特許第6612934号(P6612934)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6612934フォトリソグラフィ用レチクルを検査するための検査システム及び方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6612934
(24)【登録日】2019年11月8日
(45)【発行日】2019年11月27日
(54)【発明の名称】フォトリソグラフィ用レチクルを検査するための検査システム及び方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 1/84 20120101AFI20191118BHJP
   G03F 1/62 20120101ALI20191118BHJP
   G01N 21/956 20060101ALI20191118BHJP
【FI】
   G03F1/84
   G03F1/62
   G01N21/956 A
【請求項の数】27
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2018-120946(P2018-120946)
(22)【出願日】2018年6月26日
(62)【分割の表示】特願2014-557786(P2014-557786)の分割
【原出願日】2013年2月14日
(65)【公開番号】特開2018-151672(P2018-151672A)
(43)【公開日】2018年9月27日
【審査請求日】2018年6月26日
(31)【優先権主張番号】61/599,301
(32)【優先日】2012年2月15日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】13/757,103
(32)【優先日】2013年2月1日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500049141
【氏名又は名称】ケーエルエー コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヘス カール
(72)【発明者】
【氏名】シ ルイ−ファン
(72)【発明者】
【氏名】バブル トーマス
【審査官】 植木 隆和
(56)【参考文献】
【文献】 特表2010−533309(JP,A)
【文献】 特表2002−543463(JP,A)
【文献】 特開2006−018054(JP,A)
【文献】 特表2009−521708(JP,A)
【文献】 特開平09−198515(JP,A)
【文献】 特開昭63−045541(JP,A)
【文献】 特開2010−224114(JP,A)
【文献】 特開2012−002731(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027
G03F 7/20
G03F 1/00〜1/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フォトリソグラフィ用レチクルを検査するための方法であって、
任意のフォトリソグラフィプロセスにレチクルを使用する前に、第1の検査中に光学レチクル検査ツールを使用して、入射ビームを、前記レチクルの1以上のパッチエリアの複数の組の各々に向けて導き、その後、照射ビームに応じて、各パッチエリアの複数のサブエリアからの複数の基準強度測定値を取得するステップと、
1以上のパッチエリアの各組において各パッチエリアの前記複数のサブエリアからの前記複数の基準強度測定値を平均化することによって基準平均値を求めるステップと、
複数のフォトリソグラフィプロセスにおける前記レチクルの使用後、第2の検査中に前記光学レチクル検査ツールを使用して、入射ビームを、前記1以上のパッチエリアの複数の組の各々に向けて導き、その後、前記照射ビームに応じて、各パッチエリアの複数のサブエリアからの複数の試験強度測定値を取得するステップと、
1以上のパッチエリアの各組において各パッチエリアの前記複数のサブエリアからの前記複数の試験強度測定値を平均化することによって試験平均値を求めるステップであって、各パッチエリアについての前記試験平均値が、同じ位置を有し、前記レチクルのかかる同一パッチエリアについての前記基準平均値と整合するように、前記第1の検査と前記第2の検査との両方に前記光学レチクル検査ツール用の同じ設定レシピが使用される、ステップと、
前記1以上のパッチの複数の組の各々について、整合されたそれぞれの基準平均値と試験平均値との差を求め、ディスプレイ上に、この差を、異なる強度差の値または範囲が異なる視覚様式で示されるように、強度差マップとして視覚的に描画して表示するステップと、を含み、
前記レチクルを洗浄した後に、第3の検査中に前記光学レチクル検査ツールを使用して、入射ビームを、前記レチクルの1以上のパッチエリアの複数の組の各々に向けて導き、その後、前記照射ビームに応じて、各パッチエリアの複数のサブエリアからの複数の第2の基準強度測定値を取得するステップと、
1以上のパッチエリアの各組において各パッチエリアの前記複数のサブエリアからの前記複数の第2基準強度測定値を平均化することによって第2基準平均値を求めるステップと、
第2の複数のフォトリソグラフィプロセスにおける前記レチクルの使用後、第4の検査中に前記光学レチクル検査ツールを使用して、入射ビームを、前記1以上のパッチエリアの複数の組の各々に向けて導き、その後、前記照射ビームに応じて、各パッチエリアの複数のサブエリアからの複数の第2試験強度測定値を取得するステップと、
1以上のパッチエリアの各組において各パッチエリアの前記複数のサブエリアからの前記複数の第2試験強度測定値を平均化することによって第2試験平均値を求めるステップであって、各パッチエリアについての前記第2試験平均値が、同じ位置を有し、前記レチクルのかかる同一パッチエリアについての前記第2基準平均値と整合するように、前記第3の検査と前記第4の検査との両方に前記光学レチクル検査ツール用の同じ設定レシピが使用される、ステップと、
前記1以上のパッチの複数の組の各々について、整合されたそれぞれの第2基準平均値と第2試験平均値との第2の差を求め、ディスプレイ上に、この第2の差を、異なる強度差の値または範囲が異なる視覚様式で示されるように、第2強度差マップとして視覚的に描画して表示するステップと、
をさらに含む、方法。
【請求項2】
前記複数のパッチエリアが前記レチクルの有効エリア全体をほぼ包含し、前記強度差マップが前記レチクルの前記有効エリア全体に対して生成される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1および第2の検査が、ペリクルが前記レチクルに載置されている間に実行され、前記強度差マップが、前記レチクルのペリクルが既定のレベルを超えるまで経時的に劣化したか否かを表す、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記強度差マップが、前記レチクルが空間的な放射パターンにおいて既定のレベルを超えるまで経時的に劣化したかを表す、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記1以上のパッチエリアの複数の組の各々が単一のパッチエリアからなる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記強度差マップが修復または廃棄というアクションを示した場合には前記レチクルを修復または廃棄し、それ以外の場合には当該レチクルを以後のフォトリソグラフィプロセスにおいても使用し続けるステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記強度差マップから全体的なオフセットを除去することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記強度差マップが、前記第1の検査と前記第2の検査との間で平均強度測定値が異なるように前記レチクルの種々のエリアに対応する異なる色のエリアを包含する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記強度差マップがゼロ平均に正規化されるように生成される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記強度差マップが、前記第1および前記第2の検査中に収集された反射光および透過光の両方に基づいて生成される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記第1の検査が、前記レチクルが最小限の劣化を有するものとして確認された後に、任意のフォトリソグラフィプロセスにおいて当該レチクルを使用する前に実行される、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記強度差マップにおける全体的なオフセットに基づいて全体的なCD変化を決定することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記強度差マップがパターン密度依存性を考慮して生成される、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
フォトリソグラフィ用レチクルを検査するための検査システムであって、
入射光ビームを生成する照明源と、
前記入射光ビームを前記レチクルに向けて導く照明光学要素と、
前記レチクルからの反射光と透過光の少なくともいずれかを、前記入射光(ビーム)に応じて、1つまたは複数のセンサに向けて導く集光光学要素と、
前記レチクルからの前記反射光と透過光の少なくともいずれかを受光して、かかる反射光と透過光の少なくともいずれかに基づいて複数の強度値を生成する1つまたは複数のセンサと、
ディスプレイと、
少なくとも1つのメモリおよび少なくとも1つのプロセッサと、
を備え、
前記少なくとも1つのメモリおよび少なくとも1つのプロセッサが、
任意のフォトリソグラフィプロセスにレチクルを使用する前に、第1の検査中に前記照明源と照明光学要素とを使用して、入射ビームを、前記レチクルの1以上のパッチエリアの複数の組の各々に向けて導き、その後、前記集光光学要素と1つまたは複数のセンサとを使用して、照射ビームに応じて、各パッチエリアの複数のサブエリアからの複数の基準強度測定値を取得する操作と、
1以上のパッチエリアの各組において各パッチエリアの前記複数のサブエリアからの前記複数の基準強度測定値を平均化することによって基準平均値を求める操作と、
複数のフォトリソグラフィプロセスにおける前記レチクルの使用後、第2の検査中に前記照明源と照明光学要素とを使用して、入射ビームを、前記1以上のパッチエリアの複数の組の各々に向けて導き、その後、前記集光光学要素と1つまたは複数のセンサを使用し、前記照射ビームに応じて、各パッチエリアの前記複数のサブエリアからの複数の試験強度測定値を取得する操作と、
1以上のパッチエリアの各組において各パッチエリアの前記複数のサブエリアからの前記複数の試験強度測定値を平均化することによって試験平均値を求める操作であって、各パッチエリアについての前記試験平均値が、同じ位置を有し、前記レチクルのかかる同一パッチエリアについての前記基準平均値と整合するように、前記第1の検査と前記第2の検査との両方に前記光学レチクル検査ツール用の同じ設定レシピが使用される操作と、
前記1以上のパッチの複数の組の各々について、整合されたそれぞれの基準平均値と試験平均値との差を求め、ディスプレイ上に、この差を、異なる強度差の値または範囲が異なる視覚様式で示されるように、強度差マップとして視覚的に描画して表示する操作と、
を実行するように構成され
前記少なくとも1つのメモリおよび少なくとも1つのプロセッサが、
前記レチクルを洗浄した後に、第3の検査中に前記光学レチクル検査ツールを使用して、入射ビームを、前記レチクルの1以上のパッチエリアの複数の組の各々に向けて導き、その後、前記照射ビームに応じて、各パッチエリアの複数のサブエリアからの複数の第2の基準強度測定値を取得し、
1以上のパッチエリアの各組において各パッチエリアの前記複数のサブエリアからの前記複数の第2基準強度測定値を平均化することによって第2基準平均値を求め、
第2の複数のフォトリソグラフィプロセスにおける前記レチクルの使用後、第4の検査中に前記光学レチクル検査ツールを使用して、入射ビームを、前記1以上のパッチエリアの複数の組の各々に向けて導き、その後、前記照射ビームに応じて、各パッチエリアの複数のサブエリアからの複数の第2試験強度測定値を取得し、
1以上のパッチエリアの各組において各パッチエリアの前記複数のサブエリアからの前記複数の第2試験強度測定値を平均化することによって第2試験平均値を求め、ここで各パッチエリアについての前記第2試験平均値が、同じ位置を有し、前記レチクルのかかる同一パッチエリアについての前記第2基準平均値と整合するように、前記第3の検査と前記第4の検査との両方に前記光学レチクル検査ツール用の同じ設定レシピが使用され、
前記1以上のパッチの複数の組の各々について、整合されたそれぞれの第2基準平均値と第2試験平均値との第2の差を求め、ディスプレイ上に、この第2の差を、異なる強度差の値または範囲が異なる視覚様式で示されるように、第2強度差マップとして視覚的に描画して表示する、
ようにさらに構成された、システム。
【請求項15】
前記複数のパッチエリアが前記レチクルの有効エリア全体をほぼ包含し、前記強度差マップが前記レチクルの前記有効エリア全体に対して生成される、請求項14に記載のシステム。
【請求項16】
前記第1および第2の検査が、ペリクルが前記レチクルに載置されている間に実行され、前記強度差マップが、前記レチクルのペリクルが既定のレベルを超えるまで経時的に劣化したか否かを表す、請求項14に記載のシステム。
【請求項17】
前記強度差マップが、前記レチクルが空間的な放射パターンにおいて既定のレベルを超えるまで経時的に劣化したかを表す、請求項14に記載のシステム。
【請求項18】
前記1以上のパッチエリアの複数の組の各々が単一のパッチエリアからなる、請求項14に記載のシステム。
【請求項19】
前記1以上のパッチエリアの複数の組の各々が2つ以上の前記パッチエリアを含む、請求項14に記載のシステム。
【請求項20】
前記少なくとも1つのメモリおよび少なくとも1つのプロセッサが、前記強度差マップから全体的なオフセットを除去するようにさらに構成された、請求項14に記載のシステム。
【請求項21】
前記強度差マップが、前記第1の検査と前記第2の検査との間で平均強度測定値が異なるように前記レチクルの種々のエリアに対応する異なる色のエリアを包含する、請求項20に記載のシステム。
【請求項22】
前記強度差マップがゼロ平均に正規化されるように生成される、請求項14に記載のシステム。
【請求項23】
前記強度差マップが、前記第1および前記第2の検査中に収集された反射光および透過光の両方に基づいて生成される、請求項14に記載のシステム。
【請求項24】
前記第1の検査が、前記レチクルが最小限の劣化を有するものとして確認された後に、任意のフォトリソグラフィプロセスにおいて当該レチクルを使用する前に実行される、請求項14に記載のシステム。
【請求項25】
前記少なくとも1つのメモリおよび少なくとも1つのプロセッサが、前記強度差マップにおける全体的なオフセットに基づいて全体的なCD変化を決定するようにさらに構成された、請求項14に記載のシステム。
【請求項26】
前記強度差マップがパターン密度依存性を考慮して生成される、請求項14に記載のシステム。
【請求項27】
コンピュータ可読媒体であって、
任意のフォトリソグラフィプロセスにレチクルを使用する前に、第1の検査中に光学レチクル検査ツールを使用して、入射ビームを、前記レチクルの1以上のパッチエリアの複数の組の各々に向けて導き、その後、照射ビームに応じて、各パッチエリアの複数のサブエリアからの複数の基準強度測定値を取得する操作と、
1以上のパッチエリアの各組において各パッチエリアの前記複数のサブエリアからの前記複数の基準強度測定値を平均化することによって基準平均値を求める操作と、
複数のフォトリソグラフィプロセスにおける前記レチクルの使用後、第2の検査中に前記光学レチクル検査ツールを使用して、入射ビームを、前記1以上のパッチエリアの複数の組の各々に向けて導き、その後、前記照射ビームに応じて、各パッチエリアの複数のサブエリアからの複数の試験強度測定値を取得する操作と、
1以上のパッチエリアの各組において各パッチエリアの前記複数のサブエリアからの前記複数の試験強度測定値を平均化することによって試験平均値を求める操作であって、各パッチエリアについての前記試験平均値が、同じ位置を有し、前記レチクルのかかる同一パッチエリアについての前記基準平均値と整合するように、前記第1の検査と前記第2の検査との両方に前記光学レチクル検査ツール用の同じ設定レシピが使用される操作と、
前記1以上のパッチの複数の組の各々について、整合されたそれぞれの基準平均値と試験平均値との差を求め、ディスプレイ上に、この差を、異なる強度差の値または範囲が異なる視覚様式で示されるように、強度差マップとして視覚的に描画して表示する操作と、
前記レチクルを洗浄した後に、第3の検査中に前記光学レチクル検査ツールを使用して、入射ビームを、前記レチクルの1以上のパッチエリアの複数の組の各々に向けて導き、その後、前記照射ビームに応じて、各パッチエリアの複数のサブエリアからの複数の第2の基準強度測定値を取得する操作と、
1以上のパッチエリアの各組において各パッチエリアの前記複数のサブエリアからの前記複数の第2基準強度測定値を平均化することによって第2基準平均値を求める操作と、
第2の複数のフォトリソグラフィプロセスにおける前記レチクルの使用後、第4の検査中に前記光学レチクル検査ツールを使用して、入射ビームを、前記1以上のパッチエリアの複数の組の各々に向けて導き、その後、前記照射ビームに応じて、各パッチエリアの複数のサブエリアからの複数の第2試験強度測定値を取得する操作と、
1以上のパッチエリアの各組において各パッチエリアの前記複数のサブエリアからの前記複数の第2試験強度測定値を平均化することによって第2試験平均値を求める操作であって、各パッチエリアについての前記第2試験平均値が、同じ位置を有し、前記レチクルのかかる同一パッチエリアについての前記第2基準平均値と整合するように、前記第3の検査と前記第4の検査との両方に前記光学レチクル検査ツール用の同じ設定レシピが使用される、操作と、
前記1以上のパッチの複数の組の各々について、整合されたそれぞれの第2基準平均値と第2試験平均値との第2の差を求め、ディスプレイ上に、この第2の差を、異なる強度差の値または範囲が異なる視覚様式で示されるように、第2強度差マップとして視覚的に描画して表示する操作と、
を実行する命令を記憶している、コンピュータ可読媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、米国特許法第119条に基づき、Carl E.Hessらによって2012年2月15日出願の「Time−Varying Intensity Map Measurement」と題された先行出願である米国仮出願第61/599,301号の優先権を主張する。同出願は、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0002】
本発明は、一般にレチクル検査の分野に関する。より詳細には、本発明は、レチクルの劣化を検出するための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
一般に、半導体製造産業では、シリコンなどの基板に積層およびパターン化される半導体材料を利用して集積回路を製造するための高度に複雑な技術が使用される。大規模な回路集積および半導体デバイスの微細化により、製造されるデバイスは、欠陥の影響を益々受けやすくなっている。換言すれば、デバイスの不良を招く欠陥が、益々小さくなっている。エンドユーザまたは顧客に出荷される前のデバイスには、欠陥がない。
【0004】
集積回路は、通常、複数のレチクルから製造される。複数のレチクルの生成、およびかかるレチクルのその後の光学検査が、半導体の生産において標準的な工程となっている。最初に、回路設計者が、特定の集積回路(IC)設計を表す回路パターンデータをレチクル製造システムまたはレチクルライタに提供する。回路パターンデータは、通常、製造されるICデバイスの物理層の表示レイアウトの形態である。表示レイアウトは、ICデバイスの各物理層の表示層(例えば、ゲート酸化物、ポリシリコン、金属化など)を含む。各表示層は、特定のICデバイスの層のパターニングを画定する複数の多角形から構成される。
【0005】
レチクルライタが、回路パターンデータを用いて、特定のIC設計を製造するために後に使用される複数のレチクルを書き込む(例えば、通常、電子ビームライタまたはレーザスキャナを用いてレチクルパターンが露光される)。次にレチクル検査システムが、レチクルの製造中に発生し得る欠陥についてレチクルを検査できる。
【0006】
レチクルまたはフォトマスクは、共に、集積回路などの電子デバイスに同一平面特徴のパターンを定義する、少なくとも透明領域および不透明領域と、時に半透明領域および位相シフト領域とを有する光学要素である。レチクルは、フォトリソグラフィ中に使用され、エッチング、イオン注入、または他の加工プロセスのための半導体ウエハの所定の領域を画定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開WO2011/035946号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
各レチクルまたはレチクル群の製造後の新しい各レチクルは、通常、欠陥または劣化がない。しかしながら、レチクルは、使用後に欠陥が生じることがある。このため、レチクル検査技術の改善が継続的に求められている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以下に、本発明の特定の実施形態の基本的な理解を与えるための本開示の簡略化された要約を示す。この要約は、本開示の広範な概略ではなく、本発明の主要な要素または重要な要素を特定するものではない、すなわち、本発明の範囲を規定するものではない。その唯一の目的は、後述するより詳細な説明の前置きとして、本明細書に開示したいくつかの概念を、簡略化された形で示すことにある。
【0010】
一実施形態では、フォトリソグラフィ用レチクルを検査するための方法が開示される。レチクルの複数のパッチエリアが画定される。任意のフォトリソグラフィプロセスにレチクルを使用する前に、第一の検査中に光学レチクル検査ツールを使用して、一以上のパッチエリアの複数の組の各々について、レチクルの各パッチエリアの複数のサブエリアから測定された光に対応する複数の基準強度値の基準平均値を取得する。複数のフォトリソグラフィプロセスにおけるレチクルの使用後、第二の検査中に光学レチクル検査ツールを使用して、その一以上のパッチエリアの複数の組の各々について、レチクルの各パッチエリアの複数のサブエリアから測定された光に対応する複数の試験強度値の平均値を取得する。第一の検査と第二の検査との両方に光学レチクル検査ツール用の同じ設定レシピが使用され。強度差マップが生成され、かかるマップは、その一以上のパッチの複数の組の各々について、それぞれ、試験強度値の各平均値と基準強度値の平均値との間の差に対応する複数のマップ値を包含する。強度差マップは、レチクルが既定のレベルを超えるまで経時的に劣化したか否かを表す。
【0011】
具体的な実装では、複数のパッチエリアが、レチクルの有効エリア全体をほぼ包含し、強度差マップが、レチクルの有効エリア全体に対して生成される。別の実施形態では、第一および第二の検査が、ペリクルがレチクルに載置されている間に実行され、強度差マップは、レチクルのペリクルが既定のレベルを超えるまで経時的に劣化したか否かを表す。別の態様では、強度差マップは、レチクルが空間的な放射パターンにおいて既定のレベルを超えるまで経時的に劣化したかを表す。一つの例示の実装では、その一以上のパッチエリアの複数の組の各々は、単一のパッチエリアからなる。別の例では、その一以上のパッチエリアの複数の組の各々は、2つ以上のパッチエリアを含む。
【0012】
別の実施形態では、方法は、強度差マップから全体的なオフセットを除去することを含む。さらなる態様では、強度差マップは、第一の検査と第二の検査との間で平均強度値が異なるようにレチクルの種々のエリアに対応する異なる色のエリアを包含する。なおも別の実施形態では、強度差マップは、ゼロ平均に正規化されるように生成される。一つの具体的な実装では、強度差マップは、第一および第二の検査中に収集された反射光および透過光の両方に基づいて生成される。別の態様では、第一の検査は、レチクルが最小限の劣化を有するものとして確認された後に、任意のフォトリソグラフィプロセスにおいてかかるレチクルを使用する前に実行される。
【0013】
さらなる実施形態では、方法は、レチクルを洗浄した後に、その複数のパッチエリアの組の各々について第二の基準平均値を取得することと、第二の複数のフォトリソグラフィプロセスにおいて洗浄したレチクルを使用した後に、その複数のパッチエリアの組の各々について第二の試験平均値を取得することと、その一以上のパッチエリアの複数の組の各々について、第二の基準平均値および試験平均値に基づいた第二の差マップを生成することと、を実行する操作を繰り返すことを含む。別の態様では、方法は、強度差マップにおける全体的なオフセットに基づいて全体的なCD変化を決定することをさらに含む。なおも別の例では、強度差マップは、パターン密度依存性を考慮して生成される。
【0014】
特定の実施形態では、本発明は、フォトリソグラフィ用レチクルを検査するためのシステムに関連する。システムは、少なくとも一つのメモリおよび少なくとも一つのプロセッサを含む。これらは、前述の操作の少なくともいくつかを実行するように構成される。他の実施形態では、本発明は、前述の操作の少なくともいくつかを実行するための命令を記憶したコンピュータ可読媒体に関連する。
【0015】
本発明のこれらの態様および他の態様を、図面を参照して以下にさらに説明する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1A】高出力の深紫外線(UV)光を使用してフォトリソグラフィにおける露光を受けたレチクル部の概略側面図である。
図1B】反復的な露光によるマスク特徴の劣化を示す、図1Aのレチクルの概略側面図である。
図1C】反復的なフォトリソグラフィ露光プロセス中に発生したMoSiレチクル部の劣化を示す。
図2】洗浄プロセスによるレチクル特徴の侵食を示す。
図3A】ペリクルフレームにより囲まれた有効領域を有するレチクルの上面概略図である。
図3B図3Aのレチクルおよびペリクルを示す概略側面図である。
図4】時間的強度変化マップの概略図である。このマップは、本発明の一実施形態に従い、レチクル全域の特定のエリアにおける経時的な平均強度値の差に基づいて生成される。
図5】本発明の一実施形態に係るレチクル検査プロセスを示すフローチャートである。
図6A】本発明の実施形態に係る、レチクルの2つの「スワース」に対応する2組の強度データの概略図である。
図6B】具体的な実装に係る、複数のパッチに分けられたスワースに対応する強度データセットの概略図である。
図6C】レチクルの特定のスワースの特定のパッチの複数の画素または地点に対応する複数の強度値を示す。
図7】本発明の具体的な実装に係る、時間的強度マップを生成するための手順を示すフローチャートである。
図8】本発明の技術を実施できる例示の検査システムの概略図である。
図9A】特定の実施形態に係る、フォトマスクから生成されたマスクパターンをウエハに転写するためのリソグラフィシステムの簡略模式図である。
図9B】特定の実施形態に係るフォトマスク検査装置の模式図を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下の説明では、本発明の徹底的な理解を与えるために、多くの具体的な詳細が説明される。本発明は、これらの具体的な詳細の一部または全てがなくても実施できる。場合によっては、本発明を不必要に曖昧にしないため、公知のプロセス操作は詳細には説明しない。本発明は、具体的な実施形態と併せて説明するが、本発明をその実施形態に限定することを意図しないことが理解される。
【0018】
「レチクル」という用語は、一般に、その上に不透明材料の層が形成されているガラス、ホウケイ酸ガラス、石英、または溶融石英などの透明基板を含む。不透明な(または、実質的に不透明な)材料は、フォトリソグラフィで用いる光(例えば、遠紫外線)を完全にまたは部分的に遮断する任意の好適な材料を含むことができる。例示の材料は、クロム、ケイ化モリブデン(MoSi)、ケイ化タンタル、ケイ化タングステン、opaque MoSi on glass(OMOG)などを含む。粘着性を改善するために、不透明層と透明基板との間にポリシリコン膜も追加できる。酸化モリブデン(MoO)、酸化タングステン(WO)、酸化チタン(TiO)、または酸化クロム(CrO)などの低反射膜を、不透明材料を覆うように形成できる。
【0019】
レチクルという用語は、種々のレチクルを意味し、限定されるものではないが、明視野レチクル、暗視野レチクル、バイナリレチクル、位相マスク(PSM)、交互PSM、減衰またはハーフトーンPSM、三値減衰PSM、およびクロムレス位相リソグラフィPSMを含む。明視野レチクルは、透明なフィールドまたは背景エリアを有する。暗視野レチクルは、不透明なフィールドまたは背景エリアを有する。バイナリレチクルは、透明でも不透明でもよいパターン化エリアを有するレチクルである。例えば、クロム金属吸着膜により画定されたパターンを有する、透明溶融石英ブランクから形成されたフォトマスクを使用できる。バイナリレチクルは、位相マスク(PSM)とは異なる。その一種類は、光を部分的にのみ通す膜を含み、そのようなレチクルは、一般に、ハーフトーンまたは埋め込み位相マスク(EPSM)とも呼ばれる。位相シフト材料がレチクルの交互の透明な空間に位置する場合には、そのレチクルは、交互PSM、ALT PSM、またはLevenson PSMと呼ばれる。任意のレイアウトパターンに利用される一種類の位相シフト材料は、減衰またはハーフトーンPSMと呼ばれる。これは、不透明材料を部分的に透過する膜または「ハーフトーン」膜に置き換えることにより製造できる。三値減衰PSMは、それに加えて完全に不透明な特徴を含む減衰PSMである。
【0020】
レチクルは、多くのさまざまな過程で経時的に損傷することがある。第一の劣化の例として、フォトリソグラフィの露光プロセスが、レチクルの不透明材料の物理的劣化を招くことがある。例えば、レチクル用の193nmの高出力の深紫外線(UV)ビームなどの高出力ビームが、レチクルにおいて不透明材料を物理的に損傷することがある。損傷は、248nmUVビームなどの他の波長のビームによっても引き起こされ得る。実際には、UVビームは、不透明特徴の角をなくし、その特徴を平坦化することにより、レチクルにおける不透明パターンを物理的に悪化させることがある。この物理的効果は、レチクルの限界寸法(CD)に悪影響を与え得る。
【0021】
図1Aは、高出力の深紫外線(UV)光108を使用してフォトリソグラフィで露光を受けたレチクル部100の概略側面図である。レチクル部100は、透明基板102上に形成された不透明パターン104a,104bを含む。不透明部分104a,104bは、光108をほぼ遮断し、その一方で透明部分は、光108を、下に存在するウエハ(図示せず)を通過させて、かかるウエハにおける入射光108と反応するフォトリソグラフィ膜を露光させる。膜の露光された領域が、露光された(または、露光されていない)膜部分を除去するためのエッチングプロセスなどのさらなる処理の後、ウエハにパターンを形成する。
【0022】
図に示すように、不透明パターン構造104a,104bは、それぞれ、限界寸法(CD)幅106a,106cに設計および形成される。同様に、不透明特徴104aと不透明特徴104bとの間の間隔は、CD幅106bを有する。特定のCD値は、一般に、かかる特定のレチクル特徴がフォトリソグラフィプロセスにおいてどの程度ウエハに転写されるかに影響を与え得る。そのようなCDの値は、この転写プロセスを最適化するように選択される。別の方法で言えば、特定のレチクル特徴のCD値が所定のCD範囲内にある場合には、そのようなCD値により、回路設計者が意図するような、結果生じる集積回路の適切な工程を可能にする対応するウエハ特徴が形成される。特徴は、通常、集積チップエリアを保護するように動作可能な回路も提供するような最小寸法に形成される。
【0023】
図1Aの106a〜cなどのマスク特徴の寸法は、初期には既定の仕様に合うCD値を有し得る。しかしながら、遠紫外線による反復的な露光後、マスク特徴が、例えば、CD値が既定の仕様から外れるように劣化することがある。図1Bは、反復的な露光によるマスク特徴の物理的タイプの劣化を示す、図1Aのレチクルの概略側面図である。このタイプの劣化は、このタイプの問題が、通常、クロムタイプのレチクルを生じるため、「クロム」劣化と呼ばれる。
【0024】
各露光中、比較的高出力の遠紫外線光がレチクルに照射される。この高出力のUV光は、不透明特徴を「押し下げる」傾向があり、その結果、154a,154bなどのようなより丸くかつ平たい不透明特徴が生じる。劣化した特徴154a,154bは、間隔幅156bに影響を及ぼすことに加えて、寸法156a,156cもかなり変化させる。図に示すように、不透明特徴154a,154bは、元々の幅106a,106cと比較して、それぞれ、かなり大きい幅156a,156cを有する。一方で、そのような不透明特徴間の間隔は、元の幅106bよりも遥かに狭い幅156bとなる。この劣化の結果、特徴のCD値は大きく変化し、ウエハ収率に影響を及ぼし得る。例えば、マスク特徴の幅156a,156cは、元々の線幅CDよりもかなり広くなることがある一方、間隔幅156bは、元々の線の間隔幅CDよりもかなり狭くなることがある。
【0025】
別のタイプの劣化が、MoSiレチクルに、特に他のタイプのレチクルにも生じることがある。図1Cは、反復的なフォトリソグラフィ露光プロセス中に発生したMoSiレチクル部の劣化を示す。露光中、光はMoSi特徴164a,164bと化学反応して、酸化層174b,174bをそのようなMoSi特徴に形成する。換言すれば、光は、光触媒化学反応を引き起こし、MoSi材料から出た酸素をイオン化し、かかるMoSi特徴の表面を酸化させる。この酸化による縁に沿った酸化層の蓄積により、不透明なMoSi特徴104a,104bは丸くなる。このMoSiの酸化は、CDも変化させる。例えば、(過剰な酸化材料を加えて)MoSi特徴164a,164bは、それぞれ、176a,176cで示すより広い特徴幅CD、およびより狭い間隔CD176bを生じる。
【0026】
別の劣化の例として、洗浄プロセスによって不透明特徴が小さく形成されることがある。空気または他の発生源から発生する汚染化学物質がレチクル表面に形成され、「かすみ」が生じることがある。このかすみは、通常、レチクルから洗浄される。しかしながら、この洗浄プロセスによりレチクル特徴の侵食が引き起こされることがある。図2は、洗浄プロセスによるレチクル特徴の侵食を示す。洗浄前には、レチクルは、透明基板202上に特定のサイズおよび形状のレチクル特徴204a,204bを含む。洗浄中、洗浄液がこれらのレチクル特徴に侵食して侵食された特徴206a,206bを形成することがある。洗浄タイプの劣化もまた、ウエハ収率に影響を及ぼし得、とりわけ、CDが益々小さくなる(例えば、200nm以下)。
【0027】
レチクルのペリクルも経時的に劣化し得る。図3Aは、ペリクルフレーム302により囲まれた有効領域302を有するレチクルの上面概略図である。図3Bは、図3Aのレチクルおよびペリクルを示す概略側面図である。ペリクルは、ペリクルフレーム302、およびペリクルフレーム302により支持された透明膜306を含む。ペリクルがレチクルに載置されて、有効領域304を汚染物質から保護する。リソグラフィシステムでは比較的高い開口数を有するため、レチクルの背面上の汚染物質は焦点内にはなく、通常では露光特性に影響を及ぼすことはない。しかしながら、ペリクル膜は、露光中経時的に暗くなるか、または別の態様で変化することがある。ペリクル膜306は、洗浄プロセス後などに新しい膜と交換できるが、洗浄前後のペリクルの劣化を監視することが有益となるであろう。ペリクルの劣化は、経時的に放射状に広がる傾向があり、ウエハ製造に悪影響を与え得る。
【0028】
特定の実施形態は、レチクル全体に実質的にわたって画定された具体的なエリアに関する時間的強度変化マップを用いて、クロム、MoSi、ペリクルなどのレチクルの時間的劣化、または洗浄タイプの劣化を追跡するための技術およびシステムを提供する。例えば、レチクル検査プロセス中などの、レチクルの具体的なエリアに関する平均強度値の変化が提供される。具体的な実装では、レチクルの有効エリアは、複数のパッチエリアとして画定される。光学ツールを使用してレチクルを検査し、かかるレチクルが複数の露光プロセスを受けた前および後の各パッチエリアに関する平均強度値を取得する。次に、同じパッチエリアに関する平均強度値の時間的変化に基づいて強度マップを生成する。
【0029】
時間的強度変化マップの実施形態は、任意の好適な形態をとることができる。例えば、強度マップは、レチクルの各エリアの平均強度の変化値のリストとしてテキスト形式で表すことができる。例えば、各平均強度の変化値は、対応するレチクルエリア座標と共にリストできる。また、このマップは、格子点の差値の標準偏差または分散などの測定基準によって表すこともできる。上記に代えて、あるいは上記に加えて、時間的強度変化マップは、さまざまな強度変化値または値範囲をさまざまな視覚的な方法で示すように視覚的に表すことができる。例えば、異なる色のレチクルエリア、高さが異なる棒グラフ、異なるグラフ値、または三次元表現などで表すことができる。強度マップは、種々の格子点サンプリングサイズにより、または多項式フィットもしくはフーリエ変換などの種々の関数形式にフィットさせることにより表すことができる。
【0030】
図4は、時間的強度変化マップの概略図400である。このマップは、本発明の一実施形態に従い、レチクル全域の特定のエリアにおける経時的な平均強度値の差に基づいて生成される。具体的な例では、解析プロセスを使用して、複数の露光を実施する前と後に実行された2つの検査から強度差マップを生成できる。強度差マップ400は、例えばコンピュータのディスプレイ上に提供された、任意の好適なグラフィカルユーザインターフェース(GUI)、またはテキスト的および/または聴覚インターフェースなどの任意の他の好適な種類のヒューマンインターフェース上に表示できる。
【0031】
図示した強度マップ400は、レチクルの有効エリア全体に対応する。色では示さないが、強度マップ400は、経時的なさまざまな強度変化を有するレチクルのさまざまな領域に対応する異なる色の領域を含むことができる。図に示すように、強度マップ400は、青色中心領域410、水色内輪領域408、緑色外輪領域406、ならびに黄色404およびオレンジ色最外領域402を含む。この例では、緑色領域が、レチクルのこの特定の領域におけるゼロ強度差に対応し、一方で、青色、水色、黄色およびオレンジ色領域が、これらの特定のレチクル領域における経時的な種々の強度差に対応する。
【0032】
ユーザインターフェースは、レチクルにおける強度変化を表す他の機構を有してもよい。図に示すように、ユーザインターフェースは、複数の露光を実施する前と後とに実行された2つの検査から生成された棒グラフ420も含むことができる。棒グラフは、ゼロ平均に正規化された範囲422,424,426,428,430を有する強度変化値の合計値を含む。また、各範囲は、特定の色でも表示できる。例えば、範囲422はオレンジ色であり、範囲424は黄色であり、範囲426は緑色であり、範囲428は青色であり、範囲430は水色である。当然ながら、さまざまな範囲を、異なる色または値に割り当てることができる。この範囲は特定の用途に応じて変更できる。
【0033】
特定の強度マップの実施形態は、レチクルのさまざまな領域における空間次元および時間次元の両方における強度変化を示す。例えば、時間的強度変化マップは、レチクルの具体的なより大きなエリアを透過するかまたはそこから反射する光の平均量に対応する。これらの強度マップは、細かい分解能に関する欠陥を解決する必要なしに、平均の時間的変化および空間的変化を示す。時間的強度変化マップが生成され、これは繰り返し使用されるレチクル特徴に加えて、繰り返し使用されないレチクル特徴にも応用できる。
【0034】
図5は、本発明の一実施形態に係るレチクル検査プロセスを示すフローチャート500である。最初に、操作502において、フォトリソグラフィプロセスにおいてレチクルを使用する前に、「良好な」レチクルのパッチ(または、パッチの組)ごとの(パッチまたはパッチの組における複数の強度値に関する)基準平均強度値を取得できる。一般に、基準検査手順が公知の良好なレチクルに対して実行される。このため、例えば劣化および欠陥がないものと確認された新しいレチクルを用いて、基準検査プロセス中に基準平均強度値を取得する。あるいは、レチクルがレチクルの劣化またはCDに影響が及ぼされ得る任意の種類のプロセスを受けた後に、各パッチの基準平均強度値を取得できる。例えば、基準平均強度値は、フォトリソグラフィプロセスをレチクルに繰り返し実装した後、およびレチクルを洗浄し、劣化または欠陥が最小限しかないまたは全くないことを確認した後に取得できる。
【0035】
レチクルは、任意の好適な方法により劣化または欠陥がほぼないものとして確認または確定され得る。例えば、新たに製造されたレチクルの購入者は、レチクルが欠陥および劣化がないものと製造業者が確認したと当然考え得る。あるいは、レチクルを、光学電子顕微鏡またはスキャン型電子顕微鏡を用いて検査し、レチクルに関して何らかのCD均一性欠陥があるか否か、またはレチクルが例えばダイツーデータベース検査の実行により劣化したか否かを決定できる。レチクルは、洗浄後に同様の検査をされ、他の種類の劣化および欠陥に加えてかすみも除去することができる。
【0036】
レチクルは、一般に、複数の地点から得られる複数の強度値をそこから取得するような複数のパッチ部に分けられる。レチクルのパッチ部をスキャンしてこの強度データを取得できる。パッチ部は、特定のシステムおよびアプリケーション要件に応じた任意のサイズおよび形状でもよい。一般に、各パッチ部の複数の強度値は、任意の好適な方法でレチクルをスキャンすることにより取得できる。一例として、各パッチ部の複数の強度値は、レチクルのラスタースキャンにより取得できる。あるいは、円形またはらせんパターンなどの任意の好適なパターンでレチクルをスキャンすることにより、画像を取得できる。当然ながら、レチクルにおいて円形またはらせん形をスキャンするために、センサを違う様(例えば、円形パターン)に配置する必要が生じ得、かつ/またはレチクルはスキャン中に違う様に(例えば、回転して)動き得る。
【0037】
以下に例示する例では、レチクルがセンサを通過すると、レチクルの(本明細書において「スワース」と呼ばれる)矩形領域から出た光が検出され、かかる検出光は、各パッチ内の複数の地点における複数の強度値に変換される。この実施形態では、スキャナのセンサが矩形パターンに配置される。この配置により、レチクルから反射および/またはそこを透過した光を受け入れ、その光からレチクルのパッチのスワースに対応する一組の強度データを生成する。具体的な例では、各スワースは、約100万個の画素の幅、および約1000〜2000個の画素の高さに対応できる。各パッチは、約2000個の画素の幅、および1000個の画素の高さに対応できる。
【0038】
図6Aは、本発明の実施形態に係る、レチクル600の2個の「スワース」602a,602bに対応する2組の強度データの概略図である。各組の強度データは、レチクル600の「スワース」に対応し得る。各組の強度データは、レチクルからのスワースを蛇行またはラスターパターンにより連続的にスキャンすることにより取得できる。例えば、レチクル600の第一のスワース602を光学検査システムの光ビームにより左から右にスキャンして第一の組の強度データを取得する。次に、第二のスワース604を右から左にスキャンして第二の組の強度データを取得する。図6Bは、複数のパッチに分けられたスワースに対応する強度データセット602aの概略図である。図に示すように、強度データ602aは、複数のパッチに関する強度データをさらに含む。そのような強度データセットは例えば、レチクルのスワースのパッチに対応する652a,652b,652c,652dである。
【0039】
各スワースの各パッチ内の複数の地点に関する強度データを収集している間またはその後、各パッチまたは一以上のパッチの組の平均強度値も決定できる。図6Cは、レチクルの特定のスワースの特定のパッチ652aの複数の画素または地点に対応する複数の強度値(例えば、672a,672b,672c,672d,672e,672f)を示す。例えば、レチクルのパッチに対応する強度データセット652aは、強度値26、25、25、25、24、25などを含み得る。各パッチの強度値の全てを併せて平均化し、かかるパッチにおける平均強度値(例えば、25)を決定できる。
【0040】
図5の検査プロセスを再度参照すると、「良好な」レチクルの各パッチの平均強度値を取得した後、次に操作504において、「良好な」レチクルを複数のフォトリソグラフィプロセスに使用できる。次に、操作506において、レチクルの各パッチ(または、パッチの組)の試験平均強度値を取得できる。各パッチの試験平均値は、各パッチの基準平均値の取得に用いられるのと同様の技術により取得できる。
【0041】
各パッチの強度値は、任意の好適な方法でセットアップされた光学検査ツールを使用して取得できる。光学ツールは、一般に、一組の動作パラメータを用いてセットアップされ、さまざまな検査と実質的に同じ「方法」が、強度値を取得するために実行される。方法の設定は、以下の設定の一以上を含むことができる。すなわち、特定のパターン、画素サイズにおいてレチクルをスキャンするための設定、隣接信号と単一信号とを分類するための設定、焦点設定、照射または検出アパーチャ設定、入射ビーム角度および波長設定、検出器設定、反射光または透過光の量の設定、空中モデリングパラメータなどを含むことができる。
【0042】
次に、操作508において、レチクルパッチにおける試験平均値と基準平均値との差に基づいて、レチクルに関する時間的強度マップを生成できる。例えば、同じパッチまたはパッチの各組における試験平均値および基準平均値が、互いから減算されて、同じパッチまたはパッチの組に関する差平均値を決定する。時間的強度マップを生成する前に、全体的なオフセットも決定し、これを各差値から減算することができる。例えば、レチクル全体の平均値(例えば、全てのパッチ平均値の平均、または全ての強度値の平均)を決定し、これを各差値(または、各画素の強度値間の差)から減算する。これにより、全体的な強度変化を時間的強度マップから排除する。
【0043】
時間的強度マップを生成する前に、あらゆる全体的な変化を除去することが有益であり得る。例えば、基準検査と試験検査とで光較正を変えることができ、レチクルの劣化度に関係しない検出光に全体オフセットを与えることができる。また、劣化は均一とはならない傾向がある。加えて、フォトリソグラフィツールを均一な変化に補正するようにプログラムできる。この均一な変化は、フォトリソグラフィプロセス中に補正が困難な不均一な変化とは対照的に、露光プロセスに悪影響を与えないことができる。上記を考慮して、多くの場合に、マップが不均一な変化のみを提供するように、全体的なオフセットを適度に無視および強度マップ結果から除去できる。
【0044】
しかしながら、均一な強度オフセットは、他の用途で重要となり得る。このため、任意の全体的なオフセットを除去せずに、時間的強度マップが生成されてもよい。例えば、全体的な強度オフセットを用いて全体的なCD変化を決定できる。換言すれば、全体的なCD変化は、時間的強度マップの全体的な強度オフセットに関連し得る。透過光および反射光の両方の光信号を解析して、全体的なCD変化を決定する間にノイズを補正できる。RマップおよびTマップの「一致する」部分をCDオフセットの決定に使用できる。一方で、それらの「一致しない」部分は、ある種類のノイズ(すなわち、複屈折変化、反射率変化)を暗示し、CDオフセットの決定には使用されない。検査光レベルが適切に較正および補正されることも好ましい。
【0045】
全体的なオフセットを決定する一法として、試験検査および基準検査においてマスクの全部の平均値を算出し、その結果を減算する方法がある。大抵の場合、この平均結果が、時間的強度マップ結果から減算される。しかしながら、ノイズが比較的少ない結果では、全体的なオフセットは、例えば、仮に明白な空間分布の変化がなくても非常に重要となり得る。この全体的なオフセットは、全体的なCD変化を表すことができる。
【0046】
時間的強度マップが提供された後、次に、操作510において、かかるマップに基づいてレチクルが検査に合格するか否かが決定されてもよい。例えば、同じレチクルエリアにおける平均強度値の経時的な任意の変化が、既定の閾値を超えるか否かを決定できる。平均の時間的強度変化が既定の閾値を超える場合には、次に、対応するレチクル部をより注意深く調査することにより、レチクルが欠陥品であるか、もはや使用できないか否かを決定できる。例えば、SEMを使用して欠陥エリアを調査することにより、限界寸法(CD)が仕様外にあるか否かを決定できる。
【0047】
代替的な実装では、時間的強度マップにおける具体的な強度変化は、その後仕様内または仕様外にあるかを決定され得る具体的なCD値に関連し得る。特定の強度変化は、さまざまなCD変化間の強度差を決定するために測定され得る複数の公知のCD値を有する較正レチクルを使用する場合の具体的なCD値に関連し得る。これらのCDと強度変化との相関関係は較正レチクルの種々のエリアから取得されるが、これらの関連性を、同じレチクルエリアのそれぞれの各時間的強度差に適用して、かかる同じレチクルエリアにおける時間的CD変化を決定できる。
【0048】
CDが仕様外の場合、検査に合格しないレチクルが生成される。レチクルが検査に不合格となると、操作512において、レチクルが、廃棄されるか、または可能であれば修復され得る。例えば、ある種の欠陥はレチクルから洗浄できる。修復後、洗浄したレチクルに新しい基準検査を実行し、繰り返しの手順を実行できる。
【0049】
図7は、本発明の具体的な実装に係る、時間的強度マップを生成するための手順700を示すフローチャートである。最初に、操作702において、光ビームがレチクルの全域をスキャンし、かかるビームが各パッチの全域をスキャンするときに、各パッチ内の各画素または地点の強度値を収集できる。別の方法で言えば、入射光ビームがレチクルの各パッチの全域をスキャンするときに、検査ツールが、反射光もしくは透過光、または反射光および透過光の両方を検出して収集するように動作可能である。前述したように、入射光ビームは、それぞれ複数のパッチを備えるレチクルのスワースの全域をスキャンできる。この入射ビームに反応して各パッチの複数の地点またはサブエリアから出た光が収集される。
【0050】
検査ツールは、通常、そのような検出光を強度値に対応する検出信号に変換するように動作可能である。検出信号は、レチクルのさまざまな箇所におけるさまざまな強度値に対応する振幅値を有する電磁波形の形態をとることができる。検出信号は、強度値の単純リストおよび関連するレチクル地点の座標の形態をとることもできる。検出信号は、レチクル上のさまざまな位置またはスキャン地点に対応するさまざまな強度値を有する画像の形態をとることもできる。レチクル画像は、レチクルの全ての位置をスキャンして検出信号に変換した後に生成できる。または、レチクル画像の一服を、レチクル全体をスキャンした後に完成する最終レチクル画像を用いて各レチクル部をスキャンするときに生成できる。
【0051】
検出信号は、空中画像の形態をとることもできる。換言すれば、空中撮像技術を用いてフォトリソグラフィシステムの光学的効果をシミュレートして、ウエハに露光されたフォトレジストパターンの空中画像を生成できる。一般に、フォトリソグラフィツールの光学要素は、レチクルから出た検出信号に基づいて空中画像を生成するようにエミュレートされる。空中画像は、フォトリソグラフィの光学要素、およびウエハのフォトレジスト層におけるレチクルを通り抜けた光から生成されたパターンに対応する。また、特定の種類のフォトレジスト材料に関するフォトレジスト露光プロセスも、エミュレートできる。
【0052】
入射光または検出光は、任意の好適な空間アパーチャを通り抜けて、任意の好適な入射角における任意の入射光または検出光プロファイルを生成できる。一例として、プログラム可能な照射または検出アパーチャを利用して、例えば双極子、四極子、クエーサ、アニュラスなどの特定のビームプロファイルを生成できる。具体的な例では、ソースマスク最適化(SMO)または任意の画素化照射技術を実施できる。
【0053】
操作704において、一以上のパッチの各組の検出信号に関するデータが、並列パッチプロセッサに送信されてもよい。例えば、第一のパッチに関する強度値が第一のプロセッサに送信され、第二のパッチに関する強度値が第二のプロセッサに送信されてもよい。あるいは、既定の数のパッチに関するデータが個々のパッチプロセッサに送信されてもよい。
【0054】
操作706において、各プロセッサは、一以上のパッチの各組の平均パッチ強度値を決定して記憶できる。例えば、各プロセッサは、一つのパッチの平均値、または複数のパッチの各組の平均値を決定できる。例えば、平均値は、1、2、50または200個のパッチの組ごとに決定できる。当然ながら、平均値を決定するパッチの数はサンプリング精度に影響を及ぼす。すなわち、各平均値の計算に関わるパッチがより多くなると、サンプリング数は少なくなる。しかしながら、より多くのパッチを用いて各平均値を決定するとノイズが減少する。
【0055】
本発明の特定の実施形態は、SEMを用いて実行するなどの他の検査技術と比較してより多くの地点のサンプリングが可能になる。SEM検査は非常に低速であるため、多くの場合、低密度サンプリング(例えば、通常、2000地点未満)が用いられる。本発明の一つの例示の実装では、各パッチ(1k×2k)は約2百万個の画素を含有する。これらの画素をスキャンして、全ての各画素の2百万の地点に関する強度値を取得する。各パッチの平均値を取得する場合には、2百万の地点をサンプリングする。別の例では、2個のパッチ内の地点の平均化には、2個のパッチ格子ごとに100万の地点をサンプリングする。50個のパッチを平均化する場合には、50個のパッチ格子ごとに4万の地点をサンプリングする。200個のパッチの平均化には、1万の地点をサンプリングする。この数はなおも、当業者がSEM検査においてサンプリングを所望し得る地点の最大数よりも遥かに多い。
【0056】
反射光に対応する強度値は、各パッチの平均強度値を決定する前または後に、透過光に関する強度値と組み合わされてもよい。例えば、反射光および透過光の強度値の平均値は、地点または画素ごとに決定できる。あるいは、平均値を、パッチの反射光の強度値と透過光の強度値とについて別々に計算できる。別々に計算された各パッチの反射光の平均値と透過光の平均値とを共に組み合わせて平均化することもできる。つまり、時間的強度変化マップは、レチクル検査中に検出される反射光、透過光、またはそれらの両方に基づいて生成できる。一つの例示の実装では、反射光(R)の値と透過光(T)の値とを(T−R)/2に従い組み合わすことができる。反射光の信号は、通常、透過光の信号と反対符号である。故に、2個のマップからの減算値が両方の信号に追加される。ノイズ源がTとRとで異なるため、ノイズは、結合信号とは無関係に平均化される傾向が生じ得る。Rおよび/またはT値に関する他の重み付けを用いて、関連する利点を有する最終の結合マップを生成できる。いくつかの場合では、特定の領域におけるR信号とT信号とは、反対の符号ではなく同じ符号を有し得、これは関連領域において一貫性のない結果を示すことがあり、信頼できない可能性がある。このため、RとTとの組み合わせは、かかる領域において軽視され得、信頼性が不十分である場合には算出結果から除去される。
【0057】
図7に図示した例を再度参照すると、次に操作708において、劣化チェックを開始するか、またはレチクルをフォトリソグラフィプロセスに使用するか否かを決定できる。例えば、レチクルが新しいものであり、以前に検査されていない場合には、レチクルがそのまま使用される。操作708において、同じレチクルが複数回使用され、この場合もまたそれらに関する強度データを収集した後、レチクルの劣化をチェックする時を決定できる。
【0058】
次に操作710において、最近に取得した強度平均値と以前に取得した強度平均値の組との間の差が決定され得る。換言すれば、最新の一以上のパッチに関して決定した各平均強度値が、その時以前に決定された同じ一以上のパッチに関する各平均強度値から減算される(逆もまた同様である)。例えば、第一の時刻tにおける特定のパッチの強度値の平均値が、第二の時刻tにおける同じ特定のパッチ(または、パッチの組)の強度値の平均値から減算される。この減算プロセスは、特定のレチクルの各パッチ(または、パッチの組)に関して、時刻tおよびtにおいて取得された平均値についても繰り返される。
【0059】
次に操作712において、決定した平均値の差に基づいてレチクルに関する強度マップを生成できる。強度マップは、一以上の全体的なオフセットを含んでもよいし、または任意の全体的なオフセットを除外して生成してもよい。換言すれば、パッチのほぼ全ての平均強度値が時刻tからtまでの特定の全体的な強度変化に従い平均して増大または減少した場合には、この変化を、時刻tおよびtにおける強度マップを生成する前に、決定された時刻tにおける各パッチ平均値から減算できる。
【0060】
強度マップは、レチクル全域の平均強度値の経時的な変化を示すように生成できる。例えば、レチクルのパッチが時刻tからtまで変化しなかった場合には、強度マップは、このタイムフレームにおいてこのパッチに変化がないことを示す。2組の強度データを同じ検査方法を利用して2つの異なる時刻に取得するため、レチクルにおける同一のパッチからのデータを容易に比較することができる。例えば、各検査プロセスは同じスキャンパターンを有して、同じレチクルの元々の位置と相対的な箇所における具体的なパッチに対応する位置である、レチクルの具体的な位置からデータを収集する。各パッチに関するデータは、元々の位置と相対的な特定のパッチに関する位置データおよび対応する強度値を含む。このため、同じ検査プロセスを使用する場合には、特定のパッチに関するデータは、同じレチクルの元々の位置と相対的な位置である、以前の検査としての同じ位置のデータに関連する。強度差マップは、同じ組の箇所(例えば、同じレチクルパッチまたはパッチの組)にも関連する、2つの異なる時刻に生成された平均強度値データ間の検出した差に基づき得る。
【0061】
強度マップは、ペリクルが取り付けられている間、またはペリクルが(例えば、交換のために)取り外された後に、レチクルの有効領域に関して生成できる。有効領域は、リソグラフィプロセス中にウエハに対応するパターンを生成するために使用されるレチクルパターン部である。換言すれば、レチクルの有効領域は、ウエハの複数のダイ領域を生成するのに使用される。ペリクルが存在する場合には、強度差マップは、レチクルの有効領域、ペリクル、またはそれらの両方の劣化を示すことができる。
【0062】
強度差マップは、任意の全体的な変化オフセットが除去された場合には、不均一な劣化のみを示す傾向がある。例えば、強度差マップは、レチクルまたはペリクルの全域に放射劣化パターンを示すことがある。強度差は、有効領域のさまざまな密度レベルに基づいて異なり得る。例えば、同じ劣化が、レチクルのより高密度の有効領域に対応する領域の強度マップをより明白に示すことがある。
【0063】
時間的強度マップは、パターン密度効果を補正するように生成できる。強度変化はエッジ画素の数に応じて決まるため、各パッチの強度差値をエッジ画素の平均数に基づいてスケーリングできる。例えば、レチクルにおける全てのパッチにおけるエッジ画素の平均数をその特定のパッチのエッジ画素の数で割り算することにより、各特定のパッチ平均値をスケーリング(減少または増大)できる。パッチにエッジがない(例えば、空である)場合、このスケーリングは、ゼロでは割れないため、かかるパッチには実行されない。
【0064】
本発明の特定の実施形態は、反復パターンに加えて、非反復論理パターンにも利用できる。強度マップが、同じ時刻における小区分部分の繰り返しではなく、さまざまな時刻において同じパッチ(または、パッチの組)について生成されるため、反復パターンの一部を形成しないパッチに関する差を検出できる。また、強度差マップが経時的にレチクル全体の同じパッチについて生成されるため、この強度マップは、クロム劣化によるレチクル全域にわたる放射状の経時的な変化などの、レチクルの空間プロファイルにおける変化を明白に示す。
【0065】
本発明の技術は、ハードウェアおよび/またはソフトウェアの任意の好適な組み合わせにおいて実装できる。図8は、本発明の技術を実施できる例示の検査システム800の概略図である。検査システム800は、検査ツールまたはスキャナ(図示せず)から送信された入力802を受信できる。検査システムは、受信した入力802を配信するためのデータ配信システム(例えば、804a,804b)、受信した入力802の具体的な一部分またはパッチを処理するための強度信号(または、パッチ)処理システム(例えば、パッチプロセッサならびにメモリ806a,806b)、時間的強度マップを生成するためのマップ発生器システム(例えば、マップ発生器プロセッサおよびメモリ812)、検査システムコンポーネント間の通信を可能にするネットワーク(例えば、スイッチドネットワーク808)、任意的な大容量記憶デバイス816、ならびに時間的強度マップを調査するための一以上の検査制御および/または調査ステーション(例えば、810)も含むことができる。検査システム800の各プロセッサは、通常、一以上のマイクロプロセッサ集積回路を含み、さらにインターフェースおよび/またはメモリ集積回路も含有することができる。また、一以上の共有および/または全体的なメモリデバイスに接続できる。
【0066】
入力データ802を生成するためのスキャナまたはデータ収集システム(図示せず)が、強度信号またはレチクルの画像を取得するための(例えば、本明細書にさらに説明するような)任意の好適な機器の形態をとることができる。例えば、スキャナは、一以上の光センサに反射、それを透過、または別の方法で導かれた検出光の一部に基づいて、光学像を構成またはレチクルの一部の強度値を生成できる。スキャナは、次に、強度値を出力できる。または、画像がスキャナから出力され得る。
【0067】
強度または画像データ802は、ネットワーク808を介してデータ配信システムにより受信され得る。データ配信システムは、受信データ802の少なくとも一部を保持するためのRAMバッファなどの一以上のメモリデバイスを付随し得る。好ましくは、メモリ全体は、データの全体部分を保持するのに十分な大きさである。例えば、100万×1000個の画素または地点を含む一部分では1ギガバイトのメモリが良好に動作する。
【0068】
また、データ配信システム(例えば、804a,804b)は、受信した入力データ802の一部の、プロセッサ(例えば、806a,806b)への配信も制御できる。例えば、データ配信システムは、第一のパッチに関するデータを第一のパッチプロセッサ806aに送信し、第二のパッチに関するデータをパッチプロセッサ806bに送信することができる。複数のパッチに関する複数のデータの組も、各パッチプロセッサに送信することができる。
【0069】
パッチプロセッサは、レチクルの少なくとも一部またはパッチに対応する強度値または画像を受信できる。パッチプロセッサは、各々、一以上のメモリデバイス(図示せず)に接続してもよいし、またはそれと一体化してもよい。このメモリデバイスは、例えば受信データの一部を保持するローカルメモリ機能を有するDRAMデバイスなどである。好ましくは、メモリは、レチクルのパッチに対応するデータを保持するのに十分な大きさである。例えば、512×1024個の画素であるパッチに対応する強度値または画像では8メガバイトのメモリが良好に動作する。あるいは、パッチプロセッサは共有メモリでもよい。
【0070】
各組の入力データ802は、レチクルのスワースに対応してもよい。一以上のデータの組をデータ配信システムのメモリ内に記憶できる。このメモリは、データ配信システム内の一以上のプロセッサにより制御され得る。メモリは、複数のパーティションに分けることができる。例えば、データ配信システムは、スワースの一部に対応するデータを受信し、第一のメモリパーティション(図示せず)内に保存できる。また、データ配信システムは、別のスワースの一部に対応する別のデータを受信し、第二のメモリパーティション(図示せず)内に保存できる。好ましくは、データ配信システムのメモリパーティションの各々は、かかるメモリパーティションに関連するプロセッサに送信されるデータの一部のみを保持する。例えば、データ配信システムの第一のメモリパーティションは、第一のデータを保持し、パッチプロセッサ806aに送信し、第二のメモリパーティションは、第二のデータを保持し、パッチプロセッサ806bに送信することができる。
【0071】
データ配信システムは、データの任意の好適なパラメータに基づいて、データから各組のデータを区別して配信できる。例えば、データは、レチクルにおけるパッチの対応する位置に基づいて、区別して配信され得る。一実施形態では、各スワースは、スワース内の画素の水平位置に対応するある範囲の列位置に関連する。例えば、スワースの列0〜256は第一のパッチに対応し得、これらの列内の画素は、第一の画像または強度値の組を包含し、一以上のパッチプロセッサに送信される。同様に、スワースの列257〜512は第二のパッチに対応し得、これらの列内の画素は、第二の画像または強度値の組を包含し、上とは異なるパッチプロセッサに送信される。
【0072】
図9Aは、特定の実施形態に係る、フォトマスクMから生成されたマスクパターンをウエハWに転写するために使用できる代表的なリソグラフィシステム900の簡略模式図である。例示のかかるシステムは、スキャナおよびステッパを含む。より具体的には、オランダのフェルドホーフェンのASMLから入手可能なPAS 5500システムである。一般に、照明源903が、光ビームを、照射光学要素901(例えば、レンズ905)を通過させ、マスク面902に存在するフォトマスクMに導く。照明レンズ905は、該面902での開口数901を有する。開口数901の値は、フォトマスクにおいて、どの欠陥がリソグラフィに重大な欠陥であり、どの欠陥が重大ではないかに影響を与える。フォトマスクMを通り抜けるビームの一部は、結像光学系913を通り抜けてウエハWに導かれ、パターン転写を開始するためのパターン化された光信号を形成する。
【0073】
図9Bは、特定の実施形態に係る例示の検査システム950の模式図を提供する。検査システム950は照射光学要素951aを有し、照射光学要素951aは、レチクル面952に、比較的大きい開口数951bを有するイメージングレンズを含む。描写した検査システム950は検出光学要素953a,953bを含み、検出光学要素953a,953bは、検査の向上のために例えば60〜200倍以上の倍率を提供するように設計される微視的拡大光学系を含む。例えば、検査システムのレチクル面952における開口数951bは、リソグラフィシステム900のレチクル面902における開口数901よりもかなり大きい場合がある。これにより、試験検査画像と実際に印刷した画像との間に差異が生じるであろう。
【0074】
本明細書に説明した検査技術は、図9Bに概略的に示すものなどの、さまざまな特別に構成された検査システムに実装できる。図示したシステム950は、照射光学要素951aを通り抜けてレチクル面952におけるフォトマスクMに導かれる光ビームを生成する照明源960を含む。光源の例は、レーザまたはフィルタ付きランプを含む。一例では、光源は193nmレーザである。前に説明したように、検査システム950のレチクル面952における開口数951bは、対応するリソグラフィシステムのレチクル面の開口数(例えば、図9Aの要素901)よりも大きい場合がある。検査されるフォトマスクMは、レチクル面952におけるマスクステージに位置し、光源により露光される。
【0075】
マスクMから出たパターン化画像は、光学要素953aの集まりを通り抜けて導かれ、このパターン化画像はセンサ954aに投影される。反射システムでは、光学要素(例えば、ビームスプリッタ976および検出レンズ978)が、反射光を捕捉してセンサ954bに導く。好適なセンサは、電荷結合素子(CCD)、CCDアレイ、時間遅延積分(TDI)センサ、TDIセンサアレイ、光電子増倍管(PMT)、および他のセンサを含む。
【0076】
照射光学要素列は、任意の好適な機構を用いてマスクステージおよび/または検出器もしくはカメラに対して移動することにより、レチクルのパッチをスキャンできる。例えば、モータ機構を利用してステージを動かすことができる。モータ機構は、例えば、スクリュードライブおよびステッピングモータ、フィードバック位置を有する線形ドライブ、またはバンドアクチュエータおよびステッピングモータから作製できる。
【0077】
各センサ(例えば、954aおよび/または954b)が捕えた信号は、コンピュータシステム973またはより一般には一以上の信号処理デバイスにより処理され得る。これらの各々は、各センサから送信されたアナログ信号を処理用のデジタル信号に変換するように構成されたアナログデジタルコンバータを含むことができる。コンピュータシステム973は、通常、入出力ポートに接続された一以上のプロセッサ、および適切なバスまたは他の通信機構を通じて接続された一以上のメモリを有する。
【0078】
コンピュータシステム973は、例えば焦点および他の検査方法パラメータを変化させるためのユーザ入力を提供するための一以上の入力デバイス(例えば、キーボード、マウス、ジョイスティック)も含むことができる。コンピュータシステム973は、サンプル位置(例えば、焦点調節およびスキャン)などを制御するためのステージ、ならびにかかる検査システムコンポーネントの他の検査パラメータおよび構成を制御するための他の検査システムコンポーネントにも接続できる。
【0079】
コンピュータシステム973は、得られた強度値、画像、および他の検査結果を表示するためのユーザインターフェース(例えば、コンピュータ画面)を提供する(例えば、プログラミング命令を有する)ように構成できる。コンピュータシステム973は、反射および/または透過して検知した光ビームの強度、位相および/または他の特性を解析するように構成できる。コンピュータシステム973は、得られた強度値、画像、および他の検査特性を表示するためのユーザインターフェース(例えば、コンピュータ画面)を提供する(例えば、プログラミング命令を有する)ように構成できる。特定の実施形態では、コンピュータシステム973は、上で詳述した検査技術を実行するように構成される。
【0080】
そのような情報およびプログラム命令は特別に構成されたコンピュータシステムに実装できるため、かかるシステムは、コンピュータ可読媒体に記憶できる、本明細書に説明したさまざまな工程を実行するためのプログラム命令および/またはコンピュータコードを含む。機械可読媒体の例は、限定されるものではないが、ハードディスク、フロッピー(登録商標)ディスクおよび磁気テープなどの磁気媒体、CD−ROMディスクなどの光媒体、光ディスクなどの磁気光学媒体、ならびにプログラム命令を記憶および実行するように特別に構成された読み出し専用メモリデバイス(ROM)およびランダムアクセスメモリ(RAM)などのハードウェアデバイスを含む。プログラム命令の例は、例えばコンパイラにより生成された機械コード、およびインタープリタを使用してコンピュータにより実行され得る上位コードを含有するファイルの両方を含む。
【0081】
特定の実施形態では、フォトマスクを検査するためのシステムは、本明細書に説明した技術を実行するように構成された少なくとも一つのメモリおよび少なくとも一つのプロセッサを含む。検査システムの一例として、カリフォルニア州ミルピタスのKLA−Tencorから入手可能な特別に構成されたTeraScan(登録商標)DUV検査システムが挙げられる。
【0082】
明確に理解できるように、前述の本発明をある程度詳細に説明したが、添付の請求項の範囲内で特定の変形および変更を実施できることが明らかである。本発明のプロセス、システムおよび装置を実施する多くの代替的方法があることに留意すべきである。このため、提示した実施形態は、例証であり、制限的ではないと考慮され、本発明は、本明細書に与えられた詳細に限定されるべきではない。
図1A
図1B
図1C
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図7
図8
図9A
図9B