特許第6607697号(P6607697)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6607697
(24)【登録日】2019年11月1日
(45)【発行日】2019年11月20日
(54)【発明の名称】水性ゲルおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 20/36 20060101AFI20191111BHJP
   C08F 20/06 20060101ALI20191111BHJP
   C08J 3/075 20060101ALI20191111BHJP
【FI】
   C08F20/36
   C08F20/06
   C08J3/075CEY
【請求項の数】2
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2015-96646(P2015-96646)
(22)【出願日】2015年5月11日
(65)【公開番号】特開2016-210912(P2016-210912A)
(43)【公開日】2016年12月15日
【審査請求日】2018年4月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】504173471
【氏名又は名称】国立大学法人北海道大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000205638
【氏名又は名称】大阪有機化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141472
【弁理士】
【氏名又は名称】赤松 善弘
(72)【発明者】
【氏名】グン 剣萍
(72)【発明者】
【氏名】黒川 孝幸
(72)【発明者】
【氏名】孫 桃林
(72)【発明者】
【氏名】猿渡 欣幸
【審査官】 藤井 勲
(56)【参考文献】
【文献】 特開平02−024310(JP,A)
【文献】 特表平09−507475(JP,A)
【文献】 特開2005−104879(JP,A)
【文献】 特開2007−295986(JP,A)
【文献】 特開2013−053236(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 20/00 − 20/70
C08J 3/00 − 3/28
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】
(式中、R1は水素原子または水酸基もしくはフッ素原子を有していてもよい炭素数1〜4のアルキル基、R2は炭素数1〜8のアルキレン基、R3は水素原子または炭素数1〜22の直鎖アルキル基、Xは−O−基または−NH−基を示す)
で表わされるウレア系モノマー50〜95質量%と(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリルアミド、N−ビニルピロリドン、(メタ)アクリロニトリルおよび2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートからなる群より選ばれた少なくとも1種のモノマー5〜50質量%とからなるモノマー成分を重合させてなるウレア系ポリマーを含有することを特徴とする水性ゲル。
【請求項2】
式(I):
【化2】
(式中、R1は水素原子または水酸基もしくはフッ素原子を有していてもよい炭素数1〜4のアルキル基、R2は炭素数1〜8のアルキレン基、R3は水素原子または炭素数1〜22の直鎖アルキル基、Xは−O−基または−NH−基を示す)
で表わされるウレア系モノマー50〜95質量%と(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリルアミド、N−ビニルピロリドン、(メタ)アクリロニトリルおよび2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートからなる群より選ばれた少なくとも1種のモノマー5〜50質量%とからなるモノマー成分を重合させることを特徴とするウレア系ポリマーを含有する水性ゲルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水性ゲルおよびその製造方法に関する。本発明の水性ゲルは、柔軟性に優れるとともに機械的強度が高いことから、例えば、人工軟骨、人工皮膚、人工乳房などの人工器官用材料;カテーテル、ガイドワイヤーなどのコーティング剤、血液浄化フィルターの回路用コーティング剤、人工関節の駆動部用コーティング剤などのコーティング剤;細胞培養シートなどの医療機器用材料;薬剤をゲル状で体内に投与するための医療用材料;化粧パック、絆創膏、芳香剤用基材、トイレタリー用品などに用いられるゲル体;化粧品用原料;液晶画面保護用フィルムの接着層の原料;フジツボなどの貝類の付着防止用船底塗料などの塗料;自動車の振動を吸収するための防振材料;リチウムイオン二次電池の電解質の原料;アクチュエーター材料、圧電素子などのエネルギー関連材料;印刷材料などの用途に使用することが期待される。
【背景技術】
【0002】
高柔軟性および保水性を損なうことなく、機械的強度が高いゲルとして、ウレア系ポリマーで構成される網目構造に非ウレア系ポリマーが侵入し、物理的に絡み付いたセミ相互侵入網目構造を有し、良溶媒による平衡膨潤時において、膨潤度が5以上であり、前記良溶媒の重量含有率が80%以上であり、破壊エネルギーが700J/m2以上2000J/m2以下であるゲルが提案されている(例えば、特許文献1参照)。しかし、前記ゲルは、ウレア系ポリマーで構成される網目構造に非ウレア系ポリマーを侵入させる際に、ウレア系ポリマーを膨潤させる必要があることから、厚さが小さいフィルムを形成させることが困難である。また、前記ゲルは、製造の際にウレア系ポリマーで構成される網目構造に非ウレア系ポリマーを侵入させた後、硬化させる必要があることから、工業的生産性の点から好ましいものであるとはいえない。
【0003】
また、高分子ゲルとして、第2のモノマーを重合して得られる第2のポリマーからなる連続相と、該連続相中に均一に分散している、第1のポリマーからなる粒子と、該連続相および該粒子に共通して含まれる液体とを有し、前記第1のポリマーからなる粒子内に、前記第2のポリマーの分子鎖が存在していることを特徴とする高分子ゲルが提案されている(例えば、特許文献2参照)。しかし、前記高分子ゲルは、その製造の際に第1のポリマーを凍結乾燥させるという煩雑な操作および凍結乾燥させた第1のポリマーを粉砕させるという煩雑な操作を要することから、工業的生産性の点から好ましいものであるとはいえない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2006/001313号パンフレット
【特許文献2】特開2009−185156号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、前記従来技術に鑑みてなされたものであり、2種類のポリマーを相互に複合させた構造を有することなく、柔軟性に優れるとともに高機械的強度を有する水性ゲルを提供することを課題とする。本発明は、また、2種類のポリマーを相互に複合させることなく、柔軟性に優れるとともに高機械的強度を有する水性ゲルを効率よく容易に製造することができる水性ゲルの製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、
(1) 式(I):
【0007】
【化1】
【0008】
(式中、R1は水素原子または水酸基もしくはフッ素原子を有していてもよい炭素数1〜4のアルキル基、R2は炭素数1〜8のアルキレン基、R3は水素原子または炭素数1〜22の直鎖アルキル基、Xは−O−基または−NH−基を示す)
で表わされるウレア系モノマー50〜95質量%と(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリルアミド、N−ビニルピロリドン、(メタ)アクリロニトリルおよび2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートからなる群より選ばれた少なくとも1種のモノマー5〜50質量%とからなるモノマー成分を重合させてなるウレア系ポリマーを含有することを特徴とする水性ゲル、および
(2) 式(I):
【0009】
【化2】
【0010】
(式中、R1は水素原子または水酸基もしくはフッ素原子を有していてもよい炭素数1〜4のアルキル基、R2は炭素数1〜8のアルキレン基、R3は水素原子または炭素数1〜22の直鎖アルキル基、Xは−O−基または−NH−基を示す)
で表わされるウレア系モノマー50〜95質量%と(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリルアミド、N−ビニルピロリドン、(メタ)アクリロニトリルおよび2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートからなる群より選ばれた少なくとも1種のモノマー5〜50質量%とからなるモノマー成分を重合させることを特徴とするウレア系ポリマーを含有する水性ゲルの製造方法
に関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、2種類のポリマーを相互に複合させた構造を有することなく、柔軟性に優れるとともに高機械的強度を有する水性ゲルが提供される。また、本発明によれば、2種類のポリマーを相互に複合させることなく、柔軟性に優れるとともに高機械的強度を有する水性ゲルを効率よく容易に製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の水性ゲルは、前記したように、式(I):
【0013】
【化3】
【0014】
(式中、R1は水素原子または水酸基もしくはフッ素原子を有していてもよい炭素数1〜4のアルキル基、R2は炭素数1〜8のアルキレン基、R3は水素原子、炭素数1〜22のアルキル基、炭素数3〜8のシクロアルキル基、炭素数6〜12のアリール基または炭素数7〜12のアラルキル基、Xは−O−基または−NH−基を示す)
で表わされるウレア系モノマーを含有するモノマー成分を重合させてなるウレア系ポリマーを含有することを特徴とする。
【0015】
本発明の水性ゲルに用いられるウレア系ポリマーは、式(I)で表わされるウレア系モノマーを含有するモノマー成分を重合させることによって容易に調製することができる。
【0016】
式(I)において、R1は水素原子または水酸基もしくはフッ素原子を有していてもよい炭素数1〜4のアルキル基である。R1としては、例えば、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、トリフルオロメチル基などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの基は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。これらの基のなかでは、柔軟性に優れるとともに高機械的強度を有する水性ゲルを得る観点から、水素原子、メチル基、エチル基、ヒドロキシエチル基およびトリフルオロメチル基が好ましい。
【0017】
2は、炭素数1〜8のアルキレン基である。炭素数1〜8のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、n−プロピレン基、イソプロピレン基、n−ブチレン基、イソブチレン基、tert−ブチレン基、n−ペンテン基、n−ヘキセン基、イソヘキセン基などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの基は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。これらの基のなかでは、柔軟性に優れるとともに高機械的強度を有する水性ゲルを得る観点から、好ましくは炭素数1〜6のアルキレン基、より好ましくは炭素数1〜4のアルキレン基、さらに好ましくはメチレン基およびエチレン基、さらに一層好ましくはエチレン基である。
【0018】
3は、水素原子、炭素数1〜22のアルキル基、炭素数3〜8のシクロアルキル基、炭素数6〜12のアリール基または炭素数7〜12のアラルキル基である。
【0019】
前記炭素数1〜22のアルキル基としては、炭素数1〜22の直鎖、分岐鎖または脂環構造を有するアルキル基が挙げられる。炭素数1〜22のアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、エイコシル基、ドコシル基などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの基は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。これらの基のなかでは、柔軟性に優れるとともに高機械的強度を有する水性ゲルを得る観点から、炭素数1〜10のアルキル基が好ましく、炭素数1〜6のアルキル基がより好ましく、炭素数1〜3のアルキル基がさらに好ましい。
【0020】
前記炭素数3〜8のシクロアルキル基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの基は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。これらの基のなかでは、柔軟性に優れるとともに高機械的強度を有する水性ゲルを得る観点から、シクロヘキシル基が好ましい。
【0021】
前記炭素数6〜12のアリール基としては、例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、ビフェニル基などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの基は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。これらの基のなかでは、柔軟性に優れるとともに高機械的強度を有する水性ゲルを得る観点から、炭素数6〜9のアリール基が好ましく、フェニル基がより好ましい。
【0022】
前記炭素数7〜12のアラルキル基としては、例えば、ベンジル基、フェニルエチル基、メチルベンジル基、ナフチルメチル基などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの基は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。これらの基のなかでは、柔軟性に優れるとともに高機械的強度を有する水性ゲルを得る観点から、炭素数7〜9のアラルキル基が好ましく、ベンジル基がより好ましい。
【0023】
Xは、−O−基または−NH−基である。Xのなかでは、柔軟性に優れるとともに高機械的強度を有する水性ゲルを得る観点から、−O−基が好ましい。
【0024】
式(I)で表わされるウレア系モノマーとしては、例えば、2−ウレアアルキル−1−(メタ)アクリレート、N−アルキル−2−ウレアアルキル−1−(メタ)アクリレートなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのウレア系モノマーは、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0025】
2−ウレアアルキル−1−(メタ)アクリレートは、例えば、(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネートなどの(メタ)アクリロイルオキシアルキルイソシアネートとアンモニアとを反応させることによって容易に調製することができる。2−ウレアアルキル−1−(メタ)アクリレートとしては、例えば、2−ウレアメチル−1−アクリレート、2−ウレアメチル−1−メタクリレート、2−ウレアエチル−1−アクリレート、2−ウレアエチル−1−メタクリレート、2−ウレアプロピル−1−アクリレート、2−ウレアプロピル−1−メタクリレート、2−ウレアn−ブチル−1−アクリレート、2−ウレアn−ブチル−1−メタクリレートなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの2−ウレアアルキル−1−(メタ)アクリレートは、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。前記(メタ)アクリロイルオキシアルキルイソシアネートは、2官能以上のイソシアネート基を有するイソシアネート化合物と水酸基を有する(メタ)アクリレートなどの水酸基含有単官能モノマーとを反応させることによって得られるハーフアダクトモノマーであってもよい。
【0026】
N−アルキル−2−ウレアアルキル−1−(メタ)アクリレートは、例えば、(メタ)アクリロイルオキシエチル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリロイルオキシアルキルイソシアネートと、n−ブチルアミン、シクロヘキシルアミン、2−エチレヘキシルアミン、ラウリルアミン、ステアリルアミン、グルコサミンなどの水酸基を有していてもよいアルキル基またはシクロアルキル基を有するアミンとを反応させることによって容易に調製することができる。N−アルキル−2−ウレアアルキル−1−(メタ)アクリレートとしては、例えば、N−n−ブチル−2−ウレアエチル−1−(メタ)アクリレート、N−tert−ブチル−2−ウレアエチル−1−(メタ)アクリレート、N−シクロヘキシル−2−ウレアエチル−1−(メタ)アクリレート、N−2−エチルヘキシル−2−ウレアエチル−1−(メタ)アクリレート、N−ラウリル−2−ウレアエチル−1−(メタ)アクリレート、N−ステアリル−2−ウレアエチル−1−(メタ)アクリレート、N−グルコシル−2−ウレアエチル−1−(メタ)アクリレートなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのN−アルキル−2−ウレアアルキル−1−(メタ)アクリレートは、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0027】
なお、本発明において、「(メタ)アクリレート」は、アクリレートまたはメタクリレートを意味し、アクリレートおよびメタクリレートは、それぞれ単独で用いてもよく、併用してもよい。「(メタ)アクリロイルオキシ」は、アクリロイルオキシまたはメタクリロイルオキシを意味し、アクリロイルオキシおよびメタクリロイルオキシは、それぞれ単独で用いてもよく、併用してもよい。「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸またはメタクリル酸を意味し、アクリル酸およびメタクリル酸は、それぞれ単独で用いてもよく、併用してもよい。
【0028】
式(I)で表わされるウレア系モノマーのなかで柔軟性に優れるとともに高機械的強度を有する水性ゲルを得る観点から好適なものとしては、例えば、式(I)において、R1がメチル基、R2がエチレン基、R3が水素原子、Xが−O−基である2−ウレアエチル−1−メタクリレート;式(I)において、Rが水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、ヒドロキシメチル基またはトリフルオロメチル基、R2がエチレン基、R3が炭素数1〜8のアルキル基、Xが−O−基であるウレア系モノマーなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのウレア系モノマーは、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0029】
モノマー成分における式(I)で表わされるウレア系モノマーの含有率は、柔軟性に優れるとともに高機械的強度を有する水性ゲルを得る観点から、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上であり、その上限値は100質量%であるが、柔軟性に優れるとともに高機械的強度を有する水性ゲルを得る観点から、95質量%以下であることが好ましい。
【0030】
本発明においては、モノマー成分には、式(I)で表わされるウレア系モノマー以外のモノマー(以下、他のモノマーという)を用いることができる。
【0031】
他のモノマーとしては、単官能モノマーおよび多官能モノマーが挙げられる。
単官能モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸;アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、メタクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、メタクリル酸イソブチル、アクリル酸tert−ブチル、メタクリル酸tert−ブチル、アクリル酸ネオペンチル、メタクリル酸ネオペンチル、アクリル酸オクチル、メタクリル酸オクチル、アクリル酸ラウリル、メタクリル酸ラウリル、アクリル酸ラウリル、メタクリル酸ラウリル、アクリル酸ステアリル、メタクリル酸ステアリル、アクリル酸セチル、メタクリル酸セチルなどのアルキル基の炭素数が1〜18の(メタ)アクリル酸アルキルエステル;アクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシルなとの炭素数6〜12のシクロアルキル基を有するシクロアルキル(メタ)アクリレート;アクリル酸ベンジル、メタクリル酸ベンジルなどのアラルキル基の炭素数が7〜12の(メタ)アクリル酸アリールエステル;アクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル、アクリル酸ヒドロキシブチル、メタクリル酸ヒドロキシブチルなどのヒドロキシアルキル基の炭素数が2〜6の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル;アクリル酸メトキシエチル、メタクリル酸メトキシエチル、アクリル酸メトキシブチル、メタクリル酸メトキシブチルなどのアルコキシアルキル基の炭素数が2〜8の(メタ)アクリル酸アルコキシアルキル;アクリル酸エチルカルビトール、メタクリル酸エチルカルビトールなどのアルキル基の炭素数が1〜4の(メタ)アクリル酸アルキルカルビトール;N−メチルアクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド、N−プロピルアクリルアミド、N−プロピルメタクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N−イソプロピルメタクリルアミド、N−tert−ブチルアクリルアミド、N−tert−ブチルメタクリルアミド、N−オクチルアクリルアミド、N−オクチルメタクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N,N−ジエチルメタクリルアミドなどのアルキル基の炭素数が1〜12のアルキル(メタ)アクリルアミド:N−ブトキシメチルアクリルアミド、N−ブトキシメチルメタクリルアミドなどのアルコキシ基の炭素数が1〜6のアルコキシ(メタ)アクリルアミド;アクリロイルモルホリン、メタクリルリロイルモルホリンなどの(メタ)アクリロイルモルホリン;ジアセトンアクリルアミド、ジアセトンジメタクリルアミドなどのジアセトン(メタ)アクリルアミド;スチレン、メチルスチレンなどのスチレン系モノマー;イタコン酸メチル、イタコン酸エチルなどの(メタ)アクリル酸アルキルエステル以外のアルキル基の炭素数が1〜4の脂肪酸アルキルエステル;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどの脂肪酸ビニルエステル;N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタムなどの窒素原子含有モノマー;ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、アクリルアミドメチルプロパンスルホン酸、メタクリルアミドメチルスルホン酸などのスルホン酸類;エチレンオキサイド変性リン酸アクリレート、エチレンオキサイド変性リン酸メタクリレートなどのアルキレンオキサイド変性リン酸(メタ)アクリレート;N−アクリロイルオキシエチル−N,N−ジメチルアンモニウム−α−N−メチルカルボキシベタイン、N−メタクリルリロイルオキシエチル−N,N−ジメチルアンモニウム−α−N−メチルカルボキシベタイン、N−アクリロイルオキシエチル−N,N−ジエチルアンモニウム−α−N−メチルカルボキシベタイン、N−メタクリルリロイルオキシエチル−N,N−ジエチルアンモニウム−α−N−メチルカルボキシベタイン、N−アクリロイルオキシエチル−N,N−ジメチルアンモニウム−β−N−エチルカルボキシベタイン、N−メタクリルリロイルオキシエチル−N,N−ジメチルアンモニウム−β−N−エチルカルボキシベタイン、N−アクリロイルオキシエチル−N,N−ジエチルアンモニウム−β−N−エチルカルボキシベタイン、N−メタクリルリロイルオキシエチル−N,N−ジエチルアンモニウム−β−N−エチルカルボキシベタイン、N−アクリルアミドプロピル−N,N−ジメチルアンモニウム−α−N−メチルカルボキシベタイン、N−メタクリルアミドプロピル−N,N−ジメチルアンモニウム−α−N−メチルカルボキシベタイン、N−アクリルアミドプロピル−N,N−ジエチルアンモニウム−α−N−メチルカルボキシベタイン、N−メタクリルアミドプロピル−N,N−ジエチルアンモニウム−α−N−メチルカルボキシベタイン、N−アクリルアミドプロピル−N,N−ジメチルアンモニウム−β−N−エチルカルボキシベタイン、N−メタクリルアミドプロピル−N,N−ジメチルアンモニウム−β−N−エチルカルボキシベタイン、N−アクリルアミドプロピル−N,N−ジエチルアンモニウム−β−N−エチルカルボキシベタイン、N−メタクリルアミドプロピル−N,N−ジエチルアンモニウム−β−N−エチルカルボキシベタインなどのベタイン系モノマーなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのモノマーは、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0032】
多官能モノマーとしては、例えば、メチレンビスアクリルアミド、メチレンビスメタクリルアミドなどのアルキレン基の炭素数が1〜4のアルキレンビス(メタ)アクリルアミドなどの(メタ)アクリロイル基を2個以上、好ましくは2個有する(メタ)アクリルアミド化合物;ジビニルベンゼン、ジアリルベンゼンなどの炭素−炭素二重結合を2個以上、好ましくは2個または3個有する芳香族化合物;エチレンジアクリレート、エチレンジメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジメタクリレート、2−n−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールジアクリレート、2−n−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールジメタクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレートなどの(メタ)アクリロイル基を2個以上、好ましくは2個または3個有する(メタ)アクリレート化合物;ジアリルアミン、トリアリルアミンなどの炭素−炭素二重結合を2個以上、好ましくは2個または3個有するアミン化合物などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの多官能モノマーは、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0033】
前記他のモノマーのなかでは、柔軟性に優れるとともに高機械的強度を有する水性ゲルを得る観点から、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリルアミド、N−ビニルピロリドン、(メタ)アクリロニトリルおよび2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートが好ましく、(メタ)アクリル酸がより好ましい。
【0034】
モノマー成分における他のモノマーの含有率は、柔軟性に優れるとともに高機械的強度を有する水性ゲルを得る観点から、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下であり、その下限値は0質量%であるが、柔軟性に優れるとともに高機械的強度を有する水性ゲルを得る観点から、5質量%以上であることが好ましい。
【0035】
モノマー成分を重合させる方法としては、例えば、塊状重合法、溶液重合法、乳化重合法、懸濁重合法などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの重合法のなかでは、塊状重合法および溶液重合法が好ましく、溶液重合法がより好ましい。
【0036】
また、モノマー成分の重合は、例えば、ラジカル重合法、リビングラジカル重合法、アニオン重合法、カチオン重合法、付加重合法、重縮合法などの方法によって行なうことができる。
【0037】
モノマー成分を溶液重合法によって重合させる場合には、例えば、モノマー成分を溶媒に溶解させ、得られた溶液を攪拌しながら重合開始剤を当該溶液に添加することによってモノマー成分を重合させることができるほか、重合開始剤を溶媒に溶解させ、得られた溶液を撹拌しながらモノマー成分を当該溶液に添加することによってモノマー成分を重合させることができる。
【0038】
溶媒は、水または水と水以外の親水性有機溶媒とを含有する水性溶媒であることが好ましい。水性溶媒における水の含有率は、通常、50質量%以上であり、その上限値は100質量%である。
【0039】
親水性有機溶媒としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコールなどの炭素数が1〜4の1価の脂肪族アルコール;エチレングリコール、プロピレングリコールなどの脂肪族多価アルコール、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジグライムなどのエーテル;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンなどのアミド;ジメチルスルホキシド、スルホランなどのイオウ含有有機溶媒;酢酸メチル、酢酸エチルなどの酢酸エステルなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの親水性有機溶媒は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。これらの親水性有機溶媒のなかでは、柔軟性に優れるとともに高機械的強度を有する水性ゲルを得る観点から、炭素数が1〜4の1価の脂肪族アルコールおよびジメチルスルホキシドが好ましく、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコールおよびジメチルスルホキシドがより好ましく、メチルアルコール、エチルアルコールおよびジメチルスルホキシドがさらに好ましい。
【0040】
溶媒の量は、特に限定されないが、通常、モノマー成分100質量部あたり、50〜400質量部であることが好ましく、100〜350質量部であることがより好ましい。
【0041】
モノマー成分を重合させる際には、分子量を調整するために連鎖移動剤を用いてもよい。連鎖移動剤は、通常、モノマー成分と混合することによって用いることができる。連鎖移動剤としては、例えば、2−(ドデシルチオカルボノチオイルチオ)−2−メチルプロピオン酸、2−(ドデシルチオカルボノチオイルチオ)プロピオン酸、メチル2−(ドデシルチオカルボノチオイルチオ)−2−メチルプロピオネート、2−(ドデシルチオカルボノチオイルチオ)−2−メチルプロピオン酸3−アジド−1−プロパノールエステル、2−(ドデシルチオカルボノチオイルチオ)−2−メチルプロピオン酸ペンタフルオロフェニルエステル、ラウリルメルカプタン、ドデシルメルカプタン、チオグリセロールなどのメルカプタン基含有化合物、次亜リン酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウムなどの無機塩などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの連鎖移動剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。連鎖移動剤の量は、特に限定されないが、通常、モノマー成分100質量部あたり0.01〜10質量部程度であればよい。
【0042】
モノマー成分を重合させる際には、重合開始剤を用いることが好ましい。重合開始剤としては、例えば、熱重合開始剤、光重合開始剤などが挙げられる。
【0043】
熱重合開始剤としては、例えば、アゾイソブチロニトリル、アゾイソ酪酸メチル、アゾビスジメチルバレロニトリルなどのアゾ系重合開始剤、過酸化ベンゾイル、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどの過酸化物系重合開始剤などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの重合開始剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0044】
重合開始剤として熱重合開始剤を用いる場合、当該熱重合開始剤の量は、モノマー成分100質量部あたり、通常、0.01〜20質量部程度であることが好ましい。
【0045】
光重合開始剤としては、例えば、2−オキソグルタル酸、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2−メチル[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、ベンゾフェノン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル1−プロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)ブタン−1−オン、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキサイドなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの重合開始剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0046】
重合開始剤として光重合開始剤を用いる場合、当該光重合開始剤の量は、モノマー成分100質量部あたり、通常、0.01〜20質量部程度であることが好ましい。
【0047】
モノマー成分を重合させる際の重合反応温度および雰囲気については、特に限定がない。通常、重合反応温度は、50〜120℃程度である。重合反応時の雰囲気は、例えば、窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気であることが好ましい。また、モノマー成分の重合反応時間は、重合反応温度などによって異なるので一概には決定することができないが、通常、3〜20時間程度である。
【0048】
以上のようにしてモノマー成分を重合させることにより、ウレア系ポリマーが得られる。
【0049】
ウレア系ポリマーの重量平均分子量は、柔軟性に優れるとともに高機械的強度を有する水性ゲルを得る観点から、好ましくは1万〜50万、より好ましくは5万〜10万である。
【0050】
なお、ウレア系ポリマーの重量平均分子量は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(以下、GPCという)分析装置〔東ソー(株)製、HLC8220GPC〕を用い、展開液として100mM臭化ナトリウム水溶液を用いて調べたときの値である。
【0051】
前記で得られたウレア系ポリマーをゲル化させることにより、水性ゲルが得られる。なお、溶媒として水を用い、モノマー成分を溶液重合させた場合には、直接的にウレア系ポリマーからなる水性ゲルを得ることができる。また、ウレア系ポリマーに水を含有させてウレア系ポリマーをゲル化させることによっても水性ゲルを得ることができる。しかし、水性ゲルの親水性を向上させ、柔軟性に優れるとともに高機械的強度を有する水性ゲルを得る観点から、溶媒として水性溶媒を用い、モノマー成分を溶液重合させることにより、ウレア系ポリマーからなる水性ゲルを得ることが好ましい。
【0052】
本発明の水性ゲルの含水率は、水性ゲルの親水性を向上させ、柔軟性に優れるとともに高機械的強度を有する水性ゲルを得る観点から、好ましくは0.5〜20重量%、より好ましくは1〜15重量%、さらに好ましくは3〜10重量%である。モノマー成分を水性溶媒の存在下で溶液重合によって調製した場合、生成したウレア系ポリマーを含有する反応溶液をそのままの状態で水性ゲルとして用いることができるが、必要により、水性ゲルにおけるウレア系ポリマーの固形分濃度が15〜80質量%程度となるように、前記反応溶液に水性溶媒を添加してもよく、水性ゲルに含まれている溶媒を蒸発させることによって除去してもよい。
【0053】
本発明の水性ゲルには、本発明の目的を阻害しない範囲内で、抗菌剤、着色剤、香料などが適量で含まれていてもよい。
【0054】
本発明の水性ゲルの形状は、任意であり、例えば、モノマー成分を所定の内面形状を有する成形型内に入れて重合させた場合には、当該成形型の内面形状に対応した形状を有する水性ゲルを得ることができる。また、モノマー成分を基材上に流延した場合には、例えば、厚さが50μm〜5mm程度のフィルム状ないしシート状の水性ゲルを得ることができる。
【0055】
シート状の水性ゲルの好適な製造方法としては、例えば、モノマー成分を水性溶媒に溶解させた溶液を用いてモノマー成分を溶液重合させることにより、ウレア系ポリマーからなるシート状の水性ゲルを製造する方法などが挙げられるが、本発明は、かかる方法のみに限定されるものではない。シート状の水性ゲルを製造する方法の具体例としては、モノマー成分を水性溶媒に溶解させた溶液を用いてモノマー成分を溶液重合させる際に、当該モノマー成分の溶液をシートの厚さに対応する厚さとなるように容器に入れ、当該容器内でモノマー成分を重合させる方法、モノマー成分を水性溶媒に溶解させた溶液を用いてモノマー成分を溶液重合させることによって得られた水性ゲルを所望の厚さとなるように延ばすことによってシート状の水性ゲルを得る方法、モノマー成分を水性溶媒に溶解させた溶液を用いてモノマー成分を溶液重合させることによって得られた水性ゲルを所望の厚さとなるようにスライスすることにより、シート状の水性ゲルを得る方法などが挙げられるが、本発明は、かかる方法のみに限定されるものではない。
【0056】
以上のようにして本発明の水性ゲルが得られる。本発明の水性ゲルの大きさおよび厚さは、その用途などによって異なることから一概には決定することができない。したがって、本発明の水性ゲルの大きさおよび厚さは、その用途などに応じて適宜調整することが好ましい。
【0057】
本発明の水性ゲルの裏面には、必要により、織布、不織布、樹脂シート、樹脂フィルムなどの補強材が設けられていてもよい。また、本発明の水性ゲルの裏面に樹脂シート、樹脂フィルムなどの補強材を設ける場合には、水性ゲルと補強材との親和性を向上させる観点から、例えば、補強材の表面にアニオン性基を有するウレア系ポリマーなどからなるウレア系ポリマー層が形成されていてもよい。前記アニオン性基を有するウレア系ポリマーは、例えば、アクリルアミドメチルプロパンスルホン酸、メチレンビスアクリルアミドなどのモノマー成分を溶液重合法などの重合方法で重合させることによって形成することができる。
【0058】
以上説明したように、本発明の水性ゲルは、柔軟性に優れるとともに高機械的強度を有する水性ゲルを得ることから、種々の用途に用いることができる。
【0059】
本発明の水性ゲルの用途としては、例えば、ドラッグデリバリーシステム用材料、医薬品に用いられるpH調整剤、医療品の成形用補助材、医療用包装材料、人工血管、血液透析膜、カテーテル、コンタクトレンズ、人工水晶体、血液フィルター、血液保存バッグ、人工臓器、バイオチップ、細胞培養シート、糖鎖合成機器用基材、分子シャペロン材料などの医薬用材料;湿布薬、絆創膏、床ずれ防止材、創傷被覆材などの医薬品;頭髪化粧料、染毛剤、保湿クリーム、洗顔クリーム、シャンプー、リンス、コンディショナー、口紅などの化粧品;芳香剤、消臭剤、液体洗剤などのトイレタリー用品;保護フィルムの接着面、自己修復フィルムなどにおけるコーティング材;船底塗料、自動車用高弾性塗料、自己修復塗料、防曇塗料、防汚塗料などの塗料;スクリーン印刷インキ、オフセットインキなどの印刷インキ;フレキシブル電池、リチウムイオン二次電池などの電池の電解質用材料などの電池材料;人工筋肉、圧電素子などのアクチュエーター材料などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【実施例】
【0060】
次に、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明は、かかる実施例のみに限定されるものではない。
【0061】
実施例1
厚さが3mmで一辺の長さが10cmのガラス板2枚を厚さ5mmのシリコーンゴムをシールとして隔てたセルを用意した。
【0062】
次に、2−ウレアエチルメタクリレート6.84g、メタクリル酸13.78gおよび光重合開始剤として2−オキソグルタル酸0.1gをジメチルスルホキシド100gに溶解させることにより、モノマー成分溶液を得た。
【0063】
次に、前記で得られたモノマー成分溶液を前記セルに入れ、その側面から紫外線照射機〔UVP(株)製、品番:95−0042−12〕を用いて照度4mW/cm2、照射時間6時間、積算光量86.4J/cm2にて紫外線を照射することにより、樹脂フィルム上に水性ゲル前駆体を得た。前記で得られた水性ゲル前駆体をイオン交換水中に約25℃で1週間浸漬させ、水性ゲル前駆体に含まれている残存モノマーおよびジメチルスルホキシドを除去することにより、水性ゲルを得た。
【0064】
前記で得られた水性ゲルにおける含水率を当該水性ゲルの凍結乾燥前後の質量に基づいて求めたところ、当該含水率は70%であった。
【0065】
次に、前記で得られた水性ゲルを縦9cm、横5mm、厚さ:5mmとなるようにカッターナイフで裁断し、得られた試験片の引張り強さおよびヤング率を引張試験機〔オリエンテック(株)製、品番:Tensilon RTC−1310A〕で測定した。その結果、試験片の引張り強さは1.09MPaであり、ヤング率は4.94MPaであった。
【0066】
実施例2
実施例1において、2−ウレアエチルメタクリレートの量を13.76gに、アクリル酸の量を10.32gに変更したこと以外は、実施例1同様にして水性ゲルを得た。
【0067】
前記で得られた水性ゲルにおける含水率を当該水性ゲルの凍結乾燥前後の質量に基づいて求めたところ、当該含水率は70%であった。
【0068】
次に、前記で得られた水性ゲルを用いて実施例1と同様にして試験片を作製し、当該試験片の引張り強さおよびヤング率を測定した。その結果、試験片の引張り強さは1.29MPaであり、ヤング率は13.75MPaであった。
【0069】
実施例3
実施例1において、2−ウレアエチルメタクリレートの量を20.64gに、アクリル酸の量を6.88gに変更したこと以外は、実施例1同様にして水性ゲルを得た。
【0070】
前記で得られた水性ゲルにおける含水率を当該水性ゲルの凍結乾燥前後の質量に基づいて求めたところ、当該含水率は52%であった。
【0071】
次に、前記で得られた水性ゲルを用いて実施例1と同様にして試験片を作製し、当該試験片の引張り強さおよびヤング率を測定した。その結果、試験片の引張り強さは2.46MPaであり、ヤング率は25.7MPaであった。
【0072】
実施例4
実施例1において、2−ウレアエチルメタクリレートの量を24.08gに、アクリル酸の量を5.16gに変更したこと以外は、実施例1同様にして水性ゲルを得た。
【0073】
前記で得られた水性ゲルにおける含水率を当該水性ゲルの凍結乾燥前後の質量に基づいて求めたところ、当該含水率は20%であった。
【0074】
次に、前記で得られた水性ゲルを用いて実施例1と同様にして試験片を作製し、当該試験片の引張り強さおよびヤング率を測定した。その結果、試験片の引張り強さは9.83MPaであり、ヤング率は50.7MPaであった。
【0075】
実施例5
実施例1において、2−ウレアエチルメタクリレートの量を27.52gに、アクリル酸の量を3.44gに変更したこと以外は、実施例1同様にして水性ゲルを得た。
【0076】
前記で得られた水性ゲルにおける含水率を当該水性ゲルの凍結乾燥前後の質量に基づいて求めたところ、当該含水率は25%であった。
【0077】
次に、前記で得られた水性ゲルを用いて実施例1と同様にして試験片を作製し、当該試験片の引張り強さおよびヤング率を測定した。その結果、試験片の引張り強さは5.03MPaであり、ヤング率は3.5MPaであった。
【0078】
実施例6
実施例1において、2−ウレアエチルメタクリレートの量を34.40gに、アクリル酸の量を0gに(2−ウレアエチルメタクリレートのみ)変更したこと以外は、実施例1同様にして水性ゲルを得た。
【0079】
前記で得られた水性ゲルにおける含水率を当該水性ゲルの凍結乾燥前後の質量に基づいて求めたところ、当該含水率は37%であった。
【0080】
次に、前記で得られた水性ゲルを用いて実施例1と同様にして試験片を作製し、当該試験片の引張り強さおよびヤング率を測定した。その結果、試験片の引張り強さは0.32MPaであり、ヤング率は0.07MPaであった。
【0081】
実施例7
厚さが3mmで一辺の長さが10cmのガラス板2枚を厚さ5mmのシリコーンゴムをシールとして隔てたセルを用意した。
【0082】
次に、2−ウレアエチルメタクリレート17.1gおよび光重合開始剤として2−オキソグルタル酸0.1gをジメチルスルホキシド100gに溶解させることにより、モノマー成分溶液を得た。
【0083】
次に、前記で得られたモノマー成分溶液を前記セルに入れ、その側面から紫外線照射機〔UVP(株)製、品番:95−0042−12〕を用いて照度4mW/cm2、照射時間6時間、積算光量86.4J/cm2にて紫外線を照射することにより、樹脂フィルム上に水性ゲル前駆体を得た。前記で得られた水性ゲル前駆体をジメチルスルホキシド:イオン交換水の容量比が50:50である溶液に約25℃で1時間浸させた後、ジメチルスルホキシド:イオン交換水の容量比が30:70、20:80、10:90、5:95または0:100である溶液に順に浸漬させ、水性ゲル前駆体に含まれている残存モノマーおよびジメチルスルホキシドを除去することにより、水性ゲルを得た。
【0084】
前記で得られた水性ゲルにおける含水率を当該水性ゲルの凍結乾燥前後の質量に基づいて求めたところ、当該含水率は40%であった。
【0085】
次に、前記で得られた水性ゲルを用いて実施例1と同様にして試験片を作製し、当該試験片の引張り強さおよびヤング率を測定した。その結果、試験片の引張り強さは0.90MPaであり、ヤング率は0.27MPaであった。
【0086】
実施例8
厚さが3mmで一辺の長さが10cmのガラス板2枚を厚さ5mmのシリコーンゴムをシールとして隔てたセルを用意した。
【0087】
次に、2−ステアリルウレアエチルメタクリレート40.1gおよび光重合開始剤として2−オキソグルタル酸0.1gをシクロヘキサノン100gに溶解させることにより、モノマー成分溶液を得た。
【0088】
次に、前記で得られたモノマー成分溶液を前記セルに入れ、その側面から紫外線照射機〔UVP(株)製、品番:95−0042−12〕を用いて照度2mW/cm2、照射時間12時間、積算光量86.4J/cm2にて紫外線を照射することにより、有機溶剤系ゲルを得た。
【0089】
前記で得られた有機溶剤系ゲルにおける溶剤含有率を当該有機溶剤系ゲルの凍結乾燥前後の質量に基づいて求めたところ、当該溶剤含有率は71%であった。
【0090】
次に、前記で得られた有機溶剤系ゲルを用いて実施例1と同様にして試験片を作製し、当該試験片の引張り強さおよびヤング率を測定した。その結果、試験片の引張り強さは1.8MPaであり、ヤング率は50.0MPaであった。
【0091】
実施例9
実施例8において、モノマー成分を2−ステアリルウレアエチルメタクリレート20.5gおよび2−ラウリルウレアエチルメタクリレート17.0gに変更したこと以外は、実施例8と同様にして有機溶剤系ゲルを得た。
【0092】
前記で得られた有機溶剤系ゲルにおける有機溶剤含有率を当該有機溶剤系ゲルの凍結乾燥前後の質量に基づいて求めたところ、当該有機溶剤含有率は73%であった。
【0093】
次に、前記で得られた有機溶剤系ゲルを用いて実施例1と同様にして試験片を作製し、当該試験片の引張り強さおよびヤング率を測定した。その結果、試験片の引張り強さは1.1MPaであり、ヤング率は2.5MPaであった。
【0094】
実施例10
実施例5で得られた水性ゲルを0.15Mの塩化ナトリウム水溶液に浸漬することにより、塩水交換された水性ゲルを得た。
【0095】
前記で得られた水性ゲルにおける含水率を当該水性ゲルの凍結乾燥前後の質量に基づいて求めたところ、当該含水率は28%であった。
【0096】
次に、前記で得られた水性ゲルを用いて実施例1と同様にして試験片を作製し、当該試験片の引張り強さおよびヤング率を測定した。その結果、試験片の引張り強さは4.00MPaであり、ヤング率は3.2MPaであった。
【0097】
比較例1
厚さが3mmで一辺の長さが10cmのガラス板2枚を厚さ5mmのシリコーンゴムをシールとして隔てたセルを用意した。
【0098】
次に、アクリルアミドメチルプロパンスルホン酸(AMPS)14.1g、メチレンビスアクリルアミド(MBAA)0.6gおよび光重合開始剤として2−オキソグルタル酸0.01gを蒸留水100gに溶解させることにより、溶液Aを得た。
【0099】
一方、アクリルアミド7.0g、メチレンビスアクリルアミド0.6gおよび2−オキソグルタル酸0.01gを蒸留水100gに溶解させることにより、モノマー成分の水溶液(溶液B)を得た。
【0100】
次に、溶液Aを前記セルに入れ、その側面から紫外線照射機〔UVP(株)製、品番:95−0042−12〕を用いて照度4mW/cm2、照射時間6時間、積算光量86.4J/cm2にて紫外線を照射することにより、樹脂フィルム上にアクリルアミドメチルプロパンスルホン酸−メチレンビスアクリルアミドコポリマーからなるポリマー層を形成させた。その後、溶液Bを前記セルに入れ、均一な組成となるように撹拌した後、再度、セルの側面から前記紫外線照射機を用いて照度4mW/cm2、照射時間6時間、積算光量86.4J/cm2にて紫外線を照射することにより、水性ゲルを得た。
【0101】
前記で得られた水性ゲルにおける含水率を当該水性ゲルの凍結乾燥前後の質量に基づいて求めたところ、当該含水率は90%であった。
【0102】
次に、前記で得られた水性ゲルを用いて実施例1と同様にして試験片を作製し、当該試験片の引張り強さおよびヤング率を測定した。その結果、試験片の引張り強さは0.95MPaであり、ヤング率は0.25MPaであった。
【0103】
以上の結果から、本発明の水性ゲルは、2種類のポリマーを相互に複合させた構造を有していないにもかかわらず、柔軟性に優れ、しかも高機械的強度を有することがわかる。また、本発明の水性ゲルの製造方法によれば、柔軟性に優れるとともに高機械的強度を有する水性ゲルを効率よく容易に製造することができることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0104】
本発明の水性ゲルは、前記したように、柔軟性に優れるとともに機械的強度が高いことから、例えば、人工軟骨、人工皮膚、人工乳房などの人工器官用材料;カテーテル、ガイドワイヤーなどのコーティング剤、血液浄化フィルターの回路用コーティング剤、人工関節の駆動部用コーティング剤などのコーティング剤;細胞培養シートなどの医療機器用材料;薬剤をゲル状で体内に投与するための医療用材料;化粧パック、絆創膏、芳香剤用基材、トイレタリー用品などに用いられるゲル体;化粧品用原料;液晶画面保護用フィルムの接着層の原料;フジツボなどの貝類の付着防止用船底塗料などの塗料;自動車の振動を吸収するための防振材料;リチウムイオン二次電池の電解質の原料;アクチュエーター材料、圧電素子などのエネルギー関連材料;印刷材料などの用途に使用することが期待されるものである。