特許第6608587号(P6608587)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6608587半導体リソグラフィー用材料の製造方法および製造装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6608587
(24)【登録日】2019年11月1日
(45)【発行日】2019年11月20日
(54)【発明の名称】半導体リソグラフィー用材料の製造方法および製造装置
(51)【国際特許分類】
   C08F 2/01 20060101AFI20191111BHJP
【FI】
   C08F2/01
【請求項の数】4
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2014-212673(P2014-212673)
(22)【出願日】2014年10月17日
(65)【公開番号】特開2016-79296(P2016-79296A)
(43)【公開日】2016年5月16日
【審査請求日】2017年5月15日
【審判番号】不服2018-17223(P2018-17223/J1)
【審判請求日】2018年12月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100152146
【弁理士】
【氏名又は名称】伏見 俊介
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】加藤 圭輔
【合議体】
【審判長】 佐藤 健史
【審判官】 海老原 えい子
【審判官】 武貞 亜弓
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−249400(JP,A)
【文献】 特開2012−57172(JP,A)
【文献】 特開2012−211347(JP,A)
【文献】 特開2013−177631(JP,A)
【文献】 特開2011−1478(JP,A)
【文献】 特表2010−525103(JP,A)
【文献】 特開2012−72417(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F2/00-2/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体リソグラフィー用重合体、重合体溶液または前記重合体を含む組成物である半導体リソグラフィー用材料の製造方法であって、
複数の配管部材を接続してなる送液配管にて液状物を送液する工程を含み、
前記送液配管にて配管部材同士が接続される部分に、前記半導体リソグラフィー用材料中の亜鉛の含有量が0.3質量ppb以下となるように、下記(1)〜(3)からなる群から選択される接続部材が配置されていることを特徴とする、半導体リソグラフィー用材料の製造方法。
(1)パーフルオロエラストマーからなる接続部材。
(2)フッ素ゴムからなる接続部材。
(3)ゴム基材の表面をパーフルオロ樹脂でコーティングした接続部材。
【請求項2】
前記複数の配管部材のうちの少なくとも一部の配管部材の内壁面が、ステンレス鋼からなり電解研磨処理された面、グラスライニング処理された面、または含フッ素コーティング剤でコーティングされた面である請求項1に記載の半導体リソグラフィー用材料の製造方法。
【請求項3】
半導体リソグラフィー用重合体、重合体溶液または前記重合体を含む組成物である半導体リソグラフィー用材料の製造装置であって、
複数の配管部材を接続してなる送液配管を備え、
前記送液配管にて配管部材同士が接続される部分に、前記半導体リソグラフィー用材料中の亜鉛の含有量が0.3質量ppb以下となるように、下記(1)〜(3)からなる群から選択される接続部材が配置されていることを特徴とする、半導体リソグラフィー用材料の製造装置。
(1)パーフルオロエラストマーからなる接続部材。
(2)フッ素ゴムからなる接続部材。
(3)ゴム基材の表面をパーフルオロ樹脂で被覆した接続部材。
【請求項4】
前記複数の配管部材のうちの少なくとも一部の配管部材の内壁面が、ステンレス鋼からなり電解研磨処理された面、グラスライニング処理された面、または含フッ素コーティング剤でコーティングされた面である請求項3に記載の半導体リソグラフィー用材料の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体リソグラフィー用重合体、重合体溶液または前記重合体を含む組成物である半導体リソグラフィー用材料の製造方法および製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造技術におけるリソグラフィー(半導体リソグラフィー)は、光や電子線等を利用して基板上にレジストパターンを形成する工程を意味する。
近年、リソグラフィー技術の進歩により微細化がますます進み、それに伴って、リソグラフィー工程に用いられる重合体および該重合体を含む組成物の高純度化が求められている。
【0003】
例えば、非常に低レベルの金属不純物の存在によって、半導体デバイスの性能および安定性が低下することがしばしば観察されていることから、金属不純物濃度の低減が求められる。
金属不純物の主要因は、半導体リソグラフィー工程に用いられる重合体または組成物(例えば半導体リソグラフィー用重合体またはその溶液、もしくはレジスト組成物)中に含まれるナトリウム等の軽金属や、鉄等の重金属であることが確認されている。
【0004】
従来、半導体リソグラフィー工程に用いられる重合体または組成物中の金属不純物濃度は、厳しい不純物濃度規格を満たす原料を選択することや、重合体または組成物の製造段階で金属不純物が混入しないように徹底したプロセス管理を行うことで低いレベルに管理されている。
プロセス管理の一つとして、製造設備での液状物(原料、中間体、製品等)の送液に、従来の金属配管に替えて、非金属ライニング配管を用いることが行われている。
また、特許文献1では、非金属ライニング配管に静電気が蓄積され、ライニングが静電気破壊されることによって金属配管に由来する金属異物や金属成分が混入することを抑制するために、複数の非金属ライニング配管同士の接続部に、送液される液状物と接触するようにアース材を挿入することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−249400号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来の方法では、金属不純物の混入を抑制する効果は必ずしも充分ではなく、半導体リソグラフィー工程に用いられる重合体や組成物中の金属不純物濃度をより低減することが求められる。
【0007】
本発明は前記事情に鑑みてなされたもので、金属不純物濃度が低減された半導体リソグラフィー用材料を製造できる製造方法および製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、半導体リソグラフィー用材料の製造にて液状物の送液に使用される送液配管に着目し、鋭意研究を行った結果、送液配管を構成する複数の配管部材同士の接続部に用いられている接続部材、例えば液漏れ防止のためのシール材(Oリング等)から金属不純物の溶出があること、その量は、微量ではあるものの、近年の高精度な半導体デバイスにあっては、その性能および安定性に影響を与え得ることを知見した。そして、該接続部材からの金属不純物の溶出を低減することが、半導体リソグラフィー用材料に要求される金属不純物の低レベル化に寄与することを見出して、本発明に至った。
【0009】
本発明は下記[1]〜[4]である。
[1]半導体リソグラフィー用重合体、重合体溶液または前記重合体を含む組成物である半導体リソグラフィー用材料の製造方法であって、
複数の配管部材を接続してなる送液配管にて液状物を送液する工程を含み、
前記送液配管にて配管部材同士が接続される部分に、下記(1)〜(3)からなる群から選択される接続部材が配置されていることを特徴とする、半導体リソグラフィー用材料の製造方法。
(1)パーフルオロエラストマーからなる接続部材。
(2)フッ素ゴムからなる接続部材。
(3)ゴム基材の表面をパーフルオロ樹脂でコーティングした接続部材。
[2]前記複数の配管部材のうちの少なくとも一部の配管部材の内壁面が、ステンレス鋼からなり電解研磨処理された面、グラスライニング処理された面、または含フッ素コーティング剤でコーティングされた面である[1]に記載の半導体リソグラフィー用材料の製造方法。
[3]半導体リソグラフィー用重合体、重合体溶液または前記重合体を含む組成物である半導体リソグラフィー用材料の製造装置であって、
複数の配管部材を接続してなる送液配管を備え、
前記送液配管にて配管部材同士が接続される部分に、下記(1)〜(3)からなる群から選択される接続部材が配置されていることを特徴とする、半導体リソグラフィー用材料の製造装置。
(1)パーフルオロエラストマーからなる接続部材。
(2)フッ素ゴムからなる接続部材。
(3)ゴム基材の表面をパーフルオロ樹脂で被覆した接続部材。
[4]前記複数の配管部材のうちの少なくとも一部の配管部材の内壁面が、ステンレス鋼からなり電解研磨処理された面、グラスライニング処理された面、または含フッ素コーティング剤でコーティングされた面である[3]に記載の半導体リソグラフィー用材料の製造装置。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、金属不純物濃度が低減された半導体リソグラフィー用材料を製造できる製造方法および製造装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の製造装置の一例を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の製造方法または製造装置で製造する半導体リソグラフィー材料は、下記(α)、(β)または(γ)である。
(α)半導体リソグラフィー用重合体。
(β)半導体リソグラフィー用重合体溶液。
(γ)半導体リソグラフィー用重合体を含む組成物。
【0013】
<半導体リソグラフィー用重合体>
本発明における半導体リソグラフィー用重合体(以下、単に「重合体」ともいう。)は、半導体リソグラフィー工程に用いられる重合体であれば特に限定されない。例えば、レジスト膜の形成に用いられるレジスト用重合体、レジスト膜の上層に形成される反射防止膜(TARC)、またはレジスト膜の下層に形成される反射防止膜(BARC)の形成に用いられる反射防止膜用重合体、ギャップフィル膜の形成に用いられるギャップフィル膜用重合体、トップコート膜の形成に用いられるトップコート膜用重合体等が挙げられる。
【0014】
レジスト用重合体の例としては、極性基を有する構成単位の1種以上を含む重合体が挙げられる。レジスト用重合体としては、極性基を有する構成単位の1種以上と、酸脱離性基を有する構成単位の1種以上とを含む共重合体が好ましい。該共重合体は、必要に応じて、公知の他の構成単位をさらに有していてもよい。
【0015】
極性基を有する構成単位における「極性基」とは、極性を持つ官能基または極性を持つ原子団を有する基であり、具体例としては、ヒドロキシ基、シアノ基、アルコキシ基、カルボキシ基、アミノ基、カルボニル基、フッ素原子を含む基、硫黄原子を含む基、ラクトン骨格を含む基、アセタール構造を含む基、エーテル結合を含む基等が挙げられる。
これらのうちで、波長250nm以下の光で露光するパターン形成方法に適用されるレジスト用重合体は、極性基を有する構成単位として、ラクトン骨格を有する構成単位を有することが好ましく、さらに親水性基を有する構成単位を有することがより好ましい。
【0016】
ラクトン骨格を有する構成単位における「ラクトン骨格」としては、例えば、4〜20員環程度のラクトン骨格が挙げられる。ラクトン骨格は、ラクトン環のみの単環であってもよく、ラクトン環に脂肪族または芳香族の炭素環または複素環が縮合していてもよい。
重合体がラクトン骨格を有する構成単位を含む場合、その含有量は、基板等への密着性の点から、全構成単位(100モル%)のうち、20モル%以上が好ましく、25モル%以上がより好ましい。また、感度および解像度の点から、60モル%以下が好ましく、55モル%以下がより好ましく、50モル%以下がさらに好ましい。
【0017】
ラクトン骨格を有する単量体としては、基板等への密着性に優れる点から、置換あるいは無置換のδ−バレロラクトン環を有する(メタ)アクリル酸エステル、置換あるいは無置換のγ−ブチロラクトン環を有する単量体からなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましく、無置換のγ−ブチロラクトン環を有する単量体が特に好ましい。
【0018】
ラクトン骨格を有する単量体の具体例としては、β−(メタ)アクリロイルオキシ−β−メチル−δ−バレロラクトン、4,4−ジメチル−2−メチレン−γ−ブチロラクトン、β−(メタ)アクリロイルオキシ−γ−ブチロラクトン、β−(メタ)アクリロイルオキシ−β−メチル−γ−ブチロラクトン、α−(メタ)アクリロイルオキシ−γ−ブチロラクトン、2−(1−(メタ)アクリロイルオキシ)エチル−4−ブタノリド、(メタ)アクリル酸パントイルラクトン、5−(メタ)アクリロイルオキシ−2,6−ノルボルナンカルボラクトン、8−メタクリロキシ−4−オキサトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−3−オン、9−メタクリロキシ−4−オキサトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−3−オン等が挙げられる。また、類似構造を持つ単量体として、メタクリロイルオキシこはく酸無水物等も挙げられる。
ラクトン骨格を有する単量体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0019】
親水性基を有する構成単位における「親水性基」は、−C(CF−OH、ヒドロキシ基、シアノ基、メトキシ基、カルボキシ基およびアミノ基の少なくとも1種である。
これらのうちで、波長250nm以下の光で露光するパターン形成方法に適用されるレジスト用重合体は、親水性基としてヒドロキシ基またはシアノ基を有することが好ましい。
重合体における親水性基を有する構成単位の含有量は、レジストパターン矩形性の点から、全構成単位(100モル%)のうち、5〜30モル%が好ましく、10〜25モル%がより好ましい。
【0020】
親水性基を有する単量体としては、例えば、末端ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリ酸エステル;単量体の親水性基上にアルキル基、ヒドロキシ基、カルボキシ基等の置換基を有する誘導体;環式炭化水素基を有する単量体(例えば(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸1−イソボルニル、(メタ)アクリル酸アダマンチル、(メタ)アクリル酸トリシクロデカニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンチル、(メタ)アクリル酸2−メチル−2−アダマンチル、(メタ)アクリル酸2−エチル−2−アダマンチル等。)が置換基としてヒドロキシ基、カルボキシ基等の親水性基を有するもの;が挙げられる。
【0021】
親水性基を有する単量体の具体例としては、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシ−n−プロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシアダマンチル、2−または3−シアノ−5−ノルボルニル(メタ)アクリレート、2−シアノメチル−2−アダマンチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。基板等に対する密着性の点から、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシアダマンチル、(メタ)アクリル酸3,5−ジヒドロキシアダマンチル、2−または3−シアノ−5−ノルボルニル(メタ)アクリレート、2−シアノメチル−2−アダマンチル(メタ)アクリレート等が好ましい。
親水性基を有する単量体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0022】
酸脱離性基を有する構成単位における「酸脱離性基」とは、酸により開裂する結合を有する基であり、該結合の開裂により酸脱離性基の一部または全部が重合体の主鎖から脱離する基である。レジスト用組成物において、酸脱離性基を有する構成単位を有する重合体は、酸成分と反応してアルカリ性溶液に可溶となり、レジストパターン形成を可能とする作用を奏する。
酸脱離性基を有する構成単位の割合は、感度および解像度の点から、重合体を構成する全構成単位(100モル%)のうち、20モル%以上が好ましく、25モル%以上がより好ましい。また、基板等への密着性の点から、60モル%以下が好ましく、55モル%以下がより好ましく、50モル%以下がさらに好ましい。
【0023】
酸脱離性基を有する単量体は、酸脱離性基および重合性多重結合を有する化合物であればよく、公知のものを使用できる。重合性多重結合とは重合反応時に開裂して共重合鎖を形成する多重結合であり、エチレン性二重結合が好ましい。
酸脱離性基を有する単量体の例として、炭素数6〜20の脂環式炭化水素基を有し、かつ酸脱離性基を有している(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。該脂環式炭化水素基は、(メタ)アクリル酸エステルのエステル結合を構成する酸素原子と直接結合していてもよく、アルキレン基等の連結基を介して結合していてもよい。
該(メタ)アクリル酸エステルには、炭素数6〜20の脂環式炭化水素基を有するとともに、(メタ)アクリル酸エステルのエステル結合を構成する酸素原子との結合部位に第3級炭素原子を有する(メタ)アクリル酸エステル、または、炭素数6〜20の脂環式炭化水素基を有するとともに、該脂環式炭化水素基に−COOR基(Rは置換基を有していてもよい第3級炭化水素基、テトラヒドロフラニル基、テトラヒドロピラニル基、またはオキセパニル基を表す。)が直接または連結基を介して結合している(メタ)アクリル酸エステルが含まれる。
【0024】
特に、波長250nm以下の光で露光するパターン形成方法に適用されるレジスト組成物を製造する場合に、酸脱離性基を有する単量体の好ましい例として、例えば、2−メチル−2−アダマンチル(メタ)アクリレート、2−エチル−2−アダマンチル(メタ)アクリレート、1−(1’−アダマンチル)−1−メチルエチル(メタ)アクリレート、1−メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、1−エチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、1−メチルシクロペンチル(メタ)アクリレート、1−エチルシクロペンチル(メタ)アクリレート、イソプロピルアダマンチル(メタ)アクリレート、1−エチルシクロオクチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
酸脱離性基を有する単量体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0025】
反射防止膜用重合体の例としては、吸光性基を有する構成単位と、レジスト膜との混合を避けるため、硬化剤などと反応して硬化可能なアミノ基、アミド基、ヒドロキシ基、エポキシ基等の反応性官能基を有する構成単位とを含む共重合体が挙げられる。
吸光性基とは、レジスト組成物中の感光成分が感度を有する波長領域の光に対して高い吸収性能を有する基であり、具体例としては、アントラセン環、ナフタレン環、ベンゼン環、キノリン環、キノキサリン環、チアゾール環等の環構造(任意の置換基を有していてもよい。)を有する基が挙げられる。特に、リソグラフィー工程における照射光として、KrFレーザ光が用いられる場合には、アントラセン環又は任意の置換基を有するアントラセン環が好ましく、ArFレーザ光が用いられる場合には、ベンゼン環又は任意の置換基を有するベンゼン環が好ましい。上記任意の置換基としては、フェノール性水酸基、アルコール性水酸基、カルボキシ基、カルボニル基、エステル基、アミノ基、又はアミド基等が挙げられる。これらのうち、吸光性基として、保護された又は保護されていないフェノール性水酸基を有するものが、良好な現像性・高解像性の観点から好ましい。
上記吸光性基を有する構成単位として、例えば、ベンジル(メタ)アクリレートに基づく構成単位、p−ヒドロキシフェニル(メタ)アクリレートに基づく構成単位等が挙げられる。
【0026】
ギャップフィル膜用重合体の例としては、狭いギャップに流れ込むための適度な粘度を有し、レジスト膜や反射防止膜との混合を避けるため、硬化剤などと反応して硬化可能な反応性官能基を有する構成単位を含む共重合体が挙げられる。例えば、ヒドロキシスチレンと、スチレン、アルキル(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート等の単量体との共重合体が挙げられる。
液浸リソグラフィーに用いられるトップコート膜用重合体の例としては、カルボキシ基を有する構成単位を含む共重合体、水酸基が置換したフッ素含有基を有する構成単位を含む共重合体等が挙げられる。
【0027】
半導体リソグラフィー用重合体は、製造工程上不可避の化合物を含んでもよい。
【0028】
<半導体リソグラフィー用重合体溶液>
本発明における半導体リソグラフィー用重合体(以下、単に「重合体溶液」ともいう。)は、半導体リソグラフィー用重合体と溶媒とからなる溶液、または該重合体と溶媒と製造工程上不可避の化合物とからなる溶液である。
重合体溶液としては、例えば、単量体を重合反応させて得られる重合反応溶液、該重合反応溶液を精製し、乾燥させた重合体粉体を溶媒に溶解させた重合体溶液、該重合体溶液を濃縮した濃縮液、重合体溶液またはその濃縮液を濾過した濾液等が挙げられる。
【0029】
半導体リソグラフィー用重合体は前記と同様のものが挙げられる。
重合体溶液における半導体リソグラフィー用重合体の含有量は、当該重合体の種類、用途等を考慮して適宜設定できるが、製造上の観点から、5〜70質量%が好ましく、8〜60質量%がより好ましく、10〜50質量%が特に好ましい。
【0030】
溶媒としては、例えば、下記のものが挙げられる。
エーテル類:鎖状エーテル(ジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等。)、環状エーテル(テトラヒドロフラン(以下、「THF」と記す。)、1,4−ジオキサン等。)等。
エステル類:酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(以下、「PGMEA」と記す。)、γ−ブチロラクトン等。
ケトン類:アセトン、メチルエチルケトン(以下、「MEK」と記す。)、メチルイソブチルケトン(以下、「MIBK」と記す。)、シクロヘキサノン等。
アミド類:N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド等。
スルホキシド類:ジメチルスルホキシド等。
芳香族炭化水素:ベンゼン、トルエン、キシレン等。
脂肪族炭化水素:ヘキサン等。
脂環式炭化水素:シクロヘキサン等。
溶媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0031】
<組成物>
本発明における組成物は、半導体リソグラフィー用重合体と、添加剤とを含み、必要に応じて、溶媒をさらに含む。
添加剤および溶媒はそれぞれ、半導体リソグラフィー用重合体の種類、ひいては組成物の種類に応じたものが用いられる。
組成物の種類としては、半導体リソグラフィー工程に用いられるものであれば特に限定されず、例えばレジスト組成物、反射防止膜用組成物、ギャップフィル膜用組成物、トップコート膜用組成物等が挙げられる。
【0032】
例えばレジスト組成物は、典型的には、レジスト用重合体と、レジスト溶媒と、レジスト組成物として機能するために必要な添加剤とを含む。必要に応じて、レジスト組成物として機能するために必要な添加剤以外の添加剤(任意添加剤)をさらに含んでもよい。
レジスト溶媒の例としては、上記に挙げた溶媒と同様のものが挙げられる。
レジスト組成物として機能するために必要な添加剤としては、例えば、レジスト組成物が化学増幅型レジスト組成物である場合には、活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物(光酸発生剤)が挙げられる。
【0033】
光酸発生剤は、化学増幅型レジスト用組成物の光酸発生剤として使用可能なものの中から任意に選択できる。光酸発生剤としては、例えば、オニウム塩化合物、スルホンイミド化合物、スルホン化合物、スルホン酸エステル化合物、キノンジアジド化合物、ジアゾメタン化合物等が挙げられる。光酸発生剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
光酸発生剤の使用量は、レジスト用重合体100質量部に対して、0.1〜20質量部が好ましく、0.5〜10質量部がより好ましい。
【0034】
化学増幅型レジスト組成物は、必要に応じて、任意添加剤として、含窒素化合物、酸化合物(有機カルボン酸、リンのオキソ酸またはその誘導体等)、界面活性剤、その他のクエンチャー、増感剤、ハレーション防止剤、保存安定剤、消泡剤等をさらに含んでもよい。これらの添加剤は、レジスト組成物において公知のものを適宜使用できる。
【0035】
<半導体リソグラフィー用材料の製造装置>
本発明の製造装置は、複数の配管部材を接続してなる送液配管を備え、前記送液配管にて配管部材同士が接続される部分に、下記(1)〜(3)からなる群から選択される接続部材(以下、「接続部材(I)」ともいう。)が配置されていることを特徴とする。
(1)パーフルオロエラストマーからなる接続部材。
(2)フッ素ゴムからなる接続部材。
(3)ゴム基材の表面をパーフルオロ樹脂で被覆した接続部材。
【0036】
本発明の製造装置において、送液配管の数は、送液する液状物の数に応じて設定され、通常、複数である。
本発明の製造装置において、送液配管の上流および下流のいずれか一方または両方には、送液配管により送液される液状物を収容する容器が配置される。液状物を収容する容器の数は、通常、複数である。
【0037】
〔液状物〕
送液配管によって移送される液状物としては、液体、溶液、スラリー等が挙げられる。具体的には、原料のうち液体であるもの、原料の溶液、重合体溶液、組成物等が挙げられる。
本発明において「原料」とは、半導体リソグラフィー用重合体または該重合体を含む組成物を製造する工程において、重合反応を行う工程に用いられる各化合物、および重合反応後の工程で新たに用いられる各化合物を意味する。
該原料は、溶媒と、溶媒以外の原料とに分けられる。
溶媒としては、重合反応を行う工程で用いられる重合溶媒、再沈殿またはリスラリを行う工程で用いられる貧溶媒、希釈する工程で用いられる希釈溶媒、湿粉または乾燥粉体状の重合体を溶液状にする工程で用いられる良溶媒、原料を溶解するのに用いられる溶媒、反応容器や送液配管などを洗浄する工程で用いられる溶媒、レジスト組成物を製造する工程で用いられるレジスト溶媒等が挙げられる。
溶媒以外の原料としては、重合反応を行う工程で用いられる単量体、重合開始剤、重合反応時の添加剤(例えばラジカル捕捉剤、酸捕捉剤等)が挙げられる。溶媒以外の原料は液体であることが好ましい。
【0038】
〔送液配管〕
「送液配管」とは、液状物を送液する配管である。
送液配管は、複数の配管部材を接続してなるものであり、配管部材同士が接続される部分(以下、「配管部材接続部」ともいう。)を有する。また、送液配管の上流および下流のいずれか一方または両方に、液状物を収容する容器が接続される部分(以下、「容器接続部」ともいう。)を有する。
配管部材接続部においては、配管部材と配管部材とが直接接続されていてもよく、他部材を介して接続されていてもよい。送液配管内の配管部材と配管部材との間には、必要に応じて、送液ポンプ、液状物のサンプリング部材等の他部材が配置される。この場合、配管部材接続部では、配管部材と配管部材とが他部材を介して接続される。
【0039】
1つの送液配管を構成する配管部材の数は、送液配管の長さ等に応じて適宜設定されるが、典型的には、300〜1000個程度である。
製造装置は、通常、複数の送液配管を備えており、製造装置内には、複数の配管部材接続部が存在する。製造装置内の配管部材接続部の数は、送液配管の数や長さによって異なるが、典型的には、300〜1000個程度である。
【0040】
製造装置内の配管部材接続部の一部または全部には接続部材(I)が配置される。
製造装置内の配管部材接続部の一部には、接続部材(I)が配置されていなくてもよい。例えば、接続部材(I)以外の他の接続部材が配置されていてもよく、接続部材が配置されていなくてもよい。
液状物の液漏れを防ぐ点では、全ての配管部材接続部に接続部材(接続部材(I)または他の接続部材)が配置されていることが好ましい。
金属不純物濃度の低減効果の点では、製造装置内の配管部材接続部に配置された接続部材の総数のうち、接続部材(I)の数が占める割合が、60%以上であることが好ましく、80%以上がより好ましく、100%が特に好ましい。すなわち、製造装置内の配管部材接続部に配置された接続部材の全てが接続部材(I)であることが特に好ましい。
【0041】
製造装置内の容器接続部の一部または全部に接続部材(I)が配置されてもよい。
容器接続部においても、液漏れ防止に観点から、接続部材が配置されることがある。製造装置内の容器接続部の数は、通常、配管部材接続部の数よりも少ないが、接続部材として接続部材(I)を用いることで、金属不純物の混入を抑制する効果がさらに優れたものとなる。
金属不純物濃度の低減効果の点では、製造装置内の配管部材接続部及び容器接続部に配置された接続部材の総数のうち、接続部材(I)の数が占める割合が、60%以上であることが好ましく、80%以上がより好ましく、100%が特に好ましい。すなわち、製造装置内の配管部材接続部及び容器接続部に配置された接続部材の全てが接続部材(I)であることが特に好ましい。
【0042】
接続部材(I):
(1)の接続部材におけるパーフルオロエラストマー(FFKM)は、テトラフルオロエチレン−パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体である。パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)としては、アルキル基の炭素数が1〜5であるものが好ましく、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)が特に好ましい。
【0043】
(2)の接続部材におけるフッ素ゴムとしては、フッ化ビニリデン系ゴム(FKM)、テトラフルオロエチレン−プロピレンゴム(FEPM)、エチレン−パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)−テトラフルオロエチレンゴム等が挙げられる。
FKMとしては、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)−テトラフルオロエチレン共重合体等が挙げられる。
【0044】
(3)の接続部材におけるパーフルオロ樹脂としては、テトラフルオロエチレン−パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体(PFA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等が挙げられる。
パーフルオロ樹脂としては、接続部の密着性の点で、PFAが好ましい。
【0045】
ゴム基材を構成するゴムとしては、特に限定されず、接続部材等に用いられている各種のゴムを適用できる。例えばエチレンプロピレンゴム(EPDM)、シリコーンゴム(VMQ)、フルオロシリコーンゴム(FVMQ)、ニトリルゴム(NBR)、水素化ニトリルゴム(HNBR)、アクリルゴム(ACM)、クロロプレンゴム(CR)、ブチルゴム(IIR)、クロロスルホン化ポリエチレンゴム(CSM)等が挙げられる。これらのうち、耐熱性、コスト等の点では、EPDMが好ましい。
【0046】
接続部材(I)の形状は、特に限定されず、公知の接続部材と同様であってよい。
例えば、Oリング等の環状の接続部材が挙げられる。送液配管において、配管部材同士は一般に、各々の配管部材の端部に設けられたフランジ同士を締結することにより接続される。その際、液漏れを防ぐためのシール材として、フランジとフランジとの間に環状の接続部材が配置される。
環状の接続部材のほか、角状、棒状、円柱状等の接続部材が挙げられる。
【0047】
他の接続部材:
他の接続部材としては、例えば、前記で挙げたゴム基材と同様のものが挙げられる。
【0048】
配管部材:
送液配管を構成する配管部材としては、特に限定されない。より優れた金属不純物濃度の低減効果が得られる点では、送液配管を構成する複数の配管部材のうちの少なくとも一部、好ましくは全部の配管部材の内壁面が、ステンレス鋼からなり電解研磨処理された面、グラスライニング処理された面、または含フッ素コーティング剤でコーティングされた面であることが好ましい。
【0049】
内壁面がステンレス鋼からなり電解研磨処理された面である配管部材は、材質がステンレス鋼である配管部材の少なくとも内壁面を電解研磨処理したものである。内壁面の全面が電解研磨処理されていることが好ましい。
ステンレス鋼は特に限定されず公知の鋼種を用いることができる。例えばSUS304(Fe:約70質量%、Cr:18〜20質量%、Ni:8〜10質量%)、SUS316(Fe:約70質量%、Cr:16〜18質量%、Ni:10〜14質量%、Mo:2〜3質量%)、SUS316L(Fe:約70質量%、Cr:16〜18質量%、Ni:10〜14質量%、Mo:2〜3質量%)等が挙げられる。
電解研磨処理は公知の方法で行うことができる。ステンレス鋼に電解研磨処理を施すと、ステンレス鋼の表面から金属イオンが溶出して該表面が平滑化される。
【0050】
電解研磨処理の条件は、電解研磨処理されたステンレス鋼からなる面の、表面平滑度を示す算術平均粗さRaが0.5μm以下、好ましくは0.3μm以下、さらに好ましくは0.2μm以下となるように設定することが好ましい。
本発明における算術平均粗さの値(Ra、単位:μm)は、JIS B0601−2001に準拠して測定される値である。
該算術平均粗さRaが0.5μm以下となるように、配管部材の内壁面を充分に平滑化することにより、該内壁面からの金属の溶出を充分小さくすることができる。該算術平均粗さRaの値が小さいほど、金属の溶出をより低減することができる。
算術平均粗さRaの下限値は特に限定されない。実質的には0.05μm以上である。
【0051】
内壁面がグラスライニング処理された面である配管部材は、金属または非金属からなる配管部材の内壁面に、ガラス被膜(ライニング)を形成して得られる。内壁面の全面がグラスライニング処理されていることが好ましい。
内壁面がグラスライニング処理された面である場合、配管部材の材質は特に限定されない。例えばステンレス鋼、セラミックス等が挙げられる。
ガラス被膜の形成(グラスライニング処理)は公知の方法で行うことができる。
ガラス被膜の膜厚は0.5mm以上が好ましく、1.0mm以上がより好ましい。該膜厚の上限は3.0mm以下が好ましく、2.0mm以下がより好ましい。
【0052】
内壁面が含フッ素コーティング剤でコーティングされた面である配管部材は、金属または非金属からなる配管部材の内壁面に、含フッ素コーティング剤で含フッ素化合物を含む被膜(コーティング膜)を形成して得られる。内壁面の全面が含フッ素コーティング剤でコーティングされていることが好ましい。
内壁面が含フッ素コーティング剤でコーティングされた面である場合、配管部材の材質は特に限定されない。例えばステンレス鋼、セラミックス等が挙げられる。
含フッ素コーティング剤のコーティング処理は公知の方法で行うことができる。
含フッ素コーティング剤は公知のものを用いることができる。具体例としてはPTFE、PFA等が挙げられる。
コーティング膜の膜厚は1mm未満が好ましく、0.5mm以下がより好ましい。該膜厚の下限は0.1mm以上が好ましく、0.2mm以上がより好ましい。
【0053】
〔容器〕
液状物を収容する容器としては、液体の原料を収容する容器(以下、「原料用容器」ともいう。)、原料以外の液体を収容する容器等が挙げられる。
原料以外の液体を収容する容器としては、例えば液体原料調合容器、重合容器、再沈殿容器、再溶解容器、濾過容器、濃縮容器、組成物調合容器等が挙げられる。これらの容器はそれぞれ、公知の容器を用いることができる。
【0054】
本発明の製造装置は、液状物を収容する容器の少なくとも一部、好ましくは全部として、内壁面が、ステンレス鋼からなり電解研磨処理された面、グラスライニング処理された面、または含フッ素コーティング剤でコーティングされた面のいずれかである容器を備えることが好ましい。これらの内壁面は、前記の配管部材における内壁面と、好ましい態様も含めて同様である。
【0055】
〔装置構成〕
本発明の製造装置の装置構成としては、送液配管の配管部材接続部の一部または全部に接続部材(I)が配置される以外は、半導体リソグラフィー用材料の製造装置として公知の装置構成を採用できる。
【0056】
図1に、本発明の製造装置の一例の概略構成図を示す。この例の製造装置10は、粉体状の重合体(以下、「重合体(粉)」ともいう。)または重合体溶液の製造装置の一例である。
製造装置10は、原料調合容器1と、重合容器2と、再沈殿容器3と、濾過容器4と、再溶解容器5と、重合溶媒を収容する原料用容器11と、それぞれ異なる単量体を収容する原料用容器12、13、14と、貧溶媒を収容する原料用容器15と、良溶媒を収容する原料用容器16と、重合体溶液の溶媒を収容する原料用容器17と、送液配管21〜32と、乾燥機(図示略)とを備える。
送液配管21は、原料用容器11と重合容器2とを接続し、送液配管22、23、24はそれぞれ、原料用容器12、13、14と原料調合容器1とを接続し、送液配管25は、原料用容器11と原料調合容器1とを接続し、送液配管26は、原料調合容器1と重合容器2とを接続している。
送液配管27、28はそれぞれ、原料用容器15、16と再沈殿容器3とを接続し、送液配管29は、重合容器2と再沈殿容器3とを接続し、送液配管30は、再沈殿容器3と濾過容器4とを接続している。
送液配管31は、原料用容器17と再溶解容器5とを接続している。
送液配管32は、再溶解容器5内の重合体溶液を取り出すためのものであり、上流は再溶解容器5に接続されている。下流は、重合体溶液を収容する保存容器(図示略)等に接続される。
【0057】
送液配管21〜32はそれぞれ、複数の配管部材を接続してなるものであり、配管部材接続部を有する。製造装置10内には、複数の配管部材接続部が存在しており、該複数の配管部材接続部の少なくとも一部、好ましくは全部に、接続部材(I)が配置されている。
また、送液配管21〜31は上流側末端及び下流側末端それぞれに容器接続部を有し、送液配管32は上流側末端に容器接続部を有する。製造装置10内の複数の容器接続部の少なくとも一部、より好ましくは全部に、接続部材(I)が配置されていることが好ましい。
【0058】
原料調合容器1では、原料用容器11〜14から供給された、重合容器2に供給する原料を混合する工程が行われる。
重合容器2では、単量体の重合させて重合反応溶液を得る工程が行われる。
再沈殿容器3では、重合容器2から供給された重合反応溶液から重合体を貧溶媒中に析出させる工程が行われる。また、必要に応じて、濾過容器4で回収された析出物(重合体の湿粉)を貧溶媒に分散させる工程が行われる。
濾過容器4では、再沈殿容器3から送られた、析出物を含む液状物を濾過して、析出物(重合体の湿粉)を回収する工程が行われる。
乾燥機(図示略)では、回収された析出物(重合体の湿粉)を乾燥させて、重合体の乾燥粉体を得る工程が行われる。
再溶解容器5では、重合体の湿粉または乾燥粉体を良溶媒に溶解させる工程が行われる。
【0059】
ただし、本発明の製造装置の装置構成は、上記に限定されるものではない。製造装置10における各構成及びそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。
たとえば、送液配管32の下流側に、濃縮容器を配置してもよい。
送液配管32の下流側に、混合容器と、添加剤を収容する1以上の原料用容器と、溶媒を収容する原料用容器と、各原料用容器を混合調合容器に接続する送液配管とをさらに配置してもよい。かかる構成の製造装置によれば、半導体リソグラフィー用重合体と添加剤と溶媒とを含む組成物を製造できる。
【0060】
〔作用効果〕
本発明においては、送液配管の配管部材接続部に配置される接続部材として接続部材(I)を用いることで、半導体リソグラフィー用材料の製造工程で送液配管内を移動する液状物への接続部材からの金属の溶出を充分小さくすることができる。
例えば、従来、半導体リソグラフィー用材料の製造装置において、送液配管の接続部材としては、耐熱性、耐溶剤性、コスト等の点から、EPDM製のものが汎用されている。EPDM製の接続部材を接続部材(I)に置換するだけで、最終的に得られる半導体リソグラフィー材料中の亜鉛、銅、鉄、クロム等の含有量を低減できる。
そのため、本発明の製造装置を用いることで、金属不純物濃度が低減された半導体リソグラフィー用材料を製造できる。
なお、EPDMには、触媒に由来する亜鉛等の金属が含まれるが、接続部材は厚さが薄く、液状物との接触面積が小さいため、これまで、接続部材からの金属の溶出が問題になるとは考えられていなかった。
【0061】
本発明の製造装置は、該製造装置で製造される最終製品(半導体リソグラフィー用材料)中の亜鉛の含有量が、0.3ppb以下、より好ましくは0.1ppb未満となるように、接続部材(I)が用いられていることが好ましい。
亜鉛の含有量が上記の上限値以下であると、金属不純物が充分に低減された、半導体リソグラフィー用材料が得られる。
最終製品中の亜鉛の含有量は、製造装置内の配管部材接続部に配置された接続部材の総数のうち、接続部材(I)の数が占める割合が多いほど、少なくなる傾向がある。
最終製品中の亜鉛等の金属の含有量は、高周波誘導結合プラズマ質量分析計(ICP−MS−Inductively Coupled Plasma Mass Spectrometer)により金属分析することにより求められる。
【0062】
<半導体リソグラフィー用材料の製造方法>
本発明の半導体リソグラフィー用材料の製造方法は、複数の配管部材を接続してなる送液配管にて液状物を送液する工程を含み、前記送液配管の配管部材接続部に接続部材(I)が配置されていることを特徴とする。
【0063】
送液配管については含前述の本発明の製造装置で説明したとおりである。したがって、本発明の製造方法は、前述の本発明の製造装置を用いて行うことができる。
本発明の製造方法は、前記送液配管にて液状物を送液する工程を含む方法であれば特に限定されず、半導体リソグラフィー用重合体、重合体溶液または該重合体を含む組成物の製造方法として公知の方法を用いることができる。
【0064】
例えば重合体(粉)の製造方法としては、重合容器内で単量体を重合させて重合反応溶液を得る重合工程と、再沈殿容器内で重合反応溶液から重合体を析出させ、さらに濾過容器を用いて析出物を回収する回収工程と、前記析出物(湿粉)を乾燥させる乾燥工程を行って、目的の重合体の乾燥粉体を得る方法等が挙げられる。
【0065】
重合体溶液の製造方法としては、前記のようにして得た重合体の湿粉または乾燥粉体を、再溶解容器内で良溶媒に溶解させる溶解工程を経て、目的の重合体が溶媒に溶解した重合体溶液を得る方法等が挙げられる。必要に応じて、溶解工程で得られた溶液を濃縮する濃縮工程を行ってもよい。必要に応じて、前記溶解工程で得られた溶液または前記濃縮工程で得られた濃縮液を濾過する濾過工程を行ってもよい。
【0066】
組成物の製造方法としては、前記のようにして得た重合体の乾燥粉体と、添加剤と、溶媒とを混合する方法、前記のようにして得た重合体溶液と、添加剤と、必要に応じて追加の溶媒とを混合する方法等が挙げられる。
【0067】
[重合工程]
重合方法としては、溶液重合法、乳化重合法、懸濁重合法、塊状重合法等の公知の重合法が挙げられ、溶液重合法が好ましい。
溶液重合法では、重合溶媒の存在下に重合開始剤を使用して単量体をラジカル重合させて重合反応溶液を得る。
単量体、液状の重合開始剤、および重合溶媒は、それぞれが単独で容器(原料用容器)に収容されたものを用いる。粉状の重合開始剤は、原料調合容器内で溶液状にして用いる。具体的には、粉状の重合開始剤を単量体に直接に溶解させてもよく、単量体および重合溶媒に溶解させてもよく、重合溶媒のみに溶解させてもよい。
溶液重合法において、単量体及び重合開始剤の重合容器への供給は、連続供給であってもよく、滴下供給であってもよい。溶液重合法としては、製造ロットの違いによる平均分子量、分子量分布等のばらつきが小さく、再現性のある重合体が簡便に得られる点から、単量体及び重合開始剤を重合容器内に滴下する滴下重合法が好ましい。
【0068】
滴下重合法においては、重合容器内を所定の重合温度まで加熱した後、単量体及び重合開始剤を、それぞれ独立に、または任意の組み合わせで、重合容器内に滴下する。
単量体は、単量体のみで滴下してもよく、原料調合容器内で単量体を重合溶媒に溶解させた単量体溶液として滴下してもよい。
重合溶媒及び/又は単量体をあらかじめ重合容器に仕込んでもよい。
単量体及び重合開始剤は、それぞれを独立して収容する原料用容器から原料調合容器に供給し、該原料調合容器内で混合した後、重合容器中に滴下してもよく;それぞれ独立した原料用容器から重合容器中に滴下してもよく;それぞれ独立した原料用容器から重合容器に供給する配管内で混合し、重合容器中に滴下してもよい。
単量体及び重合開始剤は、一方を先に滴下した後、遅れて他方を滴下してもよく、両方を同じタイミングで滴下してもよい。
滴下速度は、滴下終了まで一定であってもよく、単量体または重合開始剤の消費速度に応じて、多段階に変化させてもよい。
滴下は、連続的に行ってもよく、間欠的に行ってもよい。
重合温度は、50〜150℃が好ましい。
所定の重合温度で所定時間、重合反応させた後、重合反応を停止させ、重合反応溶液を得る。重合反応を停止させる手法は反応液を冷却させる工程が一般的に用いられるが、ラジカル捕捉剤を添加することによって停止させることもできる。ラジカル捕捉剤を添加する場合、ラジカル捕捉剤を独立して収容する原料用容器から重合容器へ供給する。
【0069】
重合溶媒としては、例えば、上記に重合体溶液の溶媒として挙げた溶媒を用いることができる。
重合開始剤としては、熱により効率的にラジカルを発生するものが好ましい。例えば、アゾ化合物(2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]等。)、有機過酸化物(2,5−ジメチル−2,5−ビス(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジ(4−tert−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート等。)等が挙げられる。
【0070】
[回収工程]
回収工程では、重合工程で得られた重合反応溶液を貧溶媒と混合して、重合体を析出させ、析出物を得る。この手法は再沈殿法と呼ばれ、重合反応溶液中に残存する未反応の単量体、重合開始剤等を取り除くために有効である。未反応単量体は、そのまま残存しているとレジスト組成物として用いた場合に感度が低下するため、できるだけ取り除くことが好ましい。本発明の製造方法で得られる重合体中の不純物としての単量体含有量は2.0質量%以下がより好ましく、1.0質量%以下がさらに好ましく、0.29質量%以下が特に好ましく、0.25質量%以下が最も好ましい。
貧溶媒は、目的の重合体を溶解させる能力が小さくて、該重合体が析出し得る溶媒である。重合体の組成に応じて、公知のものを適宜選択して使用できる。リソグラフィー用重合体に用いられる未反応の単量体、重合開始剤等を効率的に取り除くことができる点で、メタノール、イソプロピルアルコール、ジイソプロピルエーテル、ヘプタン、または水が好ましい。貧溶媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0071】
回収工程において、貧溶媒を単独で収容する原料用容器から、再沈殿容器へ貧溶媒を供給し、該貧溶媒中に重合反応溶液を滴下して、重合反応溶液中の重合体を析出させる。
重合反応溶液を貧溶媒中に滴下する際の貧溶媒の量は、特に限定されないが、未反応単量体をより低減しやすい点で、希釈後溶液と同質量以上が好ましく、質量基準で3倍以上が好ましく、4倍以上がより好ましく、5倍以上がさらに好ましく、6倍以上が特に好ましい。上限は特に限定されないが、多すぎると後の濾過工程における作業効率が悪くなる。例えば質量基準で10倍以下が好ましい。
【0072】
重合反応溶液を貧溶媒と混合する前に、必要に応じて重合反応溶液を希釈溶媒で適当な溶液粘度に希釈してもよい。具体的には、希釈溶媒を単独で収容する原料用容器から、重合反応を終えた重合容器へ希釈溶媒を供給し、重合容器内の重合反応溶液と混合して希釈する。
希釈溶媒としては、1,4−ジオキサン、アセトン、THF、MEK、MIBK、γ−ブチロラクトン、PGMEA、PGME、乳酸エチル等が挙げられる。これらは1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0073】
回収工程において、貧溶媒中で析出した析出物を、濾過容器を用いて濾別することにより、目的の重合体が湿粉の状態で得られる。
または、濾別した湿粉を再び再沈殿容器内で貧溶媒に分散させた後に、濾過容器を用いて濾別する操作を繰り返して、目的の重合体の析出物を得ることもできる。この工程は、リスラリと呼ばれ、湿粉中に残存する未反応の単量体、重合開始剤等の不純物をより低減させるために有効である。
重合体を高い生産性を維持したまま取得できる点では、リスラリを行わず、再沈殿法のみで重合体の析出物を回収することが好ましい。
【0074】
[乾燥工程]
回収工程で得られた析出物(湿粉)を乾燥させることにより、目的の重合体の乾燥粉体が得られる。
「乾燥粉体」とは、含液率が5質量%以下である粉体を意味する。乾燥工程で得られる乾燥粉体の含液率は、リソグラフィー性能の観点から、3%質量%以下が好ましく、1質量%以下が特に好ましい。
該含液率は、測定対象の重合体粉体中に含まれる残存単量体、残存水分、残存溶媒のそれぞれについて含有量を測定し、それらの合計が重合体粉体に占める割合を算出して得られる値である。
上記成分(残存単量体、残存水分、残存溶媒)は、それぞれ液体クロマトグラフィー、ガスクロマトグラフィーおよびカールフィッシャー水分計のうち少なくとも1つ以上、必要に応じて2つ以上の方法を組み合わせて、当該成分の含有量を測定し、それらの合計が重合体粉体に占める割合を算出することができる。
【0075】
乾燥方法は、湿粉を、所望の含液率になるように乾燥できればよく、公知の乾燥方法を用いることができる。より短い時間で乾燥できる点で、乾燥雰囲気下で減圧する減圧乾燥法、乾燥雰囲気下で加熱する加熱乾燥法、または乾燥雰囲気下で減圧及び加熱を行う減圧加熱乾燥法が好ましい。
【0076】
[溶解工程]
回収工程で得られた析出物(湿粉)、または乾燥工程で得られた乾燥粉体を、良溶媒に溶解させる。これにより目的の重合体が良溶媒に溶解された重合体溶液が得られる。
具体的には、良溶媒を単独で収容する原料用容器から、再溶解容器へ良溶媒を供給し、該再溶解容器内で湿粉または乾燥粉体状の重合体を該良溶媒に溶解させて重合体溶液を得る。
良溶媒は、目的の重合体を溶解させることができる公知の溶媒を用いることができ、上記に重合体溶液の溶媒として挙げた溶媒を用いることができる。
目的の重合体をレジスト組成物の製造に用いる場合、該レジスト組成物におけるレジスト溶媒と同じ溶媒を、溶解工程における良溶媒として使用することが好ましい。
【0077】
[濃縮工程]
前記溶解工程で得られた溶液を、濃縮容器を用いて濃縮し、目的の重合体が良溶媒に溶解された濃縮液としてもよい。濃縮を行うことで、残留する低沸点化合物を除去することができる。
濃縮方法としては、公知の濃縮方法を用いることができる。短い時間で濃縮できる点で減圧濃縮することが好ましい。減圧濃縮を行う場合の減圧度は、50kPa以下が好ましく、40kPa以下がより好ましく、30kPa以下がさらに好ましい。該減圧度の下限値は特に限定されないが、現実的には0.05kPa以上である。
また、減圧濃縮中に加熱することも短い時間で濃縮できる点で好ましい。加熱温度としては20℃以上が好ましく、30℃以上がより好ましく、40℃以上がさらに好ましい。また、重合体の熱劣化を防ぐ点で、加熱温度は100℃以下が好ましく、90℃以下がより好ましく、80℃以下がさらに好ましい。
濃縮中の突沸を防ぐ点で、攪拌しながら濃縮することが好ましい。
圧力制御ができ、熱伝導性に優れ反応温度制御が容易になる点で、濃縮容器として耐圧製金属容器内で濃縮することが好ましい。金属としては耐食性が高く重合体への金属不純物の混入が低減できる点で、ステンレス鋼(以下SUSとも言う)が好ましい。
【0078】
[濾過工程]
前記溶解工程で得られた溶液、または前記濃縮工程で得られた濃縮液を、必要に応じて濾過してもよい。濾過は、公知の濾過容器を用いて行うことができる。これにより重合体のゲル物や異物が低減された重合体溶液を得ることができる。
濾過フィルター前後の圧力損失を低く抑えたまま、短時間で濾過できる点では、濃縮工程の前に、記溶解工程で得られた溶液を濾過することが好ましい。
最終製品に混入する恐れのある重合体のゲル物や異物を効率的に低減できる点では、濃縮工程の後に、得られた濃縮液を濾過することが好ましい。
前記溶解工程で得られた溶液と前記濃縮液の両方を濾過してもよい。すなわち溶解工程で得られた溶液を濾過した後、得られた濾液を前記濃縮工程に供して濃縮し、得られた濃縮液を、さらに濾過してもよい。
【0079】
〔作用効果〕
本発明においては、送液配管の配管部材接続部に配置される接続部材として接続部材(I)を用いることで、前述のとおり、半導体リソグラフィー用材料の製造工程で送液配管内を移動する液状物への接続部材からの金属の溶出を充分小さくすることができる。
そのため、本発明の製造方法によれば、金属不純物濃度が低減された半導体リソグラフィー用材料を製造できる。
【実施例】
【0080】
以下に実施例を用いて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
なお、以下において、配合量の「部」は「質量部」を意味する。
【0081】
<実施例1>
本例では、図1に示す製造装置10を用いてレジスト用重合体を製造し、これを用いて重合体溶液を製造した。
製造装置10を構成する各容器(図中符号1〜5および11〜17)および送液配管(図中符号21〜32)は以下の通りである。
【0082】
原料調合容器1:ステンレス鋼製。内壁面は電解研磨処理され、内壁面の算術平均粗さRaは0.11μm。
重合容器(重合釜)2:窒素導入口、攪拌機、コンデンサー、温度調整のできるジャケット、及び温度計を備える。ステンレス鋼製。内壁面は電解研磨処理され、算術平均粗さRaは0.12μm。
再沈殿容器3:攪拌機、コンデンサー、温度調整のできるジャケット、及び温度計を備える。ステンレス鋼製。内壁面は電解研磨処理され、内壁面の算術平均粗さRaは0.08μm。
濾過容器4:重合体湿粉を得る工程で使用する濾過容器。ステンレス鋼製。内壁面は電解研磨処理され、内壁面の算術平均粗さRaは0.11μm。
再溶解容器5:ステンレス鋼製。内壁面は電解研磨処理され、内壁面の算術平均粗さRaは0.13μm。
重合溶媒を収容する原料用容器11:ステンレス鋼製。内壁面は電解研磨処理され、内壁面の算術平均粗さRaは0.10μm。
3種の単量体をそれぞれ収容する原料用容器12、13、14:ステンレス鋼製。内壁面は電解研磨処理され、内壁面の算術平均粗さRaは0.12μm。
貧溶媒を収容する原料用容器15:ステンレス鋼製。内壁面は電解研磨処理され、内壁面の算術平均粗さRaは0.09μm。
良溶媒を収容する原料用容器16:ステンレス鋼製。内壁面は電解研磨処理され、内壁面の算術平均粗さRaは0.12μm。
重合体溶液の溶媒を単独で収容する原料用容器17:ステンレス鋼製。内壁面は電解研磨処理され、内壁面の算術平均粗さRaは0.11μm。
【0083】
送液配管21〜32:それぞれ、下記配管部材を複数接続し、配管部材接続部の全てに下記接続部材(I−1)を配置したもの。配管21〜32全体での配管部材接続部の総数は700個である。
配管:ステンレス鋼製。内壁面は電解研磨処理され、内壁面の算術平均粗さRaは0.10μm。
接続部材(I−1):EPDM製の基材をPFAで被覆したOリング(Northern Engineering Supplies Ltd.社製サンプライリング)。
送液配管21〜32それぞれの容器接続部にも接続部材(I−1)を配置した。
【0084】
窒素雰囲気下で、原料用容器11から配管21を介して重合容器2へ、重合溶媒として乳酸エチルを146.2部供給し、重合容器2の内温を80℃に上げた。
別途、原料用容器12〜14からそれぞれ配管22〜24を介して原料調合容器1へ、下記の単量体m−1、m−2、m−3を下記に示す量で供給した。また原料用容器11から配管25を介して原料調合容器1へ、重合溶媒として乳酸エチルを下記に示す量で供給した。さらに原料調合容器1へ下記の重合開始剤(粉末状)を下記に示す量で供給し、原料調合容器1内で、単量体m−1、m−2、m−3、重合溶媒、及び重合開始剤を混合して滴下溶液とした。
単量体m−1:α−(メタ)アクリロイルオキシ−γ−ブチロラクトン:57.1部。
単量体m−2:2−メチル−2−アダマンチルメタクリレート:78.6部。
単量体m−3:3−ヒドロキシアダマンチルメタクリレート:39.7部。
(m−1/m−2/m−3=40/40/20(モル比))。
乳酸エチル:263.1部。
重合開始剤:ジメチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)(和光純薬社製V−601):21.3部。
【0085】
次いで、原料調合容器1内の滴下溶液を、配管26を介して、重合容器2内へ、一定の滴下速度で4時間かけて滴下し、さらに重合容器2の内温を80℃に3時間保持して重合反応させた。
滴下溶液の滴下開始から7時間後に、重合容器2の内温を室温まで冷却して反応を停止させ、重合反応溶液を得た。
【0086】
次いで、原料用容器15内のメタノール、原料用容器16内の水をそれぞれ、配管27、28を介して再沈殿容器3へ、容積比がメタノール/水=80/20となるよう、計3504部供給し、該再沈殿容器3内を攪拌しながら内温を40℃に調整した。ここへ重合容器2から前記重合反応溶液を、配管29を介して、一定の滴下速度で1時間かけて滴下し、再沈殿させた。
重合反応溶液の滴下終了後、再沈殿容器3内の再沈殿溶液を、配管30を介して濾過容器4に供給し、濾過し、濾別した再沈殿湿粉を得た。
得られた再沈殿湿粉を再沈殿容器3にもどし、原料用容器15内のメタノール、原料用容器16内の水をそれぞれ、配管27、28を介して再沈殿容器3へ、容積比がメタノール/水=90/10(容積比)となるよう、計3418部供給し、内温を40℃に調整して、1時間攪拌した。
1時間攪拌後、再沈殿容器3内のリスラリ溶液を、配管30を介して濾過容器4に供給し、濾過し、濾別したリスラリ湿粉(重合体の湿粉)を得て、乾燥した。
得られた重合体乾粉を再溶解容器5に供給した。原料用容器17から配管31を介して該再溶解容器5へ、重合体溶液の溶媒としてPGMEAを、重合体の固形分濃度が15質量%となるように供給した。再溶解容器5中で、重合体をPGMEAに溶解し、固形分濃度15質量%の重合体溶液を得た。
得られた重合体溶液中の重合体の質量平均分子量(Mw)をゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)により測定したところ、5000であった。
【0087】
得られた重合体溶液を、ICP−MS(Agilent Technologies製7500cs)により金属分析し、重合体溶液中のNa、K、Mg、Al、Ca、Cr、Mn、Fe、Ni、Cu、Zn、Pb、Sn、Liの各金属の含有量(ppb)を求めた。結果を表1に示す。なお、ppbは、質量/質量での値(質量ppb)である。
【0088】
<実施例2>
接続部材(I−1)の代わりに下記の接続部材(I−2)を用いた以外は実施例1と同様にして重合体溶液を製造した。
接続部材(I−2):FFKM製のOリング(森清化工社製MP4275B)。
得られた重合体溶液の金属含有量を表1に示す。
【0089】
<比較例1>
接続部材(I−1)の代わりに下記の接続部材(II)を用いた以外は実施例1と同様にして重合体溶液を製造した。
接続部材(II):EPDM製のOリング(森清化工社製EPDM−70)。
得られた重合体溶液の金属含有量を表1に示す。
【0090】
【表1】
【0091】
上記結果に示すとおり、実施例1〜2で得た重合体溶液は、比較例1で得た重合体溶液に比べて、Cr、Fe、Cu、Znの含有量が少なかった。
よって本発明が、半導体リソグラフィー用材料における金属不純物の低レベル化に寄与することが確認された。
【符号の説明】
【0092】
1 原料調合容器
2 重合容器(重合釜)
3 再沈殿容器
4 濾過容器
5 再溶解容器
10 製造装置
11 重合溶媒を収容する原料用容器
12〜14 単量体を収容する原料用容器
15 貧溶媒を収容する原料用容器
16 良溶媒を収容する原料用容器
17 重合体溶液の溶媒を収容する原料用容器
21〜32 送液配管
図1