アミノ基、又はそれらの任意の組み合わせであることができる2つ以上のアミノ基を含有する化合物を包含する。そのようなポリアミノ化合物の例としては、2−((2−((2−ヒドロキシエチル)アミノ)エチル)アミノ)エタノール、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)エチレンジアミン、2−{[2−(ジメチルアミノ)エチル]メチルアミノ}エタノール、2,2−アミノエチルアミノエタノール、2−(3−アミノプロピルアミノ)エタノール、1−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン、1,4−ビス(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン、コリン、N−プロピルエチレンジアミン、ポリ(エチレンイミン)化合物、例えば、ペンタエチレンヘキサミン、テトラエチレンペンタミン、トリエチレンテトラミンなど、及びそれらの2以上の組み合わせが挙げられる。
【0023】
好ましい実施形態においては、本発明の方法で使用されるCMP組成物としては、高分子ポリアミノ化合物、例えば、H2N−(CH2CH2NH)n−CH2CH2−NH2(式中、nは2以上(例えば、nは2、3、4、又は5))のような一般式を有するポリ(エチレンイミン)、例えば、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、及びペンタエチレンヘキサミンが挙げられる。好ましいポリ(エチレンイミン)化合物は、鎖あたり3〜6つのエチレンイミン基を含む。好ましくは、CMP組成物は、1〜2000ppm(例えば、5〜1000ppm)のポリアミノ化合物を含む。
【0024】
本明細書で使用され、当技術分野でよく理解されるように、用語「遷移金属イオン」は、周期表でIIIB、IVB、VB、VIB、VIIB、VIIIB、IB、及びIIB族(しばしば、8、9、及び10族を含むVIIIB族と共に、3〜12族とも言い表される)の金属イオンを言い表し、当技術分野でよく知られるように、用語「IIIA/IVA族金属イオン」は、周期表のIIIA族(ホウ素グループ、13族とも言い表される)及びIVA族(炭素グループ、14族とも言い表される)からのイオンを言い表す。金属イオンは、研磨プロセスの間に複数の酸化状態(例えば、Fe+3/Fe+2)間で循環することができる。そのような遷移金属及びIIIA/IVA族金属イオンの非限定的な例としては、Ag、Co、Cr、Cu、Fe、Mo、Mn、Nb、Ni、Os、Pd、Ru、Ti、V、及びSnイオンが挙げられる。幾つかの実施形態において、好ましい金属イオンは、Ag、Cu、又はFeイオンである。Feイオン(例えば、第2鉄イオン)が特に好ましい。典型的に、金属イオン(例えば、第2鉄イオン)は塩、例えば、硝酸第2鉄として与えられる。水溶液中で、金属イオンは、典型的に、水和物として存在するか、あるいはそれに加えて又は水和物の水分子の代わりに、1つ若しくは複数の配位子、例えば、ハロゲン化合物、水酸化物、若しくはキレート剤を含む錯体として存在する。好ましい第2鉄イオン源は、硝酸第2鉄(例えば、硝酸第2鉄9水和物)である。本明細書で説明するCMP組成物では、組成物中の少なくとも一部の、及び、幾つかの実施形態では組成物中の実質全ての、遷移金属イオン及びIIIA/IVA族金属イオンは、組成物のキレート剤成分との錯体として存在する。好ましくは、金属イオンは、使用場所において、組成物中に5〜1000ppm、例えば、10〜500ppmの範囲の濃度で存在する。
【0025】
本明細書で使用され、添付の特許請求の範囲内で使用されるように、用語「キレート剤」は組成物の金属イオン成分と相互作用して、金属イオン成分と結合するか又は錯体を形成するように構成される2つ以上のカルボン酸基又はホスホン酸基を含む化合物を包含する。
【0026】
適切なキレート剤の例としては、限定されないが、ジカルボン酸(例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フタル酸、酒石酸、アスパラギン酸、グルタミン酸など)、ポリカルボン酸(例えば、クエン酸、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸、ポリアクリル酸、ポリマレイン酸など)、アミノカルボン酸(例えば、アルファアミノ酸、ベータアミノ酸、オメガアミノ酸など)、リン酸塩(例えば、リン酸及びそれらの塩)、ポリリン酸塩(例えば、ポリリン酸及びそれらの塩)、ホスホン酸(例えば、アミノリン酸塩、ホスホノカルボン酸など)、高分子キレート剤、それらの塩、前述の2つ以上の組み合わせなどが挙げられる。
【0027】
好ましいキレート剤は、マロン酸、メチルマロン酸、エチルマロン酸、フェニルマロン酸、及びヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸、前述の任意の塩、又は前述の2つ以上の組み合わせを含み、それらから本質的になり、又はそれらからなる。好ましくは、キレート剤は、CMP組成物中に10〜4000ppm、例えば、50〜2000ppmの範囲の量で存在する。幾つかの実施形態においては、金属イオン対キレート剤のモル比は0.5:1〜2:1の範囲である。
【0028】
本発明のCMP組成物及び方法で使用するのに適した酸化剤としては、限定されないが、過酸化水素、過硫酸塩(例えば、モノ過硫酸アンモニウム、ジ過硫酸アンモニウム、モノ過硫酸カリウム、及びジ過硫酸カリウム)、過ヨウ素酸塩(例えば、過ヨウ素酸カリウム)、それらの塩、並びに前述の2つ以上の組み合わせが挙げられる。過酸化水素が好ましい酸化剤である。好ましくは、酸化剤は、組成物中に0.1〜10wt%(例えば、0.5〜5wt%)の量で存在する。
【0029】
本明細書で説明するCMP組成物は、任意選択で、1種又複数種のアミノ酸を含むことができる。好ましくは、アミノ酸は、例えば、500〜3000ppmの範囲の濃度である、グリシン、リシンなどのような腐食防止剤である。
【0030】
理論によって拘束することを望むわけではないが、本明細書で説明するCMP組成物においては、ポリアミノ化合物がタングステン凹部形成防止剤及び腐食防止剤として作用し、金属イオン(例えば、第2鉄イオン)がタングステン除去速度触媒として作用し、キレート剤が金属イオン安定剤として作用し、アミノ酸がタングステン腐食防止剤として作用し、粒子状のシリカ研磨剤がタングステン除去速度促進剤として作用する。
【0031】
本明細書で説明するCMP組成物はまた、任意選択で、一般的にCMP組成物に含まれる、適量の1種又は複数種の添加剤材料、例えば、増粘剤、殺生物剤などを含むことができる。
【0032】
水性キャリアは、任意の水性溶媒、例えば、水、水性メタノール、水性エタノール、それらの組み合わせなどを含むことができる。好ましくは、水性キャリアは脱イオン水であるか又は脱イオン水を含む。
【0033】
本発明の方法で使用されるCMP組成物は、好ましくは、酸性pH(例えば、2〜4のpH)を有する。
【0034】
本発明の方法で使用されるCMP組成は、当業者に知られている多くの技術である任意の適切な技術によって調製することができる。CMP組成物はバッチプロセスか又は連続プロセスで調製することができる。一般的に、CMP組成物は任意の順序でそれらの成分を組み合わせることによって調製することができる。本明細書で使用される用語「成分」は、個々の成分(例えば、研磨剤、キレート剤、酸、塩基、酸化剤など)、並びに任意の組み合わせの成分を含む。例えば、研磨剤を水に分散することができ、キレート剤及びポリアミノ化合物を加えて、成分をCMP組成物に組み込むことができる任意の方法によって混合することができる。典型的に、酸化剤は、組成物がCMPプロセスで使用する準備ができるまでCMP組成物に加えない、例えば、酸化剤は研磨の開始の直前に加えることができる。pHは任意の適切な時間で調整することができる。
【0035】
本明細書で説明する方法で使用されるCMP組成物はまた、使用前に適切な量の水性溶媒(例えば、水)で希釈することを意図した濃縮物として供給することができる。そのような実施形態において、CMP組成物の濃縮物は、適切な量の水性溶媒でその濃縮物を希釈した際に研磨組成物の各成分が使用するのに適切な範囲内の量でCMP組成物中に存在するような量で、水性溶媒に分散又は溶解した様々な成分を含むことができる。
【0036】
本発明のCMP方法は、特に、化学機械研磨装置と併せて使用するのに適する。典型的に、CMP装置は、使用中、動いていてかつ軌道運動、直線運動、及び/又は円運動から生じる速度を有する定盤と、この定盤と接触して運動中に定盤に対して動く研磨パッドと、研磨パッドの表面に対して接触して動くことによって研磨されるべき基材を保持するキャリアとを含む。基材の研磨は、基材が研磨パッド及びCMP組成物と接触して配置されて、次いで、基材に対して研磨パッドを動かし、基材の少なくとも一部をすり減らすことによって起こる。
【0037】
以下の例は、本明細書で説明する組成物及び方法の様々な特徴及び態様をさらに説明するが、もちろん、その範囲を限定する任意の方法として解されるべきでない。本明細書内で並びに以下の例及び請求項で使用されるように、ppm又は百分率(wt%)として表される濃度は、組成物の質量によって除された対象の活性成分の質量に基づく。
【実施例】
【0038】
[例1]
タングステンの凹部を減らすのに有用なCMP組成物の幾つかの非限定的な例を以下の表1に例示する。表において、「研磨剤」と見出しが付けられたカテゴリーは、組成物中で使用された粒子状のシリカ研磨剤を示し、「CS−A」は略球状の粒子形状を有し、ある金属(Al、K)ドープを含むコロイダルシリカを表し、「CS−B」は高純度でおよそ偏球又は繭形状を有するコロイダルシリカを表す。シリカ粒子は、それぞれの場合において70nmの平均粒子サイズを有する。「Fe」と見出しが付けられたカテゴリーは金属イオン濃度を表し、それは、この場合においては、組成物製剤に硝酸第2鉄9水和物として供給された第2鉄イオンであった。「キレート」と見出しが付けられたカテゴリーは組成物中で使用されたキレート剤を表し、「MA」はマロン酸を表し、「HD」はヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸を表す。「AA」と見出しが付けられたカテゴリーは組成物中で使用されたアミノ酸を表し、「G」はグリシンを表す。「ポリアミノ」という見出しは組成物中で使用されたポリアミノ化合物を表し、「PEHA」はペンタエチレンヘキサミンを表し、「DETA」はジエチレントリアミンを表し、「TETA」はトリエチレンテトラミンを表し、「TEPA」はテトラエチレンペンタミンを表す。
【0039】
ポリアミノ化合物を含まない3つの比較試料を作り出し、表1に「標準A」、「標準B」、及び「標準C」として示した。表1での濃度は使用場所ベースに基づく。
【0040】
【表1】
【0041】
[例2]
この例は、タングステンでの凹部深さを最小化しながら、基材からタングステンを除去するための、選ばれた組成物の性能を例示する。表1で説明した様々な組成物を利用してタングステンパターンウエハを研磨した。ウエハは、幾つかのパターンの特徴を含んでいて、それらは、特徴A:0.18μmの幅を有するタングステンライン及びタングステンライン間で0.18μmの幅を有する酸化物スペーサーライン、特徴B:0.25μmの幅を有するタングステンライン及びタングステンライン間で0.25μmの幅を有する酸化物スペーサーライン、特徴C:1.5μmの幅を有するタングステンライン及びタングステンライン間で0.5μmの幅を有する酸化物スペーサーライン、特徴D:2μmの幅を有するタングステンライン及びタングステンライン間で2μmの幅を有する酸化物スペーサーライン、並びに、特徴E:3μmの幅を有するタングステンライン及びタングステンライン間で7μmの幅を有する酸化物スペーサーラインを含む。
【0042】
タングステンパターンウエハを、以下の研磨条件の下でベンチトップ型の研磨機を使用して研磨した。その条件は、放射状の溝を持つ硬質微細発砲ポリウレタン研磨パッドを使用したAPPLIED MATERIALS MIRRAデバイス、2.5psiの下向きの力、113rpmの定盤速度、117rpmのキャリア速度、及び150mL/分のスラリー供給速度である。例1の様々な組成物を用いた研磨の後のタングステンの凹部深さを、走査プローブ顕微鏡(VEECO DIMENSION3100)によって測定して、表2に示した。凹部深さをオングストローム(Å)で示す。
【0043】
【表2】
【0044】
表2から得られた代表的な試料のタングステンの凹部深さの結果を図1及び図2にプロットした。図1は組成物6を用いた研磨によって得られたタングステンの凹部深さを示す。図2は組成物7を用いた研磨によって得られたタングステンの凹部深さを示す。標準A及び標準Bを用いた研磨によって得られたタングステンの凹部深さをまた、比較の目的のために図1及び図2に含めた。組成物6及び7についての除去速度は600〜800Å/分の範囲であった。
【0045】
ポリアミノ化合物として、組成物6がペンタエチレンヘキサミンを含有し、組成物7がテトラエチレンペンタミンを含有することを除いて、組成物6は組成物7と全く一致している。組成物6はまた、組成物7に比べ3倍多くの研磨剤を含有する。組成物6がより高い研磨剤濃度を含有するにもかかわらず、研磨されたウエハのそれぞれ1枚については、組成物6に対するタングステンの凹部深さは組成物7の凹部深さより少ない。したがって、少なくともテトラエチレンペンタミンと比較した場合は、ペンタエチレンヘキサミンを使用することはタングステンの凹部形成を減らすのに有利である。
【0046】
全ての場合において、組成物は、標準A、標準B、及び標準Cの比較例と比較して研磨中に起きたタングステンの凹部のサイズを減らした。
【0047】
本明細書で引用された刊行物、特許出願及び特許を含む全ての参考文献は、それぞれの参考文献が個別及び具体的に示されてその参照により組み込まれ、全体として本明細書に記載されているのと同じ程度に、その参照により本明細書に組み込まれる。
【0048】
本発明を説明する中での(特に特許請求の範囲の中での)「1つの(a)」、「1つの(an)」及び「その(the)」という用語並びに同様の指示語の使用は、本明細書で別段の指摘がないか又は文脈によって明確に否定されない限り、単数及び複数の両方を包含すると解されるべきである。「含む(comprising)」、「有する(having)」、「含む(including)」及び「含有する(containing)」という用語は、特に断りのない限り、制限のない用語(すなわち、「含むが、限定されない」ことを意味する)として解されるべきである。本明細書における値の範囲の記載は、本明細書で別段の指摘がない限り、単に範囲内に入っているそれぞれ独立した値を個々に言及することの省略方法として機能することを意図しており、それぞれの独立した値は、まるでそれが本明細書で個々に列挙されたかのように本明細書中に組み込まれる。本明細書に記載の全ての方法は、本明細書で別段の指摘がないか又は文脈によって明確に否定されない限り、任意の適切な順序で実施することができる。本明細書で提供される任意の及び全ての例又は例示的な語(例えば、「のような(such as)」)の使用は、単に本発明をより明らかにすることを意図しており、特許請求の範囲に別段の記載がない限り、本発明の範囲に関する限定をもたらすものではない。本明細書中の如何なる言語も、特許請求の範囲に記載されていない任意の要素を本発明の実施に必須であるものとして示すと解されるべきではない。
【0049】
本発明を実施するために、発明者らが知っている最良の形態を含めて、本発明の好ましい実施形態が本明細書において記載されている。それらの好ましい実施形態の変形態様は、前述の説明を読めば当業者には明らかになるであろう。発明者らは、当業者がそのような変形態様を適宜利用すると予期しており、発明者らは本明細書に具体的に記載したのと別の方法で、本発明が実施されることを意図している。したがって、本発明は、準拠法によって容認されているように、特許請求の範囲に記載される主題の全ての改良及びそれと同等なものを包含する。さらに、それらの全ての可能な変形態様における上記の要素の任意の組み合わせは、本明細書で別段の指摘がないか又は文脈によって明確に否定されない限り、本発明によって包含される。
図1
図2