特許第6603989号(P6603989)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6603989複合粒子及びその製造方法、導電性ペースト、焼結体、並びに半導体装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6603989
(24)【登録日】2019年10月25日
(45)【発行日】2019年11月13日
(54)【発明の名称】複合粒子及びその製造方法、導電性ペースト、焼結体、並びに半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01B 1/00 20060101AFI20191031BHJP
   H01B 1/22 20060101ALI20191031BHJP
【FI】
   H01B1/00 E
   H01B1/22 A
   H01B1/00 K
   H01B1/00 L
【請求項の数】9
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2015-3179(P2015-3179)
(22)【出願日】2015年1月9日
(65)【公開番号】特開2016-129101(P2016-129101A)
(43)【公開日】2016年7月14日
【審査請求日】2017年11月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】日立化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100160897
【弁理士】
【氏名又は名称】古下 智也
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(72)【発明者】
【氏名】石川 大
(72)【発明者】
【氏名】川名 祐貴
(72)【発明者】
【氏名】松本 博
(72)【発明者】
【氏名】名取 美智子
(72)【発明者】
【氏名】中子 偉夫
(72)【発明者】
【氏名】蔵渕 和彦
【審査官】 土谷 慎吾
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−098398(JP,A)
【文献】 特開2010−065265(JP,A)
【文献】 特開2004−047423(JP,A)
【文献】 特開2012−214898(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/133627(WO,A1)
【文献】 特開2010−065260(JP,A)
【文献】 特開2014−225350(JP,A)
【文献】 特開2009−097074(JP,A)
【文献】 特開2008−133527(JP,A)
【文献】 特開2016−008337(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0183128(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 1/00− 1/24
H01B 5/00− 5/16
H01B 13/00− 13/016
H01B 13/34
B22F 1/00− 9/30
C09J 1/00− 5/10
C09J 9/00−201/10
C22C 1/04− 1/05
C22C 33/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅粒子と、前記銅粒子を被覆する複数の銀微粒子とを備え、
前記銀微粒子の表面の少なくとも一部は、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン及びデシルアミンからなる群より選ばれる少なくとも1種のアミン化合物で被覆され、
前記銀微粒子の粒子径が1〜500nmである、複合粒子。
【請求項2】
前記複合粒子における銅に対する銀の質量比が5〜50質量%である、請求項1に記載の複合粒子。
【請求項3】
(A)銅粒子と、(B)酸化銀と、(C)大気圧下における沸点が70〜300℃であるアルコール化合物と、(D)ペンチルアミン、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン及びデシルアミンからなる群より選ばれる少なくとも1種のアミン化合物とを混合して混合物を得る工程と、
前記混合物中の前記(B)酸化銀を還元させ、前記(A)銅粒子の表面に銀微粒子を析出させる工程とを備える、複合粒子の製造方法。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の複合粒子と、溶剤とを含有する、導電性ペースト。
【請求項5】
0.1〜10μmの粒子径を有する、前記銀微粒子以外の銀粒子を、導電性ペースト全質量に対して1〜70質量%で更に含有する、請求項4に記載の導電性ペースト。
【請求項6】
銀及び銅以外の金属元素を導電性ペースト全質量に対して0.1〜5質量%で更に含有する、請求項4又は5に記載の導電性ペースト。
【請求項7】
樹脂成分を導電性ペースト全質量に対して0.1〜5質量%で更に含有する、請求項4〜6のいずれか一項に記載の導電性ペースト。
【請求項8】
請求項4〜7のいずれか一項に記載の導電性ペーストを300℃以下で加熱し、前記複合粒子同士を焼結させることで形成され、
1×10−5Ω・cm以下の体積抵抗率、30W・m−1・K−1以上の熱伝導率及び10MPa以上の接着強度を有する、焼結体。
【請求項9】
請求項4〜7のいずれか一項に記載の導電性ペーストを焼結してなる焼結体を介して、半導体素子と半導体素子搭載用支持部材とが互いに接着した構造を有する半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合粒子及びその製造方法、導電性ペースト、焼結体、並びに半導体装置に関する。さらに詳しくは、パワー半導体、LSI、発光ダイオード(LED)等の半導体素子をリードフレーム、セラミック配線板、ガラスエポキシ配線板、ポリイミド配線板等の支持部材に接着するのに使用される導電性ペースト及びそれを用いた半導体装置、該導電性ペーストに含有される複合粒子及び該複合粒子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置を製造する際、半導体素子と半導体素子搭載用支持部材とを互いに接着させる方法としては、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂等のバインダ樹脂、銀粒子等の充てん剤、溶剤などを混合し、ペースト状として、これを接着剤として使用する方法がある。近年では半導体パッケージの高集積化に伴いパワー密度(W・cm−3)が高くなっており、半導体素子の動作安定性を確保するために、接着剤には高い放熱性が求められる。また、半導体素子の使用環境温度が高温となっているために、接着剤には耐熱性も求められる。さらに、環境負荷の低減のためにPbを含まない接着剤が求められている。以上のような経緯から、焼結型の導電性ペーストが研究されている。
【0003】
導電性ペーストの使用方法としては、例えば、ディスペンサー、印刷機、スタンピングマシン等を用いて、導電性ペーストを半導体素子搭載用支持部材のダイパッドに塗布した後、半導体素子をダイボンディングし、加熱硬化により接着させ半導体装置とする方法が挙げられる。導電性ペーストに要求される特性は、接着時の工法に関わる内容と、接着後の焼結体の物性に関わる内容とに大別される。
【0004】
接着時の工法に関わる内容としては、半導体素子の損傷を防ぐために、低温(例えば300℃程度)、及び低加圧(例えば0.1MPa程度)又は無加圧で接着できることが要求される。また、スループット向上の観点から、接着に要する時間の短縮が求められる。一方、接着後の焼結体の物性に関わる内容としては、半導体素子と半導体素子搭載用支持部材との接着を確保するために高接着性(高いダイシェア強度)が要求される。また、焼結体の高放熱特性(高熱伝導性)も求められている。さらに、長期間にわたる接着信頼性を確保するために、焼結体の耐熱性及び高緻密性(硬化物中に空孔が少ないこと)が要求される。
【0005】
従来の焼結型の銀ペーストとして、例えば特許文献1〜2に開示されるようなマイクロサイズの銀粒子やナノサイズの銀粒子を用いることで銀焼結体を形成する銀ペーストが提案されている(従来技術1)。また、特許文献3〜4に開示されるような銀めっき銅粒子を用いた導電性ペーストが提案されている(従来技術2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2007/034833号
【特許文献2】特開2004−273205号公報
【特許文献3】特開2008−223058号公報
【特許文献4】特開2012−214898号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来技術1の焼結型の銀ペーストに係る問題点は、銀が高価な金属であるために、銀ペーストの材料費用が高いことである。焼結型の銀ペーストが性能的に必要となる製品であっても、材料費用が高いために適用しにくいという課題がある。
【0008】
従来技術2の銀めっき銅粒子を用いた導電性ペーストに係る問題点は、硬化物の導電率や熱伝導率が低いことである。また、被着体に対しては、バインダ樹脂の接着力によって接着するため、高温では十分な接着力を確保できない。そのため、高パワー密度で動作する半導体素子の接着信頼性を確保できないという課題がある。
【0009】
上記の従来技術に係る問題に鑑みて、本発明は、銀の使用量を低減することにより材料費用を低減し、さらには、導電率や熱伝導率の高い導電性ペーストを提供することを目的とする。また、本発明は、これらの特性を満たす導電性ペーストを構成する複合粒子及びその製造方法、並びに該導電性ペーストを用いた半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、銅粒子と、銅粒子を被覆する複数の銀微粒子とを備え、銀微粒子の表面の少なくとも一部は、大気圧下における沸点が70〜300℃であるアミン化合物で被覆され、銀微粒子の粒子径が1〜500nmである、複合粒子を提供する。
【0011】
複合粒子における銅に対する銀の質量比が5〜50質量%であることが望ましい。
【0012】
また、本発明は、(A)銅粒子と、(B)酸化銀と、(C)大気圧下における沸点が70〜300℃であるアルコール化合物と、(D)大気圧下における沸点が70〜300℃であるアミン化合物とを用いて複合粒子を得る、複合粒子の製造方法を提供する。
【0013】
また、本発明は、上記の複合粒子と、溶剤とを含有する、導電性ペーストを提供する。
【0014】
上記の導電性ペーストは、0.1〜10μmの粒子径を有する、銀微粒子以外の銀粒子を、導電性ペースト全質量に対して1〜70質量%で更に含有することが望ましい。
【0015】
上記の導電性ペーストは、銀及び銅以外の金属元素を導電性ペースト全質量に対して0.1〜5質量%で更に含有することが望ましい。
【0016】
上記の導電性ペーストは、樹脂成分を導電性ペースト全質量に対して0.1〜5質量%で更に含有することが望ましい。
【0017】
また、本発明は、上記の導電性ペーストを300℃以下で加熱し、複合粒子同士を焼結させることで形成され、1×10−5Ω・cm以下の体積抵抗率、30W・m−1・K−1以上の熱伝導率及び10MPa以上の接着強度を有する、焼結体を提供する。
【0018】
また、本発明は、上記の導電性ペーストを焼結してなる焼結体を介して、半導体素子と半導体素子搭載用支持部材とが互いに接着した構造を有する半導体装置を提供する。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る複合粒子では、銅粒子が、大気圧下における沸点が70〜300℃であるアミン化合物で被覆され、かつ1〜500nmの粒子径を有する銀微粒子によって被覆されている。銀微粒子は300℃未満の加熱により焼結するため、複合粒子同士は、その表面で銀の金属結合を形成する。また、複合粒子と被着体との界面では、金属結合や金属拡散が発生し、接合強度も高いものとなる。その結果、半導体部材(半導体素子、半導体素子搭載用支持部材)との接着性に優れ、接着信頼性の高い焼結体が得られ、焼結体の熱伝導性、電気伝導性等の物性も良好となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】実施例1の銅粒子のSEM写真である。
図2】実施例1の銀微粒子によってめっき処理した銅粒子の低倍率のSEM写真である。
図3】実施例1の銀微粒子によってめっき処理した銅粒子の高倍率のSEM写真である。
図4】比較例1の銀微粒子のSEM写真である。
図5】比較例1の銀微粒子のTG−DTAである。
図6】比較例1の導電性ペーストの焼結後のSEM写真である。
図7】実施例3の導電性ペーストの焼結後のSEM写真である。
図8】本発明に係る半導体装置の一実施形態を示す模式断面図である。
図9】本発明に係る半導体装置の他の実施形態を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0022】
本実施形態に係る複合粒子は、銅粒子と、銅粒子を被覆する複数の銀微粒子とを備えている。該銀微粒子の表面の少なくとも一部は、大気圧下における沸点が70〜300℃であるアミン化合物で被覆されており、該銀微粒子の粒子径は1〜500nmである。
【0023】
複合粒子の核となる銅粒子の粒子径は、0.5〜20μmであることが望ましく、1〜15μmであることがより望ましく、1〜10μmであることが更に望ましい。銅粒子の粒子径が0.5μm未満、あるいは20μmを超えると、適正な厚みの焼結体を形成しにくくなる。ここで、例えばダイボンド用途として想定される焼結体の厚みは、10〜200μmである。なお、本明細書における粒子径は、SEMを用いて粒子を平面視したときの、粒子の面積の平方根とする。
【0024】
銅粒子の形状としては、球状、非球状のいずれの粒子も使用可能であり、2種類以上の形状の粒子を混合して使用することも可能である。球状、非球状、いずれの銅粒子に対しても銀微粒子で被覆することが可能である。なお、本明細書における「球状」とは、半円をその直径を軸として回転させることによって得られる回転体である球形、及び略球形をなす形状を意味する。略球状とは、直径が±30%以下、好ましくは±10%以下で滑らかに変化する球状や楕円球状を含む。本明細書における「非球状」とは、球状以外の形状であって、板状、フレーク状、角状、針状、棒状などを意味する。半導体素子及び半導体素子搭載用支持部材に対する接着強度を高めるために、半導体素子及び半導体素子搭載用支持部材との接着面積を大きくすることが可能な板状の複合粒子を使用することが望ましい。なお、本明細書における「板状」とは、粒子のアスペクト比(粒子径/厚さ)が2〜1000の範囲である形状を意味する。
【0025】
銀微粒子の表面の少なくとも一部は、大気圧下における沸点が70〜300℃であるアミン化合物で被覆されている(詳細は後述する)。銀微粒子の粒子径は、1〜500nmであり、1〜300nmであることが望ましく、1〜100nmであることがより望ましい。銀微粒子によって銅粒子を被覆するには、銅粒子の粒子径よりも銀微粒子の粒子径が小さいことが必要となる。銀微粒子が上記の範囲内であると、銅粒子を効率的に被覆できる。さらに、銀微粒子が微細であるほど、銅粒子を被覆する銀微粒子の割合が増加し、その複合粒子の焼結性も良好となる。銅粒子を被覆する銀粒子における上記の粒子径を有する銀微粒子の割合は、例えば50%(個数)以上である。銀微粒子の形状は、上記の銅粒子と同様に球状、非球状のいずれであってもよい。銀微粒子は複合粒子の最表面に配置されていることが望ましく、複合粒子の最表面における被覆率は例えば50%以上である。なお、被覆率は、SEMを用いて複合粒子を平面視したときの、複合粒子の面積に占める銀微粒子の面積の割合として算出される。
【0026】
銅粒子を銀微粒子で被覆する方法として、銅と銀との置換反応を利用する方法や、銅粒子と銀イオンとを含む溶液中で還元剤により銀イオンを還元して析出する方法がある。しかしながら、それらの手法で使用される原料は除去しにくい残存物を生じ易く、得られた複合粒子の焼結性は非常に乏しいものとなる。例えば、銀イオンの源としては、水への溶解度の高い硝酸銀が一般的に使用されるが、この場合、除去しにくく、焼結を阻害する硝酸イオンが発生する。また、銀めっき溶液中にはキレート化剤やpH調整剤、還元剤なども加える必要がある。これらの添加剤の中には高温まで脱離しないイオン種や、焼結しないアルカリ金属を含む化合物も存在するため、そのような添加剤を使用した従来の銀めっき方法では焼結可能な複合粒子を得ることができない。
【0027】
焼結可能な複合粒子を製造するには、精製除去の容易な原料を選定する必要がある。本発明者らは、特定の原料を組合せて用いることにより銅粒子を銀微粒子で被覆することが可能であり、またその製造方法で作製された複合粒子が焼結可能であるという新規な事実を見出した。
【0028】
本実施形態では、銅粒子を銀微粒子で被覆する方法として、(A)銅粒子と、(B)酸化銀と、(C)大気圧下における沸点が70〜300℃であるアルコール化合物と、(D)大気圧下における沸点が70〜300℃であるアミン化合物とを用いる。
【0029】
(A)銅粒子は、無垢の銅粒子か、従来の方法で表面が銀めっきされた銅粒子を用いることが望ましい。表面が酸化された銅粒子や不純物の付着が多い銅粒子については、使用前に洗浄処理を行うことが望ましい。銅粒子を被覆する銀微粒子層の厚みを厚くしたい場合は、既に銀めっきされた銅粒子の方が、銀微粒子によって被覆するための処理時間を短縮することができ、望ましい。
【0030】
本実施形態では、銀微粒子の源として(B)酸化銀を用いる。酸化銀はその構成元素が銀と酸素のみである。(B)酸化銀は(C)アルコール化合物と反応し、銀に還元する。また、アルコール化合物由来の反応物は容易に除去可能である。酸化銀の量は、銅粒子に対して形成する銀微粒子層の厚みに応じて、適宜決めることができ、例えば(A)銅粒子100質量部に対して5〜50質量部である。また、酸化銀をアルコール化合物と速やかに反応させるために、酸化銀は粉状であることが望ましい。
【0031】
本実施形態では、(C)大気圧下における沸点が70〜300℃であるアルコール化合物を用いる。アルコール化合物の還元作用により、酸化銀を還元し、また同時に銅粒子の酸化を抑制することが可能である。アルコール化合物は酸化銀の酸素によって酸化され、アルデヒド化合物、ケトン化合物、カルボン酸化合物などに変化する。これらの化合物は、その後の精製処理によって容易に除去可能であり、焼結阻害の原因となる不純物が残らない。アルコール化合物との反応で、酸化銀は銀に還元し、銀微粒子が析出する。
【0032】
(C)アルコール化合物としては、炭化水素基及び水酸基(−OH)のみからなるアルコール化合物が望ましく、脂肪族第一級アルコールや脂肪族第二級アルコール、ポリオール化合物などが好適に使用できる。アルコール化合物の量は、酸化銀を還元するのに必要となる化学量論量とすればよく、酸化銀の還元を効率よく行うために、化学量論量よりも過剰量であることが望ましい。具体的には、アルコール化合物の量は、例えば(B)酸化銀100質量部に対して500〜1000質量部である。
【0033】
析出した銀微粒子の表面の少なくとも一部は、(D)大気圧下における沸点が70〜300℃のアミン化合物によって被覆される(以下、(D)アミン化合物を「保護剤」ともいう。)。アミン化合物が銀微粒子表面を被覆することで、銀微粒子は1〜500nmという微細な粒子の状態で存在することが可能となる。このアミン化合物は300℃未満の加熱によって銀微粒子表面から脱離する。アミン化合物が脱離すると、清浄な銀表面が露出する。露出した銀表面は非常に活性が高く、この銀微粒子同士が接触すると銀原子の拡散が起こってより大きな銀微粒子に成長する。この銀微粒子の成長現象を焼結という。本実施形態の複合粒子では、300℃未満の加熱温度で表面の銀微粒子同士が焼結し、焼結体を形成する。
【0034】
アミン化合物としては、炭化水素基及びアミン基(−NH)のみからなるアミン化合物が望ましく、脂肪族第一級アミン化合物が好適に使用される。アミン化合物としては、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ドデシルアミン等が挙げられる。
【0035】
アミン化合物の量は、酸化銀から生成する銀微粒子を十分被覆できる量とすることが望ましい。微細な銀微粒子を得るためには、反応溶液中で生成した銀微粒子をアミン化合物で速やかに被覆し、銀微粒子の成長を抑制する必要がある。そのため、アミン化合物の濃度は高いほうが望ましい。しかし、アミン化合物の濃度を高く設定すると、反応溶液中の銅粒子の濃度が相対的に減少する。このことは、単位体積及び単位時間に製造できる複合粒子が減少することを意味する。そのため、複合粒子のスループットを損ねない程度に、アミン化合物の濃度を設定することが望ましい。銀微粒子に対して過剰に吸着したアミン化合物は、精製処理によって容易に除去することができる。以上の観点から、アミン化合物の量は、酸化銀100質量部に対して、10〜3000質量部であることが望ましく、100〜2000質量部であることがより望ましく、500〜1000質量部であることが更に望ましい。
【0036】
本実施形態に係る複合粒子の製造方法では、(A)銅粒子と、(B)酸化銀と、(C)大気圧下における沸点が70〜300℃であるアルコール化合物と、(D)大気圧下における沸点が70〜300℃であるアミン化合物とを反応容器内で混合し、撹拌を行いながら加熱することで、酸化銀を還元させ、銅粒子の表面に銀微粒子を析出させる。その際、銅粒子の酸化を抑制するために、窒素雰囲気やAr雰囲気などの無酸素雰囲気で反応を行うことが望ましい。反応温度は、使用するアルコール化合物にもよるが、100〜300℃で行うことが望ましい。100℃以上の温度で、アルコール化合物による酸化銀の還元反応が顕著となり、銀微粒子が効率的に生成される。また、300℃を超える温度でも反応を行うことができるが、使用するアルコール化合物やアミン化合物が沸騰する場合は、還流しながら加熱を行う必要がある。反応時間は、銀微粒子層の厚みに応じて、適宜決めることができる。
【0037】
複合粒子において、銅粒子を被覆する銀微粒子の焼結温度は300℃以下であることが望ましい。そのためには、銀微粒子の保護剤の脱離温度は300℃以下であることが望ましい。銀微粒子の保護剤の脱離温度は、示差熱−熱重量同時測定(Thermogravimetry−Differential Thermal Analysis;TG−DTA)を想定する焼成雰囲気中(大気中、窒素中など)で行うことにより求めることができる。保護剤の脱離が十分に生じる温度まで加熱してTG−DTA測定を行い、測定前後での質量変化から求めることができる。焼結温度が300℃以下の銀微粒子を用いることで、導電性ペーストとしたときも、半導体部材(半導体素子、半導体素子搭載用支持部材)を接続する温度(一般に300℃以下)で速やかに焼結することができる。
【0038】
ここで、本実施形態に係る複合粒子が焼結する理由を、実施例1及び比較例1(詳細は後述する。)に基づき具体的に説明する。実施例1では、(A)銅粒子として銀めっき銅粉GB(福田金属箔粉工業株式会社製、粒子径1〜20μm)、(B)酸化銀(和光純薬工業株式会社)、(C)デシルアミン(和光純薬工業株式会社、沸点220.5℃)、(D)ジエチレングリコール(和光純薬工業株式会社、沸点244℃)を用いた。これらの原料を混合して、窒素雰囲気中、140℃で3時間反応を行い、複合粒子を作製した。比較例1では、(B)酸化銀、(C)デシルアミン、(D)ジエチレングリコールを用いた。これらの原料を混合して、窒素雰囲気中、140℃で3時間反応を行い、銀微粒子のみを作製した。
【0039】
実施例1で使用した複合粒子のSEM写真を図1に、銀微粒子により被覆した後の銅粒子を図2及び図3にそれぞれ示した。図1から、複合粒子が、100〜300nmの銀微粒子によって被覆されていることが分かる。比較例1の銀微粒子のSEM写真を図4に、TG−DTA測定結果を図5にそれぞれ示した。図5から、銀微粒子表面を被覆しているデシルアミンが約247℃で脱離することが分かる。つまり、比較例1の銀微粒子は約247℃で焼結する。比較例1の銀微粒子を用いて導電性ペーストを作製し、250℃で1時間焼成したところ、焼結体となることを確認した(図6)。実施例1の銅粒子を被覆している銀微粒子は、比較例1とほぼ同じ銀微粒子である。つまり、実施例1の複合粒子も銀微粒子部分は約247℃で焼結する。実施例1の複合粒子と、溶剤とを用いて導電性ペーストを作製した(実施例3)。この導電性ペーストの焼結体のSEM像を図7に示す。図7から、複合粒子の界面でネックが成長していることが分かる。このように、本実施形態の複合粒子は、表面を被覆する銀微粒子が焼結することで、焼結体を形成することができる。
【0040】
複合粒子において、銅(元素)に対する銀(元素)の質量比が5〜50質量%であることが望ましい。銀の量が5質量%以上であると、銅粒子を十分に被覆し、また銀微粒子同士の焼結による接合を確保しやすくなる。また、銀と銅との質量比は、公知の方法によって定量すればよく、例えば、エネルギー分散型X線分光法やX線光電子分光などを用いて求めることができる。
【0041】
導電性ペーストは、0.1〜10μmの粒子径を有する、上記銀微粒子以外の銀粒子を更に含有していることが望ましい。かかる銀粒子としては、特に、複合粒子同士が接触してできる空隙を充填するような粒子径を有する銀粒子を選択することが望ましい。これにより、充填した銀粒子と複合粒子との間でも焼結が進行するために、より高い密度の焼結体が得られやすくなる。その結果、焼結体の導電率、熱伝導率、機械的特性なども向上し、ダイボンド材として使用した際の接合信頼性も向上する。
【0042】
銀粒子の量は、導電性ペースト全質量に対して1〜70質量%であることが望ましい。銀粒子の量が多いほど、導電性や熱伝導性の優れた焼結体となり易いが、材料費用は上昇する。焼結体の特性と材料費用を考慮し、銀粒子の量を決めればよい。
【0043】
導電性ペーストは、銀及び銅以外の金属元素を導電性ペースト全質量に対して0.1〜5質量%で更に含有していることが望ましい。これらの金属元素は、例えば粒子状をなして導電性ペーストに含有される。銀及び銅以外の金属元素としては、スズ、亜鉛、金などが挙げられる。これにより、焼結体の機械的特性の向上や被着体金属に対する接着強度の向上などの効果が期待できる。
【0044】
導電性ペーストは、樹脂成分を導電性ペースト全質量に対して0.1〜5質量%で更に含有していることが望ましい。本明細書における「樹脂成分」には、バインダ樹脂、バインダ樹脂を硬化する硬化剤、バインダ樹脂の反応性希釈剤等が含まれる。樹脂成分としては、例えばエポキシ樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、飽和ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、アクリル樹脂等のバインダ樹脂と、必要によりイミダゾール、アミン類等の硬化剤とが用いられる。
【0045】
導電性ペースト中の複合粒子の量としては、目的とする導電性ペーストの粘度又はチキソ性に合わせて、適宜決めることができる。焼結体の接着強度及び熱伝導性をより発現させやすくするには、導電性ペースト100質量部中、複合粒子は80質量部以上であることが望ましい。
【0046】
導電性ペーストは、溶剤を含有する。本実施形態における溶剤としては、常温(20℃)で液体であるものであれば特に限定されず、公知の溶剤を使用できる。溶剤としては、アルコール類、アルデヒド類、カルボン酸類、エーテル類、エステル類、アミン類、単糖類、多糖類、直鎖の炭化水素類、脂肪酸類、芳香族類等から選択することが可能であり、上記溶剤を複数組み合わせて使用することも可能である。
【0047】
溶剤の沸点は特に限定されないが、100〜350℃であることが望ましく、130〜300℃であることがより望ましく、150〜250℃であることがさらに望ましい。溶剤の沸点が100℃以上であると、導電性ペーストの使用時に室温(25℃)で溶剤が揮発することを抑制でき、その結果、導電性ペーストの粘度安定性、塗布性等を確保できる。また、溶剤の沸点が350℃以下であると、半導体素子を半導体素子搭載用支持部材に接続する温度で、溶剤が蒸発せずに銀焼結体に残存するのを抑制でき、その結果、銀焼結体の特性をより良好に保つことができる。特に、沸点が150〜300℃の炭化水素化合物及び150〜350℃のアルコール化合物の少なくとも1種類を含んでいることが望ましい。なお、本明細書における沸点とは、大気圧(1013hPa)下における沸点を意味する。
【0048】
溶剤としては、上記のような溶剤の中から複合粒子や銀粒子の分散に適した溶剤を選択することが望ましく、具体的には、焼結体の熱伝導性、電気伝導性、及び接着強度が良好になる点から、炭化水素構造、アルコール構造、エーテル構造、又はエステル構造を有する溶剤を選択することが望ましい。本実施形態における溶剤としては、例えば、デカン、ドデカン、テトラデカン、ヘキサデカン、ブチルセロソルブ、カルビトール、酢酸ブチルセロソルブ、酢酸カルビトール、エチレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−メチルエーテル、イソボニルシクロヘキサノール、トリブチリン、テルピネオールが挙げられる。
【0049】
導電性ペースト中の溶剤の量は、導電性ペースト100質量部中、20質量部未満であることが望ましい。溶剤が20質量部未満であると、導電性ペーストを焼結した際の溶剤の揮発に伴う体積収縮を抑制でき、形成される焼結体の緻密性をより向上させやすくなる。
【0050】
本実施形態に係る導電性ペーストは、添加剤を更に含有していてもよい。添加剤は、大気圧下における沸点が250℃以下である、カルボン酸又はアミン化合物であることが好ましい。添加剤の具体例としては、酢酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、オクチルアミン、デシルアミン、ドデシルアミン等が挙げられる。添加剤の量は、導電性ペースト100質量部中、5質量部以下であることが望ましく、1質量部以下であることがより望ましい。
【0051】
本実施形態に係る導電性ペーストを製造するには、例えば、複合粒子と、溶剤と(場合によっては更に銀粒子、樹脂成分、添加剤と)を、一括又は分割して撹拌器、らいかい器、3本ロール、プラネタリーミキサー等の分散・溶解装置を適宜組み合わせ、必要に応じて加熱して混合、溶解、解粒混練又は分散して均一なペースト状とすればよい。
【0052】
本実施形態に係る導電性ペーストを加熱して焼結させる方法としては、公知の方法を利用できる。ヒーターによる外部加熱以外にも、紫外線ランプ、レーザー、マイクロ波等を好適に用いることができる。導電性ペーストの加熱温度は、銀微粒子の保護剤、溶剤及び添加剤が系外へ脱離する温度以上であることが望ましい。具体的には、加熱温度の範囲は、150℃以上、300℃以下であることが望ましく、150℃以上、250℃以下であることがより望ましい。特に大気中で導電性ペーストの焼結を行う場合、加熱温度を300℃以上とすると、複合粒子中の銅が粒子表面に拡散して酸化し、焼結阻害となるおそれがある。加熱温度を300℃以下とすることで、この問題を回避することができる。また、一般的な半導体部材を接続する場合は、加熱温度を300℃以下とすることで、当該部材へのダメージを回避することができる。他方、加熱温度を150℃以上とすることで、銀微粒子の保護剤の脱離が起こりやすくなる。
【0053】
導電性ペーストの加熱時間は、設定した温度において、有機物の脱離が完了する時間とすればよい。適切な加熱温度及び加熱時間の範囲は、導電性ペーストのTG−DTA測定を行うことで見積もることができる。
【0054】
また、導電性ペーストを加熱する際の工程は適宜決めることができる。特に、溶剤の沸点を超える温度で焼結を行う場合には、溶剤の沸点以下の温度で予熱を行い、予め溶剤をある程度揮発させた上で焼結を行うと、より緻密な焼結体を得やすい。導電性ペーストを加熱する際の昇温速度は、溶剤の沸点未満で焼結する場合には特に制限されない。溶剤の沸点を超える温度で焼結する場合には、昇温速度を1℃/秒以下とするか、予熱工程を行うことが望ましい。
【0055】
上記のように導電性ペーストを焼結させることにより得られる焼結体は、1×10−5Ω・cm以下の体積抵抗率、30W・m−1・K−1以上の熱伝導率、及び10MPa以上の接着強度を有することが望ましい。
【0056】
本実施形態に係る半導体装置は、本実施形態に係る導電性ペーストを焼結してなる焼結体を介して、半導体素子と半導体素子搭載用支持部材とが互いに接着したものである。
【0057】
図8は、本実施形態に係る半導体装置の一例を示す模式断面図である。図8に示すように、半導体装置10は、半導体素子搭載用支持部材であるリードフレーム2a(放熱体)と、リードフレーム2b,2cと、本実施形態に係る導電性ペーストの焼結体3を介してリードフレーム2aに接続された半導体素子1と、これらをモールドするモールドレジン5とを備えている。半導体素子1は、2本のワイヤ4を介してリードフレーム2b,2cにそれぞれ接続されている。
【0058】
図9は、本実施形態に係る半導体装置の別の例を示す模式断面図である。図9に示したように、半導体装置20は、基板6と、基板6を囲むように形成された半導体素子搭載用支持部材であるリードフレーム7と、本実施形態に係る導電性ペーストの焼結体3を介してリードフレーム7上に接続された半導体素子であるLEDチップ8と、これらを封止する透光性樹脂9とを備えている。LEDチップ8は、ワイヤ4を介してリードフレーム7に接続されている。
【0059】
これらの半導体装置では、例えば、半導体素子搭載用支持部材上に導電性ペーストをディスペンス法、スクリーン印刷法、スタンピング法等により塗布し、導電性ペーストが塗布された部分に半導体素子を搭載し、加熱装置を用いて導電性ペーストを焼結することによって、半導体素子と半導体素子搭載用支持部材とを互いに接着させることができる。また、導電性ペーストの焼結後、ワイヤボンド工程及び封止工程を行うことにより、半導体装置が得られる。
【0060】
半導体素子搭載用支持部材としては、例えば、42アロイリードフレーム、銅リードフレーム、パラジウムPPFリードフレーム等のリードフレーム、ガラスエポキシ基板(ガラス繊維強化エポキシ樹脂からなる基板)、BT基板(シアネートモノマー及びそのオリゴマーとビスマレイミドからなるBTレジン使用基板)等の有機基板が挙げられる。
【実施例】
【0061】
以下に実施例を示し、本発明をより具体的に説明する。本発明はこれらの実施例により限定を受けるものではない。
【0062】
各実施例及び比較例における各特性の測定は、次のようにして実施した。
【0063】
(1)粒子観察
粒子をカーボンテープ上に固定し、イオンスパッター装置(株式会社日立ハイテクノロジーズ、E1045)で白金を蒸着し、これを走査電子顕微鏡(PHILIPS、XL30)により観察した。
【0064】
(2)有機物の脱離温度(TG−DTA(示差熱‐熱重量同時測定、Thermogravimetry−Differential Thermal Analysis)測定)
銀微粒子をTG−DTA測定用のAlサンプルパンに10mg乗せ、これをTG−DTA測定装置(エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社、EXSTAR6000 TG/DTA6300)の試料ホルダーにセットした。ドライエアを流量約400mL/分で流しながら、昇温速度10℃/分で室温(25℃)から約500℃までサンプルを加熱し、その際の重量変化と熱挙動を測定した。重量変化の停止点を有機物脱離の完了温度とした。
【0065】
(3)焼結体の密度及び観察
導電性ペーストをホットプレート(アズワン株式会社製、EC HOTPLATE EC−1200N)により110℃で10分間予熱し、さらに250℃で1時間加熱することで焼結体(約10mm×10mm×1mm)を得た。作製した焼結体を紙やすり(800番)で研磨し、研磨後の焼結体の体積及び質量を測定した。これらの値から焼結体の密度を算出した。また、焼結体をカーボンテープ上に固定し、イオンスパッター装置(株式会社日立ハイテクノロジーズ、E1045)で白金を蒸着し、これを走査電子顕微鏡(PHILIPS、XL30)により観察した。
【0066】
(4)ダイシェア強度
表1に示した3種類の被着体に対してダイシェア強度測定用のサンプルを作製した。導電性ペーストの塗布量は0.1mgとした。被着体がAg、Auの場合は大気中で焼結を行った。被着体がCuの場合は窒素中で焼結を行った。得られた銀焼結体の接着強度を、ダイシェア強度(MPa)により評価した。万能型ボンドテスタ(デイジ・ジャパン株式会社製、4000シリーズ)を用い、測定スピード500μm・s−1、測定高さ100μmでSiチップあるいはCu板を水平方向に押し、焼結体のダイシェア強度(MPa)を測定した。
【0067】
【表1】
【0068】
なお、表1の“1mm×1mm,t=0.4mm”は、縦が1mm、横が1mm、厚さが0.4mmであることを表す。
【0069】
(5)熱伝導率
導電性ペーストをホットプレート(アズワン株式会社製、EC HOTPLATE EC−1200N)により110℃で10分間予熱し、さらに250℃で1時間加熱することで焼結体(約10mm×10mm×1mm)を得た。この焼結体の熱拡散率をレーザーフラッシュ法(ネッチ社製 LFA 447、25℃)で測定し、さらにこの熱拡散率と、示差走査熱量測定装置(パーキンエルマー社製 Pyris1)で得られた比熱容量と焼結密度の積(すなわち下記式)より、25℃における焼結体の熱伝導率[W・m−1・K−1]を算出した。
熱伝導率(W・m−1・K−1)=比熱容量(J・g−1・K−1)×熱拡散率(mm・s−1)×焼結密度(g・cm−3
【0070】
(6)体積抵抗率
導電性ペーストをガラス板上に塗布して、ホットプレート(アズワン株式会社製、EC HOTPLATE EC−1200N)により110℃で10分間予熱し、さらに280℃で1時間加熱することで、ガラス板上に1mm×50mm×0.03mmの焼結体を得た。この焼結体の体積抵抗率を、4端子法(アドバンテスト(株)製 R687E DIGTAL MULTIMETER)で測定した。
【0071】
[粒子]
(実施例1)
複合粒子を次の手順で合成した。銅粒子として銀めっき銅粉GB(福田金属箔株式会社、粒子径1〜20μm)、銀源としてAgO(和光純薬工業株式会社)、保護剤としてデシルアミン(和光純薬工業株式会社、沸点220.5℃)、溶媒としてジエチレングリコール(和光純薬工業株式会社、沸点244℃)を使用した。これらの試薬を表2に示した配合割合(添加量の単位は「質量部」。以下同様。)でナスフラスコに加えた。この処理溶液をマグネチックスターラーで約700回転/分(rpm)で撹拌しながら、窒素雰囲気中、140℃で3時間、加熱した。処理後の溶液にアセトンを約500mL加え、上澄み液を取り除き、沈殿した複合粒子を回収した。この複合粒子を窒素雰囲気中、40℃で5時間加熱し、乾燥させた。この複合粒子の表面が、100〜300nmの銀微粒子によって被覆されていることを確認した(図2、3)。
【0072】
(実施例2)
複合粒子を次の手順で合成した。銅粒子として銅粉SFR−Cu(日本アトマイズ加工株式会社、粒子径5μm)、銀源としてAgO(和光純薬工業株式会社)、保護剤としてデシルアミン(和光純薬工業株式会社、沸点220.5℃)、溶媒としてジエチレングリコール(和光純薬工業株式会社、沸点244℃)を使用した。これらの試薬を表2に示した配合割合でナスフラスコに加えた。この処理溶液をマグネチックスターラーで約700回転/分(rpm)で撹拌しながら、窒素雰囲気中、140℃で3時間、加熱した。処理後の溶液にアセトンを約500mL加え、上澄み液を取り除き、沈殿した複合粒子を回収した。この複合粒子を窒素雰囲気中、40℃で5時間加熱し、乾燥させた。この複合粒子の表面が、100〜300nmの銀微粒子によって被覆されていることを確認した。
【0073】
(比較例1)
銅粒子を使用しなかった以外は、実施例1と同様の手順で銀微粒子を作製した。配合は表2のとおりである。100〜300nmの銀微粒子の生成を確認した(図4)。この銀微粒子のTG−DTA測定を行い、図5のチャートを得た。これより、銀微粒子表面を被覆しているデシルアミンが約247℃で脱離することが分かる。
【0074】
(比較例2)
複合粒子を次の手順で合成した。銅粒子として銅粉SFR−Cu(日本アトマイズ加工株式会社、粒子径5μm)、銀源としてAgO(和光純薬工業株式会社)、保護剤としてsec−ブチルアミン(東京化成工業株式会社、沸点63℃)、溶媒としてジエチレングリコール(和光純薬工業株式会社、沸点244℃)を使用した。これらの試薬を表2に示した配合割合でナスフラスコに加えた。この処理溶液をマグネチックスターラーで約700回転/分(rpm)で撹拌しながら、窒素雰囲気中、70℃で6時間、加熱した。処理後の溶液にアセトンを約500mL加え、上澄み液を取り除き、沈殿した複合粒子を回収した。この複合粒子を窒素雰囲気中、40℃で5時間加熱し、乾燥させた。AgOが一部残存しており、還元反応が未完了であった。また、1μmを超える粒子径の銀粒子の生成を確認した。この銀粒子は銅粒子の表面を被覆しておらず、複合粒子を作製できなかった。
【0075】
(比較例3)
複合粒子を次の手順で合成した。銅粒子として銅粉SFR−Cu(日本アトマイズ加工株式会社、粒子径5μm)、銀源としてAgO(和光純薬工業株式会社)、保護剤としてステアリルアミン(和光純薬工業株式会社、沸点349℃)、溶媒としてジエチレングリコール(和光純薬工業株式会社、沸点244℃)を使用した。これらの試薬を表2に示した配合割合でナスフラスコに加えた。この処理溶液をマグネチックスターラーで約700回転/分(rpm)で撹拌しながら、窒素雰囲気中、140℃で3時間、加熱した。処理後の溶液にアセトンを約500mL加え、上澄み液を取り除き、沈殿した複合粒子を回収した。この複合粒子を窒素雰囲気中、40℃で5時間加熱し、乾燥させた。この複合粒子の表面が、20〜80nmの銀微粒子によって被覆されていることを確認した。
【0076】
[導電性ペースト]
(実施例3)
実施例1で得た複合粒子、溶剤としてn−ドデカン(和光純薬工業株式会社、沸点216℃)、イソボルニルシクロヘキサノール(沸点308℃、以下、MTPHと略すこともある)を使用した。表3に示した配合割合(添加量の単位は「質量部」。以下同様。)にて、複合粒子及び溶剤をらいかい機にて15分間混練し導電性ペーストを作製した。この導電性ペーストを用いて測定した各特性を表4に示した。また、この導電性ペーストの焼結体のSEM写真を図7に示した。
【0077】
(実施例4)
実施例1で得た複合粒子に代えて実施例2で得た複合粒子を使用し、実施例3と同様の手順で導電性ペーストを作製した。導電性ペーストの配合は表3のとおりである。この導電性ペーストを用いて測定した各特性を表4に示した。
【0078】
(実施例5)
銀粒子LM1(トクセン工業株式会社)20質量部を更に添加し、実施例3と同様の手順で導電性ペーストを作製した。導電性ペーストの配合は表3のとおりである。この導電性ペーストを用いて測定した各特性を表4に示した。
【0079】
(実施例6)
銀粒子LM1(トクセン工業株式会社)20質量部、Zn粒子(Alfa Aeser社)1質量部を更に添加し、実施例3と同様の手順で導電性ペーストを作製した。導電性ペーストの配合は表3のとおりである。この導電性ペーストを用いて測定した各特性を表4に示した。
【0080】
(実施例7)
銀粒子LM1(トクセン工業株式会社)20質量部、樹脂成分としてビスフェノールF型エポキシ樹脂であるYL983U(三菱化学株式会社)0.96質量部及び樹脂硬化剤であるジシアンジアミドDICY7(三菱化学株式会社)0.05質量部を更に添加し、実施例3と同様の手順で導電性ペーストを作製した。導電性ペーストの配合は表3のとおりである。この導電性ペーストを用いて測定した各特性を表4に示した。
【0081】
(比較例4)
実施例1で得た複合粒子に代えて比較例1で得た銀微粒子を使用し、実施例3と同様の手順で導電性ペーストを作製した。導電性ペーストの配合は表3のとおりである。この導電性ペーストを用いて測定した各特性を表4に示した。また、この導電性ペーストの焼結体を図6に示した。
【0082】
(比較例5)
実施例1で得た複合粒子に代えて比較例2で得た複合粒子を使用し、実施例3と同様の手順で導電性ペーストを作製した。導電性ペーストの配合は表3のとおりである。この導電性ペーストを用いて測定した各特性を表4に示した。導電性ペーストは焼結せず、膜を形成することができなかった。
【0083】
(比較例6)
実施例1で得た複合粒子に代えて比較例3で得た複合粒子を使用し、実施例3と同様の手順で導電性ペーストを作製した。導電性ペーストの配合は表3のとおりである。この導電性ペーストを用いて測定した各特性を表4に示した。導電性ペーストは焼結せず、膜を形成することができなかった。
【0084】
(比較例7)
実施例1で得た複合粒子に代えて銀めっき銅粉GB(福田金属箔株式会社、粒子径1〜20μm)を使用し、実施例3と同様の手順で導電性ペーストを作製した。導電性ペーストの配合は表3のとおりである。この導電性ペーストを用いて測定した各特性を表4に示した。導電性ペーストは焼結せず、膜を形成することができなかった。
【0085】
(比較例8)
実施例1で得た複合粒子に代えて銅粉SFR−Cu(日本アトマイズ加工株式会社、粒子径5μm)を使用し、実施例3と同様の手順で導電性ペーストを作製した。導電性ペーストの配合は表3のとおりである。この導電性ペーストを用いて測定した各特性を表4に示した。導電性ペーストは焼結せず、膜を形成することができなかった。
【0086】
【表2】
【0087】
【表3】
【0088】
【表4】
【符号の説明】
【0089】
1…半導体素子、2a,2b,2c…リードフレーム、3…焼結体、4…ワイヤ、5…モールドレジン、6…基板、7…リードフレーム、8…LEDチップ、9…透光性樹脂、10,20…半導体装置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9