(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記分割領域設定部が、前記複数の画像に含まれる大動脈の領域の画素値の変化に基づいて、前記複数の画像の中から、前記左心房および左心室の領域の画素値よりも前記右心房および右心室の領域の画素値の方が高い第1の画像と前記右心房および右心室の領域の画素値よりも前記左心房および左心室の領域の画素値の方が高い第2の画像とを特定し、前記第1の画像を用いて前記第1の分割領域を設定し、前記第2の画像を用いて前記第2の分割領域を設定する請求項4に記載の画像位置合わせ装置。
前記分割領域設定部が、前記分割領域に対応する領域が予め設定された基準画像を用いて、前記複数の画像のうちの1つの画像に対して前記分割領域を設定し、該分割領域の設定結果を用いて、前記1つの画像以外の画像に対して分割領域を設定する請求項1から9いずれか1項に記載の画像位置合わせ装置。
前記画像取得部が、前記位置合わせ処理対象として心臓画像を含む画像を取得し、かつ複数の心拍における同じ心位相のタイミングで撮影された複数の画像を取得する請求項1から12いずれか1項に記載の画像位置合わせ装置。
【背景技術】
【0002】
従来、心筋、脳、肝臓および膵臓などの血流量または脳内の血流量を計測する手法として、パフュージョン撮影が行われている。
【0003】
パフュージョン撮影とは、被検体に造影剤を注入し、CT(Computed Tomography)装置などによって異なるタイミングで複数回撮影する撮影方法である。フェーズ(撮影のタイミング)によって、異なる解剖構造が造影された画像が得られる。具体的には、心臓の場合、初期のフェーズでは造影剤が静脈から注入されることによって、右心房および右心室が造影剤によって染まり、続いて左心室および左心房の順に造影剤が流れ、これにより心臓画像のコントラストが変化する。
【0004】
パフュージョン撮影によって得られた画像は、パフュージョン解析に用いられる。パフュージョン撮影および解析の主な目的は、対象臓器の血流を解析し、その結果から病気を診断することである。たとえば心筋パフュージョン解析によって得られる血流量は心筋梗塞の診断に用いられる。
【0005】
パフュージョン(血流)の定量的解析手法にはMaximum Slope法(たとえば非特許文献1参照)やDeconvolution法(たとえば非特許文献2参照)などがある。これらの定量的解析には「時間濃度曲線(Time Density Curve(以下、TDCという))」が用いられる。TDCとは、臓器のある位置(領域)における画素値(CT値)の時間変化(造影剤濃度の時間変化)を表したものである。
【0006】
精度の高い定量的解析を行うには、パフュージョン撮影した画像から正確にTDCを作成する必要がある。そのためには、複数フェーズの画像から、同じ解剖学的位置(領域)の画素値を参照してTDCを作成する必要がある。これには、フェーズ間での対象臓器の位置を正確に合わせる必要があり、画像位置合わせが行われる。
【0007】
画像の位置合わせは、一方の画像I
F(x)(Fixed Image)の点xと、他方の画像I
M(x)(Moving Image)の点T(x)とが、解剖学的に一致するように幾何学的変換Tを求める問題である。幾何学的変換Tをパラメタμで記述した場合には、下式(1)に基づいて、最適解を求める問題となる。幾何学的変換Tには、剛体変換(平行移動および回転)、Affine変換および非剛体変換(B-SplineおよびDiffeomorphism)などがある。(たとえば非特許文献3参照)
【0008】
【数1】
なお、上式(1)におけるSは画像I
F(x)と画像I
M(T(・;x))の一致度を表す評価関数であり、ここでは、Sが小さくなるほど2画像間は一致している。一致度の評価指標としては、Sum of Squared Difference(SSD; 2画像間の同位置における画素値の差の二乗の合計)や相互情報量(画素値の間の統計的な依存関係を定量化する指標の1つ)などの種々の評価指標が知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ここで、上述したような画像の位置合わせを行う場合、異なる解剖構造が造影された画像同士の位置合わせが問題となる。たとえば一方の画像では高い画素値を有する構造が、他方の画像では低い画素値を示している場合、同じ領域が有する画素値が異なっているため、その一致度が低く評価され、正確に位置合わせすることができない。
【0012】
このような問題を解決する方法として、画像全体に画素値変換を行う方法が考えられる。具体的には、高い画素値を低い画素値に変換する方法が考えられる。
【0013】
しかしながら、この手法の場合、位置合わせ対象臓器の内部の構造の情報を失う。たとえば心筋パフュージョンの画像の場合、2つの画像間のうち一方の画像は、右心房および右心室だけが造影剤によって高い画素値を示し(
図2I参照)、他方の画像が右心房および右心室だけでなく左心房および左心室も高い画素値を示す(
図2II参照)場合がある。このような場合、画像全体に同じ画素値変換を施すと、一方の画像しか高い画素値を示さない左心房および左心室に関しては上述の問題が解決するので良いが、右心室および右心房はどちらも高い画素値を示しているので、位置合わせに用いることができる形状情報が失われてしまい、臓器内部の位置を合わせることができなくなる。
【0014】
なお、特許文献1には、CT画像と超音波画像といった異なるモダリティで撮影された画像同士の位置合わせに関する技術が提案されているが、上述した問題を解決する方法については何も提案されていない。
【0015】
本発明は、上記事情に鑑み、一方の画像では高い画素値を有する構造が、他方の画像では低い画素値を示している場合でも、画像間のコントラスト差を低減することができ、高精度に位置合わせを行うことができる画像位置合わせ装置および方法並びにプログラムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の第1の画像位置合わせ装置は、位置合わせ処理対象を含む複数の画像を取得する画像取得部と、複数の画像の各位置合わせ処理対象を分割して分割領域を設定する分割領域設定部と、各位置合わせ処理対象の同じ位置に設定された分割領域の組毎に、その組の各分割領域の画素値に基づいて、各分割領域の画素値変換方法を決定する画素値変換方法決定部と、画素値変換方法決定部によって決定された分割領域の画素値変換方法を用いて、分割領域の組の分割領域内の画像に画素値変換を施す画素値変換部と、画素値変換部によって画素値変換の施された複数の画像に対して位置合わせ処理を施す位置合わせ処理部とを備える。
【0017】
また、上記本発明の第1の画像位置合わせ装置においては、画素値変換方法決定部が、組の各分割領域の画素値に基づいて、各分割領域の画素値変換を行うか否かを決定することができる。
【0018】
本発明の第2の画像位置合わせ装置は、位置合わせ処理対象を含む複数の画像を取得する画像取得部と、複数の画像の各位置合わせ処理対象を分割して分割領域を設定する分割領域設定部と、各位置合わせ処理対象の同じ位置に設定された分割領域の組毎に、その組の各分割領域の一致度を評価関数によって評価して位置合わせ処理を施す位置合わせ処理部とを備え、位置合わせ処理部が、分割領域の組毎に、その組の各分割領域の画素値に基づいて評価関数を変更して位置合わせ処理を施す。
【0019】
また、上記本発明の第1および第2の画像位置合わせ装置において、画像取得部は、位置合わせ処理対象として心臓画像を含む画像を取得し、分割領域設定部は、分割領域として、右心房および右心室を含む第1の分割領域と左心房および左心室を含む第2の分割領域とを設定することができる。
【0020】
また、上記本発明の第1および第2の画像位置合わせ装置において、分割領域設定部は、複数の画像に含まれる大動脈の領域の画素値の変化に基づいて、第1の分割領域と第2の分割領域を設定することができる。
【0021】
また、上記本発明の第1および第2の画像位置合わせ装置において、分割領域設定部は、複数の画像に含まれる大動脈の領域の画素値の変化に基づいて、複数の画像の中から、左心房および左心室の領域の画素値よりも右心房および右心室の領域の画素値の方が高い第1の画像と右心房および右心室の領域の画素値よりも左心房および左心室の領域の画素値の方が高い第2の画像とを特定し、第1の画像を用いて第1の分割領域を設定し、第2の画像を用いて第2の分割領域を設定することができる。
【0022】
また、上記本発明の第1および第2の画像位置合わせ装置において、画像取得部は、位置合わせ処理対象として心臓画像を含む画像を取得し、分割領域設定部は、分割領域として、右心房および右心室を含む第1の分割領域と左心房および左心室を含む第2の分割領域と心筋を含む第3の分割領域とを設定することができる。
【0023】
また、上記本発明の第1および第2の画像位置合わせ装置において、画像取得部は、位置合わせ処理対象として心臓画像を含む画像を取得し、分割領域設定部は、分割領域として、右心房を含む第1の分割領域と右心室を含む第2の分割領域と左心房を含む第3の分割領域と左心室を含む第4の分割領域とを設定することができる。
【0024】
また、上記本発明の第1および第2の画像位置合わせ装置において、画像取得部は、位置合わせ処理対象として心臓画像を含む画像を取得し、分割領域設定部は、分割領域として、右心房を含む第1の分割領域と右心室を含む第2の分割領域と左心房を含む第3の分割領域と左心室を含む第4の分割領域と心筋を含む第5の分割領域とを設定することができる。
【0025】
また、上記本発明の第1および第2の画像位置合わせ装置において、画像取得部は、位置合わせ処理対象として心臓画像を含む画像を取得し、分割領域設定部は、心臓の血流方向に垂直な断面によって心臓画像を分割して複数の分割領域を設定する。
【0026】
また、上記本発明の第1および第2の画像位置合わせ装置において、分割領域設定部は、分割領域に対応する領域が予め設定された基準画像を用いて、複数の画像のうちの1つの画像に対して分割領域を設定し、分割領域の設定結果を用いて、上記1つの画像以外の画像に対して分割領域を設定することができる。
【0027】
また、上記本発明の第1の画像位置合わせ装置において、画素値変換部は、分割領域内の画像の画素値を低くする画素値変換を施すことができる。
【0028】
また、上記本発明の第1および第2の画像位置合わせ装置において、画像取得部は、異なる時点で撮影された複数の画像を取得することができる。
【0029】
また、上記本発明の第1および第2の画像位置合わせ装置において、画像取得部は、位置合わせ処理対象として心臓画像を含む画像を取得し、かつ複数の心拍における同じ心位相のタイミングで撮影された複数の画像を取得することができる。
【0030】
本発明の第1の画像位置合わせ方法は、位置合わせ処理対象を含む複数の画像を取得し、複数の画像の各位置合わせ処理対象を分割して分割領域を設定し、各位置合わせ処理対象の同じ位置に設定された分割領域の組毎に、その組の各分割領域の画素値に基づいて、各分割領域の画素値変換方法を決定し、その決定した分割領域の画素値変換方法を用いて、分割領域の組の分割領域内の画像に画素値変換を施し、画素値変換の施された複数の画像に対して位置合わせ処理を施す。
【0031】
本発明の第2の画像位置合わせ方法は、位置合わせ処理対象を含む複数の画像を取得し、複数の画像の各位置合わせ処理対象を分割して分割領域を設定し、各位置合わせ処理対象の同じ位置に設定された分割領域の組毎に、その組の各分割領域の一致度を評価関数によって評価して位置合わせ処理を施す際、分割領域の組毎に、その組の各分割領域の画素値に基づいて評価関数を変更して位置合わせ処理を施す。
【0032】
本発明の第1の画像位置合わせプログラムは、コンピュータを、位置合わせ処理対象を含む複数の画像を取得する画像取得部と、複数の画像の各位置合わせ処理対象を分割して分割領域を設定する分割領域設定部と、各位置合わせ処理対象の同じ位置に設定された分割領域の組毎に、その組の各分割領域の画素値に基づいて、各分割領域の画素値変換方法を決定する画素値変換方法決定部と、画素値変換方法決定部によって決定された分割領域の画素値変換方法を用いて、分割領域の組の分割領域内の画像に画素値変換を施す画素値変換部と、画素値変換部によって画素値変換の施された複数の画像に対して位置合わせ処理を施す位置合わせ処理部として機能させる。
【0033】
本発明の第2の画像位置合わせプログラムは、コンピュータを、位置合わせ処理対象を含む複数の画像を取得する画像取得部と、複数の画像の各位置合わせ処理対象を分割して分割領域を設定する分割領域設定部と、各位置合わせ処理対象の同じ位置に設定された分割領域の組毎に、その組の各分割領域の一致度を評価関数によって評価して位置合わせ処理を施す位置合わせ処理部として機能させる画像位置合わせプログラムであって、位置合わせ処理部が、分割領域の組毎に、その組の各分割領域の画素値に基づいて評価関数を変更して位置合わせ処理を施す。
【発明の効果】
【0034】
本発明の第1の画像位置合わせ装置および方法並びにプログラムによれば、位置合わせ処理対象を含む複数の画像を取得し、複数の画像の各位置合わせ処理対象を分割して分割領域を設定する。そして、各位置合わせ処理対象の同じ位置に設定された分割領域の組毎に、その組の各分割領域の画素値に基づいて、各分割領域の画素値変換方法を決定し、その決定した分割領域の画素値変換方法を用いて、分割領域の組の分割領域内の画像に画素値変換を施し、その画素値変換の施された複数の画像に対して位置合わせ処理を施す。このように分割領域毎に画素値変換方法を決定して画素値変換を行うことによって、一方の画像では高い画素値を有する構造が、他方の画像では低い画素値を示している場合でも、画像間のコントラスト差を低減することができ、高精度に位置合わせを行うことができる。
【0035】
本発明の第2の画像位置合わせ装置および方法並びにプログラムによれば、位置合わせ処理対象を含む複数の画像を取得し、複数の画像の各位置合わせ処理対象を分割して分割領域を設定する。そして、各位置合わせ処理対象の同じ位置に設定された分割領域の組毎に、その組の各分割領域の一致度を評価関数によって評価して位置合わせ処理を施し、この際、分割領域の組毎に、その組の各分割領域の画素値に基づいて評価関数を変更して位置合わせ処理を施す。このように分割領域毎に評価関数を変更して位置合わせ処理を行うことによって、一方の画像では高い画素値を有する構造が、他方の画像では低い画素値を示している場合でも、画像間のコントラスト差を低減することができ、高精度に位置合わせを行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明の画像位置合わせ装置および方法並びにプログラムの第1の実施形態を用いた医用画像診断支援システムについて、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本実施形態の医用画像診断支援システムの概略構成を示すブロック図である。
【0038】
本実施形態の医用画像診断支援システムは、心臓などを異なる時点で撮影した2以上の画像を取得し、これらの画像の位置合わせを行った後に、その2以上の画像を用いてパフュージョン解析を行うものである。
【0039】
本実施形態の医用画像診断支援システムは、具体的には、
図1に示すように、画像位置合わせ装置1と、医用画像保管サーバ2と、表示装置3と、入力装置4とを備えている。
【0040】
画像位置合わせ装置1は、コンピュータに本実施形態の画像位置合わせプログラムをインストールしたものである。
【0041】
画像位置合わせ装置1は、中央処理装置(CPU(central processing unit))、半導体メモリ、およびハードディスクやSSD(Solid State Drive)等のストレージデバイスを備えている。ストレージデバイスには、本実施形態の画像位置合わせプログラムがインストールされており、この画像位置合わせプログラムが中央処理装置によって実行されることによって、
図1に示す画像取得部10、分割領域設定部11、画素値変換方法決定部12、画素値変換部13、位置合わせ処理部14、パフュージョン解析部15および表示制御部16が動作する。
【0042】
画像位置合わせプログラムは、DVD(Digital Versatile Disc)およびCD−ROM(Compact Disc Read Only Memory)などの記録媒体に記録されて配布され、その記録媒体からコンピュータにインストールされる。または、画像位置合わせプログラムは、ネットワークに接続されたサーバコンピュータの記憶装置もしくはネットワークストレージに対して外部からアクセス可能な状態で記憶され、要求に応じてコンピュータにダウンロードされ、インストールされる。
【0043】
画像取得部10は、予め撮影された3次元画像6を取得するものである。3次元画像6は、たとえばCT装置やMRI(Magnetic Resonance Imaging)装置などによって患者を撮影したものである。本実施形態の画像取得部10は、いわゆるパフュージョン撮影によって撮影された3次元画像6を取得するものであり、造影剤が注入された心臓を時系列に撮影した2以上のフェーズの心臓画像を取得する。
【0044】
より具体的には、画像取得部10は、撮影間隔が1〜数心拍の2以上の心臓画像を3次元画像6として取得する。2以上の心臓画像は、各心拍の収縮期において撮影されたものであることが望ましい。各心拍の収縮期において撮影された各心臓画像に含まれる心臓の形状に大きな違いはなく、1cm前後のずれである。この1cm程度のずれが、後述する位置合わせ処理によって調整される。なお、本実施形態においては収縮期の心臓画像を取得するようにしたが、これに限らず、心臓の形状がほぼ一致するタイミングで取得された心臓画像であればその他のフェーズの心臓画像を取得するようにしてもよい。
【0045】
本実施形態においては、造影剤が注入された心臓を撮影した3次元画像6を取得するようにしたが、撮影対象は心臓に限らず、造影剤が注入された肝臓、膵臓または脳などを撮影した画像を3次元画像6として取得するようにしてもよい。
【0046】
また、3次元画像6としては、アキシャル断層画像、サジタル断層画像およびコロナル断層画像などの断層画像からなるボリュームデータを取得してもよいし、断層画像単体を取得するようにしてもよい。
【0047】
3次元画像6は、医用画像保管サーバ2に患者の識別情報とともに予め保管されており、画像取得部10は、入力装置4などを用いてユーザによって入力された患者の識別情報に基づいて、その識別情報を有する3次元画像6を医用画像保管サーバ2から読み出して一時記憶するものである。
【0048】
分割領域設定部11は、画像取得部10によって取得された2以上の3次元画像6に含まれる位置合わせ処理対象を分割して分割領域を設定するものである。本実施形態における位置合わせ処理対象は心臓である。
【0049】
本実施形態の分割領域設定部11は、分割領域として、各3次元画像6内の心臓領域における右心房および右心室を含む第1の分割領域と、左心房および左心室を含む第1の分割領域とを設定する。
【0050】
図2I〜
図2IIIは、各心拍の収縮期において撮影された各心臓画像の一例を示す図である。
図2I〜
図2IIIにおける領域R1が右心房の領域であり、領域R2が右心室の領域であり、領域L1が左心房の領域であり、領域L2が左心室の領域である。なお、
図2Iについては、左心室と心筋との境界が明確でないので、これらの領域の境界は図示省略している。第1の分割領域として、領域R1と領域R2とを合わせた領域が設定され、第1の分割領域として、領域L1と領域L2とを合わせた領域が設定される。また、領域Mは心筋の領域であり、領域Vは大動脈の領域であるが、これらの領域については、後で詳述する。
【0051】
分割領域設定部11には、心臓のアトラス画像(本発明の基準画像に相当する)が予め設定されている。アトラス画像とは、予め心臓を撮影した標準的な3次元画像と、右心房および右心室を含む領域および左心房および左心室を含む領域が定義されたラベル画像とが対応付けられたものである。
【0052】
分割領域設定部11は、上述したアトラス画像を用いて、3次元画像6に対して第1の分割領域と第2の分割領域とを設定する。具体的には、分割領域設定部11は、まず、2以上の3次元画像6のうちの1つの代表する3次元画像6と上述したアトラス画像との位置合わせ処理を行うことによって、上記代表する3次元画像6に対して第1の分割領域と第2の分割領域とを設定する。なお、位置合わせ処理としては、既に公知な剛体位置合わせ処理または非剛体位置合わせ処理を用いることができる。
【0053】
そして、代表する3次元画像6の第1の分割領域と第2の分割領域の設定結果を用いて、その他の3次元画像6に対して第1の分割領域および第2の分割領域を設定する。具体的には、代表する3次元画像6に設定された第1の分割領域と第2の分割領域の座標値をその他の3次元画像6に対応付けることによって第1の分割領域および第2の分割領域を設定する。このように1つの代表する3次元画像6の分割領域の設定結果をその他の3次元画像6に適用することによって、分割領域の設定処理の負荷を下げることができ、処理の高速化を図ることができる。
【0054】
なお、本実施形態においては、代表する3次元画像6の第1の分割領域および第2の分割領域の設定結果を用いてその他の3次元画像6の第1の分割領域および第2の分割領域を設定するようにしたが、これに限らず、代表する3次元画像6だけでなく、その他の3次元画像6についても、アトラス画像を用いて第1の分割領域および第2の分割領域を設定するようにしてもよい。
【0055】
画素値変換方法決定部12は、各3次元画像6に含まれる心臓の同じ位置に設定された分割領域の組毎に、その組の各分割領域の画素値に基づいて、各分割領域の画素値変換方法を決定するものである。なお、本明細書における画素値変換方法としては、画素値変換を行わないことも含むものとする。
【0056】
一般的に、心臓画像における造影された部分の画素値は100以上に増加するため、画素値変換方法決定部12は、この数値を用いて各分割領域が造影されているか否かを判定し、その判定結果に基づいて画素値変換方法を決定する。なお、以降、説明を分かりやすくするために、2以上の3次元画像6のうちの2つの3次元画像6の関係に絞って説明する。
【0057】
具体的には、画素値変換方法決定部12は、第1の3次元画像6の第1の分割領域の平均画素値と第2の3次元画像6の第1の分割領域の平均画素値とを算出する。そして、第1の3次元画像6の第1の分割領域の平均画素値が100以上であって、かつ第2の3次元画像6の第1の分割領域の平均画素値が100未満である場合には、すなわち第1の3次元画像6と第2の3次元画像6のそれぞれの第1の分割領域のコントラストが異なる場合には、第1の3次元画像6の第1の分割領域の画素値に対して画素値変換を行うことを決定する。
【0058】
また、逆に、第1の3次元画像6の第1の分割領域の平均画素値が100未満であって、かつ第2の3次元画像6の第1の分割領域の平均画素値が100以上である場合には、第2の3次元画像6の第1の分割領域の画素値に対して画素値変換を行うことを決定する。
【0059】
一方、第1の3次元画像6の第1の分割領域の平均画素値と第2の3次元画像6の第1の分割領域の平均画素値との両方が100以上または100未満である場合には、すなわち両方の第1の分割領域のコントラストが近い場合には、第1の3次元画像6と第2の3次元画像6の第1の分割領域には、画素値変換を行わないことを決定する。第1の3次元画像6の第2の分割領域の平均画素値と第2の3次元画像6の第2の分割領域の平均画素値との両方が100以上または100未満である場合には、第1の分割領域と同様に、第1の3次元画像6と第2の3次元画像6の第2の分割領域には、画素値変換を行わないことを決定する。
【0060】
画素値変換部13は、画素値変換方法決定部12によって決定された画素値変換方法を用いて、第1の3次元画像6および第2の3次元画像6の第1の分割領域に画素値変換を施し、第1の3次元画像6および第2の3次元画像6の第2の分割領域に画素値変換を施す。具体的には、画素値変換方法決定部12において画素値変換を行うと決定された分割領域内の画像に対して、下式(2)に基づいて画素値変換を行う。なお、下式(2)におけるxは画素値であり、f(x)は画素値変換関数である。下式(2)に基づいて画素値変換を行うことによって、第1の3次元画像6および第2の3次元画像6の第1の分割領域間または第1の3次元画像6および第2の3次元画像6の第2の分割領域間のコントラスト差を小さくすることができる。
【0061】
【数2】
位置合わせ処理部14は、画素値変換部13によって画素値変換の施された第1の3次元画像6と第2の3次元画像6に対して位置合わせ処理を施すものである。位置合わせ処理としては、剛体位置合わせ処理または非剛体位置合わせ処理が施される。剛体位置合わせ処理としては、たとえばICP(Iterative Closest Point)法を用いた処理などを用いることができるが、その他の公知な手法を用いるようにしてもよい。また、非剛体位置合わせ処理としては、たとえばFFD(Free-Form Deformation)法を用いた処理やTPS(Thin-Plate Spline)法を用いた処理などを用いることができるが、その他の公知な手法を用いるようにしてもよい。また、剛体位置合わせ処理を行った後に、非剛体位置合わせ処理を行うようにしてもよい。
【0062】
なお、上記説明では、第1の3次元画像6および第2の3次元画像6の2つの3次元画像の位置合わせ処理について説明したが、実際には、パフュージョン解析に必要な多数(たとえば30以上)の3次元画像6に対して分割領域の設定、画素値変換方法の決定、画素値変換および位置合わせ処理が行われる。
【0063】
パフュージョン解析部15は、位置合わせ処理部14によって位置合わせ処理の施された2以上の3次元画像6を用いて、パフュージョン解析を行うものである。パフュージョン解析の手法としては、上述したようなMaximum Slope法またはDeconvolution法が用いられる。具体的には、
図3Iに示すように、ユーザによって表示装置3に表示された3次元画像6上において関心領域IRが指定される。パフュージョン解析部15は、位置合わせ処理の施された2以上の3次元画像6のそれぞれの関心領域IR内の平均濃度値を算出し、
図3IIに示すような時間濃度曲線(Time Density Curve)を算出し、この時間濃度曲線に基づいてパフュージョン解析を行う。
【0064】
表示制御部16は、液晶ディスプレイなどの表示デバイスを備えたものであり、パフュージョン解析部15による解析結果を表示装置3に表示させるものである。また、表示制御部16は、画像取得部10によって取得された2以上の3次元画像6および位置合わせ処理後の2以上の3次元画像6などを表示装置3に表示させるものである。
【0065】
入力装置4は、ユーザによる種々の設定入力を受け付けるものであり、キーボードやマウスなどの入力デバイスを備えたものである。入力装置4は、たとえば患者の識別情報の設定入力および上述した関心領域IRの設定入力などを受け付けるものである。
【0066】
なお、タッチパネルを用いることによって表示装置3と入力装置4と兼用するようにしてもよい。
【0067】
次に、本実施形態の医用画像診断支援システムの作用について、
図4に示すフローチャートを参照しながら説明する。
【0068】
まず、ユーザによる患者の識別情報などの入力に基づいて、その患者の心臓をパフュージョン撮影した2以上の3次元画像6が画像取得部10によって取得される(S10)。
【0069】
画像取得部10によって取得された2以上の3次元画像6は分割領域設定部11に入力される。分割領域設定部11は、2以上の3次元画像6に対してそれぞれ第1の分割領域および第2の分割領域を設定する(S12)。
【0070】
次に、画素値変換方法決定部12は、各3次元画像6の第1の分割領域の平均画素値に基づいて、第1の分割領域に対する画素値変換方法を決定し、各3次元画像6の第2の分割領域の平均画素値に基づいて、第2の分割領域に対する画素値変換方法を決定する(S14)。
【0071】
そして、画素値変換方法決定部12によって決定された画素値変換方法を用いて、画素値変換部13において、各3次元画像6の第1の分割領域および第2の分割領域に対して画素値変換が施される(S16)。
【0072】
次いで、画素値変換が施された3次元画像6が位置合わせ処理部14に入力され、位置合わせ処理部14によって位置合わせ処理が施される(S18)。
【0073】
位置合わせ処理の施された3次元画像6はパフュージョン解析部15に入力され、パフュージョン解析部15において、入力された3次元画像6を用いてパフュージョン解析が行われる(S20)。
【0074】
パフュージョン解析部15によるパフュージョン解析結果は表示制御部16に入力され、表示制御部16は、入力されたパフュージョン解析結果を表示装置3に表示させる(S22)。
【0075】
上記実施形態の医用画像診断支援システムによれば、位置合わせ処理対象を含む複数の画像を取得し、複数の画像の各位置合わせ処理対象を分割して分割領域を設定する。そして、各位置合わせ処理対象の同じ位置に設定された分割領域の組毎に、その組の各分割領域の画素値に基づいて、各分割領域の画素値変換方法を決定し、その決定した分割領域の画素値変換方法を用いて、分割領域の組の分割領域内の画像に画素値変換を施し、その画素値変換の施された複数の画像に対して位置合わせ処理を施す。このように分割領域毎に画素値変換方法を決定して画素値変換を行うことによって、一方の画像では高い画素値を有する構造が、他方の画像では低い画素値を示している場合でも、画像間のコントラスト差を低減することができ、高精度に位置合わせを行うことができる。
【0076】
なお、上記第1の実施形態においては、分割領域設定部11において、分割領域として、右心房および右心室を含む第1の分割領域と左心房および左心室を含む第2の分割領域とを設定するようにしたが、分割領域の設定方法としては、これに限らない。たとえば分割領域として、右心房および右心室を含む第1の分割領域と左心房および左心室を含む第2の分割領域と心筋を含む第3の分割領域とを設定するようにしてもよい。
【0077】
または、分割領域として、右心房を含む第1の分割領域と右心室を含む第2の分割領域と左心房を含む第3の分割領域と左心室を含む第4の分割領域とを設定するようにしてもよい。もしくは、分割領域として、右心房を含む第1の分割領域と右心室を含む第2の分割領域と左心房を含む第3の分割領域と左心室を含む第4の分割領域と心筋を含む第5の分割領域とを設定するようにしてもよい。
【0078】
また、上述したように心臓の解剖学的な構造に基づいて分割領域を設定するのではなく、画素値を変化させる造影剤が流れる方向を考慮して、心臓の血流方向に垂直な断面で心臓を分割して分割領域を設定するようにしてもよい。
図5は、心臓の血流方向に垂直な断面で心臓を分割して分割領域を設定した一例を示す図である。
図5に示す矢印A1は、右心房および右心室における血流方向を示すものであり、矢印A2は、左心房および左心室における血流方向を示すものであり、D1〜D10は、心臓の血流方向に垂直な断面で心臓を分割して設定された分割領域を示すものである。以下、
図5に示すように分割領域D1〜D10を設定した場合の各分割領域の画素値変換方法の決定方法について説明する。
【0079】
画素値変換方法決定部12は、まず、第1の3次元画像6および第2の3次元画像6の双方について、血流方向に沿って各分割領域の平均画素値を調べる。具体的には、
図5の例の場合、矢印A1に沿って各分割領域の平均画素値を調べた後、矢印A2に沿って各分割領域の平均画素値を調べる。そして、平均画素値が予め設定された閾値以上となる分割領域を特定する。すなわち造影剤によって画素値が高くなっている分割領域を特定する。
【0080】
そして、画素値変換方法決定部12は、第1の3次元画像6と第2の3次元画像6との間で同じ位置の分割領域について、いずれか一方の分割領域のみの平均画素値が閾値以上である場合、画素値変換を行う分割領域として決定する。逆に、第1の3次元画像6と第2の3次元画像6との間で同じ位置の分割領域について、両方の分割領域の平均画素値が閾値以上または閾値未満である場合には、画素値変換を行わない分割領域として決定する。
【0081】
図6は、上述した画素値変換方法の決定方法を説明するための図である。
図6に示すように、たとえば第1の3次元画像6の分割領域D1〜D10のうち分割領域D3〜D6の平均画素値が閾値以上であり、第2の3次元画像6の分割領域D1〜D10のうち分割領域D5〜D8の平均画素値が閾値以上である場合には、分割領域D3、分割領域D4、分割領域D7および分割領域D8については、画素値変換を行う分割領域として決定する。一方、分割領域D1、分割領域D2、分割領域D5、分割領域D6、分割領域D9および分割領域D10については、画素値変換を行わない分割領域として決定する。
【0082】
なお、画素値変換方法を決定した後の画素値変換および位置合わせ処理については、上記第1の実施形態と同様である。
【0083】
次に、本発明の第2の実施形態を用いた医用画像診断支援システムについて説明する。
図7は、第2の実施形態の医用画像診断支援システムの概略構成を示すブロック図である。第2の実施形態の医用画像診断支援システムは、第1の実施形態の医用画像診断支援システムとは、画像位置合わせ装置5の構成が異なる。その他の構成については、第1の実施形態の構成と同様である。
【0084】
第2の実施形態の画像位置合わせ装置5は、画像取得部50と、分割領域設定部51と、位置合わせ処理部52と、パフュージョン解析部53と、表示制御部54とを備えている。画像取得部50、分割領域設定部51、パフュージョン解析部53および表示制御部54については、上記第1の実施形態の画像取得部10、分割領域設定部11、パフュージョン解析部15および表示制御部16と同様であるので説明を省略する。
【0085】
第2の実施形態の位置合わせ処理部52は、第1の3次元画像6と第2の3次元画像6の同じ位置に設定された分割領域の組毎に、その組の各分割領域の一致度を評価関数によって評価して位置合わせ処理を施すものである。
【0086】
そして、位置合わせ処理部52は、各分割領域の一致度を評価関数によって評価して位置合わせ処理を行うという点では、第1の実施形態の位置合わせ処理と同様であるが、分割領域の組毎に、その組の各分割領域の画素値に基づいて評価関数を変更して位置合わせ処理を施す点で第1の実施形態の位置合わせ処理とは異なる。
【0087】
位置合わせ処理部52は、具体的には、第1の3次元画像6の第1の分割領域の平均画素値と第2の3次元画像6の第1の分割領域の平均画素値とを算出する。そして、第1の3次元画像6の第1の分割領域の平均画素値が100以上であって、かつ第2の3次元画像6の第1の分割領域の平均画素値が100未満である場合には、すなわち第1の3次元画像6と第2の3次元画像6のそれぞれの第1の分割領域のコントラストが異なる場合には、下式(3)の評価関数を用いて一致度を算出して位置合わせ処理を行う。
【0088】
【数3】
上式(3)におけるS
1は一致度の評価関数であり、画像間の対応する分割領域の画素値が画像間で異なる場合に、各画像の分割領域の位置が一致しているほどS
1は小さな値となる。また、Nは画像間(Fixed画像とMoving画像の間)で比較する画素の総数、fは、上述した式(2)の画素値変換関数、x
iは座標点、I
F(x
i)はFixed画像のx
i における画素値、I
M(x
i)はMoving画像のx
i における画素値、Tは座標点の幾何学的変換関数、μは幾何学的変換のパラメタである。なお、第1の3次元画像6および第2の3次元画像6のいずれか一方をFixed画像とし、他方をMoving画像とする。
【0089】
また、逆に、第1の3次元画像6の第1の分割領域の平均画素値が100未満であって、かつ第2の3次元画像6の第1の分割領域の平均画素値が100以上である場合にも、上式(3)の評価関数を用いて一致度を算出して位置合わせ処理を行う。
【0090】
一方、第1の3次元画像6の第1の分割領域の平均画素値と第2の3次元画像6の第1の分割領域の平均画素値との両方が100以上または100未満である場合には、すなわち両方の第1の分割領域のコントラストが近い場合には、下式(4)の評価関数を用いて一致度を算出して位置合わせ処理を行う。また、第1の3次元画像6の第2の分割領域の平均画素値と第2の3次元画像6の第2の分割領域の平均画素値との両方が100以上または100未満である場合にも、第1の分割領域と同様に、下式(4)の評価関数を用いて一致度を算出して位置合わせ処理を行う。
【0091】
【数4】
上式(4)におけるS
2は一致度の評価関数であり、画素値が一致しているほど値が小さい。また、Nは画像間(Fixed画像とMoving画像の間)で比較する画素の総数、fは、上述した式(2)の画素値変換関数、x
iは座標点、I
F(x
i)はFixed画像のx
i における画素値、I
M(x
i)はMoving画像のx
i における画素値、Tは座標点の幾何学的変換関数、μは幾何学的変換のパラメタである。
【0092】
なお、位置合わせ処理自体は、たとえば上述した非特許文献3に記載の方法を用いることができる。
【0093】
次に、第2の実施形態の医用画像診断支援システムの作用について、
図8に示すフローチャートを参照しながら説明する。
【0094】
まず、ユーザによる患者の識別情報などの入力に基づいて、その患者の心臓をパフュージョン撮影した2以上の3次元画像6が画像取得部50によって取得される(S30)。
【0095】
画像取得部50によって取得された2以上の3次元画像6は分割領域設定部51に入力される。分割領域設定部51は、2以上の3次元画像6に対してそれぞれ第1の分割領域および第2の分割領域を設定する(S32)。
【0096】
次に、位置合わせ処理部52は、各3次元画像6の第1の分割領域の平均画素値に基づいて、第1の分割領域に対する評価関数を決定し、各3次元画像6の第2の分割領域の平均画素値に基づいて、第2の分割領域に対する評価関数を決定し、第1の分割領域と第2の分割領域とでそれぞれ決定した評価関数を用いて一致度を算出することによって、各3次元画像6に対して位置合わせ処理を施す(S34)。
【0097】
位置合わせ処理の施された3次元画像6はパフュージョン解析部53に入力され、パフュージョン解析部53において、入力された3次元画像6を用いてパフュージョン解析が行われる(S36)。
【0098】
パフュージョン解析部53によるパフュージョン解析結果は表示制御部54に入力され、表示制御部54は、入力されたパフュージョン解析結果を表示装置3に表示させる(S38)。
【0099】
第2の実施形態の医用画像診断支援システムによれば、位置合わせ処理対象を含む複数の画像を取得し、複数の画像の各位置合わせ処理対象を分割して分割領域を設定する。そして、各位置合わせ処理対象の同じ位置に設定された分割領域の組毎に、その組の各分割領域の一致度を評価関数によって評価して位置合わせ処理を施し、この際、分割領域の組毎に、その組の各分割領域の画素値に基づいて評価関数を変更して位置合わせ処理を施す。このように分割領域毎に評価関数を変更して位置合わせ処理を行うことによって、一方の画像では高い画素値を有する構造が、他方の画像では低い画素値を示している場合でも、画像間のコントラスト差を低減することができ、高精度に位置合わせを行うことができる。
【0100】
なお、上記第2の実施形態においては、各分割領域の画素値に基づいて、上式(3)の評価関数と上式(4)の評価関数とを切り替えて使用するようにしたが、評価関数としてはこれに限らず、上式(3)の代わりに下式(5)を用いるようにしてもよい。
【0101】
【数5】
上式(5)におけるSは一致度の評価関数であり、画素値が一致しているほど値が小さい。また、Nは画像間(Fixed画像とMoving画像の間)で比較する画素の総数、x
iは座標点、I
F(x
i)はFixed画像のx
i における画素値、I
M(x
i)はMoving画像のx
i における画素値、Tは座標点の幾何学的変換関数、μは幾何学的変換のパラメタ、kおよびσは定数である。
【0102】
上式(5)におけるSは上式(3)と同様に、一致度の評価関数であり、画像間の対応する分割領域の画素値が異なる場合に、各画像の分割領域の位置が一致しているほどSは小さな値となる。また、Nは画像間(Fixed画像とMoving画像の間)で比較する画素の総数、xiは座標点、IF(xi)はFixed画像のxi における画素値、IM(xi)はMoving画像のxiにおける画素値、Tは座標点の幾何学的変換関数、μは幾何学的変換のパラメタ、並びにkおよびσは定数である。上式(5)のSは、画素値の差が定数σによって決まる所定の値に近いほど小さくなり、一致度が高くなるような関数である。
【0103】
なお、上記第1〜第3の実施形態においては、分割領域設定部11は、心臓のアトラス画像を用いて分割領域を設定するようにしたが、分割領域の設定方法としては、これに限らない。以下、その他の分割領域の設定方法について説明する。
【0104】
まず、大動脈は左心室につながっているため、造影剤による画素値の変化が左心房および左心室に近い。このことを利用して、左心房および左心室の画素値が造影剤によって高くなっているフェーズの画像を特定する。
【0105】
具体的には、まず、2以上のフェーズの3次元画像6からそれぞれ大動脈の領域を抽出する。上述したように
図2I〜
図2IIIに示すVの領域が大動脈の領域である。なお、大動脈の領域の抽出方法については、公知の画像処理を用いることができる。
【0106】
次に、各3次元画像6の大動脈の領域の平均画素値の変化に基づいて、左心房および左心室の画素値が右心房および右心室の画素値よりも高くなっているフェーズの3次元画像を特定する。具体的には、各3次元画像の大動脈の領域の平均画素値の変化に基づいて、大動脈の領域の平均画素値が最大となるフェーズの3次元画像6を特定する。そして、その特定した3次元画像6における画素値が予め設定された閾値以上である領域を特定することによって左心房および左心室の領域を抽出する。
【0107】
次いで、大動脈の領域の平均画素値が予め設定された下限値以上である3次元画像のうち、大動脈の領域の平均画素値が最小であるフェーズの3次元画像を、右心房および右心室の画素値が左心房および左心室の画素値よりも高くなっているフェーズの3次元画像として特定する。そして、その特定した3次元画像6における画素値が予め設定された閾値以上である領域を特定することによって右心房および右心室の領域を抽出する。
【0108】
そして、上述したようにして抽出された右心房および右心室の領域を第1の分割領域として設定し、左心房および右心室の領域を第2の分割領域として設定する。
【0109】
また、第1の分割領域および第2の分割領域の設定方法としては、上記の方法に限らず、たとえば公知な輪郭抽出などの画像処理手法を用いることによって、3次元画像6から右心房および右心室の領域と左心房および左心室の領域を抽出し、その抽出結果を用いて第1の分割領域および第2の分割領域を設定するようにしてもよい。