(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
酸の作用により極性が増大する樹脂、及び、活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物を含有する感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を、基板上に塗布して、レジスト膜を形成する工程aと、
前記レジスト膜上に上層膜形成用組成物を塗布することにより、前記レジスト膜上に上層膜を形成する工程bと、
前記上層膜が形成された前記レジスト膜を、ArFエキシマレーザー光(193nm)を用いて液浸露光する工程cと、
前記露光された前記レジスト膜を、有機溶剤を含む現像液を用いて現像してパターンを形成する工程dと、
を備え、前記上層膜形成用組成物が、(A2)エーテル結合、チオエーテル結合、ヒドロキシル基、チオール基、カルボニル結合及びエステル結合からなる群より選択される少なくとも1種の結合又は基を2つ以上有する分子量3000以下の化合物を含有し、前記感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物における前記活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物の含有量は、前記感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物の全固形分を基準として、16.5質量%以上である、パターン形成方法。
酸の作用により極性が増大する樹脂、及び、活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物を含有する感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を、基板上に塗布して、レジスト膜を形成する工程aと、
前記レジスト膜上に上層膜形成用組成物を塗布することにより、前記レジスト膜上に上層膜を形成する工程bと、
前記上層膜が形成された前記レジスト膜を、ArFエキシマレーザー光(193nm)を用いて液浸露光する工程cと、
前記露光された前記レジスト膜を、有機溶剤を含む現像液を用いて現像してパターンを形成する工程dと、
を備え、前記上層膜形成用組成物が、(A2)エーテル結合、チオエーテル結合、ヒドロキシル基、チオール基、カルボニル結合及びエステル結合からなる群より選択される少なくとも1種の結合又は基を含有する分子量3000以下の化合物を含有し、前記化合物(A2)に含まれる炭素原子数は9個以上であり、前記感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物における前記活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物の含有量は、前記感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物の全固形分を基準として、16.5質量%以上である、パターン形成方法。
前記工程bが、前記レジスト膜上に前記上層膜形成用組成物を塗布した後に、100℃以上で加熱することにより、前記レジスト膜上に上層膜を形成する工程である、請求項1〜11のいずれか1項に記載のパターン形成方法。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を実施するための形態について説明する。
尚、本明細書における基(原子団)の表記において、置換及び無置換を記していない表記は、置換基を有さないものと共に置換基を有するものをも包含するものである。例えば、「アルキル基」とは、置換基を有さないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含するものである。
本明細書中における「活性光線」又は「放射線」とは、例えば、水銀灯の輝線スペクトル、エキシマレーザーに代表される遠紫外線、極紫外線(EUV光)、X線、電子線等を意味する。また、本発明において光とは、活性光線又は放射線を意味する。また、本明細書中における「露光」とは、特に断らない限り、水銀灯、エキシマレーザーに代表される遠紫外線、X線、EUV光などによる露光のみならず、電子線、イオンビーム等の粒子線による描画も露光に含める。
【0009】
以下では、まず、本発明のパターン形成方法について説明した後、本発明のパターン形成方法に用いる感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物(以下、「本発明のレジスト組成物」ともいう。)、及び、上層膜形成用組成物(以下、「トップコート組成物」ともいう。)について説明する。
【0010】
[パターン形成方法]
本発明のパターン形成方法は、酸の作用により極性が増大する樹脂と、活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物を含有する感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を、基板上に塗布して、レジスト膜を形成する工程aと、上記レジスト膜上に上層膜形成用組成物を塗布することにより、上記レジスト膜上に上層膜を形成する工程bと、上記上層膜が形成された上記レジスト膜を露光する工程cと、上記露光された上記レジスト膜を、有機溶剤を含む現像液を用いて現像してパターンを形成する工程dと、を備え、上記感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物における上記活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物の含有量は、上記感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物の全固形分を基準として、16.5質量%以上である、パターン形成方法である。
これにより、良好なCDU及びLERと、良好なELとを共に実現できる。
【0011】
<工程a>
工程aでは、本発明のレジスト組成物を基板上に塗布してレジスト膜(感活性光線性又は感放射線性膜)を形成する。塗布方法としては、特に限定されず、従来公知のスピンコート法、スプレー法、ローラーコート法、浸漬法などを用いることができ、好ましくはスピンコート法である。
本発明のレジスト組成物を塗布後、必要に応じて基板を加熱(プリベーク)してもよい。これにより、不溶な残留溶剤の除去された膜を均一に形成することができる。プリベークの温度は特に限定されないが、50℃〜160℃が好ましく、より好ましくは、60℃〜140℃である。
【0012】
レジスト膜を形成する基板は特に限定されるものではなく、シリコン、SiO
2、SiN等の無機基板、SOG等の塗布系無機基板等、IC等の半導体製造工程、液晶、サーマルヘッド等の回路基板の製造工程、さらにはその他のフォトファブリケーションのリソグラフィー工程で一般的に用いられる基板を用いることができる。
【0013】
レジスト膜を形成する前に、基板上に予め反射防止膜を塗設してもよい。
反射防止膜としては、チタン、二酸化チタン、窒化チタン、酸化クロム、カーボン、アモルファスシリコン等の無機膜型と、吸光剤とポリマー材料からなる有機膜型のいずれも用いることができる。また、有機反射防止膜として、ブリューワーサイエンス社製のDUV30シリーズや、DUV−40シリーズ、シプレー社製のAR−2、AR−3、AR−5、日産化学社製のARC29AなどのARCシリーズ等の市販の有機反射防止膜形成用組成物を使用して形成することもできる。
【0014】
<工程b>
工程bでは、工程aで形成したレジスト膜上に、上層膜形成用組成物(トップコート組成物)を塗布し、その後、必要に応じて加熱(プリベーク(PB;Prebake))することにより、レジスト膜上に上層膜(以下、「トップコート」ともいう。)を形成する。
【0015】
レジスト膜中に、活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物(光酸発生剤)を多量に配合することで、CDU及びLERが良化する。しかし、その一方で、レジスト膜中の光酸発生剤が過剰になると、レジスト膜のガラス転移温度が低下して、発生した酸が拡散しやすくなり、ELが劣る場合がある。
このとき、レジスト膜上にトップコートを形成することで、膜全体としてガラス転移温度が上昇して、酸拡散性が抑制されるため、良好なELが得られると考えられる。
【0016】
本発明の効果がより優れるという理由から、工程bにおけるプリベークの温度(以下、「PB温度」ともいう。)は、100℃以上が好ましく、105℃以上がより好ましく、110℃以上が更に好ましく、120℃以上が特に好ましく、120℃超が最も好ましい。
PB温度の上限値は、特に限定されないが、例えば、200℃以下が挙げられ、170℃以下が好ましく、160℃以下がより好ましく、150℃以下が更に好ましい。
【0017】
後述する工程cの露光を液浸露光とする場合、トップコートは、レジスト膜と液浸液との間に配置され、レジスト膜を直接、液浸液に接触させない層として機能する。この場合、トップコート(トップコート組成物)が有することが好ましい特性としては、レジスト膜への塗布適性、放射線、特に193nmに対する透明性、液浸液(好ましくは水)に対する難溶性である。また、トップコートは、レジスト膜と混合せず、さらにレジスト膜の表面に均一に塗布できることが好ましい。
なお、トップコート組成物を、レジスト膜の表面に、レジスト膜を溶解せずに均一に塗布するために、トップコート組成物は、レジスト膜を溶解しない溶剤を含有することが好ましい。レジスト膜を溶解しない溶剤としては、後述する有機系現像液とは異なる成分の溶剤を用いることがさらに好ましい。トップコート組成物の塗布方法は、特に限定されず、従来公知のスピンコート法、スプレー法、ローラーコート法、浸漬法などを用いることができる。
トップコート組成物は、193nmに対する透明性という観点からは、実質的に芳香族を含有しない樹脂を含有することが好ましく、具体的には、例えば、後述する、フッ素原子及び珪素原子の少なくともいずれかを有する樹脂及び側鎖部分にCH
3部分構造を有する繰り返し単位を有する樹脂が挙げられるが、レジスト膜を溶解しない溶剤に溶解する限りは特に限定されない。
【0018】
トップコートの膜厚は特に制限されないが、露光光源に対する透明性の観点から、通常5nm〜300nm、好ましくは10nm〜300nm、より好ましくは20nm〜200nm、更に好ましくは30nm〜100nmの厚みで形成される。
トップコートを形成後、必要に応じて基板を加熱する。
トップコートの屈折率は、解像性の観点から、レジスト膜の屈折率に近いことが好ましい。
トップコートは液浸液に不溶であることが好ましく、水に不溶であることがより好ましい。
トップコートの後退接触角は、液浸液追随性の観点から、トップコートに対する液浸液の後退接触角(23℃)が50〜100度であることが好ましく、80〜100度であることがより好ましい。
液浸露光においては、露光ヘッドが高速でウエハ上をスキャンし露光パターンを形成していく動きに追随して、液浸液がウエハ上を動く必要があることから、動的な状態におけるレジスト膜に対する液浸液の接触角が重要になり、より良好なレジスト性能を得るためには、上記範囲の後退接触角を有することが好ましい。
【0019】
トップコートを剥離する際は、後述する有機系現像液を使用してもよいし、別途剥離剤を使用してもよい。剥離剤としては、レジスト膜への浸透が小さい溶剤が好ましい。トップコートの剥離がレジスト膜の現像と同時にできるという点では、トップコートは、有機系現像液により剥離できることが好ましい。剥離に用いる有機系現像液としては、レジスト膜の低露光部を溶解除去できるものであれば特に制限されず、後述するケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、アミド系溶剤、エーテル系溶剤等の極性溶剤及び炭化水素系溶剤を含む現像液の中から選択でき、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、エーテル系溶剤を含む現像液が好ましく、エステル系溶剤を含む現像液がより好ましく、酢酸ブチルを含む現像液が更に好ましい。
【0020】
有機系現像液で剥離するという観点からは、トップコートは有機系現像液に対する溶解速度が1〜300nm/secが好ましく、10〜100nm/secがより好ましい。
ここで、トップコートの有機系現像液に対する溶解速度とは、トップコートを成膜した後に現像液に暴露した際の膜厚減少速度であり、本発明においては23℃の酢酸ブチル溶液に浸漬させた際の速度とする。
トップコートの有機系現像液に対する溶解速度を1nm/sec秒以上、好ましくは10nm/sec以上とすることによって、レジスト膜を現像した後の現像欠陥発生が低減する効果がある。また、300nm/sec以下、好ましくは100nm/secとすることによって、おそらくは、液浸露光時の露光ムラが低減した影響で、レジスト膜を現像した後のパターンのラインエッジラフネスがより良好になるという効果がある。
トップコートはその他の公知の現像液、例えば、アルカリ水溶液などを用いて除去してもよい。使用できるアルカリ水溶液として具体的には、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドの水溶液が挙げられる。
【0021】
<工程c>
工程cにおける露光は、一般的に知られている方法により行うことができ、例えば、トップコートが形成されたレジスト膜に対して、所定のマスクを通して、活性光線又は放射線を照射する。このとき、好ましくは、活性光線又は放射線を、液浸液を介して照射するが、これに限定されない。露光量は適宜設定できるが、通常1〜100mJ/cm
2である。
本発明における露光装置に用いられる光源の波長は、特に限定されないが、250nm以下の波長の光を用いることが好ましく、その例としては、KrFエキシマレーザー光(248nm)、ArFエキシマレーザー光(193nm)、F
2エキシマレーザー光(157nm)、EUV光(13.5nm)、電子線等が挙げられる。この中でも、ArFエキシマレーザー光(193nm)を用いることが好ましい。
【0022】
液浸露光を行う場合、露光の前に、及び/又は、露光の後、後述する加熱を行う前に、膜の表面を、水系の薬液で洗浄してもよい。
液浸液は、露光波長に対して透明であり、かつ膜上に投影される光学像の歪みを最小限に留めるよう、屈折率の温度係数ができる限り小さい液体が好ましいが、特に露光光源がArFエキシマレーザー光(波長;193nm)である場合には、上述の観点に加えて、入手の容易さ、取り扱いのし易さといった点から水を用いるのが好ましい。
水を用いる場合、水の表面張力を減少させるとともに、界面活性力を増大させる添加剤(液体)を僅かな割合で添加してもよい。この添加剤は基板上のレジスト膜を溶解させず、且つレンズ素子の下面の光学コートに対する影響が無視できるものが好ましい。使用する水としては、蒸留水が好ましい。更にイオン交換フィルター等を通して濾過を行った純水を用いてもよい。これにより、不純物の混入による、レジスト膜上に投影される光学像の歪みを抑制することができる。
また、さらに屈折率が向上できるという点で屈折率1.5以上の媒体を用いることもできる。この媒体は、水溶液でもよく有機溶剤でもよい。
【0023】
本発明のパターン形成方法は、工程c(露光工程)を複数回有していてもよい。その場合の、複数回の露光は同じ光源を用いても、異なる光源を用いてもよいが、1回目の露光には、ArFエキシマレーザー光(波長;193nm)を用いることが好ましい。
【0024】
露光の後、好ましくは、加熱(「ベーク」、「PEB」ともいう。)を行い、現像(好ましくはさらにリンス)をする。これにより良好なパターンを得ることができる。PEBの温度は、良好なレジストパターンが得られる限り特に限定されるものではなく、通常40℃〜160℃である。PEBは、1回でも複数回であってもよい。
【0025】
<工程d>
工程dにおいて、有機溶剤を含む現像液を用いて現像することにより、ネガ型のレジストパターンを形成する。工程dは、レジスト膜の可溶部分を同時に除去する工程であることが好ましい。
工程dで用いる、有機溶剤を含有する現像液(以下、「有機系現像液」ともいう。)としては、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、アミド系溶剤、エーテル系溶剤等の極性溶剤及び炭化水素系溶剤を含有する現像液が挙げられる。
ケトン系溶剤としては、例えば、1−オクタノン、2−オクタノン、1−ノナノン、2−ノナノン、アセトン、2−ヘプタノン、4−ヘプタノン、1−ヘキサノン、2−ヘキサノン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、フェニルアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセチルアセトン、アセトニルアセトン、イオノン、ジアセトニルアルコール、アセチルカービノール、アセトフェノン、メチルナフチルケトン、イソホロン、プロピレンカーボネート等が挙げられる。
エステル系溶剤としては、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル(酢酸n−ブチル)、酢酸ペンチル、酢酸ヘキシル、酢酸イソアミル、プロピオン酸ブチル(プロピオン酸n−ブチル)、酪酸ブチル、酪酸イソブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチル−3−エトキシプロピオネート、3−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、蟻酸メチル、蟻酸エチル、蟻酸ブチル、蟻酸プロピル、乳酸エチル、乳酸ブチル、乳酸プロピル、2−ヒドロキシイソ酪酸メチル、イソ酪酸イソブチル、プロピオン酸ブチル等が挙げられる。
アルコール系溶剤としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、n−ヘキシルアルコール、n−ヘプチルアルコール、n−オクチルアルコール、n−デカノールなどのアルコール;エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールなどのグリコール系溶剤;エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、メトキシメチルブタノールなどのグリコールエーテル系溶剤;等を挙げることができる。
エーテル系溶剤としては、上記グリコールエーテル系溶剤の他、例えば、ジオキサン、テトラヒドロフラン等が挙げられる。
アミド系溶剤としては、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ヘキサメチルホスホリックトリアミド、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等が使用できる。
炭化水素系溶剤としては、例えば、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶剤;ペンタン、ヘキサン、オクタン、デカンなどの脂肪族炭化水素系溶剤;等が挙げられる。
上記の溶剤は、複数混合してもよいし、上記以外の溶剤や水と混合し使用してもよい。ただし、本発明の効果を十二分に奏するためには、現像液全体としての含水率が10質量%未満であることが好ましく、実質的に水分を含有しないことがより好ましい。
すなわち、有機系現像液に対する有機溶剤の含有量は、現像液の全量に対して、90質量%以上100質量%以下が好ましく、95質量%以上100質量%以下がより好ましい。
【0026】
これらのうち、有機系現像液としては、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、アミド系溶剤及びエーテル系溶剤からなる群より選択される少なくとも1種類の有機溶剤を含有する現像液が好ましく、ケトン系溶剤、又は、エステル系溶剤を含む現像液がより好ましく、酢酸ブチル、プロピオン酸ブチル、又は、2−ヘプタノンを含む現像液が更に好ましい。
【0027】
有機系現像液の蒸気圧は、20℃において、5kPa以下が好ましく、3kPa以下がより好ましく、2kPa以下が更に好ましい。有機系現像液の蒸気圧を5kPa以下にすることにより、現像液の基板上あるいは現像カップ内での蒸発が抑制され、ウエハ面内の温度均一性が向上し、結果としてウエハ面内の寸法均一性が良化する。
5kPa以下(2kPa以下)の蒸気圧を有する具体的な例としては、特開2014−71304号公報の段落<0165>に記載された溶剤が挙げられる。
【0028】
有機系現像液には、必要に応じて界面活性剤を適当量添加することができる。
界面活性剤としては特に限定されないが、例えば、イオン性や非イオン性のフッ素系及び/又はシリコン系界面活性剤等を用いることができる。これらのフッ素及び/又はシリコン系界面活性剤として、例えば特開昭62−36663号公報、特開昭61−226746号公報、特開昭61−226745号公報、特開昭62−170950号公報、特開昭63−34540号公報、特開平7−230165号公報、特開平8−62834号公報、特開平9−54432号公報、特開平9−5988号公報、米国特許第5405720号明細書、同5360692号明細書、同5529881号明細書、同5296330号明細書、同5436098号明細書、同5576143号明細書、同5294511号明細書、同5824451号明細書記載の界面活性剤を挙げることができ、好ましくは、非イオン性の界面活性剤である。非イオン性の界面活性剤としては特に限定されないが、フッ素系界面活性剤又はシリコン系界面活性剤を用いることが更に好ましい。
界面活性剤の使用量は現像液の全量に対して、通常0.001〜5質量%、好ましくは0.005〜2質量%、更に好ましくは0.01〜0.5質量%である。
【0029】
有機系現像液は、塩基性化合物を含んでいてもよい。本発明で用いられる有機系現像液が含みうる塩基性化合物の具体例及び好ましい例としては、感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物が含みうる塩基性化合物として後述するものと同様である。
【0030】
現像方法としては、例えば、現像液が満たされた槽中に基板を一定時間浸漬する方法(ディップ法)、基板表面に現像液を表面張力によって盛り上げて一定時間静止することで現像する方法(パドル法)、基板表面に現像液を噴霧する方法(スプレー法)、一定速度で回転している基板上に一定速度で現像液吐出ノズルをスキャンしながら現像液を吐出しつづける方法(ダイナミックディスペンス法)等が挙げられる。
【0031】
また、有機溶剤を含む現像液を用いて現像する工程の後に、他の溶媒に置換しながら、現像を停止する工程を有していてもよい。
【0032】
有機溶剤を含む現像液を用いて現像する工程の後には、リンス液を用いて洗浄する工程を含んでいてもよい。
リンス液としては、レジストパターンを溶解しなければ特に制限はなく、一般的な有機溶剤を含む溶液を使用することができる。上記リンス液としては、例えば、有機系現像液に含まれる有機溶剤として前掲した、炭化水素系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、アミド系溶剤及びエーテル系溶剤からなる群から選択される少なくとも1種類の有機溶剤を含有するリンス液を用いることが好ましい。より好ましくは、炭化水素系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、及び、アミド系溶剤からなる群から選択される少なくとも1種類の有機溶剤を含有するリンス液を用いて洗浄する工程を行う。更に好ましくは、炭化水素系溶剤、アルコール系溶剤又はエステル系溶剤を含有するリンス液を用いて洗浄する工程を行う。特に好ましくは、1価アルコールを含有するリンス液を用いて洗浄する工程を行う。また、デカン、ウンデカン等の炭化水素系溶剤も同様に好ましい。
【0033】
ここで、リンス工程で用いられる1価アルコールとしては、例えば、直鎖状、分岐状、環状の1価アルコールが挙げられ、具体的には、1−ブタノール、2−ブタノール、3−メチル−1−ブタノール、3−メチル−2−ブタノール、tert―ブチルアルコール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、3−メチル−2−ペンタノール、4−メチル−2−ペンタノール、1−ヘキサノール、2−ヘキサノール、3−ヘキサノール、4−メチル−2−ヘキサノール、5−メチル−2−ヘキサノール、1−ヘプタノール、2−ヘプタノール、3−ヘプタノール、4−メチル−2−ヘプタノール、5−メチル−2−ヘプタノール、1−オクタノール、2−オクタノール、3−オクタノール、4−オクタノール、4−メチル−2−オクタノール、5−メチル−2−オクタノール、6−メチル−2−オクタノール、2−ノナノール、4−メチル−2−ノナノール、5−メチル−2−ノナノール、6−メチル−2−ノナノール、7−メチル−2-ノナノール、2−デカノールなどを用いることができ、好ましくは、1−ヘキサノール、2−ヘキサノール、1−ペンタノール、3−メチル−1−ブタノール、4−メチル−2−ヘプタノールである。
【0034】
また、リンス工程で用いられる炭化水素系溶剤としては、例えば、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶剤;ペンタン、ヘキサン、オクタン、デカン(n−デカン)、ウンデカンなどの脂肪族炭化水素系溶剤;等が挙げられる。
リンス液としてエステル系溶剤を用いる場合には、エステル系溶剤(1種または2種以上)に加えて、グリコールエーテル系溶剤を用いてもよい。この場合の具体例としては、エステル系溶剤(好ましくは、酢酸ブチル)を主成分として、グリコールエーテル系溶剤(好ましくはプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME))を副成分として用いることが挙げられる。これにより、残渣欠陥が抑制される。
【0035】
上記各成分は、複数混合してもよいし、上記以外の有機溶剤と混合し使用してもよい。
リンス液中の含水率は、10質量%以下が好ましく、より好ましくは5質量%以下、特に好ましくは3質量%以下である。含水率を10質量%以下にすることで、良好な現像特性を得ることができる。
リンス液の蒸気圧は、20℃において0.05〜5kPaが好ましく、0.1〜5kPaがより好ましく、0.12〜3kPaがさらに好ましい。リンス液の蒸気圧を0.05〜5kPaにすることにより、ウエハ面内の温度均一性が向上し、更にはリンス液の浸透に起因した膨潤が抑制され、ウエハ面内の寸法均一性が良化する。
リンス液には、界面活性剤を適当量添加して使用することもできる。
【0036】
リンス工程においては、有機溶剤を含む現像液を用いる現像を行ったウエハを上記の有機溶剤を含むリンス液を用いて洗浄処理する。洗浄処理の方法は特に限定されないが、例えば、一定速度で回転している基板上にリンス液を吐出し続ける方法(回転塗布法)、リンス液が満たされた槽中に基板を一定時間浸漬する方法(ディップ法)、基板表面にリンス液を噴霧する方法(スプレー法)、などを適用することができ、この中でも回転塗布方法で洗浄処理を行い、洗浄後に基板を2000rpm〜4000rpmの回転数で回転させ、リンス液を基板上から除去することが好ましい。また、リンス工程の後に加熱工程(Post Bake)を含むことも好ましい。ベークによりパターン間及びパターン内部に残留した現像液及びリンス液が除去される。リンス工程の後の加熱工程は、通常40〜160℃、好ましくは70〜95℃で、通常10秒〜3分、好ましくは30秒から90秒間行う。
【0037】
また、本発明のパターン形成方法は、有機系現像液を用いた現像の後に、アルカリ現像液を用いて現像を行なってもよい。有機系溶剤を用いた現像によって露光強度の弱い部分が除去されるが、更にアルカリ現像液を用いた現像を行うことによって露光強度の強い部分も除去される。このように現像を複数回行う多重現像プロセスにより、中間的な露光強度の領域のみを溶解させずにパターン形成が行えるので、通常より微細なパターンを形成できる(特開2008−292975号公報の段落<0077>と同様のメカニズム)。
アルカリ現像液としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、アンモニア水などの無機アルカリ類;エチルアミン、n−プロピルアミンなどの第一アミン類;ジエチルアミン、ジ−n−ブチルアミンなどの第二アミン類;トリエチルアミン、メチルジエチルアミンなどの第三アミン類;ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミンなどのアルコールアミン類;テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシドなどの第四級アンモニウム塩;ピロール、ピペリジンなどの環状アミン類;等のアルカリ性水溶液を使用することができる。これらの中でもテトラエチルアンモニウムヒドロキシドの水溶液を用いることが好ましい。
さらに、上記アルカリ現像液にアルコール類、界面活性剤を適当量添加して使用することもできる。
アルカリ現像液のアルカリ濃度は、通常0.01〜20質量%である。
アルカリ現像液のpHは、通常10.0〜15.0である。
アルカリ現像液を用いて現像を行う時間は、通常10〜300秒である。
アルカリ現像液のアルカリ濃度(及びpH)及び現像時間は、形成するパターンに応じて、適宜調整することができる。
アルカリ現像液を用いた現像の後にリンス液を用いて洗浄してもよく、そのリンス液としては、純水を使用し、界面活性剤を適当量添加して使用することもできる。
また、現像処理または、リンス処理の後に、パターン上に付着している現像液またはリンス液を超臨界流体により除去する処理を行うことができる。
更に、リンス処理または超臨界流体による処理の後、パターン中に残存する水分を除去するために加熱処理を行うことができる。
【0038】
本発明のパターン形成方法において使用される各種材料(例えば、本発明のレジスト組成物、レジスト溶剤、現像液、リンス液、反射防止膜形成用組成物、トップコート組成物など)は、金属等の不純物を含まないことが好ましい。これら材料に含まれる不純物の含有量としては、1ppm以下が好ましく、100ppt以下がより好ましく、10ppt以下が更に好ましく、実質的に含まないこと(測定装置の検出限界以下であること)が特に好ましい。
上記各種材料から金属等の不純物を除去する方法としては、例えば、フィルターを用いた濾過を挙げることができる。フィルター孔径としては、ポアサイズ10nm以下が好ましく、5nm以下がより好ましく、3nm以下が更に好ましい。フィルターの材質としては、ポリテトラフロロエチレン製、ポリエチレン製、ナイロン製のフィルターが好ましい。フィルターは、有機溶剤であらかじめ洗浄したものを用いてもよい。フィルター濾過工程では、複数種類のフィルターを直列又は並列に接続して用いてもよい。複数種類のフィルターを使用する場合は、孔径及び/又は材質が異なるフィルターを組み合わせて使用してもよい。また、各種材料を複数回濾過してもよく、複数回濾過する工程が循環濾過工程であってもよい。
また、上記各種材料に含まれる金属等の不純物を低減する方法としては、各種材料を構成する原料として金属含有量が少ない原料を選択する、各種材料を構成する原料に対してフィルター濾過を行う、装置内をテフロン(登録商標)でライニングする等してコンタミネーションを可能な限り抑制した条件下で蒸留を行う等の方法を挙げることができる。各種材料を構成する原料に対して行うフィルター濾過における好ましい条件は、上記した条件と同様である。
フィルター濾過のほか、吸着材による不純物の除去を行ってもよく、フィルター濾過と吸着材を組み合わせて使用してもよい。吸着材としては、公知の吸着材を用いることができ、例えば、シリカゲル、ゼオライトなどの無機系吸着材、活性炭などの有機系吸着材を使用することができる。
【0039】
なお、本発明のレジスト組成物を用いてインプリント用モールドを作製してもよく、その詳細については、例えば、特許第4109085号公報、特開2008−162101号公報を参照されたい。
本発明のパターン形成方法は、DSA(Directed Self-Assembly)におけるガイドパターン形成(例えば、ACS Nano Vol.4 No.8 Page4815-4823参照)にも用いることができる。
また、上記の方法によって形成されたレジストパターンは、例えば特開平3−270227号公報及び特開2013−164509号公報に開示されたスペーサープロセスの芯材(コア)として使用できる。
本発明のパターン形成方法により形成されるパターンに対して、パターンの表面荒れを改善する方法を適用してもよい。パターンの表面荒れを改善する方法としては、例えば、WO2014/002808A1に開示された水素を含有するガスのプラズマによってレジストパターンを処理する方法が挙げられる。その他にも、特開2004−235468、US2010/0020297A、特開2009−19969、Proc. of SPIE Vol.8328 83280N−1“EUV Resist Curing Technique for LWR Reduction and Etch Selectivity Enhancement”に記載されているような公知の方法を適用してもよい。
【0040】
[感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物]
次に、本発明のパターン形成方法に用いる感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物(本発明レジスト組成物)について説明する。
【0041】
(A)樹脂
本発明レジスト組成物は、酸の作用により極性が増大する樹脂(酸の作用により極性が増大して有機溶剤を含む現像液に対する溶解度が減少する樹脂)を含有する。
酸の作用により極性が増大して有機溶剤を含む現像液に対する溶解度が減少する樹脂(以下、「樹脂(A)」ともいう。)は、樹脂の主鎖若しくは側鎖、又は、主鎖及び側鎖の両方に、酸の作用により分解し、アルカリ可溶性基を生じる基(以下、「酸分解性基」ともいう。)を有する樹脂(以下、「酸分解性樹脂」又は「酸分解性樹脂(A)」ともいう。)であることが好ましい。
さらに、樹脂(A)は、単環又は多環の脂環炭化水素構造を有する樹脂(以下、「脂環炭化水素系酸分解性樹脂」ともいう。)であることがより好ましい。単環又は多環の脂環炭化水素構造を有する樹脂は、高い疎水性を有し、有機系現像液によりレジスト膜の光照射強度の弱い領域を現像する場合の現像性が向上すると考えられる。
【0042】
樹脂(A)を含有する本発明のレジスト組成物は、ArFエキシマレーザー光を照射する場合に好適に使用できる。
【0043】
樹脂(A)に含まれるアルカリ可溶性基としては、フェノール性水酸基、カルボン酸基、フッ素化アルコール基、スルホン酸基、スルホンアミド基、スルホニルイミド基、(アルキルスルホニル)(アルキルカルボニル)メチレン基、(アルキルスルホニル)(アルキルカルボニル)イミド基、ビス(アルキルカルボニル)メチレン基、ビス(アルキルカルボニル)イミド基、ビス(アルキルスルホニル)メチレン基、ビス(アルキルスルホニル)イミド基、トリス(アルキルカルボニル)メチレン基、トリス(アルキルスルホニル)メチレン基を有する基等が挙げられる。
好ましいアルカリ可溶性基としては、カルボン酸基、フッ素化アルコール基(好ましくはヘキサフルオロイソプロパノール)、スルホン酸基が挙げられる。
【0044】
酸で分解し得る基(酸分解性基)として好ましい基は、これらのアルカリ可溶性基の水素原子を酸で脱離する基で置換した基である。
なお、酸分解性基を有する繰り返し単位を、酸分解性繰り返し単位ともいう。
【0045】
酸で脱離する基(酸脱離性基)としては、例えば、−C(R
36)(R
37)(R
38)、−C(R
36)(R
37)(OR
39)、−C(R
01)(R
02)(OR
39)等を挙げることができる。
式中、R
36〜R
39は、各々独立に、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基又はアルケニル基表す。R
36とR
37とは、互いに結合して環を形成してもよい。
R
01〜R
02は、各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基又はアルケニル基を表す。
酸分解性基としては好ましくは、クミルエステル基、エノールエステル基、アセタールエステル基、第3級のアルキルエステル基等である。更に好ましくは、第3級アルキルエステル基である。
【0046】
樹脂(A)中、酸分解性基を有する繰り返し単位の含有量は、全繰り返し単位中、10モル%以上が好ましく、20モル%以上がより好ましく、30モル%以上が更に好ましい。また、樹脂(A)中、酸分解性基を有する繰り返し単位の含有量は、全繰り返し単位中、80モル%以下が好ましく、70モル%以下がより好ましく、60モル%以下が更に好ましく、50モル%以下が特に好ましい。
【0047】
樹脂(A)としては、下記一般式(pI)〜一般式(pV)で示される部分構造を有する繰り返し単位及び下記一般式(II-AB)で示される繰り返し単位の群から選択される少なくとも1種を含有する樹脂であることが好ましい。
【0049】
一般式(pI)〜(pV)中、
R
11は、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基又はsec−ブチル基を表し、Zは、炭素原子とともにシクロアルキル基を形成するのに必要な原子団を表す。
R
12〜R
16は、各々独立に、炭素数1〜4個の、直鎖もしくは分岐のアルキル基又はシクロアルキル基を表す。但し、R
12〜R
14のうち少なくとも1つ、もしくはR
15、R
16のいずれかはシクロアルキル基を表す。
R
17〜R
21は、各々独立に、水素原子、炭素数1〜4個の、直鎖もしくは分岐のアルキル基又はシクロアルキル基を表す。但し、R
17〜R
21のうち少なくとも1つはシクロアルキル基を表す。また、R
19、R
21のいずれかは炭素数1〜4個の、直鎖もしくは分岐のアルキル基又はシクロアルキル基を表す。
R
22〜R
25は、各々独立に、水素原子、炭素数1〜4個の、直鎖もしくは分岐のアルキル基又はシクロアルキル基を表す。但し、R
22〜R
25のうち少なくとも1つはシクロアルキル基を表す。また、R
23とR
24は、互いに結合して環を形成していてもよい。
【0051】
一般式(II−AB)中、
R
11'及びR
12'は、各々独立に、水素原子、シアノ基、ハロゲン原子又はアルキル基を表す。
Z'は、結合した2つの炭素原子(C−C)を含み、脂環式構造を形成するための原子団を表す。
【0052】
また、上記一般式(II−AB)は、下記一般式(II−AB1)又は一般式(II−AB2)であることが更に好ましい。
【0054】
式(II−AB1)及び(II−AB2)中、
R
13'〜R
16'は、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、−COOH、−COOR
5、酸の作用により分解する基、−C(=O)−X−A'−R
17'、アルキル基あるいはシクロアルキル基を表す。R
l3'〜R
16'のうち少なくとも2つが結合して環を形成してもよい。
ここで、R
5は、アルキル基、シクロアルキル基又はラクトン構造を有する基を表す。
Xは、酸素原子、硫黄原子、−NH−、−NHSO
2−又は−NHSO
2NH−を表す。
A'は、単結合又は2価の連結基を表す。
R
17'は、−COOH、−COOR
5、−CN、水酸基、アルコキシ基、−CO−NH−R
6、−CO−NH−SO
2−R
6又はラクトン構造を有する基を表す。
R
6は、アルキル基又はシクロアルキル基を表す。
nは、0又は1を表す。
【0055】
一般式(pI)〜(pV)において、R
12〜R
25におけるアルキル基としては、1〜4個の炭素原子を有する直鎖もしくは分岐のアルキル基を表す。
【0056】
R
11〜R
25におけるシクロアルキル基或いはZと炭素原子が形成するシクロアルキル基は、単環式でも、多環式でもよい。具体的には、炭素数5以上のモノシクロ、ビシクロ、トリシクロ、テトラシクロ構造等を有する基を挙げることができる。その炭素数は6〜30個が好ましく、特に炭素数7〜25個が好ましい。これらのシクロアルキル基は置換基を有していてもよい。
【0057】
好ましいシクロアルキル基としては、アダマンチル基、ノルアダマンチル基、デカリン残基、トリシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、ノルボルニル基、セドロール基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロデカニル基、シクロドデカニル基を挙げることができる。より好ましくは、アダマンチル基、ノルボルニル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、テトラシクロドデカニル基、トリシクロデカニル基を挙げることができる。
【0058】
これらのアルキル基、シクロアルキル基の更なる置換基としては、アルキル基(炭素数1〜4)、ハロゲン原子、水酸基、アルコキシ基(炭素数1〜4)、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基(炭素数2〜6)が挙げられる。上記のアルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基等が、更に有していてもよい置換基としては、水酸基、ハロゲン原子、アルコキシ基を挙げることができる。
【0059】
上記樹脂における一般式(pI)〜(pV)で示される構造は、アルカリ可溶性基の保護に使用することができる。アルカリ可溶性基としては、この技術分野において公知の種々の基が挙げられる。
【0060】
具体的には、カルボン酸基、スルホン酸基、フェノール基、チオール基の水素原子が一般式(pI)〜(pV)で表される構造で置換された構造などが挙げられ、好ましくはカルボン酸基、スルホン酸基の水素原子が一般式(pI)〜(pV)で表される構造で置換された構造である。
【0061】
一般式(pI)〜(pV)で示される構造で保護されたアルカリ可溶性基を有する繰り返し単位としては、下記一般式(pA)で示される繰り返し単位が好ましい。
【0063】
ここで、Rは、水素原子、ハロゲン原子又は1〜4個の炭素原子を有する直鎖もしくは分岐のアルキル基を表す。複数のRは、各々同じでも異なっていてもよい。
Aは、単結合、アルキレン基、エーテル基、チオエーテル基、カルボニル基、エステル基、アミド基、スルホンアミド基、ウレタン基、又はウレア基よりなる群から選択される単独あるいは2つ以上の基の組み合わせを表す。好ましくは単結合である。
Rp
1は、上記式(pI)〜(pV)のいずれかの基を表す。
【0064】
一般式(pA)で表される繰り返し単位は、特に好ましくは、2−アルキル−2−アダマンチル(メタ)アクリレート、ジアルキル(1−アダマンチル)メチル(メタ)アクリレートによる繰り返し単位である。
【0065】
以下、一般式(pA)で示される繰り返し単位の具体例を示すが、本発明は、これに限定されない。
【0068】
上記一般式(II−AB)、R
11'、R
12'におけるハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子、フッ素原子、沃素原子等を挙げることができる。
【0069】
上記R
11'、R
12'におけるアルキル基としては、炭素数1〜10個の直鎖状あるいは分岐状アルキル基が挙げられる。
【0070】
上記Z'の脂環式構造を形成するための原子団は、置換基を有していてもよい脂環式炭化水素の繰り返し単位を樹脂に形成する原子団であり、中でも有橋式の脂環式炭化水素の繰り返し単位を形成する有橋式脂環式構造を形成するための原子団が好ましい。
【0071】
形成される脂環式炭化水素の骨格としては、一般式(pI)〜(pV)におけるR
12〜R
25の脂環式炭化水素基と同様のものが挙げられる。
【0072】
上記脂環式炭化水素の骨格には置換基を有していてもよい。そのような置換基としては、上記一般式(II−AB1)あるいは(II−AB2)中のR
13'〜R
16'を挙げることができる。
【0073】
樹脂(A)において、酸の作用により分解する基は、例えば、上記一般式(pI)〜一般式(pV)で示される部分構造を有する繰り返し単位、一般式(II−AB)で表される繰り返し単位、及び後記共重合成分の繰り返し単位のうち少なくとも1種の繰り返し単位に含まれる。酸の作用により分解する基は、一般式(pI)〜一般式(pV)で示される部分構造を有する繰り返し単位に含まれることが好ましい。
【0074】
上記一般式(II−AB1)あるいは一般式(II−AB2)におけるR
13'〜R
16'の各種置換基は、上記一般式(II−AB)における脂環式構造を形成するための原子団ないし有橋式脂環式構造を形成するための原子団Zの置換基ともなり得る。
【0075】
樹脂(A)中、一般式(pI)〜(pV)で表される部分構造を有する繰り返し単位の含有量は、全繰り返し単位中20〜70モル%が好ましく、より好ましくは20〜50モル%、更に好ましくは25〜40モル%である。
【0076】
樹脂(A)中、一般式(II−AB)で表される繰り返し単位の含有量は、全繰り返し単位中10〜60モル%が好ましく、より好ましくは15〜55モル%、更に好ましくは20〜50モル%である。
【0077】
樹脂(A)は、一般式(3)で表される繰り返し単位を含有することが好ましい。
【0079】
一般式(3)中、
R
31は、水素原子又はアルキル基を表す。
R
32は、アルキル基又はシクロアルキル基を表し、その具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、シクロヘキシル基などが挙げられる。
R
33は、R
32が結合している炭素原子とともに単環の脂環炭化水素構造を形成するのに必要な原子団を表す。脂環炭化水素構造は、環を構成する炭素原子の一部が、ヘテロ原子、又は、ヘテロ原子を有する基で置換されていてもよい。
【0080】
R
31のアルキル基は、置換基を有していてもよく、該置換基としてはフッ素原子、水酸基などが挙げられる。R
31は、好ましくは水素原子、メチル基、トリフルオロメチル基又はヒドロキシメチル基を表す。
R
32は、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、tert−ブチル基又はシクロヘキシル基であることが好ましく、メチル基、エチル基、イソプロピル基又はtert−ブチル基であることがより好ましい。
R
33が炭素原子とともに形成する単環の脂環炭化水素構造は、3〜8員環であることが好ましく、5又は6員環であることがより好ましい。
R
33が炭素原子とともに形成する単環の脂環炭化水素構造において、環を構成し得るヘテロ原子としては、酸素原子、硫黄原子等が挙げられ、ヘテロ原子を有する基としては、カルボニル基等が挙げられる。ただし、ヘテロ原子を有する基は、エステル基(エステル結合)ではないことが好ましい。
R
33が炭素原子とともに形成する単環の脂環炭化水素構造は、炭素原子と水素原子とのみから形成されることが好ましい。
【0081】
一般式(3)で表される繰り返し単位は、下記一般式(3’)で表される繰り返し単位であることが好ましい。
【0083】
一般式(3’)中、R
31及びR
32は、上記一般式(3)における各々と同義である。
一般式(3)で表される構造を有する繰り返し単位の具体例を以下に挙げるが、これらに限定されない。
【0085】
一般式(3)で表される構造を有する繰り返し単位の含有量は、樹脂(A)中の全繰り返し単位に対して20〜80モル%であることが好ましく、25〜75モル%であることがより好ましく、30〜70モル%であることが更に好ましい。
【0086】
樹脂(A)は、一般式(I)で表される繰り返し単位及び一般式(II)で表される繰り返し単位の少なくともいずれかを有することが好ましい。
【0088】
式(I)及び(II)中、
R
1及びR
3は、各々独立して、水素原子、置換基を有していてもよいメチル基又は−CH
2−R
11で表される基を表す。R
11は1価の有機基を表す。
R
2、R
4、R
5及びR
6は、各々独立して、アルキル基又はシクロアルキル基を表す。
Rは、R
2が結合する炭素原子とともに脂環構造を形成するのに必要な原子団を表す。
【0089】
R
1及びR
3は、好ましくは水素原子、メチル基、トリフルオロメチル基又はヒドロキシメチル基を表す。R
11は、ハロゲン原子(フッ素原子など)、ヒドロキシル基又は1価の有機基を表し、例えば、炭素数5以下のアルキル基、炭素数5以下のアシル基が挙げられ、好ましくは炭素数3以下のアルキル基であり、更に好ましくはメチル基である。
R
2におけるアルキル基は、直鎖型でも分岐型でもよく、置換基を有していてもよい。
R
2におけるシクロアルキル基は、単環でも多環でもよく、置換基を有していてもよい。
R
2は好ましくはアルキル基であり、より好ましくは炭素数1〜10、更に好ましくは炭素数1〜5のアルキル基であり、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、t−ブチル基などが挙げられる。R
2におけるアルキル基としてはメチル基、エチル基、i−プロピル基、t−ブチル基が好ましい。
Rは、炭素原子とともに脂環構造を形成するのに必要な原子団を表す。Rが該炭素原子とともに形成する脂環構造としては、好ましくは、単環の脂環構造であり、その炭素数は好ましくは3〜7、より好ましくは5又は6である。
【0090】
R
3は好ましくは水素原子又はメチル基であり、より好ましくはメチル基である。
R
4、R
5、R
6におけるアルキル基は、直鎖型でも分岐型でもよく、置換基を有していてもよい。アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基などの炭素数1〜4のものが好ましい。
R
4、R
5、R
6におけるシクロアルキル基は、単環でも多環でもよく、置換基を有していてもよい。シクロアルキル基としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などの単環のシクロアルキル基、ノルボルニル基、テトラシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、アダマンチル基などの多環のシクロアルキル基が好ましい。
上記各基が有し得る置換基としては、例えば、アルキル基(炭素数1〜4)、ハロゲン原子、水酸基、アルコキシ基(炭素数1〜4)、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基(炭素数2〜6)などが挙げられ、炭素数8以下が好ましい。
【0091】
一般式(II)において、R
4、R
5及びR
6はアルキル基であることが好ましく、R
4、R
5及びR
6の炭素数の合計としては、5以上であることが好ましく、6以上であることがより好ましく、7以上であることが更に好ましい。
【0092】
樹脂(A)は、一般式(I)により表される繰り返し単位及び一般式(II)により表される繰り返し単位を含んだ樹脂であることがより好ましい。
また、他の形態において、一般式(I)により表される繰り返し単位の少なくとも2種を含んだ樹脂であることがより好ましい。一般式(I)の繰り返し単位を2種以上含む場合は、Rが炭素原子とともに形成する脂環構造が単環の脂環構造である繰り返し単位と、Rが炭素原子とともに形成する脂環構造が多環の脂環構造である繰り返し単位とを両方含むことが好ましい。単環の脂環構造としては、炭素数5〜8が好ましく、炭素数5若しくは6がより好ましく、炭素数5が特に好ましい。多環の脂環構造としては、ノルボルニル基、テトラシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、アダマンチル基が好ましい。
樹脂(A)が含有する酸分解性基を有する繰り返し単位は、1種であってもよいし2種以上を併用していてもよい。
【0093】
一般式(I)で表される繰り返し単位及び一般式(II)で表される繰り返し単位の少なくともいずれかの繰り返し単位の含有量は、樹脂(A)中の全繰り返し単位に対して20〜80モル%であることが好ましく、25〜75モル%であることがより好ましく、30〜70モル%であることが更に好ましい。
【0094】
樹脂(A)は、ラクトン構造又はスルトン(環状スルホン酸エステル)構造を有する繰り返し単位を含有することが好ましい。
ラクトン基又はスルトン基としては、ラクトン構造又はスルトン構造を有していればいずれでも用いることができるが、好ましくは5〜7員環のラクトン構造又はスルトン構造であり、5〜7員環のラクトン構造又はスルトン構造にビシクロ構造、スピロ構造を形成する形で他の環構造が縮環しているものが好ましい。下記一般式(LC1−1)〜(LC1−17)、(SL1−1)及び(SL1−2)のいずれかで表されるラクトン構造又はスルトン構造を有する繰り返し単位を有することがより好ましい。また、ラクトン構造又はスルトン構造が主鎖に直接結合していてもよい。好ましいラクトン構造又はスルトン構造としては(LC1−1)、(LC1−4)、(LC1−5)、(LC1−8)であり、(LC1−4)であることがより好ましい。特定のラクトン構造又はスルトン構造を用いることでLWR、現像欠陥が良好になる。
【0097】
ラクトン構造部分又はスルトン構造部分は、置換基(Rb
2)を有していても有していなくてもよい。好ましい置換基(Rb
2)としては、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数4〜7のシクロアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシ基、炭素数2〜8のアルコキシカルボニル基、カルボキシル基、ハロゲン原子、水酸基、シアノ基、酸分解性基などが挙げられる。より好ましくは炭素数1〜4のアルキル基、シアノ基、酸分解性基である。n
2は、0〜4の整数を表す。n
2が2以上の時、複数存在する置換基(Rb
2)は、同一でも異なっていてもよく、また、複数存在する置換基(Rb
2)同士が結合して環を形成してもよい。
樹脂(A)は、下記一般式(III)で表されるラクトン構造又はスルトン構造を有する繰り返し単位を含有することが好ましい。
【0099】
式(III)中、
Aは、エステル結合(−COO−で表される基)又はアミド結合(−CONH−で表される基)を表す。
R
0は、複数個ある場合には各々独立にアルキレン基、シクロアルキレン基、又はその組み合わせを表す。
Zは、複数個ある場合には各々独立に、単結合、エーテル結合、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合
【0103】
を表す。ここで、Rは、各々独立して水素原子、アルキル基、シクロアルキル基又はアリール基を表す。
R
8は、ラクトン構造又はスルトン構造を有する1価の有機基を表す。
nは、−R
0−Z−で表される構造の繰り返し数であり、0〜2の整数を表す。
R
7は、水素原子、ハロゲン原子又はアルキル基を表す。
R
0のアルキレン基、シクロアルキレン基は置換基を有してよい。
Zは好ましくは、エーテル結合、エステル結合であり、特に好ましくはエステル結合である。
【0104】
R
7のアルキル基は、炭素数1〜4のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基がより好ましく、メチル基が特に好ましい。R
0のアルキレン基、シクロアルキレン基、R
7におけるアルキル基は、各々、置換されていてもよく、置換基としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子やメルカプト基、ヒドロキシ基、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、t−ブトキシ基、ベンジルオキシ基等のアルコキシ基、アセチルオキシ基、プロピオニルオキシ基等のアシルオキシ基が挙げられる。R
7は、水素原子、メチル基、トリフルオロメチル基、ヒドロキシメチル基が好ましい。
R
0における好ましい鎖状アルキレン基としては炭素数が1〜10の鎖状のアルキレンが好ましく、より好ましくは炭素数1〜5であり、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基等が挙げられる。好ましいシクロアルキレン基としては、炭素数3〜20のシクロアルキレン基であり、例えば、シクロヘキシレン基、シクロペンチレン基、ノルボルニレン基、アダマンチレン基等が挙げられる。本発明の効果を発現するためには鎖状アルキレン基がより好ましく、メチレン基が特に好ましい。
【0105】
R
8で表されるラクトン構造又はスルトン構造を有する1価の有機基は、ラクトン構造又はスルトン構造を有していれば限定されるものではなく、具体例として上述した一般式(LC1−1)〜(LC1−17)、(SL1−1)及び(SL1−2)で表されるラクトン構造又はスルトン構造が挙げられ、これらのうち(LC1−4)で表される構造が特に好ましい。また、(LC1−1)〜(LC1−17)、(SL1−1)及び(SL1−2)におけるn
2は2以下のものがより好ましい。
また、R
8は無置換のラクトン構造又はスルトン構造を有する1価の有機基、或いはメチル基、シアノ基又はアルコキシカルボニル基を置換基として有するラクトン構造又はスルトン構造を有する1価の有機基が好ましく、シアノ基を置換基として有するラクトン構造(シアノラクトン)又はスルトン構造(シアノスルトン)を有する1価の有機基がより好ましい。
一般式(III)において、nが0又は1であることが好ましい。
【0106】
一般式(III)で表される繰り返し単位の含有量は、複数種類含有する場合は合計して樹脂(A)中の全繰り返し単位に対し、15〜60モル%が好ましく、より好ましくは20〜60モル%、更に好ましくは30〜50モル%である。
【0107】
樹脂(A)は、また、一般式(III)で表される単位以外にも、上述したラクトン構造又はスルトン構造を有する繰り返し単位を含有していてもよい。
【0108】
ラクトン基又はスルトン基を有する繰り返し単位は、通常光学異性体が存在するが、いずれの光学異性体を用いてもよい。また、1種の光学異性体を単独で用いても、複数の光学異性体を混合して用いてもよい。1種の光学異性体を主に用いる場合、その光学純度(ee)が90%以上のものが好ましく、より好ましくは95%以上である。
一般式(III)で表される繰り返し単位以外のラクトン構造又はスルトン構造を有する繰り返し単位の含有量は、複数種類含有する場合は合計して樹脂中の全繰り返し単位に対し、15〜60モル%が好ましく、より好ましくは20〜50モル%、更に好ましくは30〜50モル%である。
本発明の効果を高めるために、一般式(III)から選ばれる2種以上のラクトン又はスルトン繰り返し単位を併用することも可能である。併用する場合には一般式(III)の内、nが0であるラクトン又はスルトン繰り返し単位から2種以上を選択し併用することが好ましい。
【0109】
樹脂(A)は、極性基を有する有機基を含有する繰り返し単位、特に、極性基で置換された脂環炭化水素構造を有する繰り返し単位を有していることが好ましい。これにより基板密着性、現像液親和性が向上する。極性基で置換された脂環炭化水素構造の脂環炭化水素構造としてはアダマンチル基、ジアマンチル基、ノルボルナン基が好ましい。極性基としては水酸基、シアノ基が好ましい。
極性基で置換された脂環炭化水素構造としては、下記一般式(VIIa)〜(VIId)で表される部分構造が好ましい。
【0111】
一般式(VIIa)〜(VIIc)中、
R
2c〜R
4cは、各々独立に、水素原子又は水酸基、シアノ基を表す。ただし、R
2c〜R
4cのうち少なくとも1つは水酸基、シアノ基を表す。好ましくはR
2c〜R
4cのうち1つまたは2つが水酸基で残りが水素原子である。
一般式(VIIa)において、更に好ましくはR
2c〜R
4cのうち2つが水酸基で残りが水素原子である。
【0112】
一般式(VIIa)〜(VIId)で表される基を有する繰り返し単位としては、上記一般式(II−AB1)又は(II−AB2)中のR
13'〜R
16'のうち少なくとも1つが上記一般式(VII)で表される基を有するもの(例えば、−COOR
5におけるR
5が一般式(VIIa)〜(VIId)で表される基を表す)、又は下記一般式(AIIa)〜(AIId)で表される繰り返し単位等を挙げることができる。
【0114】
一般式(AIIa)〜(AIId)中、
R
1cは、水素原子、メチル基、トリフロロメチル基、ヒドロキメチル基を表す。
R
2c〜R
4cは、一般式(VIIa)〜(VIIc)におけるR
2c〜R
4cと同義である。
【0115】
一般式(AIIa)〜(AIId)で表される構造を有する繰り返し単位の具体例を以下に挙げるが、本発明はこれらに限定されない。
【0117】
樹脂(A)中、極性基を有する有機基を有する繰り返し単位の含有量は、全繰り返し単位中1〜40モル%が好ましく、より好ましくは5〜30モル%、更に好ましくは5〜20モル%である。
【0118】
樹脂(A)は、更に、脂環炭化水素構造を有し、酸分解性を示さない繰り返し単位を含有してもよい。これにより液浸露光時にレジスト膜から液浸液への低分子成分の溶出が低減できる。このような繰り返し単位として、例えば1−アダマンチル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
樹脂(A)中、脂環炭化水素構造を有し、酸分解性を示さない繰り返し単位の含有量は、全繰り返し単位中、1〜40モル%が好ましく、5〜30モル%がより好ましく、5〜20モル%が更に好ましい。
【0119】
樹脂(A)は、上述した繰り返し単位以外に、種々の特性を調整する目的で、各種単量体に由来する繰り返し単位を含有することができ、このような単量体としては、例えば、アクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類、アクリルアミド類、メタクリルアミド類、アリル化合物、ビニルエーテル類、ビニルエステル類等から選ばれる付加重合性不飽和結合を1個有する化合物等を挙げることができる。
その他にも、上記種々の繰り返し単位に相当する単量体と共重合可能である付加重合性の不飽和化合物であれば、共重合されていてもよい。
【0120】
また、上記単量体に由来する繰り返し単位の樹脂(A)中の含有量も、適宜設定することができるが、一般的に、上記一般式(pI)〜(pV)で表される部分構造を有する繰り返し単位と上記一般式(II−AB)で表される繰り返し単位との合計した総モル数に対して99モル%以下が好ましく、より好ましくは90モル%以下、さらに好ましくは80モル%以下である。
【0121】
本発明のレジスト組成物がArF露光用であるとき、ArF光への透明性の点から、樹脂(A)は芳香族基を有さないことが好ましい。
【0122】
樹脂(A)としては、好ましくは、繰り返し単位のすべてが(メタ)アクリレート系繰り返し単位で構成されたものである。この場合、繰り返し単位のすべてがメタクリレート系繰り返し単位、繰り返し単位のすべてがアクリレート系繰り返し単位、繰り返し単位のすべてがメタクリレート系繰り返し単位/アクリレート系繰り返し単位の混合のいずれのものでも用いることができるが、アクリレート系繰り返し単位が全繰り返し単位の50モル%以下であることが好ましい。
【0123】
樹脂(A)は、少なくとも、ラクトン環を有する(メタ)アクリレート系繰り返し単位、水酸基及びシアノ基の少なくともいずれかで置換された有機基を有する(メタ)アクリレート系繰り返し単位、並びに、酸分解性基を有する(メタ)アクリレート系繰り返し単位の3種類の繰り返し単位を有する共重合体であることが好ましい。
【0124】
好ましくは一般式(pI)〜(pV)で表される部分構造を有する繰り返し単位20〜50モル%、ラクトン構造を有する繰り返し単位20〜50モル%、極性基で置換された脂環炭化水素構造を有する繰り返し単位5〜30%含有する3元共重合ポリマー、または更にその他の繰り返し単位を0〜20%含む4元共重合ポリマーである。
【0125】
好ましい樹脂(A)として、例えば、特開2008−309878号公報の段落<0152>〜<0158>に記載した樹脂が挙げられるが、本発明はこれに限定されない。
【0126】
樹脂(A)は、常法に従って(例えばラジカル重合)合成できる。例えば、一般的合成方法としては、モノマー種および開始剤を溶剤に溶解させ、加熱することにより重合を行う一括重合法、加熱溶剤にモノマー種と開始剤の溶液を1〜10時間かけて滴下して加える滴下重合法などが挙げられ、滴下重合法が好ましい。反応溶媒としては、例えば、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、ジイソプロピルエーテルなどのエーテル類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類;酢酸エチルなどのエステル溶媒;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどのアミド溶剤;後述のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、シクロヘキサノンなどの本発明のレジスト組成物を溶解する溶媒;等が挙げられる。より好ましくは本発明のレジスト組成物に用いられる溶剤と同一の溶剤を用いて重合することが好ましい。これにより保存時のパーティクルの発生が抑制できる。
【0127】
重合反応は、窒素やアルゴンなど不活性ガス雰囲気下で行われることが好ましい。重合開始剤としては市販のラジカル開始剤(アゾ系開始剤、パーオキサイドなど)を用いて重合を開始させる。ラジカル開始剤としてはアゾ系開始剤が好ましく、エステル基、シアノ基、カルボキシル基を有するアゾ系開始剤が好ましい。好ましい開始剤としては、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスジメチルバレロニトリル、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)などが挙げられる。所望により開始剤を追加、又は分割で添加し、反応終了後、溶剤に投入して粉体又は固形回収等の方法で所望のポリマーを回収する。反応の濃度は5〜50質量%であり、好ましくは10〜30質量%である。反応温度は、通常10℃〜150℃であり、好ましくは30℃〜120℃、さらに好ましくは60〜100℃である。
精製は、水洗や適切な溶媒を組み合わせることにより残留単量体やオリゴマー成分を除去する液液抽出法;特定の分子量以下のもののみを抽出除去する限外ろ過等の溶液状態での精製方法;樹脂溶液を貧溶媒へ滴下することで樹脂を貧溶媒中に凝固させることにより残留単量体等を除去する再沈殿法;濾別した樹脂スラリーを貧溶媒で洗浄する等の固体状態での精製方法;等の通常の方法を適用できる。
【0128】
樹脂(A)の重量平均分子量(Mw)は、GPC(Gel Permeation Chromatography)法によりポリスチレン換算値として、好ましくは1,000〜200,000であり、より好ましくは1,000〜20,000、さらに好ましくは1,000〜15,000である。重量平均分子量を、1,000〜200,000とすることにより、耐熱性やドライエッチング耐性の劣化を防ぐことができ、且つ現像性が劣化したり、粘度が高くなって成膜性が劣化したりすることを防ぐことができる。
樹脂(A)における重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)である分散度(分子量分布)は、通常1〜5であり、好ましくは1〜3、更に好ましくは1.2〜3.0、特に好ましくは1.2〜2.0の範囲のものが使用される。分散度の小さいものほど、解像度、レジスト形状が優れ、且つレジストパターンの側壁がスムーズであり、ラフネス性に優れる。
本明細書中における重量平均分子量及び数平均分子量は、HLC−8120(東ソー(株)製)を用い、カラムとしてTSK gel Multipore HXL−M(東ソー(株)製、7.8mmID×30.0cm)を用い、溶離液としてTHF(テトラヒドロフラン)を用いて測定される。
【0129】
本発明のレジスト組成物全体中の樹脂(A)の配合量は、全固形分中50〜99.9質量%が好ましく、より好ましくは60〜99.0質量%である。
また、本発明において、樹脂(A)は、1種で使用してもよいし、複数併用してもよい。
【0130】
樹脂(A)、好ましくは本発明のレジスト組成物は、トップコート組成物との相溶性の観点から、フッ素原子および珪素原子を含有しないことが好ましい。
【0131】
(B)活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物
本発明のレジスト組成物は、活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物(以下、「酸発生剤」、「光酸発生剤」又は「(B)成分」ともいう。)を含有する。
そのような光酸発生剤としては、光カチオン重合の光開始剤、光ラジカル重合の光開始剤、色素類の光消色剤、光変色剤、あるいはマイクロレジスト等に使用されている活性光線又は放射線の照射により酸を発生する公知の化合物及びそれらの混合物を適宜に選択して使用することができる。
【0132】
たとえば、ジアゾニウム塩、ホスホニウム塩、スルホニウム塩、ヨードニウム塩、イミドスルホネート、オキシムスルホネート、ジアゾジスルホン、ジスルホン、o−ニトロベンジルスルホネートを挙げることができる。
【0133】
また、これらの活性光線又は放射線の照射により酸を発生する基、あるいは化合物をポリマーの主鎖又は側鎖に導入した化合物、たとえば、米国特許第3,849,137号、独国特許第3914407号、特開昭63−26653号、特開昭55−164824号、特開昭62−69263号、特開昭63−146038号、特開昭63−163452号、特開昭62−153853号、特開昭63−146029号等に記載の化合物を用いることができる。
【0134】
さらに米国特許第3,779,778号、欧州特許第126,712号等に記載の光により酸を発生する化合物も使用することができる。
【0135】
本発明の組成物が含有する酸発生剤としては、活性光線又は放射線の照射により環状構造を有する酸を発生する化合物であることが好ましい。環状構造としては、単環式又は多環式の脂環基が好ましく、多環式の脂環基がより好ましい。脂環基の環骨格を構成する炭素原子としては、カルボニル炭素を含まないことが好ましい。
本発明の組成物が含有する酸発生剤としては、例えば、下記一般式(3)で表される活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物(以下、「特定酸発生剤」ともいう。)を好適に挙げることができる。
【0137】
(アニオン)
一般式(3)中、
Xfは、各々独立に、フッ素原子、又は、少なくとも一つのフッ素原子で置換されたアルキル基を表す。
R
4及びR
5は、各々独立に、水素原子、フッ素原子、アルキル基、又は、少なくとも一つのフッ素原子で置換されたアルキル基を表し、複数存在する場合のR
4、R
5は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
Lは、2価の連結基を表し、複数存在する場合のLは同一でも異なっていてもよい。
Wは、環状構造を含む有機基を表す。
oは、1〜3の整数を表す。pは、0〜10の整数を表す。qは、0〜10の整数を表す。
【0138】
Xfは、フッ素原子、又は、少なくとも1つのフッ素原子で置換されたアルキル基を表す。このアルキル基の炭素数は、1〜10であることが好ましく、1〜4であることがより好ましい。また、少なくとも1つのフッ素原子で置換されたアルキル基は、パーフルオロアルキル基であることが好ましい。
Xfは、好ましくは、フッ素原子又は炭素数1〜4のパーフルオロアルキル基である。Xfは、フッ素原子又はCF
3であることがより好ましい。特に、双方のXfがフッ素原子であることが好ましい。
【0139】
R
4及びR
5は、各々独立に、水素原子、フッ素原子、アルキル基、又は、少なくとも一つのフッ素原子で置換されたアルキル基を表し、複数存在する場合のR
4、R
5は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
R
4及びR
5としてのアルキル基は、置換基を有していてもよく、炭素数1〜4のものが好ましい。R
4及びR
5は、好ましくは水素原子である。
R
4及びR
5の少なくとも一つのフッ素原子で置換されたアルキル基の具体例および好適な態様は、一般式(3)中のXfの具体例および好適な態様と同じである。
【0140】
Lは、2価の連結基を表し、複数存在する場合のLは同一でも異なっていてもよい。
2価の連結基としては、例えば、−COO−(−C(=O)−O−)、−OCO−、−CONH−、−NHCO−、−CO−、−O−、−S−、−SO−、−SO
2−、アルキレン基(好ましくは炭素数1〜6)、シクロアルキレン基(好ましくは炭素数3〜10)、アルケニレン基(好ましくは炭素数2〜6)又はこれらの複数を組み合わせた2価の連結基などが挙げられる。これらの中でも、−COO−、−OCO−、−CONH−、−NHCO−、−CO−、−O−、−SO
2−、−COO−アルキレン基−、−OCO−アルキレン基−、−CONH−アルキレン基−又は−NHCO−アルキレン基−が好ましく、−COO−、−OCO−、−CONH−、−SO
2−、−COO−アルキレン基−又は−OCO−アルキレン基−がより好ましい。
【0141】
Wは、環状構造を含む有機基を表す。なかでも環状の有機基であることが好ましい。
環状の有機基としては、例えば、脂環基、アリール基、及び複素環基が挙げられる。
脂環基は、単環式であってもよく、多環式であってもよい。単環式の脂環基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、及びシクロオクチル基などの単環のシクロアルキル基が挙げられる。多環式の脂環基としては、例えば、ノルボルニル基、トリシクロデカニル基、テトラシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、及びアダマンチル基などの多環のシクロアルキル基が挙げられる。中でも、ノルボルニル基、トリシクロデカニル基、テトラシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、ジアマンチル基及びアダマンチル基などの炭素数7以上のかさ高い構造を有する脂環基が、PEB(露光後加熱)工程での膜中拡散性の抑制及びMEEF(Mask Error Enhancement Factor)の向上の観点から好ましい。
【0142】
アリール基は、単環式であってもよく、多環式であってもよい。このアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、フェナントリル基及びアントリル基が挙げられる。中でも、193nmにおける光吸光度が比較的低いナフチル基が好ましい。
複素環基は、単環式であってもよく、多環式であってもよいが、多環式の方がより酸の拡散を抑制可能である。また、複素環基は、芳香族性を有していてもよく、芳香族性を有していなくてもよい。芳香族性を有している複素環としては、例えば、フラン環、チオフェン環、ベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環、ジベンゾフラン環、ジベンゾチオフェン環、及びピリジン環が挙げられる。芳香族性を有していない複素環としては、例えば、テトラヒドロピラン環、ラクトン環、スルトン環及びデカヒドロイソキノリン環が挙げられる。複素環基における複素環としては、フラン環、チオフェン環、ピリジン環、又はデカヒドロイソキノリン環が特に好ましい。また、ラクトン環及びスルトン環の例としては、前述の樹脂において例示したラクトン構造及びスルトン構造が挙げられる。
【0143】
上記環状の有機基は、置換基を有していてもよい。この置換基としては、例えば、アルキル基(直鎖、分岐のいずれであってもよく、炭素数1〜12が好ましい)、シクロアルキル基(単環、多環、スピロ環のいずれであってもよく、炭素数3〜20が好ましい)、アリール基(炭素数6〜14が好ましい)、水酸基、アルコキシ基、エステル基、アミド基、ウレタン基、ウレイド基、チオエーテル基、スルホンアミド基、及びスルホン酸エステル基が挙げられる。なお、環状の有機基を構成する炭素(環形成に寄与する炭素)はカルボニル炭素であってもよい。
【0144】
oは、1〜3の整数を表す。pは、0〜10の整数を表す。qは、0〜10の整数を表す。
一態様において、一般式(3)中のoが1〜3の整数であり、pが1〜10の整数であり、qが0であることが好ましい。Xfは、フッ素原子であることが好ましく、R
4及びR
5は共に水素原子であることが好ましく、Wは多環式の炭化水素基であることが好ましい。oは1又は2であることがより好ましく、1であることが更に好ましい。pが1〜3の整数であることがより好ましく、1又は2であることが更に好ましく、1が特に好ましい。Wは多環のシクロアルキル基であることがより好ましく、アダマンチル基又はジアマンチル基であることが更に好ましい。
【0145】
(カチオン)
一般式(3)中、X
+は、カチオンを表す。
X
+は、カチオンであれば特に制限されないが、好適な態様としては、例えば、後述する一般式(ZI)、(ZII)又は(ZIII)中のカチオン(Z
-以外の部分)が挙げられる。
【0146】
(好適な態様)
特定酸発生剤の好適な態様としては、例えば、下記一般式(ZI)、(ZII)又は(ZIII)で表される化合物が挙げられる。
【0148】
上記一般式(ZI)において、
R
201、R
202及びR
203は、各々独立に、有機基を表す。
R
201、R
202及びR
203としての有機基の炭素数は、一般的に1〜30、好ましくは1〜20である。
また、R
201〜R
203のうち2つが結合して環構造を形成してもよく、環内に酸素原子、硫黄原子、エステル結合、アミド結合、カルボニル基を含んでいてもよい。R
201〜R
203の内の2つが結合して形成する基としては、アルキレン基(例えば、ブチレン基、ペンチレン基)を挙げることができる。
Z
-は、一般式(3)中のアニオンを表し、具体的には、下記のアニオンを表す。
【0150】
R
201、R
202及びR
203により表される有機基としては、例えば、後述する化合物(ZI−1)、(ZI−2)、(ZI−3)及び(ZI−4)における対応する基を挙げることができる。
なお、一般式(ZI)で表される構造を複数有する化合物であってもよい。例えば、一般式(ZI)で表される化合物のR
201〜R
203の少なくとも1つが、一般式(ZI)で表されるもうひとつの化合物のR
201〜R
203の少なくとも一つと、単結合又は連結基を介して結合した構造を有する化合物であってもよい。
【0151】
更に好ましい(ZI)成分として、以下に説明する化合物(ZI−1)、(ZI−2)、及び(ZI−3)及び(ZI−4)を挙げることができる。
【0152】
先ず、化合物(ZI−1)について説明する。
化合物(ZI−1)は、上記一般式(ZI)のR
201〜R
203の少なくとも1つがアリール基である、アリールスルホニウム化合物、即ち、アリールスルホニウムをカチオンとする化合物である。
アリールスルホニウム化合物は、R
201〜R
203の全てがアリール基でもよいし、R
201〜R
203の一部がアリール基で、残りがアルキル基又はシクロアルキル基でもよい。
アリールスルホニウム化合物としては、例えば、トリアリールスルホニウム化合物、ジアリールアルキルスルホニウム化合物、アリールジアルキルスルホニウム化合物、ジアリールシクロアルキルスルホニウム化合物、アリールジシクロアルキルスルホニウム化合物を挙げることができる。
【0153】
アリールスルホニウム化合物のアリール基としてはフェニル基、ナフチル基が好ましく、更に好ましくはフェニル基である。アリール基は、酸素原子、窒素原子、硫黄原子等を有する複素環構造を有するアリール基であってもよい。複素環構造としては、ピロール残基、フラン残基、チオフェン残基、インドール残基、ベンゾフラン残基、ベンゾチオフェン残基等が挙げられる。アリールスルホニウム化合物が2つ以上のアリール基を有する場合に、2つ以上あるアリール基は同一であっても異なっていてもよい。
アリールスルホニウム化合物が必要に応じて有しているアルキル基又はシクロアルキル基は、炭素数1〜15の直鎖又は分岐アルキル基及び炭素数3〜15のシクロアルキル基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロヘキシル基等を挙げることができる。
【0154】
R
201〜R
203のアリール基、アルキル基、シクロアルキル基は、アルキル基(例えば炭素数1〜15)、シクロアルキル基(例えば炭素数3〜15)、アリール基(例えば炭素数6〜14)、アルコキシ基(例えば炭素数1〜15)、ハロゲン原子、水酸基、フェニルチオ基を置換基として有してもよい。
【0155】
次に、化合物(ZI−2)について説明する。
化合物(ZI−2)は、式(ZI)におけるR
201〜R
203が、各々独立に、芳香環を有さない有機基を表す化合物である。ここで芳香環とは、ヘテロ原子を含有する芳香族環も包含するものである。
R
201〜R
203としての芳香環を含有しない有機基は、一般的に炭素数1〜30、好ましくは炭素数1〜20である。
R
201〜R
203は、各々独立に、好ましくはアルキル基、シクロアルキル基、アリル基、ビニル基であり、更に好ましくは直鎖又は分岐の2−オキソアルキル基、2−オキソシクロアルキル基、アルコキシカルボニルメチル基、特に好ましくは直鎖又は分岐2−オキソアルキル基である。
【0156】
R
201〜R
203のアルキル基及びシクロアルキル基としては、好ましくは、炭素数1〜10の直鎖又は分岐アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基)、炭素数3〜10のシクロアルキル基(シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ノルボニル基)を挙げることができる。
R
201〜R
203は、ハロゲン原子、アルコキシ基(例えば炭素数1〜5)、水酸基、シアノ基、ニトロ基によって更に置換されていてもよい。
【0157】
次に、化合物(ZI−3)について説明する。
化合物(ZI−3)とは、以下の一般式(ZI−3)で表される化合物であり、フェナシルスルフォニウム塩構造を有する化合物である。
【0159】
一般式(ZI−3)中、
R
1c〜R
5cは、各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、アルキルカルボニルオキシ基、シクロアルキルカルボニルオキシ基、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、アルキルチオ基又はアリールチオ基を表す。
R
6c及びR
7cは、各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、ハロゲン原子、シアノ基又はアリール基を表す。
R
x及びR
yは、各々独立に、アルキル基、シクロアルキル基、2−オキソアルキル基、2−オキソシクロアルキル基、アルコキシカルボニルアルキル基、アリル基又はビニル基を表す。
【0160】
R
1c〜R
5c中のいずれか2つ以上、R
5cとR
6c、R
6cとR
7c、R
5cとR
x、及びR
xとR
yは、各々結合して環構造を形成してもよく、この環構造は、酸素原子、硫黄原子、ケトン基、エステル結合、アミド結合を含んでいてもよい。
上記環構造としては、芳香族若しくは非芳香族の炭化水素環、芳香族若しくは非芳香族の複素環、又は、これらの環が2つ以上組み合わされてなる多環縮合環を挙げることができる。環構造としては、3〜10員環を挙げることができ、4〜8員環であることが好ましく、5又は6員環であることがより好ましい。
【0161】
R
1c〜R
5c中のいずれか2つ以上、R
6cとR
7c、及びR
xとR
yが結合して形成する基としては、ブチレン基、ペンチレン基等を挙げることができる。
R
5cとR
6c、及び、R
5cとR
xが結合して形成する基としては、単結合又はアルキレン基であることが好ましく、アルキレン基としては、メチレン基、エチレン基等を挙げることができる。
Zc
−は、一般式(3)中のアニオンを表し、具体的には、上述のとおりである。
【0162】
R
1c〜R
5cとしてのアルコキシカルボニル基におけるアルコキシ基の具体例は、上記R
1c〜R
5cとしてのアルコキシ基の具体例と同様である。
R
1c〜R
5cとしてのアルキルカルボニルオキシ基及びアルキルチオ基におけるアルキル基の具体例は、上記R
1c〜R
5cとしてのアルキル基の具体例と同様である。
R
1c〜R
5cとしてのシクロアルキルカルボニルオキシ基におけるシクロアルキル基の具体例は、上記R
1c〜R
5cとしてのシクロアルキル基の具体例と同様である。
R
1c〜R
5cとしてのアリールオキシ基及びアリールチオ基におけるアリール基の具体例は、上記R
1c〜R
5cとしてのアリール基の具体例と同様である。
【0163】
本発明における化合物(ZI−2)又は(ZI−3)におけるカチオンとしては、米国特許出願公開第2012/0076996号明細書の段落<0036>以降に記載のカチオンを挙げることができる。
【0164】
次に、化合物(ZI−4)について説明する。
化合物(ZI−4)は、下記一般式(ZI−4)で表される。
【0166】
一般式(ZI−4)中、
R
13は水素原子、フッ素原子、水酸基、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、又はシクロアルキル基を有する基を表す。これらの基は置換基を有してもよい。
R
14は、複数存在する場合は各々独立して、水酸基、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アルキルカルボニル基、アルキルスルホニル基、シクロアルキルスルホニル基、又はシクロアルキル基を有する基を表す。これらの基は置換基を有してもよい。
R
15は各々独立して、アルキル基、シクロアルキル基又はナフチル基を表す。これらの基は置換基を有してもよい。2個のR
15が互いに結合して環を形成してもよい。2個のR
15が互いに結合して環を形成するとき、環骨格内に、酸素原子、窒素原子などのヘテロ原子を含んでもよい。一態様において、2個のR
15がアルキレン基であり、互いに結合して環構造を形成することが好ましい。
lは0〜2の整数を表す。
rは0〜8の整数を表す。
Z
−は、一般式(3)中のアニオンを表し、具体的には、上述のとおりである。
【0167】
一般式(ZI−4)において、R
13、R
14及びR
15のアルキル基としては、直鎖状若しくは分岐状であり、炭素原子数1〜10のものが好ましく、メチル基、エチル基、n−ブチル基、t−ブチル基等が好ましい。
本発明における一般式(ZI−4)で表される化合物のカチオンとしては、特開2010−256842号公報の段落<0121>、<0123>、<0124>、及び、特開2011−76056号公報の段落<0127>、<0129>、<0130>等に記載のカチオンを挙げることができる。
【0168】
次に、一般式(ZII)、(ZIII)について説明する。
一般式(ZII)、(ZIII)中、R
204〜R
207は、各々独立に、アリール基、アルキル基又はシクロアルキル基を表す。
R
204〜R
207のアリール基としてはフェニル基、ナフチル基が好ましく、更に好ましくはフェニル基である。R
204〜R
207のアリール基は、酸素原子、窒素原子、硫黄原子等を有する複素環構造を有するアリール基であってもよい。複素環構造を有するアリール基の骨格としては、例えば、ピロール、フラン、チオフェン、インドール、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン等を挙げることができる。
R
204〜R
207におけるアルキル基及びシクロアルキル基としては、好ましくは、炭素数1〜10の直鎖又は分岐アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基)、炭素数3〜10のシクロアルキル基(シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ノルボニル基)を挙げることができる。
【0169】
R
204〜R
207のアリール基、アルキル基、シクロアルキル基は、置換基を有していてもよい。R
204〜R
207のアリール基、アルキル基、シクロアルキル基が有していてもよい置換基としては、例えば、アルキル基(例えば炭素数1〜15)、シクロアルキル基(例えば炭素数3〜15)、アリール基(例えば炭素数6〜15)、アルコキシ基(例えば炭素数1〜15)、ハロゲン原子、水酸基、フェニルチオ基等を挙げることができる。
Z
−は、一般式(3)中のアニオンを表し、具体的には、上述のとおりである。
【0170】
酸発生剤は、1種類単独又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0171】
本発明のレジスト組成物中の酸発生剤の含有量(複数種の酸発生剤が存在する場合はその合計(以下同様))は、本発明のレジスト組成物の全固形分を基準として、16.5質量%以上である。これにより、発生酸量が増加することで、CDU及びLERが優れる。
CDU及びLERがより優れるという理由から、酸発生剤の含有量は、本発明のレジスト組成物の全固形分を基準として、17.0〜35.0質量%が好ましく、20.0〜28.0質量%がより好ましく、20.0質量%超28.0質量%以下が更に好ましい。
【0172】
(C)溶剤
上記各成分を溶解させてレジスト組成物を調製する際に使用することができる溶剤としては、例えば、アルキレングリコールモノアルキルエーテルカルボキシレート、アルキレングリコールモノアルキルエーテル、乳酸アルキルエステル、アルコキシプロピオン酸アルキル、炭素数4〜10の環状ラクトン、炭素数4〜10の、環を含有していてもよいモノケトン化合物、アルキレンカーボネート、アルコキシ酢酸アルキル、ピルビン酸アルキル等の有機溶剤を挙げることができる。
【0173】
アルキレングリコールモノアルキルエーテルカルボキシレートとしては、例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルプロピオネート、プロピレングリコールモノエチルエーテルプロピオネート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテートが好ましく挙げられる。
アルキレングリコールモノアルキルエーテルとしては、例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルを好ましく挙げられる。
【0174】
乳酸アルキルエステルとしては、例えば、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸プロピル、乳酸ブチルを好ましく挙げられる。
アルコキシプロピオン酸アルキルとしては、例えば、3−エトキシプロピオン酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチルを好ましく挙げられる。
【0175】
炭素数4〜10の環状ラクトンとしては、例えば、β−プロピオラクトン、β−ブチロラクトン、γ−ブチロラクトン、α−メチル−γ−ブチロラクトン、β−メチル−γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、γ−カプロラクトン、γ−オクタノイックラクトン、α−ヒドロキシ−γ−ブチロラクトンが好ましく挙げられる。
【0176】
炭素数4〜10の、環を含有していてもよいモノケトン化合物としては、例えば、2−ブタノン、3−メチルブタノン、ピナコロン、2−ペンタノン、3−ペンタノン、3−メチル−2−ペンタノン、4−メチル−2−ペンタノン、2−メチル−3−ペンタノン、4,4−ジメチル−2−ペンタノン、2,4−ジメチル−3−ペンタノン、2,2,4,4−テトラメチル−3−ペンタノン、2−ヘキサノン、3−ヘキサノン、5−メチル−3−ヘキサノン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン、4−ヘプタノン、2−メチル−3−ヘプタノン、5−メチル−3−ヘプタノン、2,6−ジメチル−4−ヘプタノン、2−オクタノン、3−オクタノン、2−ノナノン、3−ノナノン、5−ノナノン、2−デカノン、3−デカノン、4−デカノン、5−ヘキセン−2−オン、3−ペンテン−2−オン、シクロペンタノン、2−メチルシクロペンタノン、3−メチルシクロペンタノン、2,2−ジメチルシクロペンタノン、2,4,4−トリメチルシクロペンタノン、シクロヘキサノン、3−メチルシクロヘキサノン、4−メチルシクロヘキサノン、4−エチルシクロヘキサノン、2,2−ジメチルシクロヘキサノン、2,6−ジメチルシクロヘキサノン、2,2,6−トリメチルシクロヘキサノン、シクロヘプタノン、2−メチルシクロヘプタノン、3−メチルシクロヘプタノンが好ましく挙げられる。
【0177】
アルキレンカーボネートとしては、例えば、プロピレンカーボネート、ビニレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネートが好ましく挙げられる。
アルコキシ酢酸アルキルとしては、例えば、酢酸−2−メトキシエチル、酢酸−2−エトキシエチル、酢酸−2−(2−エトキシエトキシ)エチル、酢酸−3−メトキシ−3−メチルブチル、酢酸−1−メトキシ−2−プロピルが好ましく挙げられる。
ピルビン酸アルキルとしては、例えば、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸プロピルが好ましく挙げられる。
好ましく使用できる溶剤としては、常温常圧下で、沸点130℃以上の溶剤が挙げられる。具体的には、シクロペンタノン、γ−ブチロラクトン、シクロヘキサノン、乳酸エチル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3−エトキシプロピオン酸エチル、ピルビン酸エチル、酢酸−2−エトキシエチル、酢酸−2−(2−エトキシエトキシ)エチル、プロピレンカーボネート、ブタン酸ブチル、酢酸イソアミル、2−ヒドロキシイソ酪酸メチルが挙げられる。
本発明においては、上記溶剤を単独で使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0178】
本発明においては、有機溶剤として構造中に水酸基を含有する溶剤と、水酸基を含有しない溶剤とを混合した混合溶剤を使用してもよい。
水酸基を含有する溶剤としては、例えば、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、乳酸エチル等を挙げることができ、これらの内でプロピレングリコールモノメチルエーテル、乳酸エチルが特に好ましい。
水酸基を含有しない溶剤としては、例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチルエトキシプロピオネート、2−ヘプタノン、γ−ブチロラクトン、シクロヘキサノン、酢酸ブチル、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド等を挙げることができ、これらの内で、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチルエトキシプロピオネート、2−ヘプタノン、γ−ブチロラクトン、シクロヘキサノン、酢酸ブチルが特に好ましく、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチルエトキシプロピオネート、2−ヘプタノンが最も好ましい。
水酸基を含有する溶剤と水酸基を含有しない溶剤との混合比(質量比)は、1/99〜99/1、好ましくは10/90〜90/10、更に好ましくは20/80〜60/40である。水酸基を含有しない溶剤を50質量%以上含有する混合溶剤が塗布均一性の点で特に好ましい。
【0179】
溶剤は、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを含有する2種類以上の混合溶剤であることが好ましい。
【0180】
(D)疎水性樹脂
本発明のレジスト組成物は、(D)疎水性樹脂を含有してもよい。疎水性樹脂としては、例えば、トップコート組成物が含有してもよい後述する樹脂(X)を好適に使用できる。また、例えば、特開2014−149409号公報の段落<0389>〜<0474>に記載された「[4]疎水性樹脂(D)」等も好適に挙げられる。
【0181】
疎水性樹脂(D)の標準ポリスチレン換算の重量平均分子量は、好ましくは1,000〜100,000で、より好ましくは1,000〜50,000、更により好ましくは2,000〜15,000である。
また、疎水性樹脂(D)は、1種で使用してもよいし、複数併用してもよい。
疎水性樹脂(D)の組成物中の含有量は、本発明のレジスト組成物中の全固形分に対し、0.01〜10質量%が好ましく、0.05〜8質量%がより好ましく、0.1〜7質量%が更に好ましい。
【0182】
(E)塩基性化合物
本発明のレジスト組成物は、露光から加熱までの経時による性能変化を低減するために、(E)塩基性化合物を含有することが好ましい。
塩基性化合物としては、好ましくは、下記式(A)〜(E)で示される構造を有する化合物を挙げることができる。
【0184】
一般式(A)〜(E)中、
R
200 、R
201及びR
202 は、同一でも異なってもよく、水素原子、アルキル基(好ましくは炭素数1〜20)、シクロアルキル基(好ましくは炭素数3〜20)又はアリール基(炭素数6〜20)を表し、ここで、R
201とR
202は、互いに結合して環を形成してもよい。
【0185】
上記アルキル基について、置換基を有するアルキル基としては、炭素数1〜20のアミノアルキル基、炭素数1〜20のヒドロキシアルキル基、または炭素数1〜20のシアノアルキル基が好ましい。
R
203 、R
204、R
205及びR
206は、同一でも異なってもよく、炭素数1〜20個のアルキル基を表す。
これら一般式(A)〜(E)中のアルキル基は、無置換であることがより好ましい。
【0186】
好ましい化合物として、グアニジン、アミノピロリジン、ピラゾール、ピラゾリン、ピペラジン、アミノモルホリン、アミノアルキルモルフォリン、ピペリジン等を挙げることができ、更に好ましい化合物として、イミダゾール構造、ジアザビシクロ構造、オニウムヒドロキシド構造、オニウムカルボキシレート構造、トリアルキルアミン構造、アニリン構造又はピリジン構造を有する化合物、水酸基及び/又はエーテル結合を有するアルキルアミン誘導体、水酸基及び/又はエーテル結合を有するアニリン誘導体等を挙げることができる。
【0187】
イミダゾール構造を有する化合物としてはイミダゾール、2、4、5−トリフェニルイミダゾール、ベンズイミダゾール等が挙げられる。ジアザビシクロ構造を有する化合物としては1、4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン、1、5−ジアザビシクロ[4,3,0]ノナ−5−エン、1、8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデカ−7−エン等が挙げられる。オニウムヒドロキシド構造を有する化合物としてはトリアリールスルホニウムヒドロキシド、フェナシルスルホニウムヒドロキシド、2−オキソアルキル基を有するスルホニウムヒドロキシド、具体的にはトリフェニルスルホニウムヒドロキシド、トリス(t−ブチルフェニル)スルホニウムヒドロキシド、ビス(t−ブチルフェニル)ヨードニウムヒドロキシド、フェナシルチオフェニウムヒドロキシド、2−オキソプロピルチオフェニウムヒドロキシド等が挙げられる。オニウムカルボキシレート構造を有する化合物としてはオニウムヒドロキシド構造を有する化合物のアニオン部がカルボキシレートになったものであり、例えばアセテート、アダマンタン−1−カルボキシレート、パーフロロアルキルカルボキシレート等が挙げられる。トリアルキルアミン構造を有する化合物としては、トリ(n−ブチル)アミン、トリ(n−オクチル)アミン等を挙げることができる。アニリン化合物としては、2,6−ジイソプロピルアニリン、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジブチルアニリン、N,N−ジヘキシルアニリン等を挙げることができる。水酸基及び/又はエーテル結合を有するアルキルアミン誘導体としては、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリス(メトキシエトキシエチル)アミン等を挙げることができる。水酸基及び/又はエーテル結合を有するアニリン誘導体としては、N,N−ビス(ヒドロキシエチル)アニリン等を挙げることができる。
【0188】
また、塩基性化合物としては、後述する上層膜形成用組成物(トップコート組成物)が含有してもよい塩基性化合物として記載するものも好適に用いることができる。
【0189】
これらの塩基性化合物は、単独であるいは2種以上一緒に用いられる。
塩基性化合物の使用量は、本発明のレジスト組成物の固形分を基準として、通常、0.001〜10質量%、好ましくは0.01〜5質量%である。
【0190】
レジスト組成物中の光酸発生剤と塩基性化合物との使用割合は、光酸発生剤/塩基性化合物(モル比)=2.5〜300であることが好ましい。即ち、感度、解像度の点からモル比は、2.5以上が好ましく、露光後加熱処理までの経時でのレジストパターンの太りによる解像度の低下抑制の点から300以下が好ましい。光酸発生剤/塩基性化合物(モル比)は、より好ましくは5.0〜200、更に好ましくは7.0〜150である。
【0191】
(F)界面活性剤
本発明のレジスト組成物は、更に(F)界面活性剤を含有することが好ましく、フッ素系及び/又はシリコン系界面活性剤(フッ素系界面活性剤、シリコン系界面活性剤、フッ素原子と珪素原子の両方を有する界面活性剤)のいずれか、あるいは2種以上を含有することがより好ましい。
【0192】
本発明のレジスト組成物が上記(F)界面活性剤を含有することにより、250nm以下、特に220nm以下の露光光源の使用時に、良好な感度及び解像度で、密着性及び現像欠陥の少ないレジストパターンを与えることが可能となる。
フッ素系及び/又はシリコン系界面活性剤としては、例えば特開昭62−36663号公報、特開昭61−226746号公報、特開昭61−226745号公報、特開昭62−170950号公報、特開昭63−34540号公報、特開平7−230165号公報、特開平8−62834号公報、特開平9−54432号公報、特開平9−5988号公報、特開2002−277862号公報、米国特許第5405720号明細書、同5360692号明細書、同5529881号明細書、同5296330号明細書、同5436098号明細書、同5576143号明細書、同5294511号明細書、同5824451号明細書記載の界面活性剤を挙げることができ、下記市販の界面活性剤をそのまま用いることもできる。
使用できる市販の界面活性剤として、例えばエフトップEF301、EF303、(新秋田化成(株)製)、フロラードFC430、431、4430(住友スリーエム(株)製)、メガファックF171、F173、F176、F189、F113、F110、F177、F120、R08(大日本インキ化学工業(株)製)、サーフロンS−382、SC101、102、103、104、105、106(旭硝子(株)製)、トロイゾルS−366(トロイケミカル(株)製)、GF−300、GF−150(東亜合成化学(株)製)、サーフロンS−393(セイミケミカル(株)製)、エフトップEF121、EF122A、EF122B、RF122C、EF125M、EF135M、EF351、352、EF801、EF802、EF601((株)ジェムコ製)、PF636、PF656、PF6320、PF6520(OMNOVA社製)、FTX−204D、208G、218G、230G、204D、208D、212D、218、222D((株)ネオス製)等のフッ素系界面活性剤又はシリコン系界面活性剤を挙げることができる。またポリシロキサンポリマーKP−341(信越化学工業(株)製)もシリコン系界面活性剤として用いることができる。
【0193】
また、界面活性剤としては、上記に示すような公知のものの他に、テロメリゼーション法(テロマー法ともいわれる)もしくはオリゴメリゼーション法(オリゴマー法ともいわれる)により製造されたフルオロ脂肪族化合物から導かれたフルオロ脂肪族基を有する重合体を用いた界面活性剤を用いることができる。フルオロ脂肪族化合物は、特開2002−90991号公報に記載された方法によって合成することができる。
フルオロ脂肪族基を有する重合体としては、フルオロ脂肪族基を有するモノマーと(ポリ(オキシアルキレン))アクリレート及び/又は(ポリ(オキシアルキレン))メタクリレートとの共重合体が好ましく、不規則に分布しているものでも、ブロック共重合していてもよい。また、ポリ(オキシアルキレン)基としては、ポリ(オキシエチレン)基、ポリ(オキシプロピレン)基、ポリ(オキシブチレン)基などが挙げられ、また、ポリ(オキシエチレンとオキシプロピレンとオキシエチレンとのブロック連結体)やポリ(オキシエチレンとオキシプロピレンとのブロック連結体)など同じ鎖長内に異なる鎖長のアルキレンを有するようなユニットでもよい。さらに、フルオロ脂肪族基を有するモノマーと(ポリ(オキシアルキレン))アクリレート(又はメタクリレート)との共重合体は2元共重合体ばかりでなく、異なる2種以上のフルオロ脂肪族基を有するモノマーや、異なる2種以上の(ポリ(オキシアルキレン))アクリレート(又はメタクリレート)などを同時に共重合した3元系以上の共重合体でもよい。
【0194】
例えば、市販の界面活性剤として、メガファックF178、F−470、F−473、F−475、F−476、F−472(大日本インキ化学工業(株)製)を挙げることができる。さらに、C
6F
13基を有するアクリレート(又はメタクリレート)と(ポリ(オキシアルキレン))アクリレート(又はメタクリレート)との共重合体、C
3F
7基を有するアクリレート(又はメタクリレート)と(ポリ(オキシエチレン))アクリレート(又はメタクリレート)と(ポリ(オキシプロピレン))アクリレート(又はメタクリレート)との共重合体などを挙げることができる。
【0195】
また、本発明では、フッ素系及び/又はシリコン系界面活性剤以外の他の界面活性剤を使用することもできる。具体的には、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンオクチルフェノールエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェノールエーテル等のポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル類、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックコポリマー類、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタントリオレエート、ソルビタントリステアレート等のソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテ−ト、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタントリオレエート、ポリオキシエチレンソルビタントリステアレート等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類等のノニオン系界面活性剤等を挙げることができる。
【0196】
これらの界面活性剤は単独で使用してもよいし、また、いくつかの組み合わせで使用してもよい。
【0197】
(F)界面活性剤の使用量は、レジスト組成物全量(溶剤を除く)に対して、好ましくは0.01〜10質量%、より好ましくは0.1〜5質量%である。
【0198】
(G)カルボン酸オニウム塩
本発明のレジスト組成物は、(G)カルボン酸オニウム塩を含有してもよい。カルボン酸オニウム塩としては、カルボン酸スルホニウム塩、カルボン酸ヨードニウム塩、カルボン酸アンモニウム塩などを挙げることができる。特に、(G)カルボン酸オニウム塩としては、ヨードニウム塩、スルホニウム塩が好ましい。更に、(G)カルボン酸オニウム塩のカルボキシレート残基が芳香族基、炭素−炭素2重結合を含有しないことが好ましい。特に好ましいアニオン部としては、炭素数1〜30、直鎖、分岐または環状(単環または多環)アルキルカルボン酸アニオンが好ましい。さらに好ましくはこれらのアルキル基の一部または全てがフッ素置換されたカルボン酸のアニオンが好ましい。アルキル鎖中に酸素原子を含んでいてもよい。これにより220nm以下の光に対する透明性が確保され、感度、解像力が向上し、疎密依存性、露光マージンが改良される。
【0199】
フッ素置換されたカルボン酸のアニオンとしては、フロロ酢酸、ジフロロ酢酸、トリフロロ酢酸、ペンタフロロプロピオン酸、ヘプタフロロ酪酸、ノナフロロペンタン酸、パーフロロドデカン酸、パーフロロトリデカン酸、パーフロロシクロヘキサンカルボン酸、2,2−ビストリフロロメチルプロピオン酸のアニオン等が挙げられる。
【0200】
これらの(G)カルボン酸オニウム塩は、スルホニウムヒドロキシド、ヨードニウムヒドロキシド、アンモニウムヒドロキシドとカルボン酸を適当な溶剤中酸化銀と反応させることによって合成できる。
【0201】
(G)カルボン酸オニウム塩の組成物中の含量は、レジスト組成物の全固形分に対し、一般的には0.1〜20質量%、好ましくは0.5〜10質量%、更に好ましくは1〜7質量%である。
【0202】
(H)その他の添加剤
本発明のレジスト組成物には、必要に応じてさらに染料、可塑剤、光増感剤、光吸収剤、アルカリ可溶性樹脂、溶解阻止剤及び現像液に対する溶解性を促進させる化合物(例えば、分子量1000以下のフェノール化合物、カルボキシル基を有する脂環族、又は脂肪族化合物)等を含有させることができる。
【0203】
このような分子量1000以下のフェノール化合物は、例えば、特開平4−122938号公報、特開平2−28531号公報、米国特許第4,916,210、欧州特許第219294等に記載の方法を参考にして、当業者において容易に合成することができる。
カルボキシル基を有する脂環族、又は脂肪族化合物の具体例としてはコール酸、デオキシコール酸、リトコール酸などのステロイド構造を有するカルボン酸誘導体、アダマンタンカルボン酸誘導体、アダマンタンジカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸などが挙げられるがこれらに限定されない。
【0204】
[上層膜形成用組成物(トップコート組成物)]
次に、本発明のパターン形成方法に用いられる上層膜(トップコート)を形成するための上層膜形成用組成物(トップコート組成物)について説明する。
本発明のパターン形成方法において、液浸露光を行う場合、トップコートを形成することで、液浸液がレジスト膜と直接接触することを防ぎ、レジスト膜内部への液浸液の浸透及びレジスト膜成分の液浸液への溶出によるレジスト性能の劣化を抑制し、更には液浸液への溶出成分による露光装置のレンズ汚染を防止する効果が期待できる。
【0205】
本発明のパターン形成方法に用いられるトップコート組成物は、レジスト膜上に均一に形成するために、後述する樹脂(X)と溶剤とを含有する組成物であることが好ましい。
【0206】
<溶剤>
レジスト膜を溶解せずに良好なパターンを形成するために、本発明におけるトップコート組成物は、レジスト膜を溶解しない溶剤を含有することが好ましく、有機系現像液とは異なる成分の溶剤を用いることがより好ましい。
また、液浸液への溶出防止の観点からは、液浸液への溶解性が低い方が好ましく、水への溶解性が低い方がさらに好ましい。本明細書においては、「液浸液への溶解性が低い」とは液浸液不溶性であることを示す。同様に、「水への溶解性が低い」とは水不溶性であることを示す。また、揮発性及び塗布性の観点から、溶剤の沸点は90℃〜200℃が好ましい。
液浸液への溶解性が低いとは、水への溶解性を例にとると、トップコート組成物をシリコンウエハ上に塗布、乾燥し、膜を形成させた後に、純水に23℃で10分間浸漬し、乾燥した後の膜厚の減少率が、初期膜厚(典型的には50nm)の3%以内であることをいう。
本発明では、トップコートを均一に塗布する観点から、固形分濃度が0.01〜20質量%、更に好ましくは0.1〜15質量%、最も好ましくは、1〜10質量%となるように溶剤を使用する。
【0207】
使用しうる溶剤としては、後述する樹脂(X)を溶解し、レジスト膜を溶解しない限りは特に制限はないが、例えば、アルコール系溶剤、エーテル系溶剤、エステル系溶剤、フッ素系溶剤、炭化水素系溶剤などが好適に挙げられ、非フッ素系のアルコール系溶剤を用いることが更に好ましい。これにより、レジスト膜に対する非溶解性がさらに向上し、トップコート組成物をレジスト膜上に塗布した際に、レジスト膜を溶解することなく、より均一に、トップコートを形成できる。溶剤の粘度としては、5cP(センチポアズ)以下が好ましく、3cP以下がより好ましく、2cP以下が更に好ましく、1cP以下が特に好ましい。なお、センチポアズからパスカル秒へは、次式で換算できる 1000cP=1Pa・s。
【0208】
アルコール系溶剤としては、塗布性の観点から、1価のアルコールが好ましく、更に好ましくは、炭素数4〜8の1価アルコールである。炭素数4〜8の1価アルコールとしては、直鎖状、分岐状、環状のアルコールを用いることができるが、直鎖状又は分岐状のアルコールが好ましい。このようなアルコール系溶剤としては、例えば、1−ブタノール、2−ブタノール、3−メチル−1−ブタノール、4−メチル−1−ペンタノール、4−メチル−2−ペンタノール、イソブチルアルコール、tert―ブチルアルコール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、1−ヘキサノール、1−ヘプタノール、1−オクタノール、2−ヘキサノール、2−ヘプタノール、2−オクタノール、3−ヘキサノール、3−ヘプタノール、3−オクタノール、4−オクタノールなどのアルコール;エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールなどのグリコール;エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、メトキシメチルブタノールなどのグリコールエーテル;等を用いることができ、なかでも、アルコール、グリコールエーテルが好ましく、1−ブタノール、1−ヘキサノール、1−ペンタノール、3−メチル−1−ブタノール、4−メチル−1−ペンタノール、4−メチル−2−ペンタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテルがより好ましい。
エーテル系溶剤としては、上記グリコールエーテル系溶剤の他、例えば、ジオキサン、テトラヒドロフラン、イソアミルエーテル等が挙げられる。エステル系溶剤のなかでも、分岐構造を有するエーテル系溶剤が好ましい。
エステル系溶剤としては、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル(酢酸n−ブチル)、酢酸ペンチル、酢酸ヘキシル、酢酸イソアミル、プロピオン酸ブチル(プロピオン酸n−ブチル)、酪酸ブチル、酪酸イソブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチル−3−エトキシプロピオネート、3−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、蟻酸メチル、蟻酸エチル、蟻酸ブチル、蟻酸プロピル、乳酸エチル、乳酸ブチル、乳酸プロピル、2−ヒドロキシイソ酪酸メチル、イソ酪酸イソブチル、プロピオン酸ブチル等が挙げられる。エステル系溶剤のなかでも、分岐構造を有するエステル系溶剤が好ましい。
【0209】
フッ素系溶剤としては、例えば、2,2,3,3,4,4−ヘキサフルオロ−1−ブタノール、2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロ−1−ペンタノール、2,2,3,3,4,4,5,5,6,6−デカフルオロ−1−ヘキサノール、2,2,3,3,4,4−ヘキサフルオロ−1,5−ペンタンジオール、2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロ−1,6−ヘキサンジオール、2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7−ドデカフルオロ−1,8−オクタンジオール、2−フルオロアニソール、2,3−ジフルオロアニソール、パーフルオロヘキサン、パーフルオロヘプタン、パーフルオロ−2−ペンタノン、パーフルオロ−2−ブチルテトラヒドロフラン、パーフルオロテトラヒドロフラン、パーフルオロトリブチルアミン、パーフルオロテトラペンチルアミン等が挙げられ、この中でも、フッ化アルコール又はフッ化炭化水素系溶剤を好適に用いることができる。
炭化水素系溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、アニソールなどの芳香族炭化水素系溶剤;n−ヘプタン、n−ノナン、n−オクタン、n−デカン、2−メチルヘプタン、3−メチルヘプタン、3,3−ジメチルヘキサン、2,3,4−トリメチルペンタンなどの脂肪族炭化水素系溶剤;等が挙げられる。
【0210】
これらの溶剤は一種単独で又は複数を混合して用いてもよい。
トップコート組成物は、上記以外の溶剤を含んでいてもよい。上記以外の溶剤を混合することで、レジスト膜に対する溶解性、トップコート組成物中の樹脂の溶解性、レジスト膜からの溶出特性、などを適宜調整することができる。
【0211】
<樹脂(X)>
トップコート組成物中の樹脂(X)は、露光時に光がトップコートを通してレジスト膜に到達するため、使用する露光光源において透明であることが好ましい。ArF液浸露光に使用する場合は、ArF光への透明性の点から上記樹脂は芳香族基を有さないことが好ましい。
【0212】
樹脂(X)は、“フッ素原子”、“珪素原子”、及び、“樹脂の側鎖部分に含有されたCH
3部分構造”のいずれか1種以上を有することが好ましく、2種以上を有することがより好ましい。また、水不溶性樹脂(疎水性樹脂)であることが好ましい。
【0213】
樹脂(X)がフッ素原子及び/又は珪素原子を有する場合、フッ素原子及び/又は珪素原子は、樹脂(X)の主鎖中に有していても、側鎖に置換していてもよい。
【0214】
樹脂(X)は、フッ素原子を有する場合、フッ素原子を有する部分構造として、フッ素原子を有するアルキル基、フッ素原子を有するシクロアルキル基、または、フッ素原子を有するアリール基を有する樹脂であることが好ましい。
フッ素原子を有するアルキル基(好ましくは炭素数1〜10、より好ましくは炭素数1〜4)は、少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換された直鎖又は分岐アルキル基であり、さらに他の置換基を有していてもよい。
フッ素原子を有するシクロアルキル基は、少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換された単環または多環のシクロアルキル基であり、さらに他の置換基を有していてもよい。
フッ素原子を有するアリール基としては、フェニル基、ナフチル基などのアリール基の少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換されたものが挙げられ、さらに他の置換基を有していてもよい。
【0215】
フッ素原子を有するアルキル基、フッ素原子を有するシクロアルキル基、または、フッ素原子を有するアリール基の具体例を以下に示すが、本発明は、これに限定されない。
【0217】
一般式(F2)〜(F3)中、
R
57〜R
64は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子又はアルキル基を表す。但し、R
57〜R
61及びR
62〜R
64の内、少なくとも1つは、フッ素原子又は少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換されたアルキル基(好ましくは炭素数1〜4)を表す。R
57〜R
61は、全てがフッ素原子であることが好ましい。R
62及びR
63は、少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換されたアルキル基(好ましくは炭素数1〜4)が好ましく、炭素数1〜4のパーフルオロアルキル基であることがさらに好ましい。R
62とR
63は、互いに連結して環を形成してもよい。
【0218】
一般式(F2)で表される基の具体例としては、例えば、p−フルオロフェニル基、ペンタフルオロフェニル基、3,5−ジ(トリフルオロメチル)フェニル基等が挙げられる。
一般式(F3)で表される基の具体例としては、トリフルオロエチル基、ペンタフルオロプロピル基、ペンタフルオロエチル基、ヘプタフルオロブチル基、ヘキサフルオロイソプロピル基、ヘプタフルオロイソプロピル基、ヘキサフルオロ(2−メチル)イソプロピル基、ノナフルオロブチル基、オクタフルオロイソブチル基、ノナフルオロヘキシル基、ノナフルオロ−t−ブチル基、パーフルオロイソペンチル基、パーフルオロオクチル基、パーフルオロ(トリメチル)ヘキシル基、2,2,3,3−テトラフルオロシクロブチル基、パーフルオロシクロヘキシル基などが挙げられる。ヘキサフルオロイソプロピル基、ヘプタフルオロイソプロピル基、ヘキサフルオロ(2−メチル)イソプロピル基、オクタフルオロイソブチル基、ノナフルオロ−t−ブチル基、パーフルオロイソペンチル基が好ましく、ヘキサフルオロイソプロピル基、ヘプタフルオロイソプロピル基が更に好ましい。
【0219】
樹脂(X)は、珪素原子を有する場合、珪素原子を有する部分構造として、アルキルシリル構造(好ましくはトリアルキルシリル基)、または環状シロキサン構造を有する樹脂であることが好ましい。
【0220】
樹脂(X)としては、例えば、下記一般式(C−I)〜(C−V)で示される繰り返し単位の群から選択される少なくとも1種を有する樹脂が挙げられる。
【0222】
一般式(C−I)〜(C−V)中、
R
1〜R
3は、各々独立に、水素原子、フッ素原子、炭素数1〜4個の、直鎖もしくは分岐のアルキル基、または炭素数1〜4個の、直鎖もしくは分岐のフッ素化アルキル基を表す。
W
1〜W
2は、フッ素原子および珪素原子の少なくともいずれかを有する有機基を表す。
R
4〜R
7は、各々独立に、水素原子、フッ素原子、炭素数1〜4個の、直鎖もしくは分岐のアルキル基、または炭素数1〜4個の、直鎖もしくは分岐のフッ素化アルキル基を表す。ただし、R
4〜R
7の少なくとも1つはフッ素原子を表す。R
4とR
5もしくはR
6とR
7は環を形成していてもよい。
R
8は、水素原子、または炭素数1〜4個の、直鎖もしくは分岐のアルキル基を表す。
R
9は、炭素数1〜4個の、直鎖もしくは分岐のアルキル基、または炭素数1〜4個の、直鎖もしくは分岐のフッ素化アルキル基を表す。
L
1〜L
2は、単結合又は2価の連結基を表し、上記L
3〜L
5と同様のものである。
Qは、単環または多環の環状脂肪族基を表す。すなわち、結合した2つの炭素原子(C−C)を含み、脂環式構造を形成するための原子団を表す。
R
30及びR
31は、各々独立に、水素又はフッ素原子を表す。
R
32及びR
33は、各々独立に、アルキル基、シクロアルキル基、フッ素化アルキル基又はフッ素化シクロアルキル基を表す。
但し、一般式(C−V)で表される繰り返し単位は、R
30、R
31、R
32及びR
33の内の少なくとも1つに、少なくとも1つのフッ素原子を有する。
【0223】
樹脂(X)は、一般式(C−I)で表される繰り返し単位を有することが好ましく、下記一般式(C−Ia)〜(C−Id)で表される繰り返し単位を有することがさらに好ましい。
【0225】
一般式(C−Ia)〜(C−Id)において、
R
10及びR
11は、水素原子、フッ素原子、炭素数1〜4個の、直鎖もしくは分岐のアルキル基、または炭素数1〜4個の、直鎖もしくは分岐のフッ素化アルキル基を表す。
W
3〜W
6は、フッ素原子及び珪素原子の少なくともいずれかを1つ以上有する有機基を表す。
【0226】
W
1〜W
6が、フッ素原子を有する有機基であるとき、炭素数1〜20のフッ素化された、直鎖、分岐アルキル基もしくはシクロアルキル基、または、炭素数1〜20のフッ素化された直鎖、分岐、または環状のアルキルエーテル基であることが好ましい。
【0227】
W
1〜W
6のフッ素化アルキル基としては、トリフルオロエチル基、ペンタフルオロプロピル基、ヘキサフルオロイソプロピル基、ヘキサフルオロ(2−メチル)イソプロピル基、ヘプタフルオロブチル基、ヘプタフルオロイソプロピル基、オクタフルオロイソブチル基、ノナフルオロヘキシル基、ノナフルオロ−t−ブチル基、パーフルオロイソペンチル基、パーフルオロオクチル基、パーフルオロ(トリメチル)ヘキシル基などが挙げられる。
【0228】
以下、一般式(C−I)で表される繰り返し単位の具体例を示すが、これに限定されない。Xは、水素原子、−CH
3、−F、又は、−CF
3を表す。
【0231】
また、上述したように、樹脂(X)は、側鎖部分にCH
3部分構造を含むことも好ましい。樹脂(X)は、側鎖部分に少なくとも1つのCH
3部分構造を有する繰り返し単位を含むことが好ましく、側鎖部分に少なくとも2つのCH
3部分構造を有する繰り返し単位を含むことがより好ましく、側鎖部分に少なくとも3つのCH
3部分構造を有する繰り返し単位を含むことが更に好ましい。
ここで、樹脂(X)中の側鎖部分が有するCH
3部分構造(以下、単に「側鎖CH
3部分構造」ともいう。)には、エチル基、プロピル基等が有するCH
3部分構造を包含するものである。
一方、樹脂(X)の主鎖に直接結合しているメチル基(例えば、メタクリル酸構造を有する繰り返し単位のα−メチル基)は、主鎖の影響により樹脂(X)の表面偏在化への寄与が小さいため、本発明におけるCH
3部分構造に包含されないものとする。
【0232】
より具体的には、樹脂(X)が、例えば、下記一般式(M)で表される繰り返し単位などの、炭素−炭素二重結合を有する重合性部位を有するモノマーに由来する繰り返し単位を含む場合であって、R
11〜R
14がCH
3「そのもの」である場合、そのCH
3は、本発明における側鎖部分が有するCH
3部分構造には包含されない。
一方、C−C主鎖から何らかの原子を介して存在するCH
3部分構造は、本発明におけるCH
3部分構造に該当するものとする。例えば、R
11がエチル基(CH
2CH
3)である場合、本発明におけるCH
3部分構造を「1つ」有するものとする。
【0234】
上記一般式(M)中、
R
11〜R
14は、各々独立に、側鎖部分を表す。
側鎖部分のR
11〜R
14としては、水素原子、1価の有機基などが挙げられる。
R
11〜R
14についての1価の有機基としては、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルキルオキシカルボニル基、シクロアルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルアミノカルボニル基、シクロアルキルアミノカルボニル基、アリールアミノカルボニル基などが挙げられ、これらの基は、更に置換基を有していてもよい。
【0235】
樹脂(X)は、側鎖部分にCH
3部分構造を有する繰り返し単位を有する樹脂であることが好ましく、このような繰り返し単位として、下記一般式(II)で表される繰り返し単位、及び、下記一般式(III)で表される繰り返し単位のうち少なくとも一種の繰り返し単位(x)を有していることがより好ましい。特に、露光光源としてKrF、EUV、電子ビーム(EB)を用いる場合、樹脂(X)は一般式(III)で表される繰り返し単位を好適に含み得る。
【0236】
以下、一般式(II)で表される繰り返し単位について詳細に説明する。
【0238】
上記一般式(II)中、X
b1は水素原子、アルキル基、シアノ基又はハロゲン原子を表し、R
2は1つ以上のCH
3部分構造を有する、有機基を表す。
【0239】
X
b1のアルキル基は、炭素数1〜4のものが好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、ヒドロキシメチル基又はトリフルオロメチル基等が挙げられるが、メチル基であることが好ましい。
X
b1は、水素原子又はメチル基であることが好ましい。
【0240】
R
2としては、1つ以上のCH
3部分構造を有する、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アリール基、及び、アラルキル基が挙げられる。上記のシクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アリール基、及び、アラルキル基は、更に、置換基としてアルキル基を有していてもよい。
R
2は、1つ以上のCH
3部分構造を有する、アルキル基又はアルキル置換シクロアルキル基が好ましい。
R
2としての1つ以上のCH
3部分構造を有する酸に安定な有機基は、CH
3部分構造を2個以上10個以下有することが好ましく、2個以上8個以下有することがより好ましい。
【0241】
R
2に於ける、1つ以上のCH
3部分構造を有するアルキル基としては、炭素数3〜20の分岐のアルキル基が好ましい。好ましいアルキル基としては、具体的には、イソプロピル基、イソブチル基、t−ブチル基、3−ペンチル基、2−メチル−3−ブチル基、3−ヘキシル基、2−メチル−3−ペンチル基、3−メチル−4−ヘキシル基、3,5−ジメチル−4−ペンチル基、イソオクチル基、2,4,4−トリメチルペンチル基、2−エチルヘキシル基、2,6−ジメチルヘプチル基、1,5−ジメチル−3−ヘプチル基、2,3,5,7−テトラメチル−4−ヘプチル基等が挙げられる。より好ましくは、イソブチル基、t−ブチル基、2−メチル−3−ブチル基、2−メチル−3−ペンチル基、3−メチル−4−ヘキシル基、3,5−ジメチル−4−ペンチル基、2,4,4−トリメチルペンチル基、2−エチルヘキシル基、2,6−ジメチルヘプチル基、1,5−ジメチル−3−ヘプチル基、2,3,5,7−テトラメチル−4−ヘプチル基である。
【0242】
R
2に於ける、1つ以上のCH
3部分構造を有するシクロアルキル基は、単環式でも、多環式でもよい。具体的には、炭素数5以上のモノシクロ、ビシクロ、トリシクロ、テトラシクロ構造等を有する基を挙げることができる。その炭素数は6〜30個が好ましく、特に炭素数7〜25個が好ましい。好ましいシクロアルキル基としては、アダマンチル基、ノルアダマンチル基、デカリン残基、トリシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、ノルボルニル基、セドロール基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロデカニル基、シクロドデカニル基を挙げることができる。より好ましくは、アダマンチル基、ノルボルニル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、テトラシクロドデカニル基、トリシクロデカニル基を挙げることができる。より好ましくは、ノルボルニル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基である。
R
2に於ける、1つ以上のCH
3部分構造を有するアルケニル基としては、炭素数1〜20の直鎖または分岐のアルケニル基が好ましく、分岐のアルケニル基がより好ましい。
R
2に於ける、1つ以上のCH
3部分構造を有するアリール基としては、炭素数6〜20のアリール基が好ましく、例えば、フェニル基、ナフチル基を挙げることができ、好ましくはフェニル基である。
R
2に於ける、1つ以上のCH
3部分構造を有するアラルキル基としては、炭素数7〜12のアラルキル基が好ましく、例えば、ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基等を挙げることができる。
【0243】
R
2に於ける、2つ以上のCH
3部分構造を有する炭化水素基としては、具体的には、イソプロピル基、イソブチル基、t−ブチル基、3−ペンチル基、2−メチル−3−ブチル基、3−ヘキシル基、2,3−ジメチル−2−ブチル基、2−メチル−3−ペンチル基、3−メチル−4−ヘキシル基、3,5−ジメチル−4−ペンチル基、イソオクチル基、2,4,4−トリメチルペンチル基、2−エチルヘキシル基、2,6−ジメチルヘプチル基、1,5−ジメチル−3−ヘプチル基、2,3,5,7−テトラメチル−4−ヘプチル基、3,5−ジメチルシクロヘキシル基、3,5−ジtert−ブチルシクロヘキシル基、4−イソプロピルシクロヘキシル基、4−t−ブチルシクロヘキシル基、イソボルニル基などが挙げられる。より好ましくは、イソブチル基、t−ブチル基、2−メチル−3−ブチル基、2,3−ジメチル−2−ブチル基、2−メチル−3−ペンチル基、3−メチル−4−ヘキシル基、3,5−ジメチル−4−ペンチル基、2,4,4−トリメチルペンチル基、2−エチルヘキシル基、2,6−ジメチルヘプチル基、1,5−ジメチル−3−ヘプチル基、2,3,5,7−テトラメチル−4−ヘプチル基、3,5−ジメチルシクロヘキシル基、3,5−ジtert−ブチルシクロヘキシル基、4−イソプロピルシクロヘキシル基、4−t−ブチルシクロヘキシル基、イソボルニル基である。
【0244】
一般式(II)で表される繰り返し単位の好ましい具体例を以下に挙げる。尚、本発明はこれに限定されない。
【0247】
一般式(II)で表される繰り返し単位は、酸に安定な(非酸分解性の)繰り返し単位であることが好ましく、具体的には、酸の作用により分解して、極性基(アルカリ可溶性基)を生じる基を有さない繰り返し単位であることが好ましい。
【0248】
以下、一般式(III)で表される繰り返し単位について詳細に説明する。
【0250】
上記一般式(III)中、X
b2は水素原子、アルキル基、シアノ基又はハロゲン原子を表し、R
3は1つ以上のCH
3部分構造を有する、酸に対して安定な有機基を表し、nは1から5の整数を表す。
【0251】
X
b2のアルキル基は、炭素数1〜4のものが好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、ヒドロキシメチル基又はトリフルオロメチル基等が挙げられるが、水素原子である事が好ましい。
X
b2は、水素原子であることが好ましい。
【0252】
R
3は、酸に対して安定な有機基であるため、酸の作用により分解して極性基(アルカリ可溶性基)を生じる基を有さない有機基であることが好ましい。
【0253】
R
3としては、1つ以上のCH
3部分構造を有する、アルキル基が挙げられる。
R
3としての1つ以上のCH
3部分構造を有する酸に安定な有機基は、CH
3部分構造を1個以上10個以下有することが好ましく、1個以上8個以下有することがより好ましく、1個以上4個以下有することが更に好ましい。
【0254】
R
3に於ける、1つ以上のCH
3部分構造を有するアルキル基としては、炭素数3〜20の分岐のアルキル基が好ましい。好ましいアルキル基としては、具体的には、イソプロピル基、イソブチル基、t−ブチル基、3−ペンチル基、2−メチル−3−ブチル基、3−ヘキシル基、2−メチル−3−ペンチル基、3−メチル−4−ヘキシル基、3,5−ジメチル−4−ペンチル基、イソオクチル基、2,4,4−トリメチルペンチル基、2−エチルヘキシル基、2,6−ジメチルヘプチル基、1,5−ジメチル−3−ヘプチル基、2,3,5,7−テトラメチル−4−ヘプチル基等が挙げられる。より好ましくは、イソブチル基、t−ブチル基、2−メチル−3−ブチル基、2−メチル−3−ペンチル基、3−メチル−4−ヘキシル基、3,5−ジメチル−4−ペンチル基、2,4,4−トリメチルペンチル基、2−エチルヘキシル基、2,6−ジメチルヘプチル基、1,5−ジメチル−3−ヘプチル基、2,3,5,7−テトラメチル−4−ヘプチル基である。
【0255】
R
3に於ける、2つ以上のCH
3部分構造を有するアルキル基としては、具体的には、イソプロピル基、イソブチル基、t−ブチル基、3−ペンチル基、2,3−ジメチルブチル基、2−メチル−3−ブチル基、3−ヘキシル基、2−メチル−3−ペンチル基、3−メチル−4−ヘキシル基、3,5−ジメチル−4−ペンチル基、イソオクチル基、2,4,4−トリメチルペンチル基、2−エチルヘキシル基、2,6−ジメチルヘプチル基、1,5−ジメチル−3−ヘプチル基、2,3,5,7−テトラメチル−4−ヘプチル基、などが挙げられる。より好ましくは、炭素数5〜20であることがより好ましく、イソプロピル基、t−ブチル基、2−メチル−3−ブチル基、2−メチル−3−ペンチル基、3−メチル−4−ヘキシル基、3,5−ジメチル−4−ペンチル基、2,4,4−トリメチルペンチル基、2−エチルヘキシル基、2,6−ジメチルヘプチル基、1,5−ジメチル−3−ヘプチル基、2,3,5,7−テトラメチル−4−ヘプチル基、2,6−ジメチルヘプチル基である。
【0256】
nは1から5の整数を表し、1〜3の整数を表すことがより好ましく、1又は2を表すことが更に好ましい。
【0257】
一般式(III)で表される繰り返し単位の好ましい具体例を以下に挙げる。尚、本発明はこれに限定されない。
【0259】
一般式(III)で表される繰り返し単位は、酸に安定な(非酸分解性の)繰り返し単位であることが好ましく、具体的には、酸の作用により分解して極性基(アルカリ可溶性基)を生じる基を有さない繰り返し単位であることが好ましい。
【0260】
樹脂(X)が、側鎖部分にCH
3部分構造を含む場合であり、更に、特にフッ素原子および珪素原子を有さない場合、一般式(II)で表される繰り返し単位、及び、一般式(III)で表される繰り返し単位のうち少なくとも一種の繰り返し単位(x)の含有量は、樹脂(X)の全繰り返し単位に対して、例えば20モル%以上が挙げられ、30モル%以上が好ましく、90モル%以上であることがより好ましく、95モル%以上であることが更に好ましい。上限は特に限定されず、例えば、100モル%以下が挙げられる。
【0261】
樹脂(X)としては、アルカリ可溶性基を有するモノマーに由来する繰り返し単位(d)を含有していてもよい。これにより、液浸液への溶解性や塗布溶剤に対する溶解性を制御できる。アルカリ可溶性基としては、フェノール性水酸基、カルボン酸基、フッ素化アルコール基、スルホン酸基、スルホンアミド基、スルホニルイミド基、(アルキルスルホニル)(アルキルカルボニル)メチレン基、(アルキルスルホニル)(アルキルカルボニル)イミド基、ビス(アルキルカルボニル)メチレン基、ビス(アルキルカルボニル)イミド基、ビス(アルキルスルホニル)メチレン基、ビス(アルキルスルホニル)イミド基、トリス(アルキルカルボニル)メチレン基、トリス(アルキルスルホニル)メチレン基を有する基等が挙げられる。
【0262】
アルカリ可溶性基を有するモノマーとしては、酸解離定数pKaが4以上のモノマーが好ましく、さらに好ましくはpKaが4〜13のモノマーであり、最も好ましくはpKaが8〜13のモノマーである。pKaが4以上のモノマーを含有することで、ネガ型及びポジ型の現像時の膨潤が抑制され、有機系現像液に対する良好な現像性のみならず、アルカリ現像液を使用した場合においても良好な現像性が得られる。
なお、本明細書における酸解離定数pKaは、詳細は後述するが、ソフトウェアパッケージ1(後述)を用いて計算により求めた値を示している。
pKaが4以上のモノマーは、特に限定されず、たとえば、フェノール性水酸基、スルホンアミド基、−COCH
2CO-、フルオロアルコール基、カルボン酸基等の酸基(アルカリ可溶性基)を有するモノマーなどが挙げられる。特に、フルオロアルコール基を含むモノマーが好ましい。フルオロアルコール基は少なくとも1つの水酸基が置換したフルオロアルキル基であり、炭素数1〜10個のものが好ましく、炭素数1〜5個のものが更に好ましい。フルオロアルコール基の具体例としては、例えば、−CF
2OH、−CH
2CF
2OH、−CH
2CF
2CF
2OH、−C(CF
3)
2OH、−CF
2CF(CF
3)OH、−CH
2C(CF
3)
2OH、等を挙げることができる。フルオロアルコール基として特に好ましいのはヘキサフルオロイソプロパノール基である。
【0263】
樹脂(X)中のアルカリ可溶性基を有するモノマーに由来する繰り返し単位の総量は、好ましくは、樹脂(X)を構成する全繰り返し単位に対して、0〜90モル%、より好ましくは0〜80モル%、更により好ましくは0〜70モル%である。
【0264】
アルカリ可溶性基を有するモノマーは、酸基を1つだけ含んでいても2つ以上含んでいてもよい。このモノマーに由来する繰り返し単位は、繰り返し単位1つあたり2つ以上の酸基を有していることが好ましく、酸基を2〜5個有することがより好ましく、酸基を2〜3個有することが特に好ましい。
【0265】
アルカリ可溶性基を有するモノマーに由来する繰り返し単位の具体例としては、特開2008−309878号公報の段落<0278>〜<0287>に記載した例が挙げられるが、これらに限定されない。
【0266】
樹脂(X)としては、特開2008−309878号公報の段落<0288>に記載された(X−1)〜(X−8)から選ばれるいずれかの樹脂であることも、好ましい態様の1つとして挙げられる。
【0267】
樹脂(X)は、常温(25℃)において、固体であることが好ましい。さらに、ガラス転移温度(Tg)は50℃以上が好ましく、70℃以上がより好ましく、80℃以上が更に好ましい。
なお、樹脂(X)のTgの上限としては、例えば、250℃以下が好ましい。
【0268】
樹脂(X)は、単環式又は多環式のシクロアルキル基を有する繰り返し単位を有することが好ましい。単環式又は多環式のシクロアルキル基は、繰り返し単位の主鎖及び側鎖のいずれに含まれていてもよい。より好ましくは、単環式又は多環式のシクロアルキル基及びCH
3部分構造の両方を有する繰り返し単位であり、単環式又は多環式のシクロアルキル基及びCH
3部分構造の両方を側鎖に有する繰り返し単位が更に好ましい。
【0269】
25℃において固体であるとは、融点が25℃以上であることをいう。
ガラス転移温度(Tg)は、走査カロリメトリー(Differential Scanning Calorimeter)により測定することができ、例えば、試料を一度昇温し、次いで、冷却した後に、再度5℃/分にて昇温したときの比容積が変化した値を解析することにより測定することができる。
【0270】
樹脂(X)は、液浸液(好ましくは水)に対して不溶で、有機系現像液に対して可溶であることが好ましい。アルカリ現像液を用いて現像剥離できるといった観点からは、樹脂(X)はアルカリ現像液に対しても可溶であることが好ましい。
【0271】
樹脂(X)が珪素原子を有する場合、珪素原子の含有量は、樹脂(X)の分子量に対し、2〜50質量%が好ましく、2〜30質量%がより好ましい。また、珪素原子を含む繰り返し単位が、樹脂(X)中10〜100質量%であることが好ましく、20〜100質量%であることがより好ましい。
樹脂(X)がフッ素原子を有する場合、フッ素原子の含有量は、樹脂(X)の分子量に対し、5〜80質量%が好ましく、10〜80質量%がより好ましい。また、フッ素原子を含む繰り返し単位が、樹脂(X)中10〜100質量%であることが好ましく、30〜100質量%であることがより好ましい。
【0272】
一方、特に樹脂(X)が側鎖部分にCH
3部分構造を含む場合においては、樹脂(X)が、フッ素原子を実質的に含有しない形態も好ましく、この場合、具体的には、フッ素原子を有する繰り返し単位の含有量が、樹脂(X)中の全繰り返し単位に対して0〜20モル%が好ましく、0〜10モル%がより好ましく、0〜5モル%が更に好ましく、0〜3モル%が特に好ましく、理想的には0モル%、すなわち、フッ素原子を含有しない。
また、樹脂(X)は、炭素原子、酸素原子、水素原子、窒素原子及び硫黄原子から選ばれる原子のみによって構成された繰り返し単位のみで実質的に構成されることが好ましい。より具体的には、炭素原子、酸素原子、水素原子、窒素原子及び硫黄原子から選ばれる原子のみによって構成された繰り返し単位が、樹脂(X)の全繰り返し単位中95モル%以上であることが好ましく、97モル%以上であることがより好ましく、99モル%以上であることが更に好ましく、理想的には100モル%である。
【0273】
樹脂(X)の標準ポリスチレン換算の重量平均分子量は、好ましくは1,000〜100,000で、より好ましくは1,000〜50,000、更に好ましくは2,000〜15,000、特に好ましくは3,000〜15,000である。
【0274】
樹脂(X)は、金属等の不純物が少ないのは当然のことながら、トップコートから液浸液への溶出低減の観点から、残存モノマー量が0〜10質量%であることが好ましく、より好ましくは0〜5質量%、0〜1質量%が更に好ましい。また、分子量分布(以下、「Mw/Mn」、「分散度」ともいう。)は、1〜5が好ましく、より好ましくは1〜3、更により好ましくは1〜1.5の範囲である。
【0275】
樹脂(X)は、各種市販品を利用することもできるし、常法に従って(例えばラジカル重合)合成することができる。例えば、一般的合成方法としては、モノマー種および開始剤を溶剤に溶解させ、加熱することにより重合を行う一括重合法、加熱溶剤にモノマー種と開始剤の溶液を1〜10時間かけて滴下して加える滴下重合法などが挙げられ、滴下重合法が好ましい。反応溶媒としては、例えば、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、ジイソプロピルエーテルなどのエーテル類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類;酢酸エチルなどのエステル溶媒;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどのアミド溶剤;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、シクロヘキサノンなどの本発明のレジスト組成物を溶解する溶媒;等が挙げられる。
【0276】
重合反応は窒素やアルゴンなど不活性ガス雰囲気下で行われることが好ましい。重合開始剤としては市販のラジカル開始剤(アゾ系開始剤、パーオキサイドなど)を用いて重合を開始させる。ラジカル開始剤としてはアゾ系開始剤が好ましく、エステル基、シアノ基、カルボキシル基を有するアゾ系開始剤が好ましい。好ましい開始剤としては、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスジメチルバレロニトリル、ジメチル2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオネート)などが挙げられる。必要に応じて連鎖移動剤を使用することもできる。反応の濃度は、通常5〜50質量%であり、好ましくは20〜50質量%、より好ましくは30〜50質量%である。反応温度は、通常10℃〜150℃であり、好ましくは30℃〜120℃、さらに好ましくは60〜100℃である。
【0277】
反応終了後、室温まで放冷し、精製する。精製は、例えば、水洗や適切な溶媒を組み合わせることにより残留単量体やオリゴマー成分を除去する液々抽出法;特定の分子量以下のもののみを抽出除去する限外ろ過等の溶液状態での精製方法;樹脂溶液を貧溶媒へ滴下することで樹脂を貧溶媒中に凝固させることにより残留単量体等を除去する再沈澱法;ろ別した樹脂スラリーを貧溶媒で洗浄する等の固体状態での精製方法;等の通常の方法を適用できる。たとえば、上記樹脂が難溶あるいは不溶の溶媒(貧溶媒)を、この反応溶液の10倍以下の体積量、好ましくは10〜5倍の体積量で、接触させることにより樹脂を固体として析出させる。
【0278】
ポリマー溶液からの沈殿又は再沈殿操作の際に用いる溶媒(沈殿又は再沈殿溶媒)としては、このポリマーの貧溶媒であればよく、ポリマーの種類に応じて、例えば、炭化水素(ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタンなどの脂肪族炭化水素;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンなどの脂環式炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素)、ハロゲン化炭化水素(塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素などのハロゲン化脂肪族炭化水素;クロロベンゼン、ジクロロベンゼンなどのハロゲン化芳香族炭化水素など)、ニトロ化合物(ニトロメタン、ニトロエタンなど)、ニトリル(アセトニトリル、ベンゾニトリルなど)、エーテル(ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジメトキシエタンなどの鎖状エーテル;テトラヒドロフラン、ジオキサンなどの環状エーテル)、ケトン(アセトン、メチルエチルケトン、ジイソブチルケトンなど)、エステル(酢酸エチル、酢酸ブチルなど)、カーボネート(ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートなど)、アルコール(メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、ブタノールなど)、カルボン酸(酢酸など)、水、これらの溶媒を含む混合溶媒等の中から適宜選択して使用できる。これらの中でも、沈殿又は再沈殿溶媒として、少なくともアルコール(特に、メタノールなど)または水を含む溶媒が好ましい。このような少なくとも炭化水素を含む溶媒において、アルコール(特に、メタノールなど)と他の溶媒(例えば、酢酸エチルなどのエステル、テトラヒドロフランなどのエーテル類等)との比率は、例えば前者/後者(体積比;25℃)=10/90〜99/1、好ましくは前者/後者(体積比;25℃)=30/70〜98/2、さらに好ましくは前者/後者(体積比;25℃)=50/50〜97/3程度である。
【0279】
沈殿又は再沈殿溶媒の使用量は、効率や収率等を考慮して適宜選択できるが、一般には、ポリマー溶液100質量部に対して、100〜10000質量部、好ましくは200〜2000質量部、さらに好ましくは300〜1000質量部である。
【0280】
ポリマー溶液を沈殿又は再沈殿溶媒(貧溶媒)中に供給する際のノズルの口径は、好ましくは4mmφ以下(例えば0.2〜4mmφ)である。また、ポリマー溶液の貧溶媒中への供給速度(滴下速度)は、線速度として、例えば0.1〜10m/秒、好ましくは0.3〜5m/秒程度である。
【0281】
沈殿又は再沈殿操作は攪拌下で行うのが好ましい。攪拌に用いる攪拌翼として、例えば、デスクタービン、ファンタービン(パドルを含む)、湾曲羽根タービン、矢羽根タービン、ファウドラー型、ブルマージン型、角度付き羽根ファンタービン、プロペラ、多段型、アンカー型(又は馬蹄型)、ゲート型、二重リボン、スクリューなどを使用できる。攪拌は、ポリマー溶液の供給終了後も、さらに10分以上、特に20分以上行うのが好ましい。攪拌時間が少ない場合には、ポリマー粒子中のモノマー含有量を充分低減できない場合が生じる。また、攪拌翼の代わりにラインミキサーを用いてポリマー溶液と貧溶媒とを混合攪拌することもできる。
【0282】
沈殿又は再沈殿する際の温度としては、効率や操作性を考慮して適宜選択できるが、通常0〜50℃程度、好ましくは室温付近(例えば20〜35℃程度)である。沈殿又は再沈殿操作は、攪拌槽などの慣用の混合容器を用い、バッチ式、連続式等の公知の方法により行うことができる。
【0283】
沈殿又は再沈殿した粒子状ポリマーは、通常、濾過、遠心分離等の慣用の固液分離に付し、乾燥して使用に供される。濾過は、耐溶剤性の濾材を用い、好ましくは加圧下で行われる。乾燥は、常圧又は減圧下(好ましくは減圧下)、30〜100℃程度、好ましくは30〜50℃程度の温度で行われる。
【0284】
なお、一度、樹脂を析出させて、分離した後に、再び溶媒に溶解させ、この樹脂が難溶あるいは不溶の溶媒と接触させてもよい。
即ち、上記ラジカル重合反応終了後、このポリマーが難溶あるいは不溶の溶媒を接触させ、樹脂を析出させ(工程a)、樹脂を溶液から分離し(工程b)、改めて溶媒に溶解させ樹脂溶液Aを調製(工程c)、その後、該樹脂溶液Aに、該樹脂が難溶あるいは不溶の溶媒を、樹脂溶液Aの10倍未満の体積量(好ましくは5倍以下の体積量)で、接触させることにより樹脂固体を析出させ(工程d)、析出した樹脂を分離する(工程e)ことを含む方法でもよい。
樹脂溶液Aの調製に際し使用する溶媒は、重合反応に際しモノマーを溶解させる溶媒と同様の溶媒を使用することができ、重合反応に際し使用した溶媒と同一であっても異なっていてもよい。
【0285】
樹脂(X)は、1種で使用してもよいし、複数併用してもよい。
トップコート組成物全体中の樹脂(X)の配合量は、全固形分中、50〜99.9質量%が好ましく、60〜99.0質量%がより好ましい。
【0286】
以下に、樹脂(X)の好ましい例を示すが、本発明はこれに限定されない。
【0290】
<添加剤(A)>
トップコート組成物は、さらに、下記(A1)、(A2)及び(A3)からなる群より選択される少なくとも1種(以下、「添加剤(A)」又は「化合物(A)」ともいう。)を含有することが好ましい。
(A1)塩基性化合物又は塩基発生剤
(A2)エーテル結合、チオエーテル結合、ヒドロキシル基、チオール基、カルボニル結合及びエステル結合からなる群より選択される少なくとも1種の結合又は基を含有する化合物
(A3)オニウム塩
【0291】
トップコート組成物が添加剤(A)を含有することにより、本発明の効果がより優れる。この理由は、上記(A2)を含有する場合はレジスト膜中の酸の拡散が促され、上記(A1)又は(A3)を含有する場合はレジスト膜中の酸の過剰な拡散が抑制されるためと考えられるが、このメカニズムとは異なる場合であっても、本発明の範囲内とする。
【0292】
上記(A1)〜(A3)のうち、本発明の効果が更に優れるという理由か、上記(A2)がより好ましい。
【0293】
上記(A1)〜(A3)の含有量は、後述する通りであるが、本発明の効果がより優れるという理由からは、トップコート組成物の全固形分を基準として、1〜25質量%が好ましく、2.5〜20質量%がより好ましい。
【0294】
<(A1)塩基性化合物及び塩基発生剤>
トップコート組成物は、塩基性化合物又は塩基発生剤(以下、これらをまとめて「化合物(A1)」または「添加剤(A1)」と呼ぶ場合がある)を含有することが好ましい。これらの添加剤が、光酸発生剤から発生した酸をトラップするクエンチャーとして作用することで、本発明の効果がより優れる。
【0295】
(塩基性化合物)
トップコート組成物が含有できる塩基性化合物としては、有機塩基性化合物であることが好ましく、含窒素塩基性化合物であることがより好ましい。例えば、本発明のレジスト組成物が含有してもよい塩基性化合物として記載したものを使用でき、具体的には、上述した式(A)〜(E)で示される構造を有する化合物が好適に挙げられる。
また、例えば、以下の(1)〜(5)及び(7)に分類される化合物を用いることができる。
【0296】
(1)一般式(BS−1)により表される化合物
【0298】
一般式(BS−1)中、
Rは、各々独立に、水素原子又は有機基を表す。但し、3つのRのうち少なくとも1つは有機基である。この有機基は、直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基、単環若しくは多環のシクロアルキル基、アリール基又はアラルキル基である。
【0299】
Rとしてのアルキル基の炭素数は、特に限定されないが、通常1〜20であり、好ましくは1〜12である。
Rとしてのシクロアルキル基の炭素数は、特に限定されないが、通常3〜20であり、好ましくは5〜15である。
【0300】
Rとしてのアリール基の炭素数は、特に限定されないが、通常6〜20であり、好ましくは6〜10である。具体的には、フェニル基及びナフチル基等が挙げられる。
Rとしてのアラルキル基の炭素数は、特に限定されないが、通常7〜20であり、好ましくは7〜11である。具体的には、ベンジル基等が挙げられる。
【0301】
Rとしてのアルキル基、シクロアルキル基、アリール基及びアラルキル基は、水素原子が置換基により置換されていてもよい。この置換基としては、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルカルボニルオキシ基及びアルキルオキシカルボニル基等が挙げられる。
【0302】
なお、一般式(BS−1)により表される化合物では、Rのうち少なくとも2つが有機基であることが好ましい。
【0303】
一般式(BS−1)により表される化合物の具体例としては、トリ−n−ブチルアミン、トリ−イソプロピルアミン、トリ−n−ペンチルアミン、トリ−n−オクチルアミン、トリ−n−デシルアミン、トリイソデシルアミン、ジシクロヘキシルメチルアミン、テトラデシルアミン、ペンタデシルアミン、ヘキサデシルアミン、オクタデシルアミン、ジデシルアミン、メチルオクタデシルアミン、ジメチルウンデシルアミン、N,N−ジメチルドデシルアミン、メチルジオクタデシルアミン、N,N−ジブチルアニリン、N,N−ジヘキシルアニリン、2,6−ジイソプロピルアニリン、及び2,4,6−トリ(t−ブチル)アニリンが挙げられる。
【0304】
また、一般式(BS−1)により表される好ましい塩基性化合物として、少なくとも1つのRがヒドロキシ基で置換されたアルキル基であるものが挙げられる。具体的には、例えば、トリエタノールアミン及びN,N−ジヒドロキシエチルアニリンが挙げられる。
【0305】
なお、Rとしてのアルキル基は、アルキル鎖中に酸素原子を有していてもよい。即ち、オキシアルキレン鎖が形成されていてもよい。オキシアルキレン鎖としては、−CH
2CH
2O−が好ましい。具体的には、例えば、トリス(メトキシエトキシエチル)アミン、及び、US6040112号明細書のカラム3の60行目以降に例示されている化合物が挙げられる。
【0306】
一般式(BS−1)で表される塩基性化合物としては、例えば、以下のものが挙げられる。
【0309】
(2)含窒素複素環構造を有する化合物
この含窒素複素環は、芳香族性を有していてもよく、芳香族性を有していなくてもよい。また、窒素原子を複数有していてもよい。更に、窒素以外のヘテロ原子を含有していてもよい。具体的には、例えば、イミダゾール構造を有する化合物(2−フェニルベンゾイミダゾール、2,4,5−トリフェニルイミダゾールなど)、ピペリジン構造を有する化合物〔N−ヒドロキシエチルピペリジン及びビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケートなど〕、ピリジン構造を有する化合物(4−ジメチルアミノピリジンなど)、並びにアンチピリン構造を有する化合物(アンチピリン及びヒドロキシアンチピリンなど)が挙げられる。
【0310】
また、環構造を2つ以上有する化合物も好適に用いられる。具体的には、例えば、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ−5−エン及び1,8−ジアザビシクロ〔5.4.0〕−ウンデカ−7−エンが挙げられる。
【0311】
(3)フェノキシ基を有するアミン化合物
フェノキシ基を有するアミン化合物とは、アミン化合物が含んでいるアルキル基のN原子と反対側の末端にフェノキシ基を備えた化合物である。フェノキシ基は、例えば、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、カルボキシ基、カルボン酸エステル基、スルホン酸エステル基、アリール基、アラルキル基、アシロキシ基及びアリールオキシ基等の置換基を有していてもよい。
【0312】
この化合物は、より好ましくは、フェノキシ基と窒素原子との間に、少なくとも1つのオキシアルキレン鎖を有している。1分子中のオキシアルキレン鎖の数は、好ましくは3〜9個、更に好ましくは4〜6個である。オキシアルキレン鎖の中でも−CH
2CH
2O−が特に好ましい。
【0313】
具体例としては、2−[2−{2―(2,2―ジメトキシ−フェノキシエトキシ)エチル}−ビス−(2−メトキシエチル)]−アミン、及び、US2007/0224539A1号明細書の段落<0066>に例示されている化合物(C1−1)〜(C3−3)が挙げられる。
【0314】
フェノキシ基を有するアミン化合物は、例えば、フェノキシ基を有する1級又は2級アミンとハロアルキルエーテルとを加熱して反応させ、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム及びテトラアルキルアンモニウム等の強塩基の水溶液を添加した後、酢酸エチル及びクロロホルム等の有機溶剤で抽出することにより得られる。また、フェノキシ基を有するアミン化合物は、1級又は2級アミンと、末端にフェノキシ基を有するハロアルキルエーテルとを加熱して反応させ、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム及びテトラアルキルアンモニウム等の強塩基の水溶液を添加した後、酢酸エチル及びクロロホルム等の有機溶剤で抽出することによって得ることもできる。
【0315】
(4)アンモニウム塩
塩基性化合物として、アンモニウム塩も適宜用いることができる。アンモニウム塩のアニオンとしては、例えば、ハライド、スルホネート、ボレート及びフォスフェートが挙げられる。これらのうち、ハライド及びスルホネートが特に好ましい。
【0316】
ハライドとしては、クロライド、ブロマイド及びアイオダイドが特に好ましい。
スルホネートとしては、炭素数1〜20の有機スルホネートが特に好ましい。有機スルホネートとしては、例えば、炭素数1〜20のアルキルスルホネート及びアリールスルホネートが挙げられる。
【0317】
アルキルスルホネートに含まれるアルキル基は、置換基を有していてもよい。この置換基としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、アルコキシ基、アシル基及びアリール基が挙げられる。アルキルスルホネートとして、具体的には、メタンスルホネート、エタンスルホネート、ブタンスルホネート、ヘキサンスルホネート、オクタンスルホネート、ベンジルスルホネート、トリフルオロメタンスルホネート、ペンタフルオロエタンスルホネート及びノナフルオロブタンスルホネートが挙げられる。
【0318】
アリールスルホネートに含まれるアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基及びアントリル基が挙げられる。これらアリール基は、置換基を有していてもよい。この置換基としては、例えば、炭素数1〜6の直鎖若しくは分岐鎖アルキル基及び炭素数3〜6のシクロアルキル基が好ましい。具体的には、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、i−ブチル、t−ブチル、n−ヘキシル及びシクロヘキシル基が好ましい。他の置換基としては、炭素数1〜6のアルコキシ基、ハロゲン原子、シアノ、ニトロ、アシル基及びアシロキシ基が挙げられる。
【0319】
このアンモニウム塩は、ヒドロキシド又はカルボキシレートであってもよい。この場合、このアンモニウム塩は、炭素数1〜8のテトラアルキルアンモニウムヒドロキシド(テトラメチルアンモニウムヒドロキシド及びテトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラ−(n−ブチル)アンモニウムヒドロキシド等のテトラアルキルアンモニウムヒドロキシドであることが特に好ましい。
【0320】
好ましい塩基性化合物としては、例えば、グアニジン、アミノピリジン、アミノアルキルピリジン、アミノピロリジン、インダゾール、イミダゾール、ピラゾール、ピラジン、ピリミジン、プリン、イミダゾリン、ピラゾリン、ピペラジン、アミノモルフォリン及びアミノアルキルモルフォリンが挙げられる。これらは、置換基を更に有していてもよい。
【0321】
好ましい置換基としては、例えば、アミノ基、アミノアルキル基、アルキルアミノ基、アミノアリール基、アリールアミノ基、アルキル基、アルコキシ基、アシル基、アシロキシ基、アリール基、アリールオキシ基、ニトロ基、水酸基及びシアノ基が挙げられる。
【0322】
特に好ましい塩基性化合物としては、例えば、グアニジン、1,1−ジメチルグアニジン、1,1,3,3,−テトラメチルグアニジン、イミダゾール、2−メチルイミダゾール、4−メチルイミダゾール、N−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、4,5−ジフェニルイミダゾール、2,4,5−トリフェニルイミダゾール、2−アミノピリジン、3−アミノピリジン、4−アミノピリジン、2−ジメチルアミノピリジン、4−ジメチルアミノピリジン、2−ジエチルアミノピリジン、2−(アミノメチル)ピリジン、2−アミノ−3−メチルピリジン、2−アミノ−4−メチルピリジン、2−アミノ5−メチルピリジン、2−アミノ−6−メチルピリジン、3−アミノエチルピリジン、4−アミノエチルピリジン、3−アミノピロリジン、ピペラジン、N−(2−アミノエチル)ピペラジン、N−(2−アミノエチル)ピペリジン、4−アミノ−2,2,6,6テトラメチルピペリジン、4−ピペリジノピペリジン、2−イミノピペリジン、1−(2−アミノエチル)ピロリジン、ピラゾール、3−アミノ−5−メチルピラゾール、5−アミノ−3−メチル−1−p−トリルピラゾール、ピラジン、2−(アミノメチル)−5メチルピラジン、ピリミジン、2,4−ジアミノピリミジン、4,6−ジヒドロキシピリミジン、2−ピラゾリン、3−ピラゾリン、N−アミノモルフォリン及びN−(2−アミノエチル)モルフォリンが挙げられる。
【0323】
(5)プロトンアクセプター性官能基を有し、かつ、活性光線又は放射線の照射により分解してプロトンアクセプター性が低下、消失、又はプロトンアクセプター性から酸性に変化した化合物を発生する化合物(PA)
本発明に係る組成物は、塩基性化合物として、プロトンアクセプター性官能基を有し、かつ、活性光線又は放射線の照射により分解してプロトンアクセプター性が低下、消失、又はプロトンアクセプター性から酸性に変化した化合物を発生する化合物〔以下、化合物(PA)ともいう〕を更に含んでいてもよい。
【0324】
プロトンアクセプター性官能基とは、プロトンと静電的に相互作用し得る基或いは電子を有する官能基であって、例えば、環状ポリエーテル等のマクロサイクリック構造を有する官能基や、π共役に寄与しない非共有電子対をもった窒素原子を有する官能基を意味する。π共役に寄与しない非共有電子対を有する窒素原子とは、例えば、下記一般式に示す部分構造を有する窒素原子である。
【0326】
プロトンアクセプター性官能基の好ましい部分構造として、例えば、クラウンエーテル、アザクラウンエーテル、1〜3級アミン、ピリジン、イミダゾール、ピラジン構造などを挙げることができる。
【0327】
化合物(PA)は、活性光線又は放射線の照射により分解してプロトンアクセプター性が低下、消失、又はプロトンアクセプター性から酸性に変化した化合物を発生する。ここで、プロトンアクセプター性の低下、消失、又はプロトンアクセプター性から酸性への変化とは、プロトンアクセプター性官能基にプロトンが付加することに起因するプロトンアクセプター性の変化であり、具体的には、プロトンアクセプター性官能基を有する化合物(PA)とプロトンからプロトン付加体が生成する時、その化学平衡に於ける平衡定数が減少することを意味する。
【0328】
プロトンアクセプター性は、pH測定を行うことによって確認することができる。本発明においては、活性光線又は放射線の照射により化合物(PA)が分解して発生する化合物の酸解離定数pKaが、pKa<−1を満たすことが好ましく、より好ましくは−13<pKa<−1であり、更に好ましくは−13<pKa<−3である。
【0329】
本発明に於いて、酸解離定数pKaとは、水溶液中での酸解離定数pKaのことを表し、例えば、化学便覧(II)(改訂4版、1993年、日本化学会編、丸善株式会社)に記載のものであり、この値が低いほど酸強度が大きいことを示している。水溶液中での酸解離定数pKaは、具体的には、無限希釈水溶液を用い、25℃での酸解離定数を測定することにより実測することができ、また、下記ソフトウェアパッケージ1を用いて、ハメットの置換基定数及び公知文献値のデータベースに基づいた値を、計算により求めることもできる。本明細書中に記載したpKaの値は、全て、このソフトウェアパッケージを用いて計算により求めた値を示している。
【0330】
ソフトウェアパッケージ1:AdvancedChemistryDevelopment(ACD/Labs)SoftwareV8.14forSolaris(1994−2007ACD/Labs)
【0331】
化合物(PA)は、活性光線又は放射線の照射により分解して発生する上記プロトン付加体として、例えば、下記一般式(PA−1)で表される化合物を発生する。一般式(PA−1)で表される化合物は、プロトンアクセプター性官能基とともに酸性基を有することにより、化合物(PA)に比べてプロトンアクセプター性が低下、消失、又はプロトンアクセプター性から酸性に変化した化合物である。
【0333】
一般式(PA−1)中、
Qは、−SO
3H、−CO
2H、又は−X
1NHX
2Rfを表す。ここで、Rfは、アルキル基、シクロアルキル基若しくはアリール基を表し、X
1及びX
2は各々独立に、−SO
2−又は−CO−を表わす。
Aは、単結合又は2価の連結基を表す。
Xは、−SO
2−又は−CO−を表す。
nは、0又は1を表す。
Bは、単結合、酸素原子又は−N(Rx)Ry−を表す。Rxは、水素原子又は1価の有機基を表し、Ryは単結合又は2価の有機基を表す。Ryと結合して環を形成してもよく、又はRと結合して環を形成してもよい。
Rは、プロトンアクセプター性官能基を有する1価の有機基を表す。
【0334】
化合物(PA)の具体例としては、特開2013−83966号公報の段落<0743>〜<0750>に記載の化合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0335】
また、本発明においては、一般式(PA−1)で表される化合物を発生する化合物以外の化合物(PA)も適宜選択可能である。例えば、イオン性化合物であって、カチオン部にプロトンアクセプター部位を有する化合物を用いてもよい。より具体的には、下記一般式(7)で表される化合物などが挙げられる。
【0337】
式中、Aは硫黄原子又はヨウ素原子を表す。
mは1又は2を表し、nは1又は2を表す。但し、Aが硫黄原子の時、m+n=3、Aがヨウ素原子の時、m+n=2である。
Rは、アリール基を表す。
R
Nは、プロトンアクセプター性官能基で置換されたアリール基を表す。
X
−は、対アニオンを表す。
【0338】
X
−の具体例としては、上述した一般式(ZI)におけるZ
−と同様のものが挙げられる。
R及びR
Nのアリール基の具体例としては、フェニル基が好ましく挙げられる。
【0339】
R
Nが有するプロトンアクセプター性官能基の具体例としては、前述の式(PA−1)で説明したプロトンアクセプター性官能基と同様である。
【0340】
本発明の組成物において、化合物(PA)の組成物全体中の配合率は、全固形分中0.1〜10質量%が好ましく、より好ましくは1〜8質量%である。
【0341】
(7) 窒素原子を有し、酸の作用により脱離する基を有する低分子化合物
本発明の組成物は、窒素原子を有し、酸の作用により脱離する基を有する低分子化合物(以下において、「低分子化合物(D)」又は「化合物(D)」ともいう。)を含有することができる。低分子化合物(D)は、酸の作用により脱離する基が脱離した後は、塩基性を有することが好ましい。
【0342】
酸の作用により脱離する基としては特に限定されないが、アセタール基、カルボネート基、カルバメート基、3級エステル基、3級水酸基、ヘミアミナールエーテル基が好ましく、カルバメート基、ヘミアミナールエーテル基であることが特に好ましい。
【0343】
酸の作用により脱離する基を有する低分子化合物(D)の分子量は、100〜1000が好ましく、100〜700がより好ましく、100〜500が特に好ましい。
【0344】
化合物(D)としては、酸の作用により脱離する基を窒素原子上に有するアミン誘導体が好ましい。
【0345】
化合物(D)は、窒素原子上に保護基を有するカルバメート基を有してもよい。カルバメート基を構成する保護基としては、下記一般式(d−1)で表すことができる。
【0347】
一般式(d−1)において、
R’は、それぞれ独立に、水素原子、直鎖状又は分岐状アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、又はアルコキシアルキル基を表す。R’は相互に結合して環を形成していてもよい。
【0348】
R’として好ましくは、直鎖状、又は分岐状のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基である。より好ましくは、直鎖状、又は分岐状のアルキル基、シクロアルキル基である。
【0349】
化合物(D)は、下記一般式(A)で表される構造を有するものであることが特に好ましい。
【0350】
なお、化合物(D)は、酸の作用により脱離する基を有する低分子化合物であるかぎり、上記の塩基性化合物に相当するものであってもよい。
【0352】
一般式(A)において、R
aは、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はアラルキル基を示す。また、n=2のとき、2つのR
aは同じでも異なっていてもよく、2つのR
aは相互に結合して、2価の複素環式炭化水素基(好ましくは炭素数20以下)若しくはその誘導体を形成していてもよい。
【0353】
R
bは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシアルキル基を示す。但し、−C(R
b)(R
b)(R
b)において、1つ以上のR
bが水素原子のとき、残りのR
bの少なくとも1つはシクロプロピル基、1−アルコキシアルキル基又はアリール基である。
【0354】
少なくとも2つのR
bが結合して脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基、複素環式炭化水素基若しくはその誘導体を形成していてもよい。
【0355】
nは0〜2の整数を表し、mは1〜3の整数を表し、n+m=3である。
【0356】
本発明における特に好ましい化合物(D)の具体例としては、例えば、特開2013−83966号公報の段落<0786>〜<0788>に記載の化合物が挙げられるが、本発明は、これに限定されない。
【0357】
一般式(A)で表される化合物は、特開2007−298569号公報、特開2009−199021号公報などに基づき合成することができる。
本発明において、低分子化合物(D)は、一種単独でも又は2種以上を混合しても使用することができる。
【0358】
その他、使用可能なものとして、特開2002−363146号公報の実施例で合成されている化合物、及び特開2007−298569号公報の段落0108に記載の化合物等が挙げられる。
塩基性化合物として、感光性の塩基性化合物を用いてもよい。感光性の塩基性化合物としては、例えば、特表2003−524799号公報、及び、J.Photopolym.Sci&Tech.Vol.8,P.543−553(1995)等に記載の化合物を用いることができる。
塩基性化合物として、いわゆる光崩壊性塩基と呼ばれる化合物を使用してもよい。光崩壊性塩基としては、例えば、カルボン酸のオニウム塩、α位がフッ素化されていないスルホン酸のオニウム塩を挙げることができる。光崩壊性塩基の具体例は、WO2014/133048A1の段落0145、特開2008−158339及び特許399146を挙げることができる。
【0359】
(塩基性化合物の含有量)
トップコート組成物における塩基性化合物の含有量は、トップコート組成物の固形分を基準として、0.01質量%以上が好ましく、0.1質量%以上がより好ましく、1質量%以上が更に好ましく、2.5質量%以上が特に好ましい。
一方、塩基性化合物の含有量の上限は、トップコート組成物の固形分を基準として、25質量%以下が好ましく、20質量%以下がより好ましく、10質量%以下が更に好ましく、5質量%以下が特に好ましい。
【0360】
(塩基発生剤)
トップコート組成物が含有できる塩基発生剤(光塩基発生剤)としては、例えば、特開平4−151156号、同4−162040号、同5−197148号、同5−5995号、同6−194834号、同8−146608号、同10−83079号、及び欧州特許622682号に記載の化合物が挙げられる。
また、特開2010−243773号公報に記載の化合物も適宜用いられる。
光塩基発生剤としては、具体的には、例えば、2−ニトロベンジルカルバメート、2,5−ジニトロベンジルシクロヘキシルカルバメート、N−シクロヘキシル−4−メチルフェニルスルホンアミド及び1,1−ジメチル−2−フェニルエチル−N−イソプロピルカーバメートが好適に挙げられるがこれらに限定されない。
【0361】
(塩基発生剤の含有量)
トップコート組成物における塩基発生剤の含有量は、トップコート組成物の固形分を基準として、0.01質量%以上が好ましく、0.1質量%以上がより好ましく、1質量%以上が更に好ましく、2.5質量%以上が特に好ましい。
一方、塩基発生剤の含有量の上限は、トップコート組成物の固形分を基準として、25質量%以下が好ましく、20質量%以下がより好ましく、10質量%以下が更に好ましく、5質量%以下が特に好ましい。
【0362】
<(A2)エーテル結合、チオエーテル結合、ヒドロキシル基、チオール基、カルボニル結合及びエステル結合からなる群より選択される結合又は基を含有する化合物>
エーテル結合、チオエーテル結合、ヒドロキシル基、チオール基、カルボニル結合及びエステル結合からなる群より選択される基又は結合を少なくとも一つ含む化合物(以下、「化合物(A2)」又は「添加剤(A2)」とも呼ぶ)について、以下に説明する。
【0363】
上記の通り、化合物(A2)は、エーテル結合、チオエーテル結合、ヒドロキシル基、チオール基、カルボニル結合及びエステル結合からなる群より選択される基又は結合を少なくとも一つ含む化合物である。
【0364】
上述の通り、化合物(A2)は、エーテル結合、チオエーテル結合、ヒドロキシル基、チオール基、カルボニル結合及びエステル結合からなる群より選択される基又は結合を少なくとも一つ含む。本発明の一形態において、化合物(A2)は、上記群から選択される基又は結合を2つ以上有することが好ましく、3つ以上有することがより好ましく、4つ以上有することが更に好ましい。この場合、化合物(A2)に複数含まれるエーテル結合、チオエーテル結合、ヒドロキシル基、チオール基、カルボニル結合及びエステル結合から選択される基又は結合は、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0365】
本発明の一形態において、化合物(A2)は、分子量が3000以下であることが好ましく、2500以下であることがより好ましく、2000以下であることが更に好ましく、1500以下であることが特に好ましい。
【0366】
また、本発明の一形態において、化合物(A2)に含まれる炭素原子数は、8個以上であることが好ましく、9個以上であることがより好ましく、10個以上であることが更に好ましい。
また、本発明の一形態において、化合物(A2)に含まれる炭素原子数は、30個以下であることが好ましく、20個以下であることがより好ましく、15個以下であることが更に好ましい。
【0367】
また、本発明の一形態において、化合物(A2)は、沸点が200℃以上の化合物であることが好ましく、沸点が220℃以上の化合物であることがより好ましく、沸点が240℃以上の化合物であることが更に好ましい。
【0368】
また、本発明の一形態において、化合物(A2)は、エーテル結合を有する化合物であることが好ましく、エーテル結合を2つ以上有することが好ましく、3つ以上有することがより好ましく、4つ以上有することが更に好ましい。
本発明の一形態において、化合物(A2)は、下記一般式(1)で表されるオキシアルキレン構造を含有する繰り返し単位を含有することが更に好ましい。
【化47】
【0369】
式中、
R
11は、置換基を有してもよいアルキレン基を表し、
nは、2以上の整数を表し、
*は、結合手を表す。
【0370】
一般式(1)中のR
11により表されるアルキレン基の炭素数は特に制限されないが、1〜15であることが好ましく、1〜5であることがより好ましく、2又は3であることが更に好ましく、2であることが特に好ましい。このアルキレン基が置換基を有する場合、置換基は特に制限されないが、例えばアルキル基(好ましくは炭素数1〜10)であることが好ましい。
nは、2〜20の整数であることが好ましく、そのなかでも、DOFがより大きくなる理由から、10以下であることがより好ましい。
nの平均値は、DOFがより大きくなる理由から、20以下であることが好ましく、2〜10であることがより好ましく、2〜8であることがさらに好ましく、4〜6であることが特に好ましい。ここで、「nの平均値」とは、化合物(A2)の重量平均分子量をGPCによって測定し、得られた重量平均分子量と一般式が整合するように決定されるnの値を意味する。nが整数でない場合は、四捨五入した値とする。
複数あるR
11は同一であっても異なってもよい。
【0371】
また、上記一般式(1)で表される部分構造を有する化合物は、DOFがより大きくなる理由から、下記一般式(1−1)で表される化合物であることが好ましい。
【0373】
式中、
R
11の定義、具体例および好適な態様は、上述した一般式(1)中のR
11と同じである。
R
12およびR
13は、それぞれ独立に、水素原子又はアルキル基を表す。アルキル基の炭素数は特に制限されないが、1〜15であることが好ましい。R
12およびR
13は、互いに結合して環を形成してもよい。
mは、1以上の整数を表す。mは、1〜20の整数であることが好ましく、そのなかでも、DOFがより大きくなる理由から、10以下であることがより好ましい。
mの平均値は、DOFがより大きくなる理由から、20以下であることが好ましく、1〜10であることがより好ましく、1〜8であることがさらに好ましく、4〜6であることが特に好ましい。ここで、「mの平均値」は、上述した「nの平均値」と同義である。
mが2以上である場合、複数あるR
11は同一であっても異なってもよい。
【0374】
本発明の一形態において、一般式(1)で表される部分構造を有する化合物は、少なくとも2つのエーテル結合を含むアルキレングリコールであることが好ましい。
【0375】
化合物(A2)は、市販品を使用してもよく、公知の方法によって合成してもよい。
【0376】
以下に、化合物(A2)の具体例を挙げるが、本発明はこれらに限定されない。
【0379】
(化合物(A2)の含有量)
トップコート組成物における化合物(A2)の含有量は、トップコート組成物の固形分を基準として、0.1質量%以上が好ましく、1質量%以上がより好ましく、2質量%以上が更に好ましく、2.5質量%以上が特に好ましく、3質量%以上が最も好ましい。
一方、化合物(A2)の含有量の上限は、トップコート組成物の固形分を基準として、30質量%以下が好ましく、25質量%以下がより好ましく、20質量%以下が更に好ましく、18質量%以下が特に好ましい。
【0380】
<(A3)オニウム塩>
トップコート組成物は、酸発生剤に対して相対的に弱酸となるオニウム塩を含有できる。活性光線性又は放射線の照射により酸発生剤から生じた酸が未反応の弱酸アニオンを有するオニウム塩と衝突すると、塩交換により弱酸を放出して強酸アニオンを有するオニウム塩を生じる。この過程で強酸がより触媒能の低い弱酸に交換されるため、見かけ上、酸が失活して酸拡散の制御を行うことができる。
【0381】
酸発生剤に対して相対的に弱酸となるオニウム塩としては、下記一般式(d1−1)〜(d1−3)で表される化合物であることが好ましい。
【0383】
式中、R
51は置換基を有していてもよい炭化水素基であり、Z
2cは置換基を有していてもよい炭素数1〜30の炭化水素基(ただし、Sに隣接する炭素にはフッ素原子は置換されていないものとする)であり、R
52は有機基であり、Y
3は直鎖状、分岐鎖状若しくは環状のアルキレン基又はアリーレン基であり、Rfはフッ素原子を含む炭化水素基であり、M
+は各々独立に、スルホニウム又はヨードニウムカチオンである。
【0384】
M
+として表されるスルホニウムカチオン又はヨードニウムカチオンの好ましい例としては、一般式(ZI)で例示したスルホニウムカチオン及び一般式(ZII)で例示したヨードニウムカチオンを挙げることができる。
【0385】
一般式(d1−1)で表される化合物のアニオン部の好ましい例としては、特開2012−242799号公報の段落〔0198〕に例示された構造を挙げることが出来る。
一般式(d1‐2)で表される化合物のアニオン部の好ましい例としては、特開2012−242799号公報の段落〔0201〕に例示された構造を挙げることが出来る。
一般式(d1‐3)で表される化合物のアニオン部の好ましい例としては、特開2012−242799号公報の段落〔0209〕及び〔0210〕に例示された構造を挙げることが出来る。
【0386】
酸発生剤に対して相対的に弱酸となるオニウム塩は、(C)カチオン部位とアニオン部位を同一分子内に有し、かつ、該カチオン部位とアニオン部位が共有結合により連結している化合物(以下、「化合物(CA)」ともいう。)であってもよい。
化合物(CA)としては、下記一般式(C−1)〜(C−3)のいずれかで表される化合物であることが好ましい。
【0388】
一般式(C−1)〜(C−3)中、
R
1、R
2、R
3は、炭素数1以上の置換基を表す。
L
1は、カチオン部位とアニオン部位を連結する2価の連結基又は単結合を表す。
−X
−は、−COO
−、−SO
3−、−SO
2−、−N
−−R
4から選択されるアニオン部位を表す。R
4は、隣接するN原子との連結部位に、カルボニル基:−C(=O)−、スルホニル基:−S(=O)
2−、スルフィニル基:−S(=O)−を有する1価の置換基を表す。
R
1、R
2、R
3、R
4、L
1は互いに結合して環構造を形成してもよい。また、(C−3)において、R
1〜R
3のうち2つを合わせて、N原子と2重結合を形成してもよい。
【0389】
R
1〜R
3における炭素数1以上の置換基としては、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルキルオキシカルボニル基、シクロアルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルアミノカルボニル基、シクロアルキルアミノカルボニル基、アリールアミノカルボニル基などが挙げられる。好ましくは、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基である。
【0390】
2価の連結基としてのL
1は、直鎖若しくは分岐鎖状アルキレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基、カルボニル基、エーテル結合、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合、ウレア結合、及びこれらの2種以上を組み合わせてなる基等が挙げられる。L
1は、より好ましくは、アルキレン基、アリーレン基、エーテル結合、エステル結合、及びこれらの2種以上を組み合わせてなる基である。
一般式(C−1)で表される化合物の好ましい例としては、特開2013−6827号公報の段落〔0037〕〜〔0039〕及び特開2013−8020号公報の段落〔0027〕〜〔0029〕に例示された化合物を挙げることが出来る。
一般式(C−2)で表される化合物の好ましい例としては、特開2012−189977号公報の段落〔0012〕〜〔0013〕に例示された化合物を挙げることが出来る。
一般式(C−3)で表される化合物の好ましい例としては、特開2012−252124号公報の段落〔0029〕〜〔0031〕に例示された化合物を挙げることが出来る。
【0391】
(オニウム塩の含有量)
トップコート組成物におけるオニウム塩の含有量は、トップコート組成物の固形分を基準として、0.5質量%以上が好ましく、1質量%以上がより好ましく、2.5質量%以上が更に好ましい。
一方、オニウム塩の含有量の上限は、トップコート組成物の固形分を基準として、25質量%以下が好ましく、20質量%以下がより好ましく、10質量%以下が更に好ましく、8質量%以下が特に好ましい。
【0392】
<界面活性剤>
本発明のトップコート組成物は、更に界面活性剤を含有していてもよい。
【0393】
<トップコート組成物の調製方法>
本発明のトップコート組成物は、上述した各成分を溶剤に溶解し、フィルター濾過することが好ましい。フィルターとしては、ポアサイズ0.1μm以下、より好ましくは0.05μm以下、更に好ましくは0.03μm以下のポリテトラフロロエチレン製、ポリエチレン製、ナイロン製のものが好ましい。なお、フィルターは、複数種類を直列又は並列に接続して用いてもよい。また、組成物を複数回濾過してもよく、複数回濾過する工程が循環濾過工程であってもよい。さらに、フィルター濾過の前後で、組成物に対して脱気処理などを行ってもよい。
【0394】
[レジストパターン]
本発明は、上述した本発明のパターン形成方法により形成されたレジストパターンにも関する。
【0395】
[電子デバイスの製造方法、及び、電子デバイス]
本発明は、上述した本発明のパターン形成方法を含む、電子デバイスの製造方法、及び、この製造方法により製造された電子デバイスにも関する。
本発明の電子デバイスは、電気電子機器(家電、OA・メディア関連機器、光学用機器及び通信機器等)に、好適に、搭載される。
【実施例】
【0396】
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0397】
<合成例1:樹脂(1)の合成>
シクロヘキサノン 102.3質量部を窒素気流下、80℃に加熱した。この液を攪拌しながら、そこへ下記構造式LM−2で表されるモノマー 22.2質量部、下記構造式PM−1で表されるモノマー 22.8質量部、下記構造式PM−9で表されるモノマー 6.6質量部、シクロヘキサノン 189.9質量部、2,2’−アゾビスイソ酪酸ジメチル〔V−601、和光純薬工業(株)製〕2.40質量部の混合溶液を5時間かけて滴下した。滴下終了後の溶液を、80℃で更に2時間攪拌した。得られた反応液を放冷後、多量のヘキサン/酢酸エチル(質量比9:1)で再沈殿、ろ過し、得られた固体を真空乾燥することで、樹脂(1)を41.1質量部得た。
【0398】
【化53】
【0399】
得られた樹脂(1)のGPC(キャリア:テトラヒドロフラン(THF))から求めた重量平均分子量(Mw:ポリスチレン換算)は、Mw=9500、分散度はMw/Mn=1.62であった。
13C−NMRにより測定した組成比はモル比で40/50/10であった。
【0400】
<合成例2:樹脂(2)〜(12)の合成>
合成例1と同様の操作を行い、酸分解性樹脂として後掲の樹脂(2)〜(12)を合成した。
以下、樹脂(1)〜(12)における各繰り返し単位の組成比(モル比;左から順に対応)、重量平均分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)を、表1にまとめて示す。これらは上述した樹脂(1)と同様の方法により求めた。
【0401】
【表1】
【0402】
表1における繰り返し単位は、以下の通りである。
【0403】
【化54】
【0404】
<レジスト組成物の調製>
下記表2に示す成分を下記表2に示す溶剤に溶解させ、固形分濃度3.5質量%の溶液を調製し、これを0.04μmのポアサイズを有するポリエチレンフィルターでろ過して、レジスト組成物Re−1〜Re−17を調製した。
【0405】
【表2】
【0406】
表2における略号は次の通りである。
【0407】
<酸発生剤>
【0408】
【化55】
【0409】
【化56】
【0410】
<塩基性化合物>
【0411】
【化57】
【0412】
<疎水性樹脂>
【0413】
B−1:下記繰り返し単位を、39/57/2/2の組成比(モル比;左から順に対応)で有する樹脂(Mw=5300、Mw/Mn=1.35)
【0414】
【化58】
【0415】
<溶剤>
SL−1:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)
SL−2:シクロヘキサノン
SL−3:プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)
SL−4:γ−ブチロラクトン
【0416】
<合成例3:樹脂(X1)〜(X14)の合成>
合成例1と同様の操作を行い、トップコート組成物に含まれる後掲の樹脂(X1)〜(X14)を合成した。合成した各樹脂における各繰り返し単位の組成比(モル比;左から順に対応)、重量平均分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)、ガラス転移温度(Tg)を、表3にまとめて示す。ガラス転移温度(Tg)の測定方法については、後述する。
【0417】
【表3】
【0418】
【化59】
【0419】
(ガラス転移温度(Tg)の測定方法)
樹脂(X1)〜(X14)のガラス転移温度(Tg)は、TA Instruments社製の示差走査型熱量計(DSC)Q2000を用いて、真空乾燥した樹脂のサンプル約2mgをアルミニウムパン上で秤量し、このアルミニウムパンをDSC測定ホルダーにセットし、10〜300℃まで2℃/分で昇温させ、樹脂の温度上昇における変曲点から求めた。
【0420】
<トップコート組成物の調製>
下記表4に示す成分を下記表4に示す溶剤に溶解させ、固形分濃度3.0質量%の溶液を調製し、これを0.04μmのポアサイズを有するポリエチレンフィルターでろ過して、トップコート組成物A−1〜A−16を調製した。
【0421】
【表4】
【0422】
表4における略号は次の通りである。
【0423】
<添加剤>
【0424】
【化60】
【0425】
<実施例1〜22及び比較例1〜3>
上記調製したレジスト組成物及びトップコート組成物を用いて、レジストパターンを形成し、下記の方法で評価を行った。
【0426】
(ホールパターンの形成)
シリコンウエハ上に有機反射防止膜形成用組成物ARC29SR(Brewer社製)を塗布し、205℃で60秒間ベークを行い膜厚86nmの有機反射防止膜を形成し、その上に、下記表5に示すレジスト組成物を塗布し、100℃で60秒間に亘ってベークを行い、膜厚90nmのレジスト膜を形成した。
次に、下記表5に示すトップコート組成物をレジスト膜上に塗布し、その後、下記表5に示すPB温度(単位:℃)で60秒間に亘ってベークを行い、膜厚90nmの上層膜(トップコート)を形成した。
次いで、ArFエキシマレーザー液浸スキャナー(ASML社製;XT1700i、NA1.20、C−Quad、アウターシグマ0.730、インナーシグマ0.630、XY偏向)を用い、ホール部分が65nmであり且つホール間のピッチが100nmである正方配列のハーフトーンマスク(ホール部分が遮蔽されている)を介して、上層膜が形成されたレジスト膜のパターン露光を行った。液浸液としては超純水を用いた。その後、105℃で60秒間加熱(PEB:Post Exposure Bake)した。次いで、下記表5に記載の有機系現像液で30秒間パドルして現像し、下記表5に記載のリンス液で30秒間パドルしてリンスした。続いて、2000rpmの回転数で30秒間ウエハを回転させることにより、孔径50nmのホールパターンを得た。
【0427】
(ラインアンドスペースパターンの形成)
ホールパターンの形成と同様にして、シリコンウエハ上に有機反射防止膜、レジスト膜、上層膜の順に、各組成物を塗布することにより膜を形成した。
次いで、ArFエキシマレーザー液浸スキャナー(ASML社製;XT1700i、NA1.20、Dipole、アウターシグマ0.800、インナーシグマ0.564、Y偏向)を用い、スペース部分が55nmであり且つスペース間のピッチが110nmであるハーフトーンマスクを介して、パターン露光を行った。液浸液としては超純水を用いた。その後、90℃で60秒間加熱(PEB:Post Exposure Bake)した。次いで、下記表5に記載の有機系現像液で30秒間パドルして現像し、下記表5に記載のリンス液で30秒間パドルしてリンスした。続いて、2000rpmの回転数で30秒間ウエハを回転させることにより、ライン幅50nmのラインパターンを得た。
【0428】
(CD均一性(CDU))
上記(ホールパターンの形成)の露光及び現像条件で形成した、孔径50nmのホールパターンを、線幅測長走査型電子顕微鏡SEM((株)日立製作所S−9380)を用いて観察した。任意の100個のホールパターンの孔径を測定し、その平均値の標準偏差(σ)の3倍値(3σ)を算出し、これをCDUとした。値が小さいほど良好な性能であることを示す。結果を下記表5に示す。
【0429】
(ラインエッジラフネス(LER))
上記(ラインアンドスペースパターンの形成)の露光及び現像条件で形成した、ライン幅50nmのラインパターンを、線幅測長走査型電子顕微鏡SEM((株)日立製作所S−9380)を用いて観察した。ラインパターンの長手方向5μmの範囲に含まれる等間隔の50ポイントについて、エッジのあるべき基準線と実際のエッジとの距離を測定した。この距離の標準偏差を求め、3σ(単位:nm)を算出し、これをLERとした。値が小さいほど良好な性能であることを示す。結果を下記表5に示す。
【0430】
(露光ラチチュード(EL))
ライン幅が50nmのラインパターンを解像するときの露光量(単位:mJ/cm
2)を最適露光量とし、次いで、露光量を変化させた際にライン幅が50nm±10%を許容する露光量幅を求め、求めた露光量幅を最適露光量で除して百分率表示したものを露光ラチチュード(EL、単位:%)とした。ELの値が大きいほど、露光量変化による性能変化が小さく、良好である。結果を下記表5に示す。
【0431】
【表5】
【0432】
上記表5に示す結果から明らかなように、実施例1〜22については、比較例1〜3よりもCDU及びLERが優れており、ELは比較例1〜3と同等かそれ以上で良好であった。
【0433】
なお、実施例11と実施例15とを対比すると、酸発生剤の含有量が17.0質量%であるレジスト組成物Re−1を用いた実施例15よりも、酸発生剤の含有量が24.0質量%であるレジスト組成物Re−11を用いた実施例11の方が、CDU及びLERの値が小さくより優れていた。
また、実施例15と実施例16とを対比すると、添加剤を含有しないトップコート組成物A−11を用いた実施例15よりも、添加剤を含有するトップコート組成物A−12を用いた実施例16の方が、CDU及びLERの値が小さく優れ、また、ELの値が大きくより優れていた。
また、実施例13と実施例16とを対比すると、トップコート組成物に含まれる樹脂のTgが72℃である実施例16よりも、同Tgが101℃である実施例13の方が、ELの値が大きくより優れていた。
また、実施例9と実施例17とを対比すると、PB温度が90℃である実施例9よりも、PB温度が120℃である実施例17の方が、CDU及びLERの値が小さく優れ、また、ELの値が大きくより優れていた。