(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
式[1]で表されるジアミンのベンゼン環におけるアミノ基の置換位置が、アルキレン基の結合位置に対して、メタ位、又はパラ位である、請求項2〜4のいずれかに記載の液晶配向剤。
【発明を実施するための形態】
【0010】
〔ジアミン〕
本発明の液晶配向剤を得るために使用されるジアミン成分に含有されるジアミンは、下記式(1)で表される構造を分子中に有するジアミンである。
【化3】
【化4】
式(1)及び(2)中、R
1、R
2及びAは、上記で定義したとおりである。なかでも、R
1及びR
2は、その少なくとも一方、又は両方とも、式(2)で表される基が好ましく、ラビング時の配向膜強度の観点から、R
1及びR
2のどちらか一方のみが、式(2)で表される基であるのが好ましい。
Aは、好ましくは単結合である。ここで、Aが単結合の場合、式(2)の基は、t−ブトキシカルボニル基(本発明では、Boc基ともいう。)である。
【0011】
上記式(1)で表される構造を分子内に有するジアミンは、かかる要件を満足する限り、いずれのジアミンでもよい。その好ましい例として、下記式[1]で表されるジアミンが挙げられる。
【化5】
式[1]中、R
1及びR
2は、それぞれの好ましいものも含めて、式(1)における場合と同じである。m、nは、それぞれ独立に、0〜3の整数であり、原料入手の容易性から、好ましくは0又は1であり、より好ましくは1である。
また、式[1]中、それぞれのベンゼン環におけるアミノ基(−NH
2)は、アルキレン基の結合位置に対して、オルト、メタ、又はパラのいずれの位置でもよいが、合成の容易性、及び重合反応性の点から、メタ、又はパラの位置が好ましく、パラの位置がより好ましい。
【0012】
式[1]で表されるジアミンの例としては、好ましくは、以下の化合物が挙げられる。なお、以下に例示される化合物の式において、Bocは下記で表される基である。
【化6】
【0015】
式[1]で表されるジアミンの合成法は特に限定されないが、一般的な合成法として、下記に示すように、ジアミンXのジニトロ化合物X1を還元することにより製造することができる。なお、R
1、R
2、m、nは、それぞれ、上記式(1)中における、R
1、R
2、m、nと同じである。
【化9】
【0016】
上記還元反応は、触媒の存在下における水素添加反応、プロトンの共存下に行う還元反応、蟻酸を水素源とする還元反応、ヒドラジンを水素源とする還元反応などがあり、これらの還元反応を組み合わせでもよい。ジニトロ化合物X1の構造と還元反応の反応性を考慮すると、水素添加反応が好ましい。
還元反応に用いられる触媒は、市販品として入手できる活性炭担持金属が好ましく、例えば、パラジウム−活性炭、白金−活性炭、ロジウム−活性炭などが挙げられる。また、水酸化パラジウム、酸化白金、ラネーニッケルなど、必ずしも活性炭担持型の金属触媒でなくてもよい。一般的に広く使用されているパラジウム−活性炭が、良好な結果が得られるので好ましい。
【0017】
還元反応をより効果的に進行させるため、活性炭の共存下で、反応を実施することもある。この時、使用する活性炭の量は特に限定されないが、ジニトロ化合物X1に対して1〜20質量%が好ましく、5〜10質量%がより好ましい。
同様な理由により、加圧下で反応を実施する場合もある。この場合、ベンゼン核の還元を避けるため、20気圧までの加圧範囲で行う。好ましくは10気圧までの範囲で反応を実施する。
【0018】
還元反応においては、溶媒の使用が好ましく、各原料と反応しない溶媒であれば、制限なく使用することができる。
例えば、非プロトン性極性有機溶媒(DMF(N,N-ジメチルホルムアミド)、DMSO(ジメチルスルホキシド)、DMAc(ジメチルアセトアミド)、NMP(N-メチル-2-ピロリドン)など);エーテル類(Et
2O(ジエチルエーテル)、i−Pr
2O(ジiso−プロピルエーテル)、TBME(メチルtert-ブチルエーテル)、CPME(シクロペンチルメチルエーテル)、THF(テトラヒドロフラン)、ジオキサンなど);脂肪族炭化水素類(ペンタン、へキサン、ヘプタン、石油エーテルなど);芳香族炭化水素類(ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、ニトロベンゼン、テトラリンなど);ハロゲン系炭化水素類(クロロホルム、ジクロロメタン、四塩化炭素、ジクロロエタンなど);低級脂肪酸エステル類(酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル等);ニトリル類(アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル等);などが使用できる。これらの溶媒は、反応の起こり易さなどを考慮して適宜選択することができ、1種単独で又は2種以上混合して用いることができる。必要に応じて、適当な脱水剤や乾燥剤を用いて溶媒を乾燥し、非水溶媒として用いることもできる。
【0019】
溶媒の使用量(反応濃度)は特に限定されないが、ジニトロ化合物X1に対し、0.1〜100質量倍である。好ましくは0.5〜30質量倍であり、さらに好ましくは1〜10質量倍である。
反応温度は特に限定されないが、−100℃から使用する溶媒の沸点までの範囲、好ましくは、−50〜150℃である。反応時間は、通常0.05〜350時間、好ましくは0.5〜100時間である。
一方、ジニトロ化合物X1の合成方法は特に限定されず、任意の方法により合成することができる。その具体例としては、化合物X2と二炭酸ジ-tert-ブチルとを、溶媒中、場合により塩基の存在下で反応させる。
【化10】
【0020】
化合物X2のカルボキシル基1基に対して、1〜5当量、好ましくは1.3〜2.5当量の二炭酸ジ−tert−ブチルを用いることが好ましく、当量数等の反応条件の設定により、Boc基の導入数を制御することができる。
反応における塩基の存在は必ずしも必要ではないが、塩基を用いる場合、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、燐酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム、炭酸セシウムなどの無機塩基;トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリイソプロピルアミン、トリブチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ピリジン、ジメチルアミノピリジン、イミダゾール、キノリン、コリジンなどのアミン類;水素化ナトリウム、水素化カリウム、tert−ブトキシナトリウム、tert−ブトキシカリウムなどの塩基;等を使用できる。
【0021】
かかる反応における溶媒は、各原料と反応しない溶媒であれば使用することができ、上記XからX1を合成する際に記載したのと同じ溶媒である、非プロトン性極性有機溶媒、エーテル類、脂肪族炭化水素類、芳香族炭化水素類、ハロゲン系炭化水素類、低級脂肪酸エステル類等が使用できる。これらの溶媒は、反応の起こり易さなどを考慮して適宜選択することができ、1種単独で又は2種以上混合して用いることができる。必要に応じて、適当な脱水剤や乾燥剤を用いて溶媒を乾燥し、非水溶媒として用いることもできる。
溶媒の使用量は特に限定されないが、ジニトロ化合物X2に対し、0.1〜100質量倍の溶媒を用いてもよい。好ましくは0.5〜30質量倍であり、さらに好ましくは1〜10質量倍である。反応温度は特に限定されないが、−100℃から使用する溶媒の沸点までの範囲、好ましくは、−50〜150℃の範囲である。反応時間は、通常0.05〜200時間、好ましくは0.5〜100時間である。
【0022】
また、ジニトロ化合物X1は、下記のようにカルボニル化合物(α)と、Boc基が付与したアミン化合物X2及びX2’を、溶媒中で反応させることにより、合成することができる。その具体例として下記のスキームに示す。
【化11】
【0023】
ニトロ化合物X2及びX2’において、R
1とR
2は、それぞれ独立に、水素もしくはBoc基を表す。
カルボニル化合物(α)において、Y及びZは、1〜2価の有機基であり、カルボニル化合物(α)としては、例えば、ホスゲン、トリホスゲン、ジフェニルカーボネート、ビス(ニトロフェニル)カーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチレンカーボネート、1.1’−カルボニルビス−1H−イミダゾール、クロロギ酸メチル、クロロギ酸ベンジル、クロロギ酸4−ニトロフェニル等が挙げられる。また、カルボニル化合物(α)の代わりにカーボンオキサイドを使用してもよい。
なお、上記した化合物は一例であり、特に限定されるものではない。
【0024】
上記スキームにおいて、ウレア基を中心に構造が対称な化合物を得るためには、ニトロ化合物X2及びX2’を同じとすればよく、非対称な化合物を得るためには、ニトロ化合物X2をカルボニル化合物(α)に対して等モル反応させた後、ニトロ化合物X2とは異なる構造のニトロ化合物X2’を加えて、反応させればよい。その場合、Boc基の付加したアミンの導入する順序については、特に制限されるものではない。
塩基の添加は必ずしも必要ではないが、塩基を用いる場合、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、燐酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム、炭酸セシウムなどの無機塩基;トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリイソプロピルアミン、トリブチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ピリジン、イミダゾール、キノリン、コリジンなどのアミン類;水素化ナトリウム、水素化カリウム、tert−ブトキシナトリウム、tert−ブトキシカリウムなどの塩基;等を使用できる。
【0025】
かかる反応における溶媒は、各原料と反応しない溶媒であれば使用することができ、上記XからX1を合成する際に記載したのと同じ溶媒である、非プロトン性極性有機溶媒、エーテル類、脂肪族炭化水素類、芳香族炭化水素類、ハロゲン系炭化水素類、低級脂肪酸エステル類等が使用できる。これらの溶媒は、反応の起こり易さなどを考慮して、適宜選択することができ、1種単独で又は2種以上混合して用いることができる。必要に応じて、適当な脱水剤や乾燥剤を用いて溶媒を乾燥し、非水溶媒として用いることもできる。
【0026】
溶媒の使用量(反応濃度)は特に限定されないが、ニトロ化合物X2に対し、0.1〜100質量倍の溶媒を用いてもよい。好ましくは0.5〜30質量倍であり、さらに好ましくは1〜10質量倍である。反応温度は特に限定されないが、−100℃から使用する溶媒の沸点までの範囲、好ましくは、−50〜150℃の範囲である。反応時間は、通常0.05〜200時間、好ましくは0.5〜100時間である。
【0027】
また、nが異なる非対称のジニトロ化合物X1を合成するには、下記のようにイソシアネート化合物X4とBoc基が付与したアミン化合物X2を反応させることにより、合成することができる。その具体例として下記のスキームを示す。
【化12】
イソシアネート化合物X4とアミン化合物X2との反応において、アミン化合物X2の使用量は、イソシアネート化合物X4に対し、0.98〜1.2当量倍を反応させればよい。より好ましくは、1.0〜1.02当量倍である。
【0028】
反応溶媒としては、反応に不活性なものであれば特に限定はないが、例えば、ヘキサン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン等の炭化水素類;四塩化炭素、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン系炭化水素類;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル類;酢酸エチル、プロピオン酸エチル等のカルボン酸エステル類;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等の含窒素非プロトン性極性溶媒;ジメチルスルホキシド、スルホラン等の含硫黄非プロトン性極性溶媒;ピリジン、ピコリン等のピリジン類;等が挙げられる。これらの溶媒は単独で用いても、これらのうちの2種類以上を混合して用いてもよい。好ましくはトルエン、アセトニトリル、又は酢酸エチルであり、さらに好ましくは、トルエン又は酢酸エチルである。
【0029】
溶媒の使用量(反応濃度)は特に限定されないが、溶媒を用いずに反応を実施してもよく、また溶媒を使用する場合には、イソシアネート化合物X4に対し、0.1〜100質量倍の溶媒を用いる。好ましくは0.5〜30質量倍であり、さらに好ましくは1〜10質量倍である。
反応温度は特に限定されないが、例えば−90〜150℃、好ましくは−30〜100℃で、さらに好ましくは0〜80℃である。反応時間は、通常0.05〜200時間、好ましくは0.5〜100時間である。
【0030】
反応時間を短縮させるために触媒を添加してもよい。その例としては、ジブチルスズジラウレート、ジオクチルスズビス(イソオクチルチオグリコール酸エステル)、ジブチルスズビス(イソオクチルチオグリコール酸エステル)、ジブチルスズジアセテート等の有機スズ化合物;トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン、ピリジン、テトラメチルブタンジアミン、N−メチルモルホリン、1,4−ジアザビシクロ−2.2.2−オクタン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン−5等のアミン類;p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、フルオロ硫酸等の有機スルホン酸;硫酸、リン酸、過塩素酸等の無機酸;テトラブチルチタネート、テトラエチルチタネート、テトライソプロピルチタネート等のチタン化合物;ビスマストリス(2−エチルヘキサノエート)等のビスマス系化合物;四級アンモニウム塩;等が挙げられる。これらの触媒は、1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。また、これらの触媒は、液体であるか、又は反応溶媒に溶解するものが好ましい。
【0031】
触媒を添加する場合、イソシアネート化合物X4の総使用量(質量)に対し、0.005〜100wt%の量の触媒を使用する。好ましくは0.05〜10wt%、さらに好ましくは0.1〜5wt%である。触媒として有機スズ化合物、チタン化合物、又はビスマス系化合物を使用するのであれば、好ましくは0.005〜0.1wt%である。
【0032】
[液晶配向剤]
本発明の液晶配向剤は、上記の式[1]で表されるジアミンのいずれかを含有するジアミン成分と、テトラカルボン酸成分と、を反応させて得られるポリイミド前駆体、及び/又は該ポリイミド前駆体から得られるポリイミドを含有する。
[テトラカルボン酸成分]
テトラカルボン酸成分の好ましい例は、下記の式[8]〜[10]のいずれかで表される。
【化13】
【0033】
上記テトラカルボン酸誘導体のうち、式[8]で表されるテトラカルボン酸無水物とジアミンとを反応させることで、ポリアミック酸が得られる。また、式[9]で表されるテトラカルボン酸ジエステルジクロリド、又は、式[10]で表されるテトラカルボン酸ジエステルとジアミンとを反応させることでポリアミック酸エステルが得られる。
また、ポリイミドは、かかるポリアミック酸あるいはポリアミック酸エステルをイミド化することにより合成することができる。
【0034】
式[9]及び式[10]中、R
6は水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基である。アルキル基の具体的例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、2−プロピル基、ブチル基、t−ブチル基などが挙げられる。一般に、ポリアミック酸エステルは、その有するアルキル基の炭素数が増えるに従って、イミド化が進行する温度が高くなる。従って、該アルキル基は、熱によるイミド化のしやすさの点から、メチル基又はエチル基が好ましく、メチル基が特に好ましい。
【0035】
式[8]〜[10]中、Xは、好ましくは、4〜6員環の脂環若しくは芳香族環の構造を有する4価の炭化水素基である。Xの好ましい具体例としては、以下に示す(X−1)〜(X−46)が挙げられる。
【化14】
【0039】
[その他のジアミン]
本発明の液晶配向剤に含有されるポリイミド前駆体を得る場合、本発明の効果を損なわない限りにおいて、ジアミン成分として、上記特定のジアミン以外に、下記式[11]で表される、その他のジアミンを併用することができる。
【化18】
式[11]中、Yは、炭化水素からなる2価の基であり、好ましくは6員環の脂環若しくは芳香族環の構造を有する基である。Yの好ましい具体例を示すならば、(Y−1)〜(Y−97)が挙げられる。
【0052】
[ポリイミド前駆体1(ポリアミック酸)の合成]
ポリアミック酸(以下、ポリマーともいう)は、テトラカルボン酸二無水物とジアミン(以下、モノマーともいう)との重付加反応により合成できる。
【化31】
具体的には、テトラカルボン酸二無水物とジアミンを、有機溶媒存在下で、−20〜150℃、好ましくは0〜50℃において、30分〜24時間、好ましくは1〜12時間反応させることによって合成できる。
【0053】
上記の反応に用いる有機溶媒は、モノマー及び得られるポリマーの溶解性から、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトンなどが好ましく、これらは1種又は2種以上を混合して用いてもよい。反応系におけるポリマーの濃度は、ポリマーの析出が起こりにくく、かつ高分子量体が得やすいという点から、1〜30質量%が好ましく、5〜20質量%がより好ましい。
上記のようにして得られたポリアミック酸は、反応溶液をよく撹拌させながら貧溶媒に注入することで、ポリマーを析出させて回収することができる。また、析出を数回行い、貧溶媒で洗浄後、常温あるいは加熱乾燥することで精製されたポリアミック酸の粉末を得ることができる。貧溶媒は、特に限定されないが、水、メタノール、エタノール、ヘキサン、ブチルセロソルブ、アセトン、トルエンなどが挙げられる。
【0054】
[ポリイミド前駆体2(ポリアミック酸エステル)の合成]
ポリアミック酸エステルは、以下の(A)〜(C)のいずれかの方法で合成できる。
(A)ポリアミック酸からポリアミック酸エステルを合成する場合
ポリアミック酸エステルは、テトラカルボン酸二無水物とジアミンから得られるポリアミック酸をエステル化することによって合成できる。
【0055】
【化32】
具体的には、ポリアミック酸とエステル化剤を、有機溶媒の存在下で、−20〜150℃、好ましくは0〜50℃において、30分〜24時間、好ましくは1〜4時間反応させることによって合成できる。
【0056】
エステル化剤としては、精製によって容易に除去できるものが好ましく、N,N−ジメチルホルムアミドジメチルアセタール、N,N−ジメチルホルムアミドジエチルアセタール、N,N−ジメチルホルムアミドジプロピルアセタール、N,N−ジメチルホルムアミドジネオペンチルブチルアセタール、N,N−ジメチルホルムアミドジ−t−ブチルアセタール、1−メチル−3−p−トリルトリアゼン、1−エチル−3−p−トリルトリアゼン、1−プロピル−3−p−トリルトリアゼンなどが挙げられる。エステル化剤の添加量は、ポリアミック酸の繰り返し単位1モルに対して、2〜6モル当量が好ましい。上記の反応に用いる有機溶媒は、ポリマーの溶解性から、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトン等が好ましく、これらは1種又は2種以上を混合して用いてもよい。合成時の濃度は、ポリマーの析出が起こりにくく、かつ高分子量体が得やすいので1〜30質量%が好ましく、5〜20質量%がより好ましい。
【0057】
(B)テトラカルボン酸ジエステルジクロリドとジアミンからポリアミック酸エステルを合成する場合
ポリアミック酸エステルは、テトラカルボン酸ジエステルジクロリドとジアミンとの反応により合成できる。
【化33】
【0058】
具体的には、テトラカルボン酸ジエステルジクロリドとジアミンとを、塩基と有機溶媒の存在下で、−20〜150℃、好ましくは0〜50℃において、30分〜24時間、好ましくは1〜4時間反応させることによって合成できる。
塩基には、ピリジン、トリエチルアミン、4−ジメチルアミノピリジン等が使用できるが、反応が穏和に進行するためにピリジンが好ましい。塩基の添加量は、除去が容易な量で、かつ高分子量体が得やすいという点から、テトラカルボン酸ジエステルジクロリドに対して、2〜4倍モルであることが好ましい。
【0059】
上記の反応に用いる有機溶媒は、モノマー及びポリマーの溶解性から、N−メチル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトンなどが好ましく、これらは1種又は2種以上を混合して用いてもよい。合成時の濃度は、ポリマーの析出が起こりにくく、かつ高分子量体が得やすいという点から、1〜30質量%が好ましく、5〜20質量%がより好ましい。
また、テトラカルボン酸ジエステルジクロリドの加水分解を防ぐため、ポリアミック酸エステルの合成に用いる溶媒は、できるだけ脱水されていることが良く、反応は窒素雰囲気中で、外気の混入を防ぐのが好ましい。
(C)テトラカルボン酸ジエステルとジアミンからポリアミック酸を合成する場合
ポリアミック酸エステルは、テトラカルボン酸ジエステルとジアミンを、縮合剤により重縮合することにより合成できる。
【0060】
【化34】
具体的には、テトラカルボン酸ジエステルとジアミンを、縮合剤、塩基、及び有機溶媒の存在下で、0〜150℃、好ましくは0〜100℃において、30分〜24時間、好ましくは3〜15時間反応させることによって合成することができる。
【0061】
縮合剤には、トリフェニルホスファイト、ジシクロヘキシルカルボジイミド、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩、N,N’−カルボニルジイミダゾール、ジメトキシ−1,3,5−トリアジニルメチルモルホリニウム、O−(ベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウム テトラフルオロボラート、O−(ベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスファート、(2,3−ジヒドロ−2−チオキソ−3−ベンゾオキサゾリル)ホスホン酸ジフェニルなどが使用できる。縮合剤の添加量は、テトラカルボン酸ジエステルに対して2〜3倍モルであることが好ましい。
【0062】
塩基には、ピリジン、トリエチルアミンなどの3級アミンが使用できる。塩基の添加量は、除去が容易な量で、かつかつ高分子量体が得やすいという点から、ジアミン成分に対して2〜4倍モルであることが好ましい。
また、上記反応において、ルイス酸を添加剤として加えることで、反応が効率的に進行する。ルイス酸としては、塩化リチウム、臭化リチウムなどのハロゲン化リチウムが好ましい。ルイス酸の添加量は、ジアミン成分に対して、0〜1.0倍モルであることが好ましい。
上記3つのポリアミック酸エステルの合成方法の中でも、高分子量のポリアミック酸エステルが得られるため、(A)及び(B)の合成法が特に好ましい。
【0063】
以上のようにして得られるポリアミック酸エステルの溶液は、よく撹拌させながら貧溶媒に注入することで、ポリマーを析出させることができる。析出を数回行い、貧溶媒で洗浄後、常温あるいは加熱乾燥して、精製されたポリアミック酸エステルの粉末を得ることができる。貧溶媒は、特に限定されないが、水、メタノール、エタノール、ヘキサン、ブチルセロソルブ、アセトン、トルエンなどが挙げられる。
【0064】
[ポリイミド前駆体の分子量]
ポリイミド前駆体の分子量は、ワニスの粘度や、ポリイミド膜の物理的な強度に影響を与える。ワニスの良好な塗布作業性や塗膜の良好な均一性を得るという点からは、重量平均分子量で500,000以下が好ましく、十分な強度のポリイミド膜を得るという点からは2,000以上が好ましく、より好ましくは2,000〜300,000であり、さらに好ましくは、5,000〜100,000である。ポリイミド前駆体の分子量は、前記重合反応に用いるジアミン成分とテトラカルボン酸誘導体の比率を調整することで制御できる。この比率としては、モル比で1:0.7〜1.2を例示することができる。このモル比が1:1に近いほど得られるポリイミド前駆体の分子量は大きくなる。
【0065】
[ポリイミドの合成]
本発明のポリイミドは、前記ポリイミド前駆体をイミド化することにより合成することができる。ポリイミド前駆体からポリイミドを合成する簡便で好ましい方法としては、ジアミン成分とテトラカルボン酸二無水物との反応で得られた前記ポリアミック酸の溶液に、触媒を添加する化学的イミド化であり、比較的低温でイミド化反応が進行し、イミド化の過程で、重合体の分子量低下が起こりにくいので好ましい。
【0066】
化学的イミド化は、イミド化させたい重合体を、有機溶媒中において、塩基性触媒と酸無水物の存在下で攪拌することにより行うことができる。有機溶媒としては、前述した重合反応時に用いる溶媒を使用することができる。塩基性触媒としては、ピリジン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリブチルアミン、トリオクチルアミンなどを挙げることができる。中でも、ピリジンは反応を進行させるのに適度な塩基性を持つので好ましい。また、酸無水物としては、無水酢酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸などを挙げることができる。中でも、無水酢酸を用いると、反応終了後の精製が容易となるので好ましい。
【0067】
イミド化反応を行うときの温度は、−20〜200℃、好ましくは0〜180℃であり、反応時間は1〜100時間、好ましくは1〜8時間で行うことができる。塩基性触媒の量は、アミック酸基の0.5〜30モル倍、好ましくは2〜20モル倍であり、酸無水物の量は、アミック酸基の1〜50モル倍、好ましくは3〜30モル倍である。得られる重合体のイミド化率は、触媒量、温度、反応時間などを調節することで制御することができる。イミド化反応後の溶液には、添加した触媒などが残存しているので、以下に述べる手段により、得られたイミド化重合体を回収し、有機溶媒で再溶解して、本発明の液晶配向剤とすることが好ましい。
【0068】
上記の方法で得られるポリイミドの溶液は、よく撹拌させながら貧溶媒に注入することで、ポリマーを析出させることができる。析出を数回行い、貧溶媒で洗浄後、常温あるいは加熱乾燥することで、精製されたポリイミドの粉末を得ることができる。貧溶媒は、ポリマーを析出させるものであれば特に限定されないが、メタノール、アセトン、ヘキサン、ブチルセルソルブ、ヘプタン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、エタノール、トルエン、ベンゼンなどが挙げられる。
【0069】
[液晶配向剤]
本発明の液晶配向剤は、上記のようにして得られたポリイミド前駆体及び/又はポリイミド(以下、これらをポリマー成分ともいう。)を含有するワニス状の溶液である。本発明の液晶配向剤は、2種類以上のポリイミド前駆体や2種類以上のポリイミドを含有していてもよく、ポリイミド前駆体とポリイミドの両方を含有していてもよい。更には、液晶配向剤は、本発明のポリイミド前駆体又は本発明のポリイミド以外のポリマーを含有してもよい。
【0070】
本発明の液晶配向剤の最も単純な構成例としては、上記のポリイミド前駆体及び/又はポリイミドのポリマー成分と、これを溶解させるための有機溶媒からなる組成物が挙げられる。この組成物は、ポリイミド前駆体又はポリイミドを合成した際の反応溶液そのものであってもよく、この反応溶液を後述する溶媒で希釈したものであっても構わない。また、ポリイミド前駆体又はポリイミドを粉末として回収した場合は、これを有機溶媒に溶解させて、ポリマー溶液としたものであっても構わない。
【0071】
ポリイミド前駆体又はポリイミドの粉末を有機溶媒に溶解させる場合のポリマー成分の濃度は10〜30質量%が好ましく、10〜15質量%が特に好ましい。また、これらを溶解させる際に加熱してもよい。加熱温度は、20〜150℃が好ましく、20〜80℃が特に好ましい。
ポリイミド前駆体又はポリイミドを溶解させるための有機溶媒としては、ポリマー成分が均一に溶解するものであれは特に限定されない。具体的には、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、N−メチルカプロラクタム、2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシド、ジメチルスルホン、γ−ブチロラクトン、1,3−ジメチル−イミダゾリジノン、3−メトキシ−N,N−ジメチルプロパンアミドなどを挙げることができる。これらは1種又は2種以上を混合して用いてもよい。また、単独ではポリマー成分を均一に溶解できない溶媒であっても、重合体が析出しない範囲であれば、上記の有機溶媒に混合してもよい。
【0072】
本発明の液晶配向剤の溶媒成分は、ポリマー成分を溶解させるための有機溶媒の他に、液晶配向剤を基板へ塗布する際の塗膜均一性を向上させるための溶媒を含有してもよい。このような溶媒は、一般的に上記の有機溶媒よりも低表面張力の溶媒が用いられる。その具体例を挙げるならば、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、エチルカルビトールアセテート、エチレングリコール、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール、1−ブトキシ−2−プロパノール、1−フェノキシ−2−プロパノール、プロピレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールジアセテート、プロピレングリコール−1−モノメチルエーテル−2−アセテート、プロピレングリコール−1−モノエチルエーテル−2−アセテート、ジプロピレングリコール、2−(2−エトキシプロポキシ)プロパノール、乳酸メチルエステル、乳酸エチルエステル、乳酸n−プロピルエステル、乳酸n−ブチルエステル、乳酸イソアミルエステルなどが挙げられる。これらの溶媒は2種類上を併用してもよい。
【0073】
本発明の液晶配向剤中のポリマー濃度は、形成する液晶配向膜の厚みによって適宜変更することができるが、均一で欠陥のない塗膜を形成させるという点からは、1質量%以上であることが好ましく、溶液の保存安定性の点からは10質量%以下とすることが好ましい。ポリマー濃度は、2〜8質量%がより好ましい。
本発明の液晶配向剤は、その他に、シランカップリング剤や架橋剤などの各種添加剤を含有してもよい。
シランカップリング剤は、液晶配向剤が形成される基板と、そこに形成される液晶配向膜との密着性を向上させる目的で添加される。シランカップリング剤の具体例は、国際公開公報WO2010/050523号(国際出願PCT/JP2009/068523)の段落0164の1行〜末行)に記載されるものが挙げられる。
【0074】
シランカップリング剤の使用量は、未反応のものが液晶配向性に悪影響を及ぼさず、かつ密着性の効果が現れるという点から、ポリマー成分に対して0.01〜5質量%が好ましく、0.1〜1質量%がより好ましい。シランカップリング剤を添加する場合は、ポリマーの析出を防ぐため、前記した塗膜均一性を向上させるための溶媒を加える前に添加するのが好ましい。
【0075】
[液晶配向膜]
本発明の液晶配向剤を基板に塗布し、乾燥し、焼成して得られた塗膜であり、必要に応じて、この塗膜面に既知の配向処理を実施する。液晶配向剤を塗布する基板としては、透明性の高い基板であれば特に限定されず、ガラス基板、窒化珪素基板、アクリル基板やポリカーボネート基板などのプラスチック基板などを用いることができ、液晶駆動のためのITO電極などが形成された基板を用いることが、プロセスの簡素化の点から好ましい。また、反射型の液晶表示素子では、片側の基板のみにならば、シリコンウエハーなどの不透明な物でも使用でき、電極はアルミニウムなどの光を反射する材料も使用できる。
【0076】
液晶配向剤の塗布方法としては、スピンコート法、印刷法、インクジェット法などが挙げられる。液晶配向剤を塗布した後の乾燥、焼成工程は、任意の温度と時間を選択することができる。通常は、含有される有機溶媒を十分に除去するために、50〜120℃で1〜10分乾燥させ、その後、150〜300℃で5〜120分焼成される。
焼成後の塗膜の厚みは、特に限定されないが、薄すぎると液晶表示素子の信頼性が低下する場合があるので、5〜300nm、好ましくは10〜200nmである。液晶を水平配向、又は傾斜配向させる場合は、焼成後の塗膜はラビング、又は光配向処理される。
【0077】
[液晶表示素子]
本発明の液晶配向剤から液晶配向膜付き基板を得た後、既知の方法で液晶セルを作製し、液晶表示素子としたものである。
液晶セルの製造方法は特に限定されないが、一例を挙げるならば、液晶配向膜が形成された1対の基板を、液晶配向膜面を内側にして、好ましくは1〜30μm、より好ましくは2〜10μmのスペーサーを挟んで設置した後、周囲をシール剤で固定し、液晶を注入し、封止する方法が一般的である。液晶封入の方法については特に制限されず、作製した液晶セル内を減圧にした後、液晶を注入する真空法、液晶を滴下した後、封止を行う滴下法などが例示できる。
【0078】
液晶セルを製造する別の方法としては、液晶配向剤を2枚の基板上に塗布して液晶配向層を形成し、この液晶配向層が対向するように2枚の基板を配置し、この2枚の基板の間に液晶層を狭持し、液晶層に電界を印加しながら、紫外線を照射することで作製する方法が挙げられる。用いられる基板は、透明性の高い基板であれば特に限定されないが、通常は、基板上に液晶を駆動するための透明電極が形成された基板であり、電極パターンや突起パターンが設けられた基板を用いてもよい。液晶セルの片側基板に1〜10μmのライン/スリット電極パターンを形成し、対向基板にはスリットパターンや突起パターンを形成していない電極構造のものを用いると、製造時のプロセスを簡略化でき、高い透過率を得ることができるため好ましい。
上記の液晶配向層とは、液晶を配向させるための樹脂膜であり、液晶配向剤を用いて基板上に液晶配向層を形成する方法は、前記の液晶配向膜で記載した塗布方法及び塗布した後の焼成方法が適用できる。
【0079】
液晶層に電界を印加しながら紫外線を照射する工程は、例えば、基板上に設置されている電極間に電圧をかけることで液晶層に電界を印加し、この電界を保持したまま、紫外線を照射する方法が挙げられる。ここで、電極間にかける電圧としては、例えば、5〜30Vp−p、好ましくは、5〜20Vp−pである。紫外線の照射量は、例えば、1〜60J,好ましくは、40J以下である。紫外線が少ないほうが、液晶表示素子を構成する部材の破壊の原因となる信頼性低下を抑制でき、かつ紫外線照射時間が選べることで製造効率が上がるので好適である。
【実施例】
【0080】
以下に実施例を挙げ、本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらに限定して解釈されるものではない。使用した化合物の略号、分析方法、分析条件、及び特性評価の方法は、以下のとおりである。
NMP:N−メチル−2−ピロリドン BCS:ブチルセロソルブ
DMAP:ジメチルアミノピリジン
Boc2O:二炭酸ジ−tert−ブチル
DMAP:ジメチルアミノピリジン Pd/C:パラジウムカーボン
DIEPA:ジイソプロピルエチルアミン
DMF:ジメチルホルムアミド
THF:テトラヒドロフラン
【0081】
【化35】
【0082】
(
1H−NMRの測定)
装置:Varian NMR system 400NB(400MHz)(Varian社製)、及びJMTC−500/54/SS(500MHz)(JEOL社製)
測定溶媒:CDCl
3(重水素化クロロホルム),DMSO−d
6(重水素化ジメチルスルホキシド)
基準物質:TMS(テトラメチルシラン)(δ:0.0ppm,
1H)及びCDCl
3(δ:77.0ppm,
13C)
【0083】
(ポリイミド前駆体及びイミド化重合体の分子量測定)
常温ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)装置(GPC−101)(昭和電工社製)、及びカラム(KD−803,KD−805)(Shodex社製)を用いて、以下のようにして測定した。
カラム温度:50℃
溶離液:N,N’−ジメチルホルムアミド(添加剤として、臭化リチウム−水和物(LiBr・H
2O)が30mmol/L(リットル)、リン酸・無水結晶(o−リン酸)が30mmol/L、テトラヒドロフラン(THF)が10ml/L)
流速:1.0ml/分
検量線作成用標準サンプル:TSK 標準ポリエチレンオキサイド(分子量;約900,000、150,000、100,000、及び30,000)(東ソー社製)及びポリエチレングリコール(分子量;約12,000、4,000、及び1,000)(ポリマーラボラトリー社製)。
【0084】
<ジアミン(A1)の合成>
【化36】
【0085】
1L(リットル)の四つ口フラスコに、ジニトロ化合物B(100g,279mmol)、及び1,2−ジクロロエタン(700g)を仕込み、羽攪拌下に85℃まで昇温し、DMAP(0.3g,2.8mmol)、Boc2O (103g,474mmol)、及び1,2−ジクロロエタン(300g)を30分掛けて滴下し,2時間攪拌した。HPLC(高速液体クロマトグラフィ)にて反応終了を確認した後、溶液を350gまで減圧濃縮し、次いで、2−プロパノール(600g)加え、5℃に冷却した後1時間攪拌した。析出した結晶を減圧濾過し、2−プロパノール(200g)で洗浄した後、乾燥し、粉末結晶A1−1を得た(収量120g,収率94%)。
1H-NMR(500MHz, CDCl3); 8.76(1H, s), 8.17(4H, m), 7.39(4H, m), 3.93(2H, t), 3.57(2H, t), 2.97(4H, m), 1.49(9H, s)
【0086】
A1−1(100g,218mmol)、5質量%Pd/C(50%含水型)、及びトルエン(1200ml)の混合物を、水素存在下に60℃で5時間攪拌した。反応終了後、触媒をろ過した後、溶液を5℃まで冷却し、さらに1時間攪拌した。析出した結晶を減圧濾過し、トルエン(200g)で洗浄した後、乾燥し、粉末結晶A1を得た(収量70g,収率80%)。
1H-NMR(500MHz, CDCl3); 8.70(1H, s), 7.00(4H, m), 6.64(4H, m), 3.82(2H, t), 3.57(1H, br), 3.45(4H, m), 2.74(4H, m), 1.47(9H, s)
【0087】
<ジアミン(A2)の合成>
【化37】
【0088】
1L(リットル)の四つ口フラスコ中、ジニトロ誘導体B(53.8g,150mmol)のDMF溶液(269g)に、DIEPA(21.3g,165mmol)とDMAP(1.83g,15mmol)を加えた後、Boc2O(32.7g,150mmol)を室温で30分かけて滴下した。室温にて2時間撹拌した後、DIEPA(21.3g,165mmol)とBoc2O(32.7g,165mol)を追加し、室温で24時間撹拌させた。その後、更にDIEPA(21.3g,165mmol)とBoc2O(32.7g,150mmol)を加え、室温で18時間撹拌した。得られた反応液を酢酸エチル(1078g)で希釈した後、10質量%NaCl水溶液(1000g)で3回洗浄した。その後、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥した後、濃縮し、得られた粗物を酢酸エチルとヘキサン(容積比で1:3、以下同様である。)を用いてカラムクロマトグラフィーを行い、ジニトロ体A2−1を得た(収量17.7g,収率21%)。
1H-NMR(CDCl
3,δppm):8.19-8.15(m,2H),7.42-7.27(m,2H),3.86(br,4H),3,07(br,4H),1.50(s,18H)
【0089】
ジニトロ体A2−1(17.7g,31.7mmol)のTHF溶液(88.5g)に、5質量%Pd/C(50%含水型)(1.71g,10wt%)を加え、その後、水素置換を行い、室温にて24時間撹拌した。次いで、メンブレンフィルターによりろ過を行い、Pd/Cを除去した後、濃縮し粗物を得た。得られた粗物を酢酸エチルとヘキサン(容積比で2:3)を用いてカラムクロマトグラフィーを行い、ジアミンA2を得た(収量12.2g,収率77%)。
1H-NMR(CDCl
3,δppm):7.06-7.02(m,2H),6.65-6.62(m,2H),3.78(br,4H),3.56(s,4H),2.86(br,4H),1.48(s,18H)
【0090】
[合成例1]
撹拌装置及び窒素導入管付きの50ml四つ口フラスコに、DA−1(0.42g,2.8mmol)、及びDA−3(1.67g、4.2mmol)を計量した後、NMP21.7gを加え、窒素を送りながら撹拌し溶解させた。このジアミン溶液を撹拌しながら、CA−1(0.534g,2.45mmol)及びCA−2(0.837g、4.27mmol)を加え、さらにNMPを5.4g加えた。その後、3時間攪拌し、樹脂固形分濃度12質量%のポリアミック酸溶液を得た。このポリアミック酸溶液の25℃における粘度をE型粘度計(東機産業社製)で確認したところ、320mPa・sであった。このポリアミック酸の分子量はMn=10,550、Mw=32,000であった。
【0091】
[合成例2]
撹拌装置及び窒素導入管付きの50ml四つ口フラスコに、DA−1(0.42g,2.8mmol)、及びDA−4(2.09g、4.2mmol)を計量した後、NMP21.7gを加え、窒素を送りながら撹拌し溶解させた。このジアミン溶液を撹拌しながら、CA−1(0.534g,2.45mmol)及びCA−2(0.837g、4.27mmol)を加え、さらにNMPを5.4g加えた。その後、3時間攪拌し、樹脂固形分濃度12質量%のポリアミック酸溶液を得た。このポリアミック酸溶液の25℃における粘度をE型粘度計(東機産業社製)で確認したところ、370mPa・sであった。このポリアミック酸のMnは19,000、Mwは50,500であった。
【0092】
[比較合成例1]
撹拌装置及び窒素導入管付きの50ml四つ口フラスコに、DA−1(0.42g,2.8mmol)、及びDA−2(1.25g、4.2mmol)を計量した後、NMP21.7gを加え、窒素を送りながら撹拌し溶解させた。このジアミン溶液を撹拌しながら、CA−1(0.534g,2.45mmol)及びCA−2(0.837g、4.27mmol)を加え、さらにNMPを5.4g加えた。その後、3時間攪拌し、樹脂固形分濃度12質量%のポリアミック酸溶液を得た。このポリアミック酸溶液の25℃における粘度をE型粘度計(東機産業社製)で確認したところ、330mPa・sであった。このポリアミック酸の分子量はMn=9,900、Mw=21,800であった。
【0093】
[実施例1]
合成例1で得られたポリアミック酸溶液10.0gに、NMPを5.65g、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシランが1.0質量%入ったNMP溶液を1.0g、及びBCS5.55gを加え、濃度が4.5質量%の液晶配向剤(A−1)を得た。この液晶配向剤(A−1)に、濁りや析出物の発生などの異常は見られず、均一な溶液であることが確認された。
【0094】
[実施例2]
合成例2で得られたポリアミック酸溶液10.0gに、NMPを5.65g、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシランが1.0質量%入ったNMP溶液を1.0g、及びBCS5.55gを加え、濃度が4.5質量%の液晶配向剤(A−2)を得た。この液晶配向剤(A−2)に、濁りや析出物の発生などの異常は見られず、均一な溶液であることが確認された。
【0095】
[比較例1]
比較合成例1で得られたポリアミック酸溶液10.0gに、NMPを5.65g、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシランが1.0質量%入ったNMP溶液を1.0g、及びBCS5.55g加え、濃度が4.5質量%の液晶配向剤(B−1)を得た。この液晶配向剤(B−1)に、濁りや析出物の発生などの異常は見られず、均一な溶液であることが確認された。
【0096】
<γ-ブチルラクトンへの溶解性 >
得られた液晶配向剤5.0gの攪拌溶液中に、γ-ブチルラクトン(GBL)を加えながら、固体が析出するまでの溶媒量を記録することで溶解性の評価を実施した。
液晶配向剤A−1、A−2、及びB−1に関して実施したGBLの添加量の結果を表1に示す。
【0097】
【表1】
【0098】
<接着性評価サンプルの作製>
液晶配向剤を1.0μmのフィルターで濾過した後、透明電極付きガラス基板上にスピンコートし、80℃のホットプレート上で2分間乾燥した後、230℃で20分間焼成して、膜厚が100nmの塗膜を得た。このようにして得られた2枚の基板を用意し、一方の基板の液晶配向膜面上に、直径が4μmのビーズスペーサーを散布した後、シール剤(協立化学社製XN−1500T)を点状に塗布した。次いで、他方の基板の液晶配向膜面を内側にし、基板の重なり幅が1cmになるようにして、基板が重なっている部分の中心にシール剤が位置するように貼り合わせを行った。その際、貼り合わせ後のシール剤の直径が約3mmとなるようにシール剤滴下量を調整した。貼り合わせた2枚の基板をクリップにて固定した後、120℃で1時間熱硬化させて、接着性評価用のサンプルを作製した。
【0099】
<接着力の測定>
作製したサンプルを島津製作所社製の卓上形精密万能試験機(AGS−X 500N)にて、上下基板の端の部分を固定した後、基板重なり部分の上部から押し込みを行い、剥離する際の圧力(N)を測定した。
計測したシール剤の直径より見積もった面積(mm
2)で圧力(N)を割り算して規格化した値を接着力の指標とした。
液晶配向剤A−1、及びB−1の接着力の結果を表1に示す。
【0100】
【表2】
【0101】
<液晶セルの作製>
液晶配向剤を1.0μmのフィルターで濾過した後、透明電極付きガラス基板上にスピンコートし、80℃のホットプレート上で2分間乾燥した後、230℃で20分間焼成して、膜厚が100nmの塗膜を得た。このイミド化重合体膜をレーヨン布でラビング(ロール径120mm、回転数1000rpm、移動速度20mm/sec、押し込み量0.4mm)した後、純水中にて1分間超音波照射を行い、80℃で10分間乾燥した。このようにして得られた液晶配向膜付き基板を2枚用意し、一方の基板の液晶配向膜面に4μmのスペーサーを設置した後、2枚の基板のラビング方向が逆平行になるように組み合わせ、液晶注入口を残して周囲をシールし、セルギャップが4μmの空セルを作製した。このセルに液晶(MLC−2041、メルク社製)を常温で真空注入し、注入口を封止してアンチパラレル液晶セルとした。
【0102】
<液晶配向性>
この液晶セルの配向状態を偏光顕微鏡にて観察し、配向欠陥がないものを「良好」、配向欠陥があるものは「不良」とした。液晶配向剤A−1、A−2及びB−1の配向性の評価結果を表3に示す。
【0103】
【表3】
【0104】
<電気特性評価用液晶セルの作製>
FFS(Fringe Field Switching)方式の液晶表示素子の構成を備えた液晶セルを作製した。
始めに、電極付きの基板を準備した。基板は、30mm×35mmの大きさで、厚さが0.7mmのガラス基板であり、基板上には第1層目として対向電極を構成する、ベタ状のパターンを備えたIZO(Indium Tin Oxide)電極が形成されていた。第1層目の対向電極の上には第2層目として、CVD(Chemical Vapor Deposition)法により成膜されたSiN(窒化珪素)膜が形成されていた。第2層目のSiN膜の膜厚は500nmであり、層間絶縁膜として機能する。第2層目のSiN膜の上には、第3層目としてIZO膜をパターニングして形成された櫛歯状の画素電極が配置され、第1画素及び第2画素の2つの画素を形成されていた。各画素のサイズは、縦10mmで横約5mmである。このとき、第1層目の対向電極と第3層目の画素電極とは、第2層目のSiN膜の作用により電気的に絶縁されていた。
【0105】
第3層目の画素電極は、中央部分が屈曲したくの字形状の電極要素を複数配列して構成された櫛歯状の形状を有する。各電極要素の短手方向の幅は3μmであり、電極要素間の間隔は6μmであった。各画素を形成する画素電極が、中央部分の屈曲したくの字形状の電極要素を複数配列して構成されているため、各画素の形状は長方形状ではなく、電極要素と同様に中央部分で屈曲する、太字のくの字に似た形状を備えていた。そして、各画素は、その中央の屈曲部分を境にして上下に分割され、屈曲部分の上側の第1領域と下側の第2領域を有していた。
各画素の第1領域と第2領域とを比較すると、それらを構成する画素電極の電極要素の形成方向が異なるものとなっている。すなわち、後述する液晶配向膜のラビング方向を基準とした場合、画素の第1領域では、画素電極の電極要素が+10°の角度(時計回り)をなすように形成され、画素の第2領域では、画素電極の電極要素が−10°の角度(時計回り)をなすように形成されている。すなわち、各画素の第1領域と第2領域とでは、画素電極と対向電極との間の電圧印加によって誘起される液晶の、基板面内での回転動作(インプレーン・スイッチング)の方向が互いに逆方向となるように構成されている。
【0106】
次に、得られた液晶配向剤を1.0μmのフィルターで濾過した後、準備された上記電極付き基板に、スピンコート塗布にて塗布した。80℃のホットプレート上で120秒間乾燥させた後、230℃の遠赤外線式オーブンで20分間焼成を行い、膜厚60nmのポリイミド膜を得た。このポリイミド膜をレーヨン布でラビング(ローラー直径:120mm、ローラー回転数:500rpm、移動速度:30mm/sec、押し込み長:0.3mm、ラビング方向:3層目IZO櫛歯電極に対して10°傾いた方向)した後、純水にて1分間超音波照射をして洗浄を行い、エアブローにて水滴を除去した後、80℃で15分間乾燥して液晶配向膜付き基板を得た。また、対向基板として、裏面にITO電極が形成されている高さ4μmの柱状スペーサーを有するガラス基板にも、上記と同様にしてポリイミド膜を形成し、上記と同様の手順で、配向処理が施された液晶配向膜付き基板を得た。これら2枚の液晶配向膜付き基板を1組とし、基板上に液晶注入口を残した形でシール剤を印刷し、もう1枚の基板を、液晶配向膜面が向き合い、ラビング方向が逆平行になるようにして張り合わせた後、シール剤を硬化させてセルギャップが4μmの空セルを作製した。この空セルに減圧注入法によって、液晶MLC−2041(メルク社製)を注入し、注入口を封止して、FFS方式の液晶セルを得た。その後、得られた液晶セルを110℃で30分加熱し、23℃で一晩放置してから各評価に使用した。
【0107】
<蓄積した残留電荷の緩和特性>
上記液晶セル(通常液晶を使用)を、偏光軸が直交するように配置された2枚の偏光板の間に設置し、画素電極と対向電極とを短絡して同電位にした状態で、2枚の偏光板の下からLEDバックライトを照射しておき、2枚の偏光板の上で測定するLEDバックライト透過光の輝度が最小となるように、液晶セルの角度を調節した。
次に、この液晶セルに周波数30Hzの矩形波を印加しながら、23℃の温度下でのV−T特性(電圧−透過率特性)を測定し、相対透過率が23%となる交流電圧を算出した。この交流電圧は電圧に対する輝度の変化が大きい領域に相当するため、輝度を介して残留電荷を評価するのに都合がよい。
【0108】
次に、相対透過率が23%となる交流電圧で、かつ周波数30Hzの矩形波を5分間印加した後、+1.0Vの直流電圧を重畳し30分間駆動させた。その後、直流電圧を切り、再び相対透過率が23%となる交流電圧で、かつ周波数30Hzの矩形波のみを30分間印加した。
蓄積した電荷の緩和が速いほど、直流電圧を重畳したときの液晶セルへの電荷蓄積も速いことから、蓄積電荷の緩和特性は、直流電圧を重畳した直後の相対透過率が40%以上の状態から35%に低下するまでに要した時間で評価した。この時間が短いほど蓄積電荷の緩和特性が良好であると定義し、評価を行なった。液晶配向剤A−1、及びB−1の緩和特性を表4に示す。
【0109】
【表4】