特許第6605039号(P6605039)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6605039近赤外線吸収性組成物、膜、赤外線カットフィルタ、固体撮像素子、赤外線吸収剤および化合物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6605039
(24)【登録日】2019年10月25日
(45)【発行日】2019年11月13日
(54)【発明の名称】近赤外線吸収性組成物、膜、赤外線カットフィルタ、固体撮像素子、赤外線吸収剤および化合物
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/22 20060101AFI20191031BHJP
   C09K 3/00 20060101ALI20191031BHJP
   C09B 57/00 20060101ALI20191031BHJP
   C09B 23/00 20060101ALI20191031BHJP
   C09B 67/20 20060101ALI20191031BHJP
   C07D 333/36 20060101ALI20191031BHJP
   C07D 495/04 20060101ALI20191031BHJP
   H01L 27/146 20060101ALI20191031BHJP
【FI】
   G02B5/22
   C09K3/00 105
   C09B57/00 NCSP
   C09B57/00 Z
   C09B23/00
   C09B67/20 F
   C07D333/36
   C07D495/04 101
   H01L27/146 D
【請求項の数】14
【全頁数】66
(21)【出願番号】特願2017-556407(P2017-556407)
(86)(22)【出願日】2016年11月2日
(86)【国際出願番号】JP2016082571
(87)【国際公開番号】WO2017104283
(87)【国際公開日】20170622
【審査請求日】2018年5月25日
(31)【優先権主張番号】特願2015-246300(P2015-246300)
(32)【優先日】2015年12月17日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】特許業務法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】平井 友樹
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 大輔
(72)【発明者】
【氏名】神保 良弘
【審査官】 小久保 州洋
(56)【参考文献】
【文献】 特開平01−232350(JP,A)
【文献】 特開平02−013964(JP,A)
【文献】 特開昭62−000465(JP,A)
【文献】 特開2001−117201(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/035533(WO,A1)
【文献】 独国特許出願公開第4122563(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC G02B 5/22
C07D 333/36
C07D 495/04
C07D 519/00
C08L 101/00
C09B 23/00
C09B 57/00
C09B 67/20
C09K 3/00
H01L 27/146
DB名 CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表され、極大吸収波長が700nm以上にあるスクアリリウム化合物と、樹脂とを含有する近赤外線吸収性組成物;
【化1】
式中、Ar1およびAr2は、それぞれ独立して、チオフェン環、チアゾール環もしくはこれらの環の少なくとも1種を含む縮合環、または、これらの環を含む2価の共役基を表し、
1〜R4は、それぞれ独立して、アリール基またはヘテロアリール基を表し、
1は、R2またはAr1と結合して環を形成していてもよく、R3は、R4またはAr2と結合して環を形成していてもよい
【請求項2】
前記スクアリリウム化合物は、式(1)のAr1およびAr2を含む平面が、原子数16〜54のπ共役平面を有する、請求項1に記載の近赤外線吸収性組成物。
【請求項3】
1〜R4の少なくとも一つは、環を構成する原子の数が8以上のアリール基またはヘテロアリール基を表す、請求項1または2に記載の近赤外線吸収性組成物。
【請求項4】
1〜R4の少なくとも一つは、ナフチル基を表す、請求項1〜3のいずれか1項に記載の近赤外線吸収性組成物。
【請求項5】
Ar1およびAr2は、それぞれ独立して、チオフェン環およびチアゾール環から選ばれる少なくとも1種を含む縮合環を表す、請求項1〜4のいずれか1項に記載の近赤外線吸収性組成物。
【請求項6】
Ar1、Ar2、R1、R2、R3およびR4から選ばれる少なくとも一つは、下記式(W)で表される基を有する、請求項1〜のいずれか1項に記載の近赤外線吸収性組成物;
−S1−L1−T1 ・・・(W)
式(W)において、S1は、単結合、アリーレン基またはヘテロアリーレン基を表し、
1は、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、−O−、−S−、−NRL1−、−CO−、−COO−、−OCO−、−CONRL1−、−NRL1CO−、−SO2−、−ORL2−、または、これらを組み合わせてなる基を表し、RL1は、水素原子またはアルキル基を表し、RL2は、アルキレン基を表し、
1は、アルキル基、シアノ基、ヒドロキシ基、ホルミル基、カルボキシ基、アミノ基、チオール基、スルホ基、ホスホリル基、ボリル基、ビニル基、エチニル基、アリール基、ヘテロアリール基、トリアルキルシリル基またはトリアルコキシシリル基を表し、
1が単結合で、L1がアルキレン基で、T1がアルキル基の場合は、L1とT1に含まれる炭素数の総和が5以上であり、
1がアリーレン基またはヘテロアリーレン基の場合は、L1とT1に含まれる炭素数の総和が5以上である。
【請求項7】
前記スクアリリウム化合物が、下式(1a)で表される化合物である、請求項1〜のいずれか1項に記載の近赤外線吸収性組成物;
【化2】
式中、Ar11およびAr12は、それぞれ独立して、チオフェン環、チアゾール環もしくはこれらの環の少なくとも1種を含む縮合環を表し、
11〜R14は、それぞれ独立してアリール基、またはヘテロアリール基を表し、
11は、R12またはAr11と結合して環を形成していてもよく、
13は、R14またはAr12と結合して環を形成していてもよく、
Ar11が、チオフェン環またはチアゾール環の場合、R11およびR12の少なくとも一つは、原子数8以上のアリール基、または、ヘテロアリール基を表し、
Ar12が、チオフェン環またはチアゾール環の場合、R13およびR14の少なくとも一つは、原子数8以上のアリール基、または、ヘテロアリール基を表す。
【請求項8】
請求項1〜のいずれか1項に記載の近赤外線吸収性組成物からなる膜。
【請求項9】
請求項1〜のいずれか1項に記載の近赤外線吸収性組成物からなる赤外線カットフィルタ。
【請求項10】
請求項に記載の赤外線カットフィルタを有する、固体撮像素子。
【請求項11】
下式(1a)で表される赤外線吸収剤;
【化3】
式中、Ar11およびAr12は、それぞれ独立して、チオフェン環、チアゾール環もしくはこれらの環の少なくとも1種を含む縮合環を表し、
11〜R14は、それぞれ独立してアリール基、またはヘテロアリール基を表し、
11は、R12またはAr11と結合して環を形成していてもよく、
13は、R14またはAr12と結合して環を形成していてもよく、
Ar11が、チオフェン環またはチアゾール環の場合、R11およびR12の少なくとも一つは、原子数8以上のアリール基、または、ヘテロアリール基を表し、
Ar12が、チオフェン環またはチアゾール環の場合、R13およびR14の少なくとも一つは、原子数8以上のアリール基、または、ヘテロアリール基を表す。
【請求項12】
下式(1a)で表される化合物;
【化4】
式中、Ar11およびAr12は、それぞれ独立して、チオフェン環、チアゾール環もしくはこれらの環の少なくとも1種を含む縮合環を表し、
11〜R14は、それぞれ独立してアリール基、またはヘテロアリール基を表し、
11は、R12またはAr11と結合して環を形成していてもよく、
13は、R14またはAr12と結合して環を形成していてもよく、
Ar11が、チオフェン環またはチアゾール環の場合、R11およびR12の少なくとも一つは、原子数8以上のアリール基、または、ヘテロアリール基を表し、
Ar12が、チオフェン環またはチアゾール環の場合、R13およびR14の少なくとも一つは、原子数8以上のアリール基、または、ヘテロアリール基を表す。
【請求項13】
11〜R14の少なくとも一つは、ナフチル基を表す、請求項12に記載の化合物。
【請求項14】
Ar11、Ar12、R11、R12、R13およびR14から選ばれる少なくとも一つは、下記式(W)で表される基を有する、請求項12または13に記載の化合物;
−S1−L1−T1 ・・・(W)
式(W)において、S1は、単結合、アリーレン基またはヘテロアリーレン基を表し、
1は、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、−O−、−S−、−NRL1−、−CO−、−COO−、−OCO−、−CONRL1−、−NRL1CO−、−SO2−、−ORL2−、または、これらを組み合わせてなる基を表し、RL1は、水素原子またはアルキル基を表し、RL2は、アルキレン基を表し、
1は、アルキル基、シアノ基、ヒドロキシ基、ホルミル基、カルボキシ基、アミノ基、チオール基、スルホ基、ホスホリル基、ボリル基、ビニル基、エチニル基、アリール基、ヘテロアリール基、トリアルキルシリル基またはトリアルコキシシリル基を表し、
1が単結合で、L1がアルキレン基で、T1がアルキル基の場合は、L1とT1に含まれる炭素数の総和が5以上であり、
1がアリーレン基またはヘテロアリーレン基の場合は、L1とT1に含まれる炭素数の総和が5以上である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、近赤外線吸収性組成物、膜、赤外線カットフィルタ、固体撮像素子、赤外線吸収剤および化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
ビデオカメラ、デジタルスチルカメラ、カメラ機能付き携帯電話などには、カラー画像の固体撮像素子である、CCD(電荷結合素子)や、CMOS(相補型金属酸化膜半導体)が用いられている。これら固体撮像素子は、赤外線を感知するシリコンフォトダイオードを受光部に使用するために、視感度補正を行うことが必要であり、赤外線カットフィルタを併せて用いられることが多い。近赤外線吸収性化合物として、スクアリリウム化合物などが知られている。
【0003】
特許文献1には、下記化合物などを電子写真用トナーとして使用することが記載されている。
【化1】
【0004】
また、特許文献2には、下記化合物が記載されている。
【化2】
【0005】
また、非特許文献1は、スクアリリウム化合物の二光子吸収性に関する論文であって、下記化合物の二光子吸収性についての記載がある。
【化3】
【0006】
また、非特許文献2には、下記化合物が記載されている。
【化4】
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−15114号公報
【特許文献2】独国特許出願公開第4122563号明細書
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Chem. Eur. J., 2008 ,14, 11082−11091
【非特許文献2】H. Meier et al., Helv. Chem. Acta 2004, 87, 1109−1118.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
赤外線カットフィルタは、赤外遮蔽性および可視透明性に優れることが求められている。近年において、これらの特性のさらなる向上が求められている。
【0010】
特許文献1は、電子写真用トナーに関する発明であって、赤外線カットフィルタについての記載はない。また、本発明者らが、特許文献1に記載の化合物について検討したところ、赤外遮蔽性と可視透明性とを両立することは困難であることが分かった。
【0011】
また、特許文献2、非特許文献1、および2には、特定のスクアリリウム化合物が記載されるものの、同化合物の赤外遮蔽性および可視透明性についての記載はない。さらには、同化合物を赤外線カットフィルタに使用することについての記載や示唆はない。
【0012】
よって、本発明の目的は、赤外遮蔽性および可視透明性に優れた膜を製造可能な近赤外線吸収性組成物、膜、赤外線カットフィルタ、固体撮像素子、赤外線吸収剤および化合物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、種々検討した結果、後述する式(1)で表され、波長700nm以上の範囲に極大吸収波長を有するスクアリリウム化合物と、樹脂とを含む、近赤外線吸収性組成物を用いることで、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。本発明は、以下を提供する。
<1> 下記式(1)で表され、極大吸収波長が700nm以上にあるスクアリリウム化合物と、樹脂とを含有する近赤外線吸収性組成物;
【化5】

式中、Ar1およびAr2は、それぞれ独立して、カルコゲン原子を含むヘテロアリール環を有する2価の共役基を表し、R1〜R4は、それぞれ独立して、水素原子または置換基を表し、R1は、R2またはAr1と結合して環を形成していてもよく、R3は、R4またはAr2と結合して環を形成していてもよい;
ただし、Ar1が、カルコゲン原子を含む単環のヘテロアリール環の場合は、R1およびR2は、それぞれ独立してアリール基またはヘテロアリール基を表し、Ar2が、カルコゲン原子を含む単環のヘテロアリール環の場合は、R3およびR4は、それぞれ独立してアリール基またはヘテロアリール基を表す。
<2> スクアリリウム化合物は、式(1)のArおよびArを含む平面が、原子数16〜54のπ共役平面を有する、<1>に記載の近赤外線吸収性組成物。<3> カルコゲン原子が硫黄原子である、<1>または<2>に記載の近赤外線吸収性組成物。
<4> Ar1およびAr2は、それぞれ独立して、チオフェン環、チアゾール環もしくはこれらの環の少なくとも1種を含む縮合環、または、これらの環を含む2価の共役基を表す、<1>または<2>に記載の近赤外線吸収性組成物。
<5> Ar1およびAr2は、それぞれ独立して、チオフェン環またはチアゾール環を含み、
1〜R4は、それぞれ独立して、アリール基またはヘテロアリール基を表す、<1>〜<4>のいずれか一つに記載の近赤外線吸収性組成物。
<6> R1〜R4の少なくとも一つは、環を構成する原子の数が8以上のアリール基またはヘテロアリール基を表す、<5>に記載の近赤外線吸収性組成物。
<7> R1〜R4の少なくとも一つは、ナフチル基を表す、<5>に記載の近赤外線吸収性組成物。
<8> Ar1およびAr2は、それぞれ独立して、原子数8以上のπ共役平面を有する二価の共役基を表し、
1〜R4は、それぞれ独立して、アルキル基、アリール基またはヘテロアリール基を表す、<1>〜<4>のいずれか一つに記載の近赤外線吸収性組成物。
<9> Ar1およびAr2は、それぞれ独立して、チオフェン環およびチアゾール環から選ばれる少なくとも1種を含む縮合環、チオフェン環、または、チアゾール環から選ばれる少なくとも1種を含む二価の共役基を表す、<8>に記載の近赤外線吸収性組成物。
<10> Ar1およびAr2は、それぞれ独立して、チオフェン環およびチアゾール環から選ばれる少なくとも1種を含む縮合環を表す、<8>に記載の近赤外線吸収性組成物。
<11> Ar1、Ar2、R1、R2、R3およびR4から選ばれる少なくとも一つは、下記式(W)で表される基を有する、<1>〜<10>のいずれか一つに記載の近赤外線吸収性組成物;
−S1−L1−T1 ・・・(W)
式(W)において、S1は、単結合、アリーレン基またはヘテロアリーレン基を表し、L1は、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、−O−、−S−、−NRL1−、−CO−、−COO−、−OCO−、−CONRL1−、−NRL1CO−、−SO2−、−ORL2−、または、これらを組み合わせてなる基を表し、RL1は、水素原子またはアルキル基を表し、RL2は、アルキレン基を表し、
1は、アルキル基、シアノ基、ヒドロキシ基、ホルミル基、カルボキシ基、アミノ基、チオール基、スルホ基、ホスホリル基、ボリル基、ビニル基、エチニル基、アリール基、ヘテロアリール基、トリアルキルシリル基またはトリアルコキシシリル基を表し、
1が単結合で、L1がアルキレン基で、T1がアルキル基の場合は、L1とT1に含まれる炭素数の総和が5以上であり、
1がアリーレン基またはヘテロアリーレン基を表す場合は、L1とT1に含まれる炭素数の総和が5以上である。
<12> スクアリリウム化合物が、下式(1a)で表される化合物である、<1>〜<4>のいずれか一つに記載の近赤外線吸収性組成物;
【化6】

式中、Ar11およびAr12は、それぞれ独立して、チオフェン環、チアゾール環もしくはこれらの環の少なくとも1種を含む縮合環を表し、
11〜R14は、それぞれ独立して、アルキル基、アリール基、またはヘテロアリール基を表し、
11は、R12またはAr11と結合して環を形成していてもよく、
13は、R14またはAr12と結合して環を形成していてもよく、
Ar11が、チオフェン環またはチアゾール環の場合、R11およびR12の少なくとも一つは、原子数8以上のアリール基、または、ヘテロアリール基を表し、
Ar12が、チオフェン環またはチアゾール環の場合、R13およびR14の少なくとも一つは、原子数8以上のアリール基、または、ヘテロアリール基を表す。
<13> <1>〜<12>のいずれか一つに記載の近赤外線吸収性組成物をからなる膜。
<14> <1>〜<12>のいずれか一つに記載の近赤外線吸収性組成物をからなる赤外線カットフィルタ。
<15> <14>に記載の赤外線カットフィルタを有する、固体撮像素子。
<16> 下式(1a)で表される赤外線吸収剤;
【化7】

式中、Ar11およびAr12は、それぞれ独立して、チオフェン環、チアゾール環もしくはこれらの環の少なくとも1種を含む縮合環を表し、
11〜R14は、それぞれ独立して、アルキル基、アリール基、またはヘテロアリール基を表し、
11は、R12またはAr11と結合して環を形成していてもよく、
13は、R14またはAr12と結合して環を形成していてもよく、
Ar11が、チオフェン環またはチアゾール環の場合、R11およびR12の少なくとも一つは、原子数8以上のアリール基、または、ヘテロアリール基を表し、
Ar12が、チオフェン環またはチアゾール環の場合、R13およびR14の少なくとも一つは、原子数8以上のアリール基、または、ヘテロアリール基を表す。
<17> 下式(1a)で表される化合物;
【化8】

式中、Ar11およびAr12は、それぞれ独立して、チオフェン環、チアゾール環もしくはこれらの環の少なくとも1種を含む縮合環を表し、
11〜R14は、それぞれ独立して、アルキル基、アリール基、またはヘテロアリール基を表し、
11は、R12またはAr11と結合して環を形成していてもよく、
13は、R14またはAr12と結合して環を形成していてもよく、
Ar11が、チオフェン環またはチアゾール環の場合、R11およびR12の少なくとも一つは、原子数8以上のアリール基、または、ヘテロアリール基を表し、
Ar12が、チオフェン環またはチアゾール環の場合、R13およびR14の少なくとも一つは、原子数8以上のアリール基、または、ヘテロアリール基を表す。
<18> R11〜R14の少なくとも一つは、ナフチル基を表す、<17>に記載の化合物。
<19> Ar11、Ar12、R11、R12、R13およびR14から選ばれる少なくとも一つは、下記式(W)で表される基を有する、<17>または<18>に記載の化合物;
−S1−L1−T1 ・・・(W)
式(W)において、S1は、単結合、アリーレン基またはヘテロアリーレン基を表し、L1は、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、−O−、−S−、−NRL1−、−CO−、−COO−、−OCO−、−CONRL1−、−NRL1CO−、−SO2−、−ORL2−、または、これらを組み合わせてなる基を表し、RL1は、水素原子またはアルキル基を表し、RL2は、アルキレン基を表し、
1は、アルキル基、シアノ基、ヒドロキシ基、ホルミル基、カルボキシ基、アミノ基、チオール基、スルホ基、ホスホリル基、ボリル基、ビニル基、エチニル基、アリール基、ヘテロアリール基、トリアルキルシリル基またはトリアルコキシシリル基を表し、
1が単結合で、L1がアルキレン基で、T1がアルキル基の場合は、L1とT1に含まれる炭素数の総和が5以上であり、
1がアリーレン基またはヘテロアリーレン基を表す場合は、L1とT1に含まれる炭素数の総和が5以上である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、赤外遮蔽性および可視透明性に優れた膜を製造可能な近赤外線吸収性組成物を提供することが可能になった。また、赤外遮蔽性および可視透明性に優れた膜、赤外線カットフィルタ、固体撮像素子、赤外線吸収剤および化合物を提供することが可能になった。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本明細書において、全固形分とは、組成物の全組成から溶剤を除いた成分の総質量をいう。また、固形分とは、25℃における固形分をいう。
本明細書における基(原子団)の表記に於いて、置換および無置換を記していない表記は、置換基を有さない基(原子団)と共に置換基を有する基(原子団)をも包含するものである。例えば、「アルキル基」とは、置換基を有さないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含する。
本明細書中における「放射線」とは、例えば、水銀灯の輝線スペクトル、エキシマレーザに代表される遠紫外線、極紫外線(EUV)、X線、電子線等を意味する。また、本発明において光とは、活性光線または放射線を意味する。本明細書中における「露光」とは、特に断らない限り、水銀灯の輝線スペクトル、エキシマレーザに代表される遠紫外線、X線、EUVなどによる露光のみならず、電子線、イオンビーム等の粒子線による描画も露光に含める。
本明細書において、近赤外線とは、波長領域が700〜2500nmの光(電磁波)をいう。
本明細書において、“(メタ)アクリレート”はアクリレートおよびメタクリレートの双方、または、いずれかを表し、“(メタ)アリル”はアリルおよびメタリルの双方、または、いずれかを表し、“(メタ)アクリル”はアクリルおよびメタクリルの双方、または、いずれかを表し、“(メタ)アクリロイル”はアクリロイルおよびメタクリロイルの双方、または、いずれかを表す。
本明細書において、化学式中のMeはメチル基を表し、Etはエチル基を表し、Prはプロピル基を表し、Buはブチル基を表し、Phはフェニル基を表す。
本明細書において「工程」との語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の作用が達成されれば、本用語に含まれる。
本明細書において、重量平均分子量および数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)測定によるポリスチレン換算値として定義される。
【0016】
<近赤外線吸収性組成物>
本発明の近赤外線吸収性組成物(以下、本発明の組成物ともいう)は、下記式(1)で表され、極大吸収波長が700nm以上にあるスクアリリウム化合物(以下、スクアリリウム化合物(1)ともいう)と、樹脂とを含む。
【化9】
【0017】
スクアリリウム化合物(1)は、Ar1およびAr2の位置に、カルコゲン原子を含むヘテロアリール環を有する2価の共役基が導入されているので、同化合物のキノイド型の寄与度が向上し、極大吸収波長がより長波長側にシフトしたと考えられる。
また、Ar1やAr2を、カルコゲン原子を含む縮合環のヘテロアリール環(例えば、チオフェン環やチアゾール環を含む縮合環など)を有する2価の共役基など、大きなπ共役平面を有する基とすることで、有効共役長が長くなる。これにより、最高被占軌道(HOMO)−最低空軌道(LUMO)ギャップが小さくなるため、化合物の極大吸収波長をより長波長側にシフトできる。
また、Ar1がカルコゲン原子を含む単環のヘテロアリール環(例えば、チオフェン環やチアゾール環など)の場合においては、R1およびR2を、アリール基またはヘテロアリール基とすることで、有効共役長を長くし、Ar2がカルコゲン原子を含む単環のヘテロアリール環(例えば、チオフェン環やチアゾール環など)の場合においては、R3およびR4をアリール基またはヘテロアリール基とすることで、有効共役長を長くする。これにより、HOMO−LUMOギャップを小さくすることができるため、化合物の極大吸収波長を700nm以上に調整しやすい。
ここで、スクアリリウム化合物(1)の極大吸収波長を700nm以上に調整する方法として、ArおよびArを含む平面を大きなπ共役平面とする方法(−NR12と、−NR34とで挟まれた部分の共役を長くする方法)、R1〜R4を共役基とする方法が挙げられる。なかでも、ArおよびArを含む平面を大きなπ共役平面とする場合の方が、HOMOおよびLUMOの空間的な広がりをより効果的に誘起できるために有効共役長を長くしやすいため、化合物の極大吸収波長を700nm以上に調整しやすい。
【0018】
そして、本発明者らの検討により、下式(1)で表される化合物のうち、極大吸収波長が700nm以上の化合物は、可視透明性と赤外遮蔽性に優れることを見出した。更には、スクアリリウム化合物(1)を、樹脂を含む組成物に配合することで、赤外遮蔽性および可視透明性に優れた膜を製造することができることを見出した。
【0019】
また、スクアリリウム化合物(1)は、Ar1およびAr2が、カルコゲン原子を含む縮合環のヘテロアリール環を有する2価の共役基であることで、耐熱性や耐光性が向上し、加熱や光照射による着色が生じにくい。このため、本発明の組成物によれば、加熱や光照射後も優れた可視透明性を有する膜を製造することができる。
以下、本発明の組成物の各成分について説明する。
【0020】
<<式(1)で表されるスクアリリウム化合物>>
本発明の組成物は、下記式(1)で表され、極大吸収波長が700nm以上にあるスクアリリウム化合物(スクアリリウム化合物(1))を含む。本発明において、スクアリリウム化合物(1)は、極大吸収波長が710nm以上にあることが好ましく、720nm以上にあることがより好ましい。上限は、例えば、1200nm以下にあることが好ましく、1000nm以下にあることがより好ましい。極大吸収波長が上記範囲に有することで、赤外遮蔽性および可視透明性に優れた膜を製造することができる。
なお、スクアリリウム化合物(1)の極大吸収波長の値は、極大吸収波長における吸光度が0.7〜1.2の範囲になるように調整した、スクアリリウム化合物のクロロホルム溶液を用いて測定した値である。
【0021】
スクアリリウム化合物(1)の含有量は、組成物の全固形分中0.1〜70質量%とすることが好ましい。下限は、0.5質量%以上が好ましく、1.0質量%以上がより好ましい。上限は、60質量%以下が好ましく、50質量%以下がより好ましい。この範囲内とすることで良好な赤外吸収能を付与することができる。組成物が、スクアリリウム化合物(1)を2種以上含む場合、その合計量が上記範囲内であることが好ましい。
【0022】
【化10】

式中、Ar1およびAr2は、それぞれ独立して、カルコゲン原子を含むヘテロアリール環を有する2価の共役基を表し、R1〜R4は、それぞれ独立して、水素原子または置換基を表し、R1は、R2またはAr1と結合して環を形成していてもよく、R3は、R4またはAr2と結合して環を形成していてもよい;
ただし、Ar1が、カルコゲン原子を含む単環のヘテロアリール環の場合は、R1およびR2は、それぞれ独立してアリール基またはヘテロアリール基を表し、Ar2が、カルコゲン原子を含む単環のヘテロアリール環の場合は、R3およびR4は、それぞれ独立してアリール基またはヘテロアリール基を表す。
【0023】
Ar1およびAr2は、それぞれ独立して、カルコゲン原子を含むヘテロアリール環を有する2価の共役基を表す。カルコゲン原子としては、硫黄原子、酸素原子、セレン原子、テルル原子が挙げられ、硫黄原子が好ましい。なお、本発明において、ヘテロアリール環とは、2種類以上の原子で環が構成された芳香族環を意味する。
カルコゲン原子を含むヘテロアリール環基は、置換基を有していてもよく、無置換であってもよい。置換基としては、置換基T群で説明される基、および、式(W)で表される基が挙げられる。分光および溶解性の観点から、置換基は、式(W)で表される基が好ましい。なお、本発明において、カルコゲン原子を含むヘテロアリール環を有する2価の共役基は、カルコゲン原子を含むヘテロアリール環のみで構成されていてもよく、カルコゲン原子を含むヘテロアリール環と、連結基とで構成されてなる2価の共役基であってもよい。2価の共役基は、カルコゲン原子を含むヘテロアリール環のみで構成されていることが好ましい。
【0024】
カルコゲン原子を含むヘテロアリール環としては、例えば下記(Ht)で表される環および、下記(Ht)で表される環を含む縮合環が挙げられる。縮合環は、下記(Ht)で表される環を2以上縮合させた縮合環や、下記(Ht)で表される環と、芳香族炭化水素環および/またはカルコゲン原子を含まないヘテロアリール環との縮合環などが挙げられる。カルコゲン原子を含むヘテロアリール環は、チオフェン環およびチアゾール環から選ばれる少なくとも1種を含む縮合環が好ましい。縮合環は、縮合数が2〜8であることが好ましく、2〜5が好ましく、2〜3がより好ましい。
【化11】

式中、X1およびX2は、それぞれ独立して、窒素原子、CRxを表す。Rxは、水素原子または置換基を表す。置換基は、後述するR1〜R4で説明した置換基T群および式(W)で表される基が挙げられる。Y1はカルコゲン原子を表す。カルコゲン原子としては、硫黄原子、酸素原子、セレン原子、テルル原子が挙げられ、硫黄原子が好ましい。*は連結手を表す。
【0025】
カルコゲン原子を含むヘテロアリール環の具体例としては、単環としては、チオフェン環、チアゾール環が挙げられる。縮合環としては、下記に示す環が挙げられる。
【化12】

式中、Zは、−CR2−、−CR=CR−、−SIR2−、−CO−、−S−、−SO−、−SO2−を表す。*は連結手を表す。Rは、水素原子または置換基を表す。置換基は、後述するR1〜R4で説明した置換基T群および式(W)で表される基が挙げられる。
【0026】
カルコゲン原子を含むヘテロアリール環を有する2価の共役基としては、例えば、以下の(1)〜(5)が挙げられ、(1)の態様が好ましい。また、(1)の態様において、カルコゲン原子を含むヘテロアリール環が、縮合環である態様がより好ましい。
(1)カルコゲン原子を含むヘテロアリール環のみからなる基(カルコゲン原子を含むヘテロアリール環からなる2価の共役基)
(2) カルコゲン原子を含むヘテロアリール環の2個以上を、単結合を介して結合した基。
(3) カルコゲン原子を含むヘテロアリール環の1個以上と、1〜4個のメチン基を含むメチン鎖とを組み合わせた基。
(4) カルコゲン原子を含むヘテロアリール環の1個以上と、カルコゲン原子を含まないヘテロアリール環の1個以上とを、単結合、または、1〜4個のメチン基を含むメチン鎖を介して結合した基。
(5)カルコゲン原子を含むヘテロアリール環の1個以上と、芳香族炭化水素環の1個以上とを、単結合、または、1〜4個のメチン基を含むメチン鎖を介して結合した基。
【0027】
Ar1およびAr2は、それぞれ独立して、チオフェン環、チアゾール環もしくはこれらの環の少なくとも1種を含む縮合環、または、これらの環を含む2価の共役基であることが好ましく、チオフェン環、チアゾール環、または、チオフェン環およびチアゾール環から選ばれる少なくとも1種を含む縮合環がより好ましく、チオフェン環およびチアゾール環から選ばれる少なくとも1種を含む縮合環がさらに好ましい。
【0028】
また、Ar1およびAr2は、それぞれ独立して、原子数8以上(好ましくは、原子数8〜14、さらに好ましくは、原子数8〜12)のπ共役平面を有する二価の共役基であることも好ましい。この態様によれば、可視透明性および赤外遮蔽性に優れた膜を製造しやすい。
原子数8以上のπ共役平面を有する二価の共役基は、チオフェン環およびチアゾール環から選ばれる少なくとも1種を含む縮合環、または、チオフェン環、チアゾール環およびこれらの環を含む縮合環から選ばれる少なくとも1種を含む二価の共役基が好ましく、チオフェン環およびチアゾール環から選ばれる少なくとも1種を含む縮合環がより好ましい。なお、本発明におけるπ共役平面とは、水素原子以外の原子から構成されてなるものである。例えば、(A)の共役基の場合、π共役平面の原子数は10個であり、(B)の共役基の場合、π共役平面の原子数は12個であり、(C)の共役基の場合、π共役平面の原子数は8個である。
【化13】
【0029】
式(1)において、式(1)の−NR12と、−NR34とで挟まれた部分は、原子数16〜54(好ましくは、原子数16〜44、より好ましくは原子数16〜34)のπ共役平面を有することが好ましい。この態様によれば、可視透明性および赤外遮蔽性をより向上しやすい。なお、本発明におけるπ共役平面とは、水素原子以外の原子から構成されてなるものである。例えば、以下の化合物の場合、−NR12と、−NR34とで挟まれた部分は、原子数22のπ共役平面を有している。なお、Ar1および/またはAr2が置換基を有している場合は、置換基を除いた部分の原子数を表す。具体的には、置換基を水素原子に置換した構造により形成されるπ共役平面の原子数を表す。
【化14】
【0030】
式(1)において、R1〜R4は、それぞれ独立して、水素原子または置換基を表す。ただし、Ar1が、チオフェン環またはチアゾール環の場合は、R1およびR2は、それぞれ独立してアリール基またはヘテロアリール基を表し、Ar2が、チオフェン環またはチアゾール環の場合は、R3およびR4は、それぞれ独立してアリール基またはヘテロアリール基を表す。
【0031】
1〜R4が表す置換基としては、置換基T群で説明される基、および、後述する式(W)で表される基が挙げられ、アルキル基、アリール基またはヘテロアリール基が好ましく、アリール基またはヘテロアリール基がより好ましい。
アルキル基の炭素数は、1〜20が好ましく、1〜15がより好ましく、1〜8が更に好ましい。アルキル基は、直鎖、分岐、環状のいずれでもよく、直鎖または分岐が好ましい。
アリール基の炭素数は、6〜30が好ましく、6〜20がより好ましく、6〜12が更に好ましい。アリール基は、ナフチル基が好ましい。
ヘテロアリール基は、単環または縮合環が好ましく、単環または縮合数が2〜8の縮合環が好ましく、単環または縮合数が2〜4の縮合環がより好ましい。ヘテロアリール基の環を構成するヘテロ原子の数は1〜3が好ましい。ヘテロアリール基の環を構成するヘテロ原子は、窒素原子、酸素原子または硫黄原子が好ましい。ヘテロアリール基は、環を構成する原子の数が5以上であることが好ましく、6以上がより好ましく、8以上がさらに好ましい。上限は、例えば、30以下とすることができ、18以下が好ましく、12以下がより好ましい。
【0032】
アルキル基、アリール基およびヘテロアリール基は、置換基を有していてもよく、無置換であってもよい。置換基としては、下記の置換基T群が挙げられる。また、後述する式(W)で表される基を置換基として有していてもよい。
【0033】
(置換基T群)
ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アラルキル基、−ORZ1、−CORZ1、−COORZ1、−OCORZ1、−NRZ1Z2、−NHCORZ1、−CONRZ1Z2、−NHCONRZ1Z2、−NHCOORZ1、−SRZ1、−SO2Z1、−SO2ORZ1、−NHSO2Z1または−SO2NRZ1Z2が挙げられる。RZ1およびRZ2は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、またはアラルキル基を表し、RZ1とRZ2は、結合して環を形成してもよい。なお、−COORZ1のRZ1が水素の場合(すなわち、カルボキシル基)は、水素原子が解離してもよく(すなわち、カルボネート基)、塩の状態であってもよい。また、−SO2ORZ1のRZ1が水素原子の場合(すなわち、スルホ基)は、水素原子が解離してもよく(すなわち、スルホネート基)、塩の状態であってもよい。
【0034】
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
アルキル基の炭素数は、1〜20が好ましく、1〜15がより好ましく、1〜8が更に好ましい。アルキル基は、直鎖、分岐、環状のいずれでもよく、直鎖または分岐が好ましい。
アルケニル基の炭素数は、2〜20が好ましく、2〜12がより好ましく、2〜8が特に好ましい。アルケニル基は直鎖、分岐、環状のいずれでもよく、直鎖または分岐が好ましい。
アルキニル基の炭素数は、2〜40が好ましく、2〜30がより好ましく、2〜25が特に好ましい。アルキニル基は直鎖、分岐、環状のいずれでもよく、直鎖または分岐が好ましい。
アリール基の炭素数は、6〜30が好ましく、6〜20がより好ましく、6〜12が更に好ましい。
アラルキル基のアルキル部分は、上記アルキル基と同様である。アラルキル基のアリール部分は、上記アリール基と同様である。アラルキル基の炭素数は、7〜40が好ましく、7〜30がより好ましく、7〜25が更に好ましい。
ヘテロアリール基は、単環または縮合環が好ましく、単環または縮合数が2〜8の縮合環が好ましく、単環または縮合数が2〜4の縮合環がより好ましい。ヘテロアリール基の環を構成するヘテロ原子の数は1〜3が好ましい。ヘテロアリール基の環を構成するヘテロ原子は、窒素原子、酸素原子または硫黄原子が好ましい。ヘテロアリール基は、5員環または6員環が好ましい。ヘテロアリール基の環を構成する炭素原子の数は3〜30が好ましく、3〜18がより好ましく、3〜12がより好ましい。
アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アラルキル基、アリール基およびヘテロアリール基は、置換基を有していてもよく、無置換であってもよい。置換基としては、上述した置換基T群が挙げられる。例えば、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基などが挙げられる。また、後述する式(W)で表される基を置換基として有していてもよい。
【0035】
式(1)において、R1は、R2またはAr1と結合して環を形成していてもよく、R3は、R4またはAr2と結合して環を形成していてもよい。R1が、R2またはAr1と結合して形成する環、および、R3が、R4またはAr2と結合して形成する環としては、脂環(非芳香性の炭化水素環)、芳香環、複素環などが挙げられる。環は単環であってもよく、複環であってもよい。上記の環を形成する場合の連結基としては、−CO−、−O−、−NH−、炭素数1〜10のアルキレン基およびそれらの組み合わせからなる群より選ばれる2価の連結基で連結することができる。
【0036】
1(R3)が、R2(R4)またはAr1(Ar2)と結合して環を形成した構造としては、例えば下記構造が挙げられる。下記の構造式中、Xは水素原子または置換基を表す。
【化15】
【0037】
式(1)の好ましい態様としては、以下の<1>および<2>が挙げられ、<2>が好ましい。
【0038】
<1> 式(1)において、Ar1およびAr2が、それぞれ独立してチオフェン環またはチアゾール環を表し、R1〜R4が、それぞれ独立してアリール基またはヘテロアリール基を表す。
<2> 式(1)において、Ar1およびAr2が、それぞれ独立して、原子数8以上のπ共役平面を有する二価の共役基を表し、R1〜R4が、それぞれ独立してアルキル基、アリール基またはヘテロアリール基を表す。
【0039】
上記<1>の態様において、R1〜R4の少なくとも一つは、環を構成する原子の数が8以上のアリール基または環を構成する原子の数が8以上のヘテロアリール基であることが好ましい。この態様によれば、可視透明性および赤外遮蔽性をより向上できる。また、アリール基およびヘテロアリール基は縮合環が好ましい。具体例としては、ナフチル基および下記に示す基などが挙げられ、ナフチル基が好ましい。下記の構造式中*は、窒素原子との結合手である。
【化16】
【0040】
上記<2>の態様において、Ar1およびAr2は、それぞれ独立して、チオフェン環およびチアゾール環から選ばれる少なくとも1種を含む縮合環、または、チオフェン環、チアゾール環およびこれらの環を含む縮合環から選ばれる少なくとも1種を含む二価の共役基を表すことが好ましく、チオフェン環およびチアゾール環から選ばれる少なくとも1種を含む縮合環を表すことがより好ましい。この態様によれば、可視透明性および赤外遮蔽性をより向上できる。
【0041】
スクアリリウム化合物(1)は、Ar1、Ar2、R1、R2、R3およびR4から選ばれる少なくとも一つが、下記式(W)で表される基を有することも好ましい。
この態様によれば、化合物の溶剤や樹脂などへの溶解性を高めることができ、組成物中における化合物の凝集や析出などを抑制できる。そのため、本発明の組成物を用いて膜を製造する際に、不溶物等に由来する欠陥の発生を抑制でき、均一で、膜質の良好な膜を製造できる。
【0042】
なお、Ar1(Ar2)が置換基を有する場合、Ar1(Ar2)は、スクアリン部位に対してオルト位にアリール基およびヘテロアリール基を有さないことが好ましい。例えば、下記化合物のように、オルト位にアリール基を有する場合、立体障害により、結合がねじれて短波化や、堅牢性が低下する傾向がある。更には、オルト位のアリール基からの遷移により副吸収が増加して可視透明性が低下する場合がある。
【化17】
【0043】
(式(W)で表される基)
式(W)で表される基について説明する。
−S1−L1−T1 ・・・(W)
式(W)において、S1は、単結合、アリーレン基またはヘテロアリーレン基を表し、
1は、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、−O−、−S−、−NRL1−、−CO−、−COO−、−OCO−、−CONRL1−、−NRL1CO−、−SO2−、−ORL2−、または、これらを組み合わせてなる基を表し、RL1は、水素原子またはアルキル基を表し、RL2は、アルキレン基を表し、
1は、アルキル基、シアノ基、ヒドロキシ基、ホルミル基、カルボキシ基、アミノ基、チオール基、スルホ基、ホスホリル基、ボリル基、ビニル基、エチニル基、アリール基、ヘテロアリール基、トリアルキルシリル基またはトリアルコキシシリル基を表し、
1が単結合で、L1がアルキレン基で、T1がアルキル基の場合は、L1とT1に含まれる炭素数の総和が5以上であり、
1がアリーレン基またはヘテロアリーレン基を表す場合は、L1とT1に含まれる炭素数の総和が5以上である。
【0044】
式(W)において、S1は、単結合、アリーレン基またはヘテロアリーレン基を表し、単結合が好ましい。
アリーレン基は、単環であっても多環であってもよい。単環が好ましい。アリーレン基の炭素数は、6〜20が好ましく、6〜12がより好ましい。
ヘテロアリーレン基は、単環であっても多環であってもよい。単環が好ましい。ヘテロアリーレン基の環を構成するヘテロ原子の数は1〜3が好ましい。ヘテロアリーレン基の環を構成するヘテロ原子は、窒素原子、酸素原子、硫黄原子またはセレン原子が好ましい。ヘテロアリーレン基の環を構成する炭素原子の数は3〜30が好ましく、3〜18がより好ましく、3〜12がより好ましい。
【0045】
式(W)において、L1は、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、−O−、−S−、−NRL1−、−CO−、−COO−、−OCO−、−CONRL1−、−NRL1CO−、−SO2−、−ORL2−または、これらを組み合わせてなる基を表し、RL1は、水素原子またはアルキル基を表し、RL2は、アルキレン基を表す。L1は、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、−O−、−S−、−NRL1−、−COO−、−OCO−、−CONRL1−、−SO2−、−ORL2−または、これらを組み合わせてなる基が好ましく、柔軟性および溶剤溶解性の観点から、アルキレン基、アルケニレン基、−O−、−ORL2−または、これらを組み合わせてなる基がより好ましく、アルキレン基、アルケニレン基、−O−または−ORL2−がさらに好ましく、アルキレン基、−O−、または−ORL2−が特に好ましい。
【0046】
1が表すアルキレン基の炭素数は、1〜40が好ましい。下限は、3以上がより好ましく、5以上が更に好ましく、10以上が一層好ましく、13以上が特に好ましい。上限は、35以下がより好ましく、30以下が更に好ましい。アルキレン基は直鎖、分岐、環状のいずれでもよいが、直鎖または分岐が好ましく、分岐が特に好ましい。分岐数は、例えば、2〜10が好ましく、2〜8がより好ましい。分岐数が上記範囲であれば、溶剤溶解性が良好である。
1が表すアルケニレン基およびアルキニレン基の炭素数は、2〜40が好ましい。下限は、例えば、3以上がより好ましく、5以上が更に好ましく、8以上が一層好ましく、10以上が特に好ましい。上限は、35以下がより好ましく、30以下が更に好ましい。アルケニレン基およびアルキニレン基は直鎖、分岐のいずれでもよいが、直鎖または分岐が好ましく、分岐が特に好ましい。分岐数は、2〜10が好ましく、2〜8がより好ましい。分岐数が上記範囲であれば、溶剤溶解性が良好である。
【0047】
L1は、水素原子またはアルキル基を表し、水素原子が好ましい。アルキル基の炭素数は、1〜20が好ましく、1〜10がより好ましく、1〜4が更に好ましく、1〜2が特に好ましい。アルキル基は、直鎖、分岐のいずれでもよい。
【0048】
L2は、アルキレン基を表す。RL2が表すアルキレン基は、L1で説明したアルキレン基と同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0049】
式(W)において、T1は、アルキル基、シアノ基、ヒドロキシ基、ホルミル基、カルボキシ基、アミノ基、チオール基、スルホ基、ホスホリル基、ボリル基、ビニル基、エチニル基、アリール基、ヘテロアリール基、トリアルキルシリル基またはトリアルコキシシリル基を表す。
アルキル基、トリアルキルシリル基が有するアルキル基およびトリアルコキシシリル基が有するアルキル基の炭素数は、1〜40が好ましい。下限は、3以上がより好ましく、5以上が更に好ましく、10以上が一層好ましく、13以上が特に好ましい。上限は、35以下がより好ましく、30以下が更に好ましい。アルキル基は直鎖、分岐、環状のいずれでもよいが、直鎖または分岐が好ましい。
アリール基およびヘテロアリール基は、R1およびR2で説明したアリール基およびヘテロアリール基と同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0050】
式(W)において、S1が単結合で、L1がアルキレン基で、T1がアルキル基の場合は、L1とT1に含まれる炭素数の総和は、5以上であることが好ましく、溶剤溶解性の観点から6以上がより好ましく、8以上がさらに好ましい。上限は、例えば40以下が好ましく、35以下がより好ましい。また、S1がアリーレン基またはヘテロアリーレン基を表す場合は、L1とT1に含まれる炭素数の総和は、5以上が好ましく、溶剤溶解性の観点から6以上がより好ましく、8以上がさらに好ましい。上限は、例えば40以下が好ましく、35以下がより好ましい。
−L1−T1部分の炭素数が5以上であれば、溶解性が良好であり、不溶物等に由来する欠陥の発生を抑制でき、均一で、膜質の良好な膜を製造できる。さらには、−L1−T1部分の炭素数が5以上とすることで、結晶性を抑制できる。化合物の結晶性が高いと、膜を加熱すると化合物の結晶化が進んで、膜の吸収特性が変化することがあるが、化合物の結晶性を抑制できるので、加熱時における化合物の結晶化を抑制でき、加熱後の膜の吸収特性の変動を抑制できる。
【0051】
本発明において、式(W)の好ましい態様としては、S1が単結合であり、L1がアルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、−O−、−S−、−NRL1−、−COO−、−OCO−、−CONRL1−、−SO2−、−ORL2−または、これらを組み合わせてなる基であり、T1がアルキル基またはトリアルキルシリル基である組み合わせが挙げられる。L1は、アルキレン基、アルケニレン基、−O−、−ORL2−または、これらを組み合わせてなる基がより好ましく、アルキレン基、アルケニレン基、−O−または−ORL2−がさらに好ましく、アルキレン基、−O−、または−ORL2−が特に好ましい。T1はアルキル基がより好ましい。
【0052】
式(W)において、−L1−T1部分は、分岐アルキル構造を含むことも好ましい。具体的には、−L1−T1部分は、分岐のアルキル基または分岐のアルコキシ基であることが特に好ましい。−L1−T1部分の分岐数は、2〜10が好ましく、2〜8がより好ましい。−L1−T1部分の炭素数は、5以上が好ましく、9以上が好ましく、10以上がより好ましい。上限は、例えば40以下が好ましく、35以下がより好ましい。
【0053】
式(W)において、−L1−T1部分は、不斉炭素を含むことも好ましい。この態様によれば、スクアリリウム化合物(1)が複数の光学異性体を含むことができ、その結果、化合物(1)の溶剤溶解性をさらに向上できる。不斉炭素の数は1個以上が好ましい。不斉炭素の上限は特に限定はないが、例えば4以下が好ましい。
【0054】
なお、式(1)においてカチオンは、以下のように非局在化して存在している。
【化18】
【0055】
本発明において、スクアリリウム化合物(1)は、下式(1a)で表される化合物であることが好ましい。式(1a)で表される化合物は、本発明の化合物でもある。
【化19】
【0056】
式中、Ar11およびAr12は、それぞれ独立して、チオフェン環、チアゾール環もしくはこれらの環の少なくとも1種を含む縮合環を表し、
11〜R14は、それぞれ独立して、アルキル基、アリール基、またはヘテロアリール基を表し、
11は、R12またはAr11と結合して環を形成していてもよく、
13は、R14またはAr12と結合して環を形成していてもよく、
Ar11が、チオフェン環またはチアゾール環の場合、R11およびR12の少なくとも一つは、原子数8以上のアリール基、または、ヘテロアリール基を表し、
Ar12が、チオフェン環またはチアゾール環の場合、R13およびR14の少なくとも一つは、原子数8以上のアリール基、または、ヘテロアリール基を表す。
【0057】
Ar11およびAr12が表す、チオフェン環およびチアゾール環から選ばれる少なくとも1種を含む縮合環としては、Ar1およびAr2で説明した縮合環が挙げられ、好ましい範囲も同様である。Ar11およびAr12が表す環は、置換基を有していてもよく、無置換であってもよい。置換基としては、置換基T群および上述した式(W)で表される基が挙げられる。式(W)で表される基が好ましい。
【0058】
11〜R14が表す、アルキル基、アリール基およびヘテロアリール基は、R1〜R4で説明したアルキル基、アリール基およびヘテロアリール基と同義であり、好ましい範囲も同様である。また、R11〜R14が表す、アルキル基、アリール基およびヘテロアリール基は、置換基を有していてもよく、無置換であってもよい。置換基としては、置換基T群および上述した式(W)で表される基が挙げられる。式(W)で表される基が好ましい。
【0059】
11が、R12またはAr11と結合して形成する環、および、R13が、R14またはAr12と結合して形成する環は、式(1)で説明した、R1が、R2またはAr1と結合して形成する環が挙げられ、好ましい範囲も同様である。
【0060】
式(1a)において、Ar11、Ar12、R11、R12、R13およびR14から選ばれる少なくとも一つが、上述した式(W)で表される基を有することも好ましい。
【0061】
スクアリリウム化合物(1)の具体例としては、下記に記載の化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【化20】

【化21】

【化22】

【化23】
【0062】
(スクアリリウム化合物(1)の合成方法)
上述したスクアリリウム化合物(1)は、従来公知の方法で合成することができる。例えば、Chem. Eur. J., 2008 ,14, 11082−11091に記載された方法や、特開2009−15114号公報の段落0057〜0062に記載の方法に準じて合成することができる。
【0063】
また、クロスカップリング法により下記の中間体(A)を合成し、得られた中間体Aと、下記の化合物(B)とを反応させて合成することもできる。この合成方法は、目的の化合物を収率よく得られるので好ましい。
【化24】
【0064】
上記式中、Arは、カルコゲン原子を含むヘテロアリール環を有する2価の共役基を表す。Rは、それぞれ独立して、水素原子または置換基を表す。Xは、塩素、臭素、ヨウ素などのハロゲン原子およびトリフルオロメタンスルホニルオキシ基、ノナフルオロブタンスルホニルオキシ基などの脱離基を表す。Yは、それぞれ独立して、OH、ClまたはOR’を表し、R’は、アリール基を表す。
【0065】
中間体(A)の合成において、遷移金属触媒を使用してクロスカップリング法により、中間体(A)を合成することが好ましい。遷移金属触媒としては、パラジウム触媒、銅触媒、ニッケル触媒などが挙げられる。
【0066】
<<他の近赤外線吸収化合物>>
本発明の組成物は、上述したスクアリリウム化合物(1)以外の近赤外線吸収化合物(以下、他の近赤外線吸収化合物ともいう)を更に含有してもよい。他の近赤外線吸収化合物は、極大吸収波長が700〜1200nmの範囲に有する化合物が好ましく、極大吸収波長が700〜1000nmの範囲に有する化合物がより好ましい。
【0067】
他の近赤外線吸収化合物としては、例えば、フタロシアニン化合物、ナフタロシアニン化合物、ペリレン化合物、ピロロピロール化合物、シアニン化合物、ジチオール金属錯体化合物、ナフトキノン化合物、イミニウム化合物、アゾ化合物などが挙げられる。ピロロピロール化合物としては、例えば、特開2009−263614号公報の段落番号0016〜0058に記載の化合物などが挙げられる。また、上述したスクアリリウム化合物(1)以外のスクアリリウム化合物を用いてもよい。フタロシアニン化合物、ナフタロシアニン化合物、イミニウム化合物、シアニン化合物、スクアリリウム化合物及びクロコニウム化合物は、特開2010−111750号公報の段落0010〜0081に開示の化合物を使用してもよく、この内容は本明細書に組み込まれる。また、シアニン化合物は、例えば、「機能性色素、大河原信/松岡賢/北尾悌次郎/平嶋恒亮・著、講談社サイエンティフィック」を参酌することができ、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0068】
本発明の組成物が、他の近赤外線吸収化合物を含有する場合、他の近赤外線吸収化合物の含有量は、本発明の組成物の全固形分中0.1〜70質量%とすることが好ましい。下限は、0.5質量%以上が好ましく、1.0質量%以上がより好ましい。上限は、60質量%以下が好ましく、50質量%以下がより好ましい。本発明の組成物が、他の近赤外線吸収化合物を2種以上含む場合、その合計量が上記範囲内であることが好ましい。
また、本発明の組成物は、他の近赤外線吸収化合物を実質的に含まない態様とすることもできる。本発明の組成物が、他の近赤外線吸収化合物を実質的に含まないとは、例えば、他の近赤外線吸収化合物の含有量が、本発明の組成物の全固形分中0.05質量%以下であることが好ましく、0.01質量%以下であることがより好ましく、含有しないことが更に好ましい。
【0069】
<<有彩色着色剤>>
本発明の組成物は、有彩色着色剤を含有することができる。本発明において、有彩色着色剤とは、白色着色剤および黒色着色剤以外の着色剤を意味する。有彩色着色剤は、極大吸収波長が400〜650nmの範囲に有する着色剤が好ましい。
【0070】
本発明において、有彩色着色剤は、顔料であってもよく、染料であってもよい。好ましくは顔料である。
【0071】
顔料は、有機顔料であることが好ましく、以下のものを挙げることができる。但し本発明は、これらに限定されるものではない。
カラーインデックス(C.I.)Pigment Yellow 1,2,3,4,5,6,10,11,12,13,14,15,16,17,18,20,24,31,32,34,35,35:1,36,36:1,37,37:1,40,42,43,53,55,60,61,62,63,65,73,74,77,81,83,86,93,94,95,97,98,100,101,104,106,108,109,110,
113,114,115,116,117,118,119,120,123,125,126,127,128,129,137,138,139,147,148,150,151,152,153,154,155,156,161,162,164,166,167,168,169,170,171,172,173,174,175,176,177,179,180,181,182,185,187,188,193,194,199,213,214等(以上、黄色顔料)、
C.I.Pigment Orange 2,5,13,16,17:1,31,34,36,38,43,46,48,49,51,52,55,59,60,61,62,64,71,73等(以上、オレンジ色顔料)、
C.I.Pigment Red 1,2,3,4,5,6,7,9,10,14,17,22,23,31,38,41,48:1,48:2,48:3,48:4,49,49:1,49:2,52:1,52:2,53:1,57:1,60:1,63:1,66,67,81:1,81:2,81:3,83,88,90,105,112,119,122,123,144,146,149,150,155,166,168,169,170,171,172,175,176,177,178,179,184,185,187,188,190,200,202,206,207,208,209,210,216,220,224,226,242,246,254,255,264,270,272,279等(以上、赤色顔料)、
C.I.Pigment Green 7,10,36,37,58,59等(以上、緑色顔料)、
C.I.Pigment Violet 1,19,23,27,32,37,42等(以上、紫色顔料)、
C.I.Pigment Blue 1,2,15,15:1,15:2,15:3,15:4,15:6,16,22,60,64,66,79,80等(以上、青色顔料)、
これら有機顔料は、単独若しくは種々組合せて用いることができる。
【0072】
染料としては特に制限はなく、公知の染料が使用できる。化学構造としては、ピラゾールアゾ系、アニリノアゾ系、トリフェニルメタン系、アントラキノン系、アンスラピリドン系、ベンジリデン系、オキソノール系、ピラゾロトリアゾールアゾ系、ピリドンアゾ系、シアニン系、フェノチアジン系、ピロロピラゾールアゾメチン系、キサンテン系、フタロシアニン系、ベンゾピラン系、インジゴ系、ピロメテン系等の染料が使用できる。また、これらの染料の多量体を用いてもよい。また、特開2015−028144号公報、特開2015−34966号公報に記載の染料を用いることもできる。
【0073】
また、染料としては、酸性染料及び/又はその誘導体が好適に使用できる場合がある。
その他、直接染料、塩基性染料、媒染染料、酸性媒染染料、アゾイック染料、分散染料、油溶染料、食品染料、及び/又は、これらの誘導体等も有用に使用することができる。
【0074】
以下に酸性染料の具体例を挙げるが、これらに限定されるものではない。例えば、以下の染料および、これらの染料の誘導体が挙げられる。
acid alizarin violet N、
acid blue 1,7,9,15,18,23,25,27,29,40〜45,62,70,74,80,83,86,87,90,92,103,112,113,120,129,138,147,158,171,182,192,243,324:1、
acid chrome violet K、
acid Fuchsin;acid green 1,3,5,9,16,25,27,50、
acid orange 6,7,8,10,12,50,51,52,56,63,74,95、
acid red 1,4,8,14,17,18,26,27,29,31,34,35,37,42,44,50,51,52,57,66,73,80,87,88,91,92,94,97,103,111,114,129,133,134,138,143,145,150,151,158,176,183,198,211,215,216,217,249,252,257,260,266,274、
acid violet 6B,7,9,17,19、
acid yellow 1,3,7,9,11,17,23,25,29,34,36,42,54,72,73,76,79,98,99,111,112,114,116,184,243、
Food Yellow 3
【0075】
また、上記以外の、アゾ系、キサンテン系、フタロシアニン系の酸性染料も好ましく、C.I.Solvent Blue 44、38;C.I.Solvent orange 45;Rhodamine B、Rhodamine 110等の酸性染料及びこれらの染料の誘導体も好ましく用いられる。
なかでも、染料としては、トリアリールメタン系、アントラキノン系、アゾメチン系、ベンジリデン系、オキソノール系、シアニン系、フェノチアジン系、ピロロピラゾールアゾメチン系、キサンテン系、フタロシアニン系、ベンゾピラン系、インジゴ系、ピラゾールアゾ系、アニリノアゾ系、ピラゾロトリアゾールアゾ系、ピリドンアゾ系、アンスラピリドン系ピロメテン系から選ばれる着色剤であることが好ましい。
さらに、顔料と染料を組み合わせて使用してもよい。
【0076】
本発明の組成物が、有彩色着色剤を含有する場合、有彩色着色剤の含有量は、本発明の組成物の全固形分中0.1〜70質量%とすることが好ましい。下限は、0.5質量%以上が好ましく、1.0質量%以上がより好ましい。上限は、60質量%以下が好ましく、50質量%以下がより好ましい。
有彩色着色剤の含有量は、スクアリリウム化合物(1)の100質量部に対し、10〜1000質量部が好ましく、50〜800質量部がより好ましい。
また、有彩色着色剤とスクアリリウム化合物(1)と上述した他の近赤外線吸収化合物との合計量は、本発明の組成物の全固形分中1〜80質量%とすることが好ましい。下限は、5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましい。上限は、70質量%以下が好ましく、60質量%以下がより好ましい。
本発明の組成物が、有彩色着色剤を2種以上含む場合、その合計量が上記範囲内であることが好ましい。
【0077】
<<赤外領域の光の少なくとも一部を透過し、かつ、可視領域の光を遮光する色材(可視光を遮光する色材)>>
本発明の組成物は、可視光を遮光する色材を含有することもできる。可視光を遮光する色材は、顔料の含有量が、可視光を遮光する色材の全質量に対して、90質量%以上が好ましく、95質量%以上がより好ましく、99質量%以上が更に好ましい。可視光を遮光する色材は、複数の色材の組み合わせにより、黒色、灰色、またはそれらに近い色を呈することが好ましい。また、可視域を遮光する色材は、紫色から赤色の波長域の光を吸収する材料であることが好ましい。また、可視域を遮光する色材は、波長450〜650nmの波長域の光を遮光する色材であることが好ましい。
【0078】
本発明において、可視域を遮光する色材は、以下の(1)および(2)の少なくとも一方の要件を満たすことが好ましく、(1)の要件を満たしていることが更に好ましい。
(1):2種類以上の有彩色着色剤を含む態様。
(2):有機系黒色着色剤を含む態様。
なお、本発明において、可視域を遮光する色材としての有機系黒色着色剤は、可視領域の光を吸収するが、赤外領域の光の少なくとも一部を透過する材料を意味する。したがって、本発明において、可視域を遮光する色材としての有機系黒色着色剤は、赤外領域の光および可視領域の光の両方を吸収する黒色着色剤である、カーボンブラックやチタンブラックは含まない。
【0079】
有彩色着色剤としては、上述したものが挙げられる。有機系黒色着色剤としては、例えば、ビスベンゾフラノン化合物、アゾメチン化合物、ペリレン化合物、アゾ系化合物などが挙げられ、ビスベンゾフラノン化合物、ペリレン化合物が好ましい。ビスベンゾフラノン化合物としては、特表2010−534726号公報、特表2012−515233号公報、特表2012−515234号公報などに記載のものが挙げられ、例えば、BASF社製の「Irgaphor Black」として入手可能である。ペリレン化合物としては、C.I.Pigment Black 31、32などが挙げられる。アゾメチン化合物としては、特開平1−170601号公報、特開平2−34664号公報などに記載のものが挙げられ、例えば、大日精化社製の「クロモファインブラックA1103」として入手できる。
【0080】
本発明において、可視域を遮光する色材は、例えば、波長450〜650nmの範囲における吸光度の最小値Aと、波長900〜1300nmの範囲における吸光度の最小値Bとの比であるA/Bが4.5以上であることが好ましい。
上記の特性は、1種類の素材で満たしていてもよく、複数の素材の組み合わせで満たしていてもよい。例えば、上記(1)の態様の場合、複数の有彩色着色剤を組み合わせて上記分光特性を満たしていることが好ましい。
【0081】
可視域を遮光する色材として2種以上の有彩色着色剤を含む場合、有彩色着色剤は、有彩色着色剤は、赤色着色剤、緑色着色剤、青色着色剤、黄色着色剤、紫色着色剤およびオレンジ色着色剤から選ばれる着色剤であることが好ましい。
【0082】
有彩色着色剤を2種以上の有彩色着色剤の組み合わせで可視域を遮光する色材を形成する場合の、有彩色着色剤の組み合わせとしては、例えば以下が挙げられる。
(1)黄色着色剤、青色着色剤、紫色着色剤および赤色着色剤を含有する態様。
(2)黄色着色剤、青色着色剤および赤色着色剤を含有する態様
(3)黄色着色剤、紫色着色剤および赤色着色剤を含有する態様
(4)黄色着色剤および紫色着色剤を含有する態様
(5)緑色着色剤、青色着色剤、紫色着色剤および赤色着色剤を含有する態様
(6)紫色着色剤およびオレンジ色着色剤を含有する態様
(7)緑色着色剤、紫色着色剤および赤色着色剤を含有する態様
(8)緑色着色剤および赤色着色剤を含有する態様
【0083】
上記(1)の態様の具体例としては、黄色顔料としてのC.I.Pigment Yellow 139または185と、青色顔料としてのC.I.Pigment Blue 15:6と、紫色顔料としてのC.I.Pigment Violet 23と、赤色顔料としてのC.I.Pigment Red 254または224とを含有する態様が挙げられる。
上記(2)の態様の具体例としては、黄色顔料としてのC.I.Pigment Yellow 139または185と、青色顔料としてのC.I.Pigment Blue 15:6と、赤色顔料としてのC.I.Pigment Red 254または224とを含有する態様が挙げられる。
上記(3)の態様の具体例としては、黄色顔料としてのC.I.Pigment Yellow 139または185と、紫色顔料としてのC.I.Pigment Violet 23と、赤色顔料としてのC.I.Pigment Red 254または224とを含有する態様が挙げられる。
上記(4)の態様の具体例としては、黄色顔料としてのC.I.Pigment Yellow 139または185と、紫色顔料としてのC.I.Pigment Violet 23とを含有する態様が挙げられる。
上記(5)の態様の具体例としては、緑色顔料としてのC.I.Pigment Green 7または36と、青色顔料としてのC.I.Pigment Blue 15:6と、紫色顔料としてのC.I.Pigment Violet 23と、赤色顔料としてのC.I.Pigment Red 254または224とを含有する態様が挙げられる。
上記(6)の態様の具体例としては、紫色顔料としてのC.I.Pigment Violet 23と、オレンジ色顔料としてのC.I.Pigment Orange71とを含有する態様が挙げられる。
上記(7)の具体例としては、緑色顔料としてのC.I.Pigment Green 7または36と、紫色顔料としてのC.I.Pigment Violet 23と、赤色顔料としてのC.I.Pigment Red 254または224とを含有する態様が挙げられる。
上記(8)の具体例としては、緑色顔料としてのC.I.Pigment Green 7または36と、赤色顔料としてのC.I.Pigment Red 254または224とを含有する態様が挙げられる。
【0084】
各着色剤の比率(質量比)としては例えば以下が挙げられる。
【表1】
【0085】
本発明の組成物が、可視光を遮光する色材を含有する場合、可視光を遮光する色材の含有量は、組成物の全固形分に対して30質量%以下が好ましく、20質量%以下がより好ましく、15質量%以下が更に好ましい。下限は、例えば、0.01質量%以上とすることができ、0.5質量%以上とすることもできる。
また、本発明の組成物は、可視光を遮光する色材を実質的に含有しない態様とすることもできる。可視光を遮光する色材を実質的に含有しないとは、可視光を遮光する色材の含有量が、本発明の組成物の全固形分中、0.005質量%以下が好ましく、0.001質量%以下が更に好ましく、可視光を遮光する色材を含有しないことが一層好ましい。
【0086】
<<顔料誘導体>>
本発明の組成物は、顔料誘導体を含有することができる。顔料誘導体としては、顔料の一部分を、酸性基、塩基性基で置換した構造を有する化合物が挙げられる。顔料誘導体は、分散性及び分散安定性の観点から、酸性基又は塩基性基を有する顔料誘導体を含有することが好ましい。
【0087】
<<樹脂>>
本発明の組成物は樹脂を含む。樹脂の重量平均分子量(Mw)は、2,000〜2,000,000が好ましい。上限は、1,000,000以下が好ましく、500,000以下がより好ましい。下限は、3,000以上が好ましく、5,000以上がより好ましい。
また、エポキシ樹脂の場合、エポキシ樹脂の重量平均分子量(Mw)は、100以上が好ましく、200〜2,000,000がより好ましい。上限は、1,000,000以下が好ましく、500,000以下がより好ましい。下限は、100以上が好ましく、200以上がより好ましい。
【0088】
樹脂としては、(メタ)アクリル樹脂、エポキシ樹脂、エン・チオール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリサルホン樹脂、ポリエーテルサルホン樹脂、ポリパラフェニレン樹脂、ポリアリーレンエーテルフォスフィンオキシド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、環状オレフィン樹脂、ポリエステル樹脂が挙げられる。これらの樹脂から1種を単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
なかでも、スクアリリウム化合物(1)の樹脂に対する溶解性、および、可視透明性の観点から、(メタ)アクリル樹脂、ポリエステル樹脂およびエポキシ樹脂が好ましく、(メタ)アクリル樹脂がより好ましい。
【0089】
(メタ)アクリル樹脂としては、(メタ)アクリル酸および/またはそのエステルに由来する構成単位を含む重合体が挙げられる。具体的には、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル類、(メタ)アクリルアミドおよび(メタ)アクリロニトリルから選ばれる少なくとも1種を重合して得られる重合体が挙げられる。
【0090】
ポリエステル樹脂としては、ポリオール(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン)と、多塩基酸(例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸及びこれらの芳香核の水素原子がメチル基、エチル基、フェニル基等で置換された芳香族ジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸等の炭素数2〜20の脂肪族ジカルボン酸、及びシクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式ジカルボン酸など)との反応により得られるポリマーや、カプロラクトンモノマー等の環状エステル化合物の開環重合により得られるポリマー(例えばポリカプロラクトン)が挙げられる。
【0091】
エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂等を挙げることができる。
ビスフェノールA型エポキシ樹脂としては、JER827、JER828、JER834、JER1001、JER1002、JER1003、JER1055、JER1007、JER1009、JER1010(以上、三菱化学(株)製)、EPICLON860、EPICLON1050、EPICLON1051、EPICLON1055(以上、DIC(株)製)等が挙げられる。
ビスフェノールF型エポキシ樹脂としては、JER806、JER807、JER4004、JER4005、JER4007、JER4010(以上、三菱化学(株)製)、EPICLON830、EPICLON835(以上、DIC(株)製)、LCE−21、RE−602S(以上、日本化薬(株)製)等が挙げられる。
フェノールノボラック型エポキシ樹脂としては、JER152、JER154、JER157S70、JER157S65、(以上、三菱化学(株)製)、EPICLON N−740、EPICLON N−740、EPICLON N−770、EPICLON N−775(以上、DIC(株)製)等が挙げられる。
クレゾールノボラック型エポキシ樹脂としては、EPICLON N−660、EPICLON N−665、EPICLON N−670、EPICLON N−673、EPICLON N−680、EPICLON N−690、EPICLON N−695(以上、DIC(株)製)、EOCN−1020(以上、日本化薬(株)製)等が挙げられる。
脂肪族エポキシ樹脂としては、ADEKA RESIN EP−4080S、同EP−4085S、同EP−4088S(以上、(株)ADEKA製)セロキサイド2021P、セロキサイド2081、セロキサイド2083、セロキサイド2085、EHPE3150、EPOLEAD PB 3600、同PB 4700(以上、(株)ダイセル製)、デナコール EX−212L、EX−214L、EX−216L、EX−321L、EX−850L(以上、ナガセケムテックス(株)製)等が挙げられる。
その他にも、ADEKA RESIN EP−4000S、同EP−4003S、同EP−4010S、同EP−4011S(以上、(株)ADEKA製)、NC−2000、NC−3000、NC−7300、XD−1000、EPPN−501、EPPN−502(以上、(株)ADEKA製)、JER1031S(三菱化学(株)製)、リポキシ SPCF−9X(昭和電工(株)製)等が挙げられる。
【0092】
また、樹脂は、酸基を有していてもよい。酸基としては、例えば、カルボキシル基、リン酸基、スルホン酸基、フェノール性ヒドロキシル基などが挙げられる。これら酸基は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0093】
酸基を有する樹脂としては、側鎖にカルボキシル基を有するポリマーが好ましく、メタクリル酸共重合体、アクリル酸共重合体、イタコン酸共重合体、クロトン酸共重合体、マレイン酸共重合体、部分エステル化マレイン酸共重合体、ノボラック型樹脂などのアルカリ可溶性フェノール樹脂等、並びに側鎖にカルボキシル基を有する酸性セルロース誘導体、ヒドロキシル基を有するポリマーに酸無水物を付加させたものが挙げられる。特に、(メタ)アクリル酸と、これと共重合可能な他のモノマーとの共重合体が好適である。(メタ)アクリル酸と共重合可能な他のモノマーとしては、アルキル(メタ)アクリレート、アリール(メタ)アクリレート、ビニル化合物などが挙げられる。アルキル(メタ)アクリレートおよびアリール(メタ)アクリレートとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、トリル(メタ)アクリレート、ナフチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等、ビニル化合物としては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、グリシジルメタクリレート、アクリロニトリル、ビニルアセテート、N−ビニルピロリドン、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、ポリスチレンマクロモノマー、ポリメチルメタクリレートマクロモノマー等、特開平10−300922号公報に記載のN位置換マレイミドモノマーとして、N―フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等を挙げることができる。なお、これらの(メタ)アクリル酸と共重合可能な他のモノマーは1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0094】
酸基を有する樹脂は、ベンジル(メタ)アクリレート/(メタ)アクリル酸共重合体、ベンジル(メタ)アクリレート/(メタ)アクリル酸/2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート共重合体、ベンジル(メタ)アクリレート/(メタ)アクリル酸/他のモノマーからなる多元共重合体が好ましく用いることができる。また、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートを共重合したもの、特開平7−140654号公報に記載の、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート/ポリスチレンマクロモノマー/ベンジルメタクリレート/メタクリル酸共重合体、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート/ポリメチルメタクリレートマクロモノマー/ベンジルメタクリレート/メタクリル酸共重合体、2−ヒドロキシエチルメタクリレート/ポリスチレンマクロモノマー/メチルメタクリレート/メタクリル酸共重合体、2−ヒドロキシエチルメタクリレート/ポリスチレンマクロモノマー/ベンジルメタクリレート/メタクリル酸共重合体なども好ましく用いることができる。
【0095】
酸基を有する樹脂は、下記一般式(ED1)で示される化合物および/または下記一般式(ED2)で表される化合物(以下、これらの化合物を「エーテルダイマー」と称することもある。)を含むモノマー成分を重合してなるポリマーを含むことも好ましい。
【0096】
【化25】
【0097】
一般式(ED1)中、R1およびR2は、それぞれ独立して、水素原子または置換基を有していてもよい炭素数1〜25の炭化水素基を表す。
【化26】

一般式(ED2)中、Rは、水素原子または炭素数1〜30の有機基を表す。一般式(ED2)の具体例としては、特開2010−168539号公報の記載を参酌できる。
【0098】
一般式(ED1)中、R1およびR2で表される置換基を有していてもよい炭素数1〜25の炭化水素基としては、特に制限はないが、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、tert−アミル、ステアリル、ラウリル、2−エチルヘキシル等の直鎖状または分岐状のアルキル基;フェニル等のアリール基;シクロヘキシル、tert−ブチルシクロヘキシル、ジシクロペンタジエニル、トリシクロデカニル、イソボルニル、アダマンチル、2−メチル−2−アダマンチル等の脂環式基;1−メトキシエチル、1−エトキシエチル等のアルコキシで置換されたアルキル基;ベンジル等のアリール基で置換されたアルキル基;等が挙げられる。これらの中でも特に、メチル、エチル、シクロヘキシル、ベンジル等のような酸や熱で脱離しにくい1級または2級炭素の置換基が耐熱性の点で好ましい。
【0099】
エーテルダイマーの具体例としては、例えば、特開2013−29760号公報の段落0317を参酌することができ、この内容は本明細書に組み込まれる。エーテルダイマーは、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。一般式(ED)で示される化合物由来の構造体は、その他のモノマーを共重合させてもよい。
【0100】
酸基を有する樹脂は、下記式(X)で示される化合物に由来する構造単位を含んでいてもよい。
【化27】

式(X)において、R1は、水素原子またはメチル基を表し、R2は炭素数2〜10のアルキレン基を表し、R3は、水素原子またはベンゼン環を含んでもよい炭素数1〜20のアルキル基を表す。nは1〜15の整数を表す。
【0101】
上記式(X)において、R2のアルキレン基の炭素数は、2〜3が好ましい。また、R3のアルキル基の炭素数は1〜20であるが、より好ましくは1〜10であり、R3のアルキル基はベンゼン環を含んでもよい。R3で表されるベンゼン環を含むアルキル基としては、ベンジル基、2−フェニル(イソ)プロピル基等を挙げることができる。
【0102】
酸基を有する樹脂としては、特開2012−208494号公報の段落0558〜0571(対応する米国特許出願公開第2012/0235099号明細書の<0685>〜<0700>)以降の記載、特開2012−198408号公報の段落0076〜0099の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0103】
酸基を有する樹脂の酸価は、30〜200mgKOH/gが好ましい。下限は、50mgKOH/g以上が好ましく、70mgKOH/g以上がより好ましい。上限は、150mgKOH/g以下が好ましく、120mgKOH/g以下がより好ましい。
【0104】
樹脂は、架橋性基を有していてもよい。本発明において、架橋性基は、熱、光、またはラジカルの作用により反応して化学結合を形成しうる基を意味する。具体的には、エチレン性不飽和結合を有する基、環状エーテル基、メチロール基、アルコキシシリル基、クロロシリル基などが挙げられる。架橋性基を有する樹脂としては、例えば、架橋性基を有する構成単位を含む樹脂や、上述したエポキシ樹脂などが挙げられる。架橋性基を有する構成単位としては、下記式(A2−1)〜(A2−4)などが挙げられる。
【化28】
【0105】
1は、水素原子またはアルキル基を表す。アルキル基の炭素数は、1〜5が好ましく、1〜3がさらに好ましく、1が特に好ましい。R1は、水素原子またはメチル基が好ましい。
【0106】
51は、単結合または2価の連結基を表す。2価の連結基としては、アルキレン基、アリーレン基、−O−、−S−、−CO−、−COO−、−OCO−、−SO2−、−NR10−(R10は水素原子あるいはアルキル基を表し、水素原子が好ましい)、または、これらの組み合わせからなる基が挙げられ、アルキレン基、アリーレン基およびアルキレン基の少なくとも1つと−O−との組み合わせからなる基が好ましい。アルキレン基の炭素数は、1〜30が好ましく、1〜15より好ましく、1〜10がさらに好ましい。アルキレン基は、置換基を有していてもよいが、無置換が好ましい。アルキレン基は、直鎖、分岐、環状のいずれであってもよい。また、環状のアルキレン基は、単環、多環のいずれであってもよい。アリーレン基の炭素数は、6〜18が好ましく、6〜14がより好ましく、6〜10がさらに好ましい。
【0107】
1は、架橋性基を表す。架橋性基としては、エチレン性不飽和結合を有する基、環状エーテル基、メチロール基、アルコキシシリル基、クロロシリル基等が挙げられる。エチレン性不飽和結合を有する基、環状エーテル基、アルコキシシリル基、クロロシリル基が好ましい。エチレン性不飽和結合を有する基としては、ビニル基、(メタ)アリル基、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基などが挙げられる。環状エーテル基としては、エポキシ基(オキシラニル基)、オキセタニル基などが挙げられる。アルコキシシリル基としては、モノアルコキシシリル基、ジアルコキシシリル基、トリアルコキシシリル基が挙げられる。エチレン性不飽和結合を有する基は、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基が好ましい。環状エーテル基は、エポキシ基が好ましい。アルコキシシリル基は、ジアルコキシシリル基、トリアルコキシシリル基が好ましい。また、アルコキシシリル基におけるアルコキシ基の炭素数は、1〜5が好ましく、1〜3がより好ましく、1または2が特に好ましい。クロロシリル基としては、モノクロロシリル基、ジクロロシリル基、トリクロロシリル基が挙げられ、ジクロロシリル基、トリクロロシリル基が好ましく、トリクロロシリル基がより好ましい。
【0108】
架橋性基を含有する樹脂としては、ダイヤナ−ルNRシリーズ(三菱レイヨン株式会社製)、Photomer6173(COOH含有 polyurethane acrylic oligomer.Diamond Shamrock Co.Ltd.,製)、ビスコートR−264、KSレジスト106(いずれも大阪有機化学工業株式会社製)、サイクロマーPシリーズ(例えば、ACA230AA)、プラクセル CF200シリーズ(いずれも(株)ダイセル製)、Ebecryl3800(ダイセルユーシービー株式会社製)、アクリキュア−RD−F8(日本触媒(株)製)などが挙げられる。また、上述したエポキシ樹脂なども挙げられる。
【0109】
樹脂は、下記式(A3−1)〜(A3−7)で表される構成単位を有することも好ましい。
【化29】

式中、R5は水素原子またはアルキル基を表し、L4〜L7はそれぞれ独立に、単結合または2価の連結基を表し、R10〜R13はそれぞれ独立にアルキル基またはアリール基を表す。R14およびR15は、それぞれ独立に、水素原子または置換基を表す。
【0110】
5は、式(A2−1)〜(A2−4)のR1と同義であり、好ましい範囲も同様である。
4〜L7は、式(A2−1)〜(A2−4)のL1と同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0111】
10が表すアルキル基は、直鎖状、分岐状または環状のいずれでもよく、環状が好ましい。アルキル基は上述した置換基を有していてもよく、無置換であってもよい。アルキル基の炭素数は、1〜30が好ましく、1〜20がより好ましく、1〜10がさらに好ましい。R10が表すアリール基の炭素数は6〜18が好ましく、6〜12がより好ましく、6がさらに好ましい。R10は、環状のアルキル基またはアリール基が好ましい。
【0112】
11、R12が表すアルキル基は、直鎖状、分岐状または環状のいずれでも良く、直鎖状または分岐状が好ましい。アルキル基は上述した置換基を有していてもよく、無置換であってもよい。アルキル基の炭素数は1〜12が好ましく、1〜6がより好ましく、1〜4が更に好ましい。R11,R12が表すアリール基の炭素数は6〜18が好ましく、6〜12がより好ましく、6が更に好ましい。R11、R12は、直鎖状または分岐状のアルキル基が好ましい。
【0113】
13が表すアルキル基は、直鎖状、分岐状または環状のいずれでも良く、直鎖状または分岐状が好ましい。アルキル基は上述した置換基を有していてもよく、無置換であってもよい。アルキル基の炭素数は1〜12が好ましく、1〜6がより好ましく、1〜4が更に好ましい。R13が表すアリール基の炭素数は6〜18が好ましく、6〜12がより好ましく、6が更に好ましい。R13は、直鎖状または分岐状のアルキル基、または、アリール基が好ましい。
ル基が好ましい。
【0114】
14およびR15が表す置換基は、置換基T群で説明される基が挙げられる。なかでも、R14およびR15の少なくとも一方は、シアノ基または、−COORaを表すことが好ましい。Raは、水素原子または置換基を表す。Raが有しうる置換基は、置換基T群で説明される基が挙げられる。例えば、アルキル基、アリール基が好ましい。
【0115】
樹脂の含有量は、組成物の全固形分に対し、1〜80質量%が好ましい。下限は、5質量%以上が好ましく、7質量%以上がより好ましい。上限は、50質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましい。
【0116】
<<架橋性基を有する化合物(架橋性化合物)>>
本発明の組成物は、架橋性基を有する化合物(架橋性化合物)を含有することができる。組成物が、架橋性化合物を含有することにより、耐熱性および耐溶剤性に優れた膜を形成できる。架橋性化合物としては、ラジカル、酸、熱により架橋可能な公知の化合物を用いることができる。例えば、エチレン性不飽和結合を有する基を有する化合物、環状エーテル基を有する化合物、メチロール基を有する化合物、アルコキシシリル基、クロロシリル基を有する化合物等が挙げられる。エチレン性不飽和結合を有する基、環状エーテル基、アルコキシシリル基、クロロシリル基の詳細については、上述した樹脂で説明した基が挙げられる。
【0117】
架橋性化合物は、モノマー、ポリマーのいずれの形態であってもよいがモノマーが好ましい。モノマータイプの架橋性化合物は、分子量が100〜3000であることが好ましい。上限は、2000以下が好ましく、1500以下が更に好ましい。下限は、150以上が好ましく、250以上が更に好ましい。また、架橋性化合物は、分子量分布を実質的に有さない化合物であることも好ましい。ここで、分子量分布を実質的に有さないとは、化合物の分散度(重量量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn))が、1.0〜1.5であることが好ましく、1.0〜1.3がより好ましい。
【0118】
[エチレン性不飽和結合を有する基を有する化合物]
本発明において、架橋性化合物として、エチレン性不飽和結合を有する基を有する化合物を用いることができる。エチレン性不飽和結合を有する基を有する化合物は、モノマーであることが好ましい。エチレン性不飽和結合を有する基を有する化合物の分子量は、100〜3000が好ましい。上限は、2000以下が好ましく、1500以下が更に好ましい。下限は、150以上が好ましく、250以上が更に好ましい。エチレン性不飽和結合を有する基を有する化合物は、3〜15官能の(メタ)アクリレート化合物であることが好ましく、3〜6官能の(メタ)アクリレート化合物であることがより好ましい。
上記化合物の例としては、特開2013−253224号公報の段落0033〜0034の記載を参酌することができ、この内容は本明細書に組み込まれる。上記化合物としては、エチレンオキシ変性ペンタエリスリトールテトラアクリレート(市販品としては、NKエステルATM−35E;新中村化学社製)、ジペンタエリスリトールトリアクリレート(市販品としては、KAYARAD D−330;日本化薬株式会社製)、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート(市販品としては、KAYARAD D−320;日本化薬株式会社製)ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート(市販品としては KAYARAD D−310;日本化薬株式会社製)、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート(市販品としては、KAYARAD DPHA;日本化薬株式会社製、A−DPH−12E;新中村化学工業社製)、およびこれらの(メタ)アクリロイル基がエチレングリコール、プロピレングリコール残基を介している構造が好ましい。またこれらのオリゴマータイプも使用できる。また、特開2013−253224号公報の段落0034〜0038の重合性化合物の記載を参酌することができ、この内容は本明細書に組み込まれる。また、特開2012−208494号公報段落0477(対応する米国特許出願公開第2012/0235099号明細書の<0585>)に記載の重合性モノマー等が挙げられ、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
また、ジグリセリンEO(エチレンオキシド)変性(メタ)アクリレート(市販品としては M−460;東亜合成製)が好ましい。ペンタエリスリトールテトラアクリレート(新中村化学製、A−TMMT)、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート(日本化薬社製、KAYARAD HDDA)も好ましい。これらのオリゴマータイプも使用できる。例えば、RP−1040(日本化薬株式会社製)などが挙げられる。
【0119】
エチレン性不飽和結合を有する基を有する化合物は、カルボキシル基、スルホ基、リン酸基等の酸基を有していてもよい。酸基を有する上記化合物としては、脂肪族ポリヒドロキシ化合物と不飽和カルボン酸とのエステルなどが挙げられる。脂肪族ポリヒドロキシ化合物の未反応のヒドロキシル基に、非芳香族カルボン酸無水物を反応させて酸基を持たせた化合物が好ましく、特に好ましくは、このエステルにおいて、脂肪族ポリヒドロキシ化合物がペンタエリスリトールおよび/またはジペンタエリスリトールであるものである。市販品としては、例えば、東亞合成株式会社製の多塩基酸変性アクリルオリゴマーとして、アロニックスシリーズのM−305、M−510、M−520などが挙げられる。酸基を有する化合物の酸価は、0.1〜40mgKOH/gが好ましい。下限は5mgKOH/g以上が好ましい。上限は、30mgKOH/g以下が好ましい。
【0120】
エチレン性不飽和結合を有する基を有する化合物は、カプロラクトン構造を有する化合物も好ましい態様である。カプロラクトン構造を有する化合物としては、分子内にカプロラクトン構造を有する限り特に限定されるものではないが、例えば、トリメチロールエタン、ジトリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、グリセリン、ジグリセロール、トリメチロールメラミン等の多価アルコールと、(メタ)アクリル酸及びε−カプロラクトンをエステル化することにより得られる、ε−カプロラクトン変性多官能(メタ)アクリレートを挙げることができる。カプロラクトン構造を有する化合物としては、特開2013−253224号公報の段落0042〜0045の記載を参酌することができ、この内容は本明細書に組み込まれる。カプロラクトン構造を有する化合物は、例えば、日本化薬(株)からKAYARAD DPCAシリーズとして市販されている、DPCA−20、DPCA−30、DPCA−60、DPCA−120等、サートマー社製のエチレンオキシ鎖を4個有する4官能アクリレートであるSR−494、イソブチレンオキシ鎖を3個有する3官能アクリレートであるTPA−330などが挙げられる。
【0121】
エチレン性不飽和結合を有する基を有する化合物としては、特公昭48−41708号公報、特開昭51−37193号公報、特公平2−32293号公報、特公平2−16765号公報に記載されているようなウレタンアクリレート類や、特公昭58−49860号公報、特公昭56−17654号公報、特公昭62−39417号公報、特公昭62−39418号公報記載のエチレンオキサイド系骨格を有するウレタン化合物類も好適である。また、特開昭63−277653号公報、特開昭63−260909号公報、特開平1−105238号公報に記載される、分子内にアミノ構造やスルフィド構造を有する付加重合性化合物類を用いることができる。
市販品としては、ウレタンオリゴマーUAS−10、UAB−140(山陽国策パルプ社製)、UA−7200(新中村化学社製)、DPHA−40H(日本化薬社製)、UA−306H、UA−306T、UA−306I、AH−600、T−600、AI−600(共栄社製)などが挙げられる。
【0122】
[環状エーテル基を有する化合物]
本発明では、架橋性化合物として、環状エーテル基を有する化合物を用いることもできる。環状エーテル基としては、エポキシ基、オキセタニル基などが挙げられ、エポキシ基が好ましい。環状エーテル基を有する化合物としては、単官能または多官能グリシジルエーテル化合物や、多官能脂肪族グリシジルエーテル化合物などが挙げられる。また、グリシジル(メタ)アクリレートやアリルグリシジルエーテル等のエポキシ基としてグリシジル基を有する化合物や、脂環式エポキシ基を有する化合物を用いることもできる。このようなものとしては例えば特開2009−265518号公報段落0045等の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。また、上述した樹脂で説明したエポキシ樹脂なども挙げられる。環状エーテル基を有する化合物は、市販品を用いることもできる。環状エーテル基を有する化合物の市販品としては、例えば、特開2012−155288号公報段落0191等の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0123】
[アルコキシシリル基を有する化合物]
本発明では、架橋性化合物として、アルコキシシリル基を有する化合物を用いることもできる。アルコキシシリル基におけるアルコキシ基の炭素数は、1〜5が好ましく、1〜3がより好ましく、1または2が特に好ましい。アルコキシシリル基は、ジアルコキシシリル基またはトリアルコキシシリル基が好ましい。アルコキシシリル基は、一分子中に2個以上有することが好ましく、2〜3個有することがさらに好ましい。アルコキシシリル基を有する化合物の具体例としては、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、1,6−ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(ビニルベンジル)−2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリメトキシシランの塩酸塩、トリス−(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシランなどが挙げられる。また、上記以外にアルコキシオリゴマーを用いることができる。また、下記化合物を用いることもできる。
【化30】
【0124】
市販品としては、信越シリコーン社製の KBM−13、KBM−22、KBM−103、KBE−13、KBE−22、KBE−103、KBM−3033、KBE−3033、KBM−3063、KBM−3066、KBM−3086、KBE−3063、KBE−3083、KBM−3103、KBM−3066、KBM−7103、SZ−31、KPN−3504、KBM−1003、KBE−1003、KBM−303、KBM−402、KBM−403、KBE−402、KBE−403、KBM−1403、KBM−502、KBM−503、KBE−502、KBE−503、KBM−5103、KBM−602、KBM−603、KBM−903、KBE−903、KBE−9103、KBM−573、KBM−575、KBM−9659、KBE−585、KBM−802、KBM−803、KBE−846、KBE−9007、X−40−1053、X−41−1059A、X−41−1056、X−41−1805、X−41−1818、X−41−1810、X−40−2651、X−40−2655A、KR−513,KC−89S,KR−500、X−40−9225、X−40−9246、X−40−9250、KR−401N、X−40−9227、X−40−9247、KR−510、KR−9218、KR−213、X−40−2308、X−40−9238などが挙げられる。
【0125】
[クロロシシリル基を有する化合物]
本発明では、架橋性化合物として、クロロシリル基を有する化合物を用いることもできる。クロロシリル基は、ジクロロシリル基またはトリクロロシリル基が好ましい。クロロシリル基は、一分子中に2個以上有することが好ましく、2〜3個有することがさらに好ましい。クロロシリル基を有する化合物は、メチルトリクロロシラン、エチルトリクロロシラン、フェニルトリクロロシラン、ジクロロ(メチル)フェニルシラン、ジメチルジクロロシラン、ジエチルジクロロシランなどが挙げられる。
【0126】
架橋性化合物の含有量は、組成物の全固形分に対して、1〜90質量%が好ましい。下限は、2質量以上が好ましく、5質量%以上が更に好ましく、10質量以上が特に好ましい。上限は、80質量%以下が好ましく、75質量%以下がより好ましい。
架橋性化合物は、1種類のみでもよく、2種類以上でもよい。2種類以上の場合は、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0127】
<<光重合開始剤>>
本発明の組成物は、光重合開始剤を含有することができる。特に、組成物が、エチレン性不飽和結合を有する基を有する樹脂や架橋性化合物など、ラジカル重合性成分を含む場合、光重合開始剤を含有することが好ましい。光重合開始剤としては、特に制限はなく、公知の光重合開始剤の中から適宜選択することができる。例えば、紫外線領域から可視の光線に対して感光性を有するものが好ましい。光重合開始剤は、光ラジカル重合開始剤が好ましい。また、光重合開始剤は、約300nm〜800nm(330nm〜500nmがより好ましい。)の範囲内に少なくとも約50のモル吸光係数を有する化合物を、少なくとも1種含有していることが好ましい。
【0128】
光重合開始剤としては、例えば、ハロゲン化炭化水素誘導体(例えば、トリアジン骨格を有するもの、オキサジアゾール骨格を有するもの、など)、アシルホスフィンオキサイド等のアシルホスフィン化合物、ヘキサアリールビイミダゾール、オキシム誘導体等のオキシム化合物、有機過酸化物、チオ化合物、ケトン化合物、芳香族オニウム塩、ケトオキシムエーテル、アミノアセトフェノン化合物、ヒドロキシアセトフェノンなどが挙げられる。トリアジン骨格を有するハロゲン化炭化水素化合物としては、例えば、若林ら著、Bull.Chem.Soc.Japan,42、2924(1969)記載の化合物、英国特許1388492号明細書記載の化合物、特開昭53−133428号公報記載の化合物、独国特許3337024号明細書記載の化合物、F.C.SchaeferなどによるJ.Org.Chem.;29、1527(1964)記載の化合物、特開昭62−58241号公報記載の化合物、特開平5−281728号公報記載の化合物、特開平5−34920号公報記載化合物、米国特許第4212976号明細書に記載されている化合物、などが挙げられる。
【0129】
また、露光感度の観点から、トリハロメチルトリアジン化合物、ベンジルジメチルケタール化合物、α−ヒドロキシケトン化合物、α−アミノケトン化合物、アシルホスフィン化合物、フォスフィンオキサイド化合物、メタロセン化合物、オキシム化合物、トリアリルイミダゾールダイマー、オニウム化合物、ベンゾチアゾール化合物、ベンゾフェノン化合物、アセトフェノン化合物及びその誘導体、シクロペンタジエン−ベンゼン−鉄錯体及びその塩、ハロメチルオキサジアゾール化合物、3−アリール置換クマリン化合物からなる群より選択される化合物が好ましい。
【0130】
光重合開始剤としては、ヒドロキシアセトフェノン化合物、アミノアセトフェノン化合物、及び、アシルホスフィン化合物も好適に用いることができる。より具体的には、例えば、特開平10−291969号公報に記載のアミノアセトフェノン系開始剤、特許第4225898号公報に記載のアシルホスフィン系開始剤も用いることができる。ヒドロキシアセトフェノン系開始剤としては、IRGACURE−184、DAROCUR−1173、IRGACURE−500、IRGACURE−2959,IRGACURE−127(商品名:いずれもBASF社製)を用いることができる。アミノアセトフェノン系開始剤としては、市販品であるIRGACURE−907、IRGACURE−369、及び、IRGACURE−379EG(商品名:いずれもBASF社製)を用いることができる。アミノアセトフェノン系開始剤は、365nm又は405nm等の長波光源に吸収波長がマッチングされた特開2009−191179公報に記載の化合物も用いることができる。
アシルホスフィン系開始剤としては、市販品であるIRGACURE−819やDAROCUR−TPO(商品名:いずれもBASF社製)を用いることができる。
【0131】
光重合開始剤として、より好ましくはオキシム化合物が挙げられる。オキシム化合物の具体例としては、特開2001−233842号公報記載の化合物、特開2000−80068号公報記載の化合物、特開2006−342166号公報記載の化合物を用いることができる。
【0132】
好適に用いることのできるオキシム化合物としては、例えば、3−ベンゾイロキシイミノブタン−2−オン、3−アセトキシイミノブタン−2−オン、3−プロピオニルオキシイミノブタン−2−オン、2−アセトキシイミノペンタン−3−オン、2−アセトキシイミノ−1−フェニルプロパン−1−オン、2−ベンゾイロキシイミノ−1−フェニルプロパン−1−オン、3−(4−トルエンスルホニルオキシ)イミノブタン−2−オン、及び2−エトキシカルボニルオキシイミノ−1−フェニルプロパン−1−オンなどが挙げられる。また、J.C.S.Perkin II(1979年)pp.1653−1660)、J.C.S.Perkin II(1979年)pp.156−162、Journal of Photopolymer Science and Technology(1995年)pp.202−232、特開2000−66385号公報記載の化合物、特開2000−80068号公報、特表2004−534797号公報、特開2006−342166号公報の各公報に記載の化合物等も挙げられる。市販品ではIRGACURE−OXE01(BASF社製)、IRGACURE−OXE02(BASF社製)も好適に用いられる。また、TR−PBG−304(常州強力電子新材料有限公司社製)、アデカアークルズNCI−930(ADEKA社製)も用いることができる。
【0133】
また上記記載以外のオキシム化合物として、カルバゾールN位にオキシムが連結した特表2009−519904号公報に記載の化合物、ベンゾフェノン部位にヘテロ置換基が導入された米国特許第7626957号公報に記載の化合物、色素部位にニトロ基が導入された特開2010−15025号公報及び米国特許公開2009−292039号記載の化合物、国際公開特許2009−131189号公報に記載のケトオキシム化合物、トリアジン骨格とオキシム骨格を同一分子内に含有する米国特許7556910号公報に記載の化合物、405nmに極大吸収を有しg線光源に対して良好な感度を有する特開2009−221114号公報記載の化合物、特開2014−137466号公報の段落番号0076〜0079に記載された化合物などを用いてもよい。
好ましくは、例えば、特開2013−29760号公報の段落0274〜0275を参酌することができ、この内容は本明細書に組み込まれる。
具体的には、オキシム化合物としては、下記式(OX−1)で表される化合物が好ましい。なお、オキシムのN−O結合が(E)体のオキシム化合物であっても、(Z)体のオキシム化合物であっても、(E)体と(Z)体との混合物であってもよい。
【0134】
【化31】
【0135】
一般式(OX−1)中、RおよびBは各々独立に一価の置換基を表し、Aは二価の有機基を表し、Arはアリール基を表す。
一般式(OX−1)中、Rで表される一価の置換基としては、一価の非金属原子団であることが好ましい。
一価の非金属原子団としては、アルキル基、アリール基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、複素環基、アルキルチオカルボニル基、アリールチオカルボニル基等が挙げられる。また、これらの基は、1以上の置換基を有していてもよい。また、前述した置換基は、さらに他の置換基で置換されていてもよい。
置換基としてはハロゲン原子、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基またはアリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシル基、アルキル基、アリール基等が挙げられる。
一般式(OX−1)中、Bで表される一価の置換基としては、アリール基、複素環基、アリールカルボニル基、又は、複素環カルボニル基が好ましい。これらの基は1以上の置換基を有していてもよい。置換基としては、前述した置換基が例示できる。
一般式(OX−1)中、Aで表される二価の有機基としては、炭素数1〜12のアルキレン基、シクロアルキレン基、アルキニレン基が好ましい。これらの基は1以上の置換基を有していてもよい。置換基としては、前述した置換基が例示できる。
【0136】
本発明は、光重合開始剤として、フルオレン環を有するオキシム化合物を用いることもできる。フルオレン環を有するオキシム化合物の具体例としては、特開2014−137466号公報記載の化合物が挙げられる。この内容は本明細書に組み込まれることとする。
【0137】
光重合開始剤として、フッ素原子を有するオキシム化合物を用いることもできる。フッ素原子を有するオキシム化合物の具体例としては、特開2010−262028号公報記載の化合物、特表2014−500852号公報記載の化合物24、36〜40、特開2013−164471号公報記載の化合物(C−3)などが挙げられる。この内容は本明細書に組み込まれることとする。
【0138】
光重合開始剤として、ニトロ基を有するオキシム化合物を用いることができる。ニトロ基を有するオキシム化合物の具体例としては、特開2013−114249号公報の段落0031〜0047、特開2014−137466号公報の段落0008〜0012、0070〜0079に記載されている化合物や、アデカアークルズNCI−831(ADEKA社製)が挙げられる。
【0139】
好ましく使用されるオキシム化合物の具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0140】
【化32】

【化33】
【0141】
オキシム化合物は、350nm〜500nmの波長領域に極大吸収波長を有する化合物が好ましく、360nm〜480nmの波長領域に吸収波長を有する化合物がより好ましく、365nm及び405nmの吸光度が高い化合物が特に好ましい。
【0142】
オキシム化合物は、365nm又は405nmにおけるモル吸光係数は、感度の観点から、1,000〜300,000であることが好ましく、2,000〜300,000であることがより好ましく、5,000〜200,000であることが特に好ましい。化合物のモル吸光係数の測定は、公知の方法を用いることができるが、具体的には、例えば、紫外可視分光光度計(Varian社製Cary−5 spectrophotometer)にて、酢酸エチル溶媒を用い、0.01g/Lの濃度で測定することが好ましい。
【0143】
光重合開始剤の含有量は、組成物の全固形分に対し0.1〜50質量%が好ましく、より好ましくは0.5〜30質量%であり、さらに好ましくは1〜20質量%である。この範囲で、より良好な感度とパターン形成性が得られる。組成物は、光重合開始剤を、1種類のみを含んでいてもよいし、2種類以上含んでいてもよい。2種類以上含む場合は、その合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0144】
<<酸発生剤>>
本発明の組成物は、酸発生剤を含有することができる。特に、組成物が、環状エーテル基を有する樹脂や架橋性化合物など、カチオン重合性成分を含む場合、酸発生剤を含有することが好ましい。酸発生剤は、光照射により酸を発生する化合物(光酸発生剤)が好ましい。酸発生剤としては、光照射により分解して酸を発生する、ジアゾニウム塩、ホスホニウム塩、スルホニウム塩、ヨードニウム塩などのオニウム塩化合物、イミドスルホネート、オキシムスルホネート、ジアゾジスルホン、ジスルホン、オルト−ニトロベンジルスルホネート等のスルホネート化合物などを挙げることができる。酸発生剤の種類、具体的化合物、および好ましい例としては、特開2008−13646号公報の段落番号〔0066〕〜〔0122〕に記載の化合物などを挙げることができ、これらを本発明にも適用することができる。
【0145】
酸発生剤として好ましい化合物は、下記式(b1)、(b2)、(b3)で表される化合物を挙げることができる。
【化34】
【0146】
式(b1)において、R201、R202、及びR203は、各々独立に有機基を表す。X-は、非求核性アニオンを表し、好ましくはスルホン酸アニオン、カルボン酸アニオン、ビス(アルキルスルホニル)アミドアニオン、トリス(アルキルスルホニル)メチドアニオン、BF4-、PF6-、SbF6-や以下に示す基などが挙げられ、好ましくはBF4-、PF6-、SbF6-である。
【0147】
酸発生剤の市販品としては、WPAG−469(和光純薬(社)製)、CPI−100P(サンアプロ(株)製)などが挙げられる。
【0148】
酸発生剤の含有量は、組成物の全固形分に対し0.1〜50質量%が好ましく、より好ましくは0.5〜30質量%であり、さらに好ましくは1〜20質量%である。本発明の組成物は、酸発生剤を、1種類のみを含んでいてもよいし、2種類以上含んでいてもよい。2種類以上含む場合は、その合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0149】
<<架橋助剤>>
本発明の組成物は、架橋性成分(架橋性基を有する樹脂や架橋性化合物)の架橋反応を促進させることなどを目的として、架橋助剤を含むことが好ましい。架橋助剤としては、多価チオール、アルコール、アミンおよびカルボン酸から選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。架橋助剤の含有量は、架橋性化合物の100質量部に対し1〜1000質量部が好ましく、より好ましくは1〜500質量部であり、さらに好ましくは1〜200質量部である。組成物は、架橋助剤を、1種類のみを含んでいてもよいし、2種類以上含んでいてもよい。2種類以上含む場合は、その合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0150】
(多官能チオール)
多官能チオールは、分子内に2個以上のチオール基を有する化合物が挙げられる。多官能チオールは、2級のアルカンチオール類であることが好ましく、特に下記一般式(T1)で表される構造を有する化合物であることが好ましい。
一般式(T1)
【化35】

(式(T1)中、nは2〜4の整数を表し、Lは2〜4価の連結基を表す。)
【0151】
上記一般式(T1)において、連結基Lは炭素数2〜12の脂肪族基であることが好ましく、nが2であり、Lが炭素数2〜12のアルキレン基であることが特に好ましい。多官能チオール化合物の具体例としては、下記の構造式(T2)〜(T4)で表される化合物が挙げられ、式(T2)で表される化合物が特に好ましい。多官能チオール化合物は1種または複数組み合わせて使用することが可能である。
【0152】
【化36】
【0153】
(アミン)
架橋助剤としてのアミンとしては、多価アミンが好ましく、ジアミンがより好ましい。例えば、ヘキサメチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、ポリエチレンイミンなどが挙げられる。
【0154】
(アルコール)
架橋助剤としてのアルコールは、多価アルコールが好ましく、ジオールがより好ましい。例えば、ポリエーテルジオール化合物、ポリエステルジオール化合物、ポリカーボネートジオール化合物等が挙げられる。アルコールの具体例は、例えば、特開2013−253224号公報の段落0128〜0163、0172の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれることとする。
【0155】
(カルボン酸)
架橋助剤としてのカルボン酸としては、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸(無水物)、マレイン酸、フタル酸、トリメリット酸などが挙げられる。
【0156】
<<架橋触媒>>
本発明の組成物は、架橋触媒をさらに含有することができる。特に、架橋性化合物として、アルコキシシリル基やクロロシリル基を有する化合物を含有する場合、架橋触媒を含有することで、ゾルゲル反応が促進して、強固な硬化膜が得られる。架橋触媒としては、酸触媒、塩基触媒などが挙げられる。酸触媒としては、塩酸、硝酸、硫酸、亜硫酸、硫化水素、過塩素酸、過酸化水素、炭酸、蟻酸や酢酸等のカルボン酸、RCOOHで示される構造式のRを他原子または置換基によって置換した置換カルボン酸、ベンゼンスルホン酸などのスルホン酸、リン酸などが挙げられる。さらに、塩化アルミニウム、アルミニウムアセチルアセトナート、塩化亜鉛、塩化スズ、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体、ヨードトリメチルシランなどのルイス酸を用いてもよい。また塩基触媒としては、アンモニア水などのアンモニア性塩基化合物、エチルアミンやアニリンなどの有機アミンなどが挙げられる。また、架橋触媒は、特開2013−201007号公報の段落0070〜0076に記載の触媒を用いることもできる。
架橋触媒の含有量は、架橋性化合物の100質量部に対し0.1〜100質量部が好ましく、より好ましくは0.1〜50質量部であり、さらに好ましくは0.1〜20質量部である。組成物は、架橋触媒を、1種類のみを含んでいてもよいし、2種類以上含んでいてもよい。2種類以上含む場合は、その合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0157】
<<溶剤>>
本発明の組成物は、溶剤を含有することができる。溶剤としては、水、有機溶剤が挙げられる。溶剤は、各成分の溶解性や組成物の塗布性を満足すれば基本的には特に制限はないが、組成物の塗布性、安全性を考慮して選ばれることが好ましい。
【0158】
有機溶剤の例としては、例えば、以下の溶剤が挙げられる。
エステル類として、例えば、酢酸エチル、酢酸−n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸シクロヘキシル、ギ酸アミル、酢酸イソアミル、プロピオン酸ブチル、酪酸イソプロピル、酪酸エチル、酪酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、オキシ酢酸アルキル(例えば、オキシ酢酸メチル、オキシ酢酸エチル、オキシ酢酸ブチル(例えば、メトキシ酢酸メチル、メトキシ酢酸エチル、メトキシ酢酸ブチル、エトキシ酢酸メチル、エトキシ酢酸エチル等))、3−オキシプロピオン酸アルキルエステル類(例えば、3−オキシプロピオン酸メチル、3−オキシプロピオン酸エチル等(例えば、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル等))、2−オキシプロピオン酸アルキルエステル類(例:2−オキシプロピオン酸メチル、2−オキシプロピオン酸エチル、2−オキシプロピオン酸プロピル等(例えば、2−メトキシプロピオン酸メチル、2−メトキシプロピオン酸エチル、2−メトキシプロピオン酸プロピル、2−エトキシプロピオン酸メチル、2−エトキシプロピオン酸エチル))、2−オキシ−2−メチルプロピオン酸メチル及び2−オキシ−2−メチルプロピオン酸エチル(例えば、2−メトキシ−2−メチルプロピオン酸メチル、2−エトキシ−2−メチルプロピオン酸エチル等)、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸プロピル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、2−オキソブタン酸メチル、2−オキソブタン酸エチル等、並びに、エーテル類として、例えば、ジエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート等、並びに、ケトン類として、例えば、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン等、並びに、芳香族炭化水素類として、例えば、トルエン、キシレン等が好適に挙げられる。
【0159】
有機溶剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。有機溶剤を2種以上組みあわせて用いる場合、特に好ましくは、上記の3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、エチルセロソルブアセテート、乳酸エチル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、酢酸ブチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、2−ヘプタノン、シクロヘキサノン、エチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールメチルエーテル、及びプロピレングリコールメチルエーテルアセテートから選択される2種以上で構成される混合溶液である。
【0160】
溶剤は、金属含有量の少ない溶剤を用いることが好ましく、溶剤の金属含有量は、例えば10ppb以下であることが好ましい。必要に応じてpptレベルの溶剤を用いてもよく、そのような高純度溶剤は例えば東洋合成社が提供している。
【0161】
溶剤から金属等の不純物を除去する方法としては、例えば、蒸留(分子蒸留や薄膜蒸留等)やフィルタを用いた濾過を挙げることができる。フィルタを用いたろ過におけるフィルタ孔径としては、ポアサイズ10nm以下が好ましく、5nm以下がより好ましく、3nm以下が更に好ましい。フィルタの材質としては、ポリテトラフルオロエチレン製、ポリエチレン製、ナイロン製のフィルタが好ましい。
【0162】
溶剤は、異性体(同じ原子数で異なる構造の化合物)が含まれていてもよい。また、異性体は、1種のみが含まれていてもよいし、複数種含まれていてもよい。
【0163】
有機溶剤は、過酸化物の含有率が0.8mmol/L以下であることが好ましく、過酸化物を実質的に含まないことがより好ましい。
【0164】
溶剤の含有量は、組成物の全量に対し、10〜90質量%であることが好ましく、20〜80質量%であることがより好ましく、25〜75質量%であることが更に好ましい。
【0165】
<<重合禁止剤>>
本発明の組成物は、組成物の製造中又は保存中において、架橋性化合物の不要な熱重合を阻止するために、重合禁止剤を含有させてもよい。
重合禁止剤としては、ハイドロキノン、p−メトキシフェノール、ジ−tert−ブチル−p−クレゾール、ピロガロール、tert−ブチルカテコール、ベンゾキノン、4,4’−チオビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、N−ニトロソフェニルヒドロキシアミン塩(アンモニウム塩、第一セリウム塩等)が挙げられる。中でも、p−メトキシフェノールが好ましい。
重合禁止剤の含有量は、組成物の全固形分に対して、0.01〜5質量%が好ましい。
【0166】
<<界面活性剤>>
本発明の組成物は、塗布性をより向上させる観点から、各種の界面活性剤を含有させてもよい。界面活性剤としては、フッ素系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤などの各種界面活性剤を使用できる。
【0167】
上記組成物にフッ素系界面活性剤を含有させることで、塗布液として調製したときの液特性(特に、流動性)がより向上し、塗布厚の均一性や省液性をより改善することができる。即ち、フッ素系界面活性剤を含有する組成物を適用した塗布液を用いて膜形成する場合においては、被塗布面と塗布液との界面張力が低下して、被塗布面への濡れ性が改善され、被塗布面への塗布性が向上する。このため、厚みムラの小さい均一厚の膜形成をより好適に行うことができる。
【0168】
フッ素系界面活性剤中のフッ素含有率は、3〜40質量%が好適であり、より好ましくは5〜30質量%であり、特に好ましくは7〜25質量%である。フッ素含有率がこの範囲内であるフッ素系界面活性剤は、塗布膜の厚さの均一性や省液性の点で効果的であり、組成物中における溶解性も良好である。
【0169】
フッ素系界面活性剤として具体的には、特開2014−41318号公報の段落0060〜0064(対応する国際公開WO2014/17669号パンフレットの段落0060〜0064)等に記載の界面活性剤が挙げられ、これらの内容は本明細書に組み込まれる。フッ素系界面活性剤の市販品としては、フッ素系界面活性剤の市販品としては、例えば、メガファックF171、同F172、同F173、同F176、同F177、同F141、同F142、同F143、同F144、同R30、同F437、同F475、同F479、同F482、同F554、同F780、RS−72−K(以上、DIC(株)製)、フロラードFC430、同FC431、同FC171(以上、住友スリーエム(株)製)、サーフロンS−382、同SC−101、同SC−103、同SC−104、同SC−105、同SC−1068、同SC−381、同SC−383、同S−393、同KH−40(以上、旭硝子(株)製)、PF636、PF656、PF6320、PF6520、PF7002(OMNOVA社製)等が挙げられる。
【0170】
フッ素系界面活性剤は、ブロックポリマーを用いることもでき、具体例としては、例えば特開2011−89090号公報に記載された化合物が挙げられる。フッ素系界面活性剤は、フッ素原子を有する(メタ)アクリレート化合物に由来する繰り返し単位と、アルキレンオキシ基(好ましくはエチレンオキシ基、プロピレンオキシ基)を2以上(好ましくは5以上)有する(メタ)アクリレート化合物に由来する繰り返し単位と、を含む含フッ素高分子化合物も好ましく用いることができ、下記化合物も本発明で用いられるフッ素系界面活性剤として例示される。
【化37】

上記の化合物の重量平均分子量は、好ましくは3,000〜50,000であり、例えば、14,000である。
【0171】
また、エチレン性不飽和基を側鎖に有する含フッ素重合体をフッ素系界面活性剤として用いることもできる。具体例としては、特開2010−164965号公報0050〜0090段落および0289〜0295段落に記載された化合物、例えばDIC社製のメガファックRS−101、RS−102、RS−718K、RS−72−K等が挙げられる。なお、エチレン性不飽和基を側鎖に有する含フッ素重合体は、界面活性剤に該当し、上述した架橋性基を有する樹脂および架橋性化合物とは異なる成分である。フッ素系界面活性剤は、特開2015−117327号公報の段落0015〜0158に記載の化合物を用いることもできる。
【0172】
ノニオン系界面活性剤として具体的には、グリセロール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン並びにそれらのエトキシレート及びプロポキシレート(例えば、グリセロールプロポキシレート、グリセリンエトキシレート等)、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリエチレングリコールジラウレート、ポリエチレングリコールジステアレート、ソルビタン脂肪酸エステル(BASF社製のプルロニックL10、L31、L61、L62、10R5、17R2、25R2、テトロニック304、701、704、901、904、150R1、ソルスパース20000(日本ルーブリゾール(株)製)等が挙げられる。また、和光純薬工業社製の、NCW−101、NCW−1001、NCW−1002を使用することもできる。
【0173】
カチオン系界面活性剤として具体的には、フタロシアニン誘導体(商品名:EFKA−745、森下産業(株)製)、オルガノシロキサンポリマーKP341(信越化学工業(株)製)、(メタ)アクリル酸系(共)重合体ポリフローNo.75、No.90、No.95(共栄社化学(株)製)、W001(裕商(株)製)等が挙げられる。
【0174】
アニオン系界面活性剤として具体的には、W004、W005、W017(裕商(株)社製)、サンデットBL(三洋化成(株)社製)等が挙げられる。
【0175】
シリコーン系界面活性剤としては、例えば、トーレシリコーンDC3PA、トーレシリコーンSH7PA、トーレシリコーンDC11PA、トーレシリコーンSH21PA、トーレシリコーンSH28PA、トーレシリコーンSH29PA、トーレシリコーンSH30PA、トーレシリコーンSH8400(以上、東レ・ダウコーニング(株)製)、TSF−4440、TSF−4300、TSF−4445、TSF−4460、TSF−4452(以上、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製)、KP341、KF6001、KF6002(以上、信越シリコーン株式会社製)、BYK307、BYK323、BYK330(以上、ビックケミー社製)等が挙げられる。
【0176】
界面活性剤は、1種のみを用いてもよいし、2種類以上を組み合わせてもよい。
界面活性剤の含有量は、組成物の全固形分に対して、0.001〜2.0質量%が好ましく、0.005〜1.0質量%がより好ましい。
【0177】
<<紫外線吸収剤>>
本発明の組成物は、紫外線吸収剤を含有してもよい。紫外線吸収剤は、共役ジエン系化合物が好ましく、下記一般式(1)で表される化合物よりが好ましい。
【化38】
【0178】
1及びR2は、各々独立に、水素原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、又は炭素原子数6〜20のアリール基を表し、R1とR2とは互いに同一でも異なっていてもよいが、同時に水素原子を表すことはない。
3及びR4は、電子求引基を表す。ここで、電子求引基は、ハメットの置換基定数σp値(以下、単に「σp値」という。)が、0.20以上1.0以下の基である。好ましくは、σp値が0.30以上0.8以下の基である。R3、R4としては、アシル基、カルバモイル基、アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、シアノ基、ニトロ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルホニルオキシ基、スルファモイル基が好ましく、特にアシル基、カルバモイル基、アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、シアノ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルホニルオキシ基、スルファモイル基が好ましい。上記一般式(1)については、特開2010−049029号公報の段落番号0148〜0158の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれることとする。
【0179】
上記一般式(1)で表される化合物の具体例としては以下の化合物が挙げられる。また、特開2010−049029号公報の段落番号0160〜0162に記載の化合物に挙げられ、この内容は本明細書に組み込まれることとする。
【化39】

紫外線吸収剤の市販品としては、例えば、UV503(大東化学株式会社)などが挙げられる。
紫外線吸収剤の含有量は、本発明の組成物の全固形分に対して、0.01〜10質量%が好ましく、0.01〜5質量%がより好ましい。
【0180】
<<その他成分>>
近赤外線吸収組成物は、必要に応じて、分散剤、増感剤、硬化促進剤、フィラー、熱硬化促進剤、熱重合禁止剤、可塑剤、密着促進剤及びその他の助剤類(例えば、導電性粒子、充填剤、消泡剤、難燃剤、レベリング剤、剥離促進剤、酸化防止剤、香料、表面張力調整剤、連鎖移動剤など)を含有してもよい。これらの成分を適宜含有させることにより、目的とする赤外線カットフィルタの安定性、膜物性などの性質を調整することができる。これらの成分は、例えば、特開2012−003225号公報の段落番号0183以降(対応する米国特許出願公開第2013/0034812号明細書の<0237>以降)の記載、特開2008−250074号公報の段落番号0101〜0104、0107〜0109等の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。また、酸化防止剤としては、フェノール化合物、亜リン酸エステル化合物、チオエーテル化合物などが挙げられる。分子量500以上のフェノール化合物、分子量500以上の亜リン酸エステル化合物又は分子量500以上のチオエーテル化合物がより好ましい。これらは2種以上を混合して使用してもよい。フェノール化合物としては、フェノール系酸化防止剤として知られる任意のフェノール化合物を使用することができる。好ましいフェノール化合物としては、ヒンダードフェノール化合物が挙げられる。特に、フェノール性水酸基に隣接する部位(オルト位)に置換基を有する化合物が好ましい。前述の置換基としては炭素数1〜22の置換又は無置換のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、プロピオニル基、イソプロピオニル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、t−ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、イソオクチル基、2−エチルへキシル基がより好ましい。また、同一分子内にフェノール基と亜リン酸エステル基を有する化合物(酸化防止剤)も好ましい。また、酸化防止剤は、リン系酸化防止剤も好適に使用することができる。リン系酸化防止剤としてはトリス[2−[[2,4,8,10−テトラキス(1,1−ジメチルエチル)ジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン−6−イル]オキシ]エチル]アミン、トリス[2−[(4,6,9,11−テトラ−tert−ブチルジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン−2−イル)オキシ]エチル]アミン、および亜りん酸エチルビス(2,4−ジtert−ブチル−6−メチルフェニル)からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物が挙げられる。これらは、市販品として容易に入手可能であり、アデカスタブ AO−20、アデカスタブ AO−30、アデカスタブ AO−40、アデカスタブ AO−50、アデカスタブ AO−50F、アデカスタブ AO−60、アデカスタブ AO−60G、アデカスタブ AO−80、アデカスタブ AO−330((株)ADEKA)などが挙げられる。酸化防止剤の含有量は、組成物の全固形分に対して、0.01〜20質量%であることが好ましく、0.3〜15質量%であることがより好ましい。酸化防止剤は、1種類のみでもよく、2種類以上でもよい。2種類以上の場合は、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0181】
<組成物の調製方法>
本発明の組成物は、前述の成分を混合して調製できる。組成物の調製に際しては、各成分を一括配合してもよいし、各成分を溶剤に溶解・分散した後に逐次配合してもよい。また、配合する際の投入順序や作業条件は特に制約を受けない。例えば、全成分を同時に溶剤に溶解・分散して組成物を調製してもよいし、必要に応じては、各成分を適宜2つ以上の溶液・分散液としておいて、使用時(塗布時)にこれらを混合して組成物として調製してもよい。
【0182】
組成物の調製にあたり、異物の除去や欠陥の低減などの目的で、各成分をフィルタでろ過することが好ましい。フィルタとしては、従来からろ過用途等に用いられているものであれば特に限定されることなく用いることができる。例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素樹脂、ナイロン(例えばナイロン−6、ナイロン−6,6)等のポリアミド系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン樹脂(高密度、超高分子量を含む)等によるフィルタが挙げられる。これら素材の中でもポリプロピレン(高密度ポリプロピレンを含む)およびナイロンが好ましい。
フィルタの孔径は、0.01〜7.0μm程度が適しており、好ましくは0.01〜3.0μm程度、さらに好ましくは0.05〜0.5μm程度である。この範囲とすることにより、後工程において均一及び平滑な組成物の調製を阻害する、微細な異物を確実に除去することが可能となる。また、ファイバ状のろ材を用いることも好ましく、ろ材としては例えばポリプロピレンファイバ、ナイロンファイバ、グラスファイバ等が挙げられ、具体的にはロキテクノ社製のSBPタイプシリーズ(SBP008など)、TPRタイプシリーズ(TPR002、TPR005など)、SHPXタイプシリーズ(SHPX003など)のフィルタカートリッジを用いることができる。
【0183】
フィルタを使用する際、異なるフィルタを組み合わせてもよい。その際、第1のフィルタでのフィルタリングは、1回のみでもよいし、2回以上行ってもよい。
また、上述した範囲内で異なる孔径の第1のフィルタを組み合わせてもよい。ここでの孔径は、フィルタメーカーの公称値を参照することができる。市販のフィルタとしては、例えば、日本ポール株式会社(DFA4201NXEYなど)、アドバンテック東洋株式会社、日本インテグリス株式会社(旧日本マイクロリス株式会社)又は株式会社キッツマイクロフィルタ等が提供する各種フィルタの中から選択することができる。
第2のフィルタは、上述した第1のフィルタと同様の材料等で形成されたものを使用することができる。
例えば、第1のフィルタでのフィルタリングは、分散液のみで行い、他の成分を混合した後で、第2のフィルタでのフィルタリングを行ってもよい。
【0184】
<膜および赤外線カットフィルタ>
次に、本発明の膜について説明する。本発明の膜は、上述した本発明の組成物からなる。本発明の膜は、赤外遮蔽性および可視透明性に優れているので、赤外線カットフィルタ、赤外線透過フィルタとして好ましく用いることができる。更には、耐熱性および耐光性にも優れている。本発明の膜は、パターンを有していてもよく、パターンを有さない膜(平坦膜)であってもよい。なお、本発明の膜を赤外線透過フィルタとして用いる場合、赤外線透過フィルタは、例えば、可視光を遮光し、波長900nm以上の波長の光を透過するフィルタが挙げられる。なお、本発明の膜を、赤外線透過フィルタとして用いる場合、赤外線透過フィルタは、スクアリリウム化合物と、可視光を遮光する色材(好ましくは、2種以上の有彩色着色剤を含有する色材、または、有機系黒色着色剤を少なくとも含有する色材)とを含む組成物からなるフィルタであるか、スクアリリウム化合物を含む層の他に、可視光を遮光する色材の層が別途存在するフィルタであることが好ましい。本発明の膜を赤外線透過フィルタとして用いる場合、スクアリリウム化合物は、透過する光(赤外線)の赤外領域をより長波長側に限定する役割を有している。
また、本発明の赤外線カットフィルタは、上述した本発明の組成物からなる。
【0185】
本発明の膜の膜厚は、目的に応じて適宜調整できる。膜厚は、20μm以下が好ましく、10μm以下がより好ましく、5μm以下がさらに好ましい。膜厚の下限は、0.1μm以上が好ましく、0.2μm以上がより好ましく、0.3μm以上が更に好ましい。本発明の膜は、CCD(電荷結合素子)や、CMOS(相補型金属酸化膜半導体)などの固体撮像素子等の赤外線カットフィルタとして好ましく用いることができる。また、各種画像表示装置に用いることもできる。
【0186】
本発明の膜(赤外線カットフィルタ)は、有彩色着色剤を含むカラーフィルタと組み合わせて用いることもできる。
カラーフィルタは、有彩色着色剤を含む着色組成物を用いて製造できる。有彩色着色剤としては、本発明の組成物で説明した有彩色着色剤が挙げられる。着色組成物は、樹脂、架橋性基を有する化合物、光重合開始剤、界面活性剤、溶剤、重合禁止剤、紫外線吸収剤などをさらに含有することができる。これらの詳細については、本発明の組成物で説明した材料が挙げられ、これらを用いることができる。また、本発明の膜(赤外線カットフィルタ)に有彩色着色剤を含有させて、赤外線カットフィルタとカラーフィルタとしての機能を備えたフィルタとしてもよい。
【0187】
なお、本発明において、赤外線カットフィルタとは、可視光域の波長の光(可視光)を透過し、赤外域の波長の光(赤外線)を遮光するフィルタを意味する。赤外線カットフィルタは、可視光域の波長の光をすべて透過するものであってもよく、可視光域の波長の光のうち、特定の波長域の光を通過し、特定の波長域の光を遮光するものであってもよい。また、本発明において、カラーフィルタとは、可視光域の波長の光のうち、特定の波長域の光を通過させ、特定の波長域の光を遮光するフィルタを意味する。また、赤外線透過フィルタとは、可視領域の波長の光を遮光し、赤外域の波長の光(赤外線)を透過するフィルタを意味する。
【0188】
本発明の膜を、赤外線透過フィルタとして用いる場合、以下の(1)の分光特性を有することが好ましい。この態様によれば、可視光線由来のノイズが少ない状態で赤外線を透過可能な膜とすることができる。
【0189】
(1)膜の厚み方向における光の透過率の、波長400〜830nmの範囲における最大値が20%以下であり、膜の厚み方向における光の透過率の、波長1000〜1300nmの範囲における最小値が80%以上である。このような分光特性を有する膜は、波長400〜750nmの範囲の光を遮光し、波長900nm以上の光を透過する赤外線透過フィルタとして好ましく用いることができる。
【0190】
膜の分光特性は、紫外可視近赤外分光光度計(日立ハイテクノロジーズ社製 U−4100)の分光光度計を用いて、波長300〜1300nmの範囲において透過率を測定した値である。
【0191】
本発明の膜を、赤外線カットフィルタまたは赤外線透過フィルタとして用いる場合、赤外線カットフィルタと赤外線透過フィルタと組み合わせて用いることもできる。赤外線カットフィルタと、赤外線透過フィルタとを組み合わせて用いることで、特定波長の赤外線を検出する赤外線センサの用途に好ましく用いることができる。両者のフィルタを組み合わせて用いる場合、赤外線カットフィルタおよび赤外線透過フィルタの両方を本発明の組成物を用いて形成することもでき、いずれか一方のみを、本発明の組成物を用いて形成することもできる。
【0192】
また、本発明の膜を赤外線カットフィルタとして用いる場合、赤外線カットフィルタは、カラーフィルタと厚み方向で隣接していてもよく、隣接していなくてもよい。赤外線カットフィルタと、カラーフィルタとが厚み方向で隣接していない場合は、カラーフィルタが形成された基材とは別の基材に赤外線カットフィルタが形成されていてもよく、赤外線カットフィルタとカラーフィルタとの間に、固体撮像素子を構成する他の部材(例えば、マイクロレンズ、平坦化層など)が介在していてもよい。
【0193】
また、赤外線カットフィルタは、本発明の膜の他に、更に、誘電体多層膜や、紫外線吸収層を有していてもよい。赤外線カットフィルタが、更に誘電体多層膜を有することで、視野角が広く、赤外線遮蔽性に優れた赤外線カットフィルタが得られ易い。また、本発明の赤外線カットフィルタが、更に、紫外線吸収層を有することで、紫外線遮蔽性に優れた赤外線カットフィルタとすることができる。紫外線吸収層としては、例えば、WO2015/099060号の段落0040〜0070、0119〜0145に記載の吸収層を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれることとする。誘電体多層膜としては、特開2014−41318号公報の段落0255〜0259の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれることとする。
【0194】
<パターン形成方法>
パターン形成方法は、支持体上に本発明の組成物からなる層を形成する工程と、フォトリソグラフィ法またはドライエッチング法により、組成物層に対してパターンを形成する工程と、を含む。
【0195】
本発明の膜と、カラーフィルタとが積層した積層体を製造する場合は、本発明の膜のパターン形成と、カラーフィルタのパターン形成は、別々に行ってもよい。また、本発明の膜とカラーフィルタとの積層体に対してパターン形成を行ってもよい(すなわち、本発明の膜とカラーフィルタとのパターン形成を同時に行ってもよい)。
【0196】
本発明の膜(赤外線カットフィルタ)とカラーフィルタとのパターン形成を、別々に行う場合とは、次の態様を意味する。本発明の膜(赤外線カットフィルタ)およびカラーフィルタのいずれか一方に対してパターン形成を行う。次いで、パターン形成したフィルタ層上に、他方のフィルタ層を形成する。次いで、パターン形成を行っていないフィルタ層に対してパターン形成を行う。
【0197】
パターン形成方法は、フォトリソグラフィによるパターン形成方法であってもよく、ドライエッチングによるパターン形成方法であってもよい。
フォトリソグラフィによるパターン形成方法であると、ドライエッチング工程が不要なため工程数を削減できるという効果が得られる。
ドライエッチングによるパターン形成方法であると、本発明の組成物は、フォトリソ機能が不要なため、赤外線吸収剤などの濃度を上げることができるという効果が得られる。
【0198】
本発明の膜(赤外線カットフィルタ)のパターン形成と、カラーフィルタのパターン形成とを、別々に行う場合、各フィルタ層のパターン形成方法は、フォトリソグラフィ法のみ、または、ドライエッチング法のみで行ってもよい。また、一方のフィルタ層をフォトリソグラフィ法でパターン形成し、他方のフィルタ層をドライエッチング法でパターン形成してもよい。ドライエッチング法とフォトリソグラフィ法とを併用してパターン形成を行う場合、1層目のパターンは、ドライエッチング法によりパターン形成を行い、2層目以降のパターンは、フォトリソグラフィ法によりパターン形成を行うことが好ましい。
【0199】
フォトリソグラフィ法によるパターン形成は、支持体上に組成物層を形成する工程と、組成物層をパターン状に露光する工程と、未露光部を現像除去してパターンを形成する工程と、を含むことが好ましい。必要に応じて、組成物層をベークする工程(プリベーク工程)、および、現像されたパターンをベークする工程(ポストベーク工程)を設けてもよい。
また、ドライエッチング法によるパターン形成は、支持体上に組物層を形成し、硬化して硬化物層を形成する工程と、硬化物層上にフォトレジスト層を形成する工程と、露光および現像することによりフォトレジスト層をパターニングしてレジストパターンを得る工程と、レジストパターンをエッチングマスクとして硬化物層をドライエッチングしてパターンを形成する工程とを含むことが好ましい。以下、各工程について説明する。
【0200】
<<組成物層を形成する工程>>
組成物層を形成する工程では、支持体上に組成物を適用して組成物層を形成する。
【0201】
支持体としては、例えば、基板(例えば、シリコン基板)上にCCDやCMOS等の固体撮像素子(受光素子)が設けられた固体撮像素子用基板を用いることができる。
パターンは、固体撮像素子用基板の固体撮像素子形成面側(おもて面)に形成してもよいし、固体撮像素子非形成面側(裏面)に形成してもよい。
支持体上には、必要により、上部の層との密着改良、物質の拡散防止或いは基板表面の平坦化のために下塗り層を設けてもよい。
【0202】
支持体上への組成物の適用方法としては、スリット塗布、インクジェット法、回転塗布、流延塗布、ロール塗布、スクリーン印刷法等の各種の方法を用いることができる。
【0203】
支持体上に形成した組成物層は、乾燥(プリベーク)してもよい。低温プロセスによりパターンを形成する場合は、プリベークを行わなくてもよい。
プリベークを行う場合、プリベーク温度は、150℃以下が好ましく、120℃以下がより好ましく、110℃以下が更に好ましい。下限は、例えば、50℃以上とすることができ、80℃以上とすることもできる。プリベークを150℃以下で行うことにより、例えば、イメージセンサの光電変換膜を有機素材で構成した場合において、これらの特性をより効果的に維持することができる。
プリベーク時間は、10秒〜300秒が好ましく、40〜250秒がより好ましく、80〜220秒がさらに好ましい。乾燥は、ホットプレート、オーブン等で行うことができる。
複数の層を同時にパターン形成する場合は、上記組成物層上に、他の層を形成するための組成物を適用し、他の組成物層を形成することが好ましい。
【0204】
(フォトリソグラフィ法でパターン形成する場合)
<<露光工程>>
次に、組成物層を、パターン状に露光する(露光工程)。例えば、組成物層に対し、ステッパー等の露光装置を用いて、所定のマスクパターンを有するマスクを介して露光することで、パターン露光することができる。これにより、露光部分を硬化することができる。
露光に際して用いることができる放射線(光)としては、g線、i線等の紫外線が好ましく(特に好ましくはi線)用いられる。照射量(露光量)は、例えば、0.03〜2.5J/cm2が好ましく、0.05〜1.0J/cm2がより好ましく、0.08〜0.5J/cm2が最も好ましい。
露光時における酸素濃度については適宜選択することができ、大気下で行う他に、例えば酸素濃度が19体積%以下の低酸素雰囲気下(例えば、15体積%、5体積%、実質的に無酸素)で露光してもよく、酸素濃度が21体積%を超える高酸素雰囲気下(例えば、22体積%、30体積%、50体積%)で露光してもよい。また、露光照度は適宜設定することが可能であり、通常1000W/m2〜100000W/m2(例えば、5000W/m2、15000W/m2、35000W/m2)の範囲から選択することができる。酸素濃度と露光照度は適宜条件を組み合わせてよく、例えば、酸素濃度10体積%で照度10000W/m2、酸素濃度35体積%で照度20000W/m2などとすることができる。
【0205】
<<現像工程>>
次に、未露光部を現像除去してパターンを形成する。未露光部の現像除去は、現像液を用いて行うことができる。これにより、露光工程における未露光部の組成物層が現像液に溶出し、光硬化した部分だけが残る。
現像液としては、下地の固体撮像素子や回路などにダメージを起さない、有機アルカリ現像液が望ましい。
現像液の温度は、例えば、20〜30℃が好ましい。現像時間は、20〜180秒が好ましい。また、残渣除去性を向上するため、現像液を60秒ごとに振り切り、さらに新たに現像液を供給する工程を数回繰り返してもよい。
【0206】
現像液に用いるアルカリ剤としては、例えば、アンモニア水、エチルアミン、ジエチルアミン、ジメチルエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、コリン、ピロール、ピペリジン、1,8−ジアザビシクロ−[5、4、0]−7−ウンデセンなどの有機アルカリ性化合物が挙げられる。これらのアルカリ剤を濃度が0.001〜10質量%、好ましくは0.01〜1質量%となるように純水で希釈したアルカリ性水溶液が現像液として好ましく使用される。また、現像液には無機アルカリを用いてもよい。無機アルカリとしては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、硅酸ナトリウム、メタ硅酸ナトリウムなどが好ましい。また、現像液には、界面活性剤を用いてもよい。界面活性剤の例としては、上述した組成物で説明した界面活性剤が挙げられ、ノニオン系界面活性剤が好ましい。なお、このようなアルカリ性水溶液からなる現像液を使用した場合には、一般に現像後純水で洗浄(リンス)することが好ましい。
【0207】
現像後、乾燥を施した後に加熱処理(ポストベーク)を行うこともできる。ポストベークは、膜の硬化を完全なものとするための現像後の加熱処理である。ポストベークを行う場合、ポストベーク温度は、例えば100〜240℃が好ましい。膜硬化の観点から、200〜230℃がより好ましい。また、発光光源として有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)素子を用いた場合や、イメージセンサの光電変換膜を有機素材で構成した場合は、ポストベーク温度は、150℃以下が好ましく、120℃以下がより好ましく、100℃以下が更に好ましく、90℃以下が特に好ましい。下限は、例えば、50℃以上とすることができる。ポストベークは、現像後の膜を、上記条件になるようにホットプレートやコンベクションオーブン(熱風循環式乾燥機)、高周波加熱機等の加熱手段を用いて、連続式あるいはバッチ式で行うことができる。また、低温プロセスによりパターンを形成する場合は、ポストベークは行わなくてもよい。
【0208】
(ドライエッチング法でパターン形成する場合)
ドライエッチング法でのパターン形成は、支持体上に形成した組成物層を硬化して硬化物層を形成し、次いで、得られた硬化物層を、パターニングされたフォトレジスト層をマスクとしてエッチングガスを用いて行うことができる。具体的には、硬化物層上にポジ型またはネガ型の感放射線性組成物を塗布し、これを乾燥させることによりフォトレジスト層を形成することが好ましい。フォトレジスト層の形成においては、さらにプリベーク処理を施すことが好ましい。特に、フォトレジストの形成プロセスとしては、露光後の加熱処理、現像後の加熱処理(ポストベーク処理)を実施する形態が望ましい。ドライエッチング法でのパターン形成については、特開2013−064993号公報の段落0010〜0067の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれることとする。
【0209】
<固体撮像素子>
本発明の固体撮像素子は、上述した本発明の膜を有する。固体撮像素子の構成としては、本発明の膜(赤外線カットフィルタ)を有し、固体撮像素子として機能する構成であれば特に限定はないが、例えば、以下のような構成が挙げられる。
【0210】
固体撮像素子は、例えば、支持体上に、複数のフォトダイオードと、ポリシリコン等からなる転送電極と、遮光膜と、デバイス保護膜と、本発明の膜とで構成される。フォトダイオードは、固体撮像素子の受光エリアを構成する。遮光膜は、フォトダイオードおよび転送電極上に、フォトダイオードの受光部のみ開口したタングステン等からなる。デバイス保護膜は、遮光膜上に、遮光膜全面およびフォトダイオード受光部を覆うように形成された窒化シリコン等からなる。本発明の膜はデバイス保護膜上に有する。
さらに固体撮像素子は、集光手段(例えば、マイクロレンズ等)を有してもよく、集光手段は、デバイス保護膜上であって、本発明の膜(赤外線カットフィルタ)の下(支持体に近い側)に配されていてもよく、本発明の膜上に配されていてもよい。
【0211】
<画像表示装置>
本発明の膜は、液晶表示装置や有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)表示装置などの画像表示装置に用いることもできる。例えば、各着色画素(例えば赤色、緑色、青色)とともに用いることにより、表示装置のバックライト(例えば白色発光ダイオード(白色LED))に含まれる赤外光を遮断し、周辺機器の誤作動を防止する目的や、各着色表示画素に加えて赤外の画素を形成する目的で用いることが可能である。
【0212】
表示装置の定義や各表示装置の詳細については、例えば「電子ディスプレイデバイス(佐々木 昭夫著、(株)工業調査会 1990年発行)」、「ディスプレイデバイス(伊吹 順章著、産業図書(株)平成元年発行)」などに記載されている。また、液晶表示装置については、例えば「次世代液晶ディスプレイ技術(内田 龍男編集、(株)工業調査会 1994年発行)」に記載されている。本発明が適用できる液晶表示装置に特に制限はなく、例えば、上記の「次世代液晶ディスプレイ技術」に記載されている色々な方式の液晶表示装置に適用できる。
【0213】
画像表示装置は、白色有機EL素子を有するものであってもよい。白色有機EL素子としては、タンデム構造であることが好ましい。有機EL素子のタンデム構造については、特開2003−45676号公報、三上明義監修、「有機EL技術開発の最前線−高輝度・高精度・長寿命化・ノウハウ集−」、技術情報協会、326−328ページ、2008年などに記載されている。有機EL素子が発光する白色光のスペクトルは、青色領域(430nm−485nm)、緑色領域(530nm−580nm)及び黄色領域(580nm−620nm)に強い極大発光ピークを有するものが好ましい。これらの発光ピークに加え更に赤色領域(650nm−700nm)に極大発光ピークを有するものがより好ましい。
【0214】
<赤外線吸収剤>
本発明の組成物で説明した式(1a)で表される化合物(スクアリリウム化合物)は、赤外線吸収剤として好ましく用いることができる。式(1a)で表される化合物の赤外線吸収剤として好適な範囲は、上述のスクアリリウム化合物の好適な範囲と同様である。
【0215】
式(1a)で表される化合物または赤外線吸収剤は、例えば、波長700〜1000nmの光を遮光する赤外線カットフィルタなどの形成に好ましく用いることができる。また、プラズマディスプレイパネルや固体撮像素子用等の赤外線カットフィルタ、熱線遮蔽フィルムなどの光学フィルタ、追記型光ディスク(CD−R)やフラッシュ溶融定着材料における光熱変換材料としても用いることができる。また、セキュリティインクや、不可視バーコードインクにおける情報表示材料として用いることもできる。また、赤外線透過フィルタの形成に用いることもできる。なお、式(1a)で表される化合物または赤外線吸収剤を赤外線透過フィルタに用いると、透過する光(赤外線)がより長波長側の赤外光に限定される。
【実施例】
【0216】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」、「%」は、質量基準である。
なお、赤外線吸収剤として使用した化合物の構造は、上述した赤外線吸収剤で説明した化学構造の化合物である。
【0217】
<重量平均分子量(Mw)の測定>
重量平均分子量(Mw)は、以下の方法で、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)測定によるポリスチレン換算値として測定した。
カラムの種類:TSKgel SuperHZ4000(TOSOH製、4.6mm(内径)×15cm)
展開溶媒:テトラヒドロフランカラム温度:40℃流量(サンプル注入量):60μL装置名:東ソー(株)製高速GPC(HLC−8220GPC)
検量線ベース樹脂:ポリスチレン樹脂
【0218】
<化合物の合成>
(合成例1) 化合物1の合成
【化40】
【0219】
中間体M1の合成:
酢酸パラジウム(230mg,1.0mmol)、ナトリウムターシャリーブトキシド(3.9g、40.4mmol)およびトリターシャリーブチルホスフィン(450mg、2.0mmol)をトルエン40cm3に加え、60℃で10分間撹拌した。これを室温に冷却した後、2,2’−ジナフチルアミン(5.5g、20.2mmol)および2−ブロモ−4−ヘキシルチオフェン(5.0g、20.2mmol)を加えて3時間加熱環流を行った。反応液を冷却後にセライトろ過することにより無機塩を除き、トルエン(Tol)を減圧留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィ(展開溶媒:トルエン/ヘキサン)により精製し、溶媒を減圧留去することにより中間体M1を得た(橙色グリース状、8.5g、収率97%)。
【0220】
化合物1の合成:
中間体M1(8.5g、19.5mmol)とスクアリン酸(0.92g、8.1mmol)をn−ブタノール/トルエン(20cc/60cc)中で、共沸脱水しながら12時間加熱還流した。反応液を冷却後、溶媒を減圧留去し、残渣をクロロホルム/メタノール中で超音波分散した。析出した固体を吸引ろ過することによって目的の化合物1が得られた(緑色結晶、5.9g、収率78%)。
化合物1の同定データ:
MALDI TOF−MASS(飛行時間型質量分析法)Calc. for [M+H]+:949.4, found: 949.3
NMR(400MHz、CDCl3):0.91(6H,t)、1.20(8H,m)、1.32(4H、m)、1.55(4H、m)、3.22(4H、t)、6.55(2H、s)、7.44(4H、d)、7.50(8H、m)、7.73(4H、m)、7.80−7.88(12H、m)
【0221】
(合成例2) 化合物2の合成
【化41】
【0222】
中間体M2の合成:
中間体M1の合成において、2−ブロモ−4−ヘキシルチオフェンの代わりに、2,5−ジブロモチエノ[3,2−b]チオフェンを用い、2,2’−ジナフチルアミンの代わりに、ジ(4−オクチルフェニル)アミンを用いること以外は、中間体M1と同様の方法で中間体M2を合成した。
中間体M3の合成:
中間体M2(1.0g、1.6mmol)、酢酸パラジウム(18mg、0.082mmol),4,5−ビス(ジフェニルホスフィノ)−9,9−ジメチルキサンテン(69mg、0.12mmol、Xantphos),トリエチルシラン(2.5g、21mmol)をトルエン16cm3に加え、で7時間加熱還流した。反応液を冷却後、溶媒を減圧留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィ(展開溶媒:トルエン/ヘキサン)により精製することにより中間体M3を得た(黄色グリース状、0.70g、収率82%)。
化合物2の合成:
化合物1の合成において、中間体M1の代わりに中間体M3を用いること以外は、化合物1の合成と同様の方法で化合物2を合成した。
化合物2の同定データ:
MALDI TOF−MASS Calc. for [M+H]+:1141.6, found: 1141.6
【0223】
(合成例3) 化合物3の合成
【化42】
【0224】
中間体M4の合成:
2−ブロモメチルチオフェン(1.5g,8.6mmol)と亜リン酸トリエチル(1.44g,8.6mmol)を160℃で2時間加熱することにより中間体M4を得た。得られた中間体M4は精製せずに次の反応に用いた。
中間体M5の合成:
Dyes and Pigments,2015,120,175−183に記載の方法で中間体M5を合成した。
中間体M6:上記で得られた中間体M4に、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)50cm3を加えて氷浴にて0℃に冷却した後、ナトリウムメトキシド(1.4g,25.8mmol)を加えて30分撹拌した。ここに中間体M5(2.5g、8.6mmol)を溶解させたDMF溶液20cm3を滴下し、滴下終了後に氷浴を外して室温で3時間撹拌した。反応液に水を注ぎ、析出した固体をろ過し、次いで、メタノールで洗浄することにより中間体M6を得た(淡黄色結晶、2.6g、収率82%)。
化合物3の合成:
化合物1の合成において、中間体M1の代わりに中間体M6を用いること以外は、化合物1と同様の方法で化合物3を合成した。
化合物3の同定データ:
MALDI TOF−MASS Calc. for [M+H]+:818.5, found: 818.4
【0225】
(合成例4) 化合物4の合成
【化43】
【0226】
中間体M7の合成:
中間体M2の合成において、2−ブロモ−4−ヘキシルチオフェンの代わりに、2−ブロモチオフェンを用いること以外は、中間体M2と同様の方法で、中間体M7を合成した。
中間体M8の合成:
中間体M7を原料とし、Chem. Eur. J. 2007,13,9637−9646に記載の方法で中間体M8を合成した。
中間体M9の合成:
中間体M6の合成において、中間体M5の代わりに中間体M8を用いること以外は、中間体M6と同様の方法で中間体M9を合成した。
化合物4の合成:
化合物1の合成において、中間体M1の代わりに中間体M9を用いること以外は、化合物1と同様の方法で化合物4を合成した。
化合物4の同定データ: MALDI TOF−MASS Calc. for [M+H]+:1245.6, found: 1245.7
【0227】
(合成例5) 化合物5の合成
【化44】
【0228】
中間体M10の合成:
中間体M7を原料として、J. Photochem. Photobio.A 2014,294,54−61に記載の方法で中間体M10を合成した。なお、上記の合成スキームにおいて、NBSは、N−ブロモスクシンイミドの略称である。
中間体M11の合成:
中間体M10を原料として、EP2407465 A1に記載の方法で中間体M11を合成した。
化合物5の合成:
化合物1の合成において、中間体M1の代わりに中間体M11を用いること以外は、化合物1と同様の方法で化合物5を合成した。
化合物5の同定データ: MALDI TOF−MASS Calc. for [M+H]+:969.4, found: 969.4
【0229】
(合成例6) 化合物6の合成
【化45】
【0230】
中間体M12の合成:
中間体M1の合成において、2,2’−ジナフチルアミンの代わりに、p,p’−ジトリルアミンを用いること以外は、中間体M1と同様の方法で、中間体M12を合成した。
化合物6の合成:
化合物1の合成において、中間体M1の代わりに、中間体M12を用いること以外は、化合物1と同様の方法で、化合物6を合成した。
化合物6の同定データ:
MALDI TOF−MASS Calc. for [M+H]+:805.4, found: 805.3
NMR(400MHz、CDCl3):0.92(6H,t)、1.18−1.27(1
2H,m)、1.32(4H、m)、2.36(12H、s)、3.20(4H、t)、6.33(2H、s)、7.18(16H、m)
【0231】
<極大吸収波長>
得られた各化合物を、クロロホルムに溶解させて1g/Lの濃度の溶液を調製した。次に、各化合物を溶解させた溶液の吸収スペクトルを、極大吸収波長での吸光度が0.7〜1.2の範囲になるよう適宜希釈した後に、島津製作所製UV−1800を用いて測定し、極大吸収波長(λmax)を測定した。各化合物の極大吸収波長(λmax)を下記表に示す。
【0232】
<化合物の溶解性>
25℃の各溶剤(シクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、トルエン)に対する各化合物の溶解性を、以下の基準で評価した。
A:25℃の溶剤に対する化合物の溶解度が2質量%以上である。
B:25℃の溶剤に対する化合物の溶解度が1質量%以上2質量%未満である。
C:25℃の溶剤に対する化合物の溶解度が0.5質量%以上1質量%未満である。
D:25℃の溶剤に対する化合物の溶解度が0.5質量%未満である。
【表2】
【0233】
下記化合物R−1〜R−3について、化合物1〜6と同様に、極大吸収波長を測定し、溶解性を評価した。
化合物R−1は、DE4122563号に記載の化合物であり、同文献に記載の方法で合成した。化合物R−2は、特開2009−15114号公報に記載の化合物であり、同文献に記載の方法で合成した。化合物R−3は、Chem. Eur. J., 2008 ,14, 11082−11091に記載の化合物であり、同文献に記載の方法で合成した。
【化46】

化合物1〜6は、極大吸収波長が700nm以上であった。更には、各溶剤に対する溶解性に優れていた。
一方、化合物R−1、R−2は、極大吸収波長が700nm未満であった。また、化合物R−1、R−3は、溶解性が不十分であった。
【0234】
<近赤外線吸収組成物の調製>
下記の組成を混合して近赤外線吸収組成物を調製した。
<組成1>
下記表に示す化合物:2.3部
樹脂1:12.9部
架橋性化合物:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬社製、製品名 KAYARAD DPHA):12.9部
光重合開始剤:IRGACURE−OXE01〔2−(o−ベンゾイルオキシム)−1−[4−(フェニルチオ)フェニル]−1,2−オクタンジオン〕、BASF社製:2.5部
紫外線吸収剤:UV503(大東化学株式会社):0.5部
界面活性剤:下記混合物(Mw=14000):0.04部
【化47】

重合禁止剤:p−メトキシフェノール:0.006部
シクロヘキサノン:49.6部
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート:19.3部
【0235】
<組成2>
下記表に示す化合物:2.8部
樹脂2:10.5部
架橋性化合物:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬社製、製品名 KAYARAD DPHA):2.0部
光重合開始剤:IRGACURE−OXE01〔2−(o−ベンゾイルオキシム)−1−[4−(フェニルチオ)フェニル]−1,2−オクタンジオン〕、BASF社製:2.2部
紫外線吸収剤:UV503(大東化学株式会社):0.5部
界面活性剤:メガファック RS−72−K(DIC株式会社)2.3部
重合禁止剤:p−メトキシフェノール:0.001部
シクロヘキサノン:74.5部
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート:5.3部
【0236】
<組成3>
下記表に示す化合物:2.8部
樹脂3または樹脂4:14.7部
紫外線吸収剤:UV503(大東化学株式会社):0.5部
界面活性剤:メガファック RS−72−K(DIC株式会社)2.3部
シクロヘキサノン:74.5部
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート:5.3部
【0237】
・樹脂1:ベンジルメタクリレート(BzMA)とメタクリル酸(MAA)との共重合体(組成比(質量比):(BzMA/MAA)=(80/20)、Mw=15,000)
・樹脂2:アリルメタクリレート(Allyl−MA)とメタクリル酸(MAA)との共重合体(組成比(質量比):(Allyl−MA/MAA)=(80/20)、Mw=15,000)
・樹脂3:ポリスチレン(Aldrich、Mw=15,000)
・樹脂4:ARTON F4520(JSR株式会社)
【0238】
<膜の作製>
各組成物を、ガラス基板(コーニング社製1737)上に、乾燥後の膜厚が1.0μmになるようにスピンコーターを用いて塗布し、100℃のホットプレートを用いて120秒間加熱処理(プリベーク)を行った。
組成1および組成2については、プリベーク後に、i線ステッパー露光装置FPA−3000i5+(Canon(株)製)を使用して、500mJ/cm2で全面露光した。
次いで現像機(CD−2060、富士フイルムエレクトロニクスマテリアルズ(株)製)を用いて23℃で60秒間パドル現像を行い、次いで、純水でリンス処理した。リンス処理後のガラス基板を、スピン乾燥し、さらに、200℃のホットプレートを用いて300秒間加熱処理(ポストベーク)して硬化膜を得た。
実施例3および4については、プリベーク処理後の乾燥した膜を用いてそのまま評価を行った。
【0239】
<塗布膜の評価>
得られた膜の状態を目視で観察した。
A:化合物の析出がない。
B:化合物の析出があった。
【0240】
<膜の極大吸収波長(λmax)>
分光光度計UV−3100PC((株)島津製作所製)を用いて、得られた膜の吸収スペクトルを測定し、膜の極大吸収波長(λmax)を測定した。
【0241】
<赤外線遮蔽性の評価>
各膜の、波長700nmでの透過率を分光光度計U−4100(日立ハイテクノロジーズ社製)を用いて測定した。赤外線遮蔽性を以下の基準で評価した。結果を以下の表に示す。
A:波長700nmの透過率≦5%
B:5%<波長700nmの透過率≦7%
C:7%<波長700nmの透過率≦10%
D:10%<波長700nmの透過率
【0242】
<可視透明性の評価>
各膜の、波長450〜600nmの透過率を分光光度計U−4100(日立ハイテクノロジーズ社製)を用いて測定した。可視透明性を以下の基準で評価した。結果を以下の表に示す。
A:95%≦波長450〜600nmの透過率の最小値
B:90%≦波長450〜600nmの透過率の最小値<95%
C:80%≦波長450〜600nmの透過率の最小値<90%
D:波長450〜600nmの透過率の最小値<80%
【0243】
<耐熱性の評価>
得られた膜を、200℃5分間加熱し、各膜の耐熱テストを行った。色度計MCPD−1000(大塚電子(株)製)にて、耐熱テスト前後の各膜の色差ΔEab値を測定した。ΔEab値を用いた下記判定基準に基づいて、耐熱性を評価した。なお、小さいΔEab値が、耐熱性が良好であることを示す。
なお、ΔEab値は、CIE1976(L*,a*,b*)空間表色系による以下の色差公式から求められる値である(日本色彩学会編 新編色彩科学ハンドブック(昭和60年)p.266)。
ΔEab={(ΔL*)2+(Δa*)2+(Δb*)21/2
(判定基準)
A:ΔEab値<3
B:3≦ΔEab値<5
C:5≦ΔEab値<10
D:10≦ΔEab値<20
E:20≦ΔEab値
【0244】
<耐光性の評価>
得られた膜に対し、Xeランプにて紫外線カットフィルタを通して1万ルクスの光を10時間照射して、耐光テストを行った。色度計MCPD−1000(大塚電子(株)製)にて、耐光テスト前後の各膜の色差ΔEab値を測定した。ΔEab値を用いた下記判定基準に基づいて、耐光性を評価した。なお、小さいΔEab値が、耐光性が良好であることを示す。
(判定基準)
A:ΔEab値<3
B:3≦ΔEab値<5
C:5≦ΔEab値<10
D:10≦ΔEab値<20
E:20≦ΔEab値
【0245】
【表3】
【0246】
上記結果より、実施例は、赤外遮蔽性および可視透明性に優れていた。特に、化合物1〜6を使用した実施例1〜9は、赤外遮蔽性および可視透明性がより優れていた。更には、塗布膜を形成した際に、化合物の析出がなく、塗布膜の性状が良好であった。更には、耐熱性および耐光性も優れていた。
一方、比較例1、2は、赤外遮蔽性および可視透明性が劣っていた。
また、実施例1〜10において、さらに有彩色着色剤を配合することで、特定の可視光以外の透過性及び赤外遮蔽性が良好で、耐熱性および耐光性に優れたフィルタが得られた。
また、誘電体多層膜と実施例1〜10の組成物から得られる膜を合わせた積層膜も好適な効果が得られた。