特許第6610210号(P6610210)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日立化成株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6610210-配線パターン形成システム 図000002
  • 特許6610210-配線パターン形成システム 図000003
  • 特許6610210-配線パターン形成システム 図000004
  • 特許6610210-配線パターン形成システム 図000005
  • 特許6610210-配線パターン形成システム 図000006
  • 特許6610210-配線パターン形成システム 図000007
  • 特許6610210-配線パターン形成システム 図000008
  • 特許6610210-配線パターン形成システム 図000009
  • 特許6610210-配線パターン形成システム 図000010
  • 特許6610210-配線パターン形成システム 図000011
  • 特許6610210-配線パターン形成システム 図000012
  • 特許6610210-配線パターン形成システム 図000013
  • 特許6610210-配線パターン形成システム 図000014
  • 特許6610210-配線パターン形成システム 図000015
  • 特許6610210-配線パターン形成システム 図000016
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6610210
(24)【登録日】2019年11月8日
(45)【発行日】2019年11月27日
(54)【発明の名称】配線パターン形成システム
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/20 20060101AFI20191118BHJP
   H05K 3/06 20060101ALI20191118BHJP
【FI】
   G03F7/20 501
   H05K3/06 E
【請求項の数】4
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-233273(P2015-233273)
(22)【出願日】2015年11月30日
(65)【公開番号】特開2016-110137(P2016-110137A)
(43)【公開日】2016年6月20日
【審査請求日】2018年10月25日
(31)【優先権主張番号】特願2014-241441(P2014-241441)
(32)【優先日】2014年11月28日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】日立化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100169454
【弁理士】
【氏名又は名称】平野 裕之
(74)【代理人】
【識別番号】100148013
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 浩光
(72)【発明者】
【氏名】山本 哲平
(72)【発明者】
【氏名】中山 肇
(72)【発明者】
【氏名】荻野 晴夫
(72)【発明者】
【氏名】磯田 聡
【審査官】 佐野 浩樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−099739(JP,A)
【文献】 特開2014−007262(JP,A)
【文献】 特開2009−210635(JP,A)
【文献】 特開2004−056068(JP,A)
【文献】 特開2005−116929(JP,A)
【文献】 特開2006−303229(JP,A)
【文献】 特開平08−272076(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/20 − 7/24 、 9/00 − 9/02 、
H05K 3/02 − 3/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配線パターンAの元データAを作成する元データ作成手段と、
前記元データAから露光データAを作成する露光データ作成手段と、
前記露光データAに基づいて、基板上に配置された感光性レジストに、露光パターンAを露光するパターン露光手段と、
前記露光パターンAが露光された感光性レジストを現像して現像パターンAを形成する現像パターン形成手段と、
前記現像パターンAを形成した基板に対して回路加工を行ない実パターンAを形成する実パターン形成手段と、
前記実パターンAから実パターンデータAを取得し、この実パターンデータAと前記実パターンAの元データAとの差分Aから、差分データAを作成する差分データ作成手段と、
前記差分Aを生じさせる因子と前記差分データAとの関係から、前記差分Aを生じさせる因子と差分Aを抑制するための前記露光データAの補正量Aとの関係を規定した一次補正関数を作成する一次補正関数作成手段と、
前記一次補正関数に基づいて、前記差分Aを生じさせる因子と前記差分データAとの関係から、前記差分Aを生じさせる因子と差分Aを抑制するための前記露光データAの補正量Aとの関係を規定した二次補正関数を作成する二次補正関数作成手段と、を有し、
前記二次補正関数作成手段は、前記差分Aを生じさせる因子と、前記一次補正関数に比べてより少ない個所の差分データとの関係から、前記一次補正関数を平行移動することにより前記二次補正関数を作成する配線パターン形成システム。
【請求項2】
前記元データAと露光データAとの差分Aを生じさせる因子が、前記実パターンAの元データAのパターン間隙、パターンサイズ、パターン厚さ、パターン位置の何れか又は何れか2以上の組み合せである請求項1記載の配線パターン形成システム。
【請求項3】
配線パターンBの元データBを作成する元データ作成手段と、
前記元データBから露光データBを作成する露光データ作成手段と、
前記二次補正関数に基づいて、前記露光データBに対する補正量Bを設定し、前記露光データBを補正して露光データB1を作成する露光データ補正手段と、
前記露光データB1に基づいて、基板上に配置された感光性レジストに、露光パターンB1を露光するパターン露光手段と、
前記露光パターンB1が露光された感光性レジストを現像して現像パターンB1を形成する現像パターン形成手段と、
前記現像パターンB1を形成した基板に対して回路加工を行ない実パターンB1を形成する実パターン形成手段と、
を有する請求項1又は2記載の配線パターン形成システム。
【請求項4】
前記配線パターンAが、差分Aを生じさせる因子を含むテストパターンであり、
前記配線パターンBが、製品パターンである請求項3記載の配線パターン形成システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線パターン形成システムに関するものであり、特には電子機器に用いられる配線基板の配線パターン形成システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子機器の高機能化、小型化の動向から、電子機器に用いられる配線基板に対しても、配線パターンの細線化による高密度化が求められている。
【0003】
このような配線パターンの細線化による高密度化に対応するための配線パターン形成方法としては、感光性レジストに露光パターンをレーザ光や紫外線LED光(UV−LED、UV:Ultraviolet、LED:Light Emitting Diode)で直接照射する直接描画式の露光装置(DI:Direct Imaging)と、エッチング等で実際に形成された実パターンを反射光で読み取って元データ(設計データ)との比較を行う光学式の検査装置(AOI:Automatic Optical Inspection)を組み合わせて、エッチング後の実際の仕上りのデータを検査装置(AOI)に取り込み、露光装置(DI)にフィードバックする方法が考えられている(特許文献1〜3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−116929号公報
【特許文献2】特開2006−303229号公報
【特許文献3】特開2007−033764号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、パターン幅の変動要因はいくつもあり、パターンの形状・粗密等による変動のように、製造ロットが変わっても、同じ配線パターンを有する製品では、ある程度一定になる要因もあれば、エッチング液の変動等のように、同じ製品であっても、製造ロット毎に変動する要因もある。このため、特許文献1〜3のような従来の配線パターン形成方法では、配線パターン幅の変動を抑制できない場合が考えられる。
【0006】
また、検査装置(AOI)のデータをきめ細かくフィードバックしようとすると、検査装置(AOI)のデータは膨大であるため、データの処理が間に合わない問題がある。このため、従来のように、検査装置(AOI)のデータをフィードバックする方法では、微細回路の精度向上に対してあまり有効とは言えない面があった。
【0007】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、パターン間隙、パターンサイズ、パターン厚さ、パターン位置等による配線パターンのライン幅等の配線パターン仕様の変動に加え、感光性レジスト、現像液、エッチング液等の製造ラインの状態変化による配線パターンのライン幅の比較的早い変動に対しても、露光データを補正して対応可能とすることにより、微細回路形成時のライン幅精度を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、配線パターンAの元データAを作成する元データ作成手段と、前記元データAから露光データAを作成する露光データ作成手段と、前記露光データAに基づいて、基板上に配置された感光性レジストに、露光パターンAを露光するパターン露光手段と、前記露光パターンAが露光された感光性レジストを現像して現像パターンAを形成する現像パターン形成手段と、前記現像パターンAを形成した基板に対して回路加工を行ない実パターンAを形成する実パターン形成手段と、前記実パターンAから実パターンデータAを取得し、この実パターンデータAと前記実パターンAの元データAとの差分から、差分データAを作成する差分データ作成手段と、前記差分Aを生じさせる因子と前記差分データAとの関係から、前記差分Aを生じさせる因子と前記差分Aを抑制するための前記露光データAの補正量Aとの関係を規定した一次補正関数を作成する一次補正関数作成手段と、を有する配線パターン形成システムである。
【0009】
また、本発明は、上記において、前記一次補正関数に基づいて、前記差分Aを生じさせる因子と前記差分データAとの関係から、前記差分Aを生じさせる因子と差分Aを抑制するための前記露光データAの補正量Aとの関係を規定した二次補正関数を作成する二次補正関数作成手段と、を有する配線パターン形成システムである。
【0010】
また、本発明は、上記において、前記二次補正関数が、前記差分Aを生じさせる因子と、前記一次補正関数に比べて、より少ない個所の差分データとの関係から作成される配線パターン形成システムである。
【0011】
また、本発明は、上記において、前記二次補正関数が、前記一次補正関数を平行移動することにより作成される配線パターン形成システムである。
【0012】
また、本発明は、上記において、前記元データAと露光データAとの差分Aを生じさせる因子が、前記実パターンAの元データAのパターン間隙、パターンサイズ、パターン厚さ、パターン位置の何れか又は何れか2以上の組み合せである配線パターン形成システムである。
【0013】
また、本発明は、上記において、配線パターンBの元データBを作成する元データ作成手段と、前記元データBから露光データBを作成する露光データ作成手段と、前記二次補正関数に基づいて、前記露光データBに対する補正量Bを設定し、前記露光データBを補正して露光データB1を作成する露光データ補正手段と、前記露光データB1に基づいて、基板上に配置された感光性レジストに、露光パターンB1を露光するパターン露光手段と、前記露光パターンB1が露光された感光性レジストを現像して現像パターンB1を形成する現像パターン形成手段と、前記現像パターンB1を形成した基板に対して回路加工を行ない実パターンB1を形成する実パターン形成手段と、を有する配線パターン形成システムである。
【0014】
また、本発明は、上記において、前記配線パターンAが、差分Aを生じさせる因子を含むテストパターンであり、前記配線パターンBが、製品パターンである配線パターン形成システムである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、パターン間隙、パターンサイズ、パターン厚さ、パターン位置等による配線パターンのライン幅等の配線パターン仕様の変動に加え、感光性レジスト、現像液、エッチング液等の製造ラインの状態変化による配線パターンのライン幅の比較的早い変動に対しても、露光データを補正して対応可能とすることにより、微細回路形成時のライン幅精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の第1の実施形態の配線パターン形成システムの概略図を表す。
図2】本発明の第1の実施形態の配線パターン形成システムの概略図を表す。
図3】本発明の第1の実施形態の配線パターン形成システムの概略図を表す。
図4】本発明の第1の実施形態で用いた一次補正関数の概略図を表す。
図5】本発明の第1の実施形態で用いた二次補正関数の概略図を表す。
図6】本発明の第2の実施形態で用いた一次補正関数の概略図を表す。
図7】本発明の第2実施形態で用いた二次補正関数の概略図を表す。
図8】本発明の第3の実施形態で用いた一次補正関数の概略図を表す。
図9】本発明の第3の実施形態で用いた二次補正関数の概略図を表す。
図10】本発明の実施例で用いる配線パターン(テストパターン)の概略を表す。
図11】本発明の実施例で用いる実パターン基板の概略を表す。
図12】本発明の実施例で作成した一次補正関数を表す。
図13】本発明の実施例で作成した仮の補正関数を表す。
図14】本発明の実施例で作成した一次補正関数の移動方向と距離を表す。
図15】本発明の実施例で作成した二次補正関数を表す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態の配線パターン形成システムについて、図1図5を用いて説明する。
【0018】
図1に示すように、本実施の形態の配線パターン形成システムは、配線パターンAの元データAを作成する元データ作成手段と、前記元データAから露光データAを作成する露光データ作成手段と、前記露光データAに基づいて、基板上に配置された感光性レジストに、露光パターンAを露光するパターン露光手段と、前記露光パターンAが露光された感光性レジストを現像して現像パターンAを形成する現像パターン形成手段と、前記現像パターンAを形成した基板に対して回路加工を行ない実パターンAを形成する実パターン形成手段と、前記実パターンAから実パターンデータAを取得し、この実パターンデータAと前記実パターンAの元データAとの差分から、差分データAを作成する差分データ作成手段と、前記差分Aを生じさせる因子と前記差分データAとの関係から、前記差分Aを生じさせる因子と前記差分Aを抑制するための前記露光データAの補正量Aとの関係を規定した一次補正関数を作成する一次補正関数作成手段と、を有する配線パターン形成システムである。
【0019】
本実施の形態において、配線パターンAとは、配線パターン形成システムによって形成しようとする目標の配線パターンをいう。特に限定はなく、任意の配線パターンを用いることができる。後述するように、回路形成を行って実際に形成される実パターンデータAと元データAとの差分Aから、この差分Aを生じさせる因子と露光データAの補正量Aとの関係を規定する一次補正関数を求めるのに用いる配線パターンであるため、本実施の形態では、実パターンデータAと元データAとの差分Aを生じさせる因子を含む仕様のテストパターンとしている。
【0020】
本実施の形態において、実パターンデータAと元データAとの差分Aを生じさせる因子とは、元データAの配線パターン仕様の中で、それが変動することによって、実パターンデータAと元データAとの差分Aに変化を生じさせる因子をいう。このような因子として、例えば、実パターンAの元データAのパターン間隙、パターンサイズ、パターン厚さ、パターン位置の何れか又は何れか2以上の組み合せが挙げられる。本実施の形態においては、実パターンデータAと元データAとの差分Aを生じさせる因子として、配線パターンAのパターン間隙(ここでは、ラインとラインの間隙)を用いる。
【0021】
本実施の形態において、配線パターンAの元データAとは、配線パターンAの設計データのことをいい、配線パターン形成システムによって形成しようとする目標の配線パターンAをデータ化し、座標と線幅で表すものである。元データ作成手段とは、設計データAを作成する装置をいい、CAD(Computer Aided Design)等が挙げられる。
【0022】
本実施の形態において、露光データAとは、配線パターンAに対応する露光パターンAを、レーザ光を用いた直線描画装置等のパターン露光手段によって、感光性レジストを感光させて形成するためのデータをいう。感光性レジストとは、フォトリソ法によって、銅箔等の金属箔をエッチングすることにより、配線パターンを形成する際に用いるエッチングレジストのことをいう。露光データ作成手段とは、元データAから露光データAを作成する装置をいい、CAM(Computer Aided Manufacturing)等が挙げられる。
【0023】
本実施の形態において、パターン露光手段とは、露光データAに基づいて、基板上に配置された感光性レジストに、露光パターンAを露光する露光装置のことをいう。レーザ光又はUV−LED光を用いて、直接感光性レジストに露光パターンを露光させる直接描画装置(DI:Direct Imaging)等が挙げられる。
【0024】
本実施の形態において、現像パターン形成手段とは、露光パターンAが露光された感光性レジストを現像して現像パターンAを形成する現像装置のことをいう。
【0025】
本実施の形態において、実パターン形成手段とは、現像パターンAを形成した基板に対して回路加工を行ない実パターンAを形成する装置をいい、エッチング装置が挙げられる。
【0026】
本実施の形態において、差分データ作成手段とは、実パターンAから実パターンデータAを取得し、この実パターンデータAと実パターンAの元データAとの差分から、差分データAを作成する装置をいい、光学式の自動外観検査装置(AOI:Automatic
Optical Inspection)等が挙げられる。実パターンデータAと実パターンAの元データAとの差分とは、具体的には、同一の座標における実パターンデータAと実パターンAの元データAとの線幅の差異をいう。
【0027】
本実施の形態において、一次補正関数とは、差分Aを生じさせる因子と差分データAとの関係から、差分Aを生じさせる因子と差分Aを抑制するための露光データAの補正量Aとの関係を規定したものである。また、一次補正関数作成手段とは、この一次補正関数を作成する装置をいい、例えば、差分Aを生じさせる因子と差分データAとの関係から、差分Aを生じさせる因子と差分Aを抑制するための露光データAの補正量Aとの関係を求める演算機能を備えたコンピュータが挙げられる。
【0028】
図4に示すように、本実施の形態においては、実パターンデータAと元データAとの差分Aを生じさせる因子として、配線パターンAに含まれる異なるパターン間隙(ここでは、ラインとラインの間隙を種々変化させたもの)を用いる。異なるパターン間隙毎に差分データAを求めて、このパターン間隙と差分データAとの関係から、パターン間隙(差分Aを生じさせる因子)と差分Aを抑制するための露光データAの補正量Aとの関係を、一次補正関数として作成する。
【0029】
本実施の形態によれば、作成した一次補正関数を用いることで、一次補正関数を作成するのに用いた配線パターンAとは異なる任意の配線パターン(例えば、配線パターンB)についても、予め適切な露光データの補正量を求めることができる。また、実際の製品を配線パターン形成システムに投入する直前に、配線パターンAをテストパターンとして投入し、一次補正関数を求めれば、この一次補正関数を用いて、一次補正関数を作成するのに用いた配線パターンAとは異なる実際の製品の配線パターン(例えば、配線パターンB)に対しても、そのときの配線パターン形成システムの状態変化(感光性レジスト、現像液、エッチング液等の状態変化)に対応した補正量Aを設定することができる。したがって、本実施の形態によれば、パターン間隙による配線パターンのライン幅の変動に加え、感光性レジスト、現像液、エッチング液等の製造ラインの状態変化による配線パターンのライン幅の比較的早い変動に対しても、露光データを補正して対応可能とすることにより、微細回路形成時のライン幅精度を向上させることができる。
【0030】
また、図2に示すように、本実施の形態は、さらに、前記一次補正関数に基づいて、前記差分Aを生じさせる因子と前記差分データAとの関係から、前記差分Aを生じさせる因子と差分Aを抑制するための前記露光データAの補正量Aとの関係を規定した二次補正関数を作成する二次補正関数作成手段と、を有する。
【0031】
つまり、図2に示すように、前記一次補正関数作成手段が前記一次補正関数を作成した後に、再度、前記露光データAに基づいて、基板上に配置された感光性レジストに、露光パターンAを露光するパターン露光手段と、前記露光パターンAが露光された感光性レジストを現像して現像パターンAを形成する現像パターン形成手段と、前記現像パターンAを形成した基板に対して回路加工を行ない実パターンAを形成する実パターン形成手段と、前記実パターンAから実パターンデータAを取得し、この実パターンデータAと前記実パターンAの元データAとの差分Aから、差分データAを作成する差分データ作成手段と、前記一次補正関数に基づいて、前記差分Aを生じさせる因子と前記差分データAとの関係から、前記差分Aを生じさせる因子と差分Aを抑制するための前記露光データAの補正量Aとの関係を規定した二次補正関数を作成する二次補正関数作成手段と、を有している。
【0032】
本実施の形態において、二次補正関数とは、前記一次補正関数に基づいて、前記差分Aを生じさせる因子と前記差分データAとの関係から、前記差分Aを生じさせる因子と差分Aを抑制するための前記露光データAの補正量Aとの関係を規定したものである。また、二次補正関数作成手段とは、この二次補正関数を作成する装置をいい、例えば、差分Aを生じさせる因子と差分データAとの関係から、差分Aを生じさせる因子と差分Aを抑制するための露光データAの補正量Aとの関係を求める演算機能を備えたコンピュータが挙げられる。
【0033】
図5に示すように、本実施の形態において、二次補正関数は、一次補正関数に基づいて、差分Aを生じさせる因子と差分データAとの関係から作成される。つまり、差分Aを生じさせる因子として、一次補正関数を作成する際と同様に、配線パターンAに含まれる異なるパターン間隙を用い、異なるパターン間隙毎に差分データAを求めて、このパターン間隙と差分データAとの関係から、一次補正関数に基づいて、パターン間隙(差分Aを生じさせる因子)と差分Aを抑制するための露光データAの補正量Aとの関係を二次補正関数として作成する。ここで、一次補正関数に基づいて作成する、というのは、一次補正関数を作成することによって、パターン間隙(差分Aを生じさせる因子)と差分Aを抑制するための露光データAの補正量Aとの関係は、既にその傾向が把握されていることから、二次補正関数を作成する際は、一次補正関数を平行移動したり、伸縮したり、傾けたりして二次補正関数とすることを表わす。
【0034】
本実施の形態によれば、作成した一次補正関数を利用して、二次補正関数を作成できるので、実際の製品を配線パターン形成システムに投入する直前に、配線パターンAをテストパターンとして投入することで、一次補正関数に基づいて二次補正関数を素早く求めることができる。このため、この二次補正関数を用いて、一次補正関数及び二次補正関数を作成するのに用いた配線パターンAとは異なる実際の製品の配線パターン(例えば、配線パターンB)に対しても、そのときの配線パターン形成システムの状態変化(感光性レジスト、現像液、エッチング液等の状態変化)に対応した補正量Aを設定することができる。したがって、本実施の形態によれば、パターン間隙による配線パターンのライン幅の変動に加え、感光性レジスト、現像液、エッチング液等の製造ラインの状態変化による配線パターンのライン幅の比較的早い変動に対しても、露光データを補正して対応可能とすることにより、微細回路形成時のライン幅精度を向上させることができる。
【0035】
本実施の形態において、前記二次補正関数が、前記差分Aを生じさせる因子と、前記一次補正関数に比べて、より少ない個所の差分データとの関係から作成される。つまり、一次補正関数を作成することによって、パターン間隙(差分Aを生じさせる因子)と差分Aを抑制するための露光データAの補正量Aとの関係は、既にその傾向が把握されていることから、二次補正関数を作成する際は、一次補正関数を作成する際よりも、少ない個所の差分データを用いて作成する。これにより、二次補正関数作成手段における演算処理速度が速くなり、そのときの配線パターン形成システムの状態変化(感光性レジスト、現像液、エッチング液等の状態変化)に対応した補正量Aを即座に設定することができる。
【0036】
本実施の形態において、前記二次補正関数が、前記一次補正関数を平行移動することにより作成される。これにより、二次補正関数を作成する際は、数か所のパターン間隙(差分Aを生じさせる因子)について、差分データを取得するだけで済み、よりそのときの配線パターン形成システムの状態変化(感光性レジスト、現像液、エッチング液等の状態変化)に対応した補正量Aを即座に設定することができる。
【0037】
図3に示すように、本実施の形態の配線パターン形成システムは、さらに、配線パターンBの元データBを作成する元データ作成手段と、前記元データBから露光データBを作成する露光データ作成手段と、前記二次補正関数に基づいて、前記露光データBに対する補正量Bを設定し、前記露光データBを補正して露光データB1を作成する露光データ補正手段と、前記露光データB1に基づいて、基板上に配置された感光性レジストに、露光パターンB1を露光するパターン露光手段と、前記露光パターンB1が露光された感光性レジストを現像して現像パターンB1を形成する現像パターン形成手段と、前記現像パターンB1を形成した基板に対して回路加工を行ない実パターンB1を形成する実パターン形成手段と、を有する。
【0038】
本実施の形態において、配線パターンBとは、配線パターンAとは異なる配線パターンであって、配線パターン形成システムによって形成しようとする目標の配線パターンをいう。特に限定はなく、任意の配線パターンを用いることができる。本実施の形態では、配線パターンAに含まれる実パターンデータAと元データAとの差分を生じさせる因子を有する仕様の製品パターン(製品用の配線パターン)を用いる。つまり、本実施の形態においては、前記配線パターンAが、差分Aを生じさせる因子を含むテストパターンであり、前記配線パターンBが、製品パターンである。
【0039】
一次補正関数及び二次補正関数を作成するのに用いる配線パターンAと、製品パターンである配線パターンBとが異なる配線パターンであることにより、多数の品種の製品パターンに対しても、共通の配線パターンを用いて一次補正関数及び二次補正関数を作成することができ、しかも、予め一次補正関数及び二次補正関数を作成しておくことができるので、新しい品種の製品パターンに対しても適正な露光データへの補正量を即座に設定することが可能になる。
【0040】
本実施の形態において、配線パターンAと配線パターンBとが、同一の基板上に配置されてもよい。これにより、配線パターンAと配線パターンBとが同時に配線パターン形成システムに投入されるので、配線パターンAがテストパターンであり、配線パターンBが製品パターンである場合には、テストパターンである配線パターンAについて、実パターンAと元データAとの差分を監視することにより、リアルタイムに、感光性レジスト、現像液、エッチング液等の製造ラインの状態変化による配線パターンのライン幅の比較的早い変動を捉えることが可能になり、二次補正関数を逐次更新することで、これらの製造ラインの状態変化に即座に対応することが可能になる。
【0041】
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態の配線パターン形成システムについて、図6図7を用いて説明する。
【0042】
図6及び図7に示すように、本実施の形態の配線パターン形成システムは、実パターンデータAと元データAとの差分Aを生じさせる因子として、パターンサイズ(ここでは円形ランドの直径)を用いる。これ以外は、図1図3に示すように、第1の実施形態と同様にして、種々のパターンサイズの配線パターンA(ここでは、何れも円形ランド)を用いて、一次補正関数及び二次補正関数を作成し、製品パターンである配線パターンBの実パターンB1を作成する。図1図3の説明は重複するため省略する。
【0043】
このように、実パターンデータAと元データAとの差分Aを生じさせる因子として、パターンサイズを用いる場合においても、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0044】
(第3の実施形態)
本発明の第3の実施形態の配線パターン形成システムについて、図8図9を用いて説明する。
【0045】
図8及び図9に示すように、本実施の形態の配線パターン形成システムは、実パターンデータAと元データAとの差分Aを生じさせる因子として、パターン厚さ(実際にエッチングされる導体の厚さ)を用いる。これ以外は、図1図3に示すように、第1の実施形態と同様にして、種々のパターン厚さの配線パターンAを用いて、一次補正関数及び二次補正関数を作成し、製品パターンである配線パターンBの実パターンB1を作成する。図1図3の説明は重複するため省略する。
【0046】
このように、実パターンデータAと元データAとの差分Aを生じさせる因子として、パターン厚さを用いる場合においても、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【実施例】
【0047】
<一次補正関数の作成>
まず、一次補正関数を作成するため、図10のテストパターン1と製品パターン(図示しない。)とを配置した、図11の実パターン基板C4cを作製するための基板として、絶縁層の表裏に5μmの銅箔を有した厚さ0.22mm、縦440mm、横510mmのMCL−E−700G(日立化成株式会社製 商品名、「MCL」は登録商標。)の銅張積層板の銅箔上に電気銅めっきで約9μmのめっきを施し、表裏面のそれぞれの面の全体の銅厚を約14μmとしたものを準備した。次に、表裏面の銅箔上に感光性のエッチングレジストを貼り合せ、製品パターンと図10のテストパターン1を露光し、水平搬送型のエッチング装置を用いてエッチングによる回路形成を行い、図11に示すような実パターン基板C4cを、9枚作製した。図10に示したテストパターンの元データ(設計値)は、パターン幅(パターン3の幅)を100μmで固定し、パターン間隙2を14〜150μmの範囲で24段階に変化させた線状の配線パターンを、表裏面のそれぞれについて、縦方向及び横方向に配置したものであり、この元データに基づいて作成した当初の露光データも元データ(設計値)と同じである。図11は実パターン基板C4cの概要を示したものであり、本実施例では実際には、製品パターン以外に、縦方向に11個、横方向に11個、全部で121個のテストパターン1を、実パターン基板C4cの表裏面のそれぞれの面内に均等に配置した。
【0048】
実パターン基板C4cに対して、光学式自動外観検査装置を用いて実パターンデータ(仕上り値)を取得した。このときの測定ポイント数は、各テストパターン毎に縦方向と横方向の線状の配線パターンについて各1か所ずつであり、このため、実パターン基板C4cの表裏面のそれぞれの面内で、縦方向及び横方向の線状の配線パターンについて各121ポイント、9枚の合計では縦方向及び横方向の線状の配線パターンについて、面毎に各1089ポイントである。次に、テストパターン1の同一の座標、つまり、パターン間隙が同一の設計値を有する個所同士で、各設計値におけるパターン間隙毎に、実パターンデータ(仕上り値)と元データ(設計値)との差分データを作成した。ここで、実パターンデータ(仕上り値)は、24段階のパターン間隙のそれぞれについて、面毎に1089ポイント(1枚当り121ポイント)の実パターンデータ(仕上り値)を取得し、同じ位置のポイント毎に(121のポイント毎に)平均した値である。
【0049】
エッチングによる回路加工においては、実パターン基板の表裏面の一方の面内においても、配線パターンの配置された位置によって、実パターン基板の搬送方向やエッチング液の当たる方向等との関係が変化するので、エッチング処理に方向性やエッチング量のむらが生じる傾向がある。また、特に実パターン基板の端部周辺部では、エッチング処理のむらに加えて、めっき厚さの変動による銅箔(導体)の厚さのむら等も加わるため、さらにこの傾向が強い。このため、本実施例では、実パターン基板の面内を銅箔(導体)の厚さの分布に基づいて複数の領域に分け、しかも、実パターン基板の中央部に比べて、銅箔(導体)の厚さのばらつきが大きい端部周辺部では、より領域を細かく分けて、これらの領域毎に一次補正関数を作成した。
【0050】
具体的には、図12に示すように、実パターン基板C4cの面内に均等に配置された121ポイントの実パターンデータのうち、実パターン基板C4cの中央部から2ポイント、端部周辺部から40ポイントの合計42ポイントを選択して、これらの各ポイント毎に一次補正関数を作成した。また、実パターン基板C4c内に配置された製品パターン(図示しない。)の元データ又は露光データの補正に用いる一次補正関数は、それぞれの製品パターンと位置関係が最も近いテストパターン1を用いて作成した一次補正関数を用いることとした。なお、図12では、製品パターンを省略し、テストパターンのみを図示した。以下では、42ポイントのうち、実パターン基板の中央部の1ポイントを用いて説明する。
【0051】
また、エッチングによる回路加工では、実パターン基板の表裏面のそれぞれで、エッチング液の当たり方が異なるので、エッチング処理の傾向が変化する。このため、本実施例では、実パターン基板の表裏面のそれぞれについて、一次補正関数を作成したが、以下では、表面側(水平搬送でのエッチングによる回路形成時に、上側となった面)についてのみ説明し、裏面側については説明を省略する。
【0052】
さらに、エッチングによる回路加工においては、実パターン基板の表裏面の一方の面内においても、配線パターンの方向によって、実パターン基板の搬送方向やエッチング液の当たる方向等との関係が変化するので、エッチング処理に方向性やエッチング量のむらが生じる傾向がある。このため、本実施例では、テストパターンの縦方向と横方向の線状の配線パターンのそれぞれについて、一次補正関数を作成した。が、以下では、横方向についてのみ説明し、縦方向については説明を省略する。
【0053】
次に、この差分データと差分を生じさせる因子であるパターン間隙との関係を調べ、このパターン間隙と差分を抑制するための元データの補正量との関係として、図13に示すような一次補正関数を作成した。
【0054】
図13の表に示したパターン間隙の設計値(単位はμm)は、テストパターンの元データのパターン間隙(差分を生じさせる因子)の数値である。パターン間隙の仕上り値(単位はμm)は、光学式自動外観検査装置を用いて実パターンデータから取得したパターン間隙の実測値である。片側補正量(単位はμm)は、パターン間隙の仕上り値と元データとの差分を抑制するための露光データの補正量であり、下式(1)によって求めた。ここで、片側補正量としているのは、露光データを補正する際に、パターン間隙の両側に同じ量の補正を行うためである。
片側補正量(μm)=(パターン間隙の仕上り値(μm)−設計値(μm))/2 …(1)
【0055】
<一次補正関数を用いた露光データの補正>
一次補正関数を用いた製品パターン7の露光データへの補正処理は、例えば、製品パターン7の露光データにおいて、設計値が30μmの個所に対しては、図12の表のパターン間隙の仕上り値が28.5μm(片側補正量が4.3μm)と、仕上り値が33.2μm(片側補正量が5.6μm)の各データから、仕上り値が30μmである場合の片側補正量の値は、これらのデータ同士を結んだ直線上にあると仮定して計算により取得した。このようにして計算で取得したパターン間隙の仕上り値が30μmのときの片側補正量は4.7μmであり、露光データ(ここでは初期の露光データを意味し、元データと同じ。)に対して片側4.7μmずつパターン間隙を狭くする補正処理を行った。つまり、製品パターン7のパターン間隙の設計データ(設計値)が30μmの箇所については、パターン間隙の補正処理後の露光データは20.6μmとなるようにした。また、実パターン基板C4c内に配置された製品パターン(図示しない。)の元データ又は露光データの補正に用いる一次補正関数は、それぞれの製品パターンと位置関係が最も近いテストパターン1を用いて作成した一次補正関数を用いた。
【0056】
このとき、製品パターン7の露光データ(ここでは初期の露光データを意味し、元データと同じ。)には、上記で作成した一次補正関数を用いて補正処理を施し、テストパターン1の露光データには補正処理を施さないようにした。テストパターン1については、常に一次補正関数を作成したときと同じ露光データを用いて実パターンを作製し、二次補正関数を作成するための実パターンデータを採取するためである。
【0057】
<仮の補正関数の作成>
次に、仮の補正関数を作成するため、一次補正関数を作製するときと同様の基板を準備し、図11に概略を示すようなテストパターン1と製品パターン(図示しない。)を混在させた実パターン基板C4cを、1枚作製した。テストパターン1は、一次補正関数を作製するときと同じ設計データを用いたものであり、製品パターンは、パターンの幅/パターン間隙の設計値が30μm/30μmである箇所を有する設計データのものである。図11は実パターン基板C4cの概要を示したものであり、本実施例では実際には、全部で42個のテストパターン1を、実パターン基板C4c内に配置した。なお、実パターン基板C4c内に配置した42個のテストパターン1の実パターン基板C4c内における位置は、図11に示した一次補正関数を作成するのに用いた実パターン基板C4c内の42ポイントのテストパターン1の位置と対応している。
【0058】
次に、実パターン基板C4cに対して、光学式自動外観検査装置を用いて実パターンデータ(仕上り値)を取得した。このときの測定ポイント数は、42ポイントである。また、ここでは、図2のテストパターンのパターン間隙2を14〜150μmの範囲で24段階に変化させた線状の配線パターンのうち、図13の表に示すように、20、30、45、60、80、130μmの6段階についてのみ実パターンデータを取得した。次に、この6段階のパターン間隙のそれぞれについて、42のポイント毎に、実パターンデータを平均し、この平均した実パターンデータを用いて、一次補正関数を作成する場合と同様にして、図13に示すような仮の補正関数を作成した。
【0059】
<二次補正関数の作成>
次に、図14の表に示すように、各設計値について、仮の補正関数と一次補正関数との差異を、X方向(図13の横方向)及びY方向(図13の縦方向)について求め、さらに、X方向及びY方向のそれぞれについて平均値を求めた。
【0060】
次に、上記で求めたX方向及びY方向のそれぞれについての差異の平均値に基づいて、図12の一次補正関数のグラフを、図15に示すように平行移動することにより、二次補正関数を得た。これにより、取得する実パターンデータを少なくし、データ処理の負荷を軽減しつつ、製造プロセスの状態に合わせた、より適切な二次補正関数を設定することができた。
【符号の説明】
【0061】
1:テストパターン
2:パターン間隙
3:パターン
4c:実パターン基板C
5:基材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15