特許第6605807号(P6605807)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6605807
(24)【登録日】2019年10月25日
(45)【発行日】2019年11月13日
(54)【発明の名称】分析装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 1/00 20060101AFI20191031BHJP
   G01N 1/22 20060101ALI20191031BHJP
【FI】
   G01N1/00 101R
   G01N1/00 101X
   G01N1/22 T
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-264184(P2014-264184)
(22)【出願日】2014年12月26日
(65)【公開番号】特開2016-125827(P2016-125827A)
(43)【公開日】2016年7月11日
【審査請求日】2017年11月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000155023
【氏名又は名称】株式会社堀場製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 真大
(72)【発明者】
【氏名】谷口 平八朗
(72)【発明者】
【氏名】黒住 拓司
(72)【発明者】
【氏名】山田 雄大
(72)【発明者】
【氏名】平田 泰士
【審査官】 北条 弥作子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−266741(JP,A)
【文献】 特開2014−021089(JP,A)
【文献】 米国特許第04234541(US,A)
【文献】 特開2006−349397(JP,A)
【文献】 特開昭62−070729(JP,A)
【文献】 実公昭31−011800(JP,Y1)
【文献】 実開昭51−049344(JP,U)
【文献】 実開昭63−114954(JP,U)
【文献】 特開2000−084077(JP,A)
【文献】 特開2000−266740(JP,A)
【文献】 中国実用新案第203615739(CN,U)
【文献】 特開2000−338019(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 1/00
G01N 1/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料を収容する試料収容部と、
前記試料収容部内で加熱された試料から生じるガス全体が通過可能に設けられたフィルタ部材と、
前記フィルタ部材を通過したガスを分析計へ導くガス流路とを具備する分析装置であって、
前記フィルタ部材が、筒形状をなし、その一端部に前記ガス流路に繋がるガス導出口が形成されたものであり、
前記ガスが、前記フィルタ部材の側壁部を外側から内側に通過して、前記ガス導出口から前記ガス流路へ流れるように構成されており、
前記フィルタ部材を清掃するための清掃用ガスを、前記フィルタ部材の前記一端部から該フィルタ部材の内側に供給する清掃用ガス供給路をさらに具備することを特徴とする分析装置。
【請求項2】
前記フィルタ部材の他端部に設けられた伝熱部材とを有することを特徴とする請求項1記載の分析装置。
【請求項3】
前記清掃用ガスを、前記清掃用ガス供給路から前記フィルタ部材の内側に供給する清掃用ガス供給機構をさらに具備し、
前記清掃用ガス供給機構により供給された前記清掃用ガスが、前記フィルタ部材の側壁部を内側から外側に通過するように構成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の分析装置。
【請求項4】
試料を収容する試料収容部と、
前記試料収容部内で加熱された試料から生じるガスが通過するフィルタ部材と、
前記フィルタ部材を通過したガスを分析計へ導くガス流路とを具備する分析装置であって、
前記フィルタ部材が、筒形状をなし、その一端部に前記ガス流路に繋がるガス導出口が形成されたものであり、
前記ガスが、前記フィルタ部材の側壁部を外側から内側に通過して、前記ガス導出口から前記ガス流路へ流れるように構成されており、
前記フィルタ部材が、前記試料の上方に設けられており、
前記試料収容部が、前記試料とともに前記フィルタ部材の下端部から上端部までを内部に収容する単一部材からなる管状部材を有していることを特徴とする分析装置。
【請求項5】
試料を収容する試料収容部と、
前記試料収容部内で加熱された試料から生じるガスが通過するフィルタ部材と、
前記フィルタ部材を通過したガスを分析計へ導くガス流路とを具備する分析装置であって、
前記フィルタ部材が、筒形状をなし、その一端部に前記ガス流路に繋がるガス導出口が形成されたものであり、
前記ガスが、前記フィルタ部材の側壁部を外側から内側に通過して、前記ガス導出口から前記ガス流路へ流れるように構成されており、
前記試料収容部が、
前記試料を加熱する加熱炉本体と、
前記加熱炉本体の上部に着脱可能に取り付けられ、前記フィルタ部材を保持するとともに、着脱方向に沿った軸を中心に回転する蓋体と、
前記加熱炉本体と前記蓋体との間に設けられ、前記蓋体に加えられた回転方向の力を上下方向の力に変換して、前記蓋体の取り外しを補助する取り外し補助機構とを有することを特徴とする分析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば鉄鋼や非鉄金属、セラミックスなどの試料に含まれる炭素(C)、硫黄(S)等の元素を分析する元素分析装置等の分析装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の分析装置は、例えば特許文献1に示すように、試料を加熱し、それにより試料中の成分を含んだガスを発生させて、該ガスを分析計で分析するものが知られている。
具体的にこのものは、内部に試料を収容する加熱炉と、加熱炉の上部に形成され、試料を加熱することにより生じるガスを分析計に導くガス流路とを具備してなる。
【0003】
ところで、前記ガスには多くのダストが含まれていることから、上述した分析装置は、加熱炉の上部に筒形状のフィルタを設け、前記ガスがフィルタの側壁部を内側から外側に通過して、ガス流路へ流れるように構成されている。
【0004】
ところが、このようにしてフィルタに捕捉されたダストは、そのままにしておけば、フィルタの除去性能を低下させるだけでなく、ダストに含まれる水分等にガスが吸着してしまい、測定精度の低下や流量の低下を招く。
【0005】
そこで、フィルタに捕捉されたダストを除去すべく、上述したガス流路から清掃用ガスを逆噴射することが考えられる。しかしながら、この方法では、フィルタのうち清掃用ガスが直接あたる部分やその周辺に付着しているダストのみが除去されるだけで、フィルタ全体のダストを除去することは難しい。
【0006】
また、ダストを除去するその他の構成としては、フィルタに沿ってブラシを上下に移動させる構成が知られているが、この構成では、ダストがフィルタに押し込まれ、その部分のダストを除去しにくくなることがあり、上述した問題を解決することはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−338019号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで本発明は、上記問題点を解決すべくなされたものであって、フィルタ全体のダストを容易に除去できるようにすることをその主たる課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち本発明に係る分析装置は、試料を収容する試料収容部と、前記試料収容部内で加熱された試料から生じるガスが通過するフィルタ部材と、前記フィルタ部材を通過したガスを分析計へ導くガス流路とを具備する分析装置であって、前記フィルタ部材が、筒形状をなし、その一端部に前記ガス流路に繋がるガス導出口が形成されたものであり、前記ガスが、前記フィルタ部材の側壁部を外側から内側に通過して、前記ガス導出口から前記ガス流路へ流れるように構成されていることを特徴とするものである。
【0010】
このような分析装置であれば、フィルタ部材が筒形状をなしているので、フィルタ部材の側壁部は、その内周面よりも外周面の方が広くなり、この側壁部に対してガスを外側から内側に通過させることで、より多くのダストを捕捉することができる。
ここで、フィルタ部材に捕捉されたダストを除去するためには、例えば清掃用ガスをフィルタ部材の内側から外側に通過させることになる。このとき、例えばガス導出口を介してフィルタ部材の内側に清掃用ガスを供給すれば、清掃用ガスがフィルタ部材全体に行き届いて、フィルタ部材内の圧力が上がる。その結果、清掃用ガスがフィルタ部材の側壁部全体において内側から外側に向かって勢い良く流れ、フィルタ部材全体のダストを容易に除去することが可能になる。
このように、上述した分析装置であれば、清掃用ガスをフィルタ部材の内側から外側に通過させることで、清掃用のブラシを用いることなく、フィルタ部材全体のダストを容易に除去することができる。これにより、従来であればブラシを上下移動させるべく、シリンダ等の駆動機構を試料収容部の上方等に設けていたが、この駆動機構に代えて試料収容部の周囲スペースを有効に活用することができる。
【0011】
フィルタ部材に付着したダストを確実に清掃するための具体的な実施態様としては、前記フィルタ部材を清掃するための清掃用ガスを、前記フィルタ部材の一端部に形成された清掃用ガス供給口から前記フィルタ部材の内側に供給する清掃用ガス供給機構をさらに具備し、前記清掃用ガス供給機構により供給された前記清掃用ガスが、前記フィルタ部材の側壁部を内側から外側に通過するように構成されているものが好ましい。
【0012】
上述したように、ガスがフィルタ部材の側壁部を外側から内側に通過するので、フィルタ部材の外側は、ダストを含んだガスが流れることになる。
そこで、前記フィルタ部材が、前記試料の上方に設けられており、前記試料収容部が、前記試料とともに前記フィルタ部材の下端部から上端部までを内部に収容する単一部材からなる管状部材を有しているものが好ましい。
これならば、単一部材からなる管状部材が、試料とともにフィルタ部材の下端部から上端部までを収容するので、フィルタ部材の通過前のガスに含まれるダストが、管状部材の内面に付着した場合は、この管状部材を、例えば交換したり、取り外して清掃することで、フィルタ部材の周辺に付着したダストを容易に除去することができる。
【0013】
前記試料収容部が、前記試料を加熱する加熱炉本体と、前記加熱炉本体の上部に着脱可能に取り付けられ、前記フィルタ部材を保持するとともに、着脱方向に沿った軸を中心に回転する蓋体と、前記加熱炉本体と前記蓋体との間に設けられ、前記蓋体に加えられた回転方向の力を上下方向の力に変換して、前記蓋体の取り外しを補助する取り外し補助機構とを有するものが好ましい。
ここで、仮に、蓋体を加熱炉本体から取り外す際に、例えば取り外し方向に大きな力を加えた場合、外れるときの衝撃で蓋体が傾く恐れがある。そうすると、蓋体に保持されているフィルタ部材が、加熱炉本体の内面に接触することがあり、これにより加熱炉本体の内面やフィルタ部材が破損する恐れがある。
これに対して、上述した構成であれば、加熱炉本体と蓋体との間に、蓋体の取り外しを補助する取り外し補助機構が設けられているので、蓋体を加熱炉本体に対して回転させることにより、容易に蓋体を取り外すことができる。したがって、蓋体を傾けることなく加熱炉本体から取り外すことができ、上述した問題が生じにくい。
【0014】
また、本発明に係る分析装置は、試料を収容する試料収容部と、前記試料収容部内で加熱された試料から生じるガスが通過するフィルタ部材と、前記フィルタ部材を通過したガスを分析する分析計と、前記フィルタ要素を清掃するための清掃用ガスを、前記フィルタ要素の一端開口から該フィルタ要素の内側に供給する清掃用ガス供給路とを具備することを特徴とするものである。
このような分析装置であれば、清掃用ガスをフィルタ要素の一端開口から該フィルタ要素の内側に供給するので、清掃用ガスをフィルタ要素の軸方向に沿って流すことができる。これにより、清掃用ガスは、フィルタ要素の一部のみにあたることなく、フィルタ要素全体に行き届いて、フィルタ要素内の圧力が上がる。その結果、清掃用ガスがフィルタ要素全体において内側から外側に向かって勢い良く流れ、フィルタ要素全体のダストを容易に除去することが可能になる。
【発明の効果】
【0015】
このように構成した本発明によれば、清掃用ガスをフィルタ部材の内側に供給することにより、フィルタ部材に付着したダストを除去し、フィルタ部材を確実に清掃することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本実施形態の分析装置の全体構成を模式的に示す図。
図2】同実施形態のフィルタ部材を模式的に示す図。
図3】変形実施形態の分析装置の全体構成を模式的に示す図。
図4】変形実施形態の取り外し補助機構を模式的に示す図。
図5】変形実施形態のブロック体を模式的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に本発明に係る分析装置の一実施形態について図面を参照して説明する。
【0018】
本実施形態に係る分析装置100は、例えば鉄鋼や非鉄金属、セラミックスなどの試料Xに含まれる炭素(C)、硫黄(S)等の元素を分析する元素分析装置であり、図1に示すように、試料Xを収容する試料収容部である加熱炉10と、試料Xを加熱することにより生じるガス(以下、測定ガスともいう)を測定する図示しない分析計とを具備するものである。
【0019】
まず、図示しない分析計について説明する。
前記分析計は、当該分析計に導かれた測定ガスを分析して試料Xに含まれる各成分の含有量を求めるものであり、ここでは、例えば、非分散型赤外線吸収法(NDIR法)を用いて分析するものである。具体的にこの分析計は、図示しない非分散型赤外線検出器を有しており、測定ガスに含まれるCO、CO、SO等を検出することで、試料Xに含まれる炭素(C)や硫黄(S)等の含有量を求めるものである。
【0020】
次に、加熱炉10について説明する。
前記加熱炉10は、内部に試料Xを収容して該試料Xを加熱し、これにより試料X中の成分を含んだ測定ガスを発生させるものであり、図1に示すように、加熱炉本体11と、加熱炉本体11の周囲に設けられた加熱機構12とを有している。
【0021】
加熱炉本体11は、例えば石英ガラス等の単一部材から形成された例えば横断面円形状の直管形状をなす管状部材111と、管状部材111の上部に設けられたブロック体112とを有し、その内部には、試料Xを収容したるつぼRが設置されている。
【0022】
るつぼRは、例えばセラミック等の磁性体であり、その下方に設けられた昇降機構20によって、加熱炉10内で試料Xが加熱される加熱位置と、加熱炉10の外に退避する退避位置との間で昇降移動する。
【0023】
ブロック体112は、上端及び下端が開口し、これらの開口を連通する内部空間が形成されたものである。ここでは、ブロック体112は、概略回転体形状をなすものであり、下端開口には管状部材111の上端部がシール部材等を介して気密に嵌っている。
本実施形態では、前記ブロック体112の内部空間と前記管状部材111の内部空間とは、それぞれの中心軸が一致しており、これらの内部空間は、管状部材111の上端開口111aを介して繋がっている。
また、このブロック体112の上端開口には、蓋体13がシール部材等を介して着脱可能に取り付けられている。
【0024】
加熱機構12は、るつぼR内に収容された試料Xに高周波誘導加熱によって誘導電流を生じさせるものであり、図1に示すように、コイル121と、このコイル121に高周波交流電圧を印加する図示しない電源とを具備するものである。ここでは、前記コイル121が、加熱炉本体11の外周に沿って設けられており、このコイル121に高周波交流電圧が印加される際に、上述した昇降機構20によってるつぼRがコイル121の内側に位置するように設定されている。そして、コイル121に高周波交流電圧が印加されると、るつぼR内に投入されたタングステン等の助燃剤が加熱されて、試料Xの加熱が促進される。
【0025】
本実施形態の分析装置100は、加熱炉10内で発生した測定ガスを図示しない分析計に導くガス流路L1と、加熱炉10内に酸素を供給する酸素供給路L2とをさらに有している。
【0026】
ガス流路L1は、図1及び図2に示すように、加熱炉10の内部空間と図示しない分析計とを接続するものであり、その一端開口L1aが加熱炉10の内部空間に連通している。前記一端開口L1aは、加熱炉10の内部空間を形成する面に設けられており、本実施形態では、加熱炉10の上壁部に形成されている。
より具体的には、上述したガス流路L1の一部は、加熱炉10を構成するブロック体112と蓋体13とに亘って設けられており、前記一端開口L1aは、蓋体13の底面に形成され、例えば円形状をなしている。
【0027】
酸素供給路L2は、酸素を図示しない酸素ボンベから加熱炉10内に供給するものであり、具体的には例えば横断面円形状の直管形状をなす供給路形成部材30により形成されている。
この供給路形成部材30は、図1及び図2に示すように、その内部空間の中心軸が管状部材111の内部空間の中心軸と一致するように、加熱炉10の上壁部(本実施形態では、蓋体13)に保持されており、その下端部はるつぼRの上方に位置している。これにより、酸素供給路L2を流れる酸素は、主としてるつぼR内に供給される。なお、本実施形態の供給路形成部材30は、その内部空間の中心軸が、上述した一端開口L1aの中心を通るように配置されている。
なお、本実施形態の供給路形成部材30は、例えば加熱炉10内をパージする際に、酸素などのパージガスを加熱炉10内に供給するためにも兼用される。
【0028】
しかして、本実施形態の分析装置100は、図2に示すように、加熱炉10内に設けられた筒形状をなすフィルタ部材40をさらに具備し、測定ガスがこのフィルタ部材40の側壁部401を外側から内側に通過するように構成されている。
【0029】
前記フィルタ部材40は、上述したガス流路L1の一端開口L1aを囲うように設けられており、側壁部401を通過した測定ガスを、上端部に形成されたガス導出口40aを介してガス流路L1に導出するように構成されている。
本実施形態のフィルタ部材40は、ブロック体112内に設けられて、ブロック体112の内部空間を内側内部空間S1と外側内部空間S2とに仕切っており、内側内部空間S1にはガス流路L1が連通し、外側内部空間S2には管状部材111の内部空間が連通している。つまり、本実施形態では、ガス流路L1の一端開口L1aが内側内部空間S1に開口するとともに、管状部材111の上端開口111aが外側内部空間S2に開口しており、前記上端開口111aから外側内部空間S2に流入した測定ガスが、側壁部401を通過して内側内部空間S1へと流れ、前記ガス導出口40aを介してガス流路L1に導かれる。
【0030】
具体的に前記フィルタ部材40は、側壁部401の少なくとも一部をなす筒状のフィルタ要素42と、フィルタ要素42を上下方向から保持する上側保持部材41及び下側保持部材43とを具備している。
【0031】
フィルタ要素42は、例えば複数の金属製の線状部材を網目状に形成したものであり、ここでは両端が開口した円筒形状をなすものである。このフィルタ要素42の外径は、管状部材111の内径よりも小さく、上方から視ると、ブロック体112の内側に管状部材111が設けられ、この管状部材111の内側にフィルタ要素42が設けられている。
【0032】
上側保持部材41は、上端部が加熱炉10の上壁部(本実施形態では、蓋体13)に取り付けられて、下側保持部材43との間でフィルタ要素42を保持するものであり、前記上端部に上述したガス導出口40aが形成されている。
前記ガス導出口40aは円形状をなしており、ここでは、ガス導出口40aとガス流路L1の一端開口L1aとが同心円状に重なり合うように、前記上側保持部材41が蓋体13に取り付けられている。
なお、ガス導出口40aは、一端開口L1aよりも径が大きく、ガス導出口40aの内側に一端開口L1aが位置する。
【0033】
下側保持部材43は、試料Xや助燃剤を加熱することで生じるすす等のダストからフィルタ要素42を保護するためのものであり、フィルタ要素42の下端開口を塞ぐとともに、上端保持部材41との間でシール部材等を用いることなくフィルタ要素42を挟圧固定している。
本実施形態の下側保持部材43は、伝熱性を有する金属製のものであり、下方から伝わる熱をフィルタ要素42に伝えるように構成されている。
【0034】
前記下側保持部材43には、上述した供給路形成部材30が貫通する貫通孔が形成されており、この貫通孔に供給路形成部材30が貫通された状態において、フィルタ部材40と供給路形成部材30とは、中心軸を一致させて設けられている。
【0035】
これにより、加熱炉本体11、ブロック体112、フィルタ部材40及び供給路形成部材30は、それぞれの内部空間の中心軸が一致するように配置されており、上方から視ると、これらの内部空間は、同心円状に重なり合っている。
【0036】
上述した構成により、測定ガスは、図2に示すように、るつぼRから上昇して管状部材111の上端開口111aに到達し、管状部材111と下側保持部材43との隙間を通り抜けて、フィルタ部材40とブロック体112との間に形成されている外側内部空間S2に流れ込む。そして、この測定ガスは、フィルタ要素42を外側から内側に向かって通過して、フィルタ部材40の内側、つまり内側内部空間S1へと流れ込む。これにより、測定ガスに含まれているダストは、前記フィルタ要素42の外周面に捕捉される。フィルタ要素42を通過した測定ガスは、ガス導出口40aを介してガス流路L1に流入し、図示しない分析計へ導かれる。
【0037】
そこで、本実施形態の分析装置100は、前記フィルタ部材40に捕捉されたダストを清掃するための清掃用ガスを、フィルタ部材40の上部に形成された清掃用ガス供給口50aからフィルタ部材40の内側に供給する清掃用ガス供給機構をさらに具備している。
【0038】
具体的にこの清掃用ガス供給機構は、図示しない清掃用ガスボンベと、清掃用ガスを前記清掃用ガス供給口50aへ導く清掃用ガス供給路L3とを具備している。
前記清掃用ガス供給路L3は、フィルタ要素42の上端開口からフィルタ要素42の内側に清掃用ガスを供給するものであり、本実施形態では、フィルタ要素42の軸方向に沿って清掃用ガスをフィルタ要素42の内側に供給するように構成されている。
【0039】
本実施形態では、清掃用ガス供給口50aとガス導出口40aとは共通化されており、清掃用ガス供給路L3とガス流路L1とは共通化されている。
つまり、本実施形態の清掃用ガス供給機構は、清掃用ガスを測定ガスの流れる方向と逆向きに流すように構成されている。これにより、清掃用ガスボンベから供給された清掃用ガスは、ガス流路L1を流れてガス導出口40aに導かれ、このガス導出口40aを介してフィルタ部材40内に噴出される。
【0040】
ここで、サンプルXの分析が終わってから、次のサンプルXを分析するまでの中間作業を簡単に説明する。
【0041】
サンプルXの分析が終了すると、上述したように窒素等の清掃用ガスを清掃用ガス供給路L3を介してフィルタ部材40の内側へ供給し、フィルタ要素42に捕捉されているダストを除去する。なお、本実施形態では、清掃用ガスを、分析後に毎回供給するようにしているが、必ずしも毎回供給する必要はない。
次に、加熱炉10を開けるとともに、昇降機構20によって加熱位置にあるるつぼRを退避位置に移動させる。このとき、加熱炉10の底などに除去したダスト等が落ちていれば、このダスト等を取り払う。
そして、るつぼRを次に分析するサンプルXが入ったるつぼRと交換し、昇降機構20によって該るつぼRを加熱位置に移動させ、加熱炉10を閉じる。
最後に、加熱炉10内に酸素等のパージガスを流し、中間作業を終了する。
【0042】
このように構成された本実施形態に係る分析装置100によれば、測定ガスがフィルタ要素42を外側から内側に通過するように構成されているので、この測定ガスの流れと逆流するように清掃用ガスをフィルタ部材40内に噴出させることができる。これにより、フィルタ部材40内に供給された清掃用ガスは、フィルタ部材40内全体に行き届く。この結果、フィルタ部材40内の圧力が上がり、清掃用ガスがフィルタ要素42を内側から外側に向かって勢い良く流れるようになり、該フィルタ要素42に捕捉されたダストを容易に除去することができる。
より詳細には、清掃用ガス供給口50aを介してフィルタ部材40の上方から清掃用ガスが供給されるので、前記清掃用ガスは、清掃用ガス供給口50aに対向する下側保持部材43にあたり拡散する。これにより、清掃用ガスは、フィルタ部材40内全体に行き届き、フィルタ要素42捕捉されたダストを全て除去することが可能になる。
【0043】
また、上述した構成であれば、従来のようにダストを除去するためのブラシやブラシを上下移動させる駆動機構を不要にすることができる。
これにより、従来であれば駆動機構を設置していた加熱炉10の周囲スペースを有効に活用することができる。
【0044】
また、フィルタ要素42は、円筒形状をなしているので、内周面よりも外周面の方が広く、測定ガスがフィルタ要素42を内側から外側に通過する場合に比べて、本実施形態のように測定ガスがフィルタ要素42を外側から内側に通過する方がより多くのダストを捕捉することができる。
【0045】
さらに、フィルタ部材40の下側保持部材43が伝熱性を有するので、るつぼRや試料Xから伝わる熱を、前記下側保持部材43を介してフィルタ要素42に伝えることができる。これにより、フィルタ要素42に付着した水蒸気や水滴等を蒸発させることができ、測定ガスが水蒸気や水滴等に吸着されることを防いで、測定誤差を抑制することが可能となる。
【0046】
また、清掃用ガス供給路L3がガス流路L1と共通化されており、清掃用ガス供給口50aがガス導出口40aと共通化されているので、ブロック体112やフィルタ部材40を容易に製造することができる。
【0047】
そのうえ、供給路形成部材30やフィルタ部材40が、蓋体13に取り付けられているので、供給路形成部材30やフィルタ部材40を蓋体13とともに着脱することができ、それぞれの部材を個別に着脱しなければならない構成に比べて、メンテナンス性を向上させることができる。
【0048】
加えて、ブロック体112とフィルタ部材40とが、それぞれの内部空間の中心軸が一致するように配置されているので、測定ガスは、フィルタ部材40のフィルタ要素42を外側から内側に向かって、周方向に沿って偏りなく通過する。これにより、前記フィルタ要素42は、測定ガス中のダストを効率よく捕捉することができる。
【0049】
さらに加えて、フィルタ部材40と供給路形成部材30とが、それぞれに内部空間の中心軸が一致するように配置されているので、清掃用ガスは、フィルタ部材40のフィルタ要素42を内側から外側に向かって、周方向に沿って偏りなく通過する。これにより、清掃用ガスは、フィルタ要素42に捕捉されたダストを周方向に沿ってムラなく除去することができる。
【0050】
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。
【0051】
前記実施形態では、管状部材111の上端部が、ブロック体112の下端部に気密に嵌るように構成されている。そうすると、フィルタ部材40の外側では、ダストを含んだガスが流れていることから、管状部材111やブロック体112の内面にダストが付着する。
そこで、図3に示すように、単一部材からなる管状部材111の上端部が、ブロック体112の上部に位置する蓋体13まで延びている構成が好ましい。この構成により、加熱炉本体11は、フィルタ部材40の下端部から上端部までを収容することになる。
上述した構成によれば、測定ガスに含まれるダストが管状部材111の内面に付着するものの、管状部材111は単一部材からなるので、この管状部材111を例えば交換したり、取り外して清掃することで、フィルタ部材40の周辺に付着したダストを容易に除去することができる。
また、ブロック体112の材質や形状などによっては、ブロック体112の内壁にダストが付着すると除去しにくくなるところ、上述した構成であれば、管状部材111の上端部が蓋体13まで延びているので、ブロック体112の内壁にダストが付着しにくく、ブロック体112の汚れを防止することができる。
さらに、管状部材111の上端部が蓋体13まで延びているので、蓋体13をブロック体112から取り外した状態において、ブロック体112の上端開口から管状部材111の上端までの距離が近くなり、管状部材111を容易に取り外すことができる。
そのうえ、管状部材111の上端部が蓋体13まで延びているので、図3に示すように、管状部材111とブロック体112との間に設けられたシール部材Sを蓋部材13の近傍に設けることができ、これにより、前記シール部材Sを加熱機構12から遠ざけて、加熱機構12からの熱影響を低減することができ、シール部材Sの寿命を長くすることが可能になる。
【0052】
一方、上述した構成では、例えば蓋体13を取り外す際に蓋体13が傾いてしまうと、この蓋体13から吊り下げられているフィルタ部材40が、管状部材111であるガラス管に接触する恐れがあり、これにより接触箇所が破損する可能性がある。
【0053】
そこで、図4示すように、蓋体13が、ブロック体112に対して回転することで、該ブロック体112の上端開口に着脱されるように構成されており、この蓋体13とブロック体112との間に、蓋体13の取り外しを補助する取り外し補助機構50が設けられていることが好ましい。
【0054】
前記取り外し補助機構50は、図4(A)、(B)に示すように、蓋体13に加えられた回転方向の力を上下方向(取り外し方向)の力に変換して、蓋体13の取り外しを補助するものである。
具体的にこのものは、図4(B)に示すように、ブロック体112に設けられ、軸方向に対して傾斜する案内面51と、蓋体13に設けられ、ブロック体112に対して蓋体13を回転させたときに案内面51上をスライド移動する被案内面52とから構成されている。
本実施形態では、前記案内面51は、ブロック体112の上面112aの一部として形成されており、前記被案内面52は、蓋体13に設けられた鍔部131の下面131aの一部として形成されている。
【0055】
上述した構成により、蓋体13をブロック体112に対して回転させると、被案内面52が案内面51に接触しながら案内面51上をスライド移動し、これにより、蓋体13に加えられた回転方向の力が上下方向(取り外し方向)の力に変換されて、蓋体13を容易に取り外すことができる。
【0056】
これならば、蓋体13を傾けることなくブロック体112から取り外すことができ、管状部材111等を破損させる恐れがない。
【0057】
また、上述したように、管状部材111の上端部が蓋体13又はその近傍まで延びている構成において、管状部材111をより簡単に取り外すためには、図5に示すように、ブロック体112が、上端面に複数の段部113が形成されているものが好ましい。
より詳細には、前記段部113は、ブロック体112の上段部を厚み方向に貫通して形成されており、各段部113の底面113aが管状部材111の上端よりも下方に位置するように設定されている。
これにより、ブロック体112から蓋部材13を取り外した状態において、例えば前記段部113から指を入れて管状部材111をつまむことができ、管状部材111をより簡単に取り外すことが可能となり、メンテナンス性を向上させることができる。
【0058】
さらに、前記実施形態のフィルタ部材は、横断面円形状の筒形状をなすものであったが、横断面が矩形状や多角形状の筒形状をなすものであってもよい。
【0059】
加えて、前記実施形態のフィルタ要素は、フィルタ部材の側壁部の全周に亘って設けられていたが、例えばフィルタ部材の周方向に沿って側壁部に間欠的に設けられているなど、側壁部の一部にフィルタ要素が設けられていても良い。
【0060】
そのうえ、フィルタ部材と供給路形成部材と蓋体とを一体的に形成しても良い。
これにより、蓋体をブロック体から取り外すことで、フィルタ部材や供給路形成部材を同時に取り外すことができ、メンテナンス性を向上させることができる。
なお、ここでいう一体的とは、必ずしも単一部材で形成されている必要はなく、各部材が機械的に接続されている場合も含む。
【0061】
前記実施形態の清掃用ガス供給口は、ガス導出口と共通化して形成されていたが、ガス導出口と別に形成されていたり、一部がガス導出口と共通化して形成されていても構わない。
【0062】
前記実施形態の清掃用ガス供給路は、ガス流路と共通して形成されていたが、ガス流路と別に形成されていたり、一部がガス流路と共通化して形成されていても構わない。
具体的実施態様としては、例えば、清掃用ガス供給路の一部が上側保持部材に形成されている構成などが挙げられる。
【0063】
また、前記実施形態のフィルタ部材は、側壁部の一部をフィルタ要素としていたが、側壁部のみならず、下側保持部材の全部又は一部をフィルタ要素としても良い。
【0064】
その他、本発明は前記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であるのは言うまでもない。
【符号の説明】
【0065】
100・・・分析装置
10 ・・・加熱炉
11 ・・・加熱炉本体
13 ・・・蓋体
40 ・・・フィルタ部材
50a・・・清掃用ガス供給口
L1 ・・・ガス流路
L3 ・・・清掃用ガス供給路
X ・・・試料
図1
図2
図3
図4
図5