【実施例】
【0057】
以下、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。なお、実施例及び比較例において特に断りがない場合は、「部」及び「%」は質量基準である。
【0058】
[合成例]
【0059】
合成例1
フラスコ中に濃硫酸55gを仕込み、氷冷下に攪拌しながら文献(Polymer, volume39, No.20(1998), p4949)記載の方法で得られる6,6' −メチレンジキナルジン7.0g(23.5mmol)を添加した。10℃以下を保ちながら60%硝酸6.1gを滴下し、10℃から20℃で1時間攪拌を続けた。反応液を氷水150mlに注ぎ、20wt%水酸化ナトリウム水溶液を用いてpH3に調整した。析出した粉末を減圧ろ過で回収し、水で中性まで洗浄した。得られた固体を70℃で送風乾燥した後、粗生成物を熱酢酸エチル100ml、次いで熱トルエン60mlで洗浄ろ過して不純物を除き、中間体(A)6.52g(16.8mmol)を得た。(収率:72%)
1H-NMR (DMSO-d6) δppm: 2.70 (s, 6H), 4.42 (s, 2H), 7.58 (d, J = 8.8 Hz, 2H), 7.63 (d, J=8.8Hz, 2H), 8.09 (d, J = 8.8 Hz, 2H), 8.13 (d, J=8.8Hz, 2H)
13C-NMR (DMSO-d6) δppm: 24.5, 32.0, 117.7, 124.8, 127.5, 129.8, 130.5, 131.9, 145.8, 146.2, 160.7
FT-IR (KBr disk) cm
-1: 3048, 1602, 1520, 1494, 1363
【0060】
合成例2
フラスコ中に還元鉄5.30g、酢酸135mlを仕込み攪拌しながら50℃に加熱した。次いで合成例1で得た化合物(A)4.50g(11.6mmol)を70℃以下に保つように添加した。添加終了後60℃で1hr攪拌を続けた後、反応液を35℃以下に冷却し、氷水500mlに注ぎ、20%NaOH水でpH9に調製した。生成した沈殿をセライト上で減圧ろ過した。固形物を回収し、70℃で送風乾燥後、ジメチルスルホキシド(DMSO)100mlとN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)100mlの混合溶媒に加え、90℃で1hr攪拌した。混合物をセライト上で減圧ろ過し、得られたろ液を水1Lに攪拌しながら加えた。生成した沈殿を減圧濾過で回収し、水洗して中間体(B)3.80g(11.6mmol)を得た。(収率100%)
1H-NMR (DMSO-d6) δppm: 2.57 (s, 6H), 3.95 (s, 2H), 5.66 (s, 4H), 7.06 (d, J=8.2Hz, 2H), 7.16 (d, J=8.2Hz, 2H), 7.23 (d, J=8.2Hz, 2H), 8.49 (d, J=8.2Hz, 2H)
13C-NMR (DMSO-d6) δppm: 24.6, 32.1, 115.8, 116.2, 119.5, 130.9, 131.8, 141.5, 147.4, 157.0
FT-IR (KBr disk) cm
-1: 3464, 3363, 3315, 3192, 1640, 1591, 1573, 1415, 1365, 801
【0061】
合成例3
窒素雰囲気下、フラスコ中に安息香酸135gを量りとり、140℃にて溶融させた。そこに、合成例2で得た中間体(B) 3.80g(11.6mmol)とテトラクロロフタル酸無水物17.99g(62.9mmol)、無水塩化亜鉛0.49g(3.6mmol)を加え、220℃にて6時間攪拌した。反応混合物を120℃に冷却後、クロロベンゼン300mLを加えて1時間攪拌し、減圧ろ過にて黄色粉末であるキノフタロン化合物(C)を10.5g(7.5mmol)得た。(収率:65%)
FT-IR cm
-1: 1788, 1729, 1688, 1638, 1607, 1537, 1420, 1310, 732
FD-MS: 1400 M+
【0062】
合成例4
合成例3においてテトラクロロフタル酸無水物に代えて4,5−ジクロロフタル酸無水物を使用して黄色粉末であるキノフタロン化合物(D)を得た。(収率80%)
FT-IR cm
-1: 1790, 1728, 1685, 1634, 1582, 1548, 1417, 1343, 1312, 768, 740
FD-MS: 1124 M+
【0063】
合成例5
合成例3においてテトラクロロフタル酸無水物に代えてテトラブロモフタル酸無水物を使用して黄色粉末であるキノフタロン化合物(E)を得た。(収率85%)
FT-IR cm
-1: 1730, 1685, 1633, 1604, 1530, 1417, 1335, 1114, 661
FD-MS: 2111 M+
【0064】
合成例6
合成例3においてテトラクロロフタル酸無水物に代えてテトラフルオロフタル酸無水物を使用して黄色粉末であるキノフタロン化合物(F)を得た。(収率70%)
1H-NMR (DMSO-d6) δppm: 4.15 (s, 2H), 7.51 (d, j=8.8Hz, 2H), 8.21 (d, j=8.8Hz, 2H), 8.46 (d, j=9.6Hz, 2H), 8.59 (d, j=9.6Hz, 2H), 13.80 (s, 2H)
FT-IR cm
-1: 1734, 1633, 1614, 1494, 1387, 1091, 949
FD-MS: 1136 M+
【0065】
顔料化
前記合成例で得たキノフタロン化合物 0.500質量部を塩化ナトリウム1.50質量部、ジエチレングリコール0.750質量部とともに磨砕した。その後、この混合物を600質量部の温水に投じ、1時間攪拌した。水不溶分をろ過分離して温水でよく洗浄した後、90℃で送風乾燥して顔料化を行った。顔料の粒子系は、100nm以下、粒子の平均長さ/幅比は3.00未満であった。得られたキノフタロン化合物の黄色顔料を用いて以下の分散試験及びカラーフィルタ評価試験を行った。
【0066】
製造例1
キノフタロン化合物(C)0.700質量部をガラス瓶に入れ、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート6.60質量部、DISPERBYK(登録商標名)LPN−21116(ビックケミー株式会社製)1.40質量部、0.3−0.4mmφセプルビーズ22.0質量部を加え、ペイントコンディショナー(東洋精機株式会社製)で2時間分散した。得られた分散液にプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート6.00質量部を添加して更に0.5時間ペイントコンディショナーで分散して顔料分散体を得た。得られた顔料分散体4.00質量部、DIC株式会社製アクリル樹脂溶液ユニディック(登録商標名)ZL−295 0.60質量部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート0.22質量部をガラス瓶に入れ、振とうさせることで黄色調色用組成物を作製した。
【0067】
製造例2
製造例1においてキノフタロン化合物(C)に代えて合成例4で得たキノフタロン化合物(D)を用いた以外は同様の方法でスピンコート塗液を作製した。
【0068】
製造例3
C.I.ピグメント グリーン59(DIC株式会社製)2.48質量部をガラス瓶に入れ、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート10.9量部、DISPERBYK(登録商標名)LPN−6919(ビックケミー株式会社製)1.24質量部、DIC株式会社製アクリル樹脂溶液ユニディック(登録商標名)ZL−295 1.86質量部、0.3−0.4mmφセプルビーズを加え、ペイントコンディショナー(東洋精機株式会社製)で2時間分散し、顔料分散体を得た。さらに、得られた顔料分散体4.00質量部、DIC株式会社製アクリル樹脂溶液ユニディック(登録商標名)ZL−295 0.980質量部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート0.220質量部をガラス瓶に入れ、振とうさせることで緑色調色用組成物を作製した。
【0069】
実施例1
製造例1で得られた黄色調色用組成物と製造例3で得られた緑色調色用組成物を混合し、スピンコーターによりガラス基板上に塗布後、乾燥させた。得られた評価用ガラス基板を230℃で1時間加熱した後に、高色再現用色規格におけるC光源を用いた場合の各緑色色度を示す緑色カラーフィルタを作製した。なお、緑色色度としては、特開2013−205581で使用されている(0.210,0.710)、及び特開2011−242425で使用されている(0.230,0.670)を用いた。
【0070】
実施例2
実施例1において、黄色調色用組成物として製造例1で得られた組成物に代えて、製造例2で得られた組成物を用いた以外は同様の方法で緑色カラーフィルタを作製した。
【0071】
製造例4
C.I.ピグメント イエロー138(BASF社製)0.70質量部をガラス瓶に入れ、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート6.42質量部、DISPERBYK(商標名)LPN−6919(ビックケミー株式会社社製)0.467質量部、DIC(株)製アクリル樹脂溶液ユニディック(登録商標)ZL−295 0.700質量部、0.3−0.4 mmφセプルビーズ22.0質量部を加え、ペイントコンディショナー(東洋精機株式会社製)で4時間分散し、顔料分散体を得た。さらに、得られた顔料分散体4.00質量部、DIC(株)製アクリル樹脂溶液ユニディック(登録商標)ZL−295 1.00質量部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート0.220質量部をガラス瓶に入れ、スピンコート塗液を作製した。
【0072】
比較例1
実施例1において、黄色調色用組成物として製造例1で得られた組成物に代えて、製造例4で得られた組成物を用いた以外は同様の方法で緑色カラーフィルタを作製した。
【0073】
製造例5
C.I.ピグメント イエロー150(山陽色素社製)1.14質量部をポリ瓶に入れ、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート12.0質量部、DISPERBYK(登録商標名)LPN−21116(ビックケミー株式会社社製)2.84質量部、0.3−0.4mmφセプルビーズ38.0質量部を加え、ペイントコンディショナー(東洋精機株式会社製)で4時間分散し、顔料分散体を得た。さらに、得られた顔料分散体2.00質量部、DIC株式会社製アクリル樹脂溶液ユニディック(登録商標名)ZL−295 0.490質量部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート0.110質量部をガラス瓶に入れ、振とうさせることで黄色調色用組成物を作製した。
【0074】
比較例2
実施例1において、黄色調色用組成物として製造例1で得られた組成物に代えて、製造例5で得られた組成物を用いた以外は同様の方法で緑色カラーフィルタを作製した。
【0075】
製造例6
製造例4において、C.I.ピグメント イエロー138(BASF社製)に代えて、特開昭53−228に記載の方法で合成したキノフタロン化合物(6)を用いた以外は、同様の方法で黄色調色用組成物を作製した。
【0076】
【化10】
【0077】
比較例3
実施例1において、黄色調色用組成物として製造例1で得られた組成物に代えて、製造例6で得られた組成物を用いた以外は同様の方法で緑色カラーフィルタを作製した。
【0078】
カラーフィルタ試験例
・カラーフィルタ特性試験
それぞれ作製したカラーフィルタを用いて、分光光度計(HITACHI社製U3900/3900H形)によって色度ならびに透過スペクトルを、膜厚計(HITACHI社製 VS1000 走査型白色干渉顕微鏡)によって膜厚を(膜厚は薄いほど高着色力)、それぞれ測定した。結果を以下の表1および表2に示す。
【0079】
【表1】
【0080】
【表2】
【0081】
実施例1および実施例2は、現行の黄色顔料(C.I.ピグメント イエロー150)を用いた比較例2と比べ、良好な輝度を示し、膜厚が顕著に薄くなった。これは、本発明の黄色顔料が高色再現性規格において、高輝度・高着色力であり、カラーフィルタ用黄色顔料として好適であることを示している。
また、比較例3(キノフタロン化合物(6))との比較検討でも同様に、実施例1および実施例2の方がより高い輝度を示し、膜厚がより薄いことから、二量化によるカラーフィルタ特性の顕著な向上が確認された。キノフタロン化合物(6)は、特開昭53−228の実施例2として記載されている化合物である。
なお、比較例1(C.I.ピグメント イエロー138)は、輝度が低く、膜厚が非常に厚いため、実用レベルにない。このように、本発明化合物は、現行の代表的な黄色顔料を超える顕著な効果を有するものである。