特許第6604203号(P6604203)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6604203異方性色素膜用組成物、異方性色素膜及び光学素子
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6604203
(24)【登録日】2019年10月25日
(45)【発行日】2019年11月13日
(54)【発明の名称】異方性色素膜用組成物、異方性色素膜及び光学素子
(51)【国際特許分類】
   C09B 67/20 20060101AFI20191031BHJP
   G02B 5/30 20060101ALI20191031BHJP
【FI】
   C09B67/20 K
   G02B5/30
【請求項の数】7
【全頁数】43
(21)【出願番号】特願2015-552516(P2015-552516)
(86)(22)【出願日】2014年12月11日
(86)【国際出願番号】JP2014082872
(87)【国際公開番号】WO2015087978
(87)【国際公開日】20150618
【審査請求日】2017年10月2日
(31)【優先権主張番号】特願2013-258369(P2013-258369)
(32)【優先日】2013年12月13日
(33)【優先権主張国】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090918
【弁理士】
【氏名又は名称】泉名 謙治
(72)【発明者】
【氏名】志賀 靖
(72)【発明者】
【氏名】西村 政昭
(72)【発明者】
【氏名】竹内 佐千江
(72)【発明者】
【氏名】大澤 輝恒
(72)【発明者】
【氏名】佐野 秀雄
【審査官】 池田 博一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−026024(JP,A)
【文献】 特開平01−313568(JP,A)
【文献】 特開2003−215338(JP,A)
【文献】 特開2012−177122(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0286128(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0050652(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09B 67/20
G02B 5/30
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2種のジスアゾ色素及び溶媒を含む、湿式成膜法に用いられる異方性色素膜用組成物であって、
該ジスアゾ色素は、遊離酸型が、一般式(I)で表されるジスアゾ色素1及び一般式(II)で表されるジスアゾ色素2であり、
ジスアゾ色素1の10質量ppmの水溶液は、550nm〜640nmの波長域に極大吸収を有し、
ジスアゾ色素2の10質量ppmの水溶液は、ジスアゾ色素1の10質量ppmの水溶液が有する極大吸収波長より10nm〜100nm短い波長域に極大吸収を有し、
異方性色素膜用組成物中のジスアゾ色素1及び2の濃度が、3質量%以上、40質量%以下であることを特徴とする異方性色素膜用組成物。
【化1】
[Ar11は、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表し、
Ar12は、置換基を有していてもよいナフチレン基(ナフタレン環の1個以上の−CH基が窒素原子に置き換えられていてもよい)を表し、
及びRは、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいフェニル基、又は置換基を有していてもよいアシル基を表し、
は、0〜2の整数を表し、
は、0又は1を表し、
は、0〜2の整数を表す。]
【化2】
[Ar21は、置換基を有していてもよいフェニル基(環を構成する原子として炭素原子以外に窒素原子を有していてもよい)又は置換基を有していてもよいナフチル基(環を構成する原子として炭素原子以外に窒素原子を有していてもよい)を表し、
Ar23は、下記一般式(III)又は(IV)を表し、
20は、1価の基を表し、
は、0〜4の整数を表す。
なお、一般式(I)で表されるジスアゾ色素1及び一般式(II)で表されるジスアゾ色素2は同一ではない。]
【化3】
[R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいフェニル基又は置換基を有していてもよいアシル基を表し、
10は、水素原子又は置換基を有していてもよいアルキル基を表し、
は、0〜2の整数を表し、
は、0を表し、
は、0〜2の整数を表し、
は、0又は1を表す。]
【化4】
[R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいフェニル基、又は置換基を有していてもよいアシル基を表し、kは、0〜2の整数を表し、
は、0又は1を表し、
は、0〜2の整数を表す。]
【請求項2】
前記異方性色素膜用組成物が異方的な分子集合体を形成しているものである、請求項1に記載の異方性色素膜用組成物。
【請求項3】
前記異方性色素膜用組成物中のジスアゾ色素1に対するジスアゾ色素2の質量比が、0.03以上、0.5以下である、請求項1又は2に記載の異方性色素膜用組成物。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか1項に記載の異方性色素膜用組成物を用いて作製された異方性色素膜。
【請求項5】
請求項4に記載の異方性色素膜を含む、光学素子。
【請求項6】
少なくとも2種のジスアゾ色素を含み、湿式成膜法により作製される異方性色素膜であって、
該ジスアゾ色素は、遊離酸型が、一般式(I)で表されるジスアゾ色素1及び一般式(II)で表されるジスアゾ色素2であり、
ジスアゾ色素1の10質量ppmの水溶液は、550nm〜640nmの波長域に極大吸収を有し、
ジスアゾ色素2の10質量ppmの水溶液は、ジスアゾ色素1の10質量ppmの水溶液が有する極大吸収波長より10nm〜100nm短い波長域に極大吸収を有することを特徴とする、異方性色素膜。
【化5】
[Ar11は、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表し、
Ar12は、置換基を有していてもよいナフチレン基(ナフタレン環の1個以上の−CH基が窒素原子に置き換えられていてもよい)を表し、
及びRは、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいフェニル基、又は置換基を有していてもよいアシル基を表し、
は、0〜2の整数を表し、
は、0又は1を表し、
は、0〜2の整数を表す。]
【化6】
[Ar21は、置換基を有していてもよいフェニル基(環を構成する原子として炭素原子以外に窒素原子を有していてもよい)又は置換基を有していてもよいナフチル基(環を構成する原子として炭素原子以外に窒素原子を有していてもよい)を表し、
Ar23は、下記一般式(III)又は(IV)を表し、
20は、1価の基を表し、
は、0〜4の整数を表す。
なお、一般式(I)で表されるジスアゾ色素1、及び一般式(II)で表されるジスアゾ色素2は同一ではない。]
【化7】
[R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル、置換基を有していてもよいフェニル基、又は置換基を有していてもよいアシル基を表し、
10は、水素原子又は置換基を有していてもよいアルキル基を表し、
は、0〜2の整数を表し、
は、0を表し、
は、0〜2の整数を表し、
は、0又は1を表す。]
【化8】
[R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいフェニル基、又は置換基を有していてもよいアシル基を表し、kは、0〜2の整数を表し、
は、0又は1を表し、
は、0〜2の整数を表す。]
【請求項7】
請求項6に記載の異方性色素膜を含む光学素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、湿式成膜法により形成される異方性色素膜、特に、調光素子や液晶素子(LCD)、有機エレクトロルミネッセンス素子(OLED)の表示素子に具備される偏光膜等に有用な、高い二色性を示す異方性色素膜用組成物、異方性色素膜及び光学素子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
LCDでは、表示における旋光性や複屈折性を制御するために、直線偏光膜や円偏光膜が用いられている。OLEDにおいても、外光の反射防止のために円偏光膜が使用されている。
従来、これらの偏光膜(異方性色素膜)にはヨウ素が二色性物質として広く使用されてきた。しかしながら、ヨウ素は昇華性が大きいために、偏光膜を用いた偏光素子として使用した場合、その耐熱性や耐光性が十分ではなかった。また、その消光色が深い青色となるため、全可視スペクトル領域に亘って、理想的な無彩色の偏光素子とは言えなかった。
【0003】
理想的な無彩色の偏光素子を得るために、有機系の色素を二色性物質に使用する偏光膜(異方性色素膜)が検討されている。有機系の色素を使用する偏光膜としては、従来のポリマーに有機系の色素を含浸させた偏光膜、基板等の上に有機系の色素を塗布することで膜を得る方法(湿式成膜法)を用いて形成させた偏光膜等が挙げられる。
従来のポリマーに有機系の色素を含浸させた偏光膜を用いる場合、該偏光膜に接着層を設け、接着層の保護フィルムを貼り合わせ、該保護フィルムを貼り合せた偏光膜をディスプレイ製造ラインに移送し、ディスプレイ製造ラインで保護フィルムを剥がし、偏光層を基板等に貼合するというプロセスが取られている。これをガラスや透明フィルム等の基板上に、湿式成膜法を用いて偏光膜を形成する方法に置き換えれば、前記の従来のポリマーに有機系の色素を含浸させた偏光膜を用いる方法と比較して製造プロセスを簡略化でき、生産性向上に寄与するものと考えられる。
湿式成膜法を用いて形成する偏光膜としては、例えば特許文献1に、ガラスや透明フィルム等の基板上に湿式成膜法を用いて色素を含む膜を形成し、分子間相互作用等を利用して色素を配向させることにより偏光膜を得る方法が挙げられている。
湿式成膜法を用いて色素を含む膜を形成する方法においては、異方性色素膜の高い二色比を得るために、アントラキノン環を有するアゾ化合物と、ナフタレン環を有するジスアゾ色素と含む異方性色素膜用組成物が示されている(特許文献2)。
また、ジスアゾ色素とモノアゾ化合物とを組み合わせて用いることにより、異方性色素膜の高い二色比が得られることが示されている(特許文献3)。
さらに、ジスアゾ色素を2種組み合わせて用いて異方性色素膜を得たことも示されている(特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】日本特表平8−511109号公報
【特許文献2】日本特開2008−101154号公報
【特許文献3】日本特開2012−194357号公報
【特許文献4】日本特開2007−126628号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年のディスプレイの高機能化、高性能化に伴い、偏光膜にも、高透過率で高い二色性を示す等の高い性能が求められている。また、ディスプレイの安価化に伴い、低い製造コストや生産性を向上することも求められている。
しかしながら、特許文献1〜4で用いられる色素を用いた湿式成膜法を用いて作製する異方性色素膜の偏光膜としての性能は、極大吸収波長においては高い二色比を示すものの、450〜550nmの波長域で色素膜の吸光度が十分でなく、二色比が低いことを本発明者は見出した。
さらに、上記の特定波長域での二色比の低下は、異方性色素膜2枚を直交方向に配置した時に、上記の特定波長域での光漏れを生じることになり、全可視光領域にわたって理想的な無彩色を示さないことを本発明者は見出した。
本発明は、可視光波長域、特に視感度の高い450〜550nmの領域においても高い二色比を示し、異方性色素膜2枚を直交方向に配置した時に、全可視光領域において無彩色に近い色調を示す、異方性色素膜形成に用いられる異方性色素膜用組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、湿式成膜法にて異方性色素膜を製造するにあたり、特定のジスアゾ色素を有する異方性色素膜用組成物を用いることにより上記課題を解決することができることを見出した。
すなわち、本発明は以下を要旨とする。
【0007】
[1] 少なくとも2種のジスアゾ色素及び溶媒を含む、湿式成膜法に用いられる異方性色素膜用組成物であって、
該ジスアゾ色素は、遊離酸型が、一般式(I)で表されるジスアゾ色素1及び一般式(II)で表されるジスアゾ色素2であり、
ジスアゾ色素1の10質量ppmの水溶液は、550nm〜640nmの波長域に極大吸収を有し、
ジスアゾ色素2の10質量ppmの水溶液は、ジスアゾ色素1の10質量ppmの水溶液が有する極大吸収波長より10nm〜100nm短い波長域に極大吸収を有し、
異方性色素膜用組成物中のジスアゾ色素1及び2の濃度が、3質量%以上、40質量%以下であることを特徴とする異方性色素膜用組成物。
【化1】
[Arは、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表し、
Ar12は、置換基を有していてもよいフェニレン基(ベンゼン環の1個以上の−CH基が窒素原子に置き換えられていてもよい)又は置換基を有していてもよいナフチレン基(ナフタレン環の1個以上の−CH基が窒素原子に置き換えられていてもよい)を表し、
及びRは、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいフェニル基、又は置換基を有していてもよいアシル基を表し、
は、0〜2の整数を表し、
は、0又は1を表し、
は、0〜2の整数を表す。]
【化2】
[Ar21は、置換基を有していてもよいフェニル基(環を構成する原子として炭素原子以外に窒素原子を有していてもよい)又は置換基を有していてもよいナフチル基(環を構成する原子として炭素原子以外に窒素原子を有していてもよい)を表し、
Ar23は、下記一般式(III)又は(IV)を表し、
20は、1価の基を表し、
は、0〜4の整数を表す。
なお、一般式(I)で表されるジスアゾ色素1及び一般式(II)で表されるジスアゾ色素2は同一ではない。]
【化3】
[R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいフェニル基又は置換基を有していてもよいアシル基を表し、
10は、水素原子又は置換基を有していてもよいアルキル基を表し、
は、0〜2の整数を表し、
は、0を表し、
は、0〜2の整数を表し、
は、0又は1を表す。]
【化4】
[R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいフェニル基、又は置換基を有していてもよいアシル基を表し、
は、0〜2の整数を表し、
は、0又は1を表し、
は、0〜2の整数を表す。]
【0008】
[2] 前記異方性色素膜用組成物が異方的な分子集合体を形成しているものである、上記[1]に記載の異方性色素膜用組成物。
[3] 前記異方性色素膜用組成物中のジスアゾ色素1に対するジスアゾ色素2の質量比が、0.03以上、0.5以下である、上記[1]又は[2]に記載の異方性色素膜用組成物。
[4] 上記[1]〜[3]の何れか1項に記載の異方性色素膜用組成物を用いて作製された異方性色素膜。
[5] 上記[4]に記載の異方性色素膜を含む、光学素子。
【0009】
[6] 少なくとも2種のジスアゾ色素を含み、湿式成膜法により作製される異方性色素膜であって、
該ジスアゾ色素は、遊離酸型が、一般式(I)で表されるジスアゾ色素1及び一般式(II)で表されるジスアゾ色素2であり、
ジスアゾ色素1の10質量ppmの水溶液は、550nm〜640nmの波長域に極大吸収を有し、
ジスアゾ色素2の10質量ppmの水溶液は、ジスアゾ色素1の10質量ppmの水溶液が有する極大吸収波長より10nm〜100nm短い波長域に極大吸収を有することを特徴とする、異方性色素膜。
【化5】
[Arは、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表し、
Ar12は、置換基を有していてもよいフェニレン基(ベンゼン環の1個以上の−CH基が窒素原子に置き換えられていてもよい)又は置換基を有していてもよいナフチレン基(ナフタレン環の1個以上の−CH基が窒素原子に置き換えられていてもよい)を表し、
及びRは、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいフェニル基、又は置換基を有していてもよいアシル基を表し、
は、0〜2の整数を表し、
は、0又は1を表し、
は、0〜2の整数を表す。]
【化6】
[Ar21は、置換基を有していてもよいフェニル基(環を構成する原子として炭素原子以外に窒素原子を有していてもよい)又は置換基を有していてもよいナフチル基(環を構成する原子として炭素原子以外に窒素原子を有していてもよい)を表し、
Ar23は、下記一般式(III)又は(IV)を表し、
20は、1価の基を表し、
は、0〜4の整数を表す。
なお、一般式(I)で表されるジスアゾ色素1、及び一般式(II)で表されるジスアゾ色素2は同一ではない。]
【化7】
[R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル、置換基を有していてもよいフェニル基、又は置換基を有していてもよいアシル基を表し、
10は、水素原子又は置換基を有していてもよいアルキル基を表し、
は、0〜2の整数を表し、
は、0を表し、
は、0〜2の整数を表し、
は、0又は1を表す。]
【化8】
[R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいフェニル基、又は置換基を有していてもよいアシル基を表し、kは、0〜2の整数を表し、
は、0又は1を表し、
は、0〜2の整数を表す。]
[7] 上記[6]に記載の異方性色素膜を含む光学素子。

【発明の効果】
【0010】
本発明の異方性色素膜用組成物を用いることにより、可視光波長域全体での高い二色比、及び視感度の高い450〜550nmの領域において、光漏れのない異方性色素膜を提供することができる。また、異方性色素膜2枚を直交方向に配置した時に、全可視光領域において無彩色に近い色調を示す異方性色素膜を得ることができる。このような特性を有する異方性色素膜を用いた偏光素子は、色再現性等を求められる調光素子、液晶素子、有機エレクトロルミネッセンス素子の表示素子等、多方面に利用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を具体的に説明するが、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々に変更して実施することができる。
【0012】
本発明でいう異方性色素膜とは、異方性色素膜の厚み方向、及び任意の直交する面内2方向の立体座標系における合計3方向から選ばれる、任意の2方向における電磁気学的性質に異方性を有する色素膜である。電磁気学的性質としては、吸収、屈折等の光学的性質、抵抗、容量等の電気的性質等が挙げられる。
吸収、屈折等の光学的異方性を有する膜としては、例えば、直線偏光膜、円偏光膜等の偏光膜、位相差膜、導電異方性膜等がある。
本発明の異方性色素膜は、偏光膜、位相差膜及び導電異方性膜に用いられることが好ましく、偏光膜に用いられることがより好ましい。
【0013】
本発明は少なくとも2種のジスアゾ色素及び溶剤を含む、湿式成膜法に用いられる異方性色素膜用組成物であって、該ジスアゾ色素として、遊離酸型が一般式(I)で表され、10質量ppmの水溶液が550〜640nmの波長域に吸収極大を有するジスアゾ色素1、及び遊離酸型が一般式(II)で表され、10質量ppmの水溶液が、ジスアゾ色素1が550〜640nmの波長域に有する極大吸収波長よりも、10〜100nm短い波長域に極大吸収を有するジスアゾ色素2を含み、前記異方性色素膜用組成物のアゾ色素1及び2の濃度が、3質量%以上、40質量%以下であることを最大の特徴とする。
【0014】
異方性色素膜の利用形態により、必要とされる機能は異なるが、例えば、ディスプレイ用の偏光膜として利用する際には、可視光領域全体に渡って偏光を生じる機能が求められる。そのため、遊離酸型が一般式(I)で表され、濃度10質量ppmの水溶液が550〜640nmの波長域に吸収極大を有するジスアゾ色素1を用いることにより、色素が好ましい会合状態を形成して得られた異方性色素膜は高い二色性を示すとともに、色素自体が広い吸収域を有するため、可視光領域全体に渡って二色性を示す。しかし、本発明のジスアゾ色素1のみの場合、450〜550nmの波長域で異方性色素膜の吸光度が、他の波長域と比較して低い傾向がある。
【0015】
この450〜550nmの波長域に吸収極大を有する色素は多数存在するが、単に、前記波長域に吸収極大を有する色素をジスアゾ色素1に添加しただけでは、前記波長域の二色比を十分に上げることはできない。これは、前記波長域に吸収極大を有する色素を添加することによって、異方性色素膜の分子配列が乱れたことに起因すると推測される。そこで、本発明者らは、遊離酸型が一般式(II)で表され、10質量ppmの水溶液が、ジスアゾ色素1が550〜640nmの波長域に有する極大吸収波長よりも、10〜100nm短い波長域に吸収極大を有するジスアゾ色素2を、ジスアゾ色素1に組合せ、アゾ色素1及び2の濃度を特定の範囲とした異方性色素膜用組成物を用いて、異方性色素膜を形成することで、可視光領域全体で高い二色比を示すことを見出した。
【0016】
ジスアゾ色素1の10質量ppmの水溶液が550〜640nmの波長域に有する極大吸収波長より10nm〜100nm短い波長域に極大吸収を有するジスアゾ色素2は、異方性色素膜中では、会合することにより吸収が短波長シフトする。従って、ジスアゾ色素2を用いることにより、450〜550nmの波長域での異方性色素膜の吸光度を補完することができる。
【0017】
本発明のジスアゾ色素1及び2を組み合わせることで、可視光波長領域全体にわたって高い二色比を示す理由は、分子の長さや分子構造が類似し、且つ、極大吸収波長の異なるジスアゾ色素同士を組み合わせることで、異方性色素膜用組成物中で、色素同士が好ましい会合状態を形成し、お互いの分子集合体を乱さないためと推測される。従って、異方性色素膜を形成した場合に、高い二色比が得られる。
また、異方性色素膜用組成物中のジスアゾ色素1及び2の濃度を特定の範囲とすることで、異方性色素膜用組成物中で、各ジスアゾ色素がリオトロピック液晶等の好ましい会合体を形成できるため、異方性色素膜を形成した場合に高い二色比が得られる。
本発明は、親和性の高い2種のジスアゾ構造を組み合わせることで、塗布により異方性色素膜を形成するために必要な性能を有し、且つ、可視光波長域全体において、高い二色比を有し、特に視感度の高い450〜550nmの領域において光漏れのない異方性色素膜を得ることを可能としたものである。
【0018】
本発明の効果の確認方法として、本発明のジスアゾ色素1を含み、ジスアゾ色素2を含まない異方性色素膜用組成物を用いて作製した異方性色素膜(A)と、本発明のジスアゾ色素1及び2を含む異方性色素膜用組成物を用いて作製した異方性色素膜(B)に透過軸、吸収軸方向それぞれに偏光を入射して得られる吸収軸方向の偏光に対する透過率(Tz)及び二色比(D)を比較する方法が挙げられる。
具体的には、上記異方性色素膜(A)では、透過率が十分に小さくない領域が存在し、この領域において、異方性色素膜(B)の方が、透過率が小さく、かつ二色比が高いことが確認できる。透過率が十分に小さくない領域とは、異方性色素膜(A)の上記透過率(Tz)が、450〜550nmで極大値になる波長、すなわち吸光度が極小値になる波長(λmin)において確認することが好ましい。
【0019】
本発明の異方性色素膜用組成物は、湿式成膜法に適したものである。本発明でいう湿式成膜法とは、異方性色素膜用組成物を基板上に何らかの手法により付与し、溶剤が乾燥する過程を経て、色素等を基板上で配向・積層させる方法である。
湿式成膜法では、異方性色素膜用組成物を基板上に付与すると、すでに異方性色素膜用組成物中で、又は溶剤が乾燥する過程で、色素自体が自己会合することにより微小面積での配向が起こる。この状態に外場を与えることにより、マクロな領域で一定方向に配向させ、所望の性能を有する異方性色素膜を得ることができる。なお、ここで外場とは、あらかじめ基板上に施された配向処理層の影響、せん断力、磁場等が挙げられ、これらを単独で用いてもよく、複数組み合わせて用いてもよい。
一方、ポリビニルアルコール(PVA)フィルム等を、色素を含む組成物(溶液)で染色して延伸し、延伸工程だけで色素を配向させることを原理とする延伸方法に用いられる色素を含有させる組成物と本発明の異方性色素膜用組成物とは大きく異なるものである。これは、異方性膜を作製する方法が異なるためである。
延伸方法に用いる色素は、延伸時に色素分子が延伸方向に配向する。そのため、一分子のアスペクト比が大きい色素が好ましい。また、色調を補正するために2つ以上の色素を配合する場合も、それぞれの色素には、それぞれ一分子のアスペクト比が高いことが求められ、配合する色素の組合せについては、求められる色調を達成するかによって選択される。さらに、高い二色比を達成するためには、色素分子同士は会合しない方が好ましいため、染色する色素溶液は通常1質量%以下のものが用いられる。
以上のように、延伸方法及び湿式成膜法では、色素及び異方性色素膜用組成物に求められる特性は大きく異なる。
【0020】
本発明のジスアゾ色素1は、10質量ppmの水溶液が550〜640nmの波長域に極大吸収を有し、ジスアゾ色素2は、10質量ppmの水溶液が、ジスアゾ色素1が550〜640nmの波長域に有する極大吸収波長よりも、10〜100nm短い領域に極大吸収を有する。吸収極大は、対カチオン及び水溶液のpHにより変化する可能性があるが、リチウム塩又はナトリウム塩を、pH3〜11のいずれかの領域で測定することが好ましく、pH5〜9のいずれかの領域で測定することが更に好ましい。
ジスアゾ色素1の10質量ppmの水溶液が、550〜640nmの波長域に二つ以上の極大吸収を有する場合、吸光度の大きい方の極大吸収をその波長域の極大吸収とみなす。本発明のジスアゾ色素1は、10質量ppmの水溶液が580〜600nmの波長域に極大吸収を有することがさらに好ましい。
【0021】
ジスアゾ色素2の10質量ppmの水溶液の極大吸収は、ジスアゾ色素1が550〜640nmの波長域に有する極大吸収波長よりも、10nm以上短い領域に極大吸収を有し、25nm以上短い領域に極大吸収を有することが好ましい。また、ジスアゾ色素2の10質量ppmの水溶液の極大吸収は、ジスアゾ色素1が550〜640nmの波長域に有する極大吸収波長よりも、100nm以下短い領域に極大吸収を有し、95nm以下短い領域に極大吸収を有することが好ましい。
ジスアゾ色素1及び2の10質量ppmの水溶液の極大吸収波長の差が特定の範囲であることで、ジスアゾ色素2の添加量を少なくすることができ、各色素の好ましい会合状態が得られる傾向にある。
【0022】
本発明の異方性色素膜用組成物は、少なくともジスアゾ色素1、2及び溶媒を含み、異方性色素膜用組成物中のジスアゾ色素1及び2の濃度が特定の範囲であれば特に限定されないが、組成物として溶液中で異方的な分子集合体を形成していることが好ましく、特に液晶相の状態であることが、溶剤が蒸発した後に形成される異方性色素膜を高配向度に形成する観点から好ましい。
本実施の形態において、異方的な分子集合体とは、ジスアゾ色素が非共有結合により会合し、少なくとも一軸方向に分子配列の秩序性を持つものを指す。
これらの異方的な分子集合体は下記の様な方法にて確認出来る。X線回折法により分子の積層や積層体に相当する回折ピークを観測したり、紫外・可視・赤外吸光度測定装置、ラマン分光光度計等でスペクトル的に確認したりすることができる。また、AFM(原子間力顕微鏡)、SEM(走査型電子顕微鏡)、TEM(透過型電子顕微鏡)、STM(走査型トンネル顕微鏡)や光学顕微鏡観察により、分子積層状態に相当する形態・構造観察したりすることにより確認することができる。
具体的な確認方法としては、組成物(色素溶液)に電場や磁場、剪断力、配向膜等の外場を与え、X線回折法により分子の積層や積層体に相当する回折ピークを観測したり、紫外可視吸光度測定装置、ラマン分光光度計、光学顕微鏡観察などで吸収の異方性を確認したりする方法がある。
異方的な分子集合体の具体例としては、液晶相;ナノロッド、ナノファイバー、ナノチューブ、ナノワイヤー、ナノウィスカー等のカラム状集合体;バイセル構造;ロッド状ミセル等が挙げられる。
【0023】
本実施の形態において、液晶相の状態であるとは、具体的には、『液晶の基礎と応用』(松本正一・角田市良著、1991)の1〜16ページに記載されているように、液体と結晶の双方の性質を示す液晶状態であり、ネマティック相、コレステリック相、スメクティック相、又はディスコティック相であることをいう。特にネマティック相が好ましい。
また、異方性色素膜用組成物には、必要に応じ、バインダー樹脂、モノマー、硬化剤、添加剤等が配合されてもよい。
異方性色素膜用組成物の態様としては、溶液状であってもよいし、ゲル状であってもよい。異方性色素膜用組成物は、溶剤中にジスアゾ色素等が溶解又は分散している状態であってもよい。
【0024】
上記の本発明の異方性色素膜用組成物が液晶相の状態を示すには、例えば、次の形態が考えられる。
1.ジスアゾ色素1は溶媒中で液晶相を示さないが、ジスアゾ色素1とジスアゾ色素2を混合することにより、液晶相を示す。この場合、ジスアゾ色素2は溶媒中で液晶相を示さなくても、示してもよい。このような形態を取るものとしては、例えば、ジスアゾ色素1とジスアゾ色素2が、それぞれ電子豊富と電子不足な性質を有している等して静電的に引き合って一つの積層体を形成するもの、水素結合等によりジスアゾ色素1とジスアゾ色素2から作られた構造がπ−πスタッキング(stacking)等の分子間相互作用により一つの積層体を形成するものが挙げられる。
2.ジスアゾ色素1は溶媒中で液晶相を示す。この場合、ジスアゾ色素2は溶媒中で液晶相を示さなくても、示してもよい。このような形態を取るものとしては、例えば、ジスアゾ色素1とジスアゾ色素2が、それぞれ電子豊富と電子不足な性質を有している等して静電的に引き合って一つの積層体を形成するもの、ジスアゾ色素1とジスアゾ色素2がπ−πスタッキング等の分子間相互作用により一つの積層体を形成するもの、それぞれの色素からなる積層体や分子集合体が共存して相分離することなく一つの液晶相を形成するもの等が挙げられる。
ジスアゾ色素2は、溶液中で異方的な分子集合体を形成し、それらの中でも、液晶相、カラム状集合体、バイセル構造、ロッド状ミセルであることが好ましい。さらに、液晶性を示すことが好ましい。これらであることで、異方性色素膜が450〜550nmの領域においても高い二色比を示す傾向にある。
【0025】
色素が溶媒中で液晶性や異方的な分子集合体を形成していることは、例えば、X線回折法により分子の積層や積層体に相当するピークを観測したり、AFM(原子間力顕微鏡)、SEM(走査型電子顕微鏡)、TEM(透過型電子顕微鏡)、STM(走査型トンネル顕微鏡)や光学顕微鏡観察により、分子積層状態に相当する形態・構造観察したりすることにより確認することができる。また、異方性色素膜用組成物(色素溶液)に剪断力を掛けると分子集合体が一軸方向に配向するもの等も、異方的な分子集合体形成しているといえる。分子集合体が一軸方向に並んだことは、偏光顕微鏡やX線回折装置、紫外可視吸光度測定装置、ラマン分光光度計等で確認することができる。
【0026】
本発明において、異方性色素膜が高い配向を示すためには、異方性色素膜を形成する過程で、異方性色素膜用組成物が流動する際等の外力によって分子積層体が崩れづらい、強い会合力を有する点で、ジスアゾ色素1が溶媒中で液晶相を示すことが好ましく、ジスアゾ色素1が溶媒中で液晶相を示し、かつ、ジスアゾ色素2が溶媒中で異方的な分子集合体を示すことがさらに好ましい。
特に、液晶相のなかでも、溶剤中でリオトロピック液晶性を示すことが好ましい。
ジスアゾ色素1及び/又は2がリオトロピック液晶性を示す場合、1〜50質量%のいずれかの濃度域で、それぞれリオトロピック液晶相を形成するものであることが好ましく、1〜30質量%のいずれかの濃度域で形成するものであることがさらに好ましい。リオトロピック液晶性を有する化合物を異方性色素膜用組成物中に有することで、色素同士が好ましい会合状態を形成し、異方性色素膜を形成した場合に高い二色比を示す傾向がある。
【0027】
本発明において、異方性色素膜用組成物中のジスアゾ色素1及び2の濃度は、3質量%以上、40質量%以下である。上記濃度は、異方性色素膜組成物中のジスアゾ色素1及びジスアゾ色素2の色素濃度の和を表す。さらに好ましくは5質量%以上、より好ましくは7質量%以上であり、一方、さらに好ましくは35質量%以下、より好ましくは30質量%以下、特に好ましくは25質量%以下である。これらの範囲であることで、本発明の異方性色素膜用組成物中で、ジスアゾ色素1及び/又はジスアゾ色素2は、分子会合体を形成しやすく、この組成物を用いて作製された異方性色素膜において、分子の配向度が高い。また、得られた異方性色素膜用組成物の粘度が高くなり過ぎず、また、塗布時の溶媒が乾燥する前のウエット状態の異方性色素膜厚が適当な範囲となることから、均一な膜が得られる傾向にある。
【0028】
本発明の異方性膜用組成物は、本発明の効果を損なわない範囲であれば、ジスアゾ色素1及び/又はジスアゾ色素2の会合性を向上する、異方性膜の耐久性の向上や欠陥を低減する等の目的で、ジスアゾ色素1及び2以外の異なる化合物を併用してもよい。例えば、アントラキノン化合物、アミノ酸、水酸基とアミノ基を1分子内に有する化合物(アミノアルコール類)等が挙げられる。
例えば、日本特開2007−126628号公報に配合用の色素として例示の色素や、日本特開2007−199333号公報、日本特開2008−101154号公報等に記載のアントラキノン化合物等が挙げられる。さらに、日本特開2006−3864号公報に記載の方法や、日本特開2006−323377号公報に記載の方法を用いてもよい。
【0029】
また、日本特開2007−178993号公報に記載されているように、ジスアゾ色素の酸性基に対して、カチオン0.9当量以上0.99当量以下と、強酸性アニオン0.02当量以上0.1当量以下とを含有させるなどして、異方性膜用組成物における温度5℃、歪印加後0.01秒後の緩和弾性率Gが10分の1に低下するまでの時間が0.1秒以下となる組成物とすることで、異方性膜の欠陥を抑制することもできる。
こうした配合ではpHが低くなり易いので、製造装置の腐食等を防ぐ目的で、必要に応じさらに緩衝物質を添加してもよい。緩衝物質としては、D.D.ペリン、B.デンプシー著「緩衝液の選択と応用」、講談社サイエンティフィク(1981)に記載されているような、一部もしくは全て中和された弱酸や弱塩基が挙げられる。具体的には、例えば、リン酸塩、炭酸塩、有機酸等が挙げられ、有機酸としては、リンゴ酸、クエン酸、シュウ酸、酒石酸、アミノ酸類等が挙げられる。中でもアミノ酸は、異方性膜用アゾ化合物の会合を促進し、配向性を向上させる働きもあるので、好ましく用いられる。また、アミノ酸が複数縮合したアミノ酸オリゴマーは、異方性膜用組成物のレオロジー特性調整剤としての働きも有するので好ましく、添加により流動配向性の向上が期待できる。これらの緩衝物質は、単独で用いて異方性膜上で結晶析出する場合等には、異なる緩衝物質を複数組み合わせて用いることが好ましい。
さらには、紫外線吸収剤や近赤外線吸収剤などを組み合わせて用いることもできる。なお、本発明のジスアゾ色素1及び2と、上記のような他の化合物を併用する場合、ジスアゾ色素1及び2による効果を十分に発揮させるために、他の併用化合物は、本発明のジスアゾ色素1及び2に対して50質量%以下とすることが好ましく、10質量%以下とすることがさらに好ましい。
【0030】
本発明の異方性色素膜用組成物は、リオトロピック液晶相の発現有無は問わないが、リオトロピック液晶相を発現していない場合において、異方性色素膜用組成物中の溶媒量のみを変更することでリオトロピック液晶相が発現することが好ましい。リオトロピック液晶相が発現する異方性色素膜用組成物は組成物中で色素が会合しているため、塗布後の乾燥過程で色素、または色素分子集合体が自己組織化し、異方性色素膜中で色素が高い配向度を発現して、高い二色性の異方性色素膜が得られるため好ましい。
異方性色素膜用組成物がリオトロピック液晶相を発現していれば、より異方性色素膜中での高い配向が得られるため、さらに好ましい。
【0031】
また、本発明で用いられるジスアゾ色素1及び2は、異方性色素膜用組成物が液晶相を発現するため、及び後述の湿式成膜法に供するために、水や有機溶媒に可溶であることが好ましく、特に水溶性であることが好ましい。さらに好ましいものは、「有機概念図−基礎と応用」(甲田善生著、三共出版、1984年)で定義される無機性値が有機性値よりも小さな化合物である。又、塩型をとらない遊離の状態で、その分子量が200以上であるのが好ましく、300以上であるのが特に好ましく、また、1500以下であるのが好ましく、1200以下であるのが特に好ましい。なお、水溶性とは、室温で化合物が水に、通常0.1質量%以上、好ましくは1質量%以上溶解することを言う。
【0032】
本発明の異方性色素膜用組成物に用いられる溶媒は、ジスアゾ色素1及び2を溶解、又は分散させるものであれば特に制限はない。特に、ジスアゾ色素1及び2が、溶媒中でリオトロピック液晶のような会合状態を形成し易いことから、溶媒としては、水、水と混和性のある有機溶剤又はこれらの混合物が好ましい。
有機溶剤の具体例としては、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、グリセリン等のアルコール類;エチレングリコール、ジエチレングリコール等のグリコール類;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ等のセロソルブ類;等の単独又は2種以上の混合有機溶剤が挙げられる。
上記の中でも、ジスアゾ色素1及び2が有する芳香族環等の有機性の高い部分同士での会合を促進することから、水、メタノール又はエタノールが好ましく、水が特に好ましい。
【0033】
また、本発明の異方性色素膜用組成物を基板に塗布するために用いられる場合には、基板への濡れ性、塗布性を向上させるため、必要に応じて、界面活性剤等の添加剤を加えることができる。界面活性剤としては、アニオン系、カチオン系及びノニオン系のいずれも使用可能である。更に、上記以外にも、例えば、”Additivesfor Coating”(Editedby J.Bieleman、Willey-VCH、2000年刊)等に記載の公知の添加剤を用いることができる。
その添加濃度は、上記の目的の効果を得るために十分であって、且つ、本発明のジスアゾ色素1、ジスアゾ色素2及び必要に応じて用いられるジスアゾ色素1及び2以外の異なる化合物の配向を阻害しない量を添加することができる。具体的には、通常0.05質量%以上、0.5質量%以下が好ましい。
【0034】
<異方性色素膜用組成物の製造方法>
本発明の異方性色素膜用組成物の製造方法は、特に限定されず、溶媒に、ジスアゾ色素を加え、撹拌及び/又は溶解を行うことにより得ることができる。また、撹拌及び/又は溶解させた後、濾過して不溶分を除去してもよい。
溶解及び撹拌の方法は特に限定されないが、例えば、超音波による溶解、撹拌翼による撹拌、回転子による撹拌、羽無攪拌体による撹拌等が挙げられる。
また、これらの撹拌及び溶解方法は、一つ又は複数用いてもよい。
撹拌及び/又は溶解方法を行う際の温度は特に規定しないが、0〜120℃で行うことが好ましい。溶媒が水の場合には、10〜80℃で行う事が特に好ましい。これらの範囲であることで、プロセス性を向上させる傾向があり、溶液の粘度が低下し、溶解・撹拌効率を上げる傾向にある。
【0035】
以下、本発明の異方性色素膜用組成物に含まれるジスアゾ色素1及びジスアゾ色素2について詳細に説明する。なお、ジスアゾ色素1及びジスアゾ色素2は同一構造ではない。
【0036】
<ジスアゾ色素1の遊離酸型の構造>
本発明の異方性色素膜用組成物に含まれるジスアゾ色素1は、遊離酸型が一般式(I)で表される。
【0037】
【化9】
【0038】
Ar11及びAr12は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表し、
及びRは、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいフェニル基、又は置換基を有してもよいアシル基を表し、
は、0〜2の整数を表し、
は、0又は1を表し、
は、0〜2の整数を表す。
【0039】
<Ar11
一般式(1)のAr11は、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表す。
【0040】
(置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基)
かかる芳香族炭化水素基としては、単環及び複数の環由来の基が挙げられる。例えば、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基等が挙げられる。この中でも、ジスアゾ色素1がリオトロピック液晶相を形成するために、フェニル基又はナフチル基が好ましい。
【0041】
また、前記芳香族炭化水素基が有していてもよい置換基としては、通常、アゾ化合物の溶解性を高めるために導入される親水性基や、色素としての色調を調節するために導入される電子供与性や電子吸引性を有する基が好ましい。
具体的には、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、置換基を有していてもよいアシルアミノ基、置換基を有していてもよいアミノ基、置換基を有していてもよいカルバモイル基、ニトロ基、カルボキシ基、スルホ基、水酸基、シアノ基、ハロゲン原子等が挙げられる。
これらの中でも、ジスアゾ色素1がリオトロピック液晶相を形成するために、置換基を有してもよいアシルアミノ基、置換基を有してもよいカルバモイル基、ニトロ基、スルホ基又はシアノ基が好ましい。
Ar11の芳香族炭化水素基は、無置換、又は上述の置換基を1〜5個有していてもよく、好ましくは無置換、又は置換基を1〜2個有していることである。
【0042】
(置換基を有していてもよいアルキル基)
置換基を有していてもよいアルキル基は、通常、炭素数が1以上、6以下、好ましくは4以下である。置換基としては、炭素数1以上、6以下のアルコキシ基、水酸基、ハロゲン原子、スルホ基、カルボキシ基等が挙げられる。
前記アルキル基の具体例として、メチル基、エチル基、n−プロピル基、ヒドロキシエチル基、1,2−ジヒドロキシプロピル基等の低級アルキル基が挙げられる。
【0043】
(置換基を有していてもよいアルコキシ基)
置換基を有していてもよいアルコキシ基は、通常、炭素数が1以上、6以下、好ましくは3以下である。置換基としては、炭素数1以上、6以下のアルコキシ基、水酸基、ハロゲン原子、スルホ基、カルボキシ基等が挙げられる。
前記アルコキシ基の具体例として、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、n−ブトキシ基、ヒドロキシエトキシ基、1,2−ジヒドロキシプロポキシ基等の低級アルコキシ基が挙げられる。
【0044】
(置換基を有していてもよいアシルアミノ基)
置換基を有していてもよいアシルアミノ基は、−NH−C(=O)R51で表される。R51は、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルケニル基、又は置換基を有していてもよいフェニル基を表す。
前記アシルアミノ基の具体例としては、アセチルアミノ基、アクリルアミノ基、メタクリルアミノ基、ベンゾイルアミノ基等が挙げられる。
【0045】
51のアルキル基は、通常、炭素数が1以上、4以下、好ましくは2以下である。また、R51のアルケニル基は,通常、炭素数が2以上、4以下、好ましくは3以下である。
51のアルキル基、アルケニル基及びフェニル基が有していてもよい置換基としては、炭素数1以上、6以下のアルコキシ基、水酸基、スルホ基、カルボキシ基、ハロゲン原子等が挙げられる。
【0046】
(置換基を有していてもよいアミノ基)
置換基を有していてもよいアミノ基は、通常、−NH基、−NHR42基、−NR4344基で表され、R42〜R44はそれぞれ独立に、置換基を有していてもよいアルキル基又は置換基を有していてもよいフェニル基を表す。
前記アミノ基の具体例としては、メチルアミノ基、エチルアミノ基、プロピルアミノ基、ジメチルアミノ基、フェニルアミノ基等が挙げられる。
【0047】
42〜R44の置換基を有していてもよいアルキル基は、通常、炭素数が1以上、4以下、好ましくは2以下である。
42〜R44のアルキル基及びフェニル基が有していてもよい置換基としては、炭素数1以上、6以下のアルコキシ基、水酸基、スルホ基、カルボキシ基、ハロゲン原子等が挙げられる。
【0048】
(置換基を有していてもよいカルバモイル基)
置換基を有していてもよいカルバモイル基は、無置換のカルバモイル基、置換されていてもよいアルキルカルバモイル基、フェニルカルバモイル基及びナフチルカルバモイル基を表す。カルバモイル基の具体例としては、カルバモイル基、フェニルカルバモイル基、ナフチルカルバモイル基等が挙げられる。
アルキルカルバモイル基、フェニルカルバモイル基及びナフチルカルバモイル基が有していていもよい置換基としては、炭素数1以上、6以下のアルコキシ基、水酸基、スルホ基、カルボキシ基、ハロゲン原子等が挙げられる。
【0049】
(置換基を有していてもよい芳香族複素環基)
かかる置換基を有していてもよい芳香族複素環基としては、単環又は二環性の複素環由来の1価の基が挙げられる。芳香族複素環基を構成する炭素以外の原子としては、窒素原子、硫黄原子及び酸素原子が挙げられるが、窒素原子が特に好ましい。芳香族複素環基が炭素以外の環を構成する原子を複数有する場合、これらは同一であっても異なっていてもよい。
芳香族複素環基として具体的には、下式の基が挙げられる。
【0050】
【化10】
【0051】
上記式中、R61及びR62は、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、又は置換基を有していてもよいフェニル基を表す。
61及びR62の置換基を有していてもよいアルキル基は,炭素数が通常1以上、通常4以下、好ましくは2以下である。
アルキル基及びフェニル基が有していてもよい置換基としては、炭素数1以上、6以下のアルコキシ基、水酸基、スルホ基、カルボキシ基、ハロゲン原子等が挙げられる。
【0052】
芳香族複素環基の中でも、下式の基であることが、ジスアゾ色素1がリオトロピック相を形成するためには好ましい。
【化11】
【0053】
芳香族複素環基が有していてもよい置換基としては、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、置換基を有していてもよいアミノ基、置換基を有していてもよいアセチルアミノ基、アシルアミノ基、ニトロ基、カルボキシ基、スルホ基、水酸基、シアノ基、ハロゲン原子等が挙げられる。該アルキル基、アルコキシ基、アミノ基及びアセチルアミノ基が有していてもよい置換基は、Ar11の芳香族炭化水素基が有していてもよい置換基で挙げたものと同様である。
中でも、水酸基、スルホ基又はカルボキシ基を置換基として有することが、ジスアゾ色素1がリオトロピック液晶相を形成するためには好ましい。
芳香族複素環基は、無置換又は、上述の置換基を1〜5個有していてもよく、好ましくは無置換、又は置換基を1〜2個有していることである。
【0054】
Ar11の具体例として以下の構造が挙げられる。
【化12】
【0055】
<Ar12
一般式(1)のAr12は、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表す。
【0056】
(置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基)
かかる置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基としては、単環及び複数の環由来の2価の基が挙げられる。例えば、フェニレン基、ナフチレン基、アントリレン基等が挙げられる。
中でも、ジスアゾ色素1がリオトロピック液晶相を形成するために、1,4−フェニレン基、又は1,4−ナフチレン基が好ましい。
【0057】
Ar12の芳香族炭化水素基が有していてもよい置換基としては、Ar11の芳香族炭化水素基が有していてもよい置換基と同様である。これら中でも、アルキル基、アルコキシ基、水酸基、ハロゲン原子等の極性の小さい基、又は、水素結合性を有する基であることが、ジスアゾ色素1がリオトロピック液晶相を形成し、且つ色素分子同士の相互作用から、会合性を向上させることができるため好ましい。一方、ジスアゾ色素1の溶解性の観点からは、スルホ基であることが好ましい。
【0058】
(置換基を有していてもよい芳香族複素環基)
かかる置換基を有していてもよい芳香族複素環基としては、ベンゼン環又はナフタレン環の1個以上の−CH基を、窒素原子に置き換えたものが好ましく、特にキノリン−5,8−ジイル基又はイソキノリン−5,8-ジイル基が好ましい。
【0059】
Ar12の具体例として以下の構造が挙げられる。
【化13】
【0060】
<R及びR
及びRは、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいフェニル基、又は置換基を有していてもよいアシル基を表す。
【0061】
及びRの置換基を有していてもよいアルキル基は、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、ヒドロキシエチル基、1,2−ジヒドロキシプロピル基等が挙げられる。該アルキル基は、炭素数が通常1以上であり、通常10以下、好ましくは5以下である。該アルキル基に置換していてもよい基としては、炭素数1以上、6以下のアルコキシ基、水酸基、ハロゲン原子、スルホ基、カルボキシ基等が挙げられる。
【0062】
及びRのフェニル基が有していてもよい置換基としては、水酸基、カルボキシ基、スルホ基等が挙げられる。
【0063】
及びRの置換基を有していてもよいアシル基は、具体的には、置換基を有していてもよいアルキルカルボニル基、置換基を有していてもよいフェニルカルボニル基等が挙げられる。また、アシル基が有していてもよい置換基としては、水酸基、カルボキシ基、スルホ基等が挙げられる。
アルキルカルボニル基のアルキル部分としては、炭素数が通常1以上であり、通常10以下、好ましくは5以下である。
【0064】
上記の中でも、R及びRは、少なくとも一方が水素原子であることが好ましく、両方が水素原子であることがさらに好ましい。
【0065】
<n、n及びn
は、0〜2の整数を表し、nは、0又は1を表し、nは、0〜2の整数を表す。この中でも、nとnの和が1〜3であることが好ましく、1〜2であることが特に好ましい。nとnの和が上記範囲であることで、ジスアゾ色素1の溶媒に対する溶解性が向上し、且つ原料調達が容易となる。
また、nは1であることが、ジスアゾ色素1の580〜600nmの吸収極大波長が得られる傾向となるため好ましい。
【0066】
一般式(I)で表されるジスアゾ色素1おいて、下記式(V)で表される具体例としては、以下の構造が挙げられる。
【0067】
【化14】
[R、R、n、n及びnは、一般式(I)のR、R、n、n及びnとそれぞれ同義である。]
【0068】
【化15】
【0069】
上記の中でも、式(V)は下記(VI)の構造であることが、ジスアゾ色素1が無彩色に近い色調となるために好ましい。
【0070】
【化16】
[R、R、n、n及びnは、一般式(I)のR、R、n、n及びnとそれぞれ同義であり、
−(NR)n2は、式(VI)のナフタレン環の3又は4位に連結する。式(VI)中の3及び4の文字は置換位置を表す。]
【0071】
さらに、式(V)は下記(VII)の構造であることが、ジスアゾ色素1が無彩色に近い色調となり、色素同士が好ましい会合状態を形成しやすい傾向となるため好ましい。
【0072】
【化17】
式(VII)において、n及びnは、一般式(I)のn及びnとそれぞれ同義である。
【0073】
(VII)の具体例として以下の構造が挙げられる。
【化18】
【0074】
式(I)で表されるジスアゾ色素1の遊離酸型の具体例としては、例えば、以下に記載の色素が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0075】
【化19】
【0076】
<ジスアゾ色素2の遊離酸型の構造>
本発明の異方性色素膜用組成物に含まれるジスアゾ色素2は、遊離酸型が一般式(II)で表される。
【化20】
[Ar21は、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表し、
Ar23は、下記一般式(III)又は(IV)を表し、
20は、1価の基を表し、
は、0〜4の整数を表す。]
【0077】
【化21】
【0078】
及びRは、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいフェニル基、又は置換基を有していてもよいアシル基を表し、R10は、水素原子、又は置換基を有していてもよいアルキル基を表し、
は、0〜2の整数を表し、
は、0又は1を表し、
は、0〜2の整数を表し、
は、0又は1を表す。
【0079】
【化22】
【0080】
及びRは、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいフェニル基、又は置換基を有していてもよいアシル基を表し、
は、0〜2の整数を表し、
は、0又は1を表し、
は、0〜2の整数を表す。
【0081】
<Ar21
Ar21は、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表す。
具体的には、一般式(I)のAr11の置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、置換基を有していてもよい芳香族複素環基とそれぞれ同義であり、有していてもよい置換基及び好ましい範囲もそれぞれ同義である。
【0082】
<R20及びa
20は、1価の基を表す。
20は、特に限定はないが、Ar11の芳香族炭化水素基が有していてもよい置換基として前述したものが挙げられる。これらの中でも、置換基を有していてもよいアルキル基が好ましく、特に、炭素数1〜4のアルキル基であることが色素分子の会合を阻害せず、また水に対する親和性が高い傾向となることから好ましい。
は、0〜4の整数を表す。好ましくは、0、1又は2の整数であり、これらの範囲であることで、色素分子のねじれが生じずに、色素分子全体の平面性が高く、色素分子間の会合が促進される傾向にある。従って、異方性色素膜とした際に、高い二色比が得られる傾向にある。
【0083】
<Ar23
Ar23は、上記一般式(III)又は(IV)を表す。
<R〜R
一般式(III)のR及びR、並びに一般式(IV)のR及びRは、それぞれ一般式(I)のR及びRと同義であり、好ましい範囲もそれぞれ同義である。
【0084】
<R10
一般式(III)のR10は、水素原子又は置換基を有していてもよいアルキル基を表す。R10の置換基を有していてもよいアルキル基は、R及びRの置換基を有していてもよいアルキル基と同義であり、好ましい範囲も同義である。
【0085】
<m〜m
一般式(III)において、mは0〜2の整数を表し、mは0又は1を表し、mは0〜2の整数を表し、mは0又は1を表す。
この中でも、mとmの和が1〜3であることが好ましく、1〜2であることが特に好ましい。mとmの和が上記範囲であることで、ジスアゾ色素2の溶媒に対する溶解性が向上し、且つ、原料調達が容易となる。
また、mとmの和が0又は1であることが、原料調達の点から好ましい。さらに、mは0であることが、ジスアゾ色素2の10質量ppmの水溶液が、ジスアゾ色素1が550〜640nmの波長域に有する極大吸収波長よりも、10〜100nm短い波長域に極大吸収を有するために好ましい。
【0086】
<k、k及びk
一般式(IV)のk、k及びkは、一般式(III)のm、m及びmとそれぞれ同義であり、好ましい例もそれぞれ同義である。
【0087】
Ar23の具体例として以下の構造が挙げられる。
【化23】
【0088】
式(II)で表されるジスアゾ色素2の遊離酸型の具体例としては、例えば、以下に記載の色素が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0089】
【化24】
【0090】
【化25】
【0091】
<ジスアゾ色素1及び2の組み合わせ>
本発明の異方性色素膜用組成物に用いられる、一般式(I)で表されるジスアゾ色素1と一般式(II)で表されるジスアゾ色素2の組み合わせは、特に限定されない。
これらの中でも、一般式(I)のAr11及び一般式(II)のAr21が、同一の置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基であることが好ましい。同一の基であることで、一般式(I)で表されるジスアゾ色素1と一般式(II)で表されるジスアゾ色素2同士が好ましい会合状態を形成し、異方性色素膜を形成した場合に高い二色比を示す傾向がある。なお、同一の芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基とは、Ar11及びAr21が、同一であればよく、有していてもよい置換基は異なっていてもよい。
【0092】
<ジスアゾ色素1とジスアゾ色素2の質量分率>
本発明の異方性色素膜用組成物中の一般式(I)で表されるジスアゾ色素1の質量(M1)と一般式(II)で表されるジスアゾ色素2の質量(M2)の比(M2/M1)は特に限定されないが、0.003以上であることが好ましく、0.01以上が更に好ましく、0.03以上が特に好ましい。また、1未満であることが好ましく、0.75以下であることが更に好ましく、0.5以下であることが特に好ましい。質量比が上記の範囲にあることで、無彩色に近い色調を示す異方性色素膜を得やすい傾向となる。また、この質量比の範囲にあることによって、ジスアゾ色素1とジスアゾ色素2が一つの会合体を形成しやすい傾向となる。さらに、ジスアゾ色素1とジスアゾ色素2が一つの会合体を形成できない場合にも、それぞれの会合体形成を阻害しないため好ましい。
【0093】
<ジスアゾ色素1及び2の合成>
一般式(I)で表されるジスアゾ色素1と一般式(II)で表されるジスアゾ色素2は、それ自体周知の方法に準じて製造することができる。例えば、日本特開2008−81700号公報、日本特開2007−126628号公報等に記載の方法等で製造できる。
【0094】
本発明のジスアゾ色素1及び2は、遊離酸型のまま使用してもよく、酸基の一部が塩型を形成しているものでもよい。また、塩型の色素と遊離酸型の色素は混在していてもよい。さらに、製造時に塩型で得られた場合はそのまま使用してもよいし、所望の塩型に変換してもよい。塩の交換方法としては、公知の方法を任意に用いることができ、例えば、以下の方法が挙げられる。
(1) 塩型で得られた色素の水溶液に、塩酸等の強酸を添加し、色素を遊離酸型で酸析せしめた後、所望の対イオンを有するアルカリ溶液(例えば、水酸化リチウム水溶液)で色素酸性基を中和し、塩交換する方法。
(2) 塩型で得られた色素の水溶液に、所望の対イオンを有する大過剰の中性塩(例えば、塩化リチウム)を添加し、塩析ケーキの形で塩交換を行う方法。
(3) 塩型で得られた色素の水溶液を、強酸性陽イオン交換樹脂で処理し、色素を遊離酸型で酸析せしめた後、所望の対イオンを有するアルカリ溶液(例えば、水酸化リチウム水溶液)で色素酸性基を中和し、塩交換する方法。
(4) 予め所望の対イオンを有するアルカリ溶液(例えば、水酸化リチウム水溶液)で処理した強酸性陽イオン交換樹脂に、塩型で得られた色素の水溶液を作用させ、塩交換を行う方法。
【0095】
また、本発明のジスアゾ色素1及び2において、酸性基が遊離酸型をとるか、塩型を取るかは、色素のpKaと色素水溶液のpHに依存する。
上記の塩型の例としては、Na、Li、K等のアルカリ金属の塩、アルキル基もしくはヒドロキシアルキル基で置換されていてもよいアンモニウムの塩、又は有機アミンの塩が挙げられる。
有機アミンの例として、炭素数1〜6の低級アルキルアミン、ヒドロキシ置換された炭素数1〜6の低級アルキルアミン、カルボキシ置換された炭素数1〜6の低級アルキルアミン等が挙げられる。これらの塩型の場合、その種類は1種類に限らず、複数種混在していてもよい。
【0096】
<異方性色素膜の形成方法>
本発明の異方性色素膜は、前述した湿式成膜法により作製することが好ましい。
湿式成膜法において、異方性色素膜用組成物を基板上に付与し成膜する過程、外場を与えて配向させる過程、溶剤を乾燥させる過程は、逐次行ってもよいし、同時に行ってもよい。
湿式成膜法における異方性色素膜用組成物の基板上への付与する方法としては、例えば、塗布法、ディップコート法、LB膜形成法、公知の印刷法等が挙げられる。また、このようにして得た異方性色素膜を別の基板に転写する方法もある。これらの中でも、本発明は塗布法を用いることが好ましい。
異方性色素膜の配向方向は、通常、塗布方向と一致するが、塗布方向と異なっていてもよい。なお、本実施の形態において異方性色素膜の配向方向とは、例えば、偏光膜であれば、偏光の透過軸又は吸収軸であり、位相差膜であれば、進相軸又は遅相軸のことである。
【0097】
本実施の形態における異方性色素膜は、光吸収の異方性を利用し直線偏光、円偏光、楕円偏光等を得る偏光膜又は位相差膜として機能する他、膜形成プロセスと基板や有機化合物(色素や透明材料)を含有する組成物の選択により、屈折異方性や伝導異方性等の各種異方性膜として機能化が可能である。
【0098】
異方性色素膜用組成物を塗布し、異方性色素膜を得る方法としては、特に限定されないが、例えば、原崎勇次著「コーティング工学」(朝倉書店、1971年3月20日発行)の253〜277頁に記載の方法、市村國宏監修「分子協調材料の創製と応用」(シーエムシー出版、1998年3月3日発行)の118〜149頁に記載の方法、段差構造を有する基板(予め配向処理を施してもよい)上にスロットダイコート法、スピンコート法、スプレーコート法、バーコート法、ロールコート法、ブレードコート法、カーテンコート法、ファウンテン法、ディップ法等で塗布する方法が挙げられる。中でも、スロットダイコート法を採用すると、均一性の高い異方性色素膜が得られるため好適である。
【0099】
本発明の異方性色素膜形成に使用される基板として、ガラスやトリアセテート、アクリル、ポリエステル、トリアセチルセルロース、ウレタン系のフィルム等が挙げられる。
また、この基板表面には、色素の配向方向を制御するために、「液晶便覧」(丸善、平成12年10月30日発行)の226〜239頁等に記載の公知の方法により、配向処理層(配向膜)を施していてもよい。
配向処理層を設けた場合、配向処理層の配向処理の影響と塗布時に異方性色素膜用組成物にかかるせん断力によって色素が配向すると考えられる。
【0100】
異方性色素膜用組成物を連続的に塗布する際の、異方性色素膜用組成物の供給方法、供給間隔は特に限定されない。塗布液の供給操作が繁雑になったり、塗布液の開始時と停止時に塗布膜厚の変動を生じてしまったりする場合があるため、異方性色素膜の膜厚が薄い時には、特に連続的に異方性色素膜用組成物を供給しながら塗布することが望ましい。
【0101】
異方性色素膜用組成物を塗布する速度としては、通常1mm/秒以上であり、好ましくは5mm/秒以上である。また、通常1000mm/秒以下であり、好ましくは200mm/秒以下である。塗布速度が過度に小さいと、異方性色素膜の異方性が低くなるおそれがある。一方、過度に大きいと、均一に塗布できないおそれがある。
なお、異方性色素膜用組成物の塗布温度としては、通常0℃以上80℃以下、好ましくは40℃以下である。また、異方性色素膜用組成物の塗布時の湿度は、好ましくは10%RH以上、さらに好ましくは30%RH以上であり、好ましくは80RH%以下である。
【0102】
異方性色素膜の膜厚は、乾燥膜厚として、好ましくは10nm以上、さらに好ましくは50nm以上である。一方、好ましくは30μm以下、さらに好ましくは1μm以下である。異方性色素膜の膜厚が適当な範囲にあることで、膜内で色素の均一な配向及び均一な膜厚を得られる傾向にある。
【0103】
異方性色素膜には、不溶化処理を行ってもよい。不溶化とは、異方性色素膜中の化合物の溶解性を低下させることにより、該化合物の異方性色素膜からの溶出を制御し、膜の安定性を高める処理工程を意味する。
具体的には、例えば、少ない価数のイオンを、それより大きい価数のイオンに置き換える(例えば、1価のイオンを多価のイオンに置き換える)処理や、イオン基を複数有する有機分子やポリマーに置き換える処理が挙げられる。このような処理方法としては、例えば、細田豊著「理論製造 染色化学」(技報堂、1957年)435〜437頁等に記載されている処理工程等の公知の方法を用いることができる。
これらの中でも、得られた異方性色素膜を、日本特開2007−241267号公報等に記載の方法で処理し、水に対して不溶性の異方性色素膜とすることが、後工程の容易さ、及び耐久性等の点から好ましい。
【0104】
本発明の異方性色素膜を偏光素子として使う場合は、異方性色素膜の配向特性は二色比を用いて表すことができる。二色比は8以上あれば偏光素子として機能するが、好ましくは20以上であり、30以上がさらに好ましい。また、二色比は高いほど好ましく、上限はない。二色比が特定値以上であることで、下記する光学素子、特に偏光素子として有用である。
【0105】
本発明で言う二色比(D)とは、異方性色素が一様に配向している場合、以下の式で表される。
D=Az/Ay
ここで、Azは異方性色素膜に入射した光の偏光方向が異方性色素の配向方向に平行な場合に観測される吸光度であり、Ayはその偏光方向が垂直な場合に観測される吸光度である。それぞれの吸光度は同じ波長のものを用いれば特に制限なく、目的によっていずれの波長を選択してもよいが、異方性色素膜の配向の度合を表す場合は、異方性色素膜の極大吸収波長における値を用いることが好ましい。
【0106】
また、本発明の異方性色素膜の可視光波長域における透過率は、好ましくは25%以上である。35%以上が更に好ましく、40%以上が特に好ましい。また、透過率の上限は用途に応じた上限であればよい。例えば、偏光度を高くする場合には、50%以下であることが好ましい。透過率が特定範囲であることで、下記の光学素子として有用であり、特にカラー表示に用いる液晶ディスプレイ用の光学素子として有用である。
【0107】
<光学素子>
本発明において、光学素子は、光吸収の異方性を利用し、直線偏光、円偏光、楕円偏光等を得る偏光素子、位相差素子、屈折異方性や伝導異方性等の機能を有する素子を表す。これらの機能は、異方性色素膜形成プロセスと基板や有機化合物(色素や透明材料)を含有する組成物の選択により、適宜調整することができる。本発明では、偏光素子として用いることが最も好ましい。
【0108】
<偏光素子>
本発明において、偏光素子は、異方性色素膜を有するものであれば、他の如何なる膜(層)を有するものであってもよい。例えば、基板上に配向膜を設け、該配向膜の表面に、異方性色素膜を形成することにより製造することができる。
本発明における偏光素子は、異方性色素膜以外に必要に応じて、オーバーコート層、粘着層或いは反射防止層、配向膜、位相差フィルムとしての機能、輝度向上フィルムとしての機能、反射フィルムとしての機能、半透過反射フィルムとしての機能、拡散フィルムとしての機能等の光学機能をもつ層等、様々な機能をもつ層を塗布や貼合などにより積層形成し、積層体として使用してもよい。
【0109】
これら光学機能を有する層は、例えば、以下の様な方法により形成することができる。位相差フィルムとしての機能を有する層は、例えば、日本特開平2−59703号公報、日本特開平4−230704号公報等に記載の延伸処理を施したり、日本特開平7−230007号公報等に記載された処理を施したりすることにより形成することができる。
【0110】
また、輝度向上フィルムとしての機能を有する層は、例えば、日本特開2002−169025号公報や日本特開2003−29030号公報に記載されるような方法で微細孔を形成すること、或いは、選択反射の中心波長が異なる2層以上のコレステリック液晶層を重畳することにより形成することができる。
【0111】
反射フィルム又は半透過反射フィルムとしての機能を有する層は、蒸着やスパッタリング等で得られた金属薄膜を用いて形成することができる。拡散フィルムとしての機能を有する層は、上記の保護層に微粒子を含む樹脂溶液をコーティングすることにより、形成することができる。
【0112】
また、位相差フィルムや光学補償フィルムとしての機能を有する層は、ディスコティック液晶性化合物、ネマティック液晶性化合物等の液晶性化合物を塗布して配向させることにより形成することができる。
【0113】
本実施の形態における異方性色素膜を、LCDやOLED等の各種の表示素子に異方性色素膜等として用いる場合には、これらの表示素子を構成する電極基板等の表面に、直接異方性色素膜を形成したり、異方性色素膜を形成した基板をこれら表示素子の構成部材として用いたりすることができる。
本発明の光学素子は、基板上に塗布等により異方性色素膜を形成することで、偏光素子を得ることができるという点から、フレキシブルディスプレイ等の用途にも好適に使用することができる。
【実施例】
【0114】
実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。 なお、以下の記載において、「部」は「質量部」を示す。
【0115】
[色素の合成方法]
式(I−)で表されるジスアゾ色素は、特開2010−122670号公報に記載の方法で合成した。具体的には、4−アミノベンゾニトリルをジアゾ化した後、8−アミノ−2−ナフタレンスルホン酸とカップリング反応を行い、モノアゾ化合物を得た。得られたモノアゾ化合物を定法によりジアゾ化し、7−アミノ−1−ナフトール−3,6−ジスルホン酸とカップリング反応を行い、塩化ナトリウムで塩析した。塩型で得られたアゾ化合物の水溶液を、強酸性イオン交換樹脂で処理して遊離酸の形とした後、水酸化リチウムで中和、濃縮乾燥することで式(I−)で表されるジスアゾ色素を得た。
式(I−)、(I−3)、(I−4)、(I−5)、(I−6)、(II−13)及び(II−14)で表されるジスアゾ色素も同様の方法で合成した。
【0116】
式(II−4)で表されるジスアゾ色素は、細田豊著「理論製造 染料化学」(昭和32年11月25日、技報堂発行)に記載の方法を参考にして定法で合成した。具体的には、4−アミノベンゾニトリルをジアゾ化した後、N−スルホメチルアニリンとカップリング反応を行い、さらにスルホメチル基をアルカリ処理で除去せしめ、モノアゾ化合物を得た。得られたモノアゾ化合物を定法によりジアゾ化した後、1−ナフトール−3,6−ジスルホン酸とカップリング反応を行い、塩化ナトリウムで塩析した。塩型で得られたアゾ化合物の水溶液を、強酸性イオン交換樹脂で処理して遊離酸の形とした後、水酸化リチウムで中和、濃縮乾燥することで、式(II−4)で表されるジスアゾ色素を得た。
下記式(II−1)、(II−2)、(II−3)、(II−5)、(II−6)、(II−7)、(II−8)及び(II−9)で表されるジスアゾ色素も同様の方法で合成した。
下記式(II−10)、(II−11)及び(II−12)で表されるモノアゾ色素は、対応する芳香族アミンをジアゾ化した後、対応するカップラーとカップリング反応を行い、塩析で得られたモノアゾ化合物の水溶液を強酸性イオン交換樹脂で処理して遊離酸の形とした後、水酸化リチウムで中和、濃縮乾燥することで得た。
【0117】
[色素の極大吸収波長の測定方法]
実施例で用いた色素の10質量ppm水溶液を調製し、10mm角石英セルを用いて分光光度計 (HITACHI U-4100) により10質量ppm水溶液の吸光度を測定した。 得られた吸光度スペクトルについて、400〜780nmの領域における最大値を極大吸収波長(λmax) とした。
実施例で用いた色素(I−1)〜(I〜6)、及び(II〜1)〜(II〜14)の極大吸収波長を表1に示す。
【0118】
【表1】
【0119】
[色素のリオトロピック液晶性の確認方法]
実施例で用いた色素がリオトロピック液晶性を発現するかは、色素の20質量%水溶液を作製し、スライドガラス上にこの水溶液を一滴垂らし、カバーガラスで覆った試料を偏光顕微鏡にて観察して、液晶相が発現しているか確認することで行った。20質量%水溶液でリオトロピック液晶性が発現しなかった色素については、同様の方法で30質量%水溶液でのリオトロピック液晶性の発現を確認した。リオトロピック液晶性を発現したものを○、しなかったものを×とした。結果を表2に示す。
なお、表2中、「−」は 20質量%水溶液でリオトロピック液晶性を発現したため、30質量%水溶液でのリオトロピック液晶性の発現は確認していないことを表す。
【0120】
【表2】
【0121】
[異方的な分子集合体の確認方法]
20質量%水溶液でリオトロピック液晶性が発現しなかった色素(II−3)については、下記の方法で異方的な分子集合体であるか確認した。
色素(II−3)の10質量%水溶液を作製し、スライドガラス二枚の間に前記10質量%水溶液を充填後、上下のスライドガラスを左右逆方向にスライドさせることで、10質量%水溶液にせん断応力を与えた。その後、上記試料を偏光顕微鏡にてオープンニコルで観察すると、剪断力を加えた方向と剪断力を加えた方向に対して垂直方向で明暗が反転した。このことから、色素(II−3)は水溶液中で異方的な分子集合体をとっており、それら集合体が剪断力により一軸方向に配向することが示された。
【0122】
[異方性色素膜の吸収軸方向の偏光に対する透過率及び二色比の測定方法]
実施例及び比較例において、異方性色素膜の吸収軸方向の偏光に対する透過率及び二色比は、グラムトムソン偏光子を備える分光光度計(大塚電子社製、製品名「RETS-100」)を用いて測定した。
まず、異方性色素膜に直線偏光の測定光を入射し、異方性色素膜の吸収軸方向の偏光に対する透過率、及び偏光軸方向の偏光に対する透過率を測定した後、次式により二色比を計算した。
二色比( D ) = A z / A y
A z = − l o g ( T z )
A y = − l o g ( T y )
T z : 異方性色素膜の吸収軸方向の偏光に対する透過率
T y : 異方性色素膜の偏光軸方向の偏光に対する透過率
【0123】
[実施例1]
水79部に、下記式(I−1)で表されるジスアゾ色素のリチウム塩18部と、下記式(II−1)で表されるジスアゾ色素のリチウム塩3部を加え、撹拌して溶解させた後、濾過して不溶分を除去することにより、異方性色素膜用組成物1を得た。この異方性色素膜用組成物1について、前述した方法で、リオトロピック液晶性の確認を行い、リオトロピック液晶性の発現を確認した。
一方、基板としてポリイミドの配向膜 (LX1400、日立化成デュポンマイクロシステムズ社製)が形成されたガラス基板(150mm×150mm、厚さ1.1mm、膜厚約800Åのポリイミドに、あらかじめ布でラビング処理を施したもの)に、上記の異方性色素膜用組成物1をギャップ2μmのアプリケーター (堀田製作所社製) で塗布した後、自然乾燥することにより異方性色素膜1を得た。
得られた異方性色素膜1について、515nmにおける吸収軸方向の偏光に対する透過率(Tz)と二色比(D)を測定した。その結果を表3に示す。
【0124】
[実施例2〜4]
実施例1の色素(II−1)のリチウム塩を色素(II−2)のリチウム塩に変更し、色素(I−1)のリチウム塩、色素(II−2)のリチウム塩及び水の組成比を表3に示す組成にして、実施例1と同様の方法で異方性色素膜用組成物2〜4をそれぞれ作製した。これらの異方性色素膜用組成物2〜4について、前述した方法で、リオトロピック液晶性の確認を行い、リオトロピック液晶性の発現を確認した。この異方性色素膜用組成物2〜4を、実施例1と同様の基板に、同様の方法で塗布した後、自然乾燥することにより、異方性色素膜2〜4をそれぞれ得た。
得られた異方性色素膜2〜4について、515nmにおける吸収軸方向の偏光に対する透過率(Tz)と二色比(D)を測定した。その結果を表3に示す。
【0125】
[比較例1]
水80部に、下記式(I−1)で表されるジスアゾ色素のリチウム塩20部を加え、撹拌して溶解させた後、濾過して不溶分を除去することにより、異方性色素膜用組成物5を得た。この異方性色素膜用組成物5について、前述した方法で、リオトロピック液晶性の確認を行い、リオトロピック液晶性の発現を確認した。この異方性色素膜用組成物5を、実施例1と同様の基板に、同様の方法で塗布した後、自然乾燥することにより、異方性色素膜5を得た。
得られた異方性色素膜について、吸収軸方向の偏光に対する透過率(Tz)を測定したところ、その透過率が450−550nmで極大値になる波長、すなわち吸光度が極小値になる波長(λmin)は、515nmであった。また、その波長における二色比(D)を測定した。その結果を表3に示す。
【0126】
[比較例2]
水78部に、下記式(I−1)で表されるジスアゾ色素のリチウム塩20部と、下記式(II−14)で表されるジスアゾ色素のリチウム塩2部を加え、撹拌して溶解させた後、濾過して不溶分を除去することにより、異方性色素膜用組成物6を得た。この異方性色素膜用組成物6について、前述した方法で、リオトロピック液晶性の確認を行い、リオトロピック液晶性の発現を確認した。この異方性色素膜用組成物6を、実施例1と同様の基板に、同様の方法で塗布した後、自然乾燥することにより、異方性色素膜6を得た。
得られた異方性色素膜6について、515nmにおける吸収軸方向の偏光に対する透過率(Tz)と二色比(D)を測定した。その結果を表3に示す。
【0127】
[比較例3]
水78部に、下記式(I−1)で表されるジスアゾ色素のリチウム塩13.2部と、下記式(II−14)で表されるジスアゾ色素のリチウム塩8.8部を加えたこと以外は、比較例2と同様の方法で異方性色素膜用組成物7を作製した。これらの異方性色素膜用組成物7について、前述した方法で、リオトロピック液晶性の確認を行い、リオトロピック液晶性の発現を確認した。この異方性色素膜用組成物7を、実施例1と同様の基板に、同様の方法で塗布した後、自然乾燥することにより、異方性色素膜7を得た。
得られた異方性色素膜7について、515nmにおける吸収軸方向の偏光に対する透過率(Tz)と二色比(D)を測定した。その結果を表3に示す。
【0128】
色素(I−1)を用いた異方性色素膜は、比較例1で示したように515nmにおいて、吸収軸方向の偏光に対する透過率(Tz)が十分に小さくない。従って、この波長における光が透過する、いわゆる光漏れを生じる。例えば、この異方性色素膜をディスプレイ用の偏光素子として用いた場合、黒表示時に光漏れが生じ、無彩色にならない。一方、実施例1〜4に示したように、色素(I−1)と色素(II−1)又は色素(II−2)を混合した異方性色素膜用組成物1〜4を用いた場合には、515nmにおける吸収軸方向の偏光に対する透過率(Tz)が小さい、すなわち光漏れを生じない。また、二色比(D)は十分高いため、偏光膜として充分機能しうることが示された。
また、比較例2及び3に示したように、極大吸収波長の差が2である色素(I−1)と色素(II−14)を混合した異方性色素膜用組成物6又は7を用いた場合は、515nmにおける吸収軸方向の偏光に対する透過率(Tz)は十分に小さくならず、光漏れは解消しない。また、二色比(D)も比較例1以下であり、偏光素子としての機能の改善もできない。
【0129】
[実施例5]
水77 部に、下記式(I−2)で表されるジスアゾ色素のリチウム塩20部と、下記式(II−2)で表されるジスアゾ色素のリチウム塩2部と、下記式(VIII)で表される化合物1部を加え、撹拌して溶解させた後、濾過して不溶分を除去することにより、異方性色素膜用組成物8を得た。この異方性色素膜用組成物8について、前述した方法で、リオトロピック液晶性の確認を行い、リオトロピック液晶性の発現を確認した。この異方性色素膜用組成物8を、実施例1と同様の基板に、同様の方法で塗布した後、自然乾燥することにより、異方性色素膜8を得た。
得られた異方性色素膜8について、520nmにおける吸収軸方向の偏光に対する透過率(Tz)と二色比(D)を測定した。その結果を表3に示す。
【0130】
[実施例6〜12]
実施例5の色素(II−2)のリチウム塩を表3のアゾ色素2の欄に示した色素のリチウム塩に変更し、色素(I−2)のリチウム塩、表3のアゾ色素2の欄に示した色素のリチウム塩、下記式(VIII)及び水の組成比を表3に示す組成にして、実施例5と同様の方法で、異方性色素膜用組成物9〜15をそれぞれ作製した。これらの異方性色素膜用組成物8〜15について、前述した方法で、リオトロピック液晶性の確認を行い、リオトロピック液晶性の発現を確認した。この異方性色素膜用組成物9〜15を、実施例1と同様の基板に、同様の方法で塗布した後、自然乾燥することにより、異方性色素膜9〜15をそれぞれ得た。
得られた異方性色素膜9〜15について、520nmにおける吸収軸方向の偏光に対する透過率(Tz)と二色比(D)を測定した。その結果を表3に示す。
【0131】
[比較例4〜6]
実施例5の色素(II−2)のリチウム塩を加えない、又は、表3のアゾ色素2の欄に示した色素のリチウム塩に変更し、色素(I−2)のリチウム塩、表3のアゾ色素2の欄に示した色素のリチウム塩、下記式(VIII)及び水の組成比を表3に示す組成にして、実施例5と同様の方法で、異方性色素膜用組成物16〜18をそれぞれ作製した。これらの異方性色素膜用組成物16〜18について、前述した方法で、リオトロピック液晶性の確認を行い、リオトロピック液晶性の発現を確認した。この異方性色素膜用組成物16〜18を、実施例1と同様の基板に、同様の方法で塗布した後、自然乾燥することにより、異方性色素膜16〜18をそれぞれ得た。
得られた異方性色素膜16について、吸収軸方向の偏光に対する透過率(Tz)を測定したところ、その透過率が450−550nmで極大値になる波長、すなわち吸光度が極小値になる波長(λmin)は、520nmであった。また、その波長における二色比(D)を測定した。その結果を表3に示す。
また、得られた異方性色素膜17及び18について、520nmにおける吸収軸方向の偏光に対する透過率(Tz)と二色比(D)を測定した。その結果を表3に示す。
【0132】
色素(I−2)を用いた異方性色素膜は、比較例4で示したように520nmにおいて、吸収軸方向の偏光に対する透過率(Tz)が十分に小さくない。従って、この波長における光が透過する、いわゆる光漏れを生じる。例えば、この異方性色素膜をディスプレイ用の偏光素子として用いた場合、黒表示時に光漏れが生じ、無彩色にならない。
一方、実施例5〜12に示したように、色素(I−2)と表3のアゾ色素2の欄に示した色素を混合した異方性色素膜用組成物8〜15を用いた場合には、520nmにおける吸収軸方向の偏光に対する透過率(Tz)が小さい、すなわち光漏れを生じない。また、二色比(D)は十分高いため、偏光膜として充分機能しうる。
さらに、比較例5又は6に示したようにモノアゾ色素である色素(II−10)又は(II−11)を用いた場合には、520nmにおける吸収軸方向の偏光に対する透過率(Tz)は十分に小さくならず、光漏れは解消しない。また、二色比(D)も比較例4と同等かそれ以下で、偏光素子としての機能の改善もできない。
【0133】
[実施例13]
水78部に、下記式(I−3)で表されるジスアゾ色素のリチウム塩20部と、下記式(II−3)で表されるジスアゾ色素のリチウム塩2部を加え、撹拌して溶解させた後、濾過して不溶分を除去することにより、異方性色素膜用組成物19を得た。この異方性色素膜用組成物19について、前述した方法で、リオトロピック液晶性の確認を行い、リオトロピック液晶性の発現を確認した。
一方、基板としてポリイミドの配向膜 (LX1400、日立化成デュポンマイクロシステムズ社製)が形成されたガラス基板(150mm×150mm、厚さ1.1mm、膜厚約800Å のポリイミドに、あらかじめ布でラビング処理を施したもの)に、上記の異方性色素膜用組成物19をギャップ4μmのアプリケーター (堀田製作所社製) で塗布した後、自然乾燥することにより異方性色素膜19を得た。得られた異方性色素膜19について、515nmにおける吸収軸方向の偏光に対する透過率(Tz)と二色比(D)を測定した。その結果を表3に示す。
【0134】
[実施例14及び15]
実施例13の色素(II−3)のリチウム塩を、表3のアゾ色素2の欄に示した色素のリチウム塩に変更し、色素(I−3)のリチウム塩、表3のアゾ色素2の欄に示した色素のリチウム塩及び水の組成比を表3に示す組成にして、実施例13と同様の方法で、異方性色素膜用組成物20及び21をそれぞれ作製した。これらの異方性色素膜用組成物20及び21について、前述した方法で、リオトロピック液晶性の確認を行い、リオトロピック液晶性の発現を確認した。この異方性色素膜用組成物20及び21を、実施例13と同様の基板に、同様の方法で塗布した後、自然乾燥することにより、異方性色素膜20及び21を得た。
得られた異方性色素膜20及び21について、515nmにおける吸収軸方向の偏光に対する透過率(Tz)と二色比(D)を測定した。その結果を表3に示す。
【0135】
[比較例7]
水80部に、下記式(I−3)で表されるジスアゾ色素のリチウム塩20部を加え、撹拌して溶解させた後、濾過して不溶分を除去することにより、異方性色素膜用組成物22を得た。この異方性色素膜用組成物22について、前述した方法で、リオトロピック液晶性の確認を行い、リオトロピック液晶性の発現を確認した。この異方性色素膜用組成物22を、実施例13と同様の基板に、同様の方法で塗布した後、自然乾燥することにより、異方性色素膜22を得た。
得られた異方性色素膜について、吸収軸方向の偏光に対する透過率(Tz)を測定したところ、その透過率が450−550nmで極大値になる波長、すなわち吸光度が極小値になる波長(λmin)は、515nmであった。また、その波長における二色比(D)を測定した。その結果を表3に示す。
【0136】
[比較例8]
水80部に、下記式(I−3)で表されるジスアゾ色素のリチウム塩18部と、下記式(II−12)で表されるモノアゾ色素のリチウム塩2部を加え、撹拌して溶解させた水溶液23について、前述した方法で、リオトロピック液晶性の確認を行ったところ、リオトロピック液晶性の発現はなかった。この水溶液23を水65部まで濃縮し、リオトロピック液晶性の確認を行ったところ、リオトロピック液晶性とリオトロピック液晶性でない等方相が混在した。さらに、この水溶液を水54部まで濃縮し、リオトロピック液晶性の確認を行ったところ、リオトロピック液晶性の発現はあったが、水溶液はゲル化し、塗布することができなかった。
【0137】
色素(I−3)を用いた異方性色素膜は、比較例7で示したように515nmにおいて、吸収軸方向の偏光に対する透過率(Tz)が十分に小さくない。従って、この波長における光が透過する、いわゆる光漏れを生じる。例えば、この異方性色素膜をディスプレイ用の偏光素子として用いた場合、黒表示時に光漏れが生じ、無彩色にならない。一方、実施例13〜15に示したように、色素(I−3)と表3のアゾ色素2の欄に示した色素を混合した異方性色素膜用組成物19〜21を用いた場合には、515nmにおける吸収軸方向の偏光に対する透過率(Tz)が小さい、すなわち光漏れを生じない。また、二色比(D)は十分高いため、偏光膜として充分機能しうる。
【0138】
[実施例16]
水68部に、下記式(I−4)で表されるジスアゾ色素のリチウム塩29.1部と、下記式(II−3)で表されるジスアゾ色素のリチウム塩2.9部を加え、撹拌して溶解させた後、濾過して不溶分を除去することにより、異方性色素膜用組成物24を得た。この異方性色素膜用組成物24について、前述した方法で、リオトロピック液晶性の確認を行い、リオトロピック液晶性の発現を確認した。
この異方性色素膜用組成物24を、実施例1と同様の基板に、同様の方法で塗布した後、自然乾燥することにより、異方性色素膜24を得た。
得られた異方性色素膜24について、535nmにおける吸収軸方向の偏光に対する透過率(Tz)と二色比(D)を測定した。その結果を表3に示す。
【0139】
[比較例9]
水82部に、下記式(I−4)で表わされるジスアゾ色素のリチウム塩18.0部を加え、撹拌して溶解させた後、濾過して不溶分を除去することにより、異方性色素膜用組成物25を得た。この異方性色素膜用組成物25について、前述した方法で、リオトロピック液晶性の確認を行い、リオトロピック液晶性の発現を確認した。この異方性色素膜用組成物25を、実施例13と同様の基板に、同様の方法で塗布した後、自然乾燥することにより、異方性色素膜25を得た。
得られた異方性色素膜について、吸収軸方向の偏光に対する透過率(Tz)を測定したところ、その透過率が450−550nmで極大値になる波長、すなわち吸光度が極小値になる波長(λmin)は、535nmであった。また、その波長における二色比(D)を測定した。その結果を表3に示す。
【0140】
[比較例10]
水82部に、下記式(I−4)で表わされるジスアゾ色素のリチウム塩9.0部と、下記式(II−13)で表わされるジスアゾ色素のリチウム塩9.0部を加え、撹拌して溶解させた後、濾過して不溶分を除去することにより、異方性色素膜用組成物26を得た。前述した方法で、リオトロピック液晶性の確認を行い、リオトロピック液晶性の発現を確認した。
一方、基板としてポリイミドの配向膜 (LX1400、日立化成デュポンマイクロシステムズ社製)が形成されたガラス基板(150mm×150mm、厚さ1.1mm、膜厚約800Åのポリイミドに、あらかじめ布でラビング処理を施したもの)に、上記の異方性色素膜用組成物26をギャップ10μmのアプリケーター (堀田製作所社製) で塗布した後、自然乾燥することにより、異方性色素膜26を得た。
得られた異方性色素膜26について、535nmにおける吸収軸方向の偏光に対する透過率(Tz)と二色比(D)を測定した。その結果を表3に示す。
【0141】
[実施例17]
水87.9部に、下記式(I−5)で表わされるジスアゾ色素のリチウム塩11部と、下記式(II−3)で表わされるジスアゾ色素のリチウム塩1.1部を加え、撹拌して溶解させた後、濾過して不溶分を除去することにより、異方性色素膜用組成物27を得た。この異方性色素膜用組成物27について、前述した方法で、リオトロピック液晶性の確認を行い、リオトロピック液晶性の発現を確認した。
この異方性色素膜用組成物27を、実施例1と同様の基板に、同様の方法で塗布した後、自然乾燥することにより、異方性色素膜27を得た。
得られた異方性色素膜27について、525nmにおける吸収軸方向の偏光に対する透過率(Tz)と二色比(D)を測定した。その結果を表3に示す。
【0142】
[比較例11]
水89.0部に、下記式(I−5)で表わされるジスアゾ色素のリチウム塩11.0部を加え、撹拌して溶解させた後、濾過して不溶分を除去することにより、異方性色素膜用組成物28を得た。この異方性色素膜用組成物28について、前述した方法で、リオトロピック液晶性の確認を行い、リオトロピック液晶性の発現を確認した。この異方性色素膜用組成物28を、実施例1と同様の基板に、同様の方法で塗布した後、自然乾燥することにより、異方性色素膜28を得た。
得られた異方性色素膜について、吸収軸方向の偏光に対する透過率(Tz)を測定したところ、その透過率が450−550nmで極大値になる波長、すなわち吸光度が極小値になる波長(λmin)は、525nmであった。また、その波長における二色比(D)を測定した。その結果を表3に示す。
【0143】
[実施例18]
水80.2部に、下記式(I−6)で表わされるジスアゾ色素のリチウム塩18部と、下記式(II−3)で表わされるジスアゾ色素のリチウム塩1.8部を加え、撹拌して溶解させた後、濾過して不溶分を除去することにより、異方性色素膜用組成物29を得た。この異方性色素膜用組成物29について、前述した方法で、リオトロピック液晶性の確認を行い、リオトロピック液晶性の発現を確認した。
一方、基板としてポリイミドの配向膜 (LX1400、日立化成デュポンマイクロシステムズ社製)が形成されたガラス基板(150mm×150mm、厚さ1.1mm、膜厚約800Åのポリイミドに、あらかじめ布でラビング処理を施したもの)に、上記の異方性色素膜用組成物29をギャップ1μmのアプリケーター (堀田製作所社製) で塗布した後、自然乾燥することにより、異方性色素膜29を得た。
得られた異方性色素膜29について、525nmにおける吸収軸方向の偏光に対する透過率(Tz)と二色比(D)を測定した。その結果を表3に示す。
【0144】
[比較例12]
水82.0部に、下記式(I−6)で表わされるジスアゾ色素のリチウム塩18部を加え、撹拌して溶解させた後、濾過して不溶分を除去することにより、異方性色素膜用組成物30を得た。この異方性色素膜用組成物30について、前述した方法で、リオトロピック液晶性の確認を行い、リオトロピック液晶性の発現を確認した。この異方性色素膜用組成物30を、実施例18と同様の基板に、同様の方法で塗布した後、自然乾燥することにより、異方性色素膜28を得た。
得られた異方性色素膜について、吸収軸方向の偏光に対する透過率(Tz)を測定したところ、その透過率が450−550nmで極大値になる波長、すなわち吸光度が極小値になる波長(λmin)は、525nmであった。また、その波長における二色比(D)を測定した。その結果を表3に示す。
【0145】
以上のように、実施例1〜 18の異方性色素膜は、比較例1〜12の異方性色素膜に比べて、450〜550nmの視感度が高い領域でも吸収軸方向の偏光に対する透過率が小さく、高い二色比(光吸収異方性)を有することが示された。
【0146】
【化26】

【0147】
【化27】
【0148】
【化28】
【0149】
【表3】
【産業上の利用可能性】
【0150】
本発明の異方性色素膜は、高透過率で高い二色性を示し、全可視光領域にわたって理想的な無彩色に近い色調であるなどの特性を有し、この異方性色素膜を用いた偏光素子は、色再現性などが求められる調光素子、液晶素子、有機エレクトロルミネッセンス素子等の表示素子として利用可能である。
なお、2013年12月13日に出願された日本特許出願2013−258369号の明細書、特許請求の範囲、及び要約書の全内容をここに引用し、本発明の明細書の開示として、取り入れるものである。