特許第6609987号(P6609987)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6609987
(24)【登録日】2019年11月8日
(45)【発行日】2019年11月27日
(54)【発明の名称】共役ジエン系ゴムの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08C 19/22 20060101AFI20191118BHJP
   C08F 6/12 20060101ALI20191118BHJP
【FI】
   C08C19/22
   C08F6/12
【請求項の数】6
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2015-100127(P2015-100127)
(22)【出願日】2015年5月15日
(65)【公開番号】特開2016-216544(P2016-216544A)
(43)【公開日】2016年12月22日
【審査請求日】2018年3月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001494
【氏名又は名称】前田・鈴木国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】唐渡 毅
(72)【発明者】
【氏名】植田 英順
(72)【発明者】
【氏名】加藤 明博
【審査官】 藤本 保
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−179754(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/146530(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08C19/00−19/44
C08F8/00−8/50
C08F6/06−6/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)不活性溶媒中で、共役ジエン単量体、または、共役ジエン単量体と芳香族ビニル単量体とを含有する単量体混合物に、重合開始剤を添加して重合を行い、活性末端を有する共役ジエン重合体(I)を含有する溶液(X)を得る工程、
(B)共役ジエン重合体(I)の活性末端と反応する官能基を1分子中に3〜4個有する多官能性カップリング剤(a)を、溶液(X)に添加し、活性末端を有する共役ジエン重合体(I)の一部と多官能性カップリング剤(a)を反応させて溶液(Y)を得る工程、
(C)分子中に少なくとも1つの>C=O基と少なくとも1つの置換アミノ基を併せもつ末端変性剤(b)を、前記溶液(Y)に添加し、残余の活性末端を有する共役ジエン重合体(I)と反応させて、共役ジエン系ゴムを含有する溶液(Z)を得る工程、
(D)溶液(Z)から、共役ジエン系ゴムを回収する際に、ポーラス状のクラムにして乾燥させる工程を含む、ガラス転移温度が−110〜−70℃、かつ、カップリング率が20〜37%の共役ジエン系ゴムの製造方法。
【請求項2】
前記共役ジエン単量体、または、前記共役ジエン単量体と芳香族ビニル単量体とを含有する単量体混合物が、共役ジエン単量体77〜100重量%および芳香族ビニル単量体0〜23重量%を含有してなる請求項1に記載の共役ジエン系ゴムの製造方法。
【請求項3】
前記共役ジエン系ゴム中の、共役ジエン単量体単位のビニル結合含有量が5〜35重量%である請求項1又は2に記載の共役ジエン系ゴムの製造方法。
【請求項4】
前記多官能性カップリング剤(a)が、ハロゲン化スズ化合物である請求項1〜3のいずれかに記載の共役ジエン系ゴムの製造方法。
【請求項5】
前記分子中に少なくとも1つの>C=O基と少なくとも1つの置換アミノ基を併せもつ末端変性剤(b)が、N−置換環状アミド類であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の共役ジエン系ゴムの製造方法。
【請求項6】
前記カップリング率が20〜35%である、請求項1〜のいずれかに記載の共役ジエン系ゴムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、共役ジエン系ゴムの製造方法に関し、さらに詳しくは、重合体溶液から共役ジエン系ゴムを、操業性良く回収する製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、省資源や環境対策が重視されるにつれて、低燃費性に優れる自動車タイヤに対する要求水準は、ますます高まっている。低燃費性に優れるタイヤを製造するためには、一般に、低発熱性に優れ、走行時に発熱し難いゴム架橋物を形成することができるゴム材料の使用が有効である。特にベーストレッドやサイドウォールなどのタイヤのボディ部に用いるゴム材料は低燃費性の向上に特化しており、天然ゴムや、天然ゴムのガラス転移温度以下のガラス転移温度を有する合成ゴムと天然ゴムとのブレンドで用いられることが一般的であるが、低発熱性の更なる改善が求められている。
【0003】
低発熱性をさらに改善するタイヤを形成するための架橋性ゴム組成物としては、カーボンブラックで補強した架橋性ゴム組成物の場合、ゴム成分として末端変性溶液重合ブタジエンゴムや末端変性溶液重合スチレンブタジエンゴムの商業的利用が進んでいる。
例えば、特許文献1および特許文献2には、補強剤としてカーボンブラックを配合させ、架橋剤を加えたゴム組成物に適するゴム成分として、四塩化スズでカップリング反応させ、併せて分子中に−C(=M)−N<結合(Mは酸素原子または硫黄原子)を有する化合物を重合活性末端に反応させた共役ジエン系ゴムが開示されている。しかしながら、特許文献1および2で得られる共役ジエン系ゴムは、低発熱性に特に優れるタイヤを形成するための共役ジエン系ゴムとしては不十分である。
【0004】
一方、共役ジエン系ゴムの製造時において、共役ジエン系重合体溶液から共役ジエン系ゴムをスチームストリッピング法により凝固することで回収する際には、凝固によって得られたクラム(凝固クラム)が互着することによって凝固槽の壁面や攪拌翼に過度に付着することや、凝固クラムが移送配管を詰まらせることなどを防止し、凝固時の操業を安定化させることが必要である。また、凝固クラムから乾燥した共役ジエン系ゴムを得る際には、短い乾燥時間で乾燥させることが生産性向上の観点から好ましい。
【0005】
低発熱性に優れるタイヤを形成するための、他の共役ジエン系ゴムとして、特許文献3では、四塩化スズなどのカップリング剤を使用せず(カップリング率は実質的に0%)、分子中に−C(=M)−N<結合(Mは酸素原子または硫黄原子)を有する特定の構造の化合物を重合活性末端に反応させた、ミクロ構造から推定されるガラス転移温度が−40℃と−100℃のブタジエンゴムが開示されている。
しかしながら、特許文献3の共役ジエン系ゴムをスチームストリッピング法により凝固することで回収する際には、凝固によって得られたクラム(凝固クラム)が互着するため、上述したように凝固時の操業が不安定となる問題があった。
【0006】
また、凝固時の操業性が改善された、低発熱性に特に優れるタイヤを形成するためのガラス転移温度が低い共役ジエン系ゴムとして、特許文献4では、四塩化スズでカップリング反応させ、併せて、環状尿素誘導体化合物とを重合活性末端に反応させた、ミクロ構造から推定されるガラス転移温度が−65℃と比較的低いスチレンブタジエン共重合ゴムが開示されている。また、特許文献5には、四塩化スズでカップリング反応させ、併せて、二置換アミノ芳香族化合物とを重合活性末端に反応させたミクロ構造から推定されるガラス転移温度が−70℃と比較的低いブタジエンゴムが開示されている。しかしながら、特許文献4のスチレンブタジエン共重合ゴムは四塩化スズによるカップリング率が40%と高いこと、特許文献5のブタジエンゴムは重合処方から推定される四塩化スズによるカップリング率が50%と高いことで、クラムにして乾燥させた場合に微細な粉末の発生量が多く、乾燥時の操業性が悪いという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭61−103904号公報
【特許文献2】国際公開第96/16118号
【特許文献3】特開平1−249812号公報
【特許文献4】特開昭61−271338号公報
【特許文献5】特開昭62−109801号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1および2で得られる共役ジエン系ゴムは、共役ジエン単量体単位部分のビニル結合含有量が多い。これら共役ジエンの中でも、ガラス転移温度が−60℃以上の共役ジエン系ゴムの場合は、乾燥時の微細な粉末の発生量が少なく、乾燥時の操業性に問題は無いが、ガラス転移温度が低い共役ジエン系ゴム(ガラス転移温度が−70℃以下)の場合は、共役ジエン系ゴムをクラムにして乾燥する際に、微細な粉末状態となり易いので乾燥時の操業性が悪い(発生した微粉が製造装置の周囲に堆積したり、製造装置の隙間に目詰まりしたりすること)という問題があることがわかった。
【0009】
本発明の目的は、低燃費性に優れたタイヤの材料となる、カーボンブラック配合ゴム組成物を得るのに好適な共役ジエン系ゴムを重合体溶液から回収する際に、凝固クラムの互着等を抑制して凝固時の操業性を安定化させるとともに、クラムにして乾燥する際に微細な粉末が多量に発生することを防止して乾燥時の操業性を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意研究した結果、反応工程において、活性末端を有する共役ジエン重合体を特定のカップリング剤を用いてカップリングさせ、残余の活性末端を有する共役ジエン重合体を特定の化合物で末端変性することにより得られる共役ジエン系ゴムの、ガラス転移温度およびカップリング率を、特定の範囲に制御し、ポーラス状のクラムにして乾燥させることで、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0011】
かくして、本発明によれば、
(A)不活性溶媒中で、共役ジエン単量体、または、共役ジエン単量体と芳香族ビニル単量体とを含有する単量体混合物に、重合開始剤を添加して重合を行い、活性末端を有する共役ジエン重合体(I)を含有する溶液(X)を得る工程、
(B)共役ジエン重合体(I)の活性末端と反応する官能基を1分子中に3〜4個有する多官能性カップリング剤(a)を、溶液(X)に添加し、活性末端を有する共役ジエン重合体(I)の一部と多官能性カップリング剤(a)を反応させて溶液(Y)を得る工程、
(C)分子中に少なくとも1つの>C=O基と少なくとも1つの置換アミノ基を併せもつ末端変性剤(b)を、前記溶液(Y)に添加し、残余の活性末端を有する共役ジエン重合体(I)と反応させて、共役ジエン系ゴムを含有する溶液(Z)を得る工程、
(D)溶液(Z)から、共役ジエン系ゴムを回収する際に、ポーラス状のクラムにして乾燥させる工程を含む、ガラス転移温度が−110〜−70℃、かつ、カップリング率が20〜39%の共役ジエン系ゴムの製造方法が提供される。
そして、上記の、共役ジエン単量体、または、共役ジエン単量体と芳香族ビニル単量体とを含有する単量体混合物が、共役ジエン単量体77〜100重量%および芳香族ビニル単量体0〜23重量%を含有してなることが好ましい。
さらに、上記共役ジエン系ゴム中の、共役ジエン単量体単位のビニル結合含有量が5〜35重量%であることが好ましい。
また、上記多官能性カップリング剤(a)が、ハロゲン化スズ化合物であることが好ましい。
なお、上記分子中に少なくとも1つの>C=O基と少なくとも1つの置換アミノ基を併せもつ末端変性剤(b)は、N−置換環状アミド類であることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、低燃費性に優れたタイヤの材料となる、カーボンブラック配合ゴム組成物を得るのに好適な、ガラス転移温度が低い共役ジエン系ゴム(ガラス転移温度が−110〜−70℃)を重合体溶液から回収する際に、凝固クラムの互着等を抑制して凝固時の操業性を安定化させるとともに、ポーラス状のクラムにして乾燥する際に、微細な粉末状態となることを防止して乾燥時の操業性を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の共役ジエン系ゴムの製造方法は、
(A)不活性溶媒中で、共役ジエン単量体、または、共役ジエン単量体と芳香族ビニル単量体とを含有する単量体混合物に、重合開始剤を添加して重合を行い、活性末端を有する共役ジエン重合体(I)を含有する溶液(X)を得る工程、
(B)共役ジエン重合体(I)の活性末端と反応する官能基を1分子中に3〜4個有する多官能性カップリング剤(a)を、溶液(X)に添加し、活性末端を有する共役ジエン重合体(I)の一部と多官能性カップリング剤(a)を反応させて溶液(Y)を得る工程、
(C)分子中に少なくとも1つの>C=O基と少なくとも1つの置換アミノ基を併せもつ末端変性剤(b)を、前記溶液(Y)に添加し、残余の活性末端を有する共役ジエン重合体(I)と反応させて、共役ジエン系ゴムを含有する溶液(Z)を得る工程、
(D)溶液(Z)から、共役ジエン系ゴムを回収する際に、ポーラス状のクラムにして乾燥させる工程を含む、ガラス転移温度が−110〜−70℃、かつ、カップリング率が20〜39%の共役ジエン系ゴムの製造方法である。
【0014】
活性末端を有する共役ジエン重合体(I)を含有する溶液(X)を得る工程(A)
本発明においては、不活性溶媒中で、共役ジエン単量体、または、共役ジエン単量体と芳香族ビニル単量体とを含有する単量体混合物に、重合開始剤を添加して重合を行い、活性末端を有する共役ジエン重合体(I)を含有する溶液(X)を得る。
【0015】
本発明において、活性末端を有する共役ジエン重合体(I)は、共役ジエン重合体の分子末端の少なくとも一つが活性を有しているものをいう。活性末端を有する共役ジエン重合体(I)は、1分子中に1個以上の活性末端を有していることが好ましく、1分子中に1個の活性末端を有していることがより好ましい。ここで、活性末端とは、不活性溶媒中で共役ジエン系単量体を重合した際に生じる金属末端のことをいう。
【0016】
活性末端を有する共役ジエン重合体(I)は、共役ジエン単量体のみからなる重合体、および、共役ジエン単量体と芳香族ビニル単量体のみからなる重合体の他、共役ジエン単量体または芳香族ビニル単量体と共重合可能なその他の単量体との共重合体も含む。
【0017】
本発明で用いる共役ジエン単量体は、特に限定されず、例えば、1,3−ブタジエン、イソプレン(2−メチル−1,3−ブタジエン)、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2−クロロ−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエンなどを用いることができる。これらの中でも、1,3−ブタジエン、イソプレンを用いることが好ましく、1,3−ブタジエンを用いることがより好ましい。これらの共役ジエン単量体は、1種単独でも、2種以上を併用しても良い。
【0018】
本発明で用いる芳香族ビニル単量体としては、特に限定されず、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ジメチルアミノメチルスチレン、ジメチルアミノエチルスチレンなどを用いることができる。これらの中でも、スチレンを用いることが好ましい。これらの芳香族ビニル単量体は、1種単独でも、2種以上を併用しても良い。
【0019】
共役ジエン単量体、または、共役ジエン単量体と芳香族ビニル単量体とを含有する単量体混合物、を用いて重合を行う場合、共役ジエン単量体と芳香族ビニル単量体との比率(共役ジエン単量体/芳香族ビニル単量体)は、(77〜100重量%)/(23〜0重量%)の範囲にあることが好ましく、(82〜100重量%)/(18〜0重量%)の範囲にあることがより好ましく、(90〜100重量%)/(10〜0重量%)の範囲にあることが特に好ましい。共役ジエン単量体と芳香族ビニル単量体との比率が上記範囲にあると、本発明の製造方法により得られる共役ジエン系ゴムのガラス転移温度が低下し、低発熱性に優れる。
【0020】
活性末端を有する共役ジエン重合体(I)の全単量体単位に対する共役ジエン単量体単位の含有割合は、得られる共役ジエン系ゴムの低発熱性向上の観点から、好ましくは77〜100重量%、より好ましくは82〜100重量%、特に好ましくは90〜100重量%である。
また、活性末端を有する共役ジエン重合体(I)の全単量体単位に対する芳香族ビニル単量体単位の含有割合は、得られる共役ジエン系ゴムの低発熱性向上の観点から、好ましくは23〜0重量%、より好ましくは18〜0重量%、特に好ましくは10〜0重量%である。
【0021】
活性末端を有する共役ジエン重合体(I)は、本発明の効果を損なわない範囲において、共役ジエン単量体および芳香族ビニル単量体以外の他の単量体単位を含有することができる。その他の単量体単位の含有割合は、全単量体単位中、10重量%以下とするのが好ましく、5重量%以下とするのがより好ましい。
【0022】
その他の単量体単位を形成する単量体としては、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのα,β−不飽和ニトリル;アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸などの不飽和カルボン酸または酸無水物;メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチルなどの不飽和カルボン酸エステル;1,5−ヘキサジエン、1,6−ヘプタジエン、1,7−オクタジエン、ジシクロペンタジエン、5−エチリデン−2−ノルボルネンなどの非共役ジエン;などを挙げることができる。
【0023】
なお、上記活性末端を有する共役ジエン重合体(I)の各単量体単位の含有割合は、活性末端を有する共役ジエン重合体(I)を含有する溶液に過剰(「活性末端を有する共役ジエン重合体(I)と反応させて、全ての活性末端を消滅させるのに十分な量」、以下同様)のメタノールを添加して活性末端と反応させて得られる重合体における各単量体単位の含有割合をいう。
【0024】
活性末端を有する共役ジエン重合体(I)は、その共役ジエン単量体単位のビニル結合含有量が、5〜35重量%であることが好ましく、8〜25重量%であることがより好ましく、8〜15重量%であることが特に好ましい。
活性末端を有する共役ジエン重合体(I)のビニル結合含有量が上記範囲にあると、本発明の製造方法により得られる共役ジエン系ゴムのビニル結合含有量も上記範囲になり、該共役ジエン系ゴムのガラス転移温度が低下し、低発熱性に優れる。また、活性末端を有する共役ジエン重合体(I)の共役ジエン単量体単位のビニル結合含有量は、活性末端を有する共役ジエン重合体(I)を含有する溶液に過剰のメタノールを添加して活性末端と反応させて得られる重合体のビニル結合含有量をいう。
【0025】
活性末端を有する共役ジエン重合体(I)において、ガラス転移温度は、−110〜−70℃であることが好ましく、−100〜−80℃であることがより好ましく、−100〜−90℃であることが特に好ましい。
活性末端を有する共役ジエン重合体(I)のガラス転移温度が上記範囲にあると、本発明の製造方法により得られる共役ジエン系ゴムのガラス転移温度も上記範囲になり、低発熱性に優れる。一方、ガラス転移温度が上記範囲より高くなると、乾燥時の微細な粉末の発生量が少なく乾燥時の操業性は良好となるが、得られる共役ジエン系ゴムが低発熱性に劣る。なお、活性末端を有する共役ジエン重合体(I)のガラス転移温度は、活性末端を有する共役ジエン重合体(I)を含有する溶液に過剰のメタノールを添加して活性末端と反応させて得られる重合体のガラス転移温度をいう。
【0026】
ガラス転移温度は、共役ジエン単量体と芳香族ビニル単量体との比率、共役ジエン単量体と芳香族ビニル単量体とその他の単量体との比率、共役ジエン単量体単位におけるビニル結合含有量を調整することで、制御できる。例えば、ガラス転移温度を下げたい場合には、重合に用いる芳香族ビニル単量体の比率を下げたり、共役ジエン単量体単位におけるビニル結合含有量を低下させれば良い。
【0027】
上記単量体を重合して活性末端を有する共役ジエン重合体(I)を含有する溶液(X)を得る方法としては、溶液重合が好ましい。
溶液重合に用いられる不活性溶媒としては、重合反応を阻害しないものであれば、特に制限なく使用できる。例えば、ブタン、ペンタン、ヘキサン、2−ブテンなどの脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロへキサン、シクロヘキセンなどの脂環式炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素;などが挙げられるが、脂環式炭化水素が好ましく、シクロへキサンが特に好ましい。
不活性溶媒の使用量は、単量体濃度が、通常、1〜50重量%となる量であり、好ましくは10〜40重量%となる量である。
【0028】
上記重合に際しては、重合開始剤を用いる。重合開始剤としては、上記単量体を重合させて、活性末端を有する共役ジエン重合体(I)を与えることができるものであれば、特に制限なく使用できる。例えば、有機アルカリ金属化合物、有機アルカリ土類金属化合物、および主触媒としてランタノイドを用いる重合開始剤が好ましく使用されるが、有機アルカリ金属化合物がより好ましい。有機アルカリ金属化合物としては、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、t−ブチルリチウム、ヘキシルリチウム、フェニルリチウム、スチルベンリチウムなどの有機モノリチウム化合物が好ましく、n−ブチルリチウムが特に好ましい。
なお、有機アルカリ金属化合物は、予め、ジブチルアミン、ジヘキシルアミン、ジベンジルアミン、ピロリジン、ヘキサメチレンイミン、ヘプタメチレンイミンなどの第2級アミンと反応させて、有機アルカリ金属アミド化合物として使用してもよい。これらの重合開始剤は、1種単独で、または2種以上を併用しても良い。
【0029】
重合開始剤の使用量は、単量体の全量1000g当り、通常、1〜50ミリモル、好ましくは2〜20ミリモル、より好ましくは4〜10ミリモルの範囲である。
【0030】
上記重合においては、活性末端を有する共役ジエン重合体(I)のビニル結合含有量を調節するために、重合に際し、不活性溶媒中に極性化合物を含有させることが好ましい。不活性溶媒中の極性化合物量が多いと、活性末端を有する共役ジエン重合体(I)のビニル結合含有量が増加し、不活性溶媒中の極性化合物量が少ないと、活性末端を有する共役ジエン重合体(I)のビニル結合含有量が減少する。
また、重合開始時の他に、後述するカップリング反応や末端変性反応を制御するために、重合途中で、追加の極性化合物を添加してもよい。極性化合物の含有量は、重合に用いる重合開始剤1モルに対し、0.005〜30モルとすることが好ましい。
【0031】
極性化合物としては、特に限定されないが、例えば、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールジブチルエーテル、2,2−ジ(テトラヒドロフリル)プロパンなどのエーテル化合物;テトラメチルエチレンジアミンなどの第3級アミン;ホスフィン化合物;などが挙げられる。これらの中でも、重合開始剤の金属とキレート構造を形成しうるものが好ましく、エーテル化合物および第3級アミンがより好ましく、2,2−ジ(テトラヒドロフリル)プロパン、およびテトラメチルエチレンジアミンが特に好ましい。
【0032】
重合温度は、通常、−80〜150℃、好ましくは0〜120℃、より好ましくは30〜100℃の範囲である。重合温度をこの範囲内に制御するには、重合開始前においては、重合反応に用いる単量体や溶媒を事前に上記温度の範囲内にしてからオートクレーブ等の重合反応器に投入する方法、ジャケットやカランドリアを設置した重合反応器に単量体と溶媒を投入し、温度を前記範囲内とする方法、およびその両者の方法をとることができる。重合が開始した後には、重合熱により重合温度を昇温させて、重合温度を前記範囲内とすることが商業生産の上では好ましい。重合反応中に発生する重合熱により重合温度を前記範囲内とするために外部からの冷却が必要な場合は、ジャケット、カランドリアや、凝縮器による還流式冷却器を設置した重合反応器で重合温度を前記範囲内とすることができる。還流式冷却器を設置した重合反応器で重合を行う場合は、重合体を含む溶液が発泡や突沸により還流式冷却器内に到達し、重合体が還流式冷却器内に付着することで冷却能力が低下する場合がある。その場合、重合反応熱の冷却操作時において重合反応器内の圧力が変動する幅を小さくすることや、重合体を含む溶液の粘度に合わせて単量体や溶媒の投入量を設定することで、重合体を含む溶液の還流式冷却器内への到達を抑制することができる。
【0033】
重合様式としては、回分式、連続式などいずれの様式をも採用できるが、本発明の製造方法により得られる共役ジエン系ゴムの低発熱性が良好になることから、回分式がより好ましい。
【0034】
活性末端を有する共役ジエン重合体(I)が、共役ジエン単量体単位と芳香族ビニル単量体単位とを有する場合、共役ジエン単量体単位と芳香族ビニル単量体単位との結合様式は、例えば、ブロック状、テーパー状、ランダム状など種々の結合様式とすることができる。また、共役ジエン単量体単位と芳香族ビニル単量体単位との結合様式をランダム状にする場合、重合系内において、共役ジエン単量体と芳香族ビニル単量体との合計量に対する芳香族ビニル単量体の比率が高くなりすぎないように、共役ジエン単量体または共役ジエン単量体と芳香族ビニル単量体とを、連続的または断続的に重合系内に供給して重合することが好ましい。
【0035】
活性末端を有する共役ジエン重合体(I)は、そのピークトップ分子量(p)が、100,000〜1,000,000であることが好ましく、150,000〜800,000であることがより好ましく、200,000〜600,000であることが特に好ましい。ここで、ピークトップ分子量(p)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ−(ポリスチレン換算)により測定するものとし、測定対象のピークが複数ある場合は、重量分率で最も多い成分のピークのピークトップ分子量を、そのもののピークトップ分子量(p)であるものとする。活性末端を有する共役ジエン重合体(I)のピークトップ分子量(p)が上記範囲内にあると、本発明の製造方法により得られる共役ジエン系ゴムは、低発熱性に優れる。
なお、活性末端を有する共役ジエン重合体(I)のピークトップ分子量(p)は、活性末端を有する共役ジエン重合体(I)を含有する溶液に過剰のメタノールを添加して活性末端と反応させて得られる重合体のピークトップ分子量をいう。
【0036】
多官能性カップリング剤(a)を反応させて溶液(Y)を得る工程(B)
本発明においては、共役ジエン重合体(I)の活性末端と反応する官能基を1分子中に3〜4個有する多官能性カップリング剤(a)を、溶液(X)に添加し、活性末端を有する共役ジエン重合体(I)の一部と多官能性カップリング剤(a)を反応させて溶液(Y)を得る。
【0037】
共役ジエン重合体(I)の活性末端と反応する官能基を1分子中に3〜4個有する多官能性カップリング剤(a)としては、特に限定されないが、四塩化錫、モノメチルトリクロロ錫、モノエチルトリクロロ錫、モノブチルトリクロロ錫、モノヘキシルトリクロロ錫などのハロゲン化スズ化合物が好適であるスズ系カップリング剤;四塩化ケイ素、モノメチルトリクロロケイ素、モノエチルトリクロロケイ素、モノブチルトリクロロケイ素、モノヘキシルトリクロロケイ素、テトラエトキシケイ素、テトラブトキシケイ素、モノクロロトリメトキシケイ素、N,N−ビス(トリスメチルシリル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N,N−ビス(トリスメチルシリル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、{3−(ジエチルアミノ)プロピル}トリメトキシシラン、{3−(ジエチルアミノ)プロピル}トリエトキシシラン、2−シアノエチルトリエトキシシランなどのケイ素系カップリング剤;2,4−トリレンジイソシアナート、2,6−トリレンジイソシアナートなどのイソシアネート系カップリング剤;テトラグリシジル−1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン、テトラグリシジル−1,3−ビスアミノメチルベンゼンなどのエポキシ系カップリング剤;などを挙げることができるが、本発明の効果がより一層顕著になることから、スズ系カップリング剤が好ましく、ハロゲン化スズ化合物がより好ましく、四塩化錫が特に好ましい。これらのカップリング剤は、1種単独でも、2種以上を併用しても良い。
【0038】
多官能性カップリング剤(a)の使用量は、重合に使用した重合開始剤1モルに対し、通常、0.050〜0.13モル、好ましくは0.055〜0.12モル、より好ましくは0.060〜0.10モルに相当する量である。多官能性カップリング剤(a)の使用量が上記範囲にあると、本発明の製造方法で得られる共役ジエン系ゴムのカップリング率が、本発明で規定する範囲内のカップリング率になり易い。
【0039】
なお、本発明の製造方法により得られる共役ジエン系ゴムのカップリング率とは、共役ジエン系ゴム全量に対する、活性末端を有する共役ジエン重合体(I)が多官能性カップリング剤(a)と反応して結合した構造になっている部分の割合を意味するが、本発明においては、後述するように、共役ジエン系ゴムをゲルパーミエーションクロマトグラフィ−で測定(ポリスチレン換算)し、得られた分析チャートから、全溶出面積に対する、カップリング反応をしなかった共役ジエン重合体のピーク分子量(上記ピークトップ分子量(p)、通常は分子量の最も小さいピーク)の2.5倍〜4.5倍の範囲にあるピーク(2.5〜4.5倍の分子量を有する部分の面積)の面積比を、カップリング率とする。
【0040】
本発明の製造方法により得られる共役ジエン系ゴムにおいて、カップリング率は20%〜39%、より好ましくは24%〜37%、特に好ましくは27%〜35%である。共役ジエン系ゴムのカップリング率が上記範囲内にあると、凝固時の操業性を安定化させるとともに、乾燥時の操業性を向上させることができ、得られる共役ジエン系ゴムが低発熱性に優れる。
【0041】
すなわち、本発明の製造方法により得られる共役ジエン系ゴムのカップリング率が上記範囲を超えている場合、共役ジエン系ゴムをポーラス状のクラムにして乾燥させる際に、微細な粉末状態になり易く、発生した粉末が製造装置の周囲に堆積する他、製造装置の隙間に目詰まりするため操業性に劣り、さらに、得られる共役ジエン系ゴムは、低発熱性に劣る。逆に、本発明の製造方法により得られる共役ジエン系ゴムのカップリング率が上記範囲を下回る場合には、上述の微細な粉末の発生の抑制効果にこれ以上の向上が見られないばかりでなく、共役ジエン系ゴムを重合体溶液からスチームストリッピング法で凝固させて回収する際には、凝固により生成した共役ジエン系ゴムのクラム(凝固クラム)が互着することで、凝固槽の壁面や攪拌翼に過度に付着することや、凝固クラムが移送配管を詰まらせ易く、凝固時の操業安定性が悪い。また、乾燥して得られた共役ジエン系ゴムが、保管の際の形状保持性に劣る。
【0042】
末端変性剤(b)と共役ジエン重合体(I)と反応させる工程(C)
本発明においては、分子中に少なくとも1つの>C=O基と少なくとも1つの置換アミノ基を併せもつ末端変性剤(b)を、前記溶液(Y)に添加し、残余の活性末端を有する共役ジエン重合体(I)と反応させて、共役ジエン系ゴムを含有する溶液(Z)を得る。
【0043】
分子中に少なくとも1つの>C=O基と少なくとも1つの置換アミノ基を併せもつ末端変性剤(b)においては、>C=O基と置換アミノ基とは隣接していてもよいし、離れていてもよい。これらの官能基が隣接する化合物としては、例えば、−C(=O)−N<結合を有するアミド類、イミド類、尿素類、イソシアヌル酸類などが挙げられる。これらのなかでも、環状化合物が好ましく、N−置換環状アミド類、N−置換環状尿素類がより好ましく、N−置換環状アミド類が特に好ましい。また>C=O基と置換アミノ基とが離れている化合物としては、N−置換アミノケトン類、N−置換アミノアルデヒド類などが挙げられるが、N−置換アミノケトン類が好ましい。
【0044】
末端変性剤(b)の具体例としては、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドン、N−フェニル−2−ピロリドン、N−t−ブチル−2−ピロリドン、N−メチル−2−ピペリドン、N−フェニル−2−ピペリドン、N−メチル−ε−カプロラクタム、N−フェニル−ε−カプロラクタムなどのN−置換環状アミド類;1,3−ジメチルエチレン尿素、1,3−ジエチル−2−イミダゾリジノン、1−メチル−3−エチル−2−イミダゾリジノンなどのN−置換環状尿素類;4,4′−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4′−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノンなどのN−置換アミノケトン類;4−N,N−ジメチルアミノベンズアルデヒドなどのN−置換アミノアルデヒド類;などが挙げられるが、これらの中でも、4,4′−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、N−メチル−ε−カプロラクタム、N−メチル−2−ピロリドン、および、N−フェニル−2−ピロリドンが特に好ましい。これらの末端変性剤(b)は、1種単独でも、2種以上を併用しても良い。
【0045】
末端変性剤(b)の使用量は、末端変性剤(b)の種類または要求される特性によって適宜選択されるが、使用する重合開始剤1モルに対し、通常、0.01〜10モル、好ましくは0.05〜5モル、特に好ましくは0.05 〜3モルの範囲である。末端変性剤(b)の使用量が上記範囲にあると、得られる共役ジエン系ゴムは低発熱性に優れ、末端変性剤(b)の使用量を抑制できる。
【0046】
本発明においては、末端変性剤(b)と活性末端を有する共役ジエン重合体(I)とを反応させて得られる共役ジエン重合体鎖の構造を安定化させるために、共役ジエン系ゴム100重量部当り0.01〜10重量部のアミノ基含有化合物を添加してもよい。通常、1級、2級、および3級アミノ基含有化合物が挙げられるが、1級、および2級アミノ基含有化合物が好ましい。アミノ基含有化合物の具体例としては、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ヘキシルアミン、デシルアミン、ステアリルアミンなどの脂肪族モノアミン化合物;テトラエチレンペンタミン、ジエチレントリアミン、N,N′−ジブチルエチレンジアミン、N,N′−ジオクチル−p−フェニレンジアミンなどの多価アミン又はポリアミン化合物;モルホリン、チオモルホリンなどのイミン化合物;トルイジン、N−メチルアニリンなどの芳香族アミン化合物;などが挙げられる。これらのアミノ基含有化合物を添加する時期は、特に限定されず、重合停止反応後から共役ジエン系ゴムを乾燥ゴムとして回収する以前であればよく、具体的には、重合停止反応後の重合体溶液に添加することや、スチームストリッピング後の溶媒を除去した凝固クラムに添加することができる。
【0047】
活性末端を有する共役ジエン重合体(I)を含有する溶液に、多官能性カップリング剤(a)や末端変性剤(b)を添加する際には、カップリング反応や末端変性反応を良好に制御する観点から、多官能性カップリング剤(a)や末端変性剤(b)を不活性溶媒に溶解して得られる溶液を、活性末端を有する共役ジエン重合体(I)を含有する溶液(溶液(X)および/または溶液(Y))に添加することが好ましい。
多官能性カップリング剤(a)や末端変性剤(b)を不活性溶媒に溶解して得られる溶液の濃度は、1〜50重量%であることが好ましい。
また、これに用いる不活性溶媒としては、上記溶液重合に用いられる不活性溶媒と同様のものを用いることができる。
【0048】
活性末端を有する共役ジエン重合体(I)と、多官能性カップリング剤(a)や末端変性剤(b)を反応させる条件は、特に限定されないが、反応温度は、通常、10〜150℃、好ましくは40〜120℃、より好ましくは50〜100℃の範囲である。反応温度が低すぎると、反応が完了しない場合がある。一方、反応温度が高すぎると、反応の制御が難しい。
反応時間は、通常、5〜60分、好ましくは10〜50分、より好ましくは10〜30分の範囲である。反応時間が短すぎると、多官能性カップリング剤(a)や末端変性剤(b)の、活性末端を有する共役ジエン重合体(I)を含有する溶液への拡散時間が足りず、反応が完了しない場合がある。一方、反応時間が長すぎると、生産性に劣る。
【0049】
活性末端を有する共役ジエン重合体(I)を含有する溶液に、多官能性カップリング剤(a)や末端変性剤(b)を添加する時期は、特に限定されないが、重合反応が完結しておらず、活性末端を有する共役ジエン重合体(I)を含有する溶液(溶液(X)および/または溶液(Y))が未反応単量体をも含有している状態、より具体的には、活性末端を有する共役ジエン重合体(I)を含有する溶液が、20重量ppm以上(より好ましくは100〜50,000重量ppm)の未反応単量体を含有している状態で、多官能性カップリング剤(a)や末端変性剤(b)を添加することが好ましい。多官能性カップリング剤(a)や末端変性剤(b)の添加をこのように行なうことにより、活性末端を有する共役ジエン重合体(I)と、重合系中に含まれる不純物等との副反応を抑制して、反応を良好に制御することが可能となる。
【0050】
また、本発明においては、末端変性剤(b)と共役ジエン重合体(I)とを反応させた後、例えば、メタノール、イソプロパノールなどのアルコールや水を添加して反応を停止し、共役ジエン系ゴムを含有する溶液(Z)を得ることが好ましい。
【0051】
そして、本発明においては、末端変性剤(b)と共役ジエン重合体(I)とを反応させた後、所望により、フェノール系安定剤、リン系安定剤、イオウ系安定剤などの老化防止剤を添加しても良い。これらの老化防止剤は、1種単独でも、2種以上を併用しても良い。なお、老化防止剤の添加量は、その種類などに応じて決めればよい。
【0052】
さらに、後述のスチームストリッピングにより溶媒を分離する場合には、クラム化剤、スケール防止剤などを添加しても良い。クラム化剤としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩などのアニオン界面活性剤、脂肪酸(オクテン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸など)のアミン塩などのカチオン界面活性剤、ポリエチレンオキサイド高級アルコールエーテル、エチレンオキサイドとポリプロピレンオキサイドとのブロック共重合体などが例示される。
【0053】
これらのクラム化剤は、スチームストリッピングに使用する水に対して、好ましくは0.1〜3000重量ppmになるように添加されるが、あらかじめ溶液(Z)や、スチームストリッピングに使用する水、または溶液(Z)とスチームストリッピングに使用する水との両方に添加してもよい。
【0054】
また、溶媒を分離する前に、溶液(Z)に伸展油を混合し、共役ジエン系ゴムを油展ゴムとして回収してもよい。
共役ジエン系ゴムを、油展ゴムとして回収する場合に用いる伸展油としては、ゴム分野において通常使用されるものが使用でき、パラフィン系、芳香族系、ナフテン系の石油系軟化剤;植物系軟化剤、脂肪酸などが挙げられる。これらの伸展油は1種単独でも、2種以上を併用しても良い。
なお、石油系軟化剤を用いる場合、多環芳香族の含有量が3重量%未満であることが好ましい。この含有量は、IP346の方法(英国のTHE INSTITUTE PETROLEUMの検査方法)により測定される。
また、伸展油を使用する場合、その含有量は、溶液(Z)中の共役ジエン系ゴム100重量部に対し、通常、5〜100重量部、好ましくは10〜60重量部、より好ましくは20〜50重量部である。
【0055】
本発明の製造方法で得られる共役ジエン系ゴムの分子量分布(Mw/Mn)は、通常、1.1〜4.0、好ましくは1.2〜2.2、より好ましくは1.2〜1.8である。共役ジエン系ゴムの分子量分布(Mw/Mn)が上記範囲にあると、本発明の製造方法により得られる共役ジエン系ゴムは、低発熱性に優れる。
【0056】
本発明の製造方法で得られる共役ジエン系ゴムのムーニー粘度(油展ゴムとして回収した場合は油展した後のムーニー粘度)は、通常、10〜150、好ましくは20〜90、より好ましくは40〜70である。
【0057】
共役ジエン系ゴムを、ポーラス状のクラムにして乾燥させる工程(D)
本発明においては、共役ジエン系ゴムを含有する溶液(Z)から、共役ジエン系ゴムを回収する際に、ポーラス状のクラムにして乾燥させる。
【0058】
溶液(Z)から共役ジエン系ゴムを乾燥ゴムとして回収する際には、短い乾燥時間で回収することが生産性向上の観点から好ましく、そのためには、ポーラス状のクラムにすることで、通風性を良くして乾燥を早めることができる。
【0059】
クラムをポーラス状とするための方法は、特に限定されないが、例えば、
(ア)二軸押出機を用いて、共役ジエン系ゴムを含有する溶液(Z)から溶媒を揮発させる方法、
(イ)溶液(Z)にスチームストリッピングを行うことにより、溶媒を分離した共役ジエン系ゴムの凝固クラムを得、該凝固クラム中の水分を揮発させる際に、二軸押出機の脱気ゾーンにおいて、共役ジエン系ゴムのクラムを圧縮して、次いで断熱膨張させることで、クラムをポーラス状にして、クラム内部の揮発成分を揮発させる方法、
(ウ)溶液(Z)にスチームストリッピングを行うことにより、溶媒を分離した共役ジエン系ゴムの凝固クラムを得、エクスパンジョンドライヤーに投入して、共役ジエン系ゴムのクラムをエクスパンジョンドライヤーの排出口から大気中へ断熱膨張させることで、クラムをポーラス状にして、クラム内部の揮発成分を揮発させる方法、
(エ)溶液(Z)にスチームストリッピングを行うことにより、溶媒を分離した共役ジエン系ゴムの凝固クラムを得、該凝固クラムを、脱水機で脱水後に、粉砕刃を備えた粉砕機で粉砕することで、クラムをポーラス状にする方法(凝固クラムが、回転する粉砕刃と衝突する際、穴が空くためポーラス状になる)、などが挙げられるが、電力と熱量との合計使用エネルギー削減の観点から、上記(ウ)および(エ)の方法が好ましく、上記(エ)の方法が特に好ましい。
なお、上記(エ)の方法においては、粉砕刃を備えた粉砕機で粉砕する前に、凝固クラムを脱水機に投入して、該脱水機から排出した共役ジエン系ゴムのクラムを粉砕刃を備えた粉砕機で粉砕するが、脱水機としては、一軸押出脱水機、二軸押出脱水機などの押出脱水機が好ましい。
【0060】
粉砕刃を備えた粉砕機で粉砕する温度は、10〜130℃が好ましく、30〜120℃が特に好ましい。
また、粉砕刃の回転数は、10〜3,500rpmが好ましく、200〜2,000rpmが特に好ましい。
さらに、粉砕機内でのクラムの平均滞留時間は、1秒〜20分間が好ましく、10秒〜10分間が特に好ましい。
【0061】
粉砕刃を備えた粉砕機としては、粉砕刃の回転によりクラムを粉砕する機能を有するものであれば特に限定されない。その具体例としては、粉砕造粒整粒機(商品名:クイックミルQMY−30、(株)セイシン企業製)などが挙げられる。
【0062】
粉砕刃を備えた粉砕機による粉砕後のクラムの体積平均粒径は、上限として30mm以下が好ましく、10mm以下がより好ましく、下限として3.0mm以上が好ましい。
粉砕後のクラムの体積平均粒径が、上記範囲内であるときに、生産性が良く、効率的に乾燥できるポーラス状のクラムを得ることが容易になる。
【0063】
本発明においては、上述のようにして得られたポーラス状の共役ジエン系ゴムのクラムを、温風乾燥機、常温送風乾燥機、減圧乾燥機や真空乾燥機で乾燥させることで、乾燥時間が短縮され生産性が良好となる。
乾燥の温度は、特に限定されないが、通常、10〜220℃、好ましくは20〜200℃、より好ましくは50〜170℃の範囲である。温度が低すぎると乾燥時間が長くかかりすぎるため生産性に劣り、逆に温度が高すぎると、共役ジエン系ゴムが劣化する恐れがある。
【0064】
本発明の製造方法で得られる共役ジエン系ゴムの全単量体単位に対する共役ジエン単量体単位の含有割合は、好ましくは77〜100重量%、より好ましくは82〜100重量%、特に好ましくは90〜100重量%であり、芳香族ビニル単量体単位の含有割合は、好ましくは23〜0重量%、より好ましくは18〜0重量%、特に好ましくは10〜0重量%である。共役ジエン単量体と芳香族ビニル単量体との比率が上記範囲にあると、本発明の製造方法により得られる共役ジエン系ゴムのガラス転移温度が低下し、低発熱性に優れる。
【0065】
本発明の製造方法で得られる共役ジエン系ゴムは、本発明の効果を損なわない範囲において、共役ジエン単量体および芳香族ビニル単量体以外の他の単量体単位を含有することができる。その他の単量体単位の含有割合は、全単量体単位中、10重量%以下とするのが好ましく、5重量%以下とするのがより好ましい。
【0066】
本発明の製造方法で得られる共役ジエン系ゴムのビニル結合含有量は、5〜35重量%であることが好ましく、8〜25重量%であることがより好ましく、8〜15重量%であることが特に好ましい。共役ジエン系ゴムのビニル結合含有量が上記範囲にあると、本発明の製造方法により得られる共役ジエン系ゴムのガラス転移温度が低下し、低発熱性に優れる。なお、本発明の製造方法で得られる共役ジエン系ゴムのビニル結合含有量は、上述の活性末端を有する共役ジエン重合体(I)のビニル結合含有量と同様であるため、活性末端を有する共役ジエン重合体(I)のビニル結合含有量を調整することにより制御できる。
【0067】
本発明の製造方法で得られる共役ジエン系ゴムのガラス転移温度は、−110〜−70℃であることが好ましく、−100〜−80℃であることがより好ましく、−100〜−90℃であることが特に好ましい。共役ジエン系ゴムのガラス転移温度が上記範囲にあると、低発熱性に優れる。
【0068】
本発明の製造方法により得られる共役ジエン系ゴムは、上述の方法で測定したカップリング率が20%〜39%、より好ましくは24%〜37%、特に好ましくは27%〜35%である。共役ジエン系ゴムのカップリング率が上記範囲内にあると、凝固時の操業性を安定化させるとともに、乾燥時の操業性を向上させることができ、得られる共役ジエン系ゴムが低発熱性に優れる。
【0069】
本発明の製造方法で得られる共役ジエン系ゴムには、その他のゴムを配合してもよい。その他のゴムとしては、例えば、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエン共重合ゴム、スチレン−イソプレン共重合ゴム、ブタジエン−イソプレン共重合ゴム、スチレン−イソプレン−ブタジエン共重合ゴムなどのうち、本発明の製造方法で得られる共役ジエン系ゴム以外のものをいう。これらのゴムは、1種単独でも、2種以上を併用しても良い。
【0070】
本発明の製造方法で得られる共役ジエン系ゴムに、その他のゴムを配合する場合、ゴム成分全量に対する本発明の製造方法で得られる共役ジエン系ゴムの割合は、5重量%以上が好ましく、10〜80重量%がより好ましく、20〜70重量%が特に好ましい。上記範囲にある場合に、タイヤなどにした場合の物性のバランスに優れる。
【0071】
本発明の製造方法で得られる共役ジエン系ゴムには、充填剤を含有させて共役ジエン系ゴム組成物とすることが好ましい。充填剤の含有量は、共役ジエン系ゴム組成物中の全ゴム成分100重量部に対し、5〜150重量部であることが好ましく、10〜90重量部であることがより好ましく、20〜60重量部であることが特に好ましい。充填剤の含有量が上記範囲にあると、低発熱性がより優れる。
【0072】
充填剤としては、特に限定されないが、例えば、シリカ、炭素材料、炭酸カルシウム、クレー、タルク、水酸化アルミニウム、各種金属酸化物などを挙げることができる。これらのなかでも、特に炭素材料が好ましい。炭素材料を含有させることにより、本発明の製造方法で得られる共役ジエン系ゴムを用いたゴム架橋物の低発熱性が特に優れる。前記充填剤は、1種単独でも、2種以上を併用しても良い。
【0073】
炭素材料としては、特に限定されないが、例えば、カーボンブラック、グラファイト、グラファイト繊維、フラーレンなどが挙げられる。カーボンブラックとしては、ファーネスブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、チャンネルブラックが挙げられる。これらの中でも、ファーネスブラックが好ましく、その具体例としては、SAF、ISAF、HAF、MAF、FEF、GPF、SRFなどが挙げられる。
【0074】
カーボンブラックの窒素吸着比表面積は、通常、5〜200m/g、好ましくは20〜100m/g、より好ましくは25〜90m/gであり、ジブチルフタレート(DBP)吸着量は、通常5〜300ml/100g、好ましくは50〜160ml/100gである。
【0075】
シリカとしては、特に限定されないが、例えば、乾式法ホワイトカーボン、湿式法ホワイトカーボン、コロイダルシリカ、沈降シリカなどが挙げられる。なかでも、含水ケイ酸を主成分とする湿式法ホワイトカーボンが好ましい。また、カーボンブラック表面にシリカを担持させたカーボン−シリカデュアル・フェイズ・フィラーを用いてもよい。シリカの窒素吸着比表面積(ASTM D3037−81に準じBET法で測定される。)は、通常、50〜400m/g、好ましくは70〜220m/g、より好ましくは80〜180m/gである。
共役ジエン系ゴム組成物にシリカを含有させる場合、さらにシランカップリング剤を含有させることが好ましい。
【0076】
本発明の製造方法で得られる共役ジエン系ゴムの組成物は、架橋剤を含有することが好ましい。架橋剤としては、特に限定されないが、例えば、硫黄、ハロゲン化硫黄、有機過酸化物、キノンジオキシム類、有機多価アミン化合物、メチロール基を有するアルキルフェノール樹脂などが挙げられる。これらの中でも、硫黄が好ましく使用される。架橋剤の含有量は、共役ジエン系ゴム組成物中の全ゴム成分100重量部に対し、通常、0.1〜15重量部、好ましくは0.5〜5重量部である。
【0077】
本発明の製造方法で得られる共役ジエン系ゴムの組成物は、上記成分以外に、常法に従って、架橋促進剤、スコーチ防止剤、架橋活性化剤、老化防止剤、活性剤、プロセス油、可塑剤、滑剤、粘着付与剤などの配合剤をそれぞれ含有することができる。
【0078】
本発明の製造方法で得られる共役ジエン系ゴムの組成物と、上記配合剤を含有するゴム組成物を得るためには、常法に従って、各成分を混練すればよい。例えば、架橋剤および架橋促進剤を除く配合剤と、ゴム成分を混練後、その混練物に架橋剤および架橋促進剤を混合して架橋性ゴム組成物を得ることができる。架橋剤および架橋促進剤を除く配合剤と、共役ジエン系ゴム組成物のゴム成分との混練温度は、好ましくは80〜200℃、より好ましくは120〜180℃であり、その混練時間は、好ましくは30秒〜30分である。混練物と、架橋剤および架橋促進剤との混合は、通常、120℃以下、好ましくは100℃以下で行われる。
【0079】
上記架橋性ゴム組成物の架橋および成形方法は、特に限定されず、架橋物の形状、大きさなどに応じて選択すればよい。架橋剤を含有するゴム組成物を金型中に充填し加熱することにより成形と同時に架橋してもよく、架橋剤を含有するゴム組成物を予め成形した後、それを加熱して架橋してもよい。成形時の温度は、好ましくは20〜140℃、より好ましくは40〜130℃である。架橋温度は、好ましくは120〜200℃、より好ましくは140〜180℃であり、架橋時間は、通常、1〜120分である。
【0080】
本発明の製造方法により得られる共役ジエン系ゴムの組成物を用いたゴム架橋物は、タイヤのキャップトレッドや、ベーストレッド、カーカス、サイドウォール、ビード部、ショルダー部などのタイヤのボディ部や、コンベアベルトなどのベルト、ホース、防振ゴム、樹脂の耐衝撃性改良剤、樹脂フィルム緩衝材、靴底、ゴム靴、ゴルフボールのコア、玩具等への利用が可能であるが、低発熱性に優れる特徴を有するため、タイヤのボディ部、コンベアベルト、防振ゴムに特に好適に用いられる。
【実施例】
【0081】
以下に、実施例および比較例を挙げて、本発明についてより具体的に説明する。なお、実施例および比較例における部および%は、特に断りのない限り、重量基準である。なお、各種の物性の測定は、下記の方法に従って行った。
【0082】
[スチレン単位含有量、およびブタジエン単位中のビニル結合含有量]
H−NMRにより測定した。
【0083】
[ガラス転移温度]
示差走査型熱量計(パーキンエルマー社製)を用いて、23℃から120℃まで昇温、120℃で10分間保持、−120℃まで降温(冷却速度100℃/分)、−120℃で10分間保持、23℃まで昇温(加熱速度10℃/分)の順で測定試料の温度を変化させ、オンセット値の2回平均値をガラス転移温度の測定値とした。
【0084】
[ピークトップ分子量、カップリング率、およびMw/Mn]
四塩化錫を重合溶液中に添加する前の共役ジエン重合体のピークトップ分子量を、下記の条件のゲルパーミエーションクロマトグラフィ−を用い、ポリスチレン換算により測定した。ピークトップ分子量は、測定対象のピークが複数ある場合は、重量分率で最も多い成分のピークのピークトップ分子量を、そのもののピークトップ分子量であるものとする。
また、N−フェニル−2−ピロリドンで末端変性した後の共役ジエン系ゴムのカップリング率およびMw/Mnを、下記の条件のゲルパーミエーションクロマトグラフィ−を用い、ポリスチレン換算により測定した。なお、カップリング率の測定においては、得られた分析チャートから、全溶出面積に対する、四塩化錫と反応していない共役ジエン重合体のピークトップ分子量の2.5倍〜4.5倍の範囲にあるピーク(共役ジエン重合体の3〜4分子が四塩化錫とカップリングしている重合体のピークに相当)の面積比を、カップリング率として示す。
測定器 :HLC−8020(東ソー社製)
カラム :GMH−HR−H(東ソー社製)二本を直列に連結した。
検出器 :示差屈折計RI−8020(東ソー社製)
溶離液 :テトラヒドロフラン
カラム温度:40℃
【0085】
[ムーニー粘度]
JIS K6300に従い、ムーニー粘度計(島津製作所社製)を用いて測定した。
【0086】
[微粉発生率]
凝固クラム(ウェットクラム)を、スクリュー全長L=890mm、脱水ゾーン482mm、脱水ゾーンでの圧縮比が1.45倍、スリット間隔0.1mmの一軸押出機を用い、スクリューを100rpmで回転させ、脱水後のウェットクラムの含水率が5〜20%の範囲となるように、クラム吐出口である出口コーンの開度(スクリューに装着したテーパーブッシュとアウターケース出口間隔)を調整し、脱水を実施した。吐出されたウェットクラムは、互着した状態で直径5〜10mm程度、長さ20〜100mm程度の大きさで得られる。次いで、粉砕造粒整粒機(商品名:クイックミルQMY−30、(株)セイシン企業製)を用い、脱水して得たウエットクラム100gを、80℃に加温し、回転刃の回転数を1,200rpmにして10分間粉砕した。粉砕したウェットクラムを2.8mm以上と2.8mm未満との粒径サイズに篩で分取し、分取したクラムの乾燥重量を測定し、粒径2.8mm以上と2.8mm未満のクラムの合計重量に対する粒径2.8mm未満のクラムの重量分率を得た。この操作を計2回繰り返して平均値を得、比較例1を100とする指数で表示した。この指数が小さいほど、微粉発生量が少なく、乾燥時の操業性が優れることを意味する。
【0087】
[ホットフロー性(凝固クラムの互着性)]
最終的に得られる、乾燥後の共役ジエン系ゴムを、厚さ2mmのシートに成形し、引張3号形ダンベルで試験片を採取した。108℃の恒温槽中で、試験片を5.5gの荷重を掛けて吊り下げ、試験片が伸長し破断するまでの時間を計4回測定し、平均値を得た。この特性を、比較例1を100とする指数で表示した。この指数が大きいほどホットフロー性に優れ、凝固クラムが互着しにくく、凝固時の操業性が安定することを意味する。なお、ホットフロー性を示す指数は、最低でも30以上でないと、凝固時の操業性は安定しない。
【0088】
[低発熱性]
架橋性ゴム組成物をプレス架橋して得た、長さ50mm、幅12.7mm、厚さ2mmの試験片を、レオメトリックス社製ARESを用い、2.5%ねじれ、20Hzの条件で60℃におけるtanδを測定した。この特性を、比較例1を100とする指数で表示した。この指数が小さいほど低発熱性に優れることを意味する。
【0089】
[実施例1]
攪拌機付きオートクレーブに、シクロヘキサン4000g、1,3−ブタジエン500g、およびテトラメチルエチレンジアミン0.05ミリモルを仕込んだ。次いで、n−ブチルリチウムをシクロヘキサンと1,3−ブタジエンとに含まれる重合を阻害する不純物の中和に必要な量を添加し、さらに、n−ブチルリチウムを重合反応に用いる分として5.7ミリモルを加え、50℃で重合を開始した。重合を開始してから30分経過後、重合反応中の最高温度は80℃であり、重合温度を80℃に維持しながら、1,3−ブタジエン500gを50分間かけて連続的に添加した。連続添加終了後、さらに15分間重合反応を継続し、重合転化率が97%から100%の範囲になったことを確認してから、少量の重合溶液をサンプリングした。サンプリングした少量の重合溶液は、過剰のメタノールを添加して反応停止した後、風乾して、重合体を取得し、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー分析の試料とした。この試料(四塩化錫添加前の共役ジエン重合体)について、ピークトップ分子量を測定した。この測定結果を表1に示す。
上述の、少量の重合溶液をサンプリングした直後に、四塩化錫0.36ミリモル(15重量%濃度のシクロヘキサン溶液)を添加し、80℃で15分間反応させた。次いで、N−フェニル−2−ピロリドン0.6ミリモル(15重量%濃度のキシレン溶液)を添加し、80℃で15分間反応させた後、重合停止剤として、使用したn−ブチルリチウムの2倍モルに相当する量のメタノールを添加して共役ジエン系ゴムを含有する溶液を得た。この溶液を少量サンプリングし、風乾して、重合体(共役ジエン系ゴム)を取得し、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー分析、およびH−NMRの試料とした。これらの測定結果を表1に示す。
この溶液に、老化防止剤(商品名:イルガノックス1520L、チバスペシャリティーケミカルズ社製)を、共役ジエン系ゴム100部に対して0.2部添加した後、スチームストリッピングにより、溶媒を除去して、水を含有した状態の凝固クラム(ウェットクラム)を得た。得られたウェットクラムを用いた微粉発生率の測定結果を表1に示す。
また、微粉発生率の測定によりポーラス状になったウェットクラムを80℃で2時間温風乾燥して、固形状の共役ジエン系ゴムIを得た。このゴムについて、ムーニー粘度、ガラス転移温度、およびホットフロー性を測定した。これらの測定結果を表1に示す。
【0090】
容量250mlのブラベンダータイプミキサー中で、実施例1で得た共役ジエン系ゴムI40部と天然ゴム(SMR−CV60)60部とを30秒素練りし、次いで、カーボンブラック(商品名:Seast3、東海カーボン社製)50部、プロセスオイル(商品名:フッコール エラミック30、新日本石油社製)6部、酸化亜鉛3部、ステアリン酸2部、および老化防止剤として、N−フェニル−N’−(1,3−ジメチルブチル)−p−フェニレンジアミン(商品名:ノクラック6C、大内新興化学工業社製)1部を添加して、80℃を開始温度として3.5分間混練し、ミキサーからゴム混練物を排出させた。混練終了時のゴム混練物の温度は130℃であった。次いで、50℃のオープンロールで、得られたゴム混練物と、硫黄1.8部、および架橋促進剤(N−tert−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(商品名:ノクセラーNS、大内新興化学工業社製)1.5部とを混練した後、シート状の架橋性ゴム組成物を取り出した。この架橋性ゴム組成物を、160℃で12分間プレス架橋して試験片を作製し、この試験片について、低発熱性の測定を行なった。この測定結果を表2に示す。
【0091】
[実施例2]
重合反応に用いるn−ブチルリチウムを6.0ミリモル、四塩化錫を0.48ミリモルとした以外は、実施例1と同様に実施して共役ジエン系ゴムIIを得た。次いで、得られた共役ジエン系ゴムIIを用いて実施例1と同様にして、架橋性ゴム組成物を作成し、試験を行った。結果を表1と表2に示す。
【0092】
[実施例3]
重合反応に用いるn−ブチルリチウムを6.2ミリモル、四塩化錫を0.56ミリモルとした以外は、実施例1と同様に実施して共役ジエン系ゴムIIIを得た。次いで、得られた共役ジエン系ゴムIIIを用いて実施例1と同様にして、架橋性ゴム組成物を作成し、試験を行った。結果を表1と表2に示す。
【0093】
[実施例4]
テトラメチルエチレンジアミンを1.0ミリモル、重合反応に用いるn−ブチルリチウムを5.9ミリモル、四塩化錫を0.44ミリモルとした以外は、実施例1と同様に実施して、共役ジエン系ゴムIVを得た。次いで、得られた共役ジエン系ゴムIVを用いて実施例1と同様にして、架橋性ゴム組成物を作成し、試験を行った。結果を表1と表2に示す。
【0094】
[実施例5]
1,3−ブタジエン500gに代えて1,3−ブタジエン450gとスチレン50gを重合前に仕込み、テトラメチルエチレンジアミンを1.3ミリモル、重合反応に用いるn−ブチルリチウムを6.0ミリモル、四塩化錫を0.52ミリモルとし、重合反応中の最高温度を75℃とした以外は、実施例1と同様にして、共役ジエン系ゴムVを得た。次いで、得られた共役ジエン系ゴムVを用いて実施例1と同様にして、架橋性ゴム組成物を作成し、試験を行った。結果を表1と表2に示す。
【0095】
[比較例1]
重合反応に用いるn−ブチルリチウムを6.7ミリモル、四塩化錫を0.75ミリモルとした以外は、実施例1と同様にして共役ジエン系ゴムVIを得た。次いで、得られた共役ジエン系ゴムVIを用いて実施例1と同様にして、架橋性ゴム組成物を作成し、試験を行った。結果を表1と表2に示す。
【0096】
[比較例2]
重合反応に用いるn−ブチルリチウムを5.3ミリモル、四塩化錫を0.53ミリモルとした以外は、実施例1と同様にして共役ジエン系ゴムVIIを得た。次いで、得られた共役ジエン系ゴムVIIを用いて実施例1と同様にして、架橋性ゴム組成物を作成し、試験を行った。結果を表1と表2に示す。
【0097】
[比較例3]
テトラメチルエチレンジアミンを2.0ミリモル、重合反応に用いるn−ブチルリチウムを6.7ミリモル、四塩化錫を0.83ミリモルとした以外は、実施例1と同様にして、共役ジエン系ゴムVIIIを得た。次いで、得られた共役ジエン系ゴムVIIIを用いて実施例1と同様にして、架橋性ゴム組成物を作成し、試験を行った。結果を表1と表2に示す。
【0098】
[比較例4]
1,3−ブタジエンを375gとスチレン125gを重合前に仕込み、テトラメチルエチレンジアミンを1.8ミリモル、重合反応に用いるn−ブチルリチウムを5.6ミリモル、重合途中に添加する1,3−ブタジエンを475g、スチレンを25gとし、四塩化スズを0.49ミリモルとした以外は、実施例5と同様にして、共役ジエン系ゴムIXを得た。次いで、得られた共役ジエン系ゴムIXを用いて実施例1と同様にして、架橋性ゴム組成物を作成し、試験を行った。結果を表1と表2に示す。
【0099】
[比較例5]
1,3−ブタジエンを350gとスチレン150gを重合前に仕込み、テトラメチルエチレンジアミンを2.6ミリモル、重合反応に用いるn−ブチルリチウムを5.8ミリモル、重合途中に添加する1,3−ブタジエンを415g、スチレンを85gとし、四塩化スズを0.73ミリモルとした以外は、実施例5と同様にして、共役ジエン系ゴムXを得た。次いで、得られた共役ジエン系ゴムXを用いて実施例1と同様にして、架橋性ゴム組成物を作成し、試験を行った。結果を表1と表2に示す。
【0100】
【表1】
【0101】
【表2】
【0102】
表1と表2から、以下のことがわかる。
共役ジエン系ゴムのカップリング率が高すぎる(45%)ために、本発明の要件を満たさない比較例1においては、微粉発生率が高すぎ、ポーラス状のクラムにして乾燥する際に微細な粉末状態となる問題を生じるものであった。
また、共役ジエン系ゴムのカップリング率が低すぎる(17%)ために、本発明の要件を満たさない比較例2においては、ホットフロー性(指数)が低すぎ、凝固クラムの互着等の問題を生じるものであった。
さらに、共役ジエン系ゴムのカップリング率が高すぎる(50%)ために、本発明の要件を満たさない比較例3においては、微粉発生率が高すぎポーラス状のクラムにして乾燥する際に微細な粉末状態となる問題を生じるものであり、低発熱性にも劣るものであった。
そして、ガラス転移温度が高すぎる(−60℃および−50℃)ために、本発明の要件を満たさない比較例4および5においては、低発熱性に劣る結果となった。
これに対して、本発明の要件を満たす実施例1〜5においては、微粉発生率、ホットフロー性(指数)、低発熱性(指数)のいずれも問題なく、凝固クラムの互着等が発生しにくいため凝固時の操業性が安定化し、ポーラス状のクラムにして乾燥する際に微細な粉末状態となりにくいため乾燥時の操業性が向上し、低発熱性に優れるゴム架橋物を提供することができるものであった。