(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記バッキング材層の前記凹部は、前記バッキング材層の一方の外側面から他方の外側面に貫通する貫通穴、又は前記バッキング材層の少なくとも一方の外側面から中心側に向って凹んだ座グリのいずれかである請求項1〜3のいずれか1項に記載の超音波振動子ユニット。
更に、前記配線基板と、前記ケーブル配線部とを備え、前記配線基板の前記複数の配線とそれぞれ前記ケーブル配線部に配線接続された前記複数のケーブルが接続されてなるケーブルユニットを有する請求項1〜9のいずれか1項に記載の超音波振動子ユニット。
前記ケーブルユニットは、前記配線基板であるフレキシブルプリント配線基板と、前記ケーブル配線部を持つリジットなプリント配線回路基板とを有する多層配線基板である請求項10に記載の超音波振動子ユニット。
前記フレキシブルプリント配線基板は、異方性導電性シート、又は異方性導電性ペーストを用いて前記電極部と電気的に接続され、前記超音波振動子アレイの外側面に配置されている請求項11又は12に記載の超音波振動子ユニット。
更に、前記フレキシブルプリント配線基板が前記超音波振動子アレイの外側面に配置され、前記ケーブル配線部が収納された前記バッキング材層の前記凹部の隙間に充填剤を注入して埋める請求項11〜14のいずれか1項に記載の超音波振動子ユニット。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、特許文献1〜5に開示の超音波内視鏡では、先端部に設けられる超音波観察部に多数の超音波振動子がアレイ状に配設されており、それぞれの超音波振動子には、ケーブルが配線される。例えばチャンネル数が、例えば48〜192と多いのに対し、超音波観察部はその外径が小さく、ケーブルには極めて微細な高価なケーブルが用いられるため、超音波観察部内の配線は複雑な作業となり、小さい先端部内で多数の配線を手作業で行われているのが現状である。このため、外径の小さい超音波観察部内でのケーブルの取り回しが複雑かつ高充填となるため、即ち、ケーブルの取り扱いが複雑であることに加えて、超音波観察部内においてケーブルを高密度に配線する必要があるため、作業性が悪く、超音波内視鏡の製造コストが高くなる要因となっている。
操作性の向上、及び患者負担の改善のために、超音波観察部の小型化が求められているにもかかわらず、上述のように、超音波観察部の製造安定性及びその製造コストの観点から、超音波観察部の小型化は、非常に難しいという問題があった。
【0009】
また、特許文献1及び3に開示の技術では、超音波振動子ユニットのフレキシブルプリント配線基板が折り畳まれる構造を有しているために、ケーブル束及びフレキシブルプリント配線基板の配線構造が複雑であるという問題があった。また、超音波振動子アレイと、ケーブル束及びフレキシブルプリント配線基板を熱圧着で接続しているが、配線の作業性には未だに問題があった。特に、特許文献1では、超音波振動子ユニットの製造時に、フレキシブルプリント配線基板を複数回折り畳む際にケーブルに負担、例えば負荷がかかり、負荷のかかったケーブル配線が断線するという問題があった。
【0010】
また、特許文献2、4、及び5に開示の技術では、簡単な構成を用いることで配線作業の作業性を軽減しているが、超音波振動子とケーブルとの配線が完了した後で初めて、超音波内視鏡に使用した超音波振動子の品質の検査が可能となる。このため、一定の得率があるため、超音波振動子の品質に問題があった場合には、超音波振動子及び配線された多数の微細で高価なケーブル等の超音波振動子の配線に使用した部品や材料が、全て使用できず、無駄となるため、損失が大きく、その結果、超音波内視鏡の製造コストが高くなるという問題があった。
【0011】
また、特許文献1、2、4、及び5に開示の技術では、いずれも超音波振動子アレイの幅方向の中央部付近において、超音波振動子アレイの電極と配線基板とを電気的に接続している。この構造は、製造が非常に困難であり、製造の成功率が高くないという問題があった。
【0012】
本発明は、上記従来技術の問題点を解消し、小型化ができ、かつ超音波振動子アレイの各電極、及び多数のケーブルを配線する際に作業性の良く、作業工程の難易度が低く、ケーブルへの負荷がかかりにくく断線の危険性が少ない配線構造を有し、超音波内視鏡に用いるのに適した超音波振動子ユニット、及びこれを用いる超音波内視鏡を提供することを目的とする。
また、本発明は、上記従来技術の問題点を解消し、上記目的に加え、ケーブル配線前に超音波振動子アレイの検査が可能であり、製造安定性が高く、コストアップを招くことがなく、超音波内視鏡に用いるのに適した超音波振動子ユニット、及びこれを用いる超音波内視鏡を提供することを他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、本発明の超音波振動子ユニットは、複数の超音波振動子が円弧状かつ外側に向けて配列された超音波振動子アレイと、複数の超音波振動子の配列による円弧状面に対して垂直となる超音波振動子アレイの端面側に設けられ、複数の超音波振動子とそれぞれ導通する複数の電極を持つ電極部と、複数の超音波振動子の配列面に対して内側となる、超音波振動子アレイの背面に配設された、断面円弧状の外表面を持ち、外表面と逆の内側に凹部を備えるバッキング材層と、電極部の複数の電極と電気的に接続される複数の配線を持つ配線基板と、複数の配線にそれぞれ接続される複数のケーブルが配線接続されたケーブル配線部と、を有し、バッキング材層の凹部にケーブル配線部の少なくとも一部が含まれてなることを特徴とする。
【0014】
ここで、バッキング材層は、弓形状、半円筒状、円柱を中心線に平行な平面によって切断した形状、又は半円柱状であり、バッキング材層の底面は、同一平面上に位置する連続する1つの平面、又は同一平面上に位置する分離された2つの平面であることが好ましい。
また、バッキング材層の凹部は、バッキング材層の外側面より中心側に向って設けられていることが好ましい。
また、バッキング材層の凹部は、バッキング材層の一方の外側面から他方の外側面に貫通する貫通穴、又はバッキング材層の少なくとも一方の外側面から中心側に向って凹んだ座グリのいずれかであることが好ましい。
また、貫通穴は、円形、又は多角形に刳り貫かれた形状、又は半円形状であり、座グリは、バッキング材層の少なくとも一方の外側面から中心側に向って座グリをすることによって形成されており、座グリは、弓形状の座グリ、半円状のザグリ、多角形状のザグリ、角錐状の座グリ、又は円錐状のザグリであることが好ましい。
また、バッキング材層の凹部は、超音波振動子アレイから遠ざかる方向に向かって拡大するように形成されてなることが好ましい。
【0015】
また、バッキング材層の外側面の両側にそれぞれケーブル配線部が配置され、バッキング材層の凹部は、それぞれのケーブル配線部を配置するために、バッキング材層の外側面の両側に、又は両側を貫通して設けられることが好ましい。
また、ケーブル配線部は、配線基板においてバッキング材層の中心側の面に設けられていることが好ましい。
また、更に、バッキング材層の凹部に収納されたケーブル配線部とバッキング材層との間の凹部の隙間は、充填剤によって埋められてなることが好ましい。
また、ケーブル配線部のすくなくとも一部は、充填剤によって覆われてなることが好ましい。
また、更に、配線基板と、ケーブル配線部とを備え、配線基板の複数の配線とそれぞれケーブル配線部に配線接続された複数のケーブルが接続されてなるケーブルユニットを有することが好ましい。
【0016】
また、ケーブルユニットは、配線基板であるフレキシブルプリント配線基板と、ケーブル配線部を持つリジットなプリント配線回路基板とを有する多層配線基板であることが好ましい。
また、配線基板は、フレキシブルプリント配線基板、プリント配線回路基板、又は両方を有することが好ましい。
また、フレキシブルプリント配線基板は、熱融着によって電極部と電気的に接続され、超音波振動子アレイの外側面に配置されていることが好ましい。
また、フレキシブルプリント配線基板は、異方性導電性シート、又は異方性導電性ペーストを用いて電極部と電気的に接続され、超音波振動子アレイの外側面に配置されていることが好ましい。
また、更に、フレキシブルプリント配線基板が超音波振動子アレイの外側面に配置され、ケーブル配線部が収納されたバッキング材層の凹部の隙間に充填剤を注入して埋めることが好ましい。
【0017】
また、上記目的を達成するために、本発明の超音波内視鏡は、被検体の体腔内を撮影して、それぞれ超音波画像及び内視鏡画像を取得するための超音波内視鏡であって、体腔内に挿入される挿入部と、挿入部の先端に設けられ、上記超音波振動子ユニットを備え、超音波画像を取得するための超音波観察部と、挿入部において、超音波観察部より基端側に設けられ、体腔内の撮像対象部位を照明する照明光を出射する照明光学系、及び照明光学系からの照明光によって照明された撮像対象部位を撮像する撮像光学系を備えた内視鏡観察部と、挿入部において、超音波観察部より基端側に設けられ、処置具を体腔内に挿入するための処置具導出口を備える処置具チャンネルと、を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、小型化ができ、かつ超音波振動子アレイの各電極、及び多数のケーブルを配線する際に作業性が良く、作業工程の難易度が低く、ケーブルへの負荷がかかりにくく断線の危険性が少ない配線構造を有し、超音波内視鏡に用いるのに適した超音波振動子ユニット、及びこれを用いる超音波内視鏡を提供することができる。
本発明によれば、上記効果に加え、更に、ケーブル配線前に超音波振動子アレイの検査が可能であり、製造安定性が高く、コストアップを招くことがなく、超音波内視鏡に用いるのに適した超音波振動子ユニット、及びこれを用いる超音波内視鏡を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明に係る超音波振動子ユニット、及びこの超音波振動子ユニットを用いる超音波内視鏡を添付図面に示す好適実施形態に基づいて以下に詳細に説明する。
図1は、本発明の超音波振動子ユニットを用いる本発明の超音波内視鏡を使用する超音波検査システムの構成の一例を示す概略構成図である。
図1に示す超音波検査システム10は、患者等の被検体の体表からの超音波検査では困難な胆嚢又は膵臓の観察を被検体の体腔である食道、胃、十二指腸、小腸、及び大腸等の消化管を経由して可能にし、本発明の超音波振動子ユニットを備え、超音波断層画像(以下、超音波画像という)を取得する超音波観察部と、内視鏡光学画像(以下、内視鏡画像という)を取得する内視鏡観察部とを有する本発明の超音波内視鏡を被検体の体腔内に挿入して、被検体の内視鏡画像を観察しながら被検体の観察対象部位の超音波画像を取得するものである。
【0021】
図1に示すように、超音波検査システム10は、本発明の超音波振動子ユニット(46:
図2〜
図5参照)を用いる本発明の超音波内視鏡12と、超音波画像を生成する超音波用プロセッサ装置14と、内視鏡画像を生成する内視鏡用プロセッサ装置16と、体腔内を照明する照明光を超音波内視鏡12に供給する光源装置18と、超音波画像及び/又は内視鏡画像を表示するモニタ20と、を備えて構成されている。
また、超音波検査システム10は、更に、洗浄水等を貯留する送水タンク21aと、体腔内の吸引物(供給された洗浄水等も含む)を吸引する吸引ポンプ21bとを備えている。なお、超音波検査システム10は、図示しないが、更に、送水タンク21a内の洗浄水、又は外部の空気等の気体を超音波内視鏡12内の管路(図示せず)に供給する供給ポンプ等を備えていても良い。
【0022】
まず、本発明の超音波内視鏡12は、本発明の超音波振動子ユニット(46:
図2〜
図5参照)によって構成される超音波観察部36と内視鏡観察部38とを先端に有し、被検体の体腔内を撮影して、それぞれ超音波画像(エコー信号)及び内視鏡画像(画像信号)を取得するものである。
超音波内視鏡12は、先端に超音波観察部36と内視鏡観察部38とを備え、被検体の体腔内に挿入するための挿入部22と、挿入部22の基端部に連設され、医師や技師などの術者が操作を行うための操作部24と、操作部24に一端が接続されたユニバーサルコード26とから構成されている。
【0023】
操作部24には、送水タンク21aから送気送水管路(図示せず)を開閉する送気送水ボタン28a、及び吸引ポンプ21bからの吸引管路(図示せず)を開閉する吸引ボタン28bが並設されるとともに、一対のアングルノブ29、29、及び処置具挿入口(鉗子口ともいう)30が設けられている。
ここで、送水タンク21aは、超音波内視鏡12の内視鏡観察部38等の洗浄等のために超音波内視鏡12内の送気送水管路に供給する洗浄水等を貯留するためのものである。なお、送気送水ボタン28aは、送水タンク21aから送気送水管路を経て供給された空気等の気体、及び洗浄水等の水を挿入部22の先端側の内視鏡観察部38から噴出させるために用いられる。
【0024】
また、吸引ポンプ21bは、超音波内視鏡12の先端側から体腔内の吸引物(供給された洗浄水等も含む)を吸引するために吸引管路(図示せず)を吸引するものである。吸引ボタン28bは、吸引ポンプ21bの吸引力によって挿入部22の先端側から体腔内の吸引物を吸引するために用いられる。
また、鉗子口30は、鉗子や穿刺針、高周波メス等の処置具を挿通するためのものである。
【0025】
ユニバーサルコード26の他端部には、超音波用プロセッサ装置14に接続される超音波用コネクタ32aと、内視鏡用プロセッサ装置16に接続される内視鏡用コネクタ32bと、光源装置18に接続される光源用コネクタ32cとが設けられている。超音波内視鏡12は、これらの各コネクタ32a、32b、及び32cを介してそれぞれ超音波用プロセッサ装置14、内視鏡用プロセッサ装置16、及び光源装置18に着脱自在に接続される。また、光源用コネクタ32cには、送水タンク21aを接続する送気送水用チューブ34a、及び吸引ポンプ21bを接続する吸引用チューブ34b等が接続される。
【0026】
挿入部22は、先端側から順に、硬質部材によって形成され、超音波観察部36と内視鏡観察部38とを有する先端部(先端硬質部)40と、先端部40の基端側に連設され、複数の湾曲駒を連結してなり、湾曲自在の湾曲部42と、湾曲部42の基端側と操作部24の先端側との間を連結し、細長かつ長尺の可撓性を有する軟性部43とから構成されている。
湾曲部42は、操作部24に設けられた一対のアングルノブ29、29を回動することによって遠隔的に湾曲操作される。これにより、先端部40を所望の方向に向けることができる。
【0027】
また、先端部40には、内部に、超音波観察部36を覆う超音波伝達媒体(例えば、水、オイル等)を注入したバルーンが着脱自在に装着されていても良い。超音波及びエコー信号は空気中において著しく減衰するため、このバルーンに超音波伝達媒体を注入して膨張させ、観察対象部位に当接させることにより、超音波観察部36の超音波振動子(超音波トランスデューサ)アレイ(50:
図2〜
図5参照)と観察対象部位の間から空気を排除し、超音波及びエコー信号の減衰を防止することができる。
【0028】
なお、超音波用プロセッサ装置14は、超音波内視鏡12の挿入部22の先端部40の超音波観察部36の超音波振動子ユニット(46)の超音波振動子アレイ(50:
図2〜
図5参照)に超音波を発生させるための超音波信号(データ)を生成して供給するものである。また、超音波用プロセッサ装置14は、超音波が放射された観察対象部位から反射されたエコー信号(データ)を超音波振動子アレイ(50)によって受信して取得し、取得したエコー信号に対して各種の信号(データ)処理を施してモニタ20に表示される超音波画像を生成するためのものである。
【0029】
内視鏡用プロセッサ装置16は、超音波内視鏡12の挿入部22の先端部40の内視鏡観察部38において光源装置18からの照明光によって照明された観察対象部位から取得された撮像画像信号(データ)を受信して取得し、取得した画像信号に対して各種の信号(データ)処理、及び画像処理を施して、モニタ20に表示される内視鏡画像を生成するためのものである。
なお、これらのプロセッサ装置14、及び16は、PC(パーソナルコンピュータ)等のプロセッサによって構成されるものであっても良い。
【0030】
光源装置18は、超音波内視鏡12の内視鏡観察部38によって体腔内の観察対象部位を撮像して画像信号を取得するために、赤光(R)、緑光(G)、及び青光(B)等の3原色光からなる白色光や特定波長光等の照明光を、発生させて、超音波内視鏡12に供給し、超音波内視鏡12内のライトガイド(図示せず)等によって伝搬し、超音波内視鏡12の挿入部22の先端部40の内視鏡観察部38から出射して、体腔内の観察対象部位を照明するためのものである。
【0031】
モニタ20は、超音波用プロセッサ装置14及び内視鏡用プロセッサ装置16により生成された各映像信号を受けて超音波画像や内視鏡画像を表示する。これらの超音波画像や内視鏡画像の表示は、いずれか一方のみの画像を適宜切り替えてモニタ20に表示することや両方の画像を同時に表示すること等が可能である。なお、超音波画像を表示するためのモニタと内視鏡画像を表するためのモニタを別個に設けてよいし、他の任意に形態で、これらの超音波画像と内視鏡画像とを表示するようにしてもよい。
【0032】
次に、超音波内視鏡の挿入部の先端部の構成を
図2〜
図4を参照して詳細に説明する。
図2は、
図1に示す超音波内視鏡の先端部及びその近傍を示す部分拡大平面図である。
図3は、
図2に示すIII−III線矢視図であり、
図2に示す超音波内視鏡の先端部をその長手方向に沿った中心線によって切断した縦断面図である。
図4は、
図3に示す超音波内視鏡の先端部の超音波観察部の部分拡大縦断面図である。
図5は、
図2に示すV−V線矢視図であり、
図2に示す超音波内視鏡の先端部の超音波観察部の超音波振動子アレイの円弧構造の中心線によって切断した横断面図である。
【0033】
図2、及び
図3に示すように、超音波内視鏡12の先端部40には、先端側に超音波画像を取得するための超音波観察部36と、基端側に内視鏡画像を取得するための内視鏡観察部38と、これらの間に処置具導出口44とが設けられており、共に超音波内視鏡12の先端部40の先端部本体となる、硬質樹脂等の硬質部材からなる外装部材41に取り付けられて保持されている。
図2に示す例では、処置具導出口44は、超音波観察部36と内視鏡観察部38との間に設けられているが、本発明は特に図示例に限定されず、内視鏡観察部38内に設けられていても良いし、内視鏡観察部38よりも基端側(湾曲部42側)に設けられていても良い。
【0034】
図2〜
図4に示すように、超音波観察部36は、本発明の超音波振動子ユニット46と、超音波振動子ユニット46を取り付けて保持する外装部材41とから構成されるものである。
超音波振動子ユニット46は、複数の超音波振動子(トランスデューサ)48からなる超音波振動子アレイ50と、超音波振動子アレイ50の外側面に設けられる電極部52と、超音波振動子アレイ50の各超音波振動子48を下面側から支持するバッキング材層54と、電極部52と電気的に接続されるフレキシブルプリント配線基板(以下、単にFPC(Flexible Printed Circuit)という)56と、FPC56に接続される複数本のケーブル58が配線接続されたケーブル配線部60とを有する。ここで、図示例では、FPC56とケーブル配線部60とは、ケーブルユニット62として一体化されている。
【0035】
また、超音波振動子ユニット46は、更に、超音波振動子アレイ50の上に積層された音響整合層64と、音響整合層64上に積層された音響レンズ66とを有する。即ち、超音波振動子ユニット46は、音響レンズ66、音響整合層64、超音波振動子アレイ50、及びバッキング材層54の積層体からなる。
音響整合層64は、人体等の被検体と超音波振動子48との間の音響インピーダンス整合をとるためのものである。
音響整合層64上に取り付けられている音響レンズ66は、超音波振動子アレイ50から発せられる超音波を観察対象部位に向けて収束させるためのものである。音響レンズ66は、例えば、シリコン系樹脂(ミラブル型シリコンゴム(HTVゴム)、液状シリコンゴム(RTVゴム)等)、ブタジエン系樹脂、ポリウレタン系樹脂等からなる。音響整合層64によって被検体と超音波振動子48との間の音響インピーダンス整合をとり、超音波の透過率を高めるため、音響レンズ66には、必要に応じて酸化チタンやアルミナ、シリカ等の粉末が混合される。
【0036】
超音波振動子アレイ50は、円弧状かつ外側に向けて配列された複数、例えば48〜192個の直方体形状の超音波振動子(トランスデューサ)48からなる48〜192チャンネル(CH)のアレイである。
即ち、超音波振動子アレイ50は、複数の超音波振動子48が、一例として、図示例のように一次元アレイ状に所定のピッチで配列されてなるものである。このように、超音波振動子アレイ50を構成する各超音波振動子48は、先端部40の軸線方向(挿入部22の長手軸方向)に沿って凸湾曲状に等間隔で配列されており、超音波用プロセッサ装置14から入力される駆動信号に基づいて順次駆動されるようになっている。これによって、
図2に示す超音波振動子48が配列された範囲を走査範囲としてコンベックス電子走査が行われる。
【0037】
超音波振動子アレイ50は、バッキング材層54の底面54dと平行な方向(AZ(アジマス)方向)よりも、AZ方向と直交する超音波振動子48の長手方向(EL(エレベーション)方向)の長さのほうが短く、後端側が張り出すように傾斜して配置される。
図5に示すように、超音波振動子48は、例えば、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛)や、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)等の圧電体厚膜の両面に電極を形成した構成を有する。一方の電極は、超音波振動子48毎に個々に独立した個別電極52a、他方の電極は、超音波振動子48の全てに共通の共通電極(例えば、グランド(接地)電極)52bとなっている。図示例では、複数の個別電極52aは、複数の超音波振動子48の端部の下面からその配列面となるバッキング材層54の外表面(上表面)54bまで延びており、共通電極52bは、超音波振動子48の端部の上面に設けられている。これらの複数の個別電極52a、及び共通電極52bは、電極部52を構成している。
なお、図示は省略するが、隣接する2つの超音波振動子48同士の隙間には、エポキシ樹脂等の充填材が充填されている。
【0038】
超音波観察部36の超音波振動子ユニット46において、超音波振動子アレイ50の各超音波振動子48が駆動され、超音波振動子48の両電極に電圧が印加されると、圧電体が振動して超音波を順次発生し、被検体の観察対象部位に向けて超音波が照射される。そして、複数の超音波振動子48をマルチプレクサ等の電子スイッチで順次駆動させることによって、超音波振動子アレイ50が配された曲面に沿った走査範囲、例えば曲面の曲率中心から数十mm程度の範囲において、超音波が走査される。
また、観察対象部位から反射されたエコー信号(超音波エコー)を受信すると、圧電体が振動して電圧を発生し、この電圧を受信した超音波エコーに応じた電気信号(超音波検出信号)として超音波用プロセッサ装置14に出力する。そして、超音波用プロセッサ装置14において各種の信号処理が施されてから、超音波画像としてモニタ20に表示される。
【0039】
電極部52は、
図3、及び
図4に示すように、複数(48〜192)の超音波振動子48の配列による円弧状面に対して垂直となる超音波振動子アレイ50の(各超音波振動子48の)端面側に円弧状に設けられるものにより、複数(48〜192)の超音波振動子48にそれぞれ導通する複数(48〜192)の電極52aからなる。なお、電極部52には、複数の超音波振動子48の共通電極が含まれていても良い。本発明において、垂直とは、90度に限定されるわけではなく、略垂直。例えば、90度±5度、即ち、85度〜95度までの範囲の角度を含むものである。
なお、
図3、及び
図4においては、円弧状に配列された複数の電極52a及びこれらからなる電極部52は、バッキング材層54に隠れて見えないが、分かり易くするために破線表示している。
電極部52は、超音波振動子48の配列面に対して垂直となる超音波振動子アレイ50の外側面に設けられるが、超音波振動子48の数が少ない場合には、片側の外側面でも良いが、超音波振動子48の数は多い方が好ましいので、複数の電極52aは、超音波振動子アレイ50の両外側面に設けられることが好ましい。
なお、
図5に示す例では複数の電極52aを、各超音波振動子48の長手方向の端面側に設けられた個別電極で構成しているが、本発明はこれに限定されず、超音波振動子48の個別電極52aに導通していれば、個別電極から配線によって接続された別の電極によって構成しても良い。また、電極部52には、直接共通電極が含まれているが、共通電極52bから配線によって接続された電極が含まれていても良い。
電極部52の複数の電極52a及び52bは、電極パッドとして設けられていることが好ましい。
【0040】
次に、バッキング材層54は、
図3、及び
図6に示すように、複数の超音波振動子48の配列面に対して内側となる、即ち超音波振動子アレイ50の背面(下面)に配設されるバッキング材からなる部材の層である。バッキング材層54は、上表面(上側面)54bが断面凸円弧状に形成され、その下側面54cが断面凹円弧状に形成され、したがって、断面円弧状の外表面54bを持ち、外表面54bと逆の内側に凹部、好ましくは、図示例ではバッキング材層54の一方の外側面から他方の外側面に貫通する半円柱状の凹部54aを備える、即ち下面側に断面円弧状凹部54aを有する半円筒状のバッキング材からなる。したがって、バッキング材層54の底面(内側表面)54dは、図示例のように、同一平面上に位置する分離された2つの平面からなることが好ましい。
【0041】
ここで、バッキング材層54は、
図3、及び
図6に示す例では、半円筒状であるが、本発明はこれに限定されず、
図7、
図8、及び
図9に示すバッキング材層68、69、及び70のように、半円柱形状であっても良い。この時、バッキング材層68、69、及び70の底面68c、69c、及び70cは、同一平面上に位置する、連続する1つの平面からなることが好ましい。なお、
図6〜
図9においては、説明のため、本発明の超音波振動子ユニットの構成要素の内、超音波振動子アレイ、及びバッキング材層以外の構成要素は省略されている。
更に、本発明に用いられるバッキング材層は、好ましくは、弓形状(半円より小さい円弧を持つ部分円筒形状)であっても良いし、円柱を中心線に平行な平面で切断した形状であってもよいし、半円柱形状、又は、円柱を中心線に平行な平面で切断した形状のバッキング材層にその底面側から開けられ、バッキング材層の一方の外側面から他方の外側面に貫通する半楕円形状、多角形状、又は異形状等の貫通凹部を備えるものであって良い。
【0042】
また、図示例のバッキング材層54においては、ケーブル配線部60の少なくとも一部を含むことができる凹部54aを有する。図示例では、凹部54aは、バッキング材層54の一方の外側面から他方の外側面に貫通する半円柱状の凹部(第1凹部)であるが、本発明はこれに限定されず、ケーブル配線部60の少なくとも一部を収納することができれば、どのような凹部であっても良い。
例えば、本発明に用いられるバッキング材層の凹部は、バッキング材層の外側面より中心側に向って設けられていることが好ましい。したがって、凹部は、バッキング材層の一方の外側面から他方の外側面に貫通する凹部(本発明の第1凹部である)、又はバッキング材層の少なくとも一方の外側面から中心側に向って凹んだ凹部(本発明の第2凹部である)であることがより好ましい。
ここで、第1凹部としては、バッキング材層の底面側から円形に刳り貫かれた、バッキング材層の一方の外側面から他方の外側面に貫通する凹部(第1凹部)であっても良いし、上述した半楕円形状、多角形状、又は異形状等の貫通凹部であっても良い。
【0043】
一方、第2凹部としては、バッキング材層の少なくとも一方の外側面から中心側に向って座グリをすることによって形成された座グリ、例えば、
図7、
図8、及び
図9に示す半円柱形状のバッキング材層68、69、及び70の一方の各外側面68b、69b、及び70bにそれぞれ形成された半円状の座グリ68a、四角形の座グリ69a、及び円錐状の座グリ70aであっても良いし、図示しないが、弓形状の座グリ、多角形の座グリ、角錐状の座グリ等であっても良い。また、凹部は、上述した座グリでなくても、バッキング材層の外側面より中心側に向って設けられていれば、予め、バッキング材層に形成されていた凹部であっても良い。
このような凹部は、例えば円錐状の座グリ70aのように、超音波振動子アレイ50から遠ざかる方向に向かって拡大するように形成されてなることが好ましい。
更に、本発明に用いられる凹部は、座グリ68a、69a、及び70aのように貫通していない場合には、バッキング材層の両方の外側面、即ち両側の側面に設けられていることが好ましい。
【0044】
バッキング材層54を構成するバッキング材は、超音波振動子アレイ50の各超音波振動子48等を柔軟に支持するクッション材として機能する。このため、バッキング材は、硬質ゴム等の剛性を有する材料からなり、超音波減衰材(フェライト、セラミックス等)が必要に応じて添加されている。
したがって、超音波振動子アレイ50は、バッキング材層54の断面凸円弧状に形成された上面となる円弧状の外表面54b上に、図示例では、複数の直方体状の超音波振動子48をその長手方向が平行となるように、好ましくは等間隔に配列したもの、即ち、複数の超音波振動子48が円弧状かつ外側に向けて配列されたものである。
【0045】
FPC56は、本発明に用いられる配線基板であり、
図3及び
図4に示すように、電極部52の複数(48〜192)の電極52aとそれぞれ電気的に接続するための複数(48〜192)の配線を有するものである。即ち、図示例では、FPC56は、電極部52の複数の電極52a(電極パッド)とそれぞれ電気的に接続するための複数(48〜192)の配線パッド56a、複数(48〜192)本のケーブル58が配線接続されたケーブル配線部60とそれぞれ電気的に接続するための複数(48〜192)の配線パッド57、及びこれらの複数の配線パッド56aと複数の配線パッド57とをそれぞれ接続するための複数の配線(図示せず)を有するものである。
ケーブル配線部60は、FPC56の複数(48〜192)の配線にそれぞれ接続される複数(48〜192)本のケーブル58が予め配線接続されたものである。
ケーブル配線部60は、
図5に示す例では、FPC56の複数の配線パッド57を共有し、複数(48〜192)の配線パッド57にはそれぞれ複数(48〜192)本のケーブル58が予め配線接続されている。
【0046】
なお、
図5に示す例においては、FPC56と、ケーブル配線部60とは、一体化されたケーブルユニット62として構成している。
ここで、ケーブルユニット62は、1つの配線基板、例えば、FPC56等のフレキシブルな配線基板とプリント配線回路基板(以下、PCB(Printed Circuit Board)という)、又はプリント配線基板(以下、PWB(Printed Wired Board)等のリジッドな配線基板とが一体化された多層基板を用いるものである。ケーブルユニット62では、FPC56の複数の配線パッド57をリジッドな配線基板に設けて、複数の配線パッド57に複数本のケーブル58を予め配線接続してケーブル配線部60を設け、複数の配線パッド57にそれぞれ導通するFPC56の複数の配線パッド56aと超音波振動子アレイ50の電極部52の複数の電極52a(電極パッド)とが互いに接触するように超音波振動子アレイ50とケーブルユニット62のFPC56とを貼り合わせて複数の配線パッド56aと複数の電極52a(電極パッド)とを互いに電気的に接続する。
【0047】
ここで、FPC56の複数の配線パッド56aと超音波振動子アレイ50の電極部52の複数の電極52a(電極パッド)との貼り合わせ(即ち、電気的な接続)は、異方性導電性シート、又は異方性導電性ペーストを用いて行うことが好ましく、また、熱融着によって行うことが好ましい。なお、配線パッド56aと電極52aとの電気的な接続は、これらの接続方法に制限される訳ではなく、配線の作業性を阻害せず、作業工程の難易度が高くならなければ、いかなる方法を用いても良く、ワイヤーボンディング、半田付け等の方法などの公知の方法を用いても良い。
こうすることにより、本発明では、超音波振動子配線作業の簡素化、効率化、作業性の向上を図ることができ、小型化ができ、かつ超音波振動子アレイの各電極、及び多数のケーブルを配線する際に作業性の良く、作業工程の難易度が低く、ケーブルへの負荷がかかりにくく断線の危険性が少ない配線構造を有し、超音波内視鏡に用いるのに適した超音波振動子ユニットを提供することができる。
【0048】
上述した例においては、FPC56と、ケーブル配線部60とを、一体化されたケーブルユニット62として構成しているが、本発明はこれに限定されず、一体化されず、別々の部材として構成しておいても良い。即ち、FPC56を上記構成とし、一方のケーブル配線部60を、FPC56の複数の配線パッド56aとそれぞれ電気的に接続するための複数(48〜192)の配線パッドを有し、これらの複数の配線パッドにそれぞれ複数本のケーブル58を予め配線接続したものとして構成しておいても良い。
【0049】
この場合には、先ず、FPC56の複数の配線パッド56aとケーブル配線部60の複数の配線パッドとが互いに接触するようにFPC56とケーブル配線部60が設けられた配線基板とを貼り合わせて複数の配線パッド56aとケーブル配線部60の複数の配線パッドとを互いに電気的に接続する。
次に、ケーブル配線部60と一体化されたFPC56の超音波振動子アレイ50への貼り合わせを上述した例と同様に行えばよい。
このように、予めケーブル58を配線したFPC56等のフレキシブル基板を含む小型基板に配線しておき、この小型基板(FPC56の配線パッド56a)と超音波振動子アレイ50(電極部52の電極52a)を貼り合せることにより、超音波振動子の配線工程の簡素化を図ることができる。
【0050】
又は、先に、FPC56の超音波振動子アレイ50への貼り合わせを、上述した例と同様に行っておき、次に、超音波振動子アレイ50に貼り合付けられたFPC56とケーブル配線部60が設けられた配線基板とを上述した例と同様に貼り合わせても良い。
これらの貼り合わせ(即ち、電気的な接続)も、配線パッド56aと電極52aとの電気的な接続と同様に、異方性導電性シート、又は異方性導電性ペーストを用いて行うことが好ましく、また、熱融着によって行うことが好ましい。なお、これらの電気的な接続も、これらの方法に制限される訳ではなく、配線の作業性を阻害せず、作業工程の難易度が高くならなければ、いかなる方法を用いても良く、ワイヤーボンディング、半田付け等の方法などの公知の方法を用いても良い。
この場合にも、同様に、超音波振動子の配線工程の簡素化を図ることができる。
【0051】
ここで、本発明では、超音波振動子ユニット46の小型化が求められていることから電極部52と電気的に接続する本発明の配線基板として、図示例のように、FPC56等のフレキシブルな配線基板を用いることが好ましい。しかしながら、本発明はこれに限定されず、PCB、又はPWB等のリジッドな配線基板を用いても良いし、フレキシブルな配線基板とリジッドな配線基板とを組み合わせて用いても良い。
また、ケーブル配線部60は、複数のケーブル58が極細であることから、安定して先端部40の外装部材41内に配置するためには、PCB、又はPWB等のリジッドな配線基板を用いて構成することが好ましいが、本発明はこれに限定されず、FPCのようなフレキシブル基板を用いて構成しても良いし、これらを組み合わせて用いても良い。即ち、ケーブル配線部60は、上述したような本発明に用いられる配線基板を用いて構成しても良い。
【0052】
また、ケーブルユニット62は、上述したように、FPC56等の配線基板と、ケーブル配線部60とを備えるものであり、FPC56の複数の配線パッド56aとケーブル配線部60に配線接続された複数のケーブル58とがそれぞれ接続されてなるものである。ここで、電極部52と電気的に接続する配線基板、及びケーブル配線部60を構成する配線基板は、特に限定されないので、ケーブルユニット62を種々の配線基板を用いて構成することができるが、その中でも、FPC56等のフレキシブルな配線基板と、ケーブル配線部60を持つPCB、又はPWB等のリジッドな配線基板とを有する、即ち一体化した多層配線基板を用いて構成したものであることが好ましい。
【0053】
本発明においては、ケーブル配線部60は、その少なくとも一部が、バッキング材層54の凹部54aに含まれている必要がある。即ち、凹部54aは、ケーブル配線部60の少なくとも一部を収納できる空間である必要がある。なお、本発明の超音波振動子ユニット46においては、
図3及び4に示すように、2つの配線パッド57、したがって2つのケーブル配線部60は、半円柱状の凹部54aに収納されており、
図5に示すように、ケーブル配線部60、多数のケーブル58の配線部分、多数のケーブル58の延在している延長部分の一部は、バッキング材層54の両方の外側面より中心側に向うように凹部54aに収納されている。
このように、多数のケーブル58が配線接続されたケーブル配線部60をバッキング材層54の凹部54aに収納させることにより、本発明では、超音波内視鏡12の先端部40の超音波観察部36内の空間を有効に使用することができる。その結果、超音波振動子ユニットの小型化、ひいては、超音波内視鏡12の小型化を図ることができる。
【0054】
ここで、本発明の超音波振動子ユニット46においては、
図5に示すように、バッキング材層54の両方の外側面のケーブルユニット62と、バッキング材層54とによって囲まれる半円柱状の凹部54a内に収納されたケーブル配線部60、及び多数のケーブル58と、バッキング材層54との間の凹部54aの隙間、即ち、バッキング材層54の凹部54a内のケーブル配線部60、多数のケーブル58の配線部分、及びそれらの延長部分の一部によって占められていない空間は、充填剤によって埋めて、充填剤層74としておくことが好ましい。
なお、本発明の超音波振動子ユニット46を超音波内視鏡12の先端部40の外装部材41に取り付ける際には、超音波振動子ユニット46、即ち、音響レンズ66、ケーブルユニット62、充填剤層74、及び多数のケーブル58と、外装部材41との間の隙間(空間)は、放熱性の良い充填剤で埋めて、充填剤層76としておくことが好ましい。
このような充填剤層74及び76は、バッキング材層54の凹部54a内の隙間、及び超音波振動子ユニット46と外装部材41との間の隙間を埋めるために設けられるものであって、ケーブル配線部60と多数のケーブル58の配線部分及び延長部分の一部とを固定して、ケーブル58等の断線を防止することができるものである。このように、ケーブル配線部60、及び多数のケーブル58の少なくとも一部を、充填剤にて覆い、充填剤層74及び/又は76を形成しておくことで、本発明の超音波振動子ユニット46、及び超音波観察部36のアセンブリの取り回し時のケーブル58の部分の保護を行うことができる。
【0055】
更に、充填剤層74は、超音波振動子アレイ50から発振されて、その下側に伝播した超音波がバッキング材層54との境界で反射しないように、かつ超音波振動子アレイ50から発振された超音波が観察対象又はその周辺部において反射して、超音波振動子アレイ50の下側に伝播した超音波を十分に減衰させることができるように、バッキング材層54との音響インピーダンスが整合していることが好ましい。そのため、充填剤層74の音響インピーダンスをZp(kg/m
2 s)とし、かつバッキング材層54の音響インピーダンスをZb(kg/m
2 s)としたときに、下記式(1)で表される充填剤層74とバッキング材層54との音響インピーダンス反射率Qが、50%以下であることが好ましい。
Q=100×|Zp−Zb|/(Zp+Zb) …(1)
この音響インピーダンス反射率Qは、充填剤層74とバッキング材層54との境界面における超音波(音響ビーム)の反射のし易さを表す指標であり、すなわち、値が0%に近いほど、充填剤層74の音響インピーダンスとバッキング材層54の音響インピーダンスとが整合していることを示す。上記の音響インピーダンス反射率が50%以下程度であれば、超音波振動子アレイ50の下側に伝播した超音波が原因となる雑音は、超音波振動子アレイ50において受信される超音波信号を用いて、超音波プロセッサ装置14において超音波画像を生成することにおいて、問題とはならないように処理をすることができる。
なお、充填剤層76においても、充填剤層74と同様に、バッキング材層54との音響インピーダンスの整合を取っておく方が好ましい。
【0056】
また、超音波振動子ユニット46の超音波振動子アレイ50から超音波を発振する際に、超音波用プロセッサ装置14から超音波振動子アレイ50に伝送される駆動信号が熱エネルギーとなり、超音波振動子アレイ50が発熱するため、充填剤層76は放熱性を有することが好ましい。そのため、充填剤層76の熱伝導率は、1.0W/m K以上であることが好ましい。
なお、充填剤層74においても、充填剤層76と同様に、放熱性の良い充填剤を用いておく方が好ましい。
【0057】
ここで、
図5に示す超音波振動子ユニット46では、ケーブルユニット62のFPC56(配線パッド56a)と、超音波振動子アレイ50の電極部52の電極52aの電気的な接続は、FPC56の先端部分の側面の配線パッド56aと超音波振動子アレイ50の外側面(超音波振動子48の端面)の電極部52の電極52aとを異方性導電性シート、又は異方性導電性ペーストを用いて、もしくは熱融着によって接合することが好ましいが、本発明はこれに限定されないのは勿論である。
例えば、
図10に示すように、超音波振動子アレイ50の電極部52の電極52aをバッキング材層54の上表面54b(超音波振動子48の配列面)から外側面54eまで延ばして、ケーブルユニット62のFPC56の少なくとも配線パッド56aの部分の厚みをその分だけ薄くして、バッキング材層54の外側面54eに延びた電極52aの延長部分と、厚みが薄くなったFPC56の配線パッド56aの部分とを貼り合わせて接合し、両者を半田等で電気的に接続するようにしても良い。
【0058】
また、
図11に示す例では、ケーブルユニット62のFPC56の少なくとも配線パッド56aの部分を超音波振動子48の配列面である
図7に示すバッキング材層68の上表面に配置されている超音波振動子アレイ50の電極部52の電極52aに貼り合わせて接合し、両者を電気的に接続するようにしても良い。
なお、
図11に示す例では、貫通していない座グリ(凹部)68aを持つバッキング材層68を用いているが、本発明はこれに限定されず、
図5、
図6、及び
図10に示す貫通する半円柱状の凹部54aを持つ半円筒状のバッキング材層54を用いても良いし、
図8、及び
図9に示すような貫通していない凹部69a、及び70aをそれぞれ持つバッキング材層69、及び70を用いても良いし、その他の形状、及び構造のバッキング材層を用いても良い。
【0059】
なお、
図5、
図10、及び
図11に示す例では、バッキング材層54、又は68の外側面より中心側に向って設けられているが、本発明はこれに限定されない。
図11Aに示すように、バッキング材層68の外側面側にケーブル配線部60を設けることも可能である。但し、
図11Aに示すように、ケーブルユニット62を構成する配線基板を、バッキング材層68の凹部68aの内壁面に沿って中心側に屈曲させて、その外側にケーブル配線部60を設ける必要があるので、FPC等の配線基板の構造が複雑になることが懸念される。即ち、
図11Aに示す例では、FPC56の部分は、
図5、
図10、及び
図11に示す例と同様に、超音波振動子アレイ50の外側面の電極部52に貼り付けられ、FPC56に続く配線基板部分は、凹部68aの内壁面に沿って中心側に屈曲され、続いて図中下方に屈曲され、下方に屈曲された配線部分の外側面にケーブル配線部60が設けられる。
なお、
図11Aに示す例の場合も、
図11に示す例と同様に、
図5、
図6、及び
図10に示すバッキング材層54を用いても良いし、
図8、及び
図9に示すバッキング材層69、及び70を用いても良いし、その他の形状、及び構造のバッキング材層を用いても良い。
【0060】
内視鏡観察部38は、観察窓78、対物レンズ80、固体撮像素子82、照明窓84、洗浄ノズル86、及び配線ケーブル88等から構成される。
観察窓78は、先端部40の斜め上方に向けて取り付けられている。観察窓78から入射した観察対象部位の反射光は、対物レンズ80で固体撮像素子82の撮像面に結像される。固体撮像素子82は、観察窓78、及び対物レンズ80を透過して撮像面に結像された観察対象部位の反射光を光電変換して、撮像信号を出力する。固体撮像素子82としては、CCD(Charge Coupled Device:電荷結合素子)、及びCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor:相補形金属酸化膜半導体)等を挙げることができる。固体撮像素子82で出力された撮像画像信号は、挿入部22から操作部24まで延設された配線ケーブル88を経由して、ユニバーサルコード26により内視鏡用プロセッサ装置16に伝送される。内視鏡用プロセッサ装置16は、伝送された撮像信号に対して、各種信号処理、および画像処理を施し、内視鏡光学画像としてモニタ20に表示する。
【0061】
照明窓84は、観察窓78を挟んで両側に設けられている。照明窓84には、ライトガイド(図示せず)の出射端が接続されている。ライトガイドは、挿入部22から操作部24まで延設され、その入射端は、ユニバーサルコード26を介して接続された光源装置18に接続されている。光源装置18で発せられた照明光は、ライトガイドを伝って照明窓84から被観察部位に照射される。
また、洗浄ノズル86は、観察窓78、及び照明窓84の表面を洗浄するために、送水タンク21aから超音波内視鏡12内の送気送水管路を経て空気、又は洗浄水を観察窓78、及び照明窓84に向けて噴出する。
【0062】
また、先端部40には、処置具導出口44が設けられている。処置具導出口44は、挿入部22の内部に挿通される処置具チャンネル45に接続されており、処置具挿入口30に挿入された処置具は、処置具チャンネル45を介して処置具導出口44から体腔内に導入される。なお、処置具導出口44は、超音波観察部36と内視鏡観察部38との間に位置しているが、処置具導出口44から体腔内に導入された処置具の動きを超音波画像で確認する構成する場合には、超音波観察部36に近づけて配設することが好ましい。
処置具導出口44の内部には、図示しないが、処置具導出口44から体腔内に導入される処置具の導出方向を可変する起立台が設けられていても良い。起立台にはワイヤ(図示せず)が取り付けられており、操作部24の起立レバー(図示せず)の操作による押し引き操作によって起立台の起立角度が変化し、これによって処置具が所望の方向に導出されるようになる。
【0063】
超音波内視鏡12によって体腔内を観察する際には、まず、挿入部22を体腔内に挿入し、内視鏡観察部38において取得された内視鏡光学画像をモニタ20で観察しながら、観察対象部位を探索する。
次いで、観察対象部位に先端部40が到達し、超音波断層画像を取得する指示がなされると、超音波プロセッサ装置14から超音波内視鏡12内のケーブル58、ケーブルユニット62、及び電極部52を介して駆動制御信号が超音波振動子48に入力される。駆動制御信号が入力されると、超音波振動子48の両電極に規定の電圧が印加される。そして、超音波振動子48の圧電体が励振され、音響レンズ66を介して、観察対象部位に超音波が発せられる。
超音波の照射後、観察対象部位からのエコー信号が超音波振動子48で受信される。この超音波の照射、およびエコー信号の受信は、駆動する超音波振動子48をマルチプレクサ等の電子スイッチによりずらしながら繰り返し行われる。これにより、観察対象部位に超音波が走査される。超音波プロセッサ装置14では、エコー信号を受信して超音波振動子48から出力された検出信号を元に、超音波断層画像が生成される。生成された超音波断層画像は、モニタ20に表示される。
【0064】
本発明の超音波振動子ユニット46は、以下のようにして製造することができる。
超音波振動子ユニット46の製造方法は、超音波振動子アレイ50の多数の超音波振動子48への配線工程の簡素化が図れることを特徴とするものであり、配線工程について詳細に説明するが、超音波振動子ユニット46の個々の構成要素及び個々の部材の製造はなされているものとしている。
また、本発明の超音波振動子ユニット46の製造方法を、
図12〜
図17を参照して説明するが、
図12〜
図17は、実際の構成要素及び部材を示しているものではなく、説明に必要な部分のみを記載し、説明に用いない部分は省略している説明のための図面である。
【0065】
まず、
図12に示すように、バッキング材層54、複数の超音波振動子48からなる超音波振動子アレイ50、音響整合層64、及び音響レンズ66の積層体である超音波振動子アセンブリ90を準備する。
また、
図12に示すように、超音波振動子アレイ50の外側面において、超音波振動子アレイ50の電極部52の複数の電極52a(
図4及び
図5参照)と貼り合わせによって電気的に接続できる複数の接続用電極92a、複数の接続用電極92aより電極間のピッチ間隔が大きい複数の検査用電極92b、及びこれらをそれぞれ導通している配線92cとを有する検査用フレキシブル基板92を準備する。
次に、
図13に示すように、検査用フレキシブル基板92の複数の接続用電極92aと、超音波振動子アセンブリ90の超音波振動子アレイ50の電極部52の複数の電極52aとが接合されるように、検査用フレキシブル基板92を超音波振動子アレイ50の電極部52に張り合わせて、複数の接続用電極92aと、複数の電極52aと電気的に接合する。
【0066】
こうして、
図13に示すように、検査用フレキシブル基板92が超音波振動子アセンブリ90に貼り合わされた超音波振動子検査アセンブリ94を製造する。
この超音波振動子検査アセンブリ94の複数の検査用電極92bを用いて、超音波振動子アレイ50の複数の超音波振動子48の検査を行う。複数の検査用電極92bは、超音波振動子アレイ50の電極部52の複数の電極52aより、電極間のピッチ間隔が大きいので、例えばケーブル端部がクリップ状のコネクタとなっており、クリップ状コネクタで検査用電極92bを挟むことで導通をとる治具を用いることが可能になるため、容易に検査を行うことができる。
従来は、超音波振動子アセンブリ90の超音波振動子アレイ50の電極部52の複数の電極52aに複数のケーブル58を接続した後にしか、超音波振動子アレイ50の複数の超音波振動子48の検査を行うことができなかったので、超音波振動子48が検査に合格しない場合には、極細で高価な複数のケーブル58が使用できなくなるために、コストアップとなっていたが、本発明の超音波振動子ユニット46の構造にすることにより、コストダウンを図ることができる。
【0067】
次に、
図14に示すように、超音波振動子アレイ50の各超音波振動子48が検査に合格した超音波振動子検査アセンブリ94から、超音波振動子アセンブリ90のバッキング材層54の凹部54aの半円形状に沿って、検査用フレキシブル基板92を切断して、複数の接続用電極92aのみが貼り付けられた超音波振動子アセンブリ96を製造する。
なお、この時、超音波振動子検査アセンブリ94から、張り合わせた検査用フレキシブル基板92全体を剥がして取り去っても良い。
一方、
図14に示すように、複数の接続用電極92a、又は超音波振動子アレイ50の電極部52の複数の電極52aに対し、張り合わせによる接合が可能な配線パッド56aを持つFPC56と、複数のケーブル58が予め配線接続された配線パッド57を持つケーブル配線部60が形成された配線基板とを有する多層FPC等の多層配線基板からなるケーブルユニット62を準備しておく。
なお、ケーブルユニット62のケーブル配線部60は、その少なくとも一部、図示例では、2つの配線パッド57が、バッキング材層54の半円形状の凹部54aに収納されるように形成される。図示例では、ケーブル配線部60が形成された配線基板は、バッキング材層54の半円形状の凹部54aと同じ半円形状となっている。
【0068】
図14に示す超音波振動子アセンブリ96、又は90とケーブルユニット62と、ケーブルユニット62とを、複数の接続用電極92a、又は複数の電極52aと、FPC56の配線パッド56aとが接合するように張り合わせて、複数の接続用電極92a、又は複数の電極52aと、配線パッド56aとを電気的に接続する。この時、ケーブルユニット62は、ケーブル配線部60がバッキング材層54の凹部54aに収納されるように、ケーブル配線部60を内側に向けて超音波振動子アセンブリ96、又は90に張り合わせる。
【0069】
こうして、
図15及び
図16に示す本発明の超音波振動子ユニット46を製造することができる。
図15は、超音波振動子ユニット46の側面図である。
図15に示すように、外からは、ケーブルユニット62の外側面のみが見えており、ケーブル配線部60は見えていない。
一方、
図16は、
図5のP−P線断面図であり、超音波振動子ユニット46の横断面図である。
図16に示すように、ケーブルユニット62のケーブル配線部60は、バッキング材層54の凹部54a内に収納されている。
また、バッキング材層54の凹部54aは、ケーブルユニット62のケーブル配線部60及び複数のケーブル58によって埋められているが、全ては埋まっておらず、隙間98が存在する。
続いて、この隙間98に、バンキング性、音響整合性、及び/又は放熱性等を考慮して充填剤を注入して、充填剤層74を作製する。
こうして、最終的な本発明の超音波振動子ユニット46を製造することができる。
【0070】
本発明の超音波振動子ユニットは、基本的に、以上のように構成され、以上のように製造される。
ところで、本発明においては、図示例のバッキング材層54は、半円筒状(ドーナツ型)になっており、同一円弧を描いた際にその円弧の上半分にケーブル配線部の少なくとも一部が含まれるような配置にするようにしても良い。
また、ケーブル配線部60がバッキング材層54と干渉しないように、上記円弧とケーブル配線部60のオーバーラップ部のバッキング材層には座グリが設けられているが、単に、空間が空けられていても良い。
このように、本発明の超音波振動子ユニットにおいては、バッキング材層54の凹部54aをバッキング材層54の外側面より中心側に向って設け、超音波内視鏡12の先端部40の超音波観察部36の中心部側の面で行うことで、超音波内視鏡12内の空間を有効に使用することができる。
また、FPC56等のフレキシブル基板を含む小型基板(FPC56の配線パッド56a)からなるケーブルユニット62と、超音波振動子アレイ50(電極部52の電極52a)との電極配線、及び貼付けは、超音波振動子アレイ50の外側面(超音波振動子48の端面)において行うようにしても良い。
【0071】
以上、本発明に係る超音波振動子ユニット、及びこれを用いる超音波内視鏡について詳細に説明したが、本発明は、以上の例には限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変形を行ってもよいのはもちろんである。