(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6605657
(24)【登録日】2019年10月25日
(45)【発行日】2019年11月13日
(54)【発明の名称】成膜装置、成膜方法及び電子デバイスの製造方法
(51)【国際特許分類】
C23C 14/56 20060101AFI20191031BHJP
C23C 14/12 20060101ALI20191031BHJP
H01L 51/50 20060101ALI20191031BHJP
H05B 33/10 20060101ALI20191031BHJP
H05B 33/04 20060101ALI20191031BHJP
H01L 21/677 20060101ALI20191031BHJP
【FI】
C23C14/56 G
C23C14/12
H05B33/14 A
H05B33/10
H05B33/04
H01L21/68 A
【請求項の数】18
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2018-99463(P2018-99463)
(22)【出願日】2018年5月24日
【審査請求日】2018年10月26日
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】591065413
【氏名又は名称】キヤノントッキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100131392
【弁理士】
【氏名又は名称】丹羽 武司
(74)【代理人】
【識別番号】100125357
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100131532
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 浩一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100155871
【弁理士】
【氏名又は名称】森廣 亮太
(72)【発明者】
【氏名】阿部 可子
(72)【発明者】
【氏名】菅原 洋紀
【審査官】
壷内 信吾
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−097730(JP,A)
【文献】
国際公開第2010/044237(WO,A1)
【文献】
特開2006−260939(JP,A)
【文献】
特開2002−117973(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 14/00−14/58
H01L 21/68;27/32
H05B 33/00−33/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空に維持される基板搬送室と、
基板を搬入及び搬出するための搬入出口を有する第1真空成膜室と、
基板を搬入するための搬入口と、基板を搬出するための搬出口と、を別々に有する第2真空成膜室と、
を備え、
前記第1真空成膜室は、蒸着処理により基板に成膜を行う成膜室であり、前記搬入出口を介して前記基板搬送室との間で基板が搬入及び搬出され、
前記第2真空成膜室は、スパッタリングにより基板に成膜を行う成膜室であり、前記搬入口を介して前記基板搬送室から基板が搬入され、前記搬入口を介して前記基板搬送室へ基板が搬出されない
ことを特徴とする成膜装置。
【請求項2】
前記第2真空成膜室の前記搬出口は、前記搬入口を介して前記基板搬送室とつながっていることを特徴とする請求項1に記載の成膜装置。
【請求項3】
成膜処理時における前記第1真空成膜室と前記基板搬送室との間の圧力差は、成膜処理時における前記第2真空成膜室と前記基板搬送室との間の圧力差よりも小さい
ことを特徴とする請求項1または2に記載の成膜装置。
【請求項4】
前記第2真空成膜室は、調圧手段を有し、
前記第2真空成膜室は、前記第2真空成膜室と前記基板搬送室との間の圧力差が、成膜処理時における前記第2真空成膜室と前記基板搬送室との間の圧力差よりも小さくなるように、前記調圧手段に調圧されてから、前記搬入口を介して前記基板搬送室から基板が搬入される
ことを特徴とする請求項3に記載の成膜装置。
【請求項5】
前記第2真空成膜室は、前記搬出口とつながった室との圧力差が、成膜処理時における前記室との圧力差よりも小さくなるように、前記調圧手段に調圧されてから、前記搬出口を介して前記室へ基板が搬出される
ことを特徴とする請求項4に記載の成膜装置。
【請求項6】
成膜処理時における前記第1真空成膜室の圧力は、成膜処理時における前記第2真空成膜室の圧力よりも低い
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の成膜方法。
【請求項7】
基板を搬入及び搬出するための搬入出口を有する第3真空成膜室をさらに備え、
前記第3真空成膜室は、前記第3真空成膜室が有する前記搬入出口を介して前記基板搬送室との間で基板が搬入及び搬出され、
前記第3真空成膜室で成膜処理された基板は、前記基板搬送室を経由して前記第1真空成膜室に搬入される
ことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の成膜装置。
【請求項8】
前記第1真空成膜室で成膜処理された基板は、前記基板搬送室を経由して前記第2真空成膜室に搬入される
ことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の成膜装置。
【請求項9】
前記第1真空成膜室は、基板に有機材料からなる膜の成膜を行う成膜室であり、
前記第2真空成膜室は、基板に無機材料からなる膜の成膜を行う成膜室である
ことを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の成膜装置。
【請求項10】
基板を、基板搬送室から第1真空成膜室へ搬入して成膜処理を行う第1成膜工程と、
前記第1真空成膜室で成膜処理された基板を、前記基板搬送室を経由して第2真空成膜室に搬入して成膜処理を行う第2成膜工程と、
前記第2真空成膜室で成膜処理された基板を、前記基板搬送室を経由せずに前記第2真空成膜室から搬出する搬出工程と、
を備え、
前記第1成膜工程における成膜処理は、蒸着処理であり、
前記第2成膜工程における成膜処理は、スパッタリングである
ことを特徴とする成膜方法。
【請求項11】
前記第2成膜工程において、前記第2真空成膜室と前記基板搬送室との間の圧力差が、成膜処理時における前記第2真空成膜室と前記基板搬送室との間の圧力差よりも小さくなるように、前記第2真空成膜室の圧力を調圧してから、基板を前記第2真空成膜室に搬入し、
成膜処理時における前記第1真空成膜室と前記基板搬送室との間の圧力差は、成膜処理時における前記第2真空成膜室と前記基板搬送室との間の圧力差よりも小さい
ことを特徴とする請求項10に記載の成膜方法。
【請求項12】
前記搬出工程において、前記第2真空成膜室と搬出先の室との間の圧力差が、成膜処理時における前記第2真空成膜室と前記室との間の圧力差よりも小さくなるように、前記第2真空成膜室の圧力を調圧してから、基板を前記室へ搬出する
ことを特徴とする請求項10または11に記載の成膜方法。
【請求項13】
第1成膜工程の成膜処理時における前記第1真空成膜室の圧力は、第2成膜工程の成膜処理時における前記第2真空成膜室の圧力よりも低い
ことを特徴とする請求項10〜12のいずれか1項に記載の成膜方法。
【請求項14】
前記第1成膜工程は、基板に有機材料からなる膜の成膜を行う成膜工程であり、
前記第2成膜工程は、基板に無機材料からなる膜の成膜を行う成膜工程である
ことを特徴とする請求項10〜13のいずれか1項に記載の成膜方法。
【請求項15】
基板を、基板搬送室から第1真空成膜室へ搬入して成膜処理を行う第1成膜工程と、
前記第1真空成膜室で成膜処理された基板を、前記基板搬送室を経由して第2真空成膜室に搬入して成膜処理を行う第2成膜工程と、
前記第2真空成膜室で成膜処理された基板を、前記基板搬送室を経由せずに前記第2真空成膜室から搬出する搬出工程と、
前記第2真空成膜室から搬出された基板を封止する封止工程と、
を備え、
前記第1成膜工程における成膜処理は、蒸着処理であり、
前記第2成膜工程における成膜処理は、スパッタリングである
ことを特徴とする電子デバイスの製造方法。
【請求項16】
前記封止工程は、前記第2真空成膜室から搬出された基板を封止室に搬入して封止板と接着する接着工程を含み、
前記接着工程における接着処理時の前記封止室の圧力は、前記第1成膜工程における成膜処理時の前記第1真空成膜室の圧力よりも高い
ことを特徴とする請求項15に記載の電子デバイスの製造方法。
【請求項17】
前記封止工程は、前記第2真空成膜室から搬出された基板を保護膜成膜室に搬入して保護膜を成膜する成膜処理を行う保護膜成膜工程を含み、
前記保護膜成膜工程における成膜処理時の前記保護膜成膜室の圧力は、前記第1成膜工程における成膜処理時の前記第1真空成膜室の圧力よりも高い
ことを特徴とする請求項15または16に記載の電子デバイスの製造方法。
【請求項18】
保護膜成膜工程における成膜処理は、プラズマ化学気相成長法、スパッタリング及び原子層堆積のいずれかである
ことを特徴とする請求項17に記載の電子デバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成膜装置、成膜方法及び電子デバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子デバイスの製造において基板に成膜処理を行う成膜装置の構成として、搬送室を中心に、その周囲に各種の成膜室をクラスタ状に配置し、搬送室を基点として基板を各成膜室へ順次搬送して成膜処理を行う構成が知られている。また、特許文献1には、クラスタ式の配置とインライン式の配置とを組み合わせた成膜装置の構成が開示されている。具体的には、搬送室に対してクラスタ式に配置される成膜室のうち、スパッタリングを行うスパッタ室を、それぞれターゲット材料が異なる複数のスパッタエリアが直列に連続配置されるように構成した成膜装置である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2010/044237号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
成膜装置において、搬送室及び各成膜室は、所定の圧力にされて基板の搬送及び成膜処理が行われるが、成膜室ごとに圧力の設定が異なるため、基板を各成膜室間で移動させる際に調圧が必要となる。この調圧工程は、製造タクトや歩留まりなど生産性を低下させる要因となる。また、特許文献1に開示された構成においては、インライン式に構成されたスパッタ室の一番奥のスパッタエリアまで搬送して成膜処理を終えた基板は、これまでの経路を引き返して搬送室まで戻す必要がある。この復路の基板搬送工程が、生産性を低下させる要因となる。
【0005】
本発明は、成膜装置の成膜処理における生産性の向上を図ることができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の一側面としての成膜装置は、
真空に維持される基板搬送室と、
基板を搬入及び搬出するための搬入出口を有する第1真空成膜室と、
基板を搬入するための搬入口と、基板を搬出するための搬出口と、を別々に有する第2真空成膜室と、
を備え、
前記第1真空成膜室は、蒸着処理により基板に成膜を行う成膜室であり、前記搬入出口を介して前記基板搬送室との間で基板が搬入及び搬出され、
前記第2真空成膜室は、スパッタリングにより基板に成膜を行う成膜室であり、前記搬入口を介して前記基板搬送室から基板が搬入され、前記搬入口を介して前記基板搬送室へ基板が搬出されないことを特徴とする。
また、上記目的を達成するため、本発明の別の一側面としての成膜方法は、
基板を、基板搬送室から第1真空成膜室へ搬入して成膜処理を行う第1成膜工程と、
前記第1真空成膜室で成膜処理された基板を、前記基板搬送室を経由して第2真空成膜室に搬入して成膜処理を行う第2成膜工程と、
前記第2真空成膜室で成膜処理された基板を、前記基板搬送室を経由せずに前記第2真
空成膜室から搬出する搬出工程と、
を備え、
前記第1成膜工程における成膜処理は、蒸着処理であり、
前記第2成膜工程における成膜処理は、スパッタリングであることを特徴とする。
また、上記目的を達成するため、本発明の別の一側面としての電子デバイスの製造方法は、
基板を、基板搬送室から第1真空成膜室へ搬入して成膜処理を行う第1成膜工程と、
前記第1真空成膜室で成膜処理された基板を、前記基板搬送室を経由して第2真空成膜室に搬入して成膜処理を行う第2成膜工程と、
前記第2真空成膜室で成膜処理された基板を、前記基板搬送室を経由せずに前記第2真空成膜室から搬出する搬出工程と、
前記第2真空成膜室から搬出された基板を封止する封止工程と、
を備え
、
前記第1成膜工程における成膜処理は、蒸着処理であり、
前記第2成膜工程における成膜処理は、スパッタリングであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、成膜装置の成膜処理における生産性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施例1に係る成膜装置の構成を示す模式的平面図である。
【
図2】本発明の実施例1における成膜処理のフローチャートである。
【
図3】本発明の実施例1に係る成膜装置の蒸着室の構成を示す模式的平面図である。
【
図4】本発明の実施例1に係る成膜装置のスパッタ室の構成を示す模式的平面図である。
【
図5】本発明の実施例2に係る成膜装置の構成を示す模式的平面図である。
【
図6】本発明の実施例2における成膜処理のフローチャートである。
【
図7】本発明の比較例に係る成膜装置の構成を示す模式的平面図である。
【
図8】本発明の比較例における成膜処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に図面を参照して、この発明を実施するための形態を、実施例に基づいて例示的に詳しく説明する。ただし、この実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状それらの相対配置などは、発明が適用される装置の構成や各種条件により適宜変更されるべきものである。すなわち、この発明の範囲を以下の実施の形態に限定する趣旨のものではない。
【0010】
本発明は、基板上に薄膜を形成する成膜装置及びその制御方法に関する。本発明は、平行平板の基板の表面に所望のパターンの薄膜(材料層)を形成する成膜処理室として、真空蒸着により薄膜の形成を行う蒸着室と、スパッタリングにより薄膜の形成を行うスパッタ室と、を備える成膜装置に好ましく適用できる。基板の材料としては、ガラス、樹脂、金属などの任意の材料を選択でき、また、蒸着材料やスパッタリングのターゲット材料としても、有機材料、無機材料(金属、金属酸化物など)などの任意の材料を選択できる。本発明の技術は、具体的には、発光素子や光電変換素子、タッチパネルなどの電子デバイスや、光学部材などの製造に適用可能である。中でも、本発明の技術は、有機EL(ErectroLuminescence)素子などの有機発光素子や、有機薄膜太陽電池などの有機光電変換素子の製造に好ましく適用可能である。なお、本発明における電子デバイスは、発光素子を備えた表示装置(例えば有機EL表示装置)や照明装置(例えば有機EL照明装置)、光電変換素子を備えたセンサ(例えば有機CMOSイメージセンサ)も含むものである。
【0011】
[実施例1]
<成膜装置及び成膜プロセス>
図1は、本発明の実施例1に係る成膜装置1aの構成を示す模式的平面図である。
図1の成膜装置1aは、例えば、各種半導体デバイス、磁気デバイス、電子部品、光学部品な
どの電子デバイスの製造装置100において、基板10に対する成膜処理の役割を担う構成である。製造装置100においては、例えば、スマートフォン用の表示パネルの製造の場合、例えば約1800mm×約1500mm、厚み約0.5mmのサイズの基板に有機ELを構成する各層の成膜を行った後、該基板をダイシングして複数の小サイズのパネルが作製される。
【0012】
図1に示すように、成膜装置1aは、概略、LL(ロードロック)室11aと、搬送室12と、ストッカ室13(バッファ室とも称される)と、蒸着室20a、20bと、スパッタ室30と、後処理室40と、LL室11bと、を備える。本実施例においては、蒸着室20a、20bは基板10に有機材料からなる膜の成膜を行う成膜室であり、スパッタ室30は基板10に無機材料からなる膜の成膜を行う成膜室であるが、これに限定はされない。なお、本明細書において、「基板に膜の成膜を行う」とは、基板の表面に直接膜を成膜する場合、及び、基板の表面に形成された膜の上に別の膜を成膜する場合、の両方を含む。搬送室12を中心として、搬送室12を囲むように、LL室11a、ストッカ室13、2つの蒸着室20a、20b、スパッタ室30がクラスタ状に配置されている。搬送室12を起点とした、LL室11a、ストッカ室13、2つの蒸着室20a、20b、スパッタ室30に対する基板10の搬送(搬出・搬入)は、搬送室12に配置したロボットハンド12aが基板10を担持して行う。また、スパッタ室30以後はインライン式に構成されている。スパッタ室30内における基板10の搬送及びスパッタ室30から後処理室40、LL室11bへの搬送は、基板10を保持する基板ホルダ12b(
図4参照)を不図示の搬送機構により搬送することにより行う。なお、ここに示す基板搬送手段はあくまで一例であり、これらに限定されるものではなく、既知の技術を適宜採用してよい。
【0013】
成膜装置1aにおける各室には、調圧手段として、クライオポンプやTMP(ターボモレキュラポンプ)等からなる排気装置がそれぞれ接続されており、各室の圧力が調整可能に構成されている。本実施例の成膜装置1aは、搬送室12の室内圧力を第1真空成膜室としての蒸着室20a、20bの室内圧力と同等(真空)に維持し、第2真空成膜室としてのスパッタ室30の室内圧力を適宜調整して、基板10の搬送・成膜処理を行う構成となっている。なお、本明細書において「真空」とは、大気圧より低い圧力の気体で満たされた空間内の状態をいう。
【0014】
図2も参照しつつ、本実施例の成膜装置1aにおける成膜処理(基板搬送)の流れについて説明する。
図2は、本発明の実施例1における成膜処理のフローチャートである。
【0015】
成膜処理を施す対象物たる基板10は、ストッカ室13内に複数搬入され、スタンバイされる。具体的には、基板10は、先ず、外部からLL室11aに搬入される。LL室11aは、不図示の上記排気装置により、室内圧力を大気圧から搬送室12の室内圧力と同等の圧力へ調圧される。LL室11aの室内圧力が所定の圧力になると、基板10は、LL室11aから搬出され、基板搬送室としての搬送室12を経由して、ストッカ室13へ搬入される。このようにして、複数の基板10がストッカ室13に搬入される。
【0016】
なお、本実施例ではLL室11aから搬入された基板10がストッカ室13に搬入されるものとしたが、これに限定はされず、LL室11aから搬入された基板10は搬送室12を経由して直接、第1の蒸着室20aに搬入されてもよい。また、ストッカ室13は蒸着室20a、20bにおける成膜処理の前に基板10を収容してもよいし、成膜処理の後に基板10を収容してもよい。蒸着室20a、20bにおける成膜処理の前に基板10を収容することで、ストッカ室13内で基板10の脱ガス等の前処理を行うこともできる。蒸着室20a、20bにおける成膜処理の後に基板10を収容することで、例えばその後の工程(スパッタ室30における成膜処理など)でトラブルがあった場合などに、蒸着室20a、20bにおける成膜処理がなされた基板10を待機させておくことができる。
【0017】
ストッカ室13に収められた複数の基板10は、1枚ずつ順次、ストッカ室13から搬出され、搬送室12を経由して第1の蒸着室20aに搬入され、蒸着処理による成膜が施される(S101:第1成膜工程)。搬送室12の室内圧力と蒸着室20a、20bの室内圧力とは同等に維持されているので、搬送室12と蒸着室20a、20bとの間における基板の搬送において、特段の調圧工程を必要としない。搬送室12と蒸着室20a、20bの室内圧力は、本実施例においては、約1×10
−5Pa程度に維持されている。
なお、搬送室12と蒸着室20a、20bの夫々の室内圧力は、基板10の成膜処理や搬送に影響を及ぼさない範囲において、多少の圧力差があってもよい。
【0018】
図3は、本実施例に係る成膜装置の蒸着室20a、20bの構成を示す模式的平面図である。
図3に示すように、蒸着室20aは、蒸着室20aを区画するハウジング21aと、ゲートバルブが設けられた搬入出口22aと、蒸着材料として有機材料が収容された蒸着源容器23aと、蒸着室20aの室内圧力を調整するための排気装置25aと、を備える。蒸着源容器23aには、収容した蒸着材料を蒸発させるためのヒータ(不図示)が一体に設けられている。
【0019】
本実施例の蒸着室20aは、一度に2枚の基板10a、10bを収容可能であり、一方の基板10aの蒸着処理を行っている間に、他方の基板10bの搬入(基板10bの後に蒸着処理を行う場合)もしくは搬出(蒸着処理を終えている場合)が可能である。すなわち、収容した2枚の基板10a、10bに対して交互に蒸着処理を行うことができるように構成されている。一方の基板10aは、蒸着室20a内における一方の側(
図3左側)に、搬入出口22aを介して、
図3中の矢印A方向に搬入・搬出される。他方の基板10bは、基板10aとは反対側の蒸着室20a内における他方の側(
図3右側)に、搬入出口22aを介して、
図3中の矢印B方向に搬入・搬出される。基板10a、10bは、搬入されたそれぞれの位置において、蒸着処理を施される。
【0020】
蒸着源容器23aは、蒸着室20a内に配置された基板10a、10bに対して相対移動すべく蒸着室20a内を移動可能に構成されている。一方の基板10aに対する蒸着処理では、基板10a下面の被処理面(被成膜面)と不図示のマスクを介して対向する位置において、基板10aとの相対位置を、基板10aの縦方向(基板長辺方向(矢印Y1方向))に変化させるように移動(往復移動)する。これにより、ヒータの加熱により蒸着源容器23aから蒸発した蒸着材料を基板10aの被処理面にまんべんなく付着・堆積させる。一方の基板10aに対する蒸着処理を終えると、他方の基板10b下面の被処理面と不図示のマスクを介して対向する位置に移動する。そして、基板10bの被処理面と対向する位置において、基板10bとの相対位置を、基板10bの縦方向(矢印Y2方向)に変化させるように移動(往復移動)する。これにより、ヒータ加熱により蒸着源容器23aから蒸発した蒸着材料を基板10bの被処理面にまんべんなく付着・堆積させる。
【0021】
本実施例では、基板10a、10bを横置き(平置き)、すなわち基板被処理面が水平方向に延び、かつ下方を向く姿勢で搬送され、蒸着源容器23aが、基板10a、10bに対して下方に配置される構成としているが、かかる構成に限定されるものではない。
基板10a、10bを縦置き、すなわち基板被処理面が鉛直方向に延び、かつ水平方向を向く姿勢で搬送され、蒸着源容器23aが、基板被処理面に対して水平方向に対向するように配置される構成としてもよい。
また、蒸着室20aに収容可能な基板の枚数は、3枚以上としてもよいし、1枚のみ収容可能な構成としてもよい。
【0022】
以上のように、第1の蒸着室20aにおける蒸着処理を施された基板10は、蒸着室20aから搬出され、搬送室12を経由して第2の蒸着室20bに搬入され、蒸着室20a
とは異なる蒸着材料による蒸着処理が施される(S102)。
蒸着室20bは、蒸着室20aと同様、ハウジング21bと、搬入出口22bと、蒸着源容器23bと、排気装置25bと、を備える。これら各構成は、蒸着材料の種類が異なることを除き、蒸着室20aのハウジング21a、搬入出口22a、蒸着源容器23a、排気装置25aと同様に構成されており、説明を省略する。
蒸着室20a、20bによる成膜処理は、例えば、スマートフォンやテレビ、カメラ等に用いられる表示パネルにおける有機材料からなる各種発光層等の形成に好適に用いられる。
なお、上記説明では第1の蒸着室20aおよび第2の蒸着室20bをまとめて第1真空成膜室として説明したが、第1の蒸着室20aは第3真空成膜室、第2の蒸着室20bは第1真空成膜室として捉えることもできる。すなわち、第3真空成膜室である第1の蒸着室20aで成膜処理された基板10は、搬送室12を介して第1真空成膜室である第2の蒸着室20bへと搬入され、第1真空成膜室で成膜処理される。
【0023】
第2の蒸着室20bにおける蒸着処理を終えた基板10は、蒸着室20aから搬出され、搬送室12を経由して、予め搬送室12(蒸着室20a、20b)の室内圧力と同等の室内圧力に調圧されたスパッタ室30に搬入される(S103)。
なお、搬送室12とスパッタ室30の夫々の室内圧力は、基板10の成膜処理や搬送に影響を及ぼさない範囲において、多少の圧力差があってもよい。調圧後(減圧後)のスパッタ室30と搬送室12との圧力差(圧力比)は、成膜処理時におけるスパッタ室30と搬送室12との圧力差(圧力比)よりも小さくなる。
【0024】
図4は、本実施例に係る成膜装置のスパッタ室30の構成を示す模式的平面図である。
図4に示すように、スパッタ室30は、スパッタ室30を区画するハウジング31と、それぞれゲートバルブが設けられた搬入口32及び搬出口34と、カソードユニット33と、スパッタ室30の室内圧力を調整するための排気装置35と、を備える。
スパッタ室30による成膜処理は、例えば、スマートフォンやテレビ、カメラ等に用いられる表示パネルにおける電極や配線の形成に好適に用いられる。
【0025】
カソードユニット33は、スパッタリングによる成膜材料としてのターゲット、磁石ユニット、カソード電極等を備え、不図示の高周波電源に接続されている。ターゲットの材料としては、例えば、Cu、Al、Ti、Mo、Cr、Ag、Au、Niなどの金属ターゲットとその合金材が挙げられる。
【0026】
スパッタ室30は、室内上方に基板10の搬送経路が設けられ、その下方にカソードユニット33が配置されている。スパッタ室30は、搬入口32、搬出口34の夫々のゲートバルブが閉じられた状態で、排気装置35により、スパッタリングプロセスに好適な室内圧力に調整(典型的には増圧)される。スパッタリングプロセスに好適な室内圧力は、1×10
−2Pa〜1×10
1Pa程度であり、典型的には約1×10
−1Pa程度である。それとともに、ガス供給源36から、スパッタリングガスが流量制御されてスパッタ室30内に供給される。これにより、スパッタ室30の内部にスパッタリング雰囲気が形成される。スパッタリングガスとしては、例えばAr、Kr、Xe等の希ガスや成膜用の反応性ガスが用いられる。なお、スパッタ室30の室内圧力の調整(調圧)は、排気装置35のみによって行ってもよし、排気装置35とガス供給源36とを併用して行ってもよい(以下同様である)。このようにして、スパッタ室30が調圧される(S104)。
【0027】
上述したスパッタリング雰囲気の形成と、カソードユニット33に設けられたカソード電極を陰極とし、スパッタ室30の壁部であるハウジング31を陽極とした、不図示の高周波電源からの電圧印加により、ターゲットの表面近傍にプラズマ領域が生成される。プラズマ領域の生成により生成されるスパッタリングガスイオンとターゲットとの衝突によ
り、ターゲット粒子がターゲット表面から放出される。ターゲットから放出されたターゲット粒子が基板10に向かって飛翔、堆積することで基板10の被成膜面に成膜がなされる(S105:第2成膜工程)。
【0028】
カソードユニット33は、スパッタ室30内に配置された基板10に対して相対移動すべくスパッタ室30内を移動可能に構成されている。基板10の被処理面(下面)と対向する位置において、基板10との相対位置を、スパッタ室30における基板10の搬送経路(矢印C、D方向)と直交する方向(矢印Z方向)に変化させるように移動(往復移動)する。これにより、基板10の被処理面にまんべんなく成膜を行う。
【0029】
本実施例のスパッタ室30では、基板10の搬送方向を基板10の長辺方向に合わせる構成としている。こうすることでスパッタ室30における基板の搬送スペースを狭くすることができる。また、カソードユニット33の基板10に対する走査方向を基板10の短辺方向に合わせることで成膜ムラを低減することができる。
なお、本実施例のスパッタ室30では、蒸着室20と同様、基板10を横置きとし、カソードユニット33が、基板10に対して下方に配置される構成としているが、かかる構成に限定されるものではない。基板10を横置きとし、カソードユニット22が基板10に対して上方に配置される構成(基板10の被処理面が上面となる構成)でもよいし、基板10を縦置きとする構成でもよい。
【0030】
本実施例におけるスパッタ室30は、搬入口32がゲートバルブを介して搬送室12と接続され、搬出口34がゲートバルブを介して後処理室40と接続されている。すなわち、スパッタ室30は、蒸着室20a、20bと異なり、基板の搬入口32と基板の搬出口34とを別々に有しており、搬出口34は搬送室12とつながっていない。換言すれば、搬出口34は搬入口32を介して搬送室12とつながっている。本実施例におけるスパッタ室30は、搬送室12と後処理室40との間にインライン式で接続され、搬送室12から後処理室40までの基板10の搬送の流れが、一方向(搬送室12→スパッタ室30→後処理室40)となるように構成されている。すなわち、スパッタ室30の搬入口32を通過してスパッタ室30内に搬入された基板10は、その後、搬入口32を通過することはない。より具体的には、スパッタ室30の前後において、基板10は、搬入口32、スパッタ室30、搬出口34をこの順に経由して搬送され、搬出口34から搬出された後には、搬入口32及び搬出口34を通過することはない。
【0031】
スパッタ室30でのスパッタリングによる基板10の成膜処理を終えると、スパッタ室30の室内圧力は、搬出先の室としての後処理室40の室内圧力に合せるべく、排気装置35により調圧される(S106)。調圧後のスパッタ室30と後処理室40との夫々の室内圧力は、基板10の成膜処理や搬送に影響を及ぼさない範囲において、多少の圧力差があってもよい。調圧後のスパッタ室30と後処理室40との圧力差(圧力比)は、成膜処理時におけるスパッタ室30と後処理室40との圧力差(圧力比)よりも小さくなる。調圧が完了すると搬出口34のゲートバルブが開けられ、搬出口34を介してスパッタ室30から後処理室40へ基板10が搬出される(S107:搬出工程)。以上の構成により、電子デバイスの製造装置100の成膜装置1aにおける成膜処理が完了する。スパッタ室30の室内圧力は、基板10が後処理室40へ搬出された後、次の成膜処理に備えて、所定の圧力に戻される。
【0032】
後処理室40では、成膜装置1aにおける各種成膜処理を終えた基板10に対する後処理や検査等の後工程が行われる。後工程としては、特に限定はされないが、例えば、膜厚検査工程や封止工程、パターニング工程、切断工程などがあげられる。後処理室40における後工程は、蒸着室20a、20b(第1真空成膜室)および搬送室12の室内圧力よりも高い圧力下で行われる。後処理室40における後処理を終えた基板は、LL室11b
から製造装置100の外部へ搬出される。以上の一連の工程を経て、電子デバイスが製造される。
【0033】
封止工程は、スパッタ室30から搬出された基板10を封止する工程である。封止工程としては、基板10の表面に保護膜を成膜する保護膜成膜工程や、封止用ガラスなどの封止部材(封止板)と基板10とを貼り合わせて接着剤を用いて接着する、貼り合わせ工程(接着工程)などがある。すなわち、後処理室40には、封止室として保護膜成膜室や接着室などが含まれ、それら各室における成膜処理時や接着処理時における室内圧力は、蒸着室20a、20b(第1真空成膜室)および搬送室12の室内圧力よりも高い。保護膜成膜工程における成膜処理としては、プラズマ化学気相成長法(PECVD)やスパッタリング、原子層堆積(ALD)が好ましく用いられる。形成される保護膜は、無機膜であってもよいし、有機膜であってもよいし、無機膜と有機膜とが交互に積層されたハイブリット膜であってもよい。無機膜の形成にはプラズマ化学気相成長法(PECVD)やスパッタリング、原子層堆積(ALD)が好ましく用いられ、有機膜の形成にはインクジェット法が好ましく用いられる。なお、プラズマ化学気相成長法(PECVD)及び原子層堆積(ALD)は、典型的には1×10
1Pa〜1×10
2Pa程度の圧力下で行われる。また、インクジェット法による成膜は、典型的には大気圧下(10
5Pa程度)で行われる。
【0034】
パターニング工程は、基板10上に形成された膜の少なくとも一部をパターニングする工程である。パターニングの方法は特に限定はされず、典型的にはフォトリソグラフィを用いることができる。切断工程は、典型的には、基板10を所望のサイズに切断するダイシング工程である。これらの工程は、典型的には大気圧下(10
5Pa程度)で行われる。
【0035】
(本実施例の優れた点)
本実施例に係る成膜装置1aは、上述したように、スパッタ室30の搬入口32は、文字通り搬送室12からスパッタ室30への基板10の搬入にのみ用いられる連通口となっており、スパッタ室30で成膜処理を終えた基板10は搬送室12に戻ることがない。すなわち、スパッタ室30において成膜装置1aにおける最後の成膜処理を終えた基板10は、搬送室12を経由せず、直接、後処理室40へ搬出される搬送(搬出)経路により、成膜装置1aから搬出される構成となっている。かかる構成により、従来のクラスタ式成膜装置と比較して、成膜工程における工程数の削減を図ることができ、成膜装置の成膜処理における生産性(製造タクトや歩留まりなど)の向上を図ることができる。
【0036】
この本実施例の優れた点について、比較例を用いて、以下説明する。なお、比較例の成膜装置1cにおいて、実施例1の成膜装置1aと同様の構成については、同じ符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0037】
<比較例>
図7は、本発明の実施例の比較例に係る成膜装置1cの構成を示す模式的平面図である。
図7に示すように、比較例に係る成膜装置1cは、最後の成膜処理を行うスパッタ室30が、搬入出口35を介して、搬送室12とのみ接続されており、本実施例のスパッタ室30のように後処理室40と直接接続されていない。後処理室40は、受渡室14を介して搬送室12と接続している。すなわち、比較例に係る成膜装置1cでは、スパッタ室30において最後の成膜処理を終えた基板10は、スパッタ室30から搬送室12、受渡室14を経由して後処理室40へ搬出されることになる。受渡室14は、他の室と同様、不図示の排気装置が設けられ、室内圧力を調整可能に構成されており、搬送室12の室内圧力を蒸着室20a、20bの室内圧力と同程度に維持すべく、搬送室12と後処理室40との間のバッファ室として設けられている。このような構成により、比較例の成膜装置1
cは、実施例1の成膜装置1aと比較して、成膜処理における工程数が増加してしまう。なお、上記先行文献に記載の装置構成も、本比較例と同様に構成されている。
【0038】
図8を参照して、比較例の成膜装置1cにおける成膜処理(基板搬送)の流れについて説明する。
図8は、本発明の実施例の比較例における成膜処理のフローチャートである。なお、比較例のフローチャートにおいて、S301〜S305までは、実施例1のフローチャートにおけるS101〜S105までと同様である。すなわち、最後の成膜処理をスパッタ室30で終えるまでの工程において、比較例と実施例1との間に差はない。両者の間には、スパッタ室30において成膜処理を終えてから、後処理室40へ基板10を搬出するまでの工程において差がある。
【0039】
比較例の成膜装置1cでは、スパッタ室30で成膜処理を終えた後、基板10を搬送室12へ搬出するために、スパッタ室30の室内圧力を搬送室12の室内圧力に合せる調圧(減圧)が必要になる(S306)。そして、基板10を、スパッタ室30から、搬送室12を経由して、受渡室14へ搬入した後(S307)、今度は、受渡室14の室内圧力を後処理室40の室内圧力に合せる調圧(増圧)が必要となる(S308)。
【0040】
これに対し、実施例1の成膜装置1aでは、スパッタ室30で最後の成膜処理を終えた後の調圧工程は、スパッタ室30の室内圧力を後処理室40の室内圧力に合せる調圧工程(S106)のみで済む。すなわち、実施例1の成膜装置1aによれば、比較例の成膜装置1cと比べて、工程数の削減を図ることができ、製造タクトや歩留まりなどの向上を図ることができる。搬送室12の室内圧力は特に低い(本実施例では約1×10
−5Pa程度)ため、搬送室12の室内圧力に合わせて減圧する際には多大な時間を要する。比較例においてはこの減圧を2回行う必要があるが、実施例1においてはこの減圧を1回行うだけで良いので、製造タクトを大幅に短縮することができる。
【0041】
また、実施例1によれば、例えば、スパッタ室30を先行文献のスパッタ室のようにインライン式に構成した場合において、先行文献のように成膜処理完了後に基板をそれまでの搬送経路を引き返させる必要がなく、製造タクトを大幅に短縮することができる。
【0042】
<実施例2>
図5、
図6を参照して、本発明の実施例2に係る成膜装置1bについて説明する。なお、実施例2において実施例1の構成と共通する構成は、同じ符号を付し、再度の説明を省略する。実施例2においてここで特に説明しない事項は、実施例1と同様である。
【0043】
図5は、本発明の実施例2に係る成膜装置1bの構成を示す模式的平面図である。
図5の成膜装置1bは、成膜装置1aの構成において、搬送室12とスパッタ室30との間に、バッファ室としての受渡室14を差し込んだ構成となっている。なお、受渡室14は、連結する室間の調圧だけでなく、基板10の搬送姿勢の変換するために用いることができる。すなわち、受渡室14内に基板10の搬送姿勢を変換可能な機構を設けることで、例えば、蒸着室20a、20bでは基板10を横置きで搬送し、スパッタ室30では縦置きで搬送する、といった搬送構成とすることができる。
【0044】
図6を参照して、実施例2の成膜装置1bにおける成膜処理(基板搬送)の流れについて説明する。
図6は、実施例2における成膜処理のフローチャートである。なお、実施例2のフローチャートにおいて、S201〜S202までは、実施例1のフローチャートにおけるS101〜S102までと同様である。
【0045】
第2有機室20bにおいて蒸着による成膜処理を終えた基板10を、第2有機室20bから搬送室12を経由して、搬送室12(有機室20a、20b)の室内圧力と同等の室
内圧力に調圧された受渡室14へ搬入する(S203)。そして、受渡室14の室内圧力をスパッタ室30の室内圧力と同等の圧力に調圧(増圧)する(S204)。受渡室14からスパッタ室30へ搬入口32を介して基板10を搬送し、スパッタ室30において基板10にスパッタリング処理を行う(S205)。スパッタ室30でのスパッタリングによる基板10の成膜処理を終えると、スパッタ室30の室内圧力を後処理室40の室内圧力に合せるべく、排気装置35により調圧する(S206)。調圧が完了すると搬出口34のゲートバルブが開けられ、搬出口34を介してスパッタ室30から後処理室40へ基板10が搬出される(S207)。以上の構成により、電子デバイスの製造装置100の成膜装置1bにおける成膜処理が完了する。
【0046】
実施例2によれば、実施例1と同様、比較例と比較して、工程数の削減を図ることができ、製造タクトや歩留まりなどの向上を図ることができる。
【0047】
さらに、実施例2によれば、実施例1と比較して、スパッタ室30の調圧回数を減らすことができる(実施例1ではS104とS106の2回に対し、実施例2ではS206の1回)。これにより、スパッタ室30における成膜処理を行っている間に、別の基板を受渡室14に搬入して受渡室14の調圧を行うなどして、製造タクトをさらに向上させることができる。
【0048】
以上の説明では、第1真空成膜室における成膜処理として蒸着を行い、第2真空成膜における成膜処理としてスパッタリングを行う例について説明したが、これに限定はされない。第1真空成膜室の成膜処理時における室内圧力が第2真空成膜室の成膜処理時における室内圧力よりも低い場合に、本発明の効果が顕著となる。したがって、例えば、第1真空成膜室における成膜処理としてスパッタリングを行い、第2真空成膜における成膜処理として化学気相成長法(CVD)を行う構成であっても良い。
【符号の説明】
【0049】
1a…成膜装置、10…基板、12…搬送室、20a、20b…蒸着室、22a、22b…搬出入口、30…スパッタ室、32…搬入口、34…搬出口
【要約】
【課題】成膜装置の成膜処理における生産性の向上を図ることができる技術を提供する。
【解決手段】真空に維持される基板搬送室12と、基板10を搬入及び搬出するための搬入出口22a、22bを有する第1真空成膜室20a、20bと、基板10を搬入するための搬入口32と、基板10を搬出するための搬出口34と、を別々に有する第2真空成膜室30と、を備え、第1真空成膜室20a、20bは、搬入出口22a、22bを介して基板搬送室12との間で基板10が搬入及び搬出され、第2真空成膜室30は、搬入口32を介して基板搬送室12から基板10が搬入され、搬入口10を介して基板搬送室12へ基板10が搬出されないことを特徴とする。
【選択図】
図1