特許第6604369号(P6604369)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ DIC株式会社の特許一覧

特許6604369フレキシブルプリント配線板補強用硬化性接着シート、補強部付フレキシブルプリント配線板、その製造方法及び電子機器
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6604369
(24)【登録日】2019年10月25日
(45)【発行日】2019年11月13日
(54)【発明の名称】フレキシブルプリント配線板補強用硬化性接着シート、補強部付フレキシブルプリント配線板、その製造方法及び電子機器
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/00 20180101AFI20191031BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20191031BHJP
   H05K 1/02 20060101ALI20191031BHJP
   C09J 163/00 20060101ALI20191031BHJP
   C09J 201/00 20060101ALI20191031BHJP
   B05C 1/08 20060101ALN20191031BHJP
【FI】
   C09J7/00
   B32B27/00 M
   H05K1/02 D
   C09J163/00
   C09J201/00
   !B05C1/08
【請求項の数】7
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2017-195105(P2017-195105)
(22)【出願日】2017年10月5日
(65)【公開番号】特開2019-65243(P2019-65243A)
(43)【公開日】2019年4月25日
【審査請求日】2019年5月27日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177471
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 眞治
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【弁理士】
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 孝幸
(72)【発明者】
【氏名】谷井 翔太
(72)【発明者】
【氏名】下岡 澄生
(72)【発明者】
【氏名】森野 彰規
【審査官】 井上 能宏
(56)【参考文献】
【文献】 特開2017−183376(JP,A)
【文献】 特開2017−112360(JP,A)
【文献】 特開2014−112708(JP,A)
【文献】 特開2016−203475(JP,A)
【文献】 特開2007−116130(JP,A)
【文献】 国際公開第2017/104479(WO,A1)
【文献】 国際公開第2010/038644(WO,A1)
【文献】 国際公開第2007/122708(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00−201/10
B32B 27/00− 27/42
H05K 1/00− 1/18
B05C 1/00− 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレキシブルプリント配線板の補強に使用する硬化性接着シートであり、該硬化性接着シートは少なくとも一方の面に剥離ライナーを有し、該剥離ライナーの融点が260℃以上であり、
前記硬化性接着シートの25℃における引っ張り弾性率(x1)が50〜2,500MPaの範囲であり、かつ、その硬化物の25℃における引っ張り弾性率(x2)が2,500MPa以上である硬化性接着シート。
【請求項2】
前記硬化性接着シートの硬化物が、前記硬化性接着シートを120℃以上に加熱した熱硬化物である請求項1に記載の硬化性接着シート。
【請求項3】
前記硬化性接着シートが、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する化合物を含有し、23℃で液状のエポキシ当量100〜350g/eq.であるエポキシ樹脂(a1)、及び、23℃で固体のエポキシ当量200〜2,000g/eq.であるエポキシ樹脂(a2)を含有するものである請求項1または2に記載の硬化性接着シート。
【請求項4】
前記離型ライナーの厚みが10〜130μmである請求項1〜のいずれか1項に記載の硬化性接着シート。
【請求項5】
前記硬化性接着シートの熱硬化物の厚さが50〜350μmの範囲を有する請求項1〜のいずれか1項に記載の硬化性接着シート。
【請求項6】
フレキシブルプリント配線板と請求項1〜のいずれか1項に記載の硬化性接着シートの熱硬化物からなる補強部を有する補強部付フレキシブルプリント配線板。
【請求項7】
請求項に記載の補強部付フレキシブルプリント配線板の前記補強部の表面に、直接または他の層を介して、クッション材が積層された構成を有する電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレキシブルプリント配線板に実装された部品の脱落等を防止するために設けられる補強部の形成に使用可能な硬化性接着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電子端末等の小型化及び薄型化に伴って、それらに搭載される配線板としては、薄型で屈曲可能なフレキシブルプリント配線板が広く使用されている。
前記フレキシブルプリント配線板としては、一般に、ポリイミドフィルム等の表面に銅等によって形成されたグラウンド回路と、前記回路の一部にコネクター等の部品が実装された構成を有するものが知られている。
前記フレキシブルプリント配線板には、通常、前記部品を実装する際の接続不良を防止し、かつ、経時的な部品の脱落を防止することを目的として、前記実装面に対する裏面に、ステンレス板等の比較的厚膜の補強板が、接着シート等によって貼付されていることが多い(例えば特許文献1参照。)。
【0003】
しかし、前記補強板を設けると、どうしてもフレキシブルプリント配線板及びそれを搭載した電子機器が厚膜化するため、産業界が求める電子機器等の薄型化に貢献できない場合があった。
また、前記フレキシブルプリント配線板と前記補強板とを、接着シートを用いて貼り合せる場合、前記補強板及び接着テープをあらかじめ貼り合せる工程と、それをフレキシブルプリント配線板に貼付する工程の2工程が必要となる。そのため、産業界では、補強板付きフレキシブルプリント配線板及び電子機器等の生産効率を向上させ、コスト低減を図るうえ、前記工程の短縮化が大きな課題となっていた。
【0004】
前記薄型化を実現するため、前記補強板を使用せずに前記接着シートのみで十分な補強強度を有する接着シートが知られている(特許文献2)。しかし、前記接着シートを用いた場合、硬化する際の収縮によって、フレキシブルプリント配線板の反りを引き起こす場合があり、実装部品の脱落が生じるという問題があった。
【0005】
前記の反りを抑制するため、不織布や金属箔膜等の基材を用い、その片面側に硬化性接着剤層を有する硬化性接着シートが知られている(例えば特許文献3、4参照)。
しかし、前記硬化性接着シートでは、基材及び硬化性接着剤層をあらかじめ貼り合せる工程と、それをフレキシブルプリント配線板に貼付する工程の2工程が必要となる。それゆえ、生産効率の向上に必要な工程の短縮化が達成されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開2014/132951パンフレット
【特許文献2】特開2017−112360
【特許文献3】特開2017−123455
【特許文献4】特開2017−118102
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、電子機器等の厚膜化の要因とされる補強板を使用せずとも、実装部品の脱落等を防止可能なレベルに補強され、更にフレキシブルプリント配線板の反りを引き起こしにくく、生産効率を飛躍的に向上させることのできる硬化性接着シートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、フレキシブルプリント配線板の補強に使用する硬化性接着シートであって、該硬化性接着シートは少なくとも一方の面に剥離ライナーを有し、該剥離ライナーの融点が260℃以上であることを特徴とする硬化性接着シートによって上記課題を解決した。
【発明の効果】
【0009】
本発明の硬化性接着シートは、電子機器の厚膜化の要因とされる金属補強板を使用せずとも実装部品の脱落等を防止可能なレベルに補強され、反りを引き起こしにくいことから、もっぱら補強板付きフレキシブルプリント配線板及び電子機器等の薄型化に大きく貢献することができる。
【0010】
また、本発明の硬化性接着シートは、フレキシブルプリント配線板を補強する際に補強板を必須としないことから、前記した2工程を経る必要がないため、補強板付きフレキシブルプリント配線板及び電子機器等の生産効率を飛躍的に向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の硬化性接着シートは、フレキシブルプリント配線板の補強に使用する硬化性接着シートであり、該硬化性接着シートは少なくとも一方の面に剥離ライナーを有し、該剥離ライナーの融点が260℃以上であることを特徴とするものである。
【0012】
本発明では、融点が260℃以上の剥離ライナーを有した硬化性接着シートを用いることによって、前記硬化性接着シートが硬化し、補強部を形成する際の硬化収縮に起因した反りを抑制した補強部付フレキシブルプリント配線板を得ることができる。
【0013】
前記補強部としては、硬化性接着シートの硬化物のうち、その25℃における引っ張り弾性率(x3)が2500MPa以上であるものを使用するのが好ましい。これにより、フレキシブルプリント配線板を強固に補強することができる。
前記補強部としては、その25℃における引っ張り弾性率(x3)が4,000〜20,000MPaであるものを使用することが、フレキシブルプリント配線板をより一層強固に補強するうえで好ましい。
前記補強部は、例えば前記硬化性接着シートを熱硬化させることによって得ることができ、好ましくは120℃以上、より好ましくは120〜200℃の温度条件で、5分〜120分間加熱し硬化させることによって得ることができる。
【0014】
前記硬化性接着シートとしては、その硬化前の状態において、25℃における引っ張り弾性率(x1)が50〜2,500MPaの範囲であるものを使用することが好ましく、100〜1,000MPaの範囲であるものを使用することが、打ち抜き加工法によって精度よく任意の形状に成形しやすいため、フレキシブルプリント配線板の補強が必要な箇所の形状に応じた任意の形状に加工しやすく、また、前記箇所の表面形状に追従しやすいため密着性に優れ、前記箇所をより効果的に補強することが可能で、後述するとおりシートを加工しやすく、かつ、それをロールに巻き取った際に割れ等を引き起こしにくいためより好ましい。
【0015】
一方、前記硬化性接着シートとしては、より一層優れた補強性能を有する補強部を形成することが求められる場合、その25℃における引っ張り弾性率(x1)が1,000MPaを超え2,500MPa以下の範囲であるものを使用することが好ましい。
また、前記硬化性接着シートとしては、前記範囲の引っ張り弾性率(x1)を有するとともに、その硬化物の25℃における引っ張り弾性率(x2)が2500MPa以上であるものを使用することが、従来のように補強板を使用しない場合であってもフレキシブルプリント配線板をより効果的に支持及び補強可能なレベルの剛性を実現することができるため好ましい。
【0016】
前記硬化性接着シートとしては、その硬化後の25℃における引っ張り弾性率(x2)が4,000MPa以上の範囲であるものを使用することが、フレキシブルプリント配線板の実用上十分なレベルの補強と、補強部付フレキシブルプリント配線板の薄型化とを両立するうえでより好ましい。また、前記引っ張り弾性率(x2)の上限は、特に制限はないが、10,000MPa以下であることが好ましく、7,000MPa以下であることがより好ましい。なお、前記引っ張り弾性率(x2)は、前記硬化性接着シートを165℃で60分加熱して得られた硬化物の25℃における引っ張り弾性率を指す。
【0017】
前記硬化性接着シートとしては、後述する硬化性樹脂等を含有する組成物を使用することができる。
【0018】
前記硬化性接着シートとしては、厚さが50〜350μmの範囲のものを使用することが好ましく、100〜350μmのものを使用することが、硬化後の反りをより効果的に抑制でき、取り扱いしやすく、かつ、電子機器等の厚膜化の要因とされる補強板を使用せずとも、実装部品の脱落等を防止可能なレベルにまでフレキシブルプリント配線板を強固に補強可能なレベルの剛性を発現できるためより好ましい。
【0019】
前記硬化性接着シートは、およそ100℃以上の温度に加熱された場合に溶融し、2以上の被着体を接着(接合)可能なものであることが好ましい。
本発明の硬化性接着シートとしては、硬化性樹脂と、必要に応じてフィラー等とを含有する組成物、または、それが任意の形状に成形されたものを使用することができる。
【0020】
前記硬化性樹脂としては、例えばウレタン樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂等を使用することができる。なかでも、前記硬化性樹脂としては、従来の補強板を使用せず、かつ、補強部が薄型であってもフレキシブルプリント配線板をより強固に補強可能なレベルの剛性を備え、かつ、前記グラウンド配線の表面及びフレキシブルプリント配線板表面のポリイミドに対して優れた接着力と、硬化後の反りの抑制とを両立するうえで、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂を使用することが好ましく、エポキシ樹脂を使用することがより好ましい。
【0021】
前記エポキシ樹脂は、前記硬化性樹脂の全量に対して80質量%以上の範囲で使用することが好ましく、90質量%以上の範囲で使用することが、硬化に伴う収縮を抑制でき、その結果、硬化後の反りをより効果的に抑制するうえでより好ましい。
【0022】
前記エポキシ樹脂としては、1分子中に2個以上エポキシ基を有する化合物を使用することができる。具体的には、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、テトラメチルビフェニル型エポキシ樹脂、ポリヒドロキシナフタレン型エポキシ樹脂、イソシアネート変性エポキシ樹脂、10−(2,5−ジヒドロキシフェニル)−9,10−ジヒドロ 9−オキサ−10−フォスファフェナントレン−10−オキサイド変性エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン−フェノール付加反応型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトール−フェノール共縮ノボラック型エポキシ樹脂、ナフトール−クレゾール共縮ノボラック型エポキシ樹脂、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂変性フェノール樹脂型エポキシ樹脂、ビフェニル変性ノボラック型エポキシ樹脂、エポキシ基を有するアクリル樹脂、エポキシ基を有するウレタン樹脂等を使用することができる。
【0023】
なかでも、前記エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ポリヒドロキシナフタレン型エポキシ樹脂、イソシアネート変性エポキシ樹脂、10−(2,5−ジヒドロキシフェニル)−9,10−ジヒドロ 9−オキサ−10−フォスファフェナントレン−10−オキサイド変性エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン−フェノール付加反応型エポキシ樹脂を使用することが、前記所定の引っ張り弾性率(x1)及び(x2)を備えた硬化性接着シートを得ることができ、その結果、電子機器等の厚膜化の要因とされる補強板を使用せずとも、実装部品の脱落等を防止可能なレベルにまでフレキシブルプリント配線板を補強可能な補強部を形成でき、補強板付きフレキシブルプリント配線板及び電子機器等の生産効率を飛躍的に向上させることができ、かつ、フレキシブルプリント配線板に対して優れた段差追従性を有する補強部を形成するうえで好ましい。
【0024】
前記エポキシ樹脂としては、23℃で液状のエポキシ当量100〜350g/eq.であるエポキシ樹脂(a1)、及び、23℃で固体のエポキシ当量200〜2,000g/eq.であるエポキシ樹脂(a2)を含有するものを使用することが好ましい。前記エポキシ樹脂(a1)としては、そのエポキシ当量が120〜1500g/eq.の範囲であるものを使用することがより好ましく、エポキシ当量が150〜1000g/eq.の範囲であるものを使用することが特に好ましい。また、前記エポキシ樹脂(a2)としては、そのエポキシ当量が250〜1,500g/eq.の範囲であるものを使用することがより好ましく、エポキシ当量が300〜1,000g/eq.の範囲であるものを使用することが特に好ましい。これにより硬化性接着シートの硬化前の状態で必要な可とう性を向上し、かつ硬化物(補強部)の反りを効果的に抑制できるため好ましい。
【0025】
前記エポキシ樹脂としては、その総エポキシ当量が300g/eq.〜2,000g/eq.の範囲であるものを使用することが好ましく、350g/eq.〜1,500g/eq.の範囲であることがより好ましく、400g/eq.〜1,200g/eq.の範囲であることが、硬化性接着シートの硬化物(補強部)の反りを効果的に抑制できるため特に好ましい。
【0026】
ところで、前記フレキシブルプリント配線板は帯電すると、誤動作を引き起こす可能性がある。そのため、フレキシブルプリント配線板表面に積層されたカバーレイフィルムに1mm程度の開口部を設け、グランド回路と補強板を、導電性接着シートを用いて電気的に導通させ、更にその補強板付フレキシブルプリント配線板を構成するグラウンド配線に、導電性スポンジ等のクッション材を介して金属パネルを電気的に接続させることが多い。
【0027】
その場合、前記硬化性接着シートとしては、その体積抵抗値が0.1〜50mΩ・cmの範囲のものを使用することが好ましく、0.1〜20mΩ・cmの範囲であるものを使用することが、補強部付フレキシブルプリント配線板を電子機器へ搭載する際、その補強板付フレキシブルプリント配線板を構成するグラウンド配線に、導電性スポンジ等のクッション材を介して金属パネルを電気的に接続させることができ、その結果、電子機器から発せられるノイズを効果的に抑制できるためより好ましい。
【0028】
また、前記硬化性接着シートの硬化物の体積抵抗値は、前記硬化前のそれと同一または異なる値であってよいが、硬化物の体積抵抗値もまた上記好ましい範囲内であることが、補強部付フレキシブルプリント配線板を電子機器へ搭載する際に、その補強板付フレキシブルプリント配線板を構成するグラウンド配線に、導電性スポンジ等のクッション材を介して金属パネルを電気的に接続させることができ、その結果、電子機器から発せられるノイズを効果的に抑制できるためより好ましい。
なお、前記体積抵抗値は、抵抗率計Loresta−GP MCP−T600(三菱化学株式会社製)によって測定した値を指す。
【0029】
本発明の硬化性接着シートとしては、前記硬化性樹脂の他に必要に応じてその他の成分を含有するものを使用することができる。
また、前記硬化性接着シートとしては、前記硬化性樹脂と反応しうる硬化剤を含有するものを使用することが好ましい。
前記硬化剤としては、例えば前記硬化性樹脂としてエポキシ樹脂を使用する場合であれば、そのエポキシ基と反応しうる官能基を有するものを使用することが好ましい。
また、前記硬化剤としては、良好な硬化反応を得るため、加熱により硬化反応が進行するものを用いることが好ましい。これにより、高い剛性を有した補強部を形成することができる。
【0030】
前記硬化性接着シートを120℃以上に加熱し硬化させることによって補強部を形成する工程を経ることによって製造することができる。低温下での硬化反応が抑制されるため、硬化前の硬化性接着シートの常温下における保存安定性をより一層向上させることができる。
【0031】
前記硬化剤としては、アミン系化合物、アミド系化合物、酸無水物系化合物、フェノール系化合物などが挙げられる。例えば、アミン系化合物としてはジアミノジフェニルメタン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ジアミノジフェニルスルホン、イソホロンジアミン、イミダゾール誘導体、BF3−アミン錯体、グアニジン誘導体等を使用することができる。
【0032】
前記アミド系化合物としては、例えばジシアンジアミド、リノレン酸の2量体とエチレンジアミンとより合成されるポリアミド樹脂等が挙げられ、前記酸無水物系化合物としては、例えば無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸等が挙げられ、前記フェノール系化合物としては、例えばフェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂変性フェノール樹脂、ジシクロペンタジエンフェノール付加型樹脂、フェノールアラルキル樹脂(ザイロック樹脂)、ナフトールアラルキル樹脂、トリメチロールメタン樹脂、テトラフェニロールエタン樹脂、ナフトールノボラック樹脂、ナフトール−フェノール共縮ノボラック樹脂、ナフトール−クレゾール共縮ノボラック樹脂、ビフェニル変性フェノール樹脂(ビスメチレン基でフェノール核が連結された多価フェノール化合物)、ビフェニル変性ナフトール樹脂(ビスメチレン基でフェノール核が連結された多価ナフトール化合物)、アミノトリアジン変性フェノール樹脂(フェノール骨格、トリアジン環及び1級アミノ基を分子構造中に有する化合物)やアルコキシ基含有芳香環変性ノボラック樹脂(ホルムアルデヒドでフェノール核及びアルコキシ基含有芳香環が連結された多価フェノール化合物)等の多価フェノール化合物が挙げられる。
【0033】
前記硬化剤としては、前記エポキシ樹脂等の硬化性樹脂の合計100質量部に対し、1質量部〜60質量部の範囲で使用することが好ましく、5質量部〜30質量部の範囲で使用することが好ましい。
【0034】
また、前記硬化性接着シートとしては、硬化促進剤を含有するものを使用することができる。前記硬化促進剤としては、リン系化合物、アミン化合物、イミダゾール誘導体等を使用することができる。前記硬化促進剤を使用する場合の使用量は、前記エポキシ樹脂等の硬化性樹脂の合計100質量部に対し、0.1質量部〜5質量部であることが好ましく、0.5質量部〜3質量部の範囲であることがより好ましい。
【0035】
前記硬化剤及び硬化促進剤としては、粉体状のものを用いることが好ましい。前記粉体状の硬化促進剤は、液状の硬化促進剤と比較して低温下での硬化反応が抑制されるため、硬化前の硬化性接着シートの常温下における保存安定性をより一層向上させることができる。
また、前記硬化性接着シートとしては、その硬化物によって構成される前記補強部が、温度変化の大きい環境下で使用された場合であっても、補強部の欠損等を引き起こしにくい靭性を確保するうえで、熱可塑性樹脂を含有するものを使用することができる。
【0036】
前記熱可塑性樹脂としては、例えば熱可塑性ポリエステル樹脂、熱可塑性ウレタン樹脂等を使用することができ、なかでも、熱可塑性ポリエステル樹脂を使用することが好ましく、ポリエーテルエステルアミド樹脂、ポリビニルアセトアセタール樹脂を使用することが、前記したレベルの良好な脆性と、フレキシブルプリント配線板を十分に補強可能なレベルの剛性とを両立した補強部を形成可能な硬化性接着シートを得るうえで好ましい。
前記熱可塑性樹脂は、上記理由から、前記硬化性樹脂100質量部に対して5質量部〜100質量部の範囲で使用することが好ましい。
【0037】
前記硬化性接着シートとしては、前記したとおり予めシート状等の任意の形状に成形されたものを使用する。前記硬化性樹脂等を含有する組成物を前記シート状等に成形する際の作業効率を向上させるうえで、前記組成物としては硬化性樹脂や導電性フィラーや硬化剤等の他に溶媒を含有するものを使用することが好ましい。
【0038】
前記溶媒としては、例えば酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤;アセトン、メチルケチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶剤等を使用することができる。
【0039】
また、前記硬化性接着シートとしては、前記硬化性樹脂とフィラーとを含有するものを使用することが、優れた補強部を形成できるため好ましい。特に、補強部付フレキシブルプリント配線板を電子機器へ搭載する際、その補強板付フレキシブルプリント配線板を構成するグラウンド配線に、導電性スポンジ等のクッション材を介して金属パネルを電気的に接続させる場合は、導電性フィラーを使用することが好ましい。
【0040】
前記導電性フィラーとしては、従来知られた導電性物質を使用することができ、例えば金、銀、銅、ニッケル、ステンレス、アルミニウム等の金属の粒子状物、カーボン、グラファイト等の導電性樹脂の粒子状物、樹脂や中実ガラスビーズや中空ガラスビーズ等の表面が金属被覆された粒子状物等を使用することができる。
前記導電性フィラーとしては、前記したなかでもニッケルや銅の粒子状物を使用することが好ましく、特にカーボニル法で製造したニッケル粉、電解法で製造した銅粉を使用することが、より一層優れた導電性を備えた補強部を形成するうえで好ましい。
具体的には、前記導電性フィラーとしては、カーボニル法で製造されたニッケル粉NI255、NI287(インコリミテッド社製)、電解法で製造した銅粉FCC−115(福田金属箔粉工業(株)製)等を好適に使用することができる。
【0041】
また、前記導電性フィラーとしては、熱の影響で導電性フィラーの表面に酸化皮膜が形成されることによって前記導電性が低下することを効果的に抑制でき、かつ、硬化性接着シートの生産コストを低減するうえで、ステンレスの粒子状物と、前記ニッケルまたは銅の粒子状物とを組み合わせ使用することがより好ましく、ステンレスの粒子状物と、前記ニッケル粒子状物とを組み合わせ使用することが特に好ましい。
【0042】
前記導電性フィラーとしては、その50%平均体積粒子径が0.1〜200μmであるものを使用することが好ましく、1〜100μmであるものを使用することがより好ましく、10〜50μmであるものを使用することがさらに好ましく、10〜30μmであるものを使用することが、硬化性接着シート中における導電性フィラーの良好な分散性と、塗工のしやすさとを両立するうえで特に好ましい。なお、前記導電性フィラーの50%体積粒子径は、株式会社島津製作所製レーザー回折式粒度分布測定器SALD−3000を用い、分散媒にイソプロパノールを使用して測定された値である。
【0043】
また、前記導電性フィラーとしては、後述する硬化性接着シートの製造工程において、導電性フィラーが沈降しにくく、数時間にわたり比較的均一な分散状態を維持できるため、1.5g/cm以下の見かけ密度を有するものを使用することが好ましく、0.1g/cm以上1.0g/cm以下の見かけ密度を有するものを使用することがより好ましい。なお、前記導電性フィラーの見かけ密度は、JISZ2504−2000「金属粉の見かけ密度の測定方法」に準じて測定された値である。
【0044】
また、前記導電性フィラーとしては、前記硬化性接着シート中における分散性をより一層向上でき、優れた導電性の点でばらつきが少ない補強部を得るうえで、チタネートカップリング剤やアルミネートカップリング剤等によって表面処理された導電性フィラーを使用しても良い。
【0045】
前記導電性フィラーは、前記硬化性樹脂(固形分)100質量部に対して50〜1,000質量部の範囲で使用することが好ましく、100〜500質量部の範囲で使用することが、密着性と優れた導電性とを備えた補強部を形成可能な硬化性接着シートを得るうえでより好ましい。
また、前記硬化性接着シートとしては、前記導電フィラー以外にも、その他の成分を含有するものを使用することができる。前記その他の成分としては、例えば水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、マイカ、タルク、窒化ホウ素、ガラスフレーク等の電気絶縁性フィラー等を使用することができる。
【0046】
また、前記硬化性接着シートとしては、前記したものの他に、本発明の効果を損なわない範囲で、例えば充填剤、軟化剤、安定剤、接着促進剤、レベリング剤、消泡剤、可塑剤、粘着付与樹脂、繊維類、酸化防止剤、紫外線吸収剤、加水分解防止剤、増粘剤、顔料等の着色剤、充填剤などの添加剤を含有するものを使用することができる。
【0047】
本発明の硬化性接着シートは、前記硬化性樹脂と、前記導電性フィラーや硬化剤や溶媒等の任意の成分とを混合することによって製造することができる。
前記した成分を混合し硬化性接着シートを製造する際には、必要に応じてディゾルバー、バタフライミキサー、BDM2軸ミキサー、プラネタリーミキサー等を使用することができ、ディゾルバー、バタフライミキサーを使用することが好ましく、前記導電性フィラーを使用する場合には、それらの分散性を向上させるうえでプラネタリーミキサーを使用することが好ましい。
なお、前記硬化剤及び硬化促進剤は、硬化性接着シートを硬化させる前、または、シート状等に成形する前に、使用することが好ましい。
【0048】
また、シート状の硬化性接着シートは、例えば前記硬化性樹脂と、前記導電性フィラーや硬化剤や溶媒等の任意の成分とを含有する組成物を製造した後、例えば剥離ライナーの表面に塗工し乾燥等させることによって製造することができる。
前記乾燥は、好ましくは40℃〜120℃、より好ましくは50℃〜90℃程度の温度で行うことが、硬化性接着シートの硬化反応を進行させることを抑制するうえで好適である。
【0049】
本発明の硬化性接着シートは、少なくとも一方の面に剥離ライナーを有する。
本発明で用いる剥離ライナーは、基材の少なくとも一方の面に離型層を有したものを使用でき、また基材自身が離型層として機能するものを使用することができる。
また、前記剥離ライナーとしては、融点が260℃以上であるが、280℃以上であることがより好ましく、300℃以上であることがさらに好ましく、350℃以上であることが、加熱された際の寸法安定性に優れた基材とすることができ、前記硬化性接着シートが硬化し補強部を形成する際の硬化収縮に起因した反りを好適に抑制できるため最も好ましい。
【0050】
前記剥離ライナーの融点とは、前記基材の重量約10mgを測定用のアルミニウム製パンに封入し、示差走査熱量計(株式会社日立ハイテクサイエンス社製 DSC7020)を用いて20℃から10℃/分の速度で昇温した際の、前記基材の融解による吸熱ピークが観測された温度のことを表す。
【0051】
本発明の剥離ライナーに用いられる基材としては、クラフト紙、グラシン紙、上質紙等の紙;フッ素樹脂、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルサルフォン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリイミド等の樹脂フィルム;前記紙と樹脂フィルムとを積層したラミネート紙、前記紙にクレーやポリビニルアルコールなどで目止め処理を施したものを用いることができる。
【0052】
前記基材としては、厚みが10〜150μmであることが好ましく、25〜130μmであることがより好ましく、50〜100μmであることが加熱された際の寸法安定性に優れた離型性を有する基材とすることができ、前記硬化性接着シートが硬化し補強部を形成する際の硬化収縮に起因した反りを好適に抑制できるため最も好ましい。
【0053】
また、前記離型層としては、前記硬化性接着シートから剥離する際の剥離力が、0.05N/25mm〜4.00N/25mmであることが好ましく、0.10N/25mm〜3.00N/25mmであることがより好ましく、0.10N/25mm〜2.00N/25mmであることが最も好ましい。前記範囲に剥離力の範囲があることで、前記硬化性接着シートが硬化し補強部を形成する際の硬化収縮に起因した反りが生じる際に前記基材の剥がれが無く、かつフレキシブルプリント配線板の実装面に部品実装し、実装が完了した後に前記剥離ライナーを剥離する際にフレキシブルプリント配線板の折れジワや割れを生じることなく好適に剥離することできる。
【0054】
なお、前記離型層の剥離力は、前記硬化性接着シートを厚さ25μmのポリイミドフィルムと前記剥離ライナーの間に挟み、熱プレス装置を用いて温度165℃及び圧力2MPaで1時間加熱圧着し、次に260℃で150秒加熱することによって得られた硬化物を25mm幅で100mmの長さに切断し、23℃及び50%RHの環境下で、25μmの厚さ25μmのポリイミドフィルム及び前記硬化物を180°方向へ20m/分の引張速度で重剥離側の離型ライナーから剥離し、剥離抵抗力を測定する。熱プレスの装置には、株式会社井元製作所製加熱プレスIMC−1858−C型を用い、剥離力の測定装置には、テスター産業株式会社製TE−702高速剥離試験機300mタイプを用いる。
【0055】
前記離型層としては、前記剥離力の好ましい範囲にある任意の離型剤を用いることができる。例えば、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、アルキド系樹脂を用いることができる。なかでも、非シリコーン系樹脂およびシリコーン変性のアミノアルキド系樹脂、長鎖アルキル系樹脂、メラミン系樹脂等の離型剤の塗布が、剥離力を調整しやすいため好ましい。
前記離型層を基材の面上に形成する方法としては、例えばコンマコーター、リバースロールコーター、グラビアコーター、ロッドコーター、エアドクターコーター等を用いて、基材の面上に塗布する方法がある。
【0056】
前記離型層の厚さは0.01〜10μmの範囲が好ましく、0.05〜5μmの範囲にあることが好ましい。前記範囲に離型層の厚みの範囲があることで、前記硬化性接着シートが硬化し補強部を形成する際の硬化収縮に起因した反りを好適に抑制し、かつ前記剥離ライナーを剥離する工程において好ましい剥離性を得ることができる。
【0057】
前記硬化性接着シートは、硬化前においては比較的柔軟であるため被着体に対する段差追従性に優れ、かつ、熱硬化後においては、非常に硬くなるため被着体を十分に補強できることから、もっぱらフレキシブルプリント配線板の補強部を形成する材料に使用することができる。
【0058】
従来、フレキシブルプリント配線板の補強部に使用されるステンレス板は、通常、50μmを超える厚さであって、それ自体で前記配線板を補強しようとするものであるため、前記配線板やそれが搭載された電子機器の厚膜化の要因となる。本発明は、前記硬化性接着シートの硬化物が補強機能を有し、前記導電性基材は良好な導電性の保持と反り抑制に寄与するものであるため、従来のステンレス板のような厚膜のものを使用する必要がない。
【0059】
前記フレキシブルプリント配線板への部品の実装は、前記補強部がフレキシブルプリント配線板に積層される前に、あらかじめ行われていてもよいが、それらが積層された後に行われることが、実装工程における前記部品の接続不良を効果的に防止するうえで好ましい。
【0060】
本発明の補強部付フレキシブルプリント配線板の製造方法は、
(工程[1])前記硬化性接着シートの一方の面に剥離ライナーを積層した状態で、フレキシブルプリント配線板の実装面に対する裏面に前記硬化性接着シートを仮貼付する工程、
(工程[2])前記剥離ライナーを前記硬化性接着シートの一方の面に積層した状態で、前記硬化性接着シートを硬化させることによって、その硬化物からなる補強部を形成する工程、
(工程[3])前記剥離ライナーを前記硬化物の一方の面に積層した状態で、フレキシブルプリント配線板の実装面に部品実装し、実装が完了した後に前記剥離ライナーを剥離する工程、
を有する。
【0061】
本発明の補強部付フレキシブルプリント配線板の製造方法では、
(工程[1])前記硬化性接着シートの一方の面に剥離ライナーを積層した状態で、フレキシブルプリント配線板の実装面に対する裏面に前記硬化性接着シートを仮貼付する工程を有する。この工程では、フレキシブルプリント配線板の実装面に対する裏面に前記硬化性接着シートを貼付し、補強部を形成するにあたり、前記硬化性接着シートの貼り付け位置精度を向上するために用いる工程である。
【0062】
本発明の補強部付フレキシブルプリント配線板の製造方法では、
(工程[2])前記剥離ライナーを前記硬化性接着シートの一方の面に積層した状態で、前記硬化性接着シートを硬化させることによって、その硬化物からなる補強部を形成する工程を有する。この工程では、前記工程[1]のフレキシブルプリント配線板の実装面に対する裏面に貼付した前記硬化性接着シートを硬化し、前記部品を実装する際の接続不良を防止し、かつ、経時的な部品の脱落を防止することが可能な補強部を形成するために用いる工程である。
【0063】
本発明の補強部付フレキシブルプリント配線板の製造方法では、
(工程[3])前記剥離ライナーを前記硬化物の一方の面に積層した状態で、フレキシブルプリント配線板の実装面に部品実装し、実装が完了した後に前記剥離ライナーを剥離する工程を有する。この工程では、例えば、260℃の熱で溶かしたはんだを介してコネクター等の部品を前記フレキシブルプリント配線板の実装面に実装するために用いる工程を含む。
【0064】
本発明の補強部付フレキシブルプリント配線板の製造方法は、前記硬化性接着シートの一方の面に剥離ライナーを積層した状態とすることによって、前記硬化性接着シートが硬化し補強部を形成する際の硬化収縮に起因した反りを抑制することができる。また、前記工程[1]、前記工程[2]、前記工程[3]において、前記硬化性接着シートの一方の面に剥離ライナーを積層した状態を維持することにより、前記硬化性接着シートが硬化し補強部を形成する際の硬化収縮に起因した反りを常に抑制することができる。
【0065】
また、本発明では、前記剥離ライナーを前記硬化物の一方の面に積層した状態で、フレキシブルプリント配線板の実装面に部品実装し、実装が完了した後に前記剥離ライナーを剥離する。これにより、本発明の補強部は前期硬化性接着シートのみで構成されるため、補強板付きフレキシブルプリント配線板及び電子機器等を薄型化することができる。
【0066】
また、本発明で用いる離型性を有する基材は、基材の少なくとも一方の面に離型層を有したものを使用でき、また基材自身が離型層として機能するものを使用することができる。
【0067】
基材の少なくとも一方の面に離型層を有する場合は、基材、離型層、硬化性接着シート、フレキシブルプリント配線板は、この順番で配置されるものであり、また基材自身が離型層として機能するもの場合は、基材、離型層、硬化性接着シート、フレキシブルプリント配線板は、この順番で配置されるものである。
【0068】
前記補強部付フレキシブルプリント配線板は、もっぱらスマートフォン等の携帯型電子機器やパソコン等の電子機器に搭載される。その際、前記補強部付フレキシブルプリント配線板を構成する前記導電性基材の表面には、直接または他の層を介して、クッション材が積層された状態で、前記電子機器に搭載されることが好ましい。
前記クッション材との積層は、接着成分等で接着された状態であってもよく、単に接している状態であってもよい。
【0069】
前記クッション材としては、例えばウレタンフォームや、ポリエチレンフォーム、シリコンスポンジ等が挙げられ、導電性ウレタンフォームを使用することが好ましい。
前記クッション材としては、0.1mm〜5.0程度の厚さを有するものを使用することが好ましい。
前記クッション材の積層された構成を備えた電子機器は、ノイズを原因とする誤作動を効果的に抑制する。
【実施例】
【0070】
以下に実施例及び比較例について具体的に説明をする。
(実施例1)
(1)剥離ライナー(A−1)の作製
厚さ50μmのポリイミドフィルム(東レ株式会社製 カプトン200H)の片面に、テスファイン303(日立化成ポリマー株式会社製、ステアリル変性アルキド樹脂とメチル化メラミンとの混合物)100質量部及びp−トルエンスルホン酸3質量部を混合したトルエン溶液(固形分2質量%)を棒状の金属アプリケータを用いて、乾燥後の厚さが0.2μmになるように塗工した。
次に、前記塗工物を150℃の乾燥機に3分間投入し乾燥することによって、離型層を形成し、剥離ライナー(A−1)を得た。剥離ライナー(A−1)の融点は、350℃より高かった。
【0071】
(2)硬化性接着シート(B−1)の作製
830−S(DIC株式会社製、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、エポキシ当量170g/eq.)20質量部、1055(DIC株式会社製、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量475g/eq.)30質量部、JER−1256(三菱化学株式会社製、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量8000g/eq.)のメチルエチルケトン溶液(固形分30質量%)167質量部、2MA−OK−PW(四国化成工業株式会社製、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジンイソシアヌル酸付加物)1質量部を混合した。なお、前記混合物の総エポキシ当量は530g/eqであった。
【0072】
次に、無機充填剤としてNI−255(インコリミテッド社製のニッケル粉、50%平均粒子径:21μm、見かけ密度:0.6g/cm)を、前記硬化性樹脂組成物(X−1)に含まれる硬化性樹脂の固形分100質量部に対し217.3質量部、DAP−316L−HTD(大同特殊鋼株式会社製、ステンレス粉、50%平均粒子径:10.7μm、タップ密度:4.1g/eq.)を硬化性樹脂の固形分100質量部に対し96.8質量部入れ、分散撹拌機を用いて10分間撹拌することによって硬化性樹脂塗料(b−1)を得た。
前記剥離ライナー(A−1)の離型層側に、前記硬化性樹脂組成物(b−1)を、棒状の金属アプリケータを用いて、乾燥後の厚さが140μmになるように塗工した。
次に、前記塗工物を85℃の乾燥機に5分間投入し乾燥することによって、剥離ライナー(A−1)が積層された厚さ140μmの硬化性接着シート(B−1)を得た。
【0073】
(3)フレキシブルプリント配線板の作製
フレキシブルプリント配線板としては、片面が無電解金メッキ処理された圧延銅箔(厚さ36μm)の銅からなる面に、接着テープ(厚さ25μmのポリイミドフィルムの片面に厚さ15μmの接着テープを貼付したもの)を貼付することによって得られる積層体を使用した。尚、実際のフレキシブルプリント配線板は回路が組まれているが、本願では上記構成の積層体にて代用した。
【0074】
(5)補強部付フレキシブルプリント配線板の製造
(工程[1])
前記フレキシブルプリント配線板の銅面(実装面に相当)に対する裏面に、前記硬化性接着シート(B−1)の接着層が露出されている面を重ね、予め120℃に加熱したアイロン(クローバー株式会社製 パッチワークアイロン57−904)を当てて仮貼付し、補強部付フレキシブルプリント配線板(X−1)を得た。
この時、前記剥離ライナー(A−1)は前記硬化性接着シート(B−1)に積層された状態を保持した。
【0075】
(工程[2])
前記工程[1]を経て得た補強部付フレキシブルプリント配線板(X−1)を、2枚の厚さ0.1mmのPTFEフィルム(日東電工株式会社製NITFLON、登録商標)の間に挟んだ後、熱プレス装置を用い2MPaで加圧した状態で、165℃で60分間加熱することによって、補強部付フレキシブルプリント配線板(Y−1)を得た。
この時、前記剥離ライナー(A−1)は前記硬化性接着シート(B−1)に積層された状態を保持した。
【0076】
(工程[3])
部品実装の際に行われるはんだリフロー工程を想定し、その代用として、前記補強部付フレキシブルプリント配線板(1)を260℃で150秒加熱した。その後、前記剥離ライナー(A−1)を前記硬化性接着シート(B−1)から剥離して、補強部付フレキシブルプリント配線板(Z−1)得た。
【0077】
(実施例2)
剥離ライナーの基材として厚さ50μmのポリイミドフィルム(東レ株式会社製 カプトン200H)の代わりに厚さ50μmのポリフェニレンサルファイドフィルム(東レ株式会社製 トレリナ3030)を使用すること以外は、実施例1と同様の方法で、剥離ライナー(A−2)、硬化性接着シート(B−2)及び補強部付フレキシブルプリント配線板(Z−2)を得た。剥離ライナー(A−2)の融点は、280℃であった。
【0078】
(実施例3)
剥離ライナーの基材として厚さ50μmのポリイミドフィルム(東レ株式会社製 カプトン200H)の代わりに厚さ25μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ株式会社製 カプトン100H)を使用すること以外は、実施例1と同様の方法で、剥離ライナー(A−3)、硬化性接着シート(B−3)及び補強部付フレキシブルプリント配線板(Z−3)を得た。剥離ライナー(A−3)の融点は、350℃より高かった。
【0079】
(実施例4)
830−S(DIC株式会社製、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、エポキシ当量170g/eq.)20質量部の代わりに850−S(DIC株式会社製、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量188g/eq.)を10質量部、1055(DIC株式会社製、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量475g/eq.)30質量部の代わりにHP−7200HHH(DIC株式会社製、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、エポキシ当量285g/eq.)のメチルエチルケトン溶液(固形分70質量%)42.9質量部、JER−1256(三菱化学株式会社製、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量8000g/eq.)のメチルエチルケトン溶液(固形分30質量%)の使用量を167質量部から200質量部、2MA−OK−PW(四国化成工業株式会社製、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジンイソシアヌル酸付加物)の使用量を1質量部から2質量部に変更すること以外は実施例1と同様の方法で硬化性樹脂塗料(b−2)を作製した。なお、前記混合物の総エポキシ当量は605g/eqであった。
【0080】
また、前記硬化性樹脂塗料(b−2)を用いること以外は実施例1と同様の方法で、剥離ライナー(A−1)、硬化性接着シート(B−4)及び補強部付フレキシブルプリント配線板(Z−4)を得た。
【0081】
(実施例5)
830−S(DIC株式会社製、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、エポキシ当量170g/eq.)の使用量を20質量部から0質量部に変更し1055(DIC株式会社製、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量475g/eq.)30質量部の代わりに水素添加4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートとポリオキシテトラメチレングリコールとの反応物であるポリウレタン(水素添加MDI/PTMGプレポリマー、イソシアネート基当量310)を71.6質量部使用し、JER−1256(三菱化学株式会社製、ビスフェノールA型エポキシ樹脂)のメチルエチルケトン溶液(固形分30質量%)167質量部の代わりにジクロロジアミノジフェニルメタン(MBOCA)を28.4質量部使用し、かつ2MA−OK−PWの使用量を1質量から0質量部に変更すること以外は実施例1と同様の方法で硬化性樹脂塗料(b−3)を作製した。
【0082】
また、前記硬化性樹脂塗料(b−3)を用いること以外は実施例1と同様の方法で、剥離ライナー(A−1)、硬化性接着シート(B−5)及び補強部付フレキシブルプリント配線板(Z−5)を得た。
【0083】
(比較例1)
剥離ライナーとして厚さ50μmのポリイミドフィルム(東レ株式会社製 カプトン200H)の代わりに厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ株式会社製 ルミラー#50)を使用すること以外は、実施例1と同様の方法で、剥離ライナー(A’−1)、硬化性接着シート(B’−1)及び補強部付フレキシブルプリント配線板(Z’−1)を得た。剥離ライナー(A’−1)の融点は、255℃であった。
【0084】
(比較例2)
剥離ライナーとして厚さ50μmのポリイミドフィルム(東レ株式会社製 カプトン200H)の代わりに厚さ50μmのポリプロピレンフィルム(東レ株式会社製 トレファン2500H)を使用すること以外は、実施例1と同様の方法で、剥離ライナー(A’−2)、硬化性接着シート(B’−2)及び補強部付フレキシブルプリント配線板(Z’−2)を得た。剥離ライナー(A’−2)の融点は、158℃であった。
【0085】
[25℃における引っ張り弾性率(x1)及び引っ張り弾性率(x2)の測定方法]
剥離ライナーを除去して得た前記硬化性接着シートを、幅10mm×長さ100mmの大きさに裁断したものを試験片1とした。
前記試験片1(硬化前)の25℃における引っ張り弾性率を、テンシロン引張り試験機を用いて引張り速度20mm/分の条件の下測定した。
次に、前記試験片1を厚さ0.1mmの2枚のNITFLON(日東電工株式会社製、PTFEフィルム)の間に挟み、熱プレス装置を用い2MPaで加圧した状態で、165℃で60分加熱硬化させることによって試験片2(硬化後)を得た。
前記試験片2(硬化後)の25℃における引っ張り弾性率を、テンシロン引張り試験機を用いて引張り速度20mm/分の条件の下測定した。
【0086】
[生産効率の評価方法]
前記補強部付フレキシブルプリント配線板(Z−1)〜(Z−3)及び(Z’−1)〜(Z’−2)を製造するに際し、補強部材としてアルミニウム箔などの補強板を使用したために、前記強部付フレキシブルプリント配線板の製造方法(工程[1])が2工程(硬化性材料とアルミニウム箔等とを貼付する工程、及び、それをフレキシブルプリント配線板に貼付する工程)を要したものを、生産効率「×」と評価した。また、それを1工程(前記アルミニウム箔等を使用しない硬化性材料をフレキシブルプリント配線板に貼付する工程)のみで製造できたものを、生産効率「○」と評価した。
【0087】
[反りの評価方法]
前記実施例及び比較例で得られた補強部付フレキシブルプリント配線板(Z−1)〜(Z−3)及び(Z’−1)〜(Z’−2)を、水平面に載置した。前記水平面から、前記硬化物の4隅までの高さをそれぞれ測定し、その平均値を反り量を測量し、下記評価基準にしたがって寸法安定性を評価した。
【0088】
◎:補強部付フレキシブルプリント配線板の反り量が、0mm以上1mm未満であった。
○:補強部付フレキシブルプリント配線板の反り量が、1mm以上3mm未満であった。
△:補強部付フレキシブルプリント配線板の反り量が、3mm以上6mm未満であった。
×:補強部付フレキシブルプリント配線板の反り量が、6mm以上であった。
【0089】
[補強性能の評価方法]
剥離ライナーを除去して得た前記硬化性接着シートを2枚の厚さ0.1mmのPTFEフィルム(日東電工株式会社製NITFLON、登録商標)の間に挟んだ後、熱プレス装置で2MPaの圧力を維持しながら、165℃で60分加硬化させた。得られた硬化物を10mm×70mmに裁断したものを試験サンプルとした。前記試験サンプルを70mm隙間の開いた2本の支柱上に置き、次いで試験サンプルの中央に0.4gの重りをのせる前後での試験サンプルの中央部の下方向へのたわみ量を測量し、下記評価基準にしたがって補強性能を評価した。
【0090】
◎:試験サンプルのたわみ量が、0mm以上5mm未満であった。
○:試験サンプルのたわみ量が、5mm以上7mm未満であった。
△:試験サンプルのたわみ量が、7mm以上10mm未満であった。
×:試験サンプルのたわみサンプルの変化量が、10mm以上であった。
【0091】
【表1】
【0092】
【表2】