(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
(第1実施形態)
以下、図面等を参照して、本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の一実施形態であるレンズ鏡筒10をカメラ本体2に装着して構成されたカメラ1の概念図である。
【0013】
なお、以下の各図には、説明と理解を容易にするために、XYZ直交座標系を設けた。この座標系では、撮影者が光軸OAを水平として横長の画像を撮影する場合のカメラの位置(以下、正位置という)において撮影者から見て左側に向かう方向をXプラス方向とし、正位置において上側に向かう方向をYプラス方向とする。また、正位置において被写体に向かう方向をZプラス方向とする。このZプラス方向を前面側、Zマイナス方向を背面側とも呼称する。さらに、光軸OA(すなわちZ軸)と平行な方向の移動を「直進」、光軸OAを中心とする回動を「回転」と呼称する。
【0014】
カメラ1は、カメラ本体2と、レンズ鏡筒10と、によって構成されている。レンズ鏡筒10は、いわゆる交換レンズであって、その基端部に備えるレンズマウントLMが、カメラ本体2のボディマウントBMと係合することで、カメラ本体2に着脱可能に装着される。
【0015】
カメラ本体2は、光像を電気信号に変換する撮像素子2Aを備え、この撮像素子2Aによる撮像データを画像処理して図示しない記録部に記録するいわゆるデジタル一眼レフカメラである。なお、本発明はデジタル一眼レフカメラに限定されるものではない。また、レンズ鏡筒がカメラ本体と一体に構成されたものに適用しても良い。
【0016】
レンズ鏡筒10は、焦点距離を可変調整可能ないわゆるズームレンズであって、外装外筒11の内部に、撮影光学系を構成する複数のレンズ群(L1〜L4)と、図示しないが絞り等の光学要素を備えて構成されている。
外装外筒11の外周には、ズーム操作環12が回転可能に設けられており、連繋機構の詳細な説明は省略するが、このズーム操作環12を回転操作することで、内装されたレンズ群L1,L2,L4が光軸OA方向(Z軸方向)に各々所定量移動することで焦点距離が連続的に変化するようになっている。レンズ群L3は、移動しない固定レンズ群である。
【0017】
レンズ鏡筒10における外装外筒11の内部には固定筒13が固定され、その固定筒13の内周側にはカム筒14が回転可能且つ光軸OA方向には移動不能に配設されている。カム筒14の内部には、レンズ群L2とレンズ群L3とが配設されている。
固定筒13は、レンズ群L2の移動方向を案内する光軸OAと平行な直進溝(図示せず)を備えている。カム筒14は、レンズ群L2を移動操作するカム溝14Aを備えており、連動ピン15を介してズーム操作環12と連繋している。
【0018】
レンズ群L2は、当該レンズ群L2を保持する保持枠部材20の外周に突設されたカムフォロア21を備えている。カムフォロア21は、カム筒14のカム溝を摺動移動可能に貫通して先端が固定筒13の直進溝に摺動移動可能に嵌合している。これにより、ズーム操作環12の操作によってカム筒14が回転すると、レンズ群L2はカム筒14のカム溝に操作されて固定筒13の直進溝に沿って光軸OA方向(Z軸方向)に移動するようになっている。
【0019】
レンズ群L3は、前述したように、固定レンズ群であって、レンズ保持枠30に保持されており、このレンズ保持枠30を介して固定筒13の内周に調整固定部100によって固定されている。調整固定部100は、周方向にたとえば3カ所設けられており固定筒13の外周側からレンズ群L3の光軸OA方向における位置を調整して、固定筒13に固定し得るように構成されている。
なお、カム筒14は、回転してもこの調整固定部100と干渉しないように逃げを備えた形状となっている。
【0020】
つぎに、
図2〜
図5を参照して、このレンズ群L3を光軸OA方向において位置調整して固定する調整固定部100について詳細に説明する。
図2は、調整固定部100を固定筒13の外周側から見た平面図である。
図3は、調整固定部100の断面図であって、(a)は
図2におけるA−A断面に相当する光軸OAを含む面で断面にした図,(b)は
図2におけるB−B断面に相当する光軸OAと直交する面における断面を示す図である。
図4は、調整固定部100の構成要素を示し、(a)は固定筒の第1開口部110,(b)は外枠部材120,(c)は内枠部材130である。
図5は、調整固定部100によるレンズ群の位置調整を説明する図であり、(a)は外枠部材120に内枠部材130を装着した状態、(b)は、外枠部材120,(c)は内枠部材130である。
【0021】
調整固定部100は、固定筒13に形成された第1開口部110と、第1開口部110に装着される外枠部材120と、外枠部材120に装着される内枠部材130と、レンズ群L3を保持するレンズ保持枠30に内枠部材130を締着固定する固定ビス140と、により構成されている。
【0022】
調整固定部100は、固定筒13の第1開口部110に装着された外枠部材120に、内枠部材130が装着され、さらにこの内枠部材130が固定ビス140でレンズ保持枠30に締着されて、レンズ保持枠30を固定筒13に固定している。
すなわち、調整固定部100は、固定ビス140によってレンズ保持枠30に締着固定された内枠部材130および外枠部材120と、固定筒13の第1開口部110と、の嵌合によって、光軸OA方向(Z軸方向)における相対位置を規定して固定筒13とレンズ保持枠30とを固定する。
【0023】
このような構成の調整固定部100では、固定ビス140のレンズ保持枠30への螺合位置(後述するレンズ保持枠30における固定ネジ部31の位置)を一定としたときに、外枠部材120の外形に対する内枠部材130の光軸OA方向(Z軸方向)における位置を変位させると、その変位に対応してレンズ保持枠30が固定筒13に対して光軸OA方向(Z軸方向)に変位する。
また、内枠部材130に対する固定ビス140の光軸OA方向(Z軸方向)における位置を変位させると、同様にその変位に対応してレンズ保持枠30が固定筒13に対して光軸OA方向(Z軸方向)に変位する。
両者を共に変位させると、レンズ保持枠30の固定筒13に対する光軸OA方向(Z軸方向)の変位量は両者の変位を合算したものとなる。
【0024】
すなわち、外枠部材120として、その外形に対する内枠部材130の光軸OA方向(Z軸方向)における変位(以下これを外調整変位と呼ぶ)の量が異なるものを複数用意する。
そして、内枠部材130としてその中心に対する固定ビス140の光軸OA方向(Z軸方向)における変位(以下これを内調整変位と呼ぶ)の量が異なるものを複数用意する。
そして、これらを適宜組み合わせることで、レンズ保持枠30(レンズL3)の光軸OA方向(Z軸方向)における位置を任意に調整して固定筒13に固定することができる。
【0025】
本実施形態では、外枠部材120と内枠部材130とで変位ピッチ(寸法刻み)が一桁(1/10mmと1/100mm)異なって微調用と粗調用とに役割が分担されている。
外枠部材120は外調整変位が細かい変位量を担う微調用、内枠部材130は内調整変位が粗い変位量を担う粗調用に設定されている。
これにより、両者の組合せによって、少ない部品点数で微少な変位間隔で広い範囲の変位調整が可能となる。
【0026】
詳しくは後述するが、たとえば、外枠部材120は変位量が0.02mmピッチで3種類用意し、内枠部材130は変位量が0.1mmピッチで6種類用意する。
そして、それらの中から適宜選択して組合せることによって、レンズ保持枠30の固定筒13に対する光軸OA方向(Z軸方向)における位置を、0〜0.54mmの範囲内において0.02mmピッチでの調整が可能となる。
【0027】
外枠部材120および内枠部材130は、光軸OA方向(Z軸方向)における向きを反転(180°回転)させると変位方向が逆転する。
このため、外枠部材120の3種類と内枠部材130の6種類の組合せで、0〜±0.54mmの範囲を0.02mmピッチで調整可能となる。
【0028】
以下、調整固定部100の構成要素を、順を追って詳細に説明する。
図4(b)に示すように、固定筒13に形成された第1開口部110は、光軸OA方向(Z軸方向)を長辺方向とする矩形状であって、固定筒13の内外周を貫通して形成されている。
第1開口部110の、光軸OA方向(Z軸方向)において対向する内面は、後述する外枠部材120を位置決めする位置規制面111となっている。この両位置規制面111の間隔をPとする。
また、第1開口部110の、光軸OA方向(Z軸方向)と直交する周方向(図中X軸方向)において対向する内面は、後述する内枠部材130の周方向の移動を規制する位置規制面112となっている。この両位置規制面112の間隔をTとする。
【0029】
図4(b)に示すように、外枠部材120は、固定筒13における第1開口部110と対応する矩形の平面形状であって、固定筒13の厚さと略等しい厚さを有する。
外枠部材120は、中央に内枠部材130が嵌合する第2開口部121が形成され、全体形状は枠状である。外枠部材120の長辺(Z軸と平行な辺)の上面側には、後述する内枠部材130の押圧鍔131が載置される凹部122が形成されている。
【0030】
外枠部材120の光軸OA方向(Z軸方向)と直交する両外端面(すなわち短辺の外端面)は、位置決め面123となっている。その外枠部材120の光軸OA方向(Z軸方向)における間隔(すなわち外枠部材120の長辺方向における長さ):P’は、固定筒13における第1開口部110の両位置規制面111の間隔:Pに対して、ガタ無く嵌合するはめあい寸法に設定されている。
これにより、外枠部材120は、固定筒13の第1開口部110に嵌合すると、位置決め面123が位置規制面111に当接して面接触し、光軸OA方向(Z軸方向)において位置決めされて、第1開口部110(すなわち固定筒13)に装着されるようになっている。
【0031】
外枠部材120に形成された第2開口部121は、外枠部材120の外形と略相似の光軸OA方向(Z軸方向)に長い矩形状であって、外枠部材120をその厚さ方向に貫通している。
第2開口部121における、光軸OA方向(Z軸方向)において対向する内面は、内枠部材130を位置決めする位置規制面124となっている。この両位置規制面124の間隔をQとする。
【0032】
ここで、外枠部材120は、外調整変位(外枠部材120の外形に対する内枠部材130の光軸OA方向における変位)量が所定の寸法間隔で設定された複数のものが用意される。
外調整変位は、外枠部材120の長辺方向における長さ:P’、および第2開口部121の位置規制面124の間隔:Qを一定とし、一方(Z軸+側)の短辺の幅:Rを変化させることで設定する。他方の短辺の幅:R’は、P’−(Q+P)、外調整変位量は、(R−R’)/2となる。
【0033】
複数の外枠部材120は、たとえば、外調整変位が0〜0.04mmの範囲を網羅するように0.02mmピッチで3種類用意されるものとする。
つまり、
(1) R=R’ 以下、これをR1として
(2) R=R1−0.02かつR’=R1+0.02
(3) R=R1−0.04かつR’=R1+0.04
にそれぞれ設定された3種類である。
なお、これは第2開口部121が光軸OA方向前面側(Z軸+方向)に変位する方向として表したものである。R=R1−0.06相当は上記(3)を、R=R1−0.08相当は上記(2)を、それぞれ180°回転させて後述する内枠部材130の変位量から減算する(Z軸−方向変位させる)ように用いることで対応する。
【0034】
図4(c)に示すように、内枠部材130は、外枠部材120における第2開口部121と対応する矩形の平面形状で外枠部材120の厚さと略等しい厚さのブロック状である。
内枠部材130は、光軸OA方向(Z軸方向)における略中央に固定ビス孔132を備え、光軸OAと直交する方向(X軸方向)の両辺にはそれぞれ押圧鍔131が突設されている。
【0035】
内枠部材130の光軸OA方向(Z軸方向)における両側の外端面は位置決め面133となっており、内枠部材130の長辺方向における長さ:Q’は、外枠部材120における第2開口部121の位置規制面124の間隔:Qに対して、ガタ無く嵌合するはめあい寸法に設定されている。
これにより、内枠部材130は、外枠部材120の第2開口部121に嵌合すると、位置決め面133が第2開口部121の位置規制面124に当接して、光軸OA方向(Z軸方向)において位置決めされるようになっている。
【0036】
また、押圧鍔131の光軸OA方向(Z軸方向)と直交する周方向(図中X軸方向)の端面は、移動規制当接面134となっており、移動規制当接面134の間隔:T’は、第1開口部110における位置規制面112の間(間隔:T)に、周方向(図中X軸方向)に移動不能に嵌合するように設定されている。
【0037】
ここで、内枠部材130は、内調整変位(内枠部材130に対する固定ビス140の光軸OA方向における変位)量が、所定の寸法間隔に設定された複数のものが用意される。
内調整変位は、内枠部材130の長辺方向における長さ:Q’は一定とし、一方(Z軸+側)の位置決め面133から固定ビス孔132の中心まで寸法:Sを変化させることで設定する。他方の位置決め面133から固定ビス孔132の中心まで寸法:S’は、Q’−S、内調整変位量は、(S’−S)/2となる。
【0038】
複数の内枠部材130は、たとえば、内調整変位量が0〜0.5mmの範囲を網羅するように0.1mmピッチで6種類用意されるものとする。
つまり、
(1) S=S’ 以下、これをS1として
(2) S=S1−0.1かつS’=S1+0.1
(3) S=S1−0.2かつS’=S1+0.2
(4) S=S1−0.3かつS’=S1+0.3
(5) S=S1−0.4かつS’=S1+0.4
(6) S=S1−0.5かつS’=S1+0.5
にそれぞれ設定された6種類である。
【0039】
固定ビス140は、軸部141の一方の端に大径で操作溝を有する頭部142を備えると共に、他端にネジ部143を備えて形成されている。軸部141は、内枠部材130における固定ビス孔132にガタ無く嵌合する所定公差(はめあい)に形成されている。
固定ビス140は、内枠部材130における固定ビス孔132にその軸部141が嵌合して、ネジ部143がレンズ群L3を保持するレンズ保持枠30の固定ネジ部31(孔、ネジ孔)に螺合し、頭部142で内枠部材130をレンズ保持枠30の外周面に押圧して固定する。
【0040】
そして、調整固定部100は、
図2に示すように、外枠部材120が固定筒13における第1開口部110に光軸OA方向(Z軸方向)に位置決めされ、その外枠部材120の第2開口部121に内枠部材130が光軸OA方向(Z軸方向)に位置決めされ、その内枠部材130が固定ビス孔132に挿通された固定ビス140でレンズ保持枠30に固定される。
【0041】
外枠部材120は、内枠部材130の押圧鍔131によって、脱落不能にレンズ保持枠30に固定される。
内枠部材130は、押圧鍔131が外枠部材120の凹部122に対応して外枠部材120の脱落を防ぎ、その押圧鍔131の端面である移動規制当接面134は、第1開口部110における位置規制面112に当接して当該内枠部材130が固定されたレンズ保持枠30の光軸OA方向(Z軸方向)と直交する周方向(図中X軸方向)の移動(回転)を防ぐ。
【0042】
つぎに、上記のように構成された調整固定部100による、レンズ保持枠30(レンズL3)の固定筒13に対する光軸OA方向(Z軸方向)における位置調整について説明する。
上記構成の調整固定部100は、前述したように、外調整変位量が異なる複数の外枠部材120と、内調整変位量が異なる複数の内枠部材130と、の中から変位量を選択して組み合わせることで、レンズ保持枠30の固定筒13に対する光軸OA方向(Z軸方向)における位置を調整できる。
【0043】
前述したように、外枠部材120として外調整変位量が0.02mmピッチで3種類のコマが用意され、内枠部材130として内調整変位量が0.1mmピッチで6種類のコマが用意される場合、それらのコマの中から適宜選択して組合せることによって、レンズ保持枠30の固定筒13に対する光軸OA方向(Z軸方向)における位置を、0〜±0.54mmの範囲内において0.02mmピッチで調整できる。
【0044】
図5は、第1開口部110のZ軸方向中心に固定ネジ部31が位置する標準位置:STから、レンズ保持枠30を固定筒13に対してZ軸+方向に0.54mm変位させる例である。
図5の例では、(b)に示すように、外調整変位量が0.04mmの外枠部材120をその変位方向をZ軸+方向として用いると共に、(c)に示すように内調整変位量が0.5mmの内枠部材130をその変位方向をZ軸+方向として用いる。
これにより、(a)に示すように、固定筒13の第1開口部110に対して、固定ネジ部31(レンズ保持枠30)が、標準位置:STからZ軸+方向に0.54mm変位して位置し、従って、レンズ保持枠30は固定筒13に対してZ軸+方向に0.54mm変位した位置に固定される。
【0045】
また、たとえば、レンズ保持枠30を固定筒13に対して標準位置:STから0.48mmZ軸+方向に変位させたい場合には、外調整変位量が0.02mmの外枠部材120を180°反転させて変位方向をZ軸−方向として用いると共に、内調整変位量が0.5mmの内枠部材130を用いれば良い。
さらに、レンズ保持枠30を固定筒13に対して標準位置:STからZ軸−方向に変位させたい場合には、上記説明と逆にすれば良い。
【0046】
なお、レンズ保持枠30の位置調整時には、レンズ保持枠30の固定ネジ部31の位置に対して、外枠部材120の固定ビス孔132の位置が一致していない状態から、固定ビス孔132に挿通した固定ビス140のネジ部143の先端でレンズ保持枠30の固定ネジ部31を探って螺合させることによってレンズ保持枠30を移動させる。
このため、図示しないが、ネジ部143の固定ネジ部31への螺合を容易とするように、固定ビス140におけるネジ部143の先端を先細りのテーパ状とすることが望ましい。
【0047】
以上、説明したように、調整固定部100は、外枠部材120の外調整変位量と、内枠部材130の内調整変位量との組合せによって、レンズ保持枠30(レンズL3)の固定筒13に対する光軸OA方向(Z軸方向)における位置を調整して固定することができる。
【0048】
なお、調整固定部100全体の調整範囲や、外枠部材120における外調整変位量のピッチ、および、内枠部材130における内調整変位量のピッチは、上記実施形態に限定されることなく適宜設定可能である。
また、外枠部材120と内枠部材130の変位調整量の粗調と微調の分担を、逆に設定しても良い。つまり、外枠部材120を外調整変位量のピッチが粗い粗調用とし、内枠部材130を内調整変位量のピッチが細かく微調用とする。
さらに、用意する外枠部材120および内枠部材130の数も、本実施形態の例に限定されることなく任意に設定可能である。
【0049】
調整固定部100は、前述したように、レンズ鏡筒10(固定筒13)の周上に3ヵ所設けられ、レンズL3の光軸OA方向(Z軸方向)における位置調整の際には、3ヵ所に同一寸法のコマ(外枠部材120,内枠部材130)を組み替えて使用する。
また、3ヵ所に寸法の異なるコマ(外枠部材120,内枠部材130)を選択することで、レンズL3のチルト調芯や、部品の加工精度により発生するレンズL3の傾き補正を行うことも可能である。
【0050】
(第2実施形態)
つぎに、
図6〜
図10に示す本発明の第2実施形態について説明する。
図6は、調整固定部200を示し、(a)は固定筒の外周側から見た平面図,(b)は固定筒の第1開口部210,(c)は外枠部材220,(d)は内枠部材230である。
図7〜10は、外枠部材220Bおよび内枠部材230Bを回転させて行う調整量の変更の説明図である。
なお、この調整固定部200は、前述した第1実施形態と同様のカメラ(レンズ鏡筒)に適用されるが、同じ構成要素には同符号を付して説明は省略する。
【0051】
図6に示す調整固定部200は、固定筒13に形成された第1開口部210と、第1開口部210に装着される外枠部材220と、外枠部材220に装着される内枠部材230と、レンズ群L3を保持するレンズ保持枠30に内枠部材230を締着固定する固定ビス240と、により構成されている。
【0052】
本構成の調整固定部200は、外枠部材220を第1開口部210に90°ピッチで周方向に回転させて装着することができると共に、内枠部材230を外枠部材220に90°ピッチで周方向に回転させて装着することができるように構成されている。
これにより、1つの外枠部材220及び1つの内枠部材230によってZ軸方向に16通りの変位調整量を得ることができるようになっている。
なお、外枠部材220と内枠部材230の変位調整量の粗調と微調の分担は、前述した第1実施形態と同様に、外枠部材220が微調用、内枠部材230が粗調用である。
【0053】
図6(b)に示すように、固定筒13に形成された第1開口部210は、光軸OA方向(Z軸方向)と直交する周方向(図中X軸方向)を長辺方向とする矩形状に形成されている。
第1開口部210における、光軸OA方向(Z軸方向)に対向する内面は、外枠部材220を位置決めする位置規制面211となっている。この両位置規制面211の間隔をPとする。第1開口部210のX軸方向(長辺方向)に対向する内面は、位置規制面212となっている。この位置規制面212の間隔をTとする。
また、位置規制面211が形成された辺の周縁部分の上面には、内枠部材230の押圧鍔231が遊嵌する逃げ凹部213が形成されている。
【0054】
図6(c)に示すように、外枠部材220は、固定筒13における第1開口部210の対向する位置規制面211の間隔を一辺とする正方形の角部が面取りされた平面形状であって、中央に内枠部材230が嵌合する第2開口部221を備えている。
外枠部材220の各辺の上面側には、それぞれ後述する内枠部材230の押圧鍔231が遊嵌する凹部222が形成されている。
【0055】
外枠部材220の各辺の外端面は、それぞれ位置決め面223となっており、同一方向において対となる位置決め面223の間隔:P’は、第1開口部210の両位置規制面211の間隔:Pに対して、それぞれガタ無く嵌合するはめあい寸法に設定されている。
これにより、外枠部材220は、固定筒13の第1開口部210に嵌合すると、位置決め面223が位置規制面211に当接して光軸OA方向(Z軸方向)において位置決めされて、第1開口部210(すなわち固定筒13)に装着されるようになっている。外枠部材220は、位置決め面223の対を直交する2方向において備えるため、90°ピッチで回転させて第1開口部210に装着することができる。
【0056】
外枠部材220における第2開口部221は、外枠部材220の外形と略相似の正方形状であって、その光軸OA方向(Z軸方向)において対向する内面は、それぞれ内枠部材230を位置決めする位置規制面224となっている。この両位置規制面124の間隔をQとする。
【0057】
ここで、外枠部材220は、その外枠の幅(位置決め面223と位置規制面224との距離)が、4辺で全て異なっている。ここで、4辺の幅を
図6(c)に示すように、a,b,c,dとする。a,b,c,dは全て異なる幅(長さ)である。
なお、c=P’−(a+Q),d=P’−(b+Q)である。
【0058】
また、
図6(d)に示すように、内枠部材230は、外枠部材220における第2開口部221と対応する正方形の平面形状であって、厚さ方向に貫通する固定ビス孔232を備え、周囲の4辺にはそれぞれ押圧鍔231が突設されている。押圧鍔231の端面の間隔:T’は、第1開口部210における位置規制面212の間(間隔:T)に、周方向(図中X軸方向)に移動不能に嵌合するように設定されている。
【0059】
内枠部材230の周囲4辺の外端面はそれぞれ位置決め面233となっており、同一方向において対となる位置決め面233の間隔:Q’は、外枠部材220における第2開口部221の位置規制面224の間隔:Qに対して、ガタ無く嵌合するはめあい寸法に設定されている。
また、押圧鍔231の光軸OA方向の端面は、移動規制当接面234となっており、同一方向における移動規制当接面234の間隔:T’は、第1開口部110における位置規制面112の間(間隔:T)に、周方向(図中X軸方向)に移動不能に嵌合するように設定されている。
【0060】
これにより、内枠部材230は、外枠部材220の第2開口部221に嵌合すると、位置決め面233が第2開口部221の位置規制面224に当接して、光軸OA方向(Z軸方向)において位置決めされる。内枠部材230は、位置決め面233の対を直交する2方向において備えており、90°ピッチで回転させて外枠部材220における第2開口部221に装着することができるようになっている。また、押圧鍔231の周方向(図中X軸方向)における移動規制当接面234は、第1開口部110における対向する位置規制面112にそれぞれ当接する。
【0061】
ここで、内枠部材230、
図6(d)に示すように、固定ビス孔232の中心Oは、4つの移動規制ら当接面234からは等間隔(T’/2)の位置であるが、4つの位置決め面233からは異なる位置にある。
図示するように、固定ビス孔132の中心Oの1つ目の位置決め面233からは距離A、2つ目の位置決め面233からは距離B、3つ目の位置決め面233からは距離C、4つ目の位置決め面233からは距離Dとする。A,B,C,Dは全て異なる距離(長さ)である。
なお、C=Q’−A,D=Q’−Bである。
【0062】
図7は、外枠部材220における幅aの辺が、Zプラス方向にくるように配置した場合を示す図である。
【0063】
図7(a)は、固定ビス孔132の中心Oから位置決め面233までの距離がAである側が、Zプラス側となるように、内枠部材230を外枠部材220の第1開口部210内に配置した場合を示す図である。
この場合、固定ビス孔132の中心Oの、位置規制面211からの距離は
a+A
となる。
【0064】
図7(b)は、固定ビス孔132の中心Oから位置決め面233までの距離がBである側が、Zプラス側となるように、内枠部材230を外枠部材220の第1開口部210内に配置した場合を示す図である。
この場合、固定ビス孔132の中心Oの、位置規制面211からの距離は
a+B
となる。
【0065】
図7(c)は、固定ビス孔132の中心Oから位置決め面233までの距離がCである側が、Zプラス側となるように、内枠部材230を外枠部材220の第1開口部210内に配置した場合を示す図である。
この場合、固定ビス孔132の中心Oの、位置規制面211からの距離は
a+C
となる。
【0066】
図7(d)は、固定ビス孔132の中心Oから位置決め面233までの距離がDである側が、Zプラス側となるように、内枠部材230を外枠部材220の第1開口部210内に配置した場合を示す図である。
この場合、固定ビス孔132の中心Oの、位置規制面211からの距離は
a+D
となる。
【0067】
図8は、外枠部材220における幅bの辺が、Zプラス方向にくるように配置した場合を示す図である。
【0068】
図8(a)は、固定ビス孔132の中心Oから位置決め面233までの距離がAである側が、Zプラス側となるように、内枠部材230を外枠部材220の第1開口部210内に配置した場合を示す図である。
この場合、固定ビス孔132の中心Oの、位置規制面211からの距離は
b+A
となる。
【0069】
図8(b)は、固定ビス孔132の中心Oから位置決め面233までの距離がBである側が、Zプラス側となるように、内枠部材230を外枠部材220の第1開口部210内に配置した場合を示す図である。
この場合、固定ビス孔132の中心Oの、位置規制面211からの距離は
b+B
となる。
【0070】
図8(c)は、固定ビス孔132の中心Oから位置決め面233までの距離がCである側が、Zプラス側となるように、内枠部材230を外枠部材220の第1開口部210内に配置した場合を示す図である。
この場合、固定ビス孔132の中心Oの、位置規制面211からの距離は
b+C
となる。
【0071】
図8(d)は、固定ビス孔132の中心Oから位置決め面233までの距離がDである側が、Zプラス側となるように、内枠部材230を外枠部材220の第1開口部210内に配置した場合を示す図である。
この場合、固定ビス孔132の中心Oの、位置規制面211からの距離は
b+D
となる。
【0072】
図9は、外枠部材220における幅cの辺が、Zプラス方向にくるように配置した場合を示す図である。
【0073】
図9(a)は、固定ビス孔132の中心Oから位置決め面233までの距離がAである側が、Zプラス側となるように、内枠部材230を外枠部材220の第1開口部210内に配置した場合を示す図である。
この場合、固定ビス孔132の中心Oの、位置規制面211からの距離は
c+A
となる。
【0074】
図9(b)は、固定ビス孔132の中心Oから位置決め面233までの距離がBである側が、Zプラス側となるように、内枠部材230を外枠部材220の第1開口部210内に配置した場合を示す図である。
この場合、固定ビス孔132の中心Oの、位置規制面211からの距離は
c+B
となる。
【0075】
図9(c)は、固定ビス孔132の中心Oから位置決め面233までの距離がCである側が、Zプラス側となるように、内枠部材230を外枠部材220の第1開口部210内に配置した場合を示す図である。
この場合、固定ビス孔132の中心Oの、位置規制面211からの距離は
c+C
となる。
【0076】
図9(d)は、固定ビス孔132の中心Oから位置決め面233までの距離がDである側が、Zプラス側となるように、内枠部材230を外枠部材220の第1開口部210内に配置した場合を示す図である。
この場合、固定ビス孔132の中心Oの、位置規制面211からの距離は
c+D
となる。
【0077】
図10は、外枠部材220における幅dの辺が、Zプラス方向にくるように配置した場合を示す図である。
【0078】
図10(a)は、固定ビス孔132の中心Oから位置決め面233までの距離がAである側が、Zプラス側となるように、内枠部材230を外枠部材220の第1開口部210内に配置した場合を示す図である。
この場合、固定ビス孔132の中心Oの、位置規制面211からの距離は
d+A
となる。
【0079】
図10(b)は、固定ビス孔132の中心Oから位置決め面233までの距離がBである側が、Zプラス側となるように、内枠部材230を外枠部材220の第1開口部210内に配置した場合を示す図である。
この場合、固定ビス孔132の中心Oの、位置規制面211からの距離は
d+B
となる。
【0080】
図10(c)は、固定ビス孔132の中心Oから位置決め面233までの距離がCである側が、Zプラス側となるように、内枠部材230を外枠部材220の第1開口部210内に配置した場合を示す図である。
この場合、固定ビス孔132の中心Oの、位置規制面211からの距離は
d+C
となる。
【0081】
図10(d)は、固定ビス孔132の中心Oから位置決め面233までの距離がDである側が、Zプラス側となるように、内枠部材230を外枠部材220の第1開口部210内に配置した場合を示す図である。
この場合、固定ビス孔132の中心Oの、位置規制面211からの距離は
d+D
となる。
【0082】
すなわち、1つの外枠部材220及び1つの内枠部材230によって、Zプラス側の位置規制面211からの固定ビス孔232の中心Oの光軸OA方向の距離は、
a+A,a+B,a+C,a+D,
b+A,b+B,b+C,b+D,
c+A,c+B,c+C,c+D,
d+A,d+B,d+C,d+D,
の16通り選択可能となる。
【0083】
そして、調整固定部200は、
図6(a)に示すように、外枠部材220が固定筒13における第1開口部210に光軸OA方向(Z軸方向)に位置決めされ、その外枠部材220の第2開口部221に内枠部材230が光軸OA方向(Z軸方向)に位置決めされ、その内枠部材230が固定ビス孔232に挿通された固定ビス240でレンズ保持枠30に固定される。
【0084】
以上説明したように、調整固定部200は、外枠部材220は直交する2つの方向に4つの外調整変位量を有すると共に第1開口部210に90°ピッチで周方向に回転させて装着することができ、内枠部材230は直交する2つの方向に4つの内調整変位量を有すると共に外枠部材220に90°ピッチで周方向に回転させて装着することができる。
これにより、1つの外枠部材220または内枠部材230によって16段階の変位調整量を得ることができ、レンズ保持枠30(レンズL3)の位置調整に際して用意する外枠部材220および内枠部材230の数を削減することができる。
【0085】
以上、本実施形態によると、以下の効果を有する。
(1)本実施形態の調整固定部100は、固定筒13の第1開口部110に装着された外枠部材120に、内枠部材130が装着され、さらにこの内枠部材130が固定ビス140でレンズ保持枠30に締着されて、レンズ保持枠30を固定筒13に固定している。
これにより、固定筒13の外周側からその内周側に位置するレンズ保持枠30を位置調整して固定筒13に固定することができる。その結果、極めて作業性が良く容易に位置調整を行うことができ、また、光軸方向のネジ等で固定する場合のように隣接する部材の取り外しによる工数の増加やキズ、損傷、ゴミの混入等の不具合の発生を抑制できる。
【0086】
(2)本実施形態によれば、調整固定部100,200は、外枠部材120,220の外調整変位と、内枠部材130,230の内調整変位とを合算した量、レンズ保持枠30を固定筒13に対して変位させる。外枠部材120,220は外調整変位量のピッチが微少な微調用、内枠部材130,230は内調整変位量のピッチが粗い粗調用として、変位量が分担されている。このため、両者の組合せによって、少ない部品点数で微少な変位間隔で広い範囲の変位調整を行うことができる。
【0087】
(2)外枠部材120,220は矩形に形成されて固定筒13の第1開口部110に光軸OA方向において位置決め面123,223で当接し、内枠部材130,230は矩形に形成されて外枠部材120,220の第2開口部121,221に光軸OA方向において位置決め面133,233で当接する。
このため、レンズ保持枠30と固定筒13とを強固に固定でき、衝撃の作用等によっても位置ズレを生じ難く光学性能を安定して維持することができる。
【0088】
(3)第2実施形態における調整固定部200は、外枠部材220および内枠部材230はそれぞれ直交する2つの方向に異なる調整変位量を備え、外枠部材220を第1開口部210に90°ピッチで周方向に回転させて装着することができると共に、内枠部材230を外枠部材220に90°ピッチで周方向に回転させて装着することができる。
これにより、1つの外枠部材220または内枠部材230によって16通りの変位調整量を得ることができ、位置調整に係る部品点数の一層の削減が可能となり、コスト低減にも寄与できる。
【0089】
(変形形態)
以上、説明した実施形態に限定されることなく、以下に示すような種々の変形や変更が可能であり、それらも本発明の範囲内である。
(1)本実施形態における調整固定部は、外枠部材に対して内枠部材が嵌合しており、両者の調整変位量の合算でレンズ保持枠30を固定筒13に対して変位調整するように構成されている。しかし、部品点数は増加するものの、調整変位を有する1種類の調整コマによって構成することも可能である。
【0090】
(2)本実施形態では、外枠部材および内枠部材は、矩形に形成されて反転または90°毎に回転させて使用可能に構成されている。しかし、外枠部材および内枠部材は、光軸OA方向において面で当接して位置決めできる形状であれば、矩形に限らず他の形状としても良い。5角形以上の多角形とすれば、より多くの方向に異なる調整変位量を備えるように構成することもできる。
【0091】
(3)上記実施形態は、固定筒の内部にレンズ保持枠が固定する例であるが、レンズ保持枠を固定する部材は固定筒に限らず、可動筒であっても良い。
なお、実施形態及び変形形態は、適宜組み合わせて用いることもできるが、詳細な説明は省略する。また、本発明は以上説明した実施形態によって限定されることはない。