(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
放射標識、造影剤、治療剤又は診断剤が、磁気共鳴画像法(MRI);ポジトロン放出断層撮影(PET);単一光子放射断層撮影(SPECT);光学イメージング;コンピュータ断層撮影(CT);超音波;X線;及び光音響イメージングからなる群から選ばれる1つ又はそれ以上のイメージングプラットフォームのための薬剤を含む、請求項8又は9に記載の抗体様結合タンパク質。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
発明の要旨
ヒト化モノクローナル抗体DS6に基づくコンパニオン診断用抗体様結合タンパク質は、ポジトロン放出断層撮影(PET)生体イメージングのような画像化技術による、腫瘍関連MUC1−シアログリコトープ(sialoglycotope)CA6のインビボ検出及び定量のための診断ツールとしての使用のために開発された。抗体様結合タンパク質は、患者の層別化及び細胞傷害性マイタンシノイドDM4に結合された腫瘍関連MUC1−シアログリコトープCA6に対するヒト化モノクローナル抗体からなるヒト化DS6抗体−薬物免疫複合体huDS6−DM4の治療有効性の早期評価を容易にする。
【0005】
コンパニオン診断用抗体様結合タンパク質は、CA6エピトープを標的とする抗体薬物複合体(ADC)のような高いCA6発現を有する組織(例えば、腫瘍組織)を標的とする薬物での処置に対して優先的に応答し得る高いCA6発現を有する患者及び患者亜集団を同定するために使用され得る。ADCは、例えば、DM1若しくはDM4のようなマイタンシン誘導体のような細胞傷害性薬剤、又は国際公開第WO 2005/009369号に記載されるような別の薬剤に結合されたhuDS6分子であり得る。コンパニオン診断用抗体様結合タンパク質は、例えば被験体がADCでの処置に対して応答する可能性があるかどうかを決定するためにADCの投与前に投与され得る。
【0006】
コンパニオン診断用抗体様結合タンパク質は、ポジトロン放出断層撮影(PET)のような生体イメージング技術によるインビボCA6検出のために使用され得、そして48〜24時間以内又はそれ以下のような短い曝露時間及び速い画像化を可能にし、コンパニオン診断薬は、適切なクリアランス動態を有する高度に特異的な結合剤である。
【0007】
本明細書に開示される発明は、CA6に特異的に結合する抗体様結合タンパク質を提供し、ここで該抗体様結合タンパク質は、キレート剤をさらに含む。抗体様結合タンパク質は、PETのような生体イメージング技術によるヒトCA6腫瘍抗原のインビボ検出及び定量のための診断ツールとして使用され得、ここで抗体様結合タンパク質は、生体イメージングトレーサーへのカップリングのために適切なキレート剤に複合体化される。
【0008】
本明細書に開示される発明はさらに、CA6に特異的に結合する抗体様結合タンパク質を提供し、ここで抗体様結合タンパク質はキレート剤をさらに含む。抗体様結合タンパク質は、CA6腫瘍抗原を発現する組織のための造影剤又は検出剤として使用され得、ここで抗体様結合タンパク質は、薬剤へのカップリングのために適したキレート剤に結合される。
【0009】
本明細書に開示される発明は、直列に(in tandem)配置されかつリンカー配列により分離された、ヒト化DS6抗体由来のそれぞれV
L及びV
H DNA配列を含むDS6抗体様結合タンパク質を製造する方法をさらに提供する。DS6 V
L−リンカー−DS6 V
L及びDS6 V
H−リンカー−DS6 V
H構築物は、以下の式[I]及び[II]に従って、DNAレベルで3’末端にてヒト定常ドメイン配列に融合される:
V
L1−L
1−V
L2−C
L [I]
V
H1−L
2−V
H2−C
H1 [II]
式中:
V
L1はDS6ベースの免疫グロブリン軽鎖可変ドメインであり;
V
L2はDS6ベースの免疫グロブリン軽鎖可変ドメインであり;
V
H1はDS6ベースの免疫グロブリン重鎖可変ドメインであり;
V
H2はDS6ベースの免疫グロブリン重鎖可変ドメインであり;
C
Lは、ヒトIGKC免疫グロブリン軽鎖定常ドメインのような免疫グロブリン軽鎖定常ドメインであり;
C
H1は、ヒト免疫グロブリンC
H1重鎖定常ドメインのような免疫グロブリンC
H1重鎖定常ドメインであり;
L
1及びL
2はアミノ酸リンカーであり、そして
ここでV
L1及びV
L2のポリペプチドは、同じか又は異なるDS6ベースの免疫グロブリン軽鎖可変ドメインであり、そしてV
H1及びV
H2のポリペプチドは同じか又は異なるDS6ベースの免疫グロブリン重鎖可変ドメインであり;そしてここで式Iのポリペプチド及び式IIのポリペプチドは、二価単一特異性タンデム免疫グロブリン抗体様結合タンパク質を形成する。C
L及びC
H1ドメインは、例えばジスルフィド結合により接続され得る。さらに、式I及び式IIのポリペプチドは任意のタグ(例えば、ポリヒスチジン又は6x−Hisタグ)を含み得る。
【0010】
本明細書に開示される発明は、患者において癌のような障害を処置する方法をさらに提供し、該方法は、患者においてCA6の発現レベルを得て、[ここでキレート剤をさらに含む、CA6に特異的に結合する抗体様結合タンパク質が患者に投与される]、そして組織がCA6を発現するかどうかに関して決定を行う工程;及び患者が参照組織におけるCA6発現レベルよりも少なくとも10%高い、例えば、参照組織におけるCA6発現より10%、20%、30%、40%又はそれ以上であるCA6発現レベルを有する場合に、患者にhuDS6−DM4を投与する工程を含む。いくつかの実施態様において、本発明において特徴とされる抗体様結合タンパク質は、漿液性卵巣癌、類内膜卵巣癌、子宮頸部の新生物、子宮内膜の新生物、外陰部の新生物、乳癌、膵腫瘍、及び尿路上皮の腫瘍におけるような腫瘍組織におけるCA6発現のレベルを決定するために使用される。
【0011】
本明細書に開示される発明は、癌患者がhuDS6−DM4での処置のための候補であるかどうかを決定する方法をさらに提供し、該方法は、患者においてCA6の発現レベルを得て、[ここでキレート剤をさらに含む、CA6に特異的に結合する抗体様結合タンパク質が患者に投与される]、そしてCA6発現レベルが、参照組織におけるCA6発現レベルよりも少なくとも10%高い、例えば、参照組織におけるCA6発現より10%、20%、30%、40%又はそれ以上であるかどうかを決定する工程;及び肯定と決定された場合に該癌患者がhuDS6−DM4での処置のための候補であるという指示を提供する工程を含む。
【0012】
本明細書に開示される発明は、huDS6−DM4での処置に対する癌患者の応答をモニタリングする方法をさらに提供し、該方法は、患者においてCA6の発現レベルを得て、CA6に特異的に結合する抗体様結合タンパク質[ここで抗体様結合タンパク質はキレート剤をさらに含む]を、huDS6−DM4での処置の前及び間に該患者に投与し、CA6発現レベルがhuDS6−DM4での処置の結果として増加したか、同じか又は減少したかどうかを決定する工程;及びhuDS6−DM4での処置の前のCA6発現レベルと比較して、患者におけるCA6発現レベルが減少した場合に処置が継続されるべきであるという指示を提供する工程を含む。
【0013】
本発明は、CA6に特異的に結合する抗体様結合タンパク質を提供し、ここで抗体様結合タンパク質は、以下の式[I]及び[II]:
V
L1−L
1−V
L2−C
L [I]
V
H1−L
2−V
H2−C
H1 [II]
[式中:
V
L1はDS6ベースの免疫グロブリン軽鎖可変ドメインであり;
V
L2はDS6ベースの免疫グロブリン軽鎖可変ドメインであり;
V
H1はDS6ベースの免疫グロブリン重鎖可変ドメインであり;
V
H2はDS6ベースの免疫グロブリン重鎖可変ドメインであり;
C
Lは、ヒトIGKC免疫グロブリン軽鎖定常ドメインのような免疫グロブリン軽鎖定常ドメインであり;
C
H1は、ヒト免疫グロブリンC
H1重鎖定常ドメインのような免疫グロブリンC
H1重鎖定常ドメインであり;
L
1及びL
2はアミノ酸リンカーである]
により表される構造を有する2つのポリペプチドを含み;
ここで式Iのポリペプチド及び式IIのポリペプチドは、二価単一特異性タンデム免疫グロブリン抗体様結合タンパク質を形成し;そして
ここで抗体様タンパク質はキレート剤をさらに含む。
【0014】
本發明はまた、CA6に特異的に結合する抗体様結合タンパク質を製造する方法を提供し、ここで抗体様結合タンパク質はキレート剤をさらに含み、該方法は:
(a) 以下の式[I]及び[II]:
V
L1−L
1−V
L2−C
L [I]
V
H1−L
2−V
H2−C
H1 [II]
[式中:
V
L1はDS6ベースの免疫グロブリン軽鎖可変ドメインであり;
V
L2はDS6ベースの免疫グロブリン軽鎖可変ドメインであり;
V
H1はDS6ベースの免疫グロブリン重鎖可変ドメインであり;
V
H2はDS6ベースの免疫グロブリン重鎖可変ドメインであり;
C
Lは、ヒトIGKC免疫グロブリン軽鎖定常ドメインのような免疫グロブリン軽鎖定常ドメインであり;
C
H1は、ヒト免疫グロブリンC
H1重鎖定常ドメインのような免疫グロブリンC
H1重鎖定常ドメインであり;
L
1及びL
2はアミノ酸リンカーである]
により表される構造を有するポリペプチド[ここで、式Iのポリペプチド及び式IIのポリペプチドは、二価単一特異性タンデム免疫グロブリン抗体様結合タンパク質を形成する]をコードする1つ又はそれ以上の核酸分子を細胞において発現させること;並びに
(b) 抗体様結合タンパク質をキレート剤に結合させること
を含む。
【0015】
本発明はさらに、CA6に特異的に結合しかつキレート剤をさらに含む抗体様結合タンパク質及び造影剤を患者に投与すること;ポジトロン放出断層撮影(PET)イメージングにより患者においてCA6を発現する患部組織を同定すること;並びに患部組織におけるCA6発現が参照標準におけるCA6発現の10%より高いか10%に等しい場合に、患者がhuDS6−DM4での処置のための候補であるということを決定することを含む、患者においてCA6を発現する患部組織を処置するための方法を提供する。
【0016】
本発明はさらに、患者においてCA6陽性癌を処置する方法を提供し、該方法は、患者においてCA6の発現レベルに関する情報を取得する工程;及び患者におけるCA6の発現レベルが参照標準におけるCA6の発現の10%より高いか又は10%に等しい場合に、患者にhuDS6−DM4を投与する工程を含む。
【0017】
本発明はさらに、癌患者がhuDS6−DM4での処置のための候補であるかどうかを決定する方法を提供し、該方法は、患者においてCA6の発現レベルに関する情報を取得する工程;及び患者におけるCA6の発現レベルが参照標準におけるCA6発現の10%より高いか又は10%に等しい場合に該患者がhuDS6−DM4での処置のための候補であると決定する工程を含む。
【0018】
本発明はさらに、huDS6−DM4での処置に対する癌患者の応答をモニタリングする方法を提供し、該方法は、huDS6−DM4の投与後に患者におけるCA6の発現レベルに関する情報を取得する工程;及び患者におけるCA6発現のレベルが、huDS6−DM4での処置前のCA6発現レベルと比較して減少した場合に、処置が継続されるべきであるという指示を提供する工程を含む。
【0019】
本発明は、CA6に特異的に結合する抗体様結合タンパク質を提供し、ここで抗体様結合タンパク質は、以下の式[I]及び[II]:
V
L1−L
1−V
L2−C
L [I]
V
H1−L
2−V
H2−C
H1 [II]
[式中:
V
L1はDS6ベースの免疫グロブリン軽鎖可変ドメインであり;
V
L2はDS6ベースの免疫グロブリン軽鎖可変ドメインであり;
V
H1はDS6ベースの免疫グロブリン重鎖可変ドメインであり;
V
H2はDS6ベースの免疫グロブリン重鎖可変ドメインであり;
C
Lは、ヒトIGKC免疫グロブリン軽鎖定常ドメインのような免疫グロブリン軽鎖定常ドメインであり;
C
H1は、ヒト免疫グロブリンC
H1重鎖定常ドメインのような免疫グロブリンC
H1重鎖定常ドメインであり;
L
1及びL
2はアミノ酸リンカーである]
により表される構造を有する2つのポリペプチドを含み、
ここで式Iのポリペプチド及び式IIのポリペプチドは、二価単一特異性タンデム免疫グロブリン抗体様結合分子を形成する。
【0020】
本発明はまた、CA6に特異的に結合する抗体様結合タンパク質を製造する方法を提供し、該方法は、以下の式[I]及び[II]:
V
L1−L
1−V
L2−C
L [I]
V
H1−L
2−V
H2−C
H1 [II]
[式中:
V
L1はDS6ベースの免疫グロブリン軽鎖可変ドメインであり;
V
L2はDS6ベースの免疫グロブリン軽鎖可変ドメインであり;
V
H1はDS6ベースの免疫グロブリン重鎖可変ドメインであり;
V
H2はDS6ベースの免疫グロブリン重鎖可変ドメインであり;
C
Lは、ヒトIGKC免疫グロブリン軽鎖定常ドメインのような免疫グロブリン軽鎖定常ドメインであり;
C
H1は、ヒト免疫グロブリンC
H1重鎖定常ドメインのような免疫グロブリンC
H1重鎖定常ドメインであり;
L
1及びL
2はアミノ酸リンカーである]
により表される構造を有するポリペプチドをコードする1つ又はそれ以上の核酸分子を細胞において発現させることを含み、そして
ここで式Iのポリペプチド及び式IIのポリペプチドは、二価単一特異性タンデム免疫グロブリン抗体様結合タンパク質を形成する。
【0021】
本発明の特定の実施態様は、特定の実施態様の以下のより詳細な説明及び特許請求の範囲から明らかとなるだろう。
【発明を実施するための形態】
【0023】
発明の詳細な説明
本明細書に開示される発明は、PET生体イメージングによるヒトCA6腫瘍抗原のインビボ検出及び定量のための診断ツールとして使用するための、ヒト化モノクローナル抗体DS6に基づくコンパニオン(companion)診断用抗体様結合タンパク質に関する。コンパニオン診断用抗体様結合タンパク質は、患者の層別化、及び細胞傷害性マイタンシノイドDM4に結合された腫瘍関連MUC1−シアログリコトープ(sialoglycotope)のCA6に対するヒト化モノクローナル抗体からなるDS6抗体−薬物免疫複合体huDS6−DM4の治療有効性の早期評価を容易にする。抗体−薬物免疫複合体huDS6−DM4は、例えば国際公開第WO 2005/009369号(参照により本明細書に加入される)に記載される。DS6抗体及びCA6腫瘍抗原は、例えばKearse et al.(Int J Cancer. 2000 Dec 15;88(6):866−72)(参照により本明細書に加入される)に記載される。
【0024】
HuDS6−DM4は、細胞傷害性マイタンシノイドDM4に結合された、腫瘍関連MUC1−シアログリコトープCA6に対するヒト化モノクローナル抗体(huDS6)からなる抗体−薬物免疫複合体のクラスの最初のものである。ムチンタンパク質は、上皮表面上に保護的粘膜バリアを形成する際に本質的な役割を果たし、そして肺、乳房、卵巣、胃及び膵臓を含む多くの様々な組織の粘膜表面を覆う上皮細胞の頂端膜側に発現される。MUC1(ムチン−1)は、多数の上皮癌において過剰発現することが知られており、そしてCA6過剰発現はヒト癌における高悪性度挙動及び患者の悪い予後に関連する。CA6は正常成体組織では限られた分布を有し、従ってDS6抗体をCA6陽性腫瘍(例えば、卵巣、子宮、膵臓、乳房又は肺の腫瘍)選択的処置のための見込みのある薬剤にしている。抗体/抗原結合及び内部移行の際に、huDS6−DM4免疫複合体はDM4を放出し、これがチューブリンと結合して微小管の組み立て/分解動力学を妨害し、CA6を発現する腫瘍細胞の有糸分裂停止を生じる。HuDS6−DM4は現在、CA6抗原陽性固形腫瘍と診断された患者においてフェーズI臨床試験を受けている。
【0025】
腫瘍におけるCA6の発現を示し、従ってhuDS6−DM4での処置に応答するかもしれない患者を同定するために、高親和性でCA6に結合するコンパニオン診断ツールが開発された。さらに、このコンパニオン診断用抗体様結合タンパク質は、huDS6−DM4治療に対する患者の応答を非侵襲的にモニタリングし、それにより臨床試験又は臨床処置における患者の層別化を容易にする(すなわち、腫瘍退縮と相関したCA6シグナルの減少又は不十分な有効性と一緒になった標的下方調節)ための補助ツールを提供する早期有効性マーカーとして作用する。このようなコンパニオン診断は、消耗を減少させて患者への有効な薬物のより速い送達に役立ち得る。本明細書に開示されるコンパニオン診断用抗体様結合タンパク質はまた、PET生体イメージングによるインビボでのCA6検出のために使用され得る。高い腫瘍対血液シグナルでの短い曝露時間及び例えば48〜24時間以内又はそれ以下の速いイメージングを可能にするために、適切なクリアランス動態を有する高度に特異的な結合剤が必要とされた。
【0026】
DS6抗体配列由来の様々な新規な抗体様結合タンパク質が、PETイメージングのために必要な仕様(例えば、より良好な腫瘍透過、より速いクリアランス動態及び優れた腫瘍対血液比)に合うように適したキレート剤及び放射標識と共に開発された。所定のイメージング性能指数(imaging figures of merit)(IFOM)に基づいて、約70kDaの抗体フラグメント(B−Fabと呼ばれる二価単一特異性タンデム免疫グロブリン)を特異性評価及び最終的な臨床解釈のために選択した。B−Fab形式は:(1)熱ストレスに対する高い安定性(42℃で1週間のインキュベーション);(2)ヒト血清中での高い安定性(37℃で24時間のインキュベーション);及び(3)一時的細胞培養における合理的な生産性(約2mg/L)という利点を提供した。全長抗体(約150kDa)と比較して、抗体フラグメント(約50〜75kDa)は、より速い腎排出速度及び血液クリアランスを示し、これによりPET生体イメージングの間により高いシグナル対ノイズ比を生じる。
【0027】
B−Fab DS6抗体様結合タンパク質は、DS6ヒト化モノクローナル抗体のCA6抗原認識部位に基づく2つのCA6抗原認識部位を含み、そしてCA6抗原に対して高い結合親和性を示す。キレート剤(例えば、DOTA、NOTA、DTPA又はTETA)との結合後に、DS6 B−Fabを放射標識し、そしてインビボPET生体イメージング実験に使用した。
【0028】
標準的な組み換えDNA方法を使用して、本発明のコンパニオン診断用抗体(DS6抗体に基づく)を形成するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを構築し、これらのポリヌクレオチドを組み換え発現ベクターに組み込み、そして上記ベクターを宿主細胞に導入した。例えば、Sambrook et al., 2001, Molecular Cloning: A Laboratory Manual (Cold Spring Harbor Laboratory Press, 3rd ed.)を参照のこと。酵素反応及び精製技術は、製造者の仕様書に従って、当該分野において一般的に理解されるように、又は本明細書に記載されるように、行われ得る。具体的な定義が示されていなければ、本明細書において記載される分析化学、合成有機化学、並びに医薬及び製薬化学に関連して利用される命名法、並びにそれらの検査法及び技術は、当該分野で周知でありかつ一般的に使用されるものである。同様に、従来の技術が、化学合成、化学分析、医薬品、製剤、送達及び患者の処置のために使用され得る。
【0029】
1.
一般的定義
本開示に従って利用される以下の用語は、別の指示がなければ、以下の意味を有すると理解されるものとする。状況により他のものが必要とされなければ、単数形の用語は複数形を含むものとし、かつ複数形の用語は単数形を含むものとする。
【0030】
本明細書で使用される用語「ポリヌクレオチド」は、少なくとも10ヌクレオチド長の一本鎖又は二本鎖核酸ポリマーを指す。特定の実施態様において、ポリヌクレオチドを構成するヌクレオチドは、リボヌクレオチドでもデオキシリボヌクレオチドでもよく、又はいずれかの型のヌクレオチドの修飾された形態でもよい。このような修飾としては、ブロムリジン(bromuridine)のような塩基修飾、アラビノシド及び2’,3’−ジデオキシリボースのようなリボース修飾、並びにホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホロセレノアート(phosphoroselenoate)、ホスホロジセレノアート(phosphorodiselenoate)、ホスホロアニロチオアート(phosphoroanilothioate)、ホスホルアニラデート(phoshoraniladate)及びホスホロアミデート(phosphoroamidate)のようなヌクレオチド間連結修飾が挙げられる。用語「ポリヌクレオチド」は、DNAの一本鎖形態及び二本鎖形態を具体的に含む。
【0031】
「単離されたポリヌクレオチド」は、ゲノム、cDNA、若しくは合成起源、又はそれらのいくつかの組み合わせのポリヌクレオチドであり、その起源によって、単離されたポリヌクレオチドは:(1)単離されたポリヌクレオチドが天然で見出されるポリヌクレオチドの全て又は一部とは結合していない、(2)それが天然で連結されていないポリヌクレオチドに連結される、又は(3)より大きな配列の一部として天然で存在しない。
【0032】
「単離されたポリペプチド」は:(1)通常で共に見出されるであろう少なくともいくつかの他のポリペプチドを含まない、(2)同じ供給源、例えば同じ種由来の他のポリペプチドを本質的に含まない、(3)異なる種由来の細胞により発現される、(4)それが天然で付随しているポリヌクレオチド、脂質、炭水化物、又は他の物質の少なくとも約50%とは分離されている、(5)「単離されたポリペプチド」が天然で結合しているポリペプチドの部分とは(共有結合又は非共有結合相互作用により)結合していない、(6)それが天然で結合していないポリペプチドと作動可能に結合している(共有結合又は非共有結合相互作用により)、又は(7)天然に存在しないものである。このような単離されたポリペプチドは、合成起源のゲノムDNA、cDNA、mRNA若しくは他のRNA、又はそれらのいずれかの組み合わせによりコードされ得る。好ましくは、単離されたポリペプチドは、その使用(治療用、診断用、予防的、研究又はその他)を妨害しないであろうその天然の環境において見出されるポリペプチド又は他の夾雑物を実質的に含まない。
【0033】
本明細書で使用される用語「抗体」は、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体及びマウス抗体を包含する。
【0034】
本明細書において使用される用語「ヒト抗体」は、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列に実質的に相当する可変領域及び定常領域を有する抗体を含む。いくつかの実施態様において、ヒト抗体は、マウス及びラットのようなげっ歯類、並びにウサギのようなウサギ類を含むがこれらに限定されない非ヒト哺乳動物において産生される。他の実施態様において、ヒト抗体はハイブリドーマ細胞において産生される。さらに他の実施態様において、ヒト抗体は組み換えにより産生される。
【0035】
天然に存在する抗体は、典型的には四量体を含む。このような四量体はそれぞれ、典型的にはポリペプチド鎖の2つの同一の対から構成され、各対が1つの全長「軽」鎖(典型的には約25kDaの分子量を有する)及び1つの全長「重」鎖(典型的には約50〜70kDaの分子量を有する)を有する。本明細書で使用される用語「重鎖」及び「軽鎖」は、標的抗原に対する特異性を付与するために十分な可変ドメイン配列を有するいずれかの免疫グロブリンポリペプチドを指す。各軽鎖及び重鎖のアミノ末端部分は、典型的に抗原認識に関与する約100〜110又はそれ以上のアミノ酸の可変ドメインを典型的に含む。各鎖のカルボキシ末端部分は、典型的にはエフェクター機能に関与する定常ドメインを規定する。従って、天然に存在する抗体において、全長重鎖免疫グロブリンポリペプチドは、可変ドメイン(V
H)及び3つの定常ドメイン(C
H1、C
H2、及びC
H3)を含み、ここでV
Hドメインはポリペプチドのアミノ末端にあり、そしてC
H3ドメインはカルボキシル末端にあり、そして全長軽鎖免疫グロブリンポリペプチドは可変ドメイン(V
L)及び定常ドメイン(C
L)を含み、ここでV
Lドメインはポリペプチドのアミノ末端にあり、そしてC
Lドメインはカルボキシル末端にある。
【0036】
哺乳動物軽鎖、特にヒト軽鎖は、典型的にはカッパ及びラムダ軽鎖に分類され、そしてヒト重鎖は典型的にはミュー、デルタ、ガンマ、アルファ、又はイプシロンに分類され、そしてそれぞれ抗体のアイソタイプをIgM、IgD、IgG、IgA、及びIgEと規定する。IgGは、IgG1、IgG2、IgG3、及びIgG4を含むがこれらに限定されないいくつかのサブクラスを有する。IgMは、IgM1及びIgM2を含むがこれらに限定されないサブクラスを有する。IgAは同様に、IgA1及びIgA2を含むがこれらに限定されないサブクラスに細分される。全長軽鎖及び重鎖内で、可変ドメイン及び定常ドメインは典型的には、約12又はそれ以上のアミノ酸の「J」領域により接続され、重鎖は約10のアミノ酸の「D」領域も含む。例えば、Fundamental Immunology(Paul、W.、ed.、Raven Press、2nd ed.、1989)(参照によりその全体があらゆる目的のために加入される)を参照のこと。各軽/重鎖対の可変領域は典型的には抗原結合部位を形成する。天然に存在する抗体の可変ドメインは、典型的には、相補性決定領域又はCDRと呼ばれる3つの超可変領域により結合される比較的保存されたフレームワーク領域(FR)の同じ一般構造を示す。各対の2つの鎖由来のCDRは、典型的には、フレームワーク領域と一列になっており、こにより特異的エピトープへの結合が可能となり得る。アミノ末端からカルボキシル末端に、軽鎖及び重鎖可変ドメインの両方が、典型的にはドメインFR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、及びFR4を含む。
【0037】
本明細書で使用される用語「天然Fc」は、単量体形態でも多量体形態でも、抗体の消化により生じるか又は他の手段により産生される非抗原結合フラグメントの配列を含む分子を指し、そしてヒンジ領域を含有し得る。天然Fcの元の免疫グロブリン源は、好ましくはヒト起源であり、IgG1及びIgG2が好ましいが、いずれの免疫グロブリンであってもよい。天然Fc分子は、共有結合(すなわち、ジスルフィド結合)及び非共有結合により二量体又は多量体形態に連結され得る単量体ポリペプチドから構成される。天然Fc分子の単量体サブユニット間の分子間ジスルフィド結合の数は、クラス(例えば、IgG、IgA、及びIgE)又はサブクラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgA1、及びIgGA2)によって1〜4の範囲に及ぶ。天然Fcの一例は、IgGのパパイン消化から生じたジスルフィド結合二量体である。本明細書で使用される用語「天然Fc」は、単量体形態、二量体形態、及び多量体形態に対する総称である。
【0038】
本明細書で使用される用語「Fc変異体」は、天然Fcから改変されているが、なおサルベージ(salvage)受容体FcRn(新生仔(neonatal)Fc受容体)についての結合部位を含む分子又は配列を指す。例となるFc変異体、及びそれらのサルベージ受容体との相互作用は当該分野で公知である。従って、用語「Fc変異体」は、非ヒト天然Fcからヒト化された分子又は配列を含み得る。さらに、天然Fcは、それらが本発明の抗体様結合タンパク質に必要でない構造的特徴又は生物学的活性をもたらすので、除去され得る領域を含む。従って、用語「Fc変異体」は、以下に影響を及ぼすか又はそれらに関与する、1つ若しくはそれ以上のネイティブFc部位若しくは残基を欠いているか、又は1つ若しくはそれ以上のFc部位若しくは残基が改変されている分子又は配列を含む:(1)ジスルフィド結合形成、(2)選択された宿主細胞との不適合性、(3)選択された宿主細胞における発現の際のN末端異種性、(4)グリコシル化、(5)補体との相互作用、(6)サルベージ受容体以外のFc受容体への結合、又は(7)抗体依存性細胞傷害(ADCC)。
【0039】
本明細書で使用される用語「Fcドメイン」は、天然Fc及びFc変異体及び上で定義された配列を包含する。Fc変異体及び天然Fc分子と同様に、用語「Fcドメイン」は、抗体全体から消化されても、他の手段により産生されても、単量体形態又は多量体形態の分子を含む。
【0040】
本明細書で使用される用語「抗体様結合タンパク質」は、少なくとも1つの標的抗原に特異的に結合する、天然に存在しない(又は組み換え)操作された分子を指す。これには、例えば、F(ab)フラグメント、F(ab’)フラグメント及び二特異性抗体が包含される。
【0041】
特定の局面において、「抗体様結合タンパク質」は、以下の式[I]及び[II]:
V
L1−L
1−V
L2−C
L [I]
V
H1−L
2−V
H2−C
H1 [II]
[式中:
V
L1は免疫グロブリン軽鎖可変ドメインであり;
V
L2は免疫グロブリン軽鎖可変ドメインであり;
V
H1は免疫グロブリン重鎖可変ドメインであり;
V
H2は免疫グロブリン重鎖可変ドメインであり;
C
Lは免疫グロブリン軽鎖定常ドメインであり;
C
H1は免疫グロブリンC
H1重鎖定常ドメインであり;
L
1及びL
2はアミノ酸リンカーであり;そして
ここで式Iのポリペプチド及び式IIのポリペプチドは、Fabフラグメント(二価単一特異性タンデム免疫グロブリンフラグメント)を形成する]
に従って、直列に配置されかつ短いアミノ酸リンカー配列により隔てられた、抗体からのそれぞれのV
L及びV
HDNA配列を含む。
【0042】
特定の局面において、V
L1及びV
L2は同一のポリペプチドであり、そして特定の局面において、V
H1及びV
H2は同一のポリペプチドである。
【0043】
特定の局面において、又は典型的には、C
L及びC
H1ドメインはジスルフィド結合により連結される。
【0044】
特定の局面において、L
1及びL
2はそれぞれ少なくとも5、6、7、8、9又は10アミノ酸長を有する。
【0045】
特定の局面において、L
1及びL
2はそれぞれGGGGS又はGGGGSGGGGS(配列番号3)のいずれかである。
【0046】
特定の局面において、式[I]のポリペプチドは、配列番号1に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一である配列を含む。
【0047】
特定の局面において、式[II]のポリペプチドは、配列番号7に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一の配列を含む。
【0048】
特定の局面において、上記抗体様結合タンパク質は、少なくとも1つの放射標識、造影剤、治療剤、又は診断剤をさらに含む。
【0049】
特定の局面において、上記抗体様結合タンパク質は、少なくとも1、1.1、1.2、1.3、1.4又は1.5Ci/μMoleの比放射能を有する。
【0050】
特定の局面において、上記抗体様結合タンパク質は、例えば遊離抗体様結合タンパク質を用いて結合をFACSにより測定した場合に、多くとも8、7、6、5又は4nMの見かけのKdを有し得る。
【0051】
特定の局面において、上記抗体様結合タンパク質は、熱ストレスに対する高い安定性を示す。より詳細には、25、20、15、10又は5%未満の可溶性抗体様結合タンパク質が、42℃で1週間のインキュベーション後に失われ得る。
【0052】
特定の局面において、上記抗体様結合タンパク質は、ヒト血清中で高い安定性を示す。より詳細には、抗体様結合タンパク質の少なくとも70、75、80、85、90又は95%が、ヒト血清中で24時間37℃でインキュベーション後に単量体であり得る。
【0053】
「単離された」抗体様結合タンパク質は、その天然環境の構成要素から同定され、そして分離及び/又は回収されたものである。その天然環境の夾雑物成分は、抗体様結合タンパク質の診断又は治療上の使用を妨害するであろう物質であり、これらとしては、酵素、ホルモン、及び他のタンパク質性又は非タンパク質性の溶質が挙げられ得る。好ましい実施態様において、抗体様結合タンパク質は:(1)Lowry法により測定して抗体の95質量%より高くまで、そして最も好ましくは99質量%より高くまで、(2)スピニングカップ配列決定機器の使用によるN末端若しくは内部アミノ酸配列の少なくとも15残基を得るために十分な程度まで、又は(3)クーマシーブルー若しくは、好ましくは、銀染色を使用する還元若しくは非還元条件下でのSDS−PAGEにより均一になるまで精製される。抗体様結合タンパク質の天然環境の少なくとも1つの成分は存在しないので、単離された抗体様結合タンパク質は、組み換え細胞内のそのままの抗体様結合タンパク質を含む。
【0054】
本明細書で使用される用語「実質的に純粋」又は「実質的に精製された」は、存在する主な化学種である(すなわち、モルベースで、組成物中のいずれの他の個々の化学種よりも豊富である)化合物又は化学種を指す。いくつかの実施態様において、実質的に精製されたフラクションは、その化学種が、存在する全ての高分子種の少なくとも約50%(モルベースで)を構成する組成物である。他の実施態様において、実質的に純粋な組成物は、組成物中に存在する全ての高分子種の約80%、85%、90%、95%、又は99%より多くを構成する。なお他の実施態様において、化学種は、組成物が本質的に単一の高分子種からなる本質的均一性(夾雑物種を従来の検出方法により組成物において検出することができない)まで精製される。
【0055】
本明細書で使用される用語「抗原」又は「標的抗原」は、抗体又は抗体様結合タンパク質により結合されることができ、そしてさらにその抗原のエピトープへ結合することができる抗体を産生するために動物において使用することができる分子又は分子の部分を指す。標的抗原は1つ又はそれ以上のエピトープを有し得る。抗体様結合タンパク質により認識される各標的抗原に関して、抗体様結合タンパク質は、標的抗原を認識するインタクトな抗体と競合することができる。「多選択性」又は「多機能性」抗体様結合タンパク質以外の「二価」抗体様結合タンパク質は、同一の抗原特異性を有する抗原結合部位を含むと理解される。
【0056】
二重特異性又は二機能性抗体は、典型的には2つの異なる重鎖/軽鎖対及び2つの異なる結合部位又はエピトープを有する人工ハイブリッド抗体である。二重特異性抗体は、ハイブリドーマの融合又はF(ab’)フラグメントの連結を含むがこれらに限定されない様々な方法により産生され得る。
【0057】
Fabとも呼ばれるF(ab)フラグメントは、典型的には、1つの軽鎖並びに1つの重鎖のV
H及びC
H1ドメインを含み、ここでF(ab)フラグメントのV
H−C
H1重鎖部分は、別の重鎖ポリペプチドとジスルフィド結合を形成することができない。本明細書で使用されるF(ab)フラグメントはまた、アミノ酸リンカーにより隔てられた2つの可変ドメインを含有する1つの軽鎖、並びにアミノ酸リンカーにより隔てられた2つの可変ドメイン及びC
H1ドメインを含有する1つの重鎖も含み得る。F(ab)フラグメントはまた、C
LとC
H1との間のジスルフィド結合も含み得る。
【0058】
F(ab’)フラグメントは、典型的には、鎖間スルフィド結合が2つの重鎖間に形成されてF(ab’)
2分子を形成し得るように、1つの軽鎖、及び定常領域(C
H1ドメインとC
H2ドメインとの間)より多くを含有する1つの重鎖の部分を含む。
【0059】
「二特異性抗体(diabody)」は、典型的には、2つの可変領域を一緒に折り畳むためには短すぎる小さいなペプチドリンカーにより接続されて、scFvsを二量体化させる、重鎖可変(V
H)領域及び軽鎖可変(V
L)領域からそれぞれがなる、2つの一本鎖可変フラグメント(scFv)の二量体である。
【0060】
本発明の抗体様結合タンパク質に関して句「生物学的特性」、「生物学的特徴」、及び用語「活性」は、本明細書において置き換え可能に使用され、そしてこれらとしては、限定されないが、エピトープ親和性及び特異性、抗原標的(又は標的化されたポリペプチド)の活性を拮抗する能力、抗体様結合タンパク質のインビボ安定性、及び抗体様結合タンパク質の免疫原性特性が挙げられる。抗体様結合タンパク質の他の同定可能な生物学的特性又は特徴としては、例えば、交差反応性、(すなわち、一般的に、抗原標的の非ヒトホモログとの、又は他の光源標的若しくは組織との)、及び哺乳動物細胞におけるタンパク質の高い発現レベルを保つ能力が挙げられる。上述の特性又は特徴は、ELISA、競合ELISA、表面プラズモン共鳴分析、インビトロ及びインビボ中和アッセイ、並びに免疫組織化学を含むがこれらに限定されない、当該分野で認められた技術を使用して、ヒト、霊長類、又は必要な場合はいずれかの他の供給源を含む異なる供給源からの組織切片を用いて観察又は測定され得る。
【0061】
本明細書で使用される用語「免疫学的に機能性の免疫グロブリンフラグメント」は、そのポリペプチドフラグメントが由来する免疫グロブリン重鎖又は軽鎖の少なくともCDRを含有するポリペプチドフラグメントを指す。免疫学的に機能性の免疫グロブリンフラグメントは、標的抗原に結合することができる。
【0062】
本明細書で使用される「中和」抗体様結合タンパク質は、それが結合する標的抗原のエフェクター機能を遮断するか又は実質的に減少させることができる分子を指す。本明細書で使用される「実質的に減少させる」は、標的抗原のエフェクター機能の、少なくとも約60%、好ましくは少なくとも約70%、より好ましくは少なくとも約75%、なおより好ましくは少なくとも約80%、さらにより好ましくは少なくとも約85%、最も好ましくは少なくとも約90%の減少を意味する。
【0063】
用語「エピトープ」は、免疫グロブリン又はT細胞受容体へ特異的に結合することができる、いずれかの決定基、好ましくはポリペプチド決定基を含む。特定の実施態様において、エピトープ決定基は、アミノ酸、糖側鎖、ホスホリル基、又はスルホニル基のような化学的に活性な表面分子集団を含み、そして特定の実施態様において、特定の3次元構造特徴及び/又は特定の電荷特徴を有し得る。エピトープは、抗体又は抗体様結合タンパク質により結合される抗原の領域である。特定の実施態様において、抗体様結合タンパク質は、タンパク質及び/又は高分子の複雑な混合物においてその標的抗原を優先的に認識する場合に抗原に特異的に結合すると言われる。好ましい実施態様において、抗体様結合タンパク質は、平衡解離定数が≦10
-8Mである場合、より好ましくは平衡解離定数が≦10
-9Mである場合、そして最も好ましくは解離定数が≦10
-10Mである場合に、抗原に特異的に結合すると言われる。
【0064】
抗体様結合タンパク質の解離定数(K
D)は、例えば表面プラズモン共鳴により決定され得る。一般に、表面プラズモン共鳴分析は、リガンド(バイオセンサーマトリクス上の標的抗原)と検体(溶液中の抗体様結合タンパク質)との間の実時間結合相互作用を、表面プラズモン共鳴(SPR)によりBIAcoreシステム(Pharmacia Biosensor; Piscataway、NJ)を使用して測定する。表面プラズモン分析はまた、検体(バイオセンサーマトリックス上の抗体様結合タンパク質)を固定し、そしてリガンド(標的抗原)を提示することにより行われ得る。本明細書で使用される用語「K
D」は、特定の抗体様結合タンパク質と標的抗原との間の相互作用の解離定数を指す。
【0065】
本明細書で使用される用語「特異的に結合する」は、少なくとも約1x10
-6M、1x10
-7M、1x10
-8M、1x10
-9M、1x10
-10M、1x10
-11M、1x10
-12M若しくはそれ以上のKdでエピトープを含有する抗原に結合する抗体様結合タンパク質若しくはその抗原結合フラグメントの能力、及び/又は非特異的抗原に対するその親和性よりも少なくとも2倍高い親和性でエピトープに結合する抗体様結合タンパク質若しくはその抗原結合フラグメントの能力を指す。
【0066】
本明細書で使用される用語「リンカー」は、免疫グロブリンドメイン間に挿入されて、軽鎖及び重鎖のドメインが交差した二重可変領域免疫グロブリンへと折り畳まるために十分な可動性を提供する、1つ又はそれ以上のアミノ酸残基を指す。非限定的な例としては、グリシン/セリンリンカー、例えばGGGGS又はGGGGSGGGGS(配列番号3)、及びグリシン/アラニンリンカーが挙げられる。リンカーは、配列レベルで、それぞれ可変ドメイン間又は可変ドメインと定常ドメインとの間の変わり目(transition)に挿入される。免疫グロブリンドメインのおよそのサイズは十分に理解されているので、ドメイン間の変わり目は同定され得る。ドメインの変わり目の正確な位置は、実験データにより実証されるように、又はモデリング若しくは二次構造推定の技術により推測されるように、ベータ−シート又はアルファ−ヘリックスのような二次構造要素を形成しないペプチド区間(peptide stretch)を位置づけることにより決定され得る。リンカーは独立しているが、いくつかの場合では同じ配列及び/又は長さを有していてもよい。例となるアミノ酸リンカーは当該分野で公知であり、そして本明細書に記載される使用に適している。
【0067】
本明細書で使用される用語「タグ」は、ポリペプチド又は抗体様結合タンパク質のいずれかの位置(典型的にはN末端又はC末端)で、通常はインフレームで融合されたいずれかの連結された分子又は親和性ベースの配列を指す。適切なタグの存在は、抗体様タンパク質の検出、精製又は他の特徴を改善するために役立ち得る。適切な親和性ベースのタグとしては、別の部分(非限定的な例としては、ポリヒスチジン、6x−ヒスチジン、FLAG、V5、ビオチン、HA、GST又はMBPが挙げられる)に特異的に結合され得るいずれかの配列が挙げられる。場合によっては、連結された分子は、ポリペプチドの存在をレポートし得るいずれかのドメインを含み得る発光レポーターであり得る。適切な発光レポータードメインとしては、ルシフェラーゼ、蛍光性タンパク質又はその発光変異体が挙げられる。
【0068】
本明細書で使用される用語「ベクター」は、コード情報を宿主細胞へと移すために使用されるいずれかの分子(例えば、核酸、プラスミド、又はウイルス)を指す。用語「ベクター」は、それが連結された別の核酸分子を輸送することができる核酸分子を含む。ベクターの1つの型は「プラスミド」であり、これは環状2本鎖DNA分子を指し、さらなるDNAセグメントがこれに挿入され得る。ベクターの別の型はウイルスベクターであり、ここでさらなるDNAセグメントは、ウイルスゲノム中に挿入され得る。特定のベクターは、それらが導入されている宿主細胞において自律複製することができる(例えば、細菌複製起点を有するベクター及びエピソーム哺乳動物ベクター)。他のベクター(例えば、非エピソーム哺乳動物ベクター)は、宿主細胞中への導入の際に宿主細胞のゲノムに統合され得、そしてそれにより宿主ゲノムと一緒に複製される。さらに、特定のベクターは、それらが作動可能に連結されている遺伝子の発現を方向づけることができる。このようなベクターは本明細書で「組み換え発現ベクター」(又は単に「発現ベクター」)と呼ばれる。一般に、組み換えDNA技術において有用なベクターの発現は、しばしばプラスミドの形態である。用語「プラスミド」及び「ベクター」は、プラスミドはベクターの最も一般的に使用される形態であるので、本明細書では交換可能に使用され得る。しかし、本発明は、等価な機能を果たす、ウイルスベクター(例えば、複製欠陥レトロウイルス、アデノウイルス、及びアデノ随伴ウイルス)のような発現ベクターの他の形態を含むことを意図される。
【0069】
用語「作動可能に連結された」は、そのように記載される隣接配列が、それらの通常の機能を行うように構成されるか又は組み立てられる隣接配列の配置を指すために本明細書で使用される。従って、コード配列に作動可能に連結された隣接配列は、コード配列の複製、転写、及び/又は翻訳を達成する能力があり得る。例えば、コード配列は、プロモーターがそのコード配列の転写を誘導する事が出来る場合にプロモーターに作動可能に連結される。隣接配列は、正確に機能する限り、コード配列と連続している必要はない。従って、例えば、間に入る未翻訳だが転写された配列は、プロモーター配列とコード配列との間に存在し得、そしてプロモーター配列はなおコード配列に「作動可能に連結される」とみなされ得る。
【0070】
本明細書で使用される句「組み換え宿主細胞」(又は「宿主細胞」)は、組み換え発現ベクターが導入されている細胞を指す。組み換え宿主細胞又は宿主細胞は、特定の対象細胞だけでなく、このような細胞の子孫細胞も指す。特定の改変は変異又は環境の影響のいずれかに起因して後継世代において起こり得るので、このような子孫は、実際には、親細胞と同一ではないかもしれないが、このような細胞はなお本明細書で使用される用語「宿主細胞」の範囲内に含まれる。多種多様な宿主細胞発現系が、本発明の抗体様結合タンパク質を発現するために使用され得、これらとしては、細菌、酵母、バキュロウイルス、及び哺乳動物発現系(さらにファージディスプレイ発現系)が挙げられる。適切な細菌発現ベクターの例はpUC19である。抗体様結合タンパク質を組み換えにより発現させるために、ポリペプチド鎖が宿主細胞で発現され、そして好ましくは、宿主細胞が培養される培地中に分泌され、この培地から抗体様結合タンパク質が回収され得るように、抗体様結合タンパク質のポリペプチド鎖をコードするDNAフラグメントを保有する1つ又はそれ以上の組み換え発現ベクターで宿主細胞を形質転換又はトランスフェクトする。
【0071】
本明細書で使用される用語「形質転換」は、細胞の遺伝特徴の変化を指し、そして細胞はそれが新しいDNAを含有するように改変された場合に形質転換されている。例えば、細胞は、その天然状態から遺伝的に改変されている場合に形質転換される。形質転換後に、形質転換するDNAは細胞の染色体に物理的に組み込むことにより細胞のDNAと組み換わり得、又は複製されることなくエピソームエレメントとして一時的に維持され得、又はプラスミドとして独立して複製し得る。細胞は、DNAが細胞の分裂とともに複製される場合に安定に形質転換されたとみなされる。本明細書で使用される用語「トランスフェクション」は、細胞による外来又は外因性のDNAの取り込みを指し、そして細胞は、外因性DNAが細胞膜の内側に導入された場合に「トランスフェクトされている」。多数のトランスフェクション技術が当該分野で周知である。このような技術は、1つ又はそれ以上の外因性DNA分子を適切な宿主細胞に導入するために使用され得る。
【0072】
本明細書において使用されそして物体に対して適用される用語「天然に存在する」は、その物体が天然で見出され得、かつ人により操作されていないということを指す。例えば、天然の供給源から単離され得かつ人により意図的に改変されていない生物(ウイルスを含む)中に存在するポリヌクレオチド又はポリヌクレオチドは、天然に存在する。同様に、本明細書で使用される「天然に存在しない」は、天然で見出されないか、又は人により構造的に改変若しくは合成された物体を指す。
【0073】
本明細書で使用される、20の従来のアミノ酸及びそれらの略号は従来の使用方に従う。20の従来のアミノ酸の立体異性体(例えば、D−アミノ酸);非天然アミノ酸、例えばα−,α−二置換アミノ酸、N−アルキルアミノ酸、乳酸、及び他の非従来型アミノ酸もまた、本発明の抗体様結合タンパク質のポリペプチド鎖に適した構成要素であり得る。非従来型アミノ酸の例としては:4−ヒドロキシプロリン、γ−カルボキシグルタメート、ε−N,N,N−トリメチルリジン、ε−N−アセチルリジン、O−ホスホセリン、N−アセチルセリン、N−ホルミルメチオニン、3−メチルヒスチジン、5−ヒドロキシリジン、σ−N−メチルアルギニン、及び他の類似したアミノ酸及びイミノ酸(例えば、4−ヒドロキシプロリン)が挙げられる。本明細書で使用されるポリペプチド表記法において、標準的な使用法及び慣例に従って、左手方向はアミノ末端方向であり、そして右手方向はカルボキシル末端方向である。
【0074】
天然に存在する残基は、共通の側鎖特性に基づくクラスに分けられ得る:
(1)疎水性:Met、Ala、Val、Leu、Ile、Phe、Trp、Tyr、Pro;
(2)極性親水性:Arg、Asn、Asp、Gln、Glu、His、Lys、Ser、Thr;
(3)脂肪族:Ala、Gly、Ile、Leu、Val、Pro;
(4)脂肪族疎水性:Ala、Ile、 Leu、Val、Pro;
(5)中性親水性:Cys、Ser、Thr、Asn、Gln;
(6)酸性:Asp、Glu;
(7)塩基性:His、Lys、Arg;
(8)鎖配向に影響を及ぼす残基:Gly、Pro;
(9)芳香族:His、Trp、Tyr、Phe;及び
(10)芳香族疎水性:Phe、Trp、Tyr。
【0075】
保存的アミノ酸置換は、これらのクラスのうちの1つのメンバーの、同じクラスの別のメンバーとの交換を含み得る。保存的アミノ酸置換は、天然に存在しないアミノ酸残基を包含し得、これらは典型的には生物系における合成よりも化学的ペプチド合成により組み込まれる。これらとしては、ペプチドミメティック及び他のアミノ酸残基の逆転又は反転した形態が挙げられる。非保存的置換は、これらのクラスのうちの1つのメンバーの、別のクラスのメンバーとの交換を含み得る。
【0076】
当業者は、周知の技術を使用して本発明の抗体様結合タンパク質のポリペプチド鎖の適切な変異体を決定することができるだろう。例えば、当業者は、活性に重要でないと考えられる領域を標的化することにより、活性を破壊することなく変化され得るポリペプチド鎖の適切な領域を同定し得る。あるいは、当業者は、類似したポリペプチド間で保存される分子の残基及び部分を同定することができる。さらに、生物学的活性又は構造に重要であり得る領域でさえ、生物学的活性を破壊することなく、又はポリペプチド構造に不利な影響を及ぼすことなく保存的アミノ酸置換され得る。
【0077】
用語「キレート剤」は、少なくとも2つの非金属イオンに配位した金属を含有し得る複素環式環の形態の化学化合物である。抗体様結合タンパク質上の硬い酸カチオンキレート部分の存在は、コンパニオン診断薬の速いインビボクリアランスを確実にするために役立つ。
【0078】
キレート剤は、バイオコンジュゲーション(bioconjugation)の標準的な方法を使用して抗体又は抗体様結合タンパク質に共有結合で結合される。抗体上のアミン含有残基(例えば、リジン又はN−末端)は、活性化エステル(例えば、N−ヒドロキシスクシンイミジルエステル)を含有するキレート剤とのアミド結合形成を受ける。硫黄含有残基(例えば、システイン)は、活性化エステル又はマレイミド部分を含有するキレート剤との結合を受ける。あるいは、バイオコンジュゲート(bioconjugates)は、抗体上の活性化カルボキシレート残基が、キレート剤上のそれぞれアミン又はチオール基とのアミド又はチオエステル形成を受ける場合に形成される。二官能性リンカー、例えば、PEG−マレイミド(PEG−Mal)、スクシンイミジル−4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1−カルボキシレート(SMCC)又はN−スクシンイミジル 3−(2−ピリジルチオ)プロピオネート(SPDP)が必要な場合に使用される。
【0079】
キレート剤は、それらの金属結合特性に関して選択され、そして任意に変更され得る。NOTA (1,4,7−トリアザ−シクロノナン−N,N’,N’’−三酢酸)、DOTA (1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7,10−四酢酸)、DTPA (1,1,4,7,7−ジエチレントリアミン五酢酸)、及びTETA (p−ブロモアセトアミド−ベンジル−テトラエチルアミン四酢酸)は、様々な放射標識、放射性核種、放射性同位体、金属及び放射性金属と共に役立つ。リガンドがカルボキシレート又はアミン基のような硬い塩基のキレート官能基を含むDOTA型のキレート剤は、硬い酸カチオン、特にIIa族及びIIIa族金属カチオンをキレート化するために最も有効である。このような金属−キレート錯体は、環サイズを目的の金属に合わせることにより非常に安定にされ得る。また、1つより多くの種類のキレート剤が、多数の金属イオン、例えば診断用放射性核種及び/又は治療用放射性核種を結合するために標的化可能構築物に結合され得る。
【0080】
抗体又は操作された抗体様結合タンパク質のキレート剤に結合され得る特に有用な診断用放射標識、放射性核種、又は放射性同位体としては、限定されないが、
110In、
111In、
177Lu、
18F、
52Fe、
62Cu、
64Cu、
67Cu、
67Ga、
68Ga、
86Y、
90Y、
89Zr、
94Tc、
94Tc、
99mTc、
120I、
123I、
124I、
125I、
131I、
154-158Gd、
32P、
11C、
13N、
15O、
186Re、
188Re、
51Mn、
52mMn、
55Co、
72As、
75Br、
76Br、
82mRb、
83Sr、又は他のガンマ−、ベータ−、若しくは陽電子放射体が挙げられる。診断用放射標識は、25〜10,000keVの範囲、より好ましくは25〜4,000keVの範囲、そしてなおより好ましくは20〜1,000keVの範囲、そしてさらにより好ましくは70〜700keVの範囲の崩壊エネルギーを含む。有用な陽電子放射体放射性核種の総崩壊エネルギーは、好ましくは<2,000keV、より好ましくは1,000keVより低く、そして最も好ましくは<700keVである。ガンマ線検出を利用する診断剤として有用な放射標識としては、限定されないが:Cr−51、Co−57、Co−58、Fe−59、Cu−67、Ga−67、Se−75、Ru−97、Tc−99m、In−111、In−114m、I−123、I−125、I−131、Yb−169、Hg−197、及びT1−201が挙げられる。有用なガンマ線放射放射標識の崩壊エネルギーは、好ましくは20〜2000keV、より好ましくは60〜600keV、そして最も好ましくは100〜300keVである。
【0081】
本明細書で使用される用語「患者」は、限定されないが、ヒト及び動物被験体を含む。
【0082】
「障害」は、本発明の抗体又は操作された抗体様結合タンパク質を使用する処置から利益を得るであろういずれかの状態である。「障害」及び「状態」は、本明細書において交換可能に使用され、そして問題の障害に患者をかかりやすくする病理状態を含む慢性及び急性の障害又は疾患を含む。特定の局面において、障害は固形腫瘍癌のような癌である。特定の具体的な局面において、癌は乳癌、結腸がん、卵巣癌、子宮内膜癌、骨肉腫、子宮頸部癌、前立腺癌、肺癌、滑膜癌、膵癌、腎臓癌、リンパ系の癌、CA6が発現される肉腫若しくは癌腫、又はCA6グリコトープが主に発現されるまだ決定されていない他の癌である。癌は、例えば、漿液性卵巣癌、類内膜(endometriod)卵巣癌、子宮頸部の新生物、子宮内膜(endometrius)の新生物、外陰部の新生物、乳癌、膵腫瘍、及び尿路上皮の腫瘍であり得る。
【0083】
選択された細胞集団の殺傷により処置され得る障害は、本明細書に記載される抗体様結合タンパク質を用いた使用に適しており、例えば癌、自己免疫疾患、例えば、全身性エリテマトーデス、関節リウマチ、及び多発性硬化症;移植片拒絶、例えば腎移植拒絶、肝移植拒絶、肺移植拒絶、心臓移植拒絶、及び骨髄移植拒絶;移植片対宿主病;ウイルス感染症、例えばmV感染症、HIV感染症、AIDSなど;並びに寄生虫感染症、例えばジアルジア症、アメーバ症、住血吸虫症、並びに当業者により決定される他のものである。
【0084】
参照発現レベルは、例えば、患者の非患部組織における(例えば、腫瘍を含有する組織型と同じ組織型からの)CA6発現のレベルであり得、又は参照標準は、例えば当該分野で認められた標準から決定され得、例えば個体集団からの非患部組織における発現レベルから誘導され得る。
【0085】
本明細書で使用される用語「処置」又は「処置する」は、治療的処置及び予防的(prophylactic)又は予防的(preventative)手段の両方を指す。処置を必要とするものは、障害を有するものに加えて、障害を有する傾向があるか障害を予防するべきものを含む。
【0086】
本明細書で使用される用語「医薬組成物」又は「治療用組成物」は、患者に適切に投与された場合に所望の治療効果を誘導することができる化合物又は組成物を指す。
【0087】
本明細書で使用される用語「薬学的に許容しうる担体」又は「生理学的に許容しうる担体」は、抗体又は操作された抗体様結合タンパク質の送達を達成又は増強するために適した1つ又はそれ以上の製剤化材料を指す。
【0088】
1つ又はそれ以上の抗体又は操作された抗体様結合タンパク質を含む医薬組成物に関して使用される場合の用語「有効量」及び「治療有効量」は、所望の治療結果を生じるために十分な量又は投薬量を指す。より詳細には、治療有効量は、処置される状態に関連する1つ又はそれ以上の臨床的に規定された病理プロセスを、いくらかの期間、阻害するために十分な、抗体又は操作された抗体様結合タンパク質の量である。本明細書で使用される「治療有効量」はまた、CA6を発現する組織、例えば腫瘍組織を可視化するために有効な抗体様タンパク質の量を指す。有効量は、使用されている特定の抗体又は操作された抗体様結合タンパク質によって変わり得、そして処置される患者に関連する様々な要因及び条件又は障害の重症度に依存する。例えば、抗体又は操作された抗体様結合タンパク質をインビボ投与しようとする場合、患者の年齢、体重、及び健康さらには前臨床動物研究において得られる用量応答曲線及び毒性データのような因子がこれらの因子の中で考慮される。所定の医薬組成物の有効量又は治療有効量の決定は、十分に当業者の能力内である。
【0089】
本明細書で使用される用語「取得する」又は「取得すること」は、物理実体又は値を「直接取得すること」又は「間接的に取得すること」により、物理実体、又は値、例えば数値の所有を得ることを指す。「直接取得すること」は、物理的実体又は値を得るためのプロセスを行うこと(例えば、合成又は分析法を行うこと)を意味する。「間接的に取得すること」は、別の団体又は供給源(例えば、物理実体又は値を直接取得した第三者研究所)から物理実体又は値を受け取ることを指す。物理実体を直接取得することは、物理物質、例えば出発物質における物理的変化を含むプロセスを行うことを含む。例となる変化としては、2つ又はそれ以上の出発物質から物理実体を作製すること、物質をせん断又は断片化すること、物質を分離又は精製すること、2つ又はそれ以上の別々の実体を混合して混合物にすること、共有結合又は非共有結合を破壊又は形成することを含む化学反応を行うことが挙げられる。値を直接取得することは、サンプル又は別の物質における物理的変化を含むプロセスを行うこと、例えば、物質、例えば、サンプル、検体、又は試薬における物理的変化を含む分析プロセス(本明細書では「物理分析」と呼ぶこともある)を行うことを含む。
【0090】
間接的に取得される情報は、例えば、オンラインデータベース又はアプリケーション(「App」)からのような紙又は電子形態で供給されるレポートの形態で提供され得る。レポート又は情報は、例えば、病院若しくは診療所のような健康管理機関;又は医師若しくは看護師のようなヘルスケア提供者により提供され得る。
【0091】
本発明の一実施態様は、薬学的に許容しうる担体及び治療有効量の抗体又は操作された抗体様結合タンパク質を含む医薬組成物を提供する。
【0092】
2.
抗体様結合タンパク質の使用
本発明の抗体又は操作された抗体様結合タンパク質は、1つ又はそれ以上の標的抗原の検出及び定量のための競合結合アッセイ、直接及び間接サンドイッチアッセイ、並びに免疫沈降アッセイのようないずれかの公知のアッセイ方法において使用され得る。抗体又は操作された抗体様結合タンパク質は、使用されるアッセイ方法に適した親和性で1つ又はそれ以上の標的抗原に結合する。
【0093】
診断適用のために、特定の実施態様において、操作された抗体様結合タンパク質は、検出可能な部分で標識され得る。検出可能な部分は、直接的又は間接的のいずれかで検出可能なシグナルを生成することができるいずれかの部分であり得る。例えば、検出可能な部分は、放射標識、放射性同位体、放射性核種、造影剤、治療剤若しくは診断剤、例えば
3H、
14C、
32P、
35S、
125I、
99Tc、
111In、
18F、
11C、
68Ga、
64Cu、
89Zr、
124I又は
67Ga;蛍光性若しくは化学発光性化合物、例えば、フルオロセインイソチオシアネート、ローダミン、若しくはルシフェリン;又は酵素、例えばアルカリホスファターゼ、β−ガラクトシダーゼ、若しくは西洋ワサビペルオキシダーゼであり得る。
【0094】
適切なレポーター部分は、特定の画像化技術(例えば、PETイメージングのための
18F/
11C/
68Ga/
64Cu/
89Zr/
124I放射標識レポーター、SPECTイメージングのための
99mTc/
111In標識レポーター、光学イメージング用の蛍光色素標識レポーター又はMRI用の常磁性物質標識レポーター)により検出され得る。適切な適合は抗体又は抗体様結合タンパク質の生物学的半減期と放射標識の物理的半減期との間で推奨される(表1を参照のこと)。
【0096】
イメージングコンパニオン診断用プローブ又は抗体様結合タンパク質の開発は、本質的に薬物発見と同様のプロセスを必要とする(例えば、標的プローブから始めて、放射線量測定、良好な研究業務毒性研究、良好な製造実践製造、前臨床評価、標的プローブの前臨床検証及び臨床評価)。評価されるべきさらなるパラメーターは:トレーサー投与に対する最適なイメージングのタイミング、エクスビボ分析との相関、トレーサー体内分布及び標的特異性(放射標識された無関係なフラグメントを用いて試験される)である。一旦完全に開発されれば、分子イメージングプローブは特定の薬物又は薬剤のための分子イメージングコンパニオン診断薬として使用され得る。
【0097】
本発明の操作された抗体様結合タンパク質はまた、インビボイメージングのために有用である。検出可能な部分で標識された抗体様結合タンパク質は、動物に、好ましくは血流中に投与され得、そして宿主における標識された抗体の存在及び位置がアッセイされる。抗体様結合タンパク質は、核磁気共鳴でも、陽電子放射断層撮影でも、当該分野で公知の他の検出手段でも、動物において検出可能ないずれかの部分で標識され得る。
【0098】
インビボ画像化技術は、組織におけるCA6グリコトープ発現のレベルを評価するために、腫瘍組織のような組織を画像化するために使用される。組織におけるCA6発現のレベルの決定は、癌患者のような患者がCA6グリコトープを標的とする薬物での処置の良い候補かどうかを決定するために有用である。例えば、抗体様結合タンパク質は、huDM6−DM4細胞傷害剤のためのコンパニオン診断薬として有用である。
【0099】
一実施態様において、huDM6−DM4のようなCA6標的化分子での処置について患者を評価する。患者を、例えば、腫瘍組織(例えば組織生検)のような患部組織におけるCA6発現のレベルに関する情報を取得することにより評価し、そしてCA6発現のレベルが参照発現レベルの10%より高い(例えば、参照レベルの10%、20%、30%、40%又はそれ以上より高いか又は等しい)場合、患者はCA6標的化分子での処置のための良い候補であると決定される。CA6標的化分子での処置のための良い候補である患者は、分子での処置に対してポジティブに反応すると推測される。CA6発現の適切なレベルを有していない患者(例えば参照標準と比較して10%未満のCA6発現)は、CA6標的化分子での処置のための良い候補ではないと決定される。
【0100】
参照発現レベルは、例えば、患者の非患部組織(例えば、腫瘍を含有する組織型と同じ組織型から)におけるCA6発現のレベルであり得、又は参照標準は、例えば、個体集団からの非患部組織における発現レベルから誘導されたような当該分野で受け入れられた標準から決定され得る。
【0101】
一実施態様において、被験体の組織におけるCA6発現のレベルは、病院若しくは診療所若しくは医院のような医療機関のようなサービス提供者から、又は医師若しくは看護師のような医療専門家から、又は保険提供者から、又はデータベースからのように間接的に取得される。別の実施態様において、CA6発現のレベルは、本発明において特徴とされる抗体様結合タンパク質を被験体に投与し、そして生体イメージング技術によりCA6発現のレベルを決定することのように直接決定される。
【0102】
CA6標的化分子での処置のために良い候補であると決定された患者は、場合によりCA6標的化分子をさらに投与され得る。いくつかの実施態様において、CA6標的化分子で処置された患者は、CA6標的化分子での処置後にCA6発現レベルが変化している(例えば減少している)かどうかを決定するために、CA6標的化分子の投与後に間隔をおいて(例えば、毎週、二週ごと、毎月、二ヶ月毎)モニタリングされる。特定量の時間の後に、又は患者が有害事象を示した後に、患部組織におけるCA6発現レベルが変化しないままである場合、CA6標的化分子での処置を停止するか継続する決定が行われ得る。
【0103】
一実施態様において、患者は、huDM6−DM4のようなCA6標的化分子での処置の間にモニタリングされる。患者は、例えば、CA6標的化分子の投与又はhuDM6−DM4のようなCA6標的化分子での処置後に、腫瘍組織のような患部組織におけるCA6発現のレベルに関する情報を取得することによりモニタリングされ、CA6発現のレベルが、参照発現レベルの10%より高い(例えば、参照レベルより10%、20%、30%、40%又はそれ以上より高いか又はそれらに等しい)と決定される場合、患者は、CA6標的化分子での継続した処置のために良い候補であると決定される。CA6発現のレベルがhuDM6−DM4のようなCA6標的化分子での処置の間に減少したと決定される場合、患者はその分子での処置にポジティブに応答したと決定され、そしてhuDS6−DM4での処置は継続するべきである。CA6発現の適切なレベルを有していない、例えば、参照標準と比較して10%未満のCA6発現の患者、又はCA6発現の増加したレベルを有する患者は、CA6標的化分子での継続した処置のために良い候補ではないと決定される。
【0104】
本明細書で開示される発明はまた、抗体様結合タンパク質及び生物学的サンプルにおける標的抗原レベルを検出するために有用な他の試薬を含むキットに関する。このような試薬は、検出可能な標識、ブロッキング血清、ポジティブ及びネガティブ対照サンプル、並びに検出試薬を含み得る。
【0105】
4.
操作された抗体様結合タンパク質組成物及びその投与
操作された抗体様結合タンパク質を含む組成物は、本発明の範囲内である。このような診断用、治療用又は医薬組成物は、診断又は治療有効量の抗体様結合タンパク質、又は抗体様結合タンパク質−薬物複合体を、投与形式との適合性について選択された薬学的又は生理学的に許容しうる製剤化剤と混合して含み得る。
【0106】
許容しうる製剤化材料は、好ましくは使用される投薬量及び濃度でレシピエントに対して非毒性である。
【0107】
診断用又は医薬組成物は、例えば、組成物のpH、浸透圧モル濃度、粘度、透明性、色、等張性、臭気、無菌性、安定性、溶解若しくは放出の速度、吸着若しくは浸透を改変、維持、又は保存するための製剤化材料を含有し得る。適切な製剤材料としては、限定されないが、アミノ酸(例えばグリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニン、又はリジン)、抗菌薬、抗酸化剤(例えばアスコルビン酸、亜硫酸ナトリウム、又は亜硫酸水素ナトリウム)、緩衝剤(例えば、ホウ酸塩、炭酸水素塩、Tris−HCl、クエン酸塩、リン酸塩、又は他の有機酸)、増量剤(bulking agents)(例えばマンニトール又はグリシン)、キレート剤(例えば、エチレンジアミン四酢酸(EDTA))、錯化剤(例えばカフェイン、ポリビニルピロリドン、ベータ−シクロデキストリン、又はヒドロキシプロピル−ベータ−シクロデキストリン)、フィラー、単糖類、二糖類、及び他の炭水化物(例えば、グルコース、マンノース、又はデキストリン)、タンパク質(例えば血清アルブミン、ゼラチン、又は免疫グロブリン)、着色剤、矯味矯臭剤及び希釈剤、乳化剤、親水性ポリマー(例えばポリビニルピロリドン)、低分子量ポリペプチド、塩形成対イオン(例えばナトリウム)、保存料(例えば、塩化ベンザルコニウム、安息香酸、サリチル酸、チメロサール、フェネチルアルコール、メチルパラベン、プロピルパラベン、クロルヘキシジン、ソルビン酸、又は過酸化水素)、溶媒(例えば、グリセリン、プロピレングリコール、又はポリエチレングリコール)、糖アルコール(例えばマンニトール又はソルビトール)、懸濁化剤、界面活性剤又は湿潤剤(例えばプルロニック;PEG;ソルビタンエステル;ポリソルベート、例えばポリソルベート20又はポリソルベート80;トリトン;トロメタミン;レシチン;コレステロール又はチロキサパル(tyloxapal))、安定性増強剤(例えばスクロース又はソルビトール)、張度増強剤(例えばアルカリ金属ハロゲン化物−好ましくは塩化ナトリウム又は塩化カリウム−又はマンニトール ソルビトール)、送達ビヒクル、希釈剤、添加剤及び/又は医薬アジュバント(例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences (18th Ed.、A.R. Gennaro、ed.、Mack Publishing Company 1990)、及びその後続版(あらゆる目的のために参照により本明細書に加入される)を参照のこと)が挙げられる。
【0108】
最適な診断用又は医薬組成物は、例えば、意図される投与経路、送達系式、及び望ましい投薬量に依存して当業者により決定される。このような組成物は、抗体様結合タンパク質の物理状態、安定性、インビボでの放出速度、及びインビボでのクリアランス速度に影響を及ぼし得る。
【0109】
診断用又は医薬組成物中の主要なビヒクル又は担体は、実際は水性でも非水性のいずれでもよい。例えば、注射に適したビヒクル又は担体は、場合により非経口投与のための組成物において一般的な他の材料を補った、水、生理食塩水、又は人工脳脊髄液であり得る。中性緩衝化食塩水又は血清アルブミンと混合された食塩水は、さらなる例となるビヒクルである。他の例となる医薬組成物は、約pH7.0−8.5のTris緩衝液、又は約pH4.0−5.5の酢酸緩衝液を含み、これらはソルビトール又は適切な代替物をさらに含み得る。本発明の一実施態様において、操作された抗体様結合タンパク質組成物は、所望の純度を有する選択された組成物を凍結乾燥ケーキ又は水溶液の形態で任意の製剤化剤と混合することにより貯蔵のために調製され得る。さらに、抗体様結合タンパク質は、スクロースのような適切な添加剤を使用して凍結乾燥物として製剤化され得る。
【0110】
本発明の診断用又は医薬組成物は、非経口送達のために選択され得る。あるいは、組成物は、吸入、又は経口のように消化管を通る送達ために選択され得る。このような薬学的に許容しうる組成物の製造は当該分野の技術範囲内である。
【0111】
製剤成分は、投与部位に許容され得る濃度で存在する。例えば、緩衝剤は、組成物を生理的pH又はわずかにより低いpH、典型的には約5〜約8のpH範囲内に維持するために使用される。
【0112】
非経口投与が考慮される場合、本発明における使用のための診断用又は治療用組成物は、薬学的に許容しうるビヒクル中に所望の抗体様結合タンパク質を含むパイロジェンフリーの非経口で許容しうる水溶液の形態であり得る。非経口注射に特に適したビヒクルは滅菌蒸留水であり、滅菌蒸留水中に抗体様結合タンパク質が滅菌等張溶液として製剤化されて適切に保存される。さらに別の製剤は、製品の徐放又は持続性放出を生じる、注射可能マイクロスフェア、生体内分解性粒子、ポリマー化合物(例えば、ポリ乳酸又はポリグリコール酸)、ビーズ、又はリポソームのような薬剤を用いた所望の分子の製剤を含み得、次いでこれがデポー注射により送達され得る。ヒアルロン酸もまた使用され得、そしてこれは循環中での持続期間を増進する効果を有し得る。所望の分子の導入のための他の適切な手段としては、移植可能な薬物送達デバイスが挙げられる。
【0113】
一実施態様において、診断用又は医薬組成物は、吸入用に製剤化され得る。例えば、抗体又は操作された抗体様結合タンパク質は、吸入用の乾燥粉末として製剤化され得る。抗体様結合タンパク質吸入液剤もまた、エアロゾル送達のための噴霧剤を用いて製剤化され得る。さらに別の実施態様において、溶液が噴霧され得る。
【0114】
特定の製剤は経口投与され得るということも考慮される。本発明の一実施態様において、このやり方で投与される抗体様結合タンパク質は、錠剤及びカプセル剤のような固形投薬形態の配合において通例使用される担体を用いて又は用いずに製剤化され得る。例えば、カプセル剤は、バイオアベイラビリティが最大化され、かつプレシステミック(pre−systemic)分解が最少化される胃腸管中の時点で製剤の活性部分を放出するように設計され得る。さらなる薬剤は、抗体様結合タンパク質の吸収を促進するために含まれ得る。希釈剤、矯味矯臭剤、低融点ワックス、植物油、滑沢剤、懸濁化剤、錠剤崩壊剤、及び結合剤も使用され得る。
【0115】
別の診断用又は医薬組成物は、錠剤の製造の適した非毒性添加剤と混合した有効量の抗体様結合タンパク質を含み得る。錠剤を滅菌水又は別の適切なビヒクルに溶解することにより、液剤が単回用量形態で製造され得る。適切な添加剤としては、限定されないが、不活性希釈剤、例えば炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム若しくは炭酸水素ナトリウム、ラクトース、若しくはリン酸カルシウム;又は結合剤、例えばデンプン、ゼラチン、若しくはアラビアゴム;又は滑沢剤、例えばステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、若しくはタルクが挙げられる。
【0116】
本発明のさらなる診断用又は医薬組成物は、持続性又は制御送達製剤中に抗体様結合タンパク質を含む製剤を含めて、当業者に明らかである。様々な他の持続性又は制御送達手段、例えばリポソーム担体、生体内分解性マイクロパーティクル又は多孔性ビーズ及びデポー注射を製剤化するための技術もまた当業者に公知である。徐放性製剤のさらなる例としては、成形品、例えばフィルム又はマイクロカプセルの形態の半透性ポリマーマトリックスが挙げられる。徐放性マトリックスとしては、ポリエステル、ヒドロゲル、ポリラクチド、L−グルタミン酸とガンマ エチル−L−グルタメートとのコポリマー、ポリ(2−ヒドロキシエチル−メタクリレート)、エチレン酢酸ビニル、又はポリ−D(−)−3−ヒドロキシ酪酸が挙げられ得る。徐放性組成物としてはリポソームも挙げることができ、これは当該分野で公知のいくつかの方法により製造され得る。
【0117】
インビボ投与のために使用しようとする本発明の診断用又は医薬組成物は、典型的には無菌でなければならない。これは、滅菌濾過膜を通す濾過により達成され得る。組成物が凍結乾燥される場合、この方法を使用する滅菌は、凍結乾燥及び再構成の前、又は後のいずれかに行われ得る。非経口投与のための組成物は、凍結乾燥形態又は溶液で貯蔵され得る。さらに、非経口組成物は一般的に、滅菌アクセスポートを有する容器、例えば静脈液剤バッグ又は皮下注射針により穿刺可能なストッパを有するバイアル中に入れられる。
【0118】
診断用又は医薬組成物が製剤化されると、液体、懸濁液、ゲル、エマルジョン、固形物、又は脱水若しくは凍結乾燥した粉末として滅菌バイアル中に貯蔵され得る。このような製剤は、すぐに使える(ready−to−use)形態又は投与前に再構成を必要とする形態(例えば、凍結乾燥された)のいずれかで貯蔵され得る。
【0119】
本発明はまた、単回用量投与単位を製造するためのキットを考慮する。キットは、乾燥したタンパク質を有する第一の容器及び水性製剤を有する第二の容器の両方をそれぞれ含み得る。単一及び多室(single and multi−chambered)充てん済み注射器(例えば、液体用シリンジ及びリオシリンジ(lyosyringes))を含むキットもまた本発明の範囲内に含まれる。
【0120】
組成物はまた、所望の分子が吸収されているか又は封入されている膜、スポンジ、又は他の適切な材料の移植により局所投与され得る。移植デバイスが使用される場合、デバイスはいずれかの適切な組織又は器官中に移植され得、そして所望の分子の送達は、拡散、持続放出(timed−release)ボーラス、又は継続投与によるものであり得る。
【実施例】
【0121】
以下の実施例は、本発明の特定の実施態様、及びそれらの様々な使用の説明に役立つものである。これらは説明目的のためのみに示され、いかなるようにも本発明の範囲を限定すると解釈されるべきではない。
【0122】
実施例1: ヒト化DS6モノクローナル抗体及びDS6−DM4の放射標識及びインビトロ特徴付け
臨床上有用な分子造影剤は、投与後に妥当な量の時間内に高コントラスト画像を生じ、腫瘍浸透を示し、より速いクリアランス動態を有し、そして優れた腫瘍対血液比を示す。生体イメージングにおいてインタクトな天然抗体を使用することの警告(caveat)は、腫瘍取り込み及び血液クリアランスの本質的に遅い動態であり;これらは高いバックグラウンドを有し、腫瘍の鮮明な画像を得るために長時間(数時間から数日)を要する傾向もある。
【0123】
生体イメージングと組み合わされた放射標識トレーサーは前臨床腫瘍モデルから臨床背景に変換し得るということが以前に示された(Williams et al.、2008、Cancer Biother and Radiopharm 23(6):797; Liu et al.、(2009) Mol Imaging Biol 12:530)。我々はさらに、放射標識DS6抗体及びDS6−DM4がマウスにおいてWISH異種移植腫瘍を効率的に標的化するということを実証した。これらの結果にもとづいて、3つの操作された抗体様結合タンパク質を、イメージングベースのコンパニオン診断薬として最適化された薬物動態のために開発した。
【0124】
実施例2: DS6操作B−Fabの発現
対応する構築物の重鎖及び軽鎖をコードする発現プラスミドを、E.coli DH5α細胞において増殖させた。トランスフェクションに使用したプラスミドを、Qiagen EndoFree Plasmid Mega Kit(B−Fab抗体様結合タンパク質についてのポリペプチド配列及びDNA配列は表2にある)を使用してE.coliから製造した。
【0125】
DS6抗体様結合タンパク質B−Fabを、FreeStyle F17培地(Invitrogen)におけるHEK293細胞の一過性トランスフェクションにより製造した。トランスフェクションの7日後に、上清を採取し、そして遠心分離及び0.2μm濾過にかけて粒子を除去した。KappaSelect(GE Healthcare)での捕捉により精製を行った。KappaSelectカラムに結合した後、カラムをPBS又はHEPES緩衝液(50mM HEPES、150mM NaCl、pH 7.2、FP12016)で洗浄し、続いて0.1Mグリシン(pH2.5)で溶出し、そして1M Tris/HCl pH9で中和した。精製ポリッシュ(polishing)工程は、PBS又はHEPES緩衝液(50mM HEPES、150mM NaCl、pH 7.2、FP12016)を用いてSuperdex 200 (GE Healthcare)を使用するサイズ排除クロマトグラフィーからなるものであった。ポリッシュ工程の後、精製品を限外ろ過により濃縮し、そして最後にDS6 B−Fabを0.22μmメンブレンを使用して滅菌濾過した。
【0126】
タンパク質濃度を、280nmでの吸収測定により決定した。各バッチを還元及び非還元条件下でSDS−PAGEにより分析し、各サブユニット及びモノマーの純度及び分子量を決定した。精製されたDS6 B−Fabの質を以下に記載される分析方法によりチェックした。
【0127】
【表2】
【0128】
【表3】
【0129】
【表4】
【0130】
【表5】
【0131】
実施例3: DS6抗体に基づく操作された抗体様結合タンパク質の開発
huDS6−DM4についてのイメージングベースのコンパニオン診断用抗体様結合タンパク質を開発するために、ヒト化DS6モノクローナル抗体からのCA6結合配列に基づく3つの操作された抗体様結合タンパク質(B−Fab、
図1を参照のこと)を生成した。3つの操作された抗体様結合タンパク質を以下に記載されるようにそれぞれ精製し、そして試験した;結果を表3に示す。ポリ−ヒスチジン(6x−His)タグの存在がPETトレーサーに影響を及ぼすかどうかを決定するための所望の特徴としては、HPLC又はSDS−PAGEにより純度>95%、約10mg/mL濃度、安定なペプチド、DS6抗体と類似した結合が挙げられる。さらなる選択基準としては:>5%ID/gの腫瘍シグナル;3:1の腫瘍対筋肉比;効率的な腎クリアランス;及びブロックされていない取り込みとブロックされた取り込みとの間の統計学的に有意な差異(p<0.05)が挙げられる(放射標識キレート化B−Fabについての品質基準の要約については表4を参照のこと)。
【0132】
【表6】
【0133】
【表7】
【0134】
6x−Hisタグを含むか又は含まない(G4S)
2リンカーを含有するB−Fab抗体は、CA6結合配列が基づく対照DS6モノクローナル抗体と類似した結合効率を維持していると決定された。精製された抗体様結合タンパク質のそれぞれの品質を以下の分析方法によりチェックした:
【0135】
a) 分析用サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)
分析用SECを、TSKgel G3000SWXLカラム(7.8mmx30cm)及びTSKgel SWXLガードカラム(Tosoh Bioscience)を備えたAEKTA explorer 10(GE Healthcare)を使用して行った。分析を、250mM NaCl、100mM リン酸Na pH6.7を使用して280nmで検出しながら1mL/分で行った。タンパク質サンプル30マイクロリットル(0.5〜1mg/mL)をカラム上にアプライした。分子サイズの推定のために、カラムをゲルろ過標準混合物(MWGF−1000、SIGMA Aldrich)を使用して較正した。データ評価をUNICORNソフトウェアv5.11を使用して行った。
【0136】
b) LC−MSによるインタクト質量分析
各サンプルを0.01mg/mLの濃度に希釈し、次いでDTT(最終10mM)を加えることにより還元した。分離前に、サンプルを20分間捕捉し、そして20μL/分で一体型トラップカラムで2%アセトニトリル/0.1%TFA(体積/体積)を用いて脱塩し、その後15%溶離液A(H
2O/0.05%TFA)〜50%溶離液B(アセトニトリル/0.05%TFA)のグラジエントを用いて溶出した。
【0137】
各サンプルを、ナノフロー(nanoflow)(300nL/分)で一体型カラム(PSDVB;100μm I.D.x5cm)で37℃にて操作して分離した。各サンプルの導入を、外径365μm、内径75μm及び先端直径15μmを有する新しい対物(objective)からのエレクトロスプレー針並びにシースガスを使用して行った。QStar XLでの取得後に、スペクトルを対応する時間範囲にわたって合計し、そしてApplied Biosystems/MDS SciexからBioAnalystと共に供給されるタンパク質再構築ツールを使用してデコンボリューションした。
【0138】
c) LC−MSを使用したペプチド質量フィンガープリント分析によるタンパク質同定
目的のレーンを穿孔し、カルバミドメチル化し、そしてエンドプロテイナーゼトリプシンで消化した。その後、サンプルをOrbiTrap XL質量分析計を使用してLC−MS/MSにより分析した。得られたスペクトルを、所定の構築物が加えられたユーザー定義データベースSwiss−Prot PPと、さらにはデータベースSwiss−Prot全種と比較した。
【0139】
3つの操作されたDS6ベースの抗体様結合タンパク質の各々を、硬い酸のカチオンキレート剤DOTA(1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7,10−四酢酸)に化学的に結合し、
64Cuで放射標識し、そして3つの操作されたDS6ベースの抗体様結合タンパク質のそれぞれを特徴付けするために、前臨床腫瘍モデルにおけるインビボPET生体イメージング実験及びインビトロ細胞結合アッセイに使用した。それぞれの操作された抗体についての活性及び実験からのデータの要約は表5及び
図2〜4に見られ得る。
【0140】
【表8】
【0141】
上記の抗体様結合タンパク質及びそれらの対応するDOTA複合体(1.5〜2.5 DOTA/フラグメント)は全て、CA6陽性細胞(WISH細胞株)に対して高い親和性(K
d=4〜20nM)を有し、DOTA誘導体化が抗原に対する親和性に不利に影響しないということを示した。フラグメントは、CA6陰性細胞(A2780細胞株)に対して低い親和性を有していた。
64Cu標識薬剤を、WISH又はA2780皮下腫瘍のいずれかを保有するヌードマウスにおいてヒト血清安定性研究及びインビボイメージング及び24時間生体内分布により評価した。
64Cu−DOTA−B−Fabを高収率で合成し(RCY−80%、SA−55GBq/μmole、純度>99%)、そして24時間血清安定性(94±5%、n=3)試験において良好な結果を得た。異種移植腫瘍保有マウスにおけるインビボ生体内分布実験(表6を参照のこと)は、高い腫瘍/筋肉(8.7:1)、腫瘍/血液(3.6:1)及び陽性/陰性腫瘍(1.8、p<0.05、n=7)比と併せて比較的高いWISH腫瘍取り込み(7.6±0.87 %ID/g、n=4、20〜206mg)及び低いA2780腫瘍取り込み(5.1±0.92%ID/g、n=3、50〜270mg)を示した。腫瘍取り込みは、腎臓(62±4%ID/g)及び肝臓(10±0.75%ID/g)のみが上回った。
【0142】
【表9】
【0143】
64Cu−DOTA−B−Fabを、インビボでの遮断研究により特異性についてWISH保有腫瘍動物においてさらに評価した。遮断は、放射標識した薬剤の投与のそれぞれ2.5又は25時間前にB−Fab(2mg、n=5)又はDS6(1mg、n=4)のいずれかの投与により行った。B−Fab遮断は、WISH腫瘍取り込みにおいて23%(p<0.05、n=8)の減少を生じたが、DS6遮断は26%(p<0.05、n=7)の減少に達した。対照腫瘍(n=3)はこの研究では遮断されなかった。これらの前臨床研究は、
64Cu−DOTA−B−Fabが患者におけるhuDS6−DM4のために適したコンパニオン診断薬であるということを示唆する。
【0144】
実施例4: 前臨床腫瘍モデルにおける開発された操作された抗体インビボPET研究
a) B−Fab (G4S)
2リンカー及びC末端6x−Hisタグ
B−Fab 1151は、GGGGSGGGGS ((G4S)
2) (配列番号3)としてL1及びL2リンカーの両方を含有し、かつ発現されたC末端6x−Hisタグを含有するDS6ベースの操作された抗体様結合タンパク質である。タンパク質をIMAC及びSECにより精製し、そしてインビトロ結合溶液を1.8mg/mlでPBS中で調製し、そして結合親和性をWISH CA6+細胞株においてフローサイトメトリーを使用して特徴づけした(
図2C及び
図2D)。
【0145】
b) B−Fab (G4S)
2リンカー
B−Fab 1153は、(G4S)
2としてL1及びL2リンカーの両方を含有し、かつC末端6x−Hisタグを含有しないDS6ベースの操作された抗体様結合タンパク質である。このタンパク質はHisタグを欠いているので、このタンパク質はIMAC、Kappa−select及びSECにより精製した。インビトロ結合溶液を、1.6mg/mlでPBS中で調製し、そして結合親和性をWISH CA6+細胞株においてフローサイトメトリーを使用して特徴づけした(
図3C及び
図3D)。
【0146】
c) B−Fab G4Sリンカー及びC末端6x−Hisタグ
B−Fab 1152は、G4Sの単一コピーとしてL1及びL2リンカーの両方を含有し、かつC末端6x−Hisタグを含有するDS6ベースの操作された抗体様結合タンパク質である。このタンパク質をIMAC及びSECにより精製し、そしてインビトロ結合溶液を1.8mg/mlでPBS中で調製し、そして結合親和性をWISH CA6+細胞株においてフローサイトメトリーを使用して特徴づけした(
図4C及び
図4D)。
【0147】
実施例5: DOTAを用いるか又は用いないDS6についてのインビトロ結合結果
DOTA複合体はDS6活性を変更しないということを示すために、DS6抗体様結合タンパク質及びDOTA−DS6結合体化抗体の結合をインビトロでCA6陽性WISH細胞株及びA2780 CA6陰性細胞で試験した。蛍光活性化細胞分取実験により、DOTA複合体がCA6陽性WISH細胞においてDS6結合を変更しないということが決定された(
図5を参照のこと)。
【0148】
実施例6:
64Cu−DOTA−DS6 B−Fab抗体様結合タンパク質の放射標識及び安定性
銅−64で標識されたDOTA結合DS6 B−Fabを使用するヒト血清安定性研究及び24時間生体内分布研究を、CA6陽性(WISH)又はCA6陰性(A2780)皮下腫瘍(were)のいずれかを保有するヌードマウスにおいて行った。放射化学研究は、
64Cu−DOTA−DS6 B−Fab操作抗体様結合タンパク質が約30%の放射化学収率、>95%の放射化学純度、及び1.9 Ci/μmoleの比放射能を有するということを示す(
図6Aを参照のこと)。
64Cu−DOTA−DS6 B−Fab抗体様結合タンパク質の血清安定性実験を、24時間ヒト血清中で37℃にて行い、そして0時間の時点で97.2%活性及び24時間の時点で96.3%活性を示し、24時間後に活性に有意な損失が無いことを実証した(
図6Bを参照のこと)。
【0149】
実施例7: 異なる骨格を有する抗体様結合タンパク質間の比較
上記のB−Fab抗体様結合タンパク質の特性を、どの骨格がイメージングコンパニオン診断薬としての使用に最も適するかを評価するために、CA6に特異的に結合する二特異性抗体(diabody)の特性と比較した。ホモ二量体を形成するその抗CA6二特異性抗体のアミノ酸配列を配列番号12として示す(表7)。いくつかの実施態様において、そのホモ二量体二特異性抗体は、GGCタグ、配列番号13のタグ、及び配列番号14のタグからなる群より選択されるC末端タグをさらに含んでいた。
【0150】
図7に示されるように、二特異性抗体は、B−Fab抗体様結合タンパク質の骨格とは異なる骨格を有する。例えば、これはいずれのC
LドメインもC
H1ドメインも含まない。
【0151】
【表10】
【0152】
結果を以下の表8A〜8Cに示す。これらの結果は、配列番号14のタグに融合された配列番号12の二特異性抗体を、B−Fab 1153((G4S)2リンカーを含むがHisタグを含まない)と比較することにより得られた。
【0153】
【表11】
【0154】
【表12】
【0155】
これらの結果から、B−Fabはコンパニオン診断薬としての使用のために二特異性抗体より優れていると結論づけることができる。例えば、二特異性抗体は、血漿安定性アッセイ及び温度ストレスアッセイにおいて分解を示したが、B−Fabは両方のアッセイで安定であった。
【0156】
本発明は様々な実施態様に関して記載されてきたが、変形及び改変が起こるであろうことは当業者に理解される。従って、添付の特許請求の範囲は、特許請求される本発明の範囲内に入る全てのこのような等価な変形を含むということが意図される。さらに、本明細書で使用されるセクションの見出しは、編成目的のみであり、記載される主題を限定するとは解釈されるべきではない。
【0157】
本明細書に記載される各実施態様は、それとは反対に明確に示されていなければ、いずれかの他の実施態様(単数又は複数)と組み合わされ得る。特に好ましいか又は有利であると示されるいずれかの特徴又は実施態様は、それとは反対に明確に示されていなければ、好ましいか又は有利であると示されるいずれかの他の特徴又は実施態様と組み合わされ得る。
【0158】
本出願において引用される全ての参照文献は、参照により本明細書に明示的に加入される。