(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0008】
<本発明の一実施形態>
以下、本発明の一実施形態について、
図1〜
図3を用いて説明する。
【0009】
(1)基板処理装置の構成
図1に示すように、処理炉202は加熱手段(加熱機構)としてのヒータ207を有する。ヒータ207は円筒形状であり、保持板に支持されることにより垂直に据え付けられている。ヒータ207は、ガスを熱で活性化(励起)させる活性化機構(励起部)としても機能する。
【0010】
ヒータ207の内側には、ヒータ207と同心円状に反応容器(処理容器)を構成する反応管203が配設されている。反応管203は、例えば石英(SiO
2)または炭化シリコン(SiC)等の耐熱性材料からなり、上端が閉塞し下端が開口した円筒形状に形成されている。反応管203の筒中空部には、処理室201が形成されている。処理室201は、基板としてのウエハ200を収容可能に構成されている。
【0011】
処理室201内には、ノズル249a,249bが、反応管203の下部側壁を貫通するように設けられている。ノズル249a,249bには、ガス供給管232a,232bがそれぞれ接続されている。
【0012】
ガス供給管232a,232bには、上流側から順に、流量制御器(流量制御部)であるマスフローコントローラ(MFC)241a,241bおよび開閉弁であるバルブ243a,243bがそれぞれ設けられている。ガス供給管232a,232bのバルブ243a,243bよりも下流側には、不活性ガスを供給するガス供給管232c,232dがそれぞれ接続されている。ガス供給管232c,232dには、上流側から順に、MFC241c,241dおよびバルブ243c,243dがそれぞれ設けられている。
【0013】
ノズル249a,249bは、
図2に示すように、反応管203の内壁とウエハ200との間における平面視において円環状の空間に、反応管203の内壁の下部より上部に沿って、ウエハ200の配列方向上方に向かって立ち上がるようにそれぞれ設けられている。すなわち、ノズル249a,249bは、ウエハ200が配列されるウエハ配列領域の側方の、ウエハ配列領域を水平に取り囲む領域に、ウエハ配列領域に沿うようにそれぞれ設けられている。ノズル249a,249bの側面には、ガスを供給するガス供給孔250a,250bがそれぞれ設けられている。ガス供給孔250a,250bは、反応管203の中心を向くようにそれぞれ開口しており、ウエハ200に向けてガスを供給することが可能となっている。ガス供給孔250a,250bは、反応管203の下部から上部にわたって複数設けられている。
【0014】
ガス供給管232aからは、第1原料ガスとして、シリコン(Si)およびハロゲン元素を含むハロシラン原料ガスが、MFC241a、バルブ243a、ノズル249aを介して処理室201内へ供給される。原料ガスとは、気体状態の原料、例えば、常温常圧下で液体状態である原料を気化することで得られるガスや、常温常圧下で気体状態である原料等のことである。ハロシラン原料とは、ハロゲン基を有するシラン原料のことである。ハロゲン基には、クロロ基、フルオロ基、ブロモ基、ヨード基等が含まれる。すなわち、ハロゲン基には、塩素(Cl)、フッ素(F)、臭素(Br)、ヨウ素(I)等のハロゲン元素が含まれる。ハロシラン原料は、ハロゲン化物の一種ともいえる。ハロシラン原料ガスとしては、例えば、ジクロロシラン(SiH
2Cl
2、略称:DCS)ガスを用いることができる。
【0015】
ガス供給管232aからは、ドーパントガスが、MFC241a、バルブ243a、ノズル249aを介して処理室201内へ供給される。ドーパントガスとしては、例えば、ドーパント(不純物)としてのリン(P)を含むホスフィン(PH
3、略称:PH)ガスを用いることができる。
【0016】
ガス供給管232aからは、エッチングガスが、MFC241a、バルブ243a、ノズル249aを介して処理室201内へ供給される。エッチングガスとしては、例えば、塩化水素(HCl)ガスを用いることができる。
【0017】
ガス供給管232bからは、第2,第3原料ガスとして、Siを含みハロゲン元素非含有の水素化ケイ素ガスが、MFC241b、バルブ243b、ノズル249bを介して処理室201内へ供給される。水素化ケイ素ガスとしては、例えば、モノシラン(SiH
4、略称:MS)ガスやジシラン(Si
2H
6、略称:DS)ガスを用いることができる。
【0018】
ガス供給管232c,232dからは、水素(H)含有ガスとしての水素(H
2)ガス、不活性ガスとしての窒素(N
2)ガスが、それぞれMFC241c,241d、バルブ243c,243d、ガス供給管232a,232b、ノズル249a,249bを介して処理室201内へ供給される。
【0019】
主に、ガス供給管232a,232b、MFC241a,241b、バルブ243a、243bにより、原料ガスを供給する第1供給系が構成される。主に、ガス供給管232a、MFC241a、バルブ243aにより、エッチングガスを供給する第2供給系、および、ドーパントガスを供給する第3供給系がそれぞれ構成される。主に、ガス供給管232c,232d、MFC241c,241d、バルブ243c,243dにより、水素含有ガスを供給する第4供給系、および、不活性ガス供給系がそれぞれ構成される。
【0020】
上述の各種供給系のうち、いずれか、或いは、全ての供給系は、バルブ243a〜243dやMFC241a〜241d等が集積されてなる集積型供給システム248として構成されていてもよい。集積型供給システム248は、ガス供給管232a〜232dのそれぞれに対して接続され、ガス供給管232a〜232d内への各種ガスの供給動作、すなわち、バルブ243a〜243dの開閉動作やMFC241a〜241dによる流量調整動作等が、後述するコントローラ121によって制御されるように構成されている。集積型供給システム248は、一体型、或いは、分割型の集積ユニットとして構成されており、ガス供給管232a〜232d等に対して集積ユニット単位で着脱を行うことができ、供給システムのメンテナンス、交換、増設等を、集積ユニット単位で行うことが可能なように構成されている。
【0021】
反応管203には、処理室201内の雰囲気を排気する排気管231が設けられている。排気管231には、処理室201内の圧力を検出する圧力検出器(圧力検出部)としての圧力センサ245および圧力調整器(圧力調整部)としてのAPC(Auto Pressure Controller)バルブ244を介して、排気装置としての真空ポンプ246が接続されている。APCバルブ244は、真空ポンプ246を作動させた状態で弁を開閉することで、処理室201内の真空排気および真空排気停止を行うことができ、更に、真空ポンプ246を作動させた状態で、圧力センサ245により検出された圧力情報に基づいて弁開度を調節することで、処理室201内の圧力を調整することができるように構成されている。主に、排気管231、APCバルブ244、圧力センサ245により、排気系が構成される。真空ポンプ246を排気系に含めて考えてもよい。
【0022】
反応管203の下方には、反応管203の下端開口を気密に閉塞可能な炉口蓋体としてのシールキャップ219が設けられている。シールキャップ219は、例えばSUS等の金属からなり、円盤状に形成されている。シールキャップ219の上面には、反応管203の下端と当接するシール部材としてのOリング220が設けられている。シールキャップ219の下方には、後述するボート217を回転させる回転機構267が設置されている。回転機構267の回転軸255は、シールキャップ219を貫通してボート217に接続されている。回転機構267は、ボート217を回転させることでウエハ200を回転させるように構成されている。シールキャップ219は、反応管203の外部に設置された昇降機構としてのボートエレベータ115によって垂直方向に昇降されるように構成されている。ボートエレベータ115は、シールキャップ219を昇降させることで、ウエハ200を処理室201内外に搬入および搬出(搬送)する搬送装置(搬送機構)として構成されている。
【0023】
基板支持具としてのボート217は、複数枚、例えば25〜200枚のウエハ200を、水平姿勢で、かつ、互いに中心を揃えた状態で垂直方向に整列させて多段に支持するように、すなわち、間隔を空けて配列させるように構成されている。ボート217は、例えば石英やSiC等の耐熱性材料からなる。ボート217の下部には、例えば石英やSiC等の耐熱性材料からなる断熱板218が水平姿勢で多段に支持されている。
【0024】
反応管203内には、温度検出器としての温度センサ263が設置されている。温度センサ263により検出された温度情報に基づきヒータ207への通電具合を調整することで、処理室201内の温度が所望の温度分布となる。温度センサ263は、反応管203の内壁に沿って設けられている。
【0025】
図3に示すように、制御部(制御手段)であるコントローラ121は、CPU(Central Processing Unit)121a、RAM(Random Access Memory)121b、記憶装置121c、I/Oポート121dを備えたコンピュータとして構成されている。RAM121b、記憶装置121c、I/Oポート121dは、内部バス121eを介して、CPU121aとデータ交換可能なように構成されている。コントローラ121には、例えばタッチパネル等として構成された入出力装置122が接続されている。
【0026】
記憶装置121cは、例えばフラッシュメモリ、HDD(Hard Disk Drive)等で構成されている。記憶装置121c内には、基板処理装置の動作を制御する制御プログラムや、後述する基板処理の手順や条件等が記載されたプロセスレシピ等が、読み出し可能に格納されている。プロセスレシピは、後述する基板処理工程における各手順をコントローラ121に実行させ、所定の結果を得ることが出来るように組み合わされたものであり、プログラムとして機能する。以下、このプロセスレシピや制御プログラム等を総称して、単に、プログラムともいう。また、プロセスレシピを、単に、レシピともいう。本明細書においてプログラムという言葉を用いた場合は、レシピ単体のみを含む場合、制御プログラム単体のみを含む場合、または、それらの両方を含む場合がある。RAM121bは、CPU121aによって読み出されたプログラムやデータ等が一時的に保持されるメモリ領域(ワークエリア)として構成されている。
【0027】
I/Oポート121dは、上述のMFC241a〜241d、バルブ243a〜243d、圧力センサ245、APCバルブ244、真空ポンプ246、ヒータ207、温度センサ263、回転機構267、ボートエレベータ115等に接続されている。
【0028】
CPU121aは、記憶装置121cから制御プログラムを読み出して実行すると共に、入出力装置122からの操作コマンドの入力等に応じて記憶装置121cからレシピを読み出すように構成されている。CPU121aは、読み出したレシピの内容に沿うように、MFC241a〜241dによる各種ガスの流量調整動作、バルブ243a〜243dの開閉動作、APCバルブ244の開閉動作および圧力センサ245に基づくAPCバルブ244による圧力調整動作、真空ポンプ246の起動および停止、温度センサ263に基づくヒータ207の温度調整動作、回転機構267によるボート217の回転および回転速度調節動作、ボートエレベータ115によるボート217の昇降動作等を制御するように構成されている。
【0029】
コントローラ121は、外部記憶装置(例えば、ハードディスク等の磁気ディスク、CD等の光ディスク、MO等の光磁気ディスク、USBメモリ等の半導体メモリ)123に格納された上述のプログラムを、コンピュータにインストールすることにより構成することができる。記憶装置121cや外部記憶装置123は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体として構成されている。以下、これらを総称して、単に、記録媒体ともいう。本明細書において記録媒体という言葉を用いた場合は、記憶装置121c単体のみを含む場合、外部記憶装置123単体のみを含む場合、または、それらの両方を含む場合がある。なお、コンピュータへのプログラムの提供は、外部記憶装置123を用いず、インターネットや専用回線等の通信手段を用いて行ってもよい。
【0030】
(2)基板処理工程
上述の基板処理装置を用い、半導体装置の製造工程の一工程として、基板としてのウエハ200上にシリコン膜(Si膜)を形成するシーケンス例について、
図4、
図5(a)〜
図5(e)を用いて説明する。
図4では、便宜上、N
2ガスの供給タイミングの図示を省略している。以下の説明において、基板処理装置を構成する各部の動作はコントローラ121により制御される。
【0031】
図4に示す成膜シーケンスでは、処理室201内のウエハ200上に第1アモルファスSi膜を形成する第1成膜ステップと、処理室201内において、第1アモルファスSi膜のアモルファス状態が維持される温度下で、HClガスを用いて、第1アモルファスSi膜の一部をエッチングするエッチングステップと、を実施し、さらにその後、処理室201内において、一部がエッチングされた第1アモルファスSi膜の上に、第2アモルファスSi膜を形成する第2成膜ステップを実施する。
【0032】
なお、上述の成膜シーケンスでは、第1,第2アモルファスSi膜の形成を、それぞれ、処理室201内のウエハ200に対してMSガスおよびPHガスを供給することにより行う。また、上述の成膜シーケンスでは、第1成膜ステップの実施前に、処理室201内のウエハ200に対してDCSガスとDSガスとを交互に供給するシードステップを実施する。また、上述の成膜シーケンスでは、エッチングステップを行う前、および、行った後に、ウエハ200に対してH
2ガスを供給する水素パージステップ(第1,第2水素パージステップ)をそれぞれ実施する。
【0033】
本明細書において「ウエハ」という言葉を用いた場合は、ウエハそのものを意味する場合や、ウエハとその表面に形成された所定の層や膜との積層体を意味する場合がある。本明細書において「ウエハの表面」という言葉を用いた場合は、ウエハそのものの表面を意味する場合や、ウエハ上に形成された所定の層等の表面を意味する場合がある。本明細書において「ウエハ上に所定の層を形成する」と記載した場合は、ウエハそのものの表面上に所定の層を直接形成することを意味する場合や、ウエハ上に形成されている層等の上に所定の層を形成することを意味する場合がある。本明細書において「基板」という言葉を用いた場合も、「ウエハ」という言葉を用いた場合と同義である。
【0034】
(ウエハチャージおよびボートロード)
複数枚のウエハ200がボート217に装填(ウエハチャージ)される。その後、
図1に示すように、複数枚のウエハ200を支持したボート217は、ボートエレベータ115によって持ち上げられて処理室201内へ搬入(ボートロード)される。この状態で、シールキャップ219は、Oリング220を介して反応管203の下端をシールした状態となる。
【0035】
ウエハ200としては、例えば、単結晶Siにより構成されたSi基板、或いは、表面に単結晶Si膜が形成された基板を用いることができる。
図5(a)に示すように、ウエハ200の表面には凹部が設けられており、凹部の底部は単結晶Siにより構成され、凹部の側部および上部はシリコン酸化膜(SiO膜)等の絶縁膜200aにより構成されている。ウエハ200の表面は、単結晶Siと絶縁膜200aとがそれぞれ露出した状態となっている。
【0036】
ウエハ200を処理室201内に搬入する前、ウエハ200の表面はフッ化水素(HF)等により予め洗浄される。但し、洗浄処理の後、処理室201内へ搬入するまでの間に、ウエハ200の表面は一時的に大気に晒される。そのため、処理室201内へ搬入されるウエハ200の表面の少なくとも一部には、自然酸化膜(SiO膜)が形成される。自然酸化膜は、凹部の底部、すなわち、露出した単結晶Siの一部を疎らに(アイランド状に)覆うように形成されることもあり、また、露出した単結晶Siの全域を連続的に(非アイランド状に)覆うように形成されることもある。
【0037】
(圧力調整および温度調整)
処理室201内、すなわち、ウエハ200が存在する空間が所望の圧力(真空度)となるように、真空ポンプ246によって処理室201内が真空排気(減圧排気)される。この際、処理室201内の圧力は圧力センサ245で測定され、この測定された圧力情報に基づきAPCバルブ244がフィードバック制御される。また、処理室201内のウエハ200が所望の処理温度となるように、ヒータ207によって処理室201内が加熱される。この際、処理室201内が所望の温度分布となるように、温度センサ263が検出した温度情報に基づきヒータ207への通電具合がフィードバック制御される。また、回転機構267によるウエハ200の回転を開始する。処理室201内の排気、加熱、ウエハ200の回転は、いずれも、少なくともウエハ200に対する処理が終了するまでの間は継続して行われる。
【0038】
(シードステップ)
その後、次のステップ1,2を順次実行する。
【0039】
[ステップ1]
このステップでは、ウエハ200に対してDCSガスを供給する。具体的には、バルブ243aを開き、ガス供給管232a内へDCSガスを流す。DCSガスは、MFC241aにより流量調整され、ノズル249aを介して処理室201内へ供給され、排気管231から排気される。このとき、ウエハ200に対してDCSガスが供給される。このとき同時にバルブ243cを開き、ガス供給管232c内へN
2ガスを流す。N
2ガスは、MFC241cにより流量調整され、DCSガスと一緒に処理室201内へ供給され、排気管231から排気される。また、ノズル249b内へのDCSガスの侵入を防止するため、バルブ243dを開き、ガス供給管232d内へN
2ガスを流す。N
2ガスは、ガス供給管232b、ノズル249bを介して処理室201内へ供給され、排気管231から排気される。
【0040】
ウエハ200に対して電気陰性度の大きなClを含むDCSガスを供給することで、凹部の底部、すなわち、単結晶Si上においては、自然酸化膜に含まれるSi−O結合を切断し、自然酸化膜を除去することができる。これにより、凹部の底部において、Siの共有結合のダングリングボンド(未結合手)を生じさせ、エピタキシャル成長が進行しやすい環境を整えることが可能となる。また、凹部の側部および上部、すなわち、絶縁膜200a上においては、絶縁膜200aの表面に含まれるSi−O結合を切断することができる。これにより、絶縁膜200aの表面に、Siの未結合手、すなわち、Siの吸着サイトを形成することができる。
【0041】
その後、バルブ243aを閉じ、DCSガスの供給を停止する。このとき、APCバルブ244は開いたままとして、真空ポンプ246により処理室201内を排気する。このとき、バルブ243c,243dは開いたままとして、N
2ガスの処理室201内への供給を維持する。N
2ガスはパージガスとして作用する。
【0042】
[ステップ2]
ステップ1が終了したら、ウエハ200に対してDSガスを供給する。このステップでは、バルブ243b〜243dの開閉制御を、ステップ1におけるバルブ243a,243c,243dの開閉制御と同様の手順で行うことにより、ガス供給管232b内へDSガスを流す。ガス供給管232b内を流れたDSガスは、MFC241bにより流量調整され、ノズル249bを介して処理室201内へ供給され、排気管231から排気される。
【0043】
ウエハ200に対してDSガスを供給することで、凹部の底部においては、ステップ1で形成したSiの未結合手にDSに含まれるSiを結合させ、Siの核(シード)を形成することができる。この成長は、後述する処理条件下ではエピタキシャル成長となる。また、凹部の側部および上部においては、ステップ1で形成したSiの吸着サイトにDSに含まれるSiを吸着させ、Siのシードを形成することができる。この成長は、後述する処理条件下ではアモルファス(非晶質)成長となる。
【0044】
その後、バルブ243bを閉じ、DSガスの供給を停止する。そして、ステップ1と同様の処理手順により、処理室201内を排気する。このとき、N
2ガスの処理室201内への供給を維持する。N
2ガスは、パージガスとして作用する。
【0045】
[所定回数実施]
上述したステップ1,2を交互に行うサイクルを所定回数(n回(nは1以上の整数))行う。これにより、
図5(b)に示すように、凹部の底部においてはシード層200eを、凹部の側部および上部においてはシード層200fをそれぞれ形成することができる。シード層200eは、下地の結晶性を継承した単結晶Si(エピタキシャルSi)からなり、凹部の底部を緻密に覆う連続層となる。シード層200fは、アモルファスSiからなり、凹部の側部および上部を緻密に覆う連続層となる。
【0046】
以下、シードステップの処理条件について例示する。以下に示す条件は、シード層200eをエピタキシャル成長させ、シード層200fをアモルファス成長させることが可能な条件でもある。
【0047】
DCSガス、DSガスの供給流量は、それぞれ、例えば10〜1000sccmの範囲内の流量とする。DCSガス、DSガスの供給時間は、それぞれ、例えば0.5〜10分の範囲内の時間とする。各ガス供給管より供給するN
2ガスの供給流量は、それぞれ、例えば100〜10000sccmの範囲内の流量とする。
【0048】
ウエハ200の温度(シーディング温度)は、例えば350〜450℃の範囲内の温度とする。処理室201内の圧力(シーディング圧力)は、例えば1〜1000Paの範囲内の圧力とする。
【0049】
シーディング温度が350℃未満となったり、シーディング圧力が1Pa未満となったりすると、上述のDCSガス、DSガスの作用が不充分となり、シード層200e,200fの形成が困難となる場合がある。シーディング温度を350℃以上の温度としたり、シーディング圧力を1Pa以上の圧力としたりすることで、シード層200e,200fの形成が可能となる。
【0050】
シーディング温度が450℃を超えたり、シーディング圧力が1000Paを超えたりすると、凹部の底部においては、自然酸化膜が除去される前にDCSに含まれるSiが堆積し、アモルファス成長が進行する場合がある。また、凹部の側部および上部においては、DCSによるSi−O結合の切断が進行しにくくなり、シード層200fの形成が困難となる場合がある。シーディング温度を450℃以下の温度としたり、シーディング圧力を1000Pa以下の圧力としたりすることで、これらの課題を解消することが可能となる。
【0051】
ステップ1,2を交互に行うサイクルの実施回数は、例えば1〜20回の範囲内の回数とする。シード層200e,200fの厚さは、それぞれ、例えば1〜50Åの範囲内の厚さとする。
【0052】
第1原料ガスとしては、DCSガスの他、モノクロロシラン(SiH
3Cl、略称:MCS)ガス、トリクロロシラン(SiHCl
3、略称:TCS)ガス、テトラクロロシラン(SiCl
4、略称:STC)ガス、ヘキサクロロジシラン(Si
2Cl
6、略称:HCDS)ガス、オクタクロロトリシラン(Si
3Cl
8、略称:OCTS)ガス等のClを含むクロロシラン原料ガスを用いることができる。
【0053】
第2原料ガスとしては、DSガスの他、MSガス、トリシラン(Si
3H
8、略称:TS)ガス、テトラシラン(Si
4H
10)ガス、ペンタシラン(Si
5H
12)ガス、ヘキサシラン(Si
6H
14)ガス等の一般式Si
nH
2n+2(nは1以上の整数)で表される水素化ケイ素ガスを用いることができる。
【0054】
不活性ガスとしては、N
2ガスの他、例えば、Arガス、Heガス、Neガス、Xeガス等の希ガスを用いることができる。
【0055】
(第1成膜ステップ)
シードステップが終了したら、ウエハ200の温度を成膜温度とし、処理室201内の圧力を成膜圧力とする。
図4は、成膜温度をシーディング温度よりも高い温度とし、成膜圧力をシーディング圧力と同等の圧力とする例を示している。その後、ウエハ200に対してMSガス、PHガスを供給する。このステップでは、バルブ243b〜243dの開閉制御を、上述のステップ1におけるバルブ243a,243c,243dの開閉制御と同様の手順で行うことにより、ガス供給管232b内へMSガスを流す。ガス供給管232b内を流れたMSガスは、MFC241bにより流量調整され、ノズル249bを介して処理室201内へ供給され、排気管231から排気される。またこのとき、バルブ243aを開き、ガス供給管232a内へPHガスを流す。PHガスは、MFC241aにより流量調整され、ノズル249aを介して処理室201内へ供給され、排気管231から排気される。このとき、ウエハ200に対してMSガスとPHガスとが一緒に供給される。
【0056】
ウエハ200に対してMSガス、PHガスを供給することで、凹部の底部においては、シード層200e上にSi膜200gを成長させることができる。この成長は、後述する処理条件下ではエピタキシャル成長となる。Si膜200gの結晶構造は、シード層200eと同様、下地の結晶性を継承した単結晶となる。また、凹部の側部および上部においては、シード層200f上にSi膜200hを成長させることができる。この成長は、後述する処理条件下ではアモルファス成長となる。Si膜200hの結晶構造は、シード層200fと同様、アモルファスとなる。MSガスと一緒にPHガスを供給することで、Si膜200g,200h中にP成分をそれぞれ添加することができ、これらの膜を、ドープトSi膜とすることができる。
【0057】
上述の処理を継続することで、
図5(c)に示すように、凹部の側部から成長させたSi膜200hによりSi膜200gの上部が覆われる。これにより、Si膜200gのエピタキシャル成長が停止する。この状態で、凹部内、すなわち、ウエハ200上には、Si膜200gの上にSi膜200hが積層されてなる積層構造が形成される。Si膜200gは、ウエハ200とSi膜200hとの間の界面に形成されることとなる。
【0058】
上述の処理をさらに継続することで、少なくとも凹部の表面側(開口側)は、Si膜200hによって塞がれた状態となる。すなわち、凹部の表面側は、凹部の側部および上部からオーバーハングするように成長したSi膜200hによって塞がれた状態となる。但し、この段階では、凹部内に、深さ方向に伸びる非埋め込み領域(ボイド、シーム)が発生してしまう場合がある。凹部の内部がSi膜200hによって完全に埋め込まれる前に凹部の表面側が塞がれると、凹部の内部へMSガスが届かなくなり(凹部内におけるSi膜200hの成長が停止し)、凹部の内部にボイドを生じさせてしまう。ボイドは、凹部のアスペクト比(凹部の深さ/凹部の幅)が大きくなるほど、具体的には1以上、例えば20以上、更には50以上となると生じやすくなる。
【0059】
凹部の表面側がSi膜200hによって塞がれたら、バルブ243b,243aを閉じ、処理室201内へのMSガス、PHガスの供給をそれぞれ停止する。そして、上述のステップ1と同様の処理手順により、処理室201内を排気する。このとき、N
2ガスの処理室201内への供給を維持する。N
2ガスは、パージガスとして作用する。MSガス、PHガスの供給停止は、凹部の表面側がSi膜200hによって完全に塞がれた状態となる前に停止してもよく、完全に塞がれた状態となった後に停止してもよい。
【0060】
以下、第1成膜ステップの処理条件について例示する。以下に示す条件は、Si膜200gをエピタキシャル成長させ、Si膜200hをアモルファス成長させることが可能な条件でもある。
【0061】
MSガスの供給流量は、例えば10〜2000sccmの範囲内の流量とする。PHガスの供給流量は、Si膜200g,200h中のP濃度が例えば1.0×10
21〜1.0×10
22atoms/cm
3の範囲内の濃度となるような流量であって、例えば1〜1000sccmの範囲内の流量とする。MSガス、PHガスの供給時間は、それぞれ、例えば20〜400分の範囲内の時間とする。各ガス供給管より供給するN
2ガスの供給流量は、それぞれ、例えば100〜10000sccmの範囲内の流量とする。
【0062】
ウエハ200の温度(成膜温度)は、例えば450〜550℃の範囲内の温度とする。処理室201内の圧力(成膜圧力)は、例えば1〜900Paの範囲内の圧力とする。
【0063】
成膜温度が450℃未満となったり、成膜圧力が1Pa未満となったりすると、MSが分解しにくくなり、Si膜200g,200hの形成が困難となる場合がある。成膜温度を450℃以上の温度としたり、成膜圧力を1Pa以上の圧力としたりすることで、MSの分解を促すことができ、Si膜200g,200hの形成を実用的なレートで進行させることが可能となる。
【0064】
成膜温度が550℃を超えたり、成膜圧力が900Paを超えたりすると、MSの分解の挙動が激しくなり、Si膜200g,200hの膜厚均一性や段差被覆性が悪化する場合がある。処理室201内で発生するパーティクルの量が増加し、成膜処理の品質を低下させる場合もある。成膜温度を550℃以下の温度としたり、成膜圧力を900Pa以下の圧力としたりすることで、MSガスの分解の挙動を緩和させ、これらの課題を回避することが可能となる。
【0065】
第3原料ガスとしては、MSガスの他、上述の水素化ケイ素ガスやクロロシラン原料ガスを用いることができる。Si膜200g,200h中へのClの残留を回避するには、第3原料ガスとして水素化ケイ素ガスを用いることが好ましく、Si膜200g,200hの成膜レートを高めるには、第3原料ガスとしてクロロシラン原料ガスを用いることが好ましい。
【0066】
ドーパントガスとしては、PHガスの他、アルシン(AsH
3)ガス等のPやヒ素(As)を含むガス、すなわち、ドーパントとして第15族元素を含むガスを用いることができる。また、ドーパントガスとしては、ジボラン(B
2H
6)ガス、トリクロロボラン(BCl
3)ガス等の硼素(B)を含むガス、すなわち、ドーパントとして第13族元素を含むガスを用いることもできる。
【0067】
不活性ガスとしては、N
2ガスの他、上述の希ガスを用いることができる。
【0068】
(第1水素パージステップ)
第1成膜ステップが終了したら、ウエハ200に対してH
2ガスを供給する。このステップでは、バルブ243c,243dを開き、ガス供給管232c,232d内へH
2ガスを流す。H
2ガスは、MFC241c,241dにより流量調整され、ガス供給管232a,232b、ノズル249a,249bを介して処理室201内へ供給され、排気管231から排気される。このとき、ウエハ200に対してH
2ガスが供給される。ウエハ200に対してH
2ガスを供給することで、ウエハ200上に形成されたSi膜200hの表面を水素終端し、表面全域を清浄化させることが可能となる。
【0069】
その後、バルブ243c,243dを閉じ、処理室201内へのH
2ガスの供給を停止する。このとき、APCバルブ244は開いたままとして、真空ポンプ246により処理室201内を排気する。このとき、N
2ガスを処理室201内へ供給するようにしてもよい。N
2ガスはパージガスとして作用する。
【0070】
各ガス供給管より供給するH
2ガスの供給流量は、それぞれ、例えば500〜3000sccmの範囲内の流量とする。H
2ガスの供給時間は30〜120分の範囲内の時間とする。ウエハ200の温度(第1水素パージ温度)は、上述の成膜温度と同様の温度であって、例えば450〜550℃の範囲内の温度とする。処理室201内の圧力(第1水素パージ圧力)は、例えば500〜2000Paの範囲内の圧力とする。
【0071】
(エッチングステップ)
第1水素パージステップが終了したら、ウエハ200に対してHClガスを供給する。このステップでは、バルブ243aを開き、ガス供給管232a内へHClガスを流す。HClガスは、MFC241aにより流量調整され、ノズル249aを介して処理室201内へ供給され、排気管231から排気される。このとき、ウエハ200に対してHClガスが供給される。バルブ243c,243dは閉じておき、処理室201内へのN
2ガスの供給は不実施とする。
【0072】
ウエハ200に対してHClガスを供給することで、ウエハ200上に形成されたSi膜200hの一部をエッチングすることが可能となる。Si膜200hのうち、凹部の表面側を塞ぐ部分を除去することで、その下に形成されていたボイドの上部が開口し、ボイドが露出した状態となる。この状態でエッチング処理を所定時間継続することで、ボイドの内壁(側壁や底部)を構成するSi膜200hをさらにエッチングすることが可能となり、その開口を広げることが可能となる。ボイドの内部へのHClガスの供給量は、表面側から底部側へ向かうにつれて徐々に少なくなる。そのため、ボイドの縦断面形状は、
図5(d)に示すように、底部側から表面側に向かうにつれて開口幅が次第に大きくなるV字形状或いは逆台形状となる。露出したボイドをこのような形状に整形することで、後述する第2成膜ステップにおいて、露出したボイドの内部へのMSガスの供給を促すことが可能となる。結果として、凹部の内部を、Si膜によって完全に、すなわち、ボイドフリーの状態となるように埋め込むことが可能となる。なお、このエッチング処理は、あくまで、Si膜200hにより覆われたSi膜200gが露出しない範囲内で、すなわち、下地のSi膜200gをエッチングしない範囲内で行う必要がある。すなわち、エッチング処理の終了時点において、ボイドの内壁にはアモルファスSiのみが露出しており、単結晶Si(エピタキシャルSi)が露出していない状態となるように、エッチング処理の終点を制御する必要がある。
【0073】
その後、バルブ243aを閉じ、処理室201内へのHClガスの供給を停止する。このとき、APCバルブ244は開いたままとして、真空ポンプ246により処理室201内を排気する。このとき、N
2ガスを処理室201内へ供給するようにしてもよい。N
2ガスはパージガスとして作用する。
【0074】
以下、エッチングステップの処理条件について例示する。以下に示す条件は、ウエハ200上に形成されたSi膜200hのアモルファス状態が維持される条件、すなわち、Si膜200hの結晶化が回避される条件でもある。すなわち、以下に示す条件は、Si膜200hがポリ化(多結晶化)しない条件でもあり、エピ化(単結晶化)しない条件でもある。また、以下に示す条件は、Si膜200hのエッチング量の面内均一性が維持される条件、すなわち、Si膜200hのエッチング量が面内全域にわたり均一となる条件でもある。
【0075】
HClガスの供給流量は、例えば100〜10000sccmの範囲内の流量とする。HClガスの供給時間は、例えば10〜60分の範囲内の時間とする。
【0076】
ウエハ200の温度(エッチング温度)は、上述の成膜温度と同様の温度であって、例えば450〜550℃の範囲内の温度とする。処理室201内の圧力(エッチング圧力)は、上述の成膜圧力よりも高い圧力であって、例えば1000〜50000Pa、好ましくは10000〜40000Pa、より好ましくは20000〜30000Paの範囲内の圧力とする。
【0077】
上述のエッチング温度下において、エッチング圧力が1000Pa未満となると、エッチング処理の進行が困難となったり、エッチング量の面内均一性が低下したりする場合がある。上述のエッチング温度下において、エッチング圧力を1000Pa以上の圧力とすることで、エッチング処理を実用的なレートで進行させ、エッチング量の面内均一性を高めることが可能となる。エッチング圧力を10000Pa以上の圧力とすることで、エッチングレートを確実に増加させ、エッチング量の面内均一性をさらに高めることが可能となる。エッチング圧力を20000Pa以上の圧力とすることで、これらの効果をより確実に得ることが可能となる。
【0078】
上述のエッチング温度下において、エッチング圧力が50000Paを超えると、エッチング処理が過剰に進行し、上述したボイド整形時の形状制御や、エッチング処理の終点制御を実現することが困難となる場合がある。上述のエッチング温度下において、エッチング圧力を50000Pa以下の圧力とすることで、これらの課題を回避することが可能となる。エッチング圧力を40000Pa以下の圧力とすることで、これらの課題を確実に回避することが可能となる。エッチング圧力を30000Pa以下の圧力とすることで、これらの課題をより確実に回避することが可能となる。
【0079】
(第2水素パージステップ)
エッチングステップが終了したら、第1水素パージステップと同様の処理手順により、処理室201内へH
2ガスを供給する。これにより、処理室201内に残留するClを処理室201内から排除することができる。その後、第1水素パージステップと同様の処理手順により、処理室201内を排気する。このとき、N
2ガスを処理室201内へ供給するようにしてもよい。N
2ガスはパージガスとして作用する。H
2ガスの供給時間は10〜60分の範囲内の時間とする。他の処理条件は、第1水素パージステップの処理条件と同様とする。
【0080】
(第2成膜ステップ)
第2水素パージステップが終了したら、第1成膜ステップと同様の処理手順により、ウエハ200に対してMSガス、PHガスを供給する。MSガス、PHガスの供給時間は、それぞれ、例えば10〜300分の範囲内の時間とする。他の処理条件は、第1成膜ステップの処理条件と同様とする。
【0081】
ウエハ200に対してMSガス、PHガスを供給することで、ウエハ200上、すなわち、エッチング処理後のSi膜200hの表面上に、Si膜200iを成長させることが可能となる。Si膜200iも、Si膜200hと同様、PがドープされたドープトSi膜となる。上述したように、第2成膜ステップの処理条件は、ガスの供給時間を除いて第1成膜ステップの処理条件と同様である。また、開口が広げられたボイドの内壁には、エピタキシャルSiが露出しておらず、アモルファスSiのみが露出した状態となっている。従って、Si膜200iの成長は、Si膜200hの成長時と同様、アモルファス成長となる。Si膜200hの表面は、アモルファス状態のSi膜200iによって覆われる。また、ボイドの内部は、アモルファス状態のSi膜200iによって、ボイドフリーの状態で完全に埋め込まれる。
【0082】
その後、バルブ243a,243bを閉じ、処理室201内へのMSガス、PHガスの供給をそれぞれ停止する。そして、上述のステップ1と同様の処理手順により、処理室201内を排気する。このとき、N
2ガスの処理室201内への供給を維持する。N
2ガスは、パージガスとして作用する。
【0083】
(アフターパージ及び大気圧復帰)
第2成膜ステップが終了したら、ガス供給管232c,232dのそれぞれからN
2ガスを処理室201内へ供給し、排気管231から排気する。N
2ガスはパージガスとして作用する。これにより、処理室201内が不活性ガスでパージされ、処理室201内に残留するガスや反応副生成物が処理室201内から除去される(アフターパージ)。その後、処理室201内の雰囲気が不活性ガスに置換され(不活性ガス置換)、処理室201内の圧力が常圧に復帰される(大気圧復帰)。
【0084】
(ボートアンロード及びウエハディスチャージ)
ボートエレベータ115によりシールキャップ219が下降され、反応管203の下端が開口される。そして、処理済のウエハ200が、ボート217に支持された状態で、反応管203の下端から反応管203の外部に搬出される(ボートアンロード)。処理済のウエハ200は、ボート217より取出される(ウエハディスチャージ)。
【0085】
(3)本実施形態による効果
本実施形態によれば、以下に示す1つ又は複数の効果が得られる。
【0086】
(a)エッチングガスとしてHClガスを用いることにより、エッチング温度を、成膜温度と同様の温度(450〜550℃の範囲内の温度)に設定しても、Si膜200hのエッチング処理を進行させることが可能となる。これにより、基板処理の生産性を向上させることが可能となる。
【0087】
というのも、エッチングガスとして塩素(Cl
2)ガスを用いる場合、Si膜200hをエッチングするには、エッチング温度を例えば350℃程度の温度に設定する必要がある。この場合、第1成膜ステップとエッチングステップとの間に、処理室201内の温度を100℃以上低下させてその温度が安定化するまで待機する降温ステップを設ける必要がある。また、エッチングステップと第2成膜ステップとの間に、処理室201内の温度を100℃以上上昇させその温度が安定するまで待機する昇温ステップを設ける必要がある。
【0088】
これに対し、本実施形態では、第1成膜ステップから第2成膜ステップに至る一連のステップを同様の温度下で実施できるため、それらのステップの間に降温ステップや昇温ステップを設ける必要がない。これにより、基板処理の手順を簡素化させたり、基板処理に要する合計時間を短縮させたりすることができ、基板処理の生産性を向上させることが可能となる。
【0089】
(b)エッチング処理を、Si膜200hのアモルファス状態が維持される温度下で行うことにより、Si膜200hのエッチングレートが高い状態を維持することが可能となる。
【0090】
というのも、エッチング処理を、上述のエッチング温度よりも高い温度(550℃を超える温度であって、例えば800〜1300℃の範囲内の温度)下で行う場合、Si膜200hが結晶化すること、すなわち、Si膜200hの結晶状態が変わることにより、エッチングレートが低下する場合がある。また、Si膜200hの一部が局所的に結晶化した場合、結晶化した部分のエッチングレートが他の部分よりも低下し、エッチング後のSi膜200hの表面に凹凸が形成される場合もある。結果として、ウエハ200上に最終的に形成されるSi膜(Si膜200hやSi膜200iを含む積層膜)の表面ラフネスが悪化、すなわち、膜の表面の平滑度が低下する場合がある。
【0091】
これに対し、本実施形態では、Si膜200hのアモルファス状態が維持される温度下、すなわち、Si膜200hの結晶状態を変化させない低温下でエッチング処理を行うことから、エッチングレートが高い状態を維持することが可能となる。また、最終的に形成されるSi膜の面内膜厚均一性を向上させ、表面ラフネスを良好な状態のまま維持することが可能となる。
【0092】
(c)エッチング処理を、成膜圧力よりも高い圧力、具体的には、1000〜50000Pa、好ましくは10000〜40000Pa、より好ましくは20000〜30000Paの範囲内の圧力下で行うことにより、Si膜200hのエッチングを効率的に進行させることが可能となる。また、エッチング量の面内均一性を維持することができ、最終的に形成されるSi膜の面内膜厚均一性を向上させ、表面ラフネスを良好な状態のまま維持することが可能となる。
【0093】
(d)Si膜200h中にPをドープし、その濃度を例えば1.0×10
21〜1.0×10
22atoms/cm
3の範囲内の濃度とすることにより、HClガスを用いたSi膜200hのエッチングレートを高めることが可能となる。これにより、基板処理に要する合計時間を短縮させ、基板処理の生産性を向上させることが可能となる。
【0094】
(e)エッチングステップを、下地のSi膜200gをエッチングすることなく行うことにより、エッチングレートが高い状態を維持することが可能となる。また、最終的に形成されるSi膜の面内膜厚均一性を向上させ、表面ラフネスを良好な状態のまま維持することが可能となる。また、ウエハ200の最表面において、Si膜200gが露出しない状態を維持することができ、第2成膜ステップにおいて、Si膜200iをアモルファス成長させることが可能となる。アモルファス成長はエピタキシャル成長よりも成長レートが大きいことから、基板処理に要する合計時間を短縮させ、基板処理の生産性を向上させることが可能となる。また、エッチング処理を行うことで形状を整えた凹部内に、Si膜200iの成長レートの相違によって再びボイドが発生してしまうことを回避することも可能となる。
【0095】
(f)エッチングステップの実施前に第1水素パージステップを実施することにより、Si膜200hの表面を清浄化させることができ、これにより、その後に行うエッチング処理の効率を高めたり、エッチング量の面内均一性を向上させたりすることが可能となる。また、エッチングステップの実施後に第2水素パージステップを実施することにより、処理室201内からのClの除去効率を高めることができ、これにより、その後に形成するSi膜200iの膜質を向上させることが可能となる。
【0096】
(g)第1成膜ステップの前に、DCSガスとDSガスとを交互に供給するシードステップを実施することから、Si膜200g,200hの成膜処理を効率的に行ったり、これらの膜の膜質や面内膜厚均一性を向上させたりすることが可能となる。
【0097】
(h)上述の効果は、第1原料ガスとしてDCSガス以外のハロシラン原料ガスを用いる場合や、第2原料ガスとしてDSガス以外の水素化ケイ素ガスを用いる場合や、第3原料ガスとしてMSガス以外の水素化ケイ素ガスを用いる場合や、ドーパントガスとしてPHガス以外のガスを用いる場合にも、同様に得ることができる。
【0098】
(4)変形例
本実施形態における成膜シーケンスは、上述した態様に限定されず、以下に示す変形例のように変更することができる。
【0099】
(変形例1)
エッチングステップの実施前に形成するSi膜200hのP濃度を、エッチングステップの実施後に形成するSi膜200iのP濃度よりも高くしてもよい。例えば、Si膜200hにおけるP濃度を3.0×10
21〜1.0×10
22atoms/cm
3の範囲内の濃度とし、Si膜200iにおけるP濃度を1.0×10
21〜2.0×10
21atoms/cm
3の範囲内の濃度としてもよい。例えば、第1成膜ステップにおけるPHガスの供給流量を600〜1000sccmとし、第2成膜ステップにおけるPHガスの供給流量を1〜500sccmとする等し、第1成膜ステップにおけるPHガスの供給流量や分圧を、第2成膜ステップにおけるPHガスの供給流量や分圧よりも大きくすることで、これを実現することができる。このように、エッチング対象であるSi膜200hにおけるP濃度を充分に、例えばSi膜200iにおけるP濃度よりも高くすることにより、上述したエッチングレートの向上効果を高めることが可能となる。
【0100】
(変形例2)
エッチングステップの実施後に形成するSi膜200iを、PがドープされていないノンドープSi膜としてもよい。例えば、Si膜200hにおけるP濃度を1.0×10
21〜1.0×10
22atoms/cm
3の範囲内の濃度とし、Si膜200iをノンドープSi膜としてもよい。このように、エッチング対象であるSi膜200hにおけるP濃度を充分に、例えばSi膜200iにおけるP濃度よりも高くすることにより、上述したエッチングレートの向上効果が同様に得られるようになる。
【0101】
(変形例3)
第1成膜ステップの途中でPHガスの供給流量や分圧を増加させる等し、Si膜200hのうち、エッチング対象となる表面側の部分におけるP濃度を、他の部分(表面よりも下層側の部分)におけるP濃度よりも高くするようにしてもよい。例えば、PHガスの供給流量を1〜500sccmとして第1成膜ステップを開始し、第1成膜ステップの途中で、PHガスの供給流量を600〜1000sccmに変更する等することにより、これを実現することができる。このように、Si膜200hのうちエッチング対象となる部分におけるP濃度を特に高くすることにより、上述したエッチングレートの向上効果をより高めることが可能となる。
【0102】
(変形例4)
第1水素パージステップおよび第2水素パージステップのうち、いずれかのステップの実施を省略してもよい。また、これら両方のステップの実施をそれぞれ省略してもよい。
【0103】
<本発明の他の実施形態>
以上、本発明の実施形態を具体的に説明した。しかしながら、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0104】
基板処理に用いられるレシピは、処理内容に応じて個別に用意し、電気通信回線や外部記憶装置123を介して記憶装置121c内に格納しておくことが好ましい。そして、処理を開始する際、CPU121aが、記憶装置121c内に格納された複数のレシピの中から、基板処理の内容に応じて、適正なレシピを適宜選択することが好ましい。これにより、1台の基板処理装置で様々な膜種、組成比、膜質、膜厚の膜を、再現性よく形成することができるようになる。また、オペレータの負担を低減でき、操作ミスを回避しつつ、処理を迅速に開始できるようになる。
【0105】
上述のレシピは、新たに作成する場合に限らず、例えば、基板処理装置に既にインストールされていた既存のレシピを変更することで用意してもよい。レシピを変更する場合は、変更後のレシピを、電気通信回線や当該レシピを記録した記録媒体を介して、基板処理装置にインストールしてもよい。また、既存の基板処理装置が備える入出力装置122を操作し、基板処理装置に既にインストールされていた既存のレシピを直接変更するようにしてもよい。
【0106】
上述の実施形態では、一度に複数枚の基板を処理するバッチ式の基板処理装置を用いて膜を形成する例について説明した。本発明は上述の実施形態に限定されず、例えば、一度に1枚または数枚の基板を処理する枚葉式の基板処理装置を用いて膜を形成する場合にも、好適に適用できる。また、上述の実施形態では、ホットウォール型の処理炉を有する基板処理装置を用いて膜を形成する例について説明した。本発明は上述の実施形態に限定されず、コールドウォール型の処理炉を有する基板処理装置を用いて膜を形成する場合にも、好適に適用できる。これらの基板処理装置を用いる場合においても、上述の実施形態や変形例と同様なシーケンス、処理条件にて成膜を行うことができ、上述の実施形態や変形例と同様の効果が得られる。
【0107】
上述の実施形態の手法により形成したSi膜は、コンタクトホールの埋め込みによるコンタクトプラグの形成等の用途に、好適に用いることが可能である。
【0108】
上述の実施形態や変形例等は、適宜組み合わせて用いることができる。また、このときの処理条件は、例えば上述の実施形態と同様な処理条件とすることができる。
【実施例】
【0109】
以下、上述の実施形態や変形例で得られる効果を裏付ける実験結果について説明する。
【0110】
上述の基板処理装置を用い、
図4に示す成膜シーケンスのシードステップ、第1成膜ステップを行うことにより、ウエハ上にSi膜を形成した。Si膜中のP濃度は、7.0×10
20,1.0×10
21,2.1×10
21atoms/cm
3とした。そして、
図4に示す成膜シーケンスのエッチングステップを行うことにより、Si膜の表面をエッチングした。エッチング圧力は20000,30000Paとした。他の処理条件は、上述の実施形態に記載の条件範囲内の条件とした。
【0111】
図6は、エッチングレートの評価結果を示す図である。図中横軸はエッチング圧力(Pa)を、縦軸はエッチングレート(Å/min)を示している。図中◇、■、△印は、それぞれ、P濃度が、7.0×10
20,1.0×10
21,2.1×10
21atoms/cm
3であるSi膜のデータを示している。
図6によれば、いずれのP濃度、いずれのエッチング圧力の場合も実用的なエッチングレートが得られることが分かる。また、P濃度を高くするほど、また、エッチング圧力を高くするほど、Si膜のエッチングレートを高めることが可能であることが分かる。
【0112】
<本発明の好ましい態様>
以下、本発明の好ましい態様について付記する。
【0113】
(付記1)
本発明の一態様によれば、
処理室内の基板上に第1アモルファスシリコン膜を形成する工程と、
前記処理室内において、前記第1アモルファスシリコン膜のアモルファス状態が維持される温度下で、塩化水素ガスを用いて、前記第1アモルファスシリコン膜の一部をエッチングする工程と、
を有する半導体装置の製造方法、または、基板処理方法が提供される。
【0114】
(付記2)
付記1に記載の方法であって、好ましくは、
前記第1アモルファスシリコン膜の一部をエッチングする工程では、前記処理室内の圧力を、前記第1アモルファスシリコン膜を形成する際の前記処理室内の圧力よりも高い圧力とする。
【0115】
(付記3)
付記1または2に記載の方法であって、好ましくは、
前記第1アモルファスシリコン膜の一部をエッチングする工程では、前記処理室内の圧力を、前記第1アモルファスシリコン膜のエッチング量の均一性が維持される圧力とする。
【0116】
(付記4)
付記1〜3のいずれかに記載の方法であって、好ましくは、
前記第1アモルファスシリコン膜の一部をエッチングする工程では、前記処理室内の圧力を、1000Pa以上50000Pa以下とする。また好ましくは、10000Pa以上40000Pa以下とする。また好ましくは、20000Pa以上30000Pa以下とする。
【0117】
(付記5)
付記1〜4のいずれかに記載の方法であって、好ましくは、
前記処理室内において、一部がエッチングされた前記第1アモルファスシリコン膜の上に、第2アモルファスシリコン膜を形成する工程を、さらに有する。
【0118】
(付記6)
付記1〜5のいずれかに記載の方法であって、好ましくは、
前記第1アモルファスシリコン膜はドーパントがドープされた膜(ドープトシリコン膜)である。
【0119】
前記ドーパントは、リン(P)、ヒ素(As)等の第15族元素、または、硼素(B)等の第13族元素を含む。
【0120】
(付記7)
付記6に記載の方法であって、好ましくは、
前記第2アモルファスシリコン膜はドーパントがドープされた膜であり、前記第1アモルファスシリコン膜におけるドーパント濃度を、前記第2アモルファスシリコン膜におけるドーパント濃度よりも高くする。
【0121】
(付記8)
付記6に記載の方法であって、好ましくは、
前記第2アモルファスシリコン膜はドーパントがドープされていない膜(ノンドープシリコン膜)である。
【0122】
(付記9)
付記6〜8のいずれかに記載の方法であって、好ましくは、
前記第1アモルファスシリコン膜におけるドーパント濃度を、1.0×10
21atoms/cm
3以上、1.0×10
22atoms/cm
3以下とする。
【0123】
(付記10)
付記1〜9のいずれかに記載の方法であって、好ましくは、
前記第1アモルファスシリコン膜の一部をエッチングする工程を行う前に、前記処理室内の前記基板に対して水素含有ガスを供給する工程を、さらに有する。
【0124】
(付記11)
付記1〜10のいずれかに記載の方法であって、好ましくは、
前記第1アモルファスシリコン膜の一部をエッチングする工程を行った後に、前記処理室内へ水素含有ガスを供給する工程を、さらに有する。
【0125】
(付記12)
付記1〜11のいずれかに記載の方法であって、好ましくは、
前記基板の表面には単結晶シリコンと絶縁膜とが露出している。
【0126】
(付記13)
付記1〜12のいずれかに記載の方法であって、好ましくは、
前記基板の表面には凹部が設けられており、前記凹部の底部が単結晶シリコンにより構成され、前記凹部の側部が絶縁膜により構成されている。
【0127】
(付記14)
付記13に記載の方法であって、好ましくは、
前記第1アモルファスシリコン膜を形成する工程では、前記第1アモルファスシリコン膜と前記単結晶シリコンとの界面にエピタキシャルシリコン膜が形成され、
前記第1アモルファスシリコン膜の一部をエッチングする工程では、前記エピタキシャルシリコン膜をエッチングすることなく、前記第1アモルファスシリコン膜の一部をエッチングする。
【0128】
(付記15)
本発明の他の態様によれば、
基板に対して処理が行われる処理室と、
前記処理室内へシリコン含有ガスを供給する第1供給系と、
前記処理室内へ塩化水素ガスを供給する第2供給系と、
前記処理室内の基板を加熱するヒータと、
前記処理室内の基板上に第1アモルファスシリコン膜を形成する処理と、前記処理室内において、前記第1アモルファスシリコン膜のアモルファス状態が維持される温度下で、塩化水素ガスを用いて、前記第1アモルファスシリコン膜の一部をエッチングする処理と、を行わせるように、前記第1供給系、前記第2供給系、および前記ヒータを制御するよう構成される制御部と、
を有する基板処理装置が提供される。
【0129】
(付記16)
本発明のさらに他の態様によれば、
基板処理装置の処理室内の基板上に第1アモルファスシリコン膜を形成する手順と、
前記処理室内において、前記第1アモルファスシリコン膜のアモルファス状態が維持される温度下で、塩化水素ガスを用いて、前記第1アモルファスシリコン膜の一部をエッチングする手順と、
をコンピュータによって前記基板処理装置に実行させるプログラム、または、該プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体が提供される。