(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6609964
(24)【登録日】2019年11月8日
(45)【発行日】2019年11月27日
(54)【発明の名称】多孔性配位高分子
(51)【国際特許分類】
B01J 20/26 20060101AFI20191118BHJP
C07C 65/03 20060101ALI20191118BHJP
C07C 211/14 20060101ALI20191118BHJP
B01J 20/30 20060101ALI20191118BHJP
【FI】
B01J20/26 A
C07C65/03 Z
C07C211/14
B01J20/30
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-70945(P2015-70945)
(22)【出願日】2015年3月31日
(65)【公開番号】特開2016-190191(P2016-190191A)
(43)【公開日】2016年11月10日
【審査請求日】2018年2月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】小林 渉
(72)【発明者】
【氏名】前浜 誠司
【審査官】
高橋 成典
(56)【参考文献】
【文献】
特表2012−520756(JP,A)
【文献】
特開2007−190529(JP,A)
【文献】
国際公開第2011/013332(WO,A1)
【文献】
国際公開第2015/012373(WO,A1)
【文献】
国際公開第2014/028574(WO,A1)
【文献】
特表2010−527890(JP,A)
【文献】
特表2011−517309(JP,A)
【文献】
中国特許出願公開第104226260(CN,A)
【文献】
中国特許出願公開第104056598(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 20/20 − 20/28
20/30 − 20/34
C07G 31/00 − 61/00
63/00 − 63/04
C07C 1/00 −409/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マグネシウムイオン、及び2,5−ジヒドロキシテレフタル酸を含有し、MOF−74結晶構造を有し、なおかつ、細孔内にジエチレントリアミンを含有する多孔性配位高分子であり、該ジエチレントリアミンの含有量が4重量パーセントから13重量パーセントである多孔性配位高分子。
【請求項2】
BET比表面積が1000m2/g以上である請求項1に記載の多孔性配位高分子。
【請求項3】
マグネシウムイオン、及び2,5−ジヒドロキシテレフタル酸を含有し、MOF−74結晶構造を有する多孔性配位高分子にジエチレントリアミンを含有させる工程を含む請求項1又は2に記載の多孔性配位高分子の製造方法。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の多孔性配位高分子を含む二酸化炭素吸着剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は多孔性配位高分子に関する。更に詳しくは圧力スイング式吸着分離法による二酸化炭素吸着分離に適した多孔性配位高分子に関する。
【背景技術】
【0002】
圧力スイング式吸着分離法(以下、「PSA法」とする。)による二酸化炭素の吸着分離は、ある圧力(以下、「吸着圧力」とする。)で二酸化炭素を吸着剤に吸着させる。その後、吸着圧力より低い圧力(以下、「脱離圧力」とする。)で吸着剤に吸着した二酸化炭素を脱離することで分離が行われる。そのため、PSA法に用いられる吸着剤は、吸着圧力における吸着量と脱離圧力における吸着量との差(以下、「有効吸着量」とする。)が大きいことが求められる。
【0003】
特許文献1に記載のゼオライトは吸着圧力での吸着量が多いが、脱離圧力での吸着量も多い。そのため、当該ゼオライトの有効吸着量を多くするには脱着圧力を真空に近い圧力まで低くする必要があり、多くのエネルギー消費が必要とされていた。
【0004】
多孔性配位高分子は、金属イオンもしくはクラスターと架橋配位子が連結して形成される高分子型の金属錯体で内部に空間を持つ。金属と架橋配位子の組み合わせにより、様々な構造が報告されている(特許文献2)。
【0005】
多孔性配位高分子を二酸化炭素吸着剤として用いる検討がされている。多孔性配位高分子にアルキルアミンを含有させることで、0.06bar以下という減圧条件下における二酸化炭素の吸着能を改善できたことが報告されている(非特許文献1)。しかしながら、当該多孔性配位高分子を用いた場合、有効吸着量を多くするためには脱離圧力を真空に近い圧力にする必要があった。
【0006】
多孔性配位高分子として、マグネシウム及び2,5−ジヒドロキシテレフタル酸から構成されるMOF−74を用いた、アンモニア等の有害ガスの吸着剤が開示されている(非特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−018226号公報
【特許文献2】特表2005−528204号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Journal of American Chemical Society、131巻、8784−8786ページ、2009
【非特許文献2】Chemical Engineering Science、66巻、163−170ページ、2011
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ゼオライト系の二酸化炭素吸着剤や、非特許文献2のアルキルアミンを含有する多孔性配位高分子を用いた場合、有効吸着量を多くするためには脱離圧力を真空に近い圧力にする必要があった。
【0010】
本発明は二酸化炭素の有効吸着量が多い多孔性配位高分子、特に脱離圧力を真空に近い圧力まで減圧することなく、二酸化炭素の有効吸着量を多くすることができる多孔性配位高分子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは鋭意検討を行った。その結果、マグネシウムイオン、2,5−ジヒドロキシテレフタル酸を含有し、MOF−74結晶構造を有し、なおかつ、細孔内にアルキルアミンを含有する多孔性配位高分子が、脱離圧力を真空に近い条件下にすることなく、二酸化炭素の有効吸着量を多くすることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
以下、本発明の多孔性配位高分子について説明する。
【0013】
本発明は、マグネシウムイオン、2,5−ジヒドロキシテレフタル酸を含有し、MOF−74結晶構造を有し、なおかつ、細孔内にアルキルアミンを含有する多孔性配位高分子である。
【0014】
本発明の多孔性配位高分子は、マグネシウムイオン、及び2,5−ジヒドロキシテレフタル酸を含有する。より具体的には、本発明の多孔性配位高分子は、マグネシウムイオン、及びマグネシウムイオンに配位結合した2,5−ジヒドロキシテレフタル酸を含有し、更には、マグネシウムイオン及び2,5−ジヒドロキシテレフタル酸からなる骨格構造を有する。このような多孔性配位高分子は、高い細孔容積、及び高い比表面積を有する。そのため、吸着剤、触媒担体として使用することができる。
【0015】
本発明の多孔性配位高分子は、MOF−74結晶構造を有する。ここでMOF−74結晶構造とは、非特許文献2に記載されている多孔性配位高分子MOF−74と同じ結晶構造のことである。このような多孔性配位高分子は、その細孔径が1.1nm程度の細孔、及び1000m
2/g以上のBET比表面積を有する。MOF―74結晶構造を有することは、粉末X線回折(以下、「XRD」とする。)測定により得られるXRDパターンを、非特許文献2のFig.3に記載のXRDシミュレーションパターンと比較することで同定することができる。
【0016】
本発明の多孔性配位高分子は、高い比表面積を有することが好ましい。比表面積が高いほど、二酸化炭素の吸着量が多くなる、本発明の多孔性配位高分子の比表面積は、BET比表面積として1000m
2/g以上、更には1200m
2/g以上であることが好ましい。
【0017】
本発明の多孔性配位高分子は、その細孔内にアルキルアミンを含有する。細孔内にアルキルアミンを含有することで二酸化炭素の吸着量が多くなるため、大気圧以下の分圧において、有効吸着量を多くすることができる。アルキルアミンとしては、エチレンアミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン(以下、「DETA」とする。)、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミンからなる群の少なくとも1種を挙げることができる。
【0018】
アルキルアミンの分子サイズが小さいほど、細孔内に含有された際に細孔内への物質の拡散を妨げず、より多くの二酸化炭素を吸着できる。そのため、本発明の多孔性配位高分子は、分子サイズの小さいエチレンアミン、エチレンジアミン、DETAからなる群の少なくとも1種を含有することが好ましい。また、アルキルアミン分子内の窒素原子数が多いほど多くの二酸化炭素を吸着できる。そのため、本発明の多孔性配位高分子はDETAを含有することがより好ましい。
【0019】
本発明の多孔性配位高分子は、その細孔内にアルキルアミンを含有する。すなわち、本発明の多孔性配位高分子は、マグネシウムイオン及び2,5−ジヒドロキシテレフタル酸からなる骨格構造により形成された細孔にアルキルアミンを含有するものであり、実質的に、マグネシウムイオンに配位結合したアルキルアミンを含有せず、しない。また実質的に、マグネシウムイオンに配位結合した、分子内にアミノ基を含有する化合物を含有しない。
【0020】
アルキルアミンを含有することは、例えば、CHN分析、NMR、IR、TG−MASなどの一般的な組成分析により確認することができる。
【0021】
アルキルアミンの含有量は、4重量パーセントから13重量パーセントであることが好ましい。アルキルアミン含有量がこの範囲であることにより、本発明の多孔性配位高分子は、二酸化炭素の分圧が低い範囲における有効吸着量が特に多くなる。そのため、本発明の多孔性配位高分子を吸着剤として使用した際に二酸化炭素分圧の低いガスからの吸着分離を効率よく行うことができる。ここで、二酸化炭素の圧力が低い範囲とは、例えば50〜330mmHgの圧力範囲を挙げることができる。
【0022】
次に本発明の多孔性配位高分子の製造方法について説明する。
【0023】
本発明の多孔性配位高分子は、多孔性配位高分子にアルキルアミンを含有させる工程を含む製造方法により得ることができる。
【0024】
多孔性配位高分子は、マグネシウム源、及び2,5−ジヒドロキシテレフタル酸を溶媒中で混合し、この混合物を反応させて得ることができる。反応の際、撹拌や加熱をすることが好ましく、特に圧力容器中で溶媒の沸点以上に加熱することが好ましい。
【0025】
マグネシウム源としては、マグネシウムの単体、硝酸塩、塩化物、酢酸塩、炭酸塩、及び硫酸塩からなる群の少なくとも1種を挙げることができる。溶媒への溶解度が大きく反応の効率がよいため、硝酸塩又は塩化物の少なくともいずれかであることが好ましい。
【0026】
混合物の組成は、2,5−ジヒドロキシテレフタル酸に対するマグネシウムのモル比で0.1〜10であることが好ましい。反応の効率が向上するため、2,5−ジヒドロキシテレフタル酸に対するマグネシウムのモル比で0.33〜3が更に好ましい。
【0027】
溶媒は、マグネシウム源と2,5−ジヒドロキシテレフタル酸の両方を高濃度で溶解できるものであればよく、水、アルコール、アミド化合物、ニトリル化合物、スルホキシド化合物、及びスルホン化合物からなる群の少なくとも1種を用いることができる。
【0028】
反応温度は20℃以上、200℃以下であればよく、好ましくは50℃以上、170℃以下である。反応時間は100時間以下、更には50時間以下が好ましい。1時間以上であれば、混合物が十分に反応し、多孔性配位高分子が得られる。
【0029】
本発明の多孔性配位高分子は、アルキルアミンを含有させることで得ることができる。アルキルアミンとしては、エチレンアミン、エチレンジアミン、DETA、トリエチレンテトラミン、及びテトラエチレンペンタミンからなる群の少なくとも一種を挙げることができる。特にDETAを用いることが好ましい。
【0030】
多孔性配位高分子中のマグネシウムに対するアルキルアミンのモル比は、0.1から3であることが好ましい。これにより、得られる多孔性配位高分子の二酸化炭素の吸着量が多くなる。
【0031】
アルキルアミンは、ヘキサン、アルコール、アセトン、ベンゼン、トルエン、及びキシレンからなる群の少なくとも1種にアルキルアミンを溶解させた溶液であってもよい。好ましいアルキルアミンはトルエンにアルキルアミンを溶解させた溶液である。
【0032】
多孔性配位高分子にアルキルアミンを含有させる方法に特に制限はなく、撹拌法、含浸法、スプレードライ法などで行えばよく、特に攪拌法で行うことが好ましい。撹拌法で行う場合、例えばアルキルアミン溶液に多孔性配位高分子を浸漬させ、所定の温度で所定の時間撹拌させる方法を挙げることができる。
【0033】
本発明の多孔性配位高分子は、二酸化炭素吸着剤として使用することができる。前記吸着剤は、多孔性配位高分子を粉末、又は成形体の少なくともいずれかの形状で含んでいればよい。
【0034】
多孔性配位高分子を粉末として使用する場合、多孔性配位高分子をそのまま使用する方法、必要に応じて粉砕分級、または解砕して使用する方法をあげることができる。更には、スラリーとした上記多孔性配位高分子を担体の表面にコートして使用する方法を挙げることができる。
【0035】
成形体として使用する場合、多孔性配位高分子をバインダーと混合、成形して使用する方法を挙げることができる。
【0036】
本発明の多孔性配位高分子は、PSA法で使用する二酸化炭素吸着剤として使用できる。真空に近い圧力まで減圧することなく二酸化炭素の有効吸着量を多くすることができるため、特に大気圧以下の圧力で吸着、脱離を行うPSA法で使用する二酸化炭素吸着剤として使用することができる。ここで真空に近い圧力とは、50mmHgより低い圧力を例示できる。
【0037】
本発明の多孔性配位高分子を吸着剤として使用する際の被処理ガスは、二酸化炭素と、少なくとも1種の二酸化炭素より極性の低いガスとを含有するガスであればよい。二酸化炭素より極性の低いガスとして、窒素、酸素、及び希ガスを挙げることができる。より具体的には、空気や燃焼排ガスを挙げることができる。
【0038】
本発明の多孔性配位高分子の二酸化炭素吸着性能は、一定温度下においてある平衡圧力で吸着させた二酸化炭素の吸着量を、各平衡圧でプロットして得られる吸着等温線により確認することができる。
【0039】
さらに、本発明の多孔性配位高分子は、大気圧以下の広い圧力範囲で有効吸着量を多くすることができるため、低濃度から高濃度までの広い濃度範囲の被処理ガスにおいて使用することができる。従来のゼオライト吸着剤と比べ、多大な消費エネルギーを必要としない圧力範囲、例えば、平衡圧力50mmHg以上の圧力範囲で吸着、脱離できる有効着量が多くなる。例えば、平衡圧力50mmHg〜700mmHgにおけるPSA法での二酸化炭素の有効吸着量は、多孔性配位高分子1g当たり55NmL以上である。
【0040】
二酸化炭素を吸着、脱離するときの温度は特に限定されないが、20〜300℃、更には20〜100℃の任意の温度で行うことができる。本発明の多孔性配位高分子はより大気圧に近い圧力下での吸着、脱離に優れるため、より室温に近い温度、例えば、20〜40℃で行うPSA法であっても多くの二酸化炭素の除去が可能である。
【0041】
本発明の多孔性配位高分子は、PSA法に特に適しているが、温度スイング法(TSA法)や圧力−温度スイング法(PTSA法)により二酸化炭素を吸着分離する場合においても使用することができる。
【発明の効果】
【0042】
本発明により、二酸化炭素の有効吸着量が多い多孔性配位高分子、特に真空に近い圧力まで減圧することなく二酸化炭素の有効吸着量の多い多孔性配位高分子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【
図1】比較例1における多孔性配位高分子のXRDパターン
【
図2】実施例1における多孔性配位高分子のXRDパターン
【
図3】実施例2における多孔性配位高分子のXRDパターン
【
図4】実施例1及び2、比較例1及び2の、25℃における二酸化炭素吸着等温線(○:実施例1、□:実施例2、△:比較例1、◇:比較例2)
【実施例】
【0044】
以下、実施例および比較例に基づき本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら制限されるものではない。
【0045】
多孔性配位高分子の評価に用いた手法および条件を以下に示す。
【0046】
(結晶構造の同定)
一般的なX線回折装置(装置名:MXP−3、マックサイエンス社製)を用いた。XRD測定条件は以下のとおりである。
X線源 :Cu‐Kα線(λ=1.54050Å)
出力 :40kV、30mA
測定範囲 :3〜43deg.
ステップ幅 :0.02deg.(1sec)
サンプリング時間 :1秒
得られたXRDパターンを非特許文献2に記載のFig.3と比較することで、試料の結晶構造を同定した。
【0047】
(組成分析)
炭素(C)、窒素(N)、及び水素(H)の含有量はCHN分析装置(装置名:2400II、パーキンエルマー社製)で測定した。アミンを含有させる前後の多孔性配位高分子それぞれのC、H、N量を測定し、その差からアルキルアミン含有量を求めた。マグネシウムの含有量は、試料を硫酸と硝酸で湿式分解した後、一般的なICP発光分析装置(装置名:optima3000、パーキンエルマー社製)で測定した。測定により得られた元素量から、多孔性配位高分子の組成およびアルキルアミンの含有量を求めた。
【0048】
(BET比表面積)
試料のBET比表面積はBET多点法により測定した。測定装置及び測定条件は以下のとおりである。
装置 :BELSORP 28SA、日本ベル株式会社製
解析ソフトウェア:BELMaster バージョン5.3.3.0
前処理 :200℃、6.5時間、脱気処理
吸着ガス :窒素
吸脱着温度 :−196℃(窒素の沸点)
比表面積の算出に用いた平衡相対圧:0.05<p/p
0<0.15
【0049】
(二酸化炭素吸着量測定)
測定に先立ち、圧力1×10
−3mmHg以下で150℃、6時間、試料を前処理した。吸着ガスとして二酸化炭素を使用した定容量ガス吸着法により、前処理後の試料について、温度25℃における吸着等温線を測定した。測定には、一般的なガス吸着装置(装置名:BELSORP 28SA、日本ベル社製)を用い、平衡圧力0mmHgから800mmHgの各平衡圧力における二酸化炭素吸着量を測定した。得られた吸着等温線から、各平衡圧力における二酸化炭素吸着量を求めた。
【0050】
比較例1
フッ素樹脂内筒密閉容器に以下の原料を混合した。
2,5−ジヒドロキシテレフタル酸 : 1.12g(5.6mmol)
硝酸マグネシウム6水和物 : 4.75g(18.5mmol)
ジメチルホルムアミド : 450ml
エタノール : 30ml
水 : 30ml
【0051】
上記混合物を145℃で21時間反応させた。自然放冷後、反応物をメンブレンフィルターで濾過し、50mlのメタノールで洗浄した。その後、窒素気流下、100℃で3時間乾燥させることで淡黄色の粉末2.4gを得た。得られた粉末のXRD測定の結果、MOF−74と同じ結晶構造を有する多孔性配位高分子であることを確認した。XRDパターンを
図1に示す。得られた多孔性配位高分子のBET比表面積は1270m
2/gであった。
【0052】
実施例1
比較例1で得られた多孔性配位高分子0.4gを、DETA0.34gをトルエン26gに溶解させた溶液に浸漬させ、150℃で15時間還流した。その後、メンブレンフィルターで濾過し、50mlのエタノールで洗浄した後、窒素気流下、100℃で3時間乾燥させた。XRD測定の結果、MOF−74構造が保持されていることを確認した。XRDパターンを
図2に示す。組成分析の結果、DETAの含有量は2.9重量パーセントであった。
【0053】
実施例2
DETA量を0.68gとした以外は実施例1と同様に多孔性配位高分子にアルキルアミンを含有させた。XRD測定の結果、MOF−74結晶構造が保持されていることを確認した。XRDパターンを
図3に示す。組成分析の結果、DETAの含有量は4.6重量パーセントだった。
【0054】
実施例3
DETA量を1.02gとした以外は実施例1と同様に多孔性配位高分子に対してアルキルアミンを含有させた。XRD測定の結果、MOF−74結晶構造が保持されていることを確認した。組成分析の結果、DETAの含有量は9.8重量パーセントだった。
【0055】
実施例4
DETA量を1.35gとした以外は実施例1と同様に多孔性配位高分子に対してアルキルアミンを含有させた。XRD測定の結果、MOF−74結晶構造が保持されていることを確認した。組成分析の結果、DETAの含有量は12.4重量パーセントだった。
【0056】
実施例5
DETA量を2.03gとした以外は実施例1と同様に多孔性配位高分子に対してアルキルアミンを含有させた。組成分析の結果、DETAの含有量は14.4重量パーセントだった。
【0057】
比較例2
X型ゼオライト成型体(商品名:F−9HA、東ソー株式会社製)を本比較例の吸着剤とした。
【0058】
実施例1から5、および比較例1及び2ついて、二酸化炭素吸着量を測定した。各試料の平衡圧50mmHg、330mmHg、および700mmHgの二酸化炭素吸着量(NmL)を表1に示す。各試料の、圧力範囲50〜700mmHgにおける有効吸着量(以下、「V
50−700」とする。)、及び圧力範囲50〜330mmHgにおける有効吸着量(以下、「V
50−330」とする。)を表2に示す。また、実施例1及び2、比較例1及び2の二酸化炭素吸着等温線を
図4に示す。
【0059】
【表1】
【0060】
【表2】
【0061】
表2より、V
50−330における有効吸着量は、比較例が一部の実施例よりも高いことが分かる。しかしながら、V
50−700における有効吸着量は、いずれの実施例も比較例より高くなった。これより、本発明の多孔性配位高分子は、より高圧で高い有効吸着量を示すことが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明の多孔性配位高分子は、二酸化炭素の吸着分離に使用される吸着剤として使用することができる。特に、固定発生源から排出される燃焼排ガスのような排気ガスなど、高濃度で二酸化炭素を含むガスからの、二酸化炭素の吸着分離に適した吸着剤とすることができる。