(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態に係る光ピックアップ装置について説明する。
【0010】
[第1の実施形態]
先ず、第1の実施形態に係る光ピックアップ装置120の構成について説明する。
図1は、本実施形態に係る光ピックアップ装置の構成を示す図である。
光ピックアップ装置120は、ピント検出方法にナイフエッジ法が採用する。光ピックアップ装置120は、光源である半導体レーザ101、半導体レーザ101及び測定対象であるワーク102間に設けられた照射光学系、並びに、ワーク102及び受光部間に設けられた結像光学系を備える。照射光学系は、半導体レーザ101からワーク102に掛けてZ方向に配置されたコリメータレンズ103及び対物レンズ105によって構成される。結像光学系は、ワーク102から受光部に掛けて配置されたビームスプリッタ104、結像レンズ106、及びミラーである三角プリズム107によって構成される。
【0011】
半導体レーザ101から出力された光ビームLは、平行光に変換された後に、対物レンズ105に集光されてワーク102の測定面に投影される。ワーク102の測定面で反射された光ビームLは、対物レンズ105を通り、ビームスプリッタ104で反射されて結像レンズ106に入り収束される。そして、この光ビームLは、三角プリズム107で2方向に分割された後、受光部となる2つのラインセンサ108A及び108Bの受光面に結像される。各ラインセンサ108A及び108Bは、複数の受光素子がX方向に配列された受光面を有する。
【0012】
以下の説明において、ラインセンサ108A及び108Bは、特定する必要がある場合を除き、単に「ラインセンサ108」と称することもある。ワーク102で反射されるまでの光ビームLを「照射ビーム」、ワーク102で反射された光ビームLを「反射ビーム」と称することもある。また、ラインセンサ108によって検知された反射ビームの光強度を「信号強度」と称することもある。
【0013】
ここで、三角プリズム107は、測定対象であるワーク102に対する合焦状態によってラインセンサ108における結像形態を変化させる光学手段である。三角プリズム107は、その1つの頂角部107aが結像レンズ106側を向いてその光軸上に位置するように配置されている。これによって、結像レンズ106によって収束された反射ビームLが上下に分割されてラインセンサ108に受光される。また、ラインセンサ108は、受光面の位置が対物レンズ105の焦点位置と共役関係になるように配置されている。なお、
図1の例では、反射ビームLを三角プリズム107において2分割してラインセンサ108A及び108Bに受光させているが、これらラインセンサ108A及び108Bのうち一方を省略させても良い。
【0014】
更に、光ピックアップ装置120は、光ビームLの光路上において光ビームLのうち光軸を含む所定の範囲L´を遮光する遮光板121を備える。この遮光部121は、透明体のワーク102に対するピント検出において、ワーク102の表面の反射ビームとワーク102の裏面の反射ビームの信号強度分布のピーク位置を分離するピーク分離部として機能する。以下の説明において光ビームLのうち光軸を含む所定の範囲L´を「被調整範囲」と称することもある。
図1において、被調整範囲L´は斜線によって示される。なお、
図1の例では、遮光板121は、ビームスプリッタ104及び対物レンズ105間に配置されているが、光ビームLの光路上であれば、半導体レーザ101及びラインセンサ108間のいずれに配置されていても良い。
【0015】
次に、光ピックアップ装置120の効果を比較例に係る光ピックアップ装置100を用いて説明する。ここで、光ピックアップ装置100は、光ピックアップ装置120から遮光板121を除いた構成を持つ。
【0016】
図12は、比較例に係る光ピックアップ装置のワークにおける光ビームの反射の様子を示す図である。
図12には、光ピックアップ装置100におけるナイフエッジ法の特徴が表れるよう、光ビームLの半分だけがワーク102に照射された場合が示されている。
【0017】
図12は、ガラス等の透明体をワーク102とした例であり、ピントはワーク102の表面102aの位置で合っている。
図12に示すように、ワーク102が、ガラス等の透明体である場合、照射ビームLは、その全てがワーク102の表面102aで反射されず、その一部が裏面102bまで透過される。その結果、反射ビームLには、照射ビームLのうち表面102aで反射された成分Laと、裏面102bで反射された成分Lbが含まれることになる。以下の説明では、表面102aで反射された成分Laを「表面反射ビーム」、裏面102bで反射された成分Lbを「裏面反射ビーム」と称することもある。
【0018】
図13は、比較例に係る光ピックアップ装置のラインセンサの受光素子の位置と信号強度の関係を示すグラフである。
図13に示す各グラフにおいて、横軸はラインセンサ108の各受光素子のX方向の位置であり、縦軸は信号強度である。ラインセンサ108の各受光素子のX方向の位置は、照射光学系及びワーク102間のZ方向の距離に対応する。また、
図13中Aは表面反射ビームLaの信号強度、
図13中Bは裏面反射ビームLbの信号強度、
図13中Cは反射ビームLの全体的な信号強度を示している。
【0019】
反射ビームLのうち裏面反射ビームLbは、本来、ワーク102の表面102aをピント検出する場合、雑音となる成分である。つまり、より正確にワーク102の表面102aをピント検出するには、反射ビームLの信号から裏面反射ビームLbの信号を除去することが重要となる。
【0020】
この点、光ピックアップ装置100の場合、表面反射ビームLa及び裏面反射ビームLbは共に光ビームLの光軸に沿って反射されるため、それら信号強度分布のピーク位置Xa及びXbは、
図13中A及びBに示すように、ラインセンサ108の同じ位置X1で合致する。更に、
図12の場合、裏面102bでピントが合っていないため、裏面反射ビーム102bの信号強度分布は、X方向に広がってしまう。その結果、反射ビームLの信号強度は、
図13中Cに示すように、位置X1をピークとして表面反射ビームLa及び裏面反射ビームLbの信号強度分布が重なり合い、広い範囲に分布してしまう。そのため、ワーク102の表面102aのピント検出にとって必要となる表面反射ビームLaの信号と雑音となる裏面反射ビームLbの信号を分離することが難しくなる。つまり、光ピックアップ装置100によれば、裏面反射がある透明体のワーク102の表面102aをピント検出する場合、フォーカスエラーが生じやすくなる。
【0021】
この問題は、ナイフエッジ法のピント検出範囲が広いが故に、このピント検出範囲内にワーク102の表面102aと裏面102bの両面が含まれてしまう点を要因の一つとして生じる。
【0022】
そこで、ナイフエッジ法に替えてピンホール共焦点法を採用した光ピックアップ装置を考える。ここでピンホール共焦点法とは、反射ビームの光路上にピンホールと受光部を配置し、受光部で反射ビームの光量のみを検出する方法である。このピンホール共焦点法は、ナイフエッジ法に比べてピント検出範囲が狭いため、ワークの表面で反射する反射ビームのみを捉えることができる。この光ピックアップ装置によれば、光ピックアップ装置100のように、受光部における表面反射ビームの信号と裏面反射ビームの信号の混在を回避できる。しかし、ピンホール共焦点法を採用する場合、ピント検出範囲が狭くなるため、ナイフエッジ法を採用する場合に比べて利便性が損なわれる。
【0023】
そこで、更に、ナイフエッジ法とピンホール共焦点法を切り替え可能な光ピックアップ装置を考える。この光ピックアップ装置によれば、ワークが透明体でない場合、ナイフエッジ法によってピント検出し、ワークが透明体の場合、ピンホール共焦点法によってピント検出することができる。これによって、この光ピックアップ装置によれば、広いピント検出範囲を維持しつつ、透明体のワークに対するピント検出時のフォーカスエラーの発生を低減できる。
【0024】
しかし、この光ピックアップ装置は、次の3つの問題を有する。第1に、ワークの種類に応じてナイフエッジ法とピンホール共焦点法を切り替えなければいけない点である。つまり、ピント検出するワークに裏面反射が起こり得るかを判断し、その結果によって両方式を切り替えなければいけない。特に、光ピックアップ装置にワークの種類を判断する機能が備わっていない場合、この判断をユーザ自身が行わなければいけない。第2に、ピンホール共焦点法の場合、ワークにピントが合っているか否かは分かっても、ピント位置に対するズレの方向が分からない点である。つまり、ピンホール共焦点法では、所謂倣いオートフォーカスができない。第3に、両方式の切り替えを実現するには、光ビームを何らかの形で分岐させる必要がある。そのため、反射ビームの信号強度が低くなってしまう。特に、透明体のワークはそもそもの反射率が低いため、反射強度は益々弱くなる。
【0025】
その点、光ピックアップ装置120によれば、次のような効果を得ることができる。
図2は、本実施形態に係る光ピックアップ装置のワークにおける光ビームの反射の様子を示す図である。
図2には、光ピックアップ装置120におけるナイフエッジ法の特徴が表れるよう、光ビームLの半分だけがワーク102に照射された場合が示されている。また、
図3は、本実施形態に係る光ピックアップ装置のラインセンサの受光素子の位置と信号強度の関係を示すグラフである。
図3に示すグラフにおいて、横軸はラインセンサ108の各受光素子のX方向の位置であり、縦軸は信号強度である。ラインセンサ108の各受光素子のX方向の位置は、照射光学系及びワーク102間のZ方向の距離に対応する。
【0026】
光ピックアップ装置120によれば、遮光板121が光ビームLの被調整範囲L´の遮光することで光強度を調整するため、
図2に示すように、光ビームLがワーク102或いはラインセンサ108に対して斜めに投影される。この場合、表面反射ビームLa及び裏面反射ビームLbの信号強度分布のピーク位置Xa及びXbは、
図3に示すように、光ビームLのうち被調整範囲L´が遮光された分だけ離れて現れる。つまり、光ピックアップ装置120によれば、光ピックアップ装置100と異なり、表面反射ビームLaの信号強度分布のピークを容易に検知できる。
【0027】
以上から、光ピックアップ装置120によれば、広いピント検出範囲というナイフエッジ法の利点を維持しつつ、透明体のワークに対するピント検出時のフォーカスエラーの発生を低減することができる。更に、光ピックアップ装置120によれば、ワーク102の種類に関わらずナイフエッジ法を用いることができるため、ナイフエッジ法とピンホール共焦点法の切り替えが不要となる。
【0028】
次に、本実施形態に係る光ピックアップ装置の変形例について説明する。
図4〜6は、本実施形態に係る光ピックアップ装置の別の構成を示す図である。
図4〜6に示す構成のうち、
図1に示す構成と同様の構成については
図1と同じ符号が付されている。
【0029】
図4は、ワーク102を観察するための画像観察系142を備えた光ピックアップ装置140の例である。光ピックアップ装置140は、光ピックアップ装置120の構成に加え、光ビームLの光路上のうちビームスプリッタ104及び対物レンズ105間に配置されたビームスプリッタ141を備える。このビームスプリッタ141は、結像光学系に含まれる。このビームスプリッタ141は、ワーク102で反射された反射ビームLの一部を分離して画像観測系142に与える。但し、被調整範囲L´を遮光させた後の光ビームLを画像観察系142で用いることはできない。そのため、光ピックアップ装置140の場合、遮光板121を光ビームLの光路上のうちビームスプリッタ141及びラインセンサ108間に配置する必要がある。
図4の例の場合、遮光板121は、結像レンズ106及び三角プリズム107間に配置されている。
【0030】
図5及び6は、三角プリズム107を工夫することで光ビームLのうち被調整範囲L´を調整して無効化させる光ピックアップ装置160及び180の例である。
光ピックアップ装置160の場合、三角プリズム107の頂角部107aに対して光ビームLを遮光して反射させない遮光材161が塗布されている。この遮光材161は、ピーク分離部として機能する。この場合、結像レンズ106から照射される被調整範囲L´の光ビームについては反射されないため、結果として、光ビームLのうち被調整範囲L´が無効化される。
【0031】
光ピックアップ装置180は、三角プリズム107に替えて光ビームLのうち被調整範囲L´だけをそのまま通過させるパスが形成された三角プリズム181を備える。この三角プリズム181は、ピーク分離部として機能する。この光ピックアップ装置180によれば、光ビームLのうち被調整範囲L´がラインセンサ108に届かなくなるため、結果として光ビームLのうち被調整範囲L´が無効化される。なお、三角プリズム107を光ビームLの光軸に沿って分割し、各部分を被遮光範囲L´の外に配置させても、三角プリズム181と同様に作用する。
【0032】
上記光ピックアップ装置140、160、及び180は、本実施形態の一例であるが、いずれの装置も、ラインセンサ108に到達するまでに光ビームLのうち被調整範囲L´を無効化することができる。これによって、いずれの装置も、光ピックアップ装置120と同様、ラインセンサ108における表面反射ビームLa及び裏面反射ビームLbの信号強度分布のピークを分離することができる。
【0033】
以上、本実施形態によれば、広範囲なピント検出範囲というナイフエッジ法の利点を維持しつつ、透明体のワークに対するピント検出時のフォーカスエラーを低減させた光ピックアップ装置を提供することができる。
【0034】
[第2の実施形態]
第1の実施形態では、遮光板等をピーク分離部として用いることで、半導体レーザから出力される光ビームの被調整範囲を事後的に無効化する光ピックアップ装置について説明した。これに対し、第2の実施形態では、半導体レーザから出力される光ビームの特性自体を調整する光ピックアップ装置200について説明する。
【0035】
図7は、本実施形態に係る光ピックアップ装置の構成を示す図であり、
図8は、同光ピックアップ装置の半導体レーザから出力される光ビームの放射角度に対する光強度を示すグラフである。
図7に示す構成のうち、
図1に示す構成と同様の構成については
図1と同じ符号が付されている。
【0036】
光ピックアップ装置200は、光ピックアップ装置100の構成のうち半導体レーザ101を半導体レーザ201に替えて構成されている。半導体レーザ201は、受光部だけでなくピーク分離部としても機能する。この半導体レーザ201は、光ビームLの光軸方向を0°とした場合、
図8に示すように、放射角度θが所定の値を持つ光軸周辺部から、放射角度がθ=0°となる光軸に掛けて光強度が弱くなる光ビームLを出力する。これによって、半導体レーザ101による出力時から照射ビームLのうち
図7の斜線で示す被調整範囲L´の光強度が調整されて弱くなっているため、被調整範囲L´が他の範囲と比べて相対的に無効化される。その結果、光ピックアップ装置200によれば、反射ビームLがワーク102及びラインセンサ108に対して斜めに投影されるため、ワーク102が透明体であっても、光ピックアップ装置120と同様、表面反射ビームLaと裏面反射ビームLbの信号強度分布のピークを分離することができる。
【0037】
以上から、本実施形態によれば、光ビームの光軸方向近傍の光強度を弱くした光ビームを出力する半導体レーザを用いることで、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0038】
[第3の実施形態]
第1及び第2の実施形態では、光ビームの被調整範囲を無効化或いは光軸近傍の光強度を弱くした光ピックアップ装置について説明した。これに対し、第3の実施形態では、プリズムによる光ビームの屈折を利用することでラインセンサにおける反射ビームの信号強度分布のピークを分離させる光ピックアップ装置300について説明する。
【0039】
図9は、本実施形態に係る光ピックアップ装置の構成を示す図である。
光ピックアップ装置300は、光ピックアップ装置100の構成に加え、光ビームLの光路上のうち結像光学系の三角プリズム107とラインセンサ108A及び108Bとの間に配置され、反射ビームLを屈折させるプリズム301A及び301Bを備える。以下の説明において、プリズム301A及び301Bは、特定する必要がある場合を除き、単に「プリズム301」と称することもある。各プリズム301は、三角プリズム107側にX方向に対して斜めに広がる入射面301aと、ラインセンサ108側にX方向に広がる出射面301bを持つ。各プリズム301は、ピーク分離部として機能する。
【0040】
図10は、本実施形態に係る光ピックアップ装置のワークにおける光ビームの反射の様子(図中A)と、ラインセンサによる光ビームの受光の様子(図中B及びC)を示す図である。
図10中Aには、光ピックアップ装置300におけるナイフエッジ法の特徴が表れるよう、光ビームLの半分だけがワーク102に照射された場合が示されている。
図10中Bは表面反射ビームLaに関する図であり、
図10中Cは裏面反射ビームLbに関する図である。また、
図11は、本実施形態に係る光ピックアップ装置のラインセンサの受光素子の位置と信号強度の関係を示すグラフである。
図11に示すグラフにおいて、横軸はラインセンサ108の各受光素子のX方向の位置であり、縦軸は信号強度である。ラインセンサ108の各受光素子のX方向の位置は、照射光学系及びワーク102間のZ方向の距離に対応する。
【0041】
図10は、ガラス等の透明体をワーク102とした例であり、ピントはワーク102の表面102aの位置で合っている。
半導体レーザ101から出力された照射ビームLは、
図10中Aに示すように、ワーク102の表面102a及び裏面102bにおいて光ビームLの光軸に沿って反射される。反射レーザLは、対物レンズ105、ビームスプリッタ104、及び結像レンズ106を通過した後、三角プリズム107で反射され、入射面301aよりプリズム301に入射する。プリズム301に入射した光ビームLは、プリズム301内で光軸がX方向に対して斜めになるように屈折し、ラインセンサ108に受光される。この際、表面反射ビームLaと裏面反射ビームLbとでは、
図10中B及びCに示すように、プリズム301内において異なる光路長を持って進むことになる。そのため、表面反射ビームLa及び裏面反射ビームLbの信号強度分布のX方向の移動量にも違いが現れる。その結果、
図11に示すように、表面反射ビームLa及び裏面反射ビームLbの信号強度分布のピークXa及びXbは、ラインセンサ108において分離されて現れる。これによって、表面反射ビームLaの信号強度分布のピークが明確になるため、透明体のワークに対するピント検出時のフォーカスエラーは低減される。
【0042】
以上、本実施形態によれば、第1及び第2の実施形態と同様の効果を得られる。更に、本実施形態の場合、信号強度分布のピーク分離にプリズムによる反射ビームの屈折を利用するため、第1及び第2の実施形態と比べて、反射ビームの損失を少なくでき、延いてはピント検出時のSN比を改善することができる。つまり、本実施形態によれば、第1及び第2の実施形態よりも、透明体のワークに対する高精度なピント合わせが可能な光ピックアップ装置を提供することができる。