特許第6612575号(P6612575)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6612575
(24)【登録日】2019年11月8日
(45)【発行日】2019年11月27日
(54)【発明の名称】除湿方法及び除湿装置
(51)【国際特許分類】
   F24F 3/147 20060101AFI20191118BHJP
   F24F 11/72 20180101ALI20191118BHJP
【FI】
   F24F3/147
   F24F11/72
【請求項の数】9
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-193739(P2015-193739)
(22)【出願日】2015年9月30日
(65)【公開番号】特開2017-67374(P2017-67374A)
(43)【公開日】2017年4月6日
【審査請求日】2018年8月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000148357
【氏名又は名称】株式会社前川製作所
(73)【特許権者】
【識別番号】390003333
【氏名又は名称】新晃工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】誠真IP特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】小松 富士夫
(72)【発明者】
【氏名】山口 雅弘
【審査官】 田中 一正
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−167843(JP,A)
【文献】 特開2012−117683(JP,A)
【文献】 特開2007−024467(JP,A)
【文献】 特開2013−210129(JP,A)
【文献】 特開2001−263764(JP,A)
【文献】 特開2004−278943(JP,A)
【文献】 特開2006−308236(JP,A)
【文献】 特表2012−525954(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 3/147
F24F 11/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに隣接して配置された被処理空気室及び再生空気室に吸着面が交互に進入可能なデシカントロータを用い、
前記被処理空気室を流れる被処理空気中の水蒸気を前記吸着面に吸着すると共に、前記再生空気室を流れる再生空気によって前記吸着面に吸着した水蒸気を脱離させる除湿方法であって、
前記被処理空気をデシカントロータの前記吸着面に接触させ、該被処理空気中の水蒸気を前記デシカントロータに吸着させる除湿ステップと、
前記除湿ステップで除湿された前記被処理空気をヒートポンプ装置の一部を構成するエアクーラで冷却する冷却ステップと、
前記冷却ステップで冷却された前記被処理空気を昇温媒体で昇温させて相対湿度を低下させる第1昇温ステップと、
前記第1昇温ステップで相対湿度が低下した前記被処理空気を空調室に供給する供給ステップと、
前記再生空気を前記ヒートポンプ装置の一部を構成するエアヒータで昇温して相対湿度を低下させる第2昇温ステップと、
前記第2昇温ステップで昇温された前記再生空気を前記吸着面に接触させ、該吸着面に吸着された水蒸気を前記吸着面から脱離させる脱離ステップと、
を含み、
前記第1昇温ステップでは、前記脱離ステップで前記デシカントロータから水蒸気を脱離させた後の前記再生空気の少なくとも一部を前記昇温媒体として用い、前記冷却ステップで冷却された後の前記被処理空気を昇温させる
ことを特徴とする除湿方法。
【請求項2】
互いに隣接して配置された被処理空気室及び再生空気室に吸着面が交互に進入可能なデシカントロータを用い、
前記被処理空気室を流れる被処理空気中の水蒸気を前記吸着面に吸着すると共に、前記再生空気室を流れる再生空気によって前記吸着面に吸着した水蒸気を脱離させる除湿方法であって、
前記被処理空気をデシカントロータの前記吸着面に接触させ、該被処理空気中の水蒸気を前記デシカントロータに吸着させる除湿ステップと、
前記除湿ステップで除湿された前記被処理空気をヒートポンプ装置の一部を構成するエアクーラで冷却する冷却ステップと、
前記冷却ステップで冷却された前記被処理空気を昇温媒体で昇温させて相対湿度を低下させる第1昇温ステップと、
前記第1昇温ステップで相対湿度が低下した前記被処理空気を空調室に供給する供給ステップと、
前記再生空気を前記ヒートポンプ装置の一部を構成するエアヒータで昇温して相対湿度を低下させる第2昇温ステップと、
前記第2昇温ステップで昇温された前記再生空気を前記吸着面に接触させ、該吸着面に吸着された水蒸気を前記吸着面から脱離させる脱離ステップと、
を含み、
前記第1昇温ステップでは、外気又は前記空調室から排出された還気を前記昇温媒体として用い、前記冷却ステップで冷却された後の前記被処理空気を昇温させるとともに、
前記第1昇温ステップで前記被処理空気を昇温させた後の前記外気又は前記還気を、前記被処理空気または前記再生空気として用いる
ことを特徴とする除湿方法。
【請求項3】
前記除湿ステップの前処理として、前記被処理空気をプレクーラで予冷して該被処理空気の相対湿度を増加させる予冷ステップをさらに含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の除湿方法。
【請求項4】
前記空調室が乾燥室であることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の除湿方法。
【請求項5】
互いに隣接配置された被処理空気室及び再生空気室と、
前記被処理空気室に設けられ前記被処理空気室内に被処理空気流を形成する第1の送風機と、
前記再生空気室に設けられ前記再生空気室内に再生空気流を形成する第2の送風機と、
吸着面が前記被処理空気室及び前記再生空気室に跨って配置されたデシカントロータと、
前記被処理空気室に設けられ前記デシカントロータで除湿された前記被処理空気流を冷却するためのエアクーラ、及び前記再生空気室に設けられ前記デシカントロータの上流で前記再生空気流を昇温するエアヒータを有するヒートポンプ装置と、
前記エアクーラで冷却された被処理空気を昇温媒体と熱交換させるための昇温器と、
前記再生空気室から排出された再生空気の少なくとも一部を前記昇温媒体として前記昇温器に送るための再生空気路と、
を備えることを特徴とする除湿装置。
【請求項6】
互いに隣接配置された被処理空気室及び再生空気室と、
前記被処理空気室に設けられ前記被処理空気室内に被処理空気流を形成する第1の送風機と、
前記再生空気室に設けられ前記再生空気室内に再生空気流を形成する第2の送風機と、
吸着面が前記被処理空気室及び前記再生空気室に跨って配置されたデシカントロータと、
前記被処理空気室に設けられ前記デシカントロータで除湿された前記被処理空気流を冷却するためのエアクーラ、及び前記再生空気室に設けられ前記デシカントロータの上流で前記再生空気流を昇温するエアヒータを有するヒートポンプ装置と、
前記エアクーラで冷却された被処理空気を昇温媒体と熱交換させるための昇温器と、
前記被処理空気室からの前記被処理空気を空調室に供給するための被処理空気路と、
外気又は前記空調室から排出された還気を前記昇温媒体として前記昇温器に導くための昇温媒体路と、
前記昇温器を出た前記昇温媒体が前記被処理空気または再生空気として利用可能となるように、前記被処理空気室または前記再生空気室に前記昇温器からの前記昇温媒体を導くための昇温媒体流路と、
を備えることを特徴とする除湿装置。
【請求項7】
前記被処理空気室に導入される前記被処理空気を予冷するプレクーラをさらに備えることを特徴とする請求項5又は6に記載の除湿装置。
【請求項8】
互いに隣接配置された被処理空気室及び再生空気室と、
前記被処理空気室に設けられ前記被処理空気室内に被処理空気流を形成する第1の送風機と、
前記再生空気室に設けられ前記再生空気室内に再生空気流を形成する第2の送風機と、
吸着面が前記被処理空気室及び前記再生空気室に跨って配置されたデシカントロータと、
前記被処理空気室に設けられ前記デシカントロータで除湿された前記被処理空気流を冷却するためのエアクーラ、及び前記再生空気室に設けられ前記デシカントロータの上流で前記再生空気流を昇温するエアヒータを有するヒートポンプ装置と、
前記エアクーラで冷却された被処理空気を昇温媒体と熱交換させるための昇温器と、
前記昇温媒体を前記昇温器に送るための昇温媒体路と、
前記昇温器で前記昇温媒体と熱交換された前記被処理空気の相対湿度を検出する相対湿度計と、
前記昇温媒体路に設けられた流量調整弁と、
前記流量調整弁の開度を制御して前記被処理空気の温度又は相対湿度の少なくとも一方を設定値に制御するための制御部と、
を備えることを特徴とする除湿装置。
【請求項9】
前記昇温媒体路が前記再生空気室から排出された再生空気の少なくとも一部を前記昇温媒体として前記昇温器に送るための再生空気路であることを特徴とする請求項に記載の除湿装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、デシカントロータとヒートポンプ装置とを備え、空調室に除湿された空気を供給する除湿方法及び除湿装置に関する。
【背景技術】
【0002】
空調室に供給される空気の除湿手段として、円盤状のロータ表面に吸着材を担持した吸着面又は親水性吸着面をもつデシカントロータが用いられている。このデシカントロータは、被処理空気から上記吸着面に水蒸気を吸着し、被処理空気の相対湿度を低下させることができる。その後、ロータを半回転させ、該吸着面を低湿度の再生空気に晒し、該吸着面から吸着した水蒸気を放出させる再生処理を行う。このように、ロータを回転させ、ロータの吸着面を被処理空気流路と再生空気流路とに交互に晒し、吸着と再生とを交互に行っている。
【0003】
吸着工程では発熱反応が起って吸着熱が発生し、被処理空気が昇温するため、吸着工程の後で処理空気を冷却することが行われる。また、再生工程では前段階で再生空気を予熱し、再生空気の相対湿度を低下させることが行われる。
そのため、特許文献1及び特許文献2に開示されているように、デシカントロータと共に、吸着工程後の除湿された処理空気を冷却するエアクーラと、再生空気を予熱するエアヒータとを有するヒートポンプ装置を備えた除湿装置が用いられている。
また、特許文献3には、デシカントロータ及びヒートポンプ装置を備えた除湿装置において、外気を再生空気として用いる際に、該再生空気をデシカントロータで除湿された空調室の還気で予熱するための顕熱熱交換器を設けた構成が開示されている。特許文献3には、この除湿装置を換気運転する際に、上記顕熱熱交換器の結露を防止するための防露制御手段が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4870843号公報
【特許文献2】特開2014−016090号公報
【特許文献3】特開2008−151460号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記除湿装置では、デシカントロータで水蒸気が吸着される際に、発熱反応によって昇温した被処理空気をヒートポンプ装置のエアクーラで冷却している。
従来のデシカントロータを備えた除湿装置は、主として、3〜10℃の比較的低温の被処理空気を食肉工場や冷蔵用倉庫等に供給するために用いられている。
被処理空気を別な用途に、例えば乾燥用として用いる場合、被処理空気の温度を高めてもっと相対湿度を低下させる必要がある。この場合、デシカントロータの出口側で被処理空気をエアクーラで冷却すると逆に相対湿度が高まるため、エアクーラによる冷却工程は必要ではない。
しかし、ヒートポンプサイクルでは、エアクーラによる冷却行程は必須のものであり、これをなくすことはできない。従って、この除湿装置のみで低相対湿度の空気を供給することは非常に難しい。
特許文献1〜3にはかかる問題を解決する手段は開示されていない。
【0006】
本発明の少なくとも一実施形態は、上記課題に鑑み、除湿装置の熱効率を低下させずに、かつ簡易かつ低コストな手段で、相対湿度が低い被処理空気を需要先に供給可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明の少なくとも一実施形態に係る除湿方法は、
互いに隣接して配置された被処理空気室及び再生空気室に吸着面が交互に進入可能なデシカントロータを用い、
前記被処理空気室を流れる被処理空気中の水蒸気を前記吸着面に吸着すると共に、前記再生空気室を流れる再生空気によって前記吸着面に吸着した水蒸気を脱離させる除湿方法であって、
前記被処理空気をデシカントロータの前記吸着面に接触させ、該被処理空気中の水蒸気を前記デシカントロータに吸着させる除湿ステップと、
前記除湿ステップで除湿された前記被処理空気をヒートポンプ装置の一部を構成するエアクーラで冷却する冷却ステップと、
前記冷却ステップで冷却された前記被処理空気を昇温媒体で昇温させて相対湿度を低下させる第1昇温ステップと、
前記第1昇温ステップで相対湿度が低下した前記被処理空気を空調室に供給する供給ステップと、
前記再生空気を前記ヒートポンプ装置の一部を構成するエアヒータで昇温して相対湿度を低下させる第2昇温ステップと、
前記第2昇温ステップで昇温された前記再生空気を前記吸着面に接触させ、該吸着面に吸着された水蒸気を前記吸着面から脱離させる脱離ステップと、
を含む。
【0008】
上記方法(1)によれば、上記第1昇温ステップで昇温媒体と被処理空気とを熱交換させ、被処理空気を昇温させ、これによって、相対湿度が低下した被処理空気を需要先である上記空調室に供給できる。上記第1昇温ステップはヒートポンプ装置の運転に影響を与えないため、ヒートポンプ装置のCOP(成績係数)を低下させることはない。
また、上記第1昇温ステップでは、被処理空気室に形成された被処理空気流をそのまま被処理空気室外に導いて昇温媒体と熱交換させることができるため、被処理空気流を形成するための送風機などを新たに設置する必要がない。そのため、コスト増及び動力増とならず、除湿装置の熱効率を低下させない。
以上から、簡易かつ低コストな手段で除湿装置全体としての熱効率を高く維持できる。
【0009】
(2)幾つかの実施形態では、前記方法(1)において、
前記除湿ステップの前処理として前記被処理空気をプレクーラで予冷して該被処理空気の相対湿度を増加させる予冷ステップをさらに含む。
上記方法(2)によれば、上記除湿ステップの前段階で上記予冷ステップをもうけることで、デシカントロータに送る被処理空気の相対湿度を高めることができ、これによって、デシカントロータによる除湿効果を向上できる。
【0010】
(3)幾つかの実施形態では、前記方法(1)又は(2)において、
前記昇温媒体が前記脱離ステップで前記デシカントロータから水蒸気を脱離させた後の前記再生空気の少なくとも一部である。
上記方法(3)によれば、上記エアヒータで昇温し、水蒸気脱離に利用した後の50〜60℃の再生空気を上記第1昇温ステップにおける昇温媒体として用いるので、新たに昇温媒体を用意する必要がなくなり、除湿装置全体の熱効率を低下させない運転が可能になる。
【0011】
(4)幾つかの実施形態では、前記方法(1)又は(2)において、
前記昇温媒体が外気又は前記空調室から排出された還気であり、
前記第1昇温ステップで前記被処理空気を昇温させた後の前記外気又は前記還気を、前記被処理空気として前記予冷ステップ又は前記除湿ステップから前記供給ステップまでの各ステップに供する。
上記方法(4)によれば、比較的高温の外気(例えば夏場の外気)又は還気を、上記第1昇温ステップで昇温媒体として利用することで、これらの保有熱を有効利用できる。また、上記第1昇温ステップに供され温度低下した外気又は還気を被処理空気として用いることで、上記除湿ステップの前処理としての予冷ステップでの冷却負荷を低減できる。
【0012】
(5)幾つかの実施形態では、前記方法(1)又は(2)において、
前記昇温媒体が外気又は前記被空調室から排出された還気であり、
前記第1昇温ステップで前記被処理空気を昇温させた後の前記外気又は前記還気を前記再生空気として前記第2昇温ステップ及び前記脱離ステップに供する。
上記方法(5)によれば、比較的高温の外気(例えば夏場の外気)又は比較的高温に維持された空調室からの還気を上記第1昇温ステップで昇温媒体として用いることで、外気又は還気が保有する熱量を利用できる。また、第1昇温ステップを行う昇温器を被処理空気室において被処理空気流の出口近傍に配置すれば、被処理空気路を構成する配管及び再生空気路を構成する配管を短縮でき低コスト化できると共に、これら配管を流れる空気の圧力損失を低減できる。
【0013】
(6)幾つかの実施形態では、前記方法(1)〜(5)の何れかにおいて、
前記空調室が乾燥室である。
上記方法(6)によれば、上記第1昇温ステップで昇温され相対湿度が低下した被処理空気を上記乾燥室で被乾燥物の乾燥用として用いることで、乾燥効果を向上できる。
【0014】
(7)本発明の少なくとも一実施形態に係る除湿装置は、
互いに隣接配置された被処理空気室及び再生空気室と、
前記被処理空気室に設けられ前記被処理空気室内に被処理空気流を形成する第1の送風機と、
前記再生空気室に設けられ前記再生室内に再生空気流を形成する第2の送風機と、
吸着面が前記被処理空気室及び前記再生空気室に跨るように配置されたデシカントロータと、
前記被処理空気室に設けられ前記デシカントロータで除湿された前記被処理空気流を冷却するためのエアクーラ、及び前記再生空気室に設けられ前記デシカントロータの上流で前記再生空気流を昇温するエアヒータを有するヒートポンプ装置と、
前記エアクーラによって冷却された前記被処理空気を昇温媒体と熱交換させるための昇温器と、を備える。
【0015】
上記構成(7)によれば、上記昇温器で昇温媒体と被処理空気とを熱交換させ、被処理空気を昇温させることで、相対湿度が低下した被処理空気を需要先に供給できる。上記昇温器における昇温媒体と被処理空気との熱交換は、ヒートポンプ装置の運転に影響を与えないため、ヒートポンプ装置のCOP(成績係数)を低下させることはない。
また、被処理空気室に形成された被処理空気流と再生空気室に形成された再生空気流をそのまま昇温器に導入すればよく、これによって、昇温器では被処理空気流及び再生空気流を形成するための送風機などを新たに設置する必要がない。従って、昇温器を設けるだけでよいため、コスト増及び動力増とならず、除湿装置の熱効率を低下させない。
以上から、簡易かつ低コストな手段で除湿装置全体としての熱効率を高く維持できる。
【0016】
(8)幾つかの実施形態では、前記構成(7)において、
前記被処理空気室に導入される前記被処理空気を予冷するプレクーラをさらに備える。
上記構成(8)によれば、また、上記プレクーラを設けることで、デシカントロータに送る被処理空気の相対湿度を高めることができ、これによって、デシカントロータによる除湿効果を向上できる。
【0017】
(9)幾つかの実施形態では、前記構成(7)又は(8)において、
前記再生室から排出された再生空気の少なくとも一部を前記昇温媒体として前記昇温器に送るための再生空気路を備える。
上記構成(9)によれば、上記エアヒータで昇温されデシカントロータの再生に供された後の50〜60℃の再生空気を上記昇温器に昇温媒体として供給するので、新たに昇温媒体を用意する必要がなくなり、これによって、除湿装置の熱効率を高く維持できる。50〜60℃の再生空気を利用するこの方式は、1年を通じてほとんど温度変化がないため、除湿装置を1年間稼働させる必要がある場合には有効である。
【0018】
(10)幾つかの実施形態では、前記構成(7)又は(8)において、
前記昇温媒体を前記昇温器に送るための昇温媒体路と、
前記昇温器で前記昇温媒体と熱交換された前記被処理空気の相対湿度を検出する相対湿度計と、
前記昇温媒体路に設けられた流量調整弁と、
前記流量調整弁の開度を制御して前記被処理空気の温度又は相対湿度の少なくとも一方を設定値に制御するための制御部と、
をさらに備える。
上記構成(10)によれば、需要先に供給する被処理空気の相対湿度を用途に応じて所望の相対湿度に制御できる。
【0019】
(11)幾つかの実施形態では、前記構成(10)において、
前記昇温媒体路が前記再生室から排出された再生空気の少なくとも一部を前記昇温媒体として前記昇温器に送るための再生空気路である。
上記構成(11)によれば、上記エアヒータで昇温されデシカントロータの再生に供された後の50〜60℃の再生空気を上記昇温器に昇温媒体として供給するので、新たに昇温媒体を用意する必要がなくなり、これによって、除湿装置の熱効率を高く維持できる。
また、需要先に供給する被処理空気の相対湿度を用途に応じて所望の相対湿度に制御できる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の少なくとも一実施形態によれば、除湿装置の熱効率を低下させることなく、簡易かつ低コストな手段で、相対湿度が低い被処理空気を需要先に供給できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】一実施形態に係る除湿装置の構成図である。
図2】一実施形態に係る除湿装置の構成図である。
図3】一実施形態に係る除湿装置の構成図である。
図4】一実施形態に係る除湿装置の構成図である。
図5】一実施形態に係る除湿方法のフロー図である。
図6】一実施形態に係る昇温器の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付図面を参照して本発明の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載され又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一つの構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【0023】
本発明の幾つかの実施形態に係る除湿装置10A〜10Dを図1図6に示す。
除湿装置10A〜10Dは、図1図4に示すように、被処理空気室12と再生空気室14とが互いに隣接配置されている。被処理空気室12には、被処理空気室12の内部に被処理空気流SAを形成するための処理ファン(第1の送風機)16が設けられ、再生空気室14には、再生空気室14の内部に再生空気流DAを形成するための再生ファン(第2の送風機)18が設けられる。
また、吸着面20aが被処理空気室12及び再生空気室14に跨って配置されたデシカントロータ20が設けられる。デシカントロータ20は回転軸20bを中心に回転し、回転することで、吸着面20aは被処理空気室12及び再生空気室14に交互に進入する。
【0024】
処理ファン16によって被処理空気室12に導入される被処理空気は、被処理空気室12の上流側に設けられたプレクーラ22で予冷される。なお、プレクーラ22は必須のものではなく、プレクーラ22の設置をなくすこともできる。
除湿装置10A〜10Dには、ヒートポンプ装置24が設けられる。ヒートポンプ装置24は、冷媒循環路26に、ヒートポンプサイクルを構成する機器として、圧縮機28と、エアヒータ(凝縮器)30と、膨張弁32と、エアクーラ(蒸発器)34とが設けられる。
また、エアクーラ34の下流側にエアクーラ34で冷却された被処理空気を昇温媒体と熱交換して昇温させる昇温器36が設けられる。
図示された実施形態では、図1図4に示すように、昇温器36は被処理空気室12及び再生空気室14とは別個に製造される。
【0025】
かかる構成において、被処理空気室12に形成される被処理空気流SAに含まれる水蒸気はデシカントロータ20の吸着面20aに吸着される。デシカントロータ20が回転することで、該水蒸気が吸着した吸着面20aは再生空気室14に移動する。吸着面20aに吸着した水蒸気は、再生空気室14に形成される再生空気流DAによって脱離する。
かかる除湿工程を図5によって説明する。
図5において、予冷ステップS10では、被処理空気をプレクーラ22で予冷する。これによって、被処理空気の温度を下げ相対湿度を上昇させることで、被処理空気に含まれる水蒸気をデシカントロータ20に吸着させやすくする。なお、予冷ステップS10は必須のものではなく、なくすこともできる。
次に、除湿ステップS12では、予冷ステップS10で予冷された被処理空気をデシカントロータ20の吸着面20aに接触させ、被処理空気に含まれる水蒸気を吸着面20aに吸着させ、被処理空気を除湿する。
【0026】
その後、除湿ステップS12で除湿された被処理空気をエアクーラ34で冷却する(冷却ステップS14)。さらに、冷却された被処理空気を昇温器36で昇温媒体と熱交換させることで昇温させ相対湿度を低下させる(第1昇温ステップS16)。
次に、昇温し相対湿度が低下した被処理空気を需要先である空調室38に供給する(供給ステップS18)。
他方、再生空気室14に形成された再生空気流DAはエアヒータ30で昇温され昇温して相対湿度が低下する(第2昇温ステップS20)。被処理空気室12で被処理空気に含まれる水蒸気を吸着した吸着面20aは、デシカントロータ20の回転により再生空気室14に移動する。エアヒータ30で昇温されて相対湿度が低下した再生空気流DAは吸着面20aに接触し、吸着面20aに吸着されている水蒸気を脱離させる(脱離ステップS22)。
【0027】
例示的な実施形態では、デシカントロータ20は、例えば、表面に吸着材を含浸させた特殊シートを被覆して吸着面20aを形成し、ハニカム状に製作される。デシカントロータ20はモータなどの駆動装置(不図示)により1時間に数十回転という低速で回転し、被処理空気室12及び再生空気室14に交互に進入し、連続的に吸着と再生とを交互に繰り返す。吸着材は、例えばシリカゲルやゼオライト等の無機系吸着材や高分子吸着材が用いられる。
例示的な実施形態では、冷媒として高圧領域で超臨界状態となり高温となるCOを用いる。COを用いることで、エアヒータ30により再生空気を80℃以上の高温に昇温できる。
【0028】
例示的な実施形態では、図1に示すように、再生空気室14から排出された再生空気の少なくとも一部を昇温媒体として昇温器36に送るための再生空気路40を備える。
図1に示す実施形態では、再生空気路40は、再生空気室14に設けられた再生空気の排出路42から分岐し、昇温器36に導設される分岐路である。
この実施形態では、再生空気室14から排出される50〜60℃の再生空気によって被処理空気を昇温し昇温させて相対湿度を低下させ、この相対湿度が低下した被処理空気を空調室38に供給する。被処理空気の昇温に供した後の再生空気は排気される。
【0029】
例示的な実施形態では、図2に示すように、昇温器36に用いられる昇温媒体が外気OA又は空調室38から排出された還気RAである。
昇温器36に昇温媒体として供給され、昇温ステップS16で被処理空気を昇温させた後の外気OA又は還気RAは、被処理空気として予冷ステップS10、除湿ステップS12、冷却ステップS14、昇温ステップS16及び供給ステップS18に供される。
この実施形態では、比較的高温の外気OA(例えば夏場の外気)又は比較的高温となった還気RAを昇温媒体として用いる。
【0030】
例示的な実施形態では、図3に示すように、昇温器36に用いられる熱媒体が外気OA又は空調室38から排出された還気RAである。
昇温器36に昇温媒体として供給され、昇温ステップS16で被処理空気を昇温させた後の外気OA又は還気RAは、再生空気として昇温ステップS20及び脱離ステップS22に供される。
この実施形態では、比較的高温の外気(例えば夏場の外気)又は比較的高温に維持された還気RAを第1昇温ステップS16で昇温媒体として利用し、その後再生空気として再生空気室14に導入する。
【0031】
例示的な実施形態では、図4に示すように、図1に示す実施形態の構成に、さらに次の構成が付加される。
図4において、昇温器36で昇温媒体と熱交換された被処理空気の相対湿度を検出する相対湿度計46と、再生空気路40に設けられた流量調整弁48と、流量調整弁48の開度を制御して昇温器出口の被処理空気の相対湿度を設定値に制御するための制御部50とをさらに備える。
図示した構成では、相対湿度計46は昇温器36から被処理空気を排出する排出路44に設けられる。
【0032】
例示的な実施形態では、空調室38は乾燥室であり、該乾燥室の内部に収納された被乾燥物を乾燥させるものである。この乾燥室には、昇温器36で昇温され昇温した相対湿度の低い被処理空気が供給され、被乾燥物の乾燥に供される。
図示した実施形態では、被処理空気室12及び再生空気室14は、被処理空気流SA及び再生空気流DAの流れ方向に沿って延設される。また、被処理空気室12及び再生空気室14は仕切り壁52によって仕切られ、デシカントロータ20の回転軸20bは仕切り壁52内に設けられる。
【0033】
図示した実施形態では、図1図4に示すように、被処理空気室12に形成される被処理空気流SAと再生空気室14に形成される再生空気流DAとは互いに交流に、即ち互いに逆方向に流れるように構成される。
これによって、被処理空気室12でデシカントロータ20の下流側に配置されるエアヒータ30と、再生空気室14でデシカントロータ20の上流側に配置されるエアヒータ30とを近接配置できる。そのため、冷媒循環路26を短縮でき低コスト化できる。
【0034】
例示的な実施形態では、図1図3及び図4に示すように、被処理空気として外気OA又は空調室38から排出された還気RAが用いられる。
図示した実施形態では、図1図4に示すように、プレクーラ22に冷媒を供給するための冷凍機54を備える。
図1及び図2に示す実施形態では、再生空気室14に供給する再生空気として外気OAを用いる。この外気OAは高温の夏場の外気が好適である。
図2及び図3に示す実施形態では、デシカントロータ20の再生に供された後の再生空気は排気される。
なお、図1図4中に付記した数値は各部位における温度/相対湿度の一例を示している。
【0035】
図6は、一実施形態に係る昇温器36を示す。
図6において、昇温器36に形成される被処理空気流SAの流路a及び昇温媒体HAの流路bは、互いに交差する方向(図示では直交する方向)に形成される。また、図示した構成では、流路aと流路bとは、交互に夫々多段に形成される。
昇温器36の隔壁は伝熱性が良い材質(例えば金属又は樹脂)で構成され、50℃以下の耐熱性があればよい。そして、被処理空気流SAと昇温媒体HAとを顕熱熱交換するものであって、かつ被処理空気流SAと昇温媒体HAとの間で湿分が移動しないようにしたものである。
【0036】
幾つかの実施形態によれば、第1昇温ステップS16で昇温し相対湿度が低下した被処理空気を供給先である空調室38に供給でき、例えば、空調室38を内部に被乾燥物を収容した乾燥室として使用できる。第1昇温ステップS16はヒートポンプ装置24の運転に影響を与えないため、ヒートポンプ装置24のCOP(成績係数)を低下させることはない。
また、昇温器36に導入される被処理空気流SA及び昇温媒体の流れは、被処理空気室12に設けられた処理ファン16及び再生空気室14に設けられた再生ファン18によって形成されるため、新たな流れ形成手段を必要とせず、コスト増及び動力増とならない。
また、予冷ステップS10をもうけることで、デシカントロータ20に送る被処理空気の相対湿度を高めることができ、これによって、デシカントロータ20による除湿効果を向上できる。
以上から、簡易かつ低コストな手段で除湿装置全体としての熱効率を高く維持できる。
【0037】
また、図1及び図4に示す実施形態によれば、昇温ステップS16に用いる昇温媒体として、再生空気室14から排出された比較的高温(50〜60℃)の再生空気を用いるため、新たに昇温媒体を用意する必要がなく、これによって、装置全体の熱効率を低下させずに除湿装置10A及び10Dを運転できる。また、除湿装置外への無駄な放熱を抑制でき、除湿装置10A及び10Dの熱効率を高く維持できる。
50〜60℃の再生空気を利用するこの方式は、1年を通じてほとんど温度変化がないため、除湿装置を1年間稼働させる必要がある場合には有効である。
図1及び図4に示すように、除湿装置10A及び10Dでは、30℃以上で相対湿度が低い被処理空気を空調室38に供給できる。
【0038】
また、図2及び図3に示す実施形態によれば、昇温ステップS16に用いる昇温媒体として、外気OA(特に夏場の外気)又は空調室38から排出された還気RAを用いることで、これらの保有熱を有効利用できる。また、図2に示す実施形態によれば、第1昇温ステップS16で温度低下した外気OA又は還気RAを被処理空気として利用することで、予冷ステップS10での冷却負荷を低減できる。
図2及び図3に示すように、除湿装置10B及び10Cでは、20℃以上で相対湿度が低い被処理空気を空調室38に供給できる。
【0039】
また、図4に示す実施形態によれば、制御部50によって空調室38(需要先)に供給する被処理空気の相対湿度を用途に応じて所望の相対湿度に制御できる。
また、図3に示す実施形態によれば、昇温器36を被処理空気室12において被処理空気流SAの出口近傍に配置すれば、被処理空気路56を構成する配管及び再生空気路58を構成する配管を短縮でき低コスト化できると共に、これら配管を流れる空気の圧力損失を低減できる。
また、図6に示す簡易な構成の昇温器36を用いることで、低コストで熱交換効率の良い顕熱熱交換が可能になる。また、被処理空気流SAと昇温媒体HAとの間で湿分が移動しないので、被処理空気流SAの相対湿度を大きく低下できる。また、昇温器36を被処理空気室12及び再生空気室14と別体に製造することで、昇温器36の設置、取外し及び点検、修理が容易になる。
【0040】
なお、図4に示す実施形態に設けられた相対湿度計46、流量調整弁48及び制御部50は図2に示す除湿装置10B又は図3に示す除湿装置10Cに設けることもできる。
即ち、外気OAを昇温器36に送る流路又は空調室38から還気RAを昇温器36に送る流路に流量調整弁48を設け、排出路44に相対湿度計46を設ける。そして、制御部50によって流量調整弁48の開度を制御し、排出路44の被処理空気流SAの相対湿度を調整する。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明の少なくとも一実施形態によれば、除湿装置の熱効率を低下させずに、簡易かつ低コストな手段で、相対湿度が低い被処理空気を需要先に供給できる。
【符号の説明】
【0042】
10A、10B、10C、10D 除湿装置
12 被処理空気室
14 再生空気室
16 処理ファン(第1の送風機)
18 再生ファン(第2の送風機)
20 デシカントロータ
20a 吸着面
20b 回転軸
22 プレクーラ
24 ヒートポンプ装置
26 冷媒循環路
28 圧縮機
30 エアヒータ
32 膨張弁
34 エアクーラ
36 昇温器
38 空調室
40、58 再生空気路
42、44 排出路
46 相対湿度計
48 流量調整弁
50 制御部
52 仕切り壁
54 冷凍機
56 被処理空気路
DA 再生空気流
HA 昇温媒体
OA 外気
RA 還気
SA 被処理空気流
a、b 流路
図1
図2
図3
図4
図5
図6