(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下の説明において、数字による具体的な詳細が、本発明をよく理解できるようにするために示されている。本発明は、これらの具体的な詳細の一部または全部がなくても実践できる。また別の場合、よく知られたプロセス動作については、本発明を不必要に曖昧にするのを避けるために、詳しく説明されていない。本発明を特定の実施形態に関連して説明するが、当然のことながら、本発明をその実施形態に限定することは意図されていない。
【0016】
本発明の特定の実施形態は、レチクルを検査して、欠陥または、より具体的にはレチクル特徴物の特性、例えばクリティカルディメンション(CD)のばらつきを検出するための技術とシステムを提供する。以下の例示的実施形態はレチクルに関して説明されているが、何れの適当な種類のサンプル(例えば、ウェハ)であっても、このような技術またはシステムを使ってモニタできる。さらに、以下の例示的実施形態は、CDのばらつきのほかに、その他のサンプル特性、例えば高さの均一性、側壁角度の均一性、表面粗さの均一性、ペリクルの透過率の均一性、石英の透過率の均一性、その他のモニタにも応用できる。
【0017】
「レチクル」という用語は一般に、透明基板、例えばガラス、ほうけい酸ガラス、石英、または溶融石英を含み、その上に不透明材料の層を有する。不透明な(または実質的に不透明な)材料としては、フォトリソグラフィの光(例えば、深紫外線)を完全に、または部分的にブロックする、何れの適当な材料が含まれていてもよい。例示的な材料としては、クロム、珪化モリブデン(MoSi)、珪化タンタル、珪化タングステン、ガラス上のOMOG(Opaque MoSi on Glass)、その他が含まれる。接着性を改善するために、ポリシリコンフィルムも不透明層と透明基板との間に追加されてもよい。低反射膜、例えば酸化モリブデン(MoO
2)、酸化タングステン(WO
2)、酸化チタン(TiO
2)、または酸化クロム(CrO
2)が不透明材料の上に形成されてもよい。
【0018】
レチクルという用語は様々な種類のレチクルを指し、これには明視野レチクル、暗視野レチクル、バイナリレチクル、位相シフトマスク(PSM)、交番PSM、減衰またはハーフトーンPSM、3相減衰(ternary attenuated)PSM、およびCPL(Chromeless Phase Lithography)PSMが含まれるが、これらに限定されない。明視野レチクルは透明な視野または背景領域を有し、暗視野レチクルは、不透明な視野または背景領域を有する。バイナリレチクルは、透明および透明の何れのパターニングされた領域も有するレチクルである。例えば、クロム金属吸収膜により画定されるパターンを有する透明溶融シリカブランクから作られたフォトマスクを使用できる。バイナリレチクルは位相シフトマスク(PSM)とは異なり、その1つの種類は、部分的にのみ光を透過させる膜を含んでいてもよく、これらのレチクルは一般にハーフトーンまたは埋め込み型位相シフトマスク(embedded phase−shift mask)(EPSM)と呼ばれる場合がある。位相シフト材料がレチクルの交互に透明な空間上に設置されている場合、このレチクルは交番PSM、ALT PSM、またはレベンソンPSMと呼ばれる。任意のレイアウトパターンに適用される位相シフト材料の1つの種類は、減衰またはハーフトーンPSMと呼ばれ、これは、不透明材料を一部透過性、すなわち「ハーフトーン」膜に置き換えることによって製造されてもよい。3相減衰(ternary attenuated)PSMは、完全に不透明な特徴物も含む減衰PSMである。
【0019】
一般に、透明、吸収、一部不透明、位相シフト材料が、クリティカルディメンション(CD)幅を持つように設計され、形成されたパターン構造に形成され、その結果、構造間にも透明なスペースができ、これもCDを有する。特定のCD値は一般に、フォトリソグラフィプロセスの中で特定のレチクル特徴物がウェハにどのように転写されるかに影響を与え、このようなCDは、この転写プロセスを最適化するように選択される。換言すれば、特定のレチクル特徴物のCD値が所定のCD範囲内にあれば、このようなCD値により、回路デザイナの意図に従い、最終的な集積回路が適正に動作できるように、相応の特徴物が製造される。特徴物は通常、最小限の寸法で形成され、それによっても集積回路の面積が節約されるような動作回路が得られる。
【0020】
新たに製造されたレチクルには、CD(またはその他の膜またはパターン特性)の欠陥の問題が含まれているかもしれない。例えば、レチクルには、マスクライタのスワスエラー等の不良CD領域があるかもしれない。レチクルはまた、時間の経過とともに様々な方法で損傷を受ける可能性もある。第一の劣化の例において、フォトリソグラフィの露光プロセスの結果、レチクルの不透明材料が物理的に劣化するかもしれない。例えば、レチクル上に使用される高出力ビーム、例えば193nmの高出力深紫外線(UV)ビームは、物理的にレチクル上の不透明材料に損傷を与えうる。損傷はまた、他の波長、例えば248nmのUVビームによっても引き起こされるかもしれない。実際に、UVビームは物理的に、レチクル上の不透明パターンが崩れ、特徴物が扁平化する原因となる可能性がある。その結果、不透明な特徴物のCD幅は、当初のCD幅と比較してかなり大きくなっているかもしれず、その一方で、このような不透明特徴物間の間隔のCD幅は、当初のCD幅と比較してかなり小さくなっているかもしれない。その他の種類のCD劣化は、レチクル特徴物(MoSi)と露光用の光との間の化学反応、洗浄プロセス、汚染、その他に起因するかもしれない。これらの物理的影響はまた、時間の経過とともにレチクルのクリティカルディメンション(CD)にも不利な影響を与える可能性がある。
【0021】
この劣化の結果として、特徴物のCD値が大幅に変化して、レチクル全体を通じたCDの均一性に影響を与え、ウェハの歩留まりに不利な影響を与えるかもしれない。例えば、マスクのある部分のマスク特徴物の幅が、当初の線幅であるCDよりかなり大きいかもしれない。例えば、半径方向のパターンのCD不均一性があるかもしれず、レチクルの中央のCDはレチクルのエッジと異なる。
【0022】
レチクルのクリティカルディメンションの均一性(Critical−Dimension−Uniformity)(CDU)マップは、レチクル等のCDをモニタしやすくするために生成されてもよい。これらのCDUマップは、半導体チップメーカがレチクルの使用から得られるプロセスウィンドウを理解する上で重要である。CDUマップにより、チップメーカは、そのレチクルを使用するか、リソグラフィプロセス中にエラーの補償を適用するか、またはレチクルの製造を改善して、改良された次のレチクルが形成されるようにするかを判断できる。このようなCDUマップは、アクティブ領域全体を通じて繰返しパターンを有するメモリマスクについては比較的簡単であるが、ほとんどが繰返しパターンではないロジックマスクの場合、はるかに難しい。
【0023】
CDUマップは、様々な方法で生成できる。die−to−dieモードの検査方式では、2つまたはそれ以上のダイの対応領域間の平均強度値を比較して、差分強度値を得てもよい。次に、レチクル全体を通じた差分ダイ値が差分強度マップを有効に形成でき、その後、これを校正して、フルCDUマップにすることができる。以下の検査方法は強度型の信号に基づくものとして説明されているが、本発明の代替的実施形態では、その他の種類の信号を使用してもよい。
【0024】
図1は、複数のダイを有するある例示的なレチクル100の概略上面図である。図のように、レチクルはダイの6×4のアレイを含み、これらは行と列で指定される。例えば、第一の一番上の行のダイ102a〜102fは、一番左の列から一番右側の列まで、それぞれ(1,1)、(1,2)、(1,3)、(1,4)、(1,5)、および(1,6)と指定される。同様に、最後の行のダイは各々の特定の行と列について、(4,1)、(4,2)、(4,3)、(4,4)、(4,5)、および(4,6)と指定される。
【0025】
ダイは、繰返しのメモリパターンと異なるロジックパターンを含んでいるが、ダイは相互に同じに設計されている。したがって、特定のダイの各ダイ部分(「パッチ」と呼ばれる)は、他のダイの各々からの少なくとも1つの他のパッチと同じであると予想される。同じに設計されている異なるダイからの異なるパッチを、本明細書においては、「ダイ等価(die-equivalent)」と呼ぶ。例えば、ダイ102bのパッチ104bは、他のダイ(例えば、102a、102c、102d、102e、および102f)の中のダイ等価パッチ(例えば、104a、104c、104d、104e、および104f)を有する。
【0026】
検査中、レチクルのパッチの複数のパッチ画像が光学検査ツールを使って得られてもよい。画像取得中、各ダイについて複数のパッチ画像が得られる。例えば、画像パッチは、ダイ102aのパッチ104aおよび104gについて得られる。1つの例示的なdie−to−dieモードの検査方式では、画像パッチはダイ間でダイ等価パッチが得られるように取得または画定され、これらのダイ透過パッチが処理されて、CD欠陥またはCDばらつきが検出される。
【0027】
具体的な実施形態において、各テストパッチの積分強度値が基準パッチ(すなわち、対応するダイ等価パッチ)の平均強度と比較されて、差分強度(ΔI)マップが得られ、これはレチクル全体を通じたCDのばらつきと相関させることができる。各パッチの積分強度値は、そのパッチのピクセルの強度値を平均することによって得られてもよい。ダイ等価パッチのレチクルパターンが同じであり、CD(またはその他のパターン特性)が変動しない場合、ダイ等価パッチからの光は同じであると予想される。特定のパッチの強度が他のダイ等価基準パッチと異なる場合、その特定のパッチのパターンには、ダイ等価基準パッチと比較して、CDのばらつきがあると推定されうる。例えば、透過された強度が増大すれば、不透明レチクルパターンのCDが減少し、透明レチクル領域のCDが増大したことが推測される。
【0028】
die−to−dieモードの検査方式は、比較的高密度のパターンについては好適に機能する。しかしながら、スパースなパターン領域は、特徴物エッジ、例えばCDの均一性に関する特徴物特性をモニタするためのdie−to−die方式の感度に不利な影響を与えるかもしれない。スパースなパッチは、よりエッジ数の多い高密度パターンのパッチと比較して、このようなパッチに関する信号に貢献する特徴物エッジまたはピクセルの数が比較的少ない。それゆえ、スパースなパッチのエッジに対応する信号は、より密度の高いパッチより低い傾向がある。低密度パッチの強度の低い信号は、(例えば、公称CDからの)CDの変化、時には大幅なCDの変化と関連しているかもしれず、このような強度の低い信号はノイズ信号レベルに近付く可能性があり、その結果、このようなCDの変化に関するΔI値が生成されなくなる。したがって、スパースなレチクル領域内のエッジ関連の特徴物のばらつきは検出しにくいかもしれない。
【0029】
本発明の特定の実施形態は、このようなパッチのパターンのスパース性レベルに基づいて、パッチから確定された強度信号をバイアスするための技術を提供する。それに加えて、ノイズを低減させる技術もまた、本明細書で説明する。
図2は、本発明の1つの実施形態による、差分強度マップを生成するための手順200を示すフローチャートである。以下の検査プロセス200は、新たに製造されたレチクルについて実行して、製造上の欠陥領域を検出しても、またはフォトリソグラフィプロセスで1回または複数回使用されたレチクルについて実行して、特徴物の変化をモニタし、および/または劣化を検出してもよい。
【0030】
動作202で、レチクルのダイ集合の中の各ダイのパッチ領域から画像を得ることができる。換言すれば、検査ツールは、入射光ビームがレチクルの各ダイの各パッチを走査する間に、反射光もしくは透過光または反射光および透過光の両方を検出し、収集するように動作可能であってもよい。入射光ビームは、各々が複数のパッチを含むレチクルスワス走査してもよい。この入射ビームに応答して、各パッチの複数の地点または小領域から光が集束される。
【0031】
検査ツールは一般に、このような検出光を、強度値に対応する検出信号に変換するように動作可能であってもよい。検出信号は、レチクルの異なる位置の異なる強度値に対応する振幅値を有する電磁波形の形態をとってもよい。検出信号はまた、強度値とそれに関連するレチクル点座標の単純なリストの形態をとってもよい。検出信号はまた、レチクル上の異なる位置または走査点に対応する異なる強度値を有する画像の形態をとってもよい。レチクル画像は、レチクルのすべての位置が走査され、光が検出された後に生成されても、または各レチクル部分が走査されるたびにレチクル画像の一部が生成されてもよい。
【0032】
図3Aは、本発明の実施形態によるレチクル部分300の、走査/画像化された複数の「スワス」(例えば、304a〜304l)の概略図である。各強度データセットは、レチクル部分300の「スワス」に対応してもよい。各強度データセットは、レチクルからスワスを蛇行またはラスタパターンで逐次的に走査することによって得られてもよい。例えば、レチクル部分300の第一のスワス304aが光検出システムの光ビームにより例えば左から右にプラスのx方向に走査され、第一の強度データ集合が得られる。次に、レチクルはビームに関してy方向に移動される。次に、第二のスワス304bが右から左にマイナスのx方向に走査され、第二の強度データ集合が得られる。スワスは、ダイの一番下の行からダイの一番上の行へと、またはその逆に逐次的に走査される。
【0033】
図3Bは、スワス304aに対応する強度データセットの概略図である。レチクルスワス304aの強度データはまた、複数のパッチ(例えば、352a、352b、352c、および352d)に対応する複数の強度データ集合に分割される。図示されていないが、パッチは重複して、また別の処理ステップ中、例えばダイの整合中に有効パッチ画像の大きさを縮小できる。強度データは、各スワスの各パッチにおける複数の点について収集されてもよい。
【0034】
あるスワスの走査がダイの行に関して同じy部分にわたって掃引するように整合された場合、各走査スワスには、そのようなダイが同じであれば、複数のダイからのダイ等価パッチが含まれる。すなわち、各ダイのパッチは、そのスワスが得られる他のダイのパッチの各々と同じ基準位置に関して位置付けられる。図のように、スワス304aとそのパッチは、各パッチのそれぞれのダイの下側エッジ(例えば、ダイ302a〜302cのそれぞれの下側エッジ306a〜306c)に関して位置付けられる。しかしながら、ダイの第二の行の走査スワスは、ダイの第一の行に関して等価パッチを持たない。1つの実施例において、1つのスワスだけのダイ等価パッチが一緒に処理されても、または、後でさらに説明するように、異なるダイの行のスワスとパッチの特定の部分を選択して処理し、異なる行にあるダイのダイ等価パッチを実現してもよい。
【0035】
第二の実施例において、画像スワスがダイの異なる行について、ダイの各行のスワスがダイに関して同様の方法で位置付けられるように得られる。異なるダイの行がどのように走査されるかを問わず、後でさらに説明するように、テストおよび基準ダイパッチ間の真実のダイ等価パッチを実現するためには、整合プロセスが必要であるかもしれない。
【0036】
図3Cは、本発明の第二の実施例によるレチクルの複数の走査されたスワスを示す。図のように、走査されたスワスはダイに関して、ダイ等価パッチ画像が複数のスワスとダイの複数の行を通じてより容易に実現できるように位置付けられている。例えば、スワス342aおよび304aは、それに対応するダイ(例えば、302a〜302f)の実質的に同じ第一の行に位置付けられ、スワス342bおよび304bは、それに対応するダイ(例えば、302a〜302f)の実質的に同じ第二の行に位置付けられる。
【0037】
図4は、本発明の1つの実施形態によるスワス管理の手順を表すフローチャートである。まず、動作204で、レチクルの同じダイの各々の第一および第二の反対側のエッジの位置を画定してもよい。一般に、検査ツールは、各ダイの範囲、ダイのオフセット、およびアレイのサイズに関する情報により設定してもよい。
図5は、本発明の1つの例示的実施形態による、ダイのアレイ(例えば、502a〜h)を有するレチクル500を示しており、それについて、範囲、オフセット、およびアレイサイズが検査ツールに関して画定される。ある具体的な実施例において、検査ツールの設定プロセスはまず、ツールの中でレチクルを位置合わせするためのメカニズムを含んでいてもよい。レチクルは使用者により、レチクル上の何れの適当な数および種類の位置合わせマーク、例えば506a〜cに関しても、レチクル走査のためにレチクルを整合させ、特定の座標系を画定するように位置付けられてもよい。
【0038】
検査ツールのための設定プロセスを通じて、使用者は点504aおよび504bを選択して、第一のダイ502aの範囲および、すべてのダイが同一であれば他のすべてのダイの範囲を確定してもよい。使用者はまた、点504cを選択して、ダイ502aおよび、相互からのそのオフセットが同じであれば他のすべてのダイに関するxおよびyオフセットを画定してもよい。範囲とオフセットを画定するために、上記以外の点(図示せず)が選択されてもよい。アレイサイズは、使用者によって検査ツールに入力されてもよい。
【0039】
検査ツールは、所定のダイの範囲、ダイのオフセット、およびアレイサイズを使って、各ダイの位置を自動的に画定し、スワス走査をどのように位置付けるかを確定してもよい。
図4に戻ると、動作403で、第一のダイ集合の第一のエッジに関する第一のスワスの相対位置を、第一のスワスが第一のダイ集合または行の第一のエッジを含むように画定してもよい。
図3Cの例において、第一のスワス304aは、第一のダイ集合(例えば、302a〜302c)の下側エッジ(例えば、306a〜306c)に関して画定される。第一のスワスはまた、第一のダイ集合の他の何れの等価位置に関して画定されてもよい。スワスは一般に、特定のスワス位置において走査を自動的に開始する検査ツールによって、特定のダイに関して画定されてもよい。
【0040】
検査ツールのビームは次に、動作404で、レチクルの第一のスワス全体を走査して、第一のスワスの画像を取得してもよい。1つの例において、光ビームがレチクル全体を走査し、このようなビームがこのような第一のスワスを走査するときに、第一のスワスの各ピクセルまたは点の強度値を収集してもよい。換言すれば、検査ツールは、入射光ビームが第一のスワス全体を走査する間に、反射および/または透過光を検出し、収集するように動作可能であってもよい。光は、この入射光ビームに応答して、第一のスワスの複数の点または小領域から収集される。
【0041】
図3Cの例において、第一のスワス304aはダイ302aの第一のエッジ306a、ダイ302bの第一のエッジ306b、およびダイ302cの第一のエッジ306cを含む。各ダイはまた、第二の反対側のエッジ(例えば、308a、308b、および308c)も有する。第一のスワスが走査された後、動作406で、次の隣接するスワスに次のダイ集合または行の第一のエッジが含まれるか否かを判断してもよい。スワスは、後でさらに説明するように、重複して、画像の整合を容易にする傾向がある。次のダイ集合の第一のエッジが達していなければ、動作410で次のスワスの位置を、その前に走査されたスワスに隣接するか、それと重複するように画定する。動作412で、ビームはまた、この画定された次のスワス全体を走査して、次のスワスの画像を取得してもよい。次に、動作414で、すべてのダイが走査されたか否かを判断してもよい。走査されていなければ、すべてのダイが走査されるまで、次のスワスの画定と走査を続け、レチクルの走査が完了する。
【0042】
図3Cの第一のスワス304aの後に画定され、走査される次の隣接するスワスはスワス304bであり、これは第二のダイ集合302d〜302fの第一のエッジ306d〜306eに到達していない。この図において、次のスワス304bは第一のスワス304aに隣接して位置付けられている。スワス304c〜304fは、逐次的に次のスワスとして画定され、走査され、これらは各々、その前に走査されたスワスに隣接するか、またはそれと重複して位置付けられ、これらの次のスワスが検査ツールの光ビームで逐次的に走査されて、パッチ画像が得られる。
【0043】
図3Aの第一の実施例と同様に、スワス304gが走査された後に、引き続き、隣接するスワスを走査できる(例えば、304h〜304l)。例えば、スワス304g〜304lが走査されて、隣接する、または重複するスワス304a〜304lが形成される。しかしながら、第二のダイ集合(例えば、302d〜302f)の走査されたスワスがダイのエッジに関して、第一のダイ集合(例えば、302a〜302c)のスワスと同様の方法では位置付けられないであろう。例えば、スワス304gの画像は、第二のダイ集合302d〜fの第一のエッジと、第一のスワス304aのパッチ画像が第一のダイ集合302a〜cの第一のエッジと整合するのと同様の方法では整合されない。この実施形態において、スワスは、異なるダイの行のスワスの部分が選択的に分析されて、ダイ等価パッチを形成するように、十分に重複して走査される。
【0044】
図の任意選択による第二の実施例は、新しいダイ集合を走査するときに次の走査の位置を変更するステップを含む。次の走査で次のダイ集合の第一のエッジに到達した場合、動作408で、次のスワスの相対位置を、次のダイ集合の第一のエッジに関して、第一のダイ集合に関する第一のスワスの相対位置と同じになるように設定してもよい。スワス304fが走査された後、走査するべき次のスワスは、
図3Cの例においてはスワス342aとして画定され、これは第二のダイ集合302d〜fの第一のエッジ306d〜fと整合する。次に、動作412で、ビームがこの次のスワスを走査し、画像が得られる。手順400は、最後のスワスが走査されるまで繰り返される。
【0045】
すべてのダイ(または任意選択で、2つまたはそれ以上のダイのみ)について画像が得られた後、検査工程を実行する前に各ダイ画像を他のダイ画像に関して整合させてもよい。例えば、各テストダイ画像をそれに対応する基準ダイ画像と整合させることができる。
図5に示される1つの例において、テストダイ502aの画像を、基準ダイ502bの画像と整合させてもよく、テストダイ502bの画像を、基準ダイ502cの画像と整合させてもよく、等々である。この整合方式の結果、異なるペアのダイ整合によって生じる偽欠陥が発生するかもしれない。すなわち、すべてのダイが同じ方法で整合するとはかぎらないため、各ダイ等価画像パッチの中のパターンが相互にずれる可能性があり、その結果、テストおよび基準パッチの異なるペアのエッジパターンは同じではない。
【0046】
図2に示されるある代替的実施形態において、動作203で、各ダイ画像を1つの「理想ダイ」と整合させてもよい。例えば、
図5の各ダイを理想ダイ502aと整合させて、同じ整合状態が提供されるようにしてもよい。すなわち、ダイ502b、502c、502d、502e、その他をダイ502aと整合させる。他の何れのダイを理想ダイとして選択し、それに他のダイを整合させてもよい。整合は、各ダイの画像を理想ダイの画像と重複させて、重複されたダイを徐々に(例えば、±5ピクセルずつ)移動させて、2つのダイ画像の一致が最大になる(すなわち、差が最小になる)ようにするステップを含んでいてもよい。
【0047】
整合プロセスには、検査ツールから収集された重複するスワスから、検査分析に使用される部分を選択するステップが関わってもよい。通常、スワス間にxおよびy方向の両方に重複があるため、外側のスワス部分を廃棄して、残りのスワスが相互に整合し、各ダイにおいて同じとなるようにしてもよい。例えば、ダイ画像を理想ダイの画像と整合させ、各ダイからの特定のスワス部分を保持すると、各ダイ画像は、整合された理想ダイのスワスおよびパッチ位置(例えば、基準マークに関しての)に対応する位置を有するスワスとパッチを含む。検査されないレチクル領域(ケガキ線の中にテスト標的を含んでいるかもしれない)がないように、必要に応じて、1つまたは複数のスワスをダイ行間にギャップのために保持してもよい。上述のようなスワス走査の管理の第二の実施例によって、理想ダイと同じ行になかったダイについてのスワス部分およびそれに対応するパッチの廃棄が少なくなるであろう。
【0048】
図2に戻ると、動作204で、積分強度値等の画像特性に関する積分値を各パッチ(または複数のパッチ)について確定してもよい。
図3Dは、レチクルのスワスのパッチの複数の局所領域(例えば、372a〜372f)に対応する複数の強度データセットの概略図である。特定の実施例において、各パッチまたは2つもしくはそれ以上のパッチ集合について、平均または中央値の反射および/または透過強度値を確定してもよい。図のように、複数の強度値(例えば、372a、372b、372c、372d、372e、および372f)は、レチクルの特定のスワスの特定のパッチ352aの複数のピクセルまたは地点に対応する。例えば、レチクルのパッチ352aに対応する強度データセットは、強度値26、25、25、25、24、25、その他を含んでいてもよい。パッチに関する強度値の全部を合算して平均し、そのようなパッチの平均強度値(例えば、25)を確定してもよい。
【0049】
反射光に対応する強度値はまた、各パッチの平均反射および透過強度値を確定する前または後に透過された光の強度値と組み合わせてもよい。例えば、反射および透過強度値の平均を、各パッチの点またはピクセルについて確定してもよい。あるいは、平均を、パッチの反射または透過強度値について別々に計算してもよい。各パッチについて別々に計算された反射平均および透過平均はまた、組み合わせるか、または合算して平均してもよい。
【0050】
ある代替的実施形態において、各パッチの積分強度値は、レチクル検査中に検出された反射光、透過光、またはその両方に基づいて生成されてもよい。1つの実施例において、反射(R)および透過(T)値を(T−R)/2により組み合わせてもよい。反射された信号は通常、透過された信号と反対の符号である。したがって、TおよびR信号を差し引くと、信号が加算される。ノイズ源はTとRについて異なるため、ノイズは組み合わされた信号から平均化される傾向がありうる。Rおよび/またはT値へのその他の重み付けを用いてあるパッチの積分強度値を生成してもよく、それにも利点が伴う。いくつかのケースでは、特定の領域のRおよびT信号は反対の符号ではなく同じ符号を有していてもよく、これは、関連する領域において結果が一貫せず、信頼できないかもしれないことを示す可能性がある。それゆえ、十分に信用できない場合は、このような領域のRとTの組合せをあまり重視しないか、または計算から除くことができる。
【0051】
異なるパッチのパターンの可変的なスパース性がそのパッチに関して最終的に得られる積分強度値に与える影響を補償するために、様々な方法を利用できる。換言すれば、パターンスパース性メトリクスを使って、各パッチの積分強度値を、そのようなパッチの他のパッチのパターンスパース性メトリクスに関する相対的パターンスパース性メトリクスに基づいて増減させてもよい。図の実施形態において、動作204で、局所的なエッジピクセル数を各パッチについて確定してもよい。動作208で、レチクルのパッチについて、平均エッジピクセル数も確定してよい。特定のパッチのエッジピクセル数は、何れの適当な方法で確定してもよい。例えば、ある領域のうち、特定の強度を有し、また大きく異なる強度を有する他のピクセルと隣接する部分であるピクセルをエッジピクセルと定義してもよい。
図6Aは、明るい背景領域604により取り囲まれる暗い構造602を有するパッチ領域の概略図である。暗い構造の境界、例えば境界602aおよび602bに沿った暗いピクセルは、これらの構造のピクセルと周囲のフィールド604の隣接するピクセルとの間でコンテラストが高いため、エッジピクセルと容易に定義できる。すなわち、パッチ画像上の明暗間の鮮鋭な切り替わりが、1本の境界のピクセルにのみ広がっている。
【0052】
レチクル構造のほとんどの画像において、構造の境界に沿った強度に鮮鋭な切り替わりがないかもしれない。
図6Bは、その境界においてより漸次的な強度変化を有する、明るい背景領域654により取り囲まれた暗い構造を有するパッチ領域の概略図である。図のように、構造は、暗い内側境界部分652aと、中間のグレーの境界部分652bと、より明るいグレーの境界部分652cと、を含むが、境界領域には通常、さらにもっと多くのグレーの色調があってもよい。それゆえ、境界領域(652a〜c)には暗から明への強度の切り替わりを持つ、より多くのピクセルが関わり、エッジピクセルとして定義されてもよい。
【0053】
特定のパッチの中の構造の境界の漸次的な強度変化のためにエッジピクセルカウントがより高くなると、より急峻なエッジを有するパッチと比較して、そのパッチについてのパターンスパース性の定量化に不利な影響が及ぶかもしれない。それゆえ、ピクセルのバッファを選択してエッジピクセルの特定に含めたり、または除去したりすることにより、あるピクセルエッジを所定の幅、例えば1または2ピクセルの幅でありうることを示してもよい。ピクセルエッジ幅は一般に、光学システムとサンプリング方法によって決まる。例えば、ピクセルエッジ幅は一般に、画像に対するエッジのインパクトの最大範囲に関する。
【0054】
図2に戻ると、動作210で、各パッチ強度値にゲインを適用してもよい。各パッチのゲインは、平均エッジピクセルカウントとそのようなパッチの局所的エッジピクセルカウントとの間の比に基づいていてもよい。例えば、平均カウントと比較して、エッジピクセルカウントがより低い、スパースなパターンを有するパッチの場合、強度信号のためのゲインはプラスとなり、よりスパースで、平均カウントより高いエッジピクセル数を有するパッチでは、ゲインがマイナスとなるか、またはそのパッチの強度値が低くなる。
【0055】
各パッチの強度信号に適用されるゲインの量は所定の量により限定される。この方式は、ゼロ除算の問題を防止し、または多くのゲインを使いすぎて、増大したノイズが問題になるのを防止するために有益でありうる。ゲインの限界の例としては、絶対的なゲイン増減の閾値を含むか、以下の等式による:(パッチ信号)
*(平均エッジピクセルカウント)/最大(パッチエッジピクセルカウント、1000)。この等式では、分母がある最小値、例えば1000に限定されるであろう。その他の最小値を使用してもよい。
【0056】
次に、動作212で、各ダイの各テストパッチの強度値とそれに対応する基準パッチ基準値との間の差を確定してもよい。次に、動作214で、確定した強度差に基づいて差分強度マップを生成してもよい。差分強度マップの実施形態は、何れの適当な形態をとることもできる。例えば、差分強度マップは、レチクルの各領域の平均強度変動値のリストとして、テクスチャで表現できる。各平均強度変動値は、対応するレチクル領域座標に沿ってリストアップしてもよい。差分強度マップはまた、グリッド点の差値の標準偏差または分散等のメトリクスで表すこともできる。その代わりに、またはそれに加えて、強度変動マップは、異なる強度変動値または範囲が異なる視覚的方法、例えばレチクル領域の色の違い、棒グラフの高さの違い、グラフの数値の違い、または立体表現、その他として示されるように、視覚的に表現されてもよい。強度マップは、グリッド点のサンプリングサイズの違いまたは多項式フィッティングもしくはフーリエ変換等の異なる関数形へのフィットによって表現してもよい。
【0057】
差分強度(またはΔI)マップは、例えばレチクルの製造上の問題または、クロム、MoSi、ペリクル、洗浄型の劣化のような時間の経過によるレチクル劣化に起因するレチクル上の問題領域を追跡するために使用されてもよいが、レチクル全体を通じた変化の、より具体的なメトリクス、例えばΔCDも追跡することが有益であろう。本発明の特定の実施形態において、校正プロセスには、製造に使用されたか、または関心対象領域内に存在するパターンを使って、強度の変化からCDの変化への変換係数を計算することが含まれる。既知のΔCDと予想されるΔIとの間の校正を設定し、保存し、後でΔIマップをΔCDマップに変換するために使用できる。
【0058】
図7は、本発明の1つの実施形態による、差分CDマップを生成するための手順700を示すフローチャートである。この実施形態において、動作702で、各パッチのための既知のパターンを有するデザインデータベースがまず提供される。デザインデータベースは通常、例えばレチクルが製造された直後に、die−databaseモードでの欠陥検査の中で利用可能であろう。デザインデータベースは好ましくは、レチクルメーカが保持するが、デザインデータベースはまた、ウェハ製造施設における検査の中でも、例えばレチクルをデバイス製造のために使用した後にレチクルを検査するために提供されてもよい。
【0059】
図の実施形態において、動作704で、各パッチの設計パターンを検査画像にレンダリングしてもよい。例えば、レンダリングされた各検査画像は反射および透過値を含んでいてもよく、これらはそのデザインパターンで製造されたレチクルの、対応するパッチを光学的に検査することによって得られるであろう。レンダリングされた検査画像は、カリフォルニア州ミルピタスのKLA−Tencor Corp.から入手可能なTeron630等、何れのツールを使って取得してもよい。次に、動作706で、レンダリングされた検査画像の各パッチの積分強度値を確定し、保存してもよい。例えば、レンダリングされた反射および透過強度値は、レンダリングされた各パッチについて合算して平均化してもよい(例えば、それによって平均反射値および平均透過値、または合算して平均化された反射および透過値を得る)。
【0060】
次に、動作708で、各パッチのデータベースパターンを所定のCDエラーによりバイアスしてもよい。例えば、各パッチのデータベースパターンはすべて、5nmの既知のCDエラー値でバイアスされる。このバイアス動作は、データベースの数字そのものに対して実行することができ、またはこれはラスタ化またはレンダリング動作の後に、レンダリング画像について実行することもできる。このバイアス画像は次に、検査ステーションによって見られる強度と一致するようにレンダリングされる。次に、動作712で、CDバイアス検査画像の各パッチについて、積分強度値の計算を確定してもよい。
【0061】
次に、動作714で、CDバイアスのための予想されるΔIを、CDバイアス検査画像の各パッチの積分強度値をそれに対応するバイアスされていないパッチから差し引くことによって確定し、保存してもよい。次に、動作716で、各パッチについてΔIからΔCDに変換するための校正係数を確定してもよい。各パッチの校正係数は、そのようなレンダリングされたパッチについて得られたΔIによるΔCDの勾配によって提供されてもよい。例えば、動作718で、各検査パッチの各ΔIに関して、対応するΔCDを確定してΔCDマップを形成してもよい。校正係数は、パッチのスパース性レベルに基づくゲインの増減が行われていない、確定されたΔI信号に適用することができ、それは、校正係数のもとになるレンダリングされたデータベース画像からのΔIに、スパース性を一致させる効果があるからである。
【0062】
各パッチの校正係数はまた、保存して、レチクルが所定の期間または所定の数の製造プロセスに使用された後に、CD均一性をモニタする中で使用してもよい。すなわち、
図2および7の手順のような上記の検査手順は、フォトリソグラフィプロセスがそのレチクルで何度も実行された後の使用済みレチクルについて繰り返される。
【0063】
勾配は、各パッチのための校正係数の計算の一部にすぎない。CDオフセット値(または、意図されたデザイン上の平均CDに関するマスク上の平均CD)を得ることは別の方法であり、これには画像を非常に正確にレンダリングする必要がある。これは理論的に可能であり、データベースレンダリングの直接的な結果であるが、それは通常、レンダリング品質と画像成形プロセスのノイズにより制限される。絶対的なCDを確定された強度信号に基づいて確定することも可能である。
【0064】
本発明の特定の実施形態は、CDUマップの形成におけるパターン密度の影響を補償し、それと同時にノイズを低減させることができる。校正の実施形態にはまた、差分強度測定値から差分CD測定値にマップを変換するという別の利点もある。
【0065】
さらに、CD均一性のエラーのほか、歩留まりに影響を与える可能性のあるその他の種類の問題も、上述の技術で発見できる。例えば、特定の種類の欠陥により、歩留まりを限定する可能性のある局所的な透過率のエラーが生じるかもしれない。局所的な透過性の問題の原因となる欠陥の1つの種類は、プリントされたウェハの機能に影響を与える可能性のあるガラス面のウォータスポットである。
【0066】
また、デザインデータベースを使用せずに、上述の動作を実行できる点にも留意されたい。この場合、既知の良好なレチクルからの当初の画像を基準値として使用してもよく、すると、CDバイアスをこの当初の画像の上に直接重ねて、CDバイアス画像を得てもよい。例えば、劣化と欠陥がないと確認された新品のレチクルを、既知の良好なレチクルとして使用してもよい。光学画像の直接バイアスは「マスクパターン回復」ステップとして実現されてもよく、これは、2014年10月7日に発行されたWang et al.の米国特許第8,855,400号にさらに詳しく記載されおり、同特許の全体を参照によって本願に援用する。このようにして、透過および反射光の両方からの画像を使って、透過マスク画像を得ることができ、すると、これをより容易にバイアスできる。
【0067】
一般に、CD値はパターンエッジ、特にエッジの位置が透過信号にどのように影響を与えるかに依存する。すなわち、パターンエッジは、CD均一性をモニタする上で重要なものである。しかしながら、エッジ領域からとフラットフィールド領域の両方からノイズが生じる。スパースなパターンでは、エッジの数がより少なく、したがって、測定された信号は何れも、より弱く、これはノイズがこれらのスパース領域において、より重要であることを意味しており、それは、信号を弱めるゲイン増大方式はすべて、ノイズもまた増大させる可能性があるからである。CD均一性の利用に関するフラットフィールドエリアからは有益な信号が得られないため、ノイズをこれらの領域から除去することに意味がある。
【0068】
1つの実施形態において、フラットフィールド領域とは、パターンエッジから特定の距離にある領域と定義され、このフラットフィールド領域からの測定された画像値(ノイズを含む)は、その領域の公称光校正値等、それに対応する定数に置き替えられる。例えば、線構造画像の内部領域は黒(最小の光校正値)として定義され、線構造画像を取り囲む領域は白(最大の光校正値)として定義される。このようにして、フラットフィールド領域内のすべてのノイズが除去され、エッジノイズだけが残る。すべてのテストおよび基準領域内での定数の使用は、完全に取り消すべきである。
【0069】
フラットフィールド領域内のノイズを管理するためのこの手法は、これらのフラットフィールド領域からの画像ノイズがCD変化を確定するために重要な信号を劣化させるのを防止する。フラットフィールド領域の画定には、エッジ領域からの何れの適当な距離を使用してもよい。換言すれば、あらゆる適当なエッジバッファを使用して、そのエッジバッファの外の領域に一定の強度値が割り当てられるようにすることができる。1つの例において、パターンエッジがもはや、テストまたは基準ダイスの何れに関する測定光値に重要な影響を与えなくなった領域をフラットフィールド領域と定義することができる。ある具体的な例において、エッジ領域は、ピクセルサイズとノイズ極小化の所望の最適化に応じて、±5ピクセル幅と定義される。画像は名目上、この領域のノイズを除いて変化しない。上で詳しく説明したように、対応するパッチすべてを良好に整合させて、これらのパッチの各々についてエッジの画定が同じになるようにすることが有益である点に留意されたい。
【0070】
これに加えて、フラットフィールド領域を画定するこの方法は、die−to−databaseモードでの検査で使用されてよく、その場合、基準ダイはデザインデータベースからレンダリングされた画像から得られる。この手法は、die−to−dieモードでの検査において、より重要であるかもしれず、それは、ノイズがテストおよび基準ダイのどちらにも存在する可能性があるからであり、die−to−databaseモードでの検査の場合、ノイズはテストダイにだけあって、基準ダイにはない。
【0071】
全体的な強度オフセットは、全体的なCDのばらつきを確定するために使用されてもよい。すなわち、全体的なCDのばらつきは、ΔIマップの全体的な強度オフセットに関連付けられてもよい。全体的なCDの変化を確定する中で、ノイズを補償するために、透過および反射光信号の両方を分析してもよい。RおよびTマップのうちの「一致する」部分をCDオフセットの確定に使用でき、そのうちの「一致しない」部分はある種のノイズ(すなわち、複屈折、反射率の変化)を暗示しており、CDオフセットの確定に使用されない。また、検査光レベルを適正に校正し、補償することも好ましい。
【0072】
全体的なオフセットを確定する1つの方法は、検査のためのフルマスクミーン(full mask mean)を計算することである。すると、このフルマスクミーンをΔIマップの結果から差し引くことができる。しかしながら、比較的ノイズのない結果のためには、例えば、目に見える空間分布変化があったとしても、全体的なオフセットは非常に有意義である可能性がある。この全体的オフセットは、全体的なCD変化を表すことができる。
【0073】
ΔIまたはΔCDマップが生成された後に、マップの一方または両方を分析してもよい。例えば、同じレチクル領域の平均ΔIまたはΔCDの何れかのばらつきが所定の閾値を超えるか否かを判断してもよい。平均ΔIまたはΔCDが所定の閾値を超えた場合、対応するレチクル部分をより詳しく精査して、レチクルに欠陥があるためそれ以上使用できないか否かを判断できる。例えば、SEMを使って欠陥領域を精査し、クリティカルディメンションディ(CD)が仕様の範囲内にないか否かを判断してもよい。
【0074】
代替的実施例において、特定の強度変化を特定のCD値に関連付けることができ、次にこれが仕様に適合するか否かを判断できる。他の実施例において、特定の強度変化は、複数の既知のCD値を有する校正レチクルを通じて特定のCD値に関連付けてもよく、これを確定して、異なるCD変化間の強度差を判断できる。このようなCDと強度変化の相関関係は、校正レチクルの異なる領域から得られるが、これらの関連付けを同じレチクル領域の各々の各強度差に適用して、その同じレチクル領域のCD変化を判断してもよい。
【0075】
CDが仕様の範囲内にないことにより、レチクルは検査に合格しないであろう。レチクルが検査に不合格となった場合、そのレチクルは廃棄されるか、可能であれば修理されてもよい。例えば、特定の欠陥をレチクルから除去できる。修理後、新しい基準検査を洗浄したレチクルに実行し、手順を繰り返してもよい。
【0076】
本発明の技術は、ハードウェアおよび/またはソフトウェアの何れの適当な組合せで実行されてもよい。
図8は、本発明の技術を実施できる例示的な検査システム800の概略図である。検査システム800は、検査ツールまたはスキャナ(図示せず)からの入力802を受け取ってもよい。検査システムはまた、受け取った入力802を分散させるためのデータ分散システム(例えば、804aおよび804b)と、受け取った入力802の特定部分/パッチを処理するための強度信号(またはパッチ)処理システム(例えば、パッチプロセッサおよびメモリ806aおよび806b)と、ΔIおよびΔCDマップを生成するためのマップ生成システム(例えば、マップ生成プロセッサおよびメモリ812)と、検査システムの構成要素間の通信を可能にするネットワーク(例えば、スイッチネットワーク808)と、任意選択の大量記憶装置816と、マップを精査するための1つまたは複数の検査制御および/または精査ステーション(例えば、810)と、を含んでいてもよい。検査システム800の各プロセッサは通常、1つまたは複数のマイクロプロセッサ集積回路を含んでいてもよく、また、インタフェースおよび/またはメモリ集積回路も含んでいてもよく、さらに、1つまたは複数の共有および/またはグローバルメモリデバイスに連結されてもよい。
【0077】
入力データ802を生成するためのスキャナまたはデータ取得システム(図示せず)は、レチクルの強度信号または画像を取得するための何れの適当な命令(例えば、本明細書中でさらに説明する)の形態をとってもよい。例えば、スキャナは、反射、透過、またはそれ以外の方法で1つまたは複数の光センサに誘導される検出光の一部に基づいて、レチクルのある部分の強度値の光学画像を構成するか、または強度値を生成してもよい。するとスキャナは強度値を出力してもよく、または画像がスキャナから出力されてもよい。
【0078】
レチクルは一般に、複数のパッチ部分に分割され、そこから、複数の点からの複数の強度値が得られる。レチクルのパッチ部分を走査して、この強度データを得ることができる。パッチ部分は、特定のシステムと用途の要求事項に応じて、何れの大きさと形状であってもよい。一般に、各パッチ部分の複数の強度値は、レチクルを何れの適当な方法で走査することによって得てもよい。例えば、各パッチ部分の複数の強度値は、レチクルのラスタ走査により得てもよい。あるいは、画像は、レチクルを何れの適当なパターン、例えば円形またはらせんパターンで走査することによって得てもよい。勿論、レチクルから円形またはらせん形状を走査するために、走査中にセンサの配置を変えなければならない(例えば、円形パターン)かもしれず、および/またはレチクルの移動を変える(例えば、回転させる)かもしれない。
【0079】
以下に示す例において、レチクルがセンサを通過するとき、光がレチクルの長方形領域(本明細書では「スワス」と呼ぶ)から検出され、このような検出光が各パッチの複数の点における複数の強度値に変換される。この実施形態においては、スキャナのセンサが、レチクルから反射され、および/または透過される光を受け取るために長方形のパターンに配置され、そこから、レチクルのパッチのスワスに対応する強度データセットが生成される。特定の例において、各スワスは、幅約1百万ピクセル、高さ約1000〜2000ピクセルとすることができ、各パッチは幅約2000ピクセル、高さ1000ピクセルとすることができる。
【0080】
各パッチの強度値は、何れの適当な方法で設定された光検査ツールを使って取得してもよい。光学ツールは一般に、強度値を得るための異なる検査ランについて実質的に同じ一連の動作パラメータ、すなわち「レシピ」で設定される。レシピの設定は、以下の設定のうちの1つまたは複数を含んでいてもよい:特定のパターンでレチクルを走査するための設定、ピクセルサイズ、単独の信号から隣接する信号を分類するための設定、フォーカス設定、照明または検出アパーチャの設定、入射ビーム角度と波長の設定、検出器の設定、反射または透過光の量に関する設定、空中モデリングパラメータ、その他。
【0081】
強度または画像データ802は、データ分散システムからネットワーク808を介して受け取ることかできる。データ分散システムは、1つまたは複数のメモリデバイス、例えばRAMバッファと関連付けて、受け取ったデータ820の少なくとも一部を保持してもよい。好ましくは、メモリ全体は、データのスウォッチ全体を保持できる十分な大きさである。例えば、1ギガバイトのメモリであれば、100万×1000ピクセルまたは点のスウォッチにとって好適に機能する。
【0082】
データ分散システム(例えば、804aおよび804b)はまた、受け取った入力データ802の一部をプロセッサ(例えば、806aおよび806b)に分散させるのを制御してもよい。例えば、データ分散システムは、第一のパッチに関するデータを第一のパッチプロセッサ806aに送ってもよく、第二のパッチに関するデータをパッチプロセッサ806bに送ってもよい。複数パッチに関する複数のデータセットを各パッチプロセッサに送ってもよい。
【0083】
パッチプロセッサは、レチクルの少なくとも一部または1つのパッチに対応する強度値または画像を受け取ってもよい。パッチプロセッサは各々、1つまたは複数のメモリデバイス(図示せず)、例えばローカルメモリ機能を提供する、例えば受信データ部分を保持するDRAMデバイスに連結されるか、またはそれと統合されてもよい。好ましくは、メモリは、レチクルのパッチに対応するデータを保持できるだけの十分な大きさである。例えば、8メガバイトのメモリであれば、512×1024ピクセルのパッチに対応する強度値または画像にとって好適に機能する。パッチプロセッサはまた、メモリを共有してもよい。
【0084】
入力テータの各セット802は、レチクルの1つのスワスに対応してもよい。1つまたは複数のデータセットを、データ分散システムのメモリの中に保存してもよい。このメモリは、データ分散システム内の1つまたは複数のプロセッサにより制御されてもよく、メモリは複数のパーティションに分割されてもよい。例えば、データ分散システムは、スワスの一部に対応するデータを受け取って第一のメモリパーティション(図示せず)の中に格納してもよく、データ分散システムは、他のスワスに対応する別のデータを受け取って第二メモリパーティション(図示せず)の中に格納してもよい。好ましくは、データ分散システムのメモリパーティションの各々は、データのうち、そのようなメモリパーティションに関連するプロセッサに送られる部分のみを保持する。例えば、データ分散システムの第一のメモリパーティションは第一のデータを保持し、パッチプロセッサ806aに送ってもよく、第二のメモリパーティションは第二のデータを保持し、パッチプロセッサ806bに送ってもよい。
【0085】
検出された信号はまた、空間画像の形態をとってもよい。すなわち、空間イメージング技術を使って、フォトリソグラフィシステムの光学的効果をシミュレートし、ウェハ上で露光されるフォトレジストパターンの空間画像を生成してもよい。一般に、フォトリソグラフィツールの光学系は、レチクルから検出された信号に基づいて空間画像を生成するようにエミュレートされる。空間画像はフォトリソグラフィ光学系とレチクルを通ってウェハのフォトレジスト層へと通過する光から生成されるパターンに対応する。これに加えて、特定の種類のフォトレジスト材料のためのフォトレジスト露光プロセスもまたエミュレートされてよい。
【0086】
入射光または検出光は、何れの適当な空間開口(spatial aperture)を通って、何れの適当な入射角度で、何れの入射または検出光プロファイルを生成してもよい。例えば、プログラム可能な照明または検出用開口を使って、特定のビームプロファイル、例えば双極子、四極子、クエーサ、環状、その他を生成してもよい。具体的な例では、SMO(Source Mask Optimization)または、何れのピクセル化照明法を利用してもよい。
【0087】
データ分散システムは、データの各データセットを何れの適当なパラメータに基づいて定義し、分散させてもよい。例えば、データは、レチクル上のパッチの対応する位置に基づいて定義され、分散されてもよい。1つの実施形態において、各スワスは、そのスワス内のピクセルの水平位置に対応する列の位置の範囲に関連付けられる。例えば、そのスワスの列0〜256は第一のパッチに対応してもよく、これらの列内のピクセルは第一の画像または強度値のセットを含み、これが1つまたは複数のパッチプロセッサに送られる。同様に、スワスの列257〜512は第二のパッチに対応してもよく、これらの列内のピクセルは第二の画像または強度値のセットを含み、これが異なるパッチプロセッサに送られる。
【0088】
図9Aは、特定の実施形態により、フォトマスクMからウェハWにマスクパターンを転写するために使用可能な典型的なリソグラフィシステム900の簡略化した概略図である。このようなシステムの例としては、スキャナとステッパ、より詳しくは、オランダのフェルトホーフェンのASMLから入手可能なPAS 5500システムが含まれる。一般に、照明光源903は照明光学系901(例えば、レンズ905)を通ってマスク平面902内にあるフォトマスクMへと光ビームを誘導する。照明レンズ905は、その平面902において開口数901を有する。開口数901の数値は、フォトマスク上のどの欠陥がリソグラフィにとって重大な欠陥であり、どれがそうでないかに影響を与える。ビームのうち、フォトマスクMを通過する部分がパターニングされた光学信号を形成し、これが画像成形光学系913を通ってウェハWへと誘導されて、パターン転写を開始する。
【0089】
図9Bは、特定の実施形態による例示的検査システム950の概略図を提供し、これは照明光学系951aを有し、それにはレチクル平面952において比較的大きい開口数951bを持つ結像レンズが含まれる。図の検査システム950は検出光学系953aおよび953bを含み、これには、高度な検査を行うために、例えば60〜200×の倍率またはそれ以上を提供するように設計された顕微鏡拡大光学系が含まれる。例えば、検査システムのレチクル平面952での開口数951bは、リソグラフィシステム900のレチクル平面902における開口数901よりはるかに大きくてもよく、その結果、テストま検査画像と実際にプリントされた画像との間に差が生じるであろう。
【0090】
本明細書で説明した検査技術は、様々な特別に構成された検査システム、例えば
図9Bに概略的に示されているシステムで実装されてもよい。図のシステム950は照明光源960を含み、それが生成する光ビームは、照明光学系951aを通ってレチクル平面952内のフォトマスクMへと誘導される。光源の例としては、レーザまたはフィルタ処理されるランプが含まれる。1つの例において、光源は193nmレーザである。上述のように、検査システム950はレチクル平面952において開口数951bを有していてもよく、これは対応するリソグラフィシステムのレチクル平面の開口数(例えば、
図9Aの要素901)より大きくてもよい。検査対象のフォトマスクMは、レチクル平面952にあるマスクステージに載せられ、光源により露光される。
【0091】
マスクMからのパターニングされた画像は、光学要素953aの集合を通じて誘導され、これがパターニングされた画像をセンサ954aへと投射する。反射システムの中で、光学要素(例えば、ビームスプリッタ976と検出レンズ978)が反射光をセンサ954bへと誘導し、捕捉する。適当なセンサとしては、電荷結合素子(CCD)、CCDアレイ、TDI(Time Delay Integration)センサ、TDIセンサアレイ、光電子増倍管(PMT)、およびその他のセンサが含まれる。
【0092】
レチクルのパッチを走査するために、何れの適当な機構によっても、照明光学系コラムをマスクステージに関して移動してよく、および/またはステージを検出器またはカメラに関して移動してよい。例えば、モータ機構を利用してステージを移動させてもよい。モータ機構は例えば、スクリュドライバとステッパモータ、フィードバック位置を持つニアドライブ、またはバンドアクチュエータとステッパモータから形成されてもよい。
【0093】
各センサ(例えば、954aおよび/または954b)により捕捉される信号は、コンピュータシステム973によって、または、より一般的には、各々が各センサからのアナログ信号を処理のためにデジタル信号に変換するように構成されたアナログ−デジタル変換器を含んでいてもよい1つまたは複数の信号処理装置によって処理できる。コンピュータシステム973は通常、入力/出力ポートに連結された1つまたは複数のプロセッサと、適当なバスまたはその他の通信機構を介して1つまたは複数のメモリを有する。
【0094】
コンピュータシステム973はまた、焦点およびその他の検査レシピパラメータを変化する等、ユーザ入力を提供するための1つまたは複数の入力装置(例えばキーボード、マウス、ジョイスティック)も含んでいてよい。コンピュータシステム973はまた、例えばサンプル位置を制御する(例えば、合焦し、走査する)ためにステージに接続され、また、他の検査システム構成要素に、このような検査システム構成要素のその他の検査パラメータおよび構成を制御するために接続されてもよい。
【0095】
コンピュータシステム973は、最終的な強度値、画像、およびその他の検査結果を表示するためのユーザインタフェース(例えば、コンピュータスクリーン)を提供するように(例えば、プログラミング命令で)構成されてもよい。コンピュータシステム973は、反射および/または透過された検出光ビームの強度の変化、位相、および/またはその他の特性を分析するように構成されてもよい。コンピュータシステム973は、最終的な強度値、画像、およびその他の検査特性を表示するためのユーザインタフェース(例えば、コンピュータスクリーン)を提供するように(例えば、プログラミング命令で)構成されてもよい。特定の実施形態において、コンピュータシステム973は、上で詳しく説明した検査技術を実行するように構成される。
【0096】
このような情報とプログラム命令は特別に構成されたコンピュータシステム上で実装されてよいため、このようなシステムは、本明細書に記載されている各種の動作を実行するためのプログラム命令/コンピュータコードを含み、これはコンピュータ読取可能媒体上に保存可能である。機械読取可能媒体の例としては、ハードディスク、フロッピーディスク(登録商標)、および磁気デーブ等の磁気媒体、CD−ROMディスクなどの光媒体、光ディスクなど光磁気媒体、およびプログラム命令を保存し、実行するように特別に構成された、ROM(Read−Only Memory)デバイスおよびRAM(Random Access Memory)等のハードウェアデバイスが含まれるが、これらに限定されない。プログラム命令の例としては、コンパイラにより生成されるようなマシンコードと、インタプリタを使用してコンピュータにより実行可能な、より高レベルのコードを含むファイルの両方が含まれる。
【0097】
特定の実施形態において、フォトマスクを検査するシステムは、少なくとも1つのメモリと少なくとも1つのプロセッサを含み、これらは本明細書で説明した技術を実行するように構成される。検査システムの1つの例としては、カリフォルニア州ミルピタスのKLA−Tencorから入手可能な、特別に構成されたTeraScan(商標)DUV検査システムが含まれる。
【0098】
明瞭に理解できるようにするために、上記の発明はある程度詳細に説明されているが、付属の特許請求の範囲の中で特定の変更や改良を行ってもよいことは明らかであろう。留意すべき点として、本発明のプロレス、システム、および装置を実装するために数多くの代替的な方法がある。したがって、これらの実施形態は限定的ではなく、例示的と考えるものとし、本発明は本明細書に記載されている詳細に限定されないものとする。