(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6605461
(24)【登録日】2019年10月25日
(45)【発行日】2019年11月13日
(54)【発明の名称】ナノ粒子インク組成物、プロセスおよび応用
(51)【国際特許分類】
C08L 101/00 20060101AFI20191031BHJP
C08K 3/08 20060101ALI20191031BHJP
C08K 3/32 20060101ALI20191031BHJP
C08K 5/05 20060101ALI20191031BHJP
C08L 33/04 20060101ALI20191031BHJP
C08L 63/00 20060101ALI20191031BHJP
C09D 11/52 20140101ALI20191031BHJP
H01B 1/22 20060101ALI20191031BHJP
H01B 5/14 20060101ALI20191031BHJP
H01B 13/00 20060101ALI20191031BHJP
【FI】
C08L101/00
C08K3/08
C08K3/32
C08K5/05
C08L33/04
C08L63/00 C
C09D11/52
H01B1/22 A
H01B5/14 A
H01B5/14 B
H01B13/00 503B
H01B13/00 503D
【請求項の数】24
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-524304(P2016-524304)
(86)(22)【出願日】2014年7月1日
(65)【公表番号】特表2016-530353(P2016-530353A)
(43)【公表日】2016年9月29日
(86)【国際出願番号】US2014044990
(87)【国際公開番号】WO2015002917
(87)【国際公開日】20150108
【審査請求日】2017年6月30日
【審判番号】不服2018-14963(P2018-14963/J1)
【審判請求日】2018年11月9日
(31)【優先権主張番号】61/841,634
(32)【優先日】2013年7月1日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514056229
【氏名又は名称】ヘンケル アイピー アンド ホールディング ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(73)【特許権者】
【識別番号】391008825
【氏名又は名称】ヘンケル・アクチェンゲゼルシャフト・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト・アウフ・アクチェン
【氏名又は名称原語表記】Henkel AG & Co. KGaA
(74)【代理人】
【識別番号】100106297
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 克博
(72)【発明者】
【氏名】オルデンゼイル、 ルドルフ ダブリュー.
(72)【発明者】
【氏名】チェン、 ジャンピン
(72)【発明者】
【氏名】ドレーゼン、 ギュンター
【合議体】
【審判長】
大熊 幸治
【審判官】
井上 猛
【審判官】
大▲わき▼ 弘子
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2012/059974(WO,A1)
【文献】
国際公開第2012/060284(WO,A1)
【文献】
国際公開第2012/102304(WO,A1)
【文献】
特開2011−238596(JP,A)
【文献】
特開2010−138369(JP,A)
【文献】
特開2011−171272(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00-13/08
C09D 11/00-11/54
H01B 1/00-1/24
H01B 5/00-5/16
H01B 13/00-13/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成物の20〜95重量%の範囲を構成する、キャッピング剤により安定化した銀ナノ粒子、
組成物の0.84重量%以下の量で存在するリン酸、
熱硬化性樹脂および
ヒドロキシ含有希釈剤を含む組成物であって、
熱硬化性樹脂が、エポキシ官能化樹脂、アクリレート、シアン酸エステル、シリコーン、オキセタン、マレイミド、またはこれらの任意の2種以上の混合物である、組成物。
【請求項2】
前記安定化した銀ナノ粒子が5〜200ナノメータの範囲の粒子サイズを有する銀粒子を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記キャッピング剤が、ポリビニルアルコール、ポリ(N−ビニル−2−ピロリドン)、アラビアゴム、α−メタクリル酸、11−メルカプトウンデカン酸またはそのジスルフィド誘導体、クエン酸、クエン酸三ナトリウム、ステアリン酸、パルミチン酸、オクタン酸、デカン酸、ポリエチレングリコールおよびその誘導体、ポリアクリル酸およびアミノ修飾ポリアクリル酸、2−メルカプトエタノール、でんぷんまたはこれらの任意の2種以上の混合物である、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記キャッピング剤が、組成物の0.05〜5重量%の範囲を構成する、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
さらに追加の酸性成分を含み、追加の酸性成分が、ビニルリン酸、ポリリン酸、ギ酸、酢酸、クロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、シュウ酸、オレイン酸、安息香酸、p−トルエンスルホン酸またはこれらの任意の2種以上の混合物である、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
リン酸および追加の酸性成分が、組成物の0.1〜5重量%の範囲を構成する、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記エポキシ官能化樹脂が、ビスフェノールAに基づく液体型エポキシ樹脂、ビスフェノールAに基づく固体型エポキシ樹脂、ビスフェノールFに基づく液体型エポキシ樹脂、フェノールノボラック樹脂に基づく多官能性エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂またはこれらの任意の2種以上の混合物である、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記エポキシ官能化樹脂が、脂環式アルコール、水素化ビスフェノールAのジエポキシドまたは無水ヘキサヒドロフタル酸の二官能性脂環式グリシジルエステルである、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
前記熱硬化性樹脂が、組成物の0.1〜5重量%の範囲である、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
前記ヒドロキシ含有希釈剤が、水、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセロール、テルピネオールおよびこれらの任意の2種以上の混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
前記ヒドロキシ含有希釈剤が、組成物の5〜80重量%の範囲である、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
その上に導電性層を有する透明基材を含むタッチパネルディスプレイであって、前記導電性層が、請求項1に記載の組成物の硬化した層を含むタッチパネルディスプレイ。
【請求項13】
導電性ネットワークを作製する方法であって、前記方法が、
請求項1に記載の組成物を適する基材に塗布すること、および
その後に前記組成物を焼結することを含む方法。
【請求項14】
前記焼結が、150℃以下の温度で行われる、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記焼結が、0.5〜30分の範囲の時間行われる、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記焼結が、120℃以下の温度で行われる、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記焼結が、0.1〜2時間の範囲の時間行われる、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記基材が、ポリエチレンテレフタレート、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、エポキシ樹脂、ポリイミド、ポリアミド、ポリエステルまたはガラスである、請求項13に記載の方法。
【請求項19】
請求項13に記載の方法によって作製された導電性ネットワーク。
【請求項20】
1×10−4オーム・cm以下の抵抗率を有するナノ粒子銀粒子の焼結アレイを含む請求項19に記載の導電性ネットワーク。
【請求項21】
さらに導電性ネットワークのための基材を含み、前記導電性ネットワークおよび前記基材間の接着が、テスト方法D 3359−97に従ったASTM標準クロスカットテープテストによって決定され、少なくともレベル1Bである、請求項20に記載の導電性ネットワーク。
【請求項22】
5〜200ナノメートルの範囲の粒子サイズを有する銀粒子を非金属基材に接着するための方法であって、前記方法が、
請求項1に記載の組成物を前記基材に塗布すること、およびその後、
前記組成物を焼結すること
を含む方法。
【請求項23】
前記基材が、ポリエチレンテレフタレート、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、エポキシ樹脂、ポリイミド、ポリアミド、ポリエステルまたはガラスである、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
ナノ粒子銀充填熱硬化性樹脂の非金属基板への接着を改善するための方法であって、前記方法が、
請求項1〜10のいずれか1項に記載の組成物を用いる方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銀含有導電性インク配合物、およびそれらの種々の用途に関する。一態様では、本発明は、安定化した銀ナノ粒子を含む組成物に関する。他の態様では、本発明は、導電性ネットワークおよびその作製方法に関する。さらに他の態様では、本発明は、非金属基材へ接着する銀ナノ粒子の方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明によれば、基材への接着、ナノ粒子安定性、比較的低い温度での焼結力および良好な導電性の良好なバランスを有する導電性インク組成物を提供する。一態様では本発明の組成物から作製される導電性ネットワークを提供する。特定の態様では、そのような導電性ネットワークは、タッチパネルディスプレイでの使用に適する。特定の態様では、非金属基材へナノ粒子銀を接着するための方法に関する。特定の態様では、本発明は、非金属基材へナノ粒子銀充填熱硬化性樹脂の接着を改善する方法に関する。
【0003】
本発明によれば、
安定化した銀ナノ粒子、
酸性成分、
熱硬化性樹脂および
ヒドロキシ含有希釈剤を含む、組成物を提供する。
【0004】
安定化した銀粒子は、典型的には、組成物の少なくとも約20重量%〜約95重量%を構成する。一実施態様では、安定化銀粒子は、本発明の組成物の約30〜約90重量%を構成し、一実施態様では、安定化銀粒子は、本発明の組成物の約50〜約80重量%の範囲を構成する。
【0005】
本発明の実施に使用するために考慮される安定化した銀ナノ粒子は、典型的には、約5〜約200ナノメータの範囲の粒子サイズを有する。一実施態様では、本明細書での使用に考慮される銀ナノ粒子は、少なくとも30ナノメートルの粒子サイズを有する。本発明の他の実施態様では、本明細書での使用に考慮される銀ナノ粒子は、少なくとも80ナノメートルの粒子サイズを有する。一実施態様では、本明細書での使用に考慮される銀ナノ粒子は、少なくとも110ナノメートルの粒子サイズを有する。したがって、一実施態様では、約30〜200nmの範囲の粒子サイズを有する銀ナノ粒子が本明細書での使用に考慮され、一実施態様では、約80〜200nmの範囲の粒子サイズを有する銀ナノ粒子が本明細書での使用に考慮され、一実施態様では、約110〜200nmの範囲の粒子サイズを有する銀ナノ粒子が本明細書での使用に考慮され、一実施態様では、約30〜150nmの範囲の粒子サイズを有する銀ナノ粒子が本明細書での使用に考慮され、一実施態様では、約80〜150nmの範囲の粒子サイズを有する銀ナノ粒子が本明細書での使用に考慮され、一実施態様では、約110〜180nmの範囲の粒子サイズを有する銀ナノ粒子が本明細書での使用に考慮される。
【0006】
本発明の実施に使用するために考慮される銀粒子は、典型的には安定化されたものである。当業者に容易に認識されるように、銀ナノ粒子は、種々の方法、たとえば、1種以上のキャッピング剤の存在(凝集からナノ粒子を安定化するに用いられる)によって、安定化することができる。例示的キャッピング剤は、ポリビニルアルコール、ポリ(N−ビニル−2−ピロリドン)、アラビアゴム、α−メタクリル酸、11−メルカプトウンデカン酸またはそれらのジスルフィド誘導体、クエン酸、クエン酸三ナトリウム、ステアリン酸、パルミチン酸、オクタン酸、デカン酸、ポリエチレングリコールおよびその誘導体、ポリアクリル酸およびアミノ修飾ポリアクリル酸、2−メルカプトエタノール、でんぷんおよび同類のもの、またそれらの任意の2種以上の混合物を含む。
【0007】
当業者に容易に認識されるように、少量のキャッピング剤であっても銀ナノ粒子を安定化するのに有効である。典型的には、キャッピング剤の量は、組成物の約0.05〜約5重量%の範囲である。一実施態様では、用いられるキャッピング剤の量は、組成物の約0.1〜約2.5重量%の範囲である。
【0008】
幅広い種類の酸性成分が、本発明による組成物の他の成分とそれらが混和する限り、本明細書での使用に考慮される。そのような酸性材料は、典型的には、pH<7である、弱い〜軽度(weak-to-mild)の酸である。一実施態様では、本明細書での使用に考慮される酸性成分は、少なくとも1であるが、7未満の範囲のpHを有する。一実施態様では、本明細書での使用に考慮される酸性成分は、少なくとも2〜約6までの範囲のpHを有する。本明細書での使用に考慮される例示的酸性成分は、リン酸、ビニルリン酸、ポリリン酸、ギ酸、酢酸、クロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、シュウ酸、オレイン酸、安息香酸、p−トルエンスルホン酸および同類のもの、またこれらの任意の2種以上の混合物を含む。
【0009】
酸性成分の適する量は、組成物の約0.1〜約5重量%の範囲である。一実施態様では、用いられる酸性成分の量は、約0.5〜2重量%の範囲であろう。
【0010】
幅広い種類の熱硬化性樹脂が、本明細書での使用に考慮され、たとえば、エポキシ官能化樹脂、アクリレート、シアン酸エステル、シリコーン、オキセタン、マレイミド、および同類のもの、またこれらの任意の2種以上の混合物である。
【0011】
幅広い種類のエポキシ官能化樹脂が、本明細書での使用に考慮され、たとえば、ビスフェノールAに基づく液体型エポキシ樹脂、ビスフェノールAに基づく固体型エポキシ樹脂、ビスフェノールFに基づく液体型エポキシ樹脂(たとえば、Epiclon EXA−835LV)、フェノールノボラック樹脂に基づく多官能性エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(たとえば、Epiclon HP−7200L)、ナフタレン型エポキシ樹脂および同類のもの、またこれらの任意の2種以上の混合物である。
【0012】
本明細書での使用に考慮される例示的エポキシ官能化樹脂は、脂環式アルコール、水素化ビスフェノールA(Epalloy 5000のように市販されている)のジエポキシドまたは無水ヘキサヒドロフタル酸の二官能性脂環式グリシジルエステル(Epalloy 5200のように市販されている)、Epiclon EXA−835LV、Epiclon HP−7200Lおよび同類のもの、またこれらの任意の2種以上の混合物である。
【0013】
本発明の実施に使用するために考慮されるアクリレートは、技術分野においてよく知られている。たとえば、米国特許第5,717,034号明細書を参照し、すべての内容が、参照により本明細書に組み込まれる。
【0014】
本発明の実施に使用するために考慮されるシアン酸エステルは、技術分野においてよく知られている。たとえば、米国特許第5,718,941号明細書を参照し、すべての内容が、参照により本明細書に組み込まれる。
【0015】
本発明の実施に使用するために考慮されるシリコーンは、技術分野においてよく知られている。たとえば、米国特許第5,717,034号明細書を参照し、すべての内容が、参照により本明細書に組み込まれる。
【0016】
オキセタン(すなわち、1,3−プロピレンオキシド)は、三つの炭素原子および一つの酸素原子を有する四員環を有する分子式C
3H
6Oである複素環有機化合物である。用語オキセタンは、一般的にオキセタン環を含む任意の有機化合物についてもまた示す。たとえば、Burkhardらによる、Angew. Chem. Int. Ed. 2010、49、9052〜9067頁を参照し、すべての内容が、参照により本明細書に組み込まれる。
【0017】
本発明での実施に使用するために考慮されるマレイミドは、技術分野においてよく知られている。たとえば、米国特許第5,717,034号明細書を参照し、すべての内容が、参照により本明細書に組み込まれる。
【0018】
熱硬化性樹脂の利益を得るにはわずか少量の熱硬化性樹脂が必要である。典型的な熱硬化性樹脂は、組成物のわずか約0.1〜約5重量%を構成する。一実施態様では、熱硬化性樹脂は、全組成物の約0.2〜約3重量%を構成する。
【0019】
本明細書の使用に考慮されるヒドロキシ含有希釈剤は、水およびC
1〜約C
10骨格を有するヒドロキシ含有化合物を含む。例示的ヒドロキシ含有希釈剤は、水、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセロール、テルピネオールおよび同類のもの、またこれらの任意の2種以上の混合物を含む。
【0020】
本発明に従った使用に考慮されるヒドロキシ含有希釈剤の量は、幅広く変化することができ、典型的には、組成物の約5〜約80重量%の範囲である。一実施態様では、ヒドロキシ含有希釈剤の量は、全組成物の約10〜60重量%の範囲である。一実施態様では、ヒドロキシ含有希釈剤の量は、全組成物の約20〜約50重量%の範囲である。
【0021】
任意に、本明細書に記載の組成物は、流動性添加剤および同類のものを含んでもよい。本明細書で任意に使用するのに考慮される流動性添加剤は、シリコン重合体、エチルアクリレート/2−エチルヘキシルアクリレートコポリマー、ケトオキシムのリン酸エステルのアルキロールアンモニウム塩および同類のもの、またこれらの任意の2種以上の組み合わせを含む。
【0022】
本発明の他の実施態様によれば、導電性ネットワークを作製する方法であって、方法が、:
本明細書に記載の組成物を適する基材上に塗布すること、および
その後に前記組成物を焼結することを含む方法を提供する。
【0023】
非導電性である限り、幅広い種類の基材が、本明細書での使用に考慮される。例示的な基材は、ポリエチレンテレフタレート、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、エポキシ樹脂、ポリイミド、ポリアミド、ポリエステル、ガラスまたは同類のものを含む。
【0024】
本発明による組成物の特に有利な点は、比較的低い温度で焼結できることであり、たとえば、一実施態様では、約150℃以下の温度である。そのような温度で焼結するときは、0.5〜約30分の範囲の時間、組成物を焼結条件にさらすことが考えられる。
【0025】
一実施態様では、約120℃以下の温度で実施できることが考えられる。そのような温度で焼結するときは、0.1〜約2時間の範囲の時間、組成物を焼結条件にさらすことが考えられる。
【0026】
本発明のさらに他の実施態様によれば、1×10
−4オーム・cm以下の抵抗率を有するナノ粒子銀粒子の焼結アレイを含む、導電性ネットワークを提供する。
【0027】
そのような導電性ネットワークは、典型的には、基材およびそれに十分に接着するディスプレイに適用する。導電性ネットワークおよび基材間の接着は、種々の方法、たとえば、テスト方法D 3359−97に従ったASTM標準クロスカットテープテストによって決定される。本発明によれば、少なくともASTMレベル1Bと同程度の接着力が観測される(すなわち、当初接着したフィルム表面のうち少なくとも35%が、テープテストを受けた後、基材へ付着したままである)。本発明の一実施態様では、少なくともASTMレベル2Bと同程度の接着力が観測される(すなわち、当初接着したフィルム表面のうち少なくとも65%が、テープテストを受けた後、基材へ付着したままである)。本発明の一実施態様では、少なくともASTMレベル3Bと同程度の接着力が観測される(すなわち、当初接着したフィルム表面のうち少なくとも85%が、テープテストを受けた後、基材へ付着したままである)。本発明の一実施態様では、少なくともASTMレベル4Bと同程度の接着力が観測される(すなわち、当初接着したフィルム表面のうち少なくとも95%が、テープテストを受けた後、基材へ付着したままである)。本発明の一実施態様では、少なくともASTMレベル5Bと同程度の接着力が観測される(すなわち、当初接着したフィルム表面のうち100%が、テープテストを受けた後、基材へ付着したままである)。
【0028】
本発明の他の実施態様によれば、約5〜約200ナノメートルの範囲の粒子サイズを有する、銀粒子を非金属基板に接着するための方法であって、前記方法が:
本明細書に記載された組成物を前記基材に塗布すること、およびその後、
前記組成物を焼結すること
を含む方法を提供する。
【0029】
本発明の実施態様によれば、低い温度での焼結、(たとえば、約150℃以下の温度、または約120℃以下の温度)が考えられる。
【0030】
本発明のさらなる実施態様によれば、ナノ粒子銀を充填した熱硬化性樹脂の非金属基板への接着を改善するための方法であって、前記方法が、
酸性成分、および
ヒドロキシ含有希釈剤
を前記銀充填熱硬化性樹脂中に含むことを含む方法を提供する。
本明細書に記載のナノ粒子銀、熱硬化性樹脂、酸性成分およびヒドロキシ含有希釈剤は本発明のこの実施態様の使用に考慮される。
【0031】
本発明の他の実施態様によれば、その上に導電性層を有する透明基材を含むタッチパネルディスプレイを提供し、前記導電性層が、本発明の組成物の硬化した層を含む。
【0032】
本発明の種々の態様は、以下の非限定的な例によって説明される。例は、例示を目的とし、本発明の任意の実施を限定するものではない。本発明の精神および範囲から外れることなく、変更および修飾を行うことができると理解される。一当業者は、本明細書に記載の試薬および成分を合成または商業的に得る方法を簡単に知る。
【実施例】
【0033】
例1
ナノ粒子銀を所望量の希釈剤および任意にH
3PO
4に(「修飾」インクに添加して)混合することにより、インクを作製する。混合は、Speedmixer中で、組成物が実質的に均一になるまで行う。材料は、基材に塗布し、10ミクロンワイアバーでフィルムを調製する。材料は、その後、ボックスオーブンで、150℃、10分間乾燥する。0.5×5cm片に切断し、その厚みおよび抵抗を測定し、それに基づき、抵抗を算出した。結果を表1に示す。
【0034】
【表1】
【0035】
表1の結果は、2.0重量%のリン酸をナノ粒子銀、エポキシ含有配合物へ単に添加することにより、配合物を塗布することができる厚みを減らし、著しくその抵抗率を減らすことを示す。
【0036】
例2
【0037】
表2に要約されているように、さらなるインクを調製し評価した。
【0038】
【表2】
【0039】
リン酸の存在によって、サンプル番号2は、同じ硬化条件下のサンプル番号1よりも良好な導電性を有する。さらに、エポキシ材料(すなわち、Epalloy 5000および5200の組み合わせ)を添加したとき、サンプル番号3および4では、サンプル番号2と比較して、PET基材への改善された接着を有する。全体的に、サンプル番号4は、サンプル番号1、2、3および6と比較して、導電性および接着の最も望ましいバランスを有する。
例3
【0040】
表3に要約されているように、さらなるインクを調製し評価した。
【0041】
【表3】
【0042】
表3の結果は、低レベルのリン酸が、ナノ粒子銀含有配合物の導電性および接着を改善するのに効果的であることを示す。実際に、ある特定の状況では、より低い量のリン酸(すなわち、
0.1重量%未満)の方が好ましいようである。
例4
【0043】
表4に要約されているように、さらなるインクを調製し評価した。
【0044】
【表4】
【0045】
表4に要約された結果は、リン酸および特定のエポキシ樹脂の組み合わせが、ナノ粒子銀含有エポキシ配合物の導電性および接着を改善するのに大いに有効であることを示す。
例5
【0046】
表5に要約されているように、さらなるインクを調製し評価した。
【0047】
【表5】
【0048】
表5に要約された結果は、わずか少量のエポキシが、ナノ粒子銀含有配合物の改善された導電性および/または接着に必要であることを示す。実際に、ある状況では、本発明の配合物に含まれるエポキシ量に限定することが好ましい。
例6
【0049】
表6に要約されているように、さらなるインクを調製し評価した。
【0050】
【表6】
【0051】
表6に要約された結果は、種々の酸を本発明の実施に用いることができることを示す。
【0052】
本発明の多くの改変は、本明細書に示され、記載されたものに加えて、上述の当業者には明らかである。そのような改変もまた、添付の特許請求の範囲の範囲内であることを意味する。
【0053】
本明細書で言及した特許および刊行物は、本発明が関連する当業者のレベルを示す。これらの特許および刊行物が、それぞれ個々の出願または刊行物が明確にかつ個々に本明細書で参照により組み込まれるのと同程度に本明細書では、参照により組み込まれる。
【0054】
前述の記載は、本発明の特定の実施態様の例示であるが、本発明の実施の際に限定することを意味しない。そのすべての均等を含む、以下の特許請求の範囲は、本発明の範囲を定義することを意図する。