特許第6612859号(P6612859)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6612859ゲルポリマー電解質及びこれを含むリチウム二次電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6612859
(24)【登録日】2019年11月8日
(45)【発行日】2019年11月27日
(54)【発明の名称】ゲルポリマー電解質及びこれを含むリチウム二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0565 20100101AFI20191118BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20191118BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20191118BHJP
   H01M 4/525 20100101ALI20191118BHJP
   H01B 1/06 20060101ALI20191118BHJP
   H01G 11/56 20130101ALN20191118BHJP
【FI】
   H01M10/0565
   H01M10/052
   H01M4/505
   H01M4/525
   H01B1/06 A
   !H01G11/56
【請求項の数】10
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2017-517750(P2017-517750)
(86)(22)【出願日】2015年10月1日
(65)【公表番号】特表2017-530533(P2017-530533A)
(43)【公表日】2017年10月12日
(86)【国際出願番号】KR2015010416
(87)【国際公開番号】WO2016053041
(87)【国際公開日】20160407
【審査請求日】2017年9月26日
(31)【優先権主張番号】10-2014-0133469
(32)【優先日】2014年10月2日
(33)【優先権主張国】KR
(31)【優先権主張番号】10-2015-0138643
(32)【優先日】2015年10月1日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ソル・ジ・パク
(72)【発明者】
【氏名】キョン・ホ・アン
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・ウ・オ
(72)【発明者】
【氏名】チュル・ヘン・イ
(72)【発明者】
【氏名】イ・ジン・ジュン
【審査官】 松村 駿一
(56)【参考文献】
【文献】 特表2004−525204(JP,A)
【文献】 特開2003−187637(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/098525(WO,A1)
【文献】 国際公開第2011/071101(WO,A1)
【文献】 特開平08−069817(JP,A)
【文献】 特開2004−214041(JP,A)
【文献】 韓国公開特許第10−2011−0104137(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/0565
H01M 10/052
H01M 4/505
H01M 4/525
H01B 1/06
H01G 11/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解液溶媒、リチウム塩、重合開始剤;及び第1化合物と第2化合物の混合化合物を含み、
前記第1化合物は、エチレングリコールが含まれているポリイミンであり、
前記第2化合物は、二つ以上のエポキシグループを有するポリエチレングリコールであり、
前記第1化合物と第2化合物は、重量比として1:0.2から0.6で含まれるものである、
ゲルポリマー電解質用組成物。
【請求項2】
前記混合化合物は、組成物の総重量に対して0.1重量%から10重量%の量で含まれている請求項1に記載のゲルポリマー電解質用組成物。
【請求項3】
前記リチウム塩は、LiPF、LiBF、LiSbF、LiAsF、LiClO、LiN(CSO、LiN(CFSO、CFSOLi、LiC(CFSO及びLiCBOからなる群より選択されるいずれか一つまたはこれらのうち2種以上の混合物である請求項1に記載のゲルポリマー電解質用組成物。
【請求項4】
前記電解液溶媒は、線形カーボネート、環状カーボネートまたはこれらの組み合わせである請求項1に記載のゲルポリマー電解質用組成物。
【請求項5】
前記線形カーボネートは、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジプロピルカーボネート、エチルメチルカーボネート、メチルプロピルカーボネート及びエチルプロピルカーボネートからなる群より選択されるいずれか一つまたはこれらのうち2種以上の混合物を含み、前記環状カーボネートは、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、1,2−ブチレンカーボネート、2,3−ブチレンカーボネート、1,2−ペンチレンカーボネート、2,3−ペンチレンカーボネート、ビニレンカーボネート、及びこれらのハロゲン化物からなる群より選択されるいずれか一つまたはこれらのうち2種以上の混合物を含む請求項4に記載のゲルポリマー電解質用組成物。
【請求項6】
前記重合開始剤は、ベンゾイルペルオキシド(benzoyl peroxide)、アセチルペルオキシド(acetyl peroxide)、ジラウリルペルオキシド(dilauryl peroxide)、ジ−tert−ブチルペルオキシド(di−tert−butyl peroxide)、t−ブチルペルオキシ−2−エチル−ヘキサノエート(t−butyl peroxy−2−ethyl−hexanoate)、クミルヒドロペルオキシド(cumyl hydroperoxide)及びヒドロゲンペルオキシド(hydrogen peroxide)などの有機過酸化物類;ヒドロ過酸化物類と2,2’−アゾビス(2−シアノブタン)、2,2’−アゾビス(メチルブチロニトリル)、AIBN(2,2’−Azobis(iso−butyronitrile))及びAMVN(2,2’−Azobisdimethyl−Valeronitrile)などのアゾ化合物類からなる群より選択される1種以上である請求項1に記載のゲルポリマー電解質用組成物。
【請求項7】
正極;負極;分離膜;及びゲルポリマー電解質を含むリチウム二次電池であって、
前記ゲルポリマー電解質は、請求項1に記載のゲルポリマー電解質用組成物を重合させて形成されているものであるリチウム二次電池。
【請求項8】
前記ゲルポリマー電解質は、以下の化学式(1)及び(2)で表されるオリゴマーを含む請求項7に記載のリチウム二次電池。
【化1】
(ここで、前記n、mはそれぞれ1から20の整数であり、前記RからRは、それぞれ独立して水素、または−CO(CHCOO−(CHCHO)x−CHであるものであり、xは1から100の整数であり、前記RからRのうち少なくとも3以上は−CO(CHCOO−(CHCHO)−CHである。)
【化2】
(ここで、前記aは1から100の整数である。)
【請求項9】
前記リチウム二次電池の充電電圧は、3.0Vから5.0Vである請求項7に記載のリチウム二次電池。
【請求項10】
前記正極は正極活物質を含み、前記正極活物質は、LiCoO、LiNiO、LiMnO、LiMn、LiNi1−yCo(O=y<1)、LiCo1−yMn(O=y<1)、LiNi1−yMn(O=y<1)及びLi[NiCoMn]O(0<a、b、c=1、a+b+c=1)からなる群より選択されるいずれか一つまたはこれらのうち2種以上の混合物である請求項7に記載のリチウム二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願との相互引用
本出願は、2014年10月2日付韓国特許出願第10−2014−0133469号及び2015年10月1日付韓国特許出願第10−2015−0138643号に基づいた優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されている全ての内容は本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は、ゲルポリマー電解質及びこれを含む二次電池に関する。
【背景技術】
【0003】
モバイル機器に対する技術の開発と需要の増加に伴い、エネルギー源としての二次電池の需要が急激に増加しており、このような二次電池の中で高いエネルギー密度と電圧を有するリチウム二次電池が商用化されて広く用いられている。
【0004】
リチウム二次電池の正極活物質としてはリチウム金属酸化物が用いられ、負極活物質としては、リチウム金属、リチウム合金、結晶質または非晶質炭素または炭素複合体が用いられている。前記活物質を適した厚さと長さで集電体に塗布するか、または活物質自体をフィルム形状に塗布し、絶縁体である分離膜とともに巻き取るか積層して電極群を製作したあと、カンまたはこれと類似した容器に入れてから、電解液を注入して二次電池を製造する。
【0005】
従来、電気化学反応を利用した電池、電気二重層キャパシタなどの電気化学素子用電解質には、液体状態の電解質、特に非水系有機溶媒に塩を溶解したイオン伝導性有機液体電解質が主に用いられてきた。
【0006】
しかし、このように液体状態の電解質を用いれば、電極物質が劣化して有機溶媒が揮発される可能性が大きいだけでなく、周辺の温度及び電池自体の温度の上昇による燃焼などの安全性の問題がある。特に、リチウム二次電池は、充放電を進めるとき、カーボネート有機溶媒の分解及び/または有機溶媒と電極との副反応によって電池の内部にガスが発生し、電池の厚さを膨張させるという問題点があり、高温保存の際はこのような反応が加速化されてガスの発生量がさらに増加することになる。
【0007】
このように持続的に発生したガスは、電池の内圧の増加を誘発させて角形電池が特定の方向に膨れ上がるなど、電池の特定の面の中心部が変形される現象をもたらすだけでなく、電池内の電極面での密着性で局所的な差異を発生させて、電極反応が全体の電極面で同様に起こることができない問題を引き起こす。したがって、電池の性能と安全性の低下が必ず招来されることになる。
【0008】
一般に、電池の安全性は、液体電解質<ゲルポリマー電解質<固体高分子電解質の順で向上されるが、これに反して電池の性能は減少するものと知られている。このような劣等な電池の性能により、未だに固体高分子電解質を採用した電池等は商業化されていないものと知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の解決しようとする課題は、混合化合物を電解液に含むことにより、電池の寿命を向上させることができるだけでなく、電池の容量特性を向上させることができるゲルポリマー電解質用組成物、及びこれを含むリチウム二次電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記のような目的を達成するため、本発明は、電解液溶媒、リチウム塩、重合開始剤、及び第1化合物と第2化合物の混合化合物を含むゲルポリマー電解質用組成物を提供する。
【0011】
前記第1化合物は、作用基としてポリエチレングリコールを含むアミン系化合物であってよく、前記第2化合物はエポキシ系化合物であってよい。
【0012】
さらに、本発明は、正極、負極、分離膜、及びゲルポリマー電解質を含むリチウム二次電池であって、前記ゲルポリマー電解質は前記ゲルポリマー電解質用組成物を重合させて形成されたリチウム二次電池を提供する。
【0013】
前記ゲルポリマー電解質は、以下の化学式(1)及び(2)で表されるオリゴマーを含むものであってよい。
【0014】
【化1】
【0015】
ここで、前記n、mはそれぞれ1から20の整数であり、前記RからRは、それぞれ独立して水素、または−CO(CHCOO−(CHCHO)x−CHであるものであり、xは1から100の整数であり、前記RからRのうち少なくとも3以上は−CO(CHCOO−(CHCHO)−CHである。
【0016】
【化2】
【0017】
ここで、前記aは1から100の整数である。
【発明の効果】
【0018】
本発明のゲルポリマー電解質用組成物は、第1化合物は作用基としてポリエチレングリコールを含むアミン系化合物、及び第2化合物はエポキシ系化合物である第1化合物と第2化合物の混合化合物を含むことにより、リチウム二次電池に適用する場合、ホッピング現象を容易に誘導することで、電池の寿命を向上させることができるだけでなく、優れた高温保存性を発揮し、電池の容量特性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】ゲルポリマー電解質用組成物を用いた場合のリチウムイオンの移動原理を示した図である。
図2】実施例5から7で製造された二次電池の高温保管後の厚さ増加の程度を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に対する理解を助けるため、本発明をさらに詳しく説明する。
【0021】
本明細書及び特許請求の範囲に用いられた用語や単語は、通常的や辞書的な意味に限定して解釈されてはならず、発明者は自身の発明を最良の方法で説明するために用語の概念を適宜定義することができるという原則に即し、本発明の技術的思想に適合する意味と概念として解釈されなければならない。
【0022】
本発明の一実施形態に係るゲルポリマー電解質用組成物は、電解液溶媒、リチウム塩、重合開始剤、及び第1化合物と第2化合物の混合化合物を含み、前記第1化合物は作用基としてポリエチレングリコールを含むアミン系化合物であってよく、前記第2化合物はエポキシ系化合物であってよい。
【0023】
前記第1化合物は、具体的にエチレングリコールが含まれているポリイミンであってよく、例えば、ポリ(エチレンイミン)−グラフト−ポリ(エチレングリコール)(PEI−PEG)などが適用されてよい。また、前記第2化合物は、二つ以上のエポキシグループを有するポリエチレングリコールであってよく、例えば、ポリエチレンジグリシジルエーテルなどが適用されてよい。
【0024】
本発明の一実施形態によれば、前記第1化合物に含まれているポリエチレングリコール作用基が化合物に含まれていることにより、ゲルポリマー電解質用組成物に対する溶解度が増加し、ゲルポリマー電解質内のゲル構造上に安定的に固定されて存在できるようにし、エポキシ系化合物を含む第2化合物が混合されることにより、後述する図1のホッピング現象を一層容易に行うことができるようにして、重合反応で生成されるゲルポリマー電解質のイオン移動度を高めて出力特性を向上させることができる。
【0025】
前記第1化合物は、前記ゲルポリマー電解質用組成物の総重量に対し、1から15重量%、具体的に3から12重量%、さらに具体的に4から10重量%の量で含まれてよい。
【0026】
前記第1化合物が、前記ゲルポリマー電解質用組成物の総重量に対して1重量%以上含まれる場合、ゲルポリマー電解質用組成物のゲル化が一層円滑に行われ、高温保存特性が向上されて高温保存の際に電池の厚さ増加を減少させることができ、その含量が、具体的に3重量%、さらに具体的に4重量%の場合にその傾向がさらに目立つ。さらに、前記第1化合物が前記ゲルポリマー電解質用組成物の総重量に対して15重量%以下で含まれる場合、前記のところのようなゲル化及び高温保存特性の向上の効果を奏するとともに、過量含有による電池の抵抗の増加を防止することができる。
【0027】
前記第1化合物と第2化合物は、重量比として1:0.2から0.6であってよく、具体的に1:0.25から0.5であってよい。
【0028】
前記第1化合物と第2化合物が1:0.2から0.6の重量比を満す場合、ゲルポリマー電解質用組成物のゲル化が一層円滑に行われ、高温保存特性が向上されて高温保存の際に電池の厚さ増加を減少させることができ、ホッピング現象が一層容易に行われて、重合反応で生成されるゲルポリマー電解質のイオン移動度が高くなることにより出力特性が向上され得る。
【0029】
さらに、本発明の一実施形態によれば、前記ゲルポリマー電解質用組成物に前記混合化合物を含む場合、正極から溶出された金属イオンが負極から析出される一般電解液を用いた場合とは異なり、正極から溶出された金属イオンが前記混合化合物と結合して負極から金属が析出されることを軽減させることができる。こういうわけで、リチウム二次電池の充放電効率を向上させることができ、良好なサイクル特性を表すことができる。それだけでなく、前記作用基を有するモノマーを含むゲルポリマー電解質用組成物をリチウム二次電池に適用する場合、漏液の危険性が少なく難燃特性を有するので、電池の安定性を向上させることができる。
【0030】
前記第1化合物及び第2化合物の混合化合物は、ゲルポリマー電解質用組成物の総重量に対して0.1重量%から10重量%、好ましくは0.5重量%から5重量%であってよい。0.1重量%未満であれば、ゲル化され難いためゲルポリマー電解質の特性が発現され難いことがあり、10重量%を超過すれば、モノマーの過量含有によって抵抗が増加するので、電池の性能が低下し得る。
【0031】
本発明の一実施形態によれば、前記第1化合物及び第2化合物を混合し、30℃から100℃の温度範囲で2分から12時間の間反応して重合性モノマーを製造することができる。このとき、作用基を有するモノマーと分枝型モノマーの含量比は、例えば、1:18から1:75の重量比であってよいが、これに限定されるものではない。
【0032】
このようなゲルポリマー電解質では、リチウムイオンの大きさが小さいため直接的な移動が相対的に容易であるだけでなく、図1に示す通り、電解液内でホッピング(hopping)現象で移動し易い。
【0033】
本発明の一実施形態に係る電解質用組成物に含まれる前記イオン化可能なリチウム塩は、例えば、LiPF、LiBF、LiSbF、LiAsF、LiClO、LiN(CSO、LiN(CFSO、CFSOLi、LiC(CFSO及びLiCBOからなる群より選択されるいずれか一つまたはこれらのうち2種以上の混合物であってよく、これに限定されるものではない。
【0034】
さらに、本発明の一実施形態に基づいて用いられる電解液溶媒には、リチウム二次電池用電解液に通常用いられるものらを制限なく用いることができ、例えば、エーテル、エステル、アミド、線形カーボネートまたは環状カーボネートなどを、それぞれ単独にまたは2種以上を混合して用いることができる。
【0035】
その中でも代表的に、環状カーボネート、線形カーボネートまたはこれらの混合物であるカーボネート化合物を含むことができる。
【0036】
前記環状カーボネート化合物の具体的な例には、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、1,2−ブチレンカーボネート、2,3−ブチレンカーボネート、1,2−ペンチレンカーボネート、2,3−ペンチレンカーボネート、ビニレンカーボネート、及びこれらのハロゲン化物からなる群より選択されるいずれか一つまたはこれらのうち2種以上の混合物を挙げることができる。さらに、前記線形カーボネート化合物の具体的な例には、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジプロピルカーボネート(DPC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、メチルプロピルカーボネート(MPC)及びエチルプロピルカーボネート(EPC)からなる群より選択されるいずれか一つまたはこれらのうち2種以上の混合物などが代表的に用いられ得るが、これに限定されるものではない。
【0037】
特に、前記カーボネート系電解液溶媒のうち、環状カーボネートであるプロピレンカーボネート及びエチレンカーボネートは、高粘度の有機溶媒として誘電率が高いため、電解液内のリチウム塩をよく解離させるので好ましく使用可能であり、このような環状カーボネートにエチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネートまたはジメチルカーボネートのような低粘度、低誘電率線形カーボネートを好適な割合で混合して用いれば、高い電気伝導率を有する電解液を製造することができるので、さらに好ましく使用可能である。
【0038】
さらに、前記電解液溶媒のうち、エステルにはメチルアセテート、エチルアセテート、プロピルアセテート、メチルプロピオネート、エチルプロピオネート、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、γ−カプロラクトン、α−バレロラクトン及びε−カプロラクトンからなる群より選択されるいずれか一つまたはこれらのうち2種以上の混合物を用いることができるが、これに限定されるものではない。
【0039】
本発明において、重合開始剤は、当業界に知られている通常の重合開始剤が用いられてよい。
【0040】
前記重合開始剤の非制限的な例には、ベンゾイルペルオキシド(benzoyl peroxide)、アセチルペルオキシド(acetyl peroxide)、ジラウリルペルオキシド(dilauryl peroxide)、ジ−tert−ブチルペルオキシド(di−tert−butyl peroxide)、t−ブチルペルオキシ−2−エチル−ヘキサノエート(t−butyl peroxy−2−ethyl−hexanoate)、クミルヒドロペルオキシド(cumyl hydroperoxide)及びヒドロゲンペルオキシド(hydrogen peroxide)などの有機過酸化物類やヒドロ過酸化物類と2,2’−アゾビス(2−シアノブタン)、2,2’−アゾビス(メチルブチロニトリル)、AIBN(2,2’−Azobis(iso−butyronitrile))及びAMVN(2,2’−Azobisdimethyl−Valeronitrile)などのアゾ化合物類などがあるが、これに限定されない。
【0041】
前記重合開始剤は、電池内で熱、非制限的な例として30℃から100℃の熱によって分解されるか常温(5℃から30℃)で分解されてラジカルを形成し、自由ラジカル重合により重合性モノマーと反応してゲルポリマー電解質を形成することができる。
【0042】
さらに、前記重合開始剤は、ゲルポリマー電解質用組成物の総重量に対して0.01重量%から2重量%の量で用いられてよい。重合開始剤が2重量%を超過すれば、ゲルポリマー電解質用組成物を電池内に注液する途中でゲル化があまりにも早く起こるか未反応開始剤が残って、後で電池の性能に悪影響を及ぼすとの欠点があり、逆に重合開始剤が0.01重量%未満であれば、ゲル化が十分に行われない問題がある。
【0043】
本発明の一実施形態に係るゲルポリマー電解質用組成物は、前記記載の成分等以外に、当業界に知られているその他の添加剤などを選択的に含有することができる。
【0044】
本発明の一実施形態によれば、正極;負極;分離膜;及びゲルポリマー電解質を含むリチウム二次電池において、前記ゲルポリマー電解質は、前記ゲルポリマー電解質用組成物を重合させて形成されていることを特徴とするリチウム二次電池を提供する。本発明の一実施形態に係るゲルポリマー電解質は、当業界に知られている通常の方法に従い、ゲルポリマー電解質用組成物を重合させて形成されているものであってよい。例えば、ゲルポリマー電解質は、二次電池の内部で前記ゲルポリマー電解質用組成物をin−situ重合して形成されてよい。
【0045】
より好ましい一実施形態を挙げると、(a)正極、負極、及び前記正極と負極の間に介在されている分離膜からなる電極組立体を電池ケースに挿入する段階、及び(b)前記電池ケースに本発明に係るゲルポリマー電解質用組成物を注入したあと重合させてゲルポリマー電解質を形成する段階を含むことができる。
【0046】
リチウム二次電池内のin−situ重合反応は、熱重合を介して進められてよい。このとき、重合時間は大凡2分から12時間程度必要となり、熱重合温度は30から100℃となり得る。
【0047】
このような重合反応によるゲル化を経ることになると、ゲルポリマー電解質が形成される。具体的には、重合性モノマーが重合反応によって互いに架橋されたオリゴマーが形成され、電解質塩が電解液溶媒に解離された液体電解液が前記形成されたオリゴマー内に均一に含浸され得る。
【0048】
本発明の一実施形態に係る前記オリゴマーは、下記化学式(1)及び(2)で表されるオリゴマーの混合された形態であってよい。
【0049】
【化3】
【0050】
ここで、前記n、mはそれぞれ1から20の整数であり、前記RからRは、それぞれ独立して水素、または−CO(CHCOO−(CHCHO)x−CHであるものであり、xは1から100の整数であり、前記RからRのうち少なくとも3以上は−CO(CHCOO−(CHCHO)−CHである。
【0051】
【化4】
【0052】
ここで、前記aは1から100の整数である。
【0053】
本発明の一実施形態に係る前記リチウム二次電池は、充電電圧が3.0Vから5.0Vの範囲であって、一般電圧及び高電圧領域の全てでリチウム二次電池の容量特性に優れる。
【0054】
本発明の一実施形態によれば、前記リチウム二次電池の電極は、当分野に知られている通常の方法で製造することができる。例えば、電極活物質に溶媒、必要に応じてバインダ、導電材、分散剤を混合及び撹拌してスラリーを製造したあと、これを金属材料の集電体に塗布(コーティング)し圧縮してから、乾燥して電極を製造することができる。
【0055】
本発明の一実施形態によれば、前記正極において、正極活物質は一般電圧または高電圧に適用することができ、リチウムを可逆的にインターカレーション/ジインターカレーションできる化合物であれば制限なく使用可能である。
【0056】
本発明の一実施形態に係るリチウム二次電池において、一般電圧に適用可能な正極活物質は、例えば、LiCoO、LiNiO、LiMnO、LiMn、LiNi1−yCo(O=y<1)、LiCo1−yMn(O=y<1)、LiNi1−yMn(O=y<1)及びLi[NiCoMn]O(0<a、b、c=1、a+b+c=1)からなる群より選択されるいずれか一つまたはこれらのうち2種以上の混合物を含むことができ、これらに限定されるものではない。さらに、このような酸化物(oxide)以外に硫化物(sulfide)、セレン化物(selenide)及びハロゲン化物(halide)なども含まれ得る。
【0057】
一方、本発明の一実施形態に係るリチウム二次電池において、前記負極活物質には、通常リチウムイオンが吸蔵及び放出可能な炭素材、リチウム金属、ケイ素または錫などを用いることができる。好ましくは炭素材を用いることができ、炭素材には低結晶炭素及び高結晶性炭素などが全て用いられ得る。低結晶性炭素には軟化炭素(soft carbon)及び硬化炭素(hard carbon)が代表的であり、高結晶性炭素には天然黒鉛、キッシュ黒鉛(Kish graphite)、熱分解炭素(pyrolytic carbon)、液晶ピッチ系炭素繊維(mesophase pitch based carbon fiber)、炭素微小球体(meso−carbon microbeads)、液晶ピッチ(Mesophase pitches)及び石油と石炭系コークス(petroleum or coal tar pitch derived cokes)などの高温焼成炭素が代表的である。
【0058】
前記正極及び/または負極は、バインダと溶媒、必要に応じて通常用いられ得る導電材と分散剤を混合及び撹拌してスラリーを製造したあと、これを集電体に塗布し圧縮して負極を製造することができる。
【0059】
前記バインダには、ポリビニリデンフルオリド−ヘキサフルオロプロピレンコポリマー(PVDF−co−HEP)、ポリビニリデンフルオリド(polyvinylidenefluoride)、ポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile)、ポリメチルメタクリレート(polymethylmethacrylate)、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース(CMC)、澱粉、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン、テトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアクリル酸、エチレン−プロピレン−ジエンモノマー(EPDM)、スルホン化EPDM、スチレンブチレンゴム(SBR)、フッ素ゴム、多様な共重合体などの多様な種類のバインダ高分子が用いられ得る。
【0060】
さらに、分離膜には、従来に分離膜として用いられていた通常の多孔性高分子フィルム、例えば、エチレン単独重合体、プロピレン単独重合体、エチレン/ブテン共重合体、エチレン/ヘキセン共重合体及びエチレン/メタクリレート共重合体などのようなポリオレフィン系高分子で製造した多孔性高分子フィルムを単独でまたはこれらを積層して用いることができ、または通常の多孔性不織布、例えば、高融点のガラス繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維などからなる不織布を用いることができるが、これに限定されるものではない。
【0061】
本発明の一実施形態に係るリチウム二次電池の外形には特別な制限がないが、缶を用いた円筒形、角形、パウチ(pouch)型またはコイン(coin)型などとなり得る。
【実施例】
【0062】
以下、本発明を具体的に説明するため、実施例を挙げて詳しく説明する。しかし、本発明に係る実施例は幾多の他の形態に変形されてよく、本発明の範囲が下記で詳述する実施例に限定されるものと解釈されてはならない。本発明の実施例は、当業界で平均的な知識を有する者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。
【0063】
実施例1:ゲルポリマー電解質用組成物の製造
エチレンカーボネート(EC):エチルメチルカーボネート(EMC)=1:2(体積比)の組成を有する非水電解液溶媒に、LiPFを1Mの濃度になるように溶解して電解液を準備した。前記電解液の重量を合算した電解質用組成物の総重量を基準に、重合開始剤としてt−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート0.25重量%を添加し、第1化合物としてポリ(エチレンイミン)−グラフト−ポリ(エチレングリコール)(PEI−PEG)2重量%を添加したあと、第2化合物としてポリエチレングリコールジグリシジルエーテルを第1化合物を基準に1/3重量%の量で添加した。これにより、ゲルポリマー電解質用組成物を製造した。
【0064】
実施例2:ゲルポリマー電解質用組成物の製造
前記実施例1で、第1化合物としてポリ(エチレンイミン)−グラフト−ポリ(エチレングリコール)(PEI−PEG)を5重量%の量で、第2化合物としてポリエチレングリコールジグリシジルエーテルを第1化合物を基準に1/3重量%の量で用いたことを除き、実施例1と同様の方法でゲルポリマー電解質用組成物を製造した。
【0065】
実施例3:ゲルポリマー電解質用組成物の製造
前記実施例1で、第1化合物としてポリ(エチレンイミン)−グラフト−ポリ(エチレングリコール)(PEI−PEG)に代えてポリ(エチレンイミン)(PEI)を用いたことを除き、実施例1と同様の方法でゲルポリマー電解質用組成物を製造した。
【0066】
実施例4:ゲルポリマー電解質用組成物の製造
前記実施例2で、第1化合物としてポリ(エチレンイミン)−グラフト−ポリ(エチレングリコール)(PEI−PEG)に代えてポリ(エチレンイミン)(PEI)を用いたことを除き、実施例2と同様の方法でゲルポリマー電解質用組成物を製造した。
【0067】
実施例5:二次電池の製造
正極の製造
正極活物質としてLiCoO 94重量%、導電材としてカーボンブラック(carbon black)3重量%、バインダとしてPVdF 3重量%を溶媒であるN−メチル−2−ピロリドン(NMP)に添加して正極混合物スラリーを製造した。前記正極混合物スラリーを厚さが20um程度の正極集電体であるアルミニウム(Al)薄膜に塗布し、乾燥して正極を製造したあと、ロールプレス(roll press)を実施して正極を製造した。
【0068】
負極の製造
負極活物質として炭素粉末、バインダとしてPVdF、導電材としてカーボンブラック(carbon black)をそれぞれ96重量%、3重量%及び1重量%にして溶媒であるNMPに添加し、負極混合物スラリーを製造した。前記負極混合物スラリーを厚さが10umの負極集電体である銅(Cu)薄膜に塗布し、乾燥して負極を製造したあと、ロールプレス(roll press)を実施して負極を製造した。
【0069】
電池の製造
前記正極、負極及びポリプロピレン/ポリエチレン/ポリプロピレン(PP/PE/PP)3層からなる分離膜を利用して電池を組み立て、組み立てられた電池に前記実施例1で製造されたゲルポリマー電解質用組成物を注入したあと、80℃で2〜30分間加熱して二次電池を製造した。
【0070】
実施例6から8:二次電池の製造
前記実施例5で、前記実施例1で製造されたゲルポリマー電解質用組成物に代えて、それぞれ前記実施例2から4で製造されたゲルポリマー電解質用組成物を用いたことを除き、前記実施例5と同様の方法でそれぞれ二次電池を製造した。
【0071】
実験例1:ゲル電解質生成反応の比較
前記実施例1から4で製造されたゲルポリマー電解質用組成物を65℃で硬化させてゲル化(gelation)が行われるのかを観察し、その結果を下記表1に示した。
【0072】
【表1】
【0073】
前記表1に示されているところのように、第1化合物としてポリ(エチレンイミン)−グラフト−ポリ(エチレングリコール)(PEI−PEG)を用い、第2化合物としてポリエチレングリコールジグリシジルエーテルを用いた混合化合物を含むゲルポリマー電解質用組成物は、前記第1化合物の含量が2重量%であり、第2化合物の含量が前記第1化合物を基準に1/3重量%である場合(実施例1)、及び前記第1化合物が5重量%であり、第2化合物の含量が前記第1化合物を基準に1/3重量%である場合のいずれも円滑にゲル化が行われた。一方、第1化合物としてポリ(エチレンイミン)(PEI)を用い、第2化合物としてポリエチレングリコールジグリシジルエーテルを用いた混合化合物を含むゲルポリマー電解質用組成物の場合は、前記第1化合物の含量が2重量%であり、第2化合物の含量が前記第1化合物を基準に1/3重量%である実施例3の場合は円滑にゲル化が行われたが、第1化合物が5重量%であり、第2化合物の含量が前記第1化合物を基準に1/3重量%である実施例4の場合はゲル化が行われなかった。
【0074】
実験例2:二次電池の容量の評価
実施例5から7で製造されたそれぞれの二次電池を、0.1C(単位:mA/g)の速度(C−rate)で電圧が4.4Vになるまで充電させたあと、4.4Vの定電圧条件で電流が0.05Cになるまでさらに充電させた。以後、10分間休止(rest)した。引続き、前記各電池を0.3Cの速度で電圧が2.8Vになるまで放電させた。それぞれの放電容量を測定して結果を表2に示し、電解質のゲル化が行われていない実施例8の電池に対しては実験を進めなかった。
【0075】
【表2】
【0076】
表2から確認できるところのように、第1化合物と第2化合物の混合化合物を含むゲルポリマー電解質用組成物を用いた二次電池は優れた容量特性を表し、特に第1化合物としてポリエチレングリコール作用基を含むアミン系化合物であるポリ(エチレンイミン)−グラフト−ポリ(エチレングリコール)(PEI−PEG)を含む場合(実施例5)は、ポリエチレングリコール作用基を含まないアミン系化合物であるポリ(エチレンイミン)(PEI)を含む場合(実施例7)に比べ、第1化合物及び第2化合物の含量が同一であるにもかかわらず、さらに優れた容量特性を表すことが分かった。
【0077】
実験例3:高温保存特性の評価
実施例5から7で製造されたそれぞれの二次電池の厚さを測定したあと、前記それぞれの二次電池を温度60℃のチャンバに入れて3週間保管したあと、再度厚さを測定し、保管前の厚さと比べて計算したあと、その結果を図2に示した。
【0078】
図2に示す通り、第1化合物としてポリエチレングリコール作用基を含むアミン系化合物であるポリ(エチレンイミン)−グラフト−ポリ(エチレングリコール)(PEI−PEG)を用いてゲル化させた二次電池(実施例6)の場合、ポリエチレングリコール作用基を含まないアミン系化合物であるポリ(エチレンイミン)(PEI)を用いてゲル化させた二次電池(実施例7)に比べ、高温保存の際に厚さの増加量が減少して優れた高温保存性能を表した。
図1
図2