特許第6607427号(P6607427)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6607427
(24)【登録日】2019年11月1日
(45)【発行日】2019年11月20日
(54)【発明の名称】キノフタロン化合物
(51)【国際特許分類】
   C09B 25/00 20060101AFI20191111BHJP
   C09B 67/20 20060101ALI20191111BHJP
   G02B 5/20 20060101ALI20191111BHJP
【FI】
   C09B25/00 BCSP
   C09B67/20 F
   G02B5/20 101
【請求項の数】3
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2019-545383(P2019-545383)
(86)(22)【出願日】2019年6月13日
(86)【国際出願番号】JP2019023445
【審査請求日】2019年8月20日
(31)【優先権主張番号】特願2018-133213(P2018-133213)
(32)【優先日】2018年7月13日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177471
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 眞治
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【弁理士】
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 孝幸
(74)【代理人】
【識別番号】100124143
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 嘉久
(72)【発明者】
【氏名】近藤 仁
(72)【発明者】
【氏名】重廣 龍矢
(72)【発明者】
【氏名】安井 健悟
【審査官】 西澤 龍彦
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/098836(WO,A1)
【文献】 特開昭53−124555(JP,A)
【文献】 特開昭53−000228(JP,A)
【文献】 特公昭48−032765(JP,B1)
【文献】 特開2008−074985(JP,A)
【文献】 特開2018−062578(JP,A)
【文献】 国際公開第2018/159372(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09B
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1):
【化1】
(式(1)中、X〜X16は各々独立に水素原子又はハロゲン原子である)で表されるキノフタロン化合物。
【請求項2】
請求項1に記載のキノフタロン化合物を含有する着色剤。
【請求項3】
請求項2に記載の着色剤を含有するカラーフィルタ用着色組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規キノフタロン化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1及び2には、一定の構造を有するビスキノフタロン化合物が開示されている。また、特許文献3には、一定の構造を有するキノフタロン化合物が開示されている。しかしながら、特許文献1、2及び3には、下記式(1)で表される本発明の化合物は開示されていない。
【0003】
【特許文献1】特公昭48−32765号公報
【特許文献2】国際公開2013/098836号パンフレット
【特許文献3】特開昭53−228号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
現在、着色組成物は様々な分野に用いられており、具体的な用途としては印刷インキ、塗料、樹脂用着色剤、繊維用着色剤、情報記録用色材(カラーフィルタ、トナー、インクジェットなどに用いる色材)などが挙げられる。着色組成物に用いられる色素は主に顔料と染料に大別され、それらに求められる性能としては、色特性(着色力、鮮明性)、耐性(耐候性、耐光性、耐熱性、耐溶剤性)などがある。通常、分子状態で発色する染料とは異なり、顔料は粒子状態(一次粒子の凝集体)からの発色となる。そのため、顔料は染料に比べ、一般的に耐性においては優位であるものの、着色力や鮮明性では劣っているものが多い。このような背景から高着色力・高彩度な顔料が求められている。その中でも、着色力の点において優勢とされている有機顔料にとりわけ注目が集まっている。
【0005】
それら有機顔料において、黄色顔料はカラーインデックスの登録数が赤色顔料に次いで多いなど、これまで多くの新規顔料が積極的に開発されてきた。実際に用いられている黄色有機顔料として、例えば、印刷インキ用途ではC.I.ピグメント イエロー3、同12、同74等が、塗料用途では同74、同83、同109、同110等が、カラーフィルタ用途では、同129、同138、同150、同185等が使用されている。しかし、それらの基本構造は主にアゾ、アゾメチン、イソインドリン、イソインドリノンなどである。よって、黄色有機顔料における構造バリエーションは要求される様々な用途に対応するのに未だ十分ではない。
【0006】
特に、液晶ディスプレイ用カラーフィルタ、あるいは、それらカラーフィルタに用いられる顔料には、従来の汎用用途とは異なる特性が求められている。具体的には、バックライトの消費電力を低減できる「高輝度」、さらに、カラーフィルタの薄膜化及び高色再現を可能とする「高着色力」等の要求がある。しかしながら、現行のカラーフィルタ用黄色顔料では、これら全ての要求に応える顔料が無いのが現状である。
ここで、カラーフィルタは、赤色画素部(R)、緑色画素部(G)及び青色画素部(B)からなり、黄色顔料は、緑色画素部の調色用として用いられる場合が多い。黄色顔料の中で、最も使用量が多いのはC.I.ピグメント イエロー138であるが、この同138は着色力に乏しく、高色再現性が求められる色規格では実用性がない。よって、高色再現性の色規格においては、C.I.ピグメント イエロー150が現行の黄色顔料として用いられているが、同150も輝度・着色力ともに十分であるとはいえない。そこで、優れた輝度と着色力を兼備する新規黄色顔料の創出が希求されている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、キノフタロン骨格を二量化することで、より選択的な吸収・透過を示すことを見出した。さらに、二量化手法にも検討を重ね、単純に直接結合を採用するのではなく、メチレン鎖をスペーサーとして用い、共役を切断することで、過剰な赤味化を抑制できることを見出した。加えて、ポリハロゲン化およびイミド構造を導入することで分散性を向上させた。
本発明者らは、このような検討結果に基づき下記式(1)で表される化合物が上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。即ち本発明は、下記式(1):
【0008】
【化1】
(式(1)中、X〜X16は各々独立に水素原子又はハロゲン原子である)で表されるキノフタロン化合物(以下、「本発明化合物」と表記する場合がある)に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明化合物は、優れた輝度と着色力を有する。特に、カラーフィルタ用途における高色再現用色規格において、本発明化合物は、現行の黄色顔料(C.I.ピグメント イエロー150)より良好な輝度を有し、かつ、これを超える優れた着色力を有する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
上記式(1)中のハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素の各原子が挙げられ、なかでも、フッ素原子、塩素原子又は臭素原子が好ましく、塩素原子がより好ましい。
【0011】
なお、上記式(1)で表されるキノフタロン化合物は、下記一般式(1−i)及び一般式(1−ii)等の構造の互変異性体が存在するが、これらについても本発明に包含されるものである。
【0012】
【化2】
【0013】
式(1−i)及び式(1−ii)中、X〜X16は上述の通りである。
【0014】
本発明のキノフタロン化合物の具体例を以下に挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0015】
【化3】

【0016】
このような本発明化合物の製造方法は、特に制限されるものではなく従来公知の方法を適宜利用して製造することができる。以下、本発明化合物の製造方法の一態様を記載する。しかしながら、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0017】
本発明化合物は、例えば以下の工程I、工程II、工程III及び工程IVを含む方法により得ることができる。
<工程I>
まず、J.Heterocyclic,Chem,30,17(1993)に記載の方法などにより、4,4'−ジアミノジフェニルメタンを1当量に対し、クロトンアルデヒドを2〜3当量加え、酸化剤存在下、強酸中において反応させ、6,6’−メチレンビス(2−メチルキノリン)式(2)を合成する。
【0018】
【化4】
【0019】
ここで、強酸としては、塩酸、硫酸、硝酸などが挙げられる。
酸化剤としては、ヨウ化ナトリウム、p−クロラニル、ニトロベンゼンなどが挙げられる。
工程Iに関し、反応温度は、80℃〜100℃、好ましくは90℃〜100℃で行うことができ、反応時間は、1時間〜6時間、好ましくは3時間〜6時間で行うことができる。
【0020】
<工程II>
さらに、得られた式(2)の化合物と硝酸または発煙硝酸を濃硫酸存在下において反応させることで、式(3)の化合物を得ることができる。
【0021】
【化5】
【0022】
工程IIに関し、反応温度は、−20℃〜+40℃、好ましくは0℃〜+20℃で行うことができ、反応時間は、1時間〜4時間、好ましくは1時間〜3時間で行うことができる。
【0023】
<工程III>
さらに、得られた式(3)の化合物を1当量に対し、還元鉄を6〜8当量加え、反応させることで、式(4)の化合物を得ることができる。
【0024】
【化6】
【0025】
工程IIIに関し、反応温度は、60℃〜80℃、好ましくは70℃〜80℃で行うことができ、反応時間は、1時間〜3時間、好ましくは2時間〜3時間で行うことができる。
【0026】
<工程IV>
さらに、特開2013−61622号公報に記載の方法などにより、得られた式(4)の化合物1当量に対し、無水フタル酸あるいはテトラハロフタル酸無水物4〜6当量を酸触媒存在下において反応させることで、式(1)の化合物を得ることができる。
ここで、酸触媒としては、安息香酸、塩化亜鉛などが挙げられる。
工程IVに関し、反応温度は、180℃〜250℃、好ましくは200℃〜250℃で行うことができ、反応時間は、1時間〜8時間、好ましくは3時間〜8時間で行うことができる。
【0027】
本発明化合物は、単独で用いてもよいし、2種類以上の化合物を適宜選択し併用してもよい。
【0028】
本発明化合物は、多様な用途に適用可能と考えられる。例えば、印刷インキ、塗料、着色プラスチック、トナー、インクジェット用インキ、ディスプレイ用遮光性部材、種子着色などの広範囲な用途の着色剤として用いることができる。
【0029】
本発明化合物は、有機顔料としての性質を示すものであり、ソルトミリング処理などにより、顔料粒子の微細化を施すことで、より好適に使用できる場合がある。このような処理は、公知慣用の方法で行えばよい。
【0030】
本発明化合物は、本発明化合物以外の有機顔料、有機染料、有機顔料誘導体などの色材を、調色などの目的で併用してもよい。これらは、上述のような用途にあわせて適宜選択されるべきものであり、用途によっては、本発明化合物を単独で用いてもよいし、2種以上を適宜併用してもよい。
【0031】
併用可能な色材としては、公知の顔料、染料等いずれのものでも構わない。
用途によって、アゾ系、ジスアゾ系、アゾメチン系、アントラキノン系、キノフタロン系、キナクリドン系、ジケトピロロピロール系、ジオキサジン系、ベンズイミダゾロン系、フタロシアニン系、イソインドリン系、イソインドリノン系、ペリレン系顔料、及びキサンテン系、アゾ系、ジスアゾ、アンラキノン系、キノフタロン系、トリアリールメタン系、メチン系、フタロシアニン系、ローダミン系染料などが挙げられる。
【0032】
本発明化合物と併用可能な黄色顔料としては、インキ用途ではC.I.ピグメント イエロー3、同12、同74等が、塗料用途では同74、同83、同109、同110等が、カラーフィルタ用途では、同83、同129、同138、同139、同150、同185、同231などを例示することができる。
【0033】
特にカラーフィルタ用途における緑色画素部形成用として本発明化合物を使用する場合には、例えば、C.I.ピグメント・グリーン1、同2、同4、同7、同8、同10、同13、同14、同15、同17、同18、同19、同26、同36、同45、同48、同50、同51、同54、同55、同58、同59、同62、同63のような緑色顔料などと併用することができるが、これらに限定されない。カラーフィルタ用途における緑色画素部形成用として本発明化合物を使用する場合、緑色顔料と、本発明の黄色顔料との併用割合は、例えば、緑色顔料100質量部当たり、黄色顔料が10〜100質量部である。
【0034】
また、緑色画素部形成用として本発明化合物を使用する場合には、本発明化合物と青色顔料を併用することもできる。青色顔料としては、例えば、C.I.ピグメントブルー15、同15:1、同15:2、同15:3、同15:4、同15:6、アルミニウムフタロシアニン誘導体などが挙げられる。
ここで、上記のアルミニウムフタロシアニン誘導体とは、例えば、下記一般式(5−1)で表される化合物等が挙げられる。
【0035】
【化7】
【0036】
(式(5−1)中、Rはハロゲン原子、ヒドロキシ基、又は下記一般式(5−2)で表される基である。)
【0037】
【化8】
【0038】
(式(5−2)中、Xは直接結合又は酸素原子である。Arはフェニル基又はナフチル基である。式中、アスタリスクは結合部位を示す。)
【0039】
上記した式(5−1)中のRにおける前記ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが挙げられる。中でも、Rにおける前記ハロゲン原子としては、塩素原子、又は臭素原子であることが好ましい。
【0040】
式(5−1)中、Rは、塩素原子、臭素原子、ヒドロキシ基、又は上記一般式(5−2)で表される基であることが好ましい。
【0041】
式(5−2)中、Xは酸素原子であることが好ましい。
【0042】
式(5−1)の中でも好ましいものとしては、例えば、ヒドロキシアルミニウムフタロシアニン、クロロアルミニウムフタロシアニン、ブロモアルミニウムフタロシアニン、下記式(5−1−1)で表される化合物、下記式(5−1−2)で表される化合物、下記式(5−1−3)で表される化合物などが挙げられる。
【0043】
【化9】


【0044】
さらに、本発明化合物は、カラーフィルタ用途における赤色画素部形成用として、赤色顔料と併用することもできる。赤色顔料としては、例えば、C.I.ピグメントレッド177、同254などが挙げられる。
【0045】
本発明をカラーフィルタの緑色画素部のパターンの形成に用いる際には、公知の方法を採用することができる。典型的には、本発明の化合物と、感光性樹脂とを必須成分として含むカラーフィルタ用感光性組成物を得ることができる。
【0046】
カラーフィルタの製造方法としては、例えば、本発明化合物を感光性樹脂からなる分散媒に分散させた後、スピンコート法、ロールコート法、インクジェット法等でガラス等の透明基板上に塗布し、ついでこの塗布膜に対して、フォトマスクを介して紫外線によるパターン露光を行った後、未露光部分を溶剤等で洗浄して緑色パターンを得る、フォトリソグラフィーと呼ばれる方法が挙げられる。本発明をカラーフィルタの赤色画素部のパターンの形成に用いる場合も同様である。
【0047】
その他、電着法、転写法、ミセル電解法、PVED(Photovoltaic Electrodeposition)法の方法で画素部のパターンを形成して、カラーフィルタを製造してもよい。
【0048】
カラーフィルタ用感光性組成物を調製するには、例えば、顔料と、感光性樹脂と、光重合開始剤と、前記樹脂を溶解する有機溶剤とを必須成分として混合する。その製造方法としては、顔料と有機溶剤と必要に応じて分散剤を用いて分散液を調製してから、そこに感光性樹脂等を加えて調製する方法が一般的である。
【0049】
ここでの顔料として、緑色画素部を得る場合には、本発明化合物を顔料化したものと、上記した緑色顔料や青色顔料を用いることができる。同様に、赤色画素部を得る場合には、本発明化合物を顔料化したものと、上記した赤色顔料を用いることができる。
【0050】
必要に応じて用いる分散剤としては、例えばビックケミー社のDISPERBYK(登録商標名)130、同161、同162、同163、同170、同LPN−6919、同LPN−21116、BASF社のエフカ46、エフカ47等が挙げられる。また、レベンリグ剤、カップリング剤、カチオン系の界面活性剤なども併せて使用可能である。
【0051】
有機溶剤としては、例えばトルエンやキシレン、メトキシベンゼン等の芳香族系溶剤、酢酸エチルや酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等の酢酸エステル系溶剤、エトキシエチルプロピオネート等のプロピオネート系溶剤、メタノール、エタノール等のアルコール系溶剤、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル系溶剤、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤、ヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶剤、N,N−ジメチルホルムアミド、γ−ブチロラクタム、N−メチル−2−ピロリドン、アニリン、ピリジン等の窒素化合物系溶剤、γ−ブチロラクトン等のラクトン系溶剤、カルバミン酸メチルとカルバミン酸エチルの48:52の混合物のようなカルバミン酸エステル等がある。有機溶剤としては、特にプロピオネート系、アルコール系、エーテル系、ケトン系、窒素化合物系、ラクトン系等の極性溶媒で水可溶のものが適している。
【0052】
本発明のカラーフィルタ用顔料組成物100質量部当たり、300〜1000質量部の有機溶剤と、必要に応じて100質量部以下の分散剤及び/又は20質量部以下のキノフタロン誘導体とを、均一となる様に攪拌分散して分散液を得ることができる。次いでこの分散液に、分散液100質量部当たり、3〜20質量部の感光性樹脂、感光性樹脂1質量部当たり0.05〜3質量部の光重合開始剤と、必要に応じてさらに有機溶剤を添加し、均一となる様に攪拌分散してカラーフィルタ画素部用感光性組成物を得ることができる。
【0053】
上記のカラーフィルタ用顔料組成物とは、本発明のキノフタロン顔料組成物10質量部当たり、緑色画素用途の場合、緑色顔料200質量部以下または/及び青色顔料200質量部以下を適宜設定し混合したもの、また、赤色画素用途の場合、赤色顔料200質量部以下を混合したものである。なお、他の黄色顔料を必要に応じ、混合しても良い。
【0054】
この際に使用可能な感光性樹脂としては、例えばウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリアミド酸系樹脂、ポリイミド系樹脂、スチレンマレイン酸系樹脂、スチレン無水マレイン酸系樹脂等の熱可塑性樹脂や、例えば1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ビス(アクリロキシエトキシ)ビスフェノールA、3−メチルペンタンジオールジアクリレート等のような2官能モノマー、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアネート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート等のような多官能モノマー等の光重合性モノマーが挙げられる。
【0055】
光重合開始剤としては、例えばアセトフェノン、ベンゾフェノン、ベンジルジメチルケタノール、ベンゾイルパーオキサイド、2−クロロチオキサントン、1,3−ビス(4'−アジドベンザル)−2−プロパン、1,3−ビス(4'−アジドベンザル)−2−プロパン−2'−スルホン酸、4,4'−ジアジドスチルベン−2,2'−ジスルホン酸等がある。
【0056】
こうして調製されたカラーフィルタ画素部用感光性組成物は、フォトマスクを介して紫外線によるパターン露光を行った後、未露光部分を有機溶剤やアルカリ水等で洗浄することによりカラーフィルタを作製することができる。
【実施例】
【0057】
以下、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。なお、実施例及び比較例において特に断りがない場合は、「部」及び「%」は質量基準である。
【0058】
[合成例]
【0059】
合成例1
フラスコ中に濃硫酸55gを仕込み、氷冷下に攪拌しながら文献(Polymer, volume39, No.20(1998), p4949)記載の方法で得られる6,6' −メチレンジキナルジン7.0g(23.5mmol)を添加した。10℃以下を保ちながら60%硝酸6.1gを滴下し、10℃から20℃で1時間攪拌を続けた。反応液を氷水150mlに注ぎ、20wt%水酸化ナトリウム水溶液を用いてpH3に調整した。析出した粉末を減圧ろ過で回収し、水で中性まで洗浄した。得られた固体を70℃で送風乾燥した後、粗生成物を熱酢酸エチル100ml、次いで熱トルエン60mlで洗浄ろ過して不純物を除き、中間体(A)6.52g(16.8mmol)を得た。(収率:72%)
1H-NMR (DMSO-d6) δppm: 2.70 (s, 6H), 4.42 (s, 2H), 7.58 (d, J = 8.8 Hz, 2H), 7.63 (d, J=8.8Hz, 2H), 8.09 (d, J = 8.8 Hz, 2H), 8.13 (d, J=8.8Hz, 2H)
13C-NMR (DMSO-d6) δppm: 24.5, 32.0, 117.7, 124.8, 127.5, 129.8, 130.5, 131.9, 145.8, 146.2, 160.7
FT-IR (KBr disk) cm-1: 3048, 1602, 1520, 1494, 1363
【0060】
合成例2
フラスコ中に還元鉄5.30g、酢酸135mlを仕込み攪拌しながら50℃に加熱した。次いで合成例1で得た化合物(A)4.50g(11.6mmol)を70℃以下に保つように添加した。添加終了後60℃で1hr攪拌を続けた後、反応液を35℃以下に冷却し、氷水500mlに注ぎ、20%NaOH水でpH9に調製した。生成した沈殿をセライト上で減圧ろ過した。固形物を回収し、70℃で送風乾燥後、ジメチルスルホキシド(DMSO)100mlとN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)100mlの混合溶媒に加え、90℃で1hr攪拌した。混合物をセライト上で減圧ろ過し、得られたろ液を水1Lに攪拌しながら加えた。生成した沈殿を減圧濾過で回収し、水洗して中間体(B)3.80g(11.6mmol)を得た。(収率100%)
1H-NMR (DMSO-d6) δppm: 2.57 (s, 6H), 3.95 (s, 2H), 5.66 (s, 4H), 7.06 (d, J=8.2Hz, 2H), 7.16 (d, J=8.2Hz, 2H), 7.23 (d, J=8.2Hz, 2H), 8.49 (d, J=8.2Hz, 2H)
13C-NMR (DMSO-d6) δppm: 24.6, 32.1, 115.8, 116.2, 119.5, 130.9, 131.8, 141.5, 147.4, 157.0
FT-IR (KBr disk) cm-1: 3464, 3363, 3315, 3192, 1640, 1591, 1573, 1415, 1365, 801

【0061】
合成例3
窒素雰囲気下、フラスコ中に安息香酸135gを量りとり、140℃にて溶融させた。そこに、合成例2で得た中間体(B) 3.80g(11.6mmol)とテトラクロロフタル酸無水物17.99g(62.9mmol)、無水塩化亜鉛0.49g(3.6mmol)を加え、220℃にて6時間攪拌した。反応混合物を120℃に冷却後、クロロベンゼン300mLを加えて1時間攪拌し、減圧ろ過にて黄色粉末であるキノフタロン化合物(C)を10.5g(7.5mmol)得た。(収率:65%)
FT-IR cm-1: 1788, 1729, 1688, 1638, 1607, 1537, 1420, 1310, 732
FD-MS: 1400 M+
【0062】
合成例4
合成例3においてテトラクロロフタル酸無水物に代えて4,5−ジクロロフタル酸無水物を使用して黄色粉末であるキノフタロン化合物(D)を得た。(収率80%)
FT-IR cm-1: 1790, 1728, 1685, 1634, 1582, 1548, 1417, 1343, 1312, 768, 740
FD-MS: 1124 M+
【0063】
合成例5
合成例3においてテトラクロロフタル酸無水物に代えてテトラブロモフタル酸無水物を使用して黄色粉末であるキノフタロン化合物(E)を得た。(収率85%)
FT-IR cm-1: 1730, 1685, 1633, 1604, 1530, 1417, 1335, 1114, 661
FD-MS: 2111 M+
【0064】
合成例6
合成例3においてテトラクロロフタル酸無水物に代えてテトラフルオロフタル酸無水物を使用して黄色粉末であるキノフタロン化合物(F)を得た。(収率70%)
1H-NMR (DMSO-d6) δppm: 4.15 (s, 2H), 7.51 (d, j=8.8Hz, 2H), 8.21 (d, j=8.8Hz, 2H), 8.46 (d, j=9.6Hz, 2H), 8.59 (d, j=9.6Hz, 2H), 13.80 (s, 2H)
FT-IR cm-1: 1734, 1633, 1614, 1494, 1387, 1091, 949
FD-MS: 1136 M+
【0065】
顔料化
前記合成例で得たキノフタロン化合物 0.500質量部を塩化ナトリウム1.50質量部、ジエチレングリコール0.750質量部とともに磨砕した。その後、この混合物を600質量部の温水に投じ、1時間攪拌した。水不溶分をろ過分離して温水でよく洗浄した後、90℃で送風乾燥して顔料化を行った。顔料の粒子系は、100nm以下、粒子の平均長さ/幅比は3.00未満であった。得られたキノフタロン化合物の黄色顔料を用いて以下の分散試験及びカラーフィルタ評価試験を行った。
【0066】
製造例1
キノフタロン化合物(C)0.700質量部をガラス瓶に入れ、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート6.60質量部、DISPERBYK(登録商標名)LPN−21116(ビックケミー株式会社製)1.40質量部、0.3−0.4mmφセプルビーズ22.0質量部を加え、ペイントコンディショナー(東洋精機株式会社製)で2時間分散した。得られた分散液にプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート6.00質量部を添加して更に0.5時間ペイントコンディショナーで分散して顔料分散体を得た。得られた顔料分散体4.00質量部、DIC株式会社製アクリル樹脂溶液ユニディック(登録商標名)ZL−295 0.60質量部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート0.22質量部をガラス瓶に入れ、振とうさせることで黄色調色用組成物を作製した。
【0067】
製造例2
製造例1においてキノフタロン化合物(C)に代えて合成例4で得たキノフタロン化合物(D)を用いた以外は同様の方法でスピンコート塗液を作製した。
【0068】
製造例3
C.I.ピグメント グリーン59(DIC株式会社製)2.48質量部をガラス瓶に入れ、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート10.9量部、DISPERBYK(登録商標名)LPN−6919(ビックケミー株式会社製)1.24質量部、DIC株式会社製アクリル樹脂溶液ユニディック(登録商標名)ZL−295 1.86質量部、0.3−0.4mmφセプルビーズを加え、ペイントコンディショナー(東洋精機株式会社製)で2時間分散し、顔料分散体を得た。さらに、得られた顔料分散体4.00質量部、DIC株式会社製アクリル樹脂溶液ユニディック(登録商標名)ZL−295 0.980質量部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート0.220質量部をガラス瓶に入れ、振とうさせることで緑色調色用組成物を作製した。
【0069】
実施例1
製造例1で得られた黄色調色用組成物と製造例3で得られた緑色調色用組成物を混合し、スピンコーターによりガラス基板上に塗布後、乾燥させた。得られた評価用ガラス基板を230℃で1時間加熱した後に、高色再現用色規格におけるC光源を用いた場合の各緑色色度を示す緑色カラーフィルタを作製した。なお、緑色色度としては、特開2013−205581で使用されている(0.210,0.710)、及び特開2011−242425で使用されている(0.230,0.670)を用いた。
【0070】
実施例2
実施例1において、黄色調色用組成物として製造例1で得られた組成物に代えて、製造例2で得られた組成物を用いた以外は同様の方法で緑色カラーフィルタを作製した。
【0071】
製造例4
C.I.ピグメント イエロー138(BASF社製)0.70質量部をガラス瓶に入れ、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート6.42質量部、DISPERBYK(商標名)LPN−6919(ビックケミー株式会社社製)0.467質量部、DIC(株)製アクリル樹脂溶液ユニディック(登録商標)ZL−295 0.700質量部、0.3−0.4 mmφセプルビーズ22.0質量部を加え、ペイントコンディショナー(東洋精機株式会社製)で4時間分散し、顔料分散体を得た。さらに、得られた顔料分散体4.00質量部、DIC(株)製アクリル樹脂溶液ユニディック(登録商標)ZL−295 1.00質量部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート0.220質量部をガラス瓶に入れ、スピンコート塗液を作製した。
【0072】
比較例1
実施例1において、黄色調色用組成物として製造例1で得られた組成物に代えて、製造例4で得られた組成物を用いた以外は同様の方法で緑色カラーフィルタを作製した。
【0073】
製造例5
C.I.ピグメント イエロー150(山陽色素社製)1.14質量部をポリ瓶に入れ、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート12.0質量部、DISPERBYK(登録商標名)LPN−21116(ビックケミー株式会社社製)2.84質量部、0.3−0.4mmφセプルビーズ38.0質量部を加え、ペイントコンディショナー(東洋精機株式会社製)で4時間分散し、顔料分散体を得た。さらに、得られた顔料分散体2.00質量部、DIC株式会社製アクリル樹脂溶液ユニディック(登録商標名)ZL−295 0.490質量部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート0.110質量部をガラス瓶に入れ、振とうさせることで黄色調色用組成物を作製した。
【0074】
比較例2
実施例1において、黄色調色用組成物として製造例1で得られた組成物に代えて、製造例5で得られた組成物を用いた以外は同様の方法で緑色カラーフィルタを作製した。
【0075】
製造例6
製造例4において、C.I.ピグメント イエロー138(BASF社製)に代えて、特開昭53−228に記載の方法で合成したキノフタロン化合物(6)を用いた以外は、同様の方法で黄色調色用組成物を作製した。
【0076】
【化10】
【0077】
比較例3
実施例1において、黄色調色用組成物として製造例1で得られた組成物に代えて、製造例6で得られた組成物を用いた以外は同様の方法で緑色カラーフィルタを作製した。
【0078】
カラーフィルタ試験例
・カラーフィルタ特性試験
それぞれ作製したカラーフィルタを用いて、分光光度計(HITACHI社製U3900/3900H形)によって色度ならびに透過スペクトルを、膜厚計(HITACHI社製 VS1000 走査型白色干渉顕微鏡)によって膜厚を(膜厚は薄いほど高着色力)、それぞれ測定した。結果を以下の表1および表2に示す。
【0079】
【表1】

【0080】
【表2】

【0081】
実施例1および実施例2は、現行の黄色顔料(C.I.ピグメント イエロー150)を用いた比較例2と比べ、良好な輝度を示し、膜厚が顕著に薄くなった。これは、本発明の黄色顔料が高色再現性規格において、高輝度・高着色力であり、カラーフィルタ用黄色顔料として好適であることを示している。
また、比較例3(キノフタロン化合物(6))との比較検討でも同様に、実施例1および実施例2の方がより高い輝度を示し、膜厚がより薄いことから、二量化によるカラーフィルタ特性の顕著な向上が確認された。キノフタロン化合物(6)は、特開昭53−228の実施例2として記載されている化合物である。
なお、比較例1(C.I.ピグメント イエロー138)は、輝度が低く、膜厚が非常に厚いため、実用レベルにない。このように、本発明化合物は、現行の代表的な黄色顔料を超える顕著な効果を有するものである。
【要約】
優れた輝度と着色力を兼備する新規黄色顔料を提供することにある。
特定のキノフタロン骨格を二量化することで、より選択的な吸収・透過を示すことを見出した。さらに、二量化手法にも検討を重ね、単純に直接結合を採用するのではなく、メチレン鎖をスペーサーとして用い、共役を切断することで、過剰な赤味化を抑制できることを見出した。加えて、ポリハロゲン化およびイミド構造を導入することで分散性を向上させた。さらに、当該キノフタロン化合物を含有する着色剤、及び当該着色剤を含有する着色組成物を提供する。