特許第6608514号(P6608514)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特許6608514光学式濃度測定装置および光学式濃度測定装置の制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6608514
(24)【登録日】2019年11月1日
(45)【発行日】2019年11月20日
(54)【発明の名称】光学式濃度測定装置および光学式濃度測定装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/59 20060101AFI20191111BHJP
   G01N 21/3504 20140101ALI20191111BHJP
【FI】
   G01N21/59 Z
   G01N21/3504
【請求項の数】13
【全頁数】31
(21)【出願番号】特願2018-232710(P2018-232710)
(22)【出願日】2018年12月12日
(65)【公開番号】特開2019-113545(P2019-113545A)
(43)【公開日】2019年7月11日
【審査請求日】2018年12月12日
(31)【優先権主張番号】特願2017-246699(P2017-246699)
(32)【優先日】2017年12月22日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】303046277
【氏名又は名称】旭化成エレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】合田 祐司
【審査官】 田中 洋介
(56)【参考文献】
【文献】 特開2017−049190(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0278384(US,A1)
【文献】 実公平06−023958(JP,Y2)
【文献】 特開2015−021828(JP,A)
【文献】 特開2006−242750(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00−21/61
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
供給される電力に応じた量の光を出力する光源と、
前記光源が出力する光の少なくとも一部を受光し、受光量に応じた信号を出力信号として出力する光検出部と、
前記出力信号に基づく信号を平滑化する平滑化フィルタと、
現在または過去の時刻における前記出力信号に基づく取得値から選択される少なくとも2つの選択取得値の間の変化量に応じた第1変化量および第2変化量を算出する信号変化量演算部と、
前記第1変化量に基づいて、前記光源に供給する電力を制御する光源制御部と、
前記第2変化量に基づいて、前記平滑化フィルタの特性を制御するフィルタ制御部と
を備える光学式濃度測定装置。
【請求項2】
前記出力信号および前記平滑化フィルタによって平滑化された前記出力信号に基づく信号の少なくとも一方に基づいて測定対象分子の濃度値を算出する濃度演算部を更に備える
請求項1に記載の光学式濃度測定装置。
【請求項3】
前記取得値は前記濃度値である
請求項2に記載の光学式濃度測定装置。
【請求項4】
前記平滑化フィルタによって平滑化される、前記出力信号に基づく信号は前記濃度値である
請求項2または3に記載の光学式濃度測定装置。
【請求項5】
前記選択取得値の少なくとも1つは、前記平滑化フィルタによって平滑化された信号である
請求項1から4のいずれか一項に記載の光学式濃度測定装置。
【請求項6】
前記第1変化量が第1基準値より小さく、且つ前記第2変化量が第2基準値より小さいとき、前記光源制御部は前記光源に供給する電力を減少させ、前記フィルタ制御部は前記平滑化フィルタの平滑化の程度を強める
請求項1から5のいずれか一項に記載の光学式濃度測定装置。
【請求項7】
前記第1変化量が第3基準値より大きく、且つ前記第2変化量が第4基準値より大きいとき、前記光源制御部は前記光源に供給する電力を増加させ、前記フィルタ制御部は前記平滑化フィルタの平滑化の程度を弱める
請求項1から6のいずれか一項に記載の光学式濃度測定装置。
【請求項8】
前記第1変化量と前記第2変化量は同一のものである
請求項1から7のいずれか一項に記載の光学式濃度測定装置。
【請求項9】
前記光源に供給される電力の波形はパルス状であり、
前記光源制御部は前記電力の波形のパルス幅を制御することにより、前記光源に供給する電力を制御する
請求項1から8のいずれか一項に記載の光学式濃度測定装置。
【請求項10】
前記光源に供給される電力の波形はパルス状であり、
前記光源制御部は前記電力の波形のパルス高さを制御することにより、前記光源に供給する電力を制御する
請求項1から9のいずれか一項に記載の光学式濃度測定装置。
【請求項11】
前記平滑化フィルタは無限インパルス応答フィルタを含み、
前記フィルタ制御部は前記無限インパルス応答フィルタの時定数を制御することにより、前記平滑化フィルタの特性を制御する
請求項1から10のいずれか一項に記載の光学式濃度測定装置。
【請求項12】
前記平滑化フィルタは移動平均化フィルタを含み、
前記フィルタ制御部は前記移動平均化フィルタの平均化点数および重み付けの少なくとも一方を制御することにより、前記平滑化フィルタの特性を制御する
請求項1から11のいずれか一項に記載の光学式濃度測定装置。
【請求項13】
供給される電力に応じた量の光を光源により出力し、
前記光源が出力する光の少なくとも一部を受光し、受光量に応じた信号を出力信号として光検出部により出力し、
前記出力信号に基づく信号を平滑化フィルタにより平滑化し、
現在または過去の時刻における前記出力信号に基づく取得値から選択される少なくとも2つの選択取得値の間の変化量に応じた第1変化量および第2変化量を信号変化量演算部により算出し、
前記第1変化量に基づいて、前記光源に供給する電力を光源制御部が制御し、
前記第2変化量に基づいて、前記平滑化フィルタの特性をフィルタ制御部が制御する
光学式濃度測定装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学式濃度測定装置および光学式濃度測定装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、赤外線や紫外線、X線などの光の吸収、回折、散乱等を用いて媒質中の測定対象分子の数量や密度、濃度を測定する光学式濃度測定装置が知られている。例えば、特許文献1の実施形態1には、光源として赤外線を放射する発熱体を有する赤外光源を用いたガス測定装置が開示されている。
【0003】
特許文献1の実施形態1に開示されているガス測定装置は、光源と、第1受光素子と、第2受光素子と、光源と第1受光素子との間に設けられた第1光学フィルタと、光源と第2受光素子との間に設けられた第2光学フィルタと、を備える。また、このガス測定装置は、光源に所定パルス幅の駆動電圧を供給する駆動回路と、駆動回路を制御する制御部と、を備える。また、このガス測定装置は、第1受光素子の第1出力信号と第2受光素子の第2出力信号とに基づいて測定対象のガスの濃度を算出する信号処理部を備える。
【0004】
特許文献1の実施形態1においては、光源の抵抗値を設定する設定部が制御部に接続されている。制御部は、設定部により設定された抵抗値に基づいて、駆動回路から光源への投入電力が規定値となるように所定パルス幅を決定するように構成されている。駆動回路は、制御部にて決定された所定パルス幅の駆動電圧を光源へ供給するように構成されている。これにより、このガス測定装置は、光源の製造ばらつき等に起因して光源の抵抗値がばらついていても、製造時に、予め測定した光源の抵抗の測定値を設定部により抵抗値として設定することにより、光源への投入電力のばらつきを抑制することが可能となる。従って測定精度の高精度化を図ることが可能となる。
【0005】
また、例えば、特許文献2には光源として紫外領域の光を発する発光ダイオード(UVLED)を用いたオゾン測定装置が開示されている。特許文献2に開示されているオゾン測定装置は、紫外領域の光を発する発光ダイオードと、発光ダイオードをパルス点灯させる駆動回路と、発光ダイオードからの光が照射される測定部と、発光ダイオードから光が照射されることで測定部から出射される光を受光して受光量に応じた電圧に変換して出力する光電変換部と、光電変換部が出力する電圧信号の波形を略ガウシアン波形に整形して出力するガウシアンフィルタ回路と、ガウシアンフィルタ回路の出力におけるピークを含む一定期間内の電圧信号に対応する電圧信号を保持して出力するサンプルホールド回路と、サンプルホールド回路が出力する電圧信号をアナログディジタル変換するアナログディジタル変換回路と、を有する。このオゾン測定装置は、UVLEDをパルス点灯させることで、連続測定におけるトータルでのUVLEDの点灯時間を短くして、連続測定において継続して使用することができる期間としてのUVLEDの寿命を延ばすことができる。
[特許文献]
特許文献1 特開2014−173896号公報
特許文献2 特開2017−49190号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ガス等の測定対象の濃度を測定する光学式濃度測定装置においては、光源を省電力化および長寿命化可能であることが好ましい。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の一つの態様においては、供給される電力に応じた量の光を出力する光源と、光源が出力する光の少なくとも一部を受光し、受光量に応じた信号を出力信号として出力する光検出部と、出力信号に基づく信号を平滑化する平滑化フィルタと、現在または過去の時刻における出力信号に基づく取得値から選択される少なくとも2つの選択取得値の間の変化量に応じた第1変化量および第2変化量を算出する信号変化量演算部と、第1変化量に基づいて、光源に供給する電力を制御する光源制御部と、第2変化量に基づいて、平滑化フィルタの特性を制御するフィルタ制御部とを備える光学式濃度測定装置を提供する。本発明を用いた実施形態に掛かる光学式濃度測定装置によれば、測定精度の低下および応答性の低下を抑制しつつ、光源の省電力性の向上および光源の長寿命化が可能になる。
【0008】
本発明の一つの態様においては、供給される電力に応じた量の光を光源により出力し、光源が出力する光の少なくとも一部を受光し、受光量に応じた信号を出力信号として光検出部により出力し、出力信号に基づく信号を平滑化フィルタにより平滑化し、現在または過去の時刻における出力信号に基づく取得値から選択される少なくとも2つの選択取得値の間の変化量に応じた第1変化量および第2変化量を信号変化量演算部により算出し、第1変化量に基づいて、光源に供給する電力を光源制御部が制御し、第2変化量に基づいて、平滑化フィルタの特性をフィルタ制御部が制御する光学式濃度測定装置の制御方法を提供する。
【0009】
なお、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一つの実施形態に係る光学式濃度測定装置100の構成例を示す図である。
図2】平滑化フィルタ103の一例を示す図である。
図3】光検出部102の出力信号および取得値の一例を示す図である。
図4】光学式濃度測定装置100の動作状態の遷移例を示す図である。
図5】本発明の他の実施形態に係る光学式濃度測定装置200の構成例を示す図である。
図6】光学式濃度測定装置200の変形例を示す図である。
図7】光学式濃度測定装置200の変形例を示す図である。
図8】光源101に供給される電力の波形の一例を示す図である。
図9】標準動作状態における、COガス濃度と出力信号の関係を示す図である。
図10】出力信号のSNRと駆動電流パルス幅の関係を示す図である。
図11】光学式濃度測定装置100によるCOガス濃度の変化の実測例を示す図である。
図12】出力信号真値モデルを用いてCOガス濃度を算出した結果を示す図である。
図13】出力信号モデルを用いて算出した、COガス濃度を算出したシミュレーション結果を示す図である。
図14】駆動電流パルス幅とα値を決定するためのフローチャートの一例を示す図である。
図15図14に示した処理を適用したシミュレーション結果を示す図である。
図16図15と共に得た、規格化駆動電流パルス幅Pの変化を示す図である。
図17】規格化駆動電流パルス幅Pを一定とした場合のシミュレーション結果を比較例として示す図である。
図18】規格化駆動電流パルス幅Pを一定とし、α値を調整した場合のシミュレーション結果を比較例として示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0012】
本明細書においては、光学式濃度測定装置の測定対象分子の数量、密度および濃度について、単に測定対象分子濃度と称することがある。
【0013】
特許文献1に示されるガス濃度測定装置、および、特許文献2に示されるオゾン測定装置のように、光源から発せられる赤外線、紫外線またはX線などの光の吸収、回折および散乱等を用いて媒質中の測定対象分子の数量や密度、濃度を測定する方法を用いた光学式濃度測定装置においては、光源のパルス駆動がよく用いられる。これは特許文献2でも言及されているように、光源の寿命を延ばすという観点から有効であり、また、光源の省電力性の向上と言う観点からも有効である。
【0014】
ここで、より一層の光源の長寿命化、或いはより一層の光源の省電力性の向上を目指す場合には例えば一回のパルス駆動のパルス幅を短くすればよい。または、パルス駆動の頻度を下げればよい。しかし、一回のパルス駆動のパルス幅を短くすると、特許文献1の実施形態1における第1受光素子並びに第2受光素子、或いは特許文献2における光電変換部に相当する、測定光を受光する光検出器に到達する総光量、すなわち信号が減少し、その結果ノイズ(雑音)が占める割合が相対的に大きくなり、SNR(信号雑音比)が低下することで測定精度が低下する。また一方で、パルス駆動の頻度を下げると、一回のパルス駆動から得られる信号のSNRは変わらないため、一回のパルス駆動に対する測定精度は維持されるが、測定光を受光する光検出器が測定光を受光する頻度が低下する分、測定対象分子の数量や密度、濃度の時間変化に対して応答性が低下してしまう。ここで、一回のパルス駆動のパルス幅を短くすること、また、パルス駆動の頻度を下げることは、共に光源へ投入する電力を減らすこととなる。すなわち上述の、SNRの低下、および応答性の低下は本質的には光源への投入電力の低減によってもたらされる。
【0015】
すなわち、光学式濃度測定装置において、光源の長寿命化或いは光源の省電力性の向上と測定精度の向上と応答性の向上は、本質的に、互いにトレードオフの関係にある。本明細書の少なくとも一部の態様における光学式濃度測定装置は、測定精度の低下および応答性の低下を抑制しつつ、光源の省電力性の向上および光源の長寿命化を可能とする。
【0016】
図1は、本発明の一つの実施形態に係る光学式濃度測定装置100の構成例を示す図である。光学式濃度測定装置100は、光源101、光検出部102および光源制御部104、信号変化量演算部106、平滑化フィルタ103およびフィルタ制御部105を備える。
【0017】
光源101は、ガス等の測定対象に向けて光を照射する。光検出部102は、光源101が出力し、測定対象を経由した光の少なくとも一部を受光し、受光量に応じた信号を出力信号として生成する。光検出部102が受光する光は、光源101の照射光が測定対象を通過した光を含んでよく、測定対象において反射、散乱等した光を含んでもよい。測定対象において、測定対象分子に対応する光の波長成分が、測定対象分子の濃度に応じて減衰する。従って、光検出部102が検出した光の所定の波長成分の強度から測定対象分子の濃度を演算できる。濃度演算は、光学式濃度測定装置100の内部で行ってよく、外部で行ってもよい。
【0018】
平滑化フィルタ103は、光検出部102が検出した取得値を平滑化して出力する。取得値とは、光検出部102が検出した光の強度に応じた出力信号の値に対して相関を有する値である。取得値は、出力信号の値そのものであってよく、出力信号を平滑化した信号の値であってよく、出力信号の値に対して所定の処理または演算を行って得られる値であってもよい。
【0019】
光源制御部104は、現在または過去の時刻における取得値から選択される少なくとも2つの選択取得値の間の変化量に基づいて、光源101に供給する電力を制御する。本例においては、信号変化量演算部106が、2つの選択取得値の間の第1変化量を算出して、光源制御部104に出力する。光源制御部104が第1変化量に基づいて光源101への電力を制御することで、光源101における消費電力を低減できる。これにより、光源101を省電力化し、また、長寿命化できる。光源制御部104における制御方法は後述する。なお、光源制御部は、常に第1変化量に基づいて光源101を制御する必要はなく、ある任意の期間のみ第1変化量に基づいて光源101を制御してよい。
【0020】
フィルタ制御部105は、現在または過去の時刻における取得値から選択される少なくとも2つの選択取得値の間の変化量に基づいて、平滑化フィルタ103の特性を制御する。本例においては、信号変化量演算部106が、2つの選択取得値の間の第2変化量を算出して、フィルタ制御部105に出力する。第1変化量および第2変化量は、同一の値であってよく、異なる値であってもよい。第1変化量に対応する選択取得値と、第2変化量に対応する選択取得値は、同一の選択取得値であってよく、異なる選択取得値であってもよい。フィルタ制御部105が第2変化量に基づいて平滑化フィルタ103のフィルタ特性を制御することで、SNRの低下および応答性の低下を抑制しつつ、光源101の省電力性の向上並びに光源101の長寿命化が可能になる。フィルタ制御部105における制御方法は後述する。なお、フィルタ制御部は、常に第2変化量に基づいて平滑化フィルタ103を制御する必要はなく、ある任意の期間のみ第2変化量に基づいて平滑化フィルタ103を制御してよい。
【0021】
(光源)
光源101は、光検出部102が感度を有する波長帯を含む光であって、測定対象分子が、吸収、回折、散乱等の作用を及ぼす波長帯を含む光を出力することができれば、種類または構造等は特に制限されない。
【0022】
光源101としては、例えば、測定に赤外線を用いる場合、白熱電球やセラミックヒータ、MEMS(MicroElectroMechanicalSystems)ヒータなどの熱型素子や、赤外線LED(LightEmittingDiode)などの量子型素子等を用いることができる。また例えば、測定に紫外線を用いる場合、紫外線LEDなどの量子型素子や水銀ランプなどを用いることができる。また、例えば、測定にX線を用いる場合、電子ビームや電子レーザーなどを用いることができる。
【0023】
より具体的には、例えば測定対象が測定対象空間の二酸化炭素濃度である場合は、二酸化炭素は例えば波長が4.3μm前後の光をよく吸収する、すなわちよく感度を示すので上述した熱型素子や赤外線LEDを用いることができる。このとき、光源として上述のような熱型素子を用いるのであれば、発光部が400K(ケルビン)付近から2400K付近程度のものが好適であろう。これらの温度を持つ光は当該波長の光を多く含むことがプランクの法則に基づいて黒体輻射のスペクトルを計算することでわかる。同様に、メタンは例えば波長が3.3μm前後の光を、エタノールは例えば3.4μm前後や9.4μm前後の光をよく吸収するので、それらに適った発光温度を有する光源を用いることができる。また、光源としてLED等の量子型素子を用いる場合は、測定対象分子が感度を示す波長に対応した素子を用いれば良い。例えば上述した、3.3μm前後から9.4μm前後の光を発する赤外線LEDは、例えばInSb等の化合物半導体を用いることで実現し得る。例えば、旭化成エレクトロニクス株式会社は、赤外線の吸収を観測することによる二酸化炭素濃度測定に使用可能な赤外線LED(AK9700AE)を販売している。
【0024】
尚、測定対象の分子がどのような波長の光に対して感度を示すかについては、測定対象分子を含む物質のスペクトル解析によって直接的に得ても良いし、或いは、例えばNIST Chemistry WebBook(http://webbook.nist.gov/chemistry/)などを参照することによっても知ることができる。
【0025】
一般に光源は、その種類に依らず、電気エネルギーを光エネルギーに変換し、出力するものである。従って、光源101が正常動作する範囲であれば、光源101に投入する電力が大きいほど、光源101が出力する光の強度は強くなる。言い換えれば、光源101に投入する電力が大きいほど、光源101が単位時間当たりに出力する光量は多くなる。
【0026】
より具体的には、例えば光源101として熱型素子を用いる場合、投入電力が大きい程、発熱部の温度が高くなり、発熱部からの熱の放射量が増えることで、光源101が出力する光の強度は強くなる。
【0027】
また、例えば光源101として量子型素子を用いる場合、駆動電流が大きい程、単位時間当たりに注入されるキャリア数が増え、発光再結合が増えることで、光源101が出力する光の強度は強くなる。言い換えれば、光源101に投入する駆動電流が大きいほど、光源101が単位時間当たりに出力する光量は多くなる。一方で量子型素子は電気抵抗成分を有するので、駆動電流が大きい程、投入電力も大きくなる。
【0028】
よって、光源101が出力する光の強度或いは単位時間当たりに出力する光量の大きさと、光源101の消費電力量或いは平均消費電力の小ささ(すなわち省電力性)はトレードオフの関係にある。例えば、単位時間当たりの発光時間を短くするほど、光源101の消費電力量或いは平均消費電力は小さくなるが、その光源101が単位時間当たりに出力する光量も少なくなる。また、例えば、光源101を発光させる際に、より大きな電力を投入するほど、その光源101が出力する光の強度は強く、単位時間当たりに出力する光量は多くなるが、光源101の消費電力量或いは平均消費電力も大きくなる。
【0029】
また一般に光源は、その種類に依らず、使用時間の累積と共に寿命を消耗し、やがてその機能を失う。例えば光源101として熱型素子を用いる場合、使用時間の累積と共に、発光時に発熱部が高温状態になることによる劣化が進み、やがてその機能を失う。特に、例えば光源101として白熱電球を用いる場合、発光時間の累積と共にフィラメントが劣化し、やがて破断する。また、フィラメントの劣化により光源101の抵抗が変化するため、光源101の駆動方法によっては、フィラメントの劣化により白熱電球の光学特性、電気特性が変化することにより、フィラメントの破断を待たずして光学式濃度測定装置100の光源101としての寿命を迎え得る。
【0030】
また、フィラメントの劣化はフィラメント材料の化学変化と放散を伴う。これにより白熱電球を構成するバルブの内壁の汚損が進み、放射される光量が変化することにより、フィラメントの破断を待たずして光学式濃度測定装置100の光源101としての寿命を迎え得る。
【0031】
また、例えば光源101として量子型素子を用いる場合、使用時間の累積と共に、注入されたキャリアの非発光再結合過程で生じるエネルギー等により半導体中に存在する欠陥の密度が増加したり、不純物の拡散が進んだりすることにより、光源101としての性能が低下し、やがてその機能を失う。
【0032】
また、量子型素子を用いる場合でも、白熱電球の場合と同様に、使用時間の累積と共に光源101の光学特性、電気特性が変化することにより、光源としての完全な機能停止を待たずして光学式濃度測定装置100の光源101としての寿命を迎え得る。
【0033】
また、例えば光源101として水銀ランプを用いる場合、白熱電球のフィラメントと同様に、水銀ランプの電極の劣化により寿命が制限され得る。また、白熱電球のフィラメントと同様、電極の劣化は電極材料の化学変化と放散を伴う。これにより水銀ランプを構成するバルブの内壁の汚損が進み、放射される光量が変化することにより、発光機能の完全な喪失を待たずして光学式濃度測定装置100の光源101としての寿命を迎え得る。
【0034】
一方で、光源101の劣化、寿命の消耗は光源101への供給電力が大きい程速く進む。光源101の種類に依らず、電力を投入する限り、光源自体において熱が発生し、光源101の温度上昇が生じる。この温度上昇により、前述の劣化、寿命の消耗が加速されることにより、光源101の劣化、寿命の消耗は供給電力が大きい程速く進む。また、光源101を後述のようにパルス駆動する場合、駆動時の供給電力が大きい程、駆動時と休止時の光源101の温度変化幅が大きくなり、この温度変化による熱膨張収縮による物理的なストレスも大きくなることにより、光源101の劣化、寿命の消耗は供給電力が大きい程速く進む。
【0035】
よって、光源101が出力する光の強度および単位時間当たりに出力する光量の多さと、光源101の寿命の長さはトレードオフの関係にある。例えば、単位時間当たりの発光時間を短くするほど、光源101としての寿命は長くなるが、その光源101が単位時間当たりに出力する光量は少なくなる。また、例えば、光源101を発光させる際に、より大きな電力を投入するほど、その光源101が出力する光の強度は強く、単位時間当たりに出力する光量は多くなるが、光源101としての寿命は短くなる。
【0036】
(光検出部)
光検出部102は、光源101が出力する光の少なくとも一部を受光し、受光した光量に応じた信号を出力信号として出力することができれば、種類および構造等は特に制限されない。光検出部102としては、例えば、測定に用いる光に対応した光電変換素子を用いることができる。より具体的には、例えば、測定に赤外線を用いる場合、焦電センサ(Pyroelectricsensor)、サーモパイル(Thermopile)、ボロメータ(Bolometer)などの熱型赤外線センサや、フォトダイオードやフォトトランジスタなどの量子型赤外線センサ等を用いることができる。また、例えば、測定に紫外線を用いる場合、フォトダイオードやフォトトランジスタなどの量子型紫外線センサ等を用いることができる。また、例えば、測定にX線を用いる場合、各種半導体センサ等を用いることができる。
【0037】
また、光検出部102は特定の波長の光を選択的に受光するために、光学フィルタ、特にバンドパスフィルタ(以下、バンドパスフィルタを含めて単に、光学フィルタと称する)を有しても良い。光学フィルタを用いて、測定対象分子が感度を示す波長の光を選択的に透過させることで、光検出部102の出力信号の測定対象分子濃度に対する変化量、すなわち感度を高くすることができる。或いは光学フィルタを用いて、測定対象分子が感度を示さない波長の光を選択的に遮断することで、当該測定対象分子が感度を示さない波長の光に対する測定対象でない分子の感度や外乱による光検出部102の出力信号への影響を抑制することができる。
【0038】
そのような光学フィルタは、例えば、透過率の高い基材(SiやGe、石英やサファイヤ基板)に、CVDやスパッタ、蒸着等により薄膜を形成し、干渉膜の作用により、光の透過波長を制御することで実現できる。例えば、旭化成エレクトロニクス株式会社は、赤外線の吸収を観測することによる二酸化炭素濃度測定に使用可能な光学フィルタを搭載した赤外線センサ(AK9710AE)を販売している。
【0039】
また、光検出部102は、前述の光電変換素子から出力される電気信号を処理する回路を含んでもよい。より具体的には、例えば、光検出部102は、前述の光電変換素子の出力を増幅する増幅回路を有し、増幅された出力を出力信号として出力してもよい。また、例えば光検出部102は、前述の光電変換素子の出力、或いは前述の増幅された出力をアナログディジタル変換する、アナログディジタル変換回路を有し、変換されたディジタル値を出力信号として出力してもよい。
【0040】
また、光検出部102は、光源101の発光状態等に応じて、前述の光電変換素子による出力、或いは前述の増幅された出力を一定時間積分し、その結果を出力信号として出力してもよい。また、アナログディジタル変換と同時に同様の積分を行ってもよい。
【0041】
(平滑化フィルタ)
平滑化フィルタ103は、光検出部102の出力信号、または出力信号から濃度を算出する過程の値や、出力信号に基づいて算出された濃度値に適用可能であって、それらの信号を平滑化フィルタ103の入力信号として用いることで、それらの信号が時間領域において平滑化された信号(本明細書では、平滑化信号と称する場合がある)を出力することができ、すなわち、後述する熱雑音に代表されるようなノイズの影響を抑制することができ、且つ、そのフィルタ特性を後述のフィルタ制御部105により制御することができれば、種類および構造等は特に制限されない。
【0042】
平滑化フィルタ103は前述のようにノイズの影響を抑制し、入力される信号のSNRを向上させた信号を出力することが目的であるので、ローパスフィルタを用いてもよい。また、本来期待される入力信号より低周波数側に何らかのノイズが乗ることが予見される場合等には、そのようなノイズの周波数成分を遮断することもできるバンドパスフィルタを用いてもよい。
【0043】
平滑化フィルタ103としてアナログフィルタを用いる場合、例えば受動素子を組み合わせ、または、オペアンプ等の能動素子を用いることで平滑化フィルタを形成し、用いてもよい。また、可変抵抗や可変容量等を用いることで、フィルタ制御部105によるフィルタ特性制御を可能としてもよい。或いは、複数の平滑化フィルタを用意し、フィルタ制御部105により、利用する平滑化フィルタを選択するように構成することで、フィルタ制御部105による平滑化フィルタ103のフィルタ特性制御を可能としてもよい。
【0044】
また例えば、アナログフィルタの時定数を制御することで当該フィルタのフィルタ特性を制御してもよい。すなわち、時定数を大きくするほど、より広い範囲の周波数成分が遮断されるため、平滑化信号のSNRをより高くすることができる。また、逆に時定数を小さくするほど、より広い範囲の周波数成分が通過するため、平滑化信号の入力信号に対する応答を速くすることができる。
【0045】
図2は、平滑化フィルタ103の一例を示す図である。平滑化フィルタ103は、一例として図2に示されるような、抵抗と容量により構成されるRCローパスフィルタを用いることができる。抵抗値をR[Ω]、容量値をC[F]で表すとき、このRCローパスフィルタの時定数τとカットオフ周波数fcは次式で表すことができる。
【数1】
【0046】
ここで、例えば抵抗として可変抵抗を用い、この可変抵抗の抵抗値を制御することでフィルタ特性を制御してもよい。この可変抵抗としては、例えば、電界効果トランジスタ(FET)を用いることができる。FETはゲート−ソース間に印加する電圧を制御することで、実質的にドレイン−ソース間の抵抗値が変化するので、可変抵抗として用いることができる。
【0047】
また、平滑化フィルタ103としてディジタルフィルタを用いる場合、例えば、無限インパルス応答フィルタ(IIRフィルタ)や有限インパルス応答フィルタ(FIRフィルタ)を用いてもよい。このとき、フィルタの各種係数を制御することで、フィルタ制御部105による当該フィルタのフィルタ特性制御を可能としてもよい。
【0048】
IIRフィルタとしては、例えば、一次のローパスフィルタを用いてもよい。より具体的には、例えば、i番目の入力信号をxi、平滑化信号をyiで表すとき、係数α(αは0より大きく、1以下の実数)を用いて次式で示されるディジタルフィルタを用いてもよい。
【数2】
【0049】
ここで、上記係数αを制御することで当該フィルタのフィルタ特性を制御してもよい。すなわち、αを小さくするほど、新たな入力信号の影響が小さくなるため、平滑化信号のSNRをより高くすることができる。また、逆にαを大きくするほど、新たな入力信号の影響が大きくなるため、平滑化信号の入力信号に対する応答を速くすることができる。
【0050】
FIRフィルタとしては、例えば、移動平均フィルタを用いてもよい。より具体的には、例えば、i番目の入力信号をxi、平滑化信号をyiで表すとき、係数α、移動平均点数nを用いて、次式で示されるディジタルフィルタ(移動平均化フィルタ)を用いてもよい。
【数3】
【0051】
ここで、上記平均化点数nを制御することで当該フィルタのフィルタ特性を制御してもよい。すなわち、nを大きくするほど、平均化によりノイズ成分が小さくなるため、平滑化信号のSNRをより高くすることができる。また、逆にnを小さくするほど、古い入力信号の影響が小さくなるため、平滑化信号の入力信号に対する応答を速くすることができる。
【0052】
また、係数αkを用いて、重み付けされた平均値を当該フィルタの出力としてもよい。この場合、異なるkに対して異なる値を係数αkとして用いてもよい。また、この場合、係数αkの総和に対し、除数nの値を調整してもよい。例えば数3の代わりに次式を用いてもよい。
【数4】
【0053】
ここで、上記αkを制御することで当該フィルタのフィルタ特性を制御してもよい。すなわち、nが一定であるならば、αkがkの値に依らず一定であるとき、平均化によりノイズ成分が小さくなることで、平滑化信号のSNRを高くすることができる。また、逆に、例えば、より小さいkに対してαkを大きくすることで、新たな入力信号ほど影響が大きくなるため、平滑化信号の入力信号に対する応答を速くすることができる。また、例えば、k=0に対してのみαkを大きくすることで、新たな入力信号の影響が大きくなるため、平滑化信号の入力信号に対する応答を速くすることができる。
【0054】
また、上述のIIRフィルタやFIRフィルタに限らず、複数のディジタルフィルタを組み合わせて平滑化フィルタ103を構成してもよい。また、アナログフィルタとディジタルフィルタを組み合わせて平滑化フィルタ103を構成してもよい。
【0055】
上述したように、平滑化フィルタ103としてアナログフィルタを用いてもディジタルフィルタを用いても、そのフィルタ特性を制御することで、入力信号に対する平滑化信号のSNRの向上度合いの程度と応答を制御することができる。ただし、これらの方法はそのフィルタの種類によらず、入力信号のSNRを向上させた信号を出力する際、結局のところ、現在の状態、或いは最新の入力信号をそのまま用いるのではなく、過去の状態、或いは過去の入力信号と混ぜて用いることでSNRの向上を実現している。よって過去の情報の影響を受けるため、フィルタ特性を制御することで、平滑化フィルタ103によるSNRの向上度合いの程度を強めるほど、入力信号に対する平滑化信号の応答は遅くなる。また、逆に、入力信号に対する平滑化信号の応答を速くするほど、平滑化フィルタ103によるSNRの向上度合いの程度は弱くなる。
【0056】
よって、平滑化フィルタ103によるSNRの向上を用いた信号、すなわち平滑化信号のSNRの高さとその応答性はトレードオフの関係にある。例えば、平滑化フィルタ103による平滑化を強力に施すほど、平滑化フィルタ103が出力する信号のSNRは高くなるが、その信号の応答性は低下する。また、例えば、平滑化フィルタ103による平滑化を弱めるほど、平滑化フィルタ103が出力する信号のSNRは低くなるが、その信号の応答性は向上する。
【0057】
(光源制御部)
光源制御部104は、光源101への電力供給を、入力される第1変化量に基づいて制御することができれば、種類および構造等は特に制限されない。第1変化量は、光検出部102の出力信号に基づく取得値から選択される少なくとも二つの選択取得値から算出される変化量である。一例として第1変化量は、光検出部102の出力信号の異なる時刻における2つの値(選択取得値)の差分から算出できる。また、他の例として、第1変化量は、光検出部102の出力信号の異なる時刻における2つの値(選択取得値)の比から算出できる。
【0058】
電力供給を制御する上では、例えば光源101の駆動を定電流駆動により行う場合、その駆動電流値や時間当たりの駆動時間を制御してもよい。また、例えば光源101の駆動を定電圧駆動により行う場合、その印加電圧値や時間当たりの印加時間を制御してもよい。また、例えば光源101の駆動を定電力駆動により行う場合、その供給電力値や時間当たりの供給時間を制御してもよい。
【0059】
また、光源101の制御はパルス的に行われてもよい。ここで、パルス的な光源101の制御とは一定条件での発光の実行(オン状態)と停止(オフ状態)を周期的に繰り返すような制御を指す。このとき、上述の時間当たりの駆動時間の制御、または印加時間の制御、または供給時間の制御としてパルス幅の制御を行ってもよい。
【0060】
また、パルス幅の制御として、一回のパルス幅は変えずに、時間当たりに生じるオン状態の回数を制御することにより、実質的なパルス幅を制御することで、光源101への電力供給を制御してもよい。例えば、10秒毎に1秒間だけ光源101に電力を供給している場合に対し、これを5秒毎に1秒間だけ光源101に電力を供給するということは、前述の時間当たりの供給時間を増加させるよう制御することとなる。
【0061】
或いはまた、パルス高さの制御として、パルスのオン状態において光源101に流す電流、印加する電圧又は供給する電力の制御を行ってもよい。また、一つのパルスにおけるオン状態中に光源101の駆動の条件を変えてもよい。或いはまた、パルス幅の制御とオン状態において光源101に流す電流、印加する電圧又は供給する電力の制御の両方を行ってもよい。なお、上記パルス駆動のオフ状態は光源101への電力の供給が完全に断たれていなくともよい。上述の制御を行うために光源制御部104は定電流駆動回路や定電圧駆動回路、定電力駆動回路を有してもよい。また、駆動のタイミングや駆動の条件を制御するためにマイクロコントローラやLSI等からなるディジタル回路を有してもよい。
【0062】
また、一般に、光検出部102は、光源101が出力した光のエネルギーすべてを受光すること、及び/又は、受光した光のエネルギーのすべてを出力信号として出力することは難しいため、出力信号は微弱なものとなる。その結果、光学式濃度測定装置100としてのSNRは光検出部102の出力信号に含まれるノイズの量に強く依存する。また、一般に、光検出部102の出力信号に含まれるノイズは後述する熱雑音に由来する成分が大きいため、時間当たりの出力信号に含まれるノイズの総量は、光検出部102が受光した光の強度よりも、光検出部102が受光した時間により強く依存する。
【0063】
よって、光源101の制御をパルス的に行う場合において、特に、光源101への電力供給量を減少させる際にはパルス幅を短くしても良い。パルス高さを小さくすることで光源101への電力供給量を減少させた場合、時間当たりの出力信号自体は小さくなるが、その出力信号に含まれるノイズの総量は大きく減少しない。一方で、パルス幅を短くすることで光源101への電力供給量を減少させた場合、時間当たりの出力信号自体は小さくなるが、同時に、その出力信号に含まれるノイズの総量も減少するため、前述のパルス高さを小さくする場合と比べて、光源101への電力供給量減少によるSNRの低下を抑制することができる。
【0064】
また、光源101の制御をパルス的に行う場合において、特に、光源101への電力供給量を増加させる際にはパルス高さを大きくしても良い。パルス幅を長くすることで光源101への電力供給量を増加させた場合、時間当たりの出力信号自体は大きくなるが、同時に、その出力信号に含まれるノイズの総量も増加する。一方で、パルス高さを大きくすることで光源101への電力供給量を増加させた場合、時間当たりの出力信号自体は大きくなるが、その出力信号に含まれるノイズの総量は大きく増加しない、前述のパルス幅を長くする場合と比べて、光源101への電力供給量増加によるSNRの向上を促進することができる。なお、SNRについては後述する。
【0065】
(フィルタ制御部)
フィルタ制御部105は、平滑化フィルタ103のフィルタ特性を、入力される第2変化量に基づいて制御することができれば、種類および構造等は特に制限されない。第2変化量は、光検出部102の出力信号に基づく取得値から選択される少なくとも二つの選択取得値から算出される変化量である。一例として第2変化量は、光検出部102の出力信号の異なる時刻における2つの値(選択取得値)の差分から算出できる。また、他の例として、第2変化量は、光検出部102の出力信号の異なる時刻における2つの値(選択取得値)の比から算出できる。また、第2変化量は、第1変化量と同一の値であってよく、異なる値であってもよい。
【0066】
平滑化フィルタ103として、上述のアナログフィルタを用いる場合、例えばその時定数を制御してもよい。また、平滑化フィルタ103の説明で述べたように、フィルタ特性を制御するための可変抵抗としてFETを用いる場合、フィルタ制御部105はディジタルアナログコンバータ(DAC)を有して、その出力、或いはその出力をバッファ回路でバッファした出力を用いて、FETのゲート−ソース間の電圧を制御してもよい。
【0067】
また、平滑化フィルタ103の説明で述べたように、複数の平滑化フィルタ103を用意し、フィルタ制御部105により、利用する平滑化フィルタ103を選択するように構成する場合、フィルタ制御部105はアナログスイッチを有して、このスイッチで経路選択を行うことで、フィルタ特性の制御を行ってもよい。
【0068】
また、平滑化フィルタ103として、上述のディジタルフィルタを用いる場合、フィルタ制御部105は、例えばそのディジタルフィルタを構成するディジタル回路に指示を出すことで当該ディジタルフィルタの各種係数を制御してもよい。この指示は通信バスを介して、フィルタ制御部105から平滑化フィルタ103に伝達されてもよい。
【0069】
(SNR)
一般に、光源101および光検出部102として上述のいずれを用いても、光検出部102から出力される出力信号は、理想的に出力されるべき信号の他に周波数依存のないノイズを含む。このノイズは、例えば、光源101自体や光源101に電力を供給するための駆動回路、光検出部102の光電変換素子や光電変換素子から出力される電気信号を処理する回路に由来する熱雑音(サーマルノイズ)である。よってこの出力信号は有限の信号雑音比(SNR)を有する。ここで、通常、熱雑音の大きさの分布は、正規分布になることが知られている。
【0070】
また、前述の通り、平滑化フィルタ103の入力信号は、光検出部102の出力信号、または出力信号に基づく値であるため、平滑化フィルタ103によって出力される平滑化信号は、光検出部102の出力信号のSNRに基づくSNRを有する。ただし、平滑化信号のSNRは、平滑化されることで出力信号のSNRよりも向上している。
【0071】
また、出力信号や平滑化信号、および出力信号から濃度を算出する過程の値のSNRは、いずれも、最終的には光学式濃度測定装置100による測定対象分子濃度の測定精度に影響を与えるため、高いことが望ましい。ここで、平滑化信号、および出力信号から濃度を算出する過程の値は共に出力信号に基づく値であるため、結局、出力信号のSNRが高いことが望ましい。
【0072】
光検出部102は上述のように受光量に応じた大きさの信号を出力するため、光検出部102が出力する出力信号のSNRは、光検出部102による受光量に依存する。すなわち、光源101が出力する光の強度或いは時間当たりに出力する光量が大きい程、出力信号のSNRは高くなる。よって、出力信号のSNRの高さは光源101が出力する光の強度或いは時間当たりに出力する光量の大きさに対して正の相関を有する。
【0073】
例えば、光検出部102が一つの出力信号を出力するにあたり、光源101が発光している時間を一定とするならば光源101に供給される電力を大きくするほど、または光源101に供給される電力を一定とするならば光源101が発光している時間を長くするほど、出力信号のSNRは高くなる。
【0074】
より具体的には、例えば、上述のように光源101に投入する電力を大きくして、光源101が出力する光の強度を強くすることで、光検出部102が時間当たりに受光する光量を大きくし、これにより光検出部102が出力する信号を大きくすることで出力信号のSNRを高くすることができる。また、例えば、光源101が発光している時間を長くし、光検出部102が出力する信号をより長い時間を掛けて時間積分することで出力信号のSNRを高くすることができる。ただし、光源101に供給される電力を大きくすることによって、または光源101が発光している時間を長くすることによって、或いはその組み合わせによって、出力信号のSNRを高くすると、光源101の消費電力量或いは平均消費電力も大きくなってしまう。
【0075】
前述したように、光源101が出力する光の強度或いは時間当たりに出力する光量の大きさと、光源101の消費電力量或いは平均消費電力の小ささ(省電力性)はトレードオフの関係にあるため、光源101が出力する光の強度或いは時間当たりに出力する光量の大きさに対して正の相関を有する光検出部102が出力する出力信号のSNRと、光源101の消費電力量或いは平均消費電力の小ささ(省電力性)もまた、トレードオフの関係にある。
【0076】
例えば、光検出部102が出力する出力信号の大きさと、光源101の消費電力量或いは平均消費電力の小ささ(省電力性)はトレードオフの関係にある。例えば、時間当たりの発光時間を短くするほど、光源101の消費電力量或いは平均消費電力は小さくなるが、光検出部102が出力する出力信号のSNRも小さくなる。また、例えば、光源101を発光させる際に、より大きな電力を投入するほど、光検出部102が出力する出力信号のSNRは大きくなるが、光源101の消費電力量或いは平均消費電力も大きくなる。
【0077】
また、前述したように、光源101が出力する光の強度又は時間当たりに出力する光量の大きさと、光源101の寿命の長さはトレードオフの関係にある。また、光検出部102が出力する出力信号は、光源101が出力する光の強度或いは時間当たりに出力する光量の大きさに対して正の相関を有する。従って、光検出部102が出力する出力信号のSNRと、光源101の寿命の長さもまた、トレードオフの関係にある。
【0078】
以上説明した内容、および、光学式濃度測定装置100を用いて測定対象分子濃度の測定を行う際、その信号として出力信号をそのまま用いるのではなく、出力信号に対してSNRが向上した平滑化信号を用いることもできることから、光学式濃度測定装置100の測定精度、応答性、光源の省電力性或いは光源の寿命は互いにトレードオフの関係にある。
【0079】
(信号変化量演算部)
信号変化量演算部106は、現在と過去の時刻における光検出部102の出力信号に基づく取得値から選択される少なくとも二つの選択取得値から、第1変化量(光源制御用に算出する信号変化量)および第2変化量(フィルタ制御用に算出する信号変化量)を算出し、光源制御部104並びにフィルタ制御部105にそれぞれ出力することができれば、種類および構造等は特に制限されない。第1変化量の算出に用いる選択取得値と第2変化量の算出に用いる選択取得値は、同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0080】
信号変化量演算部106としては、アナログ回路、マイクロコントローラおよびLSI等からなるディジタル回路を用いることができる。また、第1変化量並びに第2変化量を算出する際に用いるために、取得値を一時保存するためのメモリを有してもよい。
【0081】
信号変化量演算部106は前述の少なくとも二つの選択取得値から、光検出部102の出力信号に基づく取得値がどのように変化しているかを示す第1変化量および第2変化量を演算する。より具体的には、例えば、当該出力信号が増加傾向であるのか減少傾向であるのか、増加傾向または減少傾向である場合にどのような速さで増加または減少しているのか、など当該信号の変化のトレンド、すなわち光検出部102の出力信号に基づく取得値の時間変化量を示す値を、第1および第2変化量として算出する。ここで、第1変化量と第2変化量は共に、本質的には当該出力信号に基づく取得値の時間変化量に基づく値であるので、第1変化量の増減と第2変化量の増減は正の相関を有してもよい。すなわち、第1変化量および第2変化量の一方が増えると他方も増え、一方が減ると他方も減るよう構成してもよい。
【0082】
信号変化量演算部106は、現在の時刻における出力信号と、過去の時刻における或いは当該出力信号が得られる直前の出力信号の差に基づいて、第1および第2変化量を算出してもよい。また、信号変化量演算部106は、現在の時刻における出力信号と、当該出力信号が得られる直前の出力信号とさらにそれよりも過去における出力信号の3つ或いはより多くの信号とそれらが得られた時刻から、時刻に対する出力信号の変化式を最小二乗法等によって近似的に導出し、その近似式の傾きや他の係数に基づいて、第1および第2変化量を算出してもよい。
【0083】
図1に示される光学式濃度測定装置100においては、信号変化量演算部106は平滑化フィルタ103からの出力を受けていないが、他の例の信号変化量演算部106は平滑化フィルタ103からの出力を受けてもよい。現在と過去の時刻における取得値として、平滑化フィルタ103によって平滑化された出力信号に基づく信号(平滑化信号)の値を用いてもよい。平滑化信号は出力信号を平滑化した信号なので、平滑化信号の値は出力信号に基づく値である。
【0084】
より具体的には、例えば、現在の時刻における出力信号の値と、過去の時刻における或いは当該出力信号が得られる直前の平滑化信号の値の差に基づいて、信号変化量演算部106が第1および第2変化量を算出してもよい。この場合、出力信号の持つノイズにより当該出力信号の差が大きく見えたり小さく見えたりすることを抑制するため、平滑化フィルタ103とは別の平滑化フィルタにより出力信号を平滑化した値を、現在の時刻における出力信号の値として用いてもよい。
【0085】
また、例えば、現在の時刻における平滑化信号の値と、過去の時刻における或いは当該平滑化信号が得られる直前の平滑化信号の値の差や比に基づく値を、信号変化量演算部106が第1および第2変化量(平滑化信号変化量と称する)として出力してもよい。
また、現在の時刻における出力信号の値と、過去の時刻における或いは当該出力信号が得られる直前の平滑化信号の値の差や比に基づく値を、信号変化量演算部106が第1および第2変化量(第1および第2非平滑化信号変化量と称する)として出力してもよい。
更にこのとき、非平滑化信号変化量があらかじめ定められた値より大きいとき、信号変化量演算部106は、平滑化信号変化量を参照することで、非平滑化信号変化量が大きいことが、環境温度が変わる等により出力信号が有するノイズが大きくなったことに由来するものであるのか、まさに測定対象分子濃度が変化することに依り出力信号が大きく変化したことに由来するものであるのかを判別してもよい。この場合の具体的な動作例は後述する。或いは、信号変化量演算部106は、第1および第2変化量として同じ値を用いてもよい。
【0086】
図3は、光検出部102の出力信号および取得値の一例を示す図である。図3における縦軸は、測定対象分子に対応する波長帯域の出力信号の強度を示している。図3における横軸は時刻を示している。光検出部102は、図3の丸印で示すように所定の時間間隔で測定された出力信号の値vを出力してよい。本例では、出力信号の値vを取得値とする。
【0087】
信号変化量演算部106は、それぞれの時刻において、時系列の取得値のうち予め設定される関係を有する2つ以上の取得値を選択取得値として選択し、第1および第2変化量を算出する。上述したように信号変化量演算部106は、所定の時刻範囲内の取得値を、選択取得値として選択してよい。光源制御部104およびフィルタ制御部105は、入力される第1変化量並びに第2変化量にそれぞれ基づいて、光源101および平滑化フィルタ103を制御する。
【0088】
(光源制御部およびフィルタ制御部における制御方法)
上述したように光学式濃度測定装置100の測定精度、応答性、光源の省電力性或いは光源の寿命は互いにトレードオフの関係にある。従来の装置においては、求められる性能に合わせて光源およびフィルタ等の設計を行い、バランスを取っていた。すなわち、光源の長寿命化を図る場合には、相応の測定精度の低下および/または応答性の低下を伴う。
【0089】
これに対して光学式濃度測定装置100は、光検出部102の出力信号に基づく取得値の時間変化量に基づいて、すなわち、現在と過去の時刻における出力信号に基づく取得値から選択される少なくとも二つの選択取得値から算出される第1変化量に基づいて光源101の駆動電力を制御し、また、現在と過去の時刻における出力信号に基づく取得値から選択される少なくとも二つの選択取得値から算出される第2変化量に基づいて平滑化フィルタ103の特性を制御する。これにより、測定精度の低下および応答性の低下を抑制しつつ、光源の省電力性の向上並びに光源の長寿命化が可能となる。
【0090】
図4は、光学式濃度測定装置100の動作状態の遷移例を示す図である。まず、ある既定の光源101への電力供給条件並びに平滑化フィルタ103のフィルタ特性により光学式濃度測定装置100が動作している状態を標準動作状態とする。ここで、本発明による制御内容は、例えば、標準動作状態において、信号変化量演算部106から出力される第1変化量があらかじめ定められた基準値より小さい場合、すなわち測定対象分子濃度の時間変化が一定の値より緩やかであることが期待される場合には、光源101に投入する電力を標準動作状態よりも減らすことで省電力性を高めることができる。光源制御部104は、光源101に投入する電力に関する情報を、光検出部102や測定対象分子濃度を演算する装置に通知してよい。このとき、光検出部102は光源101に投入する電力を考慮して出力信号を調整してよく、また、当該装置は、光源101に投入する電力を考慮して、測定対象分子濃度を演算してよい。具体的には、光源101に投入する電力を標準動作状態よりも減らしたとき、出力信号もこの投入電力の減少に応じて小さくなるが、この出力信号の変化は当然ながら、測定対象分子濃度の変化によるものではないので、無視されるべきである。例えば、光源101に投入する電力に対し出力信号が比例するのであれば、例えば光源101に投入する電力を標準動作状態の50%としたとき、出力信号には200%のゲインを掛けることで、投入電力の減少による出力信号の減少を補償してもよい。
【0091】
一方で、同時に第2変化量に応じて平滑化フィルタ103によるSNR向上の程度を強めることで、光源101への投入電力が減ることによる光検出部102が出力する出力信号のSNRの低下の影響を補い、光学式濃度測定装置100の測定精度の低下を回避または抑制する。この状態を省電力動作状態とする。
【0092】
一例として、図3における取得値v1〜v7等においては、時間当たりの取得値の変化量が比較的に小さい。光源制御部104およびフィルタ制御部105は、当該区間において光源101および平滑化フィルタ103を省電力動作状態としてよい。
【0093】
この場合、平滑化フィルタ103によるSNR向上の程度を強めたことで、標準動作状態に比べて光学式濃度測定装置100の応答性は低下するが、測定対象分子濃度の時間変化が一定の値より緩やかであることが期待される状態であるので、早い応答性を伴って測定を行う必要性は低く、したがってこの応答性低下の光学式濃度測定装置100の特性への影響は実質的に小さい。
【0094】
ここで、光源101に供給する電力と平滑化フィルタ103のフィルタ特性の制御について、より具体的には、例えば、光源101に供給する電力を減らしてもSNRが一定となるように平滑化フィルタ103のフィルタ特性を制御してもよい。例えば、特に光源101として量子型素子やMEMSヒータなどを用いる場合、また、それらをパルス駆動し、そのパルス幅を制御する場合においては、例えばパルス幅を1/2倍にすることで光源101に供給する電力を1/2倍にすると、SNRは1/√2倍になることが期待されるので、平滑化フィルタ103によるSNR向上の度合いが√2倍になるように制御してもよい。この場合、例えば平滑化フィルタ103として単純な移動平均化フィルタを用いる場合、平均化点数を、パルス幅を1/2倍にする前の状態での平均化点数の倍にすれば、パルス幅を1/2倍にする前後で平滑化フィルタの出力する信号のSNRは維持される。
【0095】
更にまた、例えば、標準動作状態において、信号変化量演算部106から出力される第2変化量があらかじめ定められた基準値より大きい場合、すなわち測定対象分子濃度の時間変化が一定の値より急峻であることが期待される場合には、平滑化フィルタ103によるSNR向上の程度を標準動作状態よりも弱めることで、出力信号の時間変化、すなわち測定対象分子濃度の時間変化に追従するために必要な光学式濃度測定装置100の応答性を確保してもよい。この状態を高速動作状態とする。
【0096】
一例として、図3における取得値v8〜v10等においては、時間当たりの取得値の変化量が比較的に大きい。光源制御部104およびフィルタ制御部105は、当該区間において光源101および平滑化フィルタ103を高速動作状態としてよい。
【0097】
この場合、平滑化フィルタ103によるSNR向上の程度を弱めたことで、標準動作状態に比べて光学式濃度測定装置100の測定精度は低下する、すなわち測定ノイズが増大する。ただし、このときは、測定対象分子濃度の時間変化が一定の値より急峻であることが期待される状態であるので、この測定精度の低下に伴って増加するノイズに比べて、測定対象分子濃度の変化による測定値の変化が充分に大きく、ノイズの実質的な影響は小さくなる。また、他の動作例としては、そもそも測定対象分子濃度の時間変化が急峻すぎるときは、測定対象の環境においてその分子濃度が均一でない可能性があるので、光学式濃度測定装置100が配置された周囲環境を局所的に精度よく測ってもあまり意味がないと判断し、高速動作状態における測定精度低下を妥協してもよい。フィルタ制御部105は、SNRを低下させた状態である旨を、測定対象分子濃度を演算する装置に通知してよい。当該装置は、演算した測定対象分子濃度に、SNRが低下した状態における測定結果である旨の情報を対応付けて出力してもよい。或いは更に、第1変化量に応じて光源101に投入する電力を標準動作状態よりも増やすことで、平滑化信号のSNRの低下を補い、光学式濃度測定装置100の測定精度の低下を回避または抑制してもよい。
【0098】
省電力動作状態において、第1変化量が予め定められた基準値より大きくなった場合、光学式濃度測定装置100は、標準動作状態に移行してよい。省電力動作状態から標準動作状態に移行するための基準値は、標準動作状態から省電力動作状態に移行するための基準値よりも大きくてよい。ただし、省電力動作状態から標準動作状態に移行するための基準値は、第2変化量が予め定められた基準値より大きくなり、標準動作状態から高速動作状態に移行する際に期待される第1変化量よりも小さい。これにより、状態の移行が頻繁に生じることを抑制できる。また、省電力動作状態において第1変化量が、高速動作状態に移行すべき基準値より大きくなった場合、光学式濃度測定装置100は、省電力動作状態から、標準動作状態を経由せずに、高速動作状態に移行してもよい。
【0099】
一例として、図3における取得値v11〜v17等においては、時間当たりの取得値の変化量が比較的に小さい。光源制御部104およびフィルタ制御部105は、当該区間において光源101および平滑化フィルタ103を省電力動作状態とする。また、図3における取得値v18〜v28等においては、時間当たりの取得値の変化量が中程度である。当該変化量は、省電力動作状態から標準動作状態に移行するための基準値より大きく、且つ、高速動作状態に移行するための基準値よりも小さい。この場合、光源制御部104およびフィルタ制御部105は、当該区間において光源101および平滑化フィルタ103を標準動作状態としてよい。
【0100】
高速動作状態において、第2変化量が予め定められた基準値より小さくなった場合、光学式濃度測定装置100は、標準動作状態に移行してよい。高速動作状態から標準動作状態に移行するための基準値は、標準動作状態から高速動作状態に移行するための基準値よりも小さくてよい。ただし、高速動作状態から標準動作状態に移行するための基準値は、第1変化量が予め定められた基準値より小さくなり、標準動作状態から省電力動作状態に移行する際に期待される第2変化量よりも大きい。これにより、状態の移行が頻繁に生じることを抑制できる。また、高速動作状態において第1変化量が、省電力動作状態に移行すべき基準値より小さくなった場合、光学式濃度測定装置100は、高速動作状態から、標準動作状態を経由せずに、省電力動作状態に移行してもよい。
【0101】
また、上述の第1変化量並びに第2変化量が比較される基準値として、第1基準値、第2基準値を用いて、第1変化量が第1基準値より小さく、かつ第2変化量が第2基準値より小さいとき、測定対象分子濃度の時間変化が一定の値より緩やかであることを期待して、光源制御部は光源に供給する電力を減少させ、フィルタ制御部は平滑化フィルタの平滑化の程度を強めることで、上述の省電力動作状態に移行してもよい。
【0102】
これにより、真に省電力動作状態に移行すべき状態でない場合に、ノイズ等によって偶発的に、第1変化量または第2変化量の一方のみが基準値を下回ってしまったとしても、これによって省電力動作状態に移行することを回避することができる。
【0103】
また、上述の第1変化量並びに第2変化量が比較される基準値として、第3基準値、第4基準値を用いて、第1変化量が第3基準値より大きく、かつ第2変化量が第4基準値より大きいとき、測定対象分子濃度の時間変化が一定の値より急峻であることを期待して、光源制御部は光源に供給する電力を増加させ、フィルタ制御部は平滑化フィルタの平滑化の程度を弱めることで、上述の高速動作状態に移行してもよい。
このようにすることによって、真に高速動作状態に移行すべき状態でない場合に、ノイズ等によって偶発的に、第1変化量または第2変化量の一方のみが基準値を上回ってしまったとしても、これによって高速動作状態に移行することを回避することができる。
【0104】
以上のように、光検出部102の出力信号に基づく値の時間変化量に基づいて、すなわち、現在と過去の時刻における出力信号に基づく取得値から選択される少なくとも二つの選択取得値から算出される第1変化量に基づいて光源101の駆動電力を制御し、また同時に、現在と過去の時刻における出力信号に基づく取得値から選択される少なくとも二つの選択取得値から算出される第2変化量に基づいて平滑化フィルタ103の特性を制御することで、常時標準動作状態で動作させた場合と比較して、光学式濃度測定装置100の測定精度の低下および応答性の低下を抑制しつつ、光源の省電力性の向上並びに光源の長寿命化が可能となる。
【0105】
上述の例では、光源101の駆動電力の制御(以下、単に電力制御と称する場合がある。)と平滑化フィルタ103の特性の制御(以下、単にフィルタ制御と称する場合がある。)を同時に行ったが、これに限らない。電力制御とフィルタ制御は時間をずらして行ってもよい。また電力制御とフィルタ制御の一方が常に他方を伴う必要もない。ある任意の時間範囲だけ、または出力信号や算出された濃度がある出力範囲にあるときにのみ電力制御とフィルタ制御の両方が行われても良い。
【0106】
例えば、上述の例を用いて、標準動作状態において、信号変化量演算部106から出力される第2変化量があらかじめ定められた基準値Aより小さい場合、すなわち測定対象分子濃度の時間変化が一定の値よりある程度緩やかであることが期待される場合には、まず平滑化フィルタ103によるSNR向上の程度を強め、さらにその後第1変化量があらかじめ定められた基準値Bより小さくなった場合にのみ、すなわち測定対象分子濃度の時間変化が一定の値より一層緩やかであることが期待される状態になった場合にのみ、光源101に投入する電力を標準動作状態よりも減らしつつ、平滑化フィルタ103によるSNR向上の程度を更に強めてもよい。この時、第2変化量は基準値Aより小さい状態でのみ、第1変化量が基準値Bより小さくなり得るよう、基準値の設定や変化量の算出を行ってよい。このように制御することで、SNRや応答速度の変化をよりスムーズに、あるいはより連続的に行うことができる。
また、例えば、上述の例で光源101に投入する電力を標準動作状態よりも減らしつつ平滑化フィルタ103によるSNR向上の程度を強めるとき、平滑化フィルタ103によるSNR向上の程度を強めた後、あらかじめ定められた時間を空けてから光源101に投入する電力を減らしてもよい。このとき、平滑化フィルタ103によるSNR向上の程度を強めた後、光源101に投入する電力を減らす前に再び第1変化量があらかじめ定められた基準値より大きくなった場合、光源101に投入する電力の低減を取り消してもよい。このように制御することで、信号変化量演算部の変化量演算方法の不完全さに由来する、一時的な第1変化量の減少を補償することができる。このとき、平滑化フィルタ103によるSNR向上の程度を強めた後、光源101に投入する電力を減らすまでの間は測定対象分子濃度の測定サイクル10回分以内、あるいは経過時間10分以内が望ましい。間を開けすぎると光源の省電力性向上の効果が薄れてしまう。
【0107】
また、上述の例では、標準動作状態、省電力動作状態、高速動作状態、の3状態を用いたがこれに限らない。この3状態の内の2状態のみを用いてもよい。また、一つの状態を第1および第2変化量に対してに基づいて制御するパラメータの制御を段階的に行うことで複数の状態に分けてもよい。例えば省電力動作状態において、光源制御部104は、光源101に供給する電力のレベルを、第1変化量のレベルに応じて段階的に制御してよい。同様に、フィルタ制御部105は、平滑化フィルタ103における平滑化の度合いを、第2変化量のレベルに応じて段階的に制御してよい。
【0108】
また、上述の例では、第1および第2変化量があらかじめ定められた基準値より小さいまたは大きい場合にのみ光源101の制御条件や平滑化フィルタ103のフィルタ特性条件を変更しているが、制御方法は基準値を用いる形態に限られない。例えば、第1変化量を入力、光源101の制御条件を出力とする関数を用意してもよい。また、例えば、第2変化量を入力、平滑化フィルタ103のフィルタ特性条件を出力とする関数を用意してもよい。これらの場合、第1および第2変化量に対してより連続的な光源101の制御条件や平滑化フィルタ103のフィルタ特性条件の変更が行われることとなる。
【0109】
また、例えば、第1および第2変化量として、現在の時刻における平滑化信号と過去の時刻における或いは当該平滑化信号が得られる直前の平滑化信号の差を用いてもよい。この場合、光学式濃度測定装置100における応答性低下の影響抑制は弱くなってしまうかもしれないが、第1および第2変化量に基づいて光源に供給する電力や平滑化フィルタのフィルタ特性を制御する際に、ノイズの影響を緩和できる。
【0110】
更に、例えば、前述したように、第1および第2変化量として、平滑化信号変化量と非平滑化信号変化量の二つを用いてもよい。この時、例えば、非平滑化信号変化量が基準値より大きい、或いは大きい状態がしばらく続いているにも関わらず、平滑化信号変化量が基準値より小さい場合、それは単に光学式濃度測定装置100がおかれた環境温度等が変わることなどによって、出力信号が有するノイズが相対的に大きくなっただけである可能性が高いと判断してもよい。この場合、第1および第2変化量それぞれに相当する非平滑化信号変化量があらかじめ定められた基準値より大きかったとしても、出力信号のSNR並びに光学式濃度測定装置100の測定精度が低下していることと、応答性を向上させる必要が無いことから、フィルタ制御部105は、平滑化フィルタ103によるSNR向上の程度を弱める制御を行わなくともよい。ただし、低下した測定精度を補うために、光源制御部104は、光源101に投入する電力を増加してもよい。また、或いは、低下した測定精度を補うためにフィルタ制御部105は、平滑化フィルタ103によるSNR向上の程度を強める制御を行っても良い。
【0111】
また、現在の非平滑化信号変化量が基準値より大きい、或いは大きい状態が予め定められた期間より長く続いており、且つ、現在の平滑化信号変化量も基準値より大きい場合、それはまさに測定対象分子濃度が変化することによって、出力信号が変化している可能性が高いと判断してもよい。この場合、光源制御部104およびフィルタ制御部105は、測定対象分子濃度の変化に追随するために、上述の高速動作状態やそれに準ずる状態に移行してもよい。
【0112】
また、上述の例では第1変化量に基づいて光源101への電力供給条件の制御を、第2変化量に基づいて平滑化フィルタ103のフィルタ特性条件の制御を行っているが、第1変化量並びに第2変化量として同じ値を用いてもよい。
【0113】
また、フィルタ制御部105は、光源101に供給する電力が変化した場合に、平滑化フィルタ103におけるSNRが一定となるように、平滑化フィルタ103を制御してよい。この場合、平滑化フィルタ103のSNRは、厳密に一定に維持されなくてもよい。フィルタ制御部105は、光源101に供給する電力が変化することによるSNRの変化を補償する方向に、平滑化フィルタ103におけるフィルタ特性を調整する。
【0114】
図5は、本発明の他の実施形態に係る光学式濃度測定装置200の構成例を示す図である。光学式濃度測定装置200は、光学式濃度測定装置100の構成に加え、濃度演算部207を更に備える。濃度演算部207以外の構成は、図1から図4において説明した構成と同様である。本例の光学式濃度測定装置200においても、濃度測定におけるSNRの低下および応答性の低下を抑制しつつ、光源101の省電力性の向上並びに光源の長寿命化が可能になる。
【0115】
濃度演算部207は、光検出部102の出力信号に基づく取得値、および、平滑化フィルタ103によって平滑化された取得値の少なくとも一方に基づいて測定対象分子の濃度値を算出する。図5に示した濃度演算部207は、平滑化フィルタ103によって平滑化された取得値に基づいて、測定対象分子の濃度値を算出する。
【0116】
濃度演算部207は出力信号等に基づいて、測定対象分子の濃度値を算出することができれば、種類および構造等は特に制限されない。濃度演算部207としては、例えばマイクロコントローラやLSI等からなるディジタル回路を用いることができる。濃度演算部207は、出力信号等に基づいて濃度値を算出するために、出力信号等の値と濃度値の関係を表、或いは関数として内部に記憶してよい。当該表或いは関数は、光学式濃度測定装置200の校正時に、濃度演算部207に保存されてもよい。
【0117】
図5に示される光学式濃度測定装置200においては、濃度演算部207には出力信号に基づく値として平滑化フィルタ103により平滑化された出力信号に基づく信号(平滑化信号)が入力され、濃度値を出力するが、これに限られない。例えば、濃度値を算出する際に平滑化信号のみではなく、出力信号も必要に応じて濃度演算に用いてもよい。
【0118】
図6は、光学式濃度測定装置200の変形例を示す図である。本例の光学式濃度測定装置200は、濃度演算部207が光検出部102の出力信号を受け取り、平滑化フィルタ103に濃度値を出力する点で図5に示した光学式濃度測定装置200と相違する。濃度演算部207は、光検出部102の出力信号に基づいて測定対象分子の濃度値を算出し、平滑化フィルタ103に出力する。平滑化フィルタ103は、測定対象分子の濃度値を時間領域において平滑化して出力する。
【0119】
図7は、光学式濃度測定装置200の変形例を示す図である。本例の光学式濃度測定装置200は、信号変化量演算部106に入力する取得値の少なくとも一つとして、図5または図6に示した濃度演算部207が出力する濃度値を用いる点で、図5または図6に示した光学式濃度測定装置200と相違する。他の構成は、図5または図6に示した光学式濃度測定装置200と同様である。
【0120】
また、本例の光学式濃度測定装置200においては、信号変化量演算部106に入力する取得値の少なくとも一つとして、図5または図6に示した平滑化フィルタ103が出力する値を用いてもよい。信号変化量演算部106は、濃度値または平滑化フィルタ103によって平滑化された濃度値を、選択取得値の少なくとも一つとして用いてよい。より具体的には、信号変化量演算部106は、例えば、現在の時刻における濃度値と、過去の時刻における或いは当該濃度値が得られる直前の濃度値との差に基づいて、第1および第2変化量を算出してもよい。
【0121】
図8は、光源101に供給される電力の波形の一例を示す図である。本例においては、光源101に供給される電力の波形はパルス状である。つまり電力波形において、電力が所定のHレベルとなる状態と、Lレベルとなる状態とが交互に繰り返されている。
【0122】
光源制御部104は、第1変化量に基づいて、電力波形におけるパルス幅Wを制御してよい。つまり光源制御部104は、光源101に供給する電力をパルス幅変調してよい。
【0123】
光源制御部104は、第1変化量に基づいて、電力波形のパルス高さHを制御してもよい。つまり光源制御部104は、光源101に供給する電力を振幅変調してよい。光源制御部104は、パルス幅変調および振幅変調を組み合わせて電力波形を制御してもよい。
【0124】
(設計例と効果の検証)
次に、光学式濃度測定装置100の効果をより具体的に検証する。例えば、光学式濃度測定装置100は、二酸化炭素濃度測定向け赤外線LED(AK9700AE)および赤外線センサ(AK9710AE)を用いたCOガスセンサである。本例の光学式濃度測定装置100は、COガスによる4.3μm近辺の波長の光の吸収量を検出することによって測定対象空間におけるCOガス濃度を算出する。光学式濃度測定装置100は、非分散形赤外(NDIR:Non―Dispersive Infrared)方式の濃度測定装置であるが、これに限られない。
【0125】
光源101は、定電流パルス駆動により駆動する。光源制御部104は、既定測定周期毎に決定されたパルス幅(以下、駆動電流パルス幅)の駆動電流を光源101に入力する。一例において、光源制御部104は、信号変化量演算部106から入力される第1変化量に基づいて、駆動電流パルス幅を決定する。光検出部102は、光源101から発せられた光の一部を受光することで出力する電流を積分し、その電荷量に基づく電圧をアナログディジタル変換することで、出力信号を得る。
【0126】
平滑化フィルタ103は、(数2)式で示した一次のローパスディジタルフィルタとし、ソフトウェアで構成される。この場合、フィルタ制御部105は、信号変化量演算部106から入力される第2変化量に基づいて(数2)式における係数αの値(以下、α値)を決定する。
【0127】
光学式濃度測定装置100は、信号変化量演算部106、フィルタ制御部105、および光源制御部104における駆動電流パルス幅を決定する部分をまとめてソフトウェアで構成してもよい。光学式濃度測定装置100は、第1変化量および第2変化量として同じ値を用い、当該ソフトウェアが実行する処理において直接、駆動電流パルス幅とα値を決定する。光学式濃度測定装置100による処理のフローは後述する。
【0128】
また、光学式濃度測定装置100は、濃度演算部207を備えてよい。濃度演算部207は、平滑化フィルタ103によって平滑化された出力信号を、あらかじめ校正時に用意した出力信号とCOガス濃度の換算テーブルを参照して、COガス濃度に変換して濃度値を出力する。
【0129】
図9は、標準動作状態における、COガス濃度と出力信号の関係を示す。横軸は、ppm単位のCOガス濃度を示す。縦軸は、0ppm環境における出力信号が1になるように規格化された出力信号を示す。図9では、測定時には十分な時間と測定回数を用い、その各測定点における平均値を真値として取得している。また、出力信号とCOガス濃度の換算テーブルは図9に基づいて作成することができる。
【0130】
図10は、出力信号のSNRと駆動電流パルス幅の関係を示す。同図は、光源101の駆動電流のパルス幅をパラメータとして変更したときに得られた出力信号を示す。横軸は、規格化駆動電流パルス幅を示す。規格化駆動電流パルス幅は、標準動作状態における駆動電流パルス幅が1となるよう規格化された駆動電流パルス幅である。縦軸は標準動作状態における出力信号のSNRが1となるよう規格化された出力信号のSNRを示す。マーカーは実測値を示す。破線は、ノイズの種類として熱雑音が支配的な場合の理論曲線を示す。理論曲線は、横軸をx、縦軸をyとして、次式で表現される、
【数5】
光学式濃度測定装置100は、光源101が発光している時間だけ出力信号を積分している。そのため、理論上は駆動電流パルス幅に対して、出力信号は正比例し、熱雑音は1/2乗に比例する。その結果、信号と雑音の比であるSNRは1/2乗に比例する。
【0131】
図10を参照すると、マーカーは理論曲線によく一致しており、SNRはほぼ理論通りに、駆動電流パルス幅の1/2乗に比例することが期待できる。すなわち、例えば、駆動電流パルス幅を1/2倍すると、出力信号は1/2倍、出力信号のノイズは1/√2倍になるため、その結果SNRは1/√2倍になる。そして、光源101が消費する電力は駆動電流パルス幅と同じく1/2倍になることが期待できる。
【0132】
図11は、光学式濃度測定装置100によるCOガス濃度の変化の実測例を示す。光学式濃度測定装置100は、人が生活している部屋のCOガス濃度を取得した。ただし、本測定では、測定中の駆動電流パルス幅を一定とし、ディジタルフィルタ処理も実行されていない。横軸は測定結果の順番を表すサンプル番号を示す。縦軸は光学式濃度測定装置100が測定したppm単位のCOガス濃度を示す。
【0133】
測定はサンプル番号0から順におよそ15秒毎に行った。また、測定中は部屋の窓が常時閉められていた。サンプル番号750付近までは隣の部屋と繋がっている扉を開放していたため、COガス濃度は比較的低濃度を維持、または非常に緩やかに上昇している。その後、サンプル番号750付近で扉を閉めると、以降COガス濃度は徐々に上昇し、さらにその後、サンプル番号2400付近で再び扉を開けると、COガス濃度は急激に下がり、扉を閉める前の水準まで戻っている。本測定時の駆動電流パルス幅を標準駆動電流パルス幅とする。
【0134】
次に、図11に示したCOガス濃度変化の実測例から、COガス濃度変化の真値のモデルを作成した。このモデルから逆算される出力信号の真値のモデル(以下、出力信号真値モデル)に想定されるノイズを加えた出力信号の現実的なモデル(以下、出力信号モデル)を用いてシミュレーションを行った。この場合に加えたノイズは、密閉環境で得られた光学式濃度測定装置100の出力信号の標準偏差を有する正規分布の信号である。また、出力信号の真値は駆動電流パルス幅に対して比例し、想定されるノイズは駆動電流パルス幅の1/2乗に比例するものとした。この条件は上述の図10に示された駆動電流パルス幅とSNRの関係を満たす。
【0135】
図12は、出力信号真値モデルを用いて算出した、COガス濃度変化のシミュレーション結果を示す図である。図11と同様に、横軸はサンプル番号を示し、縦軸は出力信号真値モデルを用いて算出されたppm単位のCOガス濃度を示す。
【0136】
図13は、出力信号モデルを用いて算出した、COガス濃度変化のシミュレーション結果を示す図である。図11と同様に、横軸はサンプル番号を示し、縦軸は出力信号モデルを用いて算出されたppm単位のCOガス濃度を示す。
【0137】
出力信号モデルは、上述の通り、出力信号真値モデルに想定されるノイズを加えて作成された。このように、図13は、モデルを用いて図11を再現するものであり、図13図11をよく再現していることが分かる。
【0138】
図14は、駆動電流パルス幅とα値を決定するためのフローチャートの一例を示す図である。処理S0から処理S10を用いて説明する。また、図14内で使用している変数について、iは何番目の測定であるのかを表すカウンタ、Pは規格化駆動電流パルス幅、αはα値、Sは出力信号、Fは平滑化フィルタ103によって平滑化された出力信号(以下、平滑化出力信号)、signは1、または‐1を格納する変数、Kは定数を示す。本設計のKの値は、標準駆動電流パルス幅で光源101を駆動した場合において、平滑化される前の出力信号の標準偏差の4倍とした。
【0139】
また、添え字は、その添え字が付加された変数が何番目の測定で用いられるかを示す。本文中では、見やすさのために、添え字を各変数に続く括弧[]内に記して表記する。例えば、xを添え字が付加される変数とするとき、本文中のx[i]は図内のxを表す。また、本例では、規格化駆動電流パルス幅Pは3種類の値1.00、0.50、および0.25のみを持ち得るように設計している。α値は規格化駆動電流パルス幅Pの3種類の値1.00、0.50、0.25に対応して、同順に、0.30、0.23、0.16のみを持ち得るように設計した。α値は規格化駆動電流パルス幅Pが1.00以外の値を取ったとしても、規格化駆動電流パルス幅Pが1.00、α値が0.30のときのSNRを維持するように選択した。
【0140】
一連の処理では、出力信号Sの変化に応じてP[i]、α[i]が決定されていく。処理S0は、初回のみ実施される。ここでは、iを0、P[i]すなわちP[0]を1.00で初期化する。処理S1では現在(i番目)の駆動電流パルス幅P[i]で光源101を駆動したときの出力信号Sxを得る。
【0141】
処理S2において、処理S1で得られた出力信号Sxを、用いた規格化駆動電流パルス幅P[i]に応じて調整したものを出力信号S[i]とする。この調整により出力信号S[i]は、規格化駆動電流パルス幅P[i]に依らず、同レベルの値となる。
【0142】
処理S3では、iが0すなわち初回の測定であるのか否かで処理を分岐する。これは初回測定時には出力信号の変化そのものを得ることができないためである。
【0143】
初回測定時(即ち、i=0)では、処理S3に続いて処理S4Aが実施される。ここでは、直前に得られた出力信号S[i]、すなわちS[0]をそのまま平滑化出力信号F[i]、すなわちF[0]とする。
【0144】
処理S5Aは処理S4Aに続いて実施される。ここでは、sign[i]、すなわちsign[0]を1とする。処理S8Aは処理S5Aに続いて実施される。ここでは、次の測定に向けて、P[i+1]を1.00とし、α[i+1]を0.30とする。処理S10では次回測定時刻まで待機して、処理S1を実施する。
【0145】
一方、初回測定時以外(即ち、i>0)では、処理S3に続いて処理S4Bが実施される。ここでは、i−1番目の測定時に得られた平滑化出力信号F[i−1]と、同じくi−1番目の測定時に決定されたα[i]と、を用いてi番目の測定時に得られた出力信号S[i]にローパスフィルタを適用し、結果を平滑化出力信号F[i]とする。
【0146】
処理S5Bは、処理S4Bに続いて実施される。ここでは、i番目の測定時に得られた出力信号S[i]とi−1番目の測定時に得られた平滑化出力信号F[i−1]の差の符号をsign[i]とする。具体的には、S[i]がF[i−1]より大きければsign[i]を1、S[i]がF[i−1]より小さければsign[i]を−1とする。なお、S[i]とF[i−1]が計算精度の範囲で一致する場合はsign[i]=0とする。
【0147】
処理S6Aは、i番目の測定時に得られた出力信号S[i]とi−1番目の測定時に得られた平滑化出力信号F[i−1]の差が十分に大きいか否かで処理を分岐する。当該差が十分に大きいということはその差はノイズによって生じたものではなく、実際に測定環境におけるCOガス濃度が大きく変化した可能性が高いことを意味する。本設計では、十分に大きな変化であるか否かを判定する閾値として、出力信号の標準偏差に基づく値を用いている。具体的にはその閾値としてK/√P[i]を用いた。本設計ではKは上述の通り、標準駆動電流パルス幅で光源101を駆動した際に得られる、すなわちP=1.00の場合に得られる、平滑化される前の出力信号の標準偏差の4倍の値を有する定数である。
【0148】
また、出力信号S[i]は、処理S2において、規格化駆動電流パルス幅P[i]に応じて調整されている。よって、Kを√P[i]で割ることにより、F[i−1]が十分にノイズの影響を除去できており真値とみなせる場合、ノイズの影響でS[i]−F[i−1]の絶対値が閾値を超える確率をP[i]に依らず一定にすることができる。
【0149】
処理S6Bは、処理S6Aの判定結果が偽であった場合に実施される。処理S6Bでは、その時点までのsignの値が正または負にある程度以上偏って分布しているか否かで処理を分岐する。偏りが十分に大きいということはその偏りはノイズによって生じたものではなく、実際に測定環境におけるCOガス濃度が大きく変化した可能性が高いことを意味する。S[i]の値がノイズによってのみ増減している場合はsignの値はより満遍なく散らばることが期待されるためである。本設計では、sign[i]、sign[i−1]、sign[i−2]、sign[i−3]の和の絶対値が2より大きいか否かで当該偏りが十分に大きいか否かを判定している。ただしi<0に対してはsign[i]=0とした。
【0150】
処理S7Aは、処理S6Aまたは処理S6Bの判定結果のいずれかが真であった場合に実施される。処理S7Aでは、i番目の測定における規格化駆動電流パルス幅P[i]が0.25であるか否かで処理を分岐する。
【0151】
処理S8Bは、処理S7Aの判定結果が真であった場合に実施される。処理S8Bでは、i+1番目の測定時に用いられる規格化駆動電流パルス幅P[i+1]を0.50、α値α[i+1]を0.23とする。また、処理S8Cは、処理S7Aの判定結果が偽であった場合に実施される。処理S8Cでは、i+1番目の測定時に用いられる規格化駆動電流パルス幅P[i+1]を1.00、α値α[i+1]を0.30とする。
【0152】
すなわち、処理S6Aまたは処理S6Bにおいて、実際の測定環境におけるCOガス濃度が大きく変化した可能性が高いと判断された場合には、処理S7A、処理S8B、および処理S8Cによって、規格化駆動電流パルス幅Pとα値を一段階大きくする。光学式濃度測定装置100は、規格化駆動電流パルス幅Pを大きくすることによって、α値を大きくしたことによって生じるSNRの低下を相殺する。これにより、光学式濃度測定装置100は、COガス濃度の大きな変化に対する応答性を確保しつつ、SNRの低下を抑制することができる。
【0153】
処理S7Bは、処理S6Aおよび処理S6Bの判定結果がいずれも偽であった場合に実施され、i番目の測定における規格化駆動電流パルス幅P[i]が1.00であるか否かで処理を分岐する。
【0154】
処理S8Dは、処理S7Bの判定結果が真であった場合に実施される。処理8Dでは、i+1番目の測定時に用いられる規格化駆動電流パルス幅P[i+1]を0.50、α値α[i+1]を0.23とする。また、処理S8Eは、処理S7Bの判定結果が偽であった場合に実施される。処理S8Eでは、i+1番目の測定時に用いられる規格化駆動電流パルス幅P[i+1]を0.25、α値α[i+1]を0.16とする。
【0155】
すなわち、処理S6Aおよび処理S6Bにおいて、実際に測定環境におけるCOガス濃度が大きく変化した可能性が低いと判断された場合には、処理S7Bと処理S8Dおよび処理S8Eによって、規格化駆動電流パルス幅Pとα値を一段階小さくする。光学式濃度測定装置100は、α値を小さくすることによって、規格化駆動電流パルス幅Pを小さくしたことによって生じるSNRの低下を抑制する。これにより、光学式濃度測定装置100は、光源101の消費電流を低減しつつ、SNRの低下を抑制することができる。
【0156】
図15は、実施例に係る処理を適用したシミュレーション結果を示す図である。本例のシミュレーション結果は、図14で示された処理を実行することにより得られた。また同時に、図12に示したCOガス濃度変化の出力信号真値モデルに対するエラーを表示している。横軸はサンプル番号を示し、左縦軸はシミュレーションにより得られたppm単位のCOガス濃度を示す。また、右縦軸は、ppm単位のエラーを示す。
【0157】
図16は、図15と共に得た、規格化駆動電流パルス幅Pの変化を示す図である。横軸はサンプル番号を示し、縦軸は規格化駆動電流パルス幅Pを示す。本例の縦軸は図14に示した処理により決定された、各測定における規格化駆動電流パルス幅Pを示す。図16を参照すると、規格化駆動電流パルス幅Pとして頻繁に0.75や0.50が用いられ、消費電流が低減していることがわかる。図16に図示されている範囲の規格化駆動電流パルス幅Pの平均値は0.54であった。これにより、平均して、光源101が消費する電力の40%以上が本発明によって削減されたことが分かる。
【0158】
図17は、規格化駆動電流パルス幅Pを一定とした場合のシミュレーション結果を比較例として示す図である。同図では、比較のため、規格化駆動電流パルス幅Pを常に前述の平均値と等しい0.54で一定としている。横軸はサンプル番号を示し、左縦軸はシミュレーションにより得られたppm単位のCOガス濃度を示す。また、右縦軸は、ppm単位のエラーを示す。図17は、図15と比較すると、ノイズによるエラーが増えていることがわかる。
【0159】
例えば、サンプル番号1000からサンプル番号1999までの1000点について、光学式濃度測定装置100を用いた結果である図15のエラーの二乗平均平方根は、4.3であった。一方、規格化駆動電流パルス幅Pを一定の0.54とした結果である図17のエラーの二乗平均平方根は、5.9であった。
【0160】
また、図示された全域について、光学式濃度測定装置100を用いた結果である図15のエラーの二乗平均平方根は、5.3であった。一方、規格化駆動電流パルス幅Pを一定の0.54とした結果である図17のエラーの二乗平均平方根は、6.3であった。
【0161】
図18は、規格化駆動電流パルス幅Pを一定とし、α値を調整した場合のシミュレーション結果を比較例として示す図である。同図では、規格化駆動電流パルス幅Pを常に前述の平均値と等しい0.54で一定とし、更にこれにより減少したSNRを補填するためにα値を調整した場合のシミュレーション結果を示す。横軸はサンプル番号を示し、左縦軸はシミュレーションにより得られたppm単位のCOガス濃度を示す。また、右縦軸は、ppm単位のエラーを示す。図18は、図15と比較すると、サンプル番号2400付近のCOガス濃度の急激な変化に対して応答が遅れ、その分大きなエラーが生じている。図18に示されたエラーの二乗平均平方根は、サンプル番号1000からサンプル番号1999までの1000点については4.3であり、図示された全域について7.0であった。
【0162】
以上の通り、シミュレーション結果を参照すると、光学式濃度測定装置100は、測定精度の低下および応答性の低下を抑制しつつ、光源101の省電力性の向上および光源101の長寿命化することができる。
【0163】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0164】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0165】
100・・・光学式濃度測定装置、101・・・光源、102・・・光検出部、103・・・平滑化フィルタ、104・・・光源制御部、105・・・フィルタ制御部、106・・・信号変化量演算部、200・・・光学式濃度測定装置、207・・・濃度演算部
図1
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