【文献】
SU, Jianping et al.,In vivo three-dimensional microelectromechanical endscopic swept source optical coherence tomography,Optics Express,OSA,2007年 8月 6日,Vol.15, No,16,pp10390-10396
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
測定対象である測定孔に挿入される測定部から前記測定孔の内面である測定内面に測定光を照射することで非接触により前記測定内面の形状を測定する非接触内面形状測定装置であって、
前記測定部は、
前記測定部の前記測定孔への挿入方向に沿った基準軸と、
前記基準軸に沿った方向に測定光を出射する光出射部と、
前記光出射部に対向して配置され、前記光出射部から出射された測定光の進行方向を変更し、前記測定内面に向けて前記測定光を出射する進行方向変更部材と、
前記進行方向変更部材を前記基準軸周りに回転させる駆動手段と、
前記測定内面に当接して前記測定部を前記測定孔の内部に支持するガイド部と、
を備え、
前記ガイド部は、
前記基準軸を中心として前記基準軸周りに沿って配置された複数のローラ部材と、
前記ローラ部材ごとに個別に設けられた複数の支持付勢部材であって、前記ローラ部材を前記測定内面に近づく方向と前記測定内面から遠ざかる方向に支持し且つ前記ローラ部材を前記測定内面に向けて付勢する複数の支持付勢部材と、
を含み、
前記進行方向変更部材は、前記基準軸に斜めに交差する反射面を有する反射部材であり、
波長掃引光源と、
前記波長掃引光源から出射された光を互いに異なる光路を通過する測定光と参照光とに分岐する分岐手段と、
前記測定光を前記光出射部に案内する案内手段と、
前記光出射部から前記進行方向変更部材を介して出射された測定光が照射される測定点からの戻り光であって、前記進行方向変更部材、前記光出射部、及び、前記案内手段を介して戻る戻り光と前記参照光との干渉光を検出する光検出手段と、
前記駆動手段より回転する前記反射部材の各回転角度において、前記光検出手段により検出された干渉光に基づいて前記測定点の位置を検出することにより、前記測定内面の形状を検出する内面形状検出手段と、
を備える非接触内面形状測定装置。
前記光出射部は、前記進行方向変更部材よりも前記挿入方向の先端側に配置され、前記測定光を前記挿入方向の基端側に向けて出射する請求項1又は2に記載の非接触内面形状測定装置。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面に従って本発明の好ましい実施の形態について詳説する。
【0019】
図1は、本発明が適用される非接触内面形状測定装置の全体構成図である。
【0020】
同図に示すように、非接触内面形状測定装置1は、測定対象となる孔(以下、測定孔Pという)の内面(以下、測定内面Sという)の形状を求めるための測定データ(干渉信号)を取得する測定装置10と、測定装置10の各部の動作を制御するとともに、測定装置10により取得された測定データに基づいて各種演算処理を行って測定内面Sの形状や測定孔Pの内径などの測定内面Sの形状に関連する情報を算出する制御処理装置16とを有する。
【0021】
なお、制御処理装置16には、操作者が情報を入力する入力手段や情報を出力(表示、印刷等)する出力手段を含む。また、制御処理装置16の全体、又は、測定に関連する機能の全体若しくは一部は、測定装置10(下記の測定装置本体12)に組み込まれていてもよい。
【0022】
また、測定内面Sとして、測定孔Pの軸心に垂直な断面形状が円形状のものに限らず多角形や複雑な形のものも測定可能である。
【0023】
測定装置10は、測定孔Pの外部に配置される測定装置本体12と、測定装置本体12にケーブル等(電気ケーブル及び光ファイバ)を介して接続され、測定孔Pの内部に挿入される測定部14とから構成される。
【0024】
図2は、測定装置10の内部構造を示した構成図である。
【0025】
同図に示す測定装置10は、波長掃引干渉型変位センサの構成を有し、測定装置本体12において、波長掃引光源20と、波長掃引光源20に光ファイバ30を介して接続されるサーキュレータ22と、サーキュレータ22に光ファイバ32を介して接続される光検出器24とが設けられる。
【0026】
一方、測定部14において、測定装置本体12のサーキュレータ22に光ファイバ34を介して接続される光出射部40と、光出射部40に対向配置される反射部材としての直角ミラー42と、直角ミラー42に連結され、一体物として省略して図示されたモータ44とロータリエンコーダ46とが設けられる。
【0027】
この測定装置10によれば、波長掃引光源20からは、波長を一定の波長帯の範囲で一定周期で掃引(変化)させた可干渉な光(レーザ光)が出射される。波長掃引光源20から出射された光は、光ファイバ30を介してサーキュレータ22へと送波される。
【0028】
図3は、波長掃引光源20から出力されるレーザ光の波長の時間変化を例示したグラフであり、横軸が時刻(時間)を示し、縦軸が波長を示す。同図に示すように波長が約1200nm〜約1600nmの範囲で繰り返し変化し、その変化の周波数が約1kHz〜約100kHzの範囲内の値となるように設定される。
【0029】
ここで、約1200nm〜約1600nmの波長帯域の使用は、高速測定、自然光ノイズの回避、及びアイセーフ(目に優しい)という点で優れる。特にアイセーフであることから測定感度の向上のために光量を20mW以上にしても問題が生じない。
【0030】
図2においてサーキュレータ22へと送波された光は、サーキュレータ22により光ファイバ34のみに伝播され、光ファイバ34を介して光出射部40に送波される。
【0031】
光出射部40に送波された光は、光ファイバ34と光出射部40との接続部分における光ファイバ34の端面36において、一部が反射し、残りが光出射部40へと透過する。
【0032】
ここで、光ファイバ34の端面36は、波長掃引光源20からの光を測定光Lofと参照光Lrとに分岐する分岐部であり、端面36で反射した光により干渉計における参照光Lrが生成され、端面36を透過した光により干渉計における測定光Lofが生成される。
【0033】
光ファイバ34の端面36で反射した参照光Lrは、そのまま光ファイバ34を戻り、サーキュレータ22へと送波される。
【0034】
一方、光ファイバ34の端面36を透過した光は測定光Lofとして光出射部40から出射される。光出射部40は、光ファイバ34の端面36から出射された測定光Lofを発散光から平行光あるいは集光光に変換し、又は、測定内面Sで反射して戻る測定光(戻り光Lor)を集光して端面36から光ファイバ34に入射させるコリメータレンズを含む。
【0035】
光出射部40から出射された測定光Lofは、測定部14が有する所定の基準軸14aに沿って(基準軸14a上を)進行した後、直角ミラー42の反射面である斜面で反射して基準軸14aに垂直な方向に進行する。
【0036】
なお、反射面による測定光Lofの反射方向は基準軸14aに垂直な方向でなくても測定内面に向かう方向であればよく、また、直角ミラー42と同様の作用を奏する反射面を有する反射部材であれば直角ミラー42でなくてもよい。さらに、反射部材に限らず、光出射部40から出射された測定光Lofの進行方向を変更し、測定内面Sに向けて測定光Lofを出射する進行方向変更部材であればよい。
【0037】
また、測定部14は、後述のように基準軸14aが
図1のような測定孔Pの軸心と略同軸上となるように配置される。
【0038】
なお、基準軸14aは、測定部14を測定孔Pに挿入する方向(挿入方向)に沿った軸であり、測定部14の挿入方向側を先端側、挿入方向と反対側を基端側とする。
【0039】
基準軸14aに垂直な方向に進行した測定光Lofは、測定内面Sに照射される。そして、測定内面Sで散乱(反射)した測定光の一部又は全部が戻り光Lorとしてそれまで通過した光路を逆行し、直角ミラー42及び光出射部40を介して光ファイバ34に入射する。
【0040】
光ファイバ34に入射した戻り光Lorは、光ファイバ34を介してサーキュレータ22へと送波される。
【0041】
光ファイバ34を経由してサーキュレータ22へと送波された上述の参照光Lr及び測定光の戻り光Lorは、サーキュレータ22により光ファイバ32のみに伝播され、光ファイバ32を介して光検出器24に入射する。
【0042】
光検出器24には、測定内面Sで反射した測定光(戻り光Lor)と、光ファイバ34の端面36で反射した参照光Lrとの干渉光が入射し、光検出器24により、その干渉光の強度が電気信号である干渉信号として検出される。そして、その干渉信号が制御処理装置16へと与えられる。
【0043】
制御処理装置16では、光検出器24から得られた干渉信号に基づいて測定内面Sにおいて測定光(戻り光)が照射された測定点の位置の情報、即ち、測定点の基準軸14aからの距離が距離情報として算出される。
【0044】
また、測定部14の直角ミラー42は、これに連結されたモータ44により、基準軸14a周りに少なくとも360度(1回転)以上回転する。なお、直角ミラー42の回転は360度未満の特定の角度範囲の回転であってもよいし、複数回転であってもよい。
【0045】
これによって、光出射部40から出射されて直角ミラー42の斜面で反射した測定光Lofの照射方向(測定方向)が基準軸14a周りに回転し、測定方向が基準軸14a周りの全周方向に変更される。即ち、測定内面Sに対して測定光Lofがラジアル走査される。
【0046】
また、直角ミラー42のみの回転であるため、回転運動誤差が小さく、かつ、振動も少ないため、測定光をラジアル走査するための回転動作による測定精度の低下が少ない。例えば、ミクロンオーダでの高精度な測定が可能である。
【0047】
更に、直角ミラー42のみの回転であるため、直角ミラー42を高速で回転させることができ、測定時間の短縮を図ることができる。
【0048】
一方、測定部14の直角ミラー42の回転角度は、ロータリエンコーダ46により検出され、その回転角度の情報が制御処理装置16に与えられる。このロータリエンコーダ46により検出される回転角度の情報は、測定方向の基準軸14a周り方向に関する角度の情報に相当する。
【0049】
これによって、制御処理装置16では、光検出器24からの干渉信号に基づいて検出される測定内面Sまでの距離の情報と、その距離が検出された際におけるロータリエンコーダ46からの回転角度の情報(測定方向の基準軸14a周り方向に関する角度の情報)とに基づいて、各測定点の位置が検出され、測定光が走査された走査面における測定内面Sの形状(位置)を示す測定データが得られる。
【0050】
なお、直角ミラー42を複数回転させて測定内面Sの同一点の位置を複数回検出し、平均化することで測定精度を向上させることができる。
【0051】
以上、上記実施の形態の測定装置10は参照光と測定光との干渉光を検出する干渉計の一形態を示したものであり、他の構成の干渉計を採用してもよい。例えば、マイケルソン干渉計として一般的に知られている構成であってもよい。
【0052】
次に、測定部14の具体的な構成について説明する。
図4は、測定孔Pに挿入された状態における測定部14を示した構成図である。尚、上述のように測定部14の測定孔Pへの挿入方向側を先端側、挿入方向と反対側を基端側とする。
【0053】
同図に示すように測定部14は、上記光出射部40が支持された第1支持部50と、第1支持部50よりも基端側に配置された第2支持部52であって、上記直角ミラー42が回転可能に支持されると共に上記モータ44及び上記ロータリエンコーダ46が支持された第2支持部52と、第1支持部50と第2支持部52との間に配置されて第1支持部50と第2支持部52とを一体的に連結する透明円筒54と、第1支持部50の先端側と第2支持部52の基端側とに設けられ、測定部14を測定孔Pに案内する第1ガイド部56及び第2ガイド部58と、第2ガイド部58の基端側に連設され、測定孔Pに対して測定部14を押し引き操作して挿入量を調整する挿入パイプ60と、を備える。
【0054】
第1支持部50は、外径が円柱状の円柱部材70であって、軸心が測定部14の基準軸14aと略同軸上に配置された円柱部材70を有する。その円柱部材70の軸心に沿った中央部分において光出射部40が支持される。
【0055】
また、光ファイバ34が接続される光出射部40の基端側は、円柱部材70の内部に収容保持されると共に、測定光Lofが出射される光出射部40の先端側は円柱部材70の基端面よりも基端側(測定部14における基端側)に突出して配置される。なお、光出射部40の先端側は光出射部40から測定光Lofが出射される端面側を示し、光出射部40の先端部分には例えばコリメータレンズが配置されている。
【0056】
これによって、光ファイバ34から光出射部40に送波された測定光Lofは、測定部14の先端側から基端側に向かって光出射部40から出射されると共に、基準軸14aと略同軸上を進行する。なお、
図2と
図4とでは光出射部40の向きは反転しており、これに伴い、直角ミラー42の向きも反転している。
【0057】
第2支持部52は、第1支持部50と同様に外径が円柱状の円柱部材72であって、軸心が測定部14の基準軸14aと略同軸上に配置された円柱部材72を有する。
【0058】
円柱部材72の内部には、モータ44が収容保持され、モータ44の回転軸44aには、円柱部材72の軸心に沿って円柱部材72に回転自在に軸支された回転軸部材74が連結される。そして、その回転軸部材74の先端部に直角ミラー42が固定される。
【0059】
直角ミラー42は、円柱部材72の先端面よりも先端側(測定部14における先端側)において、光出射部40の先端(測定光が出射される端面)に対向する位置に配置されると共に、反射面である斜面が基準軸14aと交差する位置であって、斜面が基準軸14aと斜め(略45度)に交差するように配置される。
【0060】
これによって、モータ44の回転軸44aの回転によって直角ミラー42が基準軸14a周りに回転する。そして、光出射部40から出射された測定光Lofが直角ミラー42の斜面により反射されて基準軸14aに垂直な方向に照射されると共に、その照射方向が測定方向として基準軸14a周りに回転する。なお、測定光Lofの照射方向は基準軸14aに垂直な成分を含む方向であれば、必ずしも基準軸14aに垂直な方向でなくてもよい。
【0061】
また、円柱部材72の内部には、ロータリエンコーダ46が収容保持され、回転軸部材74に連結される。これによって、回転軸部材74を介して直角ミラー42の回転角度の情報が測定方向の基準軸14a周り方向に関する角度を示す情報としてロータリエンコーダ46により検出される。
【0062】
なお、直角ミラー42よりも先端側に光出射部40を配置しているため、基準軸14a周りに回転する直角ミラー42により反射して照射された測定光Lofが走査される走査面(測定領域)を光ファイバ34が横切る。しかしながら、光ファイバ34は極めて細く(測定光のビーム径よりも細く)することが可能であり、光ファイバ34の測定への影響を略生じさせないものとすることができる。
【0063】
透明円筒54は、測定光Lofの波長を透過する透明部材により円筒状に形成され、透明円筒54の先端は、第1支持部50の円柱部材70の基端面の周縁に固着され、透明円筒54の基端は、第2支持部52の円柱部材72の前端面の周縁に固着される。
【0064】
これにより、第1支持部50の円柱部材70と第2支持部52の円柱部材72とが透明円筒54を介して一体的に連結される。
【0065】
また、直角ミラー42は基準軸14a周りの周囲が透明円筒54により囲まれるが、透明円筒54は測定光Lofの波長を透過する特性を有するため、光出射部40から直角ミラー42を介して出射された測定光Lofが透明円筒54により遮断されることなく測定内面Sに照射される。そして、測定内面Sで反射した測定光(戻り光Lor)も透明円筒54により遮断されることなく透明円筒54を通過し直角ミラー42を介して光出射部40に入射する。
【0066】
なお、透明円筒54は、測定光Lofの波長に対して透過性が高い材料で形成されたものであれば良く、本実施の形態における測定光Lofの波長である約1200nm〜約1600nmの光を透過する部材、例えばプラスティック(アクリル)やガラス材で表面と裏面が研磨された部材を用いることができる。
【0067】
また、透明円筒54の代わりに複数の細径の棒状部材等で第1支持部50の円柱部材70と第2支持部52の円柱部材72とを連結してもよい。
【0068】
第1ガイド部56と第2ガイド部58は、互いに同様の構成を有し、基準軸14aと同軸上に配置された固定軸部材80と、固定軸部材80の先端に固定された連結部材82と、固定軸部材80(基準軸14a)に対して対称となる位置に設けられた一対のガイドローラ84を有する。
【0069】
また、第1ガイド部56は、その固定軸部材80の基端が第1支持部50の円柱部材70の先端面に固定されることで、第1支持部50の先端側に連設され、第2ガイド部58は、その連結部材82の先端面が第2支持部52の基端面に固定されることで、第2支持部52の基端側に連設される。
【0070】
各ガイドローラ84は同一構造を有し、円板状のローラ部材86を備える。第1ガイド部56の一方のガイドローラ84のみに符号を付して説明すると、ガイドローラ84は、ローラ部材86と、ローラ部材86を回転自在に支持するアーム部材88と、連結部材82に固定され、アーム部材88を回転自在に支持する支持部材90と、を有する。
【0071】
ローラ部材86の回転軸及びアーム部材88の回転軸は、いずれも基準軸14aを含む同一の平面に対して垂直な方向を有する。
【0072】
また、アーム部材88は、不図示の付勢部材によりローラ部材86が基準軸14aから離間する方向に付勢される。
【0073】
これらの第1ガイド部56及び第2ガイド部58により、測定部14を測定孔Pに挿入した際に、各ローラ部材86が測定内面Sに圧接(押圧)される。そして、測定部14の基準軸14aが測定孔Pの軸心と略同軸上に配置される。
【0074】
なお、第1ガイド部56と第2ガイド部58のガイドローラ84は、基準軸14a周り方向の2箇所だけなく、例えば等間隔の3箇所以上に設けて、測定内面Sに3つ以上のローラ部材86が圧接されるようにしてもよい。
【0075】
また、本実施の形態では、第1ガイド部56及び第2ガイド部58のようなガイド部が測定部14の先端側と基端側とに設けられているが、ガイド部の配置はこれに限らない。
【0076】
挿入パイプ60は、第2ガイド部58の固定軸部材80の基端に連設され、その軸心が基準軸14aと略同軸上に配置される。
【0077】
操作者がこの挿入パイプ60を把持することで、測定孔Pに対して測定部14の先端側から挿入することができ、挿入パイプ60を押し引き操作することで、測定孔Pに対する測定部14の挿入量を調整することができる。即ち、測定内面Sに対して測定光が照射(走査)される走査面の位置(測定位置)であって、測定孔Pの軸心に沿った方向に関する走査面の位置を挿入パイプ60の押し引き操作により調整することができる。
【0078】
また、挿入パイプ60と挿入パイプ60が連設される固定軸部材80とは内部が中空となっており、それらの内部にはモータ44及びロータリエンコーダ46に接続される信号線(電線)が挿通配置される。そして、それらの信号線を外装により被覆したケーブルが挿入パイプ60の基端から延出され、そのケーブルが制御処理装置16に接続される。
【0079】
これによって、モータ44を駆動する駆動信号(電力)が制御処理装置16から供給され、ロータリエンコーダ46により検出される回転角度情報が制御処理装置16に与えられる。
【0080】
なお、モータ44及びロータリエンコーダ46に接続される信号線の配線経路は、本態様に限らず任意の態様とすることができ、固定軸部材80の内部を挿通するものでなくてもよいし、挿入パイプ60の内部を挿通するものでなくてもよい。
【0081】
また、光出射部40に接続される光ファイバ34は、第1支持部50の円柱部材70の内部において光出射部40に接続される一方の端部に対して、他方の端部が、円柱部材70の内部から外部に延出されて測定装置本体12に接続される。このとき、光ファイバ34の配線経路は、第2支持部52の円柱部材72、第2ガイド部58の固定軸部材80、及び、挿入パイプ60のうちの少なくとも1つの内部を挿通するものであってもよいし、また、モータ44の信号線と共に1本のケーブルに纏められて制御処理装置16又は測定装置本体12に接続される形態とすることもできる。
【0082】
以上、
図4は、内径が略一定の測定孔Pに測定部14を挿入した状態を示したが、測定内面Sがテーパ形状の測定孔Pに測定部14を挿入した状態を
図5に示す。同図に示すように測定部14の第1ガイド部56及び第2ガイド部58の各ガイドローラ84によりローラ部材86がテーパ形状の測定内面Sに圧接する位置まで移動する。これにより、測定部14の基準軸14aが測定孔Pの軸心と略同軸上に配置される。
【0083】
なお、光出射部40から直角ミラー42を介して基準軸14aに垂直な方向に出射された測定光は測定内面Sに対して斜めに照射されるが、測定内面Sで散乱した光が戻り光として直角ミラー42を介して光出射部40に入射するため測定が可能である。
【0084】
以上の測定部14において、測定光Lofの走査面と交差する部分を含む光ファイバ34の一部分をケーブルレスで光学的に接続し、光出射部40から出射された測定光Lofが光ファイバ34に照射されないようにしてもよい。
【0085】
例えば、
図6のように光ファイバ34が2つの光ファイバ34a、34bに分断され、その間に光が大気中を伝播するケーブルレス部34cが設けられる。ケーブルレス部34cは透明円筒54の外周部周辺となるように配置され、光ファイバ34aの端部35aと光ファイバ34bの端部35bとが各々、第2支持部52の円柱部材72と第1支持部50の円柱部材70に固定される。端部35a、35bの各々には、光ファイバ34a、34bからケーブルレス部34cに出射される光を平行光にし、また、ケーブルレス部34cから入射する光を集光して光ファイバ34a、34bに進入させるコリメータレンズが配置される。
【0086】
なお、ケーブルレス部34cは、透明円筒54の内側に配置されるようにしてもよい。
【0087】
次に、非接触内面形状測定装置1の測定手順を
図7のフローチャートを用いて説明する。
【0088】
まず、ステップS10では、操作者は、挿入パイプ60を把持して測定孔Pに対して測定部14を先端側から挿入する。そして、挿入パイプ60を押し引き操作して測定孔Pの軸心に沿った方向に関する測定位置を調整し設定する。そして、ステップS12に移行する。
【0089】
ステップS12では、制御処理装置16は、測定装置本体12の波長掃引光源20をオンにして測定部14の光出射部40から測定光Lofを出射させる。また、モータ44を駆動して直角ミラー42を回転させる。そして、光検出器24からの干渉信号を取得して、干渉信号に基づいて測定光Lofが照射された測定内面S上の測定点までの距離の情報を取得(算出)する。この後、ステップS14に移行する。
【0090】
ステップS14では、制御処理装置16は、測定部14のロータリエンコーダ46から回転角度の情報を取得し、その回転角度(測定方向の基準軸14a周り方向に関する角度)とステップS12において取得した測定点までの距離とを対応付ける。そして、ステップS16に移行する。
【0091】
ステップS16では、制御処理装置16は、モータ44により直角ミラー42を1回転させたか否か、即ち、測定方向を基準軸14a周りに1回転させたか否かを判定する。YESであれば、ステップS20に移行し、NOであれば、ステップS12に戻り、ステップS12〜ステップS16の処理を繰り返す。
【0092】
なお、ステップS16において、直角ミラー42を1回転させたか否かではく、予め決められた角度範囲分を回転させたか否かを判定するようにしてもよい。
【0093】
また、制御処理装置16は、たとえば、直角ミラー42が予め決められた角度Δθ分だけ回転するごとに測定点までの距離情報することで、角度Δθは、例えば測定点の数をXとした場合には、360度を角度Δθで割った数の測定点に対する測定データを得る。
【0094】
一方、ステップS16でYESと判定した場合のステップS20では、ステップS14において対応付けた各回転角度での距離の情報に基づいて、測定光の走査面における測定内面Sの形状情報(位置情報)を取得し、保存する。また、モニタ等の出力手段にその測定内面Sの形状情報を表示する。そして、ステップS22に移行する。
【0095】
ステップS22では、操作者は、異なる測定位置での測定を行うか否かを判断する。そして、YESと判定した場合にはステップS10に戻り、挿入パイプ60の押し引き操作による測定位置の調整から開始する。NOと判定した場合には測定を終了する。
【0096】
以上の非接触内面形状測定装置1により得られた測定データ(及びモニタ等への出力画面)を例示する。
【0097】
図8の測定データは、内径が約98mmの円筒の孔を測定孔Pとし、その内周面を測定内面Sとして測定したときに実測された測定内面Sの形状データを示す。
【0098】
同図に示すように測定データは極座標グラフにおいて多数の測定点xとしてプロットされており、グラフの中心Oが基準軸14aの位置に相当し、各測定点xの角度の座標及び径方向の座標が、測定内面Sにおいて測定光が照射された各測定点の基準軸14a周りの角度及び基準軸14aからの距離を示す。
【0099】
また、
図8のような測定データに基づいて、測定孔Pの内径を実測値として求めることができ、同図には、測定孔Pの内径の測定値が、97.991mm±0.0055mmであることが示されている。
【0100】
図9の測定データは、内歯車が形成された孔を測定孔Pとし、その内歯車を測定内面Sとして測定したときに実測された測定内面Sの形状データを示す。
【0101】
図8と同様に測定データは極座標グラフにおいて多数の測定点xとしてプロットされており、歯車の凹凸が精度良く測定されていることが同図の測定データからわかる。
【0102】
また、
図9のような測定データに基づいて、歯先円と歯底円の直径を実測値として求めることができ、同図には、歯先円と歯底円の直径の測定値が、各々、115.998mm±0.017mm、124.975mm±0.044mmであることが示されている。
【0103】
また、
図10のように、
図9における角度の座標と径方向の座標(半径)とを横軸と縦軸にして測定データの全体又は一部を表示することもできる。
【0104】
なお、測定装置10の光検出器24により検出された干渉信号を解析すると、
図11のように基準軸14aからの距離に対して測定光の戻り光の光量に大きさを示す干渉強度分布が得られる。そして、測定内面Sにおいて測定光が照射された測定点は、その干渉強度分布において極大点aを形成し、その極大点aが示す距離が測定点xまでの距離を示す。
【0105】
一方、透明円筒54の内面と外面でも戻り光が発生する場合には、干渉強度分布において、測定内面Sの測定点が形成する極大点a以外に、透明円筒54の内面と外面とにおいて測定光が通過した通過点が形成する極大点b、cも存在し、各々の極大点b、cが示す距離が透明円筒54の内面と外面の各々の通過点までの距離を示す。
【0106】
これによれば、
図11の干渉強度分布から直接的に導かれる透明円筒54の内面の通過点と外面の通過点との距離の差(透明円筒54の厚み)は、透明円筒54の厚みを大気中における光路長で表した値であり、透明円筒54の実空間での実際の厚みと相違する。そのため、
図11の干渉強度分布から直接的に導かれる測定点までの距離も透明円筒54による誤差を含む。
【0107】
一方、
図11の干渉強度分布から直接的に導かれる透明円筒54の厚みを、透明円筒54の屈折率と大気の屈折率とに基づいて、実空間での実際の厚みに補正することで、測定点までの距離をより高精度に測定することができる。
【0108】
また、
図11の干渉強度分布から導かれる透明円筒54の厚みが、透明円筒54の既知の厚みと既知の屈折率とに基づいて算出される大気中における光路長で表した透明円筒54の厚みと一致するように干渉強度分布の各点に対する距離を補正するようにしてもよい。
【0109】
以上、上記実施の形態の測定部14では、光出射部40が直角ミラー42よりも先端側に配置された構成としたが、これに限らず、光出射部40が直角ミラー42よりも基端側に配置された構成としてもよい。
【0110】
また、上記実施の形態の非接触内面形状測定装置1は、波長掃引干渉型変位センサの測定原理に基づくものであるが、この測定原理と異なるものであっても、測定孔Pに挿入される測定部から測定内面Sに測定光を照射することで非接触により測定内面Sの形状を測定する装置であれば本発明を適用できる。