(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について詳細に説明する。
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。
本明細書に於ける基(原子団)の表記に於いて、置換及び無置換を記していない表記は、置換基を有さないものと共に置換基を有するものをも包含するものである。例えば、「アルキル基」とは、置換基を有さないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含するものである。
本明細書中における「光」とは、活性光線又は放射線を意味する。また、「露光」とは、特に断らない限り、水銀灯、エキシマレーザーに代表される遠紫外線、極紫外線、X線、及び、EUV(Extreme ultraviolet)光等による露光を意味する。
本願明細書において「〜」とはその前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
【0011】
〔液晶組成物〕
本発明の液晶組成物は、重合性液晶化合物と、後述する式(X)で表される化合物と、を含有する。
【0012】
本発明の液晶組成物は、上記の構成とすることで、液晶化合物の配向性に優れ、接触角が良好な液晶層を与え得る。
本発明における式(X)で表される化合物は、下記に示す例のとおり、露光により紫外線等のエネルギーを受けると分解して(Hb−Sp)
m−T−(COOH)
nを生成し、その極性を変化させる。液晶層は、一般的に、(1)液晶組成物を基板上に塗布し、塗布された組成物を加熱することにより重合性液晶化合物を配向させて液晶相の状態とする工程と、(2)露光により、上記液晶相の状態で液晶組成物中の重合性液晶化合物を硬化させる工程と、を経て形成される。
式(X)で表される化合物は、上記工程(1)においては、空気側界面に偏在して液晶配向促進剤として機能する。つまり、液晶層の空気界面側に配向規制力を与え、重合性液晶化合物を均一に配向させる機能を果たす。次いで、工程(2)の露光により、重合性液晶化合物の硬化反応と並行して、上記式(X)で表される化合物の分解反応が進行する。この結果、得られる液晶層の空気側表面は、親水基であるカルボン酸基の存在により表面自由エネルギーが下がり、接触角が小さくなる。また、上記液晶層は重合性液晶化合物の配向性も良好であることが確認されている。
【0014】
以下、まず、本発明の液晶組成物に含まれる成分について詳述する。
【0015】
<式(X)で表される化合物>
以下、式(X)で表される化合物について説明する。
式(X)で表される化合物は、液晶配向促進剤であり、液晶層の空気界面において、重合性液晶化合物の分子のチルト角を低減又は実質的に水平配向させることができる。なお、本明細書で「水平配向」とは、液晶化合物の長軸と膜面が平行であることをいうが、厳密に平行であることを要求するものではなく、本明細書では、水平面とのなす傾斜角が20°未満の配向を意味するものとする。
【0017】
上記式(X)中、
Tは、n+m価の芳香族炭化水素基を表し、
Spは、単結合又は2価の連結基を表し、
Hbは、炭素数が4〜30のフッ素置換アルキル基を表し、
mは、1〜4の整数を表し、
nは、1〜4の整数を表し、
Aは、下記式(Y)で表される基を表し、
【0019】
上記式(Y)中、
R
1〜R
5は、各々独立して、水素原子又は1価の有機基を表し、
*は、結合部位を表す。
なお、上記式(X)中、上記Sp、上記Hb、又は上記Aが各々複数個存在する場合、複数個存在するSp同士、複数個存在するHb同士、又は複数個存在するA同士は、各々同一であっても異なっていてもよい。
【0020】
上記式(X)中、Tは、n+m価の芳香族炭化水素基を表す。
上記芳香族炭化水素基は、芳香族炭化水素環から水素原子をn+m個除いた基であれば特に限定されないが、炭素数が6〜22であることが好ましく、6〜14であることがより好ましく、6〜10であることが更に好ましく、ベンゼン環であることが特に好ましい。なお、上記芳香族炭化水素基は、−Sb−Hbで表される基、及び、−C(=O)O−Aで表される基以外に更に置換基を有していてもよい。置換基としては、例えば、アルキル基(例えば、炭素数1〜8のアルキル基等)、アルコキシ基(例えば、炭素数1〜8のアルコキシ基等)、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子等)、シアノ基、又はアシルオキシ基(例えば、アセトキシ基等)等が挙げられる。
【0021】
上記式(X)中、Spは、単結合又は2価の連結基を表し、2価の連結基であることが好ましい。
上記2価の連結基としては、特に限定されないが、直鎖もしくは分岐のアルキレン基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜10、更に好ましくは炭素数1〜6)、直鎖もしくは分岐のアルケニレン基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜10、更に好ましくは炭素数2〜6)、直鎖もしくは分岐のアルキニレン基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜10、更に好ましくは炭素数2〜6)、又は、これらにおいて1つ又は2つ以上の−CH
2−が下記に示す「2価の有機基」で置換された基からなる群から選択される連結基であることが好ましい。
上記2価の連結基としては、なかでも、溶解性をより向上させる観点から、1つ又は2つ以上の−CH
2−が下記に示す「2価の有機基」で置換された炭素数1〜10のアルキレン基が好ましい。
(2価の有機基)
上記2価の有機基としては、−O−、−S−、−C(=O)−、−C(=O)O−、−OC(=O)−、−C(=O)S−、−SC(=O)−、−NR
6C(=O)−、又は、−C(=O)NR
6−が挙げられる。上記の中でも、接触角をより低減させる観点から、−O−、−S−、−C(=O)−、−C(=O)O−、−OC(=O)−、−C(=O)S−、又は−SC(=O)−がより好ましく、−O−、−C(=O)−、−C(=O)O−、又は−OC(=O)−が更に好ましく、−O−、−C(=O)O−、又は−OC(=O)−が特に好ましい。
また、上記R
6は、水素原子、又は炭素数が1〜6のアルキル基を表す。
なお、上記2価の連結基中に、上記2価の有機基が含まれる場合、上記2価の有機基同士が隣接しないことが好ましい。
【0022】
上記式(X)中、Hbは、炭素数が4〜30のフッ素置換アルキル基を表す。
Hbは、炭素数4〜20であることが好ましく、炭素数4〜10であることがより好ましい。ここで、フッ素置換アルキル基は、水素原子が全てフッ素原子で置換されたパーフルオロアルキル基であってもよいし、水素原子の一部がフッ素原子で置換されているフルオロアルキル基であってもよい。また、フッ素置換アルキル基は、鎖状、分枝状及び環状のいずれであってもよいが、鎖状又は分枝状が好ましく、鎖状がより好ましい。
フッ素置換アルキル基としては、なかでも、パーフルオロアルキル基である構造が好ましい。
【0023】
上記式(X)において、−Sb−Hbで表される基の好適態様を以下に例示する。
なお、以下の例示において、*はTとの連結位置を示す。
(C
pF
2p+1)−(CH
2)
q−O−(CH
2)
r−O−*
(C
pF
2p+1)−(CH
2)
q−C(=O)O−(CH
2)
r−C(=O)O−*
(C
pF
2p+1)−(CH
2)
q−OC(=O)−(CH
2)
r−C(=O)O−*
(C
pF
2p+1)−(CH
2)
q−OC(=O)−(CH
2)
r−OC(=O)−*
上記の−Sb−Hbで表される基において、pは4〜30であることが好ましく、4〜20であることがより好ましく、4〜10であることが更に好ましい。qは0〜6であることが好ましく、0〜4であることがより好ましく、0〜3であることが更に好ましい。rは1〜6であることが好ましく、1〜4であることがより好ましく、1〜3であることが更に好ましい。
また、パーフルオロ基以外の部分の炭素数の合計は10以下が好ましい。
【0024】
上記式(X)中、n及びmは、各々独立して、1〜4の整数を表す。
接触角がより低減する観点から、nは、2以上であることが好ましい。mは、1〜3であることが好ましく、2であることがより好ましい。
【0025】
上記式(X)中、Aは、上記式(Y)で表される基を表す。
以下、式(Y)について説明する。
【0026】
上記式(Y)中、R
1〜R
5は、各々独立して、水素原子又は1価の有機基を表す。R
1〜R
5が表す1価の有機基としては特に限定されない。
【0027】
R
1〜R
4が表す1価の有機基としては、例えば、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子等)、水酸基、シアノ基、置換又は無置換のアミノ基(−N(R
A)
2で表され、2つのR
Aは各々独立して水素原子又は1価の有機基(1価の有機基としては、例えば、炭素数1〜5のアルキル基等)を表す。)、炭素数1〜8のアルコキシ基(例えば、メトキシ基又はエトキシ基等)、炭素数2〜8のアミド基(例えば、−N(R
B)C(=O)R
C(R
Bは水素原子又は1価の有機基(1価の有機基としては、例えば、炭素数1〜5のアルキル基等)を表し、R
Cは1価の有機基(1価の有機基としては、例えば、炭素数1〜5のアルキル基等)を表す。)、又は−C(=O)N(R
D)
2(2つのR
Dは各々独立して水素原子又は1価の有機基(例えば、炭素数1〜5のアルキル基等)を表す。))、炭素数2〜8のアルコキシカルボニル基(例えば、−C(=O)OCH
3等)、炭素数2〜8のアシルオキシ基(例えば、−OC(=O)CH
3等)、又は、−Sp
A−Hb
Aが挙げられる。
【0028】
上記Sp
A、及び上記Hb
Aは、上記式(X)のSp及びHbと各々同義であり、その好ましい態様も同じである。なお、式(Y)において、R
1〜R
4のうち複数個が−Sp
A−Hb
Aを表す場合、複数個存在するSp
A同士及び複数個存在するHb
A同士は、各々同一であっても異なっていてもよい。
【0029】
なかでも、上記R
1〜R
4としては、各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、シアノ基、アルコキシ基、−NH
2、−NH(CH
3)、−N(CH
3)
2、−C(=O)OCH
3、−OC(=O)CH
3、−NHC(=O)CH
3、−N(CH
3)C(=O)CH
3、又は、−Sp
A−Hb
Aが好ましい。
特に、露光による式(X)で表される化合物の分解速度をより速めて接触角を低減させる、及び/又は、配向性をより高める観点から、上記R
1〜R
4は、各々独立して、−OCH
3又は−Sp
A−Hb
Aがより好ましい。−OCH
3である場合には、その構造中にエーテル酸素を含む(特に、式(Y)中のベンゼン環に結合する位置がエーテル酸素である)ため、露光による式(X)で表される化合物の分解速度がより速まり、接触角がより低減する傾向がある。一方、−Sp
A−Hb
Aである場合には、Hb
Aの存在によって配向性がより高まる傾向がある。なお、Sp
Aがその構造中にエーテル酸素を含む場合(特に、Sp
A中のHb
Aと結合する側とは反対側の末端(言い換えると式(Y)のベンゼン環と連結する側の末端)にエーテル酸素が含まれる場合)は、上記−OCH
3と同様に、分解速度が速まる効果が得られる。
【0030】
更に、露光による式(X)で表される化合物の分解速度をより一層速めて接触角を低減させる観点からは、上記R
1〜R
4のうち少なくとも2つが、各々独立して、−OCH
3又は−Sp
B−Hb
Bであることが好ましく、R
2及びR
3が、各々独立して、−OCH
3又は−Sp
B−Hb
Bであることがより好ましい。
ここで、Sp
Bは、−CH
2−が−O−で置換された炭素数1〜10のアルキレン基を表す。なかでも、上述のとおり、Sp
B中のHb
Bと結合する側とは反対側の末端(言い換えると式(Y)のベンゼン環と連結する側の末端)にエーテル酸素が含まれる場合には、分解速度が速まる効果がより顕著に得られ、接触角をより低減させる。なお、上記アルキレン基中の−CH
2−が複数の−O−で置換される場合、−O−同士は隣接しないことが好ましい。上記アルキレン基は、炭素数1〜7であることがより好ましく、炭素数1〜6であることが更に好ましく、炭素数1〜4であることが特に好ましい。また、アルキレン基は、直鎖及び分枝のいずれであってもよいが、直鎖であることが好ましい。
【0031】
上記Hb
Bは、炭素数が4〜30のフッ素置換アルキル基を表す。上記Hb
Bの好適態様については、上述した式(X)のHbと同様である。
なお、式(Y)において、R
1〜R
4のうち複数個が−Sp
B−Hb
Bを表す場合、複数個存在するSp
B同士及び複数個存在するHb
B同士は、各々同一であっても異なっていてもよい。
【0032】
なかでも、露光による式(X)で表される化合物の分解速度をより速めて接触角を低減させ、且つ、配向性をより高める観点から、上記R
1〜R
4のうち少なくとも2つが−Sp
B−Hb
Bであることが好ましく、R
2及びR
3のいずれもが−Sp
B−Hb
Bであることがより好ましい。特に、上記−Sp
B−Hb
Bとしては、下記式(Z)で表される構造が好ましい。
式(Z) (C
pF
2p+1)−(CH
2)
q−O−(CH
2)
r−O−*
式(Z)中、pは4〜30であることが好ましく、4〜20であることがより好ましく、4〜10であることが更に好ましい。qは0〜5であることが好ましく、0〜4であることがより好ましく、0〜3であることが更に好ましい。rは1〜5であることが好ましく、1〜4であることがより好ましく、1〜3であることが更に好ましい。
【0033】
上記式(Y)において、R
5は、水素原子、メチル基、エチル基、又は芳香族基であることが好ましい。
芳香族基としては、特に限定されないが、炭素数6〜14であることが好ましく、6〜10であることがより好ましく、フェニル基であることが更に好ましい。
上記R
5は、なかでも、露光による式(X)で表される化合物の分解速度をより速めて接触角を低減させる観点から、メチル基、エチル基、又は芳香族基が好ましく、エチル基又は芳香族基がより好ましく、芳香族基が更に好ましい。
【0034】
また、上記式(Y)において、*は、上記式(X)中のC(=O)O−との結合部位を表す。
【0035】
上記式(X)で表される化合物は、分子構造が対称性を有するものであってもよいし、対称性を有しないものであってもよい。なお、ここでいう対称性とは、点対称、線対称、及び、回転対称のいずれかに該当するものを意味し、非対称とは点対称、線対称、及び、回転対称のいずれにも該当しないものを意味する。
【0036】
また、上記式(X)で表される化合物において、上記Sp、上記Hb、又は上記Aが各々複数個存在する場合、複数個存在するSp同士、複数個存在するHb同士、又は複数個存在するA同士は、各々同一であっても異なっていてもよい。
【0037】
以下、式(X)で表される化合物の具体的な構造を例示するが、これに限定されるものではない。
なお、下記の例示化合物において、「Me」はメチル基を表し、「Et」はエチル基を表す。
【0041】
上記式(X)で表される化合物は、公知の合成法を組み合わせることにより合成できる。
【0042】
上記式(X)で表される化合物の含有量は、重合性液晶化合物全質量に対して、0.01〜10質量%が好ましく、0.01〜5質量%がより好ましく、0.01〜1質量%が更に好ましい。
なお、上記式(X)で表される化合物は1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。2種以上の上記式(X)で表される化合物を併用する場合には、合計含有量が上記範囲内であることが好ましい。
また、上記式(X)で表される化合物とそれ以外の液晶配向促進剤を併用してもよい。
【0043】
<重合性液晶化合物>
重合性液晶化合物の種類は、特に制限されない。
一般的に、液晶化合物はその形状から、棒状タイプ(棒状液晶化合物)と円盤状タイプ(ディスコティック液晶化合物、円盤状液晶化合物)とに分類できる。更に、棒状タイプ及び円盤状タイプには、それぞれ低分子タイプと高分子タイプとがある。高分子とは一般に重合度が100以上のものを指す(高分子物理・相転移ダイナミクス,土井 正男 著,2頁,岩波書店,1992)。本発明では、いずれの液晶化合物を用いることもできる。また、2種以上の液晶化合物を併用してもよい。
【0044】
重合性液晶化合物が有する重合性基の種類は特に制限されず、付加重合反応が可能な官能基が好ましく、重合性エチレン性不飽和基又は環重合性基が好ましい。より具体的には、重合性基としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、スチリル基、アリル基、エポキシ基、又は、オキセタン基が好ましく、又は(メタ)アクリロイル基がより好ましい。
【0045】
重合性液晶化合物としては、以下の式(I)で表される重合性液晶化合物が好ましい。なかでも、Aで表される置換基を有していてもよいトランス−1,4−シクロヘキシレン基の数をmで割った数をmcとしたとき、mc>0.1を満たす重合性液晶化合物がより好ましく、0.4≦mc≦0.8を満たす重合性液晶化合物であることが更に好ましい。
なお、上記mcは、以下の計算式で表される数である。
mc=(Aで表される置換基を有していてもよいトランス−1,4−シクロヘキシレン基の数)÷m
【0047】
式中、
Aは、置換基を有していてもよいフェニレン基又は置換基を有していてもよいトランス−1,4−シクロヘキシレン基を示し、Aのうち少なくとも1つは置換基を有していてもよいトランス−1,4−シクロヘキシレン基を示し、
Lは、単結合、又は、−CH
2O−、−OCH
2−、−(CH
2)
2OC(=O)−、−C(=O)O(CH
2)
2−、−C(=O)O−、−OC(=O)−、−OC(=O)O−、−CH=CH−C(=O)O−、及び、−OC(=O)−CH=CH−からなる群から選択される連結基を示し、
mは3〜12の整数を示し、
Sp
1及びSp
2は、各々独立に、単結合、又は、炭素数1から20の直鎖もしくは分岐のアルキレン基、及び、炭素数1から20の直鎖もしくは分岐のアルキレン基において1つ又は2つ以上の−CH
2−が−O−、−S−、−NH−、−N(CH
3)−、−C(=O)−、−OC(=O)−、又は−C(=O)O−で置換された基からなる群から選択される連結基を示し、
Q
1及びQ
2は、各々独立に、水素原子、又は、以下の式(Q−1)〜式(Q−5)で表される基からなる群から選択される重合性基を示し、ただしQ
1及びQ
2のいずれか一方は重合性基を示す;
【0049】
Aは、置換基を有していてもよいフェニレン基、又は、置換基を有していてもよいトランス−1,4−シクロヘキシレン基である。以下の説明において、フェニレン基というとき、1,4−フェニレン基であることが好ましい。
なお、Aのうち少なくとも1つは置換基を有していてもよいトランス−1,4−シクロヘキシレン基である。
m個のAは、互いに同一でも異なっていてもよい。
【0050】
mは3〜12の整数を示し、3〜9の整数であることが好ましく、3〜7の整数であることがより好ましく、3〜5の整数であることが更に好ましい。
【0051】
式(I)中の、フェニレン基及びトランス−1,4−シクロヘキシレン基が有していてもよい置換基としては、特に制限されず、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アルキルエーテル基、アミド基、アミノ基、及びハロゲン原子、ならびに、上記の置換基を2つ以上組み合わせて構成される基からなる群から選択される置換基が挙げられる。また、置換基の例としては、後述の−C(=O)−X
3−Sp
3−Q
3で表される置換基が挙げられる。フェニレン基及びトランス−1,4−シクロヘキシレン基は、置換基を1〜4個有していてもよい。2個以上の置換基を有するとき、2個以上の置換基は互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0052】
アルキル基は直鎖及び分枝のいずれでもよい。アルキル基の炭素数は1〜30が好ましく、1〜10がより好ましく、1〜6が更に好ましい。アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1,1−ジメチルプロピル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、及び、ドデシル基等が挙げられる。アルコキシ基中のアルキル基の説明も、上記アルキル基に関する説明と同じである。また、以下の説明において、アルキレン基というときのアルキレン基の具体例としては、上記のアルキル基の例の各々において、任意の水素原子を1つ除いて得られる2価の基が挙げられる。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及び、ヨウ素原子が挙げられる。
【0053】
シクロアルキル基の炭素数は、3以上が好ましく、5以上がより好ましく、また、20以下が好ましく、10以下がより好ましく、8以下が更に好ましく、6以下が特に好ましい。シクロアルキル基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、及び、シクロオクチル基等が挙げられる。
【0054】
なお、以下の重合性液晶化合物の説明において「アルキル基」及び「シクロアルキル基」というときは、いずれも上述した「アルキル基」及び「シクロアルキル基」と同様の態様を指す。
【0055】
フェニレン基及びトランス−1,4−シクロヘキシレン基が有していてもよい置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、及び、−C(=O)−X
3−Sp
3−Q
3からなる群から選択される置換基が好ましい。ここで、X
3は単結合、−O−、−S−、もしくは−N(Sp
4−Q
4)−を示すか、又は、Q
3及びSp
3と共に環構造を形成している窒素原子を示す。Sp
3及びSp
4は、各々独立に、単結合、又は、炭素数1から20の直鎖もしくは分岐のアルキレン基、及び、炭素数1から20の直鎖もしくは分岐のアルキレン基において1つ又は2つ以上の−CH
2−が−O−、−S−、−NH−、−N(CH
3)−、−C(=O)−、−OC(=O)−、又はC(=O)O−で置換された基からなる群から選択される連結基を示す。
Q
3及びQ
4は各々独立に、水素原子、シクロアルキル基、シクロアルキル基において1つもしくは2つ以上の−CH
2−が−O−、−S−、−NH−、−N(CH
3)−、−C(=O)−、−OC(=O)−、もしくは−C(=O)O−で置換された基、又は式(Q−1)〜式(Q−5)で表される基からなる群から選択されるいずれかの重合性基を示す。
【0056】
シクロアルキル基において1つ又は2つ以上の−CH
2−が−O−、−S−、−NH−、−N(CH
3)−、−C(=O)−、−OC(=O)−、又はC(=O)O−で置換された基として、具体的には、テトラヒドロフラニル基、ピロリジニル基、イミダゾリジニル基、ピラゾリジニル基、ピペリジル基、ピペラジニル基、及び、モルホルニル基等が挙げられる。これらのうち、テトラヒドロフラニル基が好ましく、2−テトラヒドロフラニル基がより好ましい。
【0057】
式(I)において、Lは、単結合、又は、−CH
2O−、−OCH
2−、−(CH
2)
2OC(=O)−、−C(=O)O(CH
2)
2−、−C(=O)O−、−OC(=O)−、−OC(=O)O−、−CH=CH−C(=O)O−、及び、−OC(=O)−CH=CH−からなる群から選択される連結基を示す。Lは、−C(=O)O−又はOC(=O)−であることが好ましい。m個のLは互いに同一でも異なっていてもよい。
【0058】
Sp
1及びSp
2は、各々独立に、単結合、又は、炭素数1から20の直鎖もしくは分岐のアルキレン基、及び、炭素数1から20の直鎖もしくは分岐のアルキレン基において1つ又は2つ以上の−CH
2−が−O−、−S−、−NH−、−N(CH
3)−、−C(=O)−、−OC(=O)−、又は、−C(=O)O−で置換された基からなる群から選択される連結基を示す。Sp
1及びSp
2は各々独立に、両末端に各々O−、−OC(=O)−、及び、−C(=O)O−からなる群から選択される連結基が結合した炭素数1から10の直鎖のアルキレン基、−OC(=O)−、−C(=O)O−、−O−、及び、炭素数1から10の直鎖のアルキレン基からなる群から選択される基を1又は2以上組み合わせて構成される連結基であることが好ましく、両末端に−O−が各々結合した炭素数1から10の直鎖のアルキレン基であることがより好ましい。
【0059】
Q
1及びQ
2は各々独立に、水素原子、又は、以下の式(Q−1)〜式(Q−5)で表される基からなる群から選択される重合性基を示す。ただし、Q
1及びQ
2のいずれか一方は重合性基を示す。
【0061】
重合性基としては、アクリロイル基(式(Q−1))又はメタクリロイル基(式(Q−2))が好ましい。
【0062】
上記重合性液晶化合物の具体例としては、以下の式(I−11)で表される重合性液晶化合物、式(I−21)で表される重合性液晶化合物、及び、式(I−31)で表される重合性液晶化合物等が挙げられる。上記以外にも、特開2013−112631号公報、特開2010−70543号公報、及び、特許4725516号等に記載の公知の化合物が挙げられる。
【0063】
式(I−11)で表される重合性液晶化合物
【化10】
【0064】
式中、R
11は水素原子、炭素数1から12の直鎖もしくは分岐のアルキル基、又は、−Z
12−Sp
12−Q
12を示し、
L
11は単結合、−C(=O)O−、又は、−O(C=O)−を示し、
L
12は−C(=O)O−、−OC(=O)−、又は、−C(=O)NR
2−を示し、
R
2は、水素原子、又は、炭素数1から3のアルキル基を示し、
Z
11及びZ
12は各々独立に、単結合、−O−、−NH−、−N(CH
3)−、−S−、−C(=O)O−、−OC(=O)−、−OC(=O)O−、又は、−C(=O)NR
12−を示し、
R
12は水素原子又はSp
12−Q
12を示し、
Sp
11及びSp
12は各々独立に、単結合、Q
11で置換されていてもよい炭素数1から12の直鎖もしくは分岐のアルキレン基、又は、Q
11で置換されていてもよい炭素数1から12の直鎖もしくは分岐のアルキレン基において、いずれか1つ以上の−CH
2−を−O−、−S−、−NH−、−N(Q
11)−、又は、−C(=O)−に置き換えて得られる連結基を示し、
Q
11は水素原子、シクロアルキル基、シクロアルキル基において1つ又は2つ以上の−CH
2−が−O−、−S−、−NH−、−N(CH
3)−、−C(=O)−、−OC(=O)−、もしくは−C(=O)O−で置換された基、又は、式(Q−1)〜式(Q−5)で表される基からなる群から選択される重合性基を示し、
Q
12は水素原子又は式(Q−1)〜式(Q−5)で表される基からなる群から選択される重合性基を示し、
l
11は0〜2の整数を示し、
m
11は1又は2の整数を示し、
n
11は1〜3の整数を示し、
複数のR
11、複数のL
11、複数のL
12、複数のl
11、複数のZ
11、複数のSp
11、及び、複数のQ
11は各々互いに同じでも異なっていてもよい。
また、式(I−11)で表される重合性液晶化合物は、R
11として、Q
12が式(Q−1)〜式(Q−5)で表される基からなる群から選択される重合性基である−Z
12−Sp
12−Q
12を少なくとも1つ含む。
また、式(I−11)で表される重合性液晶化合物は、Z
11が−C(=O)O−もしくは−C(=O)NR
12−、Q
11が式(Q−1)〜式(Q−5)で表される基からなる群から選択される重合性基である−Z
11−Sp
11−Q
11、Z
12が−C(=O)O−もしくは−C(=O)NR
12−、及び、Q
12が式(Q−1)〜式(Q−5)で表される基からなる群から選択される重合性基である−Z
12−Sp
12−Q
12であることが好ましい。
【0065】
式(I−11)で表される重合性液晶化合物に含まれる1,4−シクロヘキシレン基はいずれもトランス−1,4−シクロヘキレン基である。
式(I−11)で表される重合性液晶化合物の好適態様としては、L
11が単結合、l
11が1(ジシクロヘキシル基)、かつ、Q
11が式(Q−1)〜式(Q−5)で表される基からなる群から選択される重合性基である化合物が挙げられる。
式(I−11)で表される重合性液晶化合物の他の好適態様としては、m
11が2、l
11が0、かつ、2つのR
11がいずれも−Z
12−Sp
12−Q
12を表し、Q
12が式(Q−1)〜式(Q−5)で表される基からなる群から選択される重合性基である化合物が挙げられる。
【0066】
式(I−21)で表される重合性液晶化合物
【化11】
【0067】
式中、Z
21及びZ
22は、各々独立に、置換基を有していてもよいトランス−1,4−シクロヘキシレン基、又は、置換基を有していてもよいフェニレン基を示し、
上記置換基はいずれも各々独立に、−C(=O)−X
21−Sp
23−Q
23、アルキル基、及びアルコキシ基からなる群から選択される1から4個の置換基であり、
m21は1又は2の整数を示し、n21は0又は1の整数を示し、
m21が2を示すときn21は0を示し、
m21が2を示すとき2つのZ
21は同一であっても異なっていてもよく、
Z
21及びZ
22の少なくともいずれか一つは置換基を有していてもよいフェニレン基であり、
L
21、L
22、L
23及びL
24は各々独立に、単結合、又は、−CH
2O−、−OCH
2−、−(CH
2)
2OC(=O)−、−C(=O)O(CH
2)
2−、−C(=O)O−、−OC(=O)−、−OC(=O)O−、−CH=CH−C(=O)O−、及びOC(=O)−CH=CH−からなる群から選択される連結基を示し、
X
21は−O−、−S−、もしくは−N(Sp
25−Q
25)−を示すか、又は、Q
23及びSp
23と共に環構造を形成する窒素原子を示し、
r
21は1から4の整数を示し、
Sp
21、Sp
22、Sp
23、及びSp
25は各々独立に、単結合、又は、炭素数1から20の直鎖もしくは分岐のアルキレン基、及び、炭素数1から20の直鎖もしくは分岐のアルキレン基において1つ又は2つ以上の−CH
2−が−O−、−S−、−NH−、−N(CH
3)−、−C(=O)−、−OC(=O)−、又はC(=O)O−で置換された基からなる群から選択される連結基を示し、
Q
21及びQ
22は各々独立に、式(Q−1)〜式(Q−5)で表される基からなる群から選択されるいずれかの重合性基を示し、
Q
23は水素原子、シクロアルキル基、シクロアルキル基において1つもしくは2つ以上の−CH
2−が−O−、−S−、−NH−、−N(CH
3)−、−C(=O)−、−OC(=O)−、もしくは−C(=O)O−で置換された基、式(Q−1)〜式(Q−5)で表される基からなる群から選択されるいずれかの重合性基、又は、X
21がQ
23及びSp
23と共に環構造を形成する窒素原子である場合において単結合を示し、
Q
25は、水素原子、シクロアルキル基、シクロアルキル基において1つもしくは2つ以上の−CH
2−が−O−、−S−、−NH−、−N(CH
3)−、−C(=O)−、−OC(=O)−、もしくは−C(=O)O−で置換された基、又は、式(Q−1)〜式(Q−5)で表される基からなる群から選択されるいずれかの重合性基を示し、Sp
25が単結合のとき、Q
25は水素原子ではない。
【0068】
式(I−21)で表される重合性液晶化合物は、1,4−フェニレン基及びトランス−1,4−シクロヘキシレン基が交互に存在する構造であることも好ましく、例えば、m21が2であり、n21が0であり、かつ、Z
21がQ
21側から各々置換基を有していてもよいトランス−1,4−シクロヘキシレン基、置換基を有していてもよいアリーレン基であるか、又は、m21が1であり、n21が1であり、Z
21が置換基を有していてもよいアリーレン基であり、かつ、Z
22が置換基を有していてもよいアリーレン基である構造が好ましい。
【0069】
式(I−31)で表される重合性液晶化合物;
【0071】
式中、R
31及びR
32は各々独立に、アルキル基、アルコキシ基、及び、−C(=O)−X
31−Sp
33−Q
33からなる群から選択される基であり、
n31及びn32は各々独立に、0〜4の整数を示し、
X
31は単結合、−O−、−S−、もしくは−N(Sp
34−Q
34)−を示すか、又は、Q
33及びSp
33と共に環構造を形成している窒素原子を示し、
Z
31は、置換基を有していてもよいフェニレン基を示し、
Z
32は、置換基を有していてもよいトランス−1,4−シクロヘキシレン基、又は、置換基を有していてもよいフェニレン基を示し、
上記置換基はいずれも各々独立に、アルキル基、アルコキシ基、及び、−C(=O)−X
31−Sp
33−Q
33からなる群から選択される1から4個の置換基であり、
m31は1又は2の整数を示し、m32は0〜2の整数を示し、
m31及びm32が2を示すとき2つのZ
31、Z
32は同一であっても異なっていてもよく、
L
31及びL
32は各々独立に、単結合、又は、−CH
2O−、−OCH
2−、−(CH
2)
2OC(=O)−、−C(=O)O(CH
2)
2−、−C(=O)O−、−OC(=O)−、−OC(=O)O−、−CH=CH−C(=O)O−、及びOC(=O)−CH=CH−からなる群から選択される連結基を示し、
Sp
31、Sp
32、Sp
33及びSp
34は各々独立に、単結合、又は、炭素数1から20の直鎖もしくは分岐のアルキレン基、及び、炭素数1から20の直鎖もしくは分岐のアルキレン基において1つ又は2つ以上の−CH
2−が−O−、−S−、−NH−、−N(CH
3)−、−C(=O)−、−OC(=O)−、又はC(=O)O−で置換された基からなる群から選択される連結基を示し、
Q
31及びQ
32は各々独立に、式(Q−1)〜式(Q−5)で表される基からなる群から選択されるいずれかの重合性基を示し、
Q
33及びQ
34は各々独立に、水素原子、シクロアルキル基、シクロアルキル基において1つもしくは2つ以上の−CH
2−が−O−、−S−、−NH−、−N(CH
3)−、−C(=O)−、−OC(=O)−、もしくは−C(=O)O−で置換された基、又は、式(Q−1)〜式(Q−5)で表される基からなる群から選択されるいずれかの重合性基を示し、Q
33はX
31及びSp
33と共に環構造を形成している場合において、単結合を示してもよく、Sp
34が単結合のとき、Q
34は水素原子ではない。
式(I−31)で表される重合性液晶化合物として、特に好ましい化合物としては、Z
32がフェニレン基である化合物及びm32が0である化合物が挙げられる。
【0072】
式(I)で表される化合物は、以下の式(II)で表される部分構造を有することも好ましい。
【0074】
式(II)において、黒丸は、式(I)の他の部分との結合位置を示す。式(II)で表される部分構造は式(I)中の下記式(III)で表される部分構造の一部として含まれていればよい。
【0076】
式中、R
1及びR
2は各々独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、及び、−C(=O)−X
3−Sp
3−Q
3で表される基からなる群から選択される基である。ここで、X
3は単結合、−O−、−S−、もしくは−N(Sp
4−Q
4)−を示すか、又は、Q
3及びSp
3と共に環構造を形成している窒素原子を示す。X
3は単結合又はO−であることが好ましい。R
1及びR
2は、−C(=O)−X
3−Sp
3−Q
3であることが好ましい。また、R
1及びR
2は、互いに同一であることが好ましい。R
1及びR
2の各々のフェニレン基への結合位置は特に制限されない。
【0077】
Sp
3及びSp
4は各々独立に、単結合、又は、炭素数1から20の直鎖もしくは分岐のアルキレン基、及び、炭素数1から20の直鎖もしくは分岐のアルキレン基において1つ又は2つ以上の−CH
2−が−O−、−S−、−NH−、−N(CH
3)−、−C(=O)−、−OC(=O)−、又はC(=O)O−で置換された基からなる群から選択される連結基を示す。Sp
3及びSp
4としては、各々独立に、炭素数1から10の直鎖もしくは分岐のアルキレン基が好ましく、炭素数1から5の直鎖のアルキレン基がより好ましく、炭素数1から3の直鎖のアルキレン基が更に好ましい。
Q
3及びQ
4は各々独立に、水素原子、シクロアルキル基、シクロアルキル基において1つもしくは2つ以上の−CH
2−が−O−、−S−、−NH−、−N(CH
3)−、−C(=O)−、−OC(=O)−もしくは−C(=O)O−で置換された基、又は、式(Q−1)〜式(Q−5)で表される基からなる群から選択されるいずれかの重合性基を示す。
【0078】
式(I)で表される化合物は、例えば、以下式(II−2)で表される化合物が好ましい。
【0080】
式中、A
1及びA
2は各々独立に、置換基を有していてもよいフェニレン基又は置換基を有していてもよいトランス−1,4−シクロヘキレン基を示し、上記置換基はいずれも各々独立に、アルキル基、アルコキシ基、及び、−C(=O)−X
3−Sp
3−Q
3からなる群から選択される1から4個の置換基であり、
L
1、L
2及びL
3は単結合、又は、−CH
2O−、−OCH
2−、−(CH
2)
2OC(=O)−、−C(=O)O(CH
2)
2−、−C(=O)O−、−OC(=O)−、−OC(=O)O−、−CH=CH−C(=O)O−、及び、−OC(=O)−CH=CH−からなる群から選択される連結基を示し、
n1及びn2は各々独立に、0から9の整数を示し、かつn1+n2は9以下である。
Q
1、Q
2、Sp
1、及び、Sp
2の定義は、上記式(I)中の各基の定義と同義である。X
3、Sp
3、Q
3、R
1、及び、R
2の定義は、上記式(II)中の各基の定義と同義である。
【0081】
式(I)で表される重合性液晶化合物であって、0.4≦mc≦0.8を満たす重合性液晶化合物としては、以下が例示される。
【0092】
なお、重合性液晶化合物は2種以上併用して用いてもよい。例えば、式(I)で表される重合性液晶化合物を2種以上併用してもよい。
なかでも、上記式(I)で表される重合性液晶化合物であって、0.4≦mc≦0.8を満たす重合性液晶化合物と共に、式(I)で表される重合性液晶化合物であって、0.1<mc<0.3を満たす重合性液晶化合物を用いることが好ましい。
【0093】
式(I)で表される重合性液晶化合物であって、0.1<mc<0.3を満たす重合性液晶化合物としては、以下が例示される。
【0098】
上記重合性液晶化合物は、公知の方法により製造することが可能である。
【0099】
<キラル剤(キラル化合物)>
液晶組成物は、キラル剤を含有することが好ましい。
キラル剤の種類は、特に制限されない。キラル剤は液晶性であっても、非液晶性であってもよい。キラル剤は、公知の種々のキラル剤(例えば、液晶デバイスハンドブック、第3章4−3項、TN(twisted nematic)、STN(Super Twisted Nematic)用カイラル剤、199頁、日本学術振興会第142委員会編、1989に記載)から選択することができる。キラル剤は、一般に不斉炭素原子を含む。ただし、不斉炭素原子を含まない軸性不斉化合物又は面性不斉化合物を、キラル剤として用いることもできる。軸性不斉化合物又は面性不斉化合物の例には、ビナフチル、ヘリセン、パラシクロファン及びこれらの誘導体が含まれる。キラル剤は、重合性基を有していてもよい。
【0100】
組成物中、キラル剤の含有量は、重合性液晶化合物全質量に対して、0.5〜30質量%であることが好ましい。キラル剤の使用量は、より少ないことが液晶性に影響を及ぼさない傾向があるため好まれる。従って、キラル剤としては、少量でも所望の螺旋ピッチの捩れ配向を達成可能なように、強い捩り力のある化合物が好ましい。
このような強い捩れ力を示すキラル剤としては、例えば、特開2003−287623号公報、特開2002−302487号公報、特開2002−80478号公報、特開2002−80851号公報、及び、特開2014−034581号公報に記載のキラル剤、ならびに、BASF社製のLC−756等が挙げられる。
【0101】
<任意の成分>
組成物には、重合性液晶化合物及びキラル剤以外の他の成分が含まれていてもよい。
【0102】
(重合開始剤)
組成物は、重合開始剤を含有することが好ましい。
重合開始剤としては、紫外線照射によって重合反応を開始可能な光重合開始剤であることが好ましい。光重合開始剤としては、α−カルボニル化合物(米国特許第2367661号、同2367670号の各明細書記載)、アシロインエーテル(米国特許第2448828号明細書記載)、α−炭化水素置換芳香族アシロイン化合物(米国特許第2722512号明細書記載)、多核キノン化合物(米国特許第3046127号、同2951758号の各明細書記載)、トリアリールイミダゾールダイマーとp−アミノフェニルケトンとの組み合わせ(米国特許第3549367号明細書記載)、アクリジン及びフェナジン化合物(特開昭60−105667号公報、米国特許第4239850号明細書記載)及びオキサジアゾール化合物(米国特許第4212970号明細書記載)等が挙げられる。
組成物中での重合開始剤の含有量は特に制限されないが、重合性液晶化合物全質量に対して、0.1〜20質量%が好ましく、1〜8質量%がより好ましい。
【0103】
(溶媒)
組成物は、溶媒を含んでいてもよい。
溶媒としては、水又は有機溶媒が挙げられる。有機溶媒としては、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド類;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類;ピリジン等のヘテロ環化合物;ベンゼン、ヘキサン等の炭化水素;クロロホルム、ジクロロメタン等のアルキルハライド類;酢酸メチル、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のエステル類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン等のケトン類;テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン等のエーテル類;1,4−ブタンジオールジアセテート;等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0104】
(その他の添加剤)
組成物は、1種又は2種類以上の、酸化防止剤、紫外線吸収剤、増感剤、安定剤、可塑剤、連鎖移動剤、重合禁止剤、消泡剤、レべリング剤、増粘剤、難燃剤、界面活性物質、分散剤、ならびに、染料及び顔料等の色材等の他の添加剤を含んでいてもよい。
【0105】
〔液晶組成物を重合してなる高分子材料〕
本発明の高分子材料は、上述の液晶組成物を重合させることにより形成される。つまり、上記液晶組成物中に含まれる重合性液晶化合物を配向させた状態で重合により硬化したものを意味する。
以下、本発明の高分子材料の製造方法について一例を挙げて説明する。
工程1:重合性液晶化合物及び上記式(X)で表される化合物を含有する液晶組成物を基板上に塗布する工程
工程2:基板上に塗布された上記液晶組成物を加熱して液晶化合物を配向させ、液晶相の状態で重合性液晶組成物を硬化する工程
以下、各工程で使用される材料、及び、各工程の手順について詳述する。
【0106】
<工程1>
工程1は、重合性液晶化合物及び上記式(X)で表される化合物を含有する液晶組成物を基板上に塗布する工程である。
以下では、まず、本工程で使用される基板について詳述し、その後、工程の手順について詳述する。
【0107】
(基板)
基板は、液晶組成物の層を支持する板である。なかでも、透明基板であることが好ましい。なお、透明基板とは、可視光の透過率が60%以上である基板を意図し、その透過率は80%以上が好ましく、90%以上がより好ましい。
基板を構成する材料は特に制限されず、例えば、セルロース系ポリマー、ポリカーボネート系ポリマー、ポリエステル系ポリマー、(メタ)アクリル系ポリマー、スチレン系ポリマー、ポリオレフィン系ポリマー、塩化ビニル系ポリマー、アミド系ポリマー、イミド系ポリマー、スルホン系ポリマー、ポリエーテルスルホン系ポリマー、及び、ポリエーテルエーテルケトン系ポリマー等が挙げられる。
基板には、UV(紫外線)吸収剤、マット剤微粒子、可塑剤、劣化防止剤、及び、剥離剤等の各種添加剤が含まれていてもよい。
なお、基板は、可視光領域で低複屈折性であることが好ましい。例えば、基板の波長550nmにおける位相差は50nm以下であることが好ましく、20nm以下であることがより好ましい。
【0108】
基板の厚みは特に制限されないが、薄型化、及び、取り扱い性の点から、10〜200μmが好ましく、20〜100μmがより好ましい。
上記厚みは平均厚みを意図し、基板の任意の5点の厚みを測定し、それらを算術平均したものである。
【0109】
また、基板の液晶組成物を塗布する側の表面には、配向膜が形成されていてもよい。
【0110】
(工程1の手順)
工程1では、まず、液晶組成物を基板上に塗布する。塗布方法は特に制限されず、例えば、ワイヤーバーコーティング法、押し出しコーティング法、ダイレクトグラビアコーティング法、リバースグラビアコーティング法、及び、ダイコーティング法等が挙げられる。
なお、必要に応じて、塗布後に、基板上に塗布された組成物を乾燥する処理を実施してもよい。乾燥処理を実施することにより、塗布された組成物から溶媒を除去できる。
【0111】
基板上に塗布された組成物(組成物層)の膜厚は特に制限されないが、0.1〜20μmが好ましく、0.2〜15μmがより好ましく、0.5〜10μmが更に好ましい。
【0112】
<工程2>
工程2は、基板上に塗布された液晶組成物(組成物層)を加熱して液晶化合物を配向させ、液晶相の状態で重合性液晶化合物を硬化する工程である。
(工程2の手順)
組成物の液晶相転移温度は、製造適性の面から10〜250℃の範囲内であることが好ましく、10〜150℃の範囲内であることがより好ましい。
加熱条件としては、40〜100℃(好ましくは、60〜100℃)で0.5〜5分間(好ましくは、0.5〜2分間)にわたって組成物を加熱することが好ましい。
【0113】
次いで、液晶相の状態で、重合性液晶化合物を硬化する。
硬化処理の方法は特に制限されず、光硬化処理及び熱硬化処理が挙げられる。なかでも、液晶配向促進剤である式(X)で表される化合物の光分解と、重合性液晶化合物の硬化とを並行して実施できる観点から、光照射処理が好ましく、紫外線照射処理がより好ましい。
紫外線照射には、紫外線ランプ等の光源が利用される。
紫外線の照射エネルギー量は特に制限されないが、一般的には、0.1〜0.8J/cm
2程度が好ましい。また、紫外線を照射する時間は特に制限されないが、得られる層の充分な強度及び生産性の双方の観点から適宜決定すればよい。
なお、硬化処理の方法として熱硬化処理を選択した場合には、基板上に塗布された液晶組成物(組成物層)を加熱して液晶化合物を配向させた後であって、且つ、熱硬化処理の前及び/又は熱硬化処理と並行して、光照射(好ましくは紫外線照射)を実施し、式(X)で表される化合物の光分解を実施する工程を含む必要がある。その際の光照射の条件は、上述した態様と同じである。
【0114】
(液晶相)
液晶組成物がキラル剤を含有する場合、上記工程2により形成される層は、コレステリック液晶相を固定してなる層に該当する。
なお、ここで、コレステリック液晶相を「固定化した」状態は、コレステリック液晶相となっている液晶化合物の配向が保持された状態が最も典型的、且つ、好ましい態様である。それだけには制限されず、具体的には、通常0℃〜50℃、より過酷な条件下では−30℃〜70℃の温度範囲において、層に流動性が無く、また、外場もしくは外力によって配向形態に変化を生じさせることなく、固定化された配向形態を安定に保ち続けることができる状態を意味するものとする。
なお、コレステリック液晶相を固定してなる層においては、コレステリック液晶相の光学的性質が層中において保持されていれば十分であり、最終的に層中の組成物がもはや液晶性を示す必要はない。
なお、液晶組成物がキラル剤を含まない場合、液晶化合物は、均一に配向(モノドメイン配向)した液晶相が固定化された層となる。
【0115】
〔フィルム〕
本発明のフィルムは、上述の高分子材料を含有する。
高分子材料は、コレステリック液晶相が固定化された高分子材料であってもよいし、液晶化合物が均一に配向(モノドメイン配向、好ましくは水平(ホモジニアス)配向)した液晶相が固定化された高分子材料であってもよい。
本発明のフィルムの形態としては、上述の高分子材料からなる層を少なくとも含有しているものが挙げられ、例えば、上述したコレステリック液晶相を固定してなる層からなるフィルム(本発明の液晶組成物のコレステリック液晶相を固定してなるフィルム)が挙げられる。
特に、本発明のフィルムは、上述の高分子材料からなる層を複数有する積層体であることが好ましい。本発明の液晶組成物により形成される上記液晶層の空気側界面は接触角が低いため、上述のような積層体の形成に良好に用いることができるためである。
【0116】
〔用途〕
(コレステリック液晶相が固定化された層を有するフィルム)
コレステリック液晶相が固定化された層(以下、「コレステリック液晶層」ともいう。)は、所定の波長域の光に対して選択反射特性を示す層である。コレステリック液晶層は選択反射波長域において、右円偏光及び左円偏光のいずれか一方を選択的に反射させ、他方のセンスの円偏光を透過させる円偏光選択反射層として機能する。コレステリック液晶層を1層又は2層以上含むフィルムは、様々な用途に用いることができる。コレステリック液晶層を2層以上含むフィルムにおいて、各コレステリック液晶層が反射する円偏光のセンスは用途に応じて同じでも逆であってもよい。また、各コレステリック液晶層の後述の選択反射の中心波長も用途に応じて同じでも異なっていてもよい。
【0117】
なお、本明細書において、円偏光につき「センス」というときは、右円偏光であるか、又は左円偏光であるかを意味する。円偏光のセンスは、光が手前に向かって進んでくるように眺めた場合に電場ベクトルの先端が時間の増加に従って時計回りに回る場合が右円偏光であり、反時計回りに回る場合が左円偏光であるとして定義される。本明細書においては、コレステリック液晶の螺旋の捩れ方向について「センス」との用語を用いることもある。コレステリック液晶による選択反射は、コレステリック液晶の螺旋の捩れ方向(センス)が右の場合は右円偏光を反射し、左円偏光を透過し、センスが左の場合は左円偏光を反射し、右円偏光を透過する。
【0118】
例えば、可視光波長域(波長400〜750nm)に選択反射特性を示すコレステリック液晶層を含むフィルムは、投映像表示用のスクリーン及びハーフミラーとして利用することができる。また、反射帯域を制御することで、カラーフィルター又はディスプレイの表示光の色純度を向上させるフィルタ(例えば特開2003−294948号公報参照)として利用することもできる。
また、上記コレステリック液晶層は、光学素子の構成要素である、偏光素子、反射膜、反射防止膜、視野角補償膜、ホログラフィー、及び、配向膜等、種々の用途に利用することができる。
以下特に好ましい用途である投映像表示用部材としての用途について説明する。
【0119】
コレステリック液晶層の上記の機能により、投射光のうち選択反射を示す波長において、いずれか一方のセンスの円偏光を反射させて、投映像を形成することができる。投映像は投映像表示用部材表面で表示され、そのように視認されるものであってもよく、観察者から見て投映像表示用部材の先に浮かび上がって見える虚像であってもよい。
【0120】
上記選択反射の中心波長λは、コレステリック液晶相における螺旋構造のピッチP(=螺旋の周期)に依存し、コレステリック液晶層の平均屈折率nとλ=n×Pの関係に従う。なお、ここで、コレステリック液晶層が有する選択反射の中心波長λは、コレステリック液晶層の法線方向から測定した円偏光反射スペクトルの反射ピークの重心位置にある波長を意味する。上記式から分かるように、螺旋構造のピッチを調節することによって、選択反射の中心波長を調整できる。すなわち、n値とP値を調節して、例えば、青色光に対して右円偏光及び左円偏光のいずれか一方を選択的に反射させるために、中心波長λを調節し、見かけ上の選択反射の中心波長が450nm〜495nmの波長域となるようにすることができる。なお、見かけ上の選択反射の中心波長とは実用の際(投映像表示用部材としての使用時)の観察方向から測定したコレステリック液晶層の円偏光反射スペクトルの反射ピークの重心位置にある波長を意味する。コレステリック液晶相のピッチは液晶化合物とともに用いるキラル剤の種類、又はその添加濃度に依存するため、これらを調整することによって所望のピッチを得ることができる。なお、螺旋のセンス又はピッチの測定法については「液晶化学実験入門」日本液晶学会編 シグマ出版2007年出版、46頁、及び、「液晶便覧」液晶便覧編集委員会 丸善 196頁に記載の方法を用いることができる。
【0121】
また、赤色光波長域、緑色光波長域、及び青色光波長域にそれぞれ見かけ上の選択反射の中心波長を有するコレステリック液晶層をそれぞれ作製し、それらを積層することによりフルカラーの投映像の表示が可能である投映像表示用部材を作製することができる。
【0122】
各コレステリック液晶層の選択反射の中心波長を、投映に用いられる光源の発光波長域、及び投映像表示用部材の使用態様に応じて調整することにより、光利用効率良く鮮明な投映像を表示することができる。
【0123】
また、例えば、上記投映像表示用部材を可視光領域の光に対して透過性を有する構成とすることによりヘッドアップディスプレイのコンバイナとして使用可能なハーフミラーとすることができる。投映像表示用ハーフミラーは、プロジェクターから投映された画像を視認可能に表示することができるとともに、画像が表示されている同じ面側から投映像表示用ハーフミラーを観察したときに、反対の面側にある情報又は風景を同時に観察することができる。
【0124】
(均一に配向した液晶相が固定化された層を有するフィルム)
また、液晶化合物が均一に配向(モノドメイン配向)した液晶相が固定化された層を有するフィルムは光学異方性を示すため、位相差板として用いることができる。
【実施例】
【0125】
以下に実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、及び、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す実施例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0126】
<合成例>
(化合物Aの合成)
【0127】
【化30】
【0128】
化合物Aは、特開2013−47204号公報に記載の方法に準じて合成した。
【0129】
(化合物Bの合成)
【化31】
【0130】
3,4−ジヒドロキシベンズアルデヒド(2.84g)をジメチルアセトアミド(80mL)に溶解し、得られた溶液に炭酸カリウム(11.4g)とヨウ化ナトリウム(0.31g)を加え攪拌した。得られた溶液に、更に、化合物A(20g)をジメチルアセトアミド(20mL)に溶解させた溶液を滴下した後、100℃にて4時間攪拌した。得られた反応液を30℃まで冷却した後、更に水と酢酸エチルを添加した。次いで、水層を除去し、有機層を水、食塩水の順に洗浄した。硫酸マグネシウムで有機層を乾燥し、乾燥剤をろ過した後、溶媒を減圧留去し、化合物Bを得た。
1H−NMR(nuclear magnetic resonance)(溶媒:CDCl
3)δ(ppm): 2.3−2.5(m,4H),3.9(m,8H),4.2(m,4H),7.0(d,1H),7.4(m,2H),9.8(s,1H)
【0131】
(化合物C−1の合成)
【化32】
【0132】
60%硝酸(10mL)を攪拌しながら氷冷し、化合物B(4g)を少しずつ添加した。40℃にて1時間攪拌した後、氷冷し、水を添加した。得られた反応液に酢酸エチルを加えて抽出し、硫酸マグネシウムで有機層を乾燥し、乾燥剤をろ過した後、溶媒を減圧留去し、化合物C−1を得た。
1H−NMR(溶媒:CDCl
3)δ(ppm):2.3−2.5(m,4H),3.9(m,8H),4.2(m,4H),7.4(s,1H),7.7(s,1H),10.4(s,1H)
【0133】
(化合物C−2の合成)
【化33】
【0134】
上記C−1の合成と同様の手法により、3,4−ジメトキシベンズアルデヒドから化合物C−2を得た。
1H−NMR(溶媒:CDCl
3)δ(ppm):4.1(s,6H),7.4(s,1H),7.6(s,1H),10.5(s,1H)
【0135】
(化合物D−1の合成)
【化34】
【0136】
化合物C−1(4g)をTHF(tetrahydrofuran、25mL)に溶解し、−78℃に冷却した。得られた溶液にフェニルマグネシウムブロミドのTHF溶液(1M、4.2mL)を滴下した後、反応液を−15℃にて1時間攪拌した。得られた反応液に2%の塩酸水(50mL)を滴下した後、酢酸エチルを加えて抽出した。有機層を、重曹水、水、及び、食塩水の順に洗浄した。硫酸マグネシウムで有機層を乾燥し、乾燥剤をろ過した後、溶媒を減圧留去し、化合物D−1を得た。
1H−NMR(溶媒:CDCl
3)δ(ppm):2.3−2.5(m,4H),2.8(d,1H),3.9(m,8H),4.2(m,4H),6.5(d,1H),7.3(m,6H),7.7(s,1H)
【0137】
(化合物D−2の合成)
【化35】
【0138】
上記化合物D−1の合成と同様の手法により、化合物D−2を得た。
1H−NMR(溶媒:CDCl
3)δ(ppm):2.9(d,1H),3.9(s,6H),6.5(d,1H),7.2(s,1H),7.3(m,5H),7.6(s,1H)
【0139】
(化合物Eの合成)
【化36】
【0140】
化合物Eは特開2013−47204号公報に記載の方法に準じて合成した。
【0141】
(化合物2の合成)
【化37】
【0142】
化合物D−1(0.6g)のTHF(5mL)溶液に化合物E(1.06g)、及び、NMI(N-Methylimidazole、9.2μL)を0℃にて添加した後、トリエチルアミン(0.16mL)を滴下した。室温にて6時間攪拌した後、メタノール及び水を加えて、酢酸エチルで抽出した。硫酸マグネシウムで有機層を乾燥し、乾燥剤をろ過した後、溶媒を減圧留去した。得られた粗体を酢酸エチルに溶解させ、メタノールで晶析することで化合物2を得た。
1H−NMR(溶媒:CDCl
3)δ(ppm):2.3−2.6(m,10H),2.7(m,6H),2.9(m,6H),3.9(m,8H),4.2(m,4H),4.4(t,6H),7.2(s,1H),7.3(m,5H),7.7(s,1H),7.8(m,3H)
【0143】
(化合物1の合成)
【化38】
【0144】
上記化合物2の合成法と同様の手法により、化合物1を得た。
1H−NMR(溶媒:CDCl
3)δ(ppm):2.4−2.6(m,6H),2.7(m,6H),2.9−3.0(m,6H),3.9(s,3H),4.0(s,3H),4.4(t,6H),7.1(s,1H),7.3(m,5H),7.7(s,1H),7.8(m,3H)
【0145】
(化合物Fの合成)
【化39】
【0146】
2,5−ジヒドロキシテレフタル酸エチル(4.9g)をジメチルアセトアミド(80mL)に溶解し、得られた溶液に炭酸カリウム(10.9g)とヨウ化ナトリウム(0.3g)を加え攪拌した。得られた溶液に、更に、化合物A(19.1g)をジメチルアセトアミド(20mL)に溶解させた溶液を滴下した後、100℃にて4時間攪拌した。得られた反応液を30℃まで冷却した後、更に、水と酢酸エチルを添加した。次いで、水層を除去し、有機層を水、食塩水の順に洗浄した。硫酸マグネシウムで有機層を乾燥し、乾燥剤をろ過した後、溶媒を減圧留去した。
得られた粗体(13g)をエタノール(45mL)に溶解し、水(9mL)及び水酸化カリウム(2.8g)を添加し、3時間加熱還流した。得られた反応液を室温まで冷却した後、上記冷却後の反応液を、濃塩酸(9mL)及び水(120mL)の混合溶液に0℃にて滴下することで、晶析した。濾過して得られた固体をメタノールで再結晶し、化合物Fを得た。
1H−NMR(溶媒:CDCl
3)δ(ppm):2.4−2.6(m,4H),3.9(m,8H),4.4(m,4H),7.9(s,2H),11.0(s,2H)
【0147】
(化合物Gの合成)
【化40】
【0148】
化合物F(1g)を塩化チオニル(9mL)に溶解した後、DMF(N,N-dimethylformamide、50μL)を加えて80℃にて2時間加熱した。得られた反応物にトルエンを加えて溶媒を減圧留去した後、更にヘキサンを加え、−10℃まで冷却して晶析した。得られた固体を濾過して化合物Gを得た。
1H−NMR(溶媒:CDCl
3)δ(ppm):2.3−2.5(m,4H),3.9(m,8H),4.2(m,4H),7.6(s,2H)
【0149】
(化合物4の合成)
【化41】
【0150】
化合物G(0.34g)のTHF(5mL)溶液に化合物D−1(0.7g)及びDMAP(N,N-dimethyl-4-aminopyridine、5.9mg)を0℃にて添加した後、トリエチルアミン(0.19mL)を滴下して混合物とした。上記混合物を室温にて6時間攪拌した後、水を加えて、酢酸エチルで抽出した。次いで、飽和重曹水、及び食塩水で有機層を洗浄した後、溶媒を減圧留去した。得られた粗体を酢酸エチルに溶解させ、メタノールで晶析することで化合物4を得た。
1H−NMR(溶媒:CDCl
3)δ(ppm):2.2−2.5(m,12H),3.6(m,8H),3.7−3.9(m,16H),4.0−4.3(m,12H),7.2(s,2H),7.3−7.5(m,12H),7.7(s,2H),7.8(s,2H)
【0151】
(化合物3の合成)
【化42】
【0152】
上記化合物2の合成方法と同様の手法により、化合物3を得た。
1H−NMR(溶媒:CDCl
3)δ(ppm):2.2−2.4(m,4H),3.6(m,8H),3.8(s,6H),3.9(s,6H),4.0−4.2(m,4H),7.2(s,2H),7.3−7.5(m,12H),7.7(s,2H),7.8(s,2H)
【0153】
<実施例1〜2、比較例1>
下記表1に示した液晶配向促進剤を用いて、光学異方性フィルムを形成し、その空気界面側の接触角、及び配向性を評価した。
なお、液晶配向促進剤としては、式(X)で表される化合物として化合物2及び化合物4、及び比較化合物として化合物5を用いた。
評価に先立ち、まず、下記組成の塗布液(液晶組成物)を調製した。なお、下記表1に示すように、液晶配向促進剤の含有量が棒状液晶化合物100質量部に対して0.15質量部、0.20質量部となる2種の塗布液を調製した。
【0154】
・下記の棒状液晶化合物6 100質量部
・IRGACURE819(チバジャパン社製) 1.5質量部
・表1に示した液晶配向促進剤 上記の量
・クロロホルム 溶質濃度が20質量%となる量
【0155】
調製した塗布液をマイクロピペッターを用いて50μL量り取り、配向膜付ガラス(「SE―130」、日産化学工業(製))上に滴下して3000rpmの回転速度でスピンコートした。90℃にて1分間加熱したのち、窒素雰囲気下で紫外線照射(紫外線強度:300mJ/m
2)することにより、光学異方性フィルムを形成した。光学異方性フィルムの膜厚は約2.2μmであった。
【0156】
(接触角測定)
製造した各実施例及び比較例のフィルムについて、1μLの水を滴下したときの接触角を、協和界面科学社製接触角計 DM700により測定した。
【0157】
(配向性評価)
製造した各実施例及び比較例のフィルムについて、ミューラーマトリックスポラリメーター(AxoscanTM;Axometrics,Inc.製)を用いて空気界面側のチルト角を測定した。チルト角が1.0°以下のものを「A」、1.0°超のものを「B」として判定した。
【0158】
【化43】
【0159】
【化44】
【0160】
【表1】
【0161】
上記の結果から、本発明の液晶組成物によれば、液晶化合物の配向性に優れ、接触角が良好な液晶層(光学異方性層)を与え得ることが明らかである。
また、実施例1及び実施例2の対比により、化合物4を用いた実施例1の方がより接触角に優れていた。化合物4において、nが2以上(つまり、式(X)において、光により開裂してCOOH基を生成するC(=O)OA基が2以上)であるためと考えられる。
一方、比較例1の液晶組成物は、液晶配向促進剤が光で開裂せず、液晶相の接触角に劣る結果となった。
【0162】
<実施例3、比較例3>
下記表2に示した液晶配向促進剤を用いて、コレステリック液晶相を固定化したフィルムを形成し、その空気界面側の接触角及び配向性を評価した。
なお、液晶配向促進剤としては、式(X)で表される化合物として化合物4、及び比較化合物として化合物9を用いた。
評価に先立ち、まず、下記組成の塗布液(液晶組成物)を調製した。液晶配向促進剤の含有量の含有量が、棒状液晶化合物100質量部に対して0.10質量部となるように調製した。
【0163】
・下記の棒状液晶化合物7 55質量部
・下記の棒状液晶化合物8 30質量部
・上記の棒状液晶化合物6 15質量部
・LC756(キラル剤 BASF社製) 4.5質量部
・IRGACURE819(チバジャパン社製) 4質量部
・表2に示した液晶配向促進剤 0.10質量部
・クロロホルム 溶質濃度が20質量%となる量
【0164】
調製した塗布液をマイクロピペッターを用いて50μL量り取り、配向膜付ガラス(「SE―130」、日産化学工業(製))上に滴下して1000rpmの回転速度でスピンコートした。85℃にて1分間加熱したのち、窒素雰囲気下で紫外線照射(紫外線強度:300mJ/m
2)することにより、コレステリック液晶相を固定化したフィルム(コレステリック液晶相を固定化した層)を形成した。コレステリック液晶相を固定化したフィルムの膜厚は約3.8μmであった。
【0165】
(接触角測定)
製造した各実施例及び比較例のフィルムについて、1μLの水を滴下したときの接触角を、協和界面科学社製接触角計 DM700によって測定した。
【0166】
(配向性評価)
製造した各実施例及び比較例のフィルムについて、偏光顕微鏡で面状の配向欠陥の有無を観察した。配向欠陥がなく均一な膜ができているものを「A」、ひも状の配向欠陥が確認できるものは「B」として判定した。
【0167】
【化45】
【0168】
【表2】
【0169】
上記の結果から、本発明の液晶組成物によれば、液晶化合物の配向性に優れ、接触角が良好な液晶層(コレステリック液晶相を固定してなる層)を与え得ることが明らかである。
一方、比較例2の液晶組成物は、液晶配向促進剤が光で開裂せず、液晶相の接触角に劣る結果となった。また、配向性についても所望の結果が得られなかった。
【0170】
(実施例4)
また、液晶配向促進剤として下記化合物3を用いて実施例1と同様の組成の液晶組成物(実施例4)を作製し、その評価を実施したところ、接触角及び配向性についていずれも優れた評価が得られた。
実施例4の液晶組成物と、実施例1の液晶組成物とを対比すると、実施例1の液晶組成物の方がより配向性に優れていることが確認された。化合物4において一般式(Y)のR
2及びR
3に相当する位置にフッ素置換アルキル基(Hb)が含まれているためと考えらえる。
【0171】
【化46】
【0172】
(実施例5)
また、液晶配向促進剤として下記化合物1を用いて実施例1と同様の組成の液晶組成物(実施例5)を作製し、その評価を実施したところ、接触角及び配向性についていずれも優れた評価が得られた。
実施例5の液晶組成物と、実施例1の液晶組成物とを対比すると、実施例1の液晶組成物の方がより配向性に優れていることが確認された。化合物4において、nが2以上(つまり、式(X)において、光により開裂してCOOH基を生成するC(=O)OA基が2以上)であったため、及び、一般式(Y)のR
2及びR
3に相当する位置にフッ素置換アルキル基(Hb)が含まれているためと考えらえる。
【0173】
【化47】
【0174】
(実施例6)
また、液晶配向促進剤として下記化合物10を用いて実施例1と同様の組成の液晶組成物(実施例6)を作製し、その評価を実施したところ、接触角及び配向性についていずれも優れた評価が得られた。
実施例6の液晶組成物と、実施例4の液晶組成物とを対比すると、実施例4の液晶組成物の方が分解速度が速まり、得られる液晶層の接触角がより小さかった。実施例4の化合物3において一般式(Y)のR
1〜R
4に相当する位置のうち少なくとも2つが−OCH
3又は−Sp
B−Hb
Bであるため、及び、R
5が芳香族基であるためと考えられる。
【0175】
【化48】
【0176】
(実施例7)
また、液晶配向促進剤として下記化合物11を用いて実施例1と同様の組成の液晶組成物(実施例7)を作製し、その評価を実施したところ、接触角及び配向性についていずれも優れた評価が得られた。
実施例7の液晶組成物と、実施例5の液晶組成物とを対比すると、実施例5の液晶組成物の方が分解速度がより速まり、得られる液晶層の接触角がより小さかった。実施例5の化合物1において一般式(Y)のR
1〜R
4に相当する位置のうち少なくとも2つが−OCH
3又は−Sp
b−Hb
bであるため、及びR
5が芳香族基であるためと考えられる。
【0177】
【化49】
【0178】
(動的表面張力測定)
KRUSS社製バブルプレッシャー動的表面張力計BP−2を用いて化合物2、4、5の動的表面張力を測定した。測定にはMEK(メチルエチルケトン)/シクロヘキサノン=2/8(質量比)の溶液に各化合物の固形分濃度が0.1質量部となるように調製した液をそれぞれ用いた。
表3に示す結果から、式(X)で表される化合物からなる液晶配向促進剤は、動的表面張力がより低いことが確認された。つまり、式(X)で表される化合物からなる液晶配向促進剤は、空気界面の表面自由エネルギーが小さく、面状ムラ(特に、フィルム乾燥工程において風により生じるムラ)が生じにくいことが確認された。
【0179】
【表3】