(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
<変性共役ジエン系ゴムの製造方法>
本発明の変性共役ジエン系ゴムの製造方法は、芳香環に直接結合した炭素原子を1分子中に3個以上有する芳香族化合物に、アルカリ金属原子を反応させてアルカリ金属化芳香族化合物を得る第1工程と、前記アルカリ金属化芳香族化合物を用いて、少なくとも共役ジエン化合物を含んでなる単量体を重合し、活性末端を有する共役ジエン系ゴムを得る第2工程と、前記活性末端を有する共役ジエン系ゴムの活性末端に、活性制御剤を反応させて活性制御剤と反応した共役ジエン系ゴムを得る第3工程と、前記活性制御剤と反応した共役ジエン系ゴムの活性末端に、アルコキシ基およびハロゲン原子含有基を有する変性剤を反応させて、変性共役ジエン系ゴムを得る第4工程と、を備える。
【0016】
<第1工程>
まず、本発明の製造方法における、第1工程について説明する。本発明の製造方法における、第1工程は、芳香環に直接結合した炭素原子を1分子中に3個以上有する芳香族化合物に、アルカリ金属原子を反応させてアルカリ金属化芳香族化合物を得る工程である。なお、第1工程において得られるアルカリ金属化芳香族化合物は、後述する第2工程において、重合開始剤として用いられる。
【0017】
芳香環に直接結合した炭素原子を1分子中に3個以上有する芳香族化合物を構成する芳香環としては、芳香族性を有する共役環であれば特に限定されず、具体例としては、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環などの電気的に中性な芳香族炭化水素環;シクロペンタジエニルアニオン環、インデニルアニオン環、フルオレニルアニオン環などの負電荷を有する芳香族炭化水素環;フラン環、チオフェン環などのヘテロ原子を含有する芳香環;などを挙げることができる。これらのなかでも、安定性や重合活性の観点より、電気的に中性な芳香族炭化水素環が好ましく、ベンゼン環が特に好ましい。
【0018】
このような芳香環に直接結合した炭素原子を1分子中に3個以上有する芳香族化合物としては、下記一般式(1)で表される芳香族化合物や、下記一般式(5)で表される芳香族化合物を例示することができるが、これらのなかでも、下記一般式(1)で表される芳香族化合物が好ましい。
【0019】
【化5】
上記一般式(1)中、R
1〜R
8は、それぞれ独立して、水素原子、または炭素数1〜10のアルキル基であり、R
1〜R
8の3個以上が、炭素数1〜10のアルキル基である。mは、0〜5の整数であり、mが2以上である場合には、上記一般式(1)で表される構造にかかわらず、3個以上存在するベンゼン環は互いに任意の位置で縮合したものであってもよい。なお、上記「それぞれ独立して」とは、例えば、mが2以上である場合、R
5およびR
8はそれぞれ複数存在するが、複数あるR
5またはR
8も、同一であってもよいし、異なっていてもよいとの意味である。
【0020】
上記一般式(1)において、mは0で、R
1、R
2、R
3、R
4、R
6、およびR
7のうち3個が炭素数1〜10のアルキル基であり、R
1、R
2、R
3、R
4、R
6、およびR
7のうち残りが水素原子であることが好ましい。
【0022】
上記一般式(5)中、R
18〜R
22は、それぞれ独立して水素原子、または炭素数1〜10のアルキル基であり、R
18〜R
22の1個以上が炭素数1〜10のアルキル基である。また、Aは任意の結合基を表し、pは、3〜100の整数である。なお、上記「それぞれ独立して」とは、例えば、pが3以上である場合、R
18〜R
22はそれぞれ複数存在するが、複数あるR
18、R
19、R
20、R
21、またはR
22も、同一であってもよいし、異なっていてもよいとの意味である。
【0023】
上記一般式(1)で表される芳香族化合物の具体例としては、1,2,3−トリメチルベンゼン、1,2,4−トリメチルベンゼン、1,3,5−トリメチルベンゼン、ヘキサメチルベンゼン、1,2,3−トリエチルベンゼン、1,2,4−トリエチルベンゼン、1,3,5−トリエチルベンゼン、1,2,3−トリプロピルベンゼン、1,2,4−トリプロピルベンゼン、1,3,5−トリプロピルベンゼン、1,3,5−トリブチルベンゼン、1,3,5−トリペンチルベンゼン、などの3個以上のアルキル基を有するベンゼン類;2,3,5−トリメチルナフタレン、1,4,5−トリメチルナフタレンなどの3個以上のアルキル基を有するナフタレン類;などを挙げることができる。
【0024】
また、上記一般式(5)で表される芳香族化合物の具体例としては、o−メチルスチレンオリゴマー、m−メチルスチレンオリゴマー、p−メチルスチレンオリゴマー、p−エチルスチレンオリゴマー、p−プロピルスチレンオリゴマー、p−ブチルスチレンオリゴマー、p−ペンチルスチレンオリゴマーなどのベンゼン環上の1つ以上の水素がアルキル基に置換されたスチレンの重合体などを挙げることができる。
【0025】
本発明の製造方法において、芳香環に直接結合した炭素原子を1分子中に3個以上有する芳香族化合物に反応させる、アルカリ金属原子としては、特に限定されるものではないが、リチウム、ナトリウム、またはカリウムであることが好ましく、これらのなかでも、リチウムが特に好ましい。また、芳香環に直接結合した炭素原子を1分子中に3個以上有する芳香族化合物に、アルカリ金属原子を反応させる方法としては、特に限定されないが、不活性雰囲気下、不活性溶媒中で、有機アルカリ金属化合物を反応させる方法が好適である。
【0026】
有機アルカリ金属化合物としては、特に限定されないが、アルキル基またはアリール基を有するアルカリ金属化合物が好適に用いられ、その具体例としては、メチルリチウム、メチルナトリウム、メチルカリウム、エチルリチウム、エチルナトリウム、エチルカリウム、n−プロピルリチウム、イソプロピルカリウム、n−ブチルリチウム、s−ブチルリチウム、t−ブチルリチウム、n−ブチルナトリウム、n−ブチルカリウム、n−ペンチルリチウム、n−アミルリチウム、n−オクチルリチウム、フェニルリチウム、ナフチルリチウム、フェニルナトリウム、ナフチルナトリウムなどが挙げられる。これらのなかでも、アルキル基を有するアルカリ金属化合物が好ましく、アルキル基を有するリチウム化合物がより好ましく、n−ブチルリチウムが特に好ましい。芳香環に直接結合した炭素原子を1分子中に3個以上有する芳香族化合物に対する、有機アルカリ金属化合物の使用量は特に限定されるものではないが、芳香族化合物中の芳香環に直接結合した炭素原子1モルに対して、通常0.1〜100モル、好ましくは0.2〜50モル、より好ましくは0.3〜10モル、特に好ましくは0.3〜1.1モルである。
【0027】
また、有機アルカリ金属化合物として、アルキル(またはアリール)カリウムやアルキル(またはアリール)ナトリウムを用いる場合は、アルキル基またはアリール基を有するリチウム化合物と、アルコキシ基を有するカリウムまたはナトリウム化合物とを混合することにより、目的とするカリウムまたはナトリウム化合物を得てもよい。このとき用いられるアルコキシ基を有するカリウムまたはナトリウム化合物としては、t−ブトキシカリウムやt−ブトキシナトリウムが例示される。アルコキシ基を有するカリウムまたはナトリウム化合物の使用量は、特に限定されないが、アルキル基またはアリール基を有するリチウム化合物に対して、通常0.1〜5.0モル、好ましくは0.2〜3.0モル、より好ましくは0.3〜2.0モルである。
【0028】
不活性溶媒としては、反応させる化合物を溶解させ得る溶媒であれば特に限定されないが、炭化水素系溶媒を用いることが好ましい。具体的には、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタンなどの脂肪族炭化水素;シクロヘキサン、シクロペンタン、メチルシクロヘキサンなどの脂環族炭化水素;などが挙げられる。なお、これらの溶媒は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0029】
また、本発明の第1工程における、反応時間、反応温度は、特に限定されないが、反応時間は、通常1分〜10日、好ましくは1分〜5日の範囲であり、反応温度は、通常−50℃〜100℃の範囲である。
【0030】
また、芳香環に直接結合した炭素原子を1分子中に3個以上有する芳香族化合物に、有機アルカリ金属化合物を反応させるにあたり、反応を促進させる目的で、アルカリ金属原子への配位能を有する化合物を共存させてもよい。アルカリ金属原子への配位能を有する化合物としては、ヘテロ原子を含有するルイス塩基化合物が好適に用いられ、これらのなかでも、窒素原子または酸素原子を含有するルイス塩基化合物が特に好適に用いられる。窒素原子または酸素原子を含有するルイス塩基化合物の具体例としては、ジエチルエーテル、アニソール、ジフェニルエーテル、ジメトキシベンゼン、ジメトキシエタン、ジグライム、エチレングリコールジブチルエーテルなどの鎖状エーテル化合物;トリメチルアミン、トリエチルアミンなどの分子内に窒素原子を1つ有する第3級アミン化合物;テトラヒドロフラン、テトラヒドロピランなどの分子内に酸素原子を1つ有する環状エーテル化合物;ピリジン、ルチジン、1−メチルイミダゾールなどの含窒素複素環化合物;ビステトラヒドロフリルプロパンなどの分子内に酸素原子を2つ以上有する環状エーテル化合物;N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、ジピペリジノエタン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、(−)−スパルテイン、N,N,N’,N’’,N’’−ペンタメチルジエチレントリアミンなどの分子内に窒素原子を2つ以上有する第3級アミン化合物;ヘキサメチルホスホアミドなどの分子内に窒素−ヘテロ原子結合を有する第3級アミド化合物;などが挙げられる。
【0031】
アルカリ金属原子への配位能を有する化合物の使用量は、特に限定されず、その配位能の強さに応じて決定すればよい。例えば、アルカリ金属原子への配位能を有する化合物として、比較的に配位能が弱い化合物である、鎖状エーテル化合物や分子内に窒素原子を1つ有する第3級アミン化合物を用いる場合、その使用量は、芳香族化合物と反応させる有機アルカリ金属化合物中のアルカリ金属原子1モルに対して、通常1〜100モル、好ましくは5〜50モル、より好ましくは10〜25モルの範囲である。また、アルカリ金属原子への配位能を有する化合物として、配位能が中程度である化合物である、分子内に酸素原子を1つ有する環状エーテル化合物や含窒素複素環化合物を用いる場合、その使用量は、芳香族化合物と反応させる有機アルカリ金属化合物中のアルカリ金属原子1モルに対して、通常1〜100モル、好ましくは1〜20モル、より好ましくは2〜10モルの範囲である。また、アルカリ金属原子への配位能を有する化合物として、比較的に配位能が強い化合物である、分子内に酸素原子を2つ以上有する環状エーテル化合物や分子内に窒素原子を2つ以上有する第3級アミン化合物や分子内に窒素−ヘテロ原子結合を有する第3級アミド化合物を用いる場合、その使用量は、芳香族化合物と反応させる有機アルカリ金属化合物中のアルカリ金属原子1モルに対して、通常0.01〜5モル、好ましくは0.01〜2モル、より好ましくは0.01〜1.5モルの範囲である。アルカリ金属原子への配位能を有する化合物の使用量が多すぎると、反応が進行しなくなるおそれがある。なお、これらのアルカリ金属原子への配位能を有する化合物は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0032】
アルカリ金属原子への配位能を有する化合物としては、芳香環に直接結合した炭素原子を1分子中に3個以上有する芳香族化合物に、有機アルカリ金属化合物を反応させる際における、反応効率を高め、反応により得られるアルカリ金属化芳香族化合物の生産性をより高めることができるという観点より、分子内に酸素原子を2つ以上有する環状エーテル化合物、分子内に窒素原子を2つ以上有する第3級アミン化合物、および分子内に窒素−ヘテロ原子結合を有する第3級アミド化合物から選択される少なくとも1種の化合物を用い、その使用量を、芳香族化合物と反応させる有機アルカリ金属化合物中のアルカリ金属原子1モルに対して、0.02〜0.4モルの範囲とすることが特に好ましい。
【0033】
芳香環に直接結合した炭素原子を1分子中に3個以上有する芳香族化合物に、有機アルカリ金属化合物を反応させるにあたり、アルカリ金属原子への配位能を有する化合物を共存させる場合において、それぞれの添加順序は特に限定されない。ただし、アルカリ金属化芳香族化合物の生成効率を特に良好とする観点からは、芳香族化合物および有機アルカリ金属化合物を共存させた後、その系にアルカリ金属原子への配位能を有する化合物を添加する順序、または芳香族化合物およびアルカリ金属原子への配位能を有する化合物を共存させた後、その系に有機アルカリ金属化合物を添加する順序が好適である。このような順序で添加を行うことにより、有機アルカリ金属化合物とアルカリ金属原子への配位能を有する化合物との錯体形成による不溶化が防止され、アルカリ金属化芳香族化合物の生成効率が特に良好となる。
【0034】
そして、本発明の第1工程によれば、上述した方法にしたがい、芳香環に直接結合した炭素原子を1分子中に3個以上有する芳香族化合物に、アルカリ金属原子を反応させることにより、アルカリ金属化芳香族化合物を得ることができる。なお、アルカリ金属化芳香族化合物としては、芳香族化合物に、アルカリ金属原子が結合してなる化合物であればよく特に限定されないが、本発明の第1工程によれば、通常、アルカリ金属原子および芳香環に、直接結合した炭素原子を1分子中に3個以上有するアルカリ金属化芳香族化合物を得ることができる。なお、この場合における、アルカリ金属化芳香族化合物においては、アルカリ金属原子は、アルカリ金属化芳香族化合物内において、通常、カチオンの状態で存在しており、また、アルカリ金属原子と芳香環とのそれぞれに直接結合する炭素原子は、このようなカチオンの状態のアルカリ金属原子と結合するために、通常、アニオンの状態で存在している。そして、このようなアルカリ金属化芳香族化合物中においては、このようにカチオンの状態で存在するアルカリ金属原子と、アニオンの状態で存在する炭素原子とがイオン結合を形成し、これにより互いに直接結合した状態となっている。
【0035】
また、本発明においては、第1工程において、アルカリ金属原子および芳香環に、直接結合した炭素原子を1分子中に3個以上有するアルカリ金属化芳香族化合物を得て、これを後述する第2工程において、重合開始剤として用いることにより、該アルカリ金属化芳香族化合物に含まれる3個以上のアルカリ金属原子が直接結合した炭素原子のそれぞれを重合開始点として、共役ジエン系重合体鎖がリビング重合性を伴って成長することとなるため、得られる共役ジエン系ゴムが放射状の構造を有するものとすることができる。
【0036】
また、アルカリ金属原子および芳香環に、直接結合した炭素原子を1分子中に3個以上有するアルカリ金属化芳香族化合物としては、上記一般式(1)で表される芳香族化合物を用いて得られるアルカリ金属化芳香族化合物である、下記一般式(6)で表されるアルカリ金属化芳香族化合物や、上記一般式(5)で表される芳香族化合物を用いて得られるアルカリ金属化芳香族化合物である、下記一般式(7)で表されるアルカリ金属化芳香族化合物を例示することができる。
【0037】
【化7】
上記一般式(6)において、R
23〜R
30は、それぞれ独立して水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、およびアルカリ金属原子がα位に結合した炭素数1〜10のアルカリ金属化アルキル基から選択されるいずれかの原子または基を表し、R
23〜R
30の3個以上が、アルカリ金属原子がα位に結合した炭素数1〜10のアルカリ金属化アルキル基である。また、mは0〜5の整数であり、mが2以上である場合には、上記一般式(6)で表される構造にかかわらず、3個以上存在するベンゼン環は互いに任意の位置で縮合したものであってもよい。なお、上記「それぞれ独立して」とは、例えば、mが2以上である場合、R
27およびR
30はそれぞれ複数存在するが、複数あるR
27またはR
30も、それぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよいとの意味である。
【0038】
上記一般式(6)において、mは0で、R
23、R
24、R
25、R
26、R
28、およびR
29のうち3個がアルカリ金属原子がα位に結合した炭素数1〜10のアルカリ金属化アルキル基であり、R
23、R
24、R
25、R
26、R
28、およびR
29のうち残りが水素原子であることが好ましい。
【0039】
【化8】
上記一般式(7)において、R
31〜R
35は、それぞれ独立して水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、およびアルカリ金属原子がα位に結合した炭素数1〜10のアルカリ金属化アルキル基から選択されるいずれかの原子または基を表し、R
31〜R
35の1個以上が、アルカリ金属原子がα位に結合した炭素数1〜10のアルカリ金属化アルキル基である。また、Aは任意の結合基を表し、pは3〜100の整数である。なお、上記「それぞれ独立して」とは、例えば、pが2以上である場合、R
31〜R
35はそれぞれ複数存在するが、複数あるR
31、R
32、R
33、R
34、またはR
35も、それぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよいとの意味である。
【0040】
<第2工程>
次いで、本発明の製造方法における、第2工程について説明する。本発明の製造方法における、第2工程は、上記第1工程で得られたアルカリ金属化芳香族化合物を用いて、少なくとも共役ジエン化合物を含んでなる単量体を重合し、活性末端を有する共役ジエン系ゴムを得る工程である。なお、上記第1工程で得られたアルカリ金属化芳香族化合物は、通常、重合開始剤として作用する。
【0041】
共役ジエン化合物としては、特に限定されず、例えば、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、2−メチル−3−エチル−1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン、1,3−シクロヘキサジエンなどを挙げることができる。これらのなかでも、1,3−ブタジエン、イソプレンまたは1,3−ペンタジエンが好ましく、1,3−ブタジエン、イソプレンが特に好ましい。なお、これらの共役ジエン化合物は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0042】
また、本発明の製造方法においては、活性末端を有する共役ジエン系ゴムは、共役ジエン化合物に加えて芳香族ビニル化合物を含んでなる単量体を共重合してなるものであることが好ましい。芳香族ビニル化合物としては、特に限定されず、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、2−エチルスチレン、3−エチルスチレン、4−エチルスチレン、2,4−ジイソプロピルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、4−t−ブチルスチレン、5−t−ブチル−2−メチルスチレン、ビニルナフタレン、ジメチルアミノメチルスチレン、ジメチルアミノエチルスチレンなどを挙げることができる。これらのなかでも、スチレン、α−メチルスチレン、または4−メチルスチレンが好ましく、スチレンが特に好ましい。なお。これらの芳香族ビニル化合物は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。本発明で用いられる活性末端を有する共役ジエン系ゴムは、共役ジエン単量体単位50〜100重量%を含むものが好ましく、55〜95重量%を含むものが特に好ましく、また、芳香族ビニル単量体単位50〜0重量%を含むものが好ましく、45〜5重量%を含むものが特に好ましい。
【0043】
また、本発明の製造方法においては、活性末端を有する共役ジエン系ゴムは、本発明の目的を損なわない範囲において、所望により、共役ジエン化合物、および芳香族ビニル化合物に加えてそれら以外の他の単量体を含有する単量体を共重合してなるものであってもよい。他の単量体としては、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのα,β−不飽和ニトリル;アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸などの不飽和カルボン酸または酸無水物;メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチルなどの不飽和カルボン酸エステル;1,5−ヘキサジエン、1,6−ヘプタジエン、1,7−オクタジエン、ジシクロペンタジエン、5−エチリデン−2−ノルボルネンなどの非共役ジエン;などを挙げることができる。これらの単量体は、活性末端を有する共役ジエン系ゴム中に、単量体単位として、10重量%以下とするのが好ましく、5重量%以下とするのがより好ましい。
【0044】
本発明の製造方法において、2種以上の単量体を用いて共重合体を得る場合の、共重合の様式は特に限定されず、ランダム状、ブロック状、テーパー状などのいずれであってもよいが、ランダム状の結合様式であることが好ましい。ランダム状にすることにより、得られるゴム架橋物は低発熱性に優れたものとなる。
【0045】
本発明の製造方法では、通常、重合反応はリビング性を伴って進行するので、重合開始剤として用いるアルカリ金属化芳香族化合物と単量体との使用割合は、目的とする重合体の分子量に応じて決定すればよいが、単量体1モルに対する、アルカリ金属化芳香族化合物中のアルカリ金属の量が、通常0.000001〜0.1モル、好ましくは0.00001〜0.05モル、特に好ましくは0.0001〜0.01モルとなる範囲で選択される。アルカリ金属化芳香族化合物の使用量が少なすぎると、得られる共役ジエン系ゴムの分子量が高くなりすぎて取り扱いが困難となったり、重合反応が十分に進行しなかったりするおそれがある。一方、アルカリ金属化芳香族化合物の使用量が多すぎると、得られる共役ジエン系ゴムの分子量が低くなりすぎて、ゴム材料として特性に劣るものとなるおそれがある。
【0046】
また、重合反応を行うに際しては、重合速度や得られる共役ジエン系ゴムのミクロ構造を制御する目的で、重合反応系に、上述したようなアルカリ金属原子への配位能を有する化合物を添加してもよい。これらのアルカリ金属原子への配位能を有する化合物の使用量は、重合開始剤として用いるアルカリ金属化芳香族化合物中のアルカリ金属原子1モルに対して、通常、20モル以下、好ましくは15モル以下、特に好ましくは5モル以下である。これらのアルカリ金属原子への配位能を有する化合物の使用量が多すぎると、重合反応を阻害するおそれがある。なお、上述した第1工程において、アルカリ金属化芳香族化合物を調製する際に、アルカリ金属原子への配位能を有する化合物を用いた場合は、その化合物を含有する溶液をそのまま使用することもできる。
【0047】
特に、得られるゴム架橋物をより低発熱性に優れるものとすることができる観点からは、分子内に酸素原子を2つ以上有する環状エーテル化合物、分子内に窒素原子を2つ以上有する第3級アミン化合物、および分子内に窒素−ヘテロ原子結合を有する第3級アミド化合物から選択される少なくとも1種の化合物を、重合開始剤として用いるアルカリ金属化合物(ここでいうアルカリ金属化合物は、アルカリ金属化芳香族化合物に限られず、反応系中に存在し、重合開始剤として働くアルカリ金属化合物全てを含むものである)中のアルカリ金属原子1モルに対して、0.02〜3.0モルの範囲で存在させることが好ましい。このようにすることで、適度なビニル結合含有量を有する共役ジエン系ゴムが得られ、その結果として、これを用いて得られるゴム架橋物をより低発熱性に優れるものとすることができる。
【0048】
本発明の製造方法における、共役ジエン化合物を含んでなる単量体の重合様式は、溶液重合法を用いることが好ましい。
【0049】
溶液重合法にて用いる溶媒は、重合反応において不活性であり、単量体や重合触媒を溶解させ得る溶媒であれば特に限定されないが、炭化水素系溶媒を用いることが好ましい。具体的には、たとえば、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素;n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタンなどの脂肪族炭化水素;シクロヘキサン、シクロペンタン、メチルシクロヘキサンなどの脂環族炭化水素;テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテルなどのエーテル類;などが挙げられる。これらのなかでも、脂肪族炭化水素や脂環族炭化水素を溶媒として用いると重合活性が高くなるので好ましい。なお、これらの溶媒は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0050】
溶液重合法における重合溶液中の単量体の濃度は、特に限定されないが、通常1〜50重量%、好ましくは2〜45重量%、より好ましくは5〜40重量%の範囲で選択される。溶液中の単量体の濃度が低すぎると、共役ジエン系ゴムの生産性が悪くなるおそれがあり、濃度が高すぎると、溶液の粘度が高くなりすぎて、その取り扱いが困難となる場合がある。また、重合温度にも特に制限はないが、通常−30℃〜+200℃、好ましくは0℃〜+180℃の範囲である。重合時間にも特に制限は無く、通常1分〜100時間の範囲である。重合様式としては、回分式、連続式などいずれの様式をも採用できるが、共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物とを共重合させる場合は、共役ジエン単量体単位と芳香族ビニル単量体単位との結合のランダム性を制御しやすい点で、回分式が好ましい。
【0051】
以上のようにして、共役ジエン化合物を含んでなる単量体を重合することで、共役ジエン系ゴムを得ることができる。なお、本発明の製造方法においては、通常、重合反応はリビング性を伴って進行するので重合反応系には、活性末端を有する重合体が存在することとなる。そのため、第2工程において、重合反応により得られる共役ジエン系ゴムは、活性末端を有するものとなる。これに対し、本発明の製造方法においては、後述する第3工程および第4工程において、重合反応により得られた共役ジエン系ゴムの活性末端に、活性制御剤を反応させ、次いで、特定の変性剤を反応させることで、変性共役ジエン系ゴムを得るものである。特に、本発明の製造方法における、第2工程で得られる活性末端を有する共役ジエン系ゴムは、上述した第1工程において得られたアルカリ金属化芳香族化合物を用いるものであるから、通常、放射状の構造を有するものとなる。そして、放射状の構造を有することにより、重合体鎖の片側のみが活性末端である直鎖状の共役ジエン系ゴムに比べ、1分子中の活性末端の数が多く、効率的に変性させることができ、その結果、シリカとの親和性がより向上する。また、放射状の構造を有することにより、カップリング剤を用いなくても多分岐構造を得ることができる。
【0052】
<第3工程>
次いで、本発明の製造方法における、第3工程について説明する。本発明の製造方法における、第3工程は、上記第2工程で得られた活性末端を有する共役ジエン系ゴムの活性末端に、活性制御剤を反応させて活性制御剤と反応した共役ジエン系ゴムを得る工程である。
【0053】
活性制御剤としては、特に限定されず、第2工程で得られた活性末端を有する共役ジエン系ゴムの活性末端と反応することができ、かつ、反応後においては、該活性末端の活性を低下させることができるような化合物であればよく、特に限定されない。該活性末端の活性を低下させるためには、活性末端自体の活性を直接低下させること以外に、該活性末端に変性剤が反応しにくくするような構造(たとえば、変性剤が活性末端に近づきにくくなるような構造)を与えるような態様であってもよい。活性制御剤としては、下記一般式(3)で表される化合物、または下記一般式(4)で表される化合物が例示される。これらのなかでも、活性末端を有する共役ジエン系ゴムの活性末端との反応性、および得られる活性制御剤と反応した共役ジエン系ゴムの活性末端の活性の低下度合の観点より、下記一般式(4)で表される化合物が好ましい。
【0054】
【化9】
上記一般式(3)中、R
12、R
13は、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1〜10のアルキル基であり、好ましくは水素原子である。
【0055】
【化10】
上記一般式(4)中、R
14〜R
17は、それぞれ独立して、水素原子、または炭素数1〜12のアルキル基であり、好ましくは、R
14、R
15、R
16は水素原子であり、R
17は水素原子、または炭素数1〜12のアルキル基である。また、上記一般式(4)で表される化合物としては、酸化エチレン、酸化プロピレンが好ましく、酸化プロピレンがより好ましい。
【0056】
活性制御剤として、上記一般式(3)で表される化合物を用いた場合には、第3工程における反応は、下記反応式に従って進行することとなり、下記一般式(9)で表される、活性制御剤と反応した共役ジエン系ゴムを得ることができる。なお、下記反応式において、上記第2工程で得られた活性末端を有する共役ジエン系ゴムを一般式(8)で示した。一般式(8)中、Polymerは、活性末端を有する共役ジエン系ゴムを構成するベースポリマーを表し、M
1は、アルカリ金属原子を表す。
【化11】
【0057】
また、活性制御剤として、上記一般式(4)で表される化合物を用いた場合には、第3工程における反応は、下記反応式に従って進行することとなり、下記一般式(10)および/または下記一般式(11)で表される、活性制御剤と反応した共役ジエン系ゴムを得ることができる。なお、下記反応式においても、上記第2工程で得られた活性末端を有する共役ジエン系ゴムを一般式(8)で示した。
【化12】
【0058】
本発明の製造方法の第3工程における、活性制御剤の使用量は、特に限定されないが、重合開始剤として使用したアルカリ金属化芳香族化合物中のアルカリ金属原子1モル当たり、0.05〜5モルの範囲となる量とすることが好ましく、0.1〜3モルとなる量とすることがより好ましく、0.5〜1.5モルとなる量とすることが特に好ましい。活性制御剤の使用量を上記範囲とすることにより、その添加効果をより顕著なものとすることができる。なお、活性制御剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0059】
上記第2工程で得られた活性末端を有する共役ジエン系ゴムの活性末端に、活性制御剤を反応させる方法としては、特に限定されないが、上記第2工程で得られた活性末端を有する共役ジエン系ゴムと、活性制御剤とを、これらを溶解可能な溶媒中で、混合する方法などが挙げられる。この際に用いる溶媒としては、上述した共役ジエン系ゴムの重合に用いる溶媒として例示したものなどを用いることができる。また、この際においては、上述した第2工程で得られた活性末端を有する共役ジエン系ゴムを、その重合に用いた重合溶液のままの状態とし、ここに活性制御剤を添加する方法が簡便であり、好ましい。第3工程における反応温度は、特に限定されないが、通常、0〜120℃であり、反応時間は、特に限定されないが、通常、1分〜1時間である。
【0060】
<第4工程>
次いで、本発明の製造方法における、第4工程について説明する。本発明の製造方法における、第4工程は、上記第3工程で得られた活性制御剤と反応した共役ジエン系ゴムの活性末端に、アルコキシ基およびハロゲン原子含有基を有する変性剤を反応させて、変性共役ジエン系ゴムを得る工程である。
【0061】
本発明の製造方法においては、活性制御剤と反応した共役ジエン系ゴムの活性末端に、アルコキシ基およびハロゲン原子含有基を有する変性剤を反応させることにより、共役ジエン系ゴムを改質し、シリカなどの充填剤に対する親和性を改良することができ、得られる変性共役ジエン系ゴムは加工性に優れ、しかも、引張強度、破断伸び、低発熱性、およびウエットグリップ性に優れたゴム架橋物を与えることのできるものとすることができる。
【0062】
特に、活性制御剤と反応した共役ジエン系ゴムの活性末端に、上記変性剤を反応させることにより、実施態様の1つとして変性剤中のハロゲン原子が該活性末端と反応し、共役ジエン系ゴムの末端に、アルコキシ基を導入することができ、アルコキシ基は、必要に応じて加水分解されることにより、シリカなどの充填剤に対して高い親和性を示すものである。そして、このようなアルコキシ基の作用により、得られるゴム架橋物を、引張強度、破断伸び、低発熱性、およびウエットグリップ性に特に優れたものとすることができるものである。
【0063】
その一方で、アルコキシ基は反応性が高く、そのため、アルコキシ基を含有する変性剤を、放射状の構造を有する共役ジエン系ゴムの活性末端に、そのまま反応させた場合には、アルコキシ基の高反応性に起因して、ゲル化(三次元架橋化)が生じてしまうという問題がある。これに対し、本発明では、上記した第3工程として、共役ジエン系ゴムの活性末端に、活性制御剤を反応させ、共役ジエン系ゴムの活性末端の活性を低下させるという工程を採用するものである。そして、本発明においては、このように活性制御剤を反応させ、活性末端の活性を低下させた共役ジエン系ゴムに、アルコキシ基およびハロゲン原子含有基を有する変性剤を反応させるものであり、これにより、アルコキシ基の高反応性に起因するゲル化の問題を抑制しながら、放射状の構造を有する共役ジエン系ゴムの末端にアルコキシ基を導入することができるものである。そして、その結果として、ゲル化による加工性の低下を抑制することで、優れた加工性を実現しながら、得られるゴム架橋物を、引張強度、破断伸び、低発熱性、およびウエットグリップ性に特に優れたものとすることができるものである。
【0064】
アルコキシ基およびハロゲン原子含有基を有する変性剤としては、特に限定されず、アルコキシ基およびハロゲン原子含有基を有し、上記第3工程で得られた活性制御剤と反応した共役ジエン系ゴムの活性末端と反応することができる化合物であればよいが、下記一般式(2)で表される化合物を好適に用いることができる。
【化13】
上記一般式(2)中、X
1は、X
2またはR
11X
2(X
2はハロゲン原子、好ましくは塩素原子であり、R
11は、炭素数1〜4のアルキレン基)で表される基であり、好ましくはR
11X
2で表される基である。R
9、R
10は、それぞれ独立して、炭素数1〜10のアルキル基である。また、nは1〜3の整数である。
【0065】
本発明の製造方法の第4工程における、アルコキシ基およびハロゲン原子含有基を有する変性剤の使用量は、特に限定されないが、重合開始剤として使用したアルカリ金属化芳香族化合物中のアルカリ金属原子1モル当たりの、ハロゲン原子含有基に含まれるハロゲン原子の量が、0.05〜5モルの範囲となる量とすることが好ましく、0.1〜3モルとなる量とすることがより好ましく、0.5〜1.5モルとなる量とすることが特に好ましい。アルコキシ基およびハロゲン原子含有基を有する変性剤の使用量を上記範囲とすることにより、その添加効果をより顕著なものとすることができる。なお、アルコキシ基およびハロゲン原子含有基を有する変性剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0066】
本発明の製造方法の第4工程において、上述した第3工程で得られた活性制御剤と反応した共役ジエン系ゴムの活性末端に、アルコキシ基およびハロゲン原子含有基を有する変性剤を反応させる方法としては、特に限定されないが、上述した第3工程で得られた活性制御剤と反応した共役ジエン系ゴムと、アルコキシ基およびハロゲン原子含有基を有する変性剤とを、これらを溶解可能な溶媒中で、混合する方法などが挙げられる。この際に用いる溶媒としては、上述した共役ジエン系ゴムの重合に用いる溶媒として例示したものなどを用いることができる。また、この際においては、上述した第2工程で得られた活性末端を有する共役ジエン系ゴムを、その重合に用いた重合溶液のままの状態とするとともに、第3工程における活性制御剤との反応を、第2工程において用いた重合溶液のまま行い、かつ、該重合溶液のままの状態として、ここにアルコキシ基およびハロゲン原子含有基を有する変性剤を添加する方法が簡便であり、好ましい。第4工程における反応温度は、特に限定されないが、通常、0〜120℃であり、反応時間は、特に限定されないが、通常、1分〜1時間である。
【0067】
活性制御剤と反応した共役ジエン系ゴムに、アルコキシ基およびハロゲン原子含有基を有する変性剤を反応させた後に、未反応の活性末端が残存している場合、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール又は水等の、重合停止剤を重合溶液に添加して、未反応の活性末端を失活させることが好ましい。
【0068】
以上のようにして得られる変性共役ジエン系ゴムの溶液には、所望により、フェノール系安定剤、リン系安定剤、イオウ系安定剤などの老化防止剤を添加してもよい。老化防止剤の添加量は、その種類などに応じて適宜決定すればよい。さらに、所望により、伸展油を配合して、油展ゴムとしてもよい。伸展油としては、例えば、パラフィン系、芳香族系およびナフテン系の石油系軟化剤、植物系軟化剤、ならびに脂肪酸等が挙げられる。石油系軟化剤を用いる場合には、IP346の方法(英国のTHE INSTITUTE PETROLEUMの検査方法)により抽出される多環芳香族の含有量が3%未満であることが好ましい。伸展油を使用する場合、その使用量は、変性共役ジエン系ゴム100重量部に対して、通常5〜100重量部である。また、変性反応後の変性共役ジエン系ゴムは、例えば、再沈澱、加熱下での溶媒除去、減圧下での溶媒除去、水蒸気による溶媒の除去(スチームストリッピング)等の、ゴムを溶液から単離する際の通常の操作によって、反応混合物から分離、取得することができる。
【0069】
本発明の製造方法によれば、第1工程において、芳香環に直接結合した炭素原子を1分子中に3個以上有する芳香族化合物に、アルカリ金属原子を反応させることで、アルカリ金属化芳香族化合物を得て、第2工程において、該アルカリ金属化芳香族化合物を用いて、共役ジエン化合物の重合を行なうものである。そのため、アルカリ金属化芳香族化合物に通常含まれる、3個以上のアルカリ金属原子が直接結合した炭素原子のそれぞれを重合開始点として、共役ジエン重合体鎖がリビング重合性を伴って成長するため、得られる共役ジエン系ゴムが放射状の構造を有するものとすることができる。そして、本発明においては、第3工程において、このような放射状の構造を有する共役ジエン系ゴムの活性末端に、活性制御剤を反応させ、続く第4工程において、アルコキシ基およびハロゲン原子含有基を有する変性剤を反応させることにより、放射状の構造を有し、かつ、アルコキシ基を末端に有する変性共役ジエン系ゴムを得るものである。
【0070】
そして、このようにして得られる本発明の変性共役ジエン系ゴムは、放射状の構造を有することにより、充填剤などとの親和性が向上されたものであり、しかも、その活性末端を変性するに先立って、活性制御剤を反応させることにより、活性末端の活性を低下させ、これに続いて、アルコキシ基およびハロゲン原子含有基を有する変性剤を反応させるものである。そのため、本発明によれば、変性反応時における、共役ジエン系ゴムのゲル化(三次元架橋化)の発生を有効に防止することができ、その結果として、加工性の向上を可能とするものである。加えて、本発明の製造方法により得られる変性共役ジエン系ゴムは、重合体鎖末端に、アルコキシ基が導入されたものとなるため、アルコキシ基の効果により、充填剤などとの親和性を飛躍的に向上させることができ、これにより、シリカなどの充填剤を配合し、ゴム架橋物とした場合における引張強度、破断伸び、低発熱性、およびウエットグリップ性のさらなる向上を可能とするものである。
【0071】
なお、本発明の製造方法により得られる変性共役ジエン系ゴム中における、放射状共役ジエン系ゴム(すなわち、3分岐以上の共役ジエン系ゴム)の割合は、特に限定されないが、通常、10〜100重量%であり、好ましくは、20〜100重量%である。このような割合で放射状共役ジエン系ゴムを含有することにより、変性共役ジエン系ゴムの加工性をより向上させることができ、しかも、シリカなどの充填剤などとの親和性をより高めることができる。
【0072】
本発明の製造方法により得られる変性共役ジエン系ゴムの重量平均分子量は、特に限定されないが、ポリスチレン換算のゲルパーミエーションクロマトグラフィで測定される値として、通常、1,000〜3,000,000、好ましくは10,000〜2,000,000、より好ましくは100,000〜1,500,000の範囲である。変性共役ジエン系ゴムの重量平均分子量を上記範囲とすることにより、変性共役ジエン系ゴムへのシリカの配合が容易となり、ゴム組成物は加工性により優れたものとなる。
【0073】
また、本発明の製造方法により得られる変性共役ジエン系ゴムの重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)で表わされる分子量分布も、特に限定されないが、好ましくは1.1〜5.0、特に好ましくは1.2〜3.0である。変性共役ジエン系ゴムの分子量分布を上記範囲とすることにより、得られるゴム架橋物は低発熱性により優れたものとなる。
【0074】
また、本発明の製造方法により得られる変性共役ジエン系ゴムのムーニー粘度(ML
1+4,100℃)も、特に限定されないが、通常、20〜150、好ましくは30〜120の範囲である。変性共役ジエン系ゴムのムーニー粘度を上記範囲とすることにより、ゴム組成物の加工性が優れたものとなる。なお、変性共役ジエン系ゴムを油展ゴムとする場合は、その油展ゴムのムーニー粘度を上記の範囲とすることが好ましい。
【0075】
また、本発明の製造方法により得られる変性共役ジエン系ゴムの共役ジエン単位部分におけるビニル結合含有量は、通常1〜80モル%であり、好ましくは5〜75モル%である。ビニル結合量を上記範囲とすることにより、得られるゴム架橋物は低発熱性により優れたものとなる。
【0076】
<ゴム組成物>
本発明のゴム組成物は、上述した本発明の製造方法により得られる変性共役ジエン系ゴムを含むゴム成分100重量部に対して、シリカ10〜200重量部を含有してなる組成物である。
【0077】
本発明で用いるシリカとしては、例えば、乾式法ホワイトカーボン、湿式法ホワイトカーボン、コロイダルシリカ、沈降シリカなどが挙げられる。これらの中でも、含水ケイ酸を主成分とする湿式法ホワイトカーボンが好ましい。また、カーボンブラック表面にシリカを担持させたカーボン−シリカデュアル・フェイズ・フィラーを用いてもよい。これらのシリカは、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。用いるシリカの窒素吸着比表面積(ASTM D3037−81に準じBET法で測定される)は、好ましくは50〜300m
2/g、より好ましくは80〜220m
2/g、特に好ましくは100〜170m
2/gである。また、シリカのpHは、5〜10であることが好ましい。
【0078】
本発明のゴム組成物におけるシリカの配合量は、ゴム組成物中のゴム成分100重量部に対して、10〜200重量部であり、好ましくは30〜150重量部、より好ましくは50〜100重量部である。シリカの配合量を上記範囲とすることにより、ゴム組成物の加工性が優れたものとなり、得られるゴム架橋物の低発熱性が優れたものとなる。
【0079】
本発明のゴム組成物には、低発熱性をさらに改良する観点より、さらにシランカップリング剤を配合してもよい。シランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−オクタチオ−1−プロピル−トリエトキシシラン、ビス(3−(トリエトキシシリル)プロピル)ジスルフィド、ビス(3−(トリエトキシシリル)プロピル)テトラスルフィド、γ−トリメトキシシリルプロピルジメチルチオカルバミルテトラスルフィド、およびγ−トリメトキシシリルプロピルベンゾチアジルテトラスルフィドなどを挙げることができる。これらのシランカップリング剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。シランカップリング剤の配合量は、シリカ100重量部に対して、好ましくは0.1〜30重量部、より好ましくは1〜15重量部である。
【0080】
また、本発明のゴム組成物には、さらに、ファーネスブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、チャンネルブラック、およびグラファイトなどのカーボンブラックを配合してもよい。これらのなかでも、ファーネスブラックが好ましい。これらのカーボンブラックは、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。カーボンブラックの配合量は、ゴム組成物中のゴム成分100重量部に対して、通常、120重量部以下である。
【0081】
なお、本発明の変性共役ジエン系ゴムを含むゴム成分に、シリカを添加する方法としては特に限定されず、固形のゴム成分に対して添加して混練する方法(乾式混練法)や変性共役ジエン系ゴムを含む溶液に対して添加して凝固・乾燥させる方法(湿式混練法)などを適用することができる。
【0082】
また、本発明のゴム組成物は、架橋剤をさらに含有していることが好ましい。架橋剤としては、例えば、硫黄、ハロゲン化硫黄などの含硫黄化合物、有機過酸化物、キノンジオキシム類、有機多価アミン化合物、メチロール基を有するアルキルフェノール樹脂などが挙げられる。これらの中でも、硫黄が好ましく使用される。架橋剤の配合量は、ゴム組成物中のゴム成分100重量部に対して、好ましくは0.1〜15重量部、より好ましくは0.5〜5重量部、特に好ましくは1〜4重量部である。
【0083】
さらに、本発明のゴム組成物には、上記成分以外に、常法に従って、架橋促進剤、架橋活性化剤、老化防止剤、充填剤(上記シリカおよびカーボンブラックを除く)、活性剤、プロセス油、可塑剤、滑剤、粘着付与剤などの配合剤をそれぞれ必要量配合できる。
【0084】
架橋剤として、硫黄または含硫黄化合物を用いる場合には、架橋促進剤および架橋活性化剤を併用することが好ましい。架橋促進剤としては、例えば、スルフェンアミド系架橋促進剤;グアニジン系架橋促進剤;チオウレア系架橋促進剤;チアゾール系架橋促進剤;チウラム系架橋促進剤;ジチオカルバミン酸系架橋促進剤;キサントゲン酸系架橋促進剤;などが挙げられる。これらのなかでも、スルフェンアミド系架橋促進剤を含むものが好ましい。これらの架橋促進剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。架橋促進剤の配合量は、ゴム組成物中のゴム成分100重量部に対して、好ましくは0.1〜15重量部、より好ましくは0.5〜5重量部、特に好ましくは1〜4重量部である。
【0085】
架橋活性化剤としては、例えば、ステアリン酸などの高級脂肪酸;酸化亜鉛;などを挙げることができる。これらの架橋活性化剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。架橋活性化剤の配合量は、ゴム組成物中のゴム成分100重量部に対して、好ましくは0.05〜20重量部、特に好ましくは0.5〜15重量部である。
【0086】
また、本発明のゴム組成物には、上述した本発明の製造方法によって得られる変性共役ジエン系ゴム以外のその他のゴムを配合してもよい。その他のゴムとしては、例えば、天然ゴム、ポリイソプレンゴム、乳化重合スチレン−ブタジエン共重合ゴム、溶液重合スチレン−ブタジエン共重合ゴム、ポリブタジエンゴム(1,2−ポリブタジエン重合体からなる結晶繊維を含むポリブタジエンゴムであってもよい)、スチレン−イソプレン共重合ゴム、ブタジエン−イソプレン共重合ゴム、スチレン−イソプレン−ブタジエン共重合ゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム、アクリロニトリル−スチレン−ブタジエン共重合ゴムなどが挙げられる。これらのなかでも、天然ゴム、ポリイソプレンゴム、ポリブタジエンゴム、溶液重合スチレン−ブタジエン共重合ゴムが好ましい。これらのゴムは、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0087】
本発明のゴム組成物において、本発明の製造方法により得られる変性共役ジエン系ゴムは、ゴム組成物中のゴム成分の10〜100重量%を占めることが好ましく、40〜100重量%を占めることが特に好ましい。このような割合で、本発明の製造方法により得られる変性共役ジエン系ゴムをゴム成分中に含めることにより、引張強度、破断伸び、低発熱性、およびウエットグリップ性に優れたゴム架橋物を得ることができる。
【0088】
本発明のゴム組成物を得るためには、常法に従って各成分を混練すればよく、例えば、架橋剤や架橋促進剤などの熱に不安定な成分を除く成分と変性共役ジエン系ゴムとを混練後、その混練物に架橋剤や架橋促進剤などの熱に不安定な成分を混合して目的の組成物を得ることができる。熱に不安定な成分を除く成分と変性共役ジエン系ゴムとの混練温度は、好ましくは80〜200℃、より好ましくは100〜180℃であり、その混練時間は、好ましくは30秒〜30分である。また、その混練物と熱に不安定な成分との混合は、通常100℃以下、好ましくは80℃以下まで冷却した後に行われる。
【0089】
<ゴム架橋物>
本発明のゴム架橋物は、上述した本発明のゴム組成物を架橋してなるものである。
本発明のゴム架橋物は、本発明のゴム組成物を用い、たとえば、所望の形状に対応した成形機、たとえば、押出機、射出成形機、圧縮機、ロールなどにより成形を行い、加熱することにより架橋反応を行い、架橋物として形状を固定化することにより製造することができる。この場合においては、予め成形した後に架橋しても、成形と同時に架橋を行ってもよい。成形温度は、通常、10〜200℃、好ましくは25〜120℃である。架橋温度は、通常、100〜200℃、好ましくは130〜190℃であり、架橋時間は、通常、1分〜24時間、好ましくは2分〜12時間、特に好ましくは3分〜6時間である。
【0090】
また、ゴム架橋物の形状、大きさなどによっては、表面が架橋していても内部まで十分に架橋していない場合があるので、さらに加熱して二次架橋を行ってもよい。
【0091】
加熱方法としては、プレス加熱、スチーム加熱、オーブン加熱、熱風加熱などのゴムの架橋に用いられる一般的な方法を適宜選択すればよい。
【0092】
このようにして得られる本発明のゴム架橋物は、上述した本発明の製造方法により得られる変性共役ジエン系ゴムを用いて得られるものであるため、引張強度、破断伸び、低発熱性、およびウエットグリップ性に優れるものである。特に、本発明の製造方法により得られる変性共役ジエン系ゴムは、活性末端を変性するに先立って、活性制御剤を反応させることにより、活性末端の活性を低下させ、これに続いて、アルコキシ基およびハロゲン原子含有基を有する変性剤を反応させるものであるため、変性剤の添加によるゲル化の発生が有効に抑えられており、そのため、変性共役ジエン系ゴムに、充填剤としてのシリカを配合した際に、ゲル分の影響により、シリカの分散性が低下することがなく、したがって、このような本発明の製造方法により得られる変性共役ジエン系ゴムを用いて得られる、本発明のゴム架橋物は、充填剤としてのシリカが良好に分散したものとなり、結果として、引張強度、破断伸び、低発熱性、およびウエットグリップ性に特に優れたものとなる。
【0093】
そして、本発明のゴム架橋物は、このような特性を活かし、例えば、タイヤにおいて、キャップトレッド、ベーストレッド、カーカス、サイドウォール、ビード部などのタイヤ各部位の材料;ホース、ベルト、マット、防振ゴム、その他の各種工業用品の材料;樹脂の耐衝撃性改良剤;樹脂フィルム緩衝剤;靴底;ゴム靴;ゴルフボール;玩具;などの各種用途に用いることができる。とりわけ、本発明のゴム架橋物は、引張強度、破断伸び、低発熱性、およびウエットグリップ性に優れることから、タイヤの材料、特に低燃費タイヤの材料として好適に用いることができる。
【実施例】
【0094】
以下、本発明を、さらに詳細な実施例に基づき説明するが、本発明は、これら実施例に限定されない。なお、以下において、「%」は、特に断りのない限り重量基準である。また、試験および評価は下記に従った。
【0095】
〔ゴムの分子量〕
ゴムの分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィによりポリスチレン換算分子量として求めた。具体的な測定条件は、以下のとおりとした。
測定器:高速液体クロマトグラフ(東ソー社製、商品名「HLC−8220」)
カラム:東ソー社製、商品名「GMH−HR−H」を二本直列に連結したものを用いた。
検出器:示差屈折計(東ソー社製、商品名「RI−8220」)
溶離液:テトラヒドロフラン
カラム温度:40℃
【0096】
〔ゴムの分岐度〕
ゴムの分岐度は、多角度光散乱光度計により測定した。具体的な測定条件は、以下のとおりとした。
ポンプ:Waters社製、商品名「MODEL515」
カラム:東ソー社製、商品名「GMH−HR−M」を三本直列に連結したものを用いた。
検出器:示差屈折計(Waters社製、商品名「RI−2414」)
検出器:多角度光散乱光度計(Wyatt Technology社製、商品名「DAWN EOS」)
溶離液:テトラヒドロフラン
カラム温度:23℃
【0097】
〔ゴムのミクロ構造、ゴムの変性〕
1H−NMRにより測定した。
測定器:(JEOL社製、商品名「JNM−ECA−400WB」
測定溶媒:重クロロホルム
【0098】
〔開始剤のリチオ化〕
GC−MSにより測定した。
GC:(アジレント・テクノロジー社製、商品名「Agilent GC 6890NGC」)
MS:(アジレント・テクノロジー社製、商品名「Agilent MS 5973MSD」)
カラム:(アジレント・テクノロジー社製、商品名「DB1701」)
【0099】
〔ゲル重量分率〕
#100メッシュカゴにゴム(重量:Wa[g])を1mm角程度に裁断して入れ、トルエン中に室温(25℃)で24時間保管し、引き上げた。次いで、#100メッシュカゴに残ったゴムを真空乾燥して乾燥後の重量(Wb[g])を秤量した。そして、これらの秤量値から、ゲル重量分率を、トルエン不溶分=(Wb/Wa)×100(%)により求めた。なお、ゲル重量分率が低いほど、加工性に優れるものと判断することができる。
【0100】
〔ウエットグリップ性〕
ウエットグリップ性については、長さ50mm、幅12.7mm、厚さ2mmの試験片について、粘弾性測定装置(レオメトリックス社製、製品名「ARES」)を用い、動的歪み0.5%、周波数10Hzの条件で0℃におけるtanδを測定した。この特性については、比較例1の測定値を100とする指数で示した。この指数が大きいものほど、ウエットグリップ性に優れる。
【0101】
〔低発熱性〕
低発熱性については、長さ50mm、幅12.7mm、厚さ2mmの試験片について、粘弾性測定装置(レオメトリックス社製、製品名「ARES」)を用い、動的歪み2.5%、周波数10Hzの条件で60℃におけるtanδを測定した。この特性については、比較例1の測定値を100とする指数で示した。この指数が小さいものほど、低発熱性に優れる。
【0102】
〔引張強度、破断伸び〕
JISK6251に従って、ダンベル状3号形試験片を用いて引張試験を行ない、引張強度、破断伸びを測定した。この特性については、比較例1の測定値を100とする指数で示した。この指数が大きいものほど、引張強度、および破断伸びに優れる。
【0103】
〔製造例1:重合開始剤1の製造(1,3,5−トリメチルベンゼンのリチオ化)〕
窒素雰囲気下、ガラス反応容器に、シクロヘキサン16部、1,3,5−トリメチルベンゼン0.841部、およびテトラメチルエチレンジアミン0.813部を加えた。次に攪拌しながら、n−ブチルリチウム1.345部(n−ブチルリチウム1モル当たり前記テトラメチルエチレンジアミン0.3モルとなる)を加え、反応温度60℃にて2日間静置ことで反応させ、重合開始剤1の溶液(リチオ化された1,3,5−トリメチルベンゼン)18.999部を得た。次に、反応により得られたリチオ化された1,3,5−トリメチルベンゼンのリチオ化率を測定する目的で、トリメチルシリルクロライドを過剰量加えたガラス容器に、得られた反応液を数滴加え、30分間反応させた。水道水にて触媒残渣を抽出洗浄した後に溶媒を留去することで、黄色いオイル状の液体を得た。
【0104】
そして、この黄色いオイル状の液体につき、ガスクロマトグラフ質量分析測定(GC−MS)を行った。結果は以下の通りであった。
EI−MS,m/z=120(M+)(3%),m/z=192(M+)(3%),m/z=264(M+)(24%),m/z=336(M+)(70%)。Mw=120(3%)、Mw=192(3%)、Mw=264(24%)、Mw=336(70%)。
【0105】
次に、この黄色いオイル状の液体につき
1H−NMR測定を行った。結果は以下の通りであった。
1H-NMR(CDCl
3) 6.83(s,3H,Ph−H),6.73(s,1H,Ph−H),6.64(s,2H,Ph−H),6.55(s,2H,Ph−H),6.47(s,1H,Ph−H),6.39(s,3H,Ph−H),2.30(s,9H,Ph−CH
3),2.28(s,6H,Ph−CH
3),2.02(s,2H,Ph−CH
2−SiMe
3),2.26(s,3H,Ph−CH
3),2.00(s,4H,Ph−CH
2−SiMe
3),1.98(s,6H,Ph−CH
2−SiMe
3)。
【0106】
さらに、
1H−detected multi−bond heteronuclear multiple quantum coherence spectrum−NMR(HMBC−NMR)測定により、
1H-NMRにおけるそれぞれのシグナルについて帰属を行った。結果は以下の通りであった。
無置換体(1,3,5−トリメチルベンゼン)
1H-NMR(CDCl
3):6.83(s,3H,Ph−H),2.30(s,9H,Ph−CH
3)、1置換体(1−トリメチルシリルメチル−3,5−ジメチルベンゼン)
1H-NMR(CDCl
3):6.73(s,1H,Ph−H),6.64(s,2H,Ph−H),2.28(s,6H,Ph−CH
3),2.02(s,2H,Ph−CH
2−SiMe
3)、2置換体(1,3−ビス(トリメチルシリルメチル)−5−メチルベンゼン)
1H-NMR(CDCl
3):6.55(s,2H,Ph−H),6.47(s,1H,Ph−H),2.26(s,3H,Ph−CH
3),2.00(s,4H,Ph−CH
2−SiMe
3)、3置換体(1,3,5−トリス(トリメチルシリルメチル)ベンゼン)
1H-NMR(CDCl
3):6.39(s,3H,Ph−H),1.98(s,6H,Ph−CH
2−SiMe
3)
【0107】
以上の
1H−NMR,HMBC−NMR測定による帰属に基づいて、GC−MSで得られた分子イオンピークを以下のように帰属した。EI−MS,m/z=120(M+)は無置換体(1,3,5−トリメチルベンゼン),m/z=192(M+)は1置換体(1−トリメチルシリルメチル−3,5−ジメチルベンゼン),m/z=264(M+)は2置換体(1,3−ビス(トリメチルシリルメチル)−5−メチルベンゼン),m/z=336(M+)は3置換体(1,3,5−トリス(トリメチルシリルメチル)ベンゼン)。以上より、無置換体:1置換体:2置換体:3置換体の割合(モル比)は、3:3:27:67と求められ、1,3,5−トリメチルベンゼンのメチル基のリチオ化率は87%であり、1,3,5−トリメチルベンゼン1分子に導入された平均リチウム原子数は2.44である。
【0108】
〔実施例1〕
〔変性スチレンブタジエンゴム1の製造〕
窒素雰囲気下、オートクレーブに、シクロヘキサン800部、1,3−ブタジエン94.8部、スチレン25.2部、およびテトラメチルエチレンジアミン0.185部を仕込んだ後、製造例1で得られた重合開始剤1の溶液(リチオ化された1,3,5−トリメチルベンゼン)0.812部を添加し(反応系中に存在するテトラメチルエチレンジアミンの量は、1,3,5−トリメチルベンゼンのリチオ化に用いたn−ブチルリチウム1モル当たり2.0モルである)、60℃で重合を開始した。60分間重合反応を継続し、重合転化率が95%から100%の範囲になったことを確認してから、酸化プロピレン(活性制御剤)0.051部を添加し、15分間反応させた。さらに、クロロメチルトリイソプロポキシシラン(変性剤)0.306部を添加し、30分間反応させた後、重合停止剤としてメタノール0.064部を添加して重合体を含有する溶液を得た。
【0109】
そして、得られた重合体100部に対して、老化防止剤として2,4−ビス[(オクチルチオ)メチル]−o−クレゾール(チバスペシャルティケミカルズ社製、商品名「イルガノックス1520」)0.15部を、重合体を含有する溶液に添加した後、スチームストリッピングにより、溶媒を除去し、60℃で24時間真空乾燥して、固形状の変性スチレンブタジエンゴム1を得た。
【0110】
得られた変性スチレンブタジエンゴム1は、GPC測定において、Mnが172,000、Mwが222,000、分子量分布(Mw/Mn)が1.29の溶出成分(ピーク面積比22.0%)、Mnが396,000、Mwが400,000、分子量分布(Mw/Mn)が1.01の溶出成分(ピーク面積比38.5%)、およびMnが748,000、Mwが785,000、分子量分布(Mw/Mn)が1.05の溶出成分(ピーク面積比39.5%)からなるものであり、全体としてMnが428,000、Mwが599,000、分子量分布(Mw/Mn)が1.40のものであった。また、多角度光散乱測定により、高分子側のピークの分岐度が高い事が確認された。さらに、この変性スチレンブタジエンゴム1のスチレン含有量は21.7モル%、ブタジエン単位中のビニル結合含有量は59.8モル%であった。また、この変性スチレンブタジエンゴム1について、
1H-NMRを測定したところ、メチルトリイソプロポキシシラン基が導入されていることが確認された。この変性スチレンブタジエンゴム1について、上記した方法にしたがい、ゲル重量分率を測定した。結果を表1に示す。
【0111】
〔ゴム組成物の調製〕
次に、容量250mlのブラベンダータイプミキサー中で、上記にて得られた変性スチレンブタジエンゴム1 100部を30秒素練りし、次いでシリカ(ローディア社製、商品名「Zeosil1165MP」)50部、プロセスオイル(新日本石油社製、商品名「アロマックス T−DAE」)25部、およびシランカップリング剤:ビス(3−(トリエトキシシリル)プロピル)テトラスルフィド(デグッサ社製、商品名「Si69」)5.6部を添加して、110℃を開始温度として1.5分間混練後、シリカ(ローディア社製、商品名「Zeosil1165MP」)20部、酸化亜鉛3部、ステアリン酸2部および老化防止剤としてのN−フェニル−N’−(1,3−ジメチルブチル)−p−フェニレンジアン(大内新興化学工業社製、商品名「ノクラック6C」)2部を添加し、さらに2.5分間混練し、ミキサーから混練物を排出させた。混練終了時の混練物の温度は150℃であった。そして、混練物を、室温まで冷却した後、再度ブラベンダータイプミキサー中で、110℃を開始温度として2分間混練した後、ミキサーから混練物を排出させた。次いで、50℃のオープンロールで、得られた混練物と、硫黄1.5部、架橋促進剤としてのN−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(大内新興化学工業社製、商品名「ノクセラーCZ−G」)1.8部、および同じく架橋促進剤としてのジフェニルグアニジン(大内新興化学工業社製、商品名「ノクセラーD」)1.5部を混練した後、シート状のゴム組成物を取り出した。そして、得られたゴム組成物を、160℃で20分間プレス架橋することで、ゴム架橋物を得て、得られたゴム架橋物(試験片)について、ウエットグリップ性、低発熱性、引張強度および破断伸びの評価を行なった。結果を表1に示す。なお、表1中においては、ウエットグリップ性、低発熱性、引張強度および破断伸びの評価結果は、後述する比較例1の結果を、それぞれ100とした場合における比率で示した。
【0112】
〔実施例2〕
〔変性スチレンブタジエンゴム2の製造〕
変性剤として、クロロメチルトリイソプロポキシシラン0.306部の代わりに、クロロメチルイソプロポキシジメチルシラン0.200部を使用した以外は、実施例1と同様にして、変性スチレンブタジエンゴム2の製造を行った。得られた変性スチレンブタジエンゴム2は、GPC測定において、Mnが151,000、Mwが192,000、分子量分布(Mw/Mn)が1.27の溶出成分(ピーク面積比14.4%)、Mnが361,000、Mwが374,000、分子量分布(Mw/Mn)が1.03の溶出成分(ピーク面積比17.3%)、およびMnが742,000、Mwが753,000、分子量分布(Mw/Mn)が1.01の溶出成分(ピーク面積比68.3%)からなるものであり、全体としてMnが444,000、Mwが641,000、分子量分布(Mw/Mn)が1.44のものであった。また、多角度光散乱測定により、高分子側のピークの分岐度が高い事が確認された。また、この変性スチレンブタジエンゴム2のスチレン含有量は22.4モル%、ブタジエン単位中のビニル結合含有量は60.1モル%であった。さらに、この変性スチレンブタジエンゴム2について、
1H-NMRを測定したところ、メチルイソプロポキシジメチルシラン基が導入されていることが確認された。この変性スチレンブタジエンゴム2について、上記した方法にしたがい、ゲル重量分率を測定した。結果を表1に示す。
【0113】
次いで、変性スチレンブタジエンゴム1の代わりに、上記にて得られた変性スチレンブタジエンゴム2を使用した以外は、実施例1と同様にして、ゴム組成物およびゴム架橋物を得て、実施例1と同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0114】
〔実施例3〕
変性剤として、クロロメチルトリイソプロポキシシラン0.306部の代わりに、クロロメチルトリエトキシシラン0.255部を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、変性スチレンブタジエンゴム3の製造を行った。得られた変性スチレンブタジエンゴム3は、GPC測定において、Mnが158,000、Mwが210,000、分子量分布(Mw/Mn)が1.33の溶出成分(ピーク面積比14.1%)、Mnが394,000、Mwが398,000、分子量分布(Mw/Mn)が1.01の溶出成分(ピーク面積比15.9%)、およびMnが738,000、Mwが783,000、分子量分布(Mw/Mn)が1.06の溶出成分(ピーク面積比70.0%)からなるものであり、全体としてMnが432,000、Mwが619,000、分子量分布(Mw/Mn)が1.43のものであった。また、多角度光散乱測定により、高分子側のピークの分岐度が高い事が確認された。また、この変性スチレンブタジエンゴム3のスチレン含有量は21.5モル%、ブタジエン単位中のビニル結合含有量は60.3モル%であった。さらに、この変性スチレンブタジエンゴム3について、
1H-NMRを測定したところ、メチルトリエトキシシラン基が導入されていることが確認された。この変性スチレンブタジエンゴム3について、上記した方法にしたがい、ゲル重量分率を測定した。結果を表1に示す。
【0115】
次いで、変性スチレンブタジエンゴム1の代わりに、上記にて得られた変性スチレンブタジエンゴム3を使用した以外は、実施例1と同様にして、ゴム組成物およびゴム架橋物を得て、実施例1と同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0116】
〔比較例1〕
活性制御剤としての酸化プロピレンによる反応を行わなかった点、および、変性剤として、クロロメチルトリイソプロポキシシラン0.306部の代わりに、下記式(12)で表されるポリオルガノシロキサン0.260部を濃度22%のキシレン溶液の状態で使用した点以外は、実施例1と同様にして、変性スチレンブタジエンゴム4の製造を行った。得られた変性スチレンブタジエンゴム4は、GPC測定において、Mnが166,000、Mwが207,000、分子量分布(Mw/Mn)が1.25の溶出成分(ピーク面積比15.5%)、Mnが377,000、Mwが381,000、分子量分布(Mw/Mn)が1.01の溶出成分(ピーク面積比14.3%)、およびMnが726,000、Mwが769,000、分子量分布(Mw/Mn)が1.06の溶出成分(ピーク面積比70.2%)からなるものであり、全体としてMnが438,000、Mwが626,000、分子量分布(Mw/Mn)が1.43のものであった。また、多角度光散乱測定により、高分子側のピークの分岐度が高い事が確認された。また、この変性スチレンブタジエンゴム4のスチレン含有量は21.5モル%、ブタジエン単位中のビニル結合含有量は59.6モル%であった。さらに、この変性スチレンブタジエンゴム4について、
1H-NMRを測定したところ、シロキサン基が導入されていることが確認された。この変性スチレンブタジエンゴム4について、上記した方法にしたがい、ゲル重量分率を測定した。結果を表1に示す。
【化14】
【0117】
次いで、変性スチレンブタジエンゴム1の代わりに、上記にて得られた変性スチレンブタジエンゴム4を使用した以外は、実施例1と同様にして、ゴム組成物およびゴム架橋物を得て、実施例1と同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0118】
〔比較例2〕
活性制御剤としての酸化プロピレンによる反応を行わなかったこと以外は、実施例1と同様にして、変性スチレンブタジエンゴム5の製造を行った。得られた変性スチレンブタジエンゴム5は、GPC測定において、Mnが175,000、Mwが219,000、分子量分布(Mw/Mn)が1.25の溶出成分(ピーク面積比14.2%)、Mnが390,000、Mwが394,000、分子量分布(Mw/Mn)が1.01の溶出成分(ピーク面積比8.4%)、Mnが773,000、Mwが818,000、分子量分布(Mw/Mn)が1.06の溶出成分(ピーク面積比51.6%)、およびMnが1,810,000、Mwが2,005,000、分子量分布(Mw/Mn)が1.11の溶出成分(ピーク面積比25.8%)からなるものであり、全体としてMnが545,000、Mwが1,004,000、分子量分布(Mw/Mn)が1.84のものであった。また、多角度光散乱測定により、高分子側のピークの分岐度が高い事が確認された。また、この変性スチレンブタジエンゴム5のスチレン含有量は21.9モル%、ブタジエン単位中のビニル結合含有量は62.0モル%であった。さらに、この変性スチレンブタジエンゴム5について、
1H-NMRを測定したところ、メチルトリイソプロポキシシラン基が導入されていることが確認された。この変性スチレンブタジエンゴム5について、上記した方法にしたがい、ゲル重量分率を測定した。結果を表1に示す。
【0119】
次いで、変性スチレンブタジエンゴム1の代わりに、上記にて得られた変性スチレンブタジエンゴム5を使用した以外は、実施例1と同様にして、ゴム組成物およびゴム架橋物を得て、実施例1と同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0120】
〔比較例3〕
窒素雰囲気下、オートクレーブに、シクロヘキサン800部、1,3−ブタジエン94.8部、スチレン25.2部、およびテトラメチルエチレンジアミン0.232部を仕込んだ後、n−ブチルリチウム0.051部を添加し、60℃で重合を開始した。60分間重合反応を継続し、重合転化率が95%から100%の範囲になったことを確認してから、酸化プロピレン(活性制御剤)0.051部を添加し、15分間反応させた。さらに、クロロメチルトリイソプロポキシシラン(変性剤)0.306部を添加し、30分間反応させた後、重合停止剤としてメタノール0.064部を添加して重合体を含有する溶液を得た。そして、重合体成分100部に対して、老化防止剤として2,4−ビス[(オクチルチオ)メチル]−o−クレゾール(チバスペシャルティケミカルズ社製、商品名「イルガノックス1520」)0.15部を溶液に添加した後、スチームストリッピングにより、溶媒を除去し、60℃で24時間真空乾燥して、固形状の変性スチレンブタジエンゴム6を得た。得られた変性スチレンブタジエンゴム6は、GPC測定において、Mnが209,000、Mwが215,000、分子量分布(Mw/Mn)が1.03のものであった。また、この変性スチレンブタジエンゴム6のスチレン含有量は21.4モル%、ブタジエン単位中のビニル結合含有量は59.9モル%であった。さらに、この変性スチレンブタジエンゴム6について、
1H-NMRを測定したところ、メチルトリイソプロポキシシラン基が導入されていることが確認された。この変性スチレンブタジエンゴム6について、上記した方法にしたがい、ゲル重量分率を測定した。結果を表1に示す。
【0121】
次いで、変性スチレンブタジエンゴム1の代わりに、上記にて得られた変性スチレンブタジエンゴム6を使用した以外は、実施例1と同様にして、ゴム組成物およびゴム架橋物を得て、実施例1と同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0122】
〔比較例4〕
変性剤として、クロロメチルトリイソプロポキシシラン0.306部の代わりに、トリメチルクロロシラン0.087部を使用した以外は、実施例1と同様にして、変性スチレンブタジエンゴム7の製造を行った。得られた変性スチレンブタジエンゴム7は、GPC測定において、Mnが169,000、Mwが210,000、分子量分布(Mw/Mn)が1.24の溶出成分(ピーク面積比16.2%)、Mnが376,000、Mwが380,000、分子量分布(Mw/Mn)が1.01の溶出成分(ピーク面積比11.8%)、およびMnが723,000、Mwが764,000、分子量分布(Mw/Mn)が1.06の溶出成分(ピーク面積比72.0%)からなるものであり、全体としてMnが440,000、Mwが629,000、分子量分布(Mw/Mn)が1.43のものであった。また、多角度光散乱測定により、高分子側のピークの分岐度が高い事が確認された。また、この変性スチレンブタジエンゴム7のスチレン含有量は22.3モル%、ブタジエン単位中のビニル結合含有量は60.0モル%であった。さらに、この変性スチレンブタジエンゴム7について、
1H-NMRを測定したところ、トリメチルシラン基が導入されていることが確認された。この変性スチレンブタジエンゴム7について、上記した方法にしたがい、ゲル重量分率を測定した。結果を表1に示す。
【0123】
次いで、変性スチレンブタジエンゴム1の代わりに、上記にて得られた変性スチレンブタジエンゴム7を使用した以外は、実施例1と同様にして、ゴム組成物およびゴム架橋物を得て、実施例1と同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0124】
〔比較例5〕
活性制御剤としての酸化プロピレンによる反応を行わなかった点、および、変性剤として、クロロメチルトリイソプロポキシシラン0.306部の代わりに、トリス(ジメチルアミノ)クロロシラン0.157部を使用した点以外は、実施例1と同様にして、変性スチレンブタジエンゴム8の製造を行った。得られた変性スチレンブタジエンゴム8は、GPC測定において、Mnが164,000、Mwが207,000、分子量分布(Mw/Mn)が1.27の溶出成分(ピーク面積比15.2%)、Mnが381,000、Mwが386,000、分子量分布(Mw/Mn)が1.01の溶出成分(ピーク面積比14.6%)、およびMnが741,000、Mwが784,000、分子量分布(Mw/Mn)が1.06の溶出成分(ピーク面積比70.2%)からなるものであり、全体としてMnが443,000、Mwが638,000、分子量分布(Mw/Mn)が1.44のものであった。また、多角度光散乱測定により、高分子側のピークの分岐度が高い事が確認された。また、この変性スチレンブタジエンゴム8のスチレン含有量は22.3モル%、ブタジエン単位中のビニル結合含有量は60.0モル%であった。さらに、この変性スチレンブタジエンゴム8について、
1H-NMRを測定したところ、トリス(ジメチルアミノ)シラン基が導入されていることが確認された。この変性スチレンブタジエンゴム8について、上記した方法にしたがい、ゲル重量分率を測定した。結果を表1に示す。
【0125】
次いで、変性スチレンブタジエンゴム1の代わりに、上記にて得られた変性スチレンブタジエンゴム8を使用した以外は、実施例1と同様にして、ゴム組成物およびゴム架橋物を得て、実施例1と同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0126】
【表1】
【0127】
表1より、重合開始剤として、芳香環に直接結合した炭素原子を1分子中に3個以上有する芳香族化合物に、アルカリ金属原子を反応させてアルカリ金属化芳香族化合物を用い、かつ、活性末端を変性するに先立って、活性制御剤を反応させ、これに続いて、アルコキシ基およびハロゲン原子含有基を有する変性剤を反応させた場合には、得られる変性共役ジエン系ゴムは、ゲル分が実質的に含有されておらず、しかも、これを用いて得られるゴム架橋物は、引張強度、破断伸び、低発熱性、およびウエットグリップ性に優れるものであった(実施例1〜3)。
【0128】
これに対し、活性制御剤を反応させなかった場合には、得られる変性共役ジエン系ゴムは、ゲル分を多く含むものとなり、加工性に劣り、さらには、ゴム架橋物とした場合に、引張強度および破断伸びに劣る結果となった(比較例1,2)。
重合開始剤として、n−ブチルリチウムを用いた場合には、得られるゴム架橋物は、引張強度、破断伸び、低発熱性、およびウエットグリップ性のいずれにも劣るものであった(比較例3)。
また、活性末端を変性するに変性するに先立って、活性制御剤を反応させたものの、アルコキシ基を含有しない変性剤を用いて変性を行った場合には、得られるゴム架橋物は、引張強度、破断伸び、およびウエットグリップ性に劣るものであった(比較例4)。
さらに、変性剤として、アミノ基を含有する変性剤を用いて変性を行った場合には、得られるゴム架橋物は、ウエットグリップ性が充分でなく、さらには、引張強度、および破断伸びに劣るものであった(比較例5)。