【実施例】
【0046】
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
【0047】
(実施例1:9−アントラセン6量体の合成)
11−ブロモウンデカン酸2.0gとD−ソルビトール0.176g、トシル酸DMAP2.44gを脱水ジクロロメタン20mlに加え、これにジイソプロピルカルボジイミド1.0gを撹拌しながらゆっくり加えた。N
2下、室温で約19時間撹拌し、ジクロロメタンで薄めてろ過し、ろ液を濃縮した。これをジクロロメタンとヘキサン(3:2)でカラム分離したのち、濃縮して1.29gのブロモウンデカン酸6量体を得た(収率80.52%)。
【0048】
ブロモウンデカン酸6量体0.5gと9−アントラセンカルボン酸0.48g、ジアザビシクロウンデセン0.33gを脱水DMF20mlに加え、約9時間加熱撹拌した。クロロホルムでカラム分離し濃縮して、アントラセン置換2個〜3個のものを0.11g、アントラセン置換4個〜5個のものを0.61g得た。いずれも液状の試料であった。
なお、ここで、アントラセン置換2個〜3個のもの、アントラセン置換4個〜5個のものは、置換基数NMRのピーク強度比から求めた。
【0049】
図1は、アントラセンの置換基数2−3個の化合物のNMRを示す。
3.9−4.5ppm、5.0−5.5ppmに表れている計8.13H分の6種類のピークが、エステル置換された糖アルコール骨格のメチレンおよびメチンのプロトン(8H/1分子)に相当する。これに対し7.5ppm、8.0ppm、8.5ppmに表れる計20H分の3種類のピークがアントラセンの芳香環に結合したプロトン(9H/1分子)由来である。従ってアントラセンの導入率は、(20/9)/(8/8)=2.2個となる。
【0050】
図2に、アントラセンの置換基数4−5個の化合物のNMRを示す。
3.9−4.5ppm、5.0−5.5ppmに表れている計7.4H分の6種類のピークが、エステル置換された糖アルコール骨格のメチレンおよびメチンのプロトン(8H/1分子)に相当する。これに対し7.5ppm、8.0ppm、8.5ppmに表れる計48H分の3種類のピークがアントラセンの芳香環に結合したプロトン(9H/1分子)由来である。従ってアントラセンの導入率は、(37.85/9)/(7.4/8)=4.5個となる。
【0051】
続いてこれらの化合物を原料にして、さらに9−アントラセンカルボン酸0.04g、ジアザビシクロウンデセン0.27gを脱水DMF20mlに加え、約6時間加熱撹拌した。これをジクロロメタンで薄めて2M塩酸で洗ったのち、硫酸マグネシウムで乾燥後濃縮した。これをクロロホルムでカラム分離し濃縮して0.16gの粘性の高い液状のアントラセン6量体を得た(収率21.24%)。構造の確認はNMRより行った。
【0052】
図3に、アントラセンの置換基数6個の化合物のNMRを示す。
3.9−4.5ppm、5.0−5.5ppmに表れている計8.4H分の6種類のピークが、エステル置換された糖アルコール骨格のメチレンおよびメチンのプロトン(8H/1分子)に相当する。これに対し7.5ppm、8.0ppm、8.5ppmに表れる計55H分の3種類のピークがアントラセンの芳香環に結合したプロトン(9H/1分子)由来である。従ってアントラセンの導入率は、(55/9)/(8.4/8)=5.82個となる。
【0053】
合成したアントラセン6量体は、粘性の高い液体であった。この材料を1cm幅のガラス基板二枚で、1cm×1cmの領域に挟みガラス二枚を固定した。ガラス基板2枚を反対側に破断するまで手で引っ張り、そのときかかった最大負荷から引張剪断接着強度を測定した。その値は47.2N/cm
2であった。
【0054】
次に同様にして調整した試料に紫外光365nm(50〜100mW/cm
2)を5分照射してアントラセン6量体を硬化させた。その後引張剪断接着強度を測定したところ、最後まで接着層は破断せず317.4N/cm
2で石英が割れた。
【0055】
(実施例2)
前記の光照射前の6量体の粘性が非常に高いため、本実施例においては、可塑剤を加えた。混合比率は、重量比で、アントラセン6量体:可塑剤(ジブチルフタル酸エステル)=1:1である。その結果、流動性の高い材料が得られた。これを用いて同様にガラス基板を固定して、引張剪断接着強度を測定したところ0.2〜0.3N/cm
2というわずかな力で引き離すことができた。
【0056】
次に同様にして調整した試料(混合比1:1)に紫外光365nm(50〜100mW/cm
2)を5分照射してアントラセン6量体と可塑剤1:1混合物を硬化させた。その後引張剪断接着強度を測定したところ、45.5〜68.2N/cm
2となった。
【0057】
この試料(混合比1:1)を約170℃で、加熱して冷却すると接着層は室温においても液化状態をたもった。この液体によるガラスの接着強度は3.1N/cm
2であった。
【0058】
一旦液状化した試料(混合比1:1)を2枚のガラス基板中で紫外光365nmによる再露光を3分(50〜100mW/cm
2)行うと、再硬化した。この試料の引張剪断接着強度を同様に測定したところ157.2N/cm
2と高い値を示した。
【0059】
(実施例3)
本実施例では、混合の割合をアントラセン6量体:可塑剤(ジブチルフタル酸エステル)=2:1に変えて、同様の実験を行った。接着面積1cm
2に混合試料2.8mgをガラス基板2枚で挟み込んだ時には、ガラスの自重で落下したため測定できなかった。
【0060】
次に同様にして調整した試料(混合比2:1)に紫外光365nm(50〜100mw/cm
2)を5分照射してアントラセン6量体と可塑剤2:1混合物を硬化させた。その後引張剪断接着強度を測定したところ、176.7N/cm
2でも剥離しなかった。
【0061】
この試料(混合比2:1)を約170℃で、5分間加熱して冷却すると、接着層は室温においても粘性のある液体状態を保った。この液体によるガラスの接着強度は6.4N/cm
2であった。
【0062】
一旦液状化した試料(混合比2:1)を2枚のガラス基板中で紫外光365nmによる再露光を5分(50〜100mw/cm
2)行うと、再硬化した。この試料の引張剪断接着強度を同様に測定したところ196.4N/cm
2でも剥離しなかった。
【0063】
この試料(混合比2:1)を約170℃、4分間加熱して冷却すると接着層は室温においても粘性のある液体状態を保った。この液体によるガラスの接着強度は20.6N/cm
2となった。
【0064】
再度液状化した試料(混合比2:1)を2枚のガラス基板中で紫外光365nmによる再露光を5分間(50〜100mw/cm
2)行うと、再硬化した。この試料の引張剪断接着強度を同様に測定したところ201.0N/cm
2でも剥離しなかった。
【0065】
同じ割合で混合した(混合比2:1)を接着面積1cm
2に対して混合試料1.2mgをガラス基板で挟み込んだ時は、その接着強度は0.2N/cm
2であった。
【0066】
次に同様にして調整した試料(混合比2:1、1.2mg)に紫外光365nm(50〜100mw/cm
2)を5分間照射して硬化させた。その後引張剪断接着強度を測定したところ、146.1N/cm
2となった。
【0067】
(実施例4−A:エリスリトール骨格アントラセン4量体の合成)
11−ブロモウンデカン酸2.0gとペンタエリスリトール0.2g、トシル酸DMAP2.44gを脱水ジクロロメタン20mlに加え、これにジイソプロピルカルボジイミド1.0gを撹拌しながらゆっくり加えた。N
2下、室温で約19時間撹拌し、ジクロロメタンで薄めてろ過し、ろ液を濃縮した。これをジクロロメタンとヘキサン(5:3)でカラム分離したのち、濃縮して0.83gのブロモウンデカン酸4量体を得た(収率52.83%)。
【0068】
ブロモウンデカン酸4量体0.65gと9−アントラセンカルボン酸1.0g、炭酸カリウム0.62gを脱水DMF10mlに加え、約18時間80℃で撹拌した。クロロホルムでカラム分離し濃縮して、液状のアントラセン4量体0.97gを得た。
【0069】
図4は、アントラセンの4量体のNMRを示す。
4.10ppmに表れている8H分のシングレットのピークが、エステル置換されたエリスリトール骨格のメチレンのプロトン(8H/1分子)に相当する。これに対し4.58ppmの8H分のピークがアントラセンカルボニルオキシ基に結合したメチレン、7.5ppm、8.0ppm、8.5ppmに表れる3種類のピークがアントラセンの芳香環に結合したプロトン(36H/1分子)由来である。従ってアントラセンは4ユニット導入されている。
【0070】
(実施例4−B:エリスリトール骨格アントラセン4量体の接着試験)
合成したアントラセン4量体は、粘性の高い液体であった。この材料を1.5cm幅のガラス基板二枚で、1.5cm×0.5cmの領域に挟み調整した試料に紫外光365nm(50〜100mW/cm
2)を10分照射してアントラセン4量体を硬化させた。ガラス基板2枚を反対側に手で引っ張り、そのときかかった最大負荷を引張剪断接着強度とみなした。その値は231.0N/cm
2であった。
【0071】
上記と同様にして光硬化させて調整した試料を180℃で11分加熱して室温まで冷却すると引張に対して剥離を起こさず6.0N/cm
2の負荷ですべった。このことから液状化していることが分かった。
【0072】
上記試料を1mm滑らせたところで、再度紫外光365nm(50〜100mW/cm
2)を10分照射してアントラセン4量体を硬化させた。その後引張剪断接着強度を測定したところ、最後まで接着層は破断せず702.0N/cm
2で石英が割れた。
【0073】
(実施例5−A:1−アントラセン6量体の合成)
ブロモウンデカン酸6量体0.65gと1−アントラセンカルボン酸1.0g、炭酸カリウム0.62gを脱水DMF10mlに加え、約6時間80℃で撹拌した。クロロホルムでカラム分離し濃縮して0.95gの液状試料を得た。
【0074】
図5は、1−アントラセンの置換体のNMRを示す。
4.0−4.1ppm(2H)、4.3ppm(1H)、5.1ppm(1H)、5.2ppm(1H)、5.4ppm(2H)に表れている4種類のピークと、4.4ppmの14Hの内2H分がエステル置換された糖アルコール骨格のメチレンおよびメチンのプロトン(8H/1分子)に相当する。これに対し7.4−7.5ppm(18H)、7.9ppm(6H)、8.0ppm(6H)、8.1ppm(6H)、8.2ppm(6H)、8.4ppm(6H)、9.5ppm(65H)、に表れる計54H分の7種類のピークがアントラセンの芳香環に結合したプロトン(9H/1分子)由来である。従って積分比からアントラセン6置換体である。
【0075】
(実施例5−B:1−アントラセン6量体の流動化−非流動化試験)
1−アントラセン6量体は、非常に粘性の高い液体であった。そこでジブチルフタル酸エステルと2:1で混合して、1cm幅のガラス基板二枚で、1cm×1cmの領域に挟みガラス二枚を固定した。紫外光を照射したところ硬化して動かなくなった。一度、200℃で5分間加熱すると室温にもどしても、スライドガラスが動くくらい柔らかくなった。再度紫外光を照射すると、再硬化して動かなくなった。
【0076】
(実施例6−A:2−アントラセン6量体の合成)
ブロモウンデカン酸6量体0.56gと2−アントラセンカルボン酸1.2g、炭酸カリウム0.70gを脱水DMF20mlに加え、約6時間80℃で撹拌した。クロロホルムでカラム分離し濃縮して0.46gを得た。固体の試料であった。
【0077】
図6は、2−アントラセンの置換体のNMRを示す。
4.0−4.1ppm、5.1ppm、5.2ppm、5.4ppmに表れている4種類のピークと、4.4ppmの14Hの内2H分がエステル置換された糖アルコール骨格のメチレンおよびメチンのプロトン(8H/1分子)に相当する。これに対し7.5ppm、8.0ppm、8.4ppm、8.5ppm、8.7ppmに表れる計54H分の5種類のピークがアントラセンの芳香環に結合したプロトン(9H/1分子)由来である。従って積分比からアントラセン6置換体である。
【0078】
(実施例6−B:2−アントラセン6量体の接着試験)
図6は、2−アントラセンとジブロモヘキサンの1:1液体の混合物10mgを2.7cm幅のスライドガラスに2枚で、1.5cmほどの重ね幅で挟みこんで、紫外光を2分間照射したところ硬化して動かなくなった。一度、190℃で2分間加熱すると剥離した。