特許第6611399号(P6611399)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6611399
(24)【登録日】2019年11月8日
(45)【発行日】2019年11月27日
(54)【発明の名称】触媒の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 37/00 20060101AFI20191118BHJP
   B01J 37/04 20060101ALI20191118BHJP
   B01J 37/08 20060101ALI20191118BHJP
   B01J 37/03 20060101ALI20191118BHJP
   B01J 37/10 20060101ALI20191118BHJP
   B01J 27/199 20060101ALI20191118BHJP
   C07C 51/235 20060101ALI20191118BHJP
   C07C 57/055 20060101ALI20191118BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20191118BHJP
【FI】
   B01J37/00 C
   B01J37/04 102
   B01J37/04 101
   B01J37/00 D
   B01J37/08
   B01J37/03 B
   B01J37/10
   B01J27/199 Z
   C07C51/235
   C07C57/055 B
   !C07B61/00 300
【請求項の数】9
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-539956(P2018-539956)
(86)(22)【出願日】2017年10月25日
(65)【公表番号】特表2019-504760(P2019-504760A)
(43)【公表日】2019年2月21日
(86)【国際出願番号】KR2017011854
(87)【国際公開番号】WO2018093057
(87)【国際公開日】20180524
【審査請求日】2018年7月31日
(31)【優先権主張番号】10-2016-0152616
(32)【優先日】2016年11月16日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】特許業務法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】チェ、ピョン−ヨル
(72)【発明者】
【氏名】チェ、ヨン−ヒョン
(72)【発明者】
【氏名】キム、トク−キ
(72)【発明者】
【氏名】シン、ヒョン−チョン
(72)【発明者】
【氏名】パク、チュ−ヨン
(72)【発明者】
【氏名】イム、ヒョン−ソプ
(72)【発明者】
【氏名】ユ、ヒョ−サン
【審査官】 壷内 信吾
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−213970(JP,A)
【文献】 特開2008−302313(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/037611(WO,A1)
【文献】 特表2016−531739(JP,A)
【文献】 特開2011−072909(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/008815(WO,A1)
【文献】 特表2010−517761(JP,A)
【文献】 国際公開第2004/004900(WO,A1)
【文献】 国際公開第2005/039760(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J21/00−38/74
C07B31/00−61/00,63/00−63/04
C07C1/00−409/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1で表される触媒の製造方法であって、
前記触媒は、不飽和アルデヒドから不飽和カルボン酸を製造する際に用いられる不飽和カルボン酸製造用触媒であり、
金属前駆体を混合攪拌してスラリーを製造する段階と、
前記スラリーを110℃〜130℃で乾燥、粉砕及び混練した後に第1加圧成形する段階と、
第1加圧成形した材料を110℃〜130℃で乾燥して粉砕した後に第2加圧成形する段階と、
第2加圧成形した材料を300℃〜500℃で焼成する段階とを含み、
前記金属前駆体は、金属及びリガンドを含み、リガンドはNH3、NH2、NOX(ここでxは1〜3の整数)、Cl、F、N、OH、SOx(ここでxは3または4)、O、CO、COO、SCN、CN、NCS、ONO、Cnmx(ここで、nは1〜20の整数、mは1〜40の整数、xは1〜10の整数)及び炭素数1〜20のアルコキシドで構成された群より選ばれる1種以上であり、
下記数式1で計算されるリガンド昇華率が0重量%以上である触媒の製造方法:
[数1]
リガンド昇華率(重量%)=昇華したリガンド量(kg)/昇華前のリガンド量(kg)*100
[化1]
Mo12abcdefg
前記化学式1において、
Aは、W、V、Nb及びCrで構成された群より選ばれる1種以上の元素であり、Bは、As、B、Sb、Ce、Pd及びTeで構成された群より選ばれる1種以上の元素であり、Cは、Si、Al、Zr、Rh、Cu、Ti、Ag及びSnで構成された群より選ばれる1種以上の元素であり、Dは、Na、K、Li、Rb、Cs、Ta、Ca、Mg、Sr及びBaで構成された群より選ばれる1種以上の元素であり、Eは、Fe、Co及びNiで構成された群より選ばれる1種以上の元素であり、
a、b、c、d、e、f及びgは、各元素の原子比率を示し、aは0.5〜2、bは0.01〜10、cは0〜15、dは0.01〜20、eは0.01〜20、fは0.01〜15であり、gは各原子の酸化状態によって決定される値である。
【請求項2】
前記金属前駆体は、パラモリブデン酸アンモニウム((NH46Mo724・4H2O)、パラタングステン酸アンモニウム((NH4101241・5H2O)、メタバナジン酸アンモニウム(NH4VO3)、硝酸セシウム(CsNO3)、硝酸銅(Cu(NO32・3H2O)、硝酸鉄(Fe(NO33・9H2O)、三酸化アンチモン(Sb23)、三酸化モリブデン(MoO3)及び五酸化バナジウム(V25で構成された群より選ばれる1種以上である、請求項1に記載の触媒の製造方法。
【請求項3】
前記スラリーを製造する段階は、共沈法あるいは水熱合成法を用いて金属前駆体からスラリーを製造する、請求項1または2に記載の触媒の製造方法。
【請求項4】
前記スラリーを110℃〜130℃で8〜20時間乾燥する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の触媒の製造方法。
【請求項5】
前記第1加圧成形した材料を110℃〜130℃で8〜20時間乾燥する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の触媒の製造方法。
【請求項6】
前記第2加圧成形する段階以降に第2加圧成形した材料を不活性担体にコーティングする段階をさらに含む請求項1〜5のいずれか1項に記載の触媒の製造方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項の製造方法により製造された触媒が固定された反応器に不飽和アルデヒドを供給し、240〜450℃の温度及び0.1〜10気圧下で気相酸化反応させる段階を含む不飽和カルボン酸の製造方法。
【請求項8】
前記不飽和アルデヒドとしてメタクロレインを使用してメタクリル酸を製造する請求項7に記載の不飽和カルボン酸の製造方法。
【請求項9】
前記反応器としてはシェル−&−チューブ熱交換式反応器を用いる請求項7または8に記載の不飽和カルボン酸の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願との相互引用)
本出願は、2016年11月16日付韓国特許出願第10−2016−0152616号に基づいた優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されたすべての内容は、本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は、触媒の製造方法及び前記製造方法により製造された触媒を用いた不飽和カルボン酸の製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
オレフィンでから不飽和アルデヒドを経て不飽和脂肪酸を製造する工程は、代表的な接触気相酸化反応(catalytic vapor phase oxidation)に該当する。オレフィンの部分酸化反応としてはプロピレンまたはイソブチレンを酸化させて(メタ)アクロレインを経て(メタ)アクリル酸を製造する工程;ナフタレンまたはオルソ−キシレンを酸化させて無水フタル酸を製造する工程;ベンゼン、ブチレンまたはブタジエンを部分酸化して無水マレイン酸を製造する工程が代表的である。その中でも(メタ)アクリル酸は、塗料、繊維調製、コーティング剤、高吸湿性樹脂など多様な分野で活用されており、高純度の(メタ)アクリル酸の需要が急増している。
【0004】
一般にこのような酸化反応に用いられる金属酸化物触媒は、共沈反応法、水熱合成法、ゾルゲル合成法、物理的混合法などで製造される。金属酸化物触媒の製造過程において金属前駆体は、ポリ陰イオン、金属酸化物あるいは金属水酸化物形態で沈澱するが、水溶液のpH、濃度、反応温度、熟成時間に応じて沈殿物の物理的特性及びモーフォロジー(morphology)が変わり触媒の物理的状態、粒子の大きさ、結晶構造に影響を与える。
【0005】
特許文献1では塊状の担体に粉体をコーティングし、焼成して触媒を製造する技術が開示されている。この技術は、触媒の乾燥温度が300℃であり、乾燥物の減量率が5〜40質量%であることを特徴としているが、このような製造方法は、比較的に乾燥温度が高いため、触媒の構造変化を招いて不飽和アルデヒドの転換率及び選択度を低下させる問題があった。これに、より優れた不飽和アルデヒドの転換率及び選択度を実現でき、かつ容易に触媒を提供できる合成法の研究が切実な実情である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】日本特許第4295521号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、触媒の製造方法を提供する。
【0008】
本発明はまた、前記製造方法により製造された触媒を用いた不飽和カルボン酸の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明の一実施形態によれば、金属前駆体を混合攪拌してスラリーを製造する段階と、前記スラリーを110℃〜130℃で乾燥、粉砕及び混練した後に第1加圧成形する段階と、第1加圧成形した材料を110℃〜130℃で乾燥して粉砕した後に第2加圧成形する段階と、第2加圧成形した材料を300℃〜500℃で焼成する段階とを含み、下記数式1で計算されるリガンド昇華率が0重量%以上である下記化学式1で表される触媒の製造方法が提供される。
【0010】
[数1]
リガンド昇華率(重量%)=昇華したリガンド量(kg)/昇華前のリガンド量(kg)*100
【0011】
[化1]
Mo12abcdefg
前記化学式1において、
Aは、W、V、Nb及びCrで構成された群より選ばれる1種以上の元素であり、Bは、As、B、Sb、Ce、Pd及びTeで構成された群より選ばれる1種以上の元素であり、Cは、Si、Al、Zr、Rh、Cu、Ti、Ag及びSnで構成された群より選ばれる1種以上の元素であり、Dは、Na、K、Li、Rb、Cs、Ta、Ca、Mg、Sr及びBaで構成された群より選ばれる1種以上の元素であり、Eは、Fe、Co及びNiで構成された群より選ばれる1種以上の元素であり、
a、b、c、d、e、f及びgは、各元素の原子比率を示し、aは0.5〜2、bは0.01〜10、cは0〜15、dは0.01〜20、eは0.01〜20、fは0.01〜15であり、gは各原子の酸化状態によって決定される値である。
【0012】
前記金属前駆体は、金属及びリガンドを含み、リガンドは、NH3、NH2、NOX(ここで、xは1〜3の整数)、Cl、F、N、OH、SOx(ここで、xは3または4)、O、CO、COO、SCN、CN、NCS、ONO、Cnmx(ここで、nは1〜20の整数、mは1〜40の整数、xは1〜10の整数)及び炭素数1〜20のアルコキシドで構成された群より選ばれる1種以上であり得る。
【0013】
前記スラリーを製造する段階は、共沈法あるいは水熱合成法を用いて金属前駆体からスラリーを製造し得る。
【0014】
第1加圧成形する段階において前記スラリーは、110℃〜130℃で8〜20時間乾燥され得る。第2加圧成形する段階において前記第1加圧成形した材料は、110℃〜130℃で8〜20時間乾燥され得る。
【0015】
前記製造方法は、前記第2加圧成形する段階以降に第2加圧成形した材料を不活性担体にコーティングする段階をさらに含み得る。
【0016】
一方、発明の他の一実施形態によれば、前記製造方法により製造された触媒が固定された反応器に不飽和アルデヒドを供給し、240〜450℃の温度及び0.1〜10気圧下で気相酸化反応させる段階を含む不飽和カルボン酸の製造方法が提供される。
【0017】
前記不飽和カルボン酸の製造方法では、反応器としてシェル−&−チューブ熱交換式反応器を用い得る。前記不飽和カルボン酸の製造方法では、特に不飽和アルデヒドとしてメタクロレインを使用して高収率でメタクリル酸を製造し得る。
【発明の効果】
【0018】
発明の一実施形態による製造方法によれば、不飽和アルデヒドから高い転換率及び選択度で不飽和カルボン酸を提供できる触媒を容易に製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、発明の具体的な具現例による触媒の製造方法及び前記製造方法によって製造された触媒を用いて不飽和カルボン酸を製造する方法などについて説明する。
【0020】
発明の一実施形態によれば、金属前駆体を混合攪拌してスラリーを製造する段階と、前記スラリーを110℃〜130℃で乾燥、粉砕及び混練した後に第1加圧成形する段階と、第1加圧成形した材料を110℃〜130℃で乾燥して粉砕した後に第2加圧成形する段階と、第2加圧成形した材料を300℃〜500℃で焼成する段階とを含み、下記数式1で計算されるリガンド昇華率が0重量%以上である下記化学式1で表される触媒の製造方法が提供される。
【0021】
[数1]
リガンド昇華率(重量%)=昇華したリガンド量(kg)/昇華前のリガンド量(kg)*100
【0022】
[化1]
Mo12abcdefg
前記化学式1において、
Aは、W、V、Nb及びCrで構成された群より選ばれる1種以上の元素であり、Bは、As、B、Sb、Ce、Pd及びTeで構成された群より選ばれる1種以上の元素であり、Cは、Si、Al、Zr、Rh、Cu、Ti、Ag及びSnで構成された群より選ばれる1種以上の元素であり、Dは、Na、K、Li、Rb、Cs、Ta、Ca、Mg、Sr及びBaで構成された群より選ばれる1種以上の元素であり、Eは、Fe、Co及びNiで構成された群より選ばれる1種以上の元素であり、
a、b、c、d、e、f及びgは、各元素の原子比率を示し、aは0.5〜2、bは0.01〜10、cは0〜15、dは0.01〜20、eは0.01〜20、fは0.01〜15であり、gは各原子の酸化状態によって決定される値である。
【0023】
前記化学式1で表される金属酸化物は、ポリオキソメタレートあるいはヘテロポリ酸の形態を有し、不飽和アルデヒドの酸化反応に使用されて高い転換率及び選択度で不飽和カルボン酸を提供することができる。
【0024】
前記スラリーを製造する段階では前記化学式1の触媒を提供するために必要な金属とリガンドを含む金属前駆体が使用される。したがって、前記金属前駆体としては前記化学式1の触媒を提供するために必要な金属を含むものであれば、本発明が属する技術分野に知られた多様な種類の金属前駆体はいずれも用いることができる。
【0025】
一例として、前記金属前駆体は、前記化学式1の触媒を提供するために必要な金属;そしてNH3、NH2、NOX(ここで、xは1〜3の整数)、Cl、F、N、OH、SOx(ここで、xは3または4)、O、CO、COO、SCN、CN、NCS、ONO、Cnmx(ここで、nは1〜20の整数、mは1〜40の整数、xは1〜10の整数)及び炭素数1〜20のアルコキシドで構成された群より選ばれる1種以上のリガンドを含み得る。より具体的に、前記金属前駆体としては、パラモリブデン酸アンモニウム((NH46Mo724・4H2O)、パラタングステン酸アンモニウム((NH4101241・5H2O)、メタバナジン酸アンモニウム(NH4VO3)、硝酸セシウム(CsNO3)、硝酸銅(Cu(NO32・3H2O)、硝酸鉄(Fe(NO33・9H2O)、三酸化アンチモン(Sb23)、三酸化モリブデン(MoO3)、五酸化バナジウム(V25)などが挙げられる。前記金属前駆体は前記化学式1の触媒に含まれた各元素の原子比率に応じて適切な含有量で用い得る。
【0026】
前記スラリーを製造する段階では前記化学式1のPを提供するため、金属前駆体とリン酸を共に混合し得る。リン酸の含有量は目的とする化学式1のaに応じて適切に調節され得る。
【0027】
前記スラリーを製造する段階では、前記金属前駆体を混合して触媒前駆体を含むスラリーを製造し得る。前記金属前駆体を混合する方法としては、例えば、共沈法あるいは水熱合成法などが用いられ得る。
【0028】
前記スラリーを製造する段階により製造されたスラリーは、110℃〜130℃、115℃〜125℃あるいは約120℃の温度で乾燥される。この時、前記乾燥時間は、8〜20時間程度に調節され得る。このような条件でスラリーを乾燥することによって金属前駆体のリガンドをより多く昇華させ、不飽和アルデヒドの転換率及び選択度を向上させる触媒を提供することができる。
【0029】
その後、得られた乾燥物は粉砕され得る。前記粉砕は本発明が属する技術分野に知られた多様な方法により行われ得る。非制限的な例として、前記粉砕は垂直型切断機(Vertical pulverizer)、ターボカッター(Turbo cutter)、ターボグラインダー(Turbo grinder)、回転切断式紛砕機(Rotary cutter mill)、切断式紛砕機(Cutter mill)、円板紛砕機(Disc mill)、切断式粉砕機(Shred crusher)、破砕機(Crusher)、チョッパ(chopper)及び円板式切断機(Disc cutter)からなる粉砕機器群より選ばれるいずれか一つを用いて行い得る。
【0030】
次に、前記粉砕物を混練する。一例として、前記粉砕物は混練機(kneader)を用いて粉砕物の粘度が上昇するように十分に混練し得る。
【0031】
前記第1加圧成形段階では前記混練物を加圧成形して第1加圧成形した材料を製造する。
【0032】
加圧成形工程は、本発明が属する技術分野に知られた方式により行い得る。一例として、加圧成形は圧出成形装置を用いて行い得る。また、成形の容易性のために加圧成形段階では成形添加剤をさらに添加し得る。より具体的に、前記成形添加剤としてはポリメタクリレート;及び/または蒸溜水またはアルコール類などの溶媒を用い得、成形添加剤は乾燥粉砕物100重量部に対して約5〜20重量部で用い得る。
【0033】
前記第1加圧成形段階では、前記乾燥粉砕物をスパゲティ、シリンダーまたは中空シリンダー形態に加圧成形して第1加圧成形された材料を提供し得る。一例として、前記第1加圧成形段階では前記乾燥粉砕物をスパゲティ形態に加圧成形して第1加圧成形された材料を提供し得る。
【0034】
前記第1加圧成形段階により製造された第1加圧成形された材料は、再び110℃〜130℃で乾燥して粉砕された後に第2加圧成形される。本発明の一実施形態による製造方法では、2回の加圧成形段階を採用することによって、不飽和アルデヒドの転換率及び選択度を向上させる触媒を提供する。前記第2加圧成形段階は、第1加圧成形段階で説明したとおり行われ得、第1加圧成形段階及び第2加圧成形段階は、同一の条件で行われるかあるいは前記説明した範囲内で互いに相異するように行い得る。一例として、第1及び第2加圧成形段階において、乾燥温度は、約120℃で同一に調節され得、第1加圧成形段階では成形添加剤を使用せず、第2加圧成形段階でのみ成形添加剤を使用し得る。
【0035】
前記第2加圧成形段階では、第1加圧成形した材料を乾燥して粉砕した後にスパゲティ、シリンダーまたは中空シリンダー形態のうち中空シリンダー形態に第2加圧成形された材料を提供し得る。
【0036】
前記本発明の一実施形態による製造方法は、前記第2加圧成形する段階以降に第2加圧成形した材料を不活性担体にコーティングする段階をさらに含み得る。前記不活性担体の非制限的な例としては、多孔性アルミノシリケート、シリコンカーバイド、アルミナあるいはシリカなどが挙げられる。
【0037】
一方、前記製造方法は、第2加圧成形した材料を300℃〜500℃で焼成する段階を含む。具体的には、第2加圧成形した材料は300℃〜450℃、350℃〜400℃あるいは360℃〜390℃で焼成して前記化学式1で表される触媒を提供し得る。この時、焼成時間は特に限定されず、例えば、約3〜10時間のあいだに調節され得る。
【0038】
前記製造方法において、下記数式1で計算されるリガンド昇華率は、0重量%以上、0.5重量%以上、1.0重量%以上あるいは1.5重量%以上であり得る。
[数1]
リガンド昇華率(重量%)=昇華したリガンド量(kg)/昇華前のリガンド量(kg)*100
前記昇華前リガンドの量は、金属前駆体を溶解した反応液に含まれたリガンドの含有量を意味する。
【0039】
一方、発明の他の具現例によれば、前記製造方法により製造された触媒が固定された反応器に不飽和アルデヒドを供給し、240〜450℃の温度及び0.1〜10気圧下で気相酸化反応させる段階を含む不飽和カルボン酸の製造方法が提供される。
【0040】
前記不飽和カルボン酸の製造方法は、上述した触媒の製造方法により製造された触媒を使用する点を除けば、本発明が属する技術分野に知られた方法により不飽和アルデヒドを酸化反応させて不飽和カルボン酸を提供し得る。特に、前記触媒はメタクロレインを酸化反応させて高い転換率及び選択度でメタクリル酸を提供し得る。
【0041】
前記不飽和カルボン酸の製造方法では、反応器としてシェル−&−チューブ熱交換式反応器を使用する。具体的に、前記シェル−&−チューブ熱交換式反応器の固定層に上述した触媒を充電し、前記反応器に不飽和アルデヒド、酸素、水蒸気及び不活性ガスを含む混合ガスを注入し得る。この時、全体混合ガスの総体積に対して不飽和アルデヒドは1〜10体積%、酸素は1〜20体積%、水蒸気は10〜50体積%、不活性ガスは20〜80体積%で含まれ得る。そして、前記混合ガスは不飽和アルデヒドの空間速度が、約30〜60hr-1になるように調節され得る。
【0042】
前記不飽和アルデヒドの酸化反応温度は、約240〜450℃、約240〜340℃、約240〜310℃あるいは約270℃に調節され得、酸化反応圧力は、約0.1〜10気圧(atm)、約0.4〜3気圧あるいは1〜3気圧に調節され得る。前記不飽和カルボン酸の製造方法は、上述した触媒を用いて高収率で不飽和カルボン酸を提供し得る。
【0043】
以下、発明の具体的な実施例により発明の作用、効果をさらに具体的に説明する。ただし、これは発明の例示として提示されるものであり、これによって発明の権利範囲はいかなる意味でも限定されない。
【0044】
(実施例1:触媒の製造)
超純水3000mLにパラモリブデン酸アンモニウム((NH46Mo724・4H2O)500g、パラタングステン酸アンモニウム((NH4101241・5H2O)0.62g、メタバナジン酸アンモニウム(NH4VO3)5.52g及び硝酸セシウム(CsNO3)46.0gを溶解して第1反応液を製造した。
【0045】
一方、超純水300mLに85重量%リン酸水溶液32.65g、硝酸銅(Cu(NO32・3H2O)11.40g、硝酸鉄(Fe(NO33・9H2O)28.60gを溶解して第2反応液を製造した。
【0046】
第1反応液と第2反応液とを混合して攪拌しながら三酸化アンチモン(Sb23)6.84gを添加した。このように得られる混合反応液を継続して攪拌しながら95℃まで昇温させてこの温度で3時間維持した後自然冷却させた。
【0047】
前記触媒前駆体を含むスラリーを約120℃で約15時間乾燥させた後、これを粉砕した。乾燥粉砕物を混練機(kneader)に入れて超純水を乾燥粉砕物100重量部に対して約10重量部で添加した後、粘度が十分に上昇する時まで混練(kneading)した。次に、混練した材料をスパゲティ形態に加圧成形した。
【0048】
加圧成形した材料を約120℃で約15時間乾燥させた。スパゲティ形態に乾燥された触媒前駆体を粉砕した。乾燥粉砕物に成形添加剤としてポリメタクリレート(PMMA;平均粒径:0.10μm)粉体(powder)を乾燥粉砕物100重量部に対して約10重量部で添加した後中空シリンダー形態に圧出成形した。
【0049】
中空シリンダー形態に成形された材料を空気流通下で約380℃で約5時間焼成して下記化学式1−1の触媒を製造した。
【0050】
[化1−1]
1.2Mo120.010.2Cu0.2Fe0.3Sb0.1Cs1.0
【0051】
前記実施例1において、下記数式1で計算されるリガンド昇華率は、1.6重量%であった。
【0052】
[数1]
リガンド昇華率(重量%)=昇華したリガンド量(kg)/昇華前のリガンド量(kg)*100
(比較例1:触媒の製造)
超純水3000mLにパラモリブデン酸アンモニウム((NH46Mo724・4H2O)500g、パラタングステン酸アンモニウム((NH4101241・5H2O)0.62g、メタバナジン酸アンモニウム(NH4VO3)5.52g及び硝酸セシウム(CsNO3)46.0gを溶解して第1反応液を製造した。
【0053】
一方、超純水300mLに85重量%リン酸水溶液32.65g、硝酸銅(Cu(NO32・3H2O)11.40g、硝酸鉄(Fe(NO33・9H2O)28.60gを溶解して第2反応液を製造した。
【0054】
第1反応液と第2反応液とを混合して攪拌しながら三酸化アンチモン(Sb23)6.84gを添加した。このように得られる混合反応液を継続して攪拌しながら95℃まで昇温させてこの温度で3時間維持した後自然冷却させた。
【0055】
前記触媒前駆体を含むスラリーを約100℃で約12時間乾燥させた後これを粉砕した。乾燥粉砕物を混練機(kneader)に入れて超純水を乾燥粉砕物100重量部に対して約10重量部で添加した後混練するが、十分な粘度が生じない状態で混錬を止めて、混練した材料をスパゲティ形態に加圧成形した。
【0056】
加圧成形した材料を約100℃で約12時間乾燥させた。スパゲティ形態に乾燥された触媒前駆体を粉砕した。乾燥粉砕物に成形添加剤としてポリメタクリレート(PMMA;平均粒径:0.10μm)粉体(powder)を乾燥粉砕物100重量部に対して約10重量部で添加した後、中空シリンダー形態に圧出成形した。
【0057】
中空シリンダー形態に成形された材料を空気流通下で約380℃で約5時間焼成して下記化学式1−1の触媒を製造した。
【0058】
[化1−1]
1.2Mo120.010.2Cu0.2Fe0.3Sb0.1Cs1.0
【0059】
前記比較例1において前記数式1で計算されるリガンド昇華率は、1.0重量%であった。
【0060】
(実施例2:触媒の製造)
高圧反応器に超純水3000mL、三酸化モリブデン(MoO3)500g、85重量%リン酸水溶液42.15g、五酸化バナジウム(V25)14.45gを添加し、130℃で5時間攪拌して第1反応液を製造した。
【0061】
一方、超純水500mLに硝酸鉄(Fe(NO33・9H2O)25.68g、硝酸セシウム(CsNO3)77.44g、硝酸銅(Cu(NO32・3H2O)15.36gを溶解して第2反応液を製造した。
【0062】
第1反応液と第2反応液とを混合し、攪拌してスラリーを得た後に硝酸アンモニウム(NH4NO3)190gを添加して継続して攪拌した。
【0063】
このように得られた触媒前駆体を含むスラリーを約120℃で約16時間乾燥させた後これを粉砕した。乾燥粉砕物を混練機(kneader)に入れて超純水を乾燥粉砕物100重量部に対して約10重量部で添加した後、粘度が十分に上昇する時まで混練(kneading)した。次に、混練した材料をスパゲティ形態に加圧成形した。
【0064】
加圧成形した材料を約120℃で約16時間乾燥させた。スパゲティ形態に乾燥された触媒前駆体を粉砕した。乾燥粉砕物に成形添加剤としてポリメタクリレート(PMMA;平均粒径:0.10μm)粉体(powder)を乾燥粉砕物100重量部に対して約10重量部で添加した後中空シリンダー形態に圧出成形した。
【0065】
中空シリンダー形態に成形された材料を空気流通下で約380℃で約5時間焼成して下記化学式1−2の触媒を製造した。
【0066】
[化1−2]
1.5Mo110.5Cu0.2Fe0.2Cs1.25
(Moの原子比率を12に換算すれば、P1.64Mo120.55Cu0.22Fe0.22Cs1.36である)
【0067】
前記実施例2において前記数式1で計算されるリガンド昇華率は、1.7重量%であった。
【0068】
(比較例2:触媒の製造)
高圧反応器に超純水3000mL、三酸化モリブデン(MoO3)500g、85重量%リン酸水溶液42.15g、五酸化バナジウム(V25)14.45gを添加し、130℃で5時間攪拌して第1反応液を製造した。
【0069】
一方、超純水500mLに硝酸鉄(Fe(NO33・9H2O)25.68g、硝酸セシウム(CsNO3)77.44g、硝酸銅(Cu(NO32)15.36gを溶解して第2反応液を製造した。
【0070】
第1反応液と第2反応液とを混合し、攪拌してスラリーを得た後、硝酸アンモニウム(NH4NO3)190gを添加して継続して攪拌した。
【0071】
このように得られた触媒前駆体を含むスラリーを約100℃で約13時間乾燥させた後これを粉砕した。乾燥粉砕物を混練機(kneader)に入れて超純水を乾燥粉砕物100重量部に対して約10重量部で添加した後に混練するが、十分な粘度が生じない状態で混練を止めて、混練した材料をスパゲティ形態に加圧成形した。
【0072】
加圧成形した材料を約100℃で約13時間乾燥させた。スパゲティ形態に乾燥された触媒前駆体を粉砕した。乾燥粉砕物に成形添加剤としてポリメタクリレート(PMMA;平均粒径:0.10μm)粉体(powder)を乾燥粉砕物100重量部に対して約10重量部で添加した後、中空シリンダー形態に圧出成形した。
【0073】
中空シリンダー形態に成形された材料を空気流通下で約380℃で約5時間焼成して下記化学式1−2の触媒を製造した。
【0074】
[化1−2]
1.5Mo110.5Cu0.2Fe0.2Cs1.25
(Moの原子比率を12に換算すればP1.64Mo120.55Cu0.22Fe0.22Cs1.36である)
【0075】
前記比較例2において前記数式1で計算されるリガンド昇華率は、1.0重量%であった。
【0076】
(試験例:触媒特性の評価)
前記実施例及び比較例により製造した各触媒を固定層に充電したステンレス反応器を用いてメタクロレイン(methacrolein)を酸化反応させてメタクリル酸(methacrylic acid)を製造した。
【0077】
具体的に、触媒を固定層に充電したステンレス反応器にメタクロレイン4体積%、酸素10体積%、水蒸気30体積%及び窒素55体積%を含む混合ガスを注入した。この時、メタクロレインの空間速度は36hr-1であり、接触時間は4秒になるように混合ガスの注入速度を調節した。反応温度は、約240〜310℃、より具体的に約270℃に調節し、反応圧力は約1〜3気圧の間に調節した。
【0078】
反応初期に下記数式2〜4により転換率、選択度及び収率を算出して表1に整理した。
【0079】
そして、反応時間が1000時間経過した後に下記数式2〜4により転換率、選択度及び収率を算出して表1に整理した。
【0080】
[数2]
メタクロレイン転換率(mol%)=[反応したメタクロレインのモル数/供給されたメタクロレインのモル数]X100
[数3]
メタクロレイン選択度(mol%)=[生成されたメタクリル酸のモル数/反応したメタクロレインのモル数]X100
[数4]
収率(mol%)=[生成されたメタクリル酸のモル数/供給されたメタクロレインのモル数]X100
【0081】
【表1】