特許第6610267号(P6610267)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6610267
(24)【登録日】2019年11月8日
(45)【発行日】2019年11月27日
(54)【発明の名称】フッ素化炭化水素の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 17/093 20060101AFI20191118BHJP
   C07C 19/08 20060101ALI20191118BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20191118BHJP
【FI】
   C07C17/093
   C07C19/08
   !C07B61/00 300
【請求項の数】6
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2016-1861(P2016-1861)
(22)【出願日】2016年1月7日
(65)【公開番号】特開2017-122069(P2017-122069A)
(43)【公開日】2017年7月13日
【審査請求日】2018年9月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108419
【弁理士】
【氏名又は名称】大石 治仁
(72)【発明者】
【氏名】杉本 達也
【審査官】 前田 憲彦
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2015/122386(WO,A1)
【文献】 特開平09−048741(JP,A)
【文献】 特開2009−292749(JP,A)
【文献】 米国特許第02550953(US,A)
【文献】 米国特許第04407731(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 17/00
C07C 19/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
n−ペンタン、シクロペンタン、n−ヘキサン、2−メチルペンタン、3−メチルペンタン、2,2−ジメチルブタン、2,3−ジメチルブタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタン、n−ヘプタン、2−メチルヘキサン、3−メチルヘキサン、2,2−ジメチルヘキサン、2,3−ジメチルペンタン、2,4−ジメチルペンタン、3,3−ジメチルペンタン、3−エチルペンタン、2,2,3−トリメチルブタン、メチルシクロヘキサン、シクロヘプタン、n−オクタン、4−メチルヘプタン、2−メチルヘプタン、3−メチルヘプタン、2,2−ジメチルヘキサン、2,3−ジメチルヘキサン、2,4−ジメチルヘキサン、2,5−ジメチルヘキサン、3,3−ジメチルヘキサン、3,4−ジメチルヘキサン、3−エチルヘキサン、2,2,3−トリメチルペンタン、2,2,4−トリメチルペンタン、2,3,3−トリメチルペンタン、2,3,4−トリメチルペンタン、2−メチル−3−エチルペンタン、3−メチル−3−エチルペンタン、及びシクロオクタンのいずれかである炭化水素系溶媒中、
三フッ化ホウ素をポリビニルピロリドンに担持させた触媒の存在下に、構造式(1)
【化1】
(式中、R、Rはそれぞれ独立して、炭素数1〜3のアルキル基を表し、Rは水素原子、メチル基又はエチル基を表し、Rはメチル基又はエチル基を表す。また、RとRは結合して環構造を形成してもよい。)
で示されるエーテル化合物と、構造式(2)
【化2】
(式中、Rはメチル基又はエチル基を表す。)
で示される酸フルオリドとを接触させることを特徴とする、構造式(3)
【化3】
(式中、R〜Rは前記と同じ意味を表す。)
で示されるフッ素化炭化水素の製造方法。
【請求項2】
前記三フッ化ホウ素をポリビニルピロリドンに担持させた触媒を構成するポリビニルピロリドンの重量平均分子量が、30,000〜360,000である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記構造式(1)で示されるエーテル化合物が、sec−ブチルメチルエーテル、sec−ブチルエチルエーテル、t−ブチルメチルエーテル、t−ブチルエチルエーテル又は2−ペンチルメチルエーテルである、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記構造式(2)で示される酸フルオリドが、フッ化アセチルである、請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
【請求項5】
前記構造式(3)で示されるフッ素化炭化水素が、2−フルオロブタンである、請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
【請求項6】
前記構造式(3)で示されるフッ素化炭化水素の製造に用いた、三フッ化ホウ素をポリビニルピロリドンに担持させた触媒を回収し、回収した三フッ化ホウ素をポリビニルピロリドンに担持させた触媒を、前記式(3)で示されるフッ素化炭化水素の製造に再利用することを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造分野において有用な、プラズマエッチング、プラズマ化学気相成長法(プラズマCVD)等のプラズマ反応用ガス、含フッ素医薬中間体、及びハイドロフルオロカーボン系溶剤として有用な、含フッ素化炭化水素の製造方法に関する。
高純度化されたフッ素化炭化水素は、特に、プラズマ反応を用いた半導体装置の製造分野において、プラズマエッチング用ガス及びプラズマCVD用ガス等に好適である。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体製造技術の微細化がますます進行し、最先端プロセスでは線幅が20nm、さらには10nm世代が採用されてきている。微細化に伴って、その加工技術の難度も向上しており、使用する材料、装置、加工方法等、多方面からのアプローチにより技術開発が進められている。
【0003】
このような背景から、本出願人も、最先端のドライエッチングプロセスにも対応できるドライエッチング用ガスを開発し、2−フルオロブタン等のフッ素数の少ない飽和フッ素化炭化水素が、窒化シリコン膜のエッチングに用いられているモノフルオロメタンを凌ぐ性能を有することを見出している(特許文献1)。
【0004】
従来、2−フルオロブタンの製造方法としていくつかの方法が知られている。例えば、特許文献2には、2−ブタノールに、フッ素化剤として、N,N’−ジエチル−3−オキソ−メチルトリフルオロプロピルアミンを接触させて、2−フルオロブタンを収率46%で得たことが記載されている。特許文献3には、sec−ブチルリチウムのシクロヘキサン/n−ヘキサン混合溶液に、六フッ化硫黄を接触させることにより、フッ化sec−ブチルの生成を確認したことが記載されている。特許文献4には、2−フルオロブタジエンを触媒存在下に水素化することにより、2−フルオロブタンを得たことが記載されている。また、非特許文献1には、三フッ化ホウ素リン酸錯体やフッ化亜鉛等の触媒存在下に、アダマンチルメチルエーテル、シクロヘキシルメチルエーテル等の環状構造を有するエーテル化合物に、フッ素化剤として、フッ化アセチルを作用させて、モノフッ素化炭化水素を得る方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】WO2009−123038号パンフレット(US20110068086A1)
【特許文献2】特開昭59−46251号公報
【特許文献3】特開2009−292749号公報
【特許文献4】米国特許第2550953号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Bulletin of the Chemical Society of Japan,Vol.41,1724(1968)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述のように、従来から2−フルオロブタンの製造方法がいくつか知られている。
しかしながら、特許文献2に記載の方法では、使用するフッ素化剤自体が非常に高価であり、特許文献3に記載の方法では、発火の危険性のあるアルキルリチウムを使用するものである。また、本発明者が、非特許文献1の記載に従って、無溶媒下で同文献記載の反応を試みたところ、副生成物である、メチルアルキルエーテルのメチル基部分がフッ素化剤由来のアセチル基で置換された、酢酸アルキルエステルが多く副生することが確認された。
このように、従来の2−フルオロブタンの製造方法は、工業的生産性の観点から、適用が困難であるという問題があった。
【0008】
本発明者は、特願2014−24501号において、sec−ブチルメチルエーテル、あるいは、sec−ブチルエチルエーテル等の2級アルコールのアルキルエーテル化合物を出発原料にして、炭化水素溶媒下、アセチルフルオリドをフッ素化剤に、三フッ化ホウ素のエーテル錯体を触媒に用いると、副生成物である、酢酸アルキルエステルの生成を抑制しながら、収率良く2−フルオロブタンが得られることを報告している。
【0009】
しかしながら、その後の検討で、生成した2−フルオロブタンは、ルイス酸化合物(三フッ化ホウ素)に接触すると、一部がフッ化水素とブテン類に分解してしまうことが判明した。また、三フッ化ホウ素のエーテル錯体を用いた場合、反応系中で錯体を構成しているエーテル化合物が遊離し、このものが目的物であるフッ素化合物に対して不純物となり、その種類によっては精製時に負荷がかかる場合があることも分かった。さらに、反応に用いる原料や反応条件等によっては、反応液が褐色から黒色に着色し、反応器内が汚れるといった不具合を起こすこともあった。
本発明はかかる実情の下でなされたものであり、2−フルオロブタン等のフッ素化炭化水素を工業的に有利に製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った。その結果、触媒活性成分である三フッ化ホウ素をポリビニルピロリドンに担持させた触媒を用いることにより、(a)反応により生成する目的物と三フッ化ホウ素との過度な接触を避け、結果として、目的物の分解を抑制できること、(b)三フッ化ホウ素エーテル錯体由来のエーテル化合物(不純物)の生成も抑制できること、及び、(c)三フッ化ホウ素をポリビニルピロリドンに担持させた触媒を反応液から回収し、反応に再使用することで、廃棄物量の削減、反応後の後処理簡素化が図られること、及び、(d)反応液が褐色から黒色に着色し、反応器内が汚れるといった不具合を起こすことがないこと、を見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
かくして本発明によれば、(i)〜(v)の、構造式(3)で示されるフッ素化炭化水素を製造する方法が提供される。
(i)炭化水素系溶媒中、三フッ化ホウ素をポリビニルピロリドンに担持させた触媒の存在下に、構造式(1)
【0012】
【化1】
【0013】
(式中、R、Rはそれぞれ独立して、炭素数1〜3のアルキル基を表し、Rは水素原子、メチル基又はエチル基を表し、Rはメチル基又はエチル基を表す。また、RとRは結合して環構造を形成してもよい。)
で示されるエーテル化合物と、構造式(2)
【0014】
【化2】
【0015】
(式中、Rはメチル基又はエチル基を表す。)
で示される酸フルオリドとを接触させることを特徴とする、構造式(3)
【0016】
【化3】
【0017】
(式中、R〜Rは前記と同じ意味を表す。)
で示されるフッ素化炭化水素の製造方法。
(ii)前記三フッ化ホウ素をポリビニルピロリドンに担持させた触媒を構成するポリビニルピロリドンの重量平均分子量が、30,000〜360,000である、(i)に記載の製造方法。
(iii)前記構造式(1)で示されるエーテル化合物が、sec−ブチルメチルエーテル、sec−ブチルエチルエーテル、t−ブチルメチルエーテル、t−ブチルエチルエーテル又は2−ペンチルメチルエーテルである、(i)又は(ii)に記載の製造方法。
【0018】
(iv)前記構造式(2)で示される酸フルオリドが、フッ化アセチルである、(i)〜(iii)のいずれかに記載の製造方法。
(v)前記構造式(3)で示されるフッ素化炭化水素が、2−フルオロブタンである、(i)〜(iv)のいずれかに記載の製造方法。
(vi)前記構造式(3)で示されるフッ素化炭化水素の製造に用いた、三フッ化ホウ素をポリビニルピロリドンに担持させた触媒を回収し、回収した三フッ化ホウ素をポリビニルピロリドンに担持させた触媒を、前記しき(3)で示されるフッ素化炭化水素の製造に再利用することを特徴とする、(i)〜(v)のいずれかに記載の製造方法。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、ルイス酸触媒として、三フッ化ホウ素をポリビニルピロリドンに担持させた触媒を用いることにより、次の利点が得られる。
(a)反応により生成する目的物と三フッ化ホウ素との過度な接触を避けることができ、結果として、目的物の分解を抑制することができる。
(b)三フッ化ホウ素エーテル錯体由来のエーテル化合物(不純物)の生成も抑制できる。
(c)三フッ化ホウ素をポリビニルピロリドンに担持させた触媒を回収し、再使用すること、あるいは、三フッ化ホウ素をポリビニルピロリドンに担持させた触媒を水に溶解させて、反応器から排出させること、により、廃棄物量の削減、反応後の後処理簡素化を図ることができる。
(d)反応液が褐色から黒色に着色し、反応器内が汚れるといった不具合を起こすことがない。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明は、炭化水素系溶媒中、三フッ化ホウ素をポリビニルピロリドンに担持させた触媒(以下「三フッ化ホウ素−PVP担持触媒」ということがある。)の存在下に、前記構造式(1)で示されるエーテル化合物(以下、「エーテル化合物(1)」ということがある。)と、前記構造式(2)で示される酸フルオリド(以下、「酸フルオリド(2)」ということがある。)を接触させることを特徴とする、前記構造式(3)で示されるフッ素化炭化水素(以下、「フッ素化炭化水素(3)」ということがある。)を製造する方法である。
【0021】
〔エーテル化合物(1)〕
本発明においては、出発原料としてエーテル化合物(1)を用いる。
前記構造式(1)中、R、Rはそれぞれ独立して、炭素数1〜3のアルキル基を表し、
は水素原子、メチル基又はエチル基を表し、Rはメチル基又はエチル基である。
【0022】
エーテル化合物(1)は、R〜Rの炭素合計数が、3〜5であるものが好ましい。R、Rの炭素数1〜3のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基が挙げられる。
また、RとRは結合して環構造を形成していても良いが、環構造を形成していないのが好ましい。
とRが結合して形成する環構造としては、シクロプロパン環、シクロブタン環、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、シクロヘプタン環等を挙げられる。
【0023】
エーテル化合物(1)の具体例としては、sec−ブチルメチルエーテル、t−ブチルメチルエーテル、シクロブチルメチルエーテル、2−ペンチルメチルエーテル、3−ペンチルメチルエーテル、2−メチル−2−ブチルメチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル等のメチルエーテル化合物;sec−ブチルエチルエーテル、t−ブチルエチルエーテル、シクロブチルエチルエーテル、2−ペンチルエチルエーテル、3−ペンチルエチルエーテル、2−メチル−2−ブチルエチルエーテル、シクロペンチルエチルエーテル等のエチルエーテル化合物;が挙げられる。
【0024】
これらの中でも、原料の入手が容易であることから、sec−ブチルメチルエーテル、t−ブチルメチルエーテル、2−ペンチルメチルエーテル等の炭素数4又は5のアルキルメチルエーテル化合物;sec−ブチルエチルエーテル、t−ブチルエチルエーテル、2−ペンチルエチルエーテル等の炭素数4又は5のアルキルエチルエーテル化合物;が好ましく、より効率よく目的物が得られることから、sec−ブチルメチルエーテル、sec−ブチルエチルエーテル、t−ブチルメチルエーテル、t−ブチルエチルエーテル、2−ペンチルメチルエーテルがより好ましく、sec−ブチルメチルエーテル、t−ブチルメチルエーテル、2−ペンチルメチルエーテルから選ばれる炭素数4のアルキルメチルエーテル化合物;がさらに好ましい。
【0025】
エーテル化合物(1)は、従来公知の方法により製造し、入手することができる。例えば、油化学 第31巻 960ページ(1982年)に記載の方法、Journal of American Chemical Society,Vol.54,2088(1932)に記載の方法が挙げられる。前者の方法は、50%濃度の水酸化ナトリウムとテトラアルキルアンモニム塩のような相関移動触媒存在下に、対応するアルコールを硫酸エステルと接触させる方法である。後者の方法は、対応する無水アルコールを金属ナトリウムと接触させた後に、臭化アルキル、もしくはヨウ化アルキルと接触させてエーテル化合物を製造するものである。
【0026】
〔酸フルオリド(2)〕
本発明においては、フッ素化剤として、酸フルオリド(2)を用いる。
前記構造式(2)中、Rはメチル基又はエチル基である。
酸フルオリド(2)の具体例としては、フッ化アセチル、フッ化プロピオニルが挙げられ、より収率よく目的物が得られる観点から、フッ化アセチルが好ましい。
【0027】
酸フルオリド(2)は公知物質であり、公知の方法により製造し、入手することができる。例えば、Journal of Chemical Society Dalton Transaction,2129(1975)や、Journal of American Chemical Society,Vol.59,1474(1937)に記載の方法に従って製造することができる。前者の方法は、酢酸にフッ化カリウムを溶解させ、加熱下に、塩化アセチル、あるいは、塩化プロピオニルを添加し、発生するフッ化アセチル、フッ化プロピオニルを回収する方法である。後者は、無水酢酸に二フッ化水素ナトリウムを溶解させ、塩化アセチルを添加して、発生するフッ化アセチルを回収する方法である。
【0028】
酸フルオリド(2)の使用量は、エーテル化合物(1)に対して、通常、0.7〜2.5当量、好ましくは0.8〜2.0当量、より好ましくは0.9〜1.5当量である。
酸フルオリド(2)の使用量がこの範囲であれば、生産性に優れ、また、後処理や精製工程が煩雑にならずに済むので好ましい。
【0029】
酸フルオリド(2)の内、フッ化アセチルは、フッ素化剤として作用した後、エーテル化合物(1)としてメチルエーテル化合物を使用した場合には、酢酸メチルに変換される。また、エーテル化合物(1)としてエチルエーテル化合物を使用した場合には、酢酸エチルに変換される。
酸フルオリド(2)の内、フッ化プロピオニルを使用した場合には、同様に、それぞれプロピオン酸メチル、プロピオン酸エチルに変換される。
【0030】
〔三フッ化ホウ素−PVP担持触媒〕
本発明においては、触媒として、三フッ化ホウ素−PVP担持触媒を使用する。
三フッ化ホウ素−PVP担持触媒は、例えば、Comptes Rendus Chimie,Vol.15,530(2012)に記載の方法や、Monatshefte fur Chemie,Vol.140,53(2009)に記載の方法に従い調製することができる。いずれの方法も、ポリビニルピロリドンを塩化メチレンに溶解させ、そのポリマー溶液に、三フッ化ホウ素錯体を接触させ、析出するポリマー(三フッ化ホウ素−PVP担持触媒)を濾過分離、溶媒洗浄後、乾燥させて調製する方法である。
【0031】
三フッ化ホウ素−PVP担持触媒を調製する際に用いられる三フッ化ホウ素錯体の具体例としては、三フッ化ホウ素の、酢酸錯体、アセトニトリル錯体、エチルアミン錯体、メタノール錯体、プロパノール錯体、ジメチルスフィド錯体、リン酸錯体、ジメチルエーテル錯体、ジエチルエーテル錯体、t−ブチルメチルエーテル錯体、ジブチルエーテル錯体、テトラヒドロフラン錯体等が挙げられる。
これらの中でも、ジメチルエーテル錯体、ジエチルエーテル錯体、t−ブチルメチルエーテル錯体、ジブチルエーテル錯体、テトラヒドロフラン錯体等のエーテル化合物錯体が好ましく、ジエチルエーテル錯体、テトラヒドロフラン錯体、メタノール錯体が、取扱い易さの観点からより好ましい。
【0032】
三フッ化ホウ素−PVP担持触媒の調製に用いるポリビニルピロリドンとしては、重量平均分子量が、30,000〜360,000のものが好ましく、触媒調製の容易性の観点から、30,000〜100,000のものがより好ましい。
ポリビニルピロリドンの重量平均分子量が小さすぎると、本反応で使用する溶媒の種類によっては、三フッ化ホウ素−PVP担持触媒自体が溶解、もしくは半溶解状態になり、反応終了後の触媒回収が困難になるおそれがある。一方、重量平均分子量が大きすぎると、三フッ化ホウ素−PVP担持触媒を調製する際、三フッ化ホウ素エーテル錯体を接触させた後に析出するポリマー(三フッ化ホウ素−PVP担持触媒)自体が非常に粘ちょうになり、濾過分離が困難になる、すなわち、触媒調製自体が困難になるといった不具合を生じる。
ポリビニルピロリドンとしては、市販品をそのまま使用しても構わないし、あるいは、ビニルピロリドンをモノマーとして任意の重量平均分子量に重合したものを用いることもできる。
【0033】
ポリビニルピロリドンに担持される三フッ化ホウ素の濃度は、ポリビニルピロリドン単位重量(g)当たり、3mmol〜9mmolの範囲が好ましい。
担持濃度が低すぎると、反応速度が遅くなり、反応が完結するまでに多大な時間を要したり、三フッ化ホウ素−PVP担持触媒の使用量を多くする必要がある。一方、担持濃度が高すぎると、触媒として繰り返し使用する場合に活性低下を招き、再度、三フッ化ホウ素エーテル錯体と接触させて活性化を行う必要が生じる等、取扱いに注意を払う必要がある。
【0034】
三フッ化ホウ素錯体−PVP担持触媒の使用量は、原料であるエーテル化合物(1)に対し、通常0.1〜20モル%、好ましくは、1〜15モル%である。触媒の使用量が少なすぎると、反応速度の著しい低下を招き、反応が完結するまでに多大な時間を要する。一方、使用量が多すぎると、内容物の液状成分に対し、触媒の固体成分比率が大きくなるので、撹拌し難くなったり、反応が急激に進行して突沸する等の不具合を引き起こすおそれがある。
【0035】
〔炭化水素系溶媒〕
本発明においては、溶媒として炭化水素系溶媒を用いる。
無溶媒であると、三フッ化ホウ素−PVP担持触媒が均一に分散しない事象に起因して、副生成物であるオレフィンや、アルキルカルボン酸エステルの生成量が多くなったり、反応終了後に生成する目的物や副生成物が三フッ化ホウ素−PVP担持触媒への吸着による回収ロスを生じる場合がある。よって、これらの点を改善する観点からも炭化水素系溶媒下で反応を行うことが望ましい。
【0036】
本発明に用いる炭化水素系溶媒としては、精製工程(蒸留精製)の負荷を考慮して、生成物であるフッ素化炭化水素の沸点よりも25℃以上高い沸点を有するものを用いるのが好ましい。
炭化水素系溶媒としては、具体的には、n−ペンタン、シクロペンタン等の炭素数5の炭化水素系溶媒;n−ヘキサン、2−メチルペンタン、3−メチルペンタン、2,2−ジメチルブタン、2,3−ジメチルブタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタン等の炭素数6の炭化水素系溶媒;n−ヘプタン、2−メチルヘキサン、3−メチルヘキサン、2,2−ジメチルヘキサン、2,3−ジメチルペンタン、2,4−ジメチルペンタン、3,3−ジメチルペンタン、3−エチルペンタン、2,2,3−トリメチルブタン、メチルシクロヘキサン、シクロヘプタン等の炭素数7の炭化水素系溶媒;n−オクタン、4−メチルヘプタン、2−メチルヘプタン、3−メチルヘプタン、2,2−ジメチルヘキサン、2,3−ジメチルヘキサン、2,4−ジメチルヘキサン、2,5−ジメチルヘキサン、3,3−ジメチルヘキサン、3,4−ジメチルヘキサン、3−エチルヘキサン、2,2,3−トリメチルペンタン、2,2,4−トリメチルペンタン、2,3,3−トリメチルペンタン、2,3,4−トリメチルペンタン、2−メチル−3−エチルペンタン、3−メチル−3−エチルペンタン、シクロオクタン等の炭素数8の炭化水素系溶媒;等が挙げられる。また、炭化水素系溶媒同士が異性体の関係にある場合は、それらの混合物を炭化水素系溶媒として使用してもよい。
【0037】
これらの中でも、取扱い性の観点から、n−ヘキサン、2−メチルペンタン、3−メチルペンタン、2,2−ジメチルブタン、2,3−ジメチルブタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタン等の炭素数6の炭化水素系溶媒;n−ヘプタン、2−メチルヘキサン、3−メチルヘキサン、2,2−ジメチルヘキサン、2,3−ジメチルペンタン、2,4−ジメチルペンタン、3,3−ジメチルペンタン、3−エチルペンタン、2,2,3−トリメチルブタン、メチルシクロヘキサン、シクロヘプタン等の炭素数7の炭化水素系溶媒;が好ましい。
【0038】
これら炭化水素系溶媒の使用量は、原料となるエーテル化合物(1)1gに対し、通常1〜10mL、好ましくは2〜5mL、より好ましくは2.5〜3mLである。
炭化水素系溶媒の使用量が少なすぎると、副生成物であるアルキルエステルの生成量が多くなり、使用量が多すぎると、反応が完結するまでに多大な時間を要したり、後処理時の廃液の処理が煩雑になる。
【0039】
〔反応〕
エーテル化合物(1)と酸フルオリド(2)との反応は、例えば、反応器に、三フッ化ホウ素−PVP担持触媒と炭化水素系溶媒を仕込み、反応器を所定の温度(0℃〜10℃)に冷却後、全容を撹拌させながら、原料となるエーテル化合物(1)、次いで、フッ素化剤となる酸フルオリド(2)を添加する。その後、所定の温度に維持しながら、内容物の撹拌を継続する等により実施することができる。
【0040】
エーテル化合物(1)と酸フルオリド(2)との反応温度は、0℃〜40℃の範囲が好ましく、10℃〜30℃がより好ましい。この温度範囲内であれば、反応速度が適切であり生産性に優れる。また、生成するフッ素化炭化水素の揮発によるロスを抑制することができる。
【0041】
反応時間は、原料となるエーテル化合物(1)と、酸フルオリド(2)、及び炭化水素系溶媒との組合せや反応規模にもよるが、通常、0.5〜10時間であり、1〜7時間が好ましい。
反応時間が短すぎると、反応が完結せず、未反応原料、もしくはフッ素化剤として機能する酸フルオリドが多く残存して、後処理が面倒になる。一方、反応時間が長すぎると、過剰反応が進行する可能性が高くなり、副生成物であるアルキルエステルの生成量が多くなる。
【0042】
反応終了後においては、反応液の後処理操作を行うことにより目的物を単離することができる。反応液の後処理操作としては、反応系の内容物から、フィルターを使用して、三フッ化ホウ素−PVP担持触媒を分離して、液体成分のみを回収する方法;や、あらかじめ、ろ過機能付きの反応器内で反応を行い、反応終了後、三フッ化ホウ素−PVP担持触媒をろ別して、液体成分のみを回収する方法;等が挙げられる。
【0043】
分離回収された三フッ化ホウ素−PVP担持触媒は、触媒活性を保持しているため、繰り返し使用することができる。すなわち、反応器内に分離回収された三フッ化ホウ素−PVP担持触媒を載置し、再度、炭化水素系溶媒を仕込み、任意の温度に冷却後、撹拌させながら、原料となるエーテル化合物(1)、次いで、フッ素化剤となる酸フルオリド(2)を反応器へ添加して、全容を攪拌して反応を行う操作を繰り返すことができる。
【0044】
また、分離回収された三フッ化ホウ素−PVP担持触媒は、その触媒活性を保持させるため、乾燥した窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下に置いておくことが好ましい。
触媒を繰り返し反応に使用する際、三フッ化ホウ素−PVP担持触媒は、使用する溶媒によっては膨潤し、最初に使用する粉末状態とは異なる形態を有している場合があるが、この状態においても、反応活性に影響を及ぼすことなく、繰り返し反応に供することができる。
また、三フッ化ホウ素−PVP担持触媒を反応器から排出させたい場合には、反応器内に水を入れ、三フッ化ホウ素−PVP担持触媒を溶解させ、水溶液の状態にして反応器から抜き出すことができる。
【0045】
一方、分離された液体成分は、そのまま精留することにより、目的物であるフッ素化炭化水素を単離することができる。さらに高純度のフッ素化炭化水素を得たい場合には、精留を再度実施しても良い。
以上のようにして、フッ素化炭化水素(3)を得ることができる。
【0046】
本発明の製造方法により得られるフッ素化炭化水素(3)の具体例としては、2−フルオロブタン、t−ブチルフルオリド、2−フルオロペンタン、3−フルオロペンタン、2−メチル−2−フルオロブタン、シクロブチルフルオリド、シクロペンチルフルオリド、シクロヘキシルフルオリド等が挙げられる。
これらの中でも、原料入手の容易性から、2−フルオロブタン、t−ブチルフルオリド、2−フルオロペンタンが好ましく、2−フルオロブタン、t−ブチルフルオリドがより好ましく、2−フルオロブタンが特に好ましい。
【実施例】
【0047】
以下、実施例により、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例によってその範囲を限定されるものではない。なお、特に断りがない限り、「%」は「重量%」を表す。
【0048】
以下において採用した分析条件は下記の通りである。
・ガスクロマトグラフィー分析(GC分析)
装置:HP−6890(アジレント社製)
カラム:Inert Cap−1、長さ60m、内径0.25mm、膜厚1.5μm(ジーエルサイエンス社製)
カラム温度:40℃で10分間保持、次いで、20℃/分で昇温し、その後、40℃で10分間保持
インジェクション温度:200℃
キャリヤーガス:窒素
スプリット比:100/1
検出器:FID
【0049】
・ガスクロマトグラフィー質量分析
GC部分:HP−6890(アジレント社製)
カラム:Inert Cap−1、長さ60m、内径0.25mm、膜厚1.5μm(ジーエルサイエンス社製)
カラム温度:40℃で10分間保持、次いで、20℃/分で昇温し、その後、240℃で10分間保持
MS部分:5973 NETWORK(アジレント社製)
検出器 EI型(加速電圧:70eV)
【0050】
[製造例1]sec−ブチルメチルエーテルの製造
撹拌子を入れた容量500mLのナスフラスコに、2−ブタノール360mL、フレーク状水酸化カリウム(アルドリッチ社製、純度約90%)37.3gを入れ、全容を約2.5時間、50℃で撹拌した。水酸化カリウムが溶解し、均一溶液になったところで、加熱を一旦中止した。その均一溶液に、ヨードメタン84.4gを加え、ジムロート型コンデンサーを付した状態で、全容を50℃で3時間強撹拌した。反応混合物を室温(25℃、以下にて同じ。)まで冷却し、上澄み液をガスクロマトグラフィーにて分析したところ、ヨードメタンはほぼ消費され、目的物である2−メトキシブタンと、2−ブタノールの混合物が含まれていることがわかった。ナスフラスコ内の内容物をろ過することにより、ヨウ化カリウムをろ別した。ろ別したヨウ化カリウムを少量の水に溶解させ、上層の有機相を分離、先のろ液と混合し、ろ液混合物を得た。
得られたろ液混合物を蒸留釜に仕込み、KS型精留塔(東科精機社製、カラム長30cm、充填剤:ヘリパックNo.1)を使用して蒸留を行った。塔頂温度55〜56℃の留分を集め、共沸して留出してくる水を分液ロートで分離、得られた蒸留物をモレキュラーシーブス4Aで乾燥することにより、sec−ブチルメチルエーテルを38g得た(収率72%)。
GC−MS(EI−MS):m/z 73、59、41、29
【0051】
[製造例2]sec−ブチルエチルエーテルの製造
撹拌子を入れた容量500mLのナスフラスコに、2−ブタノール240mL、フレーク状水酸化カリウム(アルドリッチ社製、純度約90%)24.8gを入れ、全容を50℃で3時間撹拌した。水酸化カリウムが溶解し、均一の溶液になったところで、加熱を一旦中止した。その均一溶液に、臭化エチル43gを入れ、ジムロート型コンデンサーを付した状態で、70℃で4時間強撹拌した。反応混合物を室温まで冷却し、上澄み液をガスクロマトグラフィーにて分析したところ、臭化エチルはほぼ消費され、目的物である2−エトキシブタンと、2−ブタノールの混合物であった。ナスフラスコ内の内容物から臭化カリウムをろ別してろ液を得た。ろ別した臭化カリウムは少量の水に溶解させ、上層の有機相を分離、先のろ液と混合した(ろ液混合物)。
得られたろ液混合物を蒸留釜に仕込み、KS型精留塔(東科精機社製、カラム長30cm、充填剤:ヘリパックNo.1)を使って、蒸留を行った。塔頂温度68〜69℃の留分を集め、共沸して留出してくる水を分液ロートで分離、モレキュラーシーブス4Aで乾燥し、31gのsec−ブチルエチルエーテルを得た(収率51%)。
GC−MS(EI−MS):m/z 87、73、59、45
【0052】
[製造例3]2−ペンチルメチルエーテルの製造
ジムロート型コンデンサー、滴下ロート、撹拌子を付した容量500mLのナスフラスコに、2−ペンタノール300mL、水酸化カリウム(和光純薬工業社製、純度約85%)30gを入れ、全容を50℃で約2.5時間撹拌した。水酸化カリウムが溶解し、均一溶液になったところで、p−トルエンスルホン酸メチル81gを滴下ロートから約1時間かけて添加し、50℃で3時間強撹拌した。反応混合物を室温まで冷却し、内容物をビーカーに移し、水を加えることにより、生成したp−トルエンスルホン酸カリウムを溶解させた。ビーカー内の液を分液ロートに移し、水層を分離し、2−ペンチルメチルエーテルと2−ペンタノールの混合液を得た。
得られた混合液を蒸留釜に仕込み、KS型精留塔(東科精機社製、カラム長30cm、充填剤ヘリパックNo.1)を使用して蒸留を行った。塔頂温度74〜75℃の留分を集め、共沸して留出してくる水を分液ロートで分離、得られた蒸留物をモレキュラーシーブス4Aで乾燥し、2−ペンチルメチルエーテルを16g得た(収率37%)。
GC−MS(EI−MS):m/z 87、71、59、45
【0053】
[製造例4]フッ化アセチルの製造
攪拌機、滴下ロート及び捕集トラップを付した、容量500mLのガラス製反応器に、無水酢酸200mL、及び、二フッ化水素カリウム46.9gを入れ、全容を40℃に加温しながら撹拌した。そこへ、塩化アセチル47gを滴下ロートから40分間かけて滴下し、滴下終了後、15分ごとに反応器を10℃ずつ昇温させた。最終的に90℃まで加温し、20分間その温度に保持した後、反応を停止させた。その間、反応器から留出してくるフッ化アセチルは、氷水で冷却したガラストラップに捕集した。粗収量は47.6g(粗収率128%)であった。なお、本反応では、無水酢酸からもフッ化アセチルが生成するので、収率は100%を超える。
得られた粗フッ化アセチルを単蒸留して、塔頂温度20〜24℃の留分を集め、フッ化アセチルを42.4g得た(収率114%)。
【0054】
[製造例5]フッ化プロピオニルの製造
攪拌機、滴下ロート、及び捕集トラップを付した、容量500mLのガラス製反応器に、無水プロピオン酸200mL、及び二フッ化水素カリウム46.8gを入れ、全容を90℃に加温しながら撹拌した。そこへ、塩化プロピオニル55.5gを滴下ロートから1時間かけて滴下し、滴下終了後、さらに、15分間撹拌した。その後、15分ごとに反応器を10℃ずつ昇温し、110℃まで加熱した。全容を110℃で30分間撹拌した後、反応を停止させた。その間、反応器から留出してくるフッ化プロピオニルは、氷水で冷却したガラストラップに捕集した。粗収率は132%であった。なお、本反応では、無水プロピオン酸からもフッ化プロピオニルが生成するので、収率は100%を超える。
得られた粗フッ化プロピオニルを単蒸留して、塔頂温度42〜43℃の留分を集め、フッ化プロピオニルを46.8g得た(収率103%)。
【0055】
[触媒調製例1]
容量100mLのナスフラスコに、ポリビニルピロリドン(和光純薬工業社製、K25、重量平均分子量;35,000)を3g、塩化メチレンを30mL入れ、20℃で、ポリビニルピロリドンを塩化メチレンに溶解させた。その溶液に、三フッ化ホウ素テトラヒドロフラン錯体(5.6g)を塩化メチレン(15mL)に溶解させた溶液を約10分かけて滴下した。この間、ポリマー(三フッ化ホウ素−PVP担持触媒)の析出が確認された。フラスコ内の内容物をさらに1時間撹拌した。その後、内容物を減圧濾過にてろ別し、塩化メチレン10mLで2回洗浄した。得られた固形分をデシケータ中、真空に減圧し、一晩乾燥させ、三フッ化ホウ素−PVP担持触媒(触媒1)を得た(三フッ化ホウ素担持濃度:9mmol/g)。
【0056】
[触媒調製例2]
触媒調製例1において、ポリビニルピロリドンの使用量を3gから4gに、三フッ化ホウ素テトラヒドラフラン錯体の使用量を5.6gから2.23gに変更したこと以外は、触媒調製例1に従って触媒を調製し、三フッ化ホウ素−PVP担持触媒(触媒2)を得た(三フッ化ホウ素担持濃度:4mmol/g)。
【0057】
[触媒調製例3]
容量100mLのナスフラスコに、ポリビニルピロリドン(和光純薬工業社製、K90、重量平均分子量;360,000)を3g、塩化メチレンを60mL入れ、20℃でポリビニルピロリドンを塩化メチレンに溶解させた。その溶液に、三フッ化ホウ素テトラヒドロフラン錯体(5.6g)を塩化メチレン(15mL)に溶解させた溶液を約10分かけて滴下した。この間、ポリマーの析出が確認された。フラスコ内の内容物をさらに1時間撹拌した。その後、内容物を減圧濾過にてろ別し、塩化メチレン10mLで2回洗浄した。得られたガム状の固体をデシケータ中、真空に減圧し、一晩乾燥させ、三フッ化ホウ素−PVP担持触媒(触媒3)を得た(三フッ化ホウ素担持濃度:9mmol/g)。
【0058】
[実施例1]
撹拌子、ジムロート型コンデンサー(0℃の冷媒を循環)を付した容量50mLのガラス製反応器に、窒素雰囲気下、触媒調製例1で調製した触媒1を0.25g、及び、乾燥n−ヘキサン5mLを入れ、0℃に冷却した。そこへ、製造例1で合成したsec−ブチルメチルエーテル1.76g、製造例4で合成したフッ化アセチル1.86gを添加し、その後、20℃まで昇温し、内容物を3.5時間撹拌した。反応終了後、内容物をガスクロマトグラフィーにて分析した結果、原料のsec−ブチルメチルエーテルはほぼ消失し、目的物である2−フルオロブタン、21.79面積%と、1−ブテン、(E)−2−ブテン、及び(Z)−2−ブテンが、それぞれ、0.27面積%、6.49面積%、2.36面積%生成していた。また、原料がアセトキシ化された、2−アセトキシブタンは、0.43面積%生成したに過ぎなかった。なお、残りは溶媒のn−ヘキサン、酢酸メチルであった。結果を下記表1にまとめて示す。
【0059】
[実施例2]
実施例1において、触媒1を、触媒調製例2で調製した触媒2に変更し、反応時間を3.5時間から7時間としたこと以外は、実施例1と同様にして反応を行った。反応終了後、内容物をガスクロマトグラフィーにて分析した結果、原料のsec−ブチルメチルエーテルはほぼ消失し、目的物である2−フルオロブタン、21.11面積%と、1−ブテン、(E)−2−ブテン、及び(Z)−2−ブテンが、それぞれ、0.29面積%、6.81面積%、2.45面積%生成していた。また、原料がアセトキシ化された2−アセトキシブタンは、1.17面積%生成したに過ぎなかった。結果を下記表1にまとめて示す。
【0060】
[実施例3]
実施例1において、触媒1を、触媒調製例3で調製した触媒3に変更したこと以外は、実施例1と同様にして反応を行った。反応終了後、内容物をガスクロマトグラフィーにて分析した結果、原料のsec−ブチルメチルエーテルはほぼ消失し、目的物である2−フルオロブタン、21.72面積%と、1−ブテン、(E)−2−ブテン、及び(Z)−2−ブテンが、それぞれ、0.23面積%、5.89面積%、0.96面積%生成していた。また、原料がアセトキシ化された2−アセトキシブタンは、1.05面積%生成したに過ぎなかった。結果を下記表1にまとめて示す。
【0061】
[実施例4]
実施例1において、製造例4で合成したフッ化アセチル1.86gを、製造例5で合成したプロピオニルフルオリド3.65gに変更し、反応時間を3.5時間から5時間としたこと以外は、実施例1と同様にして反応を行った。反応終了後、内容物をガスクロマトグラフィーにて分析した結果、原料のsec−ブチルメチルエーテルはほぼ消失し、目的物である2−フルオロブタン、17.46面積%と、1−ブテン、(E)−2−ブテン、及び(Z)−2−ブテンが、それぞれ、0.29面積%、4.71面積%、1.65面積%生成していた。また、原料がプロピオニルオキシ化された2−プロピオニルオキシブタンは、1.13面積%生成したに過ぎなかった。なお、残りは溶媒のn−ヘキサン、プロピオン酸メチルであった。結果を下記表1にまとめて示す。
【0062】
[実施例5]
実施例1において、n−ヘキサン5mLを、シクロヘキサン5mLに変更したこと以外は、実施例1と同様にして反応を行った。反応終了後、内容物をガスクロマトグラフィーにて分析した結果、原料のsec−ブチルメチルエーテルはほぼ消失し、目的物である2−フルオロブタン、19.21面積%と、1−ブテン、(E)−2−ブテン、及び(Z)−2−ブテンが、それぞれ、0.11面積%、6.34面積%、2.55面積%生成していた。また、原料がアセトキシ化された2−アセトキシブタンは0.98面積%生成したに過ぎなかった。結果を下記表1にまとめて示す。
【0063】
[実施例6]
実施例1において、n−ヘキサン5mLを、n−ヘプタン5mLに変更したこと以外は、実施例1と同様にして反応を行った。反応終了後、内容物をガスクロマトグラフィーにて分析した結果、原料のsec−ブチルメチルエーテルはほぼ消失し、目的物である2−フルオロブタン20.13面積%と、1−ブテン、(E)−2−ブテン、及び(Z)−2−ブテンが、それぞれ、0.22面積%、6.01面積%、2.33面積%生成していた。また、原料がアセトキシ化された2−アセトキシブタンは、0.76面積%生成したに過ぎなかった。結果を下記表1にまとめて示す。
【0064】
[実施例7]
実施例1において、製造例1で合成したsec−ブチルメチルエーテル1.76gを、製造例2で合成したsec−ブチルエチルエーテル2.04gに変更したこと以外は、実施例1と同様にして反応を行った。反応終了後、内容物をガスクロマトグラフィーにて分析した結果、原料のsec−ブチルエチルエーテルはほぼ消失し、目的物である2−フルオロブタン、21.12面積%と、1−ブテン、(E)−2−ブテン、及び(Z)−2−ブテンが、それぞれ0.19面積%、3.88面積%、1.34面積%生成していた。また、原料がアセトキシ化された2−アセトキシブタンは、1.56面積%生成したに過ぎなかった。結果を下記表1にまとめて示す。
【0065】
[実施例8]
実施例1において、製造例1で合成したsec−ブチルメチルエーテル1.76gを、製造例3で合成した2−ペンチルメチルエーテル2.04gに変更したこと以外は、実施例1と同様にして反応を行った。反応終了後、内容物をガスクロマトグラフィーにて分析した結果、原料のsec−ペンチルエチルエーテルはほぼ消失し、目的物である2−フルオロペンタン、16.72面積%、3−フルオロペンタン、4.64面積%と、異性体混合物であるペンテンが5.87面積%生成していた。また、原料がアセトキシ化された2−アセトキシペンタンは、0.92面積%生成したに過ぎなかった。結果を下記表1にまとめて示す。
【0066】
[実施例9]
実施例1において、製造例1で合成したsec−ブチルメチルエーテル1.76gを、t−ブチルメチルエーテル(東京化成工業社製)1.76gに変更したこと以外は、実施例1と同様にして反応を行った。反応終了後、内容物をガスクロマトグラフィーにて分析した結果、原料のt−ブチルメチルエーテルはほぼ消失し、目的物であるt−ブチルフルオリド、23.34面積%と、イソブテン、2.12面積%が生成していた。また、原料がアセトキシ化されたアセトキシt−ブチルは、0.89面積%生成したに過ぎなかった。結果を下記表1にまとめて示す。
【0067】
[実施例10]
実施例1において、製造例1で合成したsec−ブチルメチルエーテル1.76gを、t−ブチルエチルエーテル(東京化成工業製)2.04gに変更したこと以外は、実施例1と同様にして反応を行った。反応終了後、内容物をガスクロマトグラフィーにて分析した結果、原料のt−ブチルエチルエーテルはほぼ消失し、目的物であるt−ブチルフルオリド22.75面積%とイソブテン2.62面積%生成していた。また、原料がアセトキシ化されたアセトキシt−ブチルは、0.85面積%生成したに過ぎなかった。結果を下記表1にまとめて示す。
【0068】
[実施例11]
バルブ、撹拌機を付した容量100mLのろ過器付ステンレス製オートクレーブに、触媒調製例1で調製した触媒1を1.5g充填し、系内を減圧後、窒素雰囲気下にした。そこへ、乾燥n−ヘキサン30mLを入れ、オートクレーブを0℃に冷却した。バルブからシリンジを介して、sec−ブチルメチルエーテル10.6g、次いで、フッ化アセチル11.2gを入れ、内容物を20℃で4時間撹拌した。撹拌を停止し、オートクレーブの底バルブを開け、乾燥窒素で微加圧しながら反応液を抜き出した。反応液は無色透明であり、ガスクロマトグラフィーにて分析した結果、原料のsec−ブチルメチルエーテルはほぼ消失し、目的物である2−フルオロブタン21.51面積%と、1−ブテン、(E)−2−ブテン、及び(Z)−2−ブテンが、それぞれ、0.37面積%、5.46面積%、1.72面積%生成していた。また、原料がアセトキシ化された2−アセトキシブタンは、0.67%生成したに過ぎなかった。
【0069】
触媒1の残ったオートクレーブ内に、再度、乾燥n−ヘキサン30mLを入れ、オートクレーブを0℃に冷却した。バルブからシリンジを介して、sec−ブチルメチルエーテル10.6g、次いで、フッ化アセチル11.2gを入れ、内容物を20℃で4時間撹拌した。撹拌を停止し、オートクレーブの底バルブを開け、乾燥窒素で微加圧しながら反応液を抜き出した。反応液は無色透明であり、ガスクロマトグラフィーにて分析した結果、原料のsec−ブチルメチルエーテルはほぼ消失し、目的物である2−フルオロブタン、2123面積%と、1−ブテン、(E)−2−ブテン、及び(Z)−2−ブテンが、それぞれ、0.34面積%、5.32面積%、1.34面積%生成していた。また、原料がアセトキシ化された2−アセトキシブタンは、0.72面積%生成したに過ぎなかった。結果を下記表1にまとめて示す。なお、表中、実施例11において、上段は1回目の反応結果、下段は触媒を再利用して行った2回目の反応結果を示す(以下にて同じ)。
【0070】
[実施例12]
バルブ、撹拌機を付した容量100mLのろ過器付ステンレス製オートクレーブに、触媒調製例3で調製した触媒3を1.5gを充填し、系内を減圧後、窒素雰囲気下にした。そこへ、乾燥シクロヘキサン30mLを入れ、オートクレーブを0℃に冷却した。バルブからシリンジを介して、sec−ブチルメチルエーテル10.6g、次いで、フッ化アセチル11.2gを入れ、内容物を20℃で3.5時間撹拌した。撹拌を停止し、オートクレーブの底バルブを開け、乾燥窒素で微加圧しながら反応液を抜き出した。反応液は無色透明であり、ガスクロマトグラフィーにて分析した結果、原料のsec−ブチルメチルエーテルはほぼ消失し、目的物である2−フルオロブタン、21.09面積%と、1−ブテン、(E)−2−ブテン、及び(Z)−2−ブテンが、それぞれ、0.28面積%、5.53面積%、1.32面積%生成していた。また、原料がアセトキシ化された2−アセトキシブタンは、0.66面積%生成したに過ぎなかった。
【0071】
触媒の残ったオートクレーブ内に、再度、乾燥シクロヘキサン30mLを入れ、オートクレーブを0℃に冷却した。バルブからシリンジを介して、sec−ブチルメチルエーテル10.6g、次いで、フッ化アセチル11.2gを入れ、内容物を20℃で4時間撹拌した。撹拌を停止し、オートクレーブの底バルブを開け、乾燥窒素で微加圧しながら反応液を抜き出した。反応液は無色透明であり、ガスクロマトグラフィーにて分析した結果、原料のsec−ブチルメチルエーテルはほぼ消失し、目的物である2−フルオロブタン、21.23面積%と、1−ブテン、(E)−2−ブテン、及び(Z)−2−ブテンが、それぞれ、0.33面積%、5.37面積%、1.45面積%生成していた。また、原料がアセトキシ化された2−アセトキシブタンは、0.79面積%生成したに過ぎなかった。結果を下記表1にまとめて示す。
【0072】
[比較例1]
実施例1において、溶媒のn−ヘキサンを添加しないこと以外は、実施例1と同様にして反応を行った。反応終了後、反応器内にn−ヘキサン5mLを添加し、ガスクロマトグラフィーにて分析した結果、目的物である2−フルオロブタン、12.32面積%と、1−ブテン、(E)−2−ブテン、及び(Z)−2−ブテンが、それぞれ0.44面積%、15.15面積%、4.34面積%生成し、原料のsec−ブチルメチルエーテルが、4.33面積%残存していた。また、原料がアセトキシ化された2−アセトキシブタンが、5.24面積%生成していた。結果を下記表1にまとめて示す。
【0073】
[比較例2]
実施例1において、溶媒をn−ヘキサンからメチルエチルケトンに変更したこと以外は、実施例1と同様にして反応を行った。反応終了後の溶液はオレンジ色に着色しており、さらに、内容物をガスクロマトグラフィーにて分析した結果、原料のsec−ブチルメチルエーテルが5.47面積%残存し、目的物である2−フルオロブタンが7.79面積%、構造不明の高沸点成分幾種が、合計で10.22面積%生成していた。結果を下記表1にまとめて示す。
【0074】
[比較例3]
実施例1において、溶媒をn−ヘキサンからトルエンに変更したこと以外は、実施例1と同様にして反応を行った。反応終了後、内容物をガスクロマトグラフィーにて分析した結果、原料のsec−ブチルメチルエーテルはほぼ消失し、目的物である2−フルオロブタン、12.63面積%と、1−ブテン、(E)−2−ブテン、及び(Z)−2−ブテンが、それぞれ0.45面積%、8.33面積%、2.23面積%生成していた。また、原料がアセトキシ化された2−アセトキシブタンが、1.12面積%生成し、さらに、トルエンが2−フルオロブタンと反応した高沸点成分が幾種か生成していた。結果を下記表1にまとめて示す。
【0075】
【表1】
【0076】
表1から、実施例1〜12では、副生成物の生成を抑えつつ、目的物であるフッ素化炭化水素(3)が有利に生成していることがわかる。
一方、溶媒を用いないで反応を行った比較例1では、原料が残存し、ブテン及び原料由来成分の2−アセトキシブタン等の副生成物の量が多くなることが分かった。
なお、比較例1の反応経過を観察したところ、触媒が均一に分散していないことがわかった。このことから、無溶媒であると、触媒が、目的物である2−フルオロブタンに、過度に偏って接触するため、副反応が起き、反応収率が低下するものと考えられる。
また、炭化水素系溶媒以外の溶媒を用いた比較例2、3でも、高沸点成分が生成する等、副生成物が多く生成し、実施例に比して目的物の生成が少なかった。
【0077】
また、実施例11の結果から、触媒は、反応終了後に反応液からろ別することにより、性能が低下することなく、繰り返し使用できることがわかった。
さらに、実施例12の結果から、触媒1よりも高分子量の触媒3であっても、同様に、反応液からろ別することにより、繰り返し使用できることがわかった。