(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
基板上に、溶剤を含む接着剤をスピンコート法により塗布して、接着層を形成する工程と、前記接着層の端部の盛り上がり部が、2つ以上のピークとなるように調整する工程を含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載の積層体の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。尚、本明細書において「〜」とはその前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。
本明細書における基(原子団)の表記において、置換および無置換を記していない表記は、置換基を有さないものと共に置換基を有するものをも包含するものである。例えば、「アルキル基」とは、置換基を有さないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含するものである。
本明細書中における「活性光線」または「放射線」は、例えば、可視光線、紫外線、遠紫外線、電子線、X線等を含むものを意味する。
本明細書において「露光」とは、特に断らない限り、光を用いた露光のみならず、電子線、イオンビーム等の粒子線を用いた描画も露光に含める。また、露光に用いられる光としては、一般的に、水銀灯の輝線スペクトル、エキシマレーザーに代表される遠紫外線、極紫外線(EUV光)、X線、電子線等の活性光線または放射線が挙げられる。
本明細書において、「(メタ)アクリレート」は、アクリレートおよびメタクリレートを表し、「(メタ)アクリル」は、アクリルおよびメタクリルを表し、「(メタ)アクリロイル」は、「アクリロイル」および「メタクリロイル」を表す。
本明細書において、重量平均分子量および数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定に従ったポリスチレン換算値として定義される。本明細書において、重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)は、例えば、HLC−8220(東ソー(株)製)を用い、カラムとしてTSKgel Super AWM―H(東ソー(株)製、内径(ID)6.0mm×15.0cm)を用い、溶離液として10mmol/L リチウムブロミドNMP(N−メチルピロリドン)溶液を用いることによって求めることができる。
なお、以下に説明する実施の形態において、既に参照した図面において説明した部材等については、図中に同一符号あるいは相当符号を付すことにより説明を簡略化あるいは省略化する。
【0010】
本発明の積層体は、基板と、端部に盛り上がり部を有する熱可塑性樹脂を含む接着層を有し、接着層の端部の盛り上がり部が、2つ以上のピークを有することを特徴とする。このような構成とすることにより、積層体の厚みムラを抑制し、加工時にチッピングを発生しにくくすることができる。この点について、
図1を参照して説明する。
図1は、基板の上に接着剤をスピンコート法で塗布して、接着層を製造した場合の、基板と接着剤(または接着層)の端部の断面の様子の一例を示した図である。
図1中、1は基板を、2は接着剤または接着層を、3は第2の基板を、4はボイドを、5は盛り上がり部のピークを、それぞれ示している。
図1の(1)〜(4)の実施形態において、それぞれ、左から順に、乾燥初期、乾燥中期、乾燥終了期、接着剤の上にさらに第2の基板を接着した後の、接着剤(または接着層)の断面の形状の変化を示している。また、(1)の実施形態は、接着剤を、比較的低温(例えば、60〜100℃)でベークし、従来のホットプレートを用いて、排気して、乾燥させて製造した例である。(2)の実施形態は、接着剤を比較的低温でベークし、接着剤に含まれる溶剤がホットプレート内に充満し、比較的ゆっくりとより効果的にレベリングが機能するように調整して、乾燥させて製造した例であり、本発明の実施形態の一例である。(3)の実施形態は、接着剤を比較的高温(例えば、110〜150℃)でベークし、従来のホットプレートを用いて、排気して乾燥させて製造した例である。(4)の実施形態は、接着剤を比較的高温でベークし、接着剤に含まれる溶剤がホットプレート内に充満し、より効果的にレベリングが機能するように調整して乾燥させて製造した例である。
乾燥初期では、(1)〜(4)のいずれの実施形態においても、接着層2の端部に盛り上がり部が形成されてしまう。(1)の実施形態では、乾燥中期において、盛り上がり部がある程度レベリングされるが、完全にはレベリングされないまま乾燥が終了し、第2の基板を接着する際に、接着層2と第2の基板3の間に、一部隙間が生じる。本発明者が検討したところ、この隙間が、厚みムラを生じさせたり、加工時にチッピングを発生させたりしていることが分かった。一方、(3)および(4)の実施形態では、乾燥中期から乾燥終了期において、盛り上がり部がレベリングされる度合いが低い。そのため、接着剤(接着層)の上に第2の基板3を設けた時に、接着層2と第2の基板3の間にボイド4ができてしまう。
これに対し、本発明では、(2)の実施形態に示すように、乾燥中期において、接着層の端部の盛り上がり部が2つ以上のピーク5を有するように調整している。この結果、ボンディング時における厚みムラを抑制し、かつ、加工時にチッピングが発生しにくい積層体を提供可能にしたものである。
なお、基板と接着層と第2の基板は、上記順に、通常互いに隣接するように設けられるが、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、基板と接着層の間、接着層と第2の基板の間に他の層を有していてもよい。
【0011】
次に、本発明における盛り上がり部のピークについて、
図2を例に説明する。しかしながら、本発明の構成が、
図2に記載の構成に限定されるものではないことは言うまでもない。
図2は、円盤状の基板1の表面に、接着層2を設けた積層体であって、積層体を基板面に垂直な方向で、かつ、円盤状の基板の中心を通るように切断した断面図を示している。直径方向が基板面に平行な方向であり、Z方向が基板面に垂直な方向である。
本発明における接着層の端部とは、基板の中心よりも相対的に外側にある部位をいう。例えば、基板が円盤状の場合、円盤の円の中心と円周の間の距離(円の半径)の、円周に近い側1/4以内、好ましくは1/8以内、さらに好ましくは1/10以内の部位をいう。尚、ここでいう円盤状とは、数学的な意味での円である必要はなく、本発明の技術分野の当業者にとって、円盤状と解釈されるものを含む趣旨である。例えば、市販されている一般的な概ね円形の半導体基板は、円盤状の基板といえるであろう。
本発明における盛り上がり部とは、接着層の平均膜厚の1.1倍以上の高さを有する部位をいう。例えば、エッジビードは本発明における盛り上がり部に相当する。
本発明における接着層の平均膜厚t(単位:μm)は、用途等に応じて適宜定めることができるが、0.1〜200μmであることが好ましく、1〜100μmであることがより好ましい。接着層の平均膜厚tは、後述する実施例に記載の方法に従って測定される。
【0012】
本発明における盛り上がり部のピークとは、盛り上がり部における凸部をいう。
図2における5がそれぞれピークである。本発明では、ピークは2つ以上あればよいが、2〜5つが好ましく、2〜4つがより好ましく、2または3つがさらに好ましく、2つが一層好ましい。ピークは、基板が円盤状の場合、基板面の上方から見ると、通常、同心円状に存在する。
ピークの高さは、基板の端部から中心に向かって数えたn番目のピークの高さをH
n(単位:μm)とする。そして、
図2に示すように、基板の最も端部に近いピークの高さをH
1、次に端部に近いピークの高さをH
2とし、3番目に端部に近いピークの高さをH
3とする。H
4以降も同様である。本発明では、同心円状にピークが存在する場合、1つの円におけるピークの高さは、いずれの箇所でも通常同じ高さであるが、誤差がある場合、最も高い点をピークの高さHとする。
本発明では、基板の端部から中心に向かって数えたn番目のピークの高さH
nと、n+1番目のピークの高さH
n+1と、接着層の平均膜厚tが、t < H
n+1 < H
n < t+40/nを満たすことが好ましく、t+5 < H
n+1 < H
n < t+40/n−5を満たすことがより好ましい。
【0013】
本発明では、基板の端部と、基板の端部から中心に向かって数えたn番目のピークに対応する基板上の位置との最短距離R
n(単位:mm)と接着層の平均膜厚tがn・t/40 < R
n < n・t/8を満たすことが好ましく、n・t/30 < R
n < n・t/12を満たすことがより好ましい。
基板の端部から中心に向かって数えたn番目のピークに対応する基板上の位置とは、ピークの最も高さの高い点から基板に対し垂線を引いたときに、基板と接触する点をいう。
図2に、基板の端部と、基板の端部から中心に向かって数えた1番目、2番目、3番目のピークに対応する基板上の位置との距離R
1、R
2、R
3の例を示す。
R
nの値は、後述する実施例に記載の方法に従って測定される。
【0014】
上述のとおり、接着剤を用いて、2つの基板を接着する場合において、接着剤をスピンコート法で塗布すると、接着層の端部に、盛り上がり部ができる。この盛り上がり部は、基板を接着して得られる積層体の厚みムラを引き起こし、平坦性(TTV(Total Thickness Variation))が悪くなる。かかる状況のもと、本発明では、盛り上がり部について、2つ以上のピークを有する構成とし、t < H
n+1 < H
n < t+40/nを満たすようにすることが好ましい。このような構成とすることにより、最端部のピークは、細く長いピークとなり、基板を接着する際に効果的に押しつぶされる。また、n・t/40 < R
n < n・t/8を満たすようにすることにより、中心に近いピークは、幅広く低いピークとなり、ピークがより平坦化されやすくなる。
さらに、基板の端部は、基板が本来的に有する反りや、加工時の接着剤の応力によって変形が生じやすいが、本発明では、中心に近い側のピークで基板の外周を、最も端部のピークで、基板の端面を保持し、その後の加工安定性を向上させることができる。
【0015】
本発明の積層体は、基板上に、溶剤を含む接着剤をスピンコートして、層状にする工程と、上記層状の接着剤の端部の盛り上がり部が、2つ以上のピークとなるように調整する工程を含む製造方法によって製造できる。しかしながら、上記以外の方法で得られた積層体であってもよいことは言うまでもない。
本発明において、接着層の盛り上がり部が2つ以上のピークとなるように調整する方法としては、以下の方法が例示される。
1)溶剤を含んだ接着剤を層状にした状態で、室温以上の温度(例えば、20〜40℃)で、溶剤が十分に充満しながらも結露が生じないよう排気を行いながら、効率的にレベリングすること
2)基板の上に、溶剤を含んだ接着剤を層状にした状態で、基板を回転させながら液体または気体(好ましくは溶剤)を、層状の接着剤の表面の盛り上がり部に接触させること(EBR処理等)
3)溶剤を含んだ接着剤を層状にした状態で、機械的に層状の接着剤の盛り上がり部の一部を除去すること(治具処理等)
上記のいずれの方法も、溶剤を含む接着剤を層状にし、溶剤を乾燥させる工程中で行うことが好ましい。より具体的には、ホットプレートの内部における溶剤の蒸気圧が、用いる溶剤の飽和蒸気圧に近い状態を維持するとともに、ホットプレートの側面に溶剤が結露しホットプレート内の温度が低下したり、結露が接着剤上に落下したりすることの無いよう、装置内に均一に配置された排気孔より適切な風量で排気を行っている態様が好ましい。ホットプレートのヒーターは、基板に対して上下に設けてあることが、装置内の温度分布を少なく抑えることができ、ひいては接着剤のレベリングをより均一に行うことができるためより好ましい。
さらに、本発明では、基板上に、スピンコートにより、接着剤を用いて接着層を形成した後、さらに、接着層の上に、第2の基板を接着させた後、の少なくともどちらかの状態の積層体に対し、バックリンスを用いて、基板の裏面およびベベル部を洗浄することが好ましい。このような手段を採用することにより、装置の搬送アームの汚染を防ぐ共に、より安定的に剥離が行えるという利点がある。
尚、接着剤を層状に適用したあと、接着層を形成するまでの工程において、層状の接着剤と接着層は明確に区別されるものではない。従って、接着層を形成してから、接着層の盛り上がり部に2つ以上のピークを形成する場合も、本発明の積層体の製造方法に含まれることは言うまでもない。
【0016】
本発明で用いる基板は、用途に応じて適宜定めることができる。本発明における基板には、支持体も含む。基板の形状としては、円盤状が好ましい。円盤状とすることにより、加工した際に、割れなどを生じにくくすることができる。また、基板は、接着剤として仮接着剤を用いる場合、被加工基板およびキャリア基板を用いることが好ましい。この場合、仮接着剤を被加工基板側に設けてもよいし、キャリア基板側に設けてもよいし、両方に設けてもよい。
基板としては、シリコン(Si)基板、ゲルマニウム(Ge)基板、窒化ガリウム(GaN)基板、ガリウム砒素(GaAs)基板、インジウムリン(InP)基板および炭化珪素(SiC)基板から選択される半導体基板が例示され、シリコン基板が好ましい。また、上記の他、基板としては、ガラス基板、石英基板およびセラミック基板などの無機基板、ならびに、モールド樹脂およびエポキシ樹脂などの有機基板も好ましく用いられる。
【0017】
本発明における接着層は、熱可塑性樹脂を含む接着剤を用いて形成される。本発明で用いる接着剤は、通常、溶剤を含む接着剤である。接着剤が溶剤を含む場合、スピンコート法等の塗布方法で塗布して層状にするため、端部に盛り上がり部が形成されやすい。本発明で用いる接着剤は、樹脂と溶剤を含むことが好ましい。
接着剤は、上述のとおり、基板と基板とを一時的に固定する仮接着剤であってもよいし、基板と基板を半永久的に固定する永久接着剤であってもよい。本発明では、仮接着剤を用いる場合に特に適している。
以下、本発明で用いることができる接着剤について説明する。
【0018】
<仮接着剤>
<<熱可塑性樹脂>>
本発明で用いる仮接着剤は、熱可塑性樹脂(以下、単に、「樹脂」ということがある)を少なくとも1種含む。
樹脂は、ブロック共重合体、ランダム共重合体、グラフト共重合体が挙げられ、ブロック共重合体が好ましい。ブロック共重合体であれば、加熱プロセス時の仮接着剤の流動を抑えることができるため、加熱プロセス時においても接着を維持でき、また加熱プロセス後でも剥離性が変化しないという効果が期待できる。
【0019】
本発明で用いる仮接着剤において、樹脂はエラストマーが好ましい。樹脂としてエラストマーを使用することで、基板(キャリア基板やデバイスウェハ等の被加工基板)の微細な凹凸にも追従し、適度なアンカー効果により、接着性に優れた仮接着剤を形成できる。エラストマーは、1種または2種以上を併用することができる。
なお、本明細書において、エラストマーとは、弾性変形を示す高分子化合物を表す。すなわち外力を加えたときに、その外力に応じて瞬時に変形し、かつ外力を除いたときには、短時間に元の形状を回復する性質を有する高分子化合物と定義する。
【0020】
<<<エラストマー>>>
本発明において、エラストマーの重量平均分子量は、2,000〜200,000が好ましく、10,000〜200,000がより好ましく、50,000〜100,000がさらに好ましい。重量平均分子量がこの範囲にあるエラストマーは、溶剤への溶解性が優れるため、キャリア基板を被加工基板から剥離した後、溶剤を用いて、被加工基板やキャリア基板の上に残存するエラストマー由来の残渣を除去する際、残渣が容易に溶剤に溶解して除去される。このため、被加工基板やキャリア基板などに残渣が残らないなどの利点がある。
【0021】
本発明において、エラストマーとしては、特に限定されず、スチレン由来の繰り返し単位を含むエラストマー(ポリスチレン系エラストマー)、ポリエステル系エラストマー、ポリオレフィン系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、ポリアクリル系エラストマー、シリコーン系エラストマー、ポリイミド系エラストマーなどが使用できる。特に、ポリスチレン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマーが好ましく、耐熱性と剥離性の観点からポリスチレン系エラストマーがさらに好ましい。
【0022】
本発明において、エラストマーは、水添物であることが好ましい。特に、ポリスチレン系エラストマーの水添物が好ましい。エラストマーが水添物であると、熱安定性や保存安定性が向上する。さらには、剥離性および剥離後の仮接着剤の除去性が向上する。ポリスチレン系エラストマーの水添物を使用した場合、上記効果が顕著である。なお、水添物とは、エラストマーが水添された構造の重合体を意味する。
【0023】
本発明において、エラストマーは、25℃から、20℃/分の昇温速度で昇温した際の5%熱質量減少温度が、250℃以上であることが好ましく、300℃以上であることがより好ましく、350℃以上であることがさらに好ましく、400℃以上であることが一層好ましい。また、上限値は特に限定はないが、例えば1000℃以下が好ましく、800℃以下がより好ましい。この態様によれば、耐熱性に優れた仮接着剤とすることができる。
本発明におけるエラストマーは、元の大きさを100%としたときに、室温(20℃)において小さな外力で200%まで変形させることができ、かつ外力を除いたときに、短時間で130%以下に戻る性質を有することが好ましい。
【0024】
<<<<ポリスチレン系エラストマー>>>>
ポリスチレン系エラストマーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)、ポリスチレン−ポリ(エチレン−プロピレン)ジブロック共重合体(SEP)、ポリスチレン−ポリ(エチレン−プロピレン)−ポリスチレントリブロック共重合体(SEPS)、ポリスチレン−ポリ(エチレン−ブチレン)−ポリスチレントリブロック共重合体(SEBS)、ポリスチレン−ポリ(エチレン/エチレン−プロピレン)−ポリスチレントリブロック共重合体(SEEPS)からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0025】
ポリスチレン系エラストマーにおける、スチレン由来の繰り返し単位の割合は90質量%以下が好ましく、55質量%以下がより好ましく、48質量%以下がさらに好ましく、35質量%以下が一層好ましく、33質量%以下がより一層好ましい。上記スチレン由来の繰り返し単位の割合の下限は、0質量%であってもよいが、10質量%以上とすることもできる。このような範囲とすることにより、基板同士を仮接着剤で貼り合わせてなる積層体の反りをより効果的に抑制することができる。
【0026】
本発明におけるポリスチレン系エラストマーの一実施形態として、スチレン由来の繰り返し単位を全繰り返し単位中に10質量%以上55質量%以下の割合で含有するエラストマーAと、スチレン由来の繰り返し単位を全繰り返し単位中に55質量%を超えて95質量%以下の割合で含有するエラストマーBとを組み合わせて用いることが挙げられる。エラストマーAとエラストマーBとを併用することで、反りの発生を効果的に抑制できる。このような効果が得られるメカニズムは、以下によるものと推測できる。すなわち、エラストマーAは、比較的柔らかい材料であるため、弾性を有する層状の仮接着剤(仮接着層)を形成しやすい。このため、仮接着剤を用いて基板とキャリア基板との積層体を製造し、基板を研磨して薄膜化する際に、研磨時の圧力が局所的に加わっても、仮接着剤(仮接着層)が弾性変形して元の形状に戻り易い。その結果、優れた平坦研磨性が得られる。また、研磨後の、キャリア基板と被加工基板と仮接着剤の積層体を、加熱処理し、その後冷却しても、冷却時に発生する内部応力を仮接着剤(仮接着層)によって、緩和でき、反りの発生を効果的に抑制できる。
また、上記エラストマーBは、比較的硬い材料であるため、エラストマーBを含むことで、剥離性に優れた仮接着剤とすることができる。
【0027】
上記エラストマーAと上記エラストマーBを配合する場合の質量比は、エラストマーA:エラストマーB=1:99〜99:1が好ましく、3:97〜97:3がより好ましく、5:95〜95:5がさらに好ましく、10:90〜90:10が一層好ましい。上記範囲であれば、上述した効果がより効果的に得られる。
【0028】
ポリスチレン系エラストマーは、スチレンと他のモノマーとのブロック共重合体であることが好ましく、片末端または両末端がスチレンブロックであるブロック共重合体であることがより好ましく、両末端がスチレンブロックであることが特に好ましい。ポリスチレン系エラストマーの両端を、スチレンブロック(スチレン由来の繰り返し単位)とすると、耐熱性がより向上する傾向にある。これは、耐熱性の高いスチレン由来の繰り返し単位が末端に存在することとなるためである。特に、スチレン由来の繰り返し単位のブロック部位が反応性のポリスチレン系ハードブロックであることにより、耐熱性、耐薬品性により優れる傾向にあり好ましい。加えて、このようなエラストマーは、溶剤への溶解性およびレジスト溶剤への耐性の観点からもより好ましい。
また、ポリスチレン系エラストマーは水添物であると、熱に対する安定性が向上し、分解や重合等の変質が起こりにくい。さらに、溶剤への溶解性およびレジスト溶剤への耐性の観点からもより好ましい。
ポリスチレン系エラストマーの不飽和二重結合量としては、剥離性の観点から、ポリスチレン系エラストマー1gあたり、15mmol未満であることが好ましく、5mmol未満であることがより好ましく、0.5mmol未満であることがさらに好ましい。なお、ここでいう不飽和二重結合量は、スチレン由来のベンゼン環内の不飽和二重結合を含まない。不飽和二重結合量は、NMR(核磁気共鳴)測定により算出することができる。
【0029】
なお、本明細書において「スチレン由来の繰り返し単位」とは、スチレンまたはスチレン誘導体を重合した際に重合体に含まれるスチレン由来の構造単位であり、置換基を有していてもよい。スチレン誘導体としては、例えば、α−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−プロピルスチレン、4−シクロヘキシルスチレン等が挙げられる。置換基としては、例えば、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、炭素数2〜5のアルコキシアルキル基、アセトキシ基、カルボキシル基等が挙げられる。
【0030】
ポリスチレン系エラストマーの市販品としては、例えば、タフプレンA、タフプレン125、タフプレン126S、ソルプレンT、アサプレンT−411、アサプレンT−432、アサプレンT−437、アサプレンT−438、アサプレンT−439、タフテックH1272、タフテックP1500、タフテックH1052、タフテックH1062、タフテックM1943、タフテックM1911、タフテックH1041、タフテックMP10、タフテックM1913、タフテックH1051、タフテックH1053、タフテックP2000、タフテックH1043(以上、旭化成ケミカルズ(株)製)、エラストマーAR−850C、エラストマーAR−815C、エラストマーAR−840C、エラストマーAR−830C、エラストマーAR−860C、エラストマーAR−875C、エラストマーAR−885C、エラストマーAR−SC−15、エラストマーAR−SC−0、エラストマーAR−SC−5、エラストマーAR−710、エラストマーAR−SC−65、エラストマーAR−SC−30、エラストマーAR−SC−75、エラストマーAR−SC−45、エラストマーAR−720、エラストマーAR−741、エラストマーAR−731、エラストマーAR−750、エラストマーAR−760、エラストマーAR−770、エラストマーAR−781、エラストマーAR−791、エラストマーAR−FL−75N、エラストマーAR−FL−85N、エラストマーAR−FL−60N、エラストマーAR−1050、エラストマーAR−1060、エラストマーAR−1040(以上、アロン化成(株)製)、クレイトンD1111、クレイトンD1113、クレイトンD1114、クレイトンD1117、クレイトンD1119、クレイトンD1124、クレイトンD1126、クレイトンD1161、クレイトンD1162、クレイトンD1163、クレイトンD1164、クレイトンD1165、クレイトンD1183、クレイトンD1193、クレイトンDX406、クレイトンD4141、クレイトンD4150、クレイトンD4153、クレイトンD4158、クレイトンD4270、クレイトンD 4271、クレイトンD 4433、クレイトンD 1170、クレイトンD 1171、クレイトンD 1173、カリフレックスIR0307、カリフレックスIR 0310、カリフレックスIR 0401、クレイトンD0242、クレイトンD1101、クレイトンD1102、クレイトンD1116、クレイトンD1118、クレイトンD1133、クレイトンD1152、クレイトンD1153、クレイトンD1155、クレイトンD1184、クレイトンD1186、クレイトンD1189、クレイトンD1191、クレイトンD1192、クレイトンDX405、クレイトンDX408、クレイトンDX410、クレイトンDX414、クレイトンDX415、クレイトンA1535、クレイトンA1536、クレイトンFG1901、クレイトンFG1924、クレイトンG1640、クレイトンG1641、クレイトンG1642、クレイトンG1643、クレイトンG1645、クレイトンG1633、クレイトンG1650、クレイトンG1651、クレイトンG1652(G1652MU−1000)、クレイトンG1654、クレイトンG1657、クレイトンG1660、クレイトンG1726、クレイトンG1701、クレイトンG1702、クレイトンG1730、クレイトンG1750、クレイトンG1765、クレイトンG4609、クレイトンG4610(以上、クレイトンポリマージャパン(株)製)、TR2000、TR2001、TR2003、TR2250、TR2500、TR2601、TR2630、TR2787、TR2827、TR1086、TR1600、SIS5002、SIS5200、SIS5250、SIS5405、SIS5505、ダイナロン6100P、ダイナロン4600P、ダイナロン6200P、ダイナロン4630P、ダイナロン8601P、ダイナロン8630P、ダイナロン8600P、ダイナロン8903P、ダイナロン6201B、ダイナロン1321P、ダイナロン1320P、ダイナロン2324P、ダイナロン9901P(以上、JSR(株)製)、デンカSTRシリーズ(電気化学工業(株)製)、クインタック3520、クインタック3433N、クインタック3421、クインタック3620、クインタック3450、クインタック3460(以上、日本ゼオン製)、TPE−SBシリーズ(住友化学(株)製)、ラバロンシリーズ(三菱化学(株)製)、セプトン1001、セプトン1020、セプトン2002、セプトン2004、セプトン2005、セプトン2006、セプトン2007、セプトン2063、セプトン2104、セプトン4033、セプトン4044、セプトン4055、セプトン4077、セプトン4099、セプトンHG252、セプトン8004、セプトン8006、セプトン8007、セプトン8076、セプトン8104、セプトンV9461、セプトンV9475、セプトンV9827、ハイブラー7311、ハイブラー7125、ハイブラー5127、ハイブラー5125(以上、(株)クラレ製)、スミフレックス(住友ベークライト(株)製)、レオストマー、アクティマー(以上、リケンテクノス(株)製)などが挙げられる。
【0031】
<<<<ポリエステル系エラストマー>>>>
ポリエステル系エラストマーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、ジカルボン酸またはその誘導体と、ジオール化合物またはその誘導体とを重縮合して得られるものが挙げられる。
ジカルボン酸としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸およびこれらの芳香環の水素原子がメチル基、エチル基、フェニル基等で置換された芳香族ジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸等の炭素数2〜20の脂肪族ジカルボン酸、およびシクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式ジカルボン酸などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。
ジオール化合物としては、例えば、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,10−デカンジオール、1,4−シクロヘキサンジオールなどの脂肪族ジオール、脂環式ジオール、下記構造式で表される2価のフェノールなどが挙げられる。
【0033】
上記式中、Y
DOは、炭素数2〜10のアルキレン基、炭素数4〜8のシクロアルキレン基、−O−、−S−、および−SO
2−のいずれかを表すか、単結合を表す。R
DO1およびR
DO2は各々独立に、ハロゲン原子または炭素数1〜12のアルキル基を表す。p
do1およびp
do2はそれぞれ独立に、0〜4の整数を表し、n
do1は、0または1を表す。
【0034】
2価のフェノールの具体例としては、ビスフェノールA、ビス−(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス−(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、レゾルシンなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上併用して用いてもよい。
また、ポリエステル系エラストマーとして、芳香族ポリエステル(例えば、ポリブチレンテレフタレート)部分をハードセグメント成分に、脂肪族ポリエステル(例えば、ポリテトラメチレングリコール)部分をソフトセグメント成分にしたマルチブロック共重合体を用いることもできる。マルチブロック共重合体としては、ハードセグメントとソフトセグメントとの種類、比率、および分子量の違いによりさまざまなグレードのものが挙げられる。具体例としては、ハイトレル(東レ・デュポン(株)製)、ペルプレン(東洋紡(株)製)、プリマロイ(三菱化学(株)製)、ヌーベラン(帝人(株)製)、エスペル1612、1620(以上、日立化成工業(株)製)などが挙げられる。
【0035】
<<<<ポリオレフィン系エラストマー>>>>
ポリオレフィン系エラストマーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン等の炭素数2〜20のα−オレフィンの共重合体などが挙げられる。例えば、エチレン−プロピレン共重合体(EPR)、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体(EPDM)等が挙げられる。また、ジシクロペンタジエン、1,4−ヘキサジエン、シクロオクタジエン、メチレンノルボルネン、エチリデンノルボルネン、ブタジエン、イソプレンなどの炭素数2〜20の非共役ジエンとα−オレフィンの共重合体などが挙げられる。また、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体にメタクリル酸を共重合したカルボキシ変性ニトリルゴムが挙げられる。具体的には、エチレン・α−オレフィンの共重合体ゴム、エチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体ゴム、プロピレン・α−オレフィンの共重合体ゴム、ブテン・α−オレフィンの共重合体ゴムなどが挙げられる。
市販品として、ミラストマー(三井化学(株)製)、サーモラン(三菱化学(株)製)EXACT(エクソンモービル製)、ENGAGE(ダウ・ケミカル日本(株)製)、エスポレックス(住友化学(株)製)、Sarlink(東洋紡(株)製)、ニューコン(日本ポリプロ(株)製)、EXCELINK(JSR(株)製)などが挙げられる。
【0036】
<<<<ポリウレタン系エラストマー>>>>
ポリウレタン系エラストマーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、低分子のグリコールおよびジイソシアネートからなるハードセグメントと、高分子(長鎖)ジオールおよびジイソシアネートからなるソフトセグメントとの構造単位を含むエラストマーなどが挙げられる。
高分子(長鎖)ジオールとしては、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンオキサイド、ポリ(1,4−ブチレンアジペート)、ポリ(エチレン・1,4−ブチレンアジペート)、ポリカプロラクトン、ポリ(1,6−ヘキシレンカーボネート)、ポリ(1,6−ヘキシレン・ネオペンチレンアジペート)などが挙げられる。高分子(長鎖)ジオールの数平均分子量は、500〜10,000が好ましい。
低分子のグリコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ビスフェノールA等の短鎖ジオールを用いることができる。短鎖ジオールの数平均分子量は、48〜500が好ましい。
ポリウレタン系エラストマーの市販品としては、PANDEX T−2185、T−2983N(以上、DIC(株)製)、ミラクトラン(日本ミラクトラン(株)製)、エラストラン(BASFジャパン(株)製)、レザミン(大日精化工業(株)製)、ペレセン(ダウ・ケミカル日本(株)製)、アイアンラバー(NOK(株)製)、モビロン(日清紡ケミカル(株)製)などが挙げられる。
【0037】
<<<<ポリアミド系エラストマー>>>>
ポリアミド系エラストマーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、ポリアミド6、11、12などのポリアミドをハードセグメントに用い、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリテトラメチレングリコールなどのポリエーテルおよびポリエステルのうちの少なくとも一方をソフトセグメントに用いたエラストマーなどが挙げられる。このエラストマーは、ポリエーテルブロックアミド型、ポリエーテルエステルブロックアミド型の2種に大別される。
市販品として、UBEポリアミドエラストマー、UBESTA XPA(宇部興産(株)製)、ダイアミド(ダイセルエボニック(株)製)、PEBAX(ARKEMA社製)、グリロンELX(エムスケミージャパン(株)製)、ノパミッド(三菱化学(株)製)、グリラックス(東洋紡製)、ポリエーテルエステルアミドPA−200、PA−201、TPAE−12、TPAE−32、ポリエステルアミドTPAE−617、TPAE−617C(以上、(株)T&K TOKA製)などが挙げられる。
【0038】
<<<<ポリアクリル系エラストマー>>>>
ポリアクリル系エラストマーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、メトキシエチルアクリレート、エトキシエチルアクリレートなどのアクリル酸エステルをモノマー材料の主成分としたものや、アクリル酸エステルと、グリシジルメタクリレート、アリルグリシジルエーテルなどを共重合した共重合体が挙げられる。さらに、アクリル酸エステルと、アクリロニトリルやエチレンなどの架橋点モノマーとを共重合してなるものなどが挙げられる。具体的には、アクリロニトリル−ブチルアクリレート共重合体、アクリロニトリル−ブチルアクリレート−エチルアクリレート共重合体、アクリロニトリル−ブチルアクリレート−グリシジルメタクリレート共重合体などが挙げられる。
【0039】
<<<<その他エラストマー>>>>
本発明では、エラストマーとして、ゴム変性したエポキシ樹脂(エポキシ系エラストマー)を用いることができる。エポキシ系エラストマーは、例えば、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、サリチルアルデヒド型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂あるいはクレゾールノボラック型エポキシ樹脂の一部または全部のエポキシ基を、両末端カルボン酸変性型ブタジエン−アクリロニトリルゴム、末端アミノ変性シリコーンゴム等で変性することによって得られる。
【0040】
<<<他の高分子化合物>>>
本発明では、熱可塑性樹脂として、上述した熱可塑性樹脂以外の他の高分子化合物(他の高分子化合物ともいう)を用いることができる。他の高分子化合物は、1種または2種以上を併用することができる。
他の高分子化合物の具体例としては、例えば、炭化水素樹脂、ノボラック樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、熱可塑性ポリイミド樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリアリレート樹脂、シロキサン共重合体などが挙げられる。なかでも、炭化水素樹脂、熱可塑性ポリイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂が好ましく、炭化水素樹脂がより好ましい。
また、本発明では、樹脂として後述するフッ素原子を含むものを用いることができるが、フッ素原子を含む樹脂(以下、フッ素樹脂ともいう)は、実質的に含まないことが好ましい。フッ素樹脂を実質的に含まないとは、フッ素樹脂の含有量が、樹脂の全質量に対し、例えば、0.1質量%以下のことをいい、0.05質量%以下が好ましく、全く含有しないことがより好ましい。
【0041】
本発明において、炭化水素樹脂として任意のものを使用できる。
炭化水素樹脂は、基本的には炭素原子と水素原子のみからなる樹脂を意味するが、基本となる骨格が炭化水素樹脂であれば、側鎖としてその他の原子を含んでいてもよい。すなわち、炭素原子と水素原子のみからなる炭化水素樹脂に、アクリル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂のように、主鎖に炭化水素基以外の官能基が直接結合する場合も本発明における炭化水素樹脂に包含されるものであり、この場合、主鎖に炭化水素基が直接結合されてなる繰り返し単位の含有量が、樹脂の全繰り返し単位に対して30モル%以上であることが好ましい。
上記条件に合致する炭化水素樹脂としては例えば、テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、変性テルペン樹脂、水添テルペン樹脂、水添テルペンフェノール樹脂、ロジン、ロジンエステル、水添ロジン、水添ロジンエステル、重合ロジン、重合ロジンエステル、変性ロジン、ロジン変性フェノール樹脂、アルキルフェノール樹脂、脂肪族石油樹脂、芳香族石油樹脂、水添石油樹脂、変性石油樹脂、脂環族石油樹脂、クマロン石油樹脂、インデン石油樹脂、ポリスチレン−ポリオレフィン共重合体、オレフィンポリマー(例えば、メチルペンテン共重合体)、およびシクロオレフィンポリマー(例えば、ノルボルネン系共重合体、ジシクロペンタジエン共重合体、テトラシクロドデセン共重合体)などが挙げられる。
【0042】
本発明におけるアクリル樹脂は、(メタ)アクリレートモノマーを重合して得られる樹脂である。
(メタ)アクリレートモノマーとしては、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、n−ノニル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、n−デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、フェニルメタ(アクリレート)、ベンジルメタ(アクリレート)、および2−メチルブチル(メタ)アクリレートが例示される。
また、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、他のモノマーを共重合してもよい。他のモノマーを共重合する場合、他のモノマーの量は、全モノマーの10モル%以下が好ましい。
また、上記の他、三菱レイヨン(株)製、アクリペット MF 001、スリーエム ジャパン(株)製、LC−5320 F1035などが例示される。
【0043】
本発明では、また、オルガノポリシロキサンを側鎖に有するアクリル樹脂も好ましい。オルガノポリシロキサンを側鎖に有するアクリル樹脂としては、下記式(3)で表されるアクリル樹脂が挙げられる。
式(3)
【化2】
上記式(3)中、R
1は複数ある場合は同じでも異なっていてもよく、−CH
3、−C
2H
5、−CH
3(CH
2)
2または−CH
3(CH
2)
3を示す。R
2は複数ある場合は同じでも異なっていてもよく、−H、−CH
3、−C
2H
5、−CH
3(CH
2)
2または−CH
3(CH
2)
3を示す。R
3は複数ある場合は同じでも異なっていてもよく、−Hまたは−CH
3を示す。R
4は複数ある場合は同じでも異なっていてもよく、−H、−CH
3、−C
2H
5、−CH
3(CH
2)
2、−CH
3(CH
2)
3、またはエポキシ基、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、アルコキシ基、ビニル基、シラノール基およびイソシアネート基からなる群より選ばれた少なくとも1種の官能基で置換された炭素数1〜6のアルキル基を示す。 aは50〜150であり、bは50〜150であり、cは80〜600である。また、mは1〜10である。
オルガノポリシロキサンを側鎖に有するアクリル樹脂の具体例としては、信越化学工業(株)製、シリコーングラフトアクリル樹脂、商品名:X−24−798A、X−22−8004(R
4:C
2H
4OH、官能基当量:3250(g/mol))、X−22−8009(R
4:Si(OCH
3)
3含有アルキル基、官能基当量:6200(g/mol))、X−22−8053(R
4:H、官能基当量:900(g/mol))、X−22−8084、X−22−8084EM、X−22−8195(R
4:H、官能基当量:2700(g/mol))、東亞合成(株)製サイマックシリーズ(US−270、US−350、US−352、US−380、US−413、US−450等)、レゼタGS−1000シリーズ(GS−1015、GS−1302等)等が挙げられる。
【0044】
シクロオレフィンポリマーとしては、ノルボルネン系重合体、単環の環状オレフィンの重合体、環状共役ジエンの重合体、ビニル脂環式炭化水素重合体、およびこれら重合体の水素化物などが挙げられる。シクロオレフィンポリマーの好ましい例としては、下記式(II)で表される繰り返し単位を少なくとも1種以上含む付加(共)重合体、および、式(I)で表される繰り返し単位の少なくとも1種以上をさらに含んでなる付加(共)重合体が挙げられる。また、シクロオレフィンポリマーの他の好ましい例としては、式(III)で表される環状繰り返し単位を少なくとも1種含む開環(共)重合体が挙げられる。
【0046】
式中、mは0〜4の整数を表す。R
1〜R
6は、それぞれ、水素原子または炭素数1〜10の炭化水素基を表し、X
1〜X
3、および、Y
1〜Y
3は、それぞれ、水素原子、炭素数1〜10の炭化水素基、ハロゲン原子、ハロゲン原子で置換された炭素数1〜10の炭化水素基、−(CH
2)
nCOOR
11、−(CH
2)
nOCOR
12、−(CH
2)
nNCO、−(CH
2)
nNO
2、−(CH
2)
nCN、−(CH
2)
nCONR
13R
14、−(CH
2)
nNR
15R
16、−(CH
2)
nOZ、−(CH
2)
nW、または、X
1とY
1、X
2とY
2、若しくはX
3とY
3から構成された(−CO)
2O、(−CO)
2NR
17を表す。R
11、R
12、R
13、R
14、R
15、R
16およびR
17は、それぞれ、水素原子、または、炭化水素基(好ましくは炭素数1〜20の炭化水素基)、Zは、炭化水素基、または、ハロゲンで置換された炭化水素基を表し、Wは、SiR
18pD
3−p(R
18は炭素数1〜10の炭化水素基を表し、Dはハロゲン原子を表し、−OCOR
18または−OR
18を表し、pは0〜3の整数を示す)を表す。nは0〜10の整数を表す。
【0047】
ノルボルネン系重合体は、特開平10−7732号公報、特表2002−504184号公報、US2004/229157A1号公報あるいはWO2004/070463A1号公報等に開示されている。ノルボルネン系重合体は、ノルボルネン系多環状不飽和化合物同士を付加重合することによって得ることができる。また、必要に応じ、ノルボルネン系多環状不飽和化合物と、エチレン、プロピレン、ブテン;ブタジエン、イソプレンのような共役ジエン;エチリデンノルボルネンのような非共役ジエンとを付加重合することもできる。ノルボルネン系重合体は、三井化学(株)よりアペルの商品名で発売されており、ガラス転移温度(Tg)の異なる例えばAPL8008T(Tg70℃)、APL6013T(Tg125℃)あるいはAPL6015T(Tg145℃)などのグレードがある。ポリプラスチック(株)よりTOPAS8007、同5013、同6013、同6015などのペレットが発売されている。さらに、Ferrania社よりAppear3000が発売されている。
【0048】
ノルボルネン系重合体の水素化物は、特開平1−240517号公報、特開平7−196736号公報、特開昭60−26024号公報、特開昭62−19801号公報、特開2003−1159767号公報あるいは特開2004−309979号公報等に開示されているように、多環状不飽和化合物を付加重合あるいはメタセシス開環重合した後、水素添加することにより製造できる。
式(III)中、R
5およびR
6は、水素原子またはメチル基であることが好ましく、X
3およびY
3は水素原子であることがより好ましく、その他の基は適宜選択される。ノルボルネン系重合体は、JSR(株)からアートン(Arton)GあるいはアートンFという商品名で発売されており、また日本ゼオン(株)からゼオノア(Zeonor)ZF14、ZF16、ゼオネックス(ZEONEX)250、同280、同480Rという商品名で市販されており、これらを使用することができる。
【0049】
シロキサン重合体としては、下記式(1)で示される繰り返し単位を有するシロキサン重合体が好ましい。
【0050】
【化4】
式(1)中、R
1〜R
4は同一でも異なっていてもよい炭素数1〜8のアルキル基等の1価炭化水素基を示す。mは1〜100の整数であり、Bは正の整数、Aは0または正の整数である。Xは下記式(2)で示される2価の有機基である。
【化5】
式(2)中、Zは、以下のいずれかの構造単位から選ばれる2価の有機基であり、nは0または1である。R
5、R
6は、それぞれ独立に、炭素数1〜4のアルキル基または炭素数2〜4のアルコキシ基であり、相互に同一でも異なっていてもよい。kは、それぞれ独立に、0、1、2のいずれかである。
【化6】
【0051】
式(1)において、R
1〜R
4の具体例としては、メチル基、エチル基、フェニル基等が挙げられ、mは、好ましくは3〜60、より好ましくは8〜40の整数である。また、B/Aは0〜20、特に0.5〜5である。
【0052】
上記シロキサン重合体の詳細については、特開2013−243350号公報の段落番号0038〜0044の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0053】
また、シロキサン重合体として、熱可塑性シロキサン重合体を用いることができる。
熱可塑性シロキサン重合体は、R
21R
22R
23SiO
1/2単位(R
21、R
22、R
23はそれぞれ、非置換または置換の炭素数1〜10の1価炭化水素基または水酸基である。)およびSiO
4/2単位を含有し、上記R
21R
22R
23SiO
1/2単位/SiO
4/2単位のモル比が0.6〜1.7であるオルガノポリシロキサンと、下記式(4)で表わされるオルガノポリシロキサンとが、部分的に脱水縮合したものであって、上記脱水縮合させるオルガノポリシロキサンと上記オルガノポリシロキサンとの比率が、99:1〜50:50であり、重量平均分子量が200,000〜1,500,000であることが好ましい。
式(4)
【化7】
(式(4)中、R
11およびR
12はそれぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数1〜10の1価の炭化水素基を示し、nは5000〜10000である。)
【0054】
上記式(4)において、R
11およびR
12は、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、シクロペンチル基、n−ヘキシル基等のアルキル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、フェニル基、トリル基等のアリール基などの炭化水素基、これら炭化水素基の水素原子の一部または全部がハロゲン原子で置換された基が好ましく、より好ましくはメチル基およびフェニル基である。
【0055】
熱可塑性オルガノポリシロキサンの重量平均分子量は、好ましくは200,000以上、より好ましくは350,000以上、かつ、好ましくは1,500,000以下、さらに好ましくは1,000,000以下である。また、分子量が740以下の低分子量成分含有量が好ましくは0.5質量%以下、より好ましくは0.1質量%以下である。
市販品としては、SILRES 604(旭化成ワッカーシリコーン社製)が例示される。
【0056】
熱可塑性ポリイミド樹脂は、テトラカルボン酸二無水物とジアミンを公知の方法で縮合反応させて得られるものを用いることができる。
公知の方法としては、例えば、有機溶剤中で、テトラカルボン酸二無水物とジアミンを略等モル混合し、反応温度80℃以下で反応させて得られたポリアミック酸を脱水閉環させる方法などが挙げられる。ここで、略等モルとは、テトラカルボン酸二無水物とジアミンのモル比が1:1近傍であることを言う。なお、必要に応じて、テトラカルボン酸二無水物とジアミンの組成比が、テトラカルボン酸二無水物の合計1.0モルに対して、ジアミンの合計が0.5〜2.0モルとなるように調整してもよい。テトラカルボン酸二無水物とジアミンの組成比を上記の範囲内で調整することによって、熱可塑性ポリイミド樹脂の重量平均分子量を調整することができる。
【0057】
テトラカルボン酸二無水物としては、特に限定されるものではないが、例えば、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ベンゼン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、3,4,3’,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3,2’,3’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,6−ジクロロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、2,7−ジクロロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−テトラクロロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、フェナントレン−1,8,9,10−テトラカルボン酸二無水物、ピラジン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、チオフェン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,4,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,2’,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ジメチルシラン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メチルフェニルシラン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ジフェニルシラン二無水物、1,4−ビス(3,4−ジカルボキシフェニルジメチルシリル)ベンゼン二無水物、1,3−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,3,3−テトラメチルジシクロヘキサン二無水物、p−フェニレンビス(トリメリテート無水物)、エチレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸二無水物、デカヒドロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、4,8−ジメチル−1,2,3,5,6,7−ヘキサヒドロナフタレン−1,2,5,6−テトラカルボン酸二無水物、シクロペンタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、ピロリジン−2,3,4,5−テトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、ビス(オキサビシクロ〔2,2,1〕ヘプタン−2,3−ジカルボン酸二無水物、ビシクロ−〔2,2,2〕−オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2’−ビス〔4−(3,4−ジカルボキシフェニル)フェニル〕プロパン二無水物、2,2’−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物、2,2’−ビス〔4−(3,4−ジカルボキシフェニル)フェニル〕ヘキサフルオロプロパン二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルフィド二無水物、1,4−ビス(2−ヒドロキシヘキサフルオロイソプロピル)ベンゼンビス(トリメリット酸無水物)、1,3−ビス(2−ヒドロキシヘキサフルオロイソプロピル)ベンゼンビス(トリメリット酸無水物)、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフリル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸二無水物、テトラヒドロフラン−2,3,4,5−テトラカルボン酸二無水物、4,4’,−オキシジフタル酸二無水物、1,2−(エチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,3−(トリメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,4−(テトラメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,5−(ペンタメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,6−(ヘキサメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,7−(ヘプタメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,8−(オクタメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,9−(ノナメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,10−(デカメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,12−(ドデカメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,16−(ヘキサデカメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,18−(オクタデカメチレン)ビス(トリメリテート無水物)等を挙げることができ、これらを1種単独でまたは2種以上を組合せて用いることができる。これらの中でも、3,4,3’,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3,2’,3’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物が好ましく、3,4,3’,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物がより好ましい。
【0058】
ジアミンとしては特に制限はなく、例えば、o−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、ビス(4−アミノ−3,5−ジメチルフェニル)メタン、ビス(4−アミノ−3,5−ジイソプロピルフェニル)メタン、3,3’−ジアミノジフェニルジフルオロメタン、3,4’−ジアミノジフェニルジフルオロメタン、4,4’−ジアミノジフェニルジフルオロメタン、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、3,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルケトン、3,4’−ジアミノジフェニルケトン、4,4’−ジアミノジフェニルケトン、3−(4−アミノフェニル)−1,1,3−トリメチル−5−アミノインダン、2,2−ビス(3−アミノフェニル)プロパン、2,2’−(3,4’−ジアミノジフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−(3,4’−ジアミノジフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、3,3’−(1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン))ビスアニリン、3,4’−(1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン))ビスアニリン、4,4’−(1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン))ビスアニリン、2,2−ビス(4−(3−アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(3−アミノフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(4−(3−アミノエトキシ)フェニル)スルフィド、ビス(4−(4−アミノエトキシ)フェニル)スルフィド、ビス(4−(3−アミノエトキシ)フェニル)スルホン、ビス(4−(4−アミノエトキシ)フェニル)スルホン、3,3’−ジヒドロキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、3,5−ジアミノ安息香酸等の芳香族ジアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、2,2−ビス(4−アミノフェノキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレンジアミン、4,9−ジオキサドデカン−1,12−ジアミン、4,9,14−トリオキサへプタデカン−1,17−ジアミン、1,2−ジアミノエタン、1,3−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタン、1,5−ジアミノペンタン、1,6−ジアミノヘキサン、1,7−ジアミノヘプタン、1,8−ジアミノオクタン、1,9−ジアミノノナン、1,10−ジアミノデカン、1,11−ジアミノウンデカン、1,12−ジアミノドデカン、1,2−ジアミノシクロヘキサン、1,3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン等を挙げることができる。
これらのジアミンの中でも、3−(4−アミノフェニル)−1,1,3−トリメチル−5−アミノインダン、1,3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン、ポリオキシプロピレンジアミン、2,2−ビス(4−アミノフェノキシフェニル)プロパン、4,9−ジオキサドデカン−1,12−ジアミン、1,6−ジアミノヘキサン、および、4,9,14−トリオキサへプタデカン−1,17−ジアミンからなる群から選択される1種以上が好ましく、3−(4−アミノフェニル)−1,1,3−トリメチル−5−アミノインダンがより好ましい。
【0059】
上記テトラカルボン酸二無水物とジアミンとの反応に用いられる溶剤としては、例えば、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミドが挙げられる。原材料等の溶解性を調整するために、非極性溶剤(例えば、トルエンや、キシレン)を併用してもよい。
上記テトラカルボン酸二無水物とジアミンとの反応温度は、好ましくは100℃未満、さらに好ましくは90℃未満である。また、ポリアミック酸のイミド化は、代表的には不活性雰囲気(代表的には、真空または窒素雰囲気)下で加熱処理することにより行われる。加熱処理温度は、好ましくは150℃以上、さらに好ましくは180〜450℃である。
【0060】
熱可塑性ポリイミド樹脂の重量平均分子量(Mw)は、10,000〜1000,000が好ましく、20,000〜100,000がより好ましい。
【0061】
本発明において、熱可塑性ポリイミド樹脂は、γ−ブチロラクトン、シクロペンタノン、N−メチルピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、シクロヘキサノン、グリコールエーテル、ジメチルスルホキシドおよびテトラメチルウレアから選ばれる少なくとも1種の溶剤に対する25℃での溶解度が10質量%以上の熱可塑性ポリイミド樹脂が好ましい。
このような溶解度を有する熱可塑性ポリイミド樹脂としては、例えば、3,4,3’,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物と、3−(4−アミノフェニル)−1,1,3−トリメチル−5−アミノインダンとを反応させて得られる熱可塑性ポリイミド樹脂などが挙げられる。この熱可塑性ポリイミド樹脂は、耐熱性が特に優れる。
【0062】
熱可塑性ポリイミド樹脂は、市販品を用いてもよい。例えば、Durimide(登録商標) 200、208A、284(以上、富士フイルム(株)製)、GPT−LT(群栄化学工業(株)製)、SOXR−S、SOXR−M、SOXR−U、SOXR−C(以上、ニッポン高度紙工業(株)製)、EXTEM VH1003、VH1003F、VH1003M、XH1015(以上、SABICジャパン合同会社製)などが挙げられる。
【0063】
本発明において、ポリカーボネート樹脂は、式(11)で表される繰り返し単位を有することが好ましい。
【0064】
式(11)
【化8】
式(11)中、Ar
1およびAr
2は、それぞれ独立に芳香族基を表し、Lは、単結合または2価の連結基を表す。
【0065】
式(11)におけるAr
1およびAr
2は、それぞれ独立に芳香族基を表す。芳香族基としては、ベンゼン環、ナフタレン環、ペンタレン環、インデン環、アズレン環、ヘプタレン環、インダセン環、ペリレン環、ペンタセン環、アセナフテン環、フェナントレン環、アントラセン環、ナフタセン環、クリセン環、トリフェニレン環、フルオレン環、ビフェニル環、ピロール環、フラン環、チオフェン環、イミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、インドリジン環、インドール環、ベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環、イソベンゾフラン環、キノリジン環、キノリン環、フタラジン環、ナフチリジン環、キノキサリン環、キノキサゾリン環、イソキノリン環、カルバゾール環、フェナントリジン環、アクリジン環、フェナントロリン環、チアントレン環、クロメン環、キサンテン環、フェノキサチイン環、フェノチアジン環、および、フェナジン環が挙げられる。なかでも、ベンゼン環が好ましい。
これらの芳香族基は、置換基を有していてもよいが、有していない方が好ましい。
芳香族基が有していてもよい置換基の例としては、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基などが挙げられる。
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
アルキル基としては、炭素数1〜30のアルキル基が挙げられる。アルキル基の炭素数は、1〜20がより好ましく、1〜10がさらに好ましい。アルキル基は、直鎖、分岐のいずれであってもよい。また、アルキル基の水素原子の一部または全部は、ハロゲン原子で置換されていてもよい。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、フッ素原子が好ましい。
アルコキシ基としては、炭素数1〜30のアルコキシ基が好ましい。アルコキシ基の炭素数は、1〜20がより好ましく、1〜10がさらに好ましい。アルコキシ基は、直鎖、分岐、環状のいずれでもよい。
アリール基としては、炭素数6〜30のアリール基が好ましく、炭素数6〜20のアリール基がより好ましい。
【0066】
ポリカーボネート樹脂の、重量平均分子量(Mw)は、1,000〜1,000,000であることが好ましく、10,000〜80,000であることがより好ましい。上記範囲であれば、溶剤への溶解性、耐熱性が良好である。
【0067】
ポリカーボネート樹脂の市販品としては、例えば、PCZ−200、PCZ−300、PCZ−500、PCZ−800(以上、三菱ガス化学(株)製)、APEC9379(バイエル製)、パンライトL−1225LM(帝人(株)製)などが挙げられる。
【0068】
<<<熱可塑性樹脂樹脂の引張弾性率E>>>
上記樹脂は、25℃における、JIS(日本工業規格) K 7161:1994に準拠した、引張弾性率Eが1MPa以上4000MPa以下であることが好ましく、1MPa以上100MPa以下であることがより好ましく、1MPa以上60MPa以下であることがさらに好ましく、1MPa以上35MPa以下であることが一層好ましく、1MPa以上20MPa以下であることがより一層好ましく、1MPa以上15MPa以下であることがさらに一層好ましく、3MPa以上10MPa以下であることが特に一層好ましい。このような範囲にすることにより、反りをより効果的に抑制することが可能になる。
【0069】
<<<熱可塑性樹脂の配合量>>>
本発明で用いる仮接着剤は、熱可塑性樹脂を、仮接着剤の全固形分(溶剤を除いた全成分)中に50.00〜99.99質量%の割合で含むことが好ましく、70.00〜99.99質量%がより好ましく、88.00〜99.99質量%が特に好ましい。熱可塑性樹脂の含有量が上記範囲であれば、接着性および剥離性に優れる。
熱可塑性樹脂としてエラストマーを用いる場合、エラストマーは、仮接着剤の全固形分中に50.00〜99.99質量%の割合で含むことが好ましく、70.00〜99.99質量%がより好ましく、88.00〜99.99質量%が特に好ましい。エラストマーの含有量が上記範囲であれば、接着性および剥離性に優れる。エラストマーを2種以上使用した場合は、合計が上記範囲であることが好ましい。
また、樹脂としてエラストマーを用いる場合、樹脂全質量におけるエラストマーの含有量は、50〜100質量%が好ましく、70〜100質量%がより好ましく、80〜100質量%がさらに好ましく、90〜100質量%が一層好ましい。また、樹脂は、実質的にエラストマーのみであってもよい。なお、樹脂が、実質的にエラストマーのみである場合、樹脂全質量におけるエラストマーの含有量が、99質量%以上が好ましく、99.9質量%以上がより好ましく、エラストマーのみからなることが一層好ましい。
【0070】
<<離型剤>>
本発明で用いる仮接着剤は、離型剤を含むことが好ましい。離型剤としては、フッ素原子を含む化合物およびシリコン原子を含む化合物が例示され、シリコン原子を含む化合物が好ましく、シリコーン化合物がさらに好ましい。
シリコーン化合物としては、Si−O結合を含む化合物であり、ポリエーテル変性シリコーン、シランカップリング剤、シリコーン樹脂、シリコーンゴム、環状シロキサンなどの低分子量シリコーンが例示され、ポリエーテル変性シリコーンであることが好ましい。
シリコーン化合物の屈折率は、1.350〜1.480が好ましく、1.390〜1.440がより好ましく、1.400〜1.430がさらに好ましい。
シリコーン化合物を280℃、N
2気流下で30分加熱した際の重量減少率は、0〜70%が好ましく、5〜50%がより好ましく、10〜30%がさらに好ましい。
【0071】
本発明で用いるポリエーテル変性シリコーンは、式(A)で表される比率が80%以上であることが好ましい。
式(A) {(MO+EO)/AO}×100
上記式(A)中、MOは、ポリエーテル変性シリコーン中のポリエーテル構造に含まれるメチレンオキシドのモル%であり、EOは、ポリエーテル変性シリコーン中のポリエーテル構造に含まれるエチレンオキシドのモル%であり、AOは、ポリエーテル変性シリコーン中のポリエーテル構造に含まれるアルキレンオキシドのモル%をいう。
上記式(A)で表される比率は、90%以上であることが好ましく、95%以上であることがより好ましく、98%以上であることがさらに好ましく、99%以上であることが一層好ましく、100%がより一層好ましい。
【0072】
ポリエーテル変性シリコーンの重量平均分子量は、500〜100000が好ましく、1000〜50000がより好ましく、2000〜40000がさらに好ましい。
【0073】
本発明において、ポリエーテル変性シリコーンは、ポリエーテル変性シリコーンを窒素気流60mL/分のもと、20℃から280℃まで20℃/分の昇温速度で昇温し、280℃の温度で30分間保持したときの質量減少率が50質量%以下であることが好ましい。このような化合物を用いることにより、加熱を伴う基板の加工後の面状がより向上する傾向にある。上記ポリエーテル変性シリコーンの質量減少率は、45質量%以下が好ましく、40質量%以下がより好ましく、35質量%以下がさらに好ましく、30質量%以下が一層好ましい。上記ポリエーテル変性シリコーンの質量減少率の下限値は0質量%であってもよいが、15質量%以上、さらには20質量%以上でも十分に実用レベルである。
【0074】
本発明において、ポリエーテル変性シリコーンの光の屈折率は、1.440以下であることが好ましい。下限値については、特に定めるものではないが、1.400以上であっても十分実用レベルである。
【0075】
本発明で用いるポリエーテル変性シリコーンは、下記式(101)〜式(104)のいずれかで表されるポリエーテル変性シリコーンが好ましい。
式(101)
【化9】
上記式(101)中、R
11およびR
16は、それぞれ独立に、置換基であり、R
12およびR
14は、それぞれ独立に、2価の連結基であり、R
13およびR
15は、水素原子または炭素数1〜5のアルキル基であり、m11、m12、n1およびp1は、それぞれ独立に0〜20の数であり、x1およびy1は、それぞれ独立に2〜100の数である。
式(102)
【化10】
上記式(102)中、R
21、R
25およびR
26は、それぞれ独立に、置換基であり、R
22は、2価の連結基であり、R
23は、水素原子または炭素数1〜5のアルキル基であり、m2およびn2は、それぞれ独立に0〜20の数であり、x2は、2〜100の数である。
式(103)
【化11】
上記式(103)中、R
31およびR
36は、それぞれ独立に、置換基であり、R
32およびR
34は、それぞれ独立に、2価の連結基であり、R
33およびR
35は、水素原子または炭素数1〜5のアルキル基であり、m31、m32、n3およびp3は、それぞれ独立に0〜20の数であり、x3は、2〜100の数である。
式(104)
【化12】
上記式(104)中、R
41、R
42、R
43、R
44、R
45およびR
46は、それぞれ独立に、置換基であり、R
47は、2価の連結基であり、R
48は、水素原子または炭素数1〜5のアルキル基であり、m4およびn4は、それぞれ独立に0〜20の数であり、x4およびy4は、それぞれ独立に2〜100の数である。
【0076】
上記式(101)中、R
11およびR
16は、それぞれ独立に、置換基であり、炭素数1〜5のアルキル基またはフェニル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
上記式(101)中、R
12およびR
14は、それぞれ独立に、2価の連結基であり、カルボニル基、酸素原子、炭素数1〜6のアルキレン基、炭素数6〜16のシクロアルキレン基、炭素数2〜8のアルケニレン基、炭素数2〜5のアルキニレン基、および炭素数6〜10のアリーレン基が好ましく、酸素原子がより好ましい。
式(101)中、R
13およびR
15は、水素原子または炭素数1〜5のアルキル基であり、水素原子または炭素数1〜4のアルキル基が好ましく、水素原子または炭素数1〜3のアルキル基がより好ましい。
【0077】
上記式(102)中、R
21、R
25およびR
26は、それぞれ独立に、置換基であり、式(101)におけるR
11およびR
16と同義であり、好ましい範囲も同様である。
上記式(102)中、R
22は、2価の連結基であり、式(101)におけるR
12と同義であり、好ましい範囲も同様である。
上記式(102)中、R
23は、水素原子または炭素数1〜5のアルキル基であり、式(101)におけるR
13およびR
15と同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0078】
上記式(103)中、R
31およびR
36は、それぞれ独立に、置換基であり、式(101)におけるR
11およびR
16と同義であり、好ましい範囲も同様である。
上記式(103)中、R
32およびR
34は、それぞれ独立に、2価の連結基であり、式(101)におけるR
12と同義であり、好ましい範囲も同様である。
上記式(103)中、R
33およびR
35は、水素原子または炭素数1〜5のアルキル基であり、式(101)におけるR
13およびR
15と同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0079】
上記式(104)中、R
41、R
42、R
43、R
44、R
45およびR
46は、それぞれ独立に、置換基であり、式(101)におけるR
11およびR
16と同義であり、好ましい範囲も同様である。
上記式(104)中、R
47は、2価の連結基であり、式(101)におけるR
12と同義であり、好ましい範囲も同様である。
上記式(104)中、R
48は、水素原子または炭素数1〜5のアルキル基であり、式(101)におけるR
13およびR
15と同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0080】
式(101)〜式(104)中、式(103)または式(104)が好ましく、式(104)がより好ましい。
【0081】
本発明で用いるポリエーテル変性シリコーンにおいて、ポリオキシアルキレン基の分子中での含有量は特に限定されないが、ポリオキシアルキレン基の含有量が全分子量中1質量%を超えるものが望ましい。
ポリオキシアルキレン基の含有率は、「{(1分子中のポリオキシアルキレン基の式量)/1分子の分子量}×100」で定義される。
【0082】
シランカップリング剤の例としては、フッ素原子含有シランカップリング剤が挙げられ、クロロジメチル[3−(2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニル)プロピル]シラン、ペンタフルオロフェニルジメチルクロロシラン、ペンタフルオロフェニルエトキシジメチルシラン、ペンタフルオロフェニルエトキシジメチルシラン、トリクロロ(1H,1H,2H,2H−トリデカフルオロ−n−オクチル)シラン、トリクロロ(1H,1H,2H,2H−ヘプタデカフルオロデシル)シラン、トリメトキシ(3,3,3−トリフルオロプロピル)シラン、トリエトキシ(1H,1H,2H,2H−ノナフルオロヘキシル)シラン、トリエトキシ−1H,1H,2H,2H−ヘプタデカフルオロデシルシラン、トリメトキシ(1H,1H,2H,2H−ヘプタデカフルオロデシル)シラン、トリメトキシ(1H,1H,2H,2H−ノナフルオロヘキシル)シラン、トリクロロ[3−(ペンタフルオロフェニル)プロピル]シラン、トリメトキシ(11−ペンタフルオロフェノキシウンデシル)シラン、トリエトキシ[5,5,6,6,7,7,7−ヘプタフルオロ−4,4−ビス(トリフルオロメチル)ヘプチル]シラン、トリメトキシ(ペンタフルオロフェニル)シラン、トリエトキシ(1H,1H,2H,2H−ノナフルオロヘキシル)シランが好ましい。
さらに、特開昭62−36663号、特開昭61−226746号、特開昭61−226745号、特開昭62−170950号、特開昭63−34540号、特開平7−230165号、特開平8−62834号、特開平9−54432号、特開平9−5988号、特開2001−330953号各公報に記載の界面活性剤も本発明で使用可能なものとして、挙げられる。
【0083】
本発明で用いるシリコーン化合物は、市販品を用いることもできる。
例えば、ADVALON FA33、FLUID L03、FLUID L033、FLUID L051、FLUID L053、FLUID L060、FLUID L066、IM22、WACKER−Belsil DMC 6038(以上、旭化成ワッカーシリコーン(株)製)、KF−352A、KF−353、KF−615A、KP−112、KP−341、X−22−4515、KF−354L、KF−355A、KF−6004、KF−6011、KF−6011P、KF−6012、KF−6013、KF−6015、KF−6016、KF−6017、KF−6017P、KF−6020、KF−6028、KF−6028P、KF−6038、KF−6043、KF−6048、KF−6123、KF−6204、KF−640、KF−642、KF−643、KF−644、KF−945、KP−110、KP−355、KP−369、KS−604、Polon SR−Conc、X−22−4272、X−22−4952(以上、信越化学工業(株)製)、8526 ADDITIVE、FZ−2203、FZ−5609、L−7001、SF 8410、2501 COSMETIC WAX、5200 FORMULATION AID、57 ADDITIVE、8019 ADDITIVE、8029 ADDITIVE、8054 ADDITIVE、BY16−036、BY16−201、ES−5612 FORMULATION AID、FZ−2104、FZ−2108、FZ−2123、FZ−2162、FZ−2164、FZ−2191、FZ−2207、FZ−2208、FZ−2222、FZ−7001、FZ−77、L−7002、L−7604、SF8427、SF8428、SH 28 PAINR ADDITIVE、SH3749、SH3773M、SH8400、SH8700(以上、東レ・ダウコーニング(株)製)、BYK−378、BYK−302、BYK−307、BYK−331、BYK−345、BYK−B、BYK−347、BYK−348、BYK−349、BYK−377(以上、ビックケミー・ジャパン(株)製)、Silwet L−7001、Silwet L−7002、Silwet L−720、Silwet L−7200、Silwet L−7210、Silwet L−7220、Silwet L−7230、Silwet L−7605、TSF4445、TSF4446、TSF4452、Silwet Hydrostable 68、Silwet L−722、Silwet L−7280、Silwet L−7500、Silwet L−7550、Silwet L−7600、Silwet L−7602、Silwet L−7604、Silwet L−7607、Silwet L−7608、Silwet L−7622、Silwet L−7650、Silwet L−7657、Silwet L−77、Silwet L−8500、Silwet L−8610、TSF4440、TSF4441、TSF4450、TSF4460(以上、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製)が例示される。
市販品としては、また、商品名「BYK−300」、「BYK−306」、「BYK−310」、「BYK−315」、「BYK−313」、「BYK−320」、「BYK−322」、「BYK−323」、「BYK−325」、「BYK−330」、「BYK−333」、「BYK−337」、「BYK−341」、「BYK−344」、「BYK−370」、「BYK−375」、「BYK−UV3500」、「BYK−UV3510」、「BYK−UV3570」、「BYK−3550」、「BYK−SILCLEAN3700」、「BYK−SILCLEAN3720」(以上、ビックケミー・ジャパン(株)製)、商品名「AC FS 180」、「AC FS 360」、「AC S 20」(以上、Algin Chemie製)、商品名「ポリフローKL−400X」、「ポリフローKL−400HF」、「ポリフローKL−401」、「ポリフローKL−402」、「ポリフローKL−403」、「ポリフローKL−404」、「ポリフローKL−700」(以上、共栄社化学(株)製)、商品名「KP−301」、「KP−306」、「KP−109」、「KP−310」、「KP−310B」、「KP−323」、「KP−326」、「KP−341」、「KP−104」、「KP−110」、「KP−112」、「KP−360A」、「KP−361」、「KP−354」、「KP−357」、「KP−358」、「KP−359」、「KP−362」、「KP−365」、「KP−366」、「KP−368」、「KP−330」、「KP−650」、「KP−651」、「KP−390」、「KP−391」、「KP−392」(以上、信越化学工業(株)製)、商品名「LP−7001」、「LP−7002」、「8032 ADDITIVE」、「FZ−2110」、「FZ−2105」、「67 ADDITIVE」、「8618 ADDITIVE」、「3 ADDITIVE」、「56 ADDITIVE」(以上、東レ・ダウコーニング(株)製)、「TEGO WET 270」(エボニック・デグサ・ジャパン(株)製)、「NBX−15」(ネオス(株)製)なども使用することができる。
【0084】
フッ素原子を含む化合物としては、フッ素系液体状化合物が例示される。フッ素系液体状化合物としては、国際公開WO2015/190477号公報の段落番号0025〜0035を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。市販品では、DIC(株)製、メガファックシリーズのうち、フッ素系液体状化合物に該当するもの、例えば、メガファックF−557などが例示される。
【0085】
仮接着剤が、離型剤を含有する場合、その含有量は、接着剤の全固形分の0.001〜1.0質量%の範囲が好ましい。これらの他の離型剤は、1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
特に、本発明で用いる仮接着剤がシリコーン化合物を含む場合、その含有量は、仮接着剤の固形分の0.001〜1.0質量%であることが好ましい。上記シリコーン化合物の含有量の下限は、0.004質量%以上がより好ましく、0.006質量%以上がさらに好ましく、0.008質量%以上が一層好ましく、0.009質量%以上がより一層好ましい。上記シリコーン化合物の含有量の上限は、0.8質量%以下が好ましく、0.6質量%以下がより好ましく、0.3質量%以下がさらに好ましく、0.15質量%以下がより一層好ましく、0.09質量%以下がさらに一層好ましい。
本発明で用いる仮接着剤は、シリコーン化合物を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0086】
<<可塑剤>>
本発明で用いる仮接着剤は、必要に応じて可塑剤を含んでいてもよい。可塑剤を配合することにより、上記諸性能を満たす仮接着層とすることができる。
可塑剤としては、フタル酸エステル、脂肪酸エステル、芳香族多価カルボン酸エステル、ポリエステルなどが使用できる。
【0087】
フタル酸エステルとしては例えば、DMP、DEP、DBP、#10、BBP、DOP、DINP、DIDP(以上、大八化学工業(株)製)、PL−200、DOIP(以上、シージーエスター(株)製)、サンソサイザーDUP(新日本理化(株)製)などが挙げられる。
脂肪酸エステルとしては例えば、ブチルステアレート、ユニスターM−9676、ユニスターM−2222SL、ユニスターH−476、ユニスターH−476D、パナセート800B、パナセート875、パナセート810(以上、日油(株)製)、DBA、DIBA、DBS、DOA、DINA、DIDA、DOS、BXA、DOZ、DESU(以上、大八化学製)などが挙げられる。
芳香族多価カルボン酸エステルとしては、TOTM(大八化学工業(株)製)、モノサイザーW−705(大八化学工業(株)製)、UL−80、UL−100((株)ADEKA製)などが挙げられる。
ポリエステルとしては、ポリサイザーTD−1720、ポリサイザーS−2002、ポリサイザーS−2010(以上、DIC(株)製)、BAA−15(大八化学工業(株)製)などが挙げられる。
上記可塑剤の中では、DIDP、DIDA、TOTM、ユニスターM−2222SL、ポリサイザーTD−1720が好ましく、DIDA、TOTMがより好ましく、TOTMが特に好ましい。
可塑剤は1種のみを用いてもよいし、2種以上を組み合わせてもよい。
【0088】
可塑剤は、加熱中の昇華防止の観点から、窒素気流下、20℃/分の一定速度の昇温条件のもとで重量変化を測定したとき、その重量が1質量%減少する温度が、250℃以上であることが好ましく、270℃以上がより好ましく、300℃以上が特に好ましい。上限は特に定めるものではないが、例えば、500℃以下とすることができる。
【0089】
可塑剤の添加量は、仮接着剤の全固形分に対して、0.01質量%〜5.0質量%が好ましく、より好ましくは0.1質量%〜2.0質量%である。
【0090】
<<溶剤>>
本発明で用いる仮接着剤は、溶剤を含有する。溶剤は、公知のものを制限なく使用でき、有機溶剤が好ましい。
有機溶剤としては、酢酸エチル、酢酸−n−ブチル、酢酸イソブチル、ギ酸アミル、酢酸イソアミル、酢酸イソブチル、プロピオン酸ブチル、酪酸イソプロピル、酪酸エチル、酪酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、アルキルオキシ酢酸アルキル(例:アルキルオキシ酢酸メチル、アルキルオキシ酢酸エチル、アルキルオキシ酢酸ブチル(例えば、メトキシ酢酸メチル、メトキシ酢酸エチル、メトキシ酢酸ブチル、エトキシ酢酸メチル、エトキシ酢酸エチル等))、3−オキシプロピオン酸アルキルエステル類(例:3−オキシプロピオン酸メチル、3−アルキルオキシプロピオン酸エチル等(例えば、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル等))、2−オキシプロピオン酸アルキルエステル類(例:2−オキシプロピオン酸メチル、2−オキシプロピオン酸エチル、2−アルキルオキシプロピオン酸プロピル等(例えば、2−メトキシプロピオン酸メチル、2−メトキシプロピオン酸エチル、2−メトキシプロピオン酸プロピル、2−エトキシプロピオン酸メチル、2−エトキシプロピオン酸エチル))、2−アルキルオキシ−2−メチルプロピオン酸メチルおよび2−オキシ−2−メチルプロピオン酸エチル(例えば、2−メトキシ−2−メチルプロピオン酸メチル、2−エトキシ−2−メチルプロピオン酸エチル等)、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸プロピル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、2−オキソブタン酸メチル、2−オキソブタン酸エチル、1−メトキシ−2−プロピルアセテート等のエステル類;
ジエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート等のエーテル類;
メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン、N−メチル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトン等のケトン類;
トルエン、キシレン、アニソール、メシチレン、エチルベンゼン、プロピルベンゼン、クメン、n−ブチルベンゼン、sec−ブチルベンゼン、イソブチルベンゼン、t−ブチルベンゼン、アミルベンゼン、イソアミルベンゼン、(2,2−ジメチルプロピル)ベンゼン、1−フェニルへキサン、1−フェニルヘプタン、1−フェニルオクタン、1−フェニルノナン、1−フェニルデカン、シクロプロピルベンゼン、シクロヘキシルベンゼン、2−エチルトルエン、1,2−ジエチルベンゼン、o−シメン、インダン、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン、3−エチルトルエン、m−シメン、1,3−ジイソプロピルベンゼン、4−エチルトルエン、1,4−ジエチルベンゼン、p−シメン、1,4−ジイソプロピルベンゼン、4−t−ブチルトルエン、1,4−ジ−t−ブチルベンゼン、1,3−ジエチルベンゼン、1,2,3−トリメチルベンゼン、1,2,4−トリメチルベンゼン、4−t−ブチル−o−キシレン、1,2,4−トリエチルベンゼン、1,3,5−トリエチルベンゼン、1,3,5−トリイソプロピルベンゼン、5−t−ブチル−m−キシレン、3,5−ジ−t−ブチルトルエン、1,2,3,5−テトラメチルベンゼン、1,2,4,5−テトラメチルベンゼン、ペンタメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;
リモネン、p−メンタン、ノナン、デカン、ドデカン、デカリン等の炭化水素類などが好適に挙げられる。
これらの中でも、メシチレン、t−ブチルベンゼン、1,2,4−トリメチルベンゼン、p−メンタン、γ−ブチロラクトン、アニソール、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、エチルセロソルブアセテート、乳酸エチル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、酢酸ブチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、2−ヘプタノン、シクロヘキサノン、エチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールメチルエーテル、およびプロピレングリコールメチルエーテルアセテートが好ましい。
【0091】
これらの溶剤は、塗布面状の改良などの観点から、2種以上を混合する形態も好ましい。この場合、特に好ましくは、メシチレン、t−ブチルベンゼン、1,2,4−トリメチルベンゼン、p−メンタン、γ−ブチロラクトン、アニソール、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、エチルセロソルブアセテート、乳酸エチル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、酢酸ブチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、2−ヘプタノン、シクロヘキサノン、エチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールメチルエーテル、およびプロピレングリコールメチルエーテルアセテートから選択される2種以上で構成される混合溶液である。
【0092】
仮接着剤の溶剤の含有量は、塗布性の観点から、仮接着剤の全固形分濃度が5〜80質量%になる量が好ましく、10〜50質量%がさらに好ましく、15〜40質量%が特に好ましい。
溶剤は1種のみでもよいし、2種以上であってもよい。溶剤が2種以上の場合は、その合計が上記範囲であることが好ましい。
尚、仮接着剤を層状に適用し、乾燥させて得られる仮接着層における溶剤の含有率は、1質量%以下が好ましく、0.1質量%以下がより好ましく、含有しないことが特に好ましい。
【0093】
<<酸化防止剤>>
本発明で用いる仮接着剤は、酸化防止剤を含有してもよい。酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、キノン系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤などが使用できる。
フェノール系酸化防止剤としては例えば、p−メトキシフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、Irganox1010、Irganox1330、Irganox3114、Irganox1035(以上、BASFジャパン(株)製)、Sumilizer MDP−S、Sumilizer GA−80(以上、住友化学(株)製)などが挙げられる。
硫黄系酸化防止剤としては例えば、3,3’−チオジプロピオネートジステアリル、Sumilizer TPM、Sumilizer TPS、Sumilizer TP−D(以上、住友化学(株)製)などが挙げられる。
リン系酸化防止剤としては例えば、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスフィト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスフィト、ポリ(ジプロピレングリコール)フェニルホスフィト、ジフェニルイソデシルホスフィト、2−エチルヘキシルジフェニルホスフィト、トリフェニルホスフィト、Irgafos168、Irgafos38(以上、BASFジャパン(株)製)などが挙げられる。
キノン系酸化防止剤としては例えば、p−ベンゾキノン、2−tert−ブチル−1,4−ベンゾキノンなどが挙げられる。
アミン系酸化防止剤としては例えば、ジメチルアニリンやフェノチアジンなどが挙げられる。
酸化防止剤は、Irganox1010、Irganox1330、3,3’−チオジプロピオネートジステアリル、Sumilizer TP−Dが好ましく、Irganox1010、Irganox1330がより好ましく、Irganox1010が特に好ましい。
また、上記酸化防止剤のうち、フェノール系酸化防止剤と、硫黄系酸化防止剤またはリン系酸化防止剤とを併用することが好ましく、フェノール系酸化防止剤と硫黄系酸化防止剤とを併用することが最も好ましい。特に、エラストマーとして、ポリスチレン系エラストマーを使用した場合において、フェノール系酸化防止剤と硫黄系酸化防止剤とを併用することが好ましい。このような組み合わせにすることにより、酸化反応による仮接着剤の劣化を、効率よく抑制できる効果が期待できる。フェノール系酸化防止剤と硫黄系酸化防止剤とを併用する場合、フェノール系酸化防止剤と硫黄系酸化防止剤との質量比は、フェノール系酸化防止剤:硫黄系酸化防止剤=95:5〜5:95が好ましく、25:75〜75:25がより好ましい。
酸化防止剤の組み合わせとしては、Irganox1010とSumilizer TP−D、Irganox1330とSumilizer TP−D、および、Sumilizer GA−80とSumilizer TP−Dが好ましく、Irganox1010とSumilizer TP−D、Irganox1330とSumilizer TP−Dがより好ましく、Irganox1010とSumilizer TP−Dが特に好ましい。
【0094】
酸化防止剤の分子量は加熱中の昇華防止の観点から、400以上が好ましく、600以上がさらに好ましく、750以上が特に好ましい。
【0095】
仮接着剤が酸化防止剤を含有する場合、酸化防止剤の含有量は、仮接着剤の全固形分に対して、0.001〜20.0質量%が好ましく、0.005〜10.0質量%がより好ましい。
酸化防止剤は1種のみでもよいし、2種以上であってもよい。酸化防止剤が2種以上の場合は、その合計が上記範囲であることが好ましい。
【0096】
<<その他の添加剤>>
本発明で用いる仮接着剤は、本発明の効果を損なわない範囲で、上述した添加剤に加え、必要に応じて、各種添加物、例えば、硬化剤、硬化触媒、充填剤、密着促進剤、紫外線吸収剤、凝集防止剤等を配合することができる。これらの添加剤を配合する場合、その合計配合量は仮接着剤の全固形分の3質量%以下が好ましい。
【0097】
本発明で用いる仮接着剤は、金属等の不純物を含まないことが好ましい。不純物の含有量としては、1質量ppm(parts per million)以下が好ましく、100質量ppt(parts per trillion)以下がより好ましく、10質量ppt以下がさらに好ましく、実質的に含まないこと(測定装置の検出限界以下であること)が特に好ましい。
仮接着剤から金属等の不純物を除去する方法としては、例えば、フィルタを用いたろ過を挙げることができる。フィルタ孔径としては、ポアサイズ10nm以下が好ましく、5nm以下がより好ましく、3nm以下がさらに好ましい。フィルタの材質としては、ポリテトラフロロエチレン製、ポリエチレン製、ナイロン製のフィルタが好ましい。フィルタは、有機溶剤であらかじめ洗浄したものを用いてもよい。フィルタろ過工程では、複数種類のフィルタを直列または並列に接続して用いてもよい。複数種類のフィルタを使用する場合は、孔径および/または材質が異なるフィルタを組み合わせて使用してもよい。また、各種フィルタ材料を複数回ろ過してもよく、複数回ろ過する工程が循環ろ過工程であってもよい。
また、仮接着剤に含まれる金属等の不純物を低減する方法としては、仮接着剤を構成する原料として金属含有量が少ない原料を選択する、仮接着剤を構成する原料に対してフィルタろ過を行う、装置内をテフロン(登録商標)でライニングする等してコンタミネーションを可能な限り抑制した条件下で蒸留を行う等の方法を挙げることができる。仮接着剤を構成する原料に対して行うフィルタろ過における好ましい条件は、上記した条件と同様である。
フィルタろ過の他、吸着材による不純物の除去を行っても良く、フィルタろ過と吸着材を組み合わせて使用してもよい。吸着材としては、公知の吸着材を用いることができ、例えば、シリカゲル、ゼオライトなどの無機系吸着材、活性炭などの有機系吸着材を使用することができる。
【0098】
<永久接着剤>
本発明における永久接着剤は、仮接着剤のような一時固定のためではなく、2つの基板を接着した状態で素子等に組み込む等、2つの基板を半永久的に固定することを目的とした態様をいう。2つの基板を永久接着剤で接着する場合、センサー、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)、異なる機能を持ったチップ同士の復号化などの用途に好ましく用いることができる。
永久接着剤としては、特開2015−212316号公報に記載のホットメルト接着剤、特開2013−227458号公報に記載のホットメルト接着剤、特開平8−92543号公報に記載のホットメルト接着剤、WO06/118033号公報の段落0052〜0055の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。 また、永久接着剤に配合してもよい溶剤は、上記仮接着剤に関して述べた溶剤が好ましく用いられる。また、永久接着剤における溶剤の含有量も、仮接着剤に関して述べた含有量と同様であることが好ましい。
【0099】
<接着層の形成>
接着層は、上述のとおり、接着剤を、スピンコート法、スプレー法、スリットコート法、ローラーコート法、フローコート法、ドクターコート法、浸漬法などによって、基板の上に適用することによって、形成することができる。
接着層は、上述のとおり、接着する2つの基板の少なくとも一方の基板の表面に形成する。基板の一方のみに接着層を形成して他方の基板と貼り合わせてもよいし、両方の基板に接着層を設けて両者を貼り合わせてもよい。
次いで、接着剤は、上述の通り、通常、溶剤を含むため、加熱を行って溶剤を揮発させる(乾燥工程)。この際の加熱温度としては、溶剤の沸点よりも高い温度であることが好ましく、110℃以上であることがより好ましく、130℃〜200℃がさらに好ましく、160℃〜190℃が特に好ましい。
【0100】
<<接着剤の調製>>
本発明で用いる接着剤は、上述の各成分を混合して調製することができる。各成分の混合は、通常、0℃〜100℃の範囲で行われる。また、各成分を混合した後、例えば、フィルタでろ過することが好ましい。ろ過は、多段階で行ってもよいし、多数回繰り返してもよい。また、ろ過した液を再ろ過することもできる。
フィルタとしては、従来からろ過用途等に用いられているものであれば特に限定されることなく用いることができる。例えば、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等のフッ素樹脂、ナイロン6、ナイロン6,6等のポリアミド系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン樹脂等によるフィルタが挙げられる。これら素材の中でもポリプロピレンおよびナイロンが好ましい。
フィルタの孔径は、例えば、0.003〜5.0μm程度が適している。この範囲とすることにより、ろ過詰まりを抑えつつ、接着剤に含まれる不純物や凝集物など、微細な異物を確実に除去することが可能となる。
フィルタを使用する際、異なるフィルタを組み合わせてもよい。その際、第1のフィルタでのフィルタリングは、1回のみでもよいし、2回以上行ってもよい。異なるフィルタを組み合わせて2回以上フィルタリングを行う場合は、1回目のフィルタリングの孔径に対して、2回目以降の孔径が同じか、もしくは小さい方が好ましい。また、上述した範囲内で異なる孔径の第1のフィルタを複数組み合わせてもよい。ここでの孔径は、フィルタメーカーの公称値を参照することができる。市販のフィルタとしては、例えば、日本ポール(株)、アドバンテック東洋(株)、日本インテグリス(株)または(株)キッツマイクロフィルタ等が提供する各種フィルタの中から選択することができる。
【0101】
<半導体素子の製造方法>
以下、仮接着剤を用いる場合の、半導体素子の製造方法の一実施形態について、
図3をあわせて参照しながら説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。
図3(A)〜(E)は、それぞれ、キャリア基板とデバイスウェハとの仮接着を説明する概略断面図(
図3(A)、(B))、キャリア基板に仮接着されたデバイスウェハが薄型化された状態(
図3(C))、キャリア基板とデバイスウェハを剥離した状態(
図3(D))、デバイスウェハから仮接着剤を除去した後の状態(
図3(E))を示す概略断面図である。
【0102】
この実施形態では、
図3(A)に示すように、先ず、キャリア基板12に仮接着層11が設けられてなる接着性キャリア基板100が準備される。
仮接着層11は、仮接着剤を用いて形成されるものであり、実質的に溶剤を含まない態様であることが好ましい。
デバイスウェハ60は、シリコン基板61の表面61aに複数のデバイスチップ62が設けられてなる。
シリコン基板61の厚さは、例えば、200〜1200μmが好ましい。デバイスチップ62は例えば金属構造体であることが好ましく、高さは10〜100μmが好ましい。
仮接着層を形成させる過程で、キャリア基板およびデバイスウェハの裏面を、剥離液を用いて洗浄する工程を設けてもよい。具体的には、キャリア基板やデバイスウェハの端面または裏面に付着した仮接着層の残渣を、剥離液を用いて除去することで、装置の汚染を防ぐことができ、薄型化デバイスウェハのTTV(Total Thickness Variation)を低下させることができる。
【0103】
次いで、
図3(B)に示す通り、接着性キャリア基板100とデバイスウェハ60とを圧着させ、キャリア基板12とデバイスウェハ60とを仮接着させる。
仮接着層11は、デバイスチップ62を完全に覆っていることが好ましい。また、デバイスチップの高さがXμm、仮接着層の厚みがYμmの場合、「X+100≧Y>X」の関係を満たすことが好ましい。
仮接着層11がデバイスチップ62を完全に被覆していることは、薄型化デバイスウェハのTTVをより低下したい場合(すなわち、薄型化デバイスウェハの平坦性をより向上させたい場合)に有効である。
すなわち、デバイスウェハを薄型化する際において、複数のデバイスチップ62を仮接着層11によって保護することにより、キャリア基板12との接触面において、凹凸形状をほとんど無くすことが可能である。よって、このように支持した状態で薄型化しても、複数のデバイスチップ62に由来する形状が、薄型化デバイスウェハの裏面61b1に転写されるおそれは低減され、その結果、最終的に得られる薄型化デバイスウェハのTTVをより低下することができる。
【0104】
次いで、
図3(C)に示すように、シリコン基板61の裏面61bに対して、機械的または化学的な処理(特に限定されないが、例えば、グライディングや化学機械研磨(CMP)等の薄膜化処理、化学気相成長(CVD)や物理気相成長(PVD)などの高温および真空下での処理、有機溶剤、酸性処理液や塩基性処理液などの薬品を用いた処理、めっき処理、活性光線の照射、加熱処理ならびに冷却処理など)を施す。
図3(C)では、シリコン基板61の厚さを薄くし(例えば、上述の厚さとなるように薄型化し)、薄型化デバイスウェハ60aを得ている。
【0105】
デバイスウェハを薄型化した後、高温および真空下での処理を行う前の段階で、デバイスウェハの基板面の面積よりも外側にはみ出した仮接着層を剥離液で洗浄する工程を設けてもよい。具体的には、デバイスウェハを薄型化した後、はみ出した仮接着層を、剥離液を用いて除去することで、高温および真空下での処理が仮接着層に直接施されることによる仮接着層の変形、変質を防ぐことができる。
本発明では、仮接着層の膜面の面積は、キャリア基板の基板面の面積よりも小さいことが好ましい。また、本発明では、キャリア基板の基板面の直径をCμm、デバイスウェハの基板面の直径をDμm、仮接着層の膜面の直径をTμmとしたとき、(C−200)≧T≧Dを満たすことがより好ましい。さらに、キャリア基板の基板面の直径をCμm、デバイスウェハの基板面の直径をDμm、仮接着層のキャリア基板と接している側の膜面の直径をT
Cμm、仮接着層のデバイスウェハと接している側の膜面の直径をT
Dμmとしたとき、(C−200)≧T
C>T
D≧Dを満たすことが好ましい。このような構成とすることにより、高温および真空下での処理が仮接着層に直接施されることによる仮接着層の変形、変質をより抑制することができる。
尚、仮接着層の膜面の面積とは、キャリア基板に対し垂直な方向から見たときの面積をいい、膜面の凹凸は考えないものとする。デバイスウェハの基板面についても同様である。すなわち、ここでいう、デバイスウェハの基板面とは、例えば、
図3の61a面に対応する面であり、デバイスチップが設けられている側の面であろう。仮接着層の膜面等の直径についても、同様に考える。
また、仮接着層の膜面の直径Tとは、仮接着層のキャリア基板と接している側の膜面の直径をT
Cμm、仮接着層のデバイスウェハと接している側の膜面の直径をT
Dμmとしたとき、T=(T
C+T
D)/2とする。キャリア基板の基板面の直径およびデバイスウェハの基板面の直径は、仮接着層と接している側の表面の直径をいう。
また、機械的または化学的な処理として、薄膜化処理の後に、薄型化デバイスウェハ60aの裏面61b1からシリコン基板を貫通する貫通孔(図示せず)を形成し、この貫通孔内にシリコン貫通電極(図示せず)を形成する処理を行ってもよい。
また、キャリア基板12とデバイスウェハ60とを仮接着した後、剥離するまでの間に加熱処理を行ってもよい。加熱処理の一例として、機械的または化学的な処理を行う際に、加熱を行うことが挙げられる。
加熱処理における最高到達温度は80〜400℃が好ましく、130℃〜400℃がより好ましく、180℃〜350℃がさらに好ましい。加熱処理における最高到達温度は仮接着層の分解温度よりも低い温度とすることが好ましい。加熱処理は、最高到達温度での30秒〜30分間の加熱であることが好ましく、最高到達温度での1分〜10分の加熱であることがより好ましい。
【0106】
次いで、
図3(D)に示すように、キャリア基板12を、薄型化デバイスウェハ60a(機械的または化学的な処理を施したデバイスウェハ)から剥離させる。剥離の際の温度は、40℃以下であることが好ましく、30℃以下とすることもできる。剥離の際の温度の下限値としては、例えば、0℃以上であり、好ましくは、10℃以上である。本発明における剥離は、15〜35℃程度の常温で行える点で価値が高い。
剥離の方法は特に限定されるものではないが、薄型化デバイスウェハ60aを固定し、キャリア基板12を、端部から薄型化デバイスウェハ60aに対して垂直方向に引き上げて剥離することが好ましい。このとき、剥離界面は、キャリア基板12と仮接着層11の界面であることが好ましい。剥離の際の引き上げ速度は、30〜100mm/分の速さであることが好ましく、40〜80mm/分の速さであることがより好ましい。この場合、キャリア基板12と仮接着層11の界面の密着強度A、デバイスウェハ表面61aと仮接着層11の密着強度Bは、以下の式(A1)を満たすことが好ましい。
A<B ・・・・式(A1)
また、剥離の際の端部を引き上げる際の力は、0.33N/mm以下であることが好ましく、0.2N/mm以下とすることもできる。下限値としては、好ましくは0.07N/mm以上である。この際の力は、フォースゲージを用いて測定することができる。
【0107】
そして、
図3(E)に示すように、薄型化デバイスウェハ60aから仮接着層11を除去することにより、薄型化デバイスウェハを得ることができる。
仮接着層11の除去方法は、例えば、剥離液を用いて除去する方法(仮接着層を剥離液で膨潤させた後に剥離除去する方法、仮接着層に剥離液を噴射して破壊除去する方法、仮接着層を剥離液に溶解させて溶解除去する方法等)、仮接着層を活性光線、放射線または熱の照射により分解、または、気化して除去する方法などが挙げられる。
溶剤の使用量削減の観点からは、仮接着層をフィルム状の状態のまま剥離除去(ピールオフ)することが好ましい。仮接着層をフィルム状の状態のまま剥離除去する方法とは、剥離液を用いる等の化学的処理を行うことなく、仮接着層をフィルム状のまま物理的な力を加えて剥離除去(ピールオフ)する方法をいう。仮接着層をフィルム状の状態のままで剥離除去する場合、手での剥離または機械剥離が好ましい。仮接着層をフィルム状の状態のまま剥離除去するためには、デバイスウェハ表面61aと仮接着層11の密着強度Bが以下の式(B1)を満たすことが好ましい。
B≦4N/cm ・・・・式(B1)
【0108】
また、剥離液としては、仮接着層11を溶解する有機溶剤が好ましい。有機溶剤としては、例えば、脂肪族炭化水素類(ヘキサン、ヘプタン、アイソパーE、H、G(エッソ化学(株)製)、リモネン、p−メンタン、ノナン、デカン、ドデカン、デカリン等)、芳香族炭化水素類(トルエン、キシレン、アニソール、メシチレン、プソイドクメン、エチルベンゼン、プロピルベンゼン、クメン、n−ブチルベンゼン、sec−ブチルベンゼン、イソブチルベンゼン、tert−ブチルベンゼン、アミルベンゼン、イソアミルベンゼン、(2,2−ジメチルプロピル)ベンゼン、1−フェニルへキサン、1−フェニルヘプタン、1−フェニルオクタン、1−フェニルノナン、1−フェニルデカン、シクロプロピルベンゼン、シクロヘキシルベンゼン、2−エチルトルエン、1,2−ジエチルベンゼン、o−シメン、インダン、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン、3−エチルトルエン、m−シメン、1,3−ジイソプロピルベンゼン、4−エチルトルエン、1,4−ジエチルベンゼン、p−シメン、1,4−ジイソプロピルベンゼン、4−tert−ブチルトルエン、1,4−ジ−tert−ブチルベンゼン、1,3−ジエチルベンゼン、1,2,3−トリメチルベンゼン、1,2,4−トリメチルベンゼン、4−tert−ブチル−o−キシレン、1,2,4−トリエチルベンゼン、1,3,5−トリエチルベンゼン、1,3,5−トリイソプロピルベンゼン、5−tert−ブチル−m−キシレン、3,5−ジ−tert−ブチルトルエン、1,2,3,5−テトラメチルベンゼン、1,2,4,5−テトラメチルベンゼン、ペンタメチルベンゼン、等)、ハロゲン化炭化水素(メチレンジクロライド、エチレンジクロライド、トリクレン、モノクロルベンゼン等)、極性溶剤が挙げられる。極性溶剤としては、アルコール類(メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、1−ブタノール、1−ペンタノール、1−ヘキサノール、1−ヘプタノール、1−オクタノール、2−オクタノール、2−エチル−1−ヘキサノール、1−ノナノール、1−デカノール、ベンジルアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、2−エトキシエタノール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、ポリプロピレングリコール、テトラエチレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテル、メチルフェニルカルビノール、n−アミルアルコール、メチルアミルアルコール等)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、エチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等)、エステル類(酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸アミル、酢酸ベンジル、乳酸メチル、乳酸ブチル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールアセテート、ジエチルフタレート、レブリン酸ブチル等)、その他(トリエチルフォスフェート、トリクレジルフォスフェート、N−フェニルエタノールアミン、N−フェニルジエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、4−(2−ヒドロキシエチル)モルホリン、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン等)等が挙げられる。
【0109】
さらに、剥離性の観点から、剥離液は、アルカリ、酸、および界面活性剤を含んでいてもよい。これらの成分を配合する場合、配合量は、それぞれ、剥離液の0.1〜5.0質量%であることが好ましい。
さらに剥離性の観点から、2種以上の有機溶剤および水、2種以上のアルカリ、酸および界面活性剤を混合する形態も好ましい。
【0110】
アルカリとしては、例えば、第三リン酸ナトリウム、第三リン酸カリウム、第三リン酸アンモニウム、第二リン酸ナトリウム、第二リン酸カリウム、第二リン酸アンモニウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素アンモニウム、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸カリウム、ホウ酸アンモニウム、水酸化ナトリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カリウムおよび水酸化リチウムなどの無機アルカリ剤や、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノイソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、トリイソプロピルアミン、n−ブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、エチレンイミン、エチレンジアミン、ピリジン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドなどの有機アルカリ剤を使用することができる。これらのアルカリ剤は、単独で、若しくは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0111】
酸としては、ハロゲン化水素、硫酸、硝酸、リン酸、ホウ酸などの無機酸や、アルキルスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、酢酸、クエン酸、ギ酸、グルコン酸、乳酸、シュウ酸、酒石酸などの有機酸を使用することができる。
【0112】
界面活性剤としては、アニオン系、カチオン系、ノニオン系、両性イオン系の界面活性剤を使用することができる。この場合、界面活性剤の含有量は、アルカリ水溶液の全量に対して1〜20質量%であることが好ましく、1〜10質量%であることがより好ましい。
界面活性剤の含有量を上記した範囲内とすることにより、仮接着層11と薄型化デバイスウェハ60aとの剥離性をより向上できる傾向となる。
【0113】
アニオン系界面活性剤としては、特に限定されないが、脂肪酸塩類、アビエチン酸塩類、ヒドロキシアルカンスルホン酸塩類、アルカンスルホン酸塩類、ジアルキルスルホコハク酸塩類、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、分岐鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、アルキルジフェニルエーテル(ジ)スルホン酸塩類、アルキルフェノキシポリオキシエチレンアルキルスルホン酸塩類、ポリオキシエチレンアルキルスルホフェニルエーテル塩類、N−アルキル−N−オレイルタウリンナトリウム類、N−アルキルスルホコハク酸モノアミド二ナトリウム塩類、石油スルホン酸塩類、硫酸化ヒマシ油、硫酸化牛脂油、脂肪酸アルキルエステルの硫酸エステル塩類、アルキル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩類、脂肪酸モノグリセリド硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、アルキルリン酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸エステル塩類、スチレン−無水マレイン酸共重合物の部分けん化物類、オレフィン−無水マレイン酸共重合物の部分けん化物類、ナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物類等が挙げられる。この中で、アルキルベンゼンスルホン酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、アルキルジフェニルエーテル(ジ)スルホン酸塩類が特に好ましく用いられる。
【0114】
カチオン系界面活性剤としては、特に限定されないが、従来公知のものを用いることができる。例えば、アルキルアミン塩類、第四級アンモニウム塩類、アルキルイミダゾリニウム塩、ポリオキシエチレンアルキルアミン塩類、ポリエチレンポリアミン誘導体が挙げられる。
【0115】
ノニオン系界面活性剤としては、特に限定されないが、ポリエチレングリコール型の高級アルコールエチレンオキサイド付加物、アルキルフェノールエチレンオキサイド付加物、アルキルナフトールエチレンオキサイド付加物、フェノールエチレンオキサイド付加物、ナフトールエチレンオキサイド付加物、脂肪酸エチレンオキサイド付加物、多価アルコール脂肪酸エステルエチレンオキサイド付加物、高級アルキルアミンエチレンオキサイド付加物、脂肪酸アミドエチレンオキサイド付加物、油脂のエチレンオキサイド付加物、ポリプロピレングリコールエチレンオキサイド付加物、ジメチルシロキサン−エチレンオキサイドブロックコポリマー、ジメチルシロキサン−(プロピレンオキサイド−エチレンオキサイド)ブロックコポリマー、多価アルコール型のグリセロールの脂肪酸エステル、ペンタエリスリトールの脂肪酸エステル、ソルビトールおよびソルビタンの脂肪酸エステル、ショ糖の脂肪酸エステル、多価アルコールのアルキルエーテル、アルカノールアミン類の脂肪酸アミド等が挙げられる。この中で、芳香環とエチレンオキサイド鎖を有するものが好ましく、アルキル置換または無置換のフェノールエチレンオキサイド付加物またはアルキル置換または無置換のナフトールエチレンオキサイド付加物がより好ましい。
【0116】
両性イオン系界面活性剤としては、特に限定されないが、アルキルジメチルアミンオキシドなどのアミンオキシド系、アルキルベタインなどのベタイン系、アルキルアミノ脂肪酸ナトリウムなどのアミノ酸系が挙げられる。特に、置換基を有してもよいアルキルジメチルアミンオキシド、置換基を有してもよいアルキルカルボキシベタイン、置換基を有してもよいアルキルスルホベタインが好ましく用いられる。具体的には、特開2008−203359号公報の段落番号〔0256〕の式(2)で示される化合物、特開2008−276166号公報の段落番号〔0028〕の式(I)、式(II)、式(VI)で示される化合物、特開2009−47927号公報の段落番号〔0022〕〜〔0029〕で示される化合物を用いることができる。
【0117】
さらに必要に応じ、剥離液は、消泡剤および硬水軟化剤のような添加剤を含有することもできる。
【0118】
キャリア基板12を薄型化デバイスウェハ60aから剥離した後、薄型化デバイスウェハ60aに対して、種々の公知の処理を施し、薄型化デバイスウェハ60aを有する半導体素子を製造する。
【0119】
また、キャリア基板に仮接着層が付着している場合は、仮接着層を除去することにより、キャリア基板を再生することができる。仮接着層を除去する方法としては、フィルム状のままで、ブラシ、超音波、氷粒子、エアロゾルの吹付けにより物理的に除去する方法、水溶液または有機溶剤に溶解させて溶解除去する方法、活性光線、放射線、熱の照射により分解、または気化させる方法などの化学的に除去する方法が挙げられるが、キャリア基板に応じて、従来既知の洗浄方法を利用することができる。
例えば、キャリア基板としてシリコン基板を使用した場合、従来既知のシリコンウェハの洗浄方法を使用することができ、例えば化学的に除去する場合に使用できる水溶液または有機溶剤としては、強酸、強塩基、強酸化剤、またはそれらの混合物が上げられ、具体的には、硫酸、塩酸、フッ酸、硝酸、有機酸などの酸類、テトラメチルアンモニウム、アンモニア、有機塩基などの塩基類、過酸化水素などの酸化剤、またはアンモニアと過酸化水素の混合物、塩酸と過酸化水素水の混合物、硫酸と過酸化水素水の混合物、フッ酸と過酸化水素水の混合物、フッ酸とフッ化アンモニウムとの混合物などが挙げられる。
【0120】
再生したキャリア基板を使った場合の接着性の観点から、キャリア基板洗浄液を用いることが好ましい。キャリア基板洗浄液は、pKaが0未満の酸(強酸)と過酸化水素を含んでいることが好ましい。pKaが0未満の酸としては、ヨウ化水素、過塩素酸、臭化水素、塩化水素、硝酸、硫酸などの無機酸、またはアルキルスルホン酸、アリールスルホン酸などの有機酸から選択される。キャリア基板上の仮接着層の洗浄性の観点から無機酸であることが好ましく、硫酸が最も好ましい。
【0121】
過酸化水素としては、30質量%過酸化水素水が好ましく使用でき、上記強酸と30質量%過酸化水素水との混合比は、質量比で1:100〜100:1が好ましく、1:1〜10:1がより好ましく、3:1〜5:1が最も好ましい。
【0122】
半導体の製造方法の第二の実施形態について、
図4をあわせて参照しながら説明する。上述した第一の実施形態と同一箇所は、同一符号を付してその説明を省略する。
図4(A)〜(E)は、それぞれ、キャリア基板とデバイスウェハとの仮接着を説明する概略断面図(
図4(A)、(B))、キャリア基板に仮接着されたデバイスウェハが薄型化された状態(
図4(C))、キャリア基板とデバイスウェハを剥離した状態(
図4(D))、デバイスウェハから仮接着層を除去した後の状態(
図4(E))を示す概略断面図である。
この実施形態では、
図4(A)に示すように、デバイスウェハの表面61a上に仮接着層を形成する点が上記第一の実施形態と相違する。
デバイスウェハ60の表面61a上に、仮接着層11aを設ける場合は、デバイスウェハ60の表面61aの表面に仮接着剤を適用(好ましくは塗布)し、次いで、乾燥(ベーク)することにより形成することができる。乾燥は、例えば、60〜150℃で、10秒〜2分行うことができる。
次いで、
図4(B)に示す通り、キャリア基板12とデバイスウェハ60とを圧着させ、キャリア基板12とデバイスウェハ60とを仮接着させる。次いで、
図4(C)に示すように、シリコン基板61の裏面61bに対して、機械的または化学的な処理を施して、シリコン基板61の厚さを薄くし、薄型化デバイスウェハ60aを得る。次いで、
図4(D)に示すように、キャリア基板12を、薄型化デバイスウェハ60aから剥離させる。そして、
図4(E)に示すように、薄型化デバイスウェハ60aから仮接着層11aを除去する。
【0123】
本発明の半導体素子の製造方法は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、適宜な変形、改良等が可能である。
また、上述した実施形態においては、デバイスウェハとして、シリコン基板を挙げたが、これに限定されるものではなく、半導体素子の製造方法において、機械的または化学的な処理に供され得るいずれの被処理部材であってもよい。
また、上述した実施形態においては、デバイスウェハ(シリコン基板)に対する機械的または化学的な処理として、デバイスウェハの薄膜化処理、および、シリコン貫通電極の形成処理を挙げたが、これらに限定されるものではなく、半導体素子の製造方法において必要ないずれの処理も挙げられる。
その他、上述した実施形態において例示した、デバイスウェハにおけるデバイスチップの形状、寸法、数、配置箇所等は任意であり、限定されない。
【実施例】
【0124】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。尚、特に断りのない限り、「部」、「%」は質量基準である。
【0125】
<接着剤の調製>
下記に示す通り、接着剤の各成分を混合して均一な溶液とした後、5μmの孔径を有するポリテトラフルオロエチレン製フィルタを用いてろ過して、接着剤を調製した。
【0126】
<<接着剤の組成>>
・表1に記載の熱可塑性樹脂:表1に記載の量
・表1に記載の添加剤:表1に記載の量
・表1に記載の溶剤:表1に記載の量
<<<全ての接着剤に配合した成分>>>
・Irganox1010(BASFジャパン(株)製):1質量部
・Sumilizer TP−D(住友化学(株)製):1質量部
【0127】
【表1】
【0128】
表1に記載の樹脂は以下の通りである。
【表2】
上記表2において、COPは、シクロオレフィンポリマーをいう。
【0129】
表1における、添加剤および溶剤は下記のとおりである。
A−1:KF−6017(信越化学工業(株)製)
A−2:メガファックF−557(DIC(株)製)
S−1:メシチレン(東洋合成工業(株)製)
S−2:1,4−ジエチルベンゼン(東レ(株)製)
【0130】
上記表1において、EBR(Edge Bead Removal)とは、エッジビード処理を意味し、成膜後の接着層に対するエッジビード形状を調整する処理である。
治具とは、治具処理を意味し、成膜後の接着層を設けた基板を700rpmの速度で回転させながら、接着剤の表面に先端を丸めた直径5mmのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製の棒を押し当てることによって行った。
【0131】
<積層体の形成>
<<積層体の形成(実施例1〜3、6、8〜16)>>
基板として、直径12インチの円盤状のシリコン基板(1インチは、2.54cmである)を用い、その表面に、上記接着剤をコーティング装置(イーヴィグループジャパン(株)製、EVG 101)を用いて成膜した。ホットプレート(イーヴィグループジャパン(株)製、EVG 105)を用いて、表1に記載のベーク温度で3分間加熱し、さらに、180℃で3分間加熱することで、溶剤を乾燥させ、シリコン基板の表面に接着層を形成した。得られた積層体を、積層体Aとする。
上記において、ホットプレートは、背面排気から天面排気に変更し、天板に形成されている排気口の数を増やすことで効率的に排気ができるよう改造を行った。その結果、接着剤の塗布膜を加熱してレベリングをしながら、接着剤の塗布膜表面で対流を起こす溶剤成分を効率よく系外へ排出することができ、端部の盛り上がり部のピークを2つにできた。
得られた積層体Aを、シリコン基板を下側にしてコーティング装置(イーヴィグループジャパン(株)製、EVG 101)にセットし、1250rpmから2000rpmまで、50rpm/sの加速度で回転数を上昇させながら、流量20mL/分で、メシチレンを用いて、BSR(Back Side Rince)処理を行うことで、ベベル部に付着した接着層を除去した。
【0132】
<<積層体の形成(実施例4)>>
積層体Aに対し、接着層を設けた基板を700rpmの速度で回転させながら、接着層上であって、基板の端部から20mmの距離に対応する位置に15秒間、メシチレンを流量20mL/分で供給することによりEBRを行ったこと以外は、実施例1と同様にして積層体Aを形成した。
【0133】
<<積層体の形成(実施例5)>>
積層体Aに対し、接着層を設けた基板を700rpmの速度で回転させながら、接着剤の表面であって、基板の端部から6mmの距離に対応する位置に20秒間、先端を丸めた直径5mmのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製の棒を押し当てることによって治具処理を行ったこと以外は、実施例1と同様にして積層体Aを形成した。
【0134】
<<積層体の形成(実施例7)>>
積層体Aに対し、接着層を設けた基板を700rpmの速度で回転させながら、接着層上であって、基板の端部から20mmの距離に対応する位置に10秒間、基板の端部から10mmの距離に対応する位置に10秒間、メシチレンを流量20mL/分で供給することによりEBRを行ったこと以外は、実施例4と同様にして積層体Aを形成した。
【0135】
<<積層体の形成(実施例17)>>
積層体Aに対し、接着層を設けた基板を700rpmの速度で回転させながら、接着層上であって、基板の端部から20mmの距離に対応する位置に10秒間、基板の端部から10mmの距離に対応する位置に30秒間、メシチレンを流量20mL/分で供給することによりEBRを行ったこと以外は、実施例4と同様にして積層体Aを形成した。
【0136】
<<積層体の形成(実施例18)>>
積層体Aに対し、接着層を設けた基板を700rpmの速度で回転させながら、接着剤の表面であって、基板の端部から10mmの距離に対応する位置に20秒間、先端を丸めた直径5mmのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製の棒を押し当てることによって治具処理を行ったこと以外は、実施例1と同様にして積層体Aを形成した。
【0137】
<<膜厚評価>>
上記で得られた積層体Aのシリコン基板を、膜厚センサーをX−Yステージに固定して測定した。シリコン基板の中央部から、シリコン基板の端部に対応する位置の接着層の形状を測定した。接着層の端部の盛り上がり部(エッジビード)の形状(盛り上がり部の基板面に垂直な断面の形状)と、膜厚を測定した。測定においては、
図2に示すように、基板面の直径方向およびZ方向(基板面の直径方向と直行する方向)を定め、基板面の直径方向は0.1mmおきに、Z方向は1mmおきに測定した。
接着層の平均膜厚tは、接着層の厚さの平均値である(単位:μm)。
直径方向のピークの高さ(H
n)は、接着層の端部に近い方から順に、H
1、H
2、H
3と示した(
図2参照、但し、H
3の存在しない実施例もある)。また、H
1、H
2、H
3について、同心円状の各円のピークの高さは、いずれの箇所でも通常同じ高さであるが、誤差があった場合は、最も高い点の高さをH
1、H
2、H
3とした。
直径方向の、基板の端部と、基板の端部から中心に向かって数えたn番目のピークに対応する基板上の位置との最短距離(R
n)は、基板(シリコン基板)の端部から近い順に、R
1、R
2、R
3と示した(
図2参照、但し、R
3の存在しない実施例もある)。
さらに、R
nの値と、nの数より、n・t/40の値と、n・t/8の値を算出した。
測定に際し、膜厚センサーとして、(株)キーエンス製、ST−T80を用いた。
実施例1と比較例1について、プロファイルを
図5に示す。
図5において、直径方向(Radius)は、シリコン基板の中央に対応する接着層の位置からの距離を示しており、単位はmmである。Z方向(FT)は、接着層の膜厚を示しており、単位はμmである(
図5では便宜上、umと表記している)。
図5(1)が実施例1のプロファイルであり、ピークが2つ形成されていることが確認できた。
図5(2)が比較例1のプロファイルであり、ピークが1つ形成されていることが確認できた。
【0138】
<<ボンディング処理>>
上記で得られた積層体Aと、直径12インチの第2のシリコン基板とを、接着層が内側となるように、ウェハボンディング装置(イーヴィグループジャパン(株)製、EVG 540)により気圧1Paの下、温度200℃、0.3MPaの圧力を加えて1分間熱圧着し、積層体Bを得た。
【0139】
<<TTV評価>>
上記ボンディング処理して得られた積層体Bを、膜厚センサー(大塚電子(株)製、SF−3/BB)をX−Yステージに固定したものを用いて、積層体の厚みムラ(TTV: Total Thickness Variation)を測定した。測定においては、上記膜厚の評価にならい、基板面の直径方向およびZ方向(基板面の直径方向と直行する方向)を定め、基板面の直径方向は0.1mmおきに、Z方向は1mmおきに測定した。
以下の基準に基づいて評価した。評価C以上が実用レベルである。
A: TTVが4μm未満
B: TTVが4μm以上8μm未満
C: TTVが8μm以上12μm未満
D: TTVが12μm以上
【0140】
<<バックグラインド(薄型化)加工>>
上記積層体Bの第2のシリコン基板の裏面(接着層と接していない側の面)を、バックグラインダー((株)ディスコ製、DFG8540)を用いて40μmの厚さまで研磨し、薄型化した積層体Cを得た。
【0141】
<<チッピング評価>>
積層体Cの、薄型化した基板である第2のシリコン基板の端面を、円盤状の周囲方向について、光学顕微鏡(オリンパス(株)製、MX51)で観察した。1mm以上の長さのチッピング(第2のシリコン基板の端面のクラック)が生じている個数を計測し、以下の基準に基づいて評価した。評価C以上が実用レベルである。
A: チッピングの個数が0個
B: チッピングの個数が1個以上5個以下
C: チッピングの個数が6個以上10個以下
D: チッピングの個数が11個以上
【0142】
<<剥離評価>>
積層体Cの、薄型化した第2のシリコン基板を下側にし、下側の第2のシリコン基板を、ダイシングテープマウンターを用いてダイシングテープ中央にダイシングフレームと共に固定した。その後、ウェハデボンダー装置(東京エレクトロン(株)製、Synapse Z)を用いて、25℃で、上側のシリコン基板を下側のシリコン基板に対して垂直方向に、3mm/分の速さで引き上げて、上側または下側のシリコン基板が割れずに、剥離できるかどうかを確認し、以下の基準で評価を行った。
A: 基板が割れずに、剥離が可能であった。
B: 接着力が弱くウェハの周辺が一部浮いていたが、基板が割れずに、剥離が可能、もしくは、引き上げ速度が3mm/分では基板が割れたが引き上げ速度2mm/分では、基板が割れずに、剥離可能であった。
C: 引き上げ速度が2mm/分では基板が割れたが引き上げ速度1mm/分では、基板が割れずに、剥離可能であった。
D: 上記A、BおよびC以外であった。
【0143】
【表3】
【0144】
上記結果から明らかなとおり、本発明の積層体を用いた場合、2つの基板を厚みムラが少なく接着することができ、かつ、ダメージの少ない薄型化加工が可能である積層体を提供可能であった(実施例1〜18)。これに対し、ピークが1つの場合(比較例1)、厚みムラが大きかった。