(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
イムノクロマトグラフィー用の試験片と、イムノクロマトグラフィー用の標識試薬粒子とを有するイムノクロマトグラフィー用キットを用いて、抗原抗体反応により抗原を検出する、免疫アッセイによる唾液に含まれる微生物の検出方法であって、
検体として唾液を含む液と、アミラーゼの濃度が1mg/mL以上10mg/mL以下の検体前処理液とを混合した混合液を、前記イムノクロマトグラフィー用の試験片に滴下して混合液に含まれる微生物の破砕物である抗原を抗原抗体反応により検出し、微生物の検出を行う、免疫アッセイによる微生物の検出方法。
イムノクロマトグラフィー用の試験片と、イムノクロマトグラフィー用の標識試薬粒子とを有するイムノクロマトグラフィー用キットを用いて、抗原抗体反応により抗原を検出する、免疫アッセイによる唾液に含まれる微生物の検出方法であって、
アミラーゼを含む検体前処理液を含浸し、アミラーゼの含有量を、前記試験片に滴下する検体として唾液を含む液0.07mL当たり0.02mg以上0.2mg以下とした部材を前記イムノクロマトグラフィー用の前記試験片に設け、
検体として唾液を含む液を前記試験片に滴下し、前記部材に移動した検体として唾液を含む液と前記アミラーゼとを前記部材中で混合し、混合液に含まれる微生物の破砕物である抗原を抗原抗体反応により検出し、微生物の検出を行う、免疫アッセイによる微生物の検出方法。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本明細書において「物質」とは、化合物又は化学合成された分子の他、生体分子(タンパク質、ペプチド、核酸等)を包含する。これらは人工起源のものであっても、天然起源のものであってもよい。
また、本明細書において「結合」又は「連結」とは、複数のものが分離した状態から連続して一体となることを全般的に指し、共有結合やイオン結合、水素結合といった化学的な結合のほか、化学吸着や物理吸着、そのほか嵌合、螺合、咬合した物理的な連結状態等も含む意味である。ここで、「結合」又は「連結」とは、直接複数のものが結合しても、別のものを介して間接的に結合してもよい意味である。
さらに、本明細書において「検出」とは、定性的な検出や定量的な検出のみならず、その他の各種の測定や同定、分析、評価等を含む概念である。
【0016】
本発明は免疫アッセイによる微生物の検出方法であり、検体を含む液と酵素を混合し、混合液に含まれる抗原を抗原抗体反応に付して検出し、微生物の検出を行う。本発明の微生物の検出方法において、イムノクロマトグラフィー用の試験片と、イムノクロマトグラフィー用の標識試薬粒子とを有するイムノクロマトグラフィー用キットを用いて、抗原抗体反応により抗原を検出することが好ましい。本発明の好ましい実施態様(以下、「第1の実施態様」ともいう)としては、検体を含む液と酵素を含む検体前処理液(以下、単に「前処理液」ともいう)とを混合して、前記検体を含む液と前記酵素とを混合する方法が挙げられる。本発明の別の好ましい実施態様(以下、「第2の実施態様」ともいう)としては、前処理液を含浸して得られた部材を前記イムノクロマトグラフィー用の試験片に設け、検体を含む液を前記試験片に滴下し前記部材に移動した検体を含む液と前記酵素とを前記部材中で混合する方法が挙げられる。
以下、本発明の構成についてこれらの好ましい実施形態を中心に詳述する。
【0017】
[検体]
本発明において、検体としては特に制限はない。具体例としては、臨床検体(例えば、血液、血漿、血清、リンパ液、尿、唾液、膵液、胃液、体液、喀痰、鼻や咽等の粘膜から採取したぬぐい液等の体液や便等)、食品検体(例えば、液体飲料、半固形食品、固形食品等)、環境サンプリング検体(例えば、土壌、河川、海水等の自然界のサンプル、微生物の培養液、浴槽の水などの生活環境に存在するサンプル、工場内の生産ラインやクリーンルームに設置されたエアーサンプラー、配管内から採取したサンプリング検体、ふき取り検体等)等が挙げられる。
また、試料は液体であればそのまま用いることもできる。試料が半固形又は固形物等の場合には、希釈、抽出、機械的粉砕等の処理を施した後に用いることもできる。
【0018】
[前処理液]
本発明で用いることができる前処理液は、少なくとも酵素を含有する。ここで、本明細書における「酵素」とは、触媒として機能するタンパク質などの分子であり、生物由来のタンパク質や、人工的に合成されたポリペプチド、ポリヌクレオチドなどを意味する。
前述のように、界面活性剤を含む前処理液で微生物を含む検体を処理し、免疫アッセイを行うと、抗原抗体反応が阻害され、微生物の検出感度が低下する場合がある。これに対し、検体を含む液と酵素とを混合して検体を処理することで、検体を免疫アッセイに付した際に、抗原抗体反応を阻害することなく、微生物の検出感度を向上させることができる。
【0019】
本発明で用いる酵素は、免疫アッセイに付す検体に含まれる微生物を十分に破砕するとともに、抗原抗体反応を阻害するものであれば、特に制限はない。本発明で用いる酵素の具体例としては、アミラーゼ、サッカラーゼ、マルターゼ、ラクターゼなどの炭水化物分解酵素;ペプシン、トリプシン、キモトリプシン、エラスターゼ、カルボキシペプチダーゼ、アミノペプチダーゼなどのタンパク質分解酵素;リパーゼ、ホスホリパーゼなどの脂肪分解酵素;デヒドロゲナーゼ、レダクターゼ、オキシダーゼ、オキシゲナーゼ、ペルオキシダーゼ、トランスヒドロゲナーゼ、カタラーゼなどの酸化還元酵素が挙げられる。これらのうち、炭水化物分解酵素が好ましく、アミラーゼがより好ましい。
【0020】
本発明で用いることができる前処理液中の酵素の濃度に特に制限はなく、適宜設定することができる。
例えば、本発明の第1の実施態様における前処理液中の酵素の濃度は、0.01mg/mL以上が好ましく、0.1mg/mL以上がより好ましい。上限については特に制限はないが、抗原抗体反応を阻害せず、沈降物を生じないという観点から、100mg/mL以下が好ましい。
【0021】
本発明で用いることができる前処理液は、キレート剤をさらに含有することが好ましい。検体を含む液に生体由来のナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオンなどの無機イオンが過剰に含まれる場合、これらの無機イオンが後述する標識試薬粒子やイムノクロマトグラフィー用試験片のメンブレンに吸着し、抗原抗体反応の効率を低下させて、微生物の検出感度が低下する。さらには、検体を含む液にこれらの無機イオンが過剰に含まれると、標識試薬粒子の非特異的な吸着を生じさせ、偽陽性の原因になる。これに対して、前記前処理液がキレート剤をさらに含有することで、過剰な無機イオンをキレート剤と結合させて無機イオンがメンブレンや標識粒子へ吸着することを防止し、微生物の検出感度を向上させるとともに、偽陽性を防止できる。
【0022】
本発明で好ましく用いることができるキレート剤としては、含窒素炭化水素化合物、含酸素炭化水素化合物、含硫黄炭化水素化合物、クラウンエーテル、アプタマーなどが挙げられる。このうち、含窒素炭化水素化合物が好ましい。
前記含窒素炭化水素化合物としては、分子内にアミノ基(NR
N2)(R
Nは水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数2〜12のアルケニル基、又は炭素数6〜14のアリール基を表す。)又はイミノ基(NR
N)を有する化合物が好ましい。含窒素炭化水素化合物は、分子内にエーテル基を有していてもよい。R
Nで表されるアルキル基、アルケニル基及びアリール基はさらに置換基を有していてもよく、当該置換基の例としてはヒドロキシ基及びカルボキシル基が挙げられる。
前記含窒素炭化水素化合物は、アミノ基又はイミノ基と、カルボキシル基とを有するアミノカルボン酸化合物がより好ましく、>N−(CH
2)
n−COOH(nは1〜4の整数を表す)の構造又は−N−((CH
2)
n−COOH)
2の構造を分子内に有するアミノカルボン酸化合物がさらに好ましい。このようなアミノカルボン酸化合物の具体例としては、エチレンジアミン四酢酸(以下、「EDTA」ともいう)、グリコールエーテルジアミン四酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、エチレンジアミン-N,N'-ジコハク酸、3-ヒドロキシ-2,2'-イミノジコハク酸4ナトリウムなどが挙げられる。これらのうち、本発明で用いることができるキレート剤は、EDTAが特に好ましい。
【0023】
本発明の前処理液中のキレート剤の濃度に特に制限はなく、適宜設定することができる。
例えば、本発明の第1の実施態様における前処理液中のキレート剤の濃度は、1mM以上が好ましく、2mM以上がより好ましい。上限については特に制限はないが、抗原抗体反応を阻害せず、不溶物を生じないという観点から、100mM以下が好ましい。
【0024】
前記前処理液は、界面活性剤を含んでいてもよい。ただし前述のように、界面活性剤の濃度が高すぎると、検体を免疫アッセイに付した際に抗原抗体反応が阻害され、微生物の検出感度が低下する。したがって前記前処理液が界面活性剤を含む場合、本発明の効果を損なわない範囲で界面活性剤を含有させる必要がある。また前述のように、本発明では検体を含む液と酵素を混合する。そのため本発明の前処理液は、抗原抗体反応を阻害する、この種の前処理液に通常含まれる界面活性剤の量が少なくて済む。
本発明に用いることができる界面活性剤は、本発明の効果を損なわない範囲で、適宜選択することができる。例えば、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウラート、ポリエチレングリコール、p-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)-フェニルエーテル、脂肪酸ソルビタンエステル、アルキルポリグルコシド、脂肪酸ジエタノールアミド、アルキルモノグリセリルエーテルなどの非イオン性界面活性剤;アルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルベンジルジメチルアンモニウム塩などの陽イオン性界面活性剤;脂肪酸ナトリウム、モノアルキル硫酸塩、アルキルポリオキシエチレン硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、モノアルキルリン酸塩などの陰イオン性界面活性剤;アルキルジメチルアミンオキシド、アルキルカルボキシベタインなどの両性界面活性剤、特開2011−252819号公報に記載のホスホリルコリン基を含むコポリマーが挙げられる。
前記前処理液中の界面活性剤の濃度に特に制限はなく、本発明の効果を損なわない範囲で適宜設定することができる。
【0025】
前記前処理液は、前記以外の成分を含有していてもよい。このような成分としては、pHの緩衝のためのリン酸、クエン酸、ほう酸、酢酸、トリスヒドロキシメチルアミノメタン、HEPES(4-(2-hydroxyethyl)-1-piperazineethanesulfonic acid))などのpH緩衝剤や、抗原抗体反応が適正に起こる範囲内の塩化ナトリウム、塩化カリウムなどの塩、また粒子とメンブレン間の非特異吸着の抑制剤としてのウシ血清アルブミン(以下、「BSA」ともいう)、カゼインなどのタンパク質、ポリエチレングリコール、ポリアクリル酸、アミノ酸などの物質が挙げられる。
【0026】
本発明で用いることができる前処理液のpHに特に制限はないが、3以上が好ましく、5以上がより好ましく、11以下が好ましく、9以下がより好ましい。
【0027】
本発明において、酵素としてアミラーゼを含み、さらにEDTAを含む前処理液で処理することで検出感度が向上する微生物の菌種としては、ストレプトコッカス・ミュータンス、ストレプトコッカス・サリバリウス(
Streptococcus salivarius)、ストレプトコッカス・ミチス(
Streptococcus mitis)、ストレプトコッカス・サングイニス(
Streptococcus sanguinis)、ストレプトコッカス・ミティオア(
Streptococcus mitior)、ポルフィロモナス・ジンジバリス(
Porphyromonas gingivalis)、バクテリオネマ・マツルショッティイ(
Bacterionema matruchotii)、プロピオニバクテリウム・アクネス(
Propionbacterium acnes)などの口腔内細菌などが挙げられる。
【0028】
本発明の微生物の検出方法は、各種免疫アッセイに適用することができる。
例えば、一般的な免疫学的検査法である、イムノクロマトグラフィー、ELISA法、EIA(エンザイムイムノアッセイ)、FIA(蛍光イムノアッセイ)、RIA(ラジオイムノアッセイ)等に適用することができる。あるいは、抗体又は抗原が結合した粒子と検体を混合し、検体に含まれる抗原又は抗体との抗原抗体反応によって粒子を凝集させる免疫凝集法、抗体又は抗原が結合した粒子と検体を混合し、検体に含まれる抗原又は抗体との抗原抗体反応によって生じる抗原−抗体複合物の沈降物を形成させ、その凝集塊に光を照射して、散乱による照射光の減衰を分光光度計で計測して検体に含まれる抗原量を測定する免疫比濁法、抗体又は抗原が結合した粒子と検体を混合し、検体に含まれる抗原又は抗体との抗原抗体反応によって生じる抗原−抗体複合物を形成させ、その複合物の分散液に光をあて散乱した光を測定することで、検体に含まれる抗原又は抗体を定量する免疫比ろう法、抗体または抗原を結合した粒子及び酵素標識抗体を測定物質と反応させ、粒子-測定物質-酵素標識抗体の複合体を形成し、未反応物を除去後、発光試薬を添加し、その発光量を測定して検出対象物を定量する化学発光酵素免疫測定法などに適用することができる。その他にも、フローサイトメトリーにおける標識粒子や、バイオチップ等にも適用することができる。
【0029】
以下、本発明の微生物の検出方法の好ましい実施態様として、イムノクロマトグラフィーによる微生物の検出方法について説明する。しかし、本発明はこれに制限するものではない。
【0030】
[イムノクロマトグラフィー用試験キット]
本発明において、前記前処理液と、イムノクロマトグラフィー用試験片(以下、「試験片」、又は「テストストリップ」ともいう)と、イムノクロマトグラフィー用の標識試薬粒子(以下単に、「標識試薬粒子」ともいう)とを有するイムノクロマトグラフィー用試験キット(以下、単に「試験キット」ともいう)を用いて、抗原抗体反応により検出対象物質を検出することが好ましい。
以下、本発明で好ましく用いることができる試験キットについて説明する。
【0031】
[本発明の第1の実施態様で好ましく用いることができるイムノクロマトグラフィー用の試験片]
本発明の第1の実施態様で好ましく用いることができる試験キットに含まれる試験片の形状に特に制限はないが、平面状の試験片であることが好ましく、ラテラルフロー用の試験片であることがより好ましい。
また、試験片の構造に特に制限はないが、試料添加用部材(サンプルパッド)と、検出対象物質(以下、「抗原」ともいう)を捕捉する試験領域を有するメンブレンと、吸収パッドとが、この順でそれぞれ相互に毛細管現象が生じるように直列に連結している構造であることが好ましい。そして、各構成部材は粘着剤付きバッキングシートにより裏打ちされていることが好ましい。
以下、上記形状及び構造を有する試験片について、
図1及び2を参照しながら説明する。しかし、本発明はこれに制限するものではない。
【0032】
(サンプルパッド)
サンプルパッド2は、前記検体や標識試薬粒子を滴下する構成部材である。サンプルパッド2の材料や寸法等は特に限定されず、この種の製品に適用される一般的なものを利用することができる。
【0033】
(メンブレン)
メンブレン3は、サンプルパッド2から毛細管現象により移動してきた抗原を捕捉するための構成部材である。
図1に示すように、メンブレン3には、少なくとも1つの試験領域10が設けられている。そして、抗原に対する特異的な結合性を有し抗原と複合体を形成しうる捕捉物質(以下、「第1の抗体」ともいう)が、試験領域10に導入されている。これにより、検出対象物質と結合した標識試薬粒子が試験領域10へ捕捉される。
この試験領域10で第1の抗体−抗原−標識試薬粒子からなる複合体が形成され、標識試薬粒子が濃縮される。そして、標識試薬粒子が有する標識量の程度により生体分子を定性的又は定量的に検出することができる。
【0034】
図2に示すように、メンブレン3には、抗原と結合した標識試薬粒子を捕捉するための試験領域20を設け、試験領域20の下流に、試験領域20に結合しなかった標識試薬粒子を捕捉する参照領域21をさらに設けてもよい。このような参照領域21を設けることにより、サンプルパッド2に滴下した試料が毛細管現象によりメンブレン3に移動し、さらに試験領域20を超えて移動しているかを確認することができる。参照領域21は設けなくてもよい。
【0035】
前記試験領域及び参照領域の形状としては、局所的に捕捉物質が固定化されている限り特に制限はなく、ライン状、円状、帯状等が挙げられる。本発明において試験領域及び参照領域はそれぞれライン状であることが好ましく、幅0.5〜1.5mmのライン状であることがより好ましい。
【0036】
前記第1の抗体は、抗原抗体反応により抗原を捕捉し、前記試験領域で第1の抗体−抗原−標識試薬粒子からなる複合体を形成しうるものであれば特に制限はない。
前記参照領域に用いる、標識試薬粒子を捕捉する捕捉物質としては、標識試薬粒子に対して結合性を有するものから適宜選択することができる。具体的には、抗体、抗原、核酸、受容体、リガンド、糖鎖、アプタマーなどから適宜選択することができる。
【0037】
前記試験領域における第1の抗体の導入量に特に制限なく、適宜設定することができる。例えば、試験領域の形状がライン状の場合、単位長さ(cm)当たりの第1の抗体の固定化量は0.001μg以上が好ましく、0.01μg以上がより好ましく、10μg以下が好ましく、2μg以下がより好ましい。
第1の抗体の固定化方法としては、第1の抗体の溶液をメンブレン3の所定の領域に塗布、滴下又は噴霧後、乾燥して物理吸着により固定化する方法等が挙げられる。また、非特異的吸着による測定への影響を防止するため、捕捉物質の固定化後にメンブレン3全体をいわゆるブロッキング処理を施してもよい。
【0038】
(吸収パッド)
吸収パッド4は、毛細管現象でメンブレン3を移動してきた溶液を吸収し、一定の流れを生じさせるための構成部材である。
【0039】
これら各構成部材の材料としては特に制限は無く、この種の試験片に通常用いられる部材が使用できる。例えば、サンプルパッド2としてはGlass Fiber Conjugate Pad(商品名、MILLIPORE社製)等のガラスファイバーのパッドを好ましく用いることができる。メンブレン3としてはHi-Flow Plus180メンブレン(商品名、MILLIPORE社製)等のニトロセルロースメンブレンを好ましく用いることができる。吸収パッド4としてはCellulose Fiber Sample Pad(商品名、MILLIPORE社製)等のセルロースメンブレンを好ましく用いることができる。
前記粘着剤付きバッキングシート6としては、AR9020(商品名、Adhesives Research社製)等が挙げられる。
【0040】
試験片の作製法としては、サンプルパッド2、メンブレン3、吸収パッド4の並び順に、各部材間で毛管現象を生じさせ易くするために、それら各部材の両端と隣接する部材と1〜5mm程度重ね合わせて(好ましくはバッキングシート6上に)貼付することで、テストストリップ1を作製することができる。
【0041】
[本発明の第2の実施態様で好ましく用いることができるイムノクロマトグラフィー用の試験片]
本発明の第2の実施態様で好ましく用いることができる試験キットに含まれる試験片の形状に特に制限はないが、平面状の試験片であることが好ましく、ラテラルフロー用の試験片であることがより好ましい。
また、試験片の構造に特に制限はないが、サンプルパッドと、前処理液を含浸して得られた部材(以下、「コンジュゲートパッド」ともいう)と、抗原を捕捉する試験領域を有するメンブレンと、吸収パッドとが、この順でそれぞれ相互に毛細管現象が生じるように直列に連結している構造であることが好ましい。そして、各構成部材は粘着剤付きバッキングシートにより裏打ちされていることが好ましい。
以下、上記形状及び構造を有する試験片について、
図3を参照しながら説明する。しかし、本発明はこれに制限するものではない。
【0042】
(サンプルパッド)
サンプルパッド2は、前記検体や標識試薬粒子を滴下する構成部材である。サンプルパッド2の材料や寸法等は特に限定されず、この種の製品に適用される一般的なものを利用することができる。
【0043】
(コンジュゲートパッド)
コンジュゲートパッド5は、前処理液を含浸して得られた構成部材である。そして、サンプルパッド2から毛細管現象により移動した検体を含む液と前処理液に含まれる酵素とを混合する部分である。
【0044】
コンジュゲートパッド5に含ませる前記酵素の量に特に制限はなく、適宜設定することができる。例えば、コンジュゲートパッド5中の酵素の含有量は、前記試験片に滴下する検体を含む液0.1mL当たり0.001mg以上が好ましく、0.01mg以上がより好ましい。上限については特に制限はないが、抗原抗体反応を阻害しないという観点から、前記試験片に滴下する検体を含む液0.1mL当たり100mg以下が好ましい。
また、コンジュゲートパッド5に含ませる前記キレート剤の量に特に制限はなく、適宜設定することができる。例えば、コンジュゲートパッド5中のキレート剤の含有量は、前記試験片に滴下する検体を含む液0.1mL当たり0.1μmol以上が好ましく、0.2μmol以上がより好ましい。上限については特に制限はないが、抗原抗体反応を阻害せず、不溶物を生じないという観点から、前記試験片に滴下する検体を含む液0.1mL当たり10μmol以下が好ましい。
【0045】
(メンブレン)
図3に示すように、メンブレン3には、少なくとも1つの試験領域20が設けられている。そして、抗原に対する特異的な結合性を有し抗原と複合体を形成しうる捕捉物質(以下、「第1の抗体」ともいう)が、試験領域20に導入されている。これにより、検出対象物質と結合した標識試薬粒子が試験領域20へ捕捉される。
この試験領域20で第1の抗体−抗原−標識試薬粒子からなる複合体が形成され、標識試薬粒子が濃縮される。そして、標識試薬粒子が有する標識量の程度により生体分子を定性的又は定量的に検出することができる。
さらに
図3に示すように、メンブレン3には、試験領域20の下流に、試験領域20に結合しなかった標識試薬粒子を捕捉する参照領域21をさらに設けてもよい。このような参照領域21を設けることにより、サンプルパッド2に滴下した試料が毛細管現象によりメンブレン3に移動し、さらに試験領域20を超えて移動しているかを確認することができる。参照領域21は設けなくてもよい。
【0046】
前記試験領域及び参照領域の形状としては、局所的に捕捉物質が固定化されている限り特に制限はなく、ライン状、円状、帯状等が挙げられる。本発明において試験領域及び参照領域はそれぞれライン状であることが好ましく、幅0.5〜1.5mmのライン状であることがより好ましい。
【0047】
前記第1の抗体は、抗原抗体反応により抗原を捕捉し、前記試験領域で第1の抗体−抗原−標識試薬粒子からなる複合体を形成しうるものであれば特に制限はない。
前記参照領域に用いる、標識試薬粒子を捕捉する捕捉物質としては、標識試薬粒子に対して結合性を有するものから適宜選択することができる。具体的には、抗体、抗原、核酸、受容体、リガンド、糖鎖、アプタマーなどから適宜選択することができる。
【0048】
前記試験領域における第1の抗体の導入量に特に制限なく、適宜設定することができる。例えば、試験領域の形状がライン状の場合、単位長さ(cm)当たりの第1の抗体の固定化量は0.001μg以上が好ましく、0.01μg以上がより好ましく、10μg以下が好ましく、2μg以下がより好ましい。
第1の抗体の固定化方法としては、第1の抗体の溶液をメンブレン3の所定の領域に塗布、滴下又は噴霧後、乾燥して物理吸着により固定化する方法等が挙げられる。また、非特異的吸着による測定への影響を防止するため、捕捉物質の固定化後にメンブレン3全体をいわゆるブロッキング処理を施してもよい。
【0049】
(吸収パッド)
吸収パッド4は、毛細管現象でメンブレン3を移動してきた溶液を吸収し、一定の流れを生じさせるための構成部材である。
【0050】
これら各構成部材の材料としては特に制限は無く、この種の試験片に通常用いられる部材が使用できる。例えば、サンプルパッド2及びコンジュゲートパッド5としてはGlass Fiber Conjugate Pad(商品名、MILLIPORE社製)等のガラスファイバーのパッドを好ましく用いることができる。メンブレン3としてはHi-Flow Plus180メンブレン(商品名、MILLIPORE社製)等のニトロセルロースメンブレンを好ましく用いることができる。吸収パッド4としてはCellulose Fiber Sample Pad(商品名、MILLIPORE社製)等のセルロースメンブレンを好ましく用いることができる。
前記粘着剤付きバッキングシート6としては、AR9020(商品名、Adhesives Research社製)等が挙げられる。
【0051】
試験片の作製法としては、サンプルパッド2、コンジュゲートパッド5、メンブレン3、吸収パッド4の並び順に、各部材間で毛管現象を生じさせ易くするために、それら各部材の両端と隣接する部材と1〜5mm程度重ね合わせて(好ましくはバッキングシート6上に)貼付することで、テストストリップ1を作製することができる。
【0052】
[標識試薬粒子]
本発明で好ましく用いることができる標識試薬粒子としては、この種の試験キットに通常適用されるものを適宜使用することができる。例えば、蛍光シリカナノ粒子からなる標識試薬粒子、吸光シリカナノ粒子からなる標識試薬粒子、蛍光ラテックスナノ粒子からなる標識試薬粒子、吸光ラテックスナノ粒子からなる標識試薬粒子、半導体微粒子からなる標識試薬粒子、金コロイド粒子からなる標識試薬粒子、放射性物質で標識した粒子が挙げられる。
本発明で好ましく用いることができる標識試薬粒子は、蛍光シリカナノ粒子からなる標識試薬粒子が好ましい。蛍光シリカナノ粒子を用いた場合、蛍光検出装置により蛍光強度を容易に数値化でき、高感度及び高精度で生体分子を検出することができる。さらに、蛍光シリカナノ粒子の表面に様々な官能基を導入することができ、試験領域の発光が高輝度である。そのため、蛍光シリカナノ粒子を用いた場合、広い定量レンジで生体分子の検出を実現することができる。
以下、蛍光シリカナノ粒子からなる標識試薬粒子について説明する。しかし、本発明はこれに限定するものではない。
【0053】
蛍光シリカナノ粒子の調製方法に特に制限はなく、任意のいかなる調製方法によって蛍光シリカナノ粒子を得ることができる。例えば、Journal of Colloid and Interface Science,159,p.150-157(1993)に記載のゾル−ゲル法や、国際公開第2007/074722号に記載されたコロイドシリカ粒子の調製方法を参照することができる。
【0054】
蛍光材料としての蛍光色素を用いた蛍光シリカナノ粒子の調製例について、具体的に説明する。
蛍光色素を含有するシリカ粒子は、蛍光色素とシランカップリング剤とを反応させ、共有結合、イオン結合その他の化学的に結合若しくは吸着させて得られた生成物に1種又は2種以上のシラン化合物を縮重合させシロキサン結合を形成させることにより調製することができる。これによりオルガノシロキサン成分とシロキサン成分とがシロキサン結合してなるシリカ粒子が得られる。1例としては、N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)エステル基、マレイミド基、イソシアナート基、イソチオシアナート基、アルデヒド基、パラニトロフェニル基、ジエトキシメチル基、エポキシ基、シアノ基等の活性基を有する又は付加した蛍光色素と、それら活性基と対応して反応する置換基(例えば、アミノ基、水酸基、チオール基)を有するシランカップリング剤とを反応させ、共有結合させて得られた生成物に1又は2種以上のシラン化合物を縮重合させシロキサン結合を形成させることにより調製することができる。
【0055】
前記シランカップリング剤としてアミノプロピルトリエトキシシラン(APS)、シラン化合物としてテトラエトキシシラン(TEOS)を用いた場合を下記に例示する。
【0057】
前記活性基を有する又は付加した前記蛍光色素の具体例として、5-(及び-6)-カルボキシテトラメチルローダミン-NHSエステル(商品名、emp Biotech GmbH社製)や、下記式でそれぞれ表されるDY550-NHSエステル又はDY630-NHSエステル(いずれも商品名、Dyomics GmbH社製)等のNHSエステル基を有する蛍光色素化合物を挙げることができる。
【0059】
前記置換基を有するシランカップリング剤の具体例として、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン(APS)、3-[2-(2-アミノエチルアミノ)エチルアミノ]プロピル−トリエトキシシラン、N-2(アミノエチル)3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノ基を有するシランカップリング剤を挙げることができる。中でも、APSが好ましい。
【0060】
縮重合させる前記シラン化合物としては特に制限はないが、TEOS、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン(MPS)、γ-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、APS、3-チオシアナトプロピルトリエトキシシラン、3-グリシジルオキシプロピルトリエトキシシラン、3-イソシアナトプロピルトリエトキシシラン、及び3-[2-(2-アミノエチルアミノ)エチルアミノ]プロピル−トリエトキシシランを挙げることができる。中でも、前記シリカ粒子内部のシロキサン成分を形成する観点からはTEOSが好ましく、前記シリカ粒子内部のオルガノシロキサン成分を形成する観点からはMPS又はAPSが好ましい。
【0061】
上述のように調製すると、球状、又は球状に近いシリカ粒子を調製することができる。ここで、「球状に近いシリカ粒子」とは、具体的には長軸と短軸の比が2以下の形状である。
【0062】
蛍光シリカナノ粒子の平均粒径に特に制限はないが、20nm以上が好ましく、30nm以上がより好ましく、60nm以上がさらに好ましく、1000nm未満が好ましく、600nm以下がより好ましく、500nm以下がさらに好ましく、300nm以下が特に好ましい。粒径が小さすぎると、検出感度が低下し、粒径が大きすぎると、試験片に用いられる多孔質支持体(メンブレン)の目詰まりの原因となる。
本発明において、前記平均粒径は、透過型電子顕微鏡(TEM)、走査型電子顕微鏡(SEM)等の画像から無作為に選択した100個の標識試薬シリカ粒子の合計の投影面積から蛍光シリカナノ粒子の占有面積を画像処理装置によって求め、この合計の占有面積を、選択した蛍光シリカナノ粒子の個数(100個)で割った値に相当する円の直径の平均値(平均円相当直径)を求めたものである。
なお、前記平均粒径は、一次粒子が凝集してなる二次粒子を含む概念の後述する「動的光散乱法による粒度」とは異なり、一次粒子のみからなる粒子の平均粒径である。
所望の平均粒径の蛍光シリカナノ粒子を得るためには、YM−10、YM−100(いずれも商品名、ミリポア社製)等の限外ろ過膜を用いて限外ろ過を行い、粒径が大きすぎたり小さすぎる粒子を除去するか、または適切な重力加速度で遠心分離を行い、上清又は沈殿のみを回収することで可能である。
蛍光シリカナノ粒子は粒状物質として単分散であることが好ましい。蛍光シリカナノ粒子の粒度分布の変動係数、いわゆるCV値に特に制限はないが、10%以下が好ましく、8%以下がより好ましい。
【0063】
本明細書において、前記「動的光散乱法による粒度」とは、動的光散乱法により測定され、前記の平均粒径とは異なり、一次粒子だけでなく、一次粒子が凝集してなる二次粒子をも含めた概念であり、前記複合粒子の分散安定性を評価する指標となる。
動的光散乱法による粒度の測定装置としては、ゼータサイザーナノ(商品名;マルバーン社製)が挙げられる。この手法は、微粒子などの光散乱体による光散乱強度の時間変動を測定し、その自己相関関数から光散乱体のブラウン運動速度を計算し、その結果から光散乱体の粒度分布を導出するというものである。
【0064】
蛍光シリカナノ粒子の表面には、抗原に対する結合性を有する捕捉物質(以下、「第2の抗体」ともいう)が導入されている。
蛍光シリカナノ粒子の表面に導入する第2の抗体は、抗原に対する特異的な結合性を有し、前記試験領域で第1の抗体−抗原−標識試薬粒子からなる複合体を形成しうるものであれば特に制限はない。
【0065】
蛍光シリカナノ粒子の表面に第2の抗体を導入する方法としては特に制限はなく、常法に従って導入することができる。例えば、静電的引力、ファンデルワールス力、疎水性相互作用等によって蛍光シリカナノ粒子の表面に第2の抗体を導入してもよい。あるいは、架橋剤や縮合剤の化学結合によって、蛍光シリカナノ粒子の表面に第2の抗体を導入してもよい。また、蛍光シリカナノ粒子の表面に導入する第2の抗体を導入したときに蛍光シリカナノ粒子同士が凝集する場合は、予め交互吸着法によって蛍光シリカナノ粒子の表面に表面処理を施しておいてもよい。
【0066】
以下、蛍光シリカナノ粒子を調製する方法について説明する。しかし、本発明はこれに制限するものではない。
【0067】
まず、反応性官能基を有するシランカップリング剤を加水分解し、加水分解されたシランカップリング剤と蛍光シリカナノ粒子の表面に存在するヒドロキシル基とを縮重合させ、反応性官能基を蛍光シリカナノ粒子の表面に導入する。
反応性官能基を有するシランカップリング剤の具体例としては、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、MPS、APS、3-チオシアナトプロピルトリエトキシシラン、3-グリシジルオキシプロピルトリエトキシシラン、3-イソチオシアナトプロピルトリエトキシシラン、3-[2-(2-アミノエチルアミノ)エチルアミノ]プロピルトリエトキシシラン、(-クロロプロピルトリメトキシシラン、ビニルメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィドが挙げられる。
【0068】
反応性官能基としてはチオール基、アミノ基、カルボキシル基、ハロゲン基、ビニル基、エポキシ基及びイソシアネート基から選ばれる少なくとも1種の反応性官能基が好ましく、チオール基がより好ましい。
反応性官能基がチオール基である場合は、蛍光シリカナノ粒子表面におけるチオール基の密度は0.002〜0.2個/nm
2が好ましく、0.002〜0.1個/nm
2がより好ましい。当該含色素シリカ粒子の表面に存在するチオール基の量Bは、DNTB(5,5'-ジチオビス(2-ニトロ安息香酸))を試薬として用いて測定することができる。DNTBを用いたチオール基の定量法としては、例えば、Archives of Biochemistry and Biophysics, 82, 70(1959)の方法で行うことができる。具体的な方法の一例としては、リン酸緩衝液(pH7.0)に溶解した10mMのDNTBの溶液20μLと、200mg/mLに調製したシリカ粒子コロイド2.5mLとを混合し、1時間後に412nmの吸光度を測定し、標準物質としてγ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン(MPS)を用いて作成した検量線から粒子表面に存在するチオール基量を定量することができる。
【0069】
蛍光シリカナノ粒子の表面に導入した反応性官能基と、これと化学結合を形成するリンカー分子とを反応させる。そして、リンカー分子とウシ血清アルブミンとを結合させ、蛍光シリカナノ粒子とBSAとの複合体を形成する。
反応性官能基がチオール基である場合は、チオール基が導入された蛍光シリカナノ粒子と、マレイミド基及びカルボキシル基を有するリンカー分子とを非プロトン性溶媒中に共存させる。これにより、チオール基とマレイミド基との間でチオエーテル結合を形成させて、リンカー分子が結合した粒子を作製する。続いて、リンカー分子が結合した粒子と、カルボジイミドと、アミノ基を有するBSAとを水系溶媒中に共存させる。これにより、カルボジイミドにより活性エステル化されたリンカー分子のカルボキシル基と、BSAが有するアミノ基との間でアミド結合を形成させ、蛍光シリカナノ粒子とBSAとの複合体を形成する。
反応性官能基がアミノ基、カルボキシル基、ビニル基、エポキシ基、イソシアネート基である場合も、常法によりBSAと蛍光シリカナノ粒子との複合体を形成することができる。これらの方法は、例えば、特開2009−274923号公報、特開2009−162537号公報、特開2010−100542号公報等の記載を参照することができる。
【0070】
そして、蛍光シリカナノ粒子に結合するBSAと、第2の抗体とを常法に従って結合させる。例えば、静電的引力、ファンデルワールス力、疎水性相互作用等によって、BSAと第2の抗体とを結合させることができる。あるいは、架橋剤や縮合剤の化学結合により、BSAと第2の抗体とを結合させることができる。なお、BSAと第2の抗体とが直接結合して複合体を形成してもよいし、他の物質を介して間接的にBSAと第2の抗体とが結合して複合体を形成していてもよい。
【0071】
蛍光シリカナノ粒子の表面における第2の抗体の導入量に特に制限なく、適宜設定することができる。例えば、蛍光シリカナノ粒子の表面1nm
2当たりの第2の抗体の導入量は、0.0001mol以上0.1mol以下が好ましく、0.001mol以上0.05mol以下が好ましい。
【0072】
[微生物の検出方法]
次に、上記構成の試験片と蛍光シリカナノ粒子からなる標識試薬を有する試験キットを用いた、イムノクロマトグラフィーによる微生物の検出方法について、好ましい実施態様に基づいて説明する。しかし、本発明はこれに制限するものではない。
【0073】
まず本発明の第1の実施態様では、前記前処理液と、唾液などの検体とを混合し、検体の処理を行う。処理条件に特に制限はなく、検体をイムノクロマトグラフィーに付すことができ、抗原抗体反応により、微生物が有する固有の構成成分を検出可能な状態まで菌体を破砕できればよい。例えば、前処理液と検体との混合液を通常の混合手段を用いて、転倒混和、振盪又は撹拌により混合すればよい。
前処理液を用いた検体の処理時間に特に制限はなく、1秒〜24時間の間で適宜選択することができる。また、処理を行う温度についても特に制限はなく、前処理液に含まれる酵素の至適温度等に応じて適宜選択することができる。
【0074】
つぎに、前処理液で処理した検体と、前記標識試薬粒子を、試験片1のサンプルパッド2に滴下する。サンプルパッド2に滴下する液体試料の量は、試験片1の構成に合わせて適宜調節することができる。
【0075】
そして、毛細管現象によりサンプルパッド2からメンブレン3に移動してきた抗原と標識試薬粒子との複合体が、試験片1の試験領域上に導入された第1の抗体との結合により濃縮される。そして、試験領域10に光を照射し、濃縮された標識試薬粒子の標識(蛍光シリカナノ粒子に含まれる色素の発光強度)を検出する。検出した標識の有無又は標識の程度により、微生物の検出を行うことができる。
【0076】
本発明の第2の実施態様では、前記前処理液を免疫アッセイに用いる部材に乾燥された状態で含ませておき、抗原抗体反応により抗原を検出する前に、前記部材中で検体を含む液と前記酵素とを混合させる。例えば、イムノクロマト法により微生物を検出する場合、前記前処理液をサンプルパッド2やメンブレン3に含ませておき、検体を含む液がこれらの部材を通過する際に、検体を含む液と前記酵素とを混合してもよい。あるいは、前記前処理液を含ませたコンジュゲートパッド5をメンブレン3よりも上流に設け、検体を含む液がこの部材を通過する際に、検体を含む液と前記酵素とを混合してもよい。これらの場合、検体が前記部材を通過した後に抗原抗体反応が行われる。
【0077】
蛍光シリカナノ粒子に含まれる色素の発光強度の検出方法に特に制限はなく、目視で検出してもよいし、汎用の蛍光検出器を用いて検出してもよい。
汎用の蛍光検出器は、励起光源及びフィルタからなる。前記励起光源としては水銀ランプ、ハロゲンランプ、キセノンランプ、レーザダイオード、発光ダイオードなどが挙げられる。前記フィルタは、励起光源から特定の波長の光のみを透過するフィルタであり、前記蛍光微粒子の蛍光波長、蛍光波長から適宜選択する。前記蛍光検出器は、蛍光を受光する光電子倍増管又はCCD検出器を備えていてもよい。これにより目視では確認できない強度ないしは波長の蛍光も検出でき、さらにはその蛍光強度を測定できる。
照射する励起光の波長は特に限定されないが、300nm以上が好ましく、400nm以上がより好ましく、500nm以上が特に好ましい。また、700nm以下が好ましく、600nm以下がより好ましく、550nm以下が特に好ましい。
蛍光の波長は350nm以上が好ましく、450nm以上がより好ましく、530nm以上が特に好ましい。また、800nm以下が好ましく、750nm以下がより好ましく、580nm以下が特に好ましい。
【実施例】
【0078】
以下、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明する。本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0079】
(調製例1)蛍光シリカナノ粒子からなる標識試薬粒子の調製
(1)蛍光シリカナノ粒子の調製
蛍光分子であるカルボキシローダミン6Gを含有する蛍光シリカナノ粒子を以下の方法で調製した。
5-(及び-6)-カルボキシローダミン6G・スクシンイミジルエステル(商品名、emp Biotech GmbH社製)3.1mgをジメチルホルムアミド(DMF)1mLに溶解した。ここにAPS(信越シリコーン社製)1.2μLを加え、室温(23℃)で1時間反応を行い、5-(及び-6)-カルボキシローダミン6G−APS複合体(5mM)を得た。
【0080】
得られた5-(及び-6)-カルボキシローダミン6G−APS複合体の溶液600μLと、エタノール140mL、TEOS(信越シリコーン社製)6.5mL、蒸留水20mL及び28質量%アンモニア水15mLを混合し、室温で24時間反応を行った。
反応終了後、反応液を18000×gの重力加速度で30分間遠心分離を行い、上清を除去した。沈殿した粒子に蒸留水4mLを加え粒子を分散させ、再度18000×gの重力加速度で30分間遠心分離を行った。本洗浄操作をさらに2回繰り返し、分散液に含まれる未反応のTEOSやアンモニア等を除去した。
その結果、平均粒径約270nmの蛍光分子を含有する蛍光シリカナノ粒子1.65gを得た(収率約94%)。
【0081】
(2)蛍光シリカナノ粒子へのチオール基の導入
上記で得た蛍光シリカナノ粒子20mgを水/エタノール=1/4の混合液1mLに分散させた。これにMPS(和光純薬社製)20μLを加えた。続いて28%アンモニア水50μLを加え、室温で4時間混合した。
【0082】
反応終了後反応液を18000×gの重力加速度で30分間遠心分離を行い、上清を除去した。沈殿した蛍光シリカナノ粒子に蒸留水1mLを加え蛍光シリカナノ粒子を分散させ、再度18000×gの重力加速度で30分間遠心分離を行った。本洗浄操作をさらに2回繰り返し、分散液に含まれる未反応のMPSやアンモニア等を除去した。その結果、チオール基が導入された蛍光シリカナノ粒子を得た。
【0083】
(3)チオール基を介した蛍光シリカナノ粒子と抗体との結合
以下の方法により、チオール基を介して、チオール基が導入された蛍光シリカナノ粒子とマウス由来抗ストレプトコッカス・ミュータンスポリクローナル抗体(以下、単に「抗ストレプトコッカス・ミュータンス抗体」ともいう)とを結合させた。
チオール基が導入された蛍光シリカナノ粒子の分散液(濃度25mg/mL、分散媒:蒸留水)40μLにDMF460μLを加え、15000×gの重力加速度で10分遠心分離した。上清を除去し、DMF500μLを加え遠心分離し、上清を除去した。再度DMF500μLを加え蛍光シリカナノ粒子を分散させた。これにリンカー分子としてN-(4-アミノフェニル)マレイミド1mgを加え30分混合した。このようにして、上記リンカー分子のマレイミド基と蛍光シリカナノ粒子のチオール基との間でチオエーテル結合を形成させた。
【0084】
この反応液を15000×gの重力加速度で10分遠心分離した。上清を除去後、蒸留水74.6μLを加え粒子を分散させた。続いて、0.5M MES(2-モルホリノエタンスルホン酸)(pH6.0)100μL、50mg/ml NHS(N-ヒドロキシスクシンイミド)230.4μL、19.2mg/ml EDC(1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド)75μLを加え混合した。これに抗ストレプトコッカス・ミュータンス抗体(1.0mg/mL)20.0μLを加え、室温で1時間混合した。なお、抗ストレプトコッカス・ミュータンス抗体は、ストレプトコッカス・ミュータンス(ATCC25175)の破砕物を免疫原として、常法に従い作製した。
15000×gの重力加速度で10分遠心分離し、上清を除去した。これに10mM KH
2PO
4(pH7.5)400μLを加え、粒子を分散させた。続いて15000×gの重力加速度で10分遠心分離し、上清を除去した。同様の操作をさらに2回洗浄を行った後、10mM KH
2PO
4(pH7.5)400μLを加え、粒子を分散させてコロイドを得た。
【0085】
得られたコロイドをサンプルとして、蛍光シリカナノ粒子に結合した抗ストレプトコッカス・ミュータンス抗体の定量を行った。抗ストレプトコッカス・ミュータンス抗体の定量には、PierceBCA Protein Assay Kit(商品名、Thermo Fisher Scientific社製)を用いた。
その結果、蛍光シリカナノ粒子1gあたりの抗ストレプトコッカス・ミュータンス抗体の結合量は、10.7mgであった。
【0086】
続いて、上記コロイドに10%BSAを10μL加え10分間混合した。そして混合液を15000×gの重力加速度で10分遠心分離し、上清を除去した。10mM KH
2PO
4(pH7.5)500μLを加え粒子を分散させた。分散液を15000×gの重力加速度で10分遠心分離し、上清を除去した。再度10mM KH
2PO
4(pH7.5)400μLを加え粒子を分散させた。このようにして、抗ストレプトコッカス・ミュータンス抗体が結合した蛍光シリカナノ粒子を分散させたコロイドを得た。
【0087】
(調製例2)イムノクロマトグラフィー用テストストリップの作製
イムノクロマトグラフィー用テストストリップを以下の方法で作製した。
イムノクロマトグラフィー用抗体固定化メンブレンを以下の方法で作製した。
メンブレン3(丈25mm、商品名:Hi-Flow Plus180 メンブレン、MILLIPORE社製)の端から約8mmの位置に、幅約1mmの試験領域(テストライン)20として、抗ストレプトコッカス・ミュータンス抗体を1mg/mL含有する溶液((50mM KH
2PO
4、pH7.0)+5%スクロース)を0.75μL/cmの塗布量で塗布した。
また、幅約1mmの参照領域(コントロールライン)21として、ヤギ由来抗マウスIgG抗体(ポリクローナル抗体、Meridian社製)を1mg/mL含有する溶液((50mM KH
2PO
4、pH7.0)+5%スクロース)を0.75μL/cmの塗布量で塗布した。
その後、50℃で30分乾燥させ、メンブレン3を作製した。なお、テストライン20とコントロールライン21との間隔は5mmとした。
【0088】
図2に示すように、前記メンブレン3、サンプルパッド(Glass Fiber Conjugate Pad(GFCP)、MILLIPORE社製)2、及び吸収パッド(Cellulose Fiber Sample Pad(CFSP)、MILLIPORE社製)4の順で、バッキングシート(商品名:AR9020、Adhesives Research社製)6上で組み立てた。なおメンブレン3は、テストライン20がサンプルパッド2側、コントロールライン21が吸収パッド4側に位置するように配置した。
続いて、5mm幅、長さ60mmのストリップ状に切断し、テストストリップ1を作製した。
【0089】
(試験例1)ストレプトコッカス・ミュータンスの検出
(1)前処理液の調製
表1に示す組成の前処理液1〜13(pH7)をそれぞれ調製した。なお前処理液1〜4は、アミラーゼを含まない前処理液である。一方前処理液5〜12は、0.01mg/mL〜10mg/mLの濃度でアミラーゼを含む前処理液である。
【0090】
【表1】
【0091】
(2)ストレプトコッカス・ミュータンスの検出
ストレプトコッカス・ミュータンスの菌体濃度が1×10
5CFU/mLである唾液検体(陽性唾液)50μLを13本用意し、表1の前処理液1〜13をそれぞれ20μLずつ加え、10秒間ボルテックスで混合した。続いて調製例1で調製した抗ストレプトコッカス・ミュータンス抗体が結合した蛍光シリカナノ粒子を分散させたコロイド(2.5mg/mL)を0.6μL加え、ボルテックスで5秒混合した。その後、混合液全量を調製例2で作製したテストストリップ1のサンプルパッド2に滴下した。20分後、下記検出装置を用いて、テストライン20の発光強度(X)の測定をした。
これとは別に、ストレプトコッカス・ミュータンスを含まない唾液検体(陰性唾液)についても同様の操作を行い、テストライン20の発光強度(Y)の測定をした。
そして、発光強度(X)と発光強度(Y)との発光強度差(X−Y)を算出した。
その結果を表2に示す。なお、すべての試験において参照領域での発光を確認し、試験が正常に行われたことを確認できた。
【0092】
<検出装置>
光源と光学フィルタと光電子倍増管(PMT)からなる検出ユニットを有し、該検出ユニットが、モーターによって一定速度で直線移動する機構を備え、PMTの受光強度を50μ秒ごとに記録する記録機構を備えた検出装置を作製した。なお、検出ユニットは、光源が532nmのレーザダイオードであり、レーザダイオードをサンプルに照射し、反射光を550nm以上の波長の光のみを透過する光学フィルタを透過させた後にPMTで受光する機構を有する。
【0093】
【表2】
【0094】
表2に示すように、アミラーゼを含有する前処理液(前処理液6〜9、Tween20を1質量%含み、EDTAを含まない)を用いて唾液を処理して微生物の検出を行った場合(
参考例2及び3、並びに実施例
4及び5)、アミラーゼを含まない前処理液(前処理液2、Tween20を1質量%含み、EDTAを含まない)を用いて唾液を処理して微生物の検出を行った場合(比較例2)と比べて、陽性唾液と陰性唾液との間の蛍光強度差が大きくなっている。この蛍光強度差は、アミラーゼの濃度が1mg/mLのとき(実施例4)に最大値を示した。そして実施例4の蛍光強度差は、比較例2の蛍光強度差の6倍以上であった。
以上のように本発明によれば、微生物の検出感度が顕著に向上することが分かる。
【0095】
さらに、表2に示すように、アミラーゼに加えてさらにEDTAを加えた前処理液(前処理液10〜13)を用いて唾液を処理して微生物の検出を行うことで(実施例6〜9)、さらに大きな蛍光強度差を示した。この蛍光強度差は、EDTAの濃度が10mMのとき(実施例8)に最大値を示した。
【0096】
さらに、アミラーゼを含有し、Tween20を含まない前処理液(前処理液5)を用いて唾液を処理して微生物の検出を行った場合(実施例1)、アミラーゼを含有しない前処理液(前処理液1〜4)を用いて唾液を処理して微生物の検出を行った場合(比較例1〜4)に比べて蛍光強度差が大きかった。この結果から、前処理液に界面活性剤を加えなくても酵素を加えることで、微生物の検出感度が向上することが分かる。
【0097】
さらに、アミラーゼを含まず界面活性剤の濃度を変えた前処理液(前処理液1〜4)を用いて唾液を処理して微生物の検出を行った場合(比較例1〜4)、界面活性剤の濃度が1質量%のとき蛍光強度差が最大値を示し、それ以上界面活性剤の量を増やすと、蛍光強度差は低下した。この結果から、界面活性剤の添加量を増加しても十分な検出感度が得られないことが分かる。
【0098】
(調製例3)イムノクロマトグラフィー用テストストリップの作製
(1)前処理液の調製
表3に示す組成の前処理液21〜33(pH7)をそれぞれ調製した。
【0099】
【表3】
【0100】
(2)前処理液を含浸させたコンジュゲートパッドの作製
続いて、前記前処理液を含浸させたコンジュゲートパッド5を以下の方法で作製した。
Glass Fiber Conjugate Pad(GFCP、MILLIPORE社製)(8mm×150mm)13枚に、前処理液21〜33それぞれ800μLをピペットで均一に塗布した。これらをデシケーター内で室温下、一夜減圧下で乾燥し、前処理液を含浸させたコンジュゲートパッド5を得た。
【0101】
(3)イムノクロマトグラフィー用テストストリップの作製
図3に示すように、調製例2で作製したメンブレン3、前記コンジュゲートパッド5、サンプルパッド(Glass Fiber Conjugate Pad(GFCP)、MILLIPORE社製)2、及び吸収パッド(Cellulose Fiber Sample Pad(CFSP)、MILLIPORE社製)4の順で、バッキングシート(商品名:AR9020、Adhesives Research社製)6上で組み立てた。なおメンブレン3は、テストライン20がコンジュゲートパッド5側、コントロールライン21が吸収パッド4側に位置するように配置した。
続いて、5mm幅、長さ60mmのストリップ状に切断し、テストストリップ1を作製した。これにより、1個のテストストリップに用いられる処理用パッドは30分割されて5mm幅×8mm長さになり、それぞれ前段で塗布した800μLの処理液の30分の1の検体前処理剤を含有することになる。
このように作製した各テストストリップのコンジュゲートパッド5に含まれるTween20、アミラーゼ、及びEDTAの量を表4に示す。
【0102】
【表4】
【0103】
(試験例2)ストレプトコッカス・ミュータンスの検出
ストレプトコッカス・ミュータンスの菌体濃度が1×10
5CFU/mLである唾液検体(陽性唾液)70μLを13本用意し、調製例3で作製したテストストリップのサンプルパッド2に滴下した。20分後、上記検出装置を用いて、テストライン20の発光強度(X)の測定をした。
これとは別に、ストレプトコッカス・ミュータンスを含まない唾液検体(陰性唾液)についても同様の操作を行い、テストライン20の発光強度(Y)の測定をした。
そして、発光強度(X)と発光強度(Y)との発光強度差(X−Y)を算出した。
その結果を表5に示す。なお、すべての試験において参照領域での発光を確認し、試験が正常に行われたことを確認できた。
【0104】
【表5】
【0105】
表5に示すように、アミラーゼを含有する前処理液(前処理液
26〜29、Tween20を0.2mg含み、EDTAを含まない)を含浸して得られたコンジュゲートパッドを設けたテストストリップ(テストストリップ
26〜29)を用いて微生物の検出を行った場合(
参考例12及び13、並びに実施例
14及び15)、アミラーゼを含まない前処理液(前処理液22)を含浸して得られたコンジュゲートパッドを設けたテストストリップ(テストストリップ22、Tween20を0.2mg含み、EDTAを含まない)を用いて微生物の検出を行った場合(比較例12)と比べて、陽性唾液と陰性唾液との間の蛍光強度差が大きくなっている。この蛍光強度差は、コンジュゲートパッドに含まれるアミラーゼの量が0.02mgのとき(実施例14)に最大値を示した。そして実施例14の蛍光強度差は、比較例12の蛍光強度差の6倍以上であった。
以上のように本発明によれば、微生物の検出感度が顕著に向上することが分かる。
【0106】
さらに、表5に示すように、アミラーゼを含みさらにEDTAを含む前処理液(前処理液30〜33)を含浸して得られたコンジュゲートパッドを設けたテストストリップ(テストストリップ30〜33)を用いて微生物の検出を行うことで(実施例16〜19)、さらに大きな蛍光強度差を示した。この蛍光強度差は、コンジュゲートパッドに含まれるEDTAの含有量が0.2μmolのとき(実施例18)に最大値を示した。
【0107】
さらに、アミラーゼを含有し、Tween20を含まない前処理液(前処理液25)を含浸して得られたコンジュゲートパッドを設けたテストストリップ(テストストリップ25)を用いて微生物の検出を行った場合(実施例11)、アミラーゼを含有しない前処理液(前処理液21〜24)を含浸して得られたコンジュゲートパッドを設けたテストストリップ(テストストリップ21〜24)を用いて微生物の検出を行った場合(比較例11〜14)に比べて蛍光強度差が大きかった。この結果から、前処理液に界面活性剤を加えなくても酵素を加えることで、微生物の検出感度が向上することが分かる。
【0108】
さらに、アミラーゼを含まず界面活性剤の含有量を変えたい前処理液(前処理液21〜24)を含浸して得られたコンジュゲートパッドを設けたテストストリップ(テストストリップ21〜24)を用いて唾液を処理して微生物の検出を行った場合(比較例11〜14)、コンジュゲートパッドに含まれる界面活性剤の含有量が0.2mgのとき蛍光強度差が最大値を示し、それ以上界面活性剤の量を増やすと、蛍光強度差は低下した。この結果から、界面活性剤の添加量を増加しても十分な検出感度が得られないことが分かる。