(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記放熱板は、前記本体部と前記突出部とを有するベース板と、前記ベース板の下面に形成された第1金属層と、前記ベース板の上面に形成された第3金属層と、前記封止樹脂から露出された前記第3金属層の上面を被覆する樹脂層と、を有し、
前記第1金属層の表面は、前記本体部の下面よりも表面粗度の大きい前記粗化面であり、
前記第3金属層の表面は、前記本体部の上面よりも表面粗度の大きい粗化面であり、
前記樹脂層の表面は、前記第3金属層の表面よりも表面粗度の小さい平滑面であることを特徴とする請求項2に記載の半導体装置。
前記突出部は、前記本体部の角部から外側に突出するように形成され、又は前記本体部の外形をなす各辺の1箇所から外側に突出するように形成されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の半導体装置。
前記突出部は、前記本体部の端部から下方に屈曲された接続部と、前記接続部の端部から前記配線基板の外周縁に向かって前記本体部と平行となるように屈曲された延出部とを有することを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の半導体装置。
前記突出部は、導電性を有する接着剤を介して、前記配線基板の上面に形成されたグランド配線と電気的に接続されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の半導体装置。
前記放熱板を分割する工程の前に、前記大判の放熱板の下面を、前記本体部の上面よりも表面粗度の大きい粗化面に形成する工程を有することを特徴とする請求項9に記載の半導体装置の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して各実施形態を説明する。なお、添付図面は、便宜上、特徴を分かりやすくするために特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。また、断面図では、各部材の断面構造を分かりやすくするために、一部の部材のハッチングを梨地模様に代えて示し、一部の部材のハッチングを省略している。
【0010】
(第1実施形態)
以下、
図1〜
図9に従って第1実施形態を説明する。
図1に示すように、半導体装置10Aは、BGA(Ball Grid Array)型の配線基板20と、その配線基板20の上面に実装された半導体素子30と、半導体素子30上に接着剤40を介して配置された放熱板50と、半導体素子30等を封止する封止樹脂60とを有している。
【0011】
配線基板20は、基板本体21と、接続用パッド22と、はんだボール23とを有している。基板本体21としては、接続用パッド22とはんだボール23とが基板内部を通じて相互に電気的に接続された構造を有していれば十分である。このため、基板本体21の内部には配線層が形成されていてもよく、配線層が形成されていなくてもよい。なお、基板本体21の内部に配線層が形成される場合には、例えば、複数の配線層が層間絶縁層を介して積層され、各配線層と各層間絶縁層に形成されたビアとによって接続用パッド22とはんだボール23とが電気的に接続されている。また、基板本体21の内部に配線層が形成されない場合には、例えば、基板本体21を厚さ方向に貫通する貫通電極によって接続用パッド22とはんだボール23とが電気的に接続されている。基板本体21としては、例えば、コア基板を有するコア付きビルドアップ基板やコア基板を有さないコアレス基板等を用いることができる。
【0012】
接続用パッド22は、基板本体21の上面21Aに形成されている。接続用パッド22の材料としては、例えば、銅(Cu)や銅合金を用いることができる。
はんだボール23は、基板本体21の下面に形成されている。はんだボール23の材料としては、例えば、鉛(Pb)を含む合金、錫(Sn)とCuの合金、Snと銀(Ag)の合金、SnとAgとCuの合金などを用いることができる。このはんだボール23は、例えば、マザーボード等の実装基板と接続される外部接続端子として機能する。
【0013】
半導体素子30は、例えば、シリコン(Si)等からなる薄板化された半導体基板上に、半導体集積回路(図示略)が形成された回路形成面(ここでは、下面)側がパッシベーション膜で覆われ、その回路形成面に接続端子31が配設された構造を有している。
【0014】
半導体素子30としては、例えば、CPU(Central Processing Unit)チップやGPU(Graphics Processing Unit)チップなどのロジックチップを用いることができる。また、半導体素子30としては、例えば、DRAM(Dynamic Random Access Memory)チップやフラッシュメモリチップなどのメモリチップを用いることもできる。半導体素子30の平面形状は、任意の形状及び任意の大きさとすることができる。例えば、半導体素子30は、平面視略正方形状に形成されている。半導体素子30の大きさは、例えば、平面視で10mm×10mm程度とすることができる。
【0015】
半導体素子30は、例えば、配線基板20にフリップチップ実装されている。すなわち、半導体素子30は、接続端子31を介して、配線基板20の接続用パッド22と電気的に接続されている。接続端子31としては、例えば、金(Au)バンプやはんだバンプを用いることができる。はんだバンプの材料としては、例えば、Pbを含む合金、SnとCuの合金、SnとAgの合金、SnとAgとCuの合金などを用いることができる。
【0016】
半導体素子30の回路形成面と基板本体21の上面21A(つまり、配線基板20の上面)との間にはアンダーフィル樹脂35が充填されている。アンダーフィル樹脂35の材料としては、例えば、エポキシ系樹脂などの絶縁性樹脂を用いることができる。
【0017】
半導体素子30の回路形成面と反対側の背面(ここでは、上面)には、接着剤40が形成されている。接着剤40としては、例えば、シリコンポリマー系の樹脂や、熱伝導部材(TIM:Thermal Interface Material)を用いることができる。熱伝導部材の材料としては、例えば、熱伝導性の良い高電気伝導材であるインジウム等を用いることができる。また、熱伝導部材の他の例としては、高電気伝導材を含有するシリコングリース、或いは金属フィラー、グラファイト等を含有した有機系の樹脂バインダー等を用いることができる。接着剤40は、半導体素子30と放熱板50とを接着する機能と、半導体素子30と放熱板50とを熱的に接続する機能とを有している。
【0018】
放熱板50は、半導体素子30の背面上に接着剤40を介して設けられている。放熱板50は、ヒートスプレッダとも呼ばれる。放熱板50は、半導体素子30が発する熱の密度を分散させる機能を有する。また、放熱板50は、半導体素子30上に設けられているため、半導体素子30を機械的に保護する機能も有する。
【0019】
放熱板50は、ベース板51と、ベース板51の下面に形成された金属層52と、ベース板51の上面に形成された金属層53とを有している。なお、ベース板51の材料としては、例えば、熱伝導率の良好な材料であることが好ましい。例えば、ベース板51の材料としては、Cu、Ag、アルミニウム(Al)又はそれらの合金等を用いることができ、本実施形態ではAlを用いる。なお、ベース板51の材料としては、熱伝導率が良好な材料であれば、金属以外の材料を用いることもできる。金属層52,53の材料としては、例えば、Cu、ニッケル(Ni)又はそれらの合金等を用いることができる。
【0020】
ベース板51は、平板状に形成された本体部55と、本体部55と一体に形成され、本体部55の端部から外側に突出された突出部56とを有している。突出部56は、本体部55よりも低い位置に配置されている。突出部56は、本体部55と連続して形成された接続部57及び延出部58を有している。接続部57は、本体部55と、その本体部55よりも低い位置の平面上に形成された延出部58とを接続する。本例の接続部57は、本体部55の端部から基板本体21の外周縁側に向かって斜め下方に屈曲形成されている。また、本例の延出部58は、接続部57の下端部から本体部55の端部とは反対方向の外周縁側に向かって略水平に屈曲形成されている。延出部58の上面は、例えば、本体部55の上面55Aと平行となるように形成されている。本例では、延出部58の下面は、本体部55の下面及び半導体素子30の背面(ここでは、上面)よりも低い位置であって、且つ半導体素子30の回路形成面(ここでは、下面)よりも高い位置に形成されている。これら本体部55と接続部57と延出部58とに沿って段差部が形成されている。
【0021】
図2に示すように、本体部55は、例えば、平面視略正方形状に形成されている。本例の本体部55の平面形状は、正方形の角部が面取りされた形状に形成されている。このため、本例の本体部55は、平面視略八角形状に形成されている。本体部55の平面形状は、基板本体21の平面形状よりも一回り小さく形成されている。また、本体部55の平面形状は、半導体素子30の平面形状よりも一回り大きく形成されている。
【0022】
突出部56は、面取りされた本体部55の角部(コーナー)から配線基板20の角部に向かって突出するように形成されている。本例の突出部56は、平面視において配線基板20の対角線に沿った方向に延びるように形成されている。但し、各突出部56は、配線基板20の角部までは延出されていない。
【0023】
ここで、各突出部56は、本体部55の角部のみに対応して形成されている。このため、配線基板20の外周領域と平面視で重なる領域には、その四隅周辺に突出部56が設けられるのみで、その他の部分にはベース板51が設けられていない。なお、
図2は、
図1に示した半導体装置10Aを上方から視た平面図であり、金属層53が透視的に描かれている。
【0024】
図1に示すように、金属層52は、ベース板51の下面全面を被覆するように形成されている。具体的には、金属層52は、本体部55の下面全面と、突出部56(接続部57及び延出部58)の下面全面とを被覆するように形成されている。この金属層52の下面は、粗化面52Rに形成されている。粗化面52Rは、封止樹脂60との密着性の観点から、ベース板51の下面よりも表面粗度が大きくなるように設定されている。粗化面52Rの表面粗度は、表面粗さRa値で例えば0.1μm以上とすることができる。ここで、表面粗さRa値とは、表面粗さを表わす数値の一種であり、算術平均粗さと呼ばれるものであって、具体的には測定領域内で変化する高さの絶対値を平均ラインである表面から測定して算術平均したものである。
【0025】
本体部55の下面を被覆する金属層52の下面は、接着剤40を介して半導体素子30の背面に熱的に結合されている。これにより、半導体素子30から発生する熱は、接着剤40を介して放熱板50に放熱される。
【0026】
図2に示すように、本例の金属層52は、ベース板51の側面の一部を被覆するように形成されている。具体的には、金属層52は、本体部55の側面全面と、突出部56の側面のうち、突出部56の延出する方向(配線基板20の対角線に沿った方向)に延びる側面全面とを被覆するように形成されている。また、金属層52は、突出部56の先端部(つまり、配線基板20の角部側の端部)における側面(先端面)を露出するように形成されている。換言すると、金属層52は、突出部56の先端面以外のベース板51の側面全面を被覆するように形成されている。このベース板51の側面を被覆する金属層52の側面(表面)は、ベース板51の下面を被覆する金属層52の下面と同様に、粗化面52Rに形成されている。
【0027】
図1に示すように、金属層53は、ベース板51の上面全面を被覆するように形成されている。具体的には、金属層53は、本体部55の上面55A全面と、突出部56(接続部57及び延出部58)の上面全面とを被覆するように形成されている。この金属層53の上面は、金属層52の粗化面52Rよりも粗度の小さい平滑面53S(低粗度面)に形成されている。平滑面53Sの表面粗度は、表面粗さRa値で例えば15〜100nm程度となるように設定されている。
【0028】
封止樹脂60は、半導体素子30及び放熱板50を封止するように基板本体21の上面21Aに形成されている。封止樹脂60は、例えば、半導体素子30と放熱板50の突出部56とを全体的に被覆するように形成されている。封止樹脂60は、放熱板50と配線基板20との間の空間を充填するように形成されている。封止樹脂60は、例えば、アンダーフィル樹脂35及び接着剤40から露出する半導体素子30の表面全面を被覆するように形成されている。また、封止樹脂60は、突出部56の上下両面及び側面を被覆するように形成されている。具体的には、封止樹脂60は、突出部56の下面及び側面を被覆する金属層52の表面(下面及び側面)と、突出部56の上面を被覆する金属層53の表面(上面及び側面)と、金属層52,53から露出する突出部56の先端面とを被覆するように形成されている。このように、突出部56の表面に形成された金属層52,53の表面全面と、金属層52,53から露出された突出部56の表面(つまり、先端面)全面とが封止樹脂60によって被覆(封止)されている。このため、突出部56の表面に形成された金属層52,53の表面と突出部56の先端面とは、半導体装置10Aの側面に露出されていない。一方、基板本体21の外周領域に形成された封止樹脂60は、本体部55の側面を被覆する金属層52の側面を被覆するように形成されている。この外周領域に形成された封止樹脂60の上面60Aは、例えば、本体部55の上面を被覆する金属層53の上面53Aと略面一に形成されている。換言すると、封止樹脂60は、本体部55の上面55Aを露出するとともに、金属層53の上面53Aを露出するように形成されている。また、封止樹脂60の外側面は、基板本体21の外側面と略面一に形成されている。
【0029】
このような封止樹脂60により、放熱板50が配線基板20に対して固定されるとともに、半導体素子30が封止される。すなわち、封止樹脂60は、配線基板20と放熱板50とを接着する接着剤として機能するとともに、半導体素子30を保護する保護層として機能する。また、封止樹脂60を設けたことにより、半導体装置10A全体の機械的強度を高めることができる。このため、配線基板20及び放熱板50を薄型化することができ、半導体装置10A全体を薄型化することができる。
【0030】
封止樹脂60の材料としては、例えば、エポキシ系樹脂やポリイミド系樹脂などの絶縁性樹脂、又はこれら樹脂にシリカやアルミナ等のフィラーを混入した樹脂材を用いることができる。フィラーとしては、シリカ等の周知の無機化合物、又は、有機化合物等を用いることができる。封止樹脂60としては、例えば、モールド樹脂を用いることができる。
【0031】
次に、半導体装置10Aの製造方法について説明する。なお、説明の便宜上、最終的に半導体装置10Aの各構成要素となる部分には、最終的な構成要素の符号を付して説明する。
【0032】
図3(a)及び
図3(b)に示す工程では、まず、配線基板20を用意する。配線基板20の基板本体21としては、半導体装置10Aが多数個取れる大判の基板が使用される。詳述すると、基板本体21には、半導体装置10Aに対応する構造体が形成される個別領域C1がマトリクス状(
図3(a)では、4×3)に形成されている。なお、大判の基板本体21は、最終的に破線で示した切断線D1に沿ってダイシングブレード等によって切断され、個々の半導体装置10Aとして切り出される。
【0033】
また、各個別領域C1には、
図3(b)に示した構造体、つまり基板本体21と、基板本体21の上面21Aに形成された接続用パッド22とを有する構造体が形成されている。この構造体は、公知の製造方法により製造することが可能であるため、ここでは説明を省略する。
【0034】
続いて、各個別領域C1の接続用パッド22に、半導体素子30の接続端子31をフリップチップ接合する。次いで、基板本体21の上面21Aと半導体素子30の回路形成面との間にアンダーフィル樹脂35を形成する。
【0035】
次に、
図4に示す工程では、各半導体素子30の背面上に接着剤40を形成する。例えば、半導体素子30の背面上に熱硬化型の接着剤40を塗布する。
続いて、
図5(a)に示すように、複数のベース板51が連結された大判の放熱板70を用意する。放熱板70には、基板本体21の個別領域C1(
図3(a)参照)に対応して複数の個別領域E1がマトリクス状(
図5(a)では、4×3)に形成されている。すなわち、個別領域E1は、個別領域C1(
図3(a)参照)と同一の平面配置で形成されている。また、放熱板70は、複数の個別領域E1を囲むように形成されたフレーム部71を有している。
【0036】
各個別領域E1には、その個別領域E1の平面視略中央部に形成された本体部55と、その本体部55の四隅から個別領域E1の角部に向かって突出された突出部56とを有するベース板51が形成されている。換言すると、各個別領域E1には、本体部55及び突出部56を画定する開口部70Xが形成されている。開口部70Xは各個別領域E1間の領域に形成されており、この開口部70Xによって、隣り合うベース板51の本体部55同士が離間して形成されている。また、開口部70Xの形成により、各個別領域E1の境界(破線参照)を含む外周領域には、各ベース板51のうちの突出部56のみが配置されている。
【0037】
各ベース板51の突出部56は、隣り合うベース板51の突出部56又はフレーム部71と連結されている。具体的には、各ベース板51は隣り合うベース板51と互いの突出部56を介して連結され、外側に配置されたベース板51の突出部56がフレーム部71と連結されている。このように、複数のベース板51がフレーム部71によって支持され、各本体部55がフレーム部71及び突出部56によって支持されている。このため、放熱板70では、突出部56が本体部55を支持する吊り部として機能する。そして、突出部56は例えば段差加工により形成され、
図5(b)に示すように、その突出部56と本体部55とに沿って段差部が形成されている。ここで、突出部56は、本体部55の端部から斜め下方に傾斜して形成された接続部57と、本体部55と略平行に形成された延出部58とを有している。なお、以上説明した大判の放熱板70は、例えば、プレス加工、鍛造加工や機械切削などにより製造される。例えば、放熱板70は、金属板を型抜きした後にプレス加工して製造される。
【0038】
次に、
図6(a)に示す工程では、大判の放熱板70の下面に、表面が粗化面52Rである金属層52を形成する。これにより、放熱板70(具体的には、ベース板51及びフレーム部71)の下面が粗面化されたことになる。ここで、金属層52の材料としては、例えば、Cu、Ni又はそれらの合金等を用いることができ、本実施形態ではNiを用いる。金属層52の厚さは、例えば、1〜10μmとすることができる。粗化面52Rの表面粗度としては、表面粗さRa値で例えば0.1μm以上であることが好ましい。以下に、金属層52の形成方法の一例について説明する。
【0039】
例えば、放熱板70の下面に、その放熱板70をめっき給電層に利用する電解めっき法(ここでは、電解Niめっき法)を施し、放熱板70の下面に金属層52(粗面めっき層)を形成する。但し、金属層52の粗化面52Rの粗度を上述した値に設定するためには、電解めっき法において使用するめっき液の組成や電流密度を適切に調整する必要がある。以下に、Niから構成される金属層52を形成する際のめっき条件の一例を説明する。具体的には、めっき液として塩化ニッケルめっき浴を使用する場合のめっき浴の組成及びめっき条件は、次の通りである。
【0040】
塩化ニッケルめっき浴:
塩化ニッケル 75g/L
チオシアン酸ナトリウム 15g/L
塩化アンモニウム 30g/L
ホウ酸 30g/L
pH: 約4.5〜5.5
浴温: 常温(約25℃)
処理時間: 約1〜30分間
陰極電流密度: 約1〜3A/dm
2
このように、使用するめっき液の組成や電流密度等を適切に調整することにより、金属層52の表面が粗化面52Rに形成され、その粗化面52Rの粗度を所望の表面粗度に設定させることができる。なお、上述しためっき液の組成やめっき条件は一例であり、金属層52の粗化面52Rが所望の表面粗度になるように調整されるのであれば、その組成や条件は特に限定されない。
【0041】
以上説明した電解めっき法では、例えば、放熱板70の上面に金属層52が形成されないように放熱板70の上面全面を被覆するレジスト層(図示略)を形成し、そのレジスト層をめっきマスクにしてめっき処理が施される。本例では、上記レジスト層は、放熱板70の側面(具体的には、
図5(a)に示した開口部70Xから露出する放熱板70の側面)を露出するように形成される。このため本例では、
図6(b)に示すように、上述した電解Niめっき法により、開口部70Xから露出する放熱板70の側面に、表面が粗化面52Rである金属層52が形成される。
【0042】
次に、
図6(c)に示す工程では、放熱板70の上面に、表面が平滑面53Sである金属層53を形成する。ここで、金属層53の材料としては、例えば、Cu、Ni又はそれらの合金等を用いることができ、本実施形態ではNiを用いる。金属層53の厚さは、例えば、1〜10μmとすることができる。平滑面53Sの表面粗度としては、表面粗さRa値で例えば15〜100nm程度であることが好ましい。以下に、金属層53の形成方法の一例について説明する。
【0043】
例えば、放熱板70の上面に、その放熱板70をめっき給電層に利用する電解めっき法(ここでは、電解Niめっき法)を施し、放熱板70の上面に金属層53(平滑面めっき層)を形成する。このとき、金属層52の表面に金属層53が形成されないように金属層52の表面全面を被覆するレジスト層(図示略)を形成し、そのレジスト層をめっきマスクとして電解めっき法が実施される。以下に、Niから構成される金属層53を形成する際のめっき条件の一例を説明する。具体的には、めっき液としてスルファミン酸ニッケルめっき浴を使用する場合のめっき浴の組成及びめっき条件は、次の通りである。
【0044】
スルファミン酸ニッケルめっき浴:
スルファミン酸ニッケル 320g/L
硼酸 30g/L
臭化ニッケル 10g/L
pH: 約3.0〜4.0
浴温: 約30〜50℃
陰極電流密度: 約3〜30A/cm
2
このように、使用するめっき液の組成や電流密度等を適切に調整することにより、金属層53の表面が平滑面53Sに形成され、その平滑面53Sの粗度を所望の表面粗度に設定させることができる。なお、上述しためっき液の組成やめっき条件は一例であり、金属層53の平滑面53Sが所望の表面粗度になるように調整されるのであれば、その組成や条件は特に限定されない。
【0045】
以上の製造工程により、各個別領域E1に、ベース板51と金属層52,53とからなる放熱板50が形成される。
次に、
図7(a)及び
図7(b)に示す工程では、各個別領域E1内において各突出部56の中途部分を切断し、放熱板70を各放熱板50毎に切断する。具体的には、
図7(b)に示すように、各突出部56の延出部58及びその延出部58を被覆する金属層52,53を、延出部58の延出方向の中途で分断する。すなわち、
図7(a)に示すように、延出部58の延出方向の中途に、隣接する開口部70Xを連通する開口部70Yを形成する。これにより、各放熱板50が隣接する放熱板50及びフレーム部71と分離され、各々個別の放熱板50に分割(個片化)される。このとき、ベース板51の突出部56(延出部58)の先端面(つまり、切断面)が外部に露出される。このため、切断面である突出部56の先端面には金属層52,53が形成されていない。
【0046】
開口部70Yは、例えば、金型を用いたプレス加工法やレーザ加工法により形成することができる。金型を用いたプレス加工法では、例えば、延出部58の所定部分を金型のポンチ(図示略)により押圧して打ち抜き、延出部58を所定部分で分断する。なお、
図7(b)は、延出部58の所定部分が金型により打ち抜かれた後にそのまま金型の下型72の上に載置された状態を示している。
【0047】
続いて、
図8(a)に示す工程では、下型72の上に載置された分割後の複数の放熱板50を一括して搬送装置73で保持する。ここで、搬送装置73は、複数の吸着パッド74を有している。吸着パッド74は、分割後の複数(ここでは、4×3個)の放熱板50の位置に合わせて設けられている。これら吸着パッド74には、例えば、真空ポンプ(図示略)が接続されている。そして、真空ポンプの稼働により各吸着パッド74が、分離後の各放熱板50の上面(具体的には、本体部55の上面55Aを被覆する金属層53の上面53A)を吸着する。これにより、分割後の複数(ここでは、12個)の放熱板50が一括して搬送装置73に吸着固定され、複数の放熱板50が上方に持ち上げられる。
【0048】
次いで、
図8(b)に示す工程では、複数の放熱板50を吸着した状態で搬送装置73を移動させることにより、配線基板20の上方に複数の放熱板50を搬送する。具体的には、配線基板20の4×3個の個別領域C1と、搬送装置73に吸着固定された4×3個の放熱板50とがそれぞれ上下に整列するように、配線基板20及び放熱板50を位置合わせする。より具体的には、各放熱板50の本体部55の下面(具体的には、本体部55の下面を被覆する金属層52の下面)が各半導体素子30の背面に対向するように、且つ各放熱板50の突出部56が個別領域C1の対角線上に配置されるように、各放熱板50を半導体素子30上に配置する。このとき、各放熱板50は、各個別領域C1の内部のみに配置され、切断線D1上には配置されていない。
【0049】
続いて、上述した真空ポンプを停止し、吸着パッド74による放熱板50の吸着を解除して搬送装置73を放熱板50から取り外す。次いで、
図9(a)に示す工程では、各半導体素子30の背面上に、接着剤40を介して各放熱板50を接着する。例えば、上述のように配置した配線基板20、接着剤40及び放熱板50を加熱及び加圧することにより、各放熱板50の本体部55の下面を接着剤40に当接するとともに、接着剤40を硬化する。これにより、放熱板50が接着剤40を介して半導体素子30に接合される。例えば、各半導体素子30の背面上に放熱板50が配置された構造体を、一対のプレス熱盤の間に配置し、真空プレスなどにより上下両面から加熱及び加圧することによって、
図9(a)に示すような一体構造を得ることができる。
【0050】
以上説明した工程では、分割後の複数(ここでは、12個)の放熱板50を一括して半導体素子30上に配置し、それら複数の放熱板50を半導体素子30上に一括して接着する。これにより、複数の放熱板50を半導体素子30上に一つずつ接着する場合に比べて、複数の放熱板50を接着するための工数を削減することができる。
【0051】
次に、
図9(b)に示す工程では、基板本体21の上面21Aに、半導体素子30及び放熱板50を封止する封止樹脂60を形成する。この封止樹脂60は、本体部55の下面及び側面を被覆するように、且つ、本体部55よりも低い位置に形成された突出部56の上下両面及び側面を被覆するように形成される。具体的には、封止樹脂60は、本体部55及び突出部56の下面及び側面を被覆する金属層52の表面と、突出部56の上面を被覆する金属層53の表面と、金属層52,53から露出する突出部56の先端面とを被覆するように形成される。また、各個別領域C1の外周領域に形成された封止樹脂60の上面60Aは、本体部55の上面を被覆する金属層53の上面53Aと略面一に形成される。このような封止樹脂60によって、配線基板20と放熱板50とが強固に固定される。また、封止樹脂60によって、半導体素子30が封止される。
【0052】
例えば、封止樹脂60の材料として熱硬化性を有したモールド樹脂を用いる場合には、
図9(a)に示した構造体を金型内に収容し、その金型内に圧力(例えば、5〜10MPa)を印加し、流動化したモールド樹脂を導入する。その後、モールド樹脂を180℃程度の温度で加熱して硬化させることで、封止樹脂60を形成する。なお、モールド樹脂を充填する方法としては、例えば、トランスファーモールド法、コンプレッションモールド法やインジェクションモールド法などの方法を用いることができる。
【0053】
続いて、各個別領域C1における基板本体21の下面にはんだボール23を形成する。以上の製造工程により、各個別領域C1に半導体装置10Aに対応する構造体を製造することができる。
【0054】
その後、
図9(b)に示す構造体を切断線D1に沿ってダイシングブレード等によって切断する。具体的には、切断線D1上の基板本体21及び封止樹脂60を切断する。これにより、本実施形態の半導体装置10Aが個片化され、複数の半導体装置10Aが製造される。なお、個片化後の半導体装置10Aの切断面には、基板本体21及び封止樹脂60の外側面が露出される。
【0055】
このとき、
図9(b)に示した構造体では、切断線D1(切断領域)上に放熱板50が配置されていない。このため、基板本体21の下面側及び上面60A側のいずれの方向からダイシングブレードによる切断が行われても、切断面にバリ(ここでは、メタルバリ)が発生することを抑制することができる。
【0056】
以上説明した本実施形態によれば、以下の効果を奏することができる。
(1)配線基板20に半導体素子30をフリップチップ実装し、その半導体素子30の背面上に接着剤40を介して放熱板50を接着し、その放熱板50と配線基板20との間の空間を充填する封止樹脂60を形成するようにした。この封止樹脂60を設けたことにより、半導体装置10A全体の機械的強度を高めることができる。これにより、半導体装置10Aの反りを効果的に低減することができる。また、配線基板20及び放熱板50を薄型化することが可能となるため、半導体装置10A全体の薄型化を図ることができる。
【0057】
(2)放熱板50の一部である突出部56の上下両面及び側面を被覆する封止樹脂60を形成するようにした。これにより、突出部56が封止樹脂60内に埋め込まれるため、放熱板50が半導体素子30から脱離することを好適に抑制できる。
【0058】
(3)また、突出部56(延出部58)の先端面を被覆する封止樹脂60を形成するようにした。このため、突出部56の先端面は、半導体装置10Aの側面(つまり、外部)に露出されない。したがって、突出部56の先端面の酸化等に起因して、半導体装置10Aの外観品質が低下することを抑制できる。
【0059】
(4)封止樹脂60と接する放熱板50の下面を粗化面52Rに形成した。これにより、アンカー効果が生じ、放熱板50と封止樹脂60との密着性を向上させることができる。このため、放熱板50が半導体素子30及び封止樹脂60から脱離することを好適に抑制できる。
【0060】
(5)封止樹脂60の上面から露出する放熱板50の上面を、粗化面52Rよりも表面粗度の小さい平滑面53Sに形成した。これにより、例えば半導体装置10Aの上面に識別マークを形成する場合に、放熱板50の上面(平滑面)に識別マークを形成することができるため、その識別マークの視認性を向上させることができる。なお、識別マークとしては、例えば、識別番号、座標情報、ロット番号、シリアル番号、図面番号、製品名称や認識マーク(アライメントマーク)などが挙げられる。
【0061】
(6)上面55Aが封止樹脂60から露出される本体部55の外形(平面形状)を半導体素子30の外形(平面形状)よりも大きく形成した。これにより、半導体素子30から発する熱を、放熱板50(本体部55)によって大気中に効率良く放熱させることができる。ひいては、半導体装置10Aにおける放熱性を向上させることができる。
【0062】
(7)ところで、半導体装置10Aを個片化する際に、切断線D1上に放熱板50が配置されていると、放熱板50の切断面にバリが発生するという問題がある。これに対し、本実施形態では、切断線D1上に放熱板50が配置されていない状態で、その切断線D1に沿って封止樹脂60及び配線基板20等を切断するようにした。このため、切断面にバリが発生することを好適に抑制できる。
【0063】
(8)複数のベース板51(放熱板50)が連結された大判の放熱板70において、隣り合うベース板51の間に開口部70Xを形成し、本体部55の角部のみから突出するように形成された突出部56を介して隣り合うベース板51同士を連結するようにした。これにより、本体部55の外周全面に突出部56を設ける場合に比べて、ベース板51(放熱板50)を分割する際の突出部56(放熱板50)の切断量を減らすことができる。この結果、製造時間を短縮することができ、製造コストの削減に貢献することができる。また、切断時におけるダイシングブレードの損傷を低減することができる。
【0064】
(9)分割した複数の放熱板50を一括して搬送装置73で吸着し、それら吸着した複数の放熱板50を半導体素子30上に搬送するようにした。そして、複数の放熱板50を半導体素子30上に一括して接着するようにした。これにより、個々に切断された放熱板50を半導体素子30上に一つずつ接着する場合に比べて、複数の放熱板50を接着するための工数を削減することができる。この結果、製造時間を短縮することができ、製造コストの削減に貢献することができる。
【0065】
(第2実施形態)
以下、
図10〜
図13に従って第2実施形態を説明する。この実施形態の半導体装置10Bは、突出部56の構造が上記第1実施形態と異なっている。以下、第1実施形態との相違点を中心に説明する。なお、先の
図1〜
図9に示した部材と同一の部材にはそれぞれ同一の符号を付して示し、それら各要素についての詳細な説明は省略する。
【0066】
図10に示すように、半導体装置10Bにおける放熱板50の突出部56Aは、本体部55の角部の端部から斜め下方に屈曲形成された接続部57と、接続部57の端部から外側に向かって略水平に屈曲形成された延出部58Aとを有している。
【0067】
図11に示すように、突出部56Aは、面取りされた本体部55の角部(コーナー)から配線基板20の角部に向かって突出するように形成されている。本例の突出部56Aは、平面視において配線基板20の対角線に沿った方向に延びるように形成されている。そして、突出部56A(延出部58A)の先端部は、配線基板20の角部まで延出されている。
【0068】
図10に示すように、突出部56A(延出部58A)の先端面(外側面)は、半導体装置10Bの側面に露出されている。突出部56Aの先端面は、封止樹脂60により被覆されておらず、封止樹脂60から露出されている。また、突出部56Aの先端面は、金属層52,53により被覆されておらず、金属層52,53から露出されている。例えば、突出部56A(延出部58A)の先端面は、封止樹脂60の厚さ方向の中途位置において封止樹脂60から露出されている。本例の突出部56Aの先端面は、封止樹脂60の外側面及び基板本体21の外側面と略面一に形成されている。
【0069】
封止樹脂60は、放熱板50の下面と基板本体21の上面21Aとの間の空間を充填するように形成されている。この封止樹脂60は、突出部56A(接続部57及び延出部58A)の下面を被覆する金属層52の下面を被覆するように形成されている。また、封止樹脂60は、突出部56Aの上面を被覆する金属層53の上面を被覆するように形成されている。このため、突出部56A及びその突出部56Aを被覆する金属層52,53は、その上下両面が封止樹脂60によって被覆されている。
【0070】
次に、半導体装置10Bの製造方法について説明する。
図12(a)に示す工程では、
図5及び
図6に示した工程と同様に、大判の放熱板70の各個別領域E1に、ベース板51と金属層52,53とからなる放熱板50が形成された構造体を形成する。
【0071】
次に、
図12(b)に示す工程では、配線基板20上に、大判の放熱板70を配置する。すなわち、本例では、切断されていない状態の放熱板70を配線基板20上に配置する。具体的には、配線基板20の4×3個の個別領域C1と、放熱板70の4×3個の個別領域E1とがそれぞれ上下に整列するように、放熱板70を配線基板20上に配置する。より具体的には、各放熱板50の本体部55の下面が各半導体素子30の背面に対向するように、且つ各放熱板50の延出部58Aが個別領域C1の境界(つまり、切断線D1)となる基板本体21の上面21Aと対向するように、半導体素子30上に放熱板70を配置する。このとき、放熱板50のうち延出部58Aのみが切断線D1上に配置される。
【0072】
続いて、半導体素子30の背面上に、接着剤40を介して放熱板70を接着する。例えば、上述のように配置した配線基板20、接着剤40及び放熱板70を加熱及び加圧する。これにより、各放熱板50の本体部55の下面(具体的には、本体部55の下面を被覆する金属層52の下面)を接着剤40に当接するとともに、接着剤40を硬化する。これにより、放熱板70(各放熱板50)が接着剤40を介して半導体素子30に接合される。
【0073】
本工程では、複数の放熱板50が連結された大判の放熱板70を半導体素子30上に接着するようにしたため、複数(ここでは、12個)の放熱板50を各個別領域C1の半導体素子30上に一括して接着することができる。したがって、個々に切断された放熱板50を半導体素子30上に個別に接着する場合に比べて、複数の放熱板50を接着するための工数を削減することができる。
【0074】
次に、
図13に示す工程では、
図9(b)に示した工程と同様に、配線基板20と放熱板70との間の空間及び放熱板70の開口部70X(
図7(a)参照)を充填し、突出部56Aの上面に形成された金属層52の上面を被覆する封止樹脂60を形成する。封止樹脂60の上面60Aは、本体部55の上面55Aを被覆する金属層53の上面53Aと略面一に形成される。このような封止樹脂60によって、配線基板20と放熱板50(放熱板70)とが強固に固定される。
【0075】
続いて、各個別領域C1における基板本体21の下面にはんだボール23を形成する。以上の製造工程により、各個別領域C1に半導体装置10Bに対応する構造体を製造することができる。
【0076】
その後、
図13に示す構造体を切断線D1に沿ってダイシングブレード等によって切断する。具体的には、切断線D1上の基板本体21と、封止樹脂60と、突出部56Aの延出部58Aと、延出部58Aの下面を被覆する金属層52と、延出部58Aの上面を被覆する金属層53とを切断する。これにより、本実施形態の半導体装置10Bが個片化され、複数の半導体装置10Bが製造される。なお、個片化後の半導体装置10Bの切断面には、基板本体21の外側面と封止樹脂60の外側面と延出部58Aの先端面(外側面)と金属層52,53の外側面とが露出される。
【0077】
本工程は、ダイシングブレード等によって、例えば基板本体21の下面側から切断線D1に沿って切断が行われる。このとき、
図13に示した構造体では、切断線D1(切断領域)上には放熱板50のうち突出部56Aの延出部58Aのみが配置され、その延出部58Aの上面に形成された金属層53の上面が封止樹脂60によって被覆されている。このため、
図13に示した構造体における切断線D1上の上面には、金属層である放熱板50(延出部58A)及び金属層53が露出されていない。したがって、ダイシングブレードによって基板本体21の下面側から切断が行われる場合であっても、切断面にメタルバリが発生することを抑制することができる。
【0078】
以上説明した実施形態によれば、第1実施形態の(1),(2),(4)〜(8)の効果に加えて以下の効果を奏することができる。
(10)複数の放熱板50が連結された大判の放熱板70Aを半導体素子30上に接着するようにした。このため、複数(ここでは、12個)の放熱板50を各個別領域C1の半導体素子30上に一括して接着することができる。したがって、個々に切断された放熱板50を半導体素子30上に個別に接着する場合に比べて、複数の放熱板50を接着するための工数を削減することができる。この結果、製造時間を短縮することができ、製造コストの削減に貢献することができる。
【0079】
(第3実施形態)
以下、
図14〜
図17に従って第3実施形態を説明する。この実施形態の半導体装置10Cは、突出部56の形成位置が上記第1実施形態と異なっている。以下、第1実施形態との相違点を中心に説明する。なお、先の
図1〜
図13に示した部材と同一の部材にはそれぞれ同一の符号を付して示し、それら各要素についての詳細な説明は省略する。
【0080】
図14(a)に示すように、半導体装置10Cにおける放熱板50は、上記第1実施形態と同様に、ベース板51と、ベース板51の下面全面を被覆する金属層52と、ベース板51の上面全面を被覆する金属層53とを有している。
【0081】
図15に示すように、ベース板51の本体部55は、例えば、平面視略正方形状に形成されている。本体部55の平面形状は、基板本体21の平面形状よりも一回り小さく形成され、半導体素子30の平面形状よりも一回り大きく形成されている。
【0082】
突出部56は、本体部55の外形をなす各辺の任意の一箇所から外側に向かって突出するように形成されている。本例の突出部56は、本体部55の各辺の略中心部から外側に向かって突出するように形成されている。このため、
図15に示すように、配線基板20の外周領域と平面視で重なる領域には、その配線基板20の各辺に対して1つの突出部56が設けられるのみで、その他の部分には放熱板50が設けられていない。また、各突出部56は、配線基板20の端部までは延出されていない。なお、
図15は、
図14(a)に示した半導体装置10Cを上方から視た平面図であり、金属層53が透視的に描かれている。
【0083】
図14(a)に示すように、突出部56は、上記第1実施形態と同様に、本体部55の各辺の一箇所(端部)から斜め下方に屈曲形成された接続部57と、接続部57の端部から外側に向かって略水平に屈曲形成された延出部58とを有している。
【0084】
金属層52は、ベース板51の下面全面、つまり本体部55の下面全面及び突出部56(接続部57及び延出部58)の下面全面と、突出部56の先端面以外のベース板51の側面とを被覆するように形成されている。すなわち、金属層52は、突出部56の先端面を露出するように形成されている。この金属層52の表面(下面及び側面)は、粗化面52Rに形成されている。
【0085】
金属層53は、ベース板51の上面全面、つまり本体部55の上面55A全面と、突出部56(接続部57及び延出部58)の上面全面とを被覆するように形成されている。この金属層53の表面(上面及び側面)は、平滑面53Sに形成されている。
【0086】
封止樹脂60は、突出部56の上下両面及び側面を被覆するように形成されている。具体的には、封止樹脂60は、突出部56の下面及び側面を被覆する金属層52の表面(下面及び側面)と、突出部56の上面を被覆する金属層53の表面(上面及び側面)と、金属層52,53から露出する突出部56の先端面とを被覆するように形成されている。このとき、
図14(b)に示すように、突出部56(延出部58)の先端面は、封止樹脂60の厚さ方向の中途位置であって、且つ封止樹脂60の外側面の幅方向の略中心位置に配置されている。
【0087】
以上説明した半導体装置10Cは、上記第1実施形態の半導体装置10Aと略同様の製造方法により製造することができる。但し、製造過程で使用される大判の放熱板70Aの構造が異なるため、その放熱板70Aについて以下に説明する。ここでは、上記第1実施形態における放熱板70との相違点を中心に説明する。
【0088】
図16(a)に示すように、放熱板70Aの各個別領域E1には、その個別領域E1の平面視略中央部に形成された本体部55と、その本体部55の各辺の中心部から個別領域E1の外周縁側に向かって突出された突出部56とを有するベース板51が形成されている。換言すると、各個別領域E1には、本体部55及び突出部56を画定する開口部70Vが形成されている。開口部70Vは各個別領域E1間の領域に形成されており、この開口部70Vによって、隣り合うベース板51の本体部55同士が離間して形成されている。また、開口部70Vの形成により、各個別領域E1の境界(破線参照)を含む外周領域には、各放熱板50のうちの突出部56のみが配置されている。
【0089】
各ベース板51は隣り合うベース板51と互いの突出部56を介して連結され、外側に配置されたベース板51の突出部56がフレーム部71と連結されている。このように、本例の放熱板70Aでは、図中左右方向に延出された突出部56及び図中上下方向に延出された突出部56によって、隣り合うベース板51(本体部55)同士が連結されている。なお、突出部56は例えば段差加工により形成され、
図16(b)に示すように、その突出部56と本体部55とに沿って段差部が形成される。以上説明した大判の放熱板70Aは、例えば、プレス加工、鍛造加工や機械切削などにより製造される。
【0090】
次に、
図17(a)に示す工程では、
図6(a)〜
図6(c)に示した工程と同様に、放熱板70Aの下面に金属層52を形成し、放熱板70Aの上面に金属層53を形成する。これにより、各個別領域E1に、ベース板51と金属層52,53とからなる放熱板50が形成される。
【0091】
続いて、
図7(a)及び
図7(b)に示した工程と同様に、各個別領域E1内において各突出部56の中途部分を切断し、放熱板70Aを各放熱板50毎に切断する。具体的には、各突出部56の延出部58及びその延出部58を被覆する金属層52,53を、延出部58の延出方向の中途で分断する。すなわち、
図17(b)に示すように、延出部58の延出方向の中途に、隣接する開口部70Vを連通する開口部70Wを形成する。これにより、各放熱板50が隣接する放熱板50及びフレーム部71と分離され、各々個別の放熱板50に分割される。このとき、ベース板51の突出部56(延出部58)の先端面(つまり、切断面)が外部に露出される。このため、切断面である突出部56の先端面には金属層52,53が形成されていない。
【0092】
その後、
図8及び
図9に示した工程と同様に、分割後の放熱板50を各半導体素子30の背面上に接着剤40(
図14(a)参照)を介して接着し、封止樹脂60を形成して切断工程を実施することにより、本実施形態の半導体装置10Cを製造することができる。
【0093】
以上説明した本実施形態によれば、上記第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
(他の実施形態)
なお、上記各実施形態は、これを適宜変更した以下の態様にて実施することもできる。
【0094】
・上記各実施形態では、突出部56の上面に、表面が平滑面53Sである金属層53を形成するようにしたが、これに限定されない。
例えば
図18に示すように、突出部56の上面に、表面が粗化面52Rである金属層52を形成するようにしてもよい。すなわち、本例の金属層52は、突出部56の先端面以外の表面全面を被覆するように形成されている。この構成によれば、突出部56の上面において、封止樹脂60と接する面が粗化面52Rに形成される。これにより、アンカー効果が生じ、放熱板50と封止樹脂60との密着性を向上させることができる。このため、放熱板50が半導体素子30及び封止樹脂60から脱離することを好適に抑制できる。
【0095】
この場合には、例えば、本体部55の上面55Aのみをマスクして電解めっき法を施して金属層52を形成する。すなわち、突出部56の上面を露出した状態で電解めっき法を施して金属層52を形成する。
【0096】
・上記各実施形態では、ベース板51の上面に、表面が平滑面53Sである金属層53を形成するようにしたが、これに限定されない。
例えば
図19に示すように、ベース板51の上面に、表面が粗化面54Rである金属層54を形成するようにしてもよい。金属層54は、ベース板51の上面全面、つまり本体部55の上面全面及び突出部56の上面全面を被覆するように形成されている。粗化面54Rは、封止樹脂60との密着性の観点から、ベース板51の上面よりも表面粗度が大きくなるように設定されている。粗化面54Rの表面粗度は、表面粗さRa値で例えば0.1μm以上とすることができる。これにより、放熱板50と封止樹脂60との密着性を向上させることができる。
【0097】
本例の半導体装置10Aでは、本体部55の上面を被覆する金属層54の上面(粗化面54R)が封止樹脂60から露出されている。また、半導体装置10Aでは、封止樹脂60から露出する金属層54の上面を被覆し、表面が平滑面81Sである樹脂層81を形成することが好ましい。ここで、平滑面81Sは、粗化面54Rよりも表面粗度が小さくなるように設定されている。これにより、半導体装置10Aの上面に識別マークを形成する場合に、樹脂層81の上面(つまり、平滑面81S)に識別マークを形成できるため、その識別マークの視認性を向上させることができる。
【0098】
・上記各実施形態では、金属層52,53を電解Niめっき法により形成するようにした。これに限らず、例えば、金属層52,53を電解Cuめっき法により形成するようにしてもよい。
【0099】
・上記各実施形態では、ベース板51の下面に、表面が粗化面52Rである金属層52を形成することにより、放熱板50の下面を粗化面としたが、これに限定されない。
例えば
図20に示すように、金属層52,53を省略し、ベース板51の下面自体を粗化面51Rとしてもよい。この場合には、例えば、
図5に示した工程の後に、ベース板51の下面に粗化処理を施して粗化面51Rを形成する。この粗化処理は、例えば、レーザ処理、ブラスト処理、エッチング処理や黒化処理を用いることができる。
【0100】
同様に、
図18に示した変形例の場合に、突出部56の上面に粗化処理を施して突出部56の上面自体を粗化面としてもよい。また、
図19に示した変形例の場合に、ベース板51の上面に粗化処理を施してベース板51の上面自体を粗化面としてもよい。
【0101】
・
図21に示すように、延出部58の上面に切り欠き部58Xを形成するようにしてもよい。切り欠き部58Xは、延出部58の先端部(つまり、配線基板20の外周縁側の端部)における延出部58の上面に形成されている。このため、本例の半導体装置10Aでは、切り欠き部58Xが形成されていない場合に比べて、放熱板50を分割する際に切断部分となる延出部58が薄くなる。これにより、放熱板50を分割する際における延出部58(放熱板50)の切断量を減らすことができる。なお、切り欠き部58Xは、例えばプレス加工により、延出部58の一部の厚さを薄くするように形成される。
【0102】
なお、切り欠き部58Xを、延出部58の端部における下面に形成するようにしてもよい。
・
図22に示すように、放熱板50の突出部56(ここでは、延出部58)を、接着剤82を介して、基板本体21の上面21Aに形成されたグランド配線24に接合するようにしてもよい。ここで、接着剤82は、導電性を有する導電性接着剤である。接着剤82としては、例えば、Agペーストを用いることができる。この接着剤82を介して、放熱板50はグランド配線24と電気的に接続されている。本例の放熱板50の材料としては、Cu、Ag、Al又はそれらの合金等の導電性を有する材料が用いられる。
【0103】
グランド配線24は、グランド電位とされた配線である。このため、グランド配線24と電気的に接続される放熱板50もグランド電位とされる。グランド配線24は、例えば、基板本体21の外周領域に形成され、アンダーフィル樹脂35から露出されている。
【0104】
このような半導体装置10Aでは、放熱板50を、半導体素子30を電磁波等から保護するシールド層として機能させることができる。
なお、
図18〜
図22に示した変形例では、第1実施形態の半導体装置10Aを変更した例を示したが、第2及び第3実施形態の半導体装置10B,10Cも同様に変更することができる。
【0105】
・また、上記各実施形態の半導体装置10A〜10Cにおいて、
図22に示した半導体装置10Aと同様に基板本体21の上面21Aにグランド配線24を形成した上で、封止樹脂60を、導電性を有する材料からなる封止樹脂に変更してもよい。この場合の放熱板50は、導電性を有する封止樹脂を介してグランド配線24と電気的に接続される。
【0106】
・上記各実施形態では、突出部56,56A(延出部58,58A)の先端面以外のベース板51の側面を金属層52で被覆するようにした。これに限らず、突出部56,56Aの先端面以外のベース板51の側面を金属層53で被覆するようにしてもよい。また、ベース板51の側面全面を金属層52,53から露出するようにしてもよい。
【0107】
・上記各実施形態の金属層53を省略してもよい。
・
図23に示すように、半導体装置10Aから金属層52,53を省略してもよい。この場合には、突出部56の上面及び下面に封止樹脂60が直接接し、それら突出部56の上面及び下面が封止樹脂60によって被覆される。なお、半導体装置10B,10Cも同様に、半導体装置10B,10Cから金属層52,53を省略してもよい。
【0108】
・上記各実施形態及び上記各変形例における放熱板50の接続部57を、本体部55の端部から下向きに垂直に屈曲させるようにしてもよい。
・上記各実施形態では、製造過程における配線基板20を、マトリクス状に配列された複数の個別領域C1を有する配線基板に具体化した。これに限らず、例えば、個別領域C1が帯状に複数個配列された配線基板20に具体化してもよい。すなわち、個別領域C1がN×M個(Nは2以上の整数、Mは1以上の整数)配列された配線基板であれば、その個別領域C1の配列は特に限定されない。
【0109】
・上記各実施形態では、放熱板70,70Aを、マトリクス状に配列された複数のベース板51が連結された大判の放熱板に具体化した。これに限らず、例えば、帯状に配列された複数のベース板51が連結された大判の放熱板に具体化してもよい。すなわち、N×M個のベース板51が連結された大判の放熱板であれば、そのベース板51の配列は特に限定されない。
【0110】
・上記各実施形態及び上記各変形例の配線基板20に実装される半導体素子30の個数は特に限定されない。例えば、配線基板20に2個以上の半導体素子30を実装するようにしてもよい。
【0111】
・また、配線基板20に、半導体素子30以外の電子部品を実装するようにしてもよい。
・上記各実施形態及び上記各変形例では、BGA型の配線基板20に具体化したが、PGA(Pin Grid Array)型の配線基板やLGA(Land Grid Array)型の配線基板に具体化してもよい。
【0112】
・上記各実施形態及び上記各変形例の放熱板50の上方に放熱フィン、ヒートパイプやベーパチャンバなどの各種冷却・放熱手段を設けるようにしてもよい。
・上記各実施形態並びに各変形例は適宜組み合わせてもよい。例えば、上記第3実施形態の半導体装置10Cの放熱板50における突出部56を、半導体装置10Bの突出部56Aと同様に、その先端面が封止樹脂60から露出するように形成してもよい。