(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を図面を用いて説明する。ただし、以下に説明する各図において相互に対応する部分には同一符号を付し、重複部分においては後述での説明を適宜省略する。また、本発明の実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための構成を例示するものであって、各部の材質、形状、構造、配置、寸法等を下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0013】
<第1実施形態>
〔構成〕
(1)ホール素子
図1は、本発明の第1実施形態に係るホール素子100の構成例を示す平面図である。また、
図2(a)及び(b)は、
図1に示すホール素子100をA1−A’1線及びB1−B’1線で切断した断面図である。
図1〜
図2(b)に示すように、ホール素子100は、基板10と、基板10の一方の面(例えば、上面)10a側に形成された感磁部20と、基板10の一方の面側に形成されて感磁部20に電気的に接続する第1〜第4の電極31〜34と、を備える。第1の電極31及び第2の電極32がホール素子100の入力電極であり、第3の電極33及び第4の電極34がホール素子100の出力電極である。
【0014】
(1.1)基板
基板10は、例えば化合物半導体基板であり、その一例としてGaAs基板がある。GaAs基板の抵抗率は1.0×10
7Ω・cm以上である。GaAs基板10の抵抗率の上限は特に制限はないが、一例を挙げると、1.0×10
9Ω・cm以下である。また、基板10の平面視による形状(以下、平面形状)は矩形状である。矩形状として、例えば、四角形状、長方形状、角丸四角形状、角丸長方形状が挙げられる。なお、平面視とは、上面視のことである。
本実施形態において、基板の面積は、平面視で略矩形状として面積を算出する。例えば、基板の側面はダイシングによりカットされた断面を有し、上面視で基板を略矩形状に近似した面積とする。
【0015】
(1.2)感磁部
感磁部20は、基板10の上面10a上に形成され、その断面視による形状(以下、断面形状)はメサ形状である。または、感磁部20は、基板10内部に形成されてもよい。また、本発明の第1実施形態において、感磁部20の平面形状は矩形状である。なお、本発明の各実施形態において、感磁部20の形成位置は基板10の上面10a上に限定されない。感磁部(活性層)20はその一部又は全部が、基板10の上面10a側の内部に形成されていてもよい。なお、感磁部20は、温度特性の観点からGaAsにより形成されることが好ましい。ただし、本実施形態は、GaAsを材料にして感磁部20を形成する構成に限定されるものではなく、例えばInSbやInAs等の化合物半導体も用いることができる。
【0016】
感磁部20は、基板10よりも低抵抗の層である。感磁部20は、例えば、基板10にSi、Sn、S、Se、Te、Ge又はCなどの不純物を打ち込み、加熱による活性化を行う方法や、上記の不純物を含む化合物半導体をMOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition、有機金属気相成長)法やMBE(分子線エピタキシー)法などで、基板10上にエピタキシャル成長法で成長させることにより、形成される。
一例を挙げると、感磁部20は、導電層21と、導電層21上に形成された表面層22とを有する。導電層21は、基板10上に形成されたn型GaAsからなるものである。導電層21の膜厚は特に制限されないが、製造容易性の観点から50nm以上2000nm以下が好ましく、100nm以上1000nm以下がより好ましい。
【0017】
n型GaAsのn型不純物(すなわち、ドナー型不純物)としては公知のものを用いることが可能であり、例えばSi、Ge、Se等を用いることが可能である。n型不純物の濃度(有効キャリア濃度)は特に制限されないが、ホール素子の出力および温度特性の観点から、有効キャリア濃度が、1.0×10
15[cm
−3]以上1.0×10
17[cm
−3]以下であることが好ましく、1.0×10
15[cm
−3]以上1.0×10
16[cm
−3]以下であることがより好ましく、1.0×10
15[cm
−3]以上5.0×10
15[cm
−3]以下であることがさらに好ましい。有効キャリア濃度が上記範囲内であれば、出力の温度依存性を抑制し、かつ、出力の絶対値を得ることが容易になるため好ましい。
【0018】
また、導電層21を形成する方法としては、基板10に不純物をイオン注入して、基板10の表面近傍又は内部にn型GaAs層を形成する方法が挙げられる。また、導電層21を形成する別の方法としては、基板10上にMBE(分子線エピタキシー)法若しくはMOCVD(有機金属気相成長)法により、不純物イオンをドープしながらGaAs薄膜をエピタキシャル成長させる方法が挙げられる。
表面層22は、導電層21上に形成され、導電層21よりも導電性の低いGaAs層や、AlGaAs又はAlAs等のなど高抵抗な結晶からなる層である。表面層22の膜厚は、シート抵抗のばらつきが抑制されたホール素子を実現するためには、150nm以上であり、好ましくは200nm以上であり、加えて製造容易性の観点から、好ましくは800nm以下であり、より好ましくは600nmである。なお、表面層はなくてもよい。
【0019】
表面層22を形成する方法は特に制限されず、例えばイオン注入法、又は、MBE法若しくはMOCVD法を用いたエピタキシャル成長により形成することができる。表面層22のように、導電層21よりも導電性の低いGaAsを得る方法としては、導電層21よりも低い不純物濃度とする方法や、不純物を意図的にドープしない方法などが挙げられる。また、導電層21と第1〜第4の電極31〜34とを直接オーミック接続するために、表面層22の一部がエッチングされて、薄膜化又は除去されていてもよい。
平面視で、矩形状の感磁部20の中心位置は、矩形状の基板10の中心位置とほぼ一致している。また、平面視で、感磁部20の外周の第1〜第4の辺26〜29は、基板10の外周の第1〜第4の辺11〜14のうちの2辺とそれぞれ平行となっている。すなわち、平面視で、感磁部20の外周の第1〜第4の辺26〜29は、基板10の外周の第1〜第4の辺11〜14と平行又は垂直となっている。
【0020】
(1.3)電極
第1の電極31及び第2の電極32は、第1の方向で互いに向かい合っている。また、第3の電極33及び第4の電極34は、第1の方向と平面視で交差する(例えば、直交する)第2の方向で互いに向かい合っている。
第1の方向における第1の電極31と第2の電極32との離間距離をD1とし、第2の方向における第3の電極33と第4の電極34との離間距離をD2としたとき、D1、D2はそれぞれ、1μm以上40μm以下である。
【0021】
第1〜第4の電極31〜34の形状と配置について、より具体的に例を挙げて説明する。
第1の電極31、第2の電極32、第3の電極33及び第4の電極34の平面形状はそれぞれ矩形状である。
図1に示すように、第1の電極31、第2の電極32、第3の電極33及び第4の電極34は、基板10の矩形の四隅にそれぞれ配置されている。そして、第1の電極31、第2の電極32、第3の電極33及び第4の電極34の各々の外周の各辺は、基板10の外周の4辺のうちの2辺とそれぞれ平行となっている。すなわち、平面視で、第1〜第4の電極34の外周の各辺は、基板10の外周の第1〜第4の辺11〜14と平行又は垂直となっている。
【0022】
なお、
図2に示すように、第1〜第4の電極31〜34はそれぞれ、感磁部20に電気的に接続する第1の金属膜131と、この第1の金属膜131上に形成された第2の金属膜132とを有する。つまり、第1の金属膜131が、感磁部20に対するコンタクト領域となっている。なお、第1の金属膜131はなくてもよく、第1〜第4の電極31〜34が、絶縁膜40の開口部(コンタクト孔)から直接、感磁部に接続する構成でもよい。
また、感磁部20と第2の金属膜132との間には絶縁膜40が形成されている。絶縁膜40は、例えばシリコン窒化膜(Si
3N
4膜)、シリコン酸化膜(SiO
2膜)、無機膜(Al
2O
3)、ポリイミド膜であり、これらの膜を複数積層した多層膜である。
【0023】
なお、絶縁膜40は、
図2のように第1の金属膜131上にも形成されても、第1の金属膜131上には形成されなくともよく、第1の金属膜131の下に一部入り込んで形成されてもよい。
絶縁膜40が第1の金属膜131上に形成された構造の場合(例えば、
図2に示す構造の場合)、絶縁膜40にはコンタクト孔151(
図1参照)が形成されている。このコンタクト孔151を介して、第1の金属膜131と第2の金属膜132とが電気的に接続している。
【0024】
また、絶縁膜40が第1の金属膜131の下に一部入り込む構造の場合、平面視で、第1の金属膜131の内、絶縁膜40を除いた領域が接触領域となる。つまり、感磁部において、絶縁膜40の開口部の領域が接触領域となる。接触領域は、感磁部において、電極と電気的に接続される領域であり、例えば、感磁部上において、第1の金属膜が占める領域か、絶縁膜40の開口部の領域が、接触領域となる。
本実施形態のホール素子において、平面視で、複数の電極の隣接する電極の間の最小距離は、4μm以上11μm以下であることが好ましい。この最小距離は、より好ましくは4μm以上10μm未満であり、さらに好ましくは5μm以上9μm以下である。
隣接する電極の間の最小距離とは、すべての電極間距離で最小のものとする。
【0025】
(1.4)ワイヤーボンディング領域
図1に示すように、第1の電極31は、その上面の側に金属細線が接合される第1のワイヤーボンディング領域141を有する。第1の電極31を構成する第1の金属膜131が、第1の電極31が感磁部20と接触するコンタクト領域となる。
また、第2の電極32は、その上面の側に金属細線が接合される第2のワイヤーボンディング領域142を有する。第2の電極32を構成する第1の金属膜131が、第2の電極32が感磁部20と接触するコンタクト領域となる。
また、第3の電極33は、その上面の側に金属細線が接合される第3のワイヤーボンディング領域143を有する。第3の電極33を構成する第1の金属膜131が、第3の電極33が感磁部20と接触するコンタクト領域となる。
【0026】
また、第4の電極34は、その上面の側に金属細線が接合される第4のワイヤーボンディング領域144を有する。第4の電極34を構成する第1の金属膜131が、第4の電極34が感磁部20と接触するコンタクト領域となる。
つまり、感磁部20の中心位置から見て、第1〜第4のワイヤーボンディング領域141〜144の各中心位置よりも外側に、第1〜第4の電極31〜34の各コンタクト領域がそれぞれ位置する。
上述したように、第1の電極31及び第2の電極32はホール素子100の入力電極であるため、第1の電極31のコンタクト領域と第2の電極32のコンタクト領域との間がホール素子100における信号入力経路146となる。また、第3の電極33及び第4の電極34はホール素子100の出力電極であるため、第3の電極33のコンタクト領域と第4の電極34のコンタクト領域との間がホール素子100における信号出力経路145となる。
【0027】
(2)ホールセンサ
図3(a)〜(d)は、本発明の第1実施形態に係るホールセンサ600の構成例を示す断面図と平面図と底面図、及び外観図である。
図3(a)は、
図3(b)を破線E3−E’3線で切断した断面を示している。また、
図3(b)では、図面の複雑化を回避するために、モールド部材を省略して示している。
図3(a)〜(d)に示すように、ホールセンサ600は、ホール素子100と、リード端子520と、第1〜第4の金属細線(導電性接続部材)531〜534と、保護層540と、モールド部材550と、外装めっき層560とを備える。また、リード端子520は、第1〜第4の端子部521〜524を有する。
ホールセンサ600は、例えばアイランドレス構造であり、外部との電気的接続を得るための複数の端子部521〜524を有する。
図3(b)に示すように、第1〜第4の端子部521〜524は、ホール素子100の周囲に配置されている。
【0028】
例えば、第1の端子部521と第2の端子部522とがホール素子100を挟んで対向するように配置されており、また、第3の端子部523と第4の端子部524とがホール素子100を挟んで対向するように配置されている。そして、第1の端子部521と第2の端子部522とを結ぶ直線(仮想線)と、第3の端子部523と第4の端子部524とを結ぶ直線(仮想線)とが平面視で交差している。リード端子520(第1〜第4の端子部521〜524)は、例えば銅(Cu)等の金属からなる。
第1〜第4の金属細線531〜534は、ホール素子100が有する第1〜第4の電極31〜34と、第1〜第4の端子部521〜524とをそれぞれ電気的に接続する導線であり、例えば金(Au)からなる。
図3(b)に示すように、第1の金属細線531は、第1の端子部521と第1の電極31とを接続している。第2の金属細線532は、第2の端子部522と第2の電極32とを接続している。第3の金属細線533は、第3の端子部523と第3の電極33とを接続している。第4の金属細線534は、第4の端子部524と第4の電極34とを接続している。
【0029】
保護層540は、基板10の第1〜第4の電極31〜34が設けられている面とは反対側の面側を覆っている。保護層540は、基板10を保護可能なものであれば特に限定はなく、導体、絶縁体、又は半導体のうち、少なくとも何れか1つを含んでいてもよい。即ち、保護層540は、導体、絶縁体、又は半導体の何れか1つからなる膜であってもよいし、これらのうち2つ以上を含む膜であってもよい。導体としては、例えば、銀ペーストなどの導電性樹脂などが考えられる。絶縁体としては、例えば、エポキシ系の熱硬化型樹脂と、フィラーとしてシリカ(SiO
2)とを含む絶縁ペースト、窒化ケイ素、二酸化ケイ素などが考えられる。半導体としては、例えば、Si基板やGe基板などの貼り合わせが考えられる。但し、リーク電流防止の観点から、保護層540は、絶縁体であることが好ましい。また、保護層540は積層構造でもよい。
モールド部材550は、ホール素子100と、第1〜第4の端子部521〜524と、第1〜第4の金属細線531〜534とをモールドしている。言いかえると、モールド部材550は、ホール素子100と、第1〜第4の端子部521〜524の少なくとも表面側(即ち、金属細線と接続する側の面)と、第1〜第4の金属細線531〜534とを覆って保護(即ち、樹脂封止)している。モールド部材550は、例えばエポキシ系の熱硬化型樹脂からなり、リフロー時の高熱に耐えられるようになっている。
【0030】
図3(a)及び(c)に示すように、ホールセンサ600の底面側(即ち、配線基板感磁部20に実装する側)では、第1〜第4の端子部521〜524の第1面(例えば、裏面)の少なくとも一部と、GaAs基板10の第1面(例えば、裏面)の少なくとも一部とが、モールド部材550の同一の面(例えば、裏面)からそれぞれ露出している。ここで、第1〜第4の端子部521〜524の第1面は、第1〜第4の端子部521〜524がそれぞれ有する複数の面のうち、第1〜第4の金属細線531〜534と接続している面とは反対側の面である。GaAs基板10の第1面は、GaAs基板10が有する複数の面のうち、第1〜第4の電極31〜34が設けられている面とは反対側の面である。
また、外装めっき層560は、モールド部材550から露出している端子部521〜524の裏面に形成されている。外装めっき層560は、例えばスズ(Sn)等からなる。
【0031】
〔動作〕
上記のホールセンサ600を用いて磁気(磁界)を検出する場合は、例えば、第1の端子部521を電源電位(+)に接続すると共に、第2の端子部522を接地電位(GND)に接続して、第1の端子部521から第2の端子部522に電流を流す。そして、第3の端子部523と第4の端子部524間の電位差V1−V2(=ホール出力電圧VH)を測定する。ホール出力電圧VHの大きさから磁界の大きさを検出し、ホール出力電圧VHの正負から磁界の向きを検出する。
即ち、第1の端子部521は、ホール素子100に所定電圧を供給する電源用端子部である。第2の端子部522は、ホール素子100に接地電位を供給する接地用端子部である。第3の端子部523及び第4の端子部524は、ホール素子100のホール起電力信号を取り出す信号取出用端子部である。
【0032】
〔製造方法〕
(1)ホール素子の製造方法
図4(a)〜(e)は、ホール素子100の製造方法を工程順に示す断面図である。
図4(a)に示すように、まず基板10を用意する。基板10は、例えばGaAs基板10である。次に、基板10の表面から予め設定した深さの位置にドナー型の不純物をイオン注入する。ドナー型の不純物としては、例えばSi、Sn、S、Se、Te、Ge又はCなどが挙げられる。次に、基板10を加熱して不純物を活性化する。これにより、
図4(b)に示すように、基板10内に、基板10よりも低抵抗の導電層21を形成すると共に、この導電層21の上に表面層22を形成する。表面層22は導電層21よりも不純物濃度が小さいため、導電層21よりも高抵抗な層(すなわち、導電性の低い層)となる。
【0033】
なお、この不純物を活性化する工程は、
図4(c)に示す基板10のパターニン工程以降に行ってもよい。また、
図4(c)に示す工程以降の他の加熱工程と兼用でおこなってもよい。また、導電層21の形成はイオン注入に限定されない。例えば、MOCVD法により、基板10上に不純物を高濃度に含むGaAsをエピタキシャル成長することにより導電層21を形成してもよい。この場合は、導電層21の形成に続いて、不純物を低濃度に含む(または、不純物を含まない)GaAsをエピタキシャル成長させることにより、導電層21上に、導電層21よりも高抵抗の表面層22を形成することができる。
【0034】
次に、フォトリソグラフィ技術及びエッチング技術を用いて、基板10をパターニングして、
図4(c)に示すように、断面視による形状がメサ形状である感磁部20を形成する。
次に、
図4(d)に示すように、感磁部20が形成された基板10上に第1の金属膜131を部分的に形成する。ここでは、第1の金属膜131として、例えばAuGe膜、Ni膜、Au膜をこの順に積層する。第1の金属膜131の形成は、例えばリフトオフ、またはマスク蒸着で形成する。リフトオフは、レジストパターンが形成された基板上に金属膜を蒸着し、その後レジストパターンを取り去ることにより、基板のレジストパターンで覆われていなかった領域上にのみ金属膜を残す方法である。マスク蒸着は、貫通穴が部分的に形成された板を通して基板上に金属膜を蒸着することにより、基板の貫通穴直下の領域上にのみ金属膜を蒸着する方法である。第1の金属膜131を形成した後は、基板10を加熱して、基板10と第1の金属膜131との界面を合金化する。
【0035】
次に、
図4(e)に示すように、基板10の第1の金属膜131下から露出している部分に絶縁膜40を形成する。絶縁膜40は、例えばシリコン窒化膜である。絶縁膜40の形成は、例えばCVD(Chemical Vapor Deposition)法で基板10の上面全体に絶縁膜を形成し、その後、フォトリソグラフィ技術及びエッチング技術を用いて、この上面全体に形成された絶縁膜をパターニングすることにより形成する。なお、基板10の上面全体に絶縁膜を形成し、パターニングして絶縁膜40を形成した後に、第1の金属膜131を形成してもよい。
【0036】
次に、
図4(e)に示すように、絶縁膜40が形成された基板10上に第2の金属膜132を部分的に形成する。ここでは、第2の金属膜132として、例えばTi膜、Au膜をこの順に積層する。また、第2の金属膜132を、例えばリフトオフ、またはマスク蒸着で形成する。
その後、基板10上に保護膜(図示せず)等を形成する。そして、基板10をダイシングして、基板10を複数のホール素子100の各々ごとに個片化する。以上の工程を経て、
図1等に示したホール素子100が完成する。
【0037】
(2)ホールセンサの製造方法
図5(a)〜(e)及び
図6(a)〜(d)は、ホールセンサ600の製造方法を示す工程順に示す平面図と断面図である。なお、
図5(a)〜(e)において、ダイシングのブレード幅(即ち、カーフ幅)の図示は省略している。
図5(a)に示すように、まず、リードフレーム620を用意する。このリードフレーム620は、
図3(b)に示したリード端子520が平面視で縦方向及び横方向に複数繋がっている基板である。
【0038】
次に、
図5(b)に示すように、リードフレーム620の裏面側に、例えば、基材として耐熱性フィルム580の一方の面を貼付する。この耐熱性フィルム580の一方の面には例えば絶縁性の粘着層が塗布されている。粘着層は、その成分として、例えばシリコーン樹脂がベースとなっている。この粘着層によって、耐熱性フィルム580にリードフレーム620を貼付し易くなっている。リードフレーム620の裏面側に耐熱性フィルム580を貼付することによって、リードフレーム620の貫通している貫通領域を、裏面側から耐熱性フィルム580で塞いだ状態となる。
【0039】
次に、
図5(c)に示すように、耐熱性フィルム580の粘着層を有する面のうち、第1〜第4の端子部521〜524で囲まれた領域に、保護層540を有するホール素子100を載置する(即ち、ダイボンディングを行う。)。ここでは、基板10の第1面を耐熱性フィルム580の粘着層を有する面に対向させてダイボンディングを行う。
次に、
図5(d)に示すように、第1〜第4の金属細線531〜534の一端を第1〜第4の端子部521〜524にそれぞれ接続し、第1〜第4の金属細線531〜534の他端をホール素子100の第1〜第4の電極31〜34にそれぞれ接続する(即ち、ワイヤーボンディングを行う。)。
【0040】
なお、ワイヤーボンディングは、ホール素子100の各電極からリード端子520の各端子部に向かって金属細線を延ばして行う順ボンディングでもよいし、その逆に、リード端子520の各端子部からホール素子100の各電極に金属細線を延ばして行う逆ボンディングでもよい。逆ボンディングは、順ボンディングと比べて、金属細線のボンディング後のループ高さを低くすることができるので、ホール素子の低背化に寄与することができる。
そして、
図5(e)に示すように、モールド部材550を形成する(即ち、樹脂モールドを行う。)。この樹脂モールドは、例えばトランスファーモールド技術を用いて行う。
【0041】
例えば
図6(a)に示すように、下金型591と上金型592とを備えるモールド金型590を用意し、このモールド金型590のキャビティ内にワイヤーボンディング後のリードフレーム620を配置する。次に、キャビティ内であって、耐熱性フィルム580の粘着層を有する面(即ち、リードフレーム620と接着している面)の側に加熱し溶融したモールド部材550を注入し、充填する。これにより、ホール素子100と、リードフレーム620と、金属細線531〜534とをモールドする。即ち、ホール素子100と、リードフレーム620の少なくとも表面側と、金属細線531〜534とをモールド部材550で覆って保護する。モールド部材550がさらに加熱し硬化したら、該モールド部材550をモールド金型から取り出す。
【0042】
次に、
図6(b)に示すように、モールド部材550から耐熱性フィルム580を剥離する。これにより、モールド部材550からホール素子100の基板10を露出させる。そして、
図6(c)に示すように、リードフレーム620のモールド部材550から露出している面(少なくとも、各端子部522〜25のモールド部材550から露出している裏面)に外装めっきを施して、外装めっき層560を形成する。
次に、
図6(d)に示すように、モールド部材550の上面(即ち、ホールセンサ600の外装めっき層560を有する面の反対側の面)にダイシングテープ593を貼付する。そして、例えば
図5(e)に示した仮想の2点鎖線に沿って、リードフレーム620に対してブレードを相対的に移動させて、モールド部材550及びリードフレーム620を切断する(即ち、ダイシングを行う。)。つまり、モールド部材550及びリードフレーム620を複数のホール素子100の各々ごとにダイシングして個片化する。以上の工程を経て、
図3に示したホールセンサ600が完成する。
【0043】
〔第1実施形態の効果〕
ホール素子の出力信号に含まれるノイズ成分Nは、感磁部20のコンタクト部分を除いた、実効領域の面積Aのルートの逆数に比例する(N∝1/√A)。
本発明の第1実施形態では、基板10の面積に対する、感磁部20の実効領域の面積の割合が20%以上と、高いため、基板10上の面積を有効利用して、ノイズ成分を低減することが可能となる。感磁部20の実効領域の面積の割合は、好ましくは40%以上100%以下であり、より好ましくは50%以上100%以下であり、さらに好ましくは50%以上95%以下である。
【0044】
感磁部20の実効領域の面積は、平面視で、感磁部20の面積の内、感磁部20と第1〜第4の電極31〜34とが接続される第1〜第4の接触領域の総面積を除いた面積である。例えば、断面視で、第1〜第4の電極31〜34と感磁部20とがコンタクト電極で接続する場合、平面視で、感磁部20の面積の内、コンタクト電極の総面積を除いた領域が、感磁部20の実効領域である。なお、第1の金属層131のうちの感磁部20と接触する部分が、コンタクト電極に該当する。
また、第1〜第4の電極31〜34と感磁部20とが、基板10に形成されるコンタクト層で接続する場合、平面視で、感磁部20の面積の内、コンタクト層の総面積を除いた領域が、感磁部の実効領域である。
【0045】
また、第1実施形態において、平面視で、感磁部20の実効領域の面積に対する、第1〜第4の接触領域の総面積の割合が、0.1%以上10%以下である。それにより、感磁部20の実効領域を相対的に大きくすることができるため、ノイズ成分を低減することが可能となる。加えて、感磁部20の実効領域に対して、接触領域の面積が小さいため、ホール素子の定電流感度が向上することで、S/Nも向上する。
薄型化したホールセンサにおいては、ホール素子上のモールド部材の厚みが薄いため、ホール素子の感磁部へ入射される光を含む電磁波が、感磁部の局所的な伝導率を光電効果によって変動させてしまう。また、この変動によって、ホール素子にオフセット電圧Vuが生じる。
【0046】
第1実施形態では、平面視で、実効領域の面積に対する、第1〜第4の電極の下の実効領域の面積の割合が、40%以上99%以下と、実効領域が第1〜第4の電極で覆われる。
ここで、電極部材である金属は、光を含む電磁波を極めて良く吸収する。したがって、第1〜第4の電極は、ホール素子の感磁部の実効領域へ入射される電磁波を遮蔽することができ、感磁部の実効領域における局所伝導率変動を抑制することができる。それによって、オフセット電圧Vuの変動を抑制する効果がある。実効領域の面積に対する、第1〜第4の電極の下の実効領域の面積の割合は、50%以上95%以下であることが好ましく、60%以上95%以下であることがより好ましい。
図1に示した第1実施形態の場合、平面視で、基板10の面積に対する感磁部20の実効領域の面積の割合は、73%である。また、平面視で、感磁部20の実効領域の面積に対する接触領域の総面積(第1の金属膜131の面積)の割合は、2%である。
また、感磁部20の実効領域の面積に対する、第1〜第4の電極31〜34の下の実効領域の面積の割合は、87%である。
【0047】
<第2実施形態>
図7は、本発明の第2実施形態に係るホール素子200の構成例を示す平面図である。
図7に示すホール素子200は、
図1に示したホール素子100と比べて、平面視で、基板10の面積に対する感磁部20の実行領域の面積の割合が異なる。
具体的には、
図7に示す第2実施形態の場合、平面視で、基板10の面積に対する感磁部20の実効領域の面積の割合は、66%である。また、平面視で、感磁部20の実効領域の面積に対する接触領域の総面積(第1の金属膜131の面積)の割合は、3%である。
【0048】
本発明の第2実施形態によれば、基板10の面積に対する、感磁部20の実効領域の面積の割合が20%以上と高い。このため、基板10上の面積を有効利用して、ノイズ成分を低減することが可能である。また、平面視で、感磁部20の実効領域の面積に対する、第1〜第4の接触領域の総面積の割合が0.1%以上10%以下である。このため、ノイズ成分のさらなる低減と、S/Nの向上が可能である。
また、感磁部20の実効領域の面積に対する、第1〜第4の電極31〜34の下の実効領域の面積の割合は、83%である。
【0049】
<第3実施形態>
上記の第1、第2実施形態では、感磁部20の平面形状が矩形状である場合について説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではない。
図8は、本発明の第3実施形態に係るホール素子300の構成例を示す平面図である。また、
図9(a)及び(b)は、
図8に示すホール素子300をF8−F’8線及びG8−G’8線で切断した断面図である。
図8及び
図9に示すように、感磁部20は、平面形状が矩形状の主要感磁部120と、主要感磁部120の四隅からそれぞれ外側へ延出された第1〜第4の延出部121〜124とを備えていてもよい。平面視で、第1の延出部121及び第2の延出部122は、主要感磁部120の第1の対角線の延長線上にそれぞれ位置する。また、第3の延出部123及び第4の延出部124は、主要感磁部120の第2の対角線の延長線上にそれぞれ位置する。
【0050】
図8に示すように、第1の延出部121は、第1の電極31と電気的に接続している。第2の延出部122は、第2の電極32と電気的に接続している。第3の延出部123は、第3の電極33と電気的に接続している。第4の延出部124は、第4の電極34と電気的に接続している。
図8に示す第3実施形態の場合、平面視で、基板10の面積に対する感磁部20の実効領域の面積の割合は、43%である。また、平面視で、感磁部20の実効領域の面積に対する接触領域の総面積(第1の金属膜131の面積)の割合は、6%である。
【0051】
本発明の第3実施形態によれば、基板10の面積に対する、感磁部20の実効領域の面積の割合が20%以上と高い。このため、基板10上の面積を有効利用して、ノイズ成分を低減することが可能である。また、平面視で、感磁部20の実効領域の面積に対する、第1〜第4の接触領域の総面積の割合が0.1%以上10%以下である。このため、ノイズ成分のさらなる低減と、S/Nの向上が可能である。
また、感磁部20の実効領域の面積に対する、第1〜第4の電極31〜34の下の実効領域の面積の割合は、49%である。
【0052】
<第4実施形態>
上記の第1、第2実施形態では、感磁部20の平面形状が矩形状である場合について説明した。また、第3実施形態では、主要感磁部120が矩形状である場合について説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではない。
図10は、本発明の第4実施形態に係るホール素子400の構成例を示す平面図である。
図10に示すように、感磁部20の平面形状は十字(すなわち、クロス)形状であり、中央部220と、中央部220の周囲に位置する第1〜第4の周辺部221〜224とを備える。
【0053】
平面視で、第1の周辺部221は、中央部220の周囲のうち、第1の方向の一方の側に位置する。第2の周辺部222は、中央部220の周囲のうち、第1の方向の他方の側に位置する。第3の周辺部223は、中央部220の周囲のうち、第1の方向と直交する第2の方向の一方の側に位置する。第4の周辺部224は、中央部220の周囲のうち、第2の方向の他方の側に位置する。
また、平面視で、第1〜第4の周辺部221〜224上にコンタクト孔151と、このコンタクト孔151を埋め込む第1の金属膜131とがそれぞれ配置されている。例えば、コンタクト孔151の平面形状と第1の金属膜131の平面形状は同一であり、その大きさはコンタクト孔よりも第1の金属膜131の方が大きい。一例を挙げると、コンタクト孔151の平面形状は三角形である。第1の金属膜131の平面形状は、コンタクト孔151と相似のやや大きい三角形である。
【0054】
そして、第1〜第4の周辺部221〜223上の第1の金属膜131上に、第1〜第4の電極31〜34がそれぞれ配置されている。これにより、第1の周辺部221は第1の電極31と電気的に接続し、第2の周辺部222は第2の電極32と電気的に接続し、第3の周辺部223は第3の電極33と電気的に接続し、第4の周辺部224は第4の電極34と電気的に接続している。
図10に示す第4実施形態の場合、平面視で、基板10の面積に対する感磁部20の実効領域の面積の割合は、29%である。また、平面視で、感磁部20の実効領域の面積に対する接触領域の総面積(第1の金属膜131の面積)の割合は、42%である。
本発明の第4実施形態によれば、基板10の面積に対する、感磁部20の実効領域の面積の割合が20%以上と高い。このため、基板10上の面積を有効利用して、ノイズ成分を低減することが可能である。
また、感磁部20の実効領域の面積に対する、第1〜第4の電極31〜34の下の実効領域の面積の割合は、59%である。
【0055】
<第5実施形態>
図11は、本発明の第5実施形態に係るホール素子500の構成例を示す平面図である。
図11に示すように、感磁部20の平面形状は十字(すなわち、クロス)形状であり、中央部220と、中央部220の周囲に位置する第1〜第4の周辺部221〜224とを備える。
図11に示す第5実施形態の場合、第1〜第4の周辺部221〜224は、中央部220よりも幅広の部位を有する。また、第5実施形態では、第1〜第4の周辺部221〜224の各々において、第1の方向又は第2の方向のより端部に近い側にコンタクト孔151及び第1の金属膜131が配置されている。
【0056】
具体的には、第1の周辺部221では、第1の方向の一方の端部にコンタクト孔151及び第1の金属膜131が配置されている。第2の周辺部222では、第1の方向の他方の端部にコンタクト孔152及び第1の金属膜131が配置されている。第3の周辺部223では、第2の方向の一方の端部にコンタクト孔153及び第1の金属膜131が配置されている。第4の周辺部224では、第2の方向の他方の端部にコンタクト孔154及び第1の金属膜131が配置されている。
そして、第1の周辺部221は第1の電極31と電気的に接続し、第2の周辺部222は第2の電極32と電気的に接続し、第3の周辺部223は第3の電極33と電気的に接続し、第4の周辺部224は第4の電極34と電気的に接続している。
【0057】
図11に示す第5実施形態の場合、基板10の面積に対する感磁部20の実効領域の面積の割合は、26%である。また、感磁部20の実効領域の面積に対する接触領域の総面積(第1の金属膜131の面積)の割合は、3%である。
本発明の第5実施形態によれば、基板10の面積に対する、感磁部20の実効領域の面積の割合が20%以上と高い。このため、基板10上の面積を有効利用して、ノイズ成分を低減することが可能である。
また、感磁部20の実効領域の面積に対する、第1〜第4の電極31〜34の下の実効領域の面積の割合は、70%である。
【0058】
<第6実施形態>
本発明の第6実施形態に係るレンズモジュールは、本実施形態のホールセンサと、磁石が取り付けられたレンズホルダと、ホールセンサの外部端子からの出力信号であるホール起電力信号に基づいて、磁石を移動させる駆動コイルと、を備える。本実施形態のホールセンサは、モールド部材を薄型化できるため、ホールセンサ自体を薄型化でき、かつ、オフセット変動を抑制できるため磁気を正確に検出することができる。そのため、レンズモジュールを小型化することができ、また、正確な位置検出を行うことが可能となる。レンズホルダに取り付けられた磁石の磁場を、本実施形態のホールセンサで検知し、検知した出力信号に基づいて、駆動コイルに駆動電流を流すことにより、オートフォーカス制御や手振れ補正制御を精度良く行うことができる。また、本実施形態のホールセンサは、薄型化しているため、ホールセンサ内部のホール素子と、磁石との位置を近づけることが可能となり、より精度のよい磁気検知が可能である。
【0059】
<比較形態>
図12は、比較形態に係るホール素子900の構成例を示す平面図である。
図12に示す比較形態の場合、基板10の面積に対する感磁部20の実効領域の面積の割合は、13%である。また、感磁部20の実効領域の面積に対する接触領域の総面積(第1の金属膜の面積)の割合は、14%である。また、比較形態の場合、感磁部20の実効領域の面積に対する、第1〜第4の電極31〜34の下の実効領域の面積の割合は、ほぼ0%である。
本発明の各実施形態は、この比較形態に比べて、基板10の面積を同一としたときの、感磁部20の実効領域の面積が約2〜3倍も大きいため、ノイズ成分を効果的に低減することができる。
また、本発明の第1〜第3実施形態は、この比較形態に比べて、感磁部20の実効領域の面積に対する接触領域の総面積の割合が小さいため、S/Nが高い。
【0060】
<その他の態様>
本発明の技術的思想は、以上に記載した各実施形態や各実施例に特定されるものではない。当業者の知識に基づいて、本発明の各実施形態や各実施例に設計の変更等を加えてもよく、また、本発明の各実施形態や各実施例を任意に組み合わせてもよく、そのような変更が加えられた態様も、本発明の技術的思想に含まれる。