(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献2に開示の技術により、光学散乱を用いて、生体内の脂質を高精度に測定する道が拓かれ、容易に生体内の脂質濃度を計測できるようになり、代謝異常の検査などへの応用が期待されている。
一方で特許文献2に開示の技術では、生体から放出された検出光のうち、実際に血中を透過した光と透過していない光を区別することができない。そのため、照射部からの光が確実に血中を透過するように、照射部及び検出部の位置合わせが必要であるという課題があった。更に、位置合わせしようとしても、皮膚の色や体質によっては必ずしも血管の位置を皮膚越しに確認できるわけではないため、位置合わせ自体にも困難性が存在した。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、血中を透過した光は散乱に加えて吸光も大きく、光源から同じ位置で測定した場合に、血中を透過した光は血中を透過していない光と比較して著しく強度が減衰していることを見出した。そして、散乱係数を算出する際に、検出光が血中を透過しているか否かを判別し、血中を透過したと判別された光の散乱係数を算出することで、上記問題を解決できることに想到し、本発明を完成させた。
【0007】
すなわち、本発明は以下を要旨とする。
(1)生体内における血液中の脂質を計測する非侵襲型生体脂質計測器であって、
生体外から生体内に向けて所定の光強度で光を照射する照射部と、
照射部からの照射光が生体内での散乱を経て、前記生体から放出される光強度を検出する光強度検出部と、
前記光強度検出部により検出された前記光強度に基づき前記生体内における光の散乱係数を算出する散乱係数算出部と、
前記算出された散乱係数に基づき脂質濃度を算出する脂質濃度算出部と、を有し、
前記散乱係数算出部は、前記光強度検出部により検出された前記光強度が、前記生体内の血中を透過しているか否かを判別し、前記生体内の血中を透過したと判別された光の散乱係数を算出する、
非侵襲型生体脂質計測器。
(2)前記散乱係数算出部は、検出した複数の光強度に対し、予め設定した閾値以下の光強度を有する光を、生体内の血中を透過した光強度であると判別する、(1)に記載の非侵襲型生体脂質計測器。
(3)前記散乱係数算出部は、検出した複数の光強度を比較し、照射部と検出部との距離により規格化した光強度が小さいものを、生体内の血中を透過した光強度であると判別する、(1)に記載の非侵襲型生体脂質計測器。
(4)前記照射部及び/又は前記光強度検出部が複数配置される、(1)から(3)のいずれかに記載の非侵襲型生体脂質計測器。
(5)前記光強度検出部が複数配置されており、かつ、前記複数の光強度検出部において検出される光強度が略同一となるように光量をカットするフィルタを有する、(1)から(4)のいずれかに記載の非侵襲型生体脂質計測器。
(6)前記照射部が照射光を変調可能であり、前記散乱係数算出部は照射光の変調に応じ散乱係数を算出可能である、(1)から(5)のいずれかに記載の非侵襲型生体脂質計測器。
【0008】
また、本発明の別の態様では、以下を要旨とする。
(7)生体内における血液中の脂質を計測する方法であって、
生体外から生体内に向けて所定の光強度で光を照射する照射ステップ、
前記照射ステップでの照射光が生体内での散乱を経て、前記生体から放出される光強度を検出する光強度検出ステップ、
前記光強度検出ステップにより検出された前記光強度に基づき前記生体内における光の散乱係数を算出する散乱係数算出ステップ、及び
前記算出された散乱係数に基づき脂質濃度を算出する脂質濃度算出ステップ、を有し、
前記散乱係数算出ステップは、前記光強度検出ステップにより検出された前記光強度が、前記生体内の血中を透過しているか否かを判別するステップを含み、該ステップにより前記生体内の血中を透過したと判別された光の散乱係数を算出する、
非侵襲型生体脂質を計測する方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、非侵襲型の生体脂質計測器において、厳密な位置合わせを必要とせず、血中を透過した検出光であるか否かを判別できるため、より簡易に且つ正確に生体の脂質計測が可能となる。
また、照射部及び/又は光強度検出部を複数にすることで、検出できる光強度の数(照射部−検出部のライン)が増えることから、散乱係数の算出において直線形変換を用いる場合には、その精度を著しく向上させることができる。
一方で、検出できる光強度の数が増えることから、直線形変換を用いずとも、例えばカーブフィッティングを用いて散乱係数を算出できる。そのため、より複雑な解析ができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施形態の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を超えない限り、これらの内容に限定されず、種々の変更をして実施することができる。また、理解のため、図面の一部を強調したり拡大したりする場合もあるが、あくまでの理解のための拡大・強調である。
【0012】
本実施形態に係る非侵襲型生体脂質計測器の模式図を
図1に示す。非侵襲型生体脂質計測器1は、生体外から生体に向けて光を照射する照射部2と、該照射部からの照射光が生体内での散乱を経て、生体から放出される光強度を検出する光強度検出部3と、この光強度検出部により検出された前記光強度に基づき生体内における光の散乱係数μ
S’を算出する散乱係数算出部41、及び散乱係数算出部41により算出された光の散乱係数μ
S’に基づき生体内における脂質濃度を算出する脂質濃度算出部42、を含む演算部4を有する。
【0013】
照射部2は、
図1に示すように、生体外から生体に向けて、所定の照射位置に光を照射するものであり、光を照射するための光源を有している。前記光源は、その波長範囲が血漿中の水やヘモグロビンなどの物質によって光が大きく吸収される波長範囲以外となるように調整されている。
なお、本発明において血中とは、静脈、動脈にかぎらず、毛細血管をも含む血管中を意味するが、静脈や動脈等、毛細血管以外の比較的太い血管であることが好ましい。
【0014】
また、血漿中の物質により光を吸収する波長範囲とは、主に、血漿中の水やヘモグロビンによる光の吸収が強い範囲を示す。
即ち、光源として用いられる波長範囲は、血漿中の水により光が吸収される波長範囲を考慮して1400nm以下とするのが好ましく、さらに、ヘモグロビンによって光が吸収される波長範囲を考慮して580nm以上1400nm以下とするのがより好ましい。
【0015】
このように、光源として用いられる波長範囲を上記範囲とすることにより、後述する光強度検出部3により検出される光において、血漿中の無機物による光の吸収の影響および血液の細胞成分による光の吸収の影響を抑制することが可能となる。これにより、吸収による光エネルギー損失は小さくなる。
【0016】
また、本実施形態の照射部2は、後述する散乱係数算出部41による散乱係数μ
S’の算出方法に応じて、光の連続的な照射や光のパルス状の照射等の光を照射する時間長さを任意に調整することができ、かつ照射する光の強度または光の位相を任意に変調することができる。
特に、光源と生体との間に距離が存在する場合には、外部からの光を遮光する手段を備えることが好ましいが、このような手段を備えない場合であっても、照射部2を変調可能とすることで、光強度検出部3において、外部からの光と照射部2からの光とを区別して検出することができる。また、そのような場合、前記散乱係数算出部41は、照射光の変調に応じ散乱係数を算出可能であることが必要である。
【0017】
図1においては、照射部2は1つのみ記載されているが、複数存在してもよい。照射部が複数存在することで、光源の光強度や、光照射部と光強度検出部との距離を変化させた複数のデータを取得することが容易となり、散乱係数の算出において直線形変換を用いる場合には、その精度を著しく向上させることが可能となり、一方で、直線形変換を用いずとも、例えばカーブフィッティングを用いて散乱係数を算出できることとなる。
【0018】
光強度検出部3は、光を受光してその光強度を検出するものであり、照射部からの照射光が生体内での散乱を経て、生体から生体外に放出される光を光検出器で受光し、その光強度を検出できるようになっている。また、複数の光強度検出部3を用いる場合は、照射位置を中心として各々異なる距離に設置されてもよく、同一の距離において扇形に設置されてもよい。
図1では、照射位置から所定の間隔で、同一面上でかつ直線状に光強度検出部が順に並べられ得るが、これに限られない。
【0019】
図1では、光を生体に照射する照射位置と、生体から放出される光強度を検出する検出位置との間に所定の距離を設ける。これにより、照射した光が生体表面および表面近傍の散乱体により反射され、直接的に生体から放出される光の影響を抑制できる。また照射光が血液や脂質が存在する深さに達したのち、血中脂質による散乱を経て生体から放出される後方散乱光の、光強度を計測することができる。
一方で、生体から放出された検出光のうち、実際に血中を透過した光と透過していない光を区別しない場合には、正確な生体脂質濃度を取得できない場合がある。
【0020】
なお、複数の検出位置を設ける場合の配列は、照射位置を中心として各々異なる距離に配置されるのであれば直線状に限定されるものではなく、円状、波状、ジグザグ状、扇形状、更には2次元に広げたアレイ状など、適宜選択することができる。また、照射位置から検出位置までの照射検出間距離、検出位置同士の間隔は、一定の間隔に限定されるものではなく、適宜選択されるものである。
【0021】
演算部4のうち、散乱係数算出部41は、光強度検出部3により検出された光強度に基づき生体内における光の散乱係数μ
S’を算出する。そして、演算部4のうち、脂質濃度算出部42では、算出された散乱係数を用い、脂質濃度を算出する。上述のとおり、光強度検出部3により検出された光強度は、血中脂質による光の散乱の影響が含まれており、そのことから散乱係数μ
S’を算出しようとするものである。
散乱係数μ
S’の算出については、特許文献2(国際公開第2014/087825号)に記載の方法をそのまま適用することが可能である。
【0022】
一方で本発明は、生体から放出された検出光のうち、実際に血中を透過した光と透過していない光を区別することができないため検出精度が不十分であるという問題を解決すべく、散乱係数算出部41において、前記光強度検出部3により検出された前記光強度が、前記生体内の血中を透過しているか否かを判別する。判別は、所定のプログラムを備えたコンピュータを用いるなどの方法で、自動的に行うこともできる。
【0023】
検出された光強度が血中を透過しているか否かの判別の方法は、今回本発明者らが見出した知見に基づき行うことができる。即ち、血中を透過した光は散乱に加えて吸光も大きく、光源から同じ位置で測定した場合に、血中を透過した光は血中を透過していない光と比較して著しく強度が減衰している、という知見を利用し、血中における透過光強度の減衰を指標として、検出光の光強度が血中を透過したか否かを判別できる。
【0024】
血中における透過光強度の減衰を指標として血中を透過したか否かを判別する具体例は、例えば、検出した複数の光強度に対し、予め設定した閾値以下の光強度を有する光を、生体内の血中を透過した光強度であると判別する方法である。
予め閾値を設定する方法としては、例えば、光源の光強度及び光源から検出器までの距離を一定とし、複数の照射部−光強度検出部(ラインともいう)で光強度を測定する。ここで、血中を透過した光は、散乱に加えて吸収も大きいことから、光の減衰が生じる。そのため、複数ラインで光強度を測定し、その強度を比較することで、血管の場所を特定することができ、加えて、特定の照射部−光強度検出部の距離における血中を透過した場合の光強度及び血中を透過しない場合の光強度を求めることができる。そして、血中を透過しない場合の光強度を100%とし、70%以下の光強度のものを、血中を透過した光強度であると判断してもよく、50%以下の光強度のものを、血中を透過した光強度であると判断してもよく、40%以下の光強度のものを、血中を透過した光強度であると判断してもよく、30%以下の光強度のものを、血中を透過した光強度であると判断してもよく、20%以下の光強度のものを、血中を透過した光強度であると判断してもよく、10%以下の光強度のものを、血中を透過した光強度であると判断してもよい。この数値は、要求される血中脂質濃度の正確性により、適宜決定できる。
【0025】
また、別の方法としては、検出した複数の光強度を比較し、照射部と光強度検出部との距離により規格化した規格光強度が小さいものを、生体内の血中を透過した光強度であると判別する方法である。光強度の比較の際には、照射部からの光強度は距離に応じて減衰するため、距離による減衰割合を考慮して光強度を規格化することが必要である。そして、上述のとおり血中を透過した光は光の減衰が生じるため、規格化後の光強度を比較し、光強度のより小さいものを血中透過光と判別することができる。
なお、光強度の距離による減衰割合については、特許文献2に記載の方法などを参酌し、導くことができる。
また、この方法においても、上記記載したような血中を透過しない場合の光強度を100%とした減衰割合の閾値を設定し、判別に用いてもよい。その場合の具体的な閾値については、上述の閾値を援用できる。
この方法では、光強度の検出は、多く(のライン数)行うほど血中透過判別精度が向上する。数の制限は特段ないが、例えば光強度の検出は、5ライン以上であってもよく、10ライン以上であってもよく、15ライン以上であってもよい。
【0026】
その他の方法としては、血管が通っていない部分(毛細血管は考慮せず)において、特定距離における光強度を予め、必要に応じ複数回測定し、血中を透過していない光強度を予測乃至は決定する方法であり、当該予測乃至は決定した血中を透過していない基準光強度と、測定した光強度とを比較し、光強度が基準光強度よりも小さい場合、血中透過光と判別することができる。
更に、要求される血中脂質濃度の正確性の程度にもよるが、血中を透過していない光強度の予測乃至は決定に関し、一般的に人体の血管が通っていない部分の吸光係数・散乱係数は知られていることから、吸光係数・散乱係数を用い、血中を透過していない光強度を算出することもできる。
また、これらの方法においても、上記記載したような血中を透過しない場合の光強度を100%とした減衰割合の閾値を設定し、判別に用いてもよい。その場合の具体的な閾値については、上述の閾値を援用できる。
【0027】
演算部4に含まれる脂質濃度算出部42は、散乱係数算出部41により算出された散乱係数μ
S’に基づいて血中脂質の濃度を算出するものである。なお、散乱係数μ
S’と脂質濃度とは相関があり、散乱係数μ
S’の値に基づいて脂質濃度を算出するものである。本実施形態では、予め散乱係数μ
S’と血中脂質濃度との関係について統計データを取り、散乱係数μ
S’と、前記統計データとを比較することにより、実際の血中脂質濃度を算出する。
【0028】
例えば、特定の生体A氏の血中脂質濃度を計測対象とする場合は、A氏の血中脂質濃度を採血などの他の血中脂質濃度計測方法等により計測した計測結果と、算出された散乱係数μ
S’とを比較して、A氏個人の統計データを作成して、濃度を算出できるようにすることができる。
若しくは、A氏の血中脂質の濃度を他の血中脂質の濃度の測定方法等により測定した測定結果と、検出された光強度より得られた濃度の測定結果とを比較して、その比較により得られた濃度と、一般的な生体の場合の前記統計データにおける濃度との誤差を算出し、その誤差を修正するキャリブレーションをすることで、A氏個人の統計データを作成してもよい。
【0029】
なお、統計データの形式は特に限定されるものではなく、例えば、性別、身長、体重、BMI等で分類されていてもよく、表やグラフ、関数式等を用いて算出できるようにしてもよい。
また、臨床現場において、濃度と濁度とは同義で使われることがあり、本発明における濃度には濁度の概念も含まれる。よって、脂質濃度算出手段は、その算出結果として、濃度のみならず単位量当たりの粒子数やホルマジン濁度とすることができる。
【0030】
以下、本発明の実施形態に係る非侵襲型生体脂質計測器について、図面を用いて更に詳細に説明する。
図3は、生体の血管及び非侵襲型生体脂質計測器の照射部及び光強度検出部の位置関係を示す上面模式図(a)、断面模式図(b)、上面模式図(c)、及び上面模式図(d)である。
図3(a)が開示する装置は、照射部12から光強度検出部13までの照射検出間距離比に基づいて散乱係数を算出するため、照射部12と複数の光強度検出部13が直線状に存在することを意図している。しかしながら、照射部12と光強度検出部13の設定によっては、
図3(c)に示すように、血管11から外れた位置に光強度検出部13が配置される場合も考えられる。
また、皮膚の色や体質によっては必ずしも血管11の位置を皮膚越しに確認できるわけではないため、位置合わせ自体にも困難性が存在した。
更に、仮に位置合わせができたとしても、皮膚の深さ方向についてどの位置に血管11が存在するかを把握することは難しく、
図3(b)のように照射部12から照射された光の散乱伝搬経路14が血中を通過すればよいが、光源における入射光の強さや角度によっては、散乱伝搬経路が血中を通過しない場合も考えられる。
本実施形態では、光強度検出部13で検出される検出光が生体内の血中を透過しているか否かを判別することから、上記のような問題点は解決される。
【0031】
一方で、
図4は、生体の血管及び非侵襲型生体脂質計測器の照射部及び光強度検出部の位置関係を示す上面模式図(a)、及び上面模式図(b)であり、
図4に開示するような検出部13の配置により、位置合わせの問題を解決することができる。
図4(a)では、光強度検出部13(例えば照射部12からの1本の直線上に存在する複数の光強度検出部13)が血管外に配置されても、照射部12から一定の距離において複数の光強度検出部13が扇形に配置されることで、血中を透過した散乱光を確実に検出することができる。光強度検出部13を扇形に配置する場合には、配置範囲は特段限定されないが、確実に血中を透過した検出光を得る観点から、扇形の中央に位置する光強度検出部13と照射部12とを結ぶ線より、両側に30度以上展開して配置することが好ましく、45度以上展開して配置してもよく、60度以上展開して配置してもよく、75度以上展開して配置してもよく、90度以上展開して配置してもよい。
【0032】
また、
図4(b)のように、光強度検出部13を二次元アレイ状とすることで、いくつかの光強度検出部13が血管外に配置されても、血中を透過した散乱光を確実に検出することができる。アレイ状に配置する場合の光強度検出部13が形成するアレイの形状、大きさは特段限定されず、一般的に矩形であるがこれに限定されない。また、大きさも特に限定されないが、例えばウエアラブルデバイスを想定する場合、最大長が1cm以上であってよく、最大長が3cm以上であってよく、最大長が5cm以上であってよく、最大長が10cm以上であってよい。
【0033】
他方、
図5は、生体の血管及び非侵襲型生体脂質計測器の照射部及び光強度検出部の位置関係を示す上面模式図(a)、上面模式図(b)、及び上面模式図(c)であり、
図3(d)に示すように、光強度検出部13ではなく光源12が血管11から外れることもあり得る。このような場合には、
図5(a)に示すように、照射部12の位置あるいは角度を例えば上下方向に可動とすることで、位置合わせの問題を解決することができる。照射部12を可動とする例としては、例えばビームコントローラーを搭載することがあげられるがこれに限られない。
また、
図5(b)に示すように、照射部12が上下方向に列を作るように、複数並べて配置してもよい。
更に、
図5(c)に示すように、照射部12を二次元アレイ状に複数配置することもできる。光射部12をアレイ状に配置する場合の照射部12が形成するアレイの形状、大きさは特段限定されず、一般的に矩形であるがこれに限定されない。また、大きさも特に限定されないが、例えばウエアラブルデバイスを想定する場合、最大長が1cm以上であってよく、最大長が3cm以上であってよく、最大長が5cm以上であってよく、最大長が10cm以上であってよい。
【0034】
なお、照射部12、光強度検出部13ともにアレイ状に配置する
図6に示す実施形態にすることで、位置合わせの問題は完全に解決可能である。
【0035】
また、
図4(a)及び(b)に示すように光強度検出部13が複数ある場合、又は、
図5(b)及び(c)に示すように、照射部12が複数ある場合、照射部12と光強度検出部13との間の距離が複数存在することとなる。一般的に血中透過光は、照射部12と光強度検出部13との間の距離が大きくなるにつれて減衰する。そのため、照射部12との距離が最も近い位置に存在する光強度検出部13から検出される検出光は、その強度がある程度大きく、照射部12との距離が最も遠い位置に存在する光強度検出部13から検出される検出光はその強度が小さくなることから、検出光の強度範囲が、同一の検出器で測定可能な検出範囲内に納まらない場合が存在する。
このような場合には、例えば光強度検出部13がアレイ状に配置されている場合、
図7(a)に示すように、光強度検出部13により形成されるアレイに濃度勾配付き減光フィルタ15を配置することで、同一の検出器で測定可能な検出範囲内に検出光強度を収束させることができる。具体的には照射部12に近い箇所では多くの光をカットでき、遠い箇所では光のカット量が少ないフィルタを用いる。なお、濃度勾配付きフィルタの勾配については、予めフィルタなしで光強度を測定し、その後計算上にて割り戻すことで、適切な勾配を決定することができる。
【0036】
また、光強度検出部13をアレイ状に配置すると、複数の光強度検出部13が必要となるため、デバイスが物理的に大きくなる傾向にある。このような場合には、
図7(b)のように光学的に集光機能を有する集光手段16を用いることで、生体直上における検出可能な範囲は大きくても、集光手段により集約された検出光は、小さな光強度検出部13でも検出可能となる。集光手段16の具体例としては、凸面ミラーなどがあげられるが、集光機能を有するものであれば、特段限定されない。
【0037】
以下、本発明の別の実施形態である、非侵襲型の生体脂質を計測する方法について説明する。
本発明の実施形態における非侵襲型の生体脂質を計測する方法は、生体外から生体内に向けて所定の光強度で光を照射する照射ステップ、前記照射ステップでの照射光が生体内での散乱を経て、前記生体から放出される光強度を検出する光強度検出ステップ、前記光強度検出ステップにより検出された前記光強度に基づき前記生体内における光の散乱係数を算出する散乱係数算出ステップ、及び前記算出された散乱係数に基づき脂質濃度を算出する脂質濃度算出ステップを有し、前記散乱係数算出ステップは、前記光強度検出ステップにより検出された前記光強度が、前記生体内の血中を透過しているか否かを判別するステップを含み、該ステップにより前記生体内の血中を透過したと判断された光の散乱係数を算出する、非侵襲型生体脂質を計測する方法である。算出された散乱係数は、脂質濃度算出ステップにおいて、脂質濃度を算出するのに使用される。以下、順にステップを追って説明する。
【0038】
照射ステップは、照射部から所定の光強度で生体内に向けて光を照射するステップである。照射部は所定の強度の連続光を体外から体内に向けて照射する。生体に照射する光を連続光とすることで、光強度検出部により検出される光強度が、時間による減衰の影響を含まれないようにすることができる。
また、照射部から照射する光は、波長範囲が、血漿の無機物により光が吸収される波長範囲を考慮して1400nm以下とするのが好ましく、さらに、血液の細胞成分によって光が吸収される波長範囲を考慮して580nm〜1400nmとするのがより好ましい。
【0039】
光強度検出ステップでは、照射ステップで照射した光であって生体内での散乱を経て生体から放出された光を、光強度検出部で検出するステップである。光強度検出部の光検出器により、照射部から照射された光の強度が検出される。
【0040】
散乱係数算出ステップでは、前記光強度検出ステップにより検出された前記光強度に基づき前記生体内における光の散乱係数を算出する。光の散乱係数の算出の詳細は特許文献2(国際公開第2014/087825号)に記載されたものを参照することができる。算出された光の散乱係数は、脂質濃度算出ステップへと送られる。また、この際に、光強度検出ステップにより検出された光強度が、生体内の血中を透過しているか否かを判別する。この判別ステップにより、厳密な位置合わせを必要とせず、血中を透過した検出光であるか否かを判別できるため、より簡易に且つ正確に生体の脂質計測が可能となる。
そして、脂質濃度算出ステップは、血中脂質濃度と散乱係数とが相関関係を有することに基づき、血中脂質の濃度等を算出するステップである。
なお、光の散乱係数を算出する方法は、特許文献2(国際公開第2014/087825号)に記載されているように複数種類存在し、どの手法を用いてもよい。
【0041】
算出された脂質濃度は、予め準備された統計データと比較して、正常値であるか否かを判断し、正常値ではない場合には、何らかの異常が存在し得ると判断できる。
【0042】
本発明の実施形態に係る非侵襲型生体脂質計測器は、非常に小型のデバイス設計が可能であることから、ウエアラブル型デバイスでの活用が想定され、例えばデジタル腕時計に本発明に係る計測器を搭載し、血中脂質濃度を必要時に測定することができる。また、家庭用医療デバイスとして、体温計などと同じように使用することもできる。
【0043】
他方、
図8(a)に示すような、医療機関用の大型デバイスに適用することも可能であり、
図8(b)に示すように、非接触型のデバイスに適用することも可能である。ただし、非接触型のデバイスに適用する場合、他の光源からのノイズを低減するために、光の強度や位相等を変調することが必要となる。