(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
バイオ医薬品の生産には、微生物、動物細胞、植物細胞、菌類などの生体細胞を培養する培養法が用いられている。従来の生体細胞の培養手法ではステンレス製の培養槽が使用されてきた。培養槽には、生体細胞と培養液が収容され、攪拌手段によって培養液を攪拌する。
【0003】
培養を終了して新たに培養を行う際には、培養槽に培養液を収容する前に、培養槽や攪拌器などを洗浄し、滅菌を行う。この場合、培養槽内部を滅菌するための蒸気供給装置や、洗浄するための洗浄機構などの付帯設備を必要とし、操作も容易ではなかった。
【0004】
近年、使い捨て可能な可撓性バッグを用いて生体細胞の培養を行うシングルユースの培養システム(つまり、単回使用の(1回だけ使用する)培養システム)が知られている。一般的に、培養システムは、プラスチック製のフィルムなどで構成された可撓性を有するシングルユースの培養バッグと、この培養バッグを収容して形状を保持する支持体(ハウジング部)とで構成されている。
【0005】
培養バッグは、あらかじめ紫外線やガンマ線などを照射して滅菌され、清浄な状態に維持されているため、上述したステンレス製の培養槽を用いる場合のような滅菌、洗浄の工程、および付帯設備等を不要とすることができる。シングルユースの培養システムに関する発明が、例えば、特許文献1、2に記載されている。
【0006】
具体的に説明すると、特許文献1には、被培養物を含む培養液を収容して被培養物を培養する培養袋において、プラスチック材料により形成された袋本体と、前記袋本体内に回転自在に設けられ、前記培養液を攪拌する攪拌器と、前記袋本体内に設けられたバッフルであって、前記攪拌器の回転軸線方向に延びるとともにプラスチック材料により形成されたバッフルと、を備え、前記バッフルに、前記被培養物が通過可能なバッフル開孔が設けられていることを特徴とする培養袋が記載されている。
【0007】
そして、この特許文献1には、培養袋のバッフルは、培養袋を構成するフィルムとともにヒートシールして一体に接合する旨が記載されている。また、他の態様として、培養袋内のバッフルを袋本体の外側に設けられたバッフル保持部によって保持する旨が記載されている。
【0008】
また、特許文献2には、攪拌タンク反応器システムであって、以下:(i)少なくとも1つの開口部を備える可撓性バッグであって、該バッグが、流体媒体のための滅菌容器として機能する、可撓性バッグ;(ii)該バッグ内に配置されるシャフト;(iii)該シャフトに取り付け可能なインペラーであって、該インペラーが、該流体媒体を攪拌して流体力学的環境を提供するために使用される、インペラー;および(iv)該シャフトおよび該バッグの開口部に取り付けられるベアリング、を備える、攪拌タンク反応器システムが記載されている。
【0009】
そして、この特許文献2には、ハウジングが複数のバッフルを備え、バッグが該バッフルの周囲で折りたたまれている旨が記載されている。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、適宜図面を参照して、本発明に係るシングルユース細胞培養装置(以下、「細胞培養装置」という。)および培養バッグの実施形態について詳細に説明する。
なお、本発明に係る細胞培養装置および培養バッグは、医薬品や健康食品などの主原料となる物質を生産する微生物や動植物の細胞を培養する際に適用することができる。本発明において、生産対象の物質としては、何ら限定されるものではなく、例えば、抗体や酵素などのタンパク質、低分子化合物、高分子化合物などの生理活性物質、およびウイルスなどを挙げることができる。また、β−カロテンやアスタキサンチンなどのカロチノイド、クロロフィルやバクテリオクロロフィルなどの色素、食品または化粧品などの着色などに使用されるフィコシアニン等のフィコビリン蛋白質、脂肪酸などの生理活性物質を挙げることができる。
また、培養対象の細胞としては、動物細胞、植物細胞、光合成細菌、微細藻類、ラン藻類、昆虫細胞、細菌、酵母、真菌および藻類などを挙げることができる。特に、抗体や酵素などのタンパク質を生産する動物細胞を培養対象とすることが好ましい。また、培養に用いる培地についても特に限定されるものではなく、従来のあらゆる培地が使用可能である。
【0019】
(細胞培養装置の一実施形態)
図1は、本発明に係る細胞培養装置の一実施形態を説明する構成概略図である。
図1に示すように、細胞培養装置100は、培養バッグ1を収めるハウジング部2を備えている。そして、このハウジング部2は、培養バッグ1と当接する当接面の一部に、湾曲凸状の突起部4、4が設けられている。なお、
図1は、ハウジング部2内に培養液7が封入された培養バッグ1を収めた様子を図示している。また、
図1に示すように、細胞培養装置100は、培養バッグ1に収められた培養液7を攪拌させる攪拌手段を備えている。攪拌手段として具体的には、ハウジング部2の下方に、支持架台3に固定された攪拌
駆動装置5が設けてられている。この攪拌
駆動装置5は、ハウジング部2を中心軸から偏心させて回転させることによって培養バッグ1に収められた培養液7を攪拌するものである。
【0020】
なお、
図1には図示していないが、細胞培養装置100は、培養設備には不可欠であるところの空気、酸素、窒素および炭酸ガスなどのガス供給設備、温水冷水供給設備、給排水設備を具備している。また、細胞培養装置100は、目的の細胞を培養するために予め組成を調製した培地、流加培養に際しては培養中に添加する添加培地の供給設備などを具備している。
【0021】
(ハウジング部・支持架台)
ハウジング部2および支持架台3はいずれも、培養液7を充填した培養バッグ1の重さや圧力を支持して形状を維持できるだけの強度を有していればよく、金属製、硬質プラスチック製など材質を問わない。
【0022】
(突起部)
ここで、
図2は、
図1に示す突起部4の一態様を説明するハウジング部2の切欠き図である。また、
図3は、
図1のIII−III線断面図である。なお、
図3では、説明および図示の都合上、ハウジング部2の内壁から浮かせて培養バッグ1を図示しているが、実際には、封入された培養液7の圧力によってハウジング部2の内壁面や突起部4に圧着している。また、
図4A〜Cはそれぞれ、突起部4の他の態様を説明する断面図である。
【0023】
図2および
図3に示すように、突起部4は、略三角柱状とすることができるが、これに限定されるものではなく、
図4Aに示すように略半円柱状とすることや、
図4Bに示すように培養バッグ1と当接する二つの面がやや膨出した略三角柱状とすることや、
図4Cに示すように略半楕円柱状とすることができる。つまり、本発明における突起部4とは、培養バッグ1に圧力がかかったときに破れないよう、辺となる部分4aが若干の丸みを帯びて(湾曲して)形成されていればよい。このような突起部4を備えることにより、細胞培養装置100は、攪拌されている培養液7が当該突起部4にあたり、上下方向の流れを促すことができる。そのため、細胞培養装置100は、培養液7の攪拌効率を向上させることができる。なお、
図2に示す突起部4の上端部分4
bおよび下端部分4cはいずれも開口状態としておくことができるが、板材や蓋部材などを用いて開口部分を塞ぎ、閉口状態としておくこともできる(後記する
図5、
図6、
図7に示す態様においても同様である。)。また、上端部分4
bおよび下端部分4cを形成する辺4dは、丸みを帯びるように加工しておくのが好ましい。このようにすると、培養バッグ1をより破れ難くすることができる。
【0024】
図2および
図3に示すように、辺となる部分4aの丸みは、例えば、曲率半径が底辺4
eの長さに対して0.05〜0.5倍となるようにするのが好ましい。辺となる部分4aの曲率半径をこの範囲とすれば、辺となる部分4aが適度な丸みを帯びているため、培養バッグ1を破れ難くすることができる。培養バッグ1をより破れ難くする観点から、辺となる部分4aの曲率半径は0.2以上とするのが好ましく、0.45以下とするのが好ましい。
【0025】
図3に示すように、突起部4の高さWは、ハウジング部2の内寸Dに対し、W/Dで0.05〜0.15の範囲にあるのが好ましい。突起部4の高さWと内寸Dの関係をこのようにすると、攪拌されている培養液7の旋回流を過度に邪魔することなく、培養液7に対して上下方向の流れをより促すことができる。そのため、細胞培養装置100は、攪拌効率をより向上させることができる。攪拌効率をさらに向上させる観点から、突起部4の高さWは、W/Dで0.08以上とするのが好ましく、0.13以下とするのが好ましい。
【0026】
また、突起部4の高さWは、
図3に示すように、突起部4の横断面における底辺の長さBの0.5〜5倍とすることもできる。突起部4の高さWと突起部4の底辺の長さBの関係をこのようにした場合も前記と同様、攪拌されている培養液7の旋回流を過度に邪魔することなく、培養液7に対して上下方向の流れをより促すことができる。そのため、細胞培養装置100は、攪拌効率をより向上させることができる。攪拌効率をさらに向上させる観点から、突起部4の高さWは、突起部4の底辺の長さBの1以上とするのが好ましく、3以下とするのが好ましい。
【0027】
さらに、突起部4の長手方向の長さLは、
図1に示すように、培養バッグ1に封入される培養液7の液面高さHに対して、L/Hで0.05〜1の範囲にあるのが好ましい。ここで、突起部4は、
図5に示すように、同一線上に複数分割して配置してもよく、この場合の長さLは、同一線上に複数分割して配置された突起部4、4、4の長さを合計したものとする(この例では、突起部4と突起部4の間の距離は、長さLには含めない)。なお、
図5は、突起部4の他の態様を説明するハウジング部2の切欠き図である。
【0028】
突起部4の長手方向の長さLと培養液7の液面高さHの関係を前記した範囲とすると、前記と同様、攪拌されている培養液7の旋回流を過度に邪魔することなく、培養液7に対して上下方向の流れをより促すことができる。そのため、細胞培養装置100は、攪拌効率をより向上させることができる。攪拌効率をさらに向上させる観点から、突起部4の長手方向の長さLは、L/Hで0.3以上とするのが好ましく、0.8以下とするのが好ましい。
【0029】
前記した突起部4は、
図1〜3に示すように、ハウジング部2の側壁部について、鉛直方向と平行な方向に設けることができる。また、突起部4は、
図6に示すように、鉛直方向に対して所定角度θ傾斜させて、ハウジング部2の側壁部に設けることもできる。なお、
図6は、突起部4の他の態様を説明するハウジング部2の切欠き図である。
【0030】
所定角度θは任意に設定可能である。所定角度θは、例えば、鉛直方向を0°とした場合に、0°を超え45°以下とするのが好ましい。このように傾斜させた場合も前記同様、培養液7に上下方向の流れを促すことができる。
【0031】
また、突起部4は、着脱自在に取り付けるようにすることもできる。ここで、
図7は、ハウジング部2と突起
部4の他の態様を示す切欠き図である。
図7に示すように、他の態様として、ハウジング部2内に1つ以上の穴部21aを有している固定機構21を設ける。そして、突起部4には、固定機構21の穴部21aに固定するための固定部20を設ける。
固定機構21は、固定部20によって突起部4を固定することができればどのようなものでもよいが、例えば、パンチングメタルや金網で形成することができる。
固定部20は、辺となる部分4aの対面側、すなわち突起部4の底辺に設けるのが好ましい。このようにすると、固定部20が培養バッグ1に接触して培養バッグ1が破れてしまうという事態を回避することができる。固定部20は、例えばパンチングメタルの穴に合う形状の凸状体や金網の網目に係止するフックなどとするとよい。
固定機構21と固定部20を備えることによって、突起部4の取り付け位置及び取り付け角度を自在に変更することができ、且つ、突起部4を着脱自在に固定することができる。
【0032】
(培養バッグ)
本発明に係る培養バッグ1は、
図1に示すように、細胞培養装置100のハウジング部2に収められ、可撓性を有し、内部に培養液7を封入可能なものであれば特に限定されることなく使用可能である。
培養バッグ1は、例えば、エチレン・ビニル・アセテートやエチル・ビニル・アルコールなどの多層フィルムで構成されたものを好適に用いることができる。このような培養バッグ1は、医薬品包装用途のシングルユースのバッグが各社から市販されており、任意に選択して使用することができる。なお、市販されている培養バッグは、一般的に、予めガンマ線、紫外線、エチレンオキシドガスなどによって滅菌されて無菌状態が維持され、気体や液体などの内容物がほぼ抜かれて、折り畳まれた状態で提供されている。
【0033】
このような培養バッグ1について、本発明においては、ハウジング部2の一部に設けられた湾曲凸状の突起部4と対応する形状の凹部1a(
図3参照)を設けているのが好ましい。このようにすると、培養バッグ1をハウジング部2にセットしたときに、ハウジング部2の突起部4と、培養バッグ1の凹部1aと、が合致するため、培養バッグ1に負担がかかり難い。つまり、培養バッグ1に余計な圧力がかからないため、培養バッグ1が破れてしまうのをより防ぐことができる。
【0034】
培養バッグ1には、液中通気用ガス供給管8、気相用ガス供給管9、培地供給管10、培養液排出管11、およびガス排出管12が設けられている。
液中通気用ガス供給管8の培養バッグ1内部に設けた先端部には、気泡を発生させるための散気手段13が接続されている。なお、散気手段13は、融着などにより培養バッグ1内の側壁部に沿った底部に設けられている。このように散気手段13を設けると、散気手段13によって生じた気泡によって培養液7に上昇流が生じる。従って、培養液7の攪拌効率をさらに向上させることができる。
また、液中通気用ガス供給管8、気相用ガス供給管9、培地供給管10、培養液排出管11、およびガス排出管12にはそれぞれバルブ
6が設けられており、通気、通液のON/OFFやそれらの流量を適切に制御できるようになっている。
【0035】
液中通気用ガス供給管8、気相用ガス供給管9、ガス排出管12には、外部からの微生物の侵入を防止するためのガス用フィルタ14が設けられている。なお、このほかにもサンプリングやpH調節用薬剤注入、培地交換用配管などを設けることができるが、
図1中への記載は省略した。
また、培養状態の計測手段として、pH、温度、溶存酸素濃度、および溶存炭酸ガス濃度などを計測する装置と、それぞれのセンサとを具備しているが、
図1中には簡略化して計測手段15として記載した。
【0036】
(操作方法)
以上に説明した細胞培養装置100と培養バッグ1の操作方法(培養の操作手順)について、
図1を参照して以下に詳細に説明する。なお、以下の説明は操作の概要について説明するものであり、必ずしも下記の手順に拘束されるものではない。
【0037】
培養バッグ1は、折り畳まれた状態で提供され、位置固定化支持具16a、16bにより、ハウジング部2の所定の取り付け配置になるように位置決めして据え付けられる。培養バッグ1は、据え付けに際して、ハウジング部2の上部に開口部が設けられている場合は、上部の開口部から挿入して配置することができるが、側壁部に開口部が設けられている場合は、側壁部から挿入して配置することができる。このように、ハウジング
部2の側壁部に開口部が設けられている場合は、公知の開閉機構を採用することが好ましい。
【0038】
培地供給管10を介して、培養バッグ1の内部に目的の細胞と培地を懸濁した培養液7を充填する。培養液7は、予め所定の細胞濃度となるように調製された後に充填してもよいが、培地を充填した後に、細胞を播種して所定の細胞濃度となるように調製してもよい。なお、図には記載していない培地供給槽または培養液調製槽と、培地供給管10とは、無菌的に接続されることは言うまでもない。いずれの場合においても、充填された培養液7の重力による圧力によって培養バッグ1がハウジング部2の内壁面や突起部4に圧着される。
【0039】
この結果、ハウジング部2と当接する培養バッグ1の内面に、湾曲凸状の突起部4によるバッフル(邪魔板)が形成される。
前記したように、支持架台3には、培養バッグ1とハウジング部2とを一体として、中心軸から偏心させて回転させることによる振盪方式による培養液7の攪拌駆動装置5が設けられている。攪拌駆動装置5を駆動させることによって、培養バッグ1内の培養液7を流動させ、攪拌することができる。
図3に示すように、攪拌駆動装置5によって、培養液7は概ね水平方向の旋回流を生じるが、外周部の培養液7の一部は、ハウジング部2の突起部4(
図3では4個の突起部4を例示している)によって形成されたバッフルに衝突する。これにより、旋回流の方向が転向されて上下方向の流れが生じ、培養液7が均一になるように、効率的に混合することができる。
【0040】
培養バッグ1は、液中通気用ガス供給管8を介して液中通気用のガス供給手段17と接続されており、気相用ガス供給管9を介して気相用のガス供給手段18と接続されている。液中通気用のガス供給手段17と気相用のガス供給手段18を駆動させて培養バッグ1内に所定濃度の酸素混合ガスを通気し、培養を開始する。
【0041】
液面または液中から通気された酸素ガスは液中に溶解し、前記したように旋回流の方向が転向されて上下方向の流れが生じつつ培養バッグ1内を流動するので、培養を行っている間、培養液7中の細胞には、均一に酸素を供給することができ、培養液の攪拌効率を向上させることができる。
【0042】
培養液7のpH、温度、DO(溶存酸素濃度)、DCO
2(溶存二酸化炭素濃度)は、計測手段15として代表的に記載した該当のセンサおよび計測器によって測定され、制御装置19に入力される。制御装置19では、空気と酸素、および窒素の混合ガスの各通気量を調整することにより所定のpH、DO、DCO
2を維持して培養を継続する。また、細胞濃度や培地成分濃度の測定は、培養液排出管11、または別途設けたサンプリング用チューブ(図示せず)によって、培養中の培養液7の一部を無菌的に取り出して計測することができる。細胞濃度の計測を光学的濁度によって行う場合には、前述した計測手段15として、予め設けた濁度センサを接続することによって可能となる。これによって、培養を行っている間、培養液7中の培養環境を、細胞の培養に適正な状態に維持することができる。
【0043】
培養が終了すると、攪拌駆動装置5が停止され、ハウジング部2の揺動が停止される。その後、培養バッグ1の下部に設けた培養液排出管11を介して培養液7が排出される。排出された培養液7からは、目的の培養生産物の回収、精製等の後工程を行うことによって、一連の培養生産工程を終了する。
培養液7が排出された後、ハウジング部2から培養バッグ1が取り外されて廃棄される。次の培養生産工程を開始するには、新たな培養バッグ1がハウジング部2に取り付けられる。
【0044】
(細胞培養装置の他の実施形態)
図8は、本発明に係る細胞培養装置の他の実施形態を説明する構成概略図である。
図8に示す細胞培養装置200と前記した細胞培養装置100とは、細胞培養装置200がハウジング部2の底部に湾曲凸状の突起部26を設けていた点が相違しており、それ以外の構成は細胞培養装置100と全く同様である。従って、細胞培養装置200については、細胞培養装置100と相違する構成について説明し、細胞培養装置100と同様の構成については説明を省略する。
【0045】
ここで、
図9Aは、ハウジング部の底部に設けた突起部の一例を示す概略図である。
図9Aに示すように、突起部26は、ハウジング部2の底部の中心位置から放射線状に等間隔で4つ配置することができる。
また、
図9Bは、ハウジング部の底部に設けた突起部の他の一例を示す概略図である。
図9Bに示すように、突起部26は、ハウジング部2の底部の中心位置から放射線状に等間隔で3つ配置することができる。
図9Aに示す態様や
図9Bに示す態様で突起部26を設けると、いずれの場合も、攪拌されている培養液7が当該突起部26にあたり、上下方向の流れをさらに促すことができる。そのため、細胞培養装置200は、培養液7の攪拌効率をさらに向上させることができる。
【0046】
なお、
図10Aは、突起部26の具体的な形状を説明する斜視図である。
図10Bから
図10Eはそれぞれ突起部26の具体的な形状を説明する断面図である。
突起部26は、
図10Aや
図10Bに示すように、略三角柱状とすることができる。なお、
図10Aに示す突起部26と
図10Bに示す突起部26は、
図10Bに示す突起部26の方が、
図10Aに示すものよりも辺となる部分26aの曲率半径が大きい点で異なっている。
また、突起部26は、
図10Cに示すように、略半円柱状とすることができ、
図10Dに示すように、略半楕円柱状とすることができる。さらには、突起部26は、
図10Eに示すように、一方の面26cの面積と他方の面26cの面積が異なるような非対称の形状とすることもできる。
【0047】
(細胞培養装置の他の実施形態)
細胞培養装置100および細胞培養装置200では、培養バッグ1とハウジング部2とを一体として、中心軸から偏心させて回転させることによる振盪方式による培養液7の攪拌駆動装置5が設けられている例について説明した。しかしながら、本発明における培養液の攪拌方法は前記したものに限定されず、種々の方式を適用することができる。
【0048】
ここで、
図11は、本発明に係る細胞培養装置の他の実施形態を説明する構成概略図である。
図11に示す細胞培養装置300は、攪拌
駆動装置5にマグネットカップリングを用いた例を示している。細胞培養装置300は、ハウジング部2内に収められた培養バッグ1の上部に天板
51が設けられている。そして、培養バッグ1の内部に
第1磁性カップリング部材
52を配置し、天板
51上の
第2磁性カップリング部材
53との間でマグネットカップリングを構築している。
第1磁性カップリング部材
52には、剛性を有している回転シャフト24が接続されており、培養液7中に浸されている。回転シャフト24には、攪拌翼25aおよび攪拌翼25bが固定されている。
【0049】
従って、制御装置19からの信号を受けて攪拌駆動装置5が駆動すると
第2磁性カップリング部材
53が回転する。そして、その回転力が
第1磁性カップリング部材
52を介して回転シャフト24に伝達され、攪拌翼25aおよび攪拌翼25bが回転する。細胞培養装置300によれば、培養バッグ1に貫通穴を設けることなく培養液7を攪拌することができる。なお、攪拌のための密封機構としては前記したマグネットカップリングを用いる方法に限定されるものではなく、公知のメカニカルシール(軸封装置)を用いる機械的密封手段を適用することもできる。なお、
図11に示す細胞培養装置300における培養の操作手順については、培養液7の流動攪拌手段が異なるほかは、細胞培養装置100と同様であるので、説明は省略する。
【0050】
以上に説明した本発明に係る細胞培養装置および培養バッグによれば、ハウジング部に湾曲凸状の突起物が設けられているので、培養液の攪拌効率を向上させることができる。また、当該突起物は接合や保持具を必要とせず、折り畳むなどの操作が必要ないので、圧力がかかったとしても培養バッグが破けるおそれはない。そのため、培養液が漏出する懸念をより低減させることができる。
本発明によれば、培養液の攪拌効率が向上するので、培養細胞と培地の混合を促進し、培養細胞に対する栄養成分、および呼吸に必要な溶存酸素の供給を行うとともに培養生産効率を向上させることができる。
また、培養液の攪拌効率が向上するので、従来よりも少ない動力で細胞培養を行うことができ、動力コストを低減することができる。