(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。なお、以下の説明で用いる図面は、特徴をわかりやすくするために、便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。
【0015】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態の静電チャック装置1の断面図である。また、
図2は、
図1の領域IIの拡大図である。静電チャック装置1は、板状試料Wを載置する載置面2aを有するとともに静電吸着用内部電極13を内蔵する静電チャック部2と、静電チャック部2を下側から冷却するベース部3と、静電チャック部2とベース部3とを接着して一体化する接着層4と、を備える。
なお、本明細書において、載置面2a側を静電チャック装置1の上側とし、ベース部3側を静電チャック装置1の下側として各構成の相対位置を説明するが、使用時の静電チャック装置1の姿勢は、この向きに限定されない。
【0016】
(静電チャック部)
静電チャック部2は、上側から順に、載置板11と、静電吸着用内部電極13および静電吸着用内部電極13の周縁部を囲む絶縁材層14と、支持板12と、が積層された構造を有する。また、静電チャック部2は、接着層4およびベース部3を貫通して、静電吸着用内部電極13に電圧を印加する給電用端子15を有する。
【0017】
静電チャック部2は、上面を半導体ウエハ等の板状試料Wを載置するための載置面2aとする円形状の載置板11と、この載置板11の下面側に対向配置された円形状の支持板12と、これら載置板11と支持板12との間に挟持され載置板11および支持板12より径の小さい円形状の静電吸着用内部電極13と、この静電吸着用内部電極13の下面に接続されて直流電圧を印加する給電用端子15と、を有する。
【0018】
載置板11および支持板12は、酸化アルミニウム−炭化ケイ素(Al
2O
3−SiC)複合焼結体、酸化アルミニウム(Al
2O
3)焼結体、窒化アルミニウム(AlN)焼結体、酸化イットリウム(Y
2O
3)焼結体等の機械的な強度を有し、かつ腐食性ガスおよびそのプラズマに対する耐久性を有する絶縁性のセラミックス焼結体からなる。
特に、載置板11は、上側に載置面2aを構成することから、特に誘電率が高い材質であって、静電吸着する板状試料Wに対して不純物とならない材料から構成されることが好ましい。このような観点から、載置板11の構成材料として、炭化ケイ素を4重量%以上かつ20重量%以下含み、残部を酸化アルミニウムとする炭化ケイ素−酸化アルミニウム複合焼結体を採用することが好ましい。
【0019】
図2に示すように、載置板11の載置面2aには、直径が板状試料Wの厚みより小さい突起部16が複数個形成され、これらの突起部16が板状試料Wを支える。
載置板11は、上側に載置面2aを構成することから、特に誘電率が高い材質であって、静電吸着する板状試料Wに対して不純物とならない。
【0020】
静電吸着用内部電極13は、載置板11の下側に位置する。静電吸着用内部電極13は、電荷を発生させて静電吸着力で板状試料Wを固定するための静電チャック用電極として用いられるもので、その用途によって、その形状や、大きさが適宜調整される。例えば、静電吸着用内部電極13は、静電吸着用内部電極13が形成される階層に、所定のパターンを有する電極として設けられる。なお、静電吸着用内部電極13は、パターンを有しない、いわゆるベタ電極として設けられていても機能する。
【0021】
静電吸着用内部電極13は、スパッタや蒸着により支持板12に金属箔を成膜することで形成できる。他にも、静電吸着用内部電極13の形成材料である導電性材料と、有機物との複合材料を、スクリーン印刷等の塗工法を用いて塗布することにより形成することができる。
【0022】
静電吸着用内部電極13は、酸化アルミニウム−炭化タンタル(Al
2O
3−Ta
4C
5)導電性複合焼結体、酸化アルミニウム−タングステン(Al
2O
3−W)導電性複合焼結体、酸化アルミニウム−炭化ケイ素(Al
2O
3−SiC)導電性複合焼結体、窒化アルミニウム−タングステン(AlN−W)導電性複合焼結体、窒化アルミニウム−タンタル(AlN−Ta)導電性複合焼結体、酸化イットリウム−モリブデン(Y
2O
3−Mo)導電性複合焼結体等の導電性セラミックス、あるいは、タングステン(W)、タンタル(Ta)、モリブデン(Mo)等の高融点金属により形成することができる。また、静電吸着用内部電極13は、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、炭素(C)により形成することもできる。静電吸着用内部電極13の厚さは、特に限定されるものではないが、0.1μm以上かつ50μm以下が好ましい。
【0023】
絶縁材層14は、載置板11および支持板12を接合一体化するとともに、静電吸着用内部電極13をプラズマから保護するためのものである。
この絶縁材層14を構成する材料としては、載置板11および支持板12と主成分が同一の絶縁性材料が好ましく、例えば、載置板11および支持板12が炭化ケイ素−酸化アルミニウム複合焼結体により構成されている場合には、酸化アルミニウム(Al
2O
3)とするのが好ましい。
【0024】
給電用端子15は、静電吸着用内部電極13に直流電圧を印加するために設けられた棒状のもので、給電用端子15の形成材料としては、耐熱性に優れた導電性材料であれば特に制限されるものではなく、金属材料や導電性有機材料を用いることができる。給電用端子15は、ベース部3に対して絶縁されている。
【0025】
(ベース部)
ベース部3は、静電チャック部2の下側に設けられて、この静電チャック部2の温度を所望の温度に制御する。また、ベース部3は、高周波発生用電極の機能を兼ね備えている。ベース部3の内部には、水や有機溶媒等の冷却用媒体を循環させる流路21が形成されている。これにより、静電チャック部2を冷却し、載置面2aに載置される板状試料Wの温度を所望の温度に維持する。ベース部3は、アルミニウム(Al)又はアルミニウム合金からなる。ベース部3の少なくともプラズマに曝される面は、アルマイト処理が施されているか、あるいはアルミナ等の絶縁膜が成膜されていることが好ましい。これにより、耐プラズマ性が向上する他、異常放電が防止され、したがって、耐プラズマ安定性が向上したものとなる。また、表面に傷が付き難くなるので、傷の発生を防止することができる。なお、ベース部3は、熱伝導性のよい金属材料であればその材質が限定されることはなく、例えば、銅(Cu)、銅合金、ステンレス鋼(SUS) 等を採用しもよい。
【0026】
(接着層)
接着層4は、静電チャック部2の下面2bと、ベース部3の上面3aとの間に介在する。接着層4は、静電チャック部2とベース部3とを接着一体化する。接着層4は、−20℃〜150℃の温度範囲で耐熱性を有する接着剤が好ましく、例えば、アクリル系樹脂、シリコン系樹脂、エポキシ系樹脂等が好適である。特に、酸素系プラズマを用いる場合には、酸素系プラズマに対して耐プラズマ性に優れているシリコン系樹脂が好ましい。
この接着層4の形状は、液状の熱硬化性接着剤を塗布して得られた塗膜を加熱することにより硬化させたシート状又はフィルム状の接着剤を熱圧着等により硬化した硬化膜であってもよい。
【0027】
(冷却ガス導入孔およびピン挿通孔)
静電チャック部2、ベース部3および接着層4には、これらを上下に貫通する冷却ガス導入孔30Aとピン挿通孔30Bとがそれぞれ複数設けられている。冷却ガス導入孔30Aは、静電チャック部2に載置された板状試料Wに向かってヘリウム(He)等の冷却ガスGを供給するために設けられている。また、ピン挿通孔30Bは、載置面2aに吸着された板状試料Wの離脱を補助するリフトピン22が挿通される。リフトピン22の下端には、図示略の駆動部が接続され、ピン挿通孔30Bの貫通方向に沿ってリフトピン22を上下に駆動する。
【0028】
冷却ガス導入孔30Aとピン挿通孔30Bとは、同様の構成を有する。以下の説明においては、冷却ガス導入孔30Aとピン挿通孔30Bを包含して単に貫通孔30と呼ぶ。
貫通孔30は、静電チャック部2を貫通する部分である第1の貫通孔31と、ベース部3を貫通する部分である第2の貫通孔32と、を有する。すなわち、静電チャック部2には第1の貫通孔31が設けられ、ベース部3には第2の貫通孔32が設けられ、第1および第2の貫通孔31、32は、互いに連通して貫通孔30を構成する。
【0029】
第1の貫通孔31および第2の貫通孔32は、互いに中心軸が一致している。第2の貫通孔32の内周面32aには、接着剤49により筒状の絶縁碍子40が固定されている。絶縁碍子40は、静電チャック部2側に位置する第1の端部41とその反対側に位置する第2の端部42とを有する。第2の貫通孔32の内径は、第1の貫通孔31の内径より絶縁碍子40に肉厚部分だけ大きい。
【0030】
図2に示すように、静電チャック部2のベース部3と対向する面(すなわち下面2b)には、溝部25が設けられている。溝部25は、第1の貫通孔31を囲むように環状に形成されている。溝部25は、絶縁碍子40の第1の端部41の先端面41aと対向して下側に開口する。溝部25の開口は、先端面41aに覆われている。溝部25は、底面25aと内側面25bと外側面25cとにより構成されている。溝部25には、環状のシール部材であるオーリング(Oリング)50が配置されている。オーリング50は、絶縁碍子40の先端面41aと、溝部25の底面25aとの間に挟み込まれている。
ここで、静電チャック部2の第1の貫通孔31の内周面31aと溝部25の内側面25bとの間の部分を、内壁部26と呼ぶ。すなわち、オーリング50の径方向内側には、内壁部26が設けられている。
【0031】
(絶縁碍子)
絶縁碍子40は、例えばセラミックからなる。絶縁碍子40は、プラズマに対する耐久性を有する。絶縁碍子40を構成するセラミックスとしては、窒化アルミニウム(AlN)、酸化アルミニウム(Al
2O
3)、窒化ケイ素(Si
3N
4)、酸化ジルコニウム(ZrO
2)、サイアロン、窒化ホウ素(BN)、炭化ケイ素(SiC)から選択された1種からなるセラミックス、あるいは2種以上を含む複合セラミックスを採用できる。
【0032】
絶縁碍子40の内径は、第1の貫通孔31の内径と略等しい。第1の貫通孔31の内周面31aと絶縁碍子40の内周面40aとは、段差なく連なることが好ましい。しかしながら、貫通孔30が冷却ガス導入孔30Aである場合は、絶縁碍子40の内径が第1の貫通孔31より大きくてもよい。
【0033】
絶縁碍子40の外周面40bと第2の貫通孔32の内周面32aとの間には、接着剤49が介在しこれらを接着固定している。接着剤49としては、プラズマに対して耐久性を示し可撓性を有する有機系樹脂が好ましい。
【0034】
絶縁碍子40の先端面41aは、平滑に形成されている。本実施形態において、絶縁碍子の先端面41aは、オーリング50と接触するとともに、オーリング50の径方向内側および外側において、静電チャック部2の下面2bと接触する。しかしながら、先端面41aは、静電チャック部2の下面2bに対して離間していてもよい。
【0035】
(オーリング(シール部材))
オーリング(シール部材)50は、静電チャック部2の下面2bに設けられた溝部25に収容されている。また、オーリング50は、溝部25の底面25aと絶縁碍子40の先端面41aとの間に挟み込まれている。オーリング50は、絶縁碍子40の外周側にプラズマが絶縁碍子40の外周側に回り込むことを遮り、プラズマによる接着層4および接着剤49の侵食を抑制する。オーリング50は、絶縁碍子40の先端面41aおよび溝部25の底面25aと接触している。また、オーリング50は、溝部25の内部において、内側面25bおよび外側面25cと接触している。
【0036】
オーリング50は、ゴム又はエラストマー樹脂などの弾性体からなる管状のシール部材である。なお、本実施形態においてシール部材として、断面が円形のオーリングを採用する場合を例示するが、断面形状はこれに限定されない。特に、本実施形態に示すようにシール部材が収容される空間の断面形状が矩形状である場合には、断面矩形状のパッキンを用いることで接触面積を増加させてプラズマの侵入をより効果的に抑制してもよい。
【0037】
オーリング50は、絶縁碍子40の先端面41aと静電チャック部2の溝部25の底面25aとの間に挟み込まれて上下に圧縮されている。オーリング50は、上側接点P1で溝部25の底面25aと環状に接触し、下側接点P2で絶縁碍子40の先端面41aと環状に接触する。オーリング50は、上側接点P1と下側接点P2において、絶縁碍子40の内径側と外径側とをシールする。
【0038】
圧縮前のオーリング50の厚さ(上下方向寸法)は、溝部25の深さHより大きい。言い換えると、溝部25の深さHは、オーリング50の厚さより小さい。これにより、絶縁碍子40の先端面41aを静電チャック部2の下面2bに接触させることで、確実にオーリング50を圧縮できる。
【0039】
オーリング50は、圧縮後の厚さが圧縮前に対して、0.5倍以上、0.8倍以下となるように圧縮されていることが好ましい。これにより、上側接点P1および下側接点P2において、オーリング50により絶縁碍子40の内周側と外周側とのシールの確実性を高めることができる。
【0040】
本実施形態において、絶縁碍子40の先端面41aは、静電チャック部2の下面2bと接触するため、溝部25の深さHが、圧縮後のオーリング50の厚さとなる。したがって、オーリング50の圧縮率を溝部25の深さHの加工精度に依存させることができ、絶縁碍子40の固定時に、オーリングのつぶし代を調整する必要なく、シールの信頼性を高めることができる。
【0041】
オーリング50は、径方向に圧縮されていても圧縮されていなくてもよい。
オーリング50が径方向に圧縮される場合、オーリング50は、溝部25の内側面25bと外側面25cとの間に挟み込まれる。これにより、プラズマの侵入経路を狭めてプラズマの侵入を効果的に抑制できる。
一方で、オーリング50が径方向に圧縮されない場合、オーリング50は、上下方向のみから圧縮されるため、捻れなどの無理な負荷が加わりにくい。したがってオーリング50によるシールの信頼性を高めることができる。溝部25の溝幅W1は、圧縮前のオーリング50の径方向の幅に対して、0.8倍以上1.2倍以下とすることが好ましい。これにより、捻れなどの無理な応力を生じさせることなく、オーリング50を絶縁碍子40の先端面41aと溝部25の底面25aとの間に介在させることができる。
【0042】
本実施形態の静電チャック装置1によれば、静電チャック部2と絶縁碍子40の先端面41aとの間にオーリング50を介在させたことで、プラズマが絶縁碍子40の外周側に回り込むことを遮ることができる。これにより、接着層4および接着剤49が、プラズマにより侵食されることを抑制でき、静電チャック装置1の長寿命化を図ることができる。
また本実施形態によれば、接着層4および接着剤49のプラズマ暴露が抑制されるため、接着層4および接着剤49の材料として求められる耐プラズマ性を低くすることができる。すなわち、本実施形態によれば、プラズマに対する耐性を考慮して接着層4および接着剤49の材料を選択する必要がなく材料選定の自由度を高めることができる。一例として、接着層4および接着剤49としてプラズマに対する耐性の有無を問わず、熱弾性に優れた材料を採用し、静電チャック部2とベース部3の熱膨張の差を緩和する構成とすることができる。
【0043】
本実施形態の静電チャック装置1によれば、オーリング50が溝部25に収容されていることで、オーリング50が貫通孔30側にはみ出すことを抑制できる。これにより、オーリング50によるシールの確実性を高めるとともに、オーリング50の寿命を長くすることができる。
【0044】
また、本実施形態によれば、オーリング50が溝部25に収容されていることで、オーリング50の径方向内側に内壁部26が位置する構成となる。内壁部26は、貫通孔30に対するオーリング50の露出を制限してプラズマに暴露され難くする。これにより、オーリング50の寿命を長くすることができる。
【0045】
また、本実施形態によれば、オーリング50の径方向内側に内壁部26が設けられていることで、静電チャック装置1の耐電圧を高めることができる。絶縁碍子40の先端面41aが、静電チャック部2の下面2bと接触する場合には、放電経路を塞いで耐電圧を高めることができる。また、絶縁碍子40の先端面41aが、静電チャック部2の下面2bと接触しない場合であっても、内壁部26により放電経路を狭めることができる。これにより、放電に至るための経路を長くして静電チャック装置1の耐電圧を高めることができる。
【0046】
本実施形態の静電チャック装置1において、絶縁碍子40は、絶縁碍子40の先端面41aを静電チャック部2の下面2bに接触させ、絶縁碍子40の先端面41aと溝部25の底面25aとの間でオーリング50を圧縮した状態で、接着剤49を硬化させることで固定される。また、絶縁碍子40の先端面41aを静電チャック部2の下面2bから離間させる場合には、絶縁碍子40は、先端面41aにおけるオーリング50のつぶし代をダイアルゲージ等で調整しながら接着剤49を硬化させることで固定する。
【0047】
第1実施形態の静電チャック装置1は、
図2に二点鎖線で示すように、ヒータエレメント9を有していてもよい。ヒータエレメント9は、静電チャック部2の下面2bに図示略の接着剤を介して固定されている。また、ヒータエレメント9は、静電チャック部2の下面2bとベース部3の上面3aの間において、接着層4に埋め込まれている。ヒータエレメント9は、幅の狭い帯状の金属材料を蛇行させた導電部材から構成される。ヒータエレメント9は、両端に給電用端子が接続され、電流が流されることで発熱し、静電チャック部2の温度を制御してもよい。
【0048】
(変形例1)
図3は、第1実施形態の変形例1の静電チャック装置1Aの拡大断面図である。なお、上述の実施形態と同一態様の構成要素については、同一符号を付し、その説明を省略する。本変形例の静電チャック装置1Aは、第1実施形態の静電チャック装置1と比較して、静電チャック部2Aが、第1の貫通孔31Aに入れ子状に配されて接着固定された内壁部材(内壁部)26Aを有する点が主に異なる。
【0049】
静電チャック部2Aには、静電チャック部本体20Aと内壁部材26Aとを有する。
静電チャック部本体20Aは、第1実施形態の静電チャック部2と略同様の積層構造を有する。静電チャック部本体20Aには、第1の貫通孔31Aが設けられている。第1の貫通孔31Aは、ベース部3の第2の貫通孔32と連通して貫通孔30を構成する。静電チャック部本体20Aの第1の貫通孔31Aの内周面と下面2bとの間の縁には、段差部28Aが設けられている。
【0050】
内壁部材26Aは、円筒形状を有している。内壁部材26Aは、第1の貫通孔31Aの内周面に接着固定されている。内壁部材26Aの外径は、第1の貫通孔31Aの内径より若干小さい。また、内壁部材26Aの長さは、静電チャック部本体20Aの上下方向(積層方向)の厚さと略同等である。内壁部材26Aは、静電チャック部本体20Aの段差部28Aの内側に延びて、段差部28Aの内周側を覆う。これにより、段差部28Aと内壁部材26Aとに囲まれてベース部側に開口する溝部25Aが静電チャック部2Aに形成される。
【0051】
第1実施形態と同様に、溝部25Aは、第1の貫通孔31Aを囲むように環状に形成されている。溝部25Aには、環状のシール部材であるオーリング50が配置されている。オーリング50は、絶縁碍子40の先端面41aと、溝部25Aの底面25aとの間に挟み込まれている。
【0052】
本変形例の静電チャック装置1Aによれば、内壁部材(内壁部)26Aが静電チャック部本体20Aと別部材で構成されているため、互いに別材料とすることができる。したがって、内壁部材26Aとして、耐プラズマ性の高い材料を選択することができる。
【0053】
<第2実施形態>
図4は、第2実施形態の静電チャック装置101の断面拡大図である。第2実施形態の静電チャック装置101は、第1実施形態と比較して、絶縁碍子40の第1の端部41を径方向外側から囲む絶縁リング145を有する点が主に異なる。
なお、上述の実施形態と同一態様の構成要素については、同一符号を付し、その説明を省略する。
【0054】
静電チャック装置101は、静電チャック部2とベース部103と接着層4とを備える。また、静電チャック装置101において、静電チャック部2、ベース部103および接着層4には、これらを上下に貫通する複数の貫通孔130が設けられている。貫通孔130は、冷却ガス導入又はリフトピンの挿通に用いられる。貫通孔130は、静電チャック部2を貫通する部分である第1の貫通孔31と、ベース部103を貫通する部分である第2の貫通孔132と、を有する。
【0055】
第1実施形態と同様に、静電チャック部2の下面2bには、溝部25が設けられている。溝部25には、環状のシール部材であるオーリング50が配置されている。オーリング50は、絶縁碍子40の先端面41aと、溝部25の底面25aとの間に挟み込まれている。
【0056】
第2の貫通孔132の内周面132aには、接着剤149により絶縁碍子40が固定されている。第2の貫通孔132の静電チャック部2側(上側)の開口には、ザグリ穴133が設けられている。ザグリ穴133は、第2の貫通孔132より大径であり同心の円形状である。ザグリ穴133の内周面133aには、絶縁リング145が固定されている。
【0057】
絶縁リング145は、環状に形成された絶縁部材からなる。絶縁リング145は、絶縁碍子40と同材料(例えばセラミックス)からなっていても異なる材料(例えば樹脂材料)から構成されていてもよい。絶縁リング145の外径は、ザグリ穴133の内径より若干小さい。絶縁リング145の外周面145bとザグリ穴133の内周面133aとの間には、接着剤149が介在しこれらを互いに接着固定している。
【0058】
絶縁リング145の内径は、第2の貫通孔132の内径より若干小さく、絶縁碍子40の外径と略同一である。絶縁リング145の内周面145aは、絶縁碍子40の外周面40bと接触する。絶縁リング145は、絶縁碍子40の第1の端部41を径方向外側から囲む。
【0059】
本実施形態の静電チャック装置101によれば、絶縁碍子40と絶縁リング145とからなる2重の絶縁構造を有する。これにより、静電チャック装置101の耐電圧を高めることができる。
【0060】
第2実施形態の静電チャック装置101は、第1実施形態と同様に、ヒータエレメント9を有していてもよい。一般的に、静電チャック部2は、貫通孔130の近傍でベース部103からの冷却が行われないため温度が高くなりやすい。本実施形態の静電チャック装置101によれば、貫通孔130の内面が2重構造の絶縁碍子40および絶縁リング145により断熱状態で保護されている。これにより、貫通孔130の近傍でヒータエレメント9による発熱の影響を受け難くなり、貫通孔130の近傍の温度上昇を抑制し、静電チャック部2を均熱化することができる。
なお、静電チャック装置101において、材質および寸法に依存する絶縁リング145の熱伝導性は、ヒータエレメント9の有無およびその発熱性能に応じて設定することが好ましい。静電チャック装置101がヒータエレメント9を有する場合、絶縁リング145の熱伝導性を小さくすることが好ましい。これにより、絶縁リングの断熱性能を高めることができ、静電チャック部2の均熱化を促進できる。一方で、静電チャック装置101がヒータエレメント9を有しない場合、絶縁リング145の熱伝導性を大きくすることが好ましい。これにより、他の領域と比較して冷却が不十分となりやすい貫通孔130の近傍から効率的に熱を逃がすことが可能となり、静電チャック部2の均熱化を促進できる。
【0061】
<第3実施形態>
図5は、第3実施形態の静電チャック装置201の断面拡大図である。第3実施形態の静電チャック装置201は、第2実施形態と比較して、絶縁碍子240の固定方法が主に異なる。なお、上述の実施形態と同一態様の構成要素については、同一符号を付し、その説明を省略する。
【0062】
静電チャック装置201は、静電チャック部2とベース部203と接着層4とを備える。また、静電チャック装置201において、静電チャック部2、ベース部203および接着層4には、これらを上下に貫通する複数の貫通孔230が設けられている。貫通孔230は、冷却ガス導入又はリフトピンの挿通に用いられる。貫通孔230は、静電チャック部2を貫通する部分である第1の貫通孔31と、ベース部203を貫通する部分である第2の貫通孔232と、を有する。
【0063】
第1および第2実施形態と同様に、静電チャック部2の下面2bには、溝部25が設けられている。溝部25には、環状のシール部材であるオーリング50が配置されている。
【0064】
第2の貫通孔232の内周面232aには、絶縁碍子240が挿入されている。第2の貫通孔232の静電チャック部2側(上側)の開口には、第2実施形態と同様に、ザグリ穴233が設けられて、ザグリ穴233の内周面233aには、絶縁リング145が固定されている。また、第2の貫通孔232の静電チャック部2と反対側(下側)の開口には、下側ザグリ穴234が設けられている。下側ザグリ穴234には、下側を向く固定面234aが設けられている。固定面234aには、絶縁碍子240を固定するネジ246が挿入されるネジ孔234bが形成されている。
【0065】
絶縁碍子240は、静電チャック部2側に位置する第1の端部241とその反対側に位置する第2の端部242とを有する。絶縁碍子240の第1の端部241に位置する先端面241aは、溝部25の底面25aとの間でオーリング50を挟み込む。
【0066】
絶縁碍子240の第2の端部242には、径方向外側に延びるフランジ部242aが設けられている。フランジ部242aには、上下方向に貫通する貫通孔242bが形成されている。フランジ部242aは、下側ザグリ穴234内に収容される。作業者は、ネジ246をフランジ部242aの貫通孔242bに挿通するとともに、ベース部203のネジ孔234bに締結することで、絶縁碍子240をベース部203に固定できる。フランジ部242aとネジ246とは、絶縁碍子240の固定部248を構成する。すなわち、絶縁碍子240は、固定部248により着脱可能にベース部203に固定されている。
【0067】
本実施形態の静電チャック装置201によれば、絶縁碍子240が、ベース部203に機械的に固定され着脱可能である。これにより、絶縁碍子240の第1の端部241と静電チャック部2との間に挟み込まれたオーリング50を容易に交換することができる。オーリング50は、絶縁碍子240と静電チャック部2との間をシールしてプラズマの侵入を防ぐためプラズマにより侵食されやすい。オーリング50を交換可能に構成することで、静電チャック装置201の使用寿命を更に長くすることができる。
なお、本実施形態において絶縁碍子240は、フランジ部242aにおいてベース部203にネジ246によって固定されている。しかしながら、絶縁碍子240の固定方法は、これに限られない。例えばフランジ部242aの外周面にオネジを形成し、ベース部203の下側ザグリ穴234の内周面にメネジを形成し、これらを螺合することで絶縁碍子240を固定してもよい。この場合、フランジ部242aと絶縁碍子240とは、別体としてもよい。
【0068】
以上に、本発明の様々な実施形態を説明したが、各実施形態における各構成およびそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨から逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換およびその他の変更が可能である。また、本発明は実施形態によって限定されることはない。
例えば、上述した実施形態で、静電チャック装置は、静電チャック部とベース部の間の接着層4に埋め込まれたヒータエレメント9を備えた例を説明した。しかしながら、ヒータエレメントは、静電チャック部の内部又はベース部の内部に位置していてもよい。